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オーロラ姫は男の子⑥「巨匠安井民男の後悔」((挿入話)

オーロラ姫は男の子⑥「巨匠安井民男の後悔」((挿入話)


(時間は遡る。)

楽屋を出て、書生の金子と局を出たとき、
立ち止まり、安井は、金子に聞いた。
「私がまちがっとったのか。」
「はい。先生どうかされていました。
 『ウソは嫌いだ』というお言葉に縛られて、
 ご自分への正義と思っておっしゃったことが、相手を傷つけました。
 相手を傷つけてもいいという正義など、あるでしょうか。

 あの人は、性同一性障害の人です。
 ご本のプローフィールに堂々と記載されてます。そこが、重要なところです。
 オーロラさんは、言わば、性的マイノリティーの旗手なんです。
 だから、先生ほどの方との対談が実現したのです。

 先生に先入観を与えるのはよくないと思い、黙っていましたが、
 偉い人…というのは、政治家や大会社ではないのです。
 国連付属の世界差別解放団体からの依頼です。
 オーロラさんが、性同一性障害のことを、
 著書のプロフィールに堂々と書いておられることが着目され、白羽の矢が放たれました。

 先生が、世の中の偏見と差別にどんなメスを入れて語られるか。
 オーロラさんと話すということは、自ずとそれがテーマだということです。
 国連の解放団体からの依頼なので、局は断ると大変なことになります。
 もちろん、オーロラさんは、聞き手として、また当事者として、
 対談の主旨は見当をつけておられた思います。
 そして、今日の対談は、世界に放送されていました。

 ありきたりな差別論にみんな飽き飽きしています。
 だから、世界の安井先生のお言葉をみんな何よりも楽しみにしていました。
 今日の先生の言動を、世界の人は、どう見たでしょうか。
 ライブなので、もう放送されてしまいました。」

「国連だの、解放団体など、何も聞いていなかったぞ。」と安井。
「先生は、国連だからといって、態度をお変えになる方ですか。
 解放団体だからと言って、団体にこびたことを言われる方ですか。」
「断じて、ない。相手が誰であろうと、私は態度を変えん。」
「だから、先生に何もお伝えしなかったのです。」金子は言った。

「これで、先生は、世界のマイノリティの人々を敵に回してしまいました。
 先生は、これから、弱者を守るような小説は、お書きになれません。
 強者を賛美する小説など誰も読みませんよ。」

「君も、きついな。今日はそれほどの失態だったのか。」
「はい。先生の作家生命に止めを刺すものでした。
 過去の作品の価値を、根こそぎ無にするものでした。」

「どこで間違えたんだね。」
「オーロラさんがおっしゃったように、最低の礼儀として、
 あの方の本をお読みになるべきでした。
 たった1冊なのですから。
 オーロラさんは、先生の作品48冊ですよ。学校や仕事に行きながら。
 恐らくその48冊を、何度もお読みになったはずです。
 びっしりと書き込みをした大学ノートを、10冊近くお持ちでした。

 私は、万が一先生が、小説はお読みにならなくても、
 巻末のプロフィールくらいは、最低ご覧になると思っていました。
 そうすれば、性同一性障害のこともおわかりになった。
 あの方の、『途上にあります。』という言葉を、
 ユーモアをもって受け止められました。
 今日の対談の重さもお気づきになったと思います。」

「オレは、あの人の本をごみ箱に捨てた。
 なぜ、そんなことをしてしまったのかな。」
「同業の年少者に対する偏見と、推理小説への軽視がおありだったからです。
 そういった偏見をどうすれがいいか、
 それが、まさに今日のテーマでしたのに。」

「その通りだ。オレは、偏見をもっていた。
 何を小娘が…と思って、本をごみ箱に捨てた。
 オレは、もとより今日の対談に出る資格のない人間だった。」

「本をごみ箱に捨てるなど、本を書く資格も怪しいです。
 私は、ゴミ箱の本を拾って、家に持って帰りました。
 そして、読みました。宝石のような可能性に富んだ作品でした。
 ジェラシーを覚えました。

 しかし、それでも、私は、先生の差別論をお聞きしたかったです。
 世界を変えるものだったかもしれません。
 それが、もっとも悔やまれることです。」

ああ…と安井は頭に手を当てて、地面にしゃがんだ。



番組が終わる直前に、司会者は聞いた。
「今日、安井先生が帰ってしまわれたことについて、
 今、どのようなお気持ちですか?」

オーロラはゆっくり考えながら答えた。
「私の変な意地で、あのようなことになってしまい、
 今はとても反省し、後悔しています。

 先生の「じゃあ、男なの?」の発言で、
 私は、先生が私の本どころか、巻末のフロフィールさえ
 目を通していただけてなかっと悟り、失望と怒りを覚えました。

 しかし、今日の対談の中心的課題になるはすだった、
 『偏見と差別』というテーマの重要性を思えば、
 私のプロフィールを見ていただけたかどうかなど、小さなことでした。
「じゃあ、男なの?」と言われたとき、
「私は、性同一性障害です。」と自分の口で言えばよかったことでした。
 どうして、そうしなかったのかと、今、悔やまれてなりません。
 あんなことになってしまったことに、大きな責任を感じています。
 申し訳ありませんでした。」

「そうですか。オーロラさんのお気持ちは、先生に伝わっていると思いますよ。」
という司会者の言葉で、番組は終了した。



安井は、家に帰り、自分が去ったあとのスタジオの様子が気になり、
録画してあったものを見た。

すると、オーロラが、安井の差別論を語っていたのである。
オーロラは、安井の不在の中、安井作品の引用を借りて、
安井文学の「偏見と差別」について語っていた。

それを、安井は、まるで、奇跡のように感じて見入った。
内容は、すばらしく、安井作品を分析し、本質を見事にとらえていた。
しかも、安井作品の価値を聴衆に強く印象づける終わり方だった。

それは、今日のためにオーロラが、どれだけ安井の文学に対し、下調べをしてきたか、
十分に知れるものであった。

安井は、オーロラに深く感謝をした。
自分の失態を人々に忘れさせ、安井文学はやはり偉大だと人々に思わせてくれた。
安井作品を、もう一度1から読んでみたいという、視聴者の感想も聞いた。

「オレは、これほどの人物を、『たかが小娘』と蔑んだのか。
 そして、オレは、この人のプロフィールさえ見なかった。」
安井は深く悔やんだ。

さらに、安井は、オーロラの最後のインタビューの言葉を聞き、涙を流した。



安井は、翌日、局に謝罪の文を書いた。
すべては、自分の責任であり、相手のオーロラ氏には、何の落ち度もないこと。
オーロラ氏が、自分の抜けた後、安井論を展開してくれたことへの感謝。
オーロラ氏を代表として、世界の全てのマイノリティの人々を侮辱してしまったこと。
それは、自分の傲慢と高慢が原因であったこと。
許し難い言動をしたことを、お詫びしたいとのこと。
そして、末に、自分を反省し、見つめるため、休筆を宣言した。

謝罪文は、新聞に掲載された。
安井は、その謝罪文の最後に、オーロラがテレビで行った解説は、
我が文学の本質に達するものであり、1級の解説であったことを、
述べ、感謝の気持ちを再度綴った。

(挿入話・おわり)
※お読みくださり、ありがとうございました。

つづく(次回は、本流に戻ります。「有希、本格推理に挑戦」です。)



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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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