プロポーズされたことがあります②(最終回)

プロポーズされたことがあります②(最終回)


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塾の宴会。一番奥にいるのが私です。

Yさんとは、仕事帰り、喫茶店に週に2回くらい行きました。
いっしょに歩くと、人の目があるので、
時間をずらしていきました。
話す内容は、相変わらず、心配な子の話です。
その時間がほとんどでした。
Yさんも、私も熱心な教師だなあと、ときどき思いました。

あるとき、Yさんは話題を変えて、
ご自分の300万円の慰謝料のことを私に話しました。
ずいぶん払ったので、あと150万円くらいだとのことでした。

私は、待てよ、まずいかもと思いました。
プライベートなことは、何一つ話さないYさんなのに。

「ぼくは、ずっと国語を教えたかったんだけど、
 ぼくと、ペアを組んでくれる算数の人がいませんでした。
 一度、ある人と組んで、散々怒らせてしまいました。
 それ以来、算数をぼくと組んでくれる人がいなくて、ぼくは、研究室にいました。
 それを、理事長が、ジュンちゃんに打診してくれて、
あっさりOKだったと言われました。
ぼくのこと何も知らない人だからOKをもらえたけど、
ぼくのことが分かって来ると、嫌われると思っていました。」

「ずっと、ウマがあってますよね。」と私。
なんだか、危機が迫っていると感じました。
「そう、ウマがあってますよね。
 そこでなんですが、ぼくの慰謝料の返済が終わったら、
 ぼくと、お付き合いしてくれませんか。」Yさんは言いました。

(これは、プロポーズと同じ。どうしようと思いました。)

「ジュンちゃんと組めるようになったとき、理事長は言うんです。
 Yさんは、惚れっぽいから言うんだけど、ジュンちゃんだけは、惚れちゃダメ。
 絶対にだめって。理由を聞いても、理事長は、絶対言いませんでした。」

私が、「好きな人がいるから。」と言えば、いっぺんで断ることができるでしょう。
しかし、私は、事実ではないことを言うのは、よしとしませんでした。

「理事長のいうとおり、私には事情があって、お付き合いはできないんです。」
私は、言いました。
「そうですか。理事長が言って、目の前でジュンちゃんが言うなら、
 そうなんでしょうね。わかりました。あきらめます。」
Yさんは、少しがっかりした風。逆にすっきりした風に言いました。

それから、2か月ほど経って、Yさんは、故郷にお見合いに行きました。
そして、にこにこして帰ってきました。
「Yさん、どうでした?」と私が聞くと、
「可愛い人なんですよ。この写真の人です。
 話、決めて来ました。」とYさんは、言いました。
写真に写っていたのは、小柄で細身の清楚な人でした。

Yさんを嫌っている人達も、このときばかりは、
写真を覗きに来ました。
「わあ、可愛いじゃない。」
「Yさん、やったね。」
とみんなが言いました。
「ええ、そうなんです。可愛い人なんですよ。」
とYさんは、にこにこ顔で言いました。

Yさんのフィアンセが東京に来て、
二人は、アパートの生活を始めました。
Yさんと私は、1年のコンビが終わって、
お別れになるころでした。
Yさんに言われました。
「家内が、ジュンちゃんに是非会いたいというんです。
 そして、よかったら、明日家に来てくれませんか。
 チラシ寿司を作るそうです。」
そう言われました。

翌日、仕事が終わって、私は、Yさんといっしょに、
Yさんのお宅にいきました。
奥様のT子さんは、写真通り、小柄で可愛い人でした。

丸いお膳を囲って、いただきました。
T子さんは、
「Yさんは、お見合いのデートのとき、全部話してくれました。
 慰謝料のことから、職場で嫌われていることまで。
 その中で、ジュンちゃんという女の先生だけは、ぼくを嫌わない。
 心からいい人なんだ、と何度もいうんです。
 これ、デートの最中にあんまり繰り返して言うことじゃないですよね。」
「そうですよね。」と私は、笑いました。
「それで、ジュンちゃん先生に一度お会いしたくて、今日来ていただいたんです。
 つまり、ジェラシーを解消するのが目的です。」

「そうですか。」と笑いながら、「ジェラシーは、解消されましたか?」と私。
「はい。解消されました。」とT子さん。
「ジュンちゃん先生には、特別なやさしさを感じます。
 そう人には、ジェラシーを感じません。」
「ああ、よかった。あたしも、Yさんのいいところを言いますね。」
「なんですか。」
「職場の中で、Yさんの陰口を言う人がいましたが、
 Yさんは、1年間、一度も人の陰口を言いませんでした。
 そして、仕事の愚痴も言いませんでした。
 私は、立派だなといつも思っていました。」
「わあ、そんな風に言われると、悪いことできないなあ。」とYさん。
「あたし、不器用でも、正直な人が好きです。」とTさん。
「わあ、お二人とも、大当たりですね。」と私が言って、みんなで笑いました。

翌年度、私は、塾の分室に行って、中年の方と2人で組みました。
Yさんは、元の研究室に戻りました。 
お互い、左遷ではありません。

<おわり>

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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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