美雪と瞳③「両親へのカムアウト」

「どう?恐い。」と瞳。
「恐くない。何にも恐くない。」と美雪が言う。
瞳はうれしかった。このまま、人のいる通りを歩けたらいいなあ、そう思った。

アパートを出た。
「美雪、アパートを出たわ。」
「瞳、あたし、恐くない。逆にこの姿を誰かに見てもらいたい。」
その美雪の言葉がうれしくて、瞳は、胸が一杯になった。

いよいよ通りに出た。
大勢の人がいる。
みんなが、美雪を見て行く。
「美雪が、妖精みたいに可愛いから、みんな見て行くのよ。」
「ええ。感じる。意地悪な視線じゃない。全然怖くない。
 あたし、誇らしい気持ちさえする。」
「そう、いいわ。これが、美雪なの。美雪の本当のすがた。」
「ああ、うれしい。お日様をこんなに浴びても、平気。」

パフェに入った。
「美雪、あたしは、イチゴのクリームパフェ。
 美雪が、ウエイトレスさんにあたしのも頼んで。
 美雪は、女の子の声をしているから、大丈夫。」

美雪は、横を通るウエイトレスさんに、
「あ、すみません。」と声をかけた。
そして、二人分のパフェを注文した。
「わあ~、やった。声を出せたわ。」美雪はうれしさで身を振るわせた。
「いいわあ、美雪。ここを出たら、いろんなところで声を出してみよう。」

二人は、それから、通りの雑貨店や洋服店、アクセサリーのお店をまわり、
美雪は、お店の人にいろいろな質問をして、たくさん話した。
今まで、外でできなかった会話を全部取り戻すように声を出した。
そして、昼にパスタのお店に入って、瞳のアパートに帰ってきた。

美雪はうれしくて、瞳に抱きついてきた。
瞳は美雪を抱きしめた。

「瞳、ありがとう。あたし、生まれ変われた。
 こんな幸せな気持ちになれたことない。」
美雪は言った。

キッチンテーブルで、ハーブティを飲みながら、
瞳は言った。

「提案だけど、このまま、電車を使って、美雪のお家へ帰ってみない?
 お父様やお母様は、さぞ驚かれると思うけど、
 美雪の本当の心の姿を見ていただくの。
 そして、これから女の子として生きていきたいという気持ちを伝えるの。
 今日がいいチャンス。どう?」
美雪は考えていた。
「うん。瞳の言う通りにする。もし両親がわかってくれたら、
 あたしは、これから、何でもできる気がする。
 あたしの、一生がこれで変わる。」



男の衣類を紙袋に入れて、美雪と瞳は、アパートを出た。
それから、通りを歩き、電車に乗り、また歩いて、家の前に来た。
「ちょっと緊張するね。」瞳は言った。
「あたし、もうドキドキ。でも、勇気出さないと。」
「そうだね。」
美雪は、チャイムを鳴らした。
「あ、お母さん。ボク、電車で帰って来ちゃった。」
美雪が言うと、お母さんは驚いていた。

二人で、エンタランスを歩いた。
『電車で来た。』という言葉に驚いてか、
両親の早苗と靖男は、二人そろって、玄関に迎え出ていた。
美雪と瞳は、勇気をだして、引き戸を開けた。
早苗と靖男は、二人の姿を見て、あっと驚いた。
「あ、あの立原先生は女性でしたの?」と早苗が言った。
「いえ。美雪さんと同じです。」瞳は答えた。

居間のソファーで、美雪と瞳は並んで、両親と向かい合って座った。
美雪は言った。
「お父さん、お母さん、これが、あたしの心の姿なの。
 だから、立原先生が、あたしの心の姿のままに、女の子の服を着させてくださったの。
 そうしたら、外に出ても少しも恐くなかった。
 どれだけ人に見られても、それが、うれしいように感じられたの。
 たくさんのお店に行って、たくさんしゃべった。
 電車も全く平気だった。

 今までは、あたしの女の心がばれないかと、人の視線が恐かった。
 見られると、女の心がばれたようで恐かったの。
 女の心で学校に行くのはつらかった。
 からかわれたし、たくさん嫌がらせされた。
 
 でも、今日女の子の格好で外に行ったら、
 少しも恐くないの。
 女の心がばれても、姿も女なんだから、恐れるものは、何もなかった。
 だから、外を歩けたの。

 あたしにとって運のいいことに、立原先生も、あたしと同じ女の心を持ってらして、
 あたしの、女の心をわかってくださった。
 だから、今日みたいなことが、実現したの。

 お父さんとお母さんが、そんなあたしのことをわかってくれて、
 あたしを女の子だとこれから思ってくださるとうれしい。
 女の姿でいることを、許してくださるとうれしい。
 それが、あたしのお願いです。」

早苗も靖男も泣いていた。
早苗が言った。
「お母さんは、わかっていたの。実行の心が女の子であることが。
 でも、勇気がなくて今まで聞けなかったの。
 学校でいじめられていた訳も、わかっていた。
 でも、どうしていいかわからなかったの。
 ごめんなさい、実行。
 あたしは、今からあなたを女の子だと思います。
 家でも、外でも女の子でいいの。
 どう生きていくかは、みんなでいっしょに考えましょう。」

「おかあさん、ありがとう。あたし、うれしい。」美雪が言った。

靖男が言った。
「そうだったのか。気がつかなくてすまなかった。
 実行が、女の子のようなところがあることは、気がついていた。
 だけど、心が女の子だということは、考えもしなかった。
 でも、今実行の話を聞いて、たくさんわかってきた。
 どうして外がこわかったのか。これで、やっとわかった。
 実行には、長い間、辛い思いをさせたね。すまないことをした。
 お母さんに、父さんは同じ思いだ。
 今から、実行は、父さんと母さんの娘だ。
 思う存分、女の子でいてもいいよ。

 実行が今勇気を出して、説明してくれたことは、立派だった。
 父さんは、それもうれしかった。

 それから、立原先生。実行のことを理解し、今日してくださったこと、
 感謝で一杯です。ありがとうございました。」

早苗。
「先生、ありがとうございました。」

瞳。
「私こそ、感激しています。ほんとによかったです。
 お父様とお母様が、こんなに真っ直ぐに理解してくださると思わず、
 私は、さっきまで、玄関で足が震えていました。
 美雪さんは、つらい思いをされましたが、いいご両親に恵まれお幸せだと思います。

 美雪さんは、すばらしい才能をもっていらっしゃいます。
 人の心に沁みる、演奏をされます。
 ただ、やや内向的であり、
 明るく外に向かった広がりという点が欲しいと思っていました。
 それは、無理もないことです。外に出られなかったのですから。
 でも、これからは外に出られますよね。外に出て、日を浴びて、人と交わり、
 たくさん笑って、楽しい経験を積めば、演奏は、さらに広がりのあるものになっていく思います。
 だから、美雪さんが外に出られるようにというのは、私の美雪さんへの課題だったのです。

 実は、私は、私が師事しています横山康孝という先生に、美雪さんのことを話しました。」

早苗。
「横山康孝先生とは、ピアノ科一番の教授ではないでしょうか。」
瞳。
「はい。横山先生は、是非一度、美雪さんの演奏を聞かせて欲しいとおっしゃっています。
 私は、今、外に出られないので、出られるようになったら、誘ってみるといいました。
 私は、美雪さんが、横山先生の前でピアノを演奏する日が現実になりそうで、
 今、うれしくてなりません。」

早苗。
「まあ、それは何とうれしいことでしょう。」
美雪。
「そんなに、すごい先生なの?」
早苗。
「日本で、3本の指に入る先生よ。」
美雪。
「わあ、すごい。瞳先生は、今習ってらっしゃるのね。」

「うん。何にも教えてくれない先生なんだけどね。」
と瞳が言ったので、みんなで笑った。


つづく(次回は、「横山康孝教授に会う」最終回)
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非公開コメント

1. (^^)/

僕はまだ外には出れないですね(>_<)
もう少し努力しなきゃ…

2. Re:(^^)/

>凛鵺(Ba)さん

そうですか。
エスコートがいるといいんですけどね。
夜に出て、だんだん光のあるところへ
行くのも、楽しいものですよ。

3. 楽しみです

ラックさん!
わくわくしてます。
どうなるか続きを楽しみにしてます。

4. Re:楽しみです

>ゆな ちゃんさん

どうも。楽しみにしてくださるなんて、
すごくうれしいです。
今度のは淡々としてストーリー性ゼロかなって、
気にしていたので、うれしいです。
明日で、最終回にします。
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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