小説・幸夫の性自認③ 「開明高校入学試験」

<第3話> 開明高校入学試験


クラスのみんなには反対されたが、
幸夫は、開明高校を受験することにした。

受験日を明日に控え、幸夫は着ていくものに困っていた。
ほとんどの生徒は、中学の制服でくるだろうが、
幸夫はそうはいかない。
下着はちゃんと女の子のものを着け、
胸が目立たないように、黒いだぶだぶのセーター。
ズボンがない。
学校で女子の扱いをしてくれるようになってから、ズボンなど履いたことがない。
幸夫にとり女の子は、断然スカートだったのである。
仕方がなく、姉道子の黒いリクルートズボンを借りた。
幸夫より背の高い道子のズボンは、
ややつんつるてんだった。
「幸子、これ短いの?」と道子は驚いた。
幸夫は、身長の割に脚が長かった。

オーバーの代わりに、父のブルゾンを借りた。

さて、当日。
寒い日の朝早く、幸夫の見送りに、家族みんな早く起きてくれた。
玄関で、
「ね、あたしなんとか、男の子に見えてる?」と聞いた。
「見えない。女の子。」と妹の沙紀が言った。
「そっか。でも、ドンマイ!」幸夫はそう言って「行ってきます。」をした。

開明高校。男子320名が合格である。
中学部からのエスカレートの生徒は、今日は休みである。

校門に来ると、賢そうな生徒がどんどんやってくる。
幸夫は受験票を見た。
それに、テストを受ける教室と席番号が書いてある。
受験票には、自分の顔写真が貼ってある。
うっかり、中学の制服を着て撮ってしまった。
胸の襟にリボンが付いている。
「あらあら。」と幸夫は声を出した。

教室に行って、自分の席に着き、受験票を机の端に置いた。
ブルゾンを脱いで、椅子の背に掛ける。
幸夫は、背を伸ばし、きちんとしていた。

思った通りだ。
教室の受験生が、幸夫をジロジロ見ている。
幸夫は、対策を考えていた。

ジロジロ見ている生徒に、顔を向け、
にっこりとほほ笑んで、優雅に首を少し傾けた。
すると、その生徒は、あわてて、ぎこちない会釈をして目をそらせた。
これを、自分を見ている生徒たちに、順番にやっていった。
中には、顔を赤らめ、うつむく生徒もいた。
Vサインを送って来る豪傑もいて、
幸夫は、にっこりとVサインを返した。
ぶりっ子風にやってみた。
それを、大勢が見た。
幸夫は、少し愉快な気持ちになって来た。

試験が始まった。
初めは、国語。
恐ろしく長い文章が出たが、なんとかOK。
10分の休憩。
幸夫はトイレに行った。
思った通り、ここでも、ジロジロと見られたが、
幸夫は、にっこりと笑って、個室に入った。

次の数学もOK。
次の英語も、長文が出たが、なんとかOK。
ここで、午前の試験が終わり、昼休みになった。
お弁当を食べ終わった頃、
となりの席の、小柄でぽっちゃりした生徒が、
机を幸夫の机に寄せて来た。

「あのう、君のことジロジロ見ちゃってごめんね。
 失礼だけど、君が女の子に見えちゃって、つい見ちゃったんだ。
 ここ男子校だから、君、男子なんだよね。」
彼は、恐る恐るそう言った。
「ええ、戸籍上は男子よ。でも、性同一性障害。心は女なの。」
幸夫は言った。
気が付くと、10人くらいの生徒が、椅子を離れそばに来ている。
別の生徒が言った。
「じゃあ、納得。君は、声も女の子だけど、声の練習とかしたの?」
「うん、変声期前にホルモン治療始めたから、女の子の声でいるの。」と幸夫。
「君、可愛いよ。男子だって気がしない。いっしょのクラスになりたい。
 俺も受かるから、君も、合格してくれよ。」
「そうだ、絶対合格してくれ。俺も絶対合格する。」
みんなが、口々にそんなことを言った。

幸夫は、天使のスマイルを見せて、
「ありがとう。あたし、絶対受かるようにがんばる。
 みんなも合格して、今度は、クラスで会いましょう。」と言った。
「おー!」とみんながうれしそうに言った。

幸夫は、あの時の校長の言葉を思い出していた。
『反対に、モテすぎて困るかも知れない』
そうなったら、うれしいな、と幸夫は、心の中で、にっこりとした。

5科目の試験が終わり、夜の開明高校の職員室である。
校長が教員の間をうろうろしている。
「校長先生は、ドカンと座っていてくださいよ。」
などと、谷崎校長は、教員から言われている。

進路指導主任の田村が、校長席に来た。
「はい、校長。出ました。成績順に並んでいます。」
「おお、そうかね。」
と校長は、にっこりと受け取った。
「あの子は、合格しているかな。」校長は言った。
「片桐幸夫くんですね。」
「ああ。」
「受かっていればいいと思ってらっしゃるんですか。
 それとも、面倒な生徒だから、落ちてくれているといいとお思いなんですか。」
「前者に決まっている。ああいう子が来ることで、
他の生徒の認識が深まるだろう。それを願っている。」
校長は言った。
田村は、にこりと笑った。

校長は、プリントをデスクに置き、
定規をあて、320番の下から見ていった。
なかなか、出てこない。
200番を過ぎた頃、少しあきらめの気持ちが起こった。
100番を過ぎ、50番を過ぎたとき、残念な気持ちが、胸をうずめた。
10番を過ぎた。
ダメだったかと思ったとき、
上から2番目に、片桐幸夫の名を見つけた。

「おお!」と校長は声を漏らした。
開明高校に2番で合格するのは、只者ではない。
「そうか。あの子は、『人物』であったか。」
と校長は、喜びの目を宙に向けた。



開明の受験を終え、夜のひと時、
幸夫は、パアソコを開けた。
「百合」のブログに行った。
百合の新しい写真があって、胸キュンになり、コメントを書いた。

『今日のお写真もすごく可愛いです。
 百合さんのお写真を見るのが、一日の一番の楽しみです。
 今日は高校入試で、がんばってきました。

 キャンデー 』

百合の返事が、1時間後に来た。

『キャンデーちゃん。
 受験、お疲れ様でした。
 あたしは、今高1なので、去年のことを思い出します。
 祈・合格。

 百合 』

百合の『祈・合格。』という字を見て、
幸夫の心は温かくなった。
今日一日のことを思い出し、幸夫は幸せな気持ちになった。


つづく(「開明高校・第1日目」)


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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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