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スーパー洋子「私立桜台高校」④「全ては解放に向かって」最終回

4話完結でしたが、投稿してみると、1回が長すぎました。
これまで、読んでくださった皆様、ありがとうございました。
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スーパー洋子「私立桜台高校」④「全ては解放に向かって」最終回



洋子は、教室を出て、校長と理事長、副校長に、ことの一切を話した。
理事長は2代目で若く29歳だった。
温かな人格者であると同時に、大変な経営手腕の持ち主だった。
いつも、大変フランクな話し方をする。

理事長は言った。
「ま、お辞めになった5人の先生には、他の一流校に推薦して、
 なんとか、実害は最小限に食い止めたけどね。
あの3人には、辞めてもらおうよ。2クラスしかない3年生が、
 あの3人のために、1クラスがめちゃめちゃだ。
 Aクラスにいい生徒を集めてるんだからね。
 そっくりT大に行ってもらわないと困る。
 各教科の先生も大変な迷惑をしている。
 
3人には、罪の大きさも、わからせた方がいい。
 下手をすれば、来年の受験に、T大合格者ゼロ人になる。
 そうなったら、桜台のランクはガタ落ちだからね。
 早い所手を打とう。
 なあに、親が大学教授だろうがなんだろうが、娘がそんなワルでは、
 いさせるわけにはいかないよ。
 いいチャンスだ。倉田先生はよくやってくれた。」
校長は、
「理事長がそうおっしゃるなら、異存はありません。
 ただ、両親と娘共に、謝罪をされたらどうしますか。」と言った。
理事長は、
「それは、そのときの親の態度、娘の態度によるね。
 本気で心の底から反省しているなら、許す場合もあるかもね。」と言った。

このような、話になった。

3人は、荷物をまとめて、校長室に来るように放送があった。

3人は、校長室に来た。
そこで、校長はまず3人に退学希望の用紙に記入させ、提出させた。
「君達の退学希望は、受理されました。明日からこの学校へ来なくてもいいです。
 なお、今日の7時から保護者への説明をしますから、君達も来なさい。
 その場で、君達からはっきり退学の意向を述べなさい。」
校長はそう言った。
校長は、3人に、なんの弁明の余地も与えなかった。

3人は、どこかの段階で自分達は許されるのではないかと、願っていた。
しかし、退学が現実となり、真っ青な顔をしてうつむいた。
親にも弁明させないと、先生に言い切った。
退学は、決まった。
3人は、そのまま家に帰された。

帰宅への道で、夏子は考えていた。
もともと先生を辞めさせる目的でやったのだから、弁解の余地もない。
これまで3人で、5人もの先生を辞めさせた。
クラスの授業でも、先生の上げ足をとり、
授業を中断させたことは、数知れない。
クラスのみんなに、とりかえしのつかない罪なことをしてしまった。
みんなが、怒り、恨むのはあたりまえだ。
高校は義務教育ではない。退学はある。
私立校は、営利を考える。
自分のような行為をする生徒は、学校にとって、はなはだ迷惑だ。
夏子は、自業自得だと思い、同時に絶望した。
なんであんなことをして来たのだろうと、
それが、悔やまれてならなかった。


父啓介は在宅で、夏子は、家に帰って両親に事情をすべて話した。
父啓介は、
「じゃあ、しょうがないな。
父さんは、お前の卒業式の姿を見たかったが、あきらめるか。」
そう言った。
母信子は言った。
「夏子は、罪を償わないといけないわね。
 退学したって、なんの償いにもならないのよ。
 学校をお辞めになった先生方は、仕事を失い、苦しい生活をされていると思うわ。
 それを、どう償いますか。
 クラスのみんなの大切な授業を妨害した罪も大きい。
 みんなが、志望の大学へ行けなくなり、みんなの夢をつぶすかも知れない。
 過ぎた6ヶ月の授業は、帰って来ないわ。
 自分のした罪を本気になって考えなさい。そして、償う方法をね。
 あなたの罪は一生消えませんからね。
 母さんは、あなたをもう大学に行かせません。大検など受けさせません。
 明日から、外に出て働いてもらいます。この家にだけは住まわせてあげます。
 働いたお金で、償いをしなさい。」

夏子はうなだれたまま、一言も返せなかった。



「ところで、その先生は、夏子の書き間違えた式を見て即座に、答えたのか。」
父啓介は、言った。
「うん、そう。」
「X5と夏子が間違えた問題をか。」
「そう。」
「その先生の解を見せてくれ。」
夏子がそれを見せると、父啓介は、深く考え込んでしまった。
「なんという。全くの驚きだ。」
「そんなにすごいの。先生10秒くらいで解いたよ。」
「まさか…。」
「そんなに?」

「ああ、普通なら、解法の式が、80を越えるだろう。
 この先生は、4式で終わっている。しかも、正しそうだ。これは数学者の勘だがね。」
「父さんなら解ける?」と夏子。
「馬鹿を言え。X4で20年かかったんだぞ。死ぬまでがんばっても解けないよ。」
「じゃあ、なんで先生が解けたの?」
「だから、驚嘆に値するんだ。父さんは是非その先生にお会いして、お話を伺いたい。」
「じゃあ、あたしが正しく写していたら、あの先生解いたかなあ。」
「お前が渡した間違いの問題の方が、1000倍むずかしい。それが、答えだ。」
「じゃあ、写し間違えなくても、私の負けだったんだ。」
「ラッセル博士の疑問もご存知だったんだろう。世の中には、
我々の想像を絶するすごい天才が5万といるんだよ。
ただ残念なことに、それらの人は学者とはかぎらないんだ。」
啓介はそう言った。

「ラッセル博士といえば、倉田先生は、お父さんのこと、ラッセル博士と並んで、
 世界の5本の指に入る、偉大な数学者だって言ってた。」
啓介は笑った。
「はは、それはうれしいが、若くて優秀な数学者が、
 どっさり、父さんを抜いて行った。
 昔の偉大な数学者は、多くの人が独学だ。
 夏子も、夢をあきらめることはない。」
「うん。」
夏子は、父の言葉を聞き、少しほっとした。



大村夏子、木下朱実、加藤ユカの3人と、
その両親6名が校長室に集まった。
学校側は、理事長、校長、副校長、教務主任、3人の担任、そして洋子がいた。

娘の退学希望の説明を聞いて、どの親も、娘の退学は当然だと言った。
そして、深々と陳謝した。
過去、5人の担任を追い出し、他の教科の先生の上げ肢をとり、クラスに迷惑をかけたこと。
また、そのやり方が、普通の教師なら絶対解けない問題を、質問と偽り、解かせた巧妙さに、悪意を見出し、娘の退学希望にあっさりと同意した。

3人は、親が反論をしてくれると思い、最後の望みをかけていただけに、親のあまりにも簡単な同意に、絶望の色を隠せなかった。

大村も木下も、加藤も、学園生活にまだまだ大きな未練があった。
運動会や、学園祭も楽しみにしていた。卒業記念会もやりたかった。
何よりも、卒業式に出たかった。
また、他校への転学もありえるが、一人成績のいい自分達は、
きっと浮き上がり、いじめられると思った。
今のような、同学力の生徒と共に、勉強することはもう叶わない。

話がまとまり、最後の最後のときだった。
夏子の胸に、こらえきれない学校への思慕が募り、
どうしても我慢ができず、涙が泉のようにあふれてきた。

夏子は、座っているソファーを後ろにやり、
床に正座し、手をついた。
そして、涙ながらに訴えた。
「お願いです。私をこの学校に置いてください。
 お願いします。心の底から後悔し、反省しました。
 自分のしたことが、どれだけの罪であったかもわかりました。
 辞めてしまわれた先生方を訪ねて謝ります。
 クラスのみんなにも謝ります。
 私は、少し成績がよいことで、うぬぼれて増長していました。
 でも、倉田先生のように、私なんかが遥かに及ばない
 天才的な人が、星の数ほどいることがわかりました。
 それに、くらべれば、自分がいかに小さなものかがわかりました。
 これからは、もっと謙虚に、素直に、先生方の言うことをきき、
 決してクラスに迷惑をかけないようにします。
 そして、クラスのために働きます。
 クラスのみんなに、役に立つことなら何でもします。
 学校のために、尽くします。どんな仕事でもします。
 トイレ掃除も、私が一人でずっとやります。
 だから、この学校に通わせてください。
 倉田先生に、謝ったりしないと約束しましたが、
 私は、この学校が好きです。みんなに迷惑をかけた分、
 やり直しがしたいです。
 このままでは、償いもできません。
 私にチャンスをください。どうか、お願いします。」
そう言って、夏子はわあーと泣き出し、床に伏した。

すると、木下、加藤の二人も来て、
夏子の隣に手をついて、泣きながら、
必死であやまった。

親たちは、目を潤ませていた。

理事長は、校長や副校長、洋子と目で対談した。
そして、しばらく考え、やがて、うなずいた。

「もういいよ。3人ともソファにもどりなさい。」と理事長が優しく言った。

3人は、それでも、まだ床にいた。

理事長は言った。
「学校は教育の場でありますし、生徒を裁くところではありません。
 慢心することは、誰にも一度はあるでしょうし、私とて人のことは言えません。
 また、罪にしても、誰もが何らかの罪を背負っていることと思います。
 間違ったら、反省し正すことが大事かと思います。
 取り返しのつかないこともありますが、それは、未来に対し尽くせばよいと考えます。
 3人の反省の言葉を聞いて、真心と見ました。
 よってこの「退学願い」を学校は受理しません。」

理事長は、校長や、親達の顔を見て、
「じゃあ、こういうことにしませんか。」
と言って、3枚の退学願いを破り捨てた。
親達が、一同立ち上がって、理事長、校長、副校長、洋子に深く礼をし、
感謝の言葉を述べた。

床でうつむいている3人に、洋子は、
「退学は、取り消しよ。」と言った。
「え?ほんとですか。ありがとうございます。」
と3人は言った。
「先生、ごめんなさい。これからちゃんとやります。」
と3人は、洋子にしがみついて、再び泣き始めた。

「まずは、クラスのみんなに、どう尽くすかにかかっているわね。
 みんなが許してくれるまで、時間がかかると思うけど、
 3人でがんばれば、少しずつ、わかってくれるでしょう。」
洋子は言った。
「はい。トイレ掃除を毎日やります。
 教室に早く来て、教室をぴかぴかにします。
 みんなが、許してくれたら、勉強のヘルパーになります。
 自分の受験など、後回しにして、みんなのために尽くします。
 がんばります。なんでもします。」
と3人は言った。



皆は、笑顔で散り散りになっていった。

洋子のところへ、夏子と父の大村啓介と母が来た。
「倉田先生、もう、ほんとにこの度は。」と啓介。
「まあ、教授。お会いでき光栄ですわ。」と洋子。
4人は、靴箱に向かい歩きながら、
「ところで、倉田先生は、私の今回の解法をどうご覧になりますか。」と教授。
「それなんですが、オクスフォード大学のラッセル博士は、
 教授の、第8式の3項目のXは、ファジーじゃないか、
 だから、最終式は、ただ確率を表すに過ぎないと、疑問を提出されていますよね。」
「はい、それなんです。頭の痛い疑問です。」と教授。
洋子は言った。
「しかし、私は、もう一つ第7式の6項目のXにもファジーの可能性を感じるんです。
 そこで、ファジーな二つのXが互いに干渉し合うことによって、クリアとなり、
 教授の最終式は、『確率』ではなく、『確定』と断言できるのではないかと思うんです。」
教授の顔に、ぱっと花が咲いた。
「『干渉』ですか!おお、あああ、そうかあ、おおお、いけますな。おおおおお。」と教授は歓喜して、娘を抱いて、くるくる回った。
「いやあ、これは、ありがたい。感謝感激です。
 もう、一体倉田先生は、どんな方なのか、まさに奇跡です。
 私、家に飛んで帰って、倉田先生の今のご意見をすぐに検証したいと思います。
 夏子、倉田先生は、父さんの救いの女神になるかもしれないよ。
 では、いずれ、ゆっくりと。私、すぐにやりたがりなもんですから。」
と、教授は急ぎ足になった。
「先生、ありがとうございました。」と夏子に笑顔が戻っていた。いい顔をしていた。
夏子の母が、「お世話になりました。私、数学はゼロですの。」と笑いながら歩を進めた。



洋子は、先生たちと職員室に帰っていた。
ふと首をかしげた。
これで、使命は終わり、トイレに入り、洋次になって消えるのだろうか。
いやいや、まだ、使命は終わっていない。
心を入れ替えた3人の頑張りを見守らなくてはいけない。
クラスは、勉強が遅れている。
1日2時間の補習が必要で、それは、自分が診る。
3人をアシスタントにして、A,B両クラス診なくては不公平。
補習は、自方式でやる。
これで、Aクラスは、全員T大合格。Bクラスは、20人合格。
合わせて、60人合格だ。
「やったー!新記録だ!」
と洋子は、すごいガッツポーズをとった。
みんなが、洋子を見た。
「洋子先生。何が、やったーなの?」と理事長がにこにこして言った。
「えへへ。来年の受験をお楽しみに。」と洋子は、にまにまとして、
前髪を、ふーと、笑顔で吹き飛ばした。


<おわり>

※お読みくださり、ありがとうございました。

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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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