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江戸町遊び人・油川京之介⑩「武道大会・第一戦 彩芽の悲願」

今回で、京之介の試合まで行くと思っていたのですが、
彩芽の試合に多くページをさいてしまいました。
これまでで、最長の物語になっています。
最後まで、お付き合いくださると、うれしいです。
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江戸町遊び人・油川京之介⑩「武道大会・第一戦 彩芽の悲願」


いよいよ、武道大会当日となった。
松下城主・松下実篤が座る横長の建物に向かって、
左右2つずつ、垂れ幕に囲まれた場所が設置されていた。
左に千葉道場、右に松下道場が面と向かい、
千葉道場の隣に大川合気流道場が位置している。

出場者の関係者として、5人までが、幕内の場所にいることを許されていた。
試合の場は、赤土が綺麗に敷かれていた。

松下道場の幕部屋の隣は、試合の世話をする関係者の場となっていた。
油川宗之介は、すべての責任者として、10人の手伝いと共にそこにいた。

そして、試合場の後ろは、縄が張られていて、
そこから後ろは、町人や道場関係者が、自由に見物できる場とされていた。
詰めれば、200人は、入れる。
町人に見学を許すことは、油川宗之介が、強く希望したことであった。
前の何列は、ゴザが敷かれ、座って見る。後方は、立ち見であった。
出場者の家族は、前の見物席の前をいただいていた。
京之介の家族は、もちろんのこと来ていた。

大川道場の幕部屋には、出場の9人。
その中に、京之介ほか、木下彩芽、藤村早苗もいた。
そして、彩芽の祖母・トメは、白い着物に鉢巻、胸に短刀をもって、
目立たぬように控えていた。
雪之介、桔梗もそこにいた。
幕部屋には、十分な椅子が用意されている。

出場者が揃い、見物人たちも落ち着き、
審判である松下藩の副指南役、近衛太郎之介が、登場し、
すべてが揃ったとき、藩主松下実篤が、
老齢の指南役・近衛伊勢の守を伴って姿を見せた。

城主松下実篤は、28歳の若さであったが、
名君との聞こえめでたい城主であった。

審判の近衛太郎之介が、いくつかの諸注意をし、
「これより、武芸大会を始める。」
と、よく通る声で言った。

始めは、松下道場対大川合気流道場であった。
婆様と彩芽は、松下の3番手が、仇・菅原清右ヱ門であることを桔梗より聞かされ、
いよいよ敵討ちと、身を震わせた。

一番手の名前が呼ばれた。
位置について礼をしたとき、松下の斎藤和江門は、
「なんだ、子供ではないか。」と相手を下に見た。
大川の伊藤順平は、14歳である。
童顔であり、子供に見えた。

「はじめ!」の声がかかり、斎藤は、一気に決着をつけようと上段に構えた。
そして、面を取りに言ったが、それを、かわされた。
斎藤は、10本も打ちに行って、やっとのことで、勝ったのであった。
途中、腕を取られ、剣を奪われそうになった。

試合中は、一切音を立ててはならぬという注意を受けて、
200人は、黙っていたが、
大柄な相手を翻弄させた伊藤順平に、大きな拍手を送った。
200人の大半は、庶民の道場である大川道場を応援していた。
斎藤は、松下の幕部屋に帰り、
「決して弱くはない。」と皆に告げた。

大川2番手の永井里美も、相手を翻弄し、健闘した。
だが、最後に面の寸止めを受け、惜しくも負けた。

次は、彩芽である。
「彩芽、どんな気持ちだ。」と京之介が、ささやいた。
「不思議なほど、落ち着いてる。」と彩芽は、にっこり笑った。
婆様は、後ろで、手をすり合わせ、祈っていた。

やがて、名を呼ばれ、「はい!」と言って、
中央に立った。
菅原清右ヱ門が、前に立った。
彩芽は、清右ヱ門を見た。
清右ヱ門は、彩芽を決して見下さず、真剣な顔をして彩芽を見ていた。
清右ヱ門は、彩芽が、新八郎の娘だとは、知らないでいた。

「はじめ!」の声。
清右ヱ門は、正眼に構え、やがて、「セイ!」と言って、
面を取りに打ち込んできた。

彩芽は、半身にかわして、逃れた。
『速い。』
彩芽は、清右ヱ門の剣の速さを見た。
清右ヱ門の第2打も、彩芽はかわして、剣の速さを見た。
『速いが、京之介よりも遅い。』
彩芽は、自分の勝ちを確信した。

清右ヱ門の第3打目、上段の構えから、渾身の剣が来た。
次の瞬間、見物人を含め、会場のすべての人が、「おおおお。」と思わず声を上げた。
城主実篤も声を上げた。

清右ヱ門の木刀の先が、土に刺さり、
清右ヱ門の体が、真っ逆さまに宙にあったからだ。
彩芽は、清右ヱ門の胸に当てた手で、思い切り清右ヱ門を土に叩き付けた。
また、すごい見物人の声が沸き上がった。

彩芽は、素早く清右ヱ門の木刀を手に取り、
片膝をつき、
仰向けでいる清右ヱ門の頭を前に、木刀を振り上げた。
このとき、彩芽の心に、清右ヱ門に対する抑えがたい憎しみが、
沸き上がり、涙が、どっとあふれた。
このまま、清右ヱ門の頭をかち割ってしまいたい。
涙で、清右ヱ門の顔が見えないほどになったが、
彩芽は、心を抑え、
「父、木下新八郎の仇、お覚悟!」
と、言って、清右ヱ門の額の鉢巻に木刀を、かろうじて、寸止めにした。

そのとき、婆様が、短刀をもって、幕部屋から出て来て、
彩芽の横に並び、膝を付き、短刀の鞘を抜かぬまま、
「息子、新八郎の仇、お覚悟!」と言って、清右ヱ門の鉢巻に短刀を当てた。

見物人は、脇に沸いた。
京之介の母・沙月は、涙の目を拭きながら、
「彩芽、よくぞ止めました。見事です。」
と隣の梢と涙を分かち合った。

「静まれ!」と審判・近衛太郎之介が、見物人に向かって、
大声を上げた。
そこで、会場は、しーんとなった。

清右ヱ門は、地の上に寝たままだった。
審判の近衛太郎之介が、やって来て、
「御前である。神聖なる場で、仇討を行うとは、何事ぞ。
 しかも、仇討は、ご禁制である。
 勝ちは、認めず、おって沙汰をするが、よいか!」と言った。

見物人たちは、静まり返って聞いていた。
このとき、
「近衛、待て!その3人をわしの前に、来させよ。」
と、藩主実篤が言った。

御殿の前の地の上に、淵を飾られた畳が1枚ある。
ここは、優勝者が座り、藩主の言葉をいただくところである。
その畳に、清右ヱ門は、右端に座り、彩芽が真ん中、隣に祖母が座った。

藩主・実篤は、よく通る声で言った。
「木下新八郎の娘と母であるな。名を聞こう。」
二人は、名を名乗った。
実篤は、言った。
「菅原清右ヱ門と木下新八郎の仔細について、わしは、詳しく知っておる。
 今より、13年前であろうか、京の松原藩で、武芸大会があった。
 まだ、若であったわしは、招待を受け、見学しておったのだ。
 そのとき、わが藩の清右ヱ門は、何に腹を立ててか、
 新八郎を滅多打ちにした。
 その数日後、新八郎は、息を引き取った。

 新八郎が、その場で死んでおらば、清右ヱ門は、切腹であった。
 だが、数日後の死であったため、
 清右ヱ門は、切腹を逃れ、その代り、1か月の牢詰め。
 そして、禄を与えず、5年間の謹慎とした。
 そして、新八郎の家族には、10年間の生活費を与えることで、藩としての償いとした。
 清右ヱ門は、5年の謹慎の中、傲慢な自分をよく反省し、
 人が変わったように穏やかな人間になった。
 そして、江戸詰めとなり、以後、人を助け、善行を進んで行う者となった。

 まずは、清右ヱ門。いくら善行を重ねても、した罪は一生消えぬ。
 せめては、この場で、木下の二人に、謝るがよい。」

「はい。」と清右ヱ門は言い、畳から土の地面に身を移し、
両手をついて、二人に言った。
「私は、自分を改めてから、新八郎殿への己の罪を1日も忘れたことがございませぬ。
 毎日仏壇に拝みましても、新八郎殿は帰らず、
 己がしたことの罪は消えませぬ。
 申し訳ございませんでした。
 すみませんでした。
 すみませんでした。
 ・・・・・・・
 ・・・。」
清右ヱ門は、地面に額をつけ、その言葉を何度も言い続け、
やがて、号泣に変わり、嗚咽となった。

「清右ヱ門、もうよい。
 母のトメ。彩芽。今は、幸せにしておるのか。」と実篤。
「はい。幸せにしております。」と二人は言った。
「それを聞いて、わしも安堵いたした。
 恨みの心、憎しみの心は、ときに身を亡ぼすものにもなる。
 そこで、どうじゃ、ここは、わしの顔に免じて、
 清右ヱ門を許してやっては、くれぬか。
 今の清右ヱ門の謝罪は、真の心と見た。」
トメが、
「はい。もう忘れまする。
 お殿様の、温かきお言葉、身に沁みましてございます。」と頭を下げた。
「彩芽も、よいか。」
「はい。もう恨みの心を捨てまする。」彩芽は言った。
「清右ヱ門、よかったのう。」
「ははあ。」と清右ヱ門は、殿に言い、
彩芽とトメに、
「ありがとうございます。救われまする。」と頭を下げた。

「さて、試合のことであるが。」と実篤は、続けた。
「仇討の『討つ』とは、人の命を奪うということじゃ。
 法では、それを許さぬのじゃ。
 しかし、見よ。清右ヱ門は、このように生きているではないか。
 よって、彩芽とトメのしたことは、仇討とは言わぬ。
 多くの者が見たであろう。
 清右ヱ門の額を目の前にして、木刀を振り上げたる彩芽の目から、
 滝のように涙があふれた。
 13年もの積年の恨み、憎しみが、どっと彩芽の胸を埋め、
 それが、涙となってあふれたのじゃ。
 彩芽は、あのとき、どれだけ仇の頭を打ち砕きたいと思うたことであろう。
 しかし、その心を抑え、寸止めにて耐えたるは、
 あっぱれ見事とは、思わぬか?
 彩芽は、最後まで、法を守ったのじゃ。
 
 トメが、短刀を持って出て参り、それを、清右ヱ門の額に当てたるは、
 この武芸大会の規則には反する。
 だが、そこは、人の情けというものじゃ。
 トメの胸中を察すれば、十分に許されることだとは、思わぬか。
 トメは、試合の決着がついてから、出て参ったのじゃ。
 彩芽の見方をしたとは言えぬ。

 近衛、どうじゃ。わしは、彩芽の勝ちと見るが、
 判断は、近衛に任せる。」
「はっ。殿の温かきお心、感激の至りであります。」
審判・近江太郎之介は、礼をした後、皆の方を向いて、
「木下彩芽の勝ち!」
と言った。
「わあ!」と200人の見物人たちが沸いた。
出場者、試合場にいた人々もこぞって拍手をし、
会場は、すがすがしい空気に包まれた。 

(次回は、「京之介、小杉大吾と対戦」です。)

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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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