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ケーキ屋さんの由紀夫③「すべては、よい方向へ」最終回

この第5話と第6話で完結です。
長いお話しを読んでくださって、ありがとうございます。
次回は、がんばって新作を投稿しようと思います。
読んでくださるとうれしいです。

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第5話 「おかしな男の子登場」

午後6時、店のシャッターを閉めた。
隆志と由紀夫と裕美は、仕事場に座り込んでしまった。
「ああ、これ、うれしい疲れっていうんだなあ。」と隆志は言った。
「あたし、やっていて、うれしくてたまりませんでした。」と裕美が言った。
「行列ができたなんて、初めてだもん、うれしかったなあ。
 あたし、天国の母さんに見てもらいたかった。」と由紀夫が言った。
「ご覧になってるわよ。きっと。」裕美がいった。
「英理子ー!見てるか。みんなで元気にやってるぞー!」と隆志は叫んだ。

やがて、由紀夫が今日の売り上げを数えた。
「わあおー。」と言った。
「とうさん、裕美、先月の10日分の売り上げ、今日一日だけでいったよ。」
と由紀夫が言った。
わあーと二人が拍手をした。
「これ、なんだな。明日は、今日の半分のお客さんが来てくれるとして、由紀子一人じゃ無理だな。」
「うん、無理。」と由紀夫。
「じゃあ、この分だと、給料を払えるから、裕美ちゃん、できたら、毎日きてくれないかな?」
隆志は裕美にそう言った。

すると、裕美は、目にうるうると涙をためて、そのうち泣き出してしまった。
「どうしたの、裕美?」と由紀夫は裕美の肩を抱いた。
「あたし、あたし、ニートで、このままずっと世間に役立たずの子になるのかと思っていたから、
 お店の役に立ってるのかと思って、うれしい。こんなこと考えもしなかったから…。」
裕美は泣きながらそう言った。

「今、裕美がいなかったら、この店やっていけないよ。」由紀夫が言った。
「そうだよ。裕美ちゃんが来てから、この店流行りだしたんだよ。
 言わば、お店の天使みたいなもんだよ。」と隆志は言った。
それを聞いて、裕美はもっと泣きだした。
「うれしい、あたし、うれしい…。」
そう、くり返しながら。

*    *    *

「類は友を呼ぶ」とは、由紀夫があのとき言った言葉だった。
店は、順調に売り上げを伸ばし、毎日シャッターが開くのを待つ客が10人くらいいた。
車の駐車場も、近所の広いところに、10台分借りた。
ただ一つ、ケーキは売れるものの、パテシエの隆志の負担が限界に来ていた。

11月の半ば、シャッターを閉め、裕美がごミ袋をだしているとき、
一人の男の子がやってきた。
外は、もう暗かった。
「あの、お姉さん、この店の人でしょう。」と男の子は言う。
ジーンズにジャンパー、そして、ボストンバッグを提げている。
背は、163cmの裕美と同じくらいだった。
遠くからやって来た子…と裕美は見た。

「ええ、そうよ。」と裕美は言った。
「この店はさ、男でも女として働かせてくれるって聞いたんだけど。」
「え、どこでそんなこと聞いたの。」
「掲示板の2チャンネル。」
「あ、そう。ありえるわね。」と裕美は言った。
「おれ、ここで働きたいんだけど。」
「じゃあ、あなたは、男の子だけど、女の子として、店員をしたいの?」と裕美は聞いた。
見ると、ちょっと女の子っぽい可愛いところがある。
「ちがう。反対。おれ、女。で、ケーキ作りたい。どんな辛いことでもする。
 家出てきたから、もう帰れない。」
「そう、じゃあ、いっしょに中入って。」
裕美はその子を中に入れた。

「マスター、由紀子、変わった子が来たの。会ってあげて。」と裕美は叫んだ。
「夕食まだか聞いて。」と由紀夫が顔を出した。
「まだだって!あたしも食べさせて!」裕美は叫んだ。



裕美は、その子が来たので、みんなと夕食を取ることにした。

テーブルに4人が座った。今日は、す豚だった。

その子は、立って、神崎祐(ゆう)ですと頭を下げた。
「で、祐君は、女の子で、男としてケーキ作りたいんだね。ケーキは女でも作れるから、
 お店の中で男として接して欲しいってことかな。」と隆志は聞いた。
「あ、そうです。このお店は、そういうの気にしないお店だって調べました。」と祐。
「あの、ネットの2チャンネルってとこで、なんでもわかっちゃうんです。」と裕美は言った。

「祐君は、やる気はありそうだ。ちょうど、今手が足りなくて、困ってたし。でもなあ…。」
と隆志は、言葉をにごした。
「俺、経験ないけど、根性あります。男になること家で認めてくれなかったから、
 俺、ボストン下げて出てきちゃったし、もう行くところないんです。」と祐は言った。
「祐君、今住んでるところは?」と由紀夫は聞いた。
「公園で寝てました。だから、俺、におってるかもしれない。」と祐はくんくんと自分の匂いをかいだ。
「大丈夫、大丈夫。」と由紀夫は、にっこりと言った。
「このす豚、おいしいなあ。」と祐は言った。
「あたしが作ったの。」と由紀夫。
「うまいだろ。コイツ、料理うまいんだ。」と隆志。
裕美はどうなるかと、じっと見ていた。
祐に妙な好感をもって、内心応援していた。

隆志は言った。
「君が、女でも男として扱ってくれるという理由で、ここに来たなら、理由として足りない。
 君が、ここが自分を磨くのに一番だと思ったという理由ならわかる。君をやとってもいい。」
「すいません。俺、初めの理由で来ました。でも、今、こんな風に、おいしいお料理を、見ず知らずの俺に食べさせてくれて、こんなに温かくしれくれたこと、今までなかったから、いいところだなって、俺…。」
そう言うと祐は、涙をぽろぽろこぼして、それを腕で何回も拭いた。
祐は続けた。
「俺、死に物狂いで働きます。しろと言われたことは、なんでもします。
 倒れるまででも、働きます。
 ほんとは、俺、昨日来て、モンブランを買って食べたんです。
 俺の、最後のお金でした。そのケーキがおいしくて、俺もこんなおいしいケーキが作れるようになりたいって、思いました。どうか、俺を弟子にしてください。お願いします。」
祐は、立って泣きながら礼をした。

「よし、わかった。祐君、君を雇おう。」と隆志は言った。
「ほんとですか!ありがとうございます。」と祐は頭を下げた。
わあ~と、裕美が拍手した。
「あれ?裕美がなんで拍手するの。」と由紀夫がからかった。
「そ、それは、初めに会ったのあたしだから。」と裕美は少し赤くなった。

それから、しばらく、和やかに団欒した。
そのうち祐が、
「ここは、男でも、女の子として働いてる店って聞いたんですけど、あれ、ウソですね。」と言った。
隆志が、
「祐君。ここにいる4人の中で、生物学上、女子であるのは、君だけだ。
 だから、気をつけたまえ。」と言った。
「えー!」と祐は叫んだ。「じゃあ、裕美さんも由紀子さんも、生物学上、男子ですか!」
「そうよ。女は祐君だけ。危ない所へきたのよ。」と由紀夫。
「裕美さんだけは、女性でしょう。」と祐。
「『だけは』とは、なに?『だけは』とは。」と由紀夫はいたずらな目で見た。
「いや、その、初めに会った人だから。」と祐は赤くなった。
「そう言ってくれるとうれしい。でも、生物学上、男なの。」と裕美。
「ええ?じゃあ、俺、すごい所へ来ちゃったんすね。」と祐が言ったので、
みんなで笑った。


つづく


第6話「天からの宝物」最終回

祐は、更衣室にしか使ってない母の6畳を箪笥で半分にしきって、
そこに住み込みで働くことになった。

祐は、働き者だった。そして、気が利いた。
隆志が取って欲しいものを、素早く察して、「これですか。」と渡す。
そして、店が終わってからも、習ったことを気が済むまで練習した。
裕美は、一度家に帰って夕食を済ませた後、
毎晩、お結びを作って、自転車で店にやって来た。
「はい、これ。」と裕美はお結びを渡す。
「いつもありがとう。」と祐は、まるで眩しい人を見るように、裕美を見る。
裕美は、毎日のように、祐の練習のそばにいた。
そして、ときどき自分のパソコンを持ってきて、何かやっていた。

由紀夫は、そんな二人を微笑ましく見ていた。

「ああ、あれが、青春なのね。」などと嬉しそうに、つぶやいた。

由紀夫の夜は忙しい。
お店の制服と、父と祐の作業着を毎日必ず洗い、
アイロンをかける。
同じ制服は2日着ないので、なかなか大変だ。
クリーニングに出せばいいが、例え100円でも節約した。

それから、由紀夫は、今日の売り上げ等をパソコンに入力する。
どのケーキがどのくらい売れているか、1日のどの時間に売れているか、
季節によって、どのケーキが売れているかなど、
すべて、一瞬にしてわかるように、関数を組んで、システムを作った。

裕美は裕美で、素晴らしいことをやった。
ニートのときに研究した腕で、「シャロン」のホームページを作った。

ある朝、裕美は喜喜としてやってきて、
「ね、ね、見てください。」と言って、店のパソコンに、「シャロン」と入力して検索した。
美しいホームページが現れた。
店の売り物のモンブランとイチゴタルトが、説明入りで入っていた。
それから、商品のカタログ。
店の地図、アクセス、必要なことがみんな書かれてあった。
「おお、すごい!」
と三人はいった。
「あたし、これ、クリスマスに向けて、パソコン上で予約注文できるようにしたいんです。
 そうすれば、お客さんは、わざわざ行くより、パソコンで注文できるシャロンにしよう…なんてことになりません?」
「おうおう。裕美ちゃんは、だてにニートやってたんじゃないんだなあ。」
と隆志は大喜びだった。
「裕美、これ大大大殊勲よ。でかした裕美!」と由紀夫が誉めちぎった。
裕美は飛び上がって喜んでいた。
「裕美ちゃん、スゲー。俺、勉強できない分、腕磨かなきゃ。」
と祐は、作業着をこすった。

*    *    *

それから10年。

「シャロン2号店」を出すことになり、1人前になった祐がマスターになった。
そして、お店に裕美が移った。
独立採算制であったが、新商品は互いに共有することになっている。

インターネットでの注文を受け付け、宅配で届けるシステムも確立した。
ケーキを型崩れせず冷蔵便で運べる箱を、由紀夫が考案した。

それから、それから、祐と裕美が婚約をした。

祐と裕美が婚約の承諾を得るため裕美の家に行った。
裕美の両親は、祐のことを良く知っていたが、祐が女性だとは知らなかった。
婚約承諾の席で、祐が実は女性だと知った両親は、
「じゃあ、二人は子供を産めるかもしれない。」と気が付いた。
「そのために、あたし達、ホルモンを我慢して来たの。」裕美は言った。
「ほんとに子供ができたら、いいわねえ。」と母は言った。
「裕美、祐さんを大事にしろ。」と父は言った。



それから、また1年半。

産婦人科病院の2階には、あわただしく人が動き回っていた。
今、祐が分娩室に入ったところだ。
隆志、由紀夫、裕美の父忠志、母千鶴子、そして、祐の両親の剛三と美也子が実家から駆けつけた。
「あ、どうもお父さん、お母さん、遠い所から。今、分娩室に入ったんですよ。」と裕美は、祐の両親に言った。
「あたしが、妻なのに、代わってあげられなくて。」と裕美は言った。
「いいんですよ。腕白だったあの子のお腹が大きくなるなんて、
 未だに信じられません。」と祐の母は言った。

そのうち、待ちに待った、産声が聞こえた。
「もしや、もしや、もしや。」と由紀夫は胸で手を組んだ。
看護婦さんが分娩室から出てきて、
「おめでとうございます。立派な男の子ですよ。」と言った。

「うわあ、ばんざーい。」とみんなで歓声を上げた。
騒がしい一団であった。

やがて、白い粉をはたかれた赤ちゃんが、看護婦さんに抱かれて、やって来た。
裕美は、涙を流していた。
「少し抱いてもいいですか。」と裕美。
「どうぞ。」
そう言って渡された赤ちゃんを、裕美は震える手で抱いた。
みんなで、回りを囲んで赤ちゃんを見た。
「可愛いね。」
「そうだねえ。」
祐の両親も、顔を満面にほころばしていた。

「じゃあ、もういいいですか。」と言って、看護婦さんが、赤ちゃんを抱いて行った。
「裕美、よかったね。」と裕美のお母さんがハンカチを目に当てて言った。
「よかった。こんなことになってくれるなんて。」とお父さんは目頭を押えた。
裕美は、感激にハンカチで目を押えたままだった。
隆志と由紀夫がくると、両親は、
「何もかも、お二人のおかげです。夢のようです。」と言った。
祐の両親も、同じことを言い、頭を下げた。

そのうち、ベッドに乗った祐が出てきた。
祐は、Vサインを出していた。
「裕美、やったぜ!楽勝!みなさん、ありがとうございました。」
と大きな声で言った。
「まあ、元気だこと。」と祐のお母さんが言ったので、みんなで笑った。



帰り路、由紀夫は隆志に言った。
「あの二人、当分、どっちがママになるかで、もめそうじゃない?」
「そうそう、俺も思ってた。もめるよな。見に行きたいよ。」
「見に行こうね。」
と二人でくすくすと笑った。

外は、気持ちのよい秋風が吹いていた。



<おわり>



■次回予告■

次回は、新作を投稿したいと思います。
クラスで一番モテない男子生徒と
クラス1番のマドンナが、スワップする
お話です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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1. 無題

今回のお話もほっこりしながら読ませていただきました♪

女装とかGIDのお話って男性主観の性的趣向があったり、暗い鬱なお話が多かったりしますが、実際は結構普通に暮らしているんですよね~

そういう意味で逆にリアリティーもあるし、日常生活を舞台にしながらもファンタジーだなって思いました。

読み終わって幸せな気分になれました♪

次回作も楽しみにしています。

2. Re:無題

>ルーシィ♪さん

コメントありがとうございます。
たくさん誉めてくださって、とってもうれしいです。

暗い女装小説って、ありますよね。
ときにそれがよかったりすると思いますが、
私は、できるだけ、明るく書いて行きたいと思っています。女装に興味がない人も読めるような。

リアリティがあって、ファンタジーにもなっている…というお言葉。もう、一番うれしいお言葉に、思わず、ガッツポーズをしました。
もう、すごくやる気が出てきます。

ありがとうございました。
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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