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再投稿「春果を包むやさしいクラス」全編

ある方が、私の過去の作品をずっと読んでくださっていて、
その方のおかげで、私も、過去の作品を見るようになりました。
その中で、こんなお話も書いていたのかあ…と思った作品があり、
再投稿いたします。

1話から3話まで、全編を一挙に投稿します。
読んでくださると、うれしいです。

============================

(このお話には、意地悪な人は一切出てきません。
安心してお読みいただけます。)


泉が丘中学校は、各学年1クラスしかない、小さな学校だった。
坂田晴美(男子)は、中学1年。
子供のときから、女装の趣味があった。
学校でも、ときどき女の子の真似をして、みんなを笑わせた。
背は低くて前から3番目。
髪の毛を伸ばして可愛い顔をしていたので、女の子に見えた。
成績はよくて、学年=クラス45人中でいつも1番を取っていた。
運動も好きで、昼休みは、必ず友達とサッカーをしていた。

そのクラスに、六月に転校生が来た。
たった1クラスしかない学年なので、
転校生が来ることは、大事件だった。
みんな、どんな子が来るか、心から楽しみにしていた。

朝、先生の後についてきたその転校生は、
顔立ちが女の子のようだった。
女の子なら、さぞ可愛いだろうと思われた。
長髪にしていて、髪がさらさらとしている。
顔立ちだけではなく、何となく身のこなしが女の子っぽい。
背は、高い方だった。

先生が紹介して、その子立原春果(男の子)は、挨拶をした。
「立原春果です。女の子みたいな名前ですが、男です。
 どうか、よろしくお願いします。」
そういう、春果の声は、変声期は過ぎたと思われるのに、
女の子のような声だった。
みんなが、拍手をした。
そのとき、春果は、特別温かい眼差しで、
自分を見ている生徒の存在を感じていた。

立原春果は、本当に女の子のようだったのである。
座っている姿勢がよく、動作、仕草の一つ一つが、女の子なのだった。

初めは男子達が、昼休みに、サッカーに誘った。
春果はついていったが、行くだけで、自分は、そばの木にもたれて見ていた。
「見てるだけじゃ、つまんねえだろう。やろうぜ。」
とAが声をかけたが、いえいえと手をふって、辞退していた。
そのときも、春果は、自分を温かく見ている眼差しをどこかに感じた。

男子は、3日、昼休みに春果を誘ったが、春果はいつも見ているだけだったので、
悪いと思って、もう誘わなくなった。

それから、昼休みや、中休み、春果は、いつも教室に残って、
本を読んだり、絵を描いていたりした。
そのとき、春果は、温かい眼差しの本人が分かった。
一人いる教室に、髪の長い女の子のような男子が、同じように教室にいた。
その子は、春果と目が合うと、にこっと笑った。

春果のそばに、
ときどき女の子が、集まり、絵を見て、
「うまーい。」
などと騒いだりすることがあった。
しかし、春果は無口で、にこっとするだけだった。

そのころから、男子、女子が集まり、
「春果、女の子説」というのがささやかれた。

みんながあつまり、小声で、言い合っていた。
「春果は、訳があってさ、女の子なんだけど男の格好してるんだよ。」
「なんのために?」
「それは、わからねえ。だって、春果はどう見ても女の子だぜ。」
「トイレも、立ってしてるのみたことねえ。
 必ず、個室入る。」
「え?そうなの。でも、春果まだ胸出てないわよ。」
「お前だって出てねえじゃん。」
「ま、失礼ねえ。」
「あは、ごめんごめん。」

「春果の仕草とか、動作は、完全に女だよな。」
「それは、同感。」
「春果の声は、変性期前の少年の声じゃない。
 お前らと同じ、変性期後の女の声だ。」
「するどいな、その分析は。」
「そんな、感じがする。」
「だから、春果は、ほとんどしゃべらないのよ。声で、女ってバレる。」
「そうかあ、そうに決まってる。」

「ズボンだって、男のふくらみがないと思わねえか。」
「そうだ。体育のジャージも、女の子みたいに、あそこが膨らんでねえ。」
「あたし、字も見たの。春果の字は、女の子文字だよ。」
「可哀相にな。何か事情があってさ、女の姿ができねんだ。」
「これからさ。春果は女の子だと思って、無理させるのはなしだ。」
「言葉に、気をつけろよ。傷つけるような言葉は、なしだ。」
「わかった。」
みんながうなずいた。

(春果は、いつも自分の男の証がいやで、それを股の後ろに回し、
 きつめのショーツを履き、その上からトランクスを履いていた。
 だから、ジャージを履いても、女の子のように見えたのだった。)

ここで話したことは、クラスの春果以外の全生徒に密かに伝えられた。

こんなふうに、泉が丘中1年の45人は、男女とも、
希に見るような、やさしい生徒の集まりだったのである。

掃除当番で、春果が重たい水の入ったバケツを運んでいるとき、
力持ちの男子が来て、
「俺が持つ。」
と言って、すっと春果のバケツをもっていく。

黒板消しを、はたいていて、
制服が粉だらけになっているとき、
「オレに任せろ。」と言って男子が代わってくれる。

女の子達は、自然に「春果」と呼び捨てにする。

ある昼休みのこと。
一人でいる春果のそばに5人の女子が来て、
「あたしたち、今、好きな男の子を、絶対内緒で、言い合ってたの。」
「久美子はさ、森泉くん。瑠奈は、大川君。」
 みんなその度、キャーキャー言っていた。
紗枝が好きな男子を、みんなに教えた。
「きゃー、ほんと!うそー。」などと言っている。

「じゃあ、次、春果よ。」とB子がさりげなく言う。
「あたし?」と春果は、両手で自分の胸に手を当てた。
そのとき、女子達は、バチバチっと目を合わせた。
『春果が、自分のこと「あたし」って言った。』
『やっぱり女の子。証拠をつかんだ。』
目のバチバチは、その意味だった。
だが、5人は、何食わぬ顔である。

「そう、春果も言うの。」
「うーんとね、あたしは、坂田晴美君」と春果は言った。
「おおおお。」と5人は言い、
「まだ、なんとなくよ。話ししたこともないし。」と春果は言った。

「どうして、坂田なの。そりゃ、アイツ可愛いけど、とっぽいよ。」
「あたし、女の子みたいな男の子、なんとなく好きなの。」と春果。

春果は、自分が、「あたし」と自分を呼んでいることに、少しも気がついてなかった。
それに、これは、女の子同士の話であることも気がついてなかった。

「うん、坂田は、女の子みたいではあるね。」

そんな風に、春果は、その休み時間、
5人の女の子たちと、ガールズ・トークをしてしまったのだ。
5人は、何事もなかったように、
「じゃあ、またね。」と解散した。

その後で、春果は気がついた。
あのとき、自分の心は、完全に女の子になっていて、
自分をつい「あたし」と言ってしまったこと。
好きな男の子まで、言ってしまったこと。
気がついて恥ずかしくなり、うつむいて真っ赤になっていた。

自分を「あたし」と呼ぶ男子を、あの人達はどう思っただろう。
でも、その5人が後で、からかいにきたり、
男子に言いふらしたりすることは、なかった。

『ひょっとして、ここは、ものすごくいいクラスなんじゃないだろうか。』
と、春果は思った。

つづく(次は、「神様がくれたクラス」)

==========(ここまで、第1話)====

その日の帰り道、春果は、ガールズトークが出来た喜びで、
久しぶりに、るんるんした気持ちで、家に向かっていた。
そこを、ポンと春果の肩を叩いた人がいる。
見ると、坂田晴美だった。
「いっしょに帰ろう。」と晴美は、さも、自然に言う。
「う、うん。」
春果は、坂田晴美が好きだと言ったことが、知られたのかと思った。
男子なのに、男子が好きだなんて。

「坂田君、あたしの言ったこと聞いた?」
春果は、また「あたし」と言ってしまったことに気がついた。
楽しかったガールズ・トークの気分に浸っていたからだ。
晴美は、春果の「あたし」を少しも気に留めなかった。
「春果ちゃんが、ぼくのこと何か言ったの。」
「ううん。なんでもない。忘れて。」
「今日、ボクの家に遊びに来ない?」
と晴美はいった。

そうか、男同士として、気軽に誘ってくれたのだと思った。
しかし、春果は、人の家にいくのは苦手だった。

「あの、ぼく、人の家行くの苦手だから、ぼくの家に来て。」春果は言った。
「いいの?すごくうれしい。ぼく、春果ちゃん、好きだもの。」
と晴美は、天真爛漫に言った。
「その、好きって、どういう意味で?いろいろあるでしょ。」
「愛してるってこと。アイ・ラブ・ユウのラブ。」
晴美は、平気な顔で言う。
春果は赤くなった。自分は、一応男子なのに、複雑な気持ちがした。

春果の家は、2階建ての新しい家だった。
春果の後に入っていくと、お母さんが目を丸くして、
「あら、春果、もうお友達ができたの?」と喜んだ。
「坂田晴美です。晴美だけど、男子です。」
と晴美は言って、お母さんを笑わせた。

春果のお母さんは、春果に似て、とても美人だった。
奥がアトリエになっているらしくて、
お父さんがいた。
晴美は、アトリエに入っていき、お父さんにも挨拶した。
「やあ、いらっしゃい。」とお父さんは言った。
お父さんは、デザイナー風で、長髪で若若しかった。

春果の部屋に入った。
8畳くらいの洋間だった。
晴美が思った通り、女の子のファンシーな部屋だった。
「あの、坂田くん。まるで女の子の部屋だと思った?」
と、春果は聞いた。

「うん。思った。でも、ぼくもこういう部屋好きだよ。」と晴美は言った。
春果は、晴美なら分かってくれるという気がしていた。
とても不思議だ。晴美は、何もかもわかっているように思えた。
「坂田君。あのね。ぼく、家に帰ったら女の子の服着るの。
 笑わないでくれる。」
どうして?と晴美は言わなかった。
「うん。笑わないよ。」
「着替えたいから、後ろ向いていてくれる。」
春果は、言った。
「いいよ。」と晴美は、2分くらいまった。
「いいわ。」と春果の声がした。

振り向いて見ると、赤いワンピースを着た春果がいた。
春果は、ショートの髪の耳を出していた。
それが、ものすごく可愛かった。
春果は照れていた。
「春果ちゃん、可愛いっていうより美形だね。すごい美人。」
晴美はうれしそうに言った。
「今からぼく、女の子みたいにしてもいい?」と春果は言った。
「うん、いいよ。その方が似合うよ。」と晴美。
「自分のこと、あたしって呼んでも笑わない?」
「笑わないよ。」
「女言葉使っても、変だと思わない?」
「思わないよ。」晴美は、迷いもなくそう言った。

春果は、晴美の前で、どうしてこんなに自分が出せるのだろうかと思った。
自分の女の心が、晴美を好いているからだろうか。
春果は、晴美に、何でも受け入れてくれそうな、心の広さを感じていた。

二人で、ジュータンの上で、ベッドに持たれて並んで座った。
「あたし、帰り道、晴美君の前で、何度も『あたし』って言っちゃった。
 だけど、晴美君、なんとも言わなかった。
 今日も、女の子達とお話したの。
 あたし、つい何度も『あたし』って言っちゃったの。
 でも、それを笑う人いなかった。
 なんでだろう…。」

「あのクラスは、特別に、みんないい人なんだよ。これ、奇跡。
 それにね。クラスのみんな、春果ちゃんは、本当は女の子なのに、
 なにかの事情で、男子の制服着ているんだって思ってるの。
 今日の女の子達、春果ちゃんが、『あたし』って呼ぶたび、
 『女の子の証拠つかんだ!』って思って喜んでたんだよ。」
「え?じゃあ、晴美君、全部聞いていたの?」
「ううん、ちょっとだけ。通りがかりにね。」と晴美は答えた。

「そうか。だから、男の子たち、みんなやさしくしてくれたんだ。
 重いバケツもってくれたり、汚れる仕事代わってくれたり。
 女子もなんとなく、あたしを女の子と見てくれてたんだ。」

そのとき、ドアがノックされ、
春果の母佳子が、果物を持ってきた。
佳子は、春果のワンピース姿を見て、
「あら、もうわかってくれるお友達できたの?」と言った。
「うん。今度のクラス、みんないい人なの。」
春果が言うと、お母さんは、
「まあ、よかったわね。」と笑顔を浮かべて、晴美に会釈をしてさがっていった。

果物を食べながら、春果は言った。
「晴美くんも、みんなと同じに、あたしのこと女の子だと思ってるの?」
「ちがうよ。みんなと同じに思っていない。」
「どんな風に、思ってるの。」
「春果ちゃんは、男の子として生まれたけど、心は女の子。」
「そ、その通りなの。どうしてわかるの?」
「ぼくね、女の子の服着るの好きなんだよ。
 春果ちゃんとは少し違うけど。ぼくは、女装子。
 春果ちゃんは、GIDでしょう。」

「わあ、GIDなんて言葉知ってる人に初めてあった。
 晴美君は、始めから全部わかってくれていたのね。」
「うん。」と晴美は言った。

「あたしね。転校してきたそのときから、
 誰かの温かい眼差しを感じていたの。
 ピンチときは、いつでも助けてあげるっていう。
 外にいても、教室にいても、守られてる気がしてた。
 それ、やっぱり、晴美君だったのね。」

「うん。多分ぼくかな。
 だって、ぼく春果ちゃんのこと好きだっていったでしょう。」
「ありがとう。
 あたし、もうクリニックで診断も下りてるの。
 だから、女子の制服で行けるんだけど、
 そういうのわかってくれないクラスかも知れないでしょう。
 だから、始めは、男子の制服で行ったの。」
「そうだったんだ。
 ぼく達のクラスの人達、絶対わかってくれるよ。」
「うん。今は、安心してる。みんなすごくいい人達だもの。」

「今まで、辛い思いして来たでしょう。」と晴美は言った。
「いじめられて、3回も転校した。
 でも、どこでもいじめられたの。
 それはそうよね。男なのに、女みたいなんだもの。
 たくさんたくさん辛い思いした。」
そういうと、春果は、涙を流し、
膝小僧に乗せた腕に顔をうずめて泣いた。
「たくさん泣くといいよ。それしか、ないもの。」
晴美は言った。
「うん。」
そう言って、春果は、晴美の肩にすがりついて泣いた。
さめざめと泣いた。
晴美は春果の背中をそっと抱いた。
「もう、大丈夫だよ。
 春果の中学時代は、バラ色になるよ。
 あのクラスに来たことは、神様の贈り物だよ。」
「うん、うん。」とうなずきながら、春果は泣き続けた。


つづく(次は、「春果、女の子デビュー」最終回)

============ここまで、第2話====

翌日。
授業をまつ5分間のこと。
春果を囲む3人の男達が、大きい声で話しをしていて、
それが、下ネタになって来てしまった。
一人が、あわてて、「春果が聞いてるぞ!」とジェスチャーをして、
話を止めさそうとした。
一人が、そうか、という顔をして、わざとらしく、
「そういえば、今日は夕方雨になるらしいぞ。」
とまったく脈絡のない健全なことを言った。
春果は、そのごまかし方が、全く見え見えで、おかしく、
「ふ。」と噴いた。
それから、我慢できなくて、
「うふふふ、あはははは。」と大笑いをした。
みんなが、春果を見た。
みんなにとって、春果が笑ったのを見るのは、初めてだった。
春果は、そのとき、なぜか笑いが止まらなくて、
顔に手を当てて笑ったり、
机に腕を置いて、それに顔を伏せて笑ったりしていた。

やっと、春果が笑った。
クラスのみんなは、うれしかった。
何人かの男子は、春果の笑う顔が可愛くて、胸にぐっときてしまったりしていた。

春果は、机に置いた腕に顔を伏して笑ううち、その笑いを終えた。
そして、しばらく動かなかった。
春果は、ハンカチを取り出して、それを目に当て、今度は泣き出した。

みんなは、心配した。
周りの男子が、何か悪いことを言ったかと、あわてた。
「春果、俺達、なんか、悪いこと言ったか?」
と誰かが言った。
春果は首を横に振った。
春果は、ハンカチをとり、涙の目で言った。
「あたし、学校で、笑ったの、4年ぶりなの。
 ずっと、ずっといじめられてきたから。
 でも、このクラスの人はみんなすごく優しくて、
 あたし、毎日毎日、心の傷が治っていったの。
 そして、今、やっと笑えるようになった。
 みなさん、ありがとう。」
春果がそう言って、またハンカチを目に当てた。
女子の大勢が泣いていた。



その日、春果は、職員室へ、担任の山崎忠男を訪ねた。
山崎は、30歳の国語の先生だった。
春果は、女の子デビューをしようと思う気持ちを山崎に伝えた。
「大丈夫だと思うよ。あのクラスは、特別に理解のある子がそろってる。」
山崎はそう言った。

春果は、クリニックに相談するために、明日は休むと言った。
「じゃあ、明日、君のいないときに、みんなに君の説明をしておこう。」
と山崎は言った。
「よろしくお願いします。」
と春果は、言って、礼をして、職員室を後にした。

翌日、クラスの生徒たちは、担任山崎から、
性同一性障害の説明を聞いた。
「先生、それ、めちゃくちゃ大変なことじゃないですか。」
とある生徒が言った。
「そう、大変な障害だよ。みんな、朝起きたら、
 自分とは性の違う体になっていたらと考えると、それがわかるよね。」
と山崎は言った。
「春果さんは、今までずっとそれに耐えてきたんだ。
 おまけに、みんなにいじめられても来た。
 これ、2倍つらいことですよね。」
とある女子が言った。
「じゃあ、このクラスは3年間変わらないわけだから、
 3年間は、大丈夫だよ。俺達、今日理解したから。」
と別の生徒。
山崎が、
「特別なことはいらないよ。女の子として、普通に接してくれればいい。」
と言った。
「明日は、春果ちゃんの女の子デビューを祝って、
 1時間目は、お祝いをしよう。
 先生、いいですよね。一時間目、先生の授業だから。」
と誰かが言った。
「うん、かまわないよ。」と山崎は答えた。

春果は、クリニックで、主治医に女の子デビューをすると言った。
「今度のクラスは、いいみたいだね。」と先生。
「はい、みんないい人です。めったにないクラスだと思います。」
春果はそう答えた。

春果は、その日、美容院へ行って、
女らしいステキなショート・ヘアーにしてもらった。

翌日の朝。
春果は、夏服の女子の制服を着た。
白いブラウスに、チェックのスカート。ややミニ。
胸に、大きなリボン。

「春果は、初めて女の子になって、学校へ行くんだなあ。」
と父の健二が感慨深げに言った。
「うん、今度のクラスは、絶対大丈夫。」と春果は言った。
母の佳子は、学校へ付いて行くことになっていた。

学校へ、30分早く行くと、担任の山崎が、すでに靴箱のところで待っていた。
そのまま、山崎といっしょに校長室へ行った。
校長が、
「春果さんという名は、女性名でもあるし、名前を変える必要はありませんな。」
と言った。
「はい。女の子のような名前をつけてしまって、失敗だったかなと思いましたが、
 今になって、かえってよかったと思っています。」
そう母の佳子は言った。

そのうち、クラスの女子が一人、
「山崎先生、OKです。」と言いに来た。
「じゃあ、クラスに行きましょうか。」と山崎は言った。

佳子と3人で、教室に向かった。
教室への階段を上がったとき、
さっきの女生徒が、廊下に出ていて、
春果たちの姿を見ると、急いで教室に入った。

山崎が教室を開けた。
その後に春果が入ると、すごい声援と拍手があり、
頭の上から、紙吹雪が落ちてきた。
正面をみると、窓の端から端までの、大きな横断幕があり、
そこに、
『春果さん。女の子デビュー、おめでとう!』
と書かれてあった。

母の佳子は、中に入らず、廊下から見ていた。

春果は、感激して、泣いてしまいそうだった。

司会の女子が一人いて、
「これから、春果さんの女の子デビューのお祝いをします。
 では、江藤さん、お祝いの言葉をお願いします。」

江藤亜紀というクラスで一番しっかりした女子が立った。
春果は、山崎といっしょに、教壇の前に立っていた。

江藤亜紀は、紙を見ながら、お祝いの言葉を読み始めた。
「立原春果さん、女の子デビューおめでとうございます。
 私達は、昨日、山崎先生から、あなたのことを聞きました。
 春果さんが、生まれて今まで、どんな辛い思いをしてきたか、
 私達は、理解しました。
 春果さんの身になって考えてみて、私は、涙が止まりませんでした。
 女子のほとんどが泣いていました。

 春果さんは、ご自分の体のことだけでも辛い思いがあると思います。
 でも、クラスのみんなのことは安心してください。
 このクラスには、あなたを辛くするようなことをいう人はいません。
 もしいたら、私が、ハイキックをして、懲らしめます。
 (クラスちょっと笑い。)
 このことでは、完全に安心してください。

 心の性が女の子なら、その人は、女の子です。
 私達は、それを完全に理解しています。
 これから、春果さんに特別やさしくするというのではありません。
 ふつうに、自然に、同じクラスの仲間として接します。
 私達は、それを誓います。

 昨日、私達は、男子に人気投票をさせました。
 好きな女の子は誰か?
 小さな紙に無記名で、好きな女の子の名前を書かせました。

 その結果、私が、5票で2位でした。
 何を間違ったか、坂田晴美くんに2票入っていました。
 (クラス、かなり笑い。晴美自慢げに笑顔を振りまく。)

 そして、1位に輝いたのは、12票とった立原春果さんでした。
 春果さんは、モテます。(クラス笑い。)
 これから、女の子として、絶対の自信をもってくださいね。

 なお、横断幕は、昨日私達が、必死で作ったものです。
 これが、私達の春果さんに対するお祝いの気持ちです。

 春果さんの女の子デビュー、おめでとうございます。
 これで、お祝いの言葉を終わります。
  
                 江藤亜紀。」
大きな拍手が起こった。

春果は、涙ながらに聞いた。
心から、感激した。

廊下で、母の佳子は、ずっとハンカチを目に当てていた。

司会が、
「春果さん、お言葉がありますか。」
と言った。

春果は、目にハンカチを当てていた。
やがて、そのハンカチをとり、みんなの方を見た。

「みなさん、ありがとうございます。
 あたしは、学校で、こんな風に祝ってもらったこともないし、
 あんなに温かいお祝いの言葉をいただいたのも、初めてです。
 そして、あたしのために作ってくださった横断幕を、
 あたしは、一生忘れません。

 前、クラスで、大笑いをしてしまって、そのときも言いましたが、
 あたしは、小学校の3年生頃から、学校で泣くことはあっても、
 笑うことはありませんでした。
 自分は、このまま一生笑わない子になるのかなあと思っていました。
 それが、このクラスに来て、1ヶ月もたたないのに、
 笑えるようになりました。

 このクラスのある人が、私に言ってくれました。
 「このクラスは、春果への、神様の贈り物だよ。」って。
 私は、心からそう思いました。
 今まで、たくさん悲しいことがありましたが、
 私は、この神様の贈り物の中で、元気で、明るく、
 よく笑う女の子になれたらうれしいです。

 みなさん、本当にありがとうございます。
 女の子としての春果をよろしくお願いします。」
そう言って、春果は頭を下げた。
みんなから、すごい拍手が起こった。

会は、それから、司会が変わって、
いろいろゲームを始めた。

山崎は、教室を出て、母の佳子に、
「後は、子供達のお楽しみ会ですから。」
と佳子を、玄関まで誘った。
佳子は、泣きはらしていた。
「いいクラスですね。
 わたし、代表の方の言葉を聞いて、
 涙が出てなりませんでした。
 本当に、神様の贈り物だと思います。」
佳子はそう言った。

「そうなんです。あれだけ優しい子がそろったクラスも珍しいです。
 1クラスだから、3年間同じメンバーです。
 春果さんは、これまでの心の痛手から、きっと回復なさると思います。」
「はい。ありがたいことです。」

階段を下りるまで、クラスからは楽しげな笑い声が聞こえていた。

生徒の靴箱に、明るい光が差し込んでいた。
佳子は、学校がこんなに明るいところだと初めて思った。
きちんとそろって並んでいる靴の一つ一つを、
佳子は、幸せな気持ちで眺めた。


<おわり>
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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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