鷺の院 洋之助の妻・知恵②「夕月の実力健在なり」

今回、また長くなってしまいました。
読んでくださるとうれしいです。
えっちではありませんので、両方のブログに書いています。
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鷺の院 洋之助の妻・知恵②「夕月の実力健在なり」


道場は、貧しい女・子供のためのもので、稽古代もとっていない。
貧しい子に、胴具は負担であり、それを使わず、面もなし、竹刀もない。
代わりに、籐を棒にしたものを使っている。
これなら、当たってもさほど痛くない。
おまけに、昼になると飯を炊いて、大きなお結びを子供たちに振舞っている。
その資金は、紗枝が出している。
貧しい家庭の子は、道場の握り飯がなければ、
水だけを飲んで、昼を過ごさなければならない。

知恵と坂本が、夕月剣道道場に来たとき、白い上着に、白袴。
道場長と見える美しい女性が、二人の柄の悪そうな侍に膝を折って、謝っている。
子供たちは、道場の隅で固まっていた。

「私は、女・子供相手の道場を開いており、お侍様に勝てる腕など到底ございません。
 どうぞ、お許しくださいませ。」
「それを何べん言うのだ。それは、わかった。だから、『礼』を少しばかり出せばいいのだ。」
「何もしていただいていないのに、何の『礼』でございましょうか。」夕月。
「ええい。わからぬ女じゃ。」

「まった!」と知恵は声をかけた。
「礼なら、先生の1番弟子。ここにいる坂本がいたそう。
 坂本、一発立ち会って来い。」と知恵は言った。
「はい。」
と、6尺はある縮れ毛の坂本は、裸足になり道場に礼をして、上がって行った。
坂本は、縮れ毛を無理にも後ろでくくっている。

坂本は、道場に飾られている竹刀を1本手に取り、道場の正面を背にした。
「では、先生には及びませんが、その『礼』とやらをお返し申す。」
坂本は、竹刀を上段に構えた。その竹刀がピタと微動だにしない。
二人の侍は、竜太の大きさと、その構えを見て、体が震え、竹刀を震わせていた。
「やあ!」と坂本が、打つと、2人はそのまま尻もちをついて、
草履を抱いて、逃げて行った。
「わ~い、わ~い。」と子供たちは、飛び上がって喜んだ。

子供と丸く座って、自己紹介をした。
「私は、ここらお祭りで天狗の似顔絵で知られております洋之助の妻、知恵と申します。」
と知恵が言うと、夕月は、驚き、涙を流さんばかりにした。
「まさか、あの洋之助様の、奥様でいらっしゃいますか。
 あたしの命の恩人です。お会いできて、感激です。」
「おお、天狗様の奥方ですか。それは、お強いはずですな。」と坂本は言い、
「私は、しがない縁日の首侍をしております、坂本竜太です。
 この動乱の世に、何をしてよいかわからず、首侍でもしておりますが、
 今日、知恵様に、人相を誉められ、大いに自信がつきました。」竜太。
「竜太さんも、祭りの似顔絵にあるぞ。その縮れ毛が特徴じゃ。なあ。」とある子供。
「『抜かぬ剣士』というのがあだ名じゃ。
強い武士なのに、絶対刀を抜かないという、
それがかっこええと思う変わり者に人気じゃ。」違う子。
「竜太さんも有名人じゃ。」
と子供たちは口々に言った。
「ほんとですか。わしゃ、有名人になりとうてたまらんかったですが、
 もう、なっとったというわけですな。」と竜太。
「そうじゃ、そうじゃ。」と子供たちが笑った。
「私は、女同士で夫婦となり、隣の呉服問屋の紗枝にこの道場を立ててもらい、
 好きな剣術を教えています。夕月と申します。」
(女同士の夫婦と聞いても、坂本は何も驚かなかった。)

坂本は言った。
「私は、先ほどから感服つかまっております。
 剣道は、防具として胴が要り面が要り、小手、竹刀が要りと、
それを揃えられる裕福な子弟でないと習うことができません。
ところが、こちらは、そんなものを一切使わず、竹刀の代わりに籐の棒を使い、
貧しい子でも、女子でも、体一つで剣道ができるようにされています。
こんなお心の道場を初めて見て、感激いたしました。」竜太は言った。
知恵が言った。
「竜太はさすがじゃな。見るところが、人とはちがう。
 夕月さんどう見る。この竜太殿は、なかなかの人物と見ませんか。」
「はい。防具を使わぬこの道場を、バカにし、悪し様に言う人もいます。
しかし、竜太さんは、道場の心を見てくださいました。
他の方にはないお宝を胸にお持ちの方と拝察いたしました。」夕月は言った。
「そうですか!」と竜太は、子供のように、にこにこした。

知恵が聞いた。
「ところで、今日のように、悪い奴らが来て、坂本のような助太刀が、
 来ないときは、どうされてますか。」
子供の一人が言った。
「子供みんなで、表に飛んで出て、『先生が危ない、助けてください。』と、
 大声で、叫びます。先生は、貧しい子たちの宝ですから、親たちは、
 いろんな道具を持って、命がけで助けに来てくれます。」
「なるほど。これは、子供の知恵が勝りますね。」
知恵は、にこにこと言った。

その後、お結びの炊事の時間になった。
1人背の高い夕月と紗枝の娘「百々」が、皆の采配を取っていた。
12歳である。ひと際可愛く、利発そうである。
知恵は、いただき賃に、1両の心づけを渡した。
坂本は、「ほんなら、わしも。」と言って、知恵からもらった2両を迷わず全部出した。
(やっぱりこの男は、ちがうと、知恵はうれし気に見ていた。)
夕月は、驚いて辞退したが、知恵と坂本の真っ直ぐな気持ちを見て、
ありがたく頂戴した。

大きなお結びを食べるときが、こども達の一番幸せなときである。

食事の片づけが終わったとき、知恵は、みんなを集め、遊びをした。
木の四角の箱をひっくり返し、底を上にした。
「さあ、みんな。今日いた侍は、1打と2打を見分けるのは難しいという。
 みんな、私が箱の底を、1打か2打か打つから、見分けてごらん。」
知恵は、短い竹刀を持って、2打うった。
すると子供たちは、一斉に言う。
「2打じゃ。ちゃんとわかる。」
「子供でもわかります。」
「これを、今日の侍は、分からんという。
 みんなは、ここで毎日剣道をしているから、わかるんじゃな。」
子供たちは、得意そうにしていた。
「次は難しいぞ。3打から5打まで、いくつ打つかわからんぞ。
 これができたら、1段くらいの値打ちがある。」
そう言って、知恵は、箱の底に向かい、片肘を立てた。
「ヤー!」と言って、すごい速さで底を打った。
「4打です。」
「いや、3打です。2打とは、すごく違います。」
ばらばらと意見が分かれた。
「ね、知恵さん、早う教えて。」
「坂本竜太殿は、いかがかな。」知恵。
「私は、首侍のプロですからなあ。5打と見ました。」
「先生にも聞いて見よう。」と知恵は夕月に聞いた。
「坂本様と同じ、5打と見ました。」
「さすが、ですね。先生と1番弟子の勝ち。5打でした。」
子供たちは、わあ~と言って、偶然当たった子は、道場を飛び回った。

「ほたら、1番弟子の坂本殿にやってもらおう。ルール。全力でやる。」
子供たちは、わあ~と喜んだ。坂本はすでに人気である。
坂本は、竹刀をもらい、「全力でしたな。」と言った。
坂本の竹刀を子供たちが見る。
坂本は、えらく緊張した。
坂本は、息を吸い、それを吐きながら「ええええええい。」と連打した。

自分では、6打うったつもりでいた。
「5打じゃ。」
「いや、6打じゃった。」
4,5,6打と、子供たちの声は、分かれた。
「先生に聞いてみよう。」知恵が言った。
急に夕月は緊張した。間違えたらどうしようとの、プレッシャーである。

「6打です。」と夕月。
「先生、6打で、大当たり!」と知恵が言った。
偶然6打が当たった子は、大はしゃぎ。
「わしも、6打うてることを知りました。たいしたものですな。」と坂本。
「大したものぞい。さすが、似顔絵になるだけのことはある。」と知恵。

「では。最後に夕月先生にやってもらおう。全力でやるルールぞ。」と知恵。
「あたしなんか、全然ですよ。」と言いながら、夕月は、剣士の血が騒いだ。
竹刀をもち、上段に構えた。
その竹刀が、坂本のように、ピタッと動かない。
バババババ・・と竹刀が箱の底を打った。
「6回じゃ。」
「5回じゃ。」
「さっきの坂本さんと同じくらいじゃ。」
「坂本殿は、どう見る。」と知恵。
「7回です。すごいです。」と坂本。
「さすが、坂本竜太じゃ。目が人間の限界に達しているな。正解。7回じゃ。」
「わあ~、うれしい。」と夕月は、胸の前で手を組んだ。
「先生。えらい。7回は、多分すごいことじゃ。」と子供。
「先生、もっと自信を持ちなさい。」と、1人が、夕月の口癖を真似たので、
子供たちは笑った。

坂本は夕月に関して密かに思った。
ひょっとして、夕月さんは、ものすごく強いのかも知れない。
6回が、自分の限界だった。
知恵は、夕月の正体を知っていた。
夕月の実力は、未だ健在である。

 (次回、『夢のような再会』です。)
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プロフィール

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Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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