江戸町遊び人・油川京之介⑨「彩芽・必殺の大技」

江戸町遊び人・油川京之介⑨「彩芽・必殺の大技」


武芸大会に向けて、ここ大川道場も、
いつにも増して、稽古が白熱していた。

「彩芽と京之介、草鞋を履いて裏庭にお出で。」
と桔梗が言った。
彩芽は、草鞋ではなかったので、道場のを借りた。
裏庭は、広く、土の広場がある。
「これから、彩芽が敵に勝てるように、必殺の大技を教えます。
 大技にするのは、完全に勝ったと思えるようにです。」
桔梗は、京之介に木刀を渡し、4m程離れたところから、
思い切り突進して、『面』を打ちに来るように言った。

京之介は、木刀を正眼に構え、思い切り突進した。
「面!」と声を上げて京之介が打ちに行ったとき、
桔梗は、紙一重に木刀を半身に避け、
京之介の木刀を握る右の拳を、ぐっと下に押し、
同時に、左の手で、京之介の胸を、えいっと上に押した。

木刀の右拳を上から押され、木刀は下を向き、地面に刺さった。
そこを、胸を上に押された京之介の体は、宙に浮き、
大きな半円を描いて、仰向けのまま、地面に落ちた。
桔梗は、素早く京之介の木刀を奪い、
仰向けになっている京之介の額に、「面!」と木刀を入れた。

「どう?彩芽。これ、派手でしょう。」と桔梗は言った。
「わあ、すごい。本当に大技ですね。」と彩芽は、うれしそうに言った。
「でも、桔梗様。私なら、地面に落ちる寸前に、
身をひるがえし、うつ伏せになりますが。」と京之介。
「それが、できるのあなたくらいだけどね。
 でも、それを防ぐためにどうしたらいいでしょう?考えて。」
「はい。」と彩芽が手を上げた。
「どうぞ。」と桔梗。
「相手の右腕をがっちりつかんでおきます。」
「天才・京之介は?」
「私なら、相手の胸にあてた手を、木刀が直立を過ぎてから、
 一気に押して、相手の背を、地面に叩き付けます。」
「まあ、やっぱり京之介は、恐ろしいわね。
 相手に、うつ伏せになる暇を与えないわけね。
 京之介のやり方の方が、相手のダメージは数倍になるから、
 そっちで、行きましょう。
 まず、彩芽は、京之介の渾身の打ち込みを半身(体を横にして)にかわすこと。
 その難題を乗り越えること。
 木刀の拳を押すのと、胸を上に押すことは、わりと簡単ですからね。」
桔梗は、そこまで言うと、にっこりして、道場へ向かった。
その時から、裏庭で、彩芽と京之介の激しい練習が始まった。

千葉道場では、重三郎がまだ小部屋で知恵を絞っていた。
八田小次郎が見ていて言った。
「居合の抜きを半分で止めて、右足を下げて、両手で切ってはどうだ。」
「うん、それもやってみたが、ダメだ。
 両手に持ち替えたりすると、女にはすぐに悟られる。」
「では、右足だけ後ろに下げてはどうだ。
 ここで、体を右に90度回せるから、
お前のはじめの背のところまで切れる。当然、右肩の女を切れる。」と小次郎。
「それも、やってみたが、右足は、回転の軸足だから、動かせない。
それに、重心の右足など下げれば、女はきっと気が付く。
 それに合わせた動きを見せると思う。」
「その女を、少し買い被りすぎてはいないか。」
「いや。初めに右肩に来たことだけでも、尋常ではないだろう。
 俺は、思うんだ。
 難問ほど、答えは、単純だったりする。
 ほんの少しの違いが、大きな結果の違いを生む。
 きっと、最良の方法があるはずだ。」
「なるほど。お前には負けるな。また、見に来るよ。」
「ああ、頼む。」
二人は、にっこりと目を交わした。

松下道場では、「2段面打ち」というのをやっていた。
竹刀を構えた2人が、間隔をおいて、縦に構えている。
そこを、初めの一人の面を打ち、そのままの勢いで、2人目に面を入れる。
一人目から、真っ直ぐに2人目に行けば、肩と肩がぶつかってしまう。
一人目を打ったのち、体を微妙に横にねじり、
肩を抜け、体を戻して、2人目を打つ。
これができるのは、塾頭の小杉大吾だけである。

休憩になり、7、8人が、小杉を囲んだ。
「なぜ、お前だけできるんだ。」と一人。
「お前たちは、背が高い分、不利なんだよ。
 力では、みんなの方が上だ。
 俺は、小柄だから、俊敏に動け、体をねじることもできる。」
「理屈はわかるが、宮本武蔵や坂本竜太は、6尺を超えていたという。
 俺らと同じくらいだ。小杉は、それを、どう解く。」とまた別の一人。
「宮本武蔵や、坂本竜太が、あと10cm背が低ければ、
 もっとすごい剣客だったことだろうよ。」
と言って、小杉大吾は、笑った。

大川道場に、藤村早苗という道場生がいる。
いつも、白の上着、紺の袴を着ている。
京之介と同じ頃、同年で入ってきて、10年目だ。
大きな菓子問屋の娘で、稽古に来るたび、稽古代の箱に1両を入れる。
稽古をほとんど休んだことがない。
背が170cmに届くほど高く、髪は結わず、後ろできつくまとめている。
だが、目が隠れるほどの前髪を左右に分け、コメカミの髪を長くしているので、
娘らしい愛らしさがあった。
整った顔立ちで、おとなしく、京之介のようにお人好しで、いつも、
投げられ役を引き受けている。
道場生のお結びを、先頭に立って作っているのは、この早苗である。

京之介より強い者と言われて15人が立ったとき、
早苗はその中に、いなかった。
早苗は、京之介の強さを知り抜いていたからだ。

雪之丸は、早苗に言った。
「今日は、私とやってみないか。早苗は、いつも投げられ役をしているからね。」
「は、はい!」と早苗は、嬉しそうに言った。
雪之丸は、竹刀を取り、
「今日は、早苗がずっと投げる役だよ。」と言った。
早苗は、嬉しそうに笑った。

雪之丸は、ある程度の速さで、面を取りに打ち込んだ。
早苗は、竹刀を交わし、雪之丸の腕を取り、それをねじりながら、
見事に、雪之丸を投げた。
ある時は、竹刀を交わしながら、雪之丸の背を叩き、
のけぞった雪之丸に首投げを打った。
雪之丸は、どんどん打ち込みの速さを上げていった。
早苗は、どれもかわし、投げを打つ。

雪之丸は、千葉道場の速さを想定して、そのスピードで打ち込んだ。
早苗は見事半身に避け、雪之丸の頭を腹に向かせて、雪之丸を丸くして、
転がした。
早苗は、教わった技を、そのまま素直に身に付け、会得していた。

雪之丸は、とうとう早苗と2時間もやった。
「ああ、まいった。早苗は、強いなあ。」と雪之丸は言った。
道場主の雪之丸が、2時間も相手をしてくれたことに、
早苗は、大感激していた。
「うれしかったです。感激しました。ありがとうございました。」
早苗は、そう言って、少し目をお潤ませ、みんなのところへ行った。

「お疲れ様。」と桔梗が、雪之丸のとなりに来た。
「早苗は、できますね。」と雪之丸。
「最後の打ち込みは、千葉重三郎並でしたよ。」と桔梗。
「10年という月日は、伊達じゃありませんね。」と雪之丸。
「そうですね。」
二人は、顔を見合わせ、うきうきと笑った。

=====大会3日前となった===================   

京之介の体は、木刀の先を軸に、宙に浮いた。
胸にあてられている彩芽の手に力が入り、
そこから、したたか地面に叩き付けられた。
彩芽は、京之介の木刀を取って、「面!」と京之介の額に当てた。

京之介は、跳ね起きて、
「彩芽、やった!今のは、完璧だよ!」といった。
彩芽はうれしくて、京之介に抱き付いた。
「うれしい、うれしい。」
と、彩芽は、涙を流した。

千葉重三郎は、「そうか!」と目を輝かせた。
「やぱり、正解は、単純なことにある。」
重三郎は、小次郎を呼んだ。

「小次郎、見ていてくれ。いつもの俺の居合と違いがバレるか。」
重三郎は、そう言って、いつものように居合の構えをした。
そして、「えいっ!」と刀を抜いた。
いつもと同じ動きに見えたのに、重三郎の刀は、
はじめの背中の位置(つまり、270度)まで届いていた。
「おお!重三郎。元の背中のとこまで切っているではないか。
 いつものお前の居合と同じに見えた。どうやったんだ。教えろ。」
「ああ。やっぱり、正解は単純だった。
 軸になる右足を、居合の直前に右に直角(90度)、向きを変えたんだ。
 かかとを軸にして。かかとは、あくまで動かない。
 だから、足が動いたように見えない。
 居合の刀を抜きながら右に向きを変えるから、それもバレない。
 右足の向きが、直前に変わるが、普通、相手は、剣か俺の顔を見ているだろう。
 足の向きなど見ない。どうだ。」
小次郎は、うれしさいっぱいの目をした。
「お前って奴は。とうとうやったな。
 1つのことに、1か月も粘る奴など、見たこともない。
 おめでとう。」
「ああ、これで負けたら、あっさり相手を認めるよ。」
「そうだな。」
二人は、両手をとって握手をした。


(次回は、「武道大会・第1戦 彩芽の悲願」です。)


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Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
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