高島忠男シリーズ⑤「ファゴット65の声」

高島忠男シリーズ<第5話>「ファゴット65の声」


支配人が白川と共に来て言う。
「お客様。ファゴット65年は、世界に5本しかないと言われているウイスキーです。
 イギリスに1本、フランスに2本、ドイツに1本、アメリカに1本です。
 ですから、わが国では、
どのホテルをお探しになってもあるはずがないと思われます。」
「私は、そんな説明を求めているのではないですよ。
 彼女が、『倉庫を見て参ります。』と言いながら、
 見ないで帰って来たから、どうして見に行かないのかと聞いているのです。」
忠男は言った。
「倉庫へ行っても無駄だから、見に行かなかったのでしょう。」
と支配人。
「だったら、初めから『見て参ります。』などと言うべきではありません。
 違いますか。」
「見て参りますと言ったことはお詫びします。
 つい口から出ました。
 倉庫は地下2階にあり、行っても無駄と思いやめました。」
白川は言った。
「だったら、帰って来たとき、そう言えばいいのに。」と忠男。

「お客様が、ある女性がファゴット65を飲んでいたとおっしゃいましたので、
 他のソムリエに、そんなサーブをしたかを確かめていました。
 その方が、倉庫を見に行くよりましだと考えました。」
と白川は言った。

(倉庫に行くのが無駄なら、他のソムリエに確かめることだって無駄だろう。)

忠男は、何か噛み合わない会話に、苛立って来ていた。
見れば、ソムリエ達が、なんとなく近くに来ていて、忠男をにらんでいた。
忠男が因縁でもふっかける客と見たのか。

(心を覗くのは、最後の手段としているのだが、)
忠男は、支配人と白川弓子の心を少しのぞいた。

そして、『そういうことだったのか。』と納得がいった。
『よし、ここは一発、支配人を怒らせるのが一番。』と考えた。

「では、言いますが。このホテルとは言いません。
 ホテルによっては、特別のお客のために、ある高級酒1本を隠して置き、
 一般のお客には、ありませんと答えたりするそうです。
 そう言うのは、お客を差別するようで、好みません。」
他のソムリエ達が、反応した。

支配人は、火のように怒った。
「では、お客様。倉庫をお見せします。
 それで、ご納得いただければ、幸いです。」
ソムリエ2人が、支配人を止めた。
「この人が何かをたくらんでいるかも知れません。冷静になってください。」
「挑発に乗ってはいけません。倉庫を覗かせてはなりません。」
「かまわん。私が責任を取る。」支配人の血の気は上りつめていた。

忠男とソムリエ3人、そして支配人で、地下の倉庫に向かった。
その中に、白川もいた。
地下階のウイスキー倉庫に来た。
支配人がカギを開ける。
中に入ると、倉庫の中央は空間になっていて、真ん中にテーブルがある。
そして、4方の壁が、ボトルの棚になっていた。

「さあ、みなさん。探してください。
 ちゃんとした棚ではありませんよ。隠してあるんだから見えない所です。」
忠男は言った。
3人のソムリエは、まるで探す気がない。
場所を知っている忠男から見れば、少しかがめば見えるところにあるのに。
1分ほど探した。
誰も見つけない。

「みなさん、もういいです。ここですよ。」
忠男は、言うと、真っ直ぐにある棚の下にかがみ、
手を入れ、紫の布に巻かれたものを取り出した。
その紫の布を取って、ボトルをテーブルに置いた。
ボトルのラベルに、「ファゴット65」とあった。

支配人は、目を見張り、ボトルを手に取った。
「まさか!夢でも見ているのか。」
「ソムリエさん達は、驚かないのですか。
 あれだけ『ない。』と言い張ったのに。
 私が、今、このボトルを持って、2階のホールに行き、
 大声で、『ほら、ちゃんと隠してありましたよー!
 このホテルは嘘つきだー!』
 と、全お客に見せますよ。」
「それは、やめてください!」と白川が叫び、倉庫のドアを通せんぼした。
「お願いです。止めてください。」と二人のソムリエも、白川の前に立った。
「では、みなさん、ホールにいる4人のソムリエさんも、
 このホテルに、ファゴット65があることを知っていたんですね。」
「はい。」といって、3人は頭を垂れた。

「どういうことなんだ。だれか、説明をしてくれ。」
支配人は、仁王立ちになった。

「私がしましょう。」と、忠男が言った。
「私は、ボトルの声が聞こえるのです。
 10年程前、あるフォトジャーナリストが、
 戦地で、ファゴット65を偶然見つけました。
 彼は、そのお酒の価値を知っていました。
 そこで、日本に持ち帰り、大切に保管していました。

 しかし、大病を患い病院生活となり、
 ファゴット65の管理ができなくなりました。
 そこで、親友である、このホテルのソムリエのAさんにボトルを委ねました。

 Aさんは、最良の場所として、自分のホテルの倉庫に隠したのです。
 誰にも見つからないような場所に。
 ところが、Aさんは、アメリカのホテルに栄転になりました。
 その喜びのためか、ボトルのことを忘れてしまったのです。
 ボトルは、この倉庫に眠ったままでした。
 ここまでが、私が、ボトルから聞いたお話です。

 ここからは、私の推測です。
 おそらく、Aさんは、ボトルのことを思い出したのです。
 そして、このホテルのあるソムリエさんに国際電話をしました。
 多分、白川弓子さんですね。(彼女は、うなづいた。)
 初めの持ち主は、死んでしまった。
 あとは、君に任せる。
 ソムリエ仲間で飲んでくれ、とか。
 白川さんは、ボトルを見つけました。
 彼女は、独り占めをするような人ではありませんでした。
 みんなを集めて、ボトルを見せました。
 しかし、支配人には、内緒にしました。
 なぜだかわかりますよね?支配人。」

「ああ、わかるとも。私は、経営者サイドの者だ。
 上に報告して、このホテルを『ファゴット65』を持つホテルだと、
 宣伝にする立場だ。ホテルの格が上がるからね。」支配人は言った。

「彼らは、この2年の間、なかなかもったいなくて飲めなかったのでしょう。
 そうですよね。白川さん。」

「はい。緊張してしまい、何かいいことがあったときにと思ううち、
 今日になってしまいました。」白川は言った。

「それにしても、私には、1つ大きな疑問がありました。
 白川さんは、なぜ、『倉庫を見て参ります。』などと言ったのか。
 これは、ボトルの存在の可能性を、一部認める言葉です。
 ボトルは、絶対バレてはいけないのに、それと矛盾する言葉です。
 私は、それが、ずっと引っかかっていたんです。でも、こう理解しました。

 酒の知識のある人は、ファゴット65など、ないことを知っている。
 だから、注文する人などめったにいません。
 そこを、私なんかが突然65を注文した。さらに、女性が65を飲んでいたと言った。
 そのとき、あなたは、とっさに、倉庫のファゴットは、無事だろうかと、
 見に行かなくてはならないと思った。
 その気持ちが、『倉庫を見て参ります。』という言葉になった。
 いかがですか。」と忠男。

「はい。その通りです。
 倉庫のファゴット65を思い浮かべ、とっさに言ってしまった言葉です。
 でも、その前に、みんなが、65を女性にサーブしたかが気になり、
 みんなに、確かめました。
 例えば、死期の近い女性に、最後の頼みだと言われたら、私なら心が動きます。」

「65がなければ、そんな確かめは、いらなかった。
 ボトルがあったからこそ、確かめたのですね。」と忠男。

「はい、そうです。
 皆に確かめた後、倉庫には、行けませんでした。
 無いと公言しているのに、倉庫へ行くのは、不自然に思えたからです。
 
 その後、65がないと確信しているはずのソムリエが、
 『倉庫を見て参ります。』と言ってしまった矛盾に気が付きました。
 しかし、よい言い訳が見つからず、支配人のところへ逃げました。」
と白川は言った。

忠男は、言った。
「支配人、ボトルの存在を知ってしまった以上、ホテルのものにされるのですか。」
「私を、馬鹿にせんでほしい。私は、真面目だが、野暮ではないぞ。
 相川くん(=A)が、みんなのものと言ったんだから、みんなのものだ。
 その代わり、私にも、一杯飲ましてくれんか。」
支配人は、そう言って、少し笑った。
「もちろんです。」と白川は、安堵の色を見せて言った。
「あ、私にも一杯。ホールの客に言いふらしたりしませんからね。」と忠男。
「はい、お召し上がりください。」と彼女は笑った。

「みなさん、支配人も知り、もう、何も心配はいらない。
 今日が記念の日ではないですか。
 ボトルを開けたらどうでしょう。」
忠男は言った。
「みんな、そうしようよ。飲んだら上の人と交代。」と白川が言った。
「おおおお、とうとう飲めるのか。」
「ついにこの日か。」
と2人のソムリエが、ガッツポーズをしながら言った。


■次回予告■
ソムリエ達は、お酒を飲み、感動します。
忠男は、バッグの安酒を、ファゴット65に変え、
美奈子の父貴夫に飲ませます。


バナーをこちらではまだ貼れずにいます。
アメブロの方で押してくださると、幸いです。


 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

リンク
最新記事
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブロとも一覧

自己女性化愛好症

御中根 蕗菜 です

女装子動画 Japanese crossdresser porn

enma’s blog

瞳のセルフヌード

毎日が日曜日

女装子&ニューハーフのペニクリ&アナルマンコ

MadameM【秘密の手帳】

川*´v`*川し

復讐の芽 ***藤林長門守***

橙の電車
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム