半実話 『痴漢に間違えられた光男 』

すみません。女装のお話しではありません。
ある実話を脚色しました。読んでくださるとうれしいです。
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痴漢に間違えられた光男


季節は6月に入っていた。
光男は、大学の2年生。
朝のラッシュを避けて、少しすいている時刻にその電車に乗った。
すいていると言っても、座席はいっぱいで、吊革もいっぱいだった。
光男はやっと見つけた吊革をにぎった。

横に髪の長い大学生らしい女の子がいた。
白いブラウスに、クリーム色のタイトなスカートを履いていた。

電車は、急行で、これから3つの駅を飛ばして走り始めたころだった。
ふと、隣の女の子の様子が変わった。
体が緊張していて、やや、うつむいていた。
光男が、女の子の後ろに目をやると、
サラリーマン風の40歳位の男が、女の子のお尻に手をあてている。
『ちかんだ。』と光男は思った。
女の子は、可哀相に、大声で男を訴える勇気がないのだろうか。

痴漢を訴えても、証拠がなく、釈放される場合が多い。
光男は、『そうだ。』と思い付き、スマホをやっているふりをして、
男が女の子のお尻をさわっているところを動画で撮った。
それから、男の横顔を撮った。
被害者である女の子の服も撮った。
撮り終わり、スマホを、胸のポケットに入れた。

光男は、女の子に勇気がないなら、自分が男の手を取って、
現行犯にしようと思っていた。

男は、ずっと女の子のお尻を撫でていた。

やがて、電車はやっと次の停車駅のホームに入った。
ここで、逃がしちゃだめだ。
ホームに入った電車が止まれば、男は、逃げると思った。
光男はタイミングを計っていた。
電車が止まった。
そのとき、光男は、男の手首をにぎった。
だが、汗ですべり、男は光男の手をすり抜け、
逆に、光男の手をとって、女の子のお尻に、光男の手を、なすりつけたのだった。
このとき、自分の手首を、がっちりつかむ手があった。
その女の子である。
「この人は、痴漢です。逃げないよう捕まえてください。」と叫んだ。
周りの4、5人の男が、二人を囲み、
一人が、駅の係員を呼びに行った。
「ぼくじゃない。ぼくじゃない。」
と光男は訴えたが、周囲の冷たい目がいっせいに光男を見ていた。

光男は、駅の小さな取り調べ室のデスクに座っていた。
少し離れたところに女の子がいた。
係員がまだ来ないとき、女の子が言った。
「あなた、痴漢は、犯罪ですからね。わかってるの。」
「ぼくじゃないんだよ。」光男は力なく言った。
光男は、そのとき、気が動転していて、
スマホに映像を撮ったことを忘れていたのだった。

やがて、眼鏡をかけたスーツ・姿の男性が入って来た。
まず女の子の話を聞いた。
「この人は、急行の○駅から、△駅までの10分ほど、
 あたしのお尻を触っていました。
 怖い気持ちもあって、そのときは、叫べませんでした。
 でも、停車駅についたとき、この人は、あたしのお尻をぎゅーとつかみました。
 その手を、あたしは捕まえました。
 だから、この人が痴漢男であることは、間違いありません。」
女の子はそう言った。

次に光男が聞かれた。
「この人の右側にぼくがいて、痴漢の男は左側にいました。
 サラリーマン風な男です。
 その人は、ずっとこの女性のお尻を触っていました。
 ぼくは、腹が立っていました。
 だから、次の停車駅で捕まえようと思って、
 電車のドアが開いたとき、男の手首を捕まえました。
 しかし、汗で手がすべり、男を捕まえることができませんでした。
 そのとき、男は、ぼくの手を握って、この人のお尻にぼくの手をなすりつけました。
 この人は、そのぼくの手を捕まえたのです。そして、痴漢だと叫びました。」

このとき、係員は、光男に言った。
「もし、君が痴漢をしたなら、迷惑防止条例に違反し犯罪となります。
 会社員なら、会社に知られて、辞職をやむなくされることもあります。
 ですから、決して小さな犯罪ではありません。」

係員は、女の子にも言った。
「もし、この人が、あなたを痴漢していないことが証明されれば、
 あなたは、名誉棄損あるいは侮辱罪として、訴えられ、
 多大な慰謝料を請求されることもあります。
 あなたは、それを覚悟で、この人が痴漢者だと言い切りますか。」

「あります。あたしには、確信があります。」女の子は言った。
「もしこの人が会社員なら、会社を首になり、家族は暮らしていけなくなります。
 そこまで考えて、この人を痴漢だと訴えますか?」
女の子は、少し考えていた。
「いえ、そこまでの悲劇は望みません。
 ただ、女性にとって、痴漢をされることは、大きな屈辱であることを
 わかって欲しいのです。正直に謝ってもらえるなら、それでいいです。」
そう言った。

「さて。」と係り員はいって、「証拠がありません。」と言った。
「確信では、証拠とは言えないんですよ。」

そのとき、光男はやっとスマホの動画を思い出したのだった。

「あの、証拠があります。ぼくは、痴漢していた男に腹が立っていて、
 捕まえた後で、証拠になるように、スマホに、男が痴漢するところを撮ったんです。
 男の横顔も撮りました。この人の背中も撮りました。」
光男がそういうと、
「え!」と女の子も係員も声をあげた。

3人で動画を見た。
半袖の光男に対し、痴漢男は、スーツの長そで、
女の子のスカートも全部写っている。
光男が犯人でないことは、見るも明らかだった。

女の子は、途中から泣き出していた。
「ごめんなさい。あなたを犯罪者にするところだった。
 ごめんなさい。大勢の人の前で、無実の罪をきせてしまった。」
女の子は、やがて、手で顔を覆って泣き出した。

「よかった。痴漢の多くは、証拠不十分で、犯人を裁くことができません。
 反対に、冤罪によって、一家が崩壊してしまうこともあります。
 今回の光男さんのように、動画に撮ってあることなど、
 めったにあることではありません。」

真実がわかった後、光男と女の子(小百合)は、打ち解けて、
その後、仲良しになったそうだ。


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ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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