スーパー洋子『最難関の校正』前編

久しぶりの「スーパー洋子ですが、前後編の2話で終わります。
読んでくださるとうれしいです。
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スーパー洋子『最難関の校正』


東京の三栄出版社の2階は、校正者のフロアーになっている。
校正者の最終校正をする、トップの座にいる大秀才の坂田郁夫は、
先ほどから、隣にいる倉田洋子をチラチラと見ていた。

倉田洋子は、デスクの引き出しを引いて、
中にあるゴム人形を戦わせていた。
バキューン、ドスッ、ビビビビビなどと、小声で言っている。
「先輩、今、スーパーモードですね。」
と坂田は言った。
おかっぱで、寸の短い上着を着ている倉田洋子は、まるで高校生に見える。
「時間が余ってるなら、私の校正手伝ってくださいよ。」と坂田。
「嫌よ。坂田君の手伝ったりしたら、あたしの能力バレちゃうじゃない。」
「もう、会社中にバレてますよ。」と坂田は笑った。

そのとき、鬼の上司と言われる近藤百合子が来た。
「洋子ちゃん、今訳ありの仕事の依頼が来ているの。
 わざわざ京都からお見えになってるの。
 あたしと、下のブースに来て。今、スーパーモードよね。」
「はい。」と洋子の代わりに、坂田が答えた。

下には、たくさんのブースがある。
自費出版の客と編集者が打ち合わせるところで、
内装に特別力を入れている。

百合子と一緒にそのブースに入ると、
50歳代後半の女性がいた。
「芝岡叔子と申します。」と彼女は立って、丁寧にお辞儀をした。

「ここにいます倉田洋子が、わが社1番の校正者です。」
百合子は、そう言って、席に座った。

「伺いましたところ、倉田さんは、T大の教授の書いた数学のご本を、
 数式の間違いを指摘しながら、校正をなさったそうですね。
 それほどの方ならと思いお伺いました。」
芝岡叔子は、そう言って、以来の内容を語った。

芝岡叔子の父芝岡重蔵は、87歳。
5年前からベッドの生活に入り、
死ぬ前に、最後の集大成ともなる著書を書きたいとがんばって来た。
それが、ここ数日、著書の完成まであと20ページを残して、
腕さえも動かなくなった。
いつ他界してもおかしくない状態である。
分野は、言語学で、「日本語の起源」についての物である。

著書の完成には、(筆記のできない)博士の口述を聞き取り、原語で書かなばならない。
ところが、古代のインド、モンゴル、東南アジア諸国、オスマントルコの言語が登場し、
それを、原語で記さないといけない。

「私も、父の元で学んできましたが、
これらの言語を読むことはできても、書くことができません。
 大学院生にも頼みましたが、まだまだ無理とのことでした。
 そこで、最後の望みとして、こちらに参りました。
 父が他界する前に、完成した本を見せたいのです。
 父は、どれだけ喜ぶでしょう。」
叔子は、涙を見せながら、そう語った。

「洋子ちゃん、東南アジアの古代言語なんて、わかるの?」
と百合子は聞いた。」
「『南島諸語系』の言語のことですよね。」洋子が軽々と言った。
「そうです!父は、『南島諸語系』と呼んでいました。」叔子は、希望の目を向けた。

「洋子ちゃん、どうしてそんな言葉を知っているの?」
近藤百合子は、びっくりしながら聞いた。
「芝岡名誉教授のご本を、1冊読んだことがあります。
 『日本語に影響を与えた言語について』というご本でした。
 日本語のルーツとして考えられていた、国々の古代語では、どうしても解けない一群の言語をがありました。
 芝岡教授は、トルコ語と日本語との共通性に気付かれ、オスマントルコが東へ侵略したとき、
 多くの語が中国に入り、そこから日本へと入ったのではないかと、お考えになりました。
 まさか、あんなに遠いトルコからと、研究者達は、とても信じないでいましたが、
 教授は、それを説得力のある例を多数上げ、見事証明されました。
 ご本は、それこそ、日本語ルーツの研究に、革命をもたらすものでした。
 私は、トルコ語が感動的に登場する下りで、血沸き肉躍る興奮を得ながら、読ませていただきました。」
と洋子は言った。

「まあ、『日本語に影響を与えた言語について』をお読みになった方が、
 学界の他にもいらっしゃるなんて、父がどれほど喜ぶでしょうか。
 そして、本についての、倉田さんのおっしゃりよう、父が聞いたら、どれだけ喜んだことでしょう。
 是非にも倉田さんにお願いしたいと思います。」
芝岡叔子は言った。

「あの、私でよければ、お引き受けいたしますが、
 2、3聞いてもよいでしょうか。」と洋子。
「はいどうぞ。」
「私は、ご本の完成は、1日でも早い方がいいと思っています。
 そこで、印刷所に、私がワープロで打ったものを完成原稿として、
 校正をせず、そのまま本に仕上げたいと思っています。
 サンスクリットなどの文字は、印刷所にありますが、
他の古代言語はないと思いますので、私が手書きでいたします。

 それから、芝岡教授から私が聞き取りをしています間、
 表紙のデザインをお願いします。
 日本の昔の神話の絵などありましたら、それを元に、
 印刷所がレイアウトしてくれます。
 これまでの著書で、懇意にされている印刷所がおありかと思いますが。」
「はい。あります。」と叔子が言った。

百合子が言った。
「この倉田が書きました文は、校正を必要としません。
 間違えることがありません。」

「そうですか。頼もしい限りです。お引き受けいただき、ありがとうございます。」
叔子は、そう言って、涙をこぼした。

叔子が帰ったあと、洋子は、気合の入った声で、言った。
「さあ、がんばるぞー!早く本にして、教授に見てもらうんだー!」
「あたしも、京都について行ってあげるからね。」
「え?百合子先輩は、いりませんよ。」
「そんなこと言わないの。京都でしょ。有給とってでもいくから。」
「ええ~?」

(後編『本の完成』につづく。)


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Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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