うつけの雪姫<第8話> 御前試合2

すいません。母の容体が悪く、新作を書けませんでした。
そこで、もう1話、うつけ姫のクライマックスを再投稿します。

<あらすじ>
元服をあと5日にひかえた御前試合。雪姫こと藤之雪之丸は、若の姿で臨みます。
師である伊勢之守三郎と相談し、優勝のあかつきには、父母に名乗りを上げようと思っています。
身を隠すため、名を伏野吉之丸と変え、試合は、準決勝に至ります。
残り2人、相手は、勝つためには手段を選ばぬ不和史郎、
そして、宮本武蔵を彷彿とさせる大男。上段からの1打ですべて相手を下して来た太田新兵衛。
さて、次の相手は、不和史郎です。

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<第8話> 「御前試合 2」


会場には、負けた剣士も多く残って試合を見ていた。
皆、圧倒的強さの太田新兵衛が、卑怯千万な不和史郎を
どうやつけるかを見たかったのである。

吉之丸、不破の名前が呼ばれた。

「伊勢、清らなる美剣士を不和に当てるのは、胸が痛むの。」
と殿が言った。
「なんのなんの、美剣士が一枚上手でございましょう。」
と伊勢が言う。
「なんと、なぜじゃ。」
「美剣士は、忍術を極めております。」
「なぜわかる。」
「歩き方一つでわかりまする。
 忍法とは、相手の裏をかく、言わば「卑怯なる技の集大成」、
 不破の「卑怯」がどこまで通じるか、見ものでございます。」
伊勢之守は、そう言って、にこりと笑った。

審判一馬の両側に、雪之丸と不和が見合った。
双方無手である。
『女のような軟弱者。お前は汚れた攻撃を知らぬ。
 実践の怖さを思い知らせてやる。』
不破は、心でニヤリとしていた。

礼をした。
そのとき、「はじめ!」の声も聞かず、
不破が、右手の2本の指を立てて、雪之丸の両目に、
「キエーイ!」と目突きをしに突進した。
『これは、おとりだ!次をかわせるか!』不破は、心で言った。
雪之丸は、やって来る二本指の次に、第2段、左手の2本指を見た。

雪之丸は、不破の右手の人差し指を握り、
次に来る左手の人差し指も握って、
後方に、巴投げのような形で、体を倒した。
そして、不和のみぞおちを蹴り、後ろに投げた。
不破が投げられ、地面に落ちる寸前、雪之丸は体を起こして、
握っている不破の人差し指を、両方折った。

会場から、「おおおお・・。」という声がもれた。

立った不破は、さすが円明流、みぞおちの蹴り、指の負傷を微塵も顔に出さなかった。

『おのれ、俺の蹴りをどう受ける!』
不破が勢いを付けて、すごい足蹴りに来た。
雪之丸は、その足を両手でつかみ、プロペラのように体を回して、脚をひねった。
ビリビリと脚の筋が切れて行く音がした。

不破の片方の足が、すかさず、雪之介の背を狙ってやってきた。
雪之丸は、身をよけて、不破に、自分の足を蹴らせた。
そこで、また筋が裂ける。
雪之丸は、新たな不破の足をねじって、不破を反転させ、筋の半分をビリビリと裂いた。

立った不破は、さすがに、脚の負傷は隠せないでいた。
あと攻撃可能なのは、頭と歯、指を1本折られた両腕だけである。 

不破は、焦っていた。
こんな奴がいるのか。
俺の2段の目つきを、当たり前のように待っていた。
体術では、全て自分が遅れをとった。
自分の負傷に比べ、
まだ、一撃も与えていない。
ふと、里の1番なら、どう戦っただろうかと考えた。
自分に残るは、頭と歯と腕。

歯で食らい付けば、あいつなら、拳を口からのどの奥まで入れて来る。
すると、自分の舌は腫れ上がり、気道がふさがれ死ぬ。
頭突きに出れば、首を取り平気で折る奴だ。
『実践の怖さを教える』どころではない、こいつは、実践の裏の裏まで知っている。
なぜだ。
不破は、初めて雪之丸に恐怖を覚えた。

頭をやられる前に、「無空波」を出すしかない。
あいつは、「無空波」を知っているだろうか。
いや、知るわけがない。

不破は、突進して行った。
雪之丸の肩をつかむと、片方の足を雪之丸の足にかけ、
体重を雪之丸にかけ、そのまま倒した。
雪之丸は、不破が「無空波」の体制にもって来ていることが、
手に取るようにわかった。
(不破は、雪之丸の無抵抗に気がつくべきであった。)

仰向けの雪之丸にまたがって、
不破は、右拳を上げた。
『来る!』雪之丸は思った。

不破はこれで勝ちと思わずにやりとした。
にやりとしたのは、不覚である。
「これから行くぞ。」との合図を出したようなものだ。

不破の拳が、雪之丸の胸に向かい、胸に触れる、間一髪、
雪之丸は、不和の右手の袖をつかんで、
横に、「えいっ!」と引いた。

不破の拳は、袖を引かれ、地面に運ばれた。
(「無空波」は、途中で止められる技ではない。)
「無空波」が、地面に向かって炸裂した。
ボンと音がして、地面がくぼんだ。
しかし、ほとんどの衝撃波は、反射され、
不破の体を襲った。

不破は、一声うめき、気を失い、雪之丸の体の上に倒れ動かなくなった。
人差し指を骨折していたことが幸いして、
威力が落ちていたことが、不破の命を救った。

「伏野吉之丸殿の勝ち。」
という審判の声が聞こえた。



太田新兵衛は、準決勝の相手を、
いつもの上段からの一打でくだした。
左右に避けられぬほど、新兵衛の剣は速い。

そして、決勝は、太田新兵衛と伏野吉之丸となった。
誰も、思いもしなかった組み合わせである。
決勝だけは、3回戦行い、2戦先取である。

会場の臣下、腰元らは、自分の役目を忘れて、
決勝の成り行きを見ていた。

ほとんどの者は、太田新兵衛の勝ちを疑わなかった。
しかし、伏野吉之丸には、人を惹きつける愛すべきところがあり、
皆は、心で吉之丸を応援していた。

二人の名が呼ばれた。

二人は、礼をして、木刀を構えた。
この時、今まで上段の構え1本だった新兵衛が、正眼に構えたのである。
会場に、声が走った。
雪之丸も相手に合わせ正眼に構えた。

「伊勢、新兵衛の正眼をなんと見る?」と殿。
「速さでは、勝てぬと見たのでございます。
 剣の技で、最も早く相手に達するは『突き』。
 それがための正眼にございます。」と伊勢は言った。

二人は、見合った。それは両者美しい姿であった。
かなりの間見合ったときである、
新兵衛が、「ヤー!」と雪之丸の喉を狙って、真っ直ぐに突きに行った。
「速い!」
思いもよらぬ新兵衛の初太刀に、皆は目を見張った。
だが、雪之丸は、真っ直ぐにくる木刀を紙一重半身によけ、
自分の木刀を、真っ直ぐ横に、新兵衛の首に当てていた。
真剣なら、新兵衛の首は飛んでいる。

「伏野吉之丸殿の勝ち!」と一馬は判定した。

みんな、黙っておられずに、「うおおおおおお。」と雪之丸を讃えた。
初めて、新兵衛の太刀がかわされた。

第2戦。
新兵衛は、いつもの上段に構えた。

「上段にもどったぞ。」と殿。
「相打ちを覚悟の上段でございましょう。」と伊勢。

会場は、これで、吉之丸もおしまいかと、多くが思った。

「はじめ!」の合図。

両者は、ばーんと木刀を衝突させた。
今までは、新兵衛の相手は、これで、飛んでいた。
ところが、雪之丸は、がっしり新兵衛の振りおろしを受けたのである。

小柄で細身の雪之丸、片や大男の新兵衛である。
雪之丸が、耐えていることが不思議だった。
雪之丸は、新兵衛を相手に、木刀を交えたまま、一歩も退かないのである。

「伊勢、あの者は、真っ向に受けおったぞ。不利であろうものを。」と殿。
伊勢の守は、吉之丸を見て、うれしそうに、大きくうなずいた。
(伊勢之守は、ここで、吉之丸の正体を確信した。)

「吉之丸。見事なる心意気でございます。
 あの者は、己一人のために、戦こうてはおりませぬ。」
「誰のためじゃ。」と殿。
「いずれわかりましょう程に。」と伊勢は言った。

不思議はそれだけではなかった。
じりじりと、雪之丸が、新兵衛を押していくのだった。
新兵衛は、小柄な剣士を相手に、後ろに下がるは恥と思い、
その場で、とどまり、耐えていた。
だが、どうしても、雪之丸の力が強い。

それを見て、伊勢三郎は、涙した。
『若は、殿のため、奥方のため、家臣皆のために、
 一心に、出せない力を出しておられる・・。』

雪之丸は、さらに新兵衛を追い詰め、
とうとう、新兵衛の体が、後ろに反り、
雪之丸が、上から新兵衛を押す形になった。
そして、とうとう、新兵衛は、腰を落とし、
背中を地面につけて、もはやこれまで、「参ってござる。」と言った。

すごい歓声が上がった。
「うおーーーこれは、すごい、すごすぎまする、
 拙者、感動で涙が止まらぬ。」と泣き崩れる者もいた。

皆の興奮がやっと静まり、雪之丸は、殿の前に座った。
殿は言った。
「この度の、伏野吉之丸の剣は、誠に見事であった。
 変則ある技にも対応し、力ある剣を受け止め、
 最後には、大きな剣豪に力で勝つとは、あっぱれ見事であった。
 余の胸も、いまだ感動に震えておる。

 さて、当城の伊勢之守三郎の推挙とあったが、そちは、武者修行の身と聞く。
 どこか仕える城はないのか。」
殿は、そう聞いた。
「実は、当藤之城に籍を置きます者です。」雪之丸は言った。
「はて、それは、おかしや。
 当城に、そなたほどの剣客がいたとは、思い出されぬ。
 名を、もう一度聞かせてくれぬか。」

「はい、殿さま。実は、城の特別な援護を受けませぬようにと、偽りの名を申しました。
 真の名は、雪之丸。父上様、母上様。藤之雪之丸でございます。」
雪之丸は、目に涙をいっぱい溜めて言った。

殿の目に涙があふれた。
「雪之丸、雪之丸なのか?雪姫であった雪之丸なのか?」
「はい、父上様。母上様。」
殿は、うれしさに段を降り、雪之丸を抱きしめた。
「こんなにも立派な若になったのか。
 いままで、苦労をかけた。済まぬことをした。許せよ。」
奥の方も涙に暮れ、段を降りて、雪之丸を抱きしめた。
「雪之丸。今日ほど幸せな日はありません。」
と奥の方は言った。

周りの家来達は、首をかしげていたが、暗殺を防ぐため姫として育てられ、
今、若として復活された…という正確な情報が皆に伝わり、
家臣達は、待てずに、雪之丸に近づき、平伏した。

「若様、うれしゅうございます。」
「若様、これほどうれしいことはありませぬ。」
「若様、感無量でございます。」
「若様。」
と皆は、雪之丸を囲んだ。

雪之丸は、立って、皆の方を向いて言った。
「今まで、皆をあざむいているようで、申し訳なく思うていた。
 これからは、こうして『若』として生きて行くゆえ、
 どうか、雪姫のときのように、温かく迎えてくだされ。
 私が、今日、ここにあるのは、よき家臣である皆のお蔭じゃ。
 この雪之丸、礼を申す。」

雪之丸は、その後、小平太と権太を見つけ、にっこりうなずいて見せた。
二人はうれしくて、また涙が出そうであった。

天幕の中で、茜はぼーとしていた。
「では、私は、若様と、同じ部屋の中で、二人きりで、
4年もの間、おりましたのでしょうか。」
「そうじゃ。」と三郎は、にっこりと言った。
「ああ、どうしましょう。恥ずかしゅうございます。」
と茜は袖で顔を覆った。

姫の若としてのデビューということで、
大広間で、大宴会が行われた。

雪之丸元服の式が、5日後に迫っていた。
それが、若の婚約披露も兼ねることになるとは、
まだ、だれも知らぬことだった。


<第8話 おわり>
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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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