IS 看護師 江崎裕美⑧⑨「弘美はキューピッド」

<第8話>と<第9話>と分けようと思いましたが、長さが中途半端で、
2話を一挙に投稿します。少し長くなりましたが、
読んでくださるとうれしいです。
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<第8話>「弘美はキューピッド」前編


5月30日。もうすぐ6月である。

外科病棟の看護師長・篠田沙月(さつき)は、
「お先に失礼します。」
と言って、ナースステーションを出た。
白いブラウスとグレイのタイトスカートに着替えて、病院を出て行った。
沙月は、7:3に分けた髪をぴっちり後ろへ回し、お団子にしている。
切れ長の目、綺麗な鼻筋、知的な唇。誰が見ても美人であるのに、
化粧を一切しない。
メイクをすれば、さぞやとみんなが見ている。
常に地味な色の服装をしている。
身長165cm。
年齢は、28歳とナースでは最年長である。
年齢的には、男子看護師の湯川吾郎も28歳である。

沙月が、2LDKのマンションに帰って来たのは、午後の7時であった。
シャワーを浴びる。
体が冷めるまで、ジュースを飲んだ。
バスローブを脱ぎ、黒い下着を着けた。
スリップ姿で、ドレッサーの前に座る。
そして、メイクをしていく。
まつ毛をカールして、マスカラを上下に塗る。
赤系のシャドウを入れる。
眉を少し太目に描く。
チーク。そして、ピンクのリップを引く。

頭のお団子をほどいて、ブラッシングをする。
7:3に前の髪を分けて、髪の下部を膨らませる。
右の前髪が、右の目の上を通る。

沙月は、見違えるような美貌の人となる。
エンジのオシャレなワンピースを着る。
膝下10cm。
ネックレス、ピアスで飾る。

黒いパンプスを履き、黒いバッグを持って外に出た。

沙月は、タクシーを呼び、高層のホテルに乗り付けた。
その最上階のレストランに入り、
案内され、テーブルに着いた。

夜景が綺麗で、ずっと遠くまで灯りが見える。

向かいの席に来る人はいない。
付きあってくれそうな女友達もとくにいない。
沙月一人である。

今日は沙月の誕生日だった。
一人で淋しくはあったが、
年に一度の自分へのご褒美であった。

沙月は看護師になって2年目に、恋をした。
相手に、バージンも捧げた。
結婚できると思っていた。
しかし、その男にひどい裏切りをされた。

それ以来、沙月は、男性が怖くなった。
いや、恋することが、恐くなった。
心の中で、傷はまだ癒えていないと思っている。
普段ノーメイクで地味な格好をしているのは、そのためだった。
ただ、誕生日だけは、出来る限りのおめかしをした。

美味しいお料理をいただきながら、沙月は考えていた。
ナースステーションに一人、自分に好意を持ってくれていそうな看護師がいる。
彼となら、安心してお付き合いができるかも知れない。
自分のトラウマを乗り越えさせてくれるかも知れない。
どうすれば、彼と親しくなれるだろうか・・。

沙月は知らなかったが、沙月には、キューピッドがいた。
だが、キューピッドの矢は、まだ、沙月に届いていなかった。

明くる日、5月31日。
沙月は朝一番に、裕美のところへ行った。
「6月の当番表できましたか。」
「はい。できています。これです。」と言って、裕美は16枚のプリントを沙月に渡した。
「わあ、ありがとう。」沙月は言った。

当番表とは、1か月、朝番、遅番、深夜番をいつ誰がやるかを記した表である。
この表作りは、深夜番の回数がみな公平になるように。
また、当番を誰と組むかが、偏らないように、などなど、
大変面倒で気を遣うものである。
今までは、看護師長の沙月が1日がかりでうんうん言いながら作っていたが、
裕美が、そういうのは、エクセルの関数を使えば簡単にできるというので、
沙月はお願いした。

沙月は、当番表を見ながら、デスクについた。
ふと見ると、デスクの上に小箱があり、リボンが付いている。
メモが挟んである。
それを開いてみた。
『お誕生日、おめでとう。 Xより。』
沙月の心は、ぱあっと明るくなった。
中に、チョコレートが入っていた。

誰だろう。
おめでとうの字を見ると、女の子の文字だった。
そばに来てそれを見た看護師が、
「わあ、ごめんなさい。昨日お誕生日だったんですね。
 うっかりしちゃった。」と大きな声で言った。
それを聞いて、みんなが寄って来た。
「わあ、ごめんなさい。でも、お誕生日おめでとうございます。」
「ありがとう。でも、プレゼント誰がくださったのかしら。」
と、沙月は言った。
女子は、みんな思い当たらず、
今朝出勤でない誰かだろうと思った。
しかも、昨日沙月より遅く帰った人。

裕美のそばに、絵里が、当番表を持ってやってきた。
小さい声で、
「これ裕美とあたし、けっこう同じ時間帯になってるけど、公平?」
と言った。
「うん。今月よくいっしょになっていたら、来月は、いっしょにならないから。」
裕美は大きな声で言った。
「なるほど。」と絵里は納得した。
この裕美の説明は、みんなに聞こえた。
沙月も聞いた。
沙月は、当番表を見て、月4回の深夜番(看護師2人、医師1人)が、
4回の内2回も、看護師の湯川吾郎といっしょであることに驚いていた。
湯川吾郎こそ、昨夜レストランで考えていた『彼』であった。

この当番表こそ、キューピッド裕美が、二人の胸に放った矢であった。

観察力のある裕美は、2人の気持ちが分かっていた。
湯川吾郎は、沙月を見てばかりいる。
篠田沙月は、逆に吾郎から、あえて目を外す。
それは、意識している証拠。
二人の性格の違いが、そうさせる。

『今月は、一緒の深夜番が2回ありますが、来月はありません。
 お二人とも、どうか今月中に気持ちを伝えてくださいね。』
裕美は、そう心で言い、宙を見て、くすっと笑った。


■次回予告■

篠原沙月と湯川吾郎のお話の「後編」です。


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<第9話> 「結ばれる二人」後編


6月7日。
篠原沙月と湯川吾郎の深夜番の日となった。
11時を過ぎると、遅番の人達が一斉に帰っていった。
医師は一人部屋がある。
ナースステーションには、沙月と吾郎の二人きりになった。
二人は、近い席にいたが、お互いなかなか話ができないでいた。

1回目の巡視が終わり、深夜の12時が過ぎた。
沙月は、少しばかりの勇気を出した。
机の中の誕生日にもらったチョコレートを出した。
「あの、湯川さん。よかったら、チョコレートを召しあがりませんか。
 誕生日のプレゼントで、今までもったいなくて食べられなかったんですが、
 何時かは食べないと。お一つどうぞ。」
吾郎は、嬉しそうにして、椅子を沙月に近づけた。
そして、小箱のチョコレートを手にした。
「うれしいです。甘いものが欲しかったところです。」吾郎は言った。
沙月も1つ口に入れた。甘さが口に広がり、
幸せな気持ちがした。

「このプレゼントは、嬉しかったんです。
 実は、これをいただいた前の日、あたしは、メイクをして、
 一番好きなドレスを着て、ホテルのレストランに行きました。
 自分のお誕生日を、一人で祝おうと。
 お食事は美味しかったし、外の景色も素敵だったし、
 何も文句はなかったの。
 ただ、自分の前の席に誰もいないことが、とても淋しく思えたの。
 普段は、一人で淋しいなんて思ったこともなかったのに、
 その時だけは、一人が淋しかった。

 そんな気持ちを引きずりながら、明くる日ここに来てみたら、
 この小箱がありました。
 ああ、祝ってくれる人がいる。
 自分は、一人ではないって思えて、目が少し潤んでしまいました。」

「そうですか。贈った人は、それを聞いたら喜ぶことでしょうね。」
「それが、誰がくださったのか、未だにわからないんですよ。
 メッセージが女性の字だったので、女子みんなに聞きました。
 みんな知らないそうでした。」
「そのプレゼントの主は、篠田(沙月)さんのことを、いつも見つめていて、
 いつもあなたのことを思っていたのでしょうね。
 だから、お誕生日を忘れなかった。」
「そういう方がいてくださると思っただけで、幸せです。」

吾郎は、少し息を吸って言った。
「プレゼントの人が、男性であるかも知れないと思いませんでしたか。」
「それは、メッセージの字が誰が見ても女文字でしたから。」
「男性なら、男文字で書くと思いますか。」
「どういうことですか。」沙月は、吾郎の目を見た。
「男性が男文字で書いたら、誰だかすぐに分かるじゃありませんか。
 だって、ここには、男子が3人しかいません。
 久保田くん、江崎さん、私。少し考えたら誰だかわかる。」

「じゃあ、女文字を真似して書いたの?」
「例えば、ぼくには、妹がいます。」
沙月は、やっとわかった。
「ああ、妹さんに書いてもらった。」
「そうです。」
「じゃあ。」沙月は、吾郎を見つめた。
「ぼくです。」
「ああ・・。」沙月は、両手を頬に当てた。
「あたしのお誕生日をどうして知ってらしたの。」
「私達がこの病院の最初の看護師です。
 篠田さんは、自己紹介のとき、『私の誕生日は5月30日です。
 みなさん、覚えていてくださいね。』ってお茶目に言いましたよ。」
「ええ、覚えています。」
「ぼくは、あなたに一目惚れでした。だから、5月30日をがっちり覚えました。」

「ああ、そうだったの。
 実は、誕生日のレストランで、あたしは、湯川さんのことばかり考えていました。
 あたしは、ある男性に裏切られて、男性不信に落ちていました。
 でも、湯川さんとならくつろげる。
 湯川さんなら、信頼できる。
 湯川さんとなら、あたしのトラウマを乗り越えることができる。
 そう思っていました。」
「本当ですか。じゃあ、ぼくとお付き合いしてくださいますか。」
「はい。うれしいです。そして、プレゼント、ありがとう。」
沙月と吾郎は、両手を取って、固く握手をした。
沙月は、目を潤ませていた。
目の前に、吾郎のやさしい顔があった。



深夜番の翌日は、休息日である。
そして、その翌日、みんなは、やって来た沙月を見て、
わあわあと囃し立てた。
沙月は、美容室に行ったのか、髪を下し、肩までの髪にふわりとカールをかけ、
髪を7:3に分け、その間に、前髪があった。
薄いメイクをし、リップを引いた沙月は、ドキッとするほどの美貌だった。
そして、5歳くらい若く見えた。
看護服に着替えても、髪をまとめず、頭にナースキャップを着けていた。
女子たちは、沙月を取り囲んで、
「どうして、イメチェンしたんですか?」
「いいことがあったんですか。」
「もしかして、彼ができたとか。」
「ステキ。最高に美人。」
と興奮していた。
吾郎と同期の久保田健一は、吾郎に言った。
「篠田さん、すごいイメチェン。美人だなあ。
 『彼』が出来たと見た。彼はラッキーだな。」
吾郎は、にっこりふり向いて、
「わあ、ほんとだ。美人だなあ。『彼』がうらやましいよ。」
にこりとして、そう言った。
職場恋愛は、隠しておくのがいい。
(もっとも、邪魔をするような人は、いなかったが。)

絵里が、裕美のそばに来た。
「職場恋愛かな。
男子は3人、裕美のはずないし、久保田さんは、妻帯者だし、残るは・・。」
「いろいろ考えないの。そっとしておくのが一番。」
「まあ、裕美はいつも超然としてるんだから。」
絵里はそう言って、しばらくして、
「そうね。」と笑った。


■次回予告■
次は裕美のことです。
裕美の体のことが、明らかになります。


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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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