コロッケ男爵②「『雑誌月刊グルメ』ができる」

第2話です。次回、最終回にしようと思っています。
読んでくださるとうれしいです。
===============================     

コロッケ男爵②「『雑誌月刊グルメ』ができる」


夜になり、レストラン・シャトレに行くとき、小早川の胸は躍った。
中に入ると、落ち着いて癒される雰囲気である。
ソムリエ・加奈子が、きびきびとした態度で来た。
「ご注文をおうかがいいたします。」
「それが、メニューにないのですが、『懐かしいコロッケ』を食べたいのです。」
「承知いたしました。シェフにできるかどうか確認してまいります。」
加奈子は、にっこりと礼をして、厨房に行った。

「え?懐かしいコロッケ?まかせてください。」小林は嬉しそうに言った。

加奈子は客のところに来て、
「あの、まかせてくださいと喜んでいました。」
「そう、それはうれしいです。」小早川は、にっこりして言った。
「お飲物は、いかがいたしましょうか。」
「ワインですね。おすすめを聞かせてください。」
加奈子は少し考え、
「カリフォルニアン・ロゼはいかがでしょうか。」と言った。
「まさに、それを言ってくれないかなと思っていました。
あなたを試したわけではありません。
他のワインだったら、それを受け入れようと思っていました。
どうして、ロゼを選ばれたのか、聞かせてくださいませんか。」と小早川。
「お客様は、今、懐かしい味をお求めです。
それは、家庭でワインが飲まれるようになった初期の頃だと思います。
その頃、赤ワインや白ワインは酸っぱくてあまり好まれず、
少し甘みのあるロゼが多くの家庭で飲まれたと聞いています。
そこで、素朴で懐かしいコロッケには、ロゼと考えました。」
「すばらしい。どうもありがとう。ソムリエさんは、そこまでお考えになるのですね。」
「いいえ、どういたしまして。」加奈子はにこっとして下がった。

ワインが来て、コロッケが来た。
「シェフから、もしよろしければ、手で持ってお召し上がりくださいとのことです。」
加奈子は、にっこりと言った。
「はい、そういたします。」小早川は、うれしく思った。
一口食べた。
「ああ、ここも妻のコロッケを出してくれる。」小早川は感激した。
しばらくして、シェフの小林が来た。
「シェフの小林です。お気に召しましたでしょうか。」と小林は聞いた。
「はい、もう。」と小早川は言った。
そして、小早川は名刺を出し、小林は、店の名刺を出した。
「ママのオムライスを読みました。
イメージ通りの方で、うれしいです。」
「リヨンに寄ってらっしゃったのですね。
私のコロッケは、昔リヨンのママが作ってくれたものです。
ママの味なら、みんな覚えています。
きっと同じコロッケだったと思います。」小林は言った。
「はい。求めていたコロッケを出してくださいました。
あれほど捜し歩いた昔のコロッケが、
こんな近くの2軒のお店で食べられるなんて、
私は、幸せです。

ママのオムライスのときは、混んでいて入れなかったのです。
でも、今度は、ゆっくりと味わうことができています。
それから、ワインです。私が求めていたカリフォルニア・ロゼを
ソムリエさんは、ずばりと言ってくださいました。
私は、なぜ、ロゼを言ってくださったのか、お聞きしました。そして、
言わば、コロッケだけなのに、ソムリエさんは、そこまで考えてくださるのかと、
感激しました。彼女だけでなく、
みなさんすばらしいソムリエさんなのでしょうね。」

「それは、うれしいお言葉です。皆に伝えておきます。
 私も、懐かしいコロッケを作ることができて、
今日は、うれしくてたまりませんでした。」
小林はそう言って下がった。

小林は、すぐに、ソムリエ達に、コロッケのお客様の言葉を伝えた。
「例え、コロッケの一品にも、真剣に考えてもらえたことが、
一番感激したところだったとのことです。」
小林が言うと、みんなは飛び上がって喜んだ。
「やる気出るなあ。」と一人が言った。
「うん、出る、出る。」とみんなで言い合った。
加奈子も嬉しそうだった。



3週間が経ち、「月刊グルメ」の発売間近だった。
発売3日前にリヨンとシャトレのレストランに3冊ずつ送られた。
今月は、特別に見開きの2ページが使われ、
「コロッケ男爵」の全身写真がドカンとレイアウトされていた。
さすが、柳澤聡子である。インパクトとしては、ママのオムライスの方があったが、
「コロッケ男爵」は、ほのぼのとした昭和のよき時代を醸し出し、
母の死を、コロッケを食べながら、乗り越えていく一家の姿が描かれていた。
リヨンで以心伝心ともいえる昔のコロッケとの出会い、
シャトレでは、客の気持ちを汲み、ズバリとワインを選んだソムリエ。
そんなエピソードを交えて、心温まるコラムになっていた。

小林は、雑誌を持ってオーナーの部屋にいた。
支配人はその横。
「なんだねえ、柳澤聡子さんって方は、魔術師ですね。
 こう、昭和のあの頃のことが、胸に浮かんで泣けてきます。」と、オーナー。
「今度はどうでしょう。あのオムライスのときのように、
 お客様が来てくださるでしょうか。」と支配人。
「2通り考えられます。
 2度目だから、好奇心は半分。半分くらいの人が来てくれる。
 もう一つは、前来てくださった方が、また来てくれる。
 それに、前に逃した方が、今度こそはと来てくれる。
 そして、新しくコラムを読んで、これは、ステキだと思った人が来てくれる。
 他でもないコロッケです。オムライスより身近です。
 結論として、2倍近くの人が来てくれでしょう。支配人、どう?」
「2倍は無理でも、前より多くのお客様が来てくれそうです。
一つ、多くの方が来てくださるとして、回転が追いつくでしょうか。」支配人。
「大丈夫。オムライスより、早く食べ終わります。最後に小林シェフは?」
「私は、楽観的なので、2倍は無理でも、
1、 5倍は、来てくださると思っています。今回は、『コロッケ男爵』の、
インパクトが大きいです。」
「じゃあ、ここでの結論は出ましたね。
 コロッケはオムライスより値段が安いですが、それは気にしないで。
 思い切り値を下げていいです。
 多くの方に来ていただくことが大切です。
 あとは、下の人達の意見次第ですね。」

 店が終わって、小林は、みんなに予想を話し合ってもらった。
「前回は、小林シェフのエピソードが、感動的。」
「今回は、ほのぼのした感じがステキ。
そして、『コロッケ男爵』のインパクトがある。」
「一度来てくれた人は、また来てくれる。」
「今度こそはと来てくれる人、新しく来てくれる人もいる。」
結論として、余ってもいいから、1、5倍作っておくべし。
小林と同じ結論になった。

コロッケ2つにキャベツ。小林ドレッシングをテーブルに置く。
前回と同じロゼをグラスワインでつける。
値段は、昔風に300円とした。

そう決まり、小林はリヨンに電話をし、両店同じものが出るようにした。
値段の300円も、隆は大賛成だった。
「レストランに入って『安い!』と思ってもらうことも、楽しいね。」
と、隆は言った。

同じ日、コロッケ男爵こと小早川宗雄は、聡子のコラムを、
しみじみとした思いで読んだ。
昔の思い出が、聡子の調味料により、いっそう美しく描かれている。
小早川宗雄は、雑誌を仏壇に置き、今は亡き妻と語り合った。

(次回は、「店を囲む行列」最終回です。)

バナーをこちらではまだ貼れずにいます。
アメブロの方で押してくださると、幸いです。





スポンサーサイト
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

リンク
最新記事
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブロとも一覧

自己女性化愛好症

御中根 蕗菜 です

女装子動画 Japanese crossdresser porn

enma’s blog

瞳のセルフヌード

毎日が日曜日

女装子&ニューハーフのペニクリ&アナルマンコ

MadameM【秘密の手帳】

川*´v`*川し

復讐の芽 ***藤林長門守***

橙の電車
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム