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お父さんは、大ヒットメーカー③「淑子の自己嫌悪」

これは、もう少し長いお話にするつもりでしたが、風邪を引いてしまい、
次回で、最終回とすることにしました。読んでくださると、うれしいです。
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お父さんは、大ヒットメーカー③「淑子の自己嫌悪」


武史は、3歳のとき、ピアノを習い始めた。
すぐ近所に、家庭の中でピアノを教えている高原好美という先生がいた。
好美は、主婦で、30歳を少し過ぎた綺麗な人だった。
武史は、幼心に、好美先生が大好きだった。

高原好美は、武史を教え初めて、3か月もたたない内に、
武史の天分を認め、武史の両親に話した。
「天分があるので、英才教育をしてはどうか」と。
しかし、武史は、好美先生じゃなければ、絶対嫌だと言い張った。

武史は、先生が見抜いた通り、めきめきと上達し、
6才のときには、難曲を軽々と弾くようになった。
そして、ピアノコンクールに出て、見事、ジュニア部門で優勝した。
そのときに、いくつかの音楽大学から、初等部への入学のオファーがあった。
授業料を免除し、奨学金も出すとも言われた。
しかし、武史は、好美先生がいいと言って、頑として聞かなかった。

大野家を訪れ、入学を断られたある学校の職員が、帰り際ぽつりと、
「町の先生の元で、一つの才能が消えてしまうのか。」
と、こぼした。その言葉を聞き、武史は、好美先生が侮辱されたと、
心の中に怒りが燃え上がった。

武史は、そのとき、好美先生の元で、絶対上手になってやると決意した。
そして、小学校の6年間、がむしゃらにピアノを弾いた。
6年後、武史のピアノは、好美先生を遥かに凌いでいた。
それでも、武史は、好美先生に聞いてもらい、誉めてもらうのが喜びだった。

小学校6年生で、全国ピアノコンクールの年齢枠なしの部門で、第1位になった。
大人に交じっての堂々の第1位である。

中学の3年間もピアノを続けた。

だが、高校に入り、武史は、ロックやポップスに興味を持ち始めた。
友達とバンドを作り、ギターやベース、ドラムなど、
いろんな楽器に触れた。そして、どの楽器もすぐに上達した。

大学に入ってから、ポップスの曲を作り、
いろいろな音楽事務所に売り込みに行った。
曲が採用され、ある新人女性歌手のデビュー曲に採用された。
その曲はヒットし、武史は、初めて印税というものをもらった。

妻である淑子とは、大学4年のときに出会い、互いに恋をした。
あるとき、喫茶店で、
「ぼくは、歌を作っているんだけど、歌の歌詞だけでも見てくれる?」
と、淑子に言った。
すると、淑子は、思わぬ反応をした。
「ごめんなさい。あたし、家族とか友達とかの作品を見るの苦手なの。
 なんか恥ずかしくて。感想を言うのが、とくにダメなの。」
「そんなもの?」と武史は聞いた。
「ええ、そんなものなの。」淑子は、すまなそうに答えた。

武史は、少しがっかりしたが、そんなものなのだろうと理解した。
それから、淑子に自分の作品を見せることはなくなった。
また、作曲の話もしなかった。

結婚して、2人の娘ができ、ピアノを習わせた。
ピアノのための防音の部屋を作り、グランド・ピアノを置いた。
二人共中学が終わるまで続けたので、
モーツアルトの「トルコ行進曲」ほどの曲を弾けていた。
そして、父親に似たのか、自分で曲を作るようになった。
長女の映美は、高校でバンドを作って活動している。
自分でオリジナル曲を作っているようだ。
ところが、自分の作った曲を、親に絶対に見せない。聞かせない。
「恥ずかしいから」だという。

もちろん、武史が作った曲など、聞いてくれない。
母の淑子と、似たことを言った。
「お父さんの曲なんて、照れくさくって聞けないよ。」
血は、争えないなあ・・と武史は思った。

反面、武史は、家族に、かなり評価されている。
それは、夕食の7時には、絶対に帰ってくること。
そして、娘たちの好きな音楽CDを、発売日に買って来てくれること。
そして、夕食が終わると、一緒にテレビを見てくれること。
お笑いタレントや、歌手のことを、よく知っていること。
これだけの条件を満たしている父親は、なかなかいない。

だが、家族がいまだに気が付いていないことがある。
武史が退社するのは、午後の5時。
帰宅は、午後7時。
会社から家まで、2駅。
真っ直ぐ帰れば、40分で帰れる。
ここに、1時間20分の空白がある。
この1時間20分に、武史は、マンションに行って、作曲をする。
余った時間に、ピアノを弾いて帰る。
家族は、そんなことを想像もしていなかった。
妻の淑子は、武史は、作曲など、とっくに止めていると思っていた。
家で、ピアノを弾いている姿もなく、武史がピアノを弾けることも考えたことがない。

ある日、淑子は、武史に聞いてみた。
「あなた、作曲を昔やっていたわよね。あれ、もうやめたの。」
「いや、止めてなんかいないよ。」
「作品は、どうしてるの?」
「貯めてあるよ。」
「そう。見たことないから。」
「淑子は、見たくないって言ったじゃない。
 だから、淑子の目に触れないところに置いてある。」
「あたし、見たくないなんて言った?」
「うん。大学4年のとき。
 ぼくが作った曲の、歌詞だけでもいいから、見てくれないかって言ったら、
 淑子は、家族や親しい友達の作品を見るのは、苦手で、恥かしいって。
 それに、感想を言うのが特にダメだって。」
「ああ、そうね。確かに言ったわ。」
「曲を聞いてくれるなら、いつでもボクが歌ってみせるよ。」
「あ、いいわ。やっぱり恥ずかしい。」淑子はそう言った。

数日前、淑子は、同じ絵画を習っている仲間とお茶を飲んだ。
そのとき、みんなに言われた。
A「淑子さんのご主人、趣味がある?」
淑子「昔、作曲して、歌を作ってたみたい。」
B「まあ、ステキ。どんな感じの歌?」
淑子「それが、あたし、1度も聞いたことないの。」
C「なんで?ご主人、秘密主義なの?」
淑子「違うの。あたしが、聞いてあげないの。だって、照れくさいじゃない。」
A「ご主人の曲に興味ないの?
  ご主人の曲聞いてくれるの、まずご家族でしょう。
  ご家族が聞いてあげなくちゃ、ご主人、お気の毒じゃない。」
B「自分の曲を人に聞かせるのは、恥かしいかも知れないけど、
  ご主人の曲を聞くのが、どうして恥ずかしいのかわからない。」
C「淑子さんの絵、ご主人見てくれる?」
淑子「見てくれる。感想も言ってくれる。」
A「だったら、何よ。自分の絵は見てもらって、感想までもらって、
  ご主人の曲は、聞いてあげない。これ、ご主人可哀相すぎじゃない。」

その通りだと思った。
しかし、いざ、武史に、曲を聞かせてと言おうと思うと、
勇気が引っ込んでしまうのだった。
自分は、人から見ればどうにかしているのだろう。
自分がこんなだから、娘達も夫の曲を聞くのを嫌がる。
娘達が小さいときから、家族で夫の曲を聞いていれば、
それが、当たり前になったはずだ。
自分は、冷たい妻だと思った。
『武史さん、ごめんなさい。』そう言いながら、
淑子は、自己嫌悪を拭い去れなかった。



「サン・ミュージック事務所」である。
さほど、大きな事務所ではないが、歌姫ミーナが所属している。
今は6月。
ミーナの10周年記念ライブを4か月後の10月に控えていた。

ミーナとマネージャーの星野洋一が、社長とソファーに腰かけていた。
ミーナが言う。
「10月のライブなんですが、ラストに歌う予定の『ウエルカム25』は、
 伴奏が、ピアノですよね。
 そのピアノ伴奏なのですが、
作曲のRYOTAさんにお願いできればと思うんです。
10年も曲を作ってくださって、あたしは、一度もお会いしたことがありません。
覆面ライターのベールを取ってくだされば、ファンも喜ばれると思います。
RYOTAさんを知っているのは、社長お一人と聞きます。
このあたしの夢が実現できるでしょうか。」

社長は、腕組みした。
「RYOTAのピアノ伴奏で、ミーナが歌う。いいね。
 彼のピアノは、最高だよ。
 彼もそろそろベールを脱いでもいい頃だ。
 だが、1つ。今回は、ツアーだ。東京だけで、それが実現するって、
 不公平にならないかなあ。」
「たまたま、RYOTAさんが会場に来ていて、
 そこで、ぶっつけでお願いしたって形にすれば、東京は、ラッキーだったで済みませんか。」
マネージャーの星野は言った。
「なるほど、うまいこと言うね。」と社長は笑った。

武史の知らないところで、話がどんどん進んでいた。


(つづく。次回は最終回です。)


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プロフィール

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Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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