実験小説・安田聡美④「二人の幸せ」最終回

最終回です。エッチがないうえ、とても長くなってしまいました。
また、昔書いた小説の一部を、少しもらいました。お許しくださいませ。
読んでくださるとうれしいです。
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実験小説・安田聡美④「二人の幸せ」


聡美は、時間があるときは、会社の中を見て回るように、義男に言われていた。
会社のどこにどんな部署があるか、知っておいてもいいというのだ。
社員の邪魔をしないように、見て歩く。
用があれば、スマホで知らせる。

社長第一秘書というのは、美人でセクシーであり、
そして、社長の「お飾り」だ、というのは、
どの社員も、共通認識していることだった。
休んでいる第一秘書の大野恵美も、セクシーで美女である。
社員たちが、社長第一秘書のことを語るときは、
「顔がいいだけ」という蔑みのニュアンスがうかがわれた。

ところが、聡美は、多くの社員から好かれていたのである。
社内見学をしている聡美と、通路で社員がすれ違うとき、
聡美は、必ず、自分の方が、ぴったり脇に寄り、相手を通し、
微笑んで会釈をする。

この1つで、
社員は、聡美に好感を持ったのだった。
言い換えれば、たった一つのことで、その人が知れるのである。

また、部署の横を通るとき、聡美は、必ず、にっこりと会釈をして通る。

聡美が会社に来て、5日目に、休んでいる大野恵美から、
ごたごたが片付かず、あと3週間休みたいという連絡があった。
義男は、聡美のお店のママを拝み倒し、
聡美をその間会社にいさせてもらうことにした。

こうなると、半ば遊びの1週間ではなくなった。
義男は、数ある下請け会社へ頻繁に訪問することを信条としていたので、
1日、3社回ることもあった。こうなると、聡美のお色気はなしである。
聡美は、長めのスカートを履くようになった。

「この頃、いちゃいちゃできなくて、つまらんなあ。」
と、義男は、聡美に言った。
「会社は、仕事をするところですから、この方がいいです。」
と、聡美は、ニッコリする。

義男は、これと言って、聡美に仕事を頼むことはしなかった。
それなのに、ときどき、聡美が、ワープロを打っている。
「む、何を綴っているのかな?」
と、義男が聞くと、
「ちょっと、日記です。」と、聡美は笑いながら答えた。

そのとき、義男は、ある部署へ行くため、社長室を出た。
聡美は、社内見学でいなかった。

社長室を出たところに、社長第2秘書のブースがある。
浅井玲子という、55歳の女性がいる。
玲子は、仕事ができ、実際に、社長室を支えている人物である。
その玲子に、義男は呼び止められた。
「社長、ちょっとお話が。5分ほどいいですか。」と言う。
「何かな。」と義男。
「第一秘書の安田聡美さんのことです。」

義男は、ドキンとした。
聡美とセックスをしていることがばれたのだろうか。
聡美が、ニューハーフであることがばれたのだろうか。

第2秘書のブースの隣は、資料コーナーになっていいて、
資料を広げるテーブルがある。
玲子と社長は、そこに座った。
義男はドキドキしていた。
玲子は言った。
「安田聡美さんですが、おできになります。」
「仕事ができるということですか。」義男は言った。
「そうです。これを見てください。」
そう言って、玲子は、10枚ほどの資料を見せた。そして、言った。
「これは、社長が安田さんを連れて出かけた、これまでの下請け工場の覚書です。
 安田さんが、お作りになりました。
ごらんなさいませ。
 工場長さんとの会話が、ほぼ記されています。
 そして、社長がお土産に何を持って行かれたか。
 先方から、何をいただいたか。
 そう言う細かいことまで、書かれています。
 会話の中の特筆すべきことは何か。
 大事なことも、記されています。」
「ほう、この資料が、役に立ちますか。」

「立ちますとも。例えば、次にこの工場へ行くとします。」
玲子は、1枚の覚書を、社長に見せながら言った。
「訪問の前に、このプリントで予習していきます。
 すると、前回、お土産にクッキーをいただいたことがわかります。
 そこで、社長は、いの一番に、クッキーのお礼を言えます。
 『おいしいクッキーをくださり、社員と一緒にいただきました。』
 そう言ってごらんなさいませ。
 先方は感激されるのではないでしょうか。」
なるほどと義男はうなずいた。
玲子はさらに続けた。

「さらに、工場長の奥様が、神経痛で困っていることが、
 特筆事項として書かれています。社長が、
『奥様の神経痛は、その後いかがですか。』
 とおっしゃったらどうでしょう。
 『ああ、社長は、そこまで覚えていてくれたのか。』とうれしく思われるでしょう。
 さらに、前回のお話しの内容を読んでいけば、
 同じ話を2度しないで済みます。
 前回から、無駄なくお話しに移れます。
 これで、訪問でのお話は、うまくいくこと請け合いです。
 社長の回る工場はたくさんありますが、工場にとっては、
 社長はただお一人です。
 そのめったに来ない社長が、そこまで覚えていてくれたことに、
 先方は、感激なさり、社長への信頼が増すというものです。
 
 安田さんは、今まで訪問した会社について、その都度『覚書き』を作り、
 私にくださっているんです。」
「なるほど。浅井さん、いいことを教えてくれました。」義男は、うれしかった。
「私は、秘書の仕事を長くやっておりますが、
 こういう有益な資料を作った方は、初めてです。」
「じゃあ、安田さんに、仕事をさせないのは、もったいないということですか。」
「その通りです。」
「わかりました。感謝します。」
義男は、うれしそうな顔をして、部署に言った。

そのころ、聡美は、開発部の横を通っていた。
いつものように、ニッコリ会釈をして通り過ぎようとしていた。
そのとき、通路側の社員の周りに、4、5人の社員が集まっていた。
一人が、ちらっと、聡美を見て、会釈をした。
「彼女、英語が得意だって、自己紹介のとき言ってたぞ。」
「こんなビジネス英語は無理よ。かえって、恥をかかせてしまうわ。」
「だが、今日中に返事を出さなければならない。
 寄りにもよって、翻訳部は休みだ。
 藁をもつかむだ。」
一人が、聡美を追いかけた。

「安田さん。英語がお得意でしたよね。」
「私のは、日常会話程度ですけど。」と聡美。
「あの、今日翻訳の者がいなくて、困っているんです。
 ちょっと、見てくれませんか。」
聡美は、大学の経済学部を出ていて、外資系の会社にいたことがあった。
こういう英文は、得意中の得意だった。

聡美は、困ったような顔をして、部署の中に入った。
そして、英文の書類を見せられた。
聡美は、すーと上から下まで、目を通した。
「あの、ワープロに、翻訳を打ちたいと思います。
 貸して、いただけませんか。」と聡美は言った。
「あ、どうぞ、どうぞ。」
と、聡美を呼び止めた社員がたって言った。

聡美は、デスクにすわり、
英文を見ながら、パチパチとキーを打って行った。
みんなは、あれよ、あれよと見ていた。
聡美の翻訳文は、2ページ目に移り、そこから英語になった。
「多分、こんな内容です。
 それと、資料を受け取ったという返事は、急ぐと思いましたので、
 その返事を、2ページ目に書いておきました。」
「うおおおおお。」とみんなは、拍手した。

聡美は、照れ笑いをして、「では。」と言って行ってしまった。

聡美が去ったあと、社員たちは言っていた。
「今まで、彼女を少し蔑んでいたけど、反省するよ。」
「返事まで書いてくれた。」
「ビジネスが分かっている人だわ。」
「ずっと、聡美さんだったら、いい。」

義男は、「覚書き」のことで、聡美を誉めたいと思って、
社長室で、待ち構えていた。
やがて、聡美が帰って来た。
「聡美くん。見たよ、見たよ、『覚書き』。
 第二秘書の玲子さんが、べた誉めにしてたよ。
 あの人が、人を誉めるなんて、めったにないことなんだよ。」
と、義男は、満面の笑顔だった。

「そんな、ちょっとメモしただけです。」と聡美。
「あはは。謙遜家だね。
 第二秘書の玲子さんが、君にもっと仕事をさせろという。
 どうだい、今日の部長会議に私の補佐として、出てみないか。」
「まあ、そんなの、身が縮んでしまいますよ。」聡美はにっこりして言った。

部長会議。
12席くらいの会議室に、一堂揃った。
ほとんどが、50歳くらいの男性の年配者だ。
上席の社長の隣に聡美は座っていた。
部長たちは、社長はとうとうお飾である秘書まで、同席させるようになったかと、
苦々しく思っていた。

その日の議題は、塗れば膜になって、1日中落ちない口紅の開発についてだった。
口紅の光沢を失うことなく、落ちない。
彼のワイシャツにキスをしても、キスマークがつかないという、
画期的な製品についてであった。
技術的な段階はクリアしている。
部長たちは、いろいろ意見を言い、
製品販売に移ってもいいのではないかと、ほぼ決まるところであった。

ここで、社長は、聡美に振った。
「えー、部長のみなさんは、みんな男性なので、
 女性の立場からどうかと、秘書の安田さんを連れてきました。
 安田くん。感想なりあるかな。」そう振った。

聡美は、かなり緊張していたが、思い切って言った。
「このリップの完成まで、まだ、3つほどハードルがあるように思います。
 まず、皮膚呼吸です。
 女性は、メイクでの皮膚呼吸をとても気にします。
 開発のリップは、唇を膜が覆ってしまいますので、皮膚呼吸ができません。
 ですから、毎日使って、唇の皮膚が荒れるのではないかと心配すると思います。
 ですから、皮膚呼吸はするが、落ちないという製品だと、よりよいと思います。

 二番目に。売り上げについてです。落ちない口紅であれば、
 1日1回塗れば、それで済みます。
 つまり、商品がなかなかな減らずに、2本目が売れないということがあると思います。
 これには、口紅を細くしたり、上げ底にしたりできますが、
 それが、消費者に、納得できるものである必要があるように思います。

 最後になりますが、多くの女性は、化粧直しが好きなのです。
 トイレなどでしている化粧直しの1番は、ファンデーションです。
 次は、リップです。この2つで、顔の輝きが甦るのを女性は喜んで見ています。
 落ちないリップですが、この楽しみの一つを奪うかもしれません。
 今、それが、一番大きなハードルのように思います。

 以上です。言いたいことを申し上げました。お許しください。」

しばらく沈黙が続いた。

義男は、みんながどう言うかドキドキしていた。

一人の部長が言った。
「今、安田さんがおっしゃったのは、大変貴重な意見です。
 私たちは、これまで、『落ちない』ということばかり、考えていましたが、
 女性の心理については、深く考えませんでした。
 安田さんのいう、3つのハードルは、是非、乗り越えなくてはなりません。」

別の部長が、
「その通りです。3つのハードルを越えないと、新商品は、売れません。
 安田さん。今のは、すばらしい意見です。」
とその部長は、聡美に拍手をした。
すると、他の部長たちも、一斉にニコニコしながら拍手をした。
「ありがとうございます。」と言って、聡美は恥ずかし気に、うつむいた。

部長会議のあと、社長と聡美で、第2秘書の浅井玲子のところへ行った。
「浅井さん、あなたの人を見る目は、大変なものですね。
 今日、部長会議に、安田さんと出たんですよ。
 そのとき、彼女が言った意見で、全部が変わった。
 彼女の意見がなければ、売れない商品を作って、
 会社は大損するところだった。」
「まあ、それは、よかったですね。
 あたしも、人を見る目があったということかしら。」
「そうだとも!」
「浅井さん。私を売り込んでくださって、ありがとうございます。」
聡美は言った。

「あ、そうそう。第一秘書だった大野恵美さんから、辞職願が届いていますよ。」
と、玲子。
それを聞いて義男は、聡美を見てにんまりした。

聡美は、社長と、ニューハーフの店に言って、
辞めたい意向を伝えた。
「聡美ちゃんは、ナンバー1よ。店としては大損だけど、仕方ないわね。」とママは言った。

1か月後。
聡美は、部長会議で、優れた意見を連発し、
聡美を社長の『お飾』と見る人はいなくなった。
それどころか、個人的な問題まで、相談にくるようになった。

それから、1か月後。
二人は、高級なレストランにいた。
義男は、そわそわしながら、やがて、紫の小さな箱を出した。
聡美は、それを開けて、「まあ。」と言った。
大きな宝石が入っていた。

「そのなんだ。私はもう50だし、君に結婚してくれなんて、
 とても言えた立場じゃない。」義男は、照れながら言った。
「つまり、婚約指輪っていうこと?」
「そのね、結婚しちゃうと、いろいろマスコミとやらがうるさいだろ。
 だから、一生、一緒に暮らして欲しいって意味なんだ。
 でね。もし、結婚してくれるなら、外国で、こっそりあげちゃうなんてね。」
「うれしいわ。」と聡美はいった。
 聡美は、頬に一筋涙を流した。
「じゃあ、OK?」と義男。
「うん。OK.」と聡美はうなずいた。

義男は、大仕事をしたように、額の汗を拭いた。
聡美は、くすっと笑った。




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Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
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