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続・美雪と瞳⑧「コンクールの終了」最終回

簡単に書くつもりが、すごく長くなってしまいました。
最数回まで読んでくださり、ありがとうございました。

================================

第5位は、8歳にしてハンガリア狂詩曲を弾いた女の子だった。
その子は、賞状を審査委員長横山教授からもらって後ろに並んだ。
第4位は、中学生で、ラフマニノフを弾いた、男子だった。
第3位は、社会人で、ショパンを弾いた男性だった。
みんな一人ずつ賞状をもらった。

「あと2人だね。」と靖男が言った。
「そうね。でも、そんな夢みたいなこと、あり得ないわ。」と早苗が言った。

「第2位。」とアナウンスが言った。
「桐邦学園、加納公平さん。」
公平の周りが祝福した。
公平は明るい顔で、舞台に上がった。

「第1位。」とここでアナウンスの女性は言葉を切った。
「第1位は、審査員全員の一致を見ました。
 国立G大付属音楽高等学校の大塚美雪さん。」

うおおおお・・・・と、後ろから同学校の生徒が声を上げた。
仲良しの4人は抱きあって喜んでいた。
美雪は、母と父と抱きあった。

美雪がホールの段を下りて舞台に行く。

「あなた、夢じゃないわよね。」と早苗は言った。
「ぼくも、今そう思っているよ。」と靖男は言った。
「はっきり、夢じゃありませんよ。」と瞳が体を寄せて、二人に微笑んだ。

美雪は、賞状をもらった。
賞状の他に、盾もあるが、後から郵送される。

美雪が症状をもらうとき、一際、大きな拍手が起こった。

審査委員長の横山教授から、5人に対し、簡単な講評があった。
5位、4位、3位の人が続けて評された。
横山教授にふさわしく、よい所だけを、言われていた。

「第2位の加納公平くんは、ますます腕を上げ難曲に挑んできました。
 そして、今回は、感情表現にも挑戦していて、成果を見たと思います。
 来年がまた楽しみです。」
と教授はいった。

「第1位の大塚美雪さん。審査員全員一致の堂々たる優勝です。
 今回の演奏では、ピアノがまるで生きているようにあなたの指に応えていました。
 ピアノとあたかも対話しているような楽しげで伸びやかな演奏をしました。
 あなたの表情も豊かで、聞く人の心を惹きつけて止まない音がどんどん出てくる。
 もしかすると、あなたは、新しい表現の形式を開きつつあるようにも思えました。
 すばらしい演奏でした。このコンクールの大きな収穫の一つです。」

教授の言葉で、会場にすごい拍手が起こった。

「では、入賞者の言葉を、簡単にお聞ききします。」5位の人から、アナが聞いて言った。
3位の社会人の人は、
「道子、啓太、郁子、睦、父さんはやったぞー!」と言って、会場の拍手を受けた。

2位の、加納公平は、
「予選で、大塚美雪さんの演奏を聞いて、ぼくは、凹んでしまいました。幸いぼくが優勝しましたが、
 それ以来、大塚さんを目標にがんばってきました。ぼくに目標を与えてくれた、大塚さんに感謝で一杯です。」

相手を讃える公平の言葉に、会場から、大きな拍手が起こった。

「次は、優勝者の大塚美雪さんです。」
アナウンサーは、小声で、「少し長くてもいいです。」と言った。

美雪は、マイクをもった。
そして、会場を見渡した。
「私は、中学から2年半間、不登校の生徒でした。
 外へ出ようとすると恐くて、脚がすくんでしまいました。
 そんな私を、両親は、少しも咎めることなく、
 私が淋しいだろうと、部屋にピアノを買ってくれました。
 ピアノを弾いているときだけは、辛いことも悲しいことも忘れることができました。

 その後、素晴らしい家庭教師の先生に出会うことができました。
 先生は、私が外に出られるようにしてくださいました。
 そうして、高校へ通えるようになりました。

 高校のクラスの人はみんなやさしくて、私に明るく接してくれました。
 そして、音楽室でピアノを弾いていたら、
 学校中の方達や先生方が、私の演奏を聞きに来てくださり、
 温かい言葉をたくさんくださいました。
 こうして、私はやっと自分に自信がつきました。
 そして、こんな晴れやかな場に立つことができています。
 私は、全てのみなさんに、感謝でいっぱいです。
 ありがとうございました。」
美雪は、目に一杯の涙をため、深々と礼をした。

ひと一倍大きな拍手が会場にこだました。

早苗も靖男も目にハンカチを当てて泣いてばかりいた。
瞳も、4人の友達も、学校の多くの生徒が泣いていた。

「では、優勝者のプレゼント演奏があります。
 優勝者だけ残り、後の方々は、お席の方にお戻りください。」とアナウンサーが言った。

みんなが座席についたとき、アナウンサーがマイクを向け、
「曲目は、何にしますか。」と聞いた。
「ショパンの幻想即興曲を。」と美雪が言った。
アナはそれを伝えた。

ピアノの前で、しばらく気持ちを整え、
『ピアノさん、もう一度、お願いします。』と美雪は心で言った。
美雪は手をあげ、それを降ろした。
そのとたん、すばらしく速い指使いで、曲を奏ではじめた。
審査員や、多くの人達が、美雪の速さにはっと目を見開いた。
難曲に関わらず、思いもよらない速さだったのだった。
しかし、聞いていると、たまらなく情感がかき立てられる。
美雪のピアノと一体と見える演奏が、ここでも見られた。
審査員達は、新鮮な感動で、胸を満たしていた。

『美雪、すごい、すばらしいよ。』
瞳は心の中で語りかけていた。

美雪の演奏は、会場全体を魅了した。
出場曲でもないのに、それ以上の素晴らしさだと、多くの人が思った。

約4分の曲が、あっという間に終わった。

うおおおおお・・・・という声と共に、会場の全員が立って拍手を送った。
審査員も全員立っていた。

「よかったですなあ。」と審査員。
「こっちが出場曲でも、優勝でしたな。」
「何か、新鮮なものに触れた思いです。」
と審査員達は言っていた。

本当は、ここで終わりだった。
しかし、拍手が鳴り止まない。
アナウンスの女性は、審査委員長と目を合わせた。
審査委員長は、1本指を出した。「あと1曲。」という意味だった。

アナが、美雪の所へ来た。
「あと1曲できますか。」と言った。
「モーツアルトのトルコ行進曲ならできます。」
美雪は言った。
この曲は、美雪がピアノを始めてからの、憧れの曲だった。
完全に弾けるようになってからも、何度弾いたかわからない。

アナが、会場のみんなに、
「では、異例ではありますが、『モーツアルトのトルコ行進曲』ならということで、
 もう1曲演奏していただくことになりました。」

会場がシーンとなった。
ピアノと対話するように一体となって弾くという奏法。
一度会得したものは、どの曲にでも発揮できる。

難易度は、低い曲である。小学校6年生でふつう弾ける。
会場の人々は、このやさしい曲を、美雪がどう弾くかということに、興味を抱いていた。

美雪は息を吸って、左手を構え、右手を高い所から降ろした。
そして、ピアノと対話するように、演奏をし、
最後の音を、惜しむように、曲を終えた。

会場からすごい拍手が起こり、
これも、スタンディング・オベイションを受けた。
「違うなあ。あの子が弾くと違うよ。」
「ほんと、スカットしてよかったなあ。」
「もう一度聞きたいなあ。」
というような声が方々で聞こえた。

美雪がなんども頭を下げ、アナの人に挨拶をして、舞台から降りた。

観客は、やっと座った。

大会の終わりの宣言を聞いて、観客は、席を離れて行った。

美雪が帰ってくると、今まで泣き通していた早苗は、美雪を抱きしめた。
「美雪、お母さんは、うれしい。こんな日が来るなんて、夢にも思わなかった。
 お母さんの最高の一日よ。」と言った。
横で、靖男と瞳が、優しげに早苗を見ていた。

親子の喜び合いを邪魔しないように、4人の仲良しや、
クラスメイト、学校の先輩達は、そっと合図をして、帰って行った。

親子水入らずでと思い、瞳も席を立とうとしたが、
「絶対だめ、瞳先生は、家族です。」と靖男にがっちりと引き止められた。
美雪も、瞳の感想をたっぷりと聞きたかった。



近くのホテルの展望レストランに、
4人の姿があった。

食事をしながら、早苗が言った。
「美雪、そろそろ種証しして。演奏直前に悟ったことってなあに?」
「ああ、それね。」美雪は語り始めた。
「ほら、瞳先生と8小節交代で『ハンガリア狂詩曲』弾くのお母さん、お父さんに見てもらったとき、泣いてくださったじゃない?私がにこにこ楽しそうに弾いているのが、うれしいって。
 それが、ヒントなの。
 ピアノってみんなむずかしそうな顔をして弾くでしょう。
 私は、ピアノとお友達になって、笑顔で楽しそうに弾こうって思ったの。
 そこで、ピアノの前に座ったとき、ピアノに『お願いします。』って言ったの。
 そしたら、ピアノが、言うの。『いいとも。そんなこと言ったの君だけだよ。』って。
 そして、ピアノと心で語り合いながら弾いたの。
 そうしたら、どんどんいい音が出てくる。
 そのたびにピアノに感謝しながら弾いていたの。」

「まあ、そうだったの。でも、それだけでって気もするけど。」と早苗は言った。
瞳が言った。
「お母さん。これは、美雪さんにしかできないことですよ。
 美雪さんは、ただにっこりしていたのではなくて、自分の気持ちをピアノに伝えていたんです。
 自分の表情で。あたかも、ピアノと対話しているかのようにです。
 だから、みなさんは、美雪さんの音の魅力に加え、美雪さんの表情に魅せられたのです。」
 
早苗。
「それは、すごいことなんですか?」

瞳。
「はい。だから、横山先生が、特上の賛辞を述べられたではありませんか。
 横山先生は、美雪さんによって『新しい表現形式が開かれつつある。』と。
 つまり、過去に誰もしなかったような新しい表現方法が、
 美雪さんによって、生まれつつあるということです。
 私は、先生のそのお言葉を聞いたとき、体中に旋律が走りましたが。」

「ほんと?すごい!」と美雪が言った。
「まあ、なんて、うれしい…。」
と、早苗は、またもや感激して、ふらふらとしてきた。
靖男は早苗の腕を支えながら、言った。
「瞳先生、妻がもう感激の限界に来ています。
 これ以上、美雪を誉めるのはやめましょう。」
瞳「あ、そうですね。」
美雪「おかあさん、平気?」
早苗「はい、なんとか。ほんとに、今日これ以上感激すると、あたし気絶すると思います。」

みんなで、くすくすと笑った。
こうして、おいしい料理を食べながら、
それぞれは、最良の日をかみしめた。

外は、東京の灯りが、満天の星のように輝いていた。


<おわり>

※1つ書き終わってホッとしています。また英気を養って、次のお話を書きたいと思います。
 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。




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1. うん感動したょ

良いねd(^_^o)
なんでも楽しんでると良い事または素敵な事または笑顔大切にしてると良い事起こるょd(^_^o)
大笑い大切にして楽しんでると良い事起こるょd(^_^o)自分自身に腐ると良い事なくなるから大笑いしよね

2. Re:うん感動したょ

>美咲ちゃん

コメントありがとうございます。
感動してくださったのですか。うれしいです。
何でも、楽しんでやりたいものですね。
ほんとに、笑ってると、いいことが起こりますね。
私もできるだけ、そうします。

3. すごく良かったです。

すごく良かった。
ハッピーエンドになると思っていても、奥が深いストーリーで引き込まれてしまいました。
私も感動しました。
ありがとうございました。

4. Re:すごく良かったです。

>ゆな ちゃん

コメントありがとうございます。
すごく良かったと言ってくださり、とってもうれしいです。また「奥が深い」なんて言っていただいたの、初めてで、うきうきしてしまいました。
ありがとうございました。

5. 心地よいひと時をありがとうございます

最終回の盛り上がりはとても素敵ですね。
登場人物の人柄がそれぞれ個性がありそれが伝わってきます。。
今回の好きな言葉は
「死ぬことまで考えたのに。
死ななくてよかった。こんなうれしい日が来るなんて・・・。」
周りの人の助けも必要でしょうが、やはり自分の気持ちが大切なのですね。

6. Re:心地よいひと時をありがとうございます

>麻耶さん

コメントをありがとうございます。
また、物語への賛辞もうれしかったです。
なんか、書いていると、登場人物の性格って自然に決まっていくようですね。
「好きな言葉」、ありがとうございます。
死ぬことを、少し先送りするだけで、新しい人生が始まったりしますね。
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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