江戸町遊び人・油川京之介⑫「京之介・千葉重三郎の戦い」最終回

久しぶりに、長い物語を書きました。長い物語は、自分として、
もう書けないだろうと思っていましたので、最後まで書くことができ、うれしいです。
最後まで、お付き合いくださった方、ありがとうございました。
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江戸町遊び人・油川京之介⑫「京之介・千葉重三郎の戦い」最終回


早苗と小次郎の試合が終わると、見物人の熱気は最高潮に達し、
応援の声が、今まで以上に沸き上がっていた。
「母上、京之介が、江戸1番と言われる千葉重三郎と戦います。」
梢は、母に行った。
「ええ。あんな方と戦えるだけで十分です。
 ただ、祈るばかりです。」
母の沙月は、手をすり合わせて、祈っていた。
「よい試合をしたら、誉めてやらねばなりませんね。」
次男の倉之助が、兄に言った。
「ああ、勝てるとは思わないが、頑張ってほしい。」
幸之介は、そう言った。

元ゴロツキ5人は、皆京之介のファンである。
「神様、仏様、京之介が勝ちますように。」と拝んでいた。

彩芽は、天幕の中で、
「雪之丸様、桔梗様。京之介が、勝てることがあるでしょうか。」と聞いた。
「さあ、天下の千葉重三郎ですからね。幸運を祈るばかりよ。」と桔梗が言った。
そう言いながら、桔梗は、京之介の勝利を信じていた。
「なんだか、あのときの雪之丸を見ている気持ちです。」と桔梗が言った。
「私も、他人事とは思えません。」と言って、雪之丸笑った。

この武芸大会の裏の立役者、油川宗之介の幕部屋には、
店の手伝いが、5人ほどいた。
「宗之介様、京太郎様が、千葉重三郎と戦います。
 勝てたら、もう大変なことになりますよ。」と女子の店働きが言った。
「負けたって、江戸の2番です。すばらしいですよ。」と男子の店働き。
宗之介は、試合をもろくに見ず、
「私は、もう怖くて、見られないんだよ。
 京之介が勝っても負けても、その時、教えてくれないか。」と言った。
「そんなのダメですよ。京之介さんの試合をしっかり見てください!」
と皆に言われ、宗之介は、椅子に座り、試合を見ることにした。

「重三郎、よかったな。あのときの娘と、再び対戦できる。」
と、八田小次郎は言った。
「ああ、うれしくて、たまらない。」

やがて、二人の名前が、太郎之介によって、呼ばれた。
京之介は、にこにこして、
「じゃあ、行ってきます!」と幕部屋のみんなに言った。
そして、200人もの観客に、両手を振った。
わおおおおと、また歓声が上がる。
千葉重三郎が、その大きな体で、赤土を踏み、開始線に立った。
京之介も、同じく、開始線に立った。
まるで、大人と子供に見える。

観客が熱狂しているので、
審判の太郎之介は、観客席近くまで行って、「静かに!」と大声を上げた。
それで、観客は、しーんとなった。

二人は立って、見合ったまま、なかなか礼をしなかった。
重太郎は、何度もイメージトレーニングを頭の中にくり返していた。
8割の勝ちを思っていたが、
負ければ、それは、相手がすごいということだ。
それも、また感動だと思った。

京之介は、門前町での、重三郎との対戦をはっきり覚えていた。
その時の重三郎の構えを、半透明のスクリーンのようにして、
目の前の重三郎に重ね合わせていた。
重三郎が、居合に構えれば、スクリーンは、ぴったり重なるはずだ。

やがて、はじめ!の声がかかった。

重三郎は、腰にきつく巻いた帯に、木刀を差していた。
そして、歩幅をとり、腰を落とし、重心を下げていた。
京之介の頭の中の、スクリーンの映像と、目の前の重三郎の構えがぴったりと重なった。
それだけ、重三郎は、寸分も狂いのない構えを取っているのだ。

重三郎の気迫がだんだん高まって来た。

観衆は、息を殺して見ていた。

そろそろ来る。
京之介は、全神経張り巡らした。
くっと重三郎の握りが強くなり、
来る!と思ったとき、重三郎は、抜きながら、
右足のかかとを軸に足を右に向けたのだ。
スクリーンと実物の違いでわかった。

『あ。』と雪之丸と桔梗は、思った。

『そうか!』と京之介は、重三郎の右肩ではなく、
右を向いた重三郎の背に走った。

重三郎は、「キエィ!」と木刀を抜き、
正面から、元の右肩を一文字に薙いだが、京之介の手応えはなかった。
そのまま、木刀を振り、元の背のところまで、振り切ったところに京之介がいた。
京之介は、やってくる重三郎の手首をがっちり右手でつかみ、
左手で重三郎の腕の付け根をつかみ、
重三郎の一文字の勢いが止まらぬうちに、
重三郎の手首を中心に、腕の付け根を力点として、
重三郎を、回した。
一文字に切ったその方向に腕を運ばれ、重三郎は、簡単に円運動に引き込まれた。

自分の周りに重三郎を回しながら、京之介は、その手を低くして行った。
態勢を低くされ、『このままでは、つぶされる』と思った重三郎は、
右手にある木刀を左手にとり、木刀を垂直にして、思い切り地面に差した。
これにより回転を止め、反動で、身を立てることができる。
重太郎は、ぐっと頭を持ち上げ、上体を反らせ、アゴを上げた。
そのアゴに、拳を内に曲げた京之介の手首が入り、京之介は左足を広げ、
「エイ!」と重三郎を後方に運んだ。
起きようとした方向に投げられ、重太郎は、簡単にエビ反りになり、
京之介の投げる背面に倒れて行った。
京之介は、重太郎の頭を、クッションのある自分の草鞋の上に運び、
ここで、決着がついた。

「油川京之介の勝ち!」と声がかかった。

緊張で、息を押し殺していた観衆は、「わあ!」と声を上げた。
その後、大きな拍手が続いた。

京之介は、重三郎に手を差し出し、重三郎を起こした。
「草履で、脳震盪から、守ってくださるとは、かたじけない。
 あなたには、勝てませぬなあ。」と重三郎は言った。
負けても、重三郎は、にこにこしていた。

「わあ、京之介が、江戸1番だ。大川道場も優勝だ!」
と元ゴロツキ5人は、興奮して、飛び上がって喜んだ。

「母上、見ましたが。」と梢。
「ええ、ええ、しかと見ました。
あの千葉重三郎様に勝つとは、まだ、夢のようです。」と母・沙月。

宗之介の幕部屋では、大騒ぎであった。
「宗之介様。京之介ぼっちゃんが勝ちましたよ。」
「もう、夢のようです。おめでとうございます。」
「江戸1番ですよ。」
宗之介は、目をにじませながら、
「みんな、応援してくれて、ありがとう。
 この大会のために努力した甲斐があった。
 みんな、ありがとう。」と言った。

試合場は、重太郎と京之介が、開始線に戻って、礼のときであった。
会場は、一時静まった。

「両者、礼!」と太郎之介の声。
二人は礼をした。
そのあと、重三郎が、京之介のところへ歩いて来たので、
京之介も、歩み寄った。

「やはり、右足を見抜かれましたか。」と重三郎は言った。
「はい、一度対戦したときの、重三郎様の構えが目に残っていましたから。」
「バレないように、1か月、研究したのですがね。」
「今日もし、真剣であれば、私の負けでした。」と京之介。
「ほう、それはまた、どうしてですか。」と重三郎。
「真剣ならばサヤが、腰に残っています。
 重三郎様が、右へ向くと、サヤは、私の目の前に横になります。
 私は、サヤが邪魔で、間に合いませんでした。」
それを聞いた重三郎は、さもうれしそうな顔をした。
「これは、うれしい。では、私の努力もまんざら無駄ではなかったのですね。」
「そう思います。」
「聞いてよかったです。あははははは・・・。」
と重三郎は、高らかに笑った。
京之介は、にっこりとうなずいた。

大川道場の幕部屋に京之介が帰ると、
みんなは、喜び、京之介をもみくちゃにした。
「まだ、最後の受賞会が残っています。」
と京太郎は、逃げた。

太郎之介の声がかかり、出場者は、殿の御前に、横一列に並んだ。
近衛太郎之介が、各道場の名を呼び、それぞれ賞状をもらった。
そして、殿の言葉があった。

「わしは、大変耳がよくてな、出場者たちが幕部屋で言っていることも聞こえたのじゃ。
 まずは、松下道場。
 松下道場の1回戦では、大川道場が女子子供だけと見えたであろう。
 しかしながら、試合では、決して相手を見下すことがなく、
 全力で立ち向かったのを、うれしく思うた。
 さらに、試合に勝って戻って来たとき、大川合気流のよさを認め、
 「合気流恐ろしや。」と皆に言っているのを聞いた。

 勝ちながら、相手の長所を素直に認め、さらに向上せんとする、
 松下道場の真摯な姿勢を、わしは、誇りに思うた。
 今後も、精進してくれい。」

「ははあ。」と言って、松下道場の5人は、深く頭を下げた。

「さて、千葉道場であるが、江戸1番の名門として、
 重圧があったことであろう。
 松下との激戦を見て、わしは、体の血が湧いた。よい戦いであった。
 これは、聞いた話であるが、
 千葉重三郎は、大川道場のある人物と、道で立ち合いをし、居合で負けたそうである。
 その者に、今度こそ勝とうと、道場の小部屋にこもり、寝食を忘れ、
 1か月もの研究をしたという。
 工夫は、単純なことにあるにちがいないとの信念で研究に研究を重ね、
 今日の試合に臨んだ。

 わしは、これこそ、剣士の鑑であると思う。
 このような剣士がいる限り、名門千葉道場の名声は、ずっと続くであろう。
 見事であった。

さて、大川合気流道場である。
 大川合気流は、『相手の力、相手の勢いを利用して投げる。』
 という。
 見るまでは、半信半疑であったが、彩芽が清右ヱ門をなげ、
 藤村早苗が、千葉の小次郎を投げたるを見て、納得がいった。
 そして、油川京之介を見て、完成された合気流を見る思いであった。
 感動し、わが胸は、震えた。

 合気流は、剣道から離れ、一つの新しい武道として、
確立されるべきであると思った。
『戦ったあと、和する』という合気流の精神は、今日の試合でも見られた。
合気流と戦って負けた者が、皆すがすがしい顔をしておった。
民に広く伝えられるべき、武道として、精進してほしい。

さて、3道場のほかに、わしが、特別に紹介したい人物がいる。

油川屋主人、油川宗之介、前に来てくれぬか。実篤が言った。

宗之介は、そろそろとやって来た。
「宗之介、皆に顔を見させてくれ。」
宗之介は、見物人の方を見た。

「私が無類の武道好きであることは、知れていることと思う。
 そして、私は、江戸で名高い3道場の武道大会を、
 かねてより開きたくてたまらなかった。
 しかし、財政困難の折、とてもそんなことはできぬと、財政の者が言う。
 そこで、わしは、油川屋の宗之介に泣きついたのじゃ。
 宗之介は、快く引き受けてくれたが、
 見返りとして、宗之介に渡すものがない。
 わしは、心苦しく思いながも、宗之介に甘えることにした。
 とうとう、最後まで、宗之介に、わしから与えるものがなかったが、
 宗之介の4男、京之介が、二人の塾頭を破り、優勝した。
 また、彩芽とトメが、積年の恨みを忘れると言った。

 どうじゃ、宗之介、私の手柄ではないが、この二つを甲斐として、
 許しては、くれぬか。」と実篤は言った。

宗之介は、実篤に深く頭を下げた。
「彩芽と祖母トメは、私の、身内も同然のものです。
 殿様が、二人にくださった温かいお言葉に二人は救われました。
 一生忘れられるものでは、ございません。
 そして、京之介の活躍。
 私にとりまして、何ものにも代えがたいご褒美でございます。
 今は、感激で、胸がいっぱいでございます。」
と、言った。

「そうか。そう言うてくれると、わしも救われる。」
 実篤は言い、向うの見物人に向かって大声で言った。
「こんな風に、御前試合を見られるのは、初めてであろう。
 これも、ひとえに、油川宗之介の希望で、そうなったのじゃ。
 皆で、宗之介に、拍手でもしてくれい。」

「そうか、そうなのか。」
などと言いながら、200人ものすごい拍手が起こった。

宗之介は、この拍手だけでも報われると思った。
そして、実篤の細に渡る心遣いをうれしく思った。



油川家の家族、そして、彩芽と婆様で、宴会が行われた。
隣の部屋では、手伝ってくれた、店の者たちで、宴会をしている。

宗之介が言った。
「何の取り柄もないと言われていた京之介が、今や江戸一番の剣士となった。
 よくできた彩芽に対し、やっと釣り合う男になった。
 これで、二人の祝言に、なんの文句もない。
 幸之介、そうだな。」
「はい。もうなんの不足もありません。」幸之介が言った。
「兄上は、京之介が小杉大吾に勝ったとき、涙を流していましたよ。」
と次男の倉之介が言った。
「これ、倉之助。」と、幸太郎は照れていたが、
「お兄様も、結局、京之介が、可愛くてならないのですね。」と梢。
「いや、私は、やっと肩の荷が下りたと、うれしかったのです。」と幸之介。
「まあまあ、そういいうことにしておきましょう。」梢が言って、みんなで笑った。

「婆様、彩芽も、今日で恨みを忘れることができましたか。」
母の沙月が言った。
婆様が、
「はい。皆様のおかげです。明日からは、恨みのない心で、晴れ晴れと暮らせます。」
「私も同じです。今日お殿様が、『彩芽は、最後まで法を守ったのじゃ。』
 と言ってくださったとき、涙が出て、なりませんでした。
 お殿様は、私たちを救ってくださいました。」と彩芽が添えた。
宗之介が、
「だからこそなのだ。あのお殿様に、頼みごとをされると、私は断れない。」
と言った。

それから、酒がまわり、みんな多弁になった。
彩芽は、京之介が、首侍に1両そっと渡してくれたことや、
スリを3mも投げ飛ばし、そこに来たゴロツキを4人を一瞬にやつけ、
合わせて5人に1両ずつ与え、改心させたこと。
その帰り、千葉重三郎と立ち合いかったこと。
そのために、重三郎は、1か月の部屋ごもりをしたことなどを、
身振り手振りよろしく語った。

「ほら、言ったでしょう。京之介は、お金を無駄には使いません。」
と、酒の入った幸之介。

隣の部屋から若者の楽しげな声も聞こえ、
幸せな気持ちの中、みんなが満ち足りて、
めでたい夜を過ごした。

===========エピローグ・3年後=============

油川宗太郎は、次男に第二支店、三男に第三支店を作り与えたので、
京之介・彩芽夫妻には、道場と住まいを作って、プレゼントした。
それが、大川合気流道場の隣が空地であったので、
まるで、並んでいるように、道場ができた
新道場の裏には、新婚の二人の部屋。婆様の部屋。
そして、大広間もあり、ゆったりした住居だった。

京之介は、雪之丸や桔梗と相談して、
新道場は、無手と無手で稽古ができるよう床をすべて畳とした。
雪之介、桔梗は大賛成であった。
これからは、刀を相手にする時代は、終わっていく。
新道場は、「大川合気流第2道場」として、大川の名を残した。

京之介の名は、すでに江戸中に広まっていて、
道場の初日に、50人の列ができていた。
稽古代を箱に入れる方式は同じである。

昼は、婆様と彩芽で握り飯を作る。

稽古は、午後5時に終わり、
その後は、二人で、雪之丸と桔梗の接骨を手伝い、外科の勉強をしていった。

ある夜、婆様と3人の食事が終わった後、
京之介と彩芽は、新婚の部屋にいた。
「彩芽、ここだと人の目があって、私は、のびのび女になれないよ。」と京之介。
「あら、人の目って誰のこと?」
「婆様とか。」
「婆様は、完全な理解者じゃない。」
「そうっか。なら、お隣の雪之丸様や桔梗様。」
「京之介。あのお二人は、2年交代で、夫と妻の役を交代してるじゃない。」
「あ、そうだ。今は雪之丸様が、女になり妻をしている。
 そう言えば、昔からお二人は、2年ごとに交代してる。」
「夜は、二人とも妻になってるそうよ。」
「あはあ。じゃあ、私たちも、二人妻になっちゃう?」
「その方が萌えちゃう。」
「うふふ。」
と二人は、鏡の前に行った。





※次回は、未定です。

バナーをこちらではまだ貼れずにいます。
アメブロの方で押してくださると、幸いです。



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ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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