教室は私の部屋③『小学校教師・大里圭吾』

小学校教師・大里圭吾が登場します。物語の副主人公です。
セクシーな場面が出てこない回ですが、読んでくださるとうれしいです。

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大里圭吾は、28歳。
小学校教員として6年目。今ばりばりの働き盛りだった。
背は、170cm、細身だが、運動は得意。
一方、国語や算数も得意で、オールマイティだった。
このため、各種の主任を任されて、毎日が火の車だった。
おまけに6年生の担任として、移動教室など、特別な仕事がたくさんあった。

毎日職場を出るのは、夜の9時を過ぎる。
独身で両親といっしょに暮らしていた。
帰って、用意してもらった夕食を食べ、
それからほとんどは、寝るまで仕事をしていた。

そんな圭吾が、ガクンときたのは、7月の中旬だった。
その頃は、通知表を仕上げねばならず、
圭吾は、必死の思いで気力を出し、夏休みを向かえた。

休みに入り、仕事は楽になったが、気分の落ち込みが治らない。
圭吾が初めて体験する思いだった。
日に日に辛くなり、何もする気になれず、
いつも、お腹に鉛の塊を抱えているような感じがした。
圭吾は、耐えかねて、精神科のクリニックを訪れた。

「鬱病の入り口です。燃え尽き症候群とでもいいますか、
 仕事のやりすぎですね。
 薬を処方しますが、3日ほどで楽になるでしょう。
 1ヶ月ほど辛いままだと本格的な薬を出します。」と医師。
「本格的な薬ってなんですか?」
「抗鬱薬です。」と医師は言った。

圭吾は、薬を呑んで、3日どころか、翌日に効果が出て、楽になった。
かといって、学校の仕事をしたいとは思わなかった。

圭吾は、写真の整理でもしようと思って、
押入れの中から、ビニール袋に入った写真をどっさり畳みの上に置いた。
何気なく昔教えた子供の写真を、1枚1枚見ていた。
すると、ある子の写真を見て、不思議な感情が胸に湧いた。

『高島弘美、今どうしているかなあ。』

この子を教えたのは、自分が教員になって初めての年だった。
その頃の自分は、新米で、無我夢中だった。
俺は、高島弘美を救えなかったと、
深い悔悟の念にとらわれた。
6年経験を積んだ今ならどうにかできたかも知れない。
しかし、あの頃は、その日の授業をすることだけで精一杯だった。

高島弘美は、6年になって転校して来た子だ。
前の学校でひどいいじめにあい、転校してきた。
弘美は、女の子のような子だった。
幸い自分が受け持った1年間は、いじめられてはいなかった。
しかし、いつも一人ぼっちで、友達がいなかった。
というより、弘美は、友達とリラックスして接することができないでいた。
いじめられた後遺症で、無理もないことだと思っていた。

弘美を見ると、いつもふっと女の子と勘違いしそうになることがあった。
顔立ちが整ったとても品のある可愛い子だった。
女の子に生まれていたら、さぞ、可愛いだろうと思った。

勉強がすごくできた。
100点のテストばかり返って来ていたが、
弘美は、すぐにテストを二つに折り、点数を見られないようにしていた。
成績のいい弘美は、前の学校で、やっかみを受けて、嫌がらせをされたのだろうか。

弘美は、心が多分女の子なんだろうと圭吾は思っていた。
「性同一性障害」という言葉が、まだ、多く聞かれない時代だった。

圭吾は、弘美が今どうしているか、安否が知りたくてたまらなくなった。
だが、それは、自分にとって表向きの気持ちだった。
圭吾は、心の奥の本心に気が付いていた。

圭吾は、相手が子供なのに、しかも、男子なのに、
弘美に、ある種の恋愛的感情を抱いていた。
不思議だった。
教員になって6年間、弘美以外、どんな子供にも、そんな感情を抱いたことはない。
えこひいきだってしたことはない。
圭吾は異性愛者だ。
圭吾は、高島弘美に対する自分の感情が不思議でならなかった。
教師として、認めたくない感情だが、
人間として、そんなこともあるだろうと思った。

弘美に手紙を書いてみようと思った。
弘美の静かな物腰を思い浮かべると、
鬱の入り口にある圭吾の心は、それだけで癒されるのだった。

住所は知っている。
しかし、手紙を書く口実がない。
『そうだ、弘美の写真を持っていると言って、
 その写真を返すための手紙にしよう。
 そして、今どうしているか、さりげなく聞こう。』

圭吾は、短い手紙を書き、写真を同封して、投函した。



弘美は、大里圭吾から届いた封書を見て、飛び上がるほど喜んだ。
圭吾は、弘美がこれまで習った先生の中で、1番好きな先生だった。
それどころか、子供心に憧れて、先生のお嫁さんになりたいと思ったほどだった。

弘美は、震える手で中をあけた。
学芸会での自分が大写しになった写真と、
先生の簡単な手紙があった。

『突然の手紙で驚いたでしょう。
 写真の整理をしていたら、君のとてもいい写真があったのでお送りします。
 私のスナップで撮った写真だから、君は持っていないと思います。
 今、どうしていますか。
                      大里圭吾     』

弘美は、先生へ返事を書くことで、興奮してしまった。
手書きの手紙には手書きの返事を書かなくては。

弘美は、便箋を前にして、胸がドキドキした。
いざ、書く段になって迷った。
先生は、私が、元気に学校へ行っていることを期待している。
これから文通をしていくならともかく、
1回だけの手紙で、先生に心配をかけることはない。
偽りの自分を書こうと思った。
女の子の字の自分だが、なるべく鉛筆に力を入れて、角ばった字で書いた。

<弘美の手紙>
先生。お元気ですか。
先生のお手紙、うれしかったです。
そして、お写真も。俺が持ってない写真でした。

先生、俺、6年生のときは、女みたいな子だったと思いますが、
中学で、背が180cmを超えちゃって、筋肉マン。
今、高校で、バスケやってるの。
レギュラーなんですよ。
友達も一杯いるし、けっこう女の子にもモテモテです。
多分、先生は、今の俺を見ても、わからないと思う。

圭吾先生は、俺がいままで出会った先生の中で、
俺が一番好きな先生です。
先生、いつもがんばり過ぎちゃうから、
それが、心配。
お体に気をつけてください。
                高島弘美

PS 先生、俺のメルアドです。teenndes@teapot.com
気が向いたら、メールください。



圭吾は、弘美から手紙の返事が来たことに喜び、
中を読んで安堵した。
女の心を持った子だと思ったのは、杞憂に過ぎなかったと、
うれしく思った。
だが、圭吾は心の奥に、一抹の淋しさを隠せなかった。
美しい小鳥が、いなくなってしまった。
そんな、淋しさだった。


つづく(次は、『圭吾、渾身のメール』の予定です。)


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1. 無題

今日のお話ゎ主人公から一転、副主人の目から写ったファクターで物語が進んで、いつもとゎ違う斬新な感じがしました♪

教職にかける情熱の厚い圭吾先生。
予告を読むと、その先生が思いの丈を奮ってメールを打つのでしょうか。

今回の「教室は私の部屋」、ますます夢中になってしまいそぅです(*゚ー゚*)

2. Re:無題

>junさん

コメントありがとうございます。
そうなんです。今度は、先生の方向から物語を綴ってみました。そこを言ってくださってうれしいです。

書いてみたら、圭吾先生の渾身のメールは、次回の次になってしまいました。

セクシーな場面をあまり折り込めないでいるのですが、自分の書きたいものを書いていくことにしました。
いつも、読んでくださって、うれしいです。

3. 無題

今回のお話もとても面白いですね。

先生に心配をかけないよう、元気にやっている〈俺〉と書いた弘美の気持ち…なんだか、切ないです。

懐かしい再会?によって、ますます続きのお話しが楽しみです。

4. Re:無題

>まみさん

コメントありがとうございます。
今回のお話は、あまり自信がなかったので、
「とても面白い」といってくださって、
すごくうれしいです。

やがて、二人は対面しますので、
どうか安心して、お読みくださいね。
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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