鷺の院 洋之助の妻・知恵③『夢のような再会』

どうしても、1話が長くなります。すみません。
読んでくださるとうれしいです。
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鷺の院 洋之助の妻・知恵③『夢のような再会』


道場は、このあと稽古があり、知恵も坂本も加わった。
紗枝の家に、今夜は客人があると聞き、夕月も百々も胸が躍っていた。

町の外れに、小さな神社があり、そこに齢80歳になる皺くちゃの巫女がいる。
神社の隣は、さほど大きくはないが、剣道場があった。
今、老齢の巫女のところに、二人の侍がやってきた。
夕月の道場で、坂本に吹き飛ばされた2人である。
二人は、老巫女に深くお辞儀をした。
「近衛、権太、夕月の道場はいかがであった。」老巫女は言った。
「それが、邪魔が入り、我々は、吹き飛ばされました。」近衛。
「背が6尺もあり、縮れ毛で、鬼のような奴で、
 我々など、剣の一振りで終わりました。」権太。
「それは、無理もない。そいつは恐らく、坂本竜太じゃ。」と巫女。

「巫女様は、ご存知なのですか。」近衛。
「ああ、祭りの似顔絵売りの絵を見た。
 剣をとっては、江戸一番のものだ。
 だが、剣は絶対抜かず、『抜かぬ剣士』というそうな。不思議な男だ。」

そのとき、知恵にやられた二人が、額のコブに布を当ててやってきた。
「なんじゃ、清兵衛、左門ともあろうものが、揃って額にこぶか。」と巫女。
「面目もありません。縁日で首侍を観察しておりました。
 そこに旅装束をした生意気な女が来まして、懲らしめましたるところ、
 逆に、やられました。」清兵衛。
「二人は、道場で6段、7段の強者ではないか。そのお主らがやられたのか。」巫女。
「あっという間にやられました。あの女は、只者では、ございません。」左門。
老巫女は、考える風をした。
「巫女様、夕月よりあの女を若様の家来になさっては、いかがです。
 それこそ100人力、200人力の女です。」と清兵衛。
「それは、なるまい。恐らく旅装束のものは、国の宝。博学を修め、
国中を回り、人々を助け行く。井戸の水が出るところを当てたりしての。
そういう者が、いることを聞いたことがある。
恐らくは、世に天狗と呼ばれし者の一人じゃ。
 夕月は、違う。土地のものだ。士官は無理でも何時でも若を助けに来られる。
 何より、この婆の80年の風水が、ずっと前から、夕月を指しておるのだ。

 城主実篤様は、無類の武道好きでおられるが、
13年前、城の千金万金に値する宝、剣豪佐々木小次郎を死なせてしまわれたのだ。
その責は自分にあると己を咎め、お元気を失のうてしまわれた。
若は、そんな殿に、小次郎に匹敵する者を見つけ、殿を元気づけたいのじゃ。」

「その小次郎に匹敵するのが、夕月なのですか。」と左門。
「いかにも。この婆の、最後のお勤めじゃ。」巫女は言った。

夕月道場の隣、紗枝の呉服問屋の居間には、おいしそうなものが並んでいた。
知恵は、ソワソワしている。坂本竜太も、招かれていた。
その内、知恵の夫洋之助が顔を見せた。
「ひやー、旦那様、待てませんでしたぞ。」
と、知恵は言って、洋之助の隣にべったりもたれかけた。
「知恵様、さっきのわしの扱いと、ずいぶん違いますな。」と竜太。
「めったに会えぬ旦那様ゆえ、このくらいは、よいであろう。」と知恵。

やがて、驚くべき人物が来た。
体は、竜太ほど大きい。美しい女性を連れている。
「ムサシでござる。」そう聞いたとき、夕月と紗枝はどきんとした。
竜太は、再度びっくりし、
「あの、あの、宮本ムサシ様でございますか。
 では、となりは、お通様ですな。
 ひやー、この家は、どんな家でございますか。」
「坂本殿は、知っています。『抜かぬ剣士』でござろう。」とムサシ。
「な、なんと。ムサシ様が、わしを知っていてくださる。」竜太。
「祭りの似顔絵で、なかなかの人気であるそうな。」ムサシ。

「えへん。」と洋之助が言った。
「子供に教わり、今は、私が似顔絵売りをやっているんだよ。」
だんだん酒が回り、宴たけなわとなっていった。
「旦那様。私の似顔絵はまだ出ませんよ。」と知恵。
「知恵の顔を書くと、似すぎてしまってな。正体がばれるのだよ。」洋之助。
一同、笑っている。
「あのう。」と百々が口を開いた。
「佐々木小次郎さまは、ないのですか。
 どこの縁日に行ってもありません。」
夕月と紗枝は、ドキッとした。
「ほう、百々ちゃんは、小次郎が好きか。」ムサシ。
「はい、子供のころからの、憧れの人です。」百々。
ムサシは、夕月や紗枝、洋之助をちらりと見た。
(うまく話しをするから・・という意味だ。)

「じゃあ、小次郎の話を少ししよう。
 当時、わしは、国1番の剣豪と言われていた。
 だが、わしは、そうは思っていなかった。
 国一番は、佐々木小次郎である。
 それが、小次郎とわしとで決闘をすることになった。
 わしは、小次郎が恐ろしいてたまらず、洋之助に頼んだ。
 前もって、小次郎の太刀筋を調べてもらった。
 洋之助は、小次郎の剣は神業だという。
 そこで、ここにいる紗枝殿、夕月どの、洋之助で船を出し、
 小次郎とわしと、二人共死なぬ作戦を立てたのだ。
 そして、うまくいった。今は、どこにいるか知らぬ。
 しかし、小次郎は、紗枝殿夕月殿を命の恩人と思っている。
 百々ちゃんも知っているぞ。
 恐らくは、この家の守り神として、見守っているはずだ。」

「そうですか。この家の守り神様。うれしいです。」百々は目を潤ませて言った。
百々は、紗枝と夕月を見た。二人は涙を浮かべ、うなずいていた。

「さあ、佐々木小次郎ができたぞ。特別に百々ちゃんにあげよう。」
筆を振るっていた洋之助は、男のときの小次郎を書いた。
「わあ、すてき。どこかで、会ったことがある気がする。
 やっぱり、守り神様なのですね。」百々は言った。

紗枝は、竜太に言った。
「坂本様は、江戸では、造船の研究所にいらっしゃるとか。」
「はあ、遊ばせてもらっている程度ですか。」
「実は、百々は、船博士で、道場のないときは、部屋で船の研究ばかりしています。
 百々、坂本様に、少し見ていただいたらどう?」
「はい!」と百々は立ち上がった。

隣の部屋が、百々の研究所だった。
坂本は、嬉々として、百々の部屋に来た。
すると、筆で書いたと思えぬ詳細な設計図があった。
竜太は、感心して見た。
「これ、百々ちゃんが書いたの?」
「はい。黒船に見える、商船です。」
「ほお。」
「船にはタールを塗ります。黒船に見えれば、海賊船は寄って来ません。
 見かけだけの大砲も、木で作って黒く塗っています。
 空砲を打ちます。
 ほとんどは、帆で進みますが、蒸気も使います。
 とにかく、速く進んで、海賊船をけちらします。」

「これは、すごい。たまるか。」と竜太は言った。
「推進力は、これです。」
「風車のようだね。」
「はい。スクリュウというそうです。
 全部、水の中に入って回りますので、水の抵抗が少ないです。
 あ、模型があります。」
百々は、自作スクリュウの模型を持っていた。
「これ、私が作りました。こうして、回しますと、風がきます。
 たくさん風が来るということは、それだけ、推進力があるということです。」

竜太は、百々の才能に胸が震えた。
本物を見ていないのに、ここまで考えたという。天才だ。

「百々ちゃん。江戸へ来んか。君のように船が死ぬほど好きな人達がいる。
 みんな、いい人ばかりだ。」
「わあ、それは、うれしいです。行きたいです。」
竜太は、隣の部屋をあけて、紗枝と夕月に向かって正座をした。
「紗枝さん、夕月さん。百々ちゃんは天才です。
 江戸の造船研究所に、ください。
 きっと、百々ちゃんが、大喜びするところです。」

(次は、「夕月流活人剣」です。)
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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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