「女性代行業」⑤『すべては元のままに』 最終回

今回長くなってしまいました。すみません。
尚、書ききれなかったことがあり、次回『エピローグ』をつける予定です。
長い物を読んでくださり、あらかじめ、お礼申し上げます。
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※この物語はで、家庭裁判所が出てきますが、判事や調査官補の言動、そして判決等は、
あくまで物語上のもので、実際とは異なるものであることを、ご承知おきください。
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「女性代行業」⑤『すべては元のままに』


大久保高江が、文江に会いに来た翌日、午前10時、
文江のマンションのドアを叩く音がした。
ドアを開けると神崎興信所の神崎妙子がいた。
その後ろに3人の所員がいた。
神崎は、竹田武史を見つけると、
「竹田。自分の荷物を全部バッグに詰めなさい。」と言った。
竹田は、相手をおばさんと見てか、
「なんだよ。俺に何の用だ。」とすごんで来た。
神崎所長は、「失礼。」と言って、靴を脱ぎ、
あっという間に、竹田の腕を背ににじり、畳に正座をさせた。

「柔道4段、空手4段、合気道4段があそこにいるよ。
 あたしは、合気道5段よ。動けるもんなら動いてみな。」
竹田は、びくとも動けない。
「いうこと聞くかい。それとも、骨を折られて病院行きたいの?」
「わかった、言うこと聞くよ。」
竹田はしぶしぶ持ち物をバッグに入れた。
「全部入れたかい。もうここには二度と帰って来れないからね。」
「わかったよ。」
「銀行のカードと通帳、印を出しな。」
竹田は抵抗したが、所長に、もっと痛く腕をねじられ、素直に出した。
感心なことに、印と通帳も持っていた。

「奥さん、これから銀行へ行って、こいつが奥様からくすねたお金を返させます。
 奥様は、カートだけでいいかも知れません。」
神崎はカードを見ると、
「同じ銀行ですね。これは、手っ取り早いです。」と、言った。

6人がぞろぞろと歩いていた。
途中曲がり角で、竹田が逃げようとしたが、
前にいた大柄な所員が、身を下ろし、瞬時に竹田のミゾオチに、
肘鉄を入れた。
竹田は、「ううううううう。」とお腹を押さえ、苦しんだ。
「わかったかい。私達からは逃げられないよ。」

銀行に来た。
「あのう、まず、記帳してください。それを1部コピーしてください。
 そして、こちらのカードの金額を5万円だけ残して、
 こちらのカードに全額移してください。」
「では、暗証番号をお願いします。」
竹田は、コードにつなったテンキーに番号を入れた。
ピピっとカードをとり、残高証明をとった。
情けの5万円である。
「竹田、念を押すが、この通帳のお金は、全部文江さんからくすねたもんだね?」
「はい。3万は俺だけど、5万残してくれたから、いいです。」
文江のカードの残高をみた。
竹田にせびられた約200万のうち、170万が帰って来ていた。
「わあ、ありがとうございます。」文江は飛び上がった。
神崎が、竹田の通帳のコピーをくれた。
「これ見ると、文江さんがお金をやった日と、竹田が貯金した日がわかり、
 証拠になりますから、大事に保管してください。
 文江さんも、後で、記帳なさって置いてくださいね。」

銀行の外で、神崎が言った。
「竹田は、あなたから、競馬に行くと言って10万もらうでしょ。
 その内、7万くらいは貯金していたの。
 3万で遊んで「ああ、負けた。」といって帰って来る。
 こうやって、170万も貯めてたのよ。
 文江さんのところを追い出されたときのためにね。次の女が見つかるまで。
 せこいでしょう?」
「知りませんでした。でも、たくさんお金が返って来てうれしいです。」と文江。
「竹田には、二度と文江さんの家に行かないよう、これからよく言って聞かせて、
 そして、警察に自首させます。
 竹田は、結婚詐欺みたいなこともやってます。
 文江さんに、婦女暴行を働いたでしょ。
 家の中なら、婦女暴行にならないなんて、嘘ですからね。
 だって、ベランダから入って来て、その家の奥様を狙うヤツがいるんですもの。
 家の中でも立派に婦女暴行罪です。
 それだけで、こいつ、3年は行くでしょうね。
「えええ?そうなの。」と竹田が言った。
「ざっとみて、6年は行くわよ。」と神崎。
神崎のじわっとした怖さは、はんぱじゃないと思った。

「私達は、アフターケアーにも力を入れてます。
 何かあったら、電話一本で駆け付けます。じゃあ。」
と神崎と一行は言って、竹田を連れて歩いて行った。

頼もしかった。本当に良心的なところだと思った。

『そうか。竹田がくすねたお金の一部を貯金していたこと。
 探偵社の人なら、1日尾行すれば、分かることなのか。』

ほとんどのお金が戻った。
竹田はもう来ない。
文江の中に、喜びが込み上げて来た。



いよいよ調停の日である。
調停が行われる部屋は、思ったより狭く、
大きな机が1つ。中央に判事が座る。
机の両サイドに、武藤、高橋の調査官補が証拠等を置いて座っている。
判事席の前に、西川孝雄、文江が並んで座っている。
その後ろに、孝雄の会社の社長大滝賢治が座っている。

判事はなかなか来ない。少なくとも10分ほど待たせるのが常のようだ。
いよいよ判事が登場した。
黒いマントのような服を身にまとっている。
文江は、判事を見て、胸をなでおろした。
年は、40歳ほどだが、威厳と共に、いかにもやさしそうであった。

判事は、大滝社長に言った。
「すみませんが、お顔がよく見えませんので、
 お二人の間に移動してくださいますか。」
大滝椅子をずらす。

判事「これより開廷します。」と、いい声で言った。

判事「昨日、人事部長様と社長様の会話を読ませていただきました。
   正直に申し上げて、私は、これでも人事のトップである部長さんの発言なのか。
   一国の主である社長さんの発言なのかと驚いてしまいました。
   あまりにも想像力がなさ過ぎます。
   社長の大滝さんには、結婚し3か月になるお嬢様がいらっしゃいますね。」
   (判事の言葉遣いは、丁寧であり、これは判事によって違うようだ。)
大滝「はい、おります。」
判事「どうして、娘さんの立場になって考えてくださらないのでしょう。
    では、考えやすいように、大滝さんのお嬢様をイメージしながら考えましょう。
    大滝社長様、お嬢様のご主人が、結婚3か月で、単身赴任を
    命じられたとしましょう。
    お嬢様は、マンションで、一人お留守番の生活です。
    あるとき、無頼漢が、部屋に押し入り、お嬢さんをレイプしました。
    心の殺人と言われるレイプです。ショックで廃人になってしまう人もいます。
    お嬢さんは、室内で行われたレイプは、罪に問えないと思い、
    警察に届けませんでした。
    男は酔っぱらっていて、寝転がっています。

   犯されてしまった以上、もう、ご主人との生活には戻れないと、絶望しました。
   お嬢様は、これで自分の人生は終わりと考えました。
   そして、死のうと思いました。一人死ぬのは悔しい。
   台所で、刺身包丁を持って、寝ている男の首の上に立てました。
   一思いに男を刺して、その後、自分も死のうと思いました。
   でも、いざ刺そうとすると手が震え、とうとう刺ませんでした。
   そこで、マンションのベランダに行き、5階から身を投げようとしました。
   しかし、怖くて、どうしても、飛び降りることができませんでした。

   次の日から、男は図々しくも、お嬢様のマンションに居座りました。
   警察に言っても、事件でない限り、こんなことは相手にされません。
   男には、殺し文句がありました。「旦那に言うぞ。」です。
   お嬢様は、その殺し文句に勝てず、毎夜、男にセックスを強要され、
   小遣いをせびられ、男は、毎日のように、競馬三昧です。
   地獄のような生活でした。
   200万あった自分の貯金がとうとう底を突いてきます。
   お嬢様は、ここで、もう一度自殺を考えました。

   この事情をご主人に言えるでしょうか。親に言えるでしょうか。
   とんでもない。ご主人や親は、一番知って欲しくない人なのです。

   「旦那に言うぞ」と脅され、この奥様が、脅しに負けたのは、
    旦那様に知られて、離婚されるのが、怖かったのでは、さらさらありません。
    毎日がんばっているご主人に、悲しい思いを、させたくなかった。
    心配をかけたくなかったからです。

   毎日死ぬほどいじめられている子でも、家では、にこにこ元気にするんです。
   それは、自分の愛する両親に、悲しい思いをさせたくないからなのです。

   初めから、単身赴任なんかなかったら、レイプはなかったのです。
   男に対する憎悪、主人がそばにいないことへの無念。
   3か月で、主人を遠くにやった会社への恨み。
   なぜ、3か月で!他に人はいなかったのか!なぜ!なぜ!なぜ!
   それらが、どっと胸に襲ってきて、もう一度ベランダに行ったのです。
   今度こそ本気でした。

   社長様。3か月と8か月の違いはあれ、これと同じことが、
   目の前の西川孝雄さんの奥様・文江さんにあったのです。

   社長様の1000万円というのは、こういうその人の身になって、
   考えておっしゃったものでしょうか。

   社長様。この一連の事は、奥様が悪いのでしょうか。
   旦那様の孝雄さんが悪いのでしょうか。
   それとも8か月で生木を裂くように、二人を離した会社が悪いのでしょうか。
   ご意見をお聞かせください。」

社長は、立った。目に涙をためていた。
「昨日、他人事として伺ったことと、今日、我が娘のこととして伺ったこととでは、
 大変な違いがありました。心無い新婚8か月での単身赴任が、
 いかに罪深いものであったか身に染みてわかりました。
 奥様は死んでいたかもしれないのです。人を殺めてしまったかも知れないのです。
 会社の罪は、金額に表すことができません。
 1億でも2億でも、判決にしたがいます。」
社長は礼をして座った。

「ご意見、わかりました。」判事は言った。

「では、奥様の文江さんからです。
 文江さん、あなたは、夫の孝雄さんは、
 文江さんの心が自分に帰って来るまで、
 5年でも、10年でも、待ってくれる人だと思っていました。
 だから、どこかで終止符を打たないと、
 孝雄さんはいつまでも自由になれないと考えました。
 そこに、不思議な人から電話があり、
 次の金曜日に、孝雄さんは浮気をすると言われ、ました。
 それで、あなたは興信所を訪ねました。
 そして、孝雄さんの浮気の証拠写真をもらい、
 それを持って、裁判所に来ました。
 
 その写真に写っている男性は、偽の孝雄さんだと知りながらです。
 あなたは、裁判所に、自分が負けるために来たのです。
 そこで、自分の罪について、慰謝料にしてどのくらいかを知りたかった。
 それを、返していくことで、罪の償いをしていこうとしました。
 違いますか?」

「はい。その通りです。」と、文江は小さな声でうつむいて答えた。

「では、あなたへの判決です。あなたが、払うべき慰謝料は、ゼロ円です。」
文江は、あっと判事を見た。
「文江さん。あなたは、浮気などしていないのです。
 男に何度も脅されましたが、孝雄さんを思うが故に、脅しに従ったのです。
 あなたの心は、常に孝雄さんにありました。
 あなたは、『被害者』なのです。被害にあっただけで、何も悪いことをしていません。
 『旦那に言うぞ』との脅しに従ったあなたの心は、
 さっきも言いましたね。ご主人を思う心からのものです。
 あなたは、何も悪いことをしていません。
 ですから、世間に胸を張って歩いてください。」

文江は、判事の言葉に、ハンカチを目に当て泣いた。

「次は、孝雄さんです。
 孝雄さんは、文江さんの心がご自分に帰って来るまで、
 何十年でも、待つつもりでしたね。
 そして、この法廷にて、さらに分かったことと思います。
 孝雄さん。文江さんとの離婚を希望しますか。」判事。
「いいえ、離婚など希望しません。
 妻の苦しみがより一層わかり、抱きしめてやりたいと思っています。」
文江がぼろぼろと泣きながら孝雄を見た。
「文江さんも、離婚を希望しませんね。」
「はい。希望しません。」
孝雄が立ったと同時に、文江も立ち、孝雄の胸に飛び込んだ。
文江は、孝雄の胸で、わーわーと泣いた。

二人が、席に着いた。
「では、社長様への判決です。
 会社は、見舞金として100万円を西川夫妻に渡すこと。」以上です。」
「え?」と社長は驚いて立ち上がった。
「桁が2つ違いませんか。」

「違いません。お座りください。
 私の長い話の後、社長様が、1億でも2億でも判決に従うと、おっしゃいました。
 そのお言葉は、1億2億の価値がありました。
 私は、うれしく思いました。
 そのお金を払ったものとして、社員の皆様のために、使ってください。
 『新婚8か月』ということを横に置きます。
 会社が社員に単身赴任をさせることは、何ら罪ではありません。
 そして、留守番をする家族に何か災難があっても、
 それは、会社の責任ではありません。
 独身の女性が、マンションに一人住まいをしていることはたくさんあります。
 ですから、今回西川文江さんに起こったことについても、
 会社に責任はありません。

 ただ、昨日も部長さんともおっしゃっていましたように、
 西川孝雄さんを、新婚8か月で行かせてしまったことは、
 世間一般に酷だと映ることと思います。
 そして、その間、災難が起きてしまったのですが、
 『新婚早々行かせて済まなかった。』という意味で、見舞金として100万が、
 妥当と考えました。
 これなら、新婚8か月で行ったが、早く帰ることができた、見舞金ももらった。
 世間は納得すると思います。
 あ、これは、私が口出しすることではありませんが、
 孝雄さんを、早々に、本社に帰してあげてくださいね。」

「はい。わかりました。
 1億2億は、本気でしたので、社員のために使おうと思います。
 どうも、ありがとうございました。私は、救われました。」
社長は、深々と頭を下げた。

閉廷となった。

裁判所を出るとき、社長は、西川夫妻に、
「ほんとに、申し訳ないことをしました。」と頭を下げた。
「こちらこそ、ご心配をおかけしました。」と孝雄は言った。

社長が行ってしまい、二人は門を出た。
「ねえ、あたしの体汚れちゃったけどいいの?」文江は聞いた。
「汚れた手は、洗えばいいだろう?それと同じ。
 文江が体を綺麗に洗えばいいだけだよ。」孝雄は、明るく行った。
「ね、あたしは気を付けたんだけど、アイツの赤ちゃんなんかできたらどうしよう。」
「産んで、ぼく達が育てようよ。これも、何かのご縁だから。」孝雄は、にっこりとした。

文江は、心の大きな孝雄を、惚れ惚れと見つめた。
やがて、二人は、快晴の空を仰いでいた。
久しぶりに見る空だった。


(次回『エピローグ』につづく)

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プロフィール

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Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
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