オーロラ姫は男の子③「いい書評、悪い書評」

朝倉賢治は、若葉出版を今一人でやっている。
たまに、妻の法子が手伝いに来る。
前は、6人もいる出版社であったが、
本が売れず、だんだん社員を減らさざるを得なくなった。

有希の推理小説「バラの色は月曜日」は、
久々に、わくわくするような作品だった。
めったに現れない新人だと思った。
原稿の校正をしながら驚いた。
ほとんど校正の必要がない。
とうとう、最後のページまで、全く校正を必要としなかった。
それは、驚くべきことだった。

有希は、すべてのページをワープロで打ってあったので、
それを記憶させた、USBメモリーをおいて行った。
朝倉は、すぐ印刷の方を手配し、
装丁として、昔世話をしたことのある、
今人気絶頂の今野英明に依頼した。
今野は、昔世話になったことのある朝倉の頼みだったので、
多忙であったが、断れなかった。

こしうして本は、3週間という驚異的な早さで出来上がった。
有希のペンネームは、「オーロラ」だった。
末のプロフィールに、GIDのことも書いた。

「わあ、もうできたんですか。うれしいです。」
と有希は、本を見ながら、うれしくてジャンプした。
「今頃お家の方に、献本が100冊行ってると思うよ。
 それから、君のブログでどんどん宣伝してくれたまえ。
 まず、8000冊売れば、赤字にならない。」

有希は、ブログで大々的に宣伝した。
本屋へ行って見ると、「バラの色は月曜日」が横置きで、
入り口のすぐそばに置かれていた。
今野英明装丁ということで、書店は、横置きにしたのである。

8000部は、あっという間に売れた。
有希は、朝倉に呼ばれた。
「ネット販売で4000売れてる。
 これは、君のブログからだろう。
 だが、あとの4000部は、書店で売れている。
 これは、すごい。
 で、だ、第2版は、2万部行ってみようと思ってる。
 どうだい?」
と朝倉は言った。
「あたしは、そのへんわかりませんので、お任せします。」
「それとね。家は印税、発売のとき払うから、
 200万円くらい、銀行の口座に振り込まれるよ。」
「わあ、印税なんてあるんですか。うれしいです。」
有希は、またもや飛び上がった。

その後、本は、売れたのである。
朝倉には、夢に見た、ミリオンセラーになった。
有希は、書店に行くと、山済みにされている自分の本を見て、
うれしくてたまらなかった。

有希は、印税のことをまだ父母に言ってなかった。
ある夕食のとき、二人に言った。
「お父さん、お母さん、印税って知ってる。」
「もちろん。」と二人。
「今あたしの本で、ここまで印税がはいったの。」
そう言って、有希は、銀行の残高証明を見せた。
「あら、うそ、わあーーー。」と母の恵子は言った。
「どれどれ、おおおお、父さんの給料の2年分だよ。」と父の五郎は言った。

「これで、あたし、完全な女になる手術代でるかもね。」
と有希は言った。
「やっぱり、するのか?」と五郎。
「高校の3年間で、ゆっくり考えるね。」
有希はそう言った。

有希は、学校では、夏樹にだけ、本のことを話して、
本をプレゼントした。
「親愛なる夏樹へ」と書いてあった。
夏樹は、興奮して、飛び上がった。
「やっぱり有希は、有名になるんだね。
 ジャラシーだけど、おめでとう。ずっとあたしと友達でいてね。」
「うん。もちろんだよ。」
と有希は、言った。



金曜日は、授業が少しなので、若葉出版に言った。
本は、今、150万部売れようとしていた。

朝倉が一枚の紙を見せる。
「はい、これ、書評だ。悪いのから見る?いいのから見る?」
「悪いのからみます。」と有希は言った。

<悪いの>
・モデルの経歴や、本人の美貌、GIDという境遇、
 さらには、人気イラストレーターの装丁で、売れているだけである。
 文章は未熟で、変に笑いを誘うところが余分である。
 トリックもよくあるもので陳腐であり、肝心の中身を充実させて欲しいものだ。

「ううう。」と有希は悔しがった。
「まあまあ、けなす人は、けなすだけの人間なんだよ。」と朝倉は言った。

・経歴や本人の境遇で本を売るのは、どうかと思う。
 笑いの箇所は、あるていど成功しているが、トリックにもう少し重きをおいて欲しい。
・今の流行をうまくつかんではいるが、内容に重みが欠ける。トリックはまあまあである。

有希は、
「はあ~。」と息を吐いた。
「くやしいなあ、今度本格書いてみます。」と言った。
「まあ、いい方も読んでご覧よ。」

<いい方>
・私は、経歴など一切無視して読むが、とにかくおもしろく、おしゃれであり、
 何度も大笑いさせられた。これが、16歳の著者が書いたとは、驚きである。
 トリックは、大変新鮮であり、私が今まで目にしたことがないものである。
 だとすると、これは、偉業を成し遂げたと言えるのではないか。

・16歳という著者ならではの、現代性、流行色が感じられ、おしゃれな一冊である。
 さらに、これは、上質なユーモア小説でもあり、そこに1級のトリックが盛り込まれ、贅沢な一冊と言えるものである。

・トリックが素晴らしく、恐らく推理小説界初登場のものと思う。
 16歳の著者が考えたものなら、それは、驚嘆に値するものである。

「ああ、よかった。いい方を読んで。」と有希は言った。
「だろう。一つの評価だけ読むと、やる気をなくすから、
 いろいろ読んだほうがいいね。」と朝倉。
「朝倉さん、あたし、次に本格書いてみたいんですけどいいですか。」
と有希は言った。
「ああ、いいとも。君のトリックをけなしたヤツラを、ぎゃふんと言わせてやれ。
 わが社は、君のお陰で、6ヶ月は何もしなくて暮らせるからね。
 冒険をするチャンスだよ。」
そう朝倉は言った。


つづく(文学の巨匠安井民男との対談)




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1. 無題

今日のお話の中でゎ、自分の稼いだお金でせー転換の手術代に当てるっていぅところが好きです。

有希さんにメッセージ:
悪評なんて気にしないで。
素敵な作品だからこそ150万部も売れてるんだから。
150万という数字が何よりも有希さんの作品の良さを物語っているよ。

ラックさんから有希さんに伝えていただけるとありがたいですぅ(*゚ー゚*)

2. Re:無題

>junさん

コメントありがとうございます。
今回のお話は、山もなく、だらだら書きたいことを書いていて、いつ終わるんだろうかと、私自身わかっていないんです。

有希にメッセージをくださって、感激です。
しっかり伝えておきます。

一つの悪評って、それだけで、がっくりきますよね。私はそのタイプ。でも、一つの好意的な評で、エネルギー100倍になります。
junさんは、いい評をくださる方なので、いつもエネルギーたくさんいただいています。
ありがとうございます。

3. 書評

有希の本、どんなストーリーでどんなトリックなのか、読みたくなりますね。

成功していく過程を見ていると、私もワクワクしてきます。

印税ですかー。私も貰ったことありますが、
20,000円くらいじゃなかったかなぁ・・・
(技術的な本の一部を分担執筆したのです)

150万部も売れたら、いったいどれほどの額になるのでしょう?
想像も付きません。

4. Re:書評

>みすりんさん

コメントありがとうございます。
有希のストーリー、書けたら、私もうれしいのですが、残念ながら、私には、考えられないので、
くやしいところです。

みすりんさんは、本をお出しになったことがおありなんですね。印税生活ができたら、うれしいですよね。
印税は、本の2~5%が相場だと思います。作家のランクによって違うようです。5%として、8000部で、200万円くらいだろうと計算して書きました。150万部なら、億の単位になると思います。(いいですよね。)ハリーポッターなんか、想像をし難い額になったことでしょうね。
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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