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専業主婦・柳沢聡子「女王のワイン」(1話完結)

柳沢聡子の、短いお話を書きました。リラックスして書けました。
読んでくださるとうれしいです。
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専業主婦・柳沢聡子「女王のワイン」(1話完結)


6月の午後。
15人ほど客を泊められる4階建てのビジネスホテルである。
玄関の受付で、50歳くらいのラフな格好をした男が漫画を読んでいる。
ずんぐりしていて極めて人が好さそうである。

階段から、夫人と思われる人が下りて来た。
「義男さん。今日の結婚記念日、お忘れじゃないでしょうね。」
「あ、ごめん。忘れてた。」と義男は漫画を置いた。
「やっぱり。今日は、ホテルの展望レストランでお食事をしますのよ。
 義男さん、あなた、背広あります?」
「しわくちゃなら1つある。ネクタイも1本。Yシャツもある。
 Yシャツは新品だ。」
「あなたが、よれよれの分、あたしがちゃんとしていくからいいわ。」
「久保坂君にホテルは頼もう。」
「そうね。」

さて、時刻は、夜の7時。
全く不釣り合いな夫婦がやってきた。
背丈165cm、よれよれの背広の夫。
頭の先からつま先まで、一分の隙のない170cmはありそうな女性。
女性の方は、自分と比べて、夫のよれよれが全く気にならない風だ。

夫妻は、都内でも一流の仲間に入るホテルの最上階に来た。
「いらっしゃいませ。」とそばにいた従業員達が丁寧に頭を下げる。
「柳沢と申します。」聡子は言った。
40歳半ば程の黒服の支配人・高橋栄治が、
「いらっしゃいませ。柳沢義男様、ご夫妻でございますね。」
と、低音のいい声で言った。
背もすらりとしていて、なかなかの男ぶりである。
支配人は、聡子をちらりと見て、『まちがいない。』と気を引きしめたが、
それを、微塵も顔に出さなかった。

高橋支配人は、聡子夫妻を予約のあった窓側の席に案内した。
自分が注文を聞いてもよかったが、少し考え、
「少々お待ちくださいませ。」と言って、
No.1ソムリエの白鳥孝子に注文をとらせた。
孝子は、髪をきりりと後ろで1本に結び、斜めに流した前髪をピンで留めている。
きりっとした顔立ちで美貌である。
「ようこそ、いらっしゃいませ。
 ご注文をお伺いいたします。」
そう言って、白鳥は、メニューブックを渡したが、
「オムライス2つ、お願いします。」と聡子の声がすぐに返って来た。
「夫の大好物ですよの。」と付け加えた。
「それから、デザートは、お任せします。
 そして、ワインなのですが。」
と聡子は言って、バッグから、4つ折りにした紙を出した。
「とても、覚えられませんから、書いてきましたの。」
そういって、白鳥に渡した。

今まで微笑ましいご夫婦だとにっこりしていた白鳥は、
四つ折りのメモを見て、わずかに顔色を変えた。
アルファベット文字と年代が並び、長い名前だ。
だが、白鳥は専門家である。
『女王のワイン・・のことだ・・。
 このご夫婦が・・。』と思った。
希少価値の高い大きなレストランにも、あるかないかの超高級ワインだ。
1本、いくらするかもわからない。

「承知いたしました。」と礼をして、
白鳥は、真っ先に支配人のところに行った。
「拝見したところ、グルメのご夫婦には見えません。
 そんな方に、『女王のワイン』をお出ししてもいいのでしょうか。
 いくらするかわかりません。
 ご婦人は、紙に書いておいででした。
 きっと、グルメブックか何かでお調べになったのかも知れません。」
高橋は落ち着いていた。
「ソムリエが語るときはいつかね。」
「お客様に相談されたときです。」
「お客様から注文があれば。」
「意見を言ってはいけない。」
「その基本は変わらない。ワイン倉庫に1本でもあれば、
 余計なことは考えず、お出しする。いいね。」
「はい。」

白鳥は、ワイン倉庫で、少し埃をかぶったそのボトルを手にしたとき、
わずかに手が震えた。
ホテル最高の1本だ。
一度は飲んで見たかったこのワイン。とうとう飲めずに終わるのか。
白鳥孝子はそうつぶやいた。

ボトルを綺麗に拭き、
ワゴンに、ボトルとグラスを置き、聡子のテーブルに運んだ。
グラスを二人の前に置き、
ワインのコルクを綺麗に拭き、初めは、グラスにワインを少量注いだ。

その頃厨房では、
「オムライス2つです。新しいお客様です。」
「あいよ。」と料理人の一人が言った。
すると、シェフが、
「新しいお客様が、オムライスだけ注文されたのか。」
と言って、やってきた。
「はい、オムライス単品です。」
「吉田。これは、俺が作る。」と言って、
真剣な顔をして、作り始めた。
「シェフ、どうしたんですか。」と吉田は聞いた。
「初めて来て、オムライスをたのまれるなど、ただの客ではない。
 玉子料理は、何より難しい。
 おまけに、デミグラスソースだ。
 ソースは、料理の命だからな。
 この2つを試されているんだ。」
シェフは言った。

白鳥孝子は、サーブを終わり、立っていた。
客にこのワインでよいか聞かねばならない。
聡子の夫義男は、ワインを口にして、苦そうな顔をした。
聡子も口に少量入れ、口の中で転がした。
「あなた、どうですか。」
と聡子は聞いた。
「甘くなくて、酸っぱいな。聡子さん、女性ならもっと甘いのがよくはないか。」
聡子は、くすっと笑いながらソムリエに言った。
「内の旦那様がそう言っているの。あなたは、このワインを飲んだことがありますか。」
「いいえ。とても手が届くものではありません。文献で大体の味を把握しているだけです。」
「そう、では、コルクでしっかり栓をしてちょうだい。
 このワインの代金は、きちんとお支払いいたします。
 で、ソムリエのみなさんで、処分してくださいますか。
 代わりに、初心者でもおいしく感じる甘めの白ワインをくださいな。
 (白鳥の耳元で、『一番安いのをね。』と言った。)」

「処分」とは、まさか・・

白鳥は、高橋支配人のところへ飛んで行き、小声で言った。
「あの、ご主人様のお口に合わないので、ソムリエで処分してくださいと、
 言われました。『女王のワイン』ですよ!」
高橋はにっこり笑った。
「運がよかったな。仕事が終わったら、ソムリエみんなで飲むといい。」
「じゃあ、あたし達に、くださったのですか!」
「だから、君をテーブルにつけたんだよ。
 私だったらくれなかった。私は、もう飲んだことがあるからね。」
「あの方は、このワインの値段を知ってらっしゃるのでしょうか。」
「ああ、知り尽くしている方だ。」
高橋は、にっこりした。

「よしできた。醒めないうちにもっていって。」シェフは、2つのオムレツを、
窓棚に置いた。
「いや、俺が持って行く。」
そう言って、シェフは、オムレツの皿を持って行った。
「出来立てでございます。」
シェフは、オムレツを二人の前に置いた。
「まあ、玉子の柔らかそうなこと。ソースの艶やかなこと。」
聡子は、玉子とソースとご飯を少量口の中に入れた。
「まあ、おいしい。さては、これはシェフが自ら作ってくださいましたね。」
「あ、はっ。もう、たいへんなプレッシャーでした。」シェフは言った。
「聡子さん。これはおいしい。上にケチャップが乗ってないオムレツを、
 初めて食べたよ。」と義男は言った。
「では、ごゆっくり。」とシェフは言って下がった。

「聡子・・。まさかな。」
シェフは、支配人のところに行った。
「あの方は、もしかして。」
「はい。柳沢聡子さんです。」
「おお。」とシェフは、顔をほころばせた。
「私のオムレツを、おいしいと言ってくださったよ。」
「シェフは、超一流です。」
高橋は、にっこり笑った。

最後に、高橋は、デザートをもっていった。
そのとき、
「ありがとうございます。ソムリエ達が、仕事が終わったら、飲めると、
 もう、興奮状態です。」と礼を言った。
「いえいえ、ワインも喜んでいますわね。」聡子はにっこりした。

聡子と義男が帰るとき、ソムリエ達がみんな来て、礼をした。
聡子も礼をした。
歩きながら、
「聡子さん、君は不思議な力があるね。」と義男が言う。
「何のこと。」
「ソムリエさん達がみんな来て、君に礼をしたよ。」
「あれは、あなたにしたのよ。
 あなたほど、おいしそうに食べ、おいしそうに飲む人はいないわ。」
「そうかな。」

涼しい夜風が、二人の頬をなでた。


<おわり>

(次回は、未定です。)


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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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