スーパー洋子・入社面接(後編・完結編)

スーパー洋子・入社面接(後半・完結編)


(複素数 i とは、2乗して-1になる数です。 i × i = - 1)

「せっかくメモに書いていただきましたが、
 それ、一つも校正なさる必要はありません。」と洋子。
「どういうことですか?これ、あの高名な、山崎先生の作品です。
 完璧なストーリーを書く方です。
 うちに原稿が来たことは、奇跡みたいなことなんです。」百合子は言った。
「そういう方に限って、致命的なミスをなさいます。」と洋子は言った。

「山崎三郎先生は、T大の数学の助教授ですよね。
だから、推理小説は、推理をする主人公・島田浩平が、
推理に数式を使うのがステキなところです。
しかし、今回に限り、山崎先生は、大きなミスをなさいました。」

「ええ?」と2人は身を乗り出した。

「重要な数式は、5つ出て来ます。
 その5番目の、1番大事な、犯人を特定する数式で、
山崎先生は、「複素数」の存在をお忘れになりました。」

「複素数・・・?」百合子、大岡。
「はい。2乗して-1になるというものです。
 普通、2乗すれば、+ になりますよね。」洋子。

「物語中では、その複素数をA子とします。
複素数だから、絶対表に出てきません。声も出しません。
何をする人かわからない。

1つの数式で複素数の存在を忘れると、必ずその相棒の複素数も忘れます。
物語では、もう一人の複素数B子です。
B子は身体障害者です。A子の協力がないと生活が困難です。
そういう意味では、印象に残る人物を登場させた。
しかし、その後、A子、B子に関する叙述が一つもない。
 
犯人を決定する最終式にも、A子、B子、二人共出て来ないのです。
つまり、A子とB子を、山崎先生は、登場だけさせておいて、
書きっぱなしにしておられる。
これは、推理小説において、反則、フライングなのです。

なぜ、A子B子が、出て来なくなったのか。
それは、先生が物語を書くうちに、忘れてしまったからです。

先生は、ある人物を犯人にするつもりで、書き始め、
それには、アリバイの偽装工作を手伝うA子B子の存在が必要だった。
しかし、物語を書き進むうち、別の人物を犯人にした方が、
断然、意外であり、おもしろいと気づかれ、犯人をその人物に変えました。
その瞬間、A子、B子の存在理由は、なくなったのです。
初めに想定した犯人も存在しなくてよくなった。

もし、覚えていたら、第1式に、A子B子をあらわす複素数を入れた。
そして、第3式で、無意味として排除した―1(つまり、初めの犯人)を残していた。
山崎先生は忘れても、鋭敏な読者は、「3人はどうなったのだろう。」と覚えているのです。

表に絶対顔を見せない2人ABは、「複素数」です。
そして、二人は、言わば、乗法の関係にありますので、あわせて「-1」となります。
主人公は、第3式で、マイナスはあり得ないとして「-1」を、
除外してしまいます。
物語で言えば、アリバイがあり、犯人として除外というところです。

ところが、もし、この(旧犯人の)―1を残しておけば、
A子とB子が合体した―1と結びついて+1になるではありませんか。
つまりは、先生が忘れていた旧犯人が姿を現してしまうのです。
先生が忘れても、数式は覚えています。
一方、山崎さんが、心変わりした本命の犯人は、初めから+1として、
本流に、流れている。
そこに、A子B子が協力した別犯人が、+1として、現れる。

ここに、本命が1人。別犯人が1人。
犯人は2人となります。
共犯などにしたら、読者からブーイングの嵐です。
この小説では、犯人は、1人でなくてはなりません。

よって、この推理小説は、未完成です。」


百合子と大岡は、ぽかんとして洋子に見取れていた。  
「どうでしょう。大卒レベルを圧倒的に越えていたでしょうか。」
「超えていますとも。」大岡と百合子は、声をそろえて言った。
「このくらいなら、蔑まれないでしょうか。」
「だれも、蔑んだりできません。」大岡と百合子。

「待ってください。倉田さんのご意見が正しいように思います。
 今、山崎先生に電話をします。私には、説明ができません。
 そこで、先ほどのことを、山崎先生にお話ししてくださいませんか。」百合子。
「もちろん、OKです。」

百合子は、山崎に電話をした。幸い山崎は在宅だった。
百合子は、入社面接に来た人物に、山崎先生の原稿を見せたところ、
推理が未完成だと言う。
そこで、面接者がいるうちに、彼女の考えを先生にと、お電話をした。
そう言った。
電話の向こうで、山崎が驚いている声が聞こえた。

洋子は、面接官2人に説明したよりかなり簡潔に、山崎に語った。
すると、山崎が、電話の向こうで、驚嘆している声が聞こえた。
「いやー、ありがたい。倉田さんとおっしゃいましたね。
 全く、倉田さんのおっしゃる通りです!
 確かに私は、書いている途中で、犯人を変えたのです。
 そこで、いらなくなった人物を整理する段階で、A子、B子を忘れました。
 複素数という残し方に気が付きませんでした。
 複素数として残していれば、推理の矛盾に気が付いたでしょう。
 数学者として、「複素数」の存在を忘れるとは、赤面の至りです。
 このまま本を世に出していたら、私は大恥どころか、
 作家生命も失うところでした。
 それが、編集者も気が付かなかったことを、校正の立場から指摘してくださるとは、
 なんと素晴らしい。ありがとうございます。
 今、入社面接に来ておられるとか。
 倉田さんが、採用されれば、
 私は、これからの出版をすべて三栄さんにお願いするでしょう。
 面接の方に代わっていただけますか。」

電話は、百合子に渡った。
山崎が、洋子を絶賛しているのが、わかった。
洋子が採用されるなら、今後自分の作品は、すべて三栄出版にお願いする。
今の原稿は、全文書き直すと言った。

百合子は、受話器に何度も頭を下げて、電話を切った。

隣の大岡に、電話の声がすべて聞こえていた。

「では、内定は、後日ということでしょうか。」と洋子は立とうとした。
百合子と大岡は、二人いっしょに、洋子の手をデスクに押さえつけた。
「ダメです。私が、今、ここで、内定の通知を作ります。
 他に行かないでください。
 百合子さん。社長がなんか言ったら、私の味方をしてくれますか。」
「しますとも。山崎先生の作品が全部来るなんて、校正部の株が、一気に上がります。
 それに、私の仕事も楽になります。」
洋子は、にっこりとした。

大岡と百合子は、初めから学歴にこだわる人ではなかった。
帰り道、洋子は、そう思った。

<おわり>

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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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