スーパー洋子「美輪高校野球部」③『中村の娘・梨奈/軍師・安田動く』

今回は、とても長くなってしまいました。
区切る場所がなくて、一挙に2日分載せました。
読んでくださるとうれしいです。
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スーパー洋子「美輪高校野球部」③『中村の娘・梨奈/軍師・安田動く』


中村は、部員を集め、言った
「俺は、約束を守りたい。
 明日、辞職願いを出す。
 みんなは、すでに野球部員ではない。
 もう、朝練もない。
今日自宅に帰り、明日は、普通に学校へ行って、
 野球部には出て来てはいけない。
 野球部員ではないのだから、授業中の居眠りは、できない。
 途中で外に出るなど、もってのほかだ。
 今日、全校生徒が見ていた。
 さっき負けた瞬間、彼らの喜びようを見ただろう。
 お前たちの勝手な振舞は、あれだけ憎まれていたということだ。
 それを、ほうっておいた俺も、同罪だ。
 みんなが、ちょっとでも今までの癖を出そうものなら、
 クラス全員からブーイングだろう。もう、誰も相手をしてくれない。
 高校生らしく、きちんとした生活態度で、勉強をするんだ。
 解散。」

野球部は、泣きながら解散しかけた。
そのとき、4番バッターである原田という3年生が、
「おーい、3年生だけでいい。残って俺の話しを聞いてくれ。」
そう言って、3年生を集めた。
安田一郎は、木の陰で聞いていた。
原田は、洋子のことを知っているのか、彼らにそれを語り始めた。

中村は、寮に併設されている、1軒屋に帰った。
妻の芳江と中3の娘、梨奈がいる。

中村淳史は、自宅のキッチンテーブルに座って頭抱えていた。
「お父さん、見てたわ。相手は、倉田洋子先生よ。」と梨奈が言う。
「特別な人なのか。」
「去年、緑が丘にいた、スーパーコーチよ。」
「すごい人なのか。」
「もし男だったら、大リーグのスーパーヒーローになっていたと言われてる人。
 最高球速190km。
 視察に来ていた大リーグの人が、それを見て、驚いて、リーグに報告したの。
 それは、嘘だろうと、大リーグのその球団が、倉田先生をアメリカに招待した。
 大リーガーの選手は、185kmのボールを生まれて初めて見た。
 もちろん、だれもかすりもできなかった。
 バッターとしても、大リーグのエースが、投げる全力投球を、連続10本、
 場外ホームランにした。
 もちろん、球団は、コーチになって欲しいと大選手並みの契約金を提案した。
 だけど、倉田先生は、ちゃんと緑が丘に帰って来た。
 なぜか。それは、高校野球を愛しているから。」

「梨奈は、なんでそんなこと知ってるんだ。」と中村淳史。
「そりゃ、お父さんの娘だもの。野球オタクよ。
 『月間甲子園』を、隅から隅まで読んでるもん。

 コーチとしても、倉田先生は、スーパーコーチで、
 選手を見ただけで、打撃、投球、走力の能力が一目でわかる。
 スコア記録なんていらない。
 倉田コーチは、全員のスコアが、頭に入っている。
 また、投球の速さを、少数第2位までわかる。
 156.23って感じでね。
 これ、ピッチャーにとって、どれだけやる気になれるか考えてみて。
 特に、剛速球型の投手なら、毎回投げた球の速さを言ってくれる。
 これ、めちゃやる気になるじゃない。

 今年は、霞台が、静岡県では、優勝候補でしょう。
 そこのピッチャーの高山君と、キャッチャーの木村君を、
 倉田コーチが指導したことあるの。
 甲子園準決勝の緑が丘に、地区予選最下位の霞台が、
 練習の見学を申し込んできたの。
 緑が丘の吉川監督は、必ず選手に相談させる。
 そこで、相手がどんなに下位でも、見下すことなく、
 レギュラー同士の試合をすることが、双方のためになると、
 選手たちは言った。
 そして、霞台とレギュラー同士の練習試合が決まったの。

 試合の後の意見交換会でのこと。
 今では名捕手の木村君は、ボールが恐くて、
 高山君のボールを全部とれないことを悩んでいた。
 それを、緑が丘の名捕手の川村君が見抜いて、
 週に2日、緑が丘で練習することを提案したの。
 緑が丘には、倉田コーチがいるからさ。
 で、コーチの指導を4回受けて、速いボールを克服し、
 木村君は、あのような、名捕手になったの。

 これは、月間「甲子園」に、美談として、書かれていたこと。

 もう一つ、倉田コーチは、絶対出しゃばらない。
 監督に頼まれたことしかやらない。すごくわきまえた人なの。

 お父さん。今、その倉田洋子先生が、お父さんの学校に来ているのよ。
 美輪が、去年緑が丘に負けたから、
 テコ入れをしに来てくれたのよ。
 そして、今日実力の片りんを見せてくれた。
 それは、野球を誰よりも愛しているから。

 授業中抜け出して、キャッチボールをやって、
 当たり前だと思っている部員なんて、最低じゃない。
 それで、甲子園優勝して、『感動をありがとう。』なんて、
 ちゃんちゃらおかしいでしょ。
 だから、今のような野球部を一旦潰して、
 心を入れ替えた野球部にしたいというのが、倉田コーチの願い。
 もちろん、お父さんが監督でなければ、話にならない。 
 これは、奇跡的な幸運よ。」

「そうか・・。それほどの人なのか。
 ならば、すべてうなずける。
 校庭の選手を見て、動体視力が落ちていると言われた。
 100人を一目見て、それが、わかったのだろう。
 江藤の球速を、148.45だと言った。
 あれは、本当に、その通りだったのだろう。

 近藤にコーチをしてくれた。
 163キロを鍛えろと。
 168になったら、プロとして通じると。
 あれは、俺の思っていたことそのままだった。
 それを、2球ほどで、見抜くとは。

 あの人は、エースを出せと言った。
 初めから近藤を出して、163を投げさせていれば、
 1球ごとに、言葉をもらえた。

 ああ、なんということだ。
 俺は、人を見る目がまるでない。
 人の心を感じる力がまるでない。」
淳史は、頭をかかえてうつむいた。

「そんなの誰だってそうじゃない。
 お父さん、何も心配することない。
 倉田コーチは、野球部をつぶすために来たんじゃない。
 野球部を立て直すために、来てくれた。
 いわば、救世主なのよ。」

「わかった。梨奈ありがとう。
 おかげで、俺が今からすべきことがわかった。」
淳史はそう言った。
妻の芳江は、賢い娘に感謝し、夫淳史を心で応援した。

校庭の隅で、吉田は、梨奈が父親に言ったような話をした。
話を聞いた3年生は、「そうかあ。」と納得した。
「そんなすごい人の野球を、俺たちは見たのか。」とピッチャーの近藤。
「近藤は、自分の方向を決めるような言葉をもらっただろう。
 だから、俺は初っ端から、163を投げろってサインを出したんだよ。
 そうしたら、3回言葉をもらえるところだった。」
「小川は、わかっていたのか。」
「まあな。キャッチャーのポジションにいると、わかりやすい。」

小西が言った。
「俺は、緑が丘が、当時、最下位だった霞台を迎えたときの話しに感動した。
 自分達だけ勝てばいいという野球は、本物ではないと思う。
 いろんな学校と共に強くなろうという野球をやりたい。」
「小西の言う通りだ。」
「とにかく、授業態度を誰にも負けないくらい、ちゃんとしよう。
 とりあえず、それが、俺たちの目標だ。」吉田は言った。

安田は隠れて、3年生たちの話しを聞いた。


  
野球部と洋子の試合を見に行った先生たちが職員室に戻って来て、
あーだ、こーだと言っていた。
「野球部、ほんとに解散しますかね。」
「いや、非公式な、ショートゲームで、それはないでしょう。」
「でも、あの中村監督なら、約束を守りそうだわ。」
そんなことで先生たちが立ち話に花を咲かせているとき、
安田一郎は、すっと目立たぬように、1枚のプリントを持って、
校長室に入って行った。

「校長。野球部のうわさが流れていますが、
 そんなの気にせず、まず、これをお読みください。」
安田が渡したのは、ウィキペディアから取った、洋子のアウトラインだった。
校長本田芳郎は、できれば明日にでも洋子を解雇しようと思っていたのだ。

しかし、安田が持って来たプリントを見ながら、
やがて、椅子に腰を下ろし、前のめりになって、読み始めた。
やがて、「はあ。」とため息をついて、椅子の背に身を持たせた。

「安田先生、これは、本当ですか。」
「はい、3種類の検索サイトで確かめました。」
「アメリカのドンジャーズが、コーチとして、年俸2億円出すと言ったのですか。」
「はい。アメリカNo.1のコーチとして期待されている人です。
 日本では、倉田さんがコーチをした学校は、
 甲子園で優勝、最低、準優勝をしています。
 現に、昨年緑ヶ丘を優勝させたではありませんか。驚嘆に値します。」
「球速を、小数第2位まで言えるのですか。」
「はい。ですから、ピッチャーにとって、毎回球速を言ってもらえるので、
 ものすごくやる気になります。また、球速が落ちたとき修正ができますし、
 球速が上がったとき、どこがよかったかを確かめられます。
 これらは、倉田さんのほんの一部であって、野球のすべての技能について、
 スーパーコーチが、できるそうです。」
「うん。わかった。倉田さんを絶対手放すなということだね。」
「はい。一つ、倉田さんは、野球を愛し、我が山梨県全体の野球を
 高めたいという、気高いお気持ちの方です。
 ですから、わが校で倉田さんを独占するのではなく、
 どんどん他校の野球部にも、コーチをしに行くことを、お認め願いたいと思います。」
「わかった。私だって、そのくらいの太っ腹を持っているよ。」と校長は笑った。

「あと、明日、監督の中村淳史さんが、辞表を持っていらっしゃると思います。」
「どうすれば、いいんだ。」
「私は、これから、監督を訪ね、お話に行きます。
 早く言えば、監督の辞表を受け取り、1週間くらい間を置いて、
 監督に再就任依頼をすればいいのです。
 野球部は、解散しますが、新野球部を結成すればいいんです。
 野球部の3年生が集まって、授業中も、心を入れ替えてちゃんとしよう、
 そう言っている声を確認しました。
 立派な野球部になると思います。」

校長は、にやりとした。
「安田先生、あなたと言う人は、頼りになりますなあ。」
「いえいえ、えへへ。」と言いながら、安田はにっと笑って、退室した。



安田は、その脚で、監督中村淳史の家を訪ねた。
安田は、中村と和式のテーブルをはさみ、向き合って座った。
「監督、お顔のご様子では、倉田さんがどんな人か、
 お知りになられたのでしょうか。」
「はい、娘から聞きました。
 今日は、倉田さんというライオンに、ネズミを挑ませたのだと、
 わかりました。」
「倉田さんは、野球部のコーチになるために、この学校へいらしたのですが、
 それも、もうご存知ですか。」
「はい。それも、娘から言われました。」
「今日、試合のあと3年生があつまって、これからは、授業中、
 誰よりもちゃんとしよう。そうすれば、野球部再開の道が開けるかもしれない、
 そう言っていました。」
「そうですか。それは、うれしいことです。」

「監督は、今、倉田さんとの約束は守らなければならない。
 しかし、子供たちに野球は、やらせたい。
 倉田さんだって、野球部が解散のままなんて、本意ではありません。
 中村監督ほどの方を失うことなど誰も望んでいません。
 その板挟みで、困っておられると思い、私が参りました。
 私の提案ですが。」
と吉田は身を乗り出した。
「ええ、聞かせてください。」と中村。
「1度は、辞表をお出しになります。
 そして、1週間後に再就任されるのです。
 野球部の子達が、1週間、誰よりもきちんとしていれば、
 みんなが、野球部を認めます。
 『野球部復活に向けて、誰よりもちゃんとしていよう。』と、
 3年生は、1、2年を集めて、朝一番に伝えるでしょう。
 そして、監督が気持ちを新たに再就任。
 そして、野球部も、新野球部と名を変え発足します。
 野球部の子達が、変われば、約束破りなんて誰も言いません。
 なぜなら、野球部は、この美輪高校の子供達の誇りだからです。
 夏の甲子園がなによりの楽しみなんです。
 監督の再就任は、校長と相談済みです。
 1週間たったときに、再就任の依頼をすると校長がいいました。
 監督。いかがでしょうか。」

中村は、何度もうなずいた。
「安田先生。あなたという方は、なんとありがたい。
 ご自分のことではなく、野球部のことなのに、
 ここまで、親身になってくださる。ありがたいことです。
 ご提案の通りに、いたします。
 よろしくお願いいたします。」
中村は、深々と頭を下げた。
安田は、小さい声で言った。
「私、自分で勝手に『野球部の軍師』のつもりでおります。
 高校野球が何より好きなんです。」
中村は笑って、
「自分勝手ではなく、正式に野球部の軍師の役、お願いいたします。」
と言って、二人で、にっこりした。

(次回は、『変わる野球部員』です。)


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Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
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