星野ヶ丘高校野球部<第2部>「決勝戦終わる」⑤最終回・後編

<第5話> 「地区予選決勝戦終わる」最終回・後編


県代表を賭けた決勝である。
1塁側、星野ヶ丘高校。
3塁側、霞台高校。
15000人収容の県営球場は、満員だった。

3塁側応援席は、即席の応援団と、即席のチア。そして、ブラス。
霞台が勝ち進み、準々決勝となったとき、学校は慌てた。
甲子園に行けるかも知れないのに、応援団もチアガールもいない。
そこで、運動系の部の男子で、応援団を作り、
女子でチアを作り、吹奏楽部に演奏を頼んだ。
チアガール達の服装が間に合わず、彼女たちは、夏の学校制服で、
ぼんぼんを持ってきた。だが、それが、かえって高校生らしく、
好感を呼んだ。

地区予選でも決勝ともなると、広域にテレビ放送された。
アナも解説者もありである。

アナ「去年は全く無名であった霞台高校の躍進劇は、素晴らしいものですね。」
解説「ええ、これには、美談がありましてね。
   予選1回戦敗退を続けてきた霞台の大木監督は、
   2軍でもいい、試合をしたいと、星野ヶ丘に申し込んだんですよ。
   それを、星野ヶ丘高校は、レギュラーで応じました。
   そのとき、主将の小林君は、わざわざ駅まで、迎えに行き、
   道案内をしたそうです。」
アナ「主将がですか。」
解説「そうです。そして、試合の後交流をして、霞台の高山君の球を
   全て捕れずに、悩んでいた木村君に、星野ヶ丘で合同練習をしないかと
   持ち掛けました。
   そこで、木村君は、特訓を受け、見事高山君の剛速球を捕れるようになりました。
   こうして、名キャッチャー木村君の今があるわけなんです。」
アナ「それは、いいお話ですね。
   では、両校は、友情で結ばれているのですね。」
解説「両校は、今、お互い感無量でいることでしょう。」

解説者の言う通り、星野ヶ丘、霞台の両校のスタメンは、
バッターボックスから、横に向かい合い、
お互いを見合って、感無量の思いでいた。

礼をして、それぞれのベンチに行ったとき、
応援団と吹奏楽の応援が、高らかに響いた。

攻撃は、星野ヶ丘から。
1番、菅原が出た。
このとき、星野ヶ丘と霞台の応援の音がピタリと止んだ。
両校とも話し合って、プレイ中の応援は止めにしたのだ。

アナ「これは。両校約束していたのでしょうか。」
解説「そうでしょうね。応援団もプレイを見たいし、
   選手も集中できます。こういうのもいいですね。」

高山、第1球。木村は、内角低目140キロのサイン。
球は、投げられた。
カチーンとバットの音。
しかし、内野安打。
がっちり霞台に捕られて、ファーストでアウト。

菅原は、首を傾げて帰って来た。
2番の上野は、「どうだ?」と聞いた。
「球が、えらく重い。ヒットは、むずかしいぞ。」
菅原は言った。
次の上野も、ホームラン級の当たりを見せたが、
一歩届かず、レフトに捕られた。

菅原は、ベンチでみんなに言った。

「小林、わかるか?」と川村が言った。
「ほんとだったら、すごいことだけど、
 ボールの回転を半分に抑えてる。
 それでいて、フォークのように、すとんと落ちない。」
小林が言った。
「うへー。それたまんねーな。」と川村。
「倉田コーチ、どう見ます。」吉川が聞いた。
「小林君の言う通りです。回転が半分です。正確には、3分の2です。」洋子は言った。

回転の少ないボールは重い。
高山は、血の出る様な努力をして、決勝に間に合わせた。

星野ヶ丘の選手は、強打者の集まりだったが、
打球が1歩伸びず、すべてアウトに捕られていた。

チェンジ。
小林はさすがに、霞台の小振りの打者を、変化球ですべて抑えた。

5回の表である。両校0対0。
「ここは、杉山、新田で行くしかないな。」
監督は、ベンチを出て、まず、選手交代で、代打杉山を出した。
「杉山、お前しかいない。何が何でも塁に出てくれ。」
監督は言った。
杉山にとって、「お前しかいない。」と言われたのは初めてだった。
杉山は、うれしかった。
「はい。塁に出て見せます!」と声を弾ませた。

杉山は、バッターボックスに立った。
木村は思案した。
どんなスピードボールも、杉山はバントする。
高山は、まだ未完成であったが、木村は、フォークのサインを出した。
高山は、うなずいて、振りかぶった。
杉山はバントの構え。

140クラスのボールが来た。
「落ちる。」杉山は思った。
落ちた。
杉山は、顔を地面につける程にかがみ、
ボールにバットを当てた。
ボールは、3塁線にうまく転がった。
左利きの杉山が、猛ダッシュして、
霞台の十八番であるヘッドスライディングをした。

3塁がボールを捕ったが、間に合わず、セーフとなった。
うおおおおと応援団が、声を上げ、会場は総立ちになった。

「やったな。よし、もう一発だ。」
監督は、ベンチを出て、選手交代を告げた。
代打、新田。
なんとバント専門の選手の2段構えだ。
そして、次は、4番の強打者、山崎だ。
2番3番に変えての杉山、新田の代打だった。

「新田。杉山をセカンドに行かせてくれ。
 そして、新田もセーフを狙え。」
吉川は、言った。
新田はうれしかった。
何がなんでも、バントを成功させたかった。

新田がバッターボックスに入った。
すでに、バントの構え。
二人の代打に、木村も思案していた。
フォークでも打たれた。
小林のボールに慣れている限り、160のボールでも、当てられる。
ただ、160なら、ボールが強く跳ね返る。
それに賭けるしかない。
木村は、高山に、今試合初めての160のサインを出した。
高山がうなずいた。

「倉田コーチ、何で来ると思います。」
「初めての160が来ます。
 問題は、新田君が、スピードを殺せるかです。
 でも、高山君のボールは重い。これが、新田君を有利にします。」
洋子は言った。
『新田、頼むぞ。』ベンチのみんなは祈った。

高山の唸るようなボールが来た。
『ボールを、吸い込むように打つんだ。』
新田は、自分に言い聞かせた。
新田も左利きだ。
コン。
新田はボールを当てた。
1塁線にボールは転がった。
キャッチャー木村が追いかけたが、ボールは微妙に速い。
やっと拾い、1塁に送球。
新田が、飛び込んだ。
間一髪、「セーフ」の声。
その間、杉山は2塁へ。
ノーアウト1、2塁だ。

星野ヶ丘の応援席は、声援が沸騰した。
やったー。
新田は、目を潤ませた。ベンチを見た。
チームのみんなが、飛び上がらんばかりに、ガッツポーズを送っていた。

次は、4番山崎だ。
「山崎。バットを短く持て。
 あくまで、コースをついて、強烈なゴロだ。高山のボールに負けるな。」
吉川は言った。
「はい。命がけでやります。」
山崎が言った。

アナ「星野ヶ丘は、この5回が山と見ていますね。」
解説「2番、3番を引っ込めてのバントです。
   霞台から1点を取るのがどのくらい難しいかわかっているのでしょう。」
アナ「山崎君の敬遠は、ありますか。」
解説「さあ。私が、監督なら高山君のためにも、勝負ですね。」

洋子「監督、木村君、勝負に来ますか?」
監督「勝負さ。うちは山崎の他にも、強打者がずらりといる。
   一人でも片付けておきたい。」

小林「川村、初球は何だ?」
川村「お前に出すならフォークだ。」
小林「高山に出すなら何だ。」
川村「高山のボールは重い。内角低め130のボールだ。
   うまく行けば、ぼてぼてのゴロで、ゲッツーだ。」
小林「なるほどな。」

山崎がバッターボックスに入った。
バットを短く構えている。
木村は、内角低め、遅いボールとサインを出した。
高山は、一度でうなずいた。

山崎は、初球にすべてを賭けていた。
高山が投げた。
内角低めに来た。
「これだ!」
山崎は、目を開いた。
カーンといい音がした。
ボールは、ライト線に低く飛び、ワンバウンドをした。
杉山と新田は走った。
3塁側ベースコーチが、腕を振り回していた。
杉山は、3塁を蹴り、ホームへ向かった。
ボールが帰って来たが、楽々とホームを踏んだ。
新田は3塁。山崎は1塁に止まった。

すごい声援と、ブラスの音がしていた。

杉山は、涙を浮かべながら、ベンチに戻ってきた。
みんなが、杉山をもみくちゃにした。
「杉山、ご苦労。やはりお前を出したのは、正解だったな。」
吉川がうれしそうに言った。
「はい、うれしいです。」
杉山は涙を拭いた。

この回は、この1点だった。
あとの3人は、木村、高山に打ち取られた。
だが、帰って来た新田と山崎も、みんなから祝福された。
「新田、ホームは踏めなかったが、最高のバントだった。
 山崎は、さすがだな。ふつう、あのラインは打てない。」
吉川は、2人にも、ねぎらった。

5回にとった星野ヶ丘の1点は重かった。
両チーム、ピッチャーのよさに、どうしても点が取れない。
そのまま、9回の裏、霞台となった。
両校の応援は、最高潮になった。
打順は、5番高山から、7番に木村がいた。

高山は、バッターボックスで、1万5千人の観客を眺めた。
気持ちが、とても静かになった。
幸せだった。

高山は、小林のフォークに打ち取られた。
次に6番の小川が出た。
小川も、三振に打ち取られた。
ツーアウト。
打てなければ最後の打者となる。
木村は、バッターボックスに入った。
これだけの人が応援してくれる大会に出られた。
今まで、辛かったことが蘇ってきた。
それよりも、うれしかったときのことが、思われた。
初めて、高山のボールを何でも捕れるようになったとき。
大木監督の優しい励まし。

木村は、ふいに涙をこぼした。
拭いても拭いても後から出て来る。
『これでは、前が見えない・・。』
涙で、景色がゆがむ中、バットを構えた。
3回振り、試合終了の声を聞いた。

バッターボックスの前に整列した。
「礼!」
これで終わりだ。

小林と高山は握手した。
「来年、俺はいない。高山君のライバルを育てておくよ。」
「うれしいです。いろいろありがとうございました。」
川村と木村も握手した。
「木村君の采配、最高だったよ。」と川村。
「すべて川村さんのおかげです。」
「君の努力さ。」
二人は笑った。

応援席の前に並び、お礼の言葉を言い、礼をした。
すごい、拍手をもらった。

「倉田コーチ、来年もいてくれるんでしょう。」と吉川監督。
「来年のことより、本大会が、先ですよ。
 全学校のデータ、もうここに入ってますからね。」
洋子は、そう言って頭を指さした。
「いつもながら、頼もしいですな。」と吉川は笑った。

安藤が顔を出した。
「いい試合でしたね。」
「安藤先生も水臭い。ベンチ登録しましたものを。」と吉川。
「安藤先生は、忍者のごとく試合をご覧になるのが、お好きですから。」
「それほどでも、ありませんよ。」
3人は、あははと笑った。

霞台の選手が、全員こちらに走って来た。
「おかげさまで、こんな大きな試合に出ることができました。
 星野ヶ丘さんからいただいた精神は、一生忘れません。」
大木監督が言った。
「また、来年があります。お互い、がんばりましょう。」
吉川は言った。



甲子園本大会で、星野ヶ丘は初の優勝を遂げた。
試合後の記者会見で、小林は聞かれた。
「これまでで、一番苦しかった試合は、どの試合ですか。」
小林は、ためらわず言った。
「地区予選の決勝で戦った、霞台高校です。」

それを、学校の教室で、みんなで見ていた霞台の野球部は、
「やっほー!」と飛び上がった。

<おわり>

■次回予告■

最終回を書いて、力尽きました。
まだ、アイデアがありません。
何か浮かびましたら、書きます。
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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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