聡子と義男②「アランの言葉」(2話完結)後編

これで、完結です。読んでくださるとうれしいです。
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聡子と義男②「アランの言葉」(2話完結)後編


「No .1が来たわ。」聡子は、皆に、小声で言った。
みんなうきうきしていた。
聡子は、はじめ、標準的なフランス語で話した。
「お料理は、もう通りましたか?」
冴子(仏語で)「それが、手違いがあり、わたくしが参りました。」
聡子「ワインもまだですか?」
(なんだ、完璧にわかるじゃない。)と冴子は思った。
「はい、申し訳ございません。もう一度、お聞かせください。」
そこから、聡子は、南部ブロバンス言葉に変え、早口に言った。
「手違いとは、どんな手違いです。
正直にいいなさい。嘘はいけませんよ。
 卵は、何を使えと言ったか、言ってごらんなさい。
 ワインは、何にしろと言ったか言ってごらんなさい。
 もしや、まだ厨房に注文が行ってないのではありませんか。
 正直に言わないお店に対し、私は、抗議しますよ。
 オーナーを呼びなさい。支配人は、フランス語ができませんからね!」

冴子は目を丸くして棒立ちになっていた。
途中からのフランス語が何もわからなかった。

ただ、何も言わず立っている自分が、無様に思えてならなかった。
「し、失礼します。」冴子は、そう頭を下げて、引き下がるしかなかった。

「ブロークンなフランス語を、わざと言っているとしか思えない。」
皆に囲まれて、冴子は、言った。
そのとき、
「簡単にお客様を侮辱するもんじゃないよ。」
たった一人のネイティブ青年であるアランが言った。
「今の冴子の言葉を、お客様に届けようか。」
「だめ。ごめんなさい。
分からなかったものだから、つい、負け惜しみを言ってしまったの。」
冴子は、言った。
「俺は、ここから聞いていて、お客様の言葉が、100%わかったよ。
 お客様は、注文が通ったのか確認されていたんだよ。
 どうして、注文が通らないのか、正直にいいなさい。嘘はいけません。
 『もう一度』と聞き直すのなら、
どうして自分の一番得意な言葉で聞かないのか。
 支配人は、フランス語がわからない。オーナーを呼びなさい。
そうおっしゃっていたんだよ。」
「アランには分かったの?」冴子。

「あたりまえだ、俺、ネイティブだぜ。
 悪いけど、君たちのフランス語こそ、ブロークンもいいところなんだよ。
 恐らく君らは、パリ近くで覚えたフランス語しか知らない。
 おまけに、ほとんどレストランの人のフランス語から、学んだ。
 いいレストランには、世界のいろんな国の人が勉強に来てるんだ。
 だから、君たちが聞いたのは、ブロークンなフランス語ばかり。
 フランスは、広いんだぜ。いろんな地方の言葉がある。
 それは、日本も同じだろう。青森から鹿児島まで、みんな言葉が違う。
 沖縄はもっとちがう。
 君らは日本語ネイティブだから、ほとんど大体わかるだろう。
 俺が、ほとんどのフランス語が分かるようにね。

今まで、お客様が、ネイティブだったから、
君らのブロークンなフランス語を、なんとかわかってくれた。
 または、同じ日本人で、カタコトのフランス語同士だからわかってくれた。
 それに気が付かなかったのかよ。
 君らが、胸を張って使えるのは、日本語じゃないか。
 どうして、使わない。
 ネイティブの客はこう思っていたと思うよ。
 日本のレストランなのに、なんとか、片言でフランス語を話していた。
 私たちは、綺麗な日本語を聞きたかったのにって。

 あの4人の方のオーダーは、俺が通して置いた。
 ワインは、これから、お出しする。
 俺が、みんなの代わりに謝っておくさ。」
アランは、そう言って、ワインのワゴンをもって聡子のテーブルにいった。

アランは、テーブルの4人にきちんと目をやり、
標準仏語で「遅くなり、すみませんでした。店の者は、
あなた様のフランス語がわからなかったのです。」といい、
みんなにワインを注ぎながら、
「遅くなりすみませんでした。」と日本語で言った。

アランは、南フランス・ブロバンスの言葉に変えた。
「お客様の、フランス語を聞いて、懐かしくて涙が出ました。」
「まあ、ブロバンスの方ね。あたしの故郷よ。」聡子。
「はい。私の故郷でもあります。」
「まあまあ、うれしいわ。セレーヌ川は、まだ流れているの?」
「はい。今もきれいで、恋人たちがほとりに来ます。」
「レ・フランセ教会は。」
「今も、鐘を鳴らしています。鐘つきのピエールおじさんは、今もお元気です。」
「まあ、ピエールさんが。」と聡子は目を潤ませた。

アランは、3人に向かって、日本語で話し始めた。
「柳沢様と私は、プロバンスという同じ故郷を持っています。
 そんな方にお会いできるなんて、奇跡です。
 柳沢様のプロバンスのお言葉を聞いて、私は、涙が出ました。
 それが、うれしくて、つい二人だけで、
 故郷の川や教会のことを話してしまいました。
 失礼しました。

 今日、ご注文を聞きに来たウェイトレスやソムリエは、
 柳沢様の言葉がわからなかったのです。
 私は、フランス語だけのレストランなんか反対です。
 彼らには、私の意見を言いました。
 もしかすると、日本語でお話するレストランになるかも知れません。
 柳沢様のフランス語に、彼らはショックを受けたのです。」

ちょうど、オムレツ4人分が来た。
持って来た奈津子は、「お待たせしました。」と日本語で言った。
そして、茂夫と愛子に、
「先ほどは、すみませんでした。」と頭を下げた。

アランは、
「多分、シェフが作りました。
 オムレツ4人分なんて、すごいプレッシャーだと言っていました。
 では、ごゆっくり。」
と、にっこりして去った。

すると、高い帽子をかぶったシェフが来た。
50歳くらいの人の好さそうな男だ。

「まあ、高坂シェフ直々に。」と聡子が日本語で言った。
「やっぱり聡子さんでしたか。どうですか、オムレツは。」
「さすが、高坂さんですわ。もう口の中でホクホクしますわ。」
「ああよかった。」と高坂は胸をなで下ろし、聡子以外の3人に、
「フランス料理は、オムレツに始まり、オムレツに終わると言われているんです。
 オムレツでシェフの技量が一辺で知れます。
 だから、私は、緊張の塊になって全力で作ったんですよ。

 そうだ、皆さま、どうですか。半端な形ですが、最高の肉があるんです。
 それを、おごらせてくださいませんか。」
「まあ、うれしいですわ。皆さま、いいですよね。」聡子。
「もちろんです。」と3人は言った。

シェフが持ってきてくれた肉料理は、驚く程おいしかった。
美しく緑の飾りもあり、白いソースが細くかかっていた。
フランスパンを切ってトーストにしたものが、バスケットに入れられ、
2つ置かれていた。

おまけに、デザートとして、おいしいゼリーもつけてくれた。

4人は、ワインのボトルを2本空けた。

そろそろと立ち上がろうとすると、
ソムリエの冴子を中心に、ボーイやウェイトレスがみんな来た。
冴子は、礼をした後、日本語で言った。
「今日の不手際、大変申し訳ありませんでした。
 私たちは、柳沢様のフランス語がわからず、ショックを受けました。
 そこに、ボーイのアランが、「フランスは広いんだよ」と言いました。
 私たちのフランス語は、パリという限られたところで、
しかも、レストランという特殊なところで覚えたフランス語でした。
とても、稚拙なものだったことに気が付きました。
 私たちが胸を張って使えるのは、日本語です。
 これからは、日本語で話し、日本語が不得手なフランスの方にのみ、
フランス語で、ご注文をお聞きするようにいたします。
 支配人も賛成であり、オーナーは、もともとフランス語レストランなど、
 反対だったのに、私達で押し切りました。

 よい刺激をくださったことへの感謝の気持ちと、
 新婚のお二人に大変不愉快な思いをおかけしてしまったことをお詫びいたします。」

一同は、深く礼をした。

「そう、それはよかったわ。フランス語も使えるレストランになったのですね。」
聡子は、ちらりとアランを見ると、アランは上手なウインクをした。
聡子は、にっこりほほ笑んだ。

外に出ると、愛子は手を広げて、くるくる回った。
「『腹立ちのレストラン』が、一気に『思い出のレストラン』になったわ。」
「そうだね。これも、聡子さんのお蔭だね。」と武史。
「アラン君は、できた人だったね。
 聡子さんと話したことを、いつも日本語でぼく達に聞かせてくれた。
 聡子さんは、故郷の話ができてよかったね。」と、義男。
「ええ、今も故郷の景色が胸に浮かんでいるの。最高に幸せです。」

高い並木に囲まれた道を、4人は4様の思いで歩いた。


<おわり>


(次回は、ちょっとえっちです。)


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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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