スーパー洋子・最難関の校正『本の完成』 後編

スーパー洋子・最難関の校正『本の完成』 後編


二日後、倉田洋子と近藤百合子は、京都駅に立っていた。
百合子は、本当は、必要がなかったのだが、
洋子の仕事ぶりを見たいと、自腹を切って付いて来た。
そこへ、車がやってきた。
名誉教授の書生とみられる人が運転し、助手席に叔子がいた。
百合子は、京都の散策に思いを寄せていたが、
車は、真っ直ぐ、比叡山の中腹に行った。
そこは、涼しく、汗がいっぺんに引っ込むほどであった。
木造の古い趣のある家に、洋子と百合子は、入った。

洋子と百合子は、まず、芝岡重蔵名誉教授にお会いした。
介護用のベッドの背を、45度くらい上げて、教授は嬉しそうに二人を見た。
教授は長身で、とても温和な顔立ちだった。
「これは、これは、遠くから、誠に申し訳ありません。」
教授は、京都なまりの発音でそう言った。
二人は挨拶をした。

冷たい物をいただき、洋子は、早速仕事にかかった。
教授の書斎に行き、片端から、本をパラパラとめくった。
それで、読んでいるのだが、傍目には、とてもそうは見えなかった。
叔子が来て、
「何か、本の中の栞でも、お探しですか?」と聞いた。
「一応、どんな言語が出て来るのか、見ているんです。」
洋子は、そう言ったが、本当は、全文を読んで、すべて記憶していたのである。

洋子は、芝岡教授の著作の20冊を超える本と、
参考文献と記されていた本も全部読んだ。
登場する古代の諸外国の言語は全部頭に入った。
引用がある場合は、どこからの引用かも、頭に入れた。
読み方の表もあったので、頭に入れた。
驚異的な作業である。
これを、2時間でやった。
準備万端である。

近藤百合子は、二人の書生・加藤と佐伯と楽しそうに話をしていた。
教授の横に、木の座り机と、座布団が用意されていた。
「では、準備ができました。」
洋子は、そう言って、自分のパソコンと、メモとして使える紙を、
たくさん用意し、机の前に座った。
「では、教授、お始めください。」と洋子は言った。

叔子も書生の2人も、一見高校生に見える女性が、
先生の聞き取りを本当にできるものなのか、心配をしていた。
教授と同レベルの学術的知識がないと、できないことである。
一同は、願う気持ちで、洋子に最後の期待をかけていた。

洋子のワープロを打つ速さは、ほとんど時間を要しない。
教授は、自分のペースで話せばよかった。
すらすらと、1ページ分進んだ。
しかし、次のページの始めに、インド古代言語がやって来た。
サンスクリット語(梵語)の1つである。
教授は、
「えーと、次は、インド古代言語を古代文字で書き、発音記号を添え、
 カッコ書きで、意味も書きたいのです。
どのように、あなたにお伝えしましょうか。」と言った。
そばにいる、叔子、書生、百合子は、祈る気持ちで洋子を見つめた。

「発音してくださるか、意味を言ってくだされば、古代文字に致します。」
洋子は言った。

「できたら、すごいことだ。」と書生の加藤は小声で同期の佐伯に言った。
佐伯がうなずいた。
叔子は、ただただ祈っていた。
百合子は、緊張の塊になっていた。

教授は、インド古代文字を、発音で言った。
洋子は、メモの紙に、さらさらと書いた。

「『西に山ありて、日は早く沈む。我らの夜は長い。』こんな意味でしょうか。」
洋子は、メモ用紙に古代文字と発音記号を書いたものを、教授に見せた。

「ああ、そうです。素晴らしい。なんとありがたい。」
教授は、涙を流さんばかりだった。

見ていた一同は、感激し、涙を浮かべた。
みんなが、大きな拍手をした。

その後、どの国の古代語が出て来ても、洋子は、すらりと書き、
行を進めた。

こうして、1日1ページと予想していた叔子や教授は、
午前、午後と5ページずつ仕上げ、計10ページを仕上げたのだった。

翌日、最後の10ページは、午後の2時に仕上がった。

最後に、「あとがき」を述べるとき、教授は、途中で目に涙し、声をつまらせた。
病魔と闘いながら、ここまで綴って来たこと。自分を励まし支えてくれた、
娘や書生の諸氏。どの一つが欠けても、この本はできなかったこと。
そして、手が動かなくなってからの、自分の焦燥、苦しみ。

教授の言葉を聞きながら、みんなが涙を浮かべた。

最後に、教授は、三栄出版への謝辞を述べた。
『最後に、奇跡とも思える私の口述筆記を、成し遂げってくださった
 倉田洋子さん、そして、三栄出版に、深くお礼申し上げます。』



洋子は、全200ページが打ち込まれたUSBメモリーを百合子に渡し、
プリントアウトされたものの、空白の部分に、手書きで古代言語を書き入れて行った。
そして、本の末に、「参考文献・資料」「語彙索引」「著者紹介と主な著書」つけた。
中でも、「語彙索引」は、ふつう膨大な手間がかかるものだが、
全文を記憶している洋子は、30分で作った。

それを見て、叔子は、「全くの奇跡です。」と言った。

叔子が、1ページずつ見せながら、教授が、最後の校正をした。
「叔子の言葉通り、全くの奇跡です。1つのミスもありません。
 ありがとうございました。」
教授は、洋子を見て、にっこり笑った。

印刷・製本所に無理を言い、本300冊を3日で完成させてほしいと言った。
その代り、洋子と百合子、書生の加藤と佐伯が、毎日手伝いに行った。

そして、本は完成した。
神話から取った絵が、表カバーにあり、本を飾っている。

4人で教授の元に車を飛ばした。

「まあ、もうできたのですか。」と叔子は満面の笑みで4人を迎えた。
みんなで、教授のベッドに本を持って行った。

教授は、叔子に、1ページ1ぺーじ、めくってもらいながら、
「無上の喜びとは、このことです。がんばって、よかった。
 これで、もう思い残すことはありません。
 最後に、倉田さんという神様のお遣いが来てくれはった。
 みんな、ありがとう。」と言った。

「お父さん、何を言いますねん。
 これから、本の反響を聞かねばなりません。
 まだまだ、死ねませんよ。」と叔子が行った。

そうです、そうです、と、みんなが笑いながら言った。



洋子と百合子は、帰って来て、
百合子は、洋子のしたことを自慢しに、会社中を歩いて回った。
「これで、教授が、お元気になられたらなあ。」と洋子は思っていた。

それが、2週間後である。
百合子が、あわてて洋子を呼びに来た。
「1階、1階に来て。びっくりよー!」

洋子は、百合子に連れられって、1階のブースに行った。
そこにいた2人が、立ち上がった。
「まあ、教授に叔子さん!」と洋子は叫んだ。
「そうなんです。奇跡は、倉田さんだけやのうて、
父が歩けるようになりました。」と、叔子が言った。

みんなは、座った。

教授が、
「死ぬ前に本を出したい、出したいという気持ちが、
 逆にストレスになっていたようなんです。
 そのために、私を本から逃れさすために、
脳が、徐々に私を動けんようにしたんですね。
ですから、本が出来たら、もうよし、ということで、動けるようになりました。」
「わあ、それは、よかったです。
 これから、ご本の反響を、確かめねばなりませんね。」と洋子。
「いや、当分、本のことは、考えん方がよさそうです。」
と、教授が言い、みんなで、笑った。


<おわり>

(ノンエッチなお話を読んでくださり、ありがとうございます。
 次回は、少しエッチなお話を書きたいとおもいます。)


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Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
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