有香シリーズ<第4話>「二人のデザイナー」

有香のお話をもう少し書きます。
今回は、3話完結ほどになりそうです。
読んでくださるとうれしいです。
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有香シリーズ<第4話>「二人のデザイナー」


夜の7時。季節は、もう秋である。
有香の店の横を、黒い高級車が過ぎようとしていた。
「五郎君、待ってくれたまえ。」
本木倖造は、運転をしている助手の鈴木五郎に声をかけた。
「今、布の店があった。止めてくれないか。」
倖造は言った。
「え、そんな店ありましたか。
どうせ、小さな店でしょう。」鈴木五郎は言った。
「何を言う。そこが宝の山だったらどうする。」倖造は言った。
「まさか。」
鈴木五郎は、倉を過ぎ、修の店を過ぎた暗いところに車を止めた。

本木倖造は、50歳代前半の男で、髪をぴちっとオールバックにして、
高そうな背広を着て、ネクタイをきりっと締めている。
一方、鈴木五郎は、30歳ほど。
小太りで、小柄、しかし、ファッショナブルな服を上手に着こなしていた。

二人は、「有香の布のお店」に入って行った。
「いらっしゃいませ。」と頭をさげる娘を、倖造は真っ先に見た。
そして、驚いた。
並々ならぬセンスの持ち主である。
「あなたは、なんとセンスのよい。」
倖造は、有香に言った。
有香は、照れて、
「ありがとうございます。」とにっこりした。

倖造は、店を見回した。
きっちり並んでいる布。
布が見えるように、横置きにしてある布、いろいろだ。
倖造は、1つ1つの布を食い入るように見て行き、
店の中を一通り見た。
そして、うれしそうな表情をして、有香に言った。
「ここは、宝の山ですな。
布を、引き出してもいいですか。」
「はい、どうぞ。」有香は言った。
宝の山と言ってくれたことが、うれしかった。

「よし、私が1反の値段を当ててみましょう。」
倖造は、そういうと、布を取り出しながら、
「これは、30万はしますな。
 おおこれは、50万をくだらない。
 なんと、これは、100万はします。
 すばらしい。
 これは、20万くらいだが、この種では、最高級だ。」
こうして、倖造は、大きなテーブルの上に、15ほどの布を置いた。

「どうですか。私の言った値段は、だいたい当たっていましょうか。」
と倖造は、聞いた。
倖造の言った布の値は、ほぼどんぴしゃりだった。
有香は、これほど布のわかる客は初めてだった。
うれしくて、たまらなかった。
「はい、どんぴしゃり。全部正解です。」と有香は言った。

「鈴木君、テーブルの上の布、全部でいくらになる。」と倖造は聞いた。
鈴木は電卓をはじき、
「550万です。」と言った。
「今日、いくらの用意がある。」
「700万です。」
「よし、あと150万買えるな。」
倖造は、そう言って、薄布を5反買った。

700万を現金で、きっちり支払った後、
倖造は、有香に名刺を出した。
有香は、名刺の名前を見て、驚いた。
本木倖造と言えば、日本で1、2を争う服装デザイナーである。

「服装のデザイナーをやっています。
 私は、布を見て、服のデザインを考えます。
 だから、いい布が手に入らないと、何もできんのですよ。
 佐伯京介というデザイナーを知っておられますか。」
「はい。あの個性的な方ですよね。存じ上げています。」
「そう、嫌な企画を立てられてしまいましてね。
 今度、彼と共同のファッションショーをやらねばならない。
 佐伯京介は、変な人間ですが、腕は本物だ。
 若いが、その内、世界に羽ばたくでしょう。
 だが、まだまだ、彼に負けるわけにはいかない。
 そこで、いい布はないかと探し回っていたんですよ。
 それが、今日、あなたのお店で、極上の布を買えた。
 これで、私は、自信を得ました。正直、彼を相手に必死なんですよ。
 お礼を言います。どうもありがとう。」
そう言って、倖造は、鈴木と20反の布を持って去って行った。
有香は、日本のトップにいながら、何て腰の低い人だろうと、感激した。

それにしても、700万円。
有香は、修に見せにお金を持って飛んで行った。
修は、にこにこして700万を見た。
「いい人に買ってもらったね。あの人は、布を無駄にしないよ。」
修の言葉に、有香は、幸せを感じた。

今年、32歳になる佐伯京介は、
本木倖造が、ある小さな布の店で、ごっそりと布を買ったという情報を得た。
「え?どこよ、どこよ、そのお店ってーのは。
 花ちゃん、すぐに調べてくんない。」
花ちゃんと呼ばれた女性は、「はい。」と言って、すぐに部屋を出た。

佐伯京介は、本木倖造と違って、奇抜な格好をしていた。
髪はジェルで固め、鶏のトサカのようにしていた。
そして、左右色違いの面白い服装をしていた。

倖造が来た翌日の7時に、佐伯京介は、花ちゃんを連れて、
有香の店にやってきた。
入るなり佐伯京介は、有香を見た。
「お。花ちゃん、どうよ、彼女のセンス。」
「はい。素晴らしいです。」
花ちゃんはにっこりと言った。
花ちゃんは、黒のズボンに白のYシャツ。黒のベスト。
髪をショートにして、まるで、バーテンダーのような服装だった。
京介は、店をぐるっと見回して、作業テーブルに座った。
「おっと、いいの、ここ座って?」
「そこの丸椅子にお座りください。」有香は言った。
京介は、素直に丸椅子に座った。
「あ、俺は、佐伯京介って言う洋服のデザイナー。
 こちらは、奥野花ちゃん。あなたは?」
「白金有香です。どうぞよろしく。」

「こんな店があったのか。参ったなあ。
 有香ちゃん、聞いてくれる?俺ね、優秀な服装デザイナーだけど、
 日本に勝てない人間が2人いる。
 一人は、高杉修っての。
 高杉は、美容師なのよ。
 美容師なら、髪切ってなんぼじゃない。
 ときに、メイクもするだろうさ。
 だけど、高杉は、洋服もやるし、帽子、靴まで作る。
 また、その洋服が、いいんだ。
 俺が、一日かかって作る洋服を、ヤツは、5分で作る。
 で、俺のよりはるかにいい。
 どう思う?有香ちゃん。不公平だろう。
だが、俺は、高杉に負けるのは、しかたないとしてる。
 あいつは、人間じゃないと思ってるから。
 妖怪かもののけだね。争わないのが正解。

 だが、もう一人、本木倖造ってのがいる。
 もうじき、じいさんだけどね。
 このじいさんが、また、にくい服を作るんだ。
大人しい服だけど、品があってお洒落なのよ。
俺のは、そんな品がないからさ、奇抜なのやって、ごまかしてる。
こういう悪あがき、ホントはカッコ悪いんだよね。
で、有香ちゃん、聞いてくれる。
俺、この本木じいさんと、コラボだよ。
『2人ファッションショー』ってのやるんだとよ。
あの本木倖造とだよ。
これ、デザイナーとして地獄だろう。
もう、毎日胃が痛くてたまらない。
有香ちゃん、俺、どうすりゃあいいと思う?
花ちゃんには、百ぺん聞いてもらってるから、
悪いけど、有香ちゃんに聞くんだけどさ。」

有香は、なんだか京介が、おかしくてたまらなかった。
憎めない人だと思った。

有香は言った。
「でも、本木倖造さんは、おっしゃってました。
 佐伯京介さんは、変な人間だが、腕は本物だと。
 その内、世界に羽ばたく人だと。
 佐伯さん相手に、自分は必死なんだと。
 そうおっしゃってました。」

それを、聞いて、京介は、目を輝かせた。
「ゆ、有香ちゃん。ほんとか?
 あのじいさんが言ったのか。
 俺の腕は本物だって。
 俺は、世界に羽ばたくだろうって。
 俺を相手に、必死だって。」
「はい。おっしゃいました。」
「おい、おい、おい、おい。花ちゃん、これどう思う。」
と京介は、花ちゃんを見た。
花ちゃんは、にっこりして言った。
「相手として不足はない、ということだと思います。」

「そうかい、そうかい。有香ちゃん、じいさんは、いくら買った?」
「700万円です。」
「そうか。花ちゃん、いくら持って来た?」
「900万円です。」と花ちゃん。
「よし。まず、布では負けられねえ。900万円買うぞ。」
京介は、そういうと、花ちゃんと二人で布選びに入った。
有香は、真剣に布を見る京介の横顔を見た。
その目は、京介のお茶らけた目ではなかった。
そして、選ぶ布を見た。
『ああ、また一人、本当に欲しいと思っている人が買ってくれる。』
有香の胸は、喜びにあふれた。

つづく

■次回予告■

倖造と佐伯は、同じ壁に突き当たります。
そして、その壁を突破する糸口を、二人で見つけます。



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ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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