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コロッケ男爵①『リヨンでの出会い』

柳澤聡子シリーズの、おとなしいお話です。
読んでくださるとうれしいです。
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コロッケ男爵①『リヨンでの出会い』


11月の終わり、朝から、寒い一日だった。
柳澤聡子と夫の義男は、朝のすいているときに、
町の洋食店リヨンにいた。
そこへ、一風変わった客が来た。
背が高く、黒いマントを羽織っている。
そして、丸いつばの短いハットをかぶっている。
レトロな、黒い丸い眼鏡。
50歳くらい。手入れした髭をたくわえていた。
「どこでもいいのですか?」と紳士は、ソムリエの絵梨香に聞いた。
「こちらが明るいです。」と絵梨香は薦めた。
紳士は、マントを椅子に掛け、帽子をかけると、
黒の3ピース姿になり、静かに座っていた。
完全な正装である。

「ちょっと変わった人だね。」と小声で義男。
「丁寧なのだわ。」と聡子は言った。

絵梨香が注文を取りに行った。
「コロッケを。」と紳士。
「お飲物はいかがいたしますか。」
「コロッケに合うワインをお願いします。」と紳士。
絵梨香は少し迷っていたが、
「カリフォルニアン・ロゼでいかがでしょう。」と絵里奈は言った。
グルメそうな客に、安価なカリフォルニアン・ロゼは、怒るかなと思ったが、
実際、コロッケには、ロゼが合うのだ。

紳士は、絵梨香を見上げた。
「すばらしい。あなたは、お店のお料理を知り尽くしているのですね。」と言った。
「いえそんな。ポピュラーなワインですので。」
「多くのレストランでコロッケを頼みましたが、
 カリフォルニア・ロゼを言ってくださったのは、あなただけです。」
「いえ、そんな。でも、うれしいです。他に何かございますか。」
「いえ、コロッケだけを。」紳士はいった。
シェフである父の隆は、思うところがあって、2種類のコロッケを作った。」

「カリフォルニアン・ロゼとはうれしいね。」義男はいった。
「そうね。でも確かに少し変わっている方ね。」と聡子。

コロッケがサーブされた。
「左のコロッケは、手に取ってお召し上がりいただけます。」
絵梨香は、父に言われたように言った。
絵梨香は、ワインを少し注いで、いかがですかといった。
客は飲んで、けっこうですと言った。

客は、ナイフとフォークで初めのコロッケを食べ始めた。
満足げに食べ、
「カリフォルニア・ロゼは実にコロッケに合いますな。」と絵梨香に言った。
客は、2つ目のコロッケを手に取った。
そして、口の中に入れた途端、「これは!」と言って固まった。
ゆっくり呑みこみながら、涙を一筋流した。

「シェフ。私の心が、お分かりになったのですか。」と言った。
「いえ、もしかしてと思いまして。」隆は言った。
「私の他界した妻が、元気なころ、家族4人で作りました。
 50個くらい作って、1日中コロッケだけを食べるんです。
 みんなコロッケが大好きで、どれだけ食べても、飽きませんでした。
 そう、こうやって手に取って食べないとおいしくない。

あの時のコロッケは、私の1番の思い出です。
 そのとき妻と私は、カリフォルニアン・ロゼでした。
 ちょっと気取って洋風なワインを飲んでみたかったのです。
 私は、この昔のコロッケを求めて、コロッケを食べ歩きました。
 こちらは、少し前、ママのオムライスを、
レストラン・シャトレといっしょに作られました。
それなら、私の妻の時代のコロッケも作っていただけるかも知れないと思いながら、
勇気が出なくて、こちらからは、注文できずにいたのです。」紳士は言った。

「昔のコロッケをふと作りたくなったのです。
 お客様が『ママのオムライス』の表示を何度もご覧になってらっしゃいましたので。
ふと妻の昔のコロッケを思い出しました。
 お客様は奥様を亡くされ、私は妻を亡くしたことが同じで、
お気持ちがどこかで通じたのでしょうか。」隆。

 「そうですね。妻が他界して、葬儀が終わり、
  残された家族3人は、キッチンでうなだれていました。
  そのとき、次男が、
  「悲しんでいないで、コロッケをつくって食べようよ。」と言いました。
  キッチンに山盛りのコロッケを作って食べました。
  空いている妻の椅子に妻がいないことが、淋しくもありましたが、
  逆に、そこに妻がいるような気がして、うれしくもありました。」

 「お父さん、内も同じね。母さんの得意料理を作って食べた。」絵里奈。
 「そうだね。オムライスをよく作ったね。コロッケも。」と隆。

「今のコロッケは、クリームコロッケとか中が柔らかいですが、
 昔のコロッケは、手に持って食べるのが、おいしかったです。」
   
紳士は、にっこりとそう言って残りのコロッケを手で持って食べた。

このリヨンでの小さな出来事を聡子が逃すはずがなかった。
紳士がコロッケを食べ、ワインを飲みほしたのを見て、
聡子は、名刺を持って、紳士のところへ行った。
紳士も名刺をくれた。
某大学の文学部教授だった。小早川宗雄。
「まあ、文学の香のするものを、身にまとっていらっしゃいましたね。」
聡子はいった。
「いや、これは学生へのサービスなんです。」と小早川は笑った。
「聡子さんのコラムは、毎月拝見しています。
やさしい言葉で、人の心を打つ文をお書きになる。
ママのオムライスのコラムは、何度も読み、読んでは泣きました。」
隆と義男、絵梨香はにこにこと見ていた。

ここで、聡子は、真っ直ぐに要件に入った。
さっきの出来事をコラムに書かせてほしいこと。
教授の写真をコラムに入れたいこと。
小林シェフのレストランも勧め、
最後に小早川教授を「コロッケ男爵」とコラムの中で呼びたいこと。

最後を聞いたとき、皆は、思わず噴き出した。

「これから学生は、みんな私を、コロッケ男爵と呼びますね。」小早川は言った。
「ええ、多分。」と聡子は笑った。「コラムに書いてよろしいですか?」
「はい、どうぞ。コロッケのためなら、なんでもいたします。」小早川が言ったとき、
みんなで大きな拍手をした。

聡子が最も力を入れて書きたいところは、
家族中でコロッケを作り、
1日中コロッケをみんなで食べたというところだった。

(次回、「小林シェフのレストランにて」です。)


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Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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