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多次元女装サロン「トラック運転手・大方昇」後編「カムアウトの仕掛け」

多次元女装サロン「トラック運転手・大方昇」後編「カムアウトの仕掛け」


「あたし、本物の佐和子なの。クローンじゃないの。」
佐和子は、昇を見つめて、言った。
「まさか、あり得ないよ。
 だって、午前中は、家に二人でいて、俺が先に出掛けたよ。
 俺、真っ直ぐにここに来た。
 佐和子が、俺より早くここに来れるはずがない。」

「あたし、この頃のあなたが、ときどき思いつめたような様子でいたから、
 今日、心配で、あなたの後をつけたの。
 そして、ここに来て、
 あなたが、受付の人と話しているとき、入り口の影で聞いていたの。
 あなたの悩みが全部わかった。
 そして、それが、あたしの悩みと同じだと思ったの。

 あなたが、103の部屋に向かったわ。
 あたしは、すぐ受け付けに行って、
 昇の妻であることを伝えたの。
 受け付けの方が、あなたにしたように、同じ質問をされて、
 あたしが、男装して男に見えるように、体や顔の微調整をしてくださった。
 そして、103号室に向かったの。
 そうしたら、あなたは、部屋の扉の前で、固まっていたわ。
 そこだけ、時間が止まっているように。
 あたしは、あなたの横をすり抜け、部屋に入った。
 そのとたん、あたしは、ステキなショート・ヘアになっていて、
 男っぽい、服装になっていた。
 そして、ドアに向かって、部屋の真ん中で待っていた。
 やがて、女性になったあなたが、入ってきた。
 後は、もう分かるでしょう。」

「そうだったのか。佐和子、俺を理解してくれたの?」
「ええ。そのまま、あたしの悩みだったから。
 真っ直ぐに理解できた。
 あなたも、あたしを理解してくれたの?」
「うん。男装の佐和子、すごくかっこよかった。」
二人は、顔を見合わせ、にっこりとした。

二人は、仲良く手をつないで、ドアを出た。
すると、服装が入れかわった。
部屋で着ていた洋服を、全部交換したみたいに。

二人は、受付の郁美のところへ行った。
「うまく、カムアウトできましたか?」郁美はにっこりと言った。
「はい、おかげ様で。でも、教えてください、
 後から来た佐和子が、どうして、俺より先に部屋にいたんですか?」
「それは、奥様がいらして、『昇の妻ですが。』とおっしゃったとき、
 あたしは、ピーンと来て、昇さんの周囲50cmの時間を止めたのです。
 昇さんのスマホから、奥様のデータを得ていましたから。
 そうして、佐和子さんのお話を、ゆっくり聞きました。」

「時間を止めるなんてこと、できるのですか。」昇は聞いた。
「ここを何処だとお思いですか。『多次元』女装サロンですよ。
 『時間』ならば、コピー&ペイスト、挿入、切り取り、削除、停止、
 なんでも、朝飯前なんですのよ。」
「そうかあ。多次元というのは、飾りじゃないんですね。」昇は言った。

「ところで、お二人は、異性度が、標準を越えていますので、
 私達の援助の対象になります。
 では、微調整を戻さない・・でいいですか。」
「はい、いいです。」と二人。
「永久脱毛もそのままでいいですか。脇の下を含みます。」
「はい、いいです。」
「声は、異性装したときに1段階、セックスに入って1段階、
 異性のものに変わります。これは、体験されましたね。これで、いいですか。」
「はい、とても、いいです。」二人はニコニコと顔を見合わせた。
「昇さんの全身の皮膚感度を、女性並みの性感度にしましたが、いいですか。」
「いいです!」昇は、うれしそうに答えた。

「昇さんは、乳房がありませんが、乳首を大きくし、
 女性並みの性感度にしてあります。これでいいですか。」
「だから、感じちゃったんですね。いいです。うれしいです。」と昇。
「佐和子さんは、逆に皮膚の性感度を落としました。
 力仕事のとき、その方が楽です。」
「はい、いいです。」と佐和子。
「佐和子さんは、そのショートのヘアスタイル、お気に召しましたか。」
「はい、最高にかっこいいです。」と佐和子。
「じゃあ、これも、そのままですね。」

郁美は、フルケーキの入れ物のようなものを取り出した。
「これは、ウィッグです。今日の昇さんの髪型と同じです。
 そして、これは、『逆転夫妻』の方向けのパンフです。
 気が利いていて、ためになりますよ。
 セックスの体位のいろいろ。
逆転ご夫婦ですから、自ずと体位が変わってきますからね。
また、ライフスタイルのいろいろでは、
 例えば、ご夫婦で、1週間ごとに、働き手を交換する。
 連続専業主婦体験、などなど、おもしろいですよ。

 この靴は、佐和子さんが男性のとき履く靴です。
 9cm背が高くなり、履き心地は満点です。

 これらを含め、今日の部屋の使用料もタダになります。」
郁美は、ここまで言って、にっこり笑った。

「わあ、俺たち、すごいラッキーですね。」と昇は言った。
「その代わり、今日の日まで、人知れぬ辛い思いをなさったはずです。」
と郁美。
二人は、しんみりとうなずき、
互につないでいる手を、固く結んだ。
「では、ハッピー・ライフを!」
「はい、ありがとうございます。」
二人は、頭を下げて幸せそうに歩いて行った。

郁美は、パソコンに戻り、
「さあ、今日のことを本部に知らせなきゃ。」
郁美は、ふーと息を吐いて、
猛烈なスピードで、キーを叩いた。


<おわり>

======================================  

<エピローグ>

それから、9か月後。
昇と佐和子が、サロンに訪ねて来た。
郁美はデスクから離れて、玄関外で、二人を迎えた。

「まあ、昇さんは、もう完全に女性じゃないですか。」郁美は言った。
昇は、ふかふかのピンクのセーターを着て、セミショートの髪。
白いタイトなミニ・スカートを履いていた。
靴が可愛い。
背が高いので、脚すごく長く見える。

一方、佐和子は、ショートカットのヘアで、黒いズボン。
ベージュのハーフトレンチ。
高い靴のためか、昇より、ぐんと背が高い。
なぜか、ピンクのリップを引いていて、
かなり、ボーイッシュな女性に見えもする。

「その節はお世話になりました。」と二人は言った。
佐和子が言う。
「郁美さん、昇ったらずるいんですよ。
 自分は、上から下まで完全女装しておいて、
 俺には、ちょっと女の部分残しておいて、何て言うの。」

「それが、リップの訳ですね。
 でも、ステキだわ。
 男性は、超セクシーな女性と見るし、
 女性は、カッコイイ憧れのお姉様って見ますよ。」

「結局、女でしょ。俺、女に見られたくないんだけどなあ。
 ほんとなら、五分刈りにしたいところ。」
「ダメ~ん。佐和子の5分刈りなんか、絶対見たくない。」
昇は、甘えた声で言った。

「今は、どんな風に生活なさってるの。」と郁美。
「あたしが、完全専業主婦。」と昇。
「昇の方が、断然主婦に向いてるの。
 中でも、料理が抜群に美味しいの。
 だから、俺、大型の免許取って、
 今は、完全に逆転夫婦。
 運転手仲間には、女ってばれてるけど、
 俺のこと『兄貴』って呼んでくれてる。
 先輩からは、『佐和坊』。」佐和子は笑った。

「佐和子、一番大事な報告を忘れてるわよ。」と昇は佐和子の腕を揺すった。
「ああ、そうそう。俺のお腹に赤ちゃんがいるの。3か月。」
「まあ!」と郁美が目を輝かせた。
「おめでとうございます。
 当サロンでは、支援対象者の奥様が妊娠されたとき、
 支援金が出ますのよ。月10万円です。」
「ほんとですか!」と二人は飛び上がらんばかりに言って抱き合った。
「返済も利息もありません。じゃあ、その手続きをしましょうか。」
3人は、中に入った。

そのとき、3人は3様に考えていた。
郁美「二人のどちらが、ママになるのかしら。」
昇「あたしが、ぜったいママ。」
佐和子「オッパイやれるのは、俺だ。俺が、ママに決まってる。」





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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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