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スーパー洋子VS天才少女希来里②「圧倒される天才少女」

スーパー洋子VS天才少女希来里②「圧倒される天才少女」


洋子が今手にしているのは、その生意気な娘、白石希来里(きらり)の推理小説、
「猫の目は闇を見つめる」の第1巻だった。
原稿用紙100枚を、袋とじして穴をあけ紐で結び、本にしてある。
かなり丁寧であり、投げやりな原稿ではない。
洋子は、希来里に対し、沢井が言うほどの悪い印象は持たなかった。

白石希来里は、明日、残りの2巻から5巻を持ってくるという。
洋子は、手にある第1巻を、パラパラパラと見た。
「なるほど、知的でおもしろそうな展開。
 さすが、IQ200。」と洋子は思った。



翌日、洋子は、よく充電された小型のパソコンを持って、
1階のブースで白石希来里を待った。
出版社の1階は、自費出版の客と編集者が応接する場であり、
会社のイメージをよくするために、特別に内装を凝らしてある。(2階から上は、かなりなボロである。)
看板である受付嬢の2人は、超美人。
客と打ち合わせをしていると、美人の受付嬢のどちらかが、
コーヒーなどを持ってきてくれる。

洋子が待っていると、受付嬢が、
「白石さんが、お見えです。」と言いに来た。
洋子は、「はい。」と言って、
玄関に白石希来里を出迎えに行った。

希来里は、昨日の沢井の言葉通り、金髪のカールを、頭からたくさん垂らし、
髪にたくさんの小さなリボンをつけていた。
服は、人形のようなドール服だった。
その服装に似合わず、ガムを噛んでいる。
これは、誰が見ても、T大の医学部の学生とは、思わない。

顔立ちはとても可愛いい、というより美人である。

「お待ちしていました。どうぞ。」と洋子が言うと、
「うん。」と希来里は子供のように言った。

ブースに案内して、希来里と対面に座った。
希来里は、脚を組んで、斜めを向いて座り、
片腕をソファーの背に乗せていた。
かなり、お行儀が悪い。
洋子は名を名乗り、名刺を出した。
希来里は、名刺を見もしなかった。

洋子は、UBSメモリーを差したパソコンを開いた。

「今日は、2巻から5巻までお持ちくださいましたか。」
と、洋子。
「うん。」とまた言って、希来里は、原稿用紙100枚を袋とじにして、紐で本にした4冊を、
乱暴にもポンとデスクにほうった。
「少し、乱暴ですね。」と洋子は言った。
「いいの。ちゃっちい推理小説だから。」
と、希来里は言った。
始終、ガムを噛みながら、ぶすっとした顔をしている。
横を向いているが、ちらちらとは、洋子を見ていた。

「拝見します。」と言って、洋子は、2巻目を、パラパラパラとめくり、その調子で、
5巻まで、わずか30秒足らずでパラパラとめくった。
これで、洋子は、物語の全文を記憶した。

「少々お待ちください。」
と洋子は言って、希来里の前で、猛烈なスピードで、キーボードを打ち始めた。
その速さは、ピアノの32分音符を連打するごとくで、
指の動きが目に見えない。

希来里は、初めてまともに洋子に目をやり、
洋子の指を見ていた。
どうも、感心しているようである。
打ちながら、洋子は、
「今、飲み物を伺いに来ますので、少しお待ちください。」
とにこやかに希来里を見て言った。
その間も、指は動いている。

やがて、飲み物のお伺いが来て、希来里も洋子もコーヒーをたのんだ。

「飲み物が来るまで、もう少しだけお待ちくださいね。」
と洋子は言い、少し経って、打ち終えた。
そして、パソコンの蓋を閉じた。
洋子は、この時、草書体で書かれた白石希来里の原稿を、
すべて活字体にし、誰でも読める現代表式にした。
更に、校正を終えて、意見書を付け、
パソコン本体とUSBメモリーの中に、記憶し終えていたのだった。

コーヒーが来ると、希来里は、感心にもティッシュを取り出し、ガムをそれに包んで、バッグの中に入れた。
洋子はしっかりとそれを見た。

コーヒーを飲みながら、
「白石希来里さんは、天才だって、編集の者が自慢していましたよ。」と、洋子は言った。
「たいしたことないわ。IQ200って、
 ただそれだけのことよ。」
本気で言っているなら、たいしたものだと洋子は思った。

「希来里さんは、可愛い方ですね。
 そのファッションもとってもお似合いです。」
と、洋子は言った。
「うん。」
と、希来里は、あらぬ方を見て、気のない返事をした。

洋子は、本題に入っていった。
「希来里さんの推理小説ですが、とても斬新で知的な作品だと思いました。」
それを、聞いて、希来里は、「え?」と声を漏らした。
(いままでのぶっきら棒を忘れたかのごとくに。)

「いつ読んだの?まだ、読んでないじゃない。」
と、初めて洋子に体を向けた。
「さっき、拝見しました。」

「え?じゃあ、あのパラパラっと見たとき?」
「はい。」
「うそ。草書体よ。あんなに早く読めるわけがない。」
「何体でも同じです。正しく崩された文字なら、
 等しく読めます。
 希来里さんの字はお手本のような綺麗な草書でしたので、
  するすると読めました。」
希来里は、さすがにぽかんと口を開けた。
洋子は、USBメモリーを抜いて、
それを、希来里に差し出した。

「これが、第一校正です。私は、下っ端ですので、
これから、第二校正を近藤、第三校正を坂田がします。」
「ま、まってよ。」と希来里はあわてたように言った。
「あたしの原稿を活字入力し、さらに校正したのが、
 このメモリーの中にすでにあるっていうの?
 うそ?何時やったの?」

「さっき、私は、必死にキーを叩いていたじゃないです
 か。」
「あれが、そうだったの?原稿見てなかったじゃない。」
「あたしは、一度読んだものは、全文暗記します。」
「うそ・・・。」
希来里は乗り出していた体を、ソファーに沈めた。

希来里は、何やら考えながら、コーヒーを飲んでいた。

「希来里さんは、あの原稿が読めて、校正ができる者と
 ご指定でしたので、沢井に代わり、私が来ました。」
「あなた、どういう人なの?」
「沢井より1年先輩である者です。」
と洋子は答えた。

「本題ですが。」と洋子は始めた。
「原稿には、24の誤字があり、16の脱字が
 ありましたので、
 そこは、直して赤字にしてあります。
 また、文章表現を直した方がいいと思われるところは、
 原文の横に、青でよりよいと思われる文を
 並べておきました。
 これは、希来里さんが、比較して、お選びください。

 あと、点、円、会話文のカギかっこ、濁点、などなど。
 段落取り等は、一般の文のように、直しておきました。

 また、推理小説として、条件不足と思われるところが、
 全体に7か所ありましたので、
 そこも、末に意見書を添えました。
 この7か所が克服されないかぎり、
 この小説は、最後に犯人を1人に
 特定できないと思いました。
 犯人は、1人なのですよね。」
洋子は言った。

希来里は、驚きの表情をして、
洋子を見つめっぱなしだった。

「そう、1人。そのつもりで書いたの。
 例えば、どこが変だったの。」
希来里は力なくたずねた。

希来里は、洋子の圧倒的な能力を目の前にして、
IQ200というプライドが、ガラガラと崩れていくのを自覚していた。


■次回予告■

推理のミスを指摘していく中で、
今度は、洋子が希来里を推理します。


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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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