カリスマ美容師<第4話・後編>「高杉・入魂のウエディング・ドレス」

カリスマ美容師・高杉修<第4話・後編>「高杉・入魂のウエディング・ドレス」


これで、仕事ができる。
修は、依頼者をはっきりさせ、依頼者の願いをしっかりと確かめたかったのだ。

帰り道、有香が言った。
「修さんは、どんな服を作るのかな。」
「ステキなステキな、ウェディングドレスさ。」
「何か、特別な?」
「うん。特別も特別。命がけで作る。」修は言った。

修は、ウェディングドレスと新郎の正装を、その日のうちに作った。
針金だけのマネキンがドレスを着ていた。
有香は、そのウェディングドレスを見て、あまりにステキで、ため息をついた。
修は有香に言った。
「ぼくは、これから、3日3晩、断食の業に入るから、
 そっとしておいてくれる?」
「うん。わかる。あたしの声を治してくれたようなことでしょう。」
「その通り。」修は、にこっと笑った。

外で、遠藤は、首を傾げていた。
『何のための断食の業だ。ドレスはできているのに。
あんなに素晴らしいドレスなのに・・。』

修は、作業台にドレスと男子の正装を置いて、
それを前に、禅を組むようにして、断食の業に入った。

3日が経ち、結婚式の当日である。
今まで、目をつぶっていた修は、パチリと目を開けた。
顔を洗って、白衣を来た。
有香がやって来た。
「ああ、有香、助かる。有香は、ドレスを頼む。ぼく男だから。
 淑子さんへの着せ方を、タクシーの中で言うからね。」
「わあ、あたし、役に立ってる?」
「何言ってるんだよ。有香がいないとやっていけないよ。」
「わあ~。」と有香は、修に抱き付いた。

教会の新婦の更衣室に、新婦淑子が、ベッドに寝ていた。
有香がやって来た。
「さあ、これから、ウエディング・ドレスを着ますよ。」
有香は、修に言われた通り、寝ている淑子の服の上から、ドレスをかけた。
そして、3分待つ。
(即席ラーメンみたいにね。と修は言った。)
3分が近づいてくると、淑子にみるみる変化が訪れた。
曲がっていた体が伸び、指が伸び、脚が伸び、
そして、淑子の顔がどんどん若返り、頬に赤みが差して行った。
そばにいた2人の係りの女性は、目を見張っていた。
「あの、係りの方、あたし、すごく元気になった気がします。
 起き上がれます。」
と淑子は言った。その声が、若かった。

「お鏡を見てください。」と有香は、淑子に鏡を出した。
淑子は鏡を見た。
「まあ、これは、夢なの。きっと夢だわ。」淑子は言った。
「夢でも、いいじゃないですか。」
と修が顔を出して、淑子の髪とメイクを素早くやって消えた。
淑子の長い黒髪が復活していた。

一方、修に正装をしてもらった洋二も、驚いていた。
「昔の私です。妻に出会った頃の私です。こんな奇跡が起こるのですか。」
洋二は言った。
「はい、たまには、奇跡だって起こります。」修はにこりとした。

式の準備は進んだ。
教会には、数少ない親戚がいた。
神父が登場し、その横に、洋二がいた。
やがて、新婦が来る。

「新婦の入場です。」と声がかかった。
同時に、ウェディングの音楽がなった。
バージンロードにブーケを持った淑子が姿を見せた。

「淑子・・。」洋二は目を見張った。
初めて会ったときの美しい淑子のままに、その淑子が自分で歩いて来る。
美しい姿だった。
そして、最高のウエディング・ドレスだった。

呼ばれた親族も、みんな感激して涙を流していた。
淑子は、二人の子供に、ウェディングベールの端をもたれ、
ゆっくり歩いてくる。
洋二は、顔中涙でいっぱいにしていた。

淑子は、洋二を見て、にっこり笑った。
やがて、二人は、牧師の誓いの言葉を聞き、
「はい。」と一人ずつ答えた。
指輪の交換をした。
口づけのためにベールを上げ、見つめ合ったとき、
淑子は、ほほ笑みながら、頬に幾筋もの涙を流した。
やがて、口づけが交わされた。

外から窓越しに見ていた遠藤は、感涙にまみれていた。
『よかった、よかった、よかった。』
と心でくり返し、その内、声を上げて泣いた。

修と有香は、教会の入り口で見守っていた。
「お二人とも、若くなった分、長く生きられないの?」と有香が聞いた。
「うん。寿命は変えられない。でも、寿命の終わる最後まで、
 二人は、若い姿でいられるよ。健康な体で、1泊の旅行ができる。」
「よかった。」有香が言った。

5日が過ぎた。
有香がいるときに、修のところへ大倉洋二が訪ねて来た。
「淑子は、3日前に亡くなり、葬儀も無事終わりました。
 そこで、お礼に参りました。
 淑子と私は、あの結婚式と、1泊の旅行で、
 結婚生活のフィナーレを、若いまま、この上なく幸せな気持ちで、
 終えることができました。
 二人で、初めての愛を交わすこともできました。
 最後が幸せなら、その一生が全て幸せなものに思えると聞きました。
 ありがとうございました。
 淑子は、喜びいっぱいに他界しました。」

「ほんの少しでも、お役に立てたのなら、こんなにうれしいことはありません。」
修は言った。
「神様の贈り物と等しい贈り物をいただきました。」と洋二は言った。

「それで、あの、衣装とメイクその他の経費をご請求ください。
 おいくらであっても、お支払いたします。」
「それでは、3万円いただきます。」修は言った。
洋二は300万円を用意していた。
「それは、桁が違います。本当の経費をおっしゃってください。」
「奥様のウエディング・ドレスについては、奥様のご依頼です。
 他界された方へは、請求することができません。
 ですから、私が請求できるのは、新郎の服だけです。
 ウエディング・ドレスが主役でしたので、新郎の服は、
 実は、やや手抜きをさせていただきました。
 ですから、3万円は、正直な値段です。」

洋二は、惚れ惚れと修を見た。
「あなたは、なんと欲のない。
 わざわざ、私の家に見えて、淑子から「お願いします。」の言葉を
 聞かれたのは、ドレスの代金を無くするためだったのですね。」
「いえ違います。あれは、ご本人が本当にドレスを希望されているかを、
確かめるためでした。
 奥様の強い願いがなければ、あのドレスは、作れなかったのです。」

「わかりました。では、3万円をお支払いいたします。
あなたのご厚意は、一生忘れません。
 では、高杉様と、そちらのお嬢様と、本当にありがとうございました。」
洋二は、深々と頭を下げて、出て行った。

「そうだったんだ。だから、淑子さんの『お願いします。』を、
 聞きに行ったんですね。修さん、ステキ。」と有香が言って来た。
「違うよ。淑子さんのドレスを着たいという強い気持ちがあって初めて、
 ぼくの念が完成したんだ。淑子さんは、洋二さんに、ウエディングドレスを、
 どんなことがあっても見せたいと、強く強く思ってらしたんだよ。」
「そうか、愛があの奇跡を起こしたのね。」
「そういうこと。じゃあ、ぼく達も、上に行って、ニャンニャンしよう。」
「わあ、男性と!ちゃんと指圧してくださいね。」
「何倍も、強力なのしてあげるよ。」
「キャー!」

遠藤は、美容室の外壁にもたれながら、考えた。
「これで、美しい一つの物語のおわり。
 大杉修は、美容の考え方が違うと、あの大畠賢三は言った。
 その通りだよ。次元が全く違う。
 金儲け主義なんて、とんでもない。自分が損してるよ。
 どうしよう。大森ディレクターには。
あんなディレクターには、もったいなくて聞かせたくない話だ。
まあ、いいか。適当に言っておこう。

遠藤は、立って、ヤキトリでも食べに行こうと、
駅への道を歩いて行った。


<おわり>

■次回予告■

カリスマ美容師チャンピオン大会に、
修・有香コンビで出ることになります。
4話からなる、最終エピソードです。


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上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
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