クリスマスの人

クリスマス用に書きましたが、間に合いませんでした。
以前書きましたのと、同じプロットを使ってしまいました。
小品です。読んでくださるとうれしいです。
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クリスマスの人


その少女・美沙は、大きな風呂敷包みを抱えて、
夜の電車に乗って来た。
長い髪を茶に染め、
赤と青がストライプになっている超ミニの派手なA型のワンピースを着ていた。
メイクが濃い。
電車が走りだし、美沙が車内を見ると、どっと視線が集まった気がした。
多くの視線は、超ミニから伸びた美沙のむっちりした脚に集まっている。

電車は、混んではいないが、座席は、ほとんど埋まっていた。  
美沙は、1つだけ空いている席を見つけ座り、
風呂敷包みを膝の上に大事そうに乗せていた。
隣の学生風の青年が、その隣の友達に小声で言った。
「見ろ、ケバイ女だ。脚をむき出しだぜ。」
「お前、声が聞こえるぜ。」ともう一人が言った。
「かまわねーよ。」
美沙には、丸聞こえだったが、知らんふりをしていた。

2つ目の駅で、腰が曲がって杖を突いている、90歳くらいの女性が乗って来た。
美沙から見て、向いの遠くの扉だった。
席は1つも開いていなかった。
美沙は、自分の席を譲ろうと思い、席が取られないように、
大事に持っている風呂敷包みを自分の席において、女性の方へ行った。

「なんだ、あの女。席が取られないように、荷物置いていったぜ。」
と、美沙の隣にいた学生は、友人に言った。
「反則だよな。席を立ったら、人に取られても文句言えない。
 荷物で、場所取りなんてないぜ。」ともう一人が言った。
学生は、腹を立て、美沙の風呂敷包みを取って、出入り口に近い床の真ん中に置いた。
帰って来て、荷物がないと慌てる女の顔を見るのが楽しみだった。
乗り込んで来た男が、すぐに空いている席に座った。
学生二人は、内心「さまーみろ」と言っていた。

そこに、男が一人歩いて来て、
美沙の風呂敷包みをすっと持って、電車を降りた。
電車の扉は、その後すぐにしまった。
学生二人は、自分たちの愚かさを悟って、慌てた。
『そんなつもりじゃない!』
『荷物を誰かに持って行かせるつもりなんかない。
 何も考えず、ただ置いただけだ。』
『しかし、あれじゃあ、持って行ってくださいと言わんばかりだ。』
『あの荷物を、あの人は、大切に抱えていた。』
『大切なものを失うほど、あの人は悪くねえ。』

そこへ、朱美が、お祖母ちゃんを連れて、戻って来たのだ。
席はすでに人が座っていて、美沙は、きょとんとした。

学生2人は、そのとき初めて、超ミニの女が、何のために席を立ち、
なんのために、自分の席に荷物を置いていったのか、理解したのだった。
学生2人、村上と吉岡は、自分達の察しの悪さ、ネガティブ思考、意地悪に、
一気に自己嫌悪に陥った。

美沙の隣にいた村上は、さっと立った。
「すいませんでした。あなたのことを誤解して、意地悪をしました。
 おばあちゃんは、まず、俺の席に座ってください。」
吉岡も立って、美沙に席を譲った。
そして、2人の学生は、改めて、美沙に、誤解したことを話そうとした。
「待ってください。お祖母ちゃんにお話が聞こえます。
 車両の隅へ行きませんか。」
村上と吉岡は、今度は、察した。
席のことで、あーだこーだと言ったら、老人が気兼ねをする。

車両の隅に移動しようとしたとき、村上の前で吊革につかまっていた
背の高いスーツの男が付いて来た。
「そばにいました。私にも責任があるかもしれません。」
男はそう言った。

村上と吉岡は、美沙にどう誤解したのかを話し、頭を下げた。
「そうですか。それは、私も配慮が足りませんでした。
 おばあちゃんを座らせたいのだと、あなたに、一言言えばよかったのです。
 ところで、あたしの風呂敷包みはどこにあるのでしょうか。」

「始めに言うべきでした。俺たちが床に置いたので、さっき男の人が持って行ってしまいました。
 すいませんでした。」
「そんなことまで、考え付きませんでした。すいいませんでした。」
村上と岡村は、うなだれてそう言った。
「そ、そんなあ。」といって、美沙は、みるみる泣き出し、しゃがんでしまった。
「大事なものだったの?」と背の高い吊革の男が言った。
「母の形見の品々です。」と美沙はいった。

学生二人は、真っ青になった。
お金で買えるものなら弁償ができる。
しかし、形見のような大切なものは、取り返しがつかない。
なんということをしてしまったのだ。
女性が大切に持っていたのを、知っていたのに。
なんという考えなしのことをしたのだ。

そのとき村上は、女性の左の頬に大きな傷があることに気が付いた。
村上は、今度ばかりは悟った。
『この人の厚化粧の理由は、これだ。
 超ミニでいるのは、人々の視線を脚に集め、顔を見られないようにするためだ。』

少し前、岡村とこう言った。
「厚化粧の女に限って、すっぴんは見られた顔じゃなかったりする。」
そう言って、岡村と笑った。
この女性には、聞こえた。
俺は、ハンデがある人の心を、ひどく傷つけてしまった。
村上は、自己嫌悪に、胸が張り裂けそうになった。
「今更、わざわざ彼女に謝ったりするな。思い出して、余計に傷つくだけだ。」
吊革の男は、村上の心がわかるかのようにそう言って、去って行った。

村上が譲った席で、お祖母ちゃんが、美沙に手を振って、
美沙の風呂敷包みを見せた。
美沙は、飛んで行った。
美沙の席は、空いたままだった。
「どうして、ここにあたしの荷物が?」
「さっき、背の高い男の人が来て、わたしの膝に置いて行ったのよ。」
「わあ、考えられえないけど、これは、奇跡ですね。」
「あなたのお顔をしっかり見ておきたいから、こっちを向いて。
美沙はそうした。
お祖母ちゃんは、美沙の頬に手を当て、美沙を見た。

吊革の男の姿は、どこにもなかった。

村上は岡村に女性の厚化粧と超ミニの訳を話した。そして、2人はひどく反省して、電車を降りた。
「俺、これから、人の悪口は、やめる。」村上は言った。
「ああ、やめよう。」岡村は言った。

街には、クリスマス・ソングが流れ、賑やかだったが、
一人住まいの美沙のマンションは、ひっそりとしていた。
メイクを落とした。
そして、気が付いた。
頬の傷が治っている。
母の遺品を持って来たことの奇跡か。
あのお祖母ちゃんのプレゼントか。
いえ、多分、母が、あのお祖母ちゃんになって、
奇跡を起こしてくれた。
それに、あの背の高い吊革の人は、
昔亡くなったおとうさんに似ている。
お祖母ちゃんの膝の上に、風呂敷包みを置いてくれたのは、お父さんだ。
私は、あの電車の中で、お父さんとお母さんと同じ空間で同じ時間を共に過ごした。
しかも、すぐそばで。

美沙の胸に喜びが込み上げて来た。

『お父さん、お母さん。ありがとう。プレゼント、受け取ったよ。』
美沙は、父母の写真を見て、目を潤ませて、そう言った。

<おわり>


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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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