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星野ヶ丘野球部②「霞台高校との練習試合」

<第2話>です。昨日遅い時間に<第1話>を投稿しました。
そちらを先に読んでくださると、幸いです。
今日、たまたま時間がありましたので、長いのを書いてしまいました。
よい切れ目がなくて、一挙掲載します。読んでくださるとうれしいです。

==============================

5月の中旬である。
同じ県の霞台という県立高校から電話が入った。
洋子が出た。
霞台は、いつも地区予選1回戦で敗退する学校だ。
2軍でもいい。試合がしたい。
試合の後、レギュラーの練習を見学したいとのことだった。

洋子は、監督にそのことを伝えた。
「じゃあ、どんな風に迎えたいか、部員達に相談してみよう。」
吉川は、言った。(吉川も前の吉川ではなかった。)

その日の練習が終わったとき、吉川は、部員を集め、
霞台高校のことを話した。
主将でピッチャーの小林がまず言った。
「俺、どんなに弱い相手でも、最大の礼を尽くすって誓いました。
 レギュラーの練習を見てもらうよりも、
 レギュラーがお相手をして、試合をする方がずっといいと思います。
 手抜きなんかしないで、全力でがんばります。」

「俺も、それがいいと思います。
 コールドゲームになったら、9回までできないから、
 公式戦じゃないんだし、回に5点入ったら、チェンジにするとか、
 そんなのもいいと思います。」
と、副主将のチャッチャー川村が言った。
みんながうなずいた。
「試合の後、合同のミーティングをして、
 気がついたことを、交流するといいと思います。」
4番バッターの山崎が言った。

「俺、駅からこの学校の道わかりにくいので、
 時間になったら、駅まで行って、案内します。」
小林が言った。
「1年でもいいんじゃね。」と川村が言った。
「いや、主将の俺が行った方が、丁寧だと思う。」と小林。
「じゃあ、霞台の人達が来たら、俺たち校門のところで、
 きちんと並んで、出迎えると、もっと感じがいいと思います。」
と、川村。

監督は、にこにこして聞いていた。
「お前たちは、俺より、心の成長がずっと早いな。それで行こう。」
洋子もにっこりと聞いていた。

洋子は、霞台と試合の日を決め、レギュラーが試合をすると言った。
「本当ですか!それは、うれしいです。」と霞台の監督は、弾んだ声で言った。
「それから、回に5点入ったら、チェンジにすることにしたい。」
と洋子は言った。
霞台の監督大木は、星野ヶ丘の思いやりを察して感激した。
「はい。ありがとうございます。」
と監督は言った。

練習試合当日。
祝日であった。
午後1時。

電車の中、50歳ほどの大木監督と、
20人の野球部員がいた。
部員達は、心に1つ心配があり、いま一つ顔が晴れなかった。
相手は、甲子園準優勝の学校だ。
自分たちが馬鹿にされはしないかということだった。

みな小柄で、170cmに届かない部員がほとんどだった。
その中に、一人背が185cmほどあり、
がっちりした選手がいた。
高山雄介、2年生、ピッチャーだ。
「高山。今日はレギュラーとだ。お前の力を試せ。」大木は言った。
「はい。うれしいです。」高山は言った。

大木監督と皆は、駅に着き、改札を出た。
そこに、主将小林がいた。小林は、帽子をとって、
「霞台の皆さんでしょうか。星野ヶ丘主将の小林です。
 学校までの道がややこしいので、ご案内に来ました。」
と言った。
大木監督は、驚いた。
甲子園準優勝校の主将が、わざわざ駅で待っていてくれるなど、
思ってもみなかった。

「それは、それは、感激です。」
監督はそう言って、部員達に言った。
「おーい、星野ヶ丘さんの主将が、わざわざ道案内に来てくれているぞ。」
部員達の顔が、ぱあっと明るくなった。
「ありがとうございます!」
とみんなは、にこにこと頭を下げた。

道すがら、大木は聞いた。
「これは、監督のお考えですか。」
「自分が来たことでしょうか?」
「そうです。」
「それは、俺たち部員で話し合いました。
 監督は、まず、俺たちに考えさせてくれます。」
「じゃあ、今日レギュラーの皆さんが試合をしてくださることもですか。」
「はい。レギュラーの練習を見学されるより、
 試合をする方が、お互いにずっといいと思いました。」
(「お互いに」と言ってくれている・・。)
「そうですか。」と大木は、心が温まる思いだった。

そして、霞台のみんなは、2度感激をした。
学校についてみると、星野ヶ丘の部員全員が、
正門のところにきちんと並んで、
「星野ヶ丘の野球部です。
 よろしくお願いします。」と言って、帽子を取り礼をした。

「これは、なんと。こちらこそ、よろしくお願いします。」と監督が言い、
部員も声を弾ませて、挨拶をした。
霞台の部員達の、星野ヶ丘に馬鹿にされるかもしれないという心配は、
このとき、いっぺんに飛んでしまった。

*  

会場校の星野ヶ丘が、1塁側。霞台が3塁側だった。
スタメンが向かい合って並び、ルールの説明が終わった。

星野ヶ丘からの攻撃だった。
霞台のピッチャーは、高山。小林とほぼ同じ体格だった。
キャッチャーは、小柄でぽっちゃりした木村という選手だった。

星野ヶ丘の1番の小峰が入り、高山の投球になった。
ズバーンといいボールが入り、小峰は見送った。
次も、直球で、小峰は見送った。
球威とコントロールがいい。それだけで、行っている。
そう小峰は思った。
小峰は、三振に取られた。

その後、4回まで、星野ヶ丘は5点に抑えられていた。
霞台は、すべて小林に抑えられ、0点だった。
「コールドの心配なんていらなかったですね。」
とキャッチャーの川村は監督に言った。
「ああ、あのピッチャーは、いいな。」監督が言った。

「俺、キャッチャーの木村くんは、今辛い思いをしていると思います。
 キャッチャーが何でも捕れれば、ピッチャーの高山君は、
 もっと投げられると、木村君は思っている気がします。」
川村が言った。
「俺もそう思う。キャッチャーの捕れないボールは投げられないからな。」
と吉川。

二人が、そう言っていた4回裏、キャッチャーの木村が、
ボールを捕り損ね、負傷した。
指にボールがあたり、保健室に行った。
しばらくのキャッチは、無理のようだった。
霞台の監督は困った。高山の球を捕れる控えがいない。
「監督、あたしが言ってもいいですか。
 キャッチだけで、打ちません。」洋子は言った。
「そうですね。あの高山君の力を最大限引き出してみてください。」
吉川は、洋子に言った。

吉川は、大木監督のところへ洋子と言った。
「この倉田コーチは、何でも捕れます。
 高山君の内に秘めた力を試せます。」
そう言った。
「そうですか。ありがたいです。」大木は、頭を下げた。

選手交代が告げられ、洋子は、プロテクターを着けた。
洋子は、高山にサインを教わり、言った。
「私は、180キロのボールも捕りますからね。
 変化球、何でもOK。
 思い切り投げて。」
高山は、嬉しそうに目を輝かせた。

洋子をキャッチャーに得て、いよいよ高山の本領発揮だった。
洋子は、まずは、ど真ん中。剛直球のサインを出した。
洋子はミットを構え、身を小さくして、ピッチャーに狙いやすくした。

高山が、振りかぶった。
投げた。
ズバーンと、すごい音を立てて洋子のミットに収まった。
今までの高山と違う。
バッター見送り。
両選手達が、「おおおおおお。」と声を上げた。
「今の、157キロ。」と洋子が叫んだ。
霞台のみんなは、大拍手をした。
高山は、速さを告げられて、びっくりした。
誰かが計っていてくれているのだろうか。
やる気になれる。うれしかった。

洋子から、もう一球ど真ん中のサインだった。
高山が、渾身のボールを投げた。
すごい音がした。
バッター振り遅れ。
「158!」と洋子の声。
両チーム拍手を送る。
その頃、小林は、163を記録していた。
洋子は、高山に、160を投げさせたかった。
高山のところへ行った。
「踏み込み足を、あと2cm前にして。」とアドバイスした。

「じゃあ、160、いってみようか。」
と洋子は、にこっと笑い、高山の肩をポンと叩いた。

ど真ん中、剛速球のサイン。
高山は、脚を振り上げた。
2cm気持ち遠くへ足を出し、腕を鞭のようにして投げた。
「いった!」手応えがあった。
ズバーン!
バッター三振。
「160!」と洋子は立って、みんなに言った。
「うおおおおおおおお。」とチームメイトが、やってきた。
「高山。こんなにすごいやつだったのか!」
「すげーよ。星野ヶ丘を三振だ。」

星野ヶ丘のベンチも盛り上がっていた。
「チクショウ、2年で160か。負けたな。」
と小林がにこにこと言った。
「監督、霞台のキャッチャーの木村君を、土日だけでもこっちに呼んで、
 倉田コーチに見てもらったらどうでしょう。」
と川村は言った。
「どうせ呼ぶなら、バッテリーで呼ぶのがよくないか。」と監督。
「そりゃいいすね。俺もうれしいです。」と小林が言った。

試合は、終わった。
高山は、星野ヶ丘を7点に抑えた。
キャッチャーが洋子に代わってからは、2点に抑えている。
大殊勲と言えた。
小林は、さすがに霞台を0点に抑えた。

みんなで、円座になって、交流会となった。
負傷した木村も来た。
キャッチャーの川村が、真っ先に手を挙げた。
「俺、霞台さんのキャッチャーの木村君の気持ちわかるんです。
 俺、ピッチャーの小林の球、
 全部受けられなくて、ものすごく辛かったときがありました。
 だから、木村君は、今、多分悩んでいるんじゃないかと思うんです。
 高山君の球に十分に応えられないことをです。
 木村君、間違っていたらごめん。」

木村は、川村の顔を見ながら、
「川村さんのおっしゃる通りです。
 俺が、もっと捕れたら、高山にもっと投げさせてあげられるのにと、
 悩まない日はないです。」

「そこで、内には、倉田コーチっていう、ウルトラコーチがいるので、
 土日だけでも、内に来て、コーチを受けてみてはどうかと思うんです。」
川村が続けた。

高山が手を挙げた。
「倉田コーチは、奇跡の人です。俺、一言アドバイスもらったんです。
 そしたら、一気に160のボールを投げられました。」

吉川が洋子に言った。
「木村君ですが、何回コーチを受ければ、
 高山君のボールを全部受けられるようになりますか。」

洋子は言った。
「木村君は、ボールを恐がっているだけなんですね。
 だから、土日合計4時間。それを2週、計8時間でOKかなと思います。」

「ほんとですか!」と木村が立ち上がって言った。
「大丈夫です。技能的なことは、できていると見ましたから。」
と洋子。
杉山が言った。
「俺も、ボールが恐くて、何もできなかったんですが、
 倉田コーチに鍛えてもらって、2時間で克服しました。」
「コーチは、170キロのボールを100球投げてくれて、
 その速さに慣れたら、150のボールが、平気になりました。」
と新田。
「170のボールですか!」と監督の大木は、驚いて言った。
「はは、倉田コーチは、180のボールを見せてくれました。」
と吉川が笑った。
「180ですか!」と霞台の全員が言った。

高山「今日、ボールの速さを言ってくださったのは、どうやってですか。」
吉川「倉田コーチは、見ればわかる人なんです。」
洋子「えー、高山君の今日の160は、正確には、160.35だったんですよ。」
洋子の言葉に、霞台みんながびっくりした。

「じゃあ、監督。木村を土日行かせてもいいのでしょうか。」と大木。
「高山君と二人、バッテリーで来てくれた方が、いいです。
 高山君が来てくれたら、小林も喜ぶでしょう。」と吉川。

「なんとありがたい。レギュラーが試合をしてくださり、
駅で主将の小林君がわざわざ出迎えてくれ、そして、
 正門での歓迎。さらには、他校である私達選手のことを、
 ご自分の学校の選手のように、考えてくださる。
 こちらのような温かな学校は初めてです。
 涙が出ます。」
大木はそういって、目頭を抑えた。

吉川の家族がお菓子と飲み物を運んできて、みんなで食べ、
少し、歓談をし、霞台の一向は、何度も礼をしながら帰って行った。

校門まで来て見送った星野ヶ丘の部員は、
いい練習試合ができたことに、満足していた。


■次回予告■

洋子のコーチにより、木村は、スピードボールを克服します。
喜び合う、高山と木村。
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緑ヶ丘高校野球部<第2部>「生まれ変わった野球部」

しばらく、物語を書いていませんでした。
久しぶりに書こうと思ったら、物語が浮かびません。
そこで、前に書きました「スーパー洋子・緑ヶ丘高校野球部」
の続きを書きましたので、それを投稿します。

この<第2部>は、主に野球部を描いていますので、
「スーパー洋子」というタイトルは、つけませんでした。
洋子は、わき役として出てきます。
物語は、ドラマチックではなく、淡々としています。
読んでくださるとうれしいです。


<これまでのあらすじ>

甲子園準優勝の緑ヶ丘高校の野球部は、
深夜に及ぶ練習のため、授業中の居眠りが許されてきました。
そこへ、赴任してきた洋子は、野球部員の態度を許せず、
野球部に勝負に挑みます。
まさかの敗北をした野球部は、解散のはずでしたが、深く反省し、
洋子に許されます。洋子は、許した上に、野球部のコーチを引き受けます。
監督の吉川を初め、部員達は、生まれ変わります。

===========================

<第2部>星野ヶ丘野球部①「見違えた野球部」


明くる日、1時間目の授業が終わった職員室は、
話題が沸騰していた。
「驚きましたわ。あの野球部の子達が、
 姿勢を正し、寝るどころか、真剣に授業を聞いてました。」
「私のクラスもそうです。もう、模範生なんてもんじゃないですよ。」
「彼らの姿勢がいいので、後ろの女子が黒板が見えないなんて言うほどです。」
「もう、学校が変わったと言いたいところです。」

安藤豊は、訳を知っていた。
昨日、野球部と洋子の3対3をこっそり見ていたのだ。
「あの子達は、変わりました。
 三日坊主ではなく、ずっとちゃんとしていると思いますよ。」と安藤が言った。

「これで、居眠り反対派、
賛成派が対立する意味がなくなりました。
 職員室も、仲良くなれますね。」
とある先生が言った。
「そうですね。」
と先生たちは、うれしそうだった。

昼休みになった。
お弁当を食べている洋子に、安藤が耳打ちした。
「昨日、拝見しました。
 倉田先生は、もう奇跡ですね。」
「あらあら、私の荒っぽい言葉もお聞きになったんですか?」
「『こらー、小林、人を小馬鹿にするのも、いい加減にしろ!』ですか?」
「わあ、恥ずかしい。あたし、おしとやかなんですけどね。」
洋子は、おほほと笑った。
「実は、私も野球好きでして、お手伝いさせていただきます。裏方ですが。
 メカも大工も得意なので、こんなの欲しいと言われれば、すぐ作ります。
 私の研究室は、国語のくせして修理工場になってますから。」
安藤は言った。
「わあ、すごい。監督に言ってもいいですか。」
「どうぞ、どうぞ。」
どこか頼もしそうな安藤に、洋子はうきうきとした。

洋子は安藤のことを吉川に話した。
たった1台のピッチングマシンの調子が悪く、ずっと使えないで来た。
それを、安藤に言うと、たった1日で直してくれた。
吉川は、安藤に何度も頭を下げた。
それから、安藤は、よく野球の練習を見に来るようになった。

洋子がコーチをする初日が来た。
部員を前に、洋子は言った。
「私は、あくまでコーチです。
 監督の指示でしか動きません。
 ですから、みなさんが、私にコーチを頼むときは、
 必ず、監督に、これこれこういうことで、コーチを受けたいと、
 頼んでください。そして、監督のOKを得てから、来てください。
 以上です。」
吉川は、洋子の言葉を、うれしく聞いた。
倉田先生は、わかっていると思った。
学校によっては、監督とコーチの対立など、珍しくないからだ。

練習が始まって早々、監督が2人の3年生を洋子のところへ連れて来た。
二人とも、165cmほどに小柄だった。
一人は、新田幸一、もう一人は、杉山治夫といった。
あのとき、「先生にあやまりに行く。」と言った二人だった。

「倉田先生、この二人は、野球特待生ではないんです。
 誰よりも真面目にやっているのに、今まで、代打にも出ていません。
 次の夏の甲子園で、私は、是非、球場の土を踏ませてやりたいんです。
 スタメンは難しくても、代打でバントで構いません。
 私は、お情けで出したりは決してしません。
 あくまで、実力で、
 そこまで、行くように、どうか鍛えてやってくれませんか。」
洋子は、吉川が、なかなか人情派だなと思いうれしかった。
「任してください。」と洋子は言った。

洋子は、2人にピッチングの練習コーナーに連れて行った。
三方網が張られ、後ろはクッションがある。
洋子は、まず、新田をバッターボックスに立たせた。
そこで、わかった。新田は左利きだ。
聞けば、杉山も左利きだ。
バントには有利だ。

新田に、バットを構えさせた。
「私、170の球を投げるわよ。
 怖いけど、逃げない練習するの。いい?」
「はい。」と新田は言った。
洋子は投げた。
「わあ~。」と言って、新田は身を引いてしまった。
10球投げて、杉山と代わった。
杉山も、同じ反応をした。

これを、くり返し、50球目のとき、二人は逃げなくなった。
バッターは杉山だった。
「じゃあ、150の遅い球いくわよ。
 球に、食いついて見るのよ。」
洋子は、150を投げた。
杉山はしっかり見た。
「あ、見えました。完全に見えました!恐くないです。」
「じゃあ、新田君立って、行くわよ。」
150のボール。
「ああ、俺も見えました。ぜんぜん怖くありません。」
「じゃあ、バント行ってみようか。ボールの上の方に当てるのよ。
 バットを前に出しちゃダメ。あくまで、ボールのスピードを殺すの。」
150のボール。
新田は、見事当てた。
「やったー!」と新田は、大喜びした。
次、杉山。
その杉山も、見事バットに当てた。
もともと二人は、バント自体は、上手なのだった。

その後、洋子は、10球170を見ては、150をバント3回。
このサイクルを、10本やった。
洋子は、2人を呼んだ。
「150の球なんて、そう来ないからね。
 それが、恐くなくなれば、後は変化球のみ。
 変化球は、120~130だから、球の速さは、もっと怖くない。
 しっかり目で追えば、バットに当てられるわ。
監督に自慢したいでしょ。お呼びして。」

監督が来た。
「変化球は、まだですけど、150の直球なら、一応バットに当てます。」
「え、今日一日で、ほんとですか。」と監督。
「じゃあ、新田君から。」
洋子は150の球を投げた。
杉山は、身を乗り出すように、しっかりみて、バットに当てた。
3回やって、3回とも、当てた。
そして、杉山もやった。
杉山もパーフェクトに当てた。

吉川は、満面の笑みをみせた。
「新田と杉山、やったな。あんなにボールを恐がっていたのに。」
「倉田コーチの170キロのボール、100球くらい見せられたんです。
 それに比べたら、150は、恐くなくなりました。」と杉山が行った。
「そうか、たった1日で、大したもんだ。」
吉川は、2人に握手をした。
「監督、次は変化球に慣れさせ、その次は、外でやってみます。」
洋子はそう言った。
「これは、倉田先生じゃなきゃ、できないコーチですね。
 170を100本も投げてくださるなんて。」
吉川は、そう言って、頭を下げて行った。

杉山と新田は、一般の練習に戻った。

次に、エースピッチャーの小林と、キャッチャーの川村が来た。
小林が言った。
「倉田コーチ。
俺、160キロ台を投げられるようになるでしょうか。」
「なるわよ。」と洋子があっさりいったので、小林の目は輝いた。
「あのさ、踏み込みの脚を、もう5cm前に踏み込む。
 で、投げる腕の肘を、あと3cm前に出して投げることができたら、
 160台いくわよ。
 でもさ、そうするためには、筋力アップする必要がある。
 ちょっと、投げる格好で、肘が一番前に出たときの形作ってみて。」

小林は、作った。
そこに洋子は、小林の背中に、負んぶのように、かき付いた。
「ほら、前脚の筋肉、きついじゃない。
 後ろ足の上下の筋肉、きついでしょ。
 こうやって、軽い人にかき付いてもらって、
 このまま、10cm上下する筋トレを1日20回すること。
 40キロの砂袋でもいい。やり過ぎちゃだめよ。
 それしながら、脚を踏み出し、肘を出す投球練習すれば、
 10日後に、161、2行くわよ。」
「え?10日で?」
「うん、川村君に、脚と肘の位置見てもらってね。」

二人は、喜んで、飛んで行った。


■次回予告■

甲子園準優勝の星野ヶ丘高校に、いつも地区予選1回戦敗退の学校から
試合の申し込みが来ます。星野ヶ丘の野球部はどうするでしょうか?

燃やせなかった人形

燃やせなかった人形


母の葬儀が、一昨日行われました。
私は、火葬の前に、お棺に入れるものとして、
母が、いつも枕元に置いていた縫いぐるみの人形を持っていきました。
それから、もう一つ、「赤毛のアン」の人形を持って行きました。
この人形は、中学生のとき、私が「赤毛のアン」の小説を読み、
感銘を受けて作った人形です。

この人形を私は、大事にしていました。
しかし、いつの間にか、この人形にふり向かなくなり、
雛祭りのときだけ飾る人形の箱の中にありました。

それから、何年も経って、母は、この人形を、
本棚の大切なところに飾ってくれていました。
私は、うれしく思い、
「まだ、預かってくれていたの。」と聞くと、母は、
「この人形は、Jちゃんなんだよ。」と言いました。

そして、それから、何十年も経って、
痴呆になった母を、介護に来ました。
そのとき、枕元に、2つの人形がありました。
一つは、牛の抜いぐるみ。
もう一つは、私の「赤毛のアン」の人形でした。

アンの人形は、パンティストッキングに綿を詰めて作ったものです。
50年近くの年月を経て、色がすっかり日焼けしていました。
母は、この人形を私だと思って、枕元に置いてくれていたのでしょう。

葬儀の中で、いよいよ火葬の前のときが来ました。
みんな思い出の品をお棺に入れていました。
私は、牛の縫いぐるみと、アンの人形を置きました。
何十年と母が大事にしてくれた人形。
それを、母の道連れにと思ったのです。
二つを、母の顔の左右に置きました。

しかし、いざお棺に蓋をするとき、
人形を私と見て大事にしてくれた母の思いに、
私は、涙が溢れそうになり、
「待ってください。」
と言って、アンの人形をお棺から取り出しました。
燃やさないことにしたのです。
私にとっても愛着の深い人形です。
私は、燃やせませんでした。

妻が、
「どうして、心変わりをしたの?」
と聞きました。
「燃やせなかったんだ。母さんの形見だと思うことにする。」
私は、そう言いました。

今、私は、まだ母のマンションにいますが、
アンの人形をそばに置いています。

きっと、私は、死ぬまで持っています。
私の、最期のとき、一緒に燃やしてくれるよう、
家族に、言っておきたいと思います。

ありがとうございました

この度の母の逝去に関しまして、たくさんのコメントや、
メッセージをいただきました。
ありがとうございました。
心より、お礼申し上げます。

本来ならお一人お一人にご返事を書くべきところですが、
ここに、代表して、ご感謝申し上げます。

母の介護の数日を通じて、そして、母が逝ってしまい
自分なりに、分かったことがあります。
それは、私の母の思い出は、ほとんど私の子供の頃のものであることです。
そして、年老いた母と過ごした、数日のこと、この2つなのです。

その間に、長く長く、母を顧みなかった自分がいたことに、
気が付きました。

この介護のわずかな時間ですが、母はよく言いました。
「私は、Jちゃんがいないと生きていけないね。」

3食の食事を出すとき。
トイレに行くとき。

私は、そう言われると、
「ぼくは、お母さんがいないと生まれて来られなかったよ。
 お母さんが、真夜中、ぼくを負ぶって、
 お医者さんに連れて行ってくれなければ、ぼくは、生きていないよ。」

どちらかがいないと、生きていけないとき、
双方にたくさんの思い出ができるのかなと、思いました。

子供のときの母の思い出と、
老いた母の世話をする思い出の、
両方の思い出を持てた私は、幸せです。

母の私への最後の言葉は、
うたた寝をしている母に、私が毛布を掛けたとき、
母が目を覚まし、うれしそうに言った
「ありがとう。」でした。

母が他界しました

母が、他界しました。

母の各種の数値がよくなり、
母とまた暮らせる日々を楽しみにしていました。

それが、今日の夜中の3時、病院から危篤の連絡が入りました。
姉兄に連絡をして、病院へ駆けつけました。
そのとき、母のベッドは別の場所に移され、
先生と3人の看護士さんがいました。

先生が最後の確認をし、
「ご臨終です。」
と、看護士さんと一緒に頭を下げられました。

忙しい一日でした。
次に葬儀の手配に駆けずり周りました。
悲しむ間もなく、帰宅したのは、夜の7時でした。

前に一度書きましたが、
母と私で暮らせた10日余りは、
神様がくださった10日だったと思います。
私は、この10日を、10年にも感じています。

10日間の「看護日誌」は、私には、涙なしでは読めず、
見ないようにしています。

今は、思い出すと悲しくなるばかりで、
心が、シャットアウトしています。

母は、今、天国の父と寄り添っていることでしょう。

「お前、やっと来たか。5年も待ったぞ。」
「お待たせしました。これから、二人で第2の人生を始めましょう。」

天国の二人は、若き青春のときの姿をしています。
二人は、手を取り合って、笑いながら、
雲の上を遠ざかって行きます。

私には、そう見えるのです。



介護をする私を、応援してくださり、ありがとうございました。 
もう、介護は終わりました。

<介護日誌> 第10日 「母の頭の中の消しゴム」

<看護日誌> 第10日 「母の頭の中の消しゴム」


母の病院の面会時間は、平日午後3時から8時までです。
私は、3時に来て、8時までいます。
ひたすら寝ている母のそばで、何をするともなしに、
じっと母を見ています。
ときどき、私も居眠りをします。

まだ、眠っているだけの母の横で、
私は、何のために、そばにいるのだろうと、
ときどき考えます。

数年前、私は、韓国映画の「私の頭の中の消しゴム」というのを見ました。
若年性アルツハイマーで、記憶を少しずつ失っていく女性のお話でした。
初めは、うっかり忘れたということがあり、
それが、頻繁になり、これは変だということになり、病院へいきます。
あまり言っては、ネタバレですね。

今日は、その映画を何度も思い出していました。
その女性=妻を深く愛している夫は、
妻がどうなろうと、いつもそばにいました。
言葉が何も通じなくなってもです。(ネタバレ、失礼。)

私も、そうしようと思っています。
母の頭の中の消しゴムは、どんどん母の記憶を消しています。
その内、私が誰だか、認識しなくなると思います。
私がそばにいても、何の意味もないかも知れません。

私は、私の家族を置いて、単身ここにいます。
それが、いつまで許されるかわかりません。

完全看護の私立の施設がないことはないのです。
でも、そこは、1日5000円ほどかかるそうです。
とても、まかなえません。

明日は、私の呼ぶ声に、目を向けてくれないだろうか。
その期待一つで、私は、そばにいるのだと思います。

<介護日誌> 第9日 「3人を呼んだ母」

<介護日誌> 第9日 「3人を呼んだ母」


今日は、面会時間と共に病院へ行き、
眠っている母の横の椅子で、私も眠っていました。
眠っている同士、面会でもなんでもなく、
ただ、「そばにいた」というだけでした。

しかし、面会時間終了の30分前に、
兄とその娘Tちゃんが、来てくれました。

兄が、母の足の指を、いろいろに広げたり、
足のふくらはぎを、ブルブルと刺激を与えました。
そして、母の頬をひっぱったり、
唇をすぼめたり、いろいろにしました。
すると、不思議なことに、母は、目を開けました。
「母さん、俺がわかるかい?」と兄が言うと、
母は、兄の名を呼びました。
私の名を呼びました。
孫である私の姪の名も呼びました。
うれしかったです。

「もういいよ。はい、寝てね。」と兄が母の目蓋をなでると、
母は、再び眠りにつきました。

不思議でした。
「兄さん、どんなマジックを使ったの。」私は聞きました。
「ほら、長く寝てると、脳からの命令だけになるだろ?
 だから、手足や顔の筋肉から脳へ命令を出す必要があるんだ。
 すると、しゃべれたりする。」
と兄は言いました。
私は、深く納得しました。
明日から、ただそばにいるだけでなく、
やることが出来ました。

病院を出て、兄とTちゃんと私と3人で呑みました。
Tちゃんは、昔から不思議な子で、
私達が思ってもみないことをときどき言います。
そのTちゃんが、言いました。
「おばあちゃんは、病に倒れて、子供3人を呼んだんだよ。」

「そうか、おばあちゃんは、ぼくを遠くから呼んで、
 今、兄弟3人が集まってる。
 Tちゃん、すごいこと言うなあ。その通りだよ。」と私。
うふっとTちゃんは、笑っていました。

今夜は、へべれけに飲んで、マンションに帰りました。
家に帰って、食器を洗う気もしませんでした。
真面目に家事をやっていたのは、母がいてこそでした。
ひとりになると、ただのやもめ暮らしです。
そうならないように、掃除くらいはしようと思います。

<介護日誌> 第8日 「母のそばで」

<介護日誌> 第8日「母のそばで」


母が、入院して2日目。
私は、介護をしていませんので、「介護日誌」と呼んでよいかどうかわかりません。

今日は、朝から晩まで、母のそばにいました。
母は、意識がないというより、眠っています。
荒い寝息を立てながら、ずっと眠っています。

母の血液検査の各数値から、
何かの感染症にかかり、それと闘っているようです。
ただ、その感染症が何だかわからないそうです。
白血球や血糖値などが、通常の何十倍も高く、
インシュリンが投与されていました。

私は、母の寝顔を見ながら、少しも退屈とか、飽きるなどとは、
思いませんでした。
今の母の姿を1秒一刻でも、自分の心に刻んでおこうと思っていました。

母が、痴呆にありながら、この1週間、母と会話を楽しめたことが、
奇跡のように思いました。
あれは、神様がくださった時間であるようにも思えました。
あの7日間は、7年にも相当する濃密な時間でした。

母が、もし回復しても、もうあの7日間のようには、なれないと思います。
それでも、私は、状況が許せば、そばにいたいと思います。

<介護日誌> 第7日 「母が、入院しました」

<介護日誌> 第7日 「母が、入院しました」


母が、入院しました。
119番を呼びました。
救急隊の人が大勢来て、たくさん質問されました。
私は、動揺していたので、
答えるのがやっとでした。

母は、タンカーに乗せられ、玄関を通り、
雪の坂道を運ばれて、救急車に乗せられました。
その横に私が乗りました。
雪の道路を、救急車のタイヤの鎖のチェーンが、カリカリと鳴っていました。
母は、眠ったままでした。

病院に着いて、中に運ばれたとき、私はほっとしました。
遅れて、兄が駆けつけてきました。

母は、昨夜12時ごろ、急に、体を硬直させ痙攣を始めました。
そして、苦しそうな息をしていました。
母の痙攣は、10分ほどで止み、眠りに戻りました。
私は、母のベッドのそばのソファーに寝ました。

朝、母は全く生気がなく、私の言葉に何も反応しませんでした。

兄と精神科医に相談して、119番を呼ぶことになりました。
明日から、私は、病院へ通います。
できるだけ、母のそばにいたいと思います。

<介護日誌> 第6日 「3つの人形」

<介護日誌> 第6日「3つの人形」


兄は、医学関係に詳しい人です。
母の要介護認定は、「1」でした。
1というのは、介護の必要が、一番要らないというランクです。
1相当の介護は、週に2回、ヘルパーさんが、お風呂に入れてくれることです。
1では、特別養護施設に入れる可能性は、極めて低くなります。

「俺は、母さんは、最低3だと見てる。
 それが、一見愛想がいいし、弁も立つし、
 余ほどの調査員でない限り、母さんの重篤さは、見抜いてくれない。」
兄は、そう言って、要介護の認定の見直しを要求してきました。
それが、やっと実現して、10日程前、調査員が来ました。

28歳くらいの、女性のぱりっとした調査員がやってきました。
黒のスーツ。下はスラックスでした。
髪を後ろで1本に束ねた人でした。

母に付き添って、兄弟みんなが揃いました。
(前回は、姉夫妻だけが付き添ったのです。)
調査員は、質問項目に沿って、パリパリと質問していきます。

調査員は、各質問について、3段階の評価をするそうです。
「できる」1点。「ときどきできる」2点、「できない」3点。
しかし、人間のすることです。
2点にするか、3点にするか、迷うことがたくさんあります。
そこで、一言、家族が、情報提供をすることが、大事なんだと、
兄は言います。

ある質問で、調査員が、言いました。
「その人の顔を見て、お話ができますか?」
「はい。」と母は言って、彼女の顔を見ました。
調査員は、質問票のその項目のどれかに〇を付けたようでした。
そこで、兄が、すかさず言いました。
「顔は見ますが、視野が極めて狭いと思われます。
 詳しく調べてくださいませんか。」

調査員は、そうですかと言って、右耳のところに赤鉛筆を立てました。
「今、何色の鉛筆が見えますか?」
母は、素直なので、調査員の目だけを見ていました。
「わかりません。」と母はいいました。

「もっと詳しく調べてください。」と兄が言いました。
すると、調査員は、ご自分の右目のところに赤鉛筆を立てました。
「何色の鉛筆が見えますか?」
「わかりません。」と母。
調査員は、鉛筆を左目の前に移しました。
同じ質問。
「赤鉛筆です。」母は、やっと答えました。そして、
「赤鉛筆のとなりで、たくさんの線香花火がパチパチ燃えています。」
と、言いました。
「私の顔がどのように見えていますか。」
「私の右目は、あなたの半分のお顔を見ています。
 私の左目は、線香花火が見えます。
 あなたの、お顔の半分は、線香花火です。」母は言いました。

そのとき、調査員は、しばらく考え、いくつかの項目に付けた○に斜線を引き、
〇を書き直しました。

それからも、質問は、続きましたが、
母は、突然、質問と何の脈絡もなく、言いました。
「私の右のポケットあたりには、3つの人形がいます。」
「それは、どんな人形ですか?」
調査員は、現行の質問を棚に上げ、聞きました。
「神様です。私をいつも守ってくれています。」
「いつもいて、見えるのですか。」
「はい、いつもいてくれて、はっきりと見えます。」

母は、その後も質問には答えていましたが、
再び、脈絡もなく、3つの人形の話をしました。
こうして、4回も3つの人形の話をしました。

調査員は、すでに付けてあった○に大幅に斜線を入れ、書き直しました。

面談は終わり、調査員は、帰って行きました。

「今日で、やっと母さんの本当の姿を診てもらえたな。」と兄が言いました。
「幻覚があるって、重篤なの。」
「ああ、極めて重大。
そして、母さんは、あるものに囚われ始めるとコミュニケーションが成り立たなくなる。
3つの人形に囚われて、その後は、質問に答えられなかった。
これを、家族が、調査員さんに言ったんじゃだめなんだ。
調査員さんの目の前で、母さんがその様子を見せないとダメなんだ。
今日は、やっとそれを分かってもらえた気がする。」

「兄さん、よく『視野』のこと言ったね。『するどい!』と思ったよ。」
「ああ、あれな。」
と、兄はにこりとして、あるプリントを見せてくれました。
「兄さん!これ、今日の質問票じゃない。」
と私は、驚きました。
兄は、その質問票の随所に、「視野」とか「囚われ」などと、
メモ書きがしてありました。

「どうして、こんなプリントを持ってるの!」と私。
「あれ?知らなかったのか?俺、認定調査員養成の講師をやってたんだぜ。
部分項目についてだけだけどな。」
「えっー?!」と一同で驚きました。



その日のことを思い出し、
夕食のときに母に聞きました。

「母さん、いつか、『3つの神様が右ポケットにいる。』って言ったの覚えてる?」
「覚えてるよ。」
「今も、いるの?」
「今は、いないよ。」
「いつ、いなくなったの?」
「Jちゃんが来てくれたときからだよ。」
私は、思わず、顔をほころばせました。

3つの人形とは、
きっと、母が産んだ3人の子供だったのだろうと思いました。

<介護日誌> 第5日 「大きな白い布」

<介護日誌> 第5日(2/13)

午後4時ごろ、うたた寝から覚めた母が言います。
「Jちゃん、私のベッドの足に、大きな白い布を掛けたいのだけど、
 作ってくれる?」
「毛布と羽毛布団だけじゃ寒いの?」と私。
「そうじゃないの。」
「何にするの?」
「その白い布の中に、必要なものをいろいろ入れておくの。」

「ティッシュボックスとか、オムツとか、ビニールとか?」
「そう、それに、お財布とか、大事な写真とか。」
「それを、自分の足元に置いて、白い布をかぶせて、
 そして、毛布と、掛布団を掛けて寝るの?」
「そう。」
「それ、寝にくくない?」
「安心する。」

「母さんは、いままで寝ていて、そんなのがいいと夢で見たんだよ。
 これから、お風呂のヘルパーさんが、来てくれるから、
 お風呂が、終わっても、やっぱり白い布が欲しいと思ったら、作ってあげる。
 お風呂の後まで、我慢して。」
「急ぐんだけど。」
「お風呂まで、我慢。」

母は、ヘルパーさんにお風呂に入れてもらって、
気持ちよさそうに、上気した顔で出てきました。
そして、お風呂の疲れで、気持ちよさそうに、うたた寝の続きをしました。

もちろん、白い大きな布のことなど、とっくに忘れていました。



夕食のとき、母が言います。
「Jちゃんは、年を取らないね。」
「かなり取っているけど。」
「子供だよ。」
「つまり、母さんは、今目の前にいるぼくが、小学生に見えてるの?」
「今は大人だって知ってるけど、やっぱり子供の姿をしてるよ。」
「そう見えてるんだ。」
「学校より家が好きな子だった。」
「うん。その通り。別に学校で嫌なことがあったわけじゃないのに。」

「だから、Jちゃんが学校へ行く後ろ姿見て、
 可哀相で、よく泣いたよ。
 Jちゃんの後ろ姿は、可哀相に見えるの。」

「母さんは、一回、学校へ行くぼくを、後ろから追いかけて来て、
 ぼくを後ろから抱きしめて、『今日は、もういい、家にいていい。』って、
 学校を休ませてくれた。母さんは、泣いてた。
 今でも、覚えてるよ。」
「そんなことが、あったかも知れないね。」
「あの頃のぼくは、女の子に見えたでしょう。」
「そうだったね。」
「平気だった?」
「平気じゃなかったよ。
 たくましくて、男らしい子供だったら、どんなにいいかって思ってた。」
「じゃあ、辛かったの?」
「辛くはなかった。Jちゃんにしかないいいものがあったから。」
「そう。そう思っていてくれたんだ。」
「いいものがない人なんていないよ。」
「ああ、そうだね。」

私は、母が、とても痴呆だとは思えず、
どこか、たのもしく母を見つめていました。

<介護日誌> 第4日 「忘れてもいいよ」

<看護日誌> 第4日 「忘れてもいいよ」


今朝、起きたときから、母が片頭痛を訴えました。
「左目の奥が痛いの。我慢できない。」
左目から、涙が出て来ていました。
可哀相にと、私は、思いながら、どうしようもありません。

「朝ごはんを食べたら治るかも知れないよ。」
と私は、母をなだめすかし、朝食を食べるように言いました。
その間、母は、目のところを手で押せて、
ほとんど食べようとしません。
食べることが、母の最大の楽しみだというのに。

私は、思案に暮れ、その内、
自分が痛み止めの薬(イヴプロフェン)を持っていることを思い出し、
これを、呑ませていいだろうかと迷いました。
しかし、母は、病院でも薬をたくさん呑んでいます。
呑み合わせで、害になるかも知れません。
そこで、病院に聞いてみることにしました。
しかし、そんな早い時間に病院は、開いていそうもありませんでした。

母は、今にも泣きそうになっています。
私は、老人や子供が泣いているのに、昔から耐えられません。
ままよと、2錠呑むべき痛み止めを、1錠だけ呑ませました。

「母さん、30分したら、効いてくるからね。」
と母を励ましました。
2分ほどして、
「もう、30分、たったかい。」
と母は、効きます。
「まだ、もう少しだけだから、我慢して。」と私。
また、2分ほどして、
「30分は、まだなの?」と母。
これを、15回ほどくり返しました。

そして、ついに30分です。
「ああ、急に楽になったよ。」と母が言いました。
「よかったね。これから、どんどん痛くなくなるよ。」
「ああ、やっと生きた心地がする。」
そう言って、母は、食べ残した朝食を食べました。
今朝は、私ががんばって作った、玉子焼きがあったのです。

10時を過ぎて、病院の先生に電話が通じました。
市販の痛み止めを呑んでもいいということでした。
これで、安心。

「Jちゃんがいないと、わたしは、生きていけないよ。」
と、母が言います。
「母さんがいないと、ぼくは、この世にいないし、
 生きてもいけなかったよ。」と私。
「Jちゃんのオムツを取り換えたことなんて、覚えていないよ。」
「忘れちゃったの?」
「ああ。」
「でも、ぼくが母さんの子だということは、わかる?」
「それは、わかるよ。」
「どうして?」
「私に、顔が似てる。」
「そうだね。」
「Jちゃんは、風邪を引くと、2週間は学校に行かなかったよ。
 私は、先生に何度も相談に行ったっけ。」
「母さん。そのことは忘れていいよ。」
二人して、また笑いました。

母は今、お薬が効いて、安らかに眠っています。

<介護日誌> 第3日 「覚えられない」

<介護日誌> 第3日目「覚えられない」

母は、午後10時に、パンツ型のオムツと、
夜用の強力な「尿取りパッド」を中に入れて、床に就きます。
それで、朝まで寝てくれると助かるのです。

それが、昨日の深夜の12時ごろ、私も寝ようと別室のベッドにいたとき、
ドンと音がしました。
私は、起きて母を見に行くと、
母は、ベッドにもたれて、両足を投げ出し、
お人形のようにしています。
真っ暗の中で。

「母さん、何してるの?」と聞きますと、
「トイレに行こうとして、ベッドから落ちてしまったの。」
と言います。
「それは、痛かったでしょう。どこか、打った?」
「足のここ。」
と母が言います。
そこで、私は、「液体ムヒ」を持って来て塗りました。
液体ムヒは、痛み止めなんかでは、全然ありませんが、
母は、何か塗ってくれたことで、安心したようです。

「トイレだけど、夜は強力なオムツをしているじゃない。
 オムツしているときは、トイレに行かなくていいんだよ。」
「そうなの?」
「そうなんだよ。」
「知らなかった。」
「じゃあ、今覚えてよ。」
「何回も言われてきた気がする。だけど、すぐ忘れるの。」
「じゃあ、今だけ覚えて。
 そして、このまま、安心して朝まで寝て。」
「わかった。オシッコしたくなっても、トイレにいかないでいいのね。」
「その通り。」
母は、やっと納得しました。

しかし、その後、床にお人形状態の、母をベッドに乗せることができません。
私は、2年間の休職以来、全く筋力を鍛えませんでしたので、
母を持ち上げようと思っても、床から、1cmも上げられません。
二人で、すったもんだした挙句、
母がうつ伏せになり、二人の全力の力を合わせて、
やっとベッドに上がることが、できました。
全部で、30分くらいかかりました。

母は、オムツの生活を初めて、2年になるのですが、
オムツは、トイレの代わりになるのものだと言うことが、
頭の中でどうしても、つながらないようです。

しかし、痴呆でなくても、私達には、「これだけは、ダメ。」
というものがありますね。
私は、今日の日付と曜日が、どうしても言えません。
そんなような、ものなのでしょうね。

介護日誌 第2日目

<介護日誌> 2日目


昨日は、半分引っ越しだったのですが、
今日は、丸々介護でした。
母は、脳梗塞をしており、全体に体が思うように行きません。
歩行は、両手で支える半円状の歩行器で歩きます。
ですから、トイレに行って、用を足し、
オムツをするのに、30分はかかります。
ベッドから、起き上がるのも一苦労で、
食事のために、テーブル椅子に座るのも、一大事です。

それを、私が助けてしまえば、2、3分で済みますが、
体の機能を維持させるために、出来るだけ、自分でさせます。
私は、それをじっと見ていて、
母が危ないときだけ、手を貸します。

しかし、母は、食欲もあり、話すことはできますので、
食事のとき、母は、幸せそうな顔をしています。
それを、見るのが、私にとっても一番幸せなときです。

母は、今言ったことを、もう忘れてしまいますが、
私は、できるだけ、昔の話をして、母の記憶を蘇らせようと、
しています。
「母さん、○○駅の中通り知ってる。」
「ああ、あったねえ。」
「あの通りに、『ヘビ屋』さんあったの覚えてる?」
「さあ、どうだっただろう。」
「母さんは、よく変な虫を乾燥させたの買ってたよ。」
「あ、思い出した。あれ、粉にして呑むんだよ。」
「ぼくは、あそこ、一番怖かったよ。」

「ぼくが、小さいとき、中耳炎で、よく夜中に泣き出したの覚えてる?」
「それは、覚えてるよ。」
「あれ、母さんが、夜中に、ぼくを負ぶって連れて行ってくれたんだよね。」
「そうそう、熊谷先生のとこだ。」
「思い出した?」
「うん。」
「ぼく、熊谷医院の背の高い看護婦さん、美人で好きだった。」
「そんなことまで、覚えているの。まだ、5つの頃でしょう。」
「5つでも、きれいな人は、好きだよ。」
「そうなの。」
「お母さんも、昔は、若かったよね。」
「誰だって、昔は、若かったでしょう。」
「そうだね。」
と二人で、笑いました。

こんな風に、介護第2日目は、平和に過ぎて行きました。

介護日誌

今、母の介護で、時間がなく、とても物語を書けそうにありません。
その間、私の介護日誌でも書こうと思います。

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<介護日誌>

今日、母が来ました。
本格的な、介護の日々が始まりました。
今日の感じですと、なかなか、物語を作る余裕などなく、
しばらくは、「介護日誌」を書いて、自分を慰めたいと思います。

痴呆の母を、今まで、姉夫妻が診てくれていました。
それが、実の子である姉が、持病であった腎臓を悪化させ、
入院をしてしまいました。
こうして、母の大変な面倒を、義兄が診てくれるということになり、
兄と私は、義兄にしばらく甘えていました。

「それは、あまりにも、義兄に申し訳ない。」と兄と語り合い、
実の子である私が、母と二人暮らしをすることになりました。
母が、今は亡き父と住んでいたマンションが、空いていました。
そして、私は、自分の家族と離れ、
そのマンションに、移ることになりました。

義兄は、神様のようないい人ですが、
さすがに痴呆の母との暮らしに、苛立つことが続き、
母への言葉も乱暴になっていました。
そこへ、姉が、自宅に帰ってくることになり、
姉も、介護が必要でありましたので、
もう、待ったなし。私が、母を診ることになりました。

今日、その第1日を無事終えました。
引っ越しの疲れと、家事の疲れとで、かなり参りました。
母は、やっぱり自分の子に診てもらうのがうれしいと言いました。

今日は、夕食を食べながら、母と昔話をしました。
子供の頃からの思い出は、山ほどあります。
話題に事欠きませんでした。

その時間、私は、楽しかったのです。
母は、言ったことを5分後には、忘れてしまいますが、
二人で、たくさん笑いました。
「Jちゃん(←私)は、怒らないんだね。」
と母が言います。
「怒らないんだよ。」と私はいいました。
「オネショをしても、怒らないの?」
「おむつをしてるじゃない。」
「わたしは、わざわざオムツを外して、ベッドを濡らしたんだよ。
 それでも、怒らないの?」
「多分、怒らないよ。」
「そう。」
と、母は言って、とても嬉しそうな顔をしました。

まだ、初めだから、私は怒らずに済んでいるのかも知れません。
でも、願わくば、これからも、ずっと怒らないで行きたいと思います。

プリクラ2300④「聡美と彩夏の逆転」」最終回

この第4話の最終回で、このプリクラ・シリーズの最終話とします。
ここまで、読んでくださり、うれしく思っています。
ありがとうございました。

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<第4話> 「聡美と彩夏の逆転」最終回

また、日曜日になった。
彩夏の家は、毎日曜、家が留守になる。
「彩夏、本気?」
「本気よ。あたし、一度でいいから、女装子になりたいの。
 そして、聡美を犯したいの。」
「ぼくは、本物の女の子になりたいけど。
 でも、彩夏に犯されたら、赤ちゃんできないかなあ。」
「大丈夫よ。プリクラは、2時間だけでしょう。
 2時間経ったら、聡美は、男の子に戻るんだから、
 赤ちゃん、できっこない。」
「そうだね。」

二人は、街に出て、2人用のプリクラに入った。
そして、体の他の部分は、そのままに、
彩夏は、アレとタマタマを得ること、
聡美は、女の子のアソコを得るように設定した。
「変身ボタン」を押した。
眩い光を二人は浴び、光が止むと、部分変身をしていた。
「3分後に、変身したものが、機能します。」
そうアナウンスがあった。

二人でゲームセンターの外に出た。
彩夏の家に向かっていた。
3分がたった。

彩夏は、その日、ひらひらの白のミニスカートを履いていた。
「あ、聡美、まずい。男の子の部分が大きくなってきちゃった。」
「そうだよ。女装子は、可愛い女の子の姿なのに、
 アレがあると思うと興奮しちゃうんだよ。」
「どうすれば、いいの。」
「バッグを前にやって隠して。
 ほんとは、大きくなる前に、アレを、股の間に回してショーツを履くの。
 すると、大きくなりにくいし、大きくなっても前に出ないの。」
「聡美、今じゃ無理ね。だって、大きくて、カチンカチンだもの。」
「うん、大きくなってからは、もう遅いんだ。
 ごめんね、気がつかなかった。」

彩夏のバッグは、オシャレ用の小さなバッグだった。
「ああ、こんな小さいバッグで、前を隠してるなんて、不自然だな。」

「あ~ん、あたし変。可愛い女の子ばっかり探してる。これ、アレのせい。」
「そう、男は、道歩いてるとき、女の子しか見てないよ。」
「男って、こんなにえっちなの。えっちなことしか考えてない。」
「それが、男だよ。男の世界ってこんなんだよ。」
「いや~ん。たまらない。」
「それより、ぼく、男から見られてることばっか考えてる。
 男がどんな反応するか、見ている。
 女の子とは、競争している。
 なんか、疲れる。」
と聡美は言った。

「女の子って、そうなのよ。人の視線に弱いのよ。」
「ぼく、人の視線なんか気にしたことないよ。見てるの女の子だけだもん。」

二人は、こうして、男女の違いを発見しながら、彩夏の部屋に戻った。

部屋に二人になると、二人は互いをかなり意識していた。
「ああ、男っていや。あたし、今すぐ聡美をなぎ倒して、
 オッパイ揉んで、あそこにぶっ○むことしか考えてない。」と彩夏。
「ぼくは、ソフトにキスをたくさんして、体中撫でられて、
 太ももを何度も撫でられて、アソコの周りを攻められて、
 それから、ゆっくり挿入されたいと思ってる。」
「聡美、『非バージン』に設定した。」
「うん。出血はいたそうだし。」

「あたし、姿見で見てみよう。」
彩夏は、姿見の前で、ショーツを下し、スカートを上げて見た。
「いや~ん。最高に興奮してる。」
「女装子は、可愛い女の子にアレがついてると、最高に興奮するの。」
「女装子じゃなくても、あたし、興奮する。」
「彩夏は、女装子の気持ちを、生まれながらに持ってるんだね。」

「聡美、男言葉になってるわよ。」
「ほんとだ。あそこが女になったから、言葉に頼らず女でいられるからかな。」

「彩夏の、その天狗の鼻みたいの、どうにかしてあげるね。」
聡美は、彩夏の前にひざまずき、天狗の鼻を口に含んだ。
彩夏は、気持ちのよさそうな声を上げた。」

「聡美、どうにかなんてなんないわ。どんどん大きくなるだけ。」
「あ、そうね。」と聡美は言った。
立った、聡美を、彩夏は抱いた。
「もうだめ。聡美を、ベッドに連れて行く。
 まず、一発、やりたい。」
「彩夏、言葉が下品よ。」
「がまんできない。」

彩夏は、聡美を抱きかかえると、
ベッドに連れて行った。
そして、聡美の服をはぎ取るようにして、スリップだけにした。
彩夏も、その間、スリック一枚になった。
彩夏は、聡美にキスをして、胸を揉み、胸の先をいじくり、
「聡美、たまらないの。1発だけ、まずさせて。」
「1発って、少し、下品よ。」と聡美。
「じゃあ、1回、させて。」
「まだ、濡れてこない。あそこを刺激して、あたしを濡らして。」
「うんわかる。こうでしょ?」
「うん。ゆっくりね。」
「うん。あ、濡れて来た。もういいかな。」
「だめよ。もっとゆっくり。彩夏、女の子だから、知ってるでしょう。」
「女の子のときの気持ち忘れた。」
「アレの存在だけで、変わっちゃうのかな。」
そう心で言いながら、さすがに、聡美も感じて来た。

「彩夏、もういいかも。そうっと入れて、そうっとね。」
「うん。入れてみる。ああ、聡美を犯している感じ。」
「ああ、犯されてる感じ。」
聡美は、彩夏の挿入と共に、分泌液がジュわんと出てくるのを感じた。
「聡美、あたし、コントロールなんかできない。
 本能のままに動いていい?」
「ええ、いいわよ。」
聡美は、女言葉になった。挿入されて、意識が女の子になったのだろう。
「ああ、うう、いい、ああ、すごい。」
彩夏は、そうな声を上げている。女の声とはずいぶん違う。
反対に、聡美は、どんどん女の子の声が出て来てしまう。
「ああん、彩夏、いい、感じる。ああ、いや~ん、ああああ。」

「うう、たまんねえ。聡美、どんどん、ぶっ○んでやるっからな。」
「ああ、彩夏が、男の子になっていく。彩夏とレズのつもりなのに。」
「ああ、すげえ、たまんねえ。聡美、もっと気持ち安くされてやる。
 どうだ、どうだ、どうだ・・。」
「ああ、いや~ん、感じる、感じる、彩夏、もっとして、もっとついて。」
「いいとも。ガンガンやってやる。どうだ、もっとか、もっとか。」
「ええ、いい。ああん、ああん、あああ、あああああ。」

そのとき、彩夏に波がやってきた。
突然にやってきた。
「あ、やばい、聡美、俺、イっちゃう、イっちゃったら、終わりだよ。
 ああ、でも、男は、1回で終わりだろ。」
「2回、3回できる子もいるけど、珍しいよ。」
「ああ、しまった。夢中になっちゃった。
 ああ、彩夏、ああ、俺、イっちゃう、イっちゃう、ああああああ。」
彩夏は、下半身を痙攣させて、聡美の中に発射した。
そして、聡美の体の上に、どかっと身を預けてきた。

「ああ、男ってだめね。
あたしが、女で、相手が女装子のときは、あんなに上手にできたのに、
相手が女の子だと、燃え上っちゃう。
あたし、世の中の女の子の多くは、満足してないと思うわ。
でも、あたしは、これから、指を使って、聡美を天国に連れて行ってあげるね。」
「うん。」聡美は言った。

そして、その10分後、聡美は、半狂乱になって、天国に行った。
そして、女の子の喜びを知った。

それから、2時間が経った。
聡美は、女装の男の子。
彩夏は、女の子に戻った。
元に戻ったら、体はリフレッシュされる。
二人は、ゼロスタートで、女の子と女装子のセックスをした。

「やっぱ、あたしたち、これがいいね。」彩夏は言った。
「うん。そうね。」聡美が言った。

「あのさ、学校では、あたしたち仲良しなの隠していない。」
「うん、彩夏の言ってることわかる。
 でも、男友達には、ぼくは、あくまで、彩夏が好きだって言う。
 だから、他の女の子は好きになれないっていう。」
「あたしは、心で、聡美が好きだから、
 他の男子には、目もくれない。
 告白されても、『あたしには、好きな男の子がいるから、ごめん。』っていう。」
「そう言ってくれるの。」
「うん。本当のことだもん。」

「憧れて、ぼくなんかから遠い存在だった彩夏とこんな関係になれるなんて、
 ぼく、ふっとレトロタウンKで、今でもビデオ見てるのかな…って思ってしまう。
 ビデオは、2時間で終わるけど、物語の長さは、ずっと長いこともあるから。」

「今、聡美がビデオを見ていないという証拠があるわ。」
「何?」
「聡美は、私が主人公のビデオを見たのでしょう。
 そのビデオをまだ見ているのかも知れないって、心配しているんでしょう。」
「うん、そう。」

彩夏は、にっこりと笑った。
「知ってる?あのビデオは、主人公にしかなれないの。
 今、聡美は、聡美でいるじゃない。わかる?」
「わかった!ぼくは、今聡美だ。彩夏になっていない。」
「そうなの!だから、これは現実。」
「やった!うれしい!」
聡美と彩夏は、抱き付いた。

ここに、少し変わったカップルが誕生した。
二人が、二人の経験をビデオにするか?
それは、またのお話にて。


<おわり>


■次回予告■
ポツポツと書きながら、全部で10話まで書きました。
今までの最長のお話しになりました。
最後の2話ほどは、介護の準備で、集中できない中書きました。
でも、一応最後まで、書けたことをうれしく思っています。

今日から、母の介護が始まります。
どれだけ、書いて行けるか、自信がありません。
少しずつでも書いて行きたく思います。
ちょこっと、ここを覗いてくださると、うれしいです。

プリクラ2300③「聡美と彩夏があのビデオのままに」」

この第3話は、たくさん書きました。
ストーリを終えることが出来ませんでしたので、
次回、第4話を、最終にしたいと思います。

============================

<第3話> 「妄想が現実に」


「ねえ、斉藤さんは、ビデオに出演したの?」
聡美は、一番気になることを聞いた。
「出演とはちょっと違うの。
 あたし、記憶を提供したの。」
「どういうこと?」
「ビデオ会社は、人の記憶を取り出す技術をもっているの。
 人が心に描いた妄想もね。
 これ2300タウンの技術だと思う。

 例えば、エジプトが舞台になったビデオを作りたいとするじゃない。
 これ、普通だと、エジプトにロケに行かなくちゃならないでしょ。
 でも、エジプト旅行した人の記憶を取り出すことができれば、
 それで、ロケはいらないじゃない。
 あとは、その人の記憶に少しの演出を加えて、面白可笑しく作る。
 主人公の顔は、わからないように、別の顔に置き換える。
 こうすれば、遥かに簡単にビデオが出来るってわけ。」

「じゃあ、斉藤さんは、あの紅白リレーの記憶を売ったの?」
「ううん。お金はもらわない」
「どうして?」
「多くの人があの感動を味わってくれたらうれしいと思ったの。」
「提供された方は、お金儲けをしてるのに。」
「儲かってないと思う。プリクラだって、もうかってない。
 維持費に消えてると思う。
 だって、プリクラの1回500円って、安いじゃない。
 レトロタウンが運営してるでしょ。
 プリクラで儲からなくても、それを目当てにお客さんが街に来る。
 それで、街は潤う。
 町興しの一つだと思ってる。」
「そう言えば、ビデオも500円だった。
 レトロタウンKが運営してるんだ。」
 
「でも、あたし、ドジやっちゃった。
 顔を変えてもらうことと、名前も変えてもらうことを知らなかったの。
 初めてだったし、わからなかったから、地の顔と本名を名乗ってしまったの。」

「斉藤さん、ぼくが、女装子だって知ってるんでしょう。」
「だって、あのビデオ、女装子のためのビデオだもの。
 清川くん、それを借りたから。」
「女装子の場面なんかなかったよ。」
「全部見なかったでしょう。
 あたしが、宏美に天国へ行かされて、
 そのあと、あたしが、宏美を天国に行かせてあげる。
 そのとき、宏美は男の子だってわかるストーリーなの。」
「そうだったの?知らなかった。
 ぼく、彩夏が、天国へ行かされたところで、もう十分だと思って、
 ビデオを止めたの。もう、十分すぎるほどだった。」

「ぼく、今日、午後から学校へ来て、彩夏を見たとき、不思議に思った。
 彩夏がなぜここにいるのって。でも、よく考えたら、
 彩夏は、昔から、ぼくのクラスだった。そこが、わからない。」
「そこは、あたしもよくわからないの。
 でも、多分だけど、聡美くんは、あたしになって、
 それ、初めての人なら、強烈なことだと思うの。
 だから、心のどこかに『自分は彩夏だ。』っていう意識があったんじゃない。
 それで、別の彩夏(あたし)を見て、びっくりした。」
「なるほど。あるかも知れない。
 新ビデオを見て、しばらくの間、ぼく自分が彩夏だと思ってたかも知れない。
 すごく、幸せな気持ちだった。」

「聡美くんとこんなに仲良くなれたの、あのビデオのおかげだな。」
「ぼく、あのビデオの表紙の写真、彩夏に似てたから借りたんだよ。」
「ほんと?」
「うん。彩夏は、ぼくのマドンナだし。」
「あたし、聡美くんを、女の子にしたい。
 そして、妄想の宏美じゃなくて、実在の聡美としたい。」
彩夏が、そう言ったので、雅美は、鼻血が出てしまいそうだった。

「彩夏、それぼくには、刺激が強すぎる。」
「あ、いつの間にか、あたしのこと『彩夏』って呼んでる。
 じゃあ、あたしも『聡美』って呼ぶ。」
「いいよ。」
「聡美ってそのまま女の子の名前になるね。あたし、萌える。」
「ぼく、ずっと萌えてるよ。」

日曜日、彩夏の家は、家族が留守だという。
絶好の日だった。
午前10時。
聡美は、彩夏の家に呼ばれた。
彩夏の部屋に入って驚いた。
あのビデオで見た、宏美の部屋とそっくりだった。
ビデオでは、宏美の部屋という設定だった。
そうか、もともと彩夏の部屋だから、あんなに詳細に描けたのだ。
聡美はそう思った。

「あたし、先にシャワー浴びてきていい?」
と彩夏は言った。
(あの時のビデオと同じだ。)
聡美は、ドキドキした。
「うん、いいよ。」
彩夏は、ポニーテイルの髪を、ネットで丸めているに違いない。
聡美は思った。
でも、まさか、体にタオルを巻いて出てくるのかな。
そんなことされたら、ぼく、ほんとに鼻血出ちゃう。

聡美が、そう思っていると、
彩夏は、本当にタオルを体に巻いて出て来た。
そして、ポニーテイルの髪をほどいて、
長い髪を背に垂らしてやってきた。

「彩夏、刺激的過ぎる。早く服を着て。」
聡美は言った。
「うふん、聡美は、けっこう純情なんだ。」
彩夏は、くすっと笑って、上がキャミのピンクのワンピースを着て来た。
「次は、聡美だよ。でも、ちょっと待って、脇の下見せて。」
聡美は、シャツを脱いで見せた。
脇の下は、手入れをしていない男の子のままだ。

「ダメ。脇の下は綺麗にするの。
 足を見せて。」
聡美は、ズボンを手繰って、すねをみせて。
「ふーん、聡美は、脚は女の子みたい。」
彩夏は、そう言って、あるものをくれた。
「これを脇の下に塗るの。泡が出て、1分で、毛が綺麗になくなるから。」
「うん。」
聡美はそう言って、そのスプレーのようなものをもらい風呂に入った。
脇の下に塗る。
1分待つ。
お湯で流した。
すると、脇の下の毛が、完璧になくなっていた。
すごい。
ああ、萌えちゃうなあ。
聡美は、自分の脇に手を入れて、感触にうっとりした。

彩夏が、下着と洋服を用意していてくれた。
ショーツは新品だった。
ブラ。スリップ。そして、肩見せの花柄のワンピースがあった。
頭の髪が短いので、まだ、女の子に見えない。

彩夏の前に行くと、
「もう、女の子に見えるわよ。」
と彩夏がいう。

ドレッサーの前で、彩夏が、バッチリとメイクをしてくれた。
アイメイクで、目が驚く程大きくなった。
ピンクのリップを塗り、チーク。
そして、彩夏は、ロングのかつらをだし、聡美にかぶせた。
すると、自分でも恥ずかしくなるくらい女の子になった。
彩夏の髪とそっくりになった。

聡美は、鏡の自分を見て、恥ずかしくてならなかった。
完璧に女の子だ。
「思った通り、聡美は、可愛くなると思ったの。
 みんなに自慢したいけど、あたしだけの聡美にしておきたい。」
彩夏はそう言った。

彩夏は、聡美の手を引いて、ソファーにいざなった。
「聡美は、女の子以上に可愛い。脇の下を見せて。」
彩夏は言う。
聡美は、腕をあげた。
「わあ、女の子。すべすべで、ステキ。
 あたしのも見て。」
彩夏は腕を上げた。
聡美は、ごくりと喉を鳴らした。
「彩夏、刺激が強すぎる。ぼく、あそこが、大きくなっちゃったよ。」
「大きくなってもいいじゃない。
 あたしの脇の下に、キスをして。」
聡美は、今隣にいるのが、本当に、あの憧れのマドンナ彩夏なのか。
夢でも、見ているようだった。
彩夏から、石鹸のいい匂いがする。

聡美は、胸をドキドキさせながら、彩夏の脇の下に唇を当てた。
「今度は、あたし。」
彩夏が聡美の脇の下に、唇を当てた。
あのビデオだと、次は、口づけだ。
ほんとにそんなことになるのかなあ。
聡美は思った。

彩夏の唇が近づいていた。
ああ・・。
聡美は、体が溶けてしまいそうだった。

その後は、ビデオの通りになった。
聡美は、彩夏に言われるままにして、
胸に触り、太ももに触り、そして、スカートの奥に。
最後に、究極のポイントに指を添え、
彩夏を天国に行かせた。

彩夏の天国へ行く声を生で聞いた。
女の子は、こんなに激しい声を出すのだと驚いた。
『これは、ビデオではない、現実だ。』
聡美は、自分に言い聞かした。

それから、聡美が、ビデオで見なかった後半が始まった。
聡美は、彩夏から、体中を愛撫され、
聡美の一番感じるところを、撫でられ、
最後は、彩夏が口に含んでくれた。
『あの、マドンナの彩夏が、口に入れてくれてる。』
そう思うと、興奮の波が一気に襲ってきて、
聡美は、あっけなく果ててしまった。


■次回予告■

次は、このお話の最終話にしようと思っています。
プリクラ・シリーズもこのお話で終わりです。

プリクラ2300②清川聡美の巻「彩夏と話す」

一日の隙間を使って書いています。
乱筆乱文、お許しください。

==============================

<第2話> 「彩夏と話す」

聡美は、クラスに斎藤彩夏がいたショックに、
友達の小田浩介の誘いを断って、一人で下校していた。
今考えてみると、斉藤彩夏は、昔からいる生徒だ。
クラスのマドンナで、聡美にとって、なりたい女の子No.1だった。
疑問は、山ほどあった。

うつむきながら、とぼとぼ歩いていると、
「清川くん。」と呼ぶ女の子に声がする。
駅前の広場に来たときだ。
斉藤彩夏が待っていた。
聡美は、やましい気分がして、逃げようとしたが、
彩夏に、手首を握られた。

彩夏に、駅前から離れたパフェーの店に連れて行かれた。
彩夏にずばり聞かれた。
「清川くん。あなた、あたしの心に2度なったでしょう。」
「うん。でも、それは、ビデオを見ただけだよ。」
聡美は気弱に言った。

「まいったな。あたしのビデオを見た人がこんな近くにいるなんて。」
彩夏はそう言った。

「ぼく、何にも知らないで、ビデオ見たんだよ。
 ぼくの好きなタイプの子だなって思って、そのビデオ選んだの。
 そのときは、なぜか、斉藤(彩夏)さんだとは、思わなかったの。
 で、そのビデオ見て、腰抜かしちゃうほど驚いた。
 ぼくが、その主人公になっているんだもの。
 斎藤さんの心のぞいたわけじゃないよ。
 斎藤さんになって、ぼくは、ぼくの気持ちしか覗いていないよ。」

「あのビデオの中の、もう一つも見たでしょう?」
「うん。あの宏美さんとのチャプター見た。
 でも、斉藤さん、どうして、それが、わかるの?」
「あのビデオ、見た人の名前がわかるようになってるの。
 清川くん、会員カード作ったでしょ。
 それを、借りるとき、あなたの名前がデータとして入るの。
 それが、私に報告される。
 ケータイで、見たの。
 ブログだってさ。アクセスしてくれた人の数わかるじゃない。
 それと同じように、借りてくれた人の名前がわかるの。
 大勢の人が借りてくれると、うれしいじゃない。」

「それで、ぼくがわかったんだ。」
「運動会のは、いいけど、宏美とのことを清川くんに見られたのはずかしい。
 よりにもよって、清川くんに。」

「よりにもよって、ぼく…ってどういうこと?」
そのとき、彩夏は、息を大きく吸った。
「あたしが、清川くんのこと好きだって、気がついていたでしょう?」
「気がついてなんかないよ、そんなこと!
 そうなの?ぼくの、どこが好きなの?ぼく、長所なんてないじゃない!」
「清川くんは、クラスで、いちばん可愛い男の子じゃない。
 女の子で、清川くんのこと好きな子、大勢いるよ。」

「そうだったの?」
「そうよ。みんな清川くんを、女の子にしてみたいって、思ってる。」
「うそ。斉藤さんも、そういう理由で、ぼくが好きなの。」
「それも、あるわ。でも、清川くんはやさしいし、とにかく可愛いの。
 あたし、そういうタイプの男の子好きなの。」

「斉藤さんは、学校中のヒロインだよ。その斉藤さんが…。」
「うん、だから、宏美のこと見られたのはずかしい。」
「ぼく、宏美さんなんて子、知らないよ。」
「知らなくて当然。学校の人じゃないから。
 宏美は、あたしの空想上の人なの。
 空想の中で、宏美は、男の子なの。
 ほんとは、清川くんに、ああされたかったの。
 でも、実際にいる人を、しかも、あたしの好きな人を、空想の中ででも、
 女装させて、あんなことしてもらっちゃいけないと思ったの。
 だから、男の子で、清川くんくらい可愛い宏美って子をあたし心で作ったの。」

聡美は、彩夏の話を聞いて、何重にも驚いた。
びっくりすることが、ありすぎる。
もうなんだか、わからなくなってきた。
ただ、一つの感情だけは、確かだった。
聡美は、たまらなくうれしかった。


■次回予告■

まだまだ、疑問が残っています。
ですが、聡美と彩夏は限りなく接近し、
空想であった彩夏の夢を、聡美が実現します。

プリクラ2300①清川聡美の巻「彩夏!どうして君がいるの?」

ゆっくりした時間がとれなくて、少ししか書けませんでした。
少し、だけですが、投稿します。読んでくださるとうれしいです。
「プリクラ2300」のお話は、この物語で最後にしようと思っています。

================================  

プリクラ2300・清川聡美の巻①「彩夏!どうして君がいるの?」


女の子になるために、家出をした聡美は、
かなり満足をして、家に帰って来た。

「あら、やっぱり帰って来たの!」
と母の則子は、呆れたように言った。
「あなたの家出は、初めてじゃないから、帰って来ると思ってた。
 まだ、父さんにも知らせていないわ。」
幸い、妹2人は、学校、父の洋介は会社だった。
「うん、気が済んだの。
 心配かけて、ごめんね。」
そう言って、聡美は、自分の部屋に行った。
学校を、欠席して、家出をした。
幸い、学校からは、まだ欠席の問い合わせは、なかった。

ちょうど昼時だった。
「お母さん、お弁当家で食べて、午後は、学校へ行く。」
聡美は、言った。
「じゃあ、午前中休んだ理由を、今学校に連絡しなさい。
 母さんは、嫌よ。自分で電話するのよ。」
と則子は、言う。
聡美は、朝お腹が痛かったが、治ったので、今から、登校すると、電話した。

聡美は、一生女の子で生きていきたいと思いつめたが、
自分は、GIDではないと、ビデオを見て気がついた。
女の子になったで、女の子としての苦労がある。
自分は、女の子の、いいとこ取りをしたいだけなのだ。
もう一つ、自分は、「女装」という女の子に変身する過程が好きなのだ。
そうも思ったのだ。

駅のターミナルで補導してくれた高村の言葉が心に残っている。
『不便であること、どうにもならないことがあること。』
それに価値を見出した人が、レトロタウンを作った。

その通りだ。苦労してこその達成感なのだ。
女装も同じ。
完璧な女の子になれなくても、
限りなく近づこうと努力するところに醍醐味がある。
ぼくは、GIDでは、多分ない。
典型的な「女装子」だ。

部屋でこっそり女の子になろうと、買いそろえたものがある。
下着、服、靴、アクセサリー、そして、かつら。
プリクラにはまっていたときは、それらの女装道具は、
もう、捨てようかと考えていた。
しかし、自分で悟りを開いた今は、それらの女装用品は、
とても、愛おしいものだ。
やっと自分が分かって来た。

聡美は、男女共学の私立高校に通っていた。
午後になり、教室に入って行った。
みんなは、まだ、お弁当の最中だった。
「おう、聡美、来たのか。」
仲のよい、友達の浩介が言った。
ちょっと小太りで、人の好い奴だ。
「うん、お腹治ったからね。」
聡美は、そう言いながら、クラスを眺め、
その時、びっくりして、固まってしまった。
いるのだ。
「うそだ!」聡美は、小声で、叫んだ。
レトロタウンKのビデオの中で、自分がなった「彩夏」が、
同じクラスにいる!

となりの吉田浩介に聞いた。
「あのさ、あの女の子、前からクラスにいた?」と聡美。
「斉藤彩夏のこと?お前、アイツの名前忘れたのかよ。
 どうかしてるぞ。運動会の紅白リレーを覚えていないのかよ。」
と浩介がいう。
「ええ?彩夏っていうの?!
 リレーってまさか、3人抜いて1位になった?!」
「ああ、そうだよ。今じゃ、学校中のヒロインだよ。
 あんだけ可愛くて、スタイル抜群。性格もいいしさ。
 ところで、聡美、お前顔色変えて、どうしたのよ。」

聡美は、かなりショックを受けた。
いえ、かなりなんてものもじゃなかった。
レトロタウンKで見た、ビデオの子が、
実際に、自分のクラスにいる!
あり得ない。これは、絶対にあり得ないと、
聡美は、頭が狂ってしまいそうだった。


■次回予告■

どうなっているのでしょう?
今まで、口も利けなかったマドンナ彩夏。
聡美は、謎を解きたくて彩夏に接近します。
彩夏も聡美を意識しています。

プリクラ2300③「青いりんごの香り」

「脇の下フェチ」ってあるのでしょうか。(私、そうです。)
そんな方がいらしたら、今日のは、きっと喜んでいただけると思います。

===============================

眼鏡をかけた。
ああ、自分は、友達の宏美の部屋にいる。
大きいお金持ちの家だ。
宏美は、ちょっと大人びたセクシーな子だ。
「彩夏、汗かいてるでしょう。今日、家留守だから、シャワー浴びて。」
と宏美。
「いいの?でも、着替え持って来てないわ。」と彩夏。
「あたしのでよければ、着て。ショーツだけ、新しいのにしとく。
バスタオル置いておくから。」
「じゃあ、浴びてこようかな。」
聡美は、主人公になっている。
ポニーテイルの髪を後ろでまとめて、小さいネットでまとめる。
服を脱ぐときはっとした。
女の子の裸が見えてしまう。
聡美は、他所を見ながら、服を脱いで、シャワーを浴びた。

出て来たとき、あこがれの、バスタオルの女の子巻きをした。
ああ、感動。胸があるから、タオルが落ちない。
ヒップのところがくびれていて、超ミニのワンピースのようになっている。
びっくりするほど、まっすぐで長い脚が出ている。
宏美が新しいショーツを出してくれている。
履いた。フラットになっている股間に感動。
(男のときは、股間に回したりしている。)
宏美のブラをつけ、スリップを被った。
袖なしの生成りのワンピースを着る。
すごく、さっぱりした気分だ。

「ありがとう、宏美、すごくさっぱりした。」彩夏は、言った。
次、宏美もシャワーに言った。
ソファーに座って、聡美は考えていた。
こうやって、ビデオの中で、自分が主人公となり、
いろいろ考えることが出来るのが、不思議だ。
でも、シュミレーション・ゲームを考えるとさほど不思議はない。
これは、2300年のマシンなんだから。

宏美は、上がキャミソールになったワンピースを着て来た。
そして、彩夏の隣に座った。
「ね、彩夏、彩夏の脇の下見せて。」
「いやよ。恥ずかしいわよ。」
「いいじゃない。ちょっとだけ。」
「じゃあ、ちょっとだけ。」
彩夏は、腕を上げた。
「きれい、どうやってるの?」
「あたしは、脱毛クリーム使うよ。」
「あれ、時間かかって、うまくいかなくない?」
「メーカによるわよ。あたしの、1分でOKよ。」
「あたしは、カミソリなんだけど、綺麗な肌色にならない。見て?」
宏美が、腕を上げて、彩夏に、脇の下を見せに来た。
(聡美としては、なんだか、とってもえっちな気分になった。)
「綺麗じゃない。OKだよ。」
「近くで見ても、平気?」
「うん、完全に大丈夫。」

宏美は、両手で、彩夏の脇の下に手を入れてきた。
「あたし、綺麗な脇の下の子見ると、触りたくなるの。
 ね、彩夏。腕を頭の後ろに組んで。」
「こうお?」
「うん。」
宏美は、彩夏に脇に顔を近づけて来て、なめた。
「ああん、宏美。何するの。」
「お願い。舐めさせて。」
彩夏は、舐めさせながら、
「どうして、そんなことするの。」彩夏は聞いた。
「脇の下に神経を集中するの。
 そうしたら、気持ちがよくなるから。」
彩夏は、しばらくされていた。
その内、本当に感じて来てしまったのだ。
「だめ、もう止めて。」彩夏は、言って脇を閉じた。
「じゃあ、今度あたしを舐めて。」宏美は言った。
「うん、いいよ。」
彩夏は、宏美の脇の下を舐めた。
(聡美としては、相当に燃えていた。)
「う~ん、ステキ。両方舐めて。」
彩夏のそばに、顔が来たとき、
宏美は、彩夏の顔に両手を添え、キスをした。
彩夏は、はっとして、宏美を押しのけた。
「宏美、あたし達、女同士じゃない。」
「だから、いいんじゃない。」
「どうして?」
「男と女じゃ、そこで二人はできてしまうじゃない。
 それから、彼、彼女の関係ができて、お互い束縛される。
 女同士なら、遊びですむわ。」
宏美はそういった。
彩夏にも、性への憧れがあった。
「わかった、遊びよ。」彩夏は言った。

それから、宏美は、何度も彩夏にキスをし、
やがて、彩夏の胸を撫でてきた。
彩夏には、すでに快感が生じて来て、拒めなかった。
声が出てしまいそうだった。

宏美は、彩夏のスカートの中に手を入れて来た。
ぞくぞくする快感が襲って来た。
「ああん、宏美。たまらない。やめて。」
「彩夏の、その顔ステキだわ。」
宏美は、彩夏の太ももをたっぷりと撫でて、
やがて、ショーツの中に手を入れてきた。
彩夏は、ショーツの中を濡らしていることが、恥ずかしかった。
「宏美、あたし、感じてるの。はずかしいわ。」
「恥ずかしくないわ。当然の女の体の反応よ。」
宏美は、そう言って、ショーツの中の、
彩夏の一番感じるところに、指を当てた。

「あああ。」と彩夏は、背を反らせた。
「感じるのね。いいのね。」宏美は言う。
「う、うん。あああ。」
彩夏は、体をくねらせた。
「もっと、もっと、感じるの。彩夏の表情ステキよ。」
彩夏は、それから、大きな声を上げてしまった。

自分一人でやるよりも、数倍の気持ちよさだった。
「ああ、ああん、宏美、もう、あたしだめ。
 なんだか、イってしまいそうなの。宏美、あたし、たまらない。」
「いいわよ。どんな大きい声上げても。今日は、家中留守なの。」
「あああ、いや、あたし、イっちゃう。だめ、イっちゃう。
ああああああああ。」

彩夏は、体を痙攣させて、アゴを突き出しながら、果てて行った。

聡美は、ビデオを止めて、メガネをとった。
はあ、はあ、荒い息をついていた。
聡美も、ビデオの彩夏といっしょに果ててしまった。
「ああ、すごかった。どうしよう。
 トランクス、よごしちゃった。」
聡美は、ポケットティッシュで、トランクスの中を拭いた。
『そうだ、家出のつもりで来たんだ。
 替えの、トランクスがある。』

聡美は、やっとすっきりした。
ビデオを、もうこれ以上見る気持ちになれなかった。
もう、十分。
(それにしても、これがアダルトじゃないの?)そう思った。

このビデオ屋さんが、プリクラに相当するってよくわかった。
両方いい勝負だなあ。

「レトロタウン2010」と「レトロタウン2010K」は、
姉妹都市なんだなと思った。
こんなに簡単に行き来できるなんて。

カウンターのおじさんにビデオを返した。
「これ、1日何本も借りていいんですか。」と聞いた。
「いや、1本だけや。1本を家で何回も見るのはありや。」とおじさん。
「1回見れば十分でした。全部はとても見られませんでした。」と聡美。

「ははは。全部は、とても見れへんやろな。
 普通のビデオなら、どんな激しい場面でも、眺めとればそれでええ。
 しかし、新型ビデオは、実際、自分が、戦うたりするんやさかい、疲れるがな。」
「ぼく、プリクラのあるところから来たんですけど、
 プリクラと、このビデオと、おじさんはどっちが好きですか。」

「どっちもどっちやな。ビデオもええけど、プリクラもええな。
 その場、そのときの気分で使い分けるこっちゃ。」
「そうですね。」
「プリクラと新ビデオは、それぞれの街の名物商品やから、
 お互い機械の売り買いはせん。
 お互い、お客さんが欲しいよってにな。」
「ああ、そうですね。じゃあ。」
「毎度おおきに。ありがとう。」
「はい。」
聡美は、晴れやかな気分になって、店を後にした。

聡美は、外へ出て、大阪に似たこの街を見て歩いた。
「毎度、おおきに。」
と、何度も言われて、この言葉が好きになった。
温かい言葉だ。

この街も、いいな。
聡美は、そう思った。


<おわり>

■次回予告■

どうも、ネタがないんです。
せっかく登場させた清川聡美くん自身の女装を
描いてませんので、それを書くかもしれません。

プリクラ2300②「聡美、新ビデオレンタル店に入る」

聡美は、電車に乗って『レトロタウン2300K』という街に行った。
電車にのって、10分で着いた。
(これは、2300年の技術を取り入れているのだろう。)
駅へ降りて、外に出てみて、すぐにわかった。
ここは、大阪をモデルにしている。
人々の話し方がそうだ。

聡美は、早速、レンタルビデオ店を探した。
賑やかな通りに行けば、たくさん並んでいる。
ある店に入った。
中年の痩せたおじさんがいる。
「あの、初めてなんですが。」聡美は言った。
「ははん、あっちからのお客さんやね。」
とおじさんは、言った。
「まず、会員証作らなあかんさかい、これに記入してや。」
おじさんは、機械に入力して、ぱぱっとカードを作った。
「あんたはんは、16歳やさかい、18禁は、見れへんで。
 赤いラベルが貼ってあるものや。
 で、16歳やさかい、15禁のものは見れる。
 黄色いラベルや。」
(これでも、十分えっちや。)とおじさんは、小声で言った。

「青いラベルは、誰でも見れる。健全なものやさかい、
 えっちを期待したらあかんで。
 そや、レンタル店やさかい、家に持って帰れるけど、
 あんたは、旅の人や、観賞する小部屋があそこにずらりとあるやろ。
 そこで、見るとええ。」
「ありがとうございます。」
聡美は、ビデオのある方へ、飛んで行った。
早く、見たい。
ちょっとえっちな、青ラベルを探した。

たくさんのビデオの中で、聡美は、これだと決めた。
「学園のヒロイン彩夏」。
ヒロインの女優さんが、まさに聡美の好みだった。
聡美は、おじさんのところへ持って行き、1本500円で借りた。
観賞の小部屋に入るまで、見たくて待てなかった。
部屋の中は、ゆったりした黒いソファーがある。
目にぴっちり当てる、玉子を半分にしたような、黒いサングラスがある。
ビデオをセットし、眼鏡をかけた。

やがて、はじまった。
運動会の場面。最後の、紅白対抗リレーだー。
背が165cmくらいのアンカー彩夏。
ポニーテールで、長い脚、すこぶる美人。
白い半袖の体操着に、下はエンジ色のブルマー。
赤いハチマキをしている。

聡美は、あっと思った。
自分が、彩夏になっている。
見回すと、グランドは、すごい声援だ。
聡美は、彩夏になって、今グランドの真っただ中にいる。
この臨場感は、本物と寸分違わない。
そうか、このビデオは、劇中の人物になれるのだ。
そして、実際のドラマが、展開されている。
聡美はうきうきした。

自分は、彩夏という女子だ。
アンカーで、自分に来る走者を待っている。
もう、3チームが先に出た。
彩夏は、4位だ。
走者が来た。
彩夏は、彼が、後ろ4mに来たとき、
前を向いて猛烈に両手を振ってダッシュした。
後の走者が、追いついて「はい!」と言ったとき、
彩夏は、ぱっと手を下に下げた。
その掌に、アンダーで、ドンピシャリとバトンが来た。
バトンを持った彩夏は、速い。
見事なバトンパスで、3位を5m差に付けた。
まず、一気に3位を抜く。

後二人。
みんなは、彩夏が速いのを知っているのか、全員立ち上がって、応援している。
2位まで、10m。
それを、第2コーナーで抜いた。
すごい声援だ。
第1位まで、15mある。
第4カーブのところで、彩夏は、差を、8mにした。
そして、最後の直線コースは、70mだ。

1位のアンカー選手だって、代表のトップだ。
しかし、直線に入って、彩夏は、どんどん差を縮めていく。
観客は、割れんばかりの声援で、もう他に何も聞こえない。
ゴールテープが用意された。
1位との差は、3mになった。
残り50m。
彩夏は、最後の加速を見せた。
そして、ゴールの5m前で、1位を抜いて、
そのまま、ゴールテープを切った。

ものすごい歓声。
チームの連中が、彩夏に集まって来て、
彩夏をもみくちゃにする。
「彩夏すごいよ、すごい。」
「もう、ステキ、ワンダフル!」
女の子達に、抱きしめられた。
(自分が、抱きしめられている。)
観衆が、彩夏!彩夏!と呼んでくれている。
『ああ、感動。こんな経験初めて。』
彩夏になっている聡美は、感動して、涙をにじませていた。

聡美は、ビデオを一時停止にして、眼鏡をはずした。
『ああ、すごい。心の底から感動した。
 こんなのが続いたら、ぼく身が持たない。』
聡美は、そう思った。
時計を見たら、まだ、5分しか経っていない。
このビデオは、60分もある。

あの補導員の高島さんが、プリクラに匹敵すると言ったはずだ。
選ぶビデオによっては、古代遺跡の旅もできるし、
宇宙大戦争もできる。
少女ピアニストが、優勝するまでの感動の物語も体験できる。
もちろん、可愛いえっちなら、15禁でも見れる。

聡美は、全部は、とても見られないと思って、
チャプター一覧を出した。
これだと思った。
彩夏、えっちのシーンだ。
「彩夏、宏美に誘惑される―青リンゴの香り―」

■次回予告■

ビデオの続きです。
ちょっとエッチなシーンです。

プリクラ2300①「清川聡美の求める街」

新作です。今回は、2300タウンの様子が、一部紹介されます。
2010レトロタウンの姉妹都市・2010レトロタウンKも、
登場します。3話に渡ると思います。
読んでくださると、うれしいです。

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新作・プリクラ2300①「清川聡美の求める街」


ここは、2010年のレトロタウンから、
2300年の街へ行く、電車のターミナルである。

清川聡美(高1男子)は、重そうなリュックを背負って、
ターミナルをうろうろしていた。
聡美は、162cmと小柄で、髪は坊っちゃん刈りで、
くりっとした目の、可愛い顔立ちをしている。

家に手紙を残して、黙って出てきた。
聡美がキョロキョロしていると、
コツコツと靴の音がして、
紺の制服を着て、脇にケースをはさんだ、綺麗な女性が来た。
背が、170cm近くある。
「あのう、どこかへいらっしゃるおつもりですか。」
その女性は言った。
「はい。2300年タウンへ、行きたいんです。」
聡美は言った。
「それでしたら、私の説明を聞いてからになさってください。
 簡単にはいけないんですよ。私の許可証が、必要です。
 いっしょに、お出でください。」
女性は、そう言って、ターミナルの一画の小部屋に、聡美を案内した。
デスクを挟んで、聡美は、女性と対面で座った。

「私は、補導員の高村美香と申します。お名前と学齢を教えていただけますか。」
「清川聡美です。高校1年生です。」
「聡美さんは、どんな目的で、2300タウンへ行こうとされたのか、
 聞かせてくださいますか。」
「ぼくは、女の子になりたいんです。
 レトロタウンのプリクラでは、2時間しか女の子でいられません。
 2300タウンに行けば、1年でも、
一生でも、女の子になれると聞いたんです。」

「そうですか。
では、まず、知っておいてください。
レトロタウンから2300タウンへ行くのは、比較的簡単です。
でも、2300タウンから、レトロタウンに戻るのは、
ほとんど許可が下りないということです。」

「どうして、ですか。」
「2300タウンは、一口に言えば、恐ろしいところです。
さっき、聡美さんは、プリクラのことをおっしゃいましたが、
2時間制限もなく、18歳の線引きもなく、
連続して使用できると考えてください。」

補導員の高村は、デスクにある液晶モニターに、
ある女学校の写真をみせた。
真面目そうな美少女ばかりが、登校する動画が移った。
次に、授業を、受けている女生徒の様子、
みんなまじめで、いい感じだ。
体育館で、球技をやっている動画も見た。
ほのぼのとした風景だった。

それは、聡美が憧れとする、女学校の様子だった。
「ここ、ぼくの理想です。ぼくは、女の子になって、
 女子校に通いたいです。」
「そう思いますでしょう。
 でも、ここは、女生徒になって、女学校の気分を味わいたい人のために、
 ビジネスでやっているところなんです。
 いつ止めてもいい。いつ入ってもいい。1日500円で通えます。

 この女の子達を、前の姿にして、表示してみますね。
 これは、実物と、見分けはつきませんが、CGですから、
 こんなことができます。
 これが、この女の子達の前の姿です。」

そこに、聡美が見たものは、教室の中であったが、
きちんと授業を聞いていた女生徒たちが、
次々に、前の姿になって行った。
中年のおじさん、老人、恐そうな人、マッチョな人、
チンピラ、ヤンキー、けばけばしいお姉さん、などなど。
およそ、女生徒から、かけ離れた人達だった。

「2300タウンで、あなたが女の子として女学校に行くとすると、
 こんなところしかありません。」
「みんな、勉強しないのですか。」
「2300タウンでは、小学生から高校までの学習内容を、
 脳の中にダウンロードすれば、わずか30秒で、終わってしまいます。
 11歳を過ぎれば、ダウンロードが許させます。
 医者になるための知識・技能なら、ダウンロードに1分。
 ピアノの1流プレイアーの技能なら、1分半。
 だから、必要に応じて、人々はダウンロード、または消去を
 くり返しているのです。

 変身が自由ですから、美女とか美男、イケメン、可愛いなどは、
 なんの価値も持ちません。
 だれでも、簡単に手に入れることが出来るからです。
 若い人に変身すれば、体も若くなれます。
 だから、「若さ」というものも、価値がありません。
 人と人が、お互い、相手がどんな人か、わかりません。

 2300タウンで育った子は、この環境で生きていけますが、
 聡美さん。あなたは、この街で、生きていけると思いますか?

 多い人は、何百回と自分を変身させて、
 こうなると、自分のアイデンティティを失ってしまいます。
 そんな人を、レトロタウンに入れるわけにはいきません。
 私が、『行きやすいが、帰って来るには困難。』と言った理由の一つは、
 そういうことです。」

聡美は、高村の説明を、食い入るように見つめていた。
「恐ろしいところですね。
 ぼく、そんなところで、生きていけそうもありません。」

高村は、にっこり笑った。
「不便であること、どうにもならないことがあること、制約、
 そういうことに価値を見出した人々が、レトロタウンを作ったのです。」

「よくわかりました。高村さんが、声をかけてくださって、
 本当によかったです。」
聡美は、安心と失望が混じった声で言った。

「1つ、2010年レトロタウンと同格の街があります。
 レトロタウン『2010K』という街です。
 同格ですから、旅行のように、無許可で行ったり来たりできます。」
「どんな街ですが。」
「その街には、プリクラはありませんが、同じくらい面白いものがあります。」
「何があるんですか。」聡美は、目を輝かせた。
「レンタル・ビデオ屋さんです。
 2300タウンからの中古ですけどね。
 この街は、プリクラよりこちらを選んだのです。」
「きっとただのビデオ屋さんでは、ないんですね。」
聡美は、うれしそうに言った。

「ええ、プリクラといい勝負ですよ。」
高村は、にこやかに言った。


■次回予告■

さて、プリクラといい勝負というレンタル・ビデオ屋さんとは、
どんなところでしょう。
多分、みなさまが、ご推察の通りのところです。

プリクラ2300・小峰剛三の巻「最後のセックス」後編

さて、このお話しの後編です。
怜奈とユキエが、これが最後と思ってするセッ○スは、切ないですが、
ちゃんとハッピーエンドが、待っています。

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<後編> 「最後のセッ○ス」

プリクラ中だけの関係が、二人に出来ている。
「怜奈、行こう。」
ユキエがそう言って、怜奈の手を取って、ホールの周りの通路に出る。
通路の壁に、ユキエは、怜奈を押し付け、キスをする。
怜奈は、ユキエの肩に手をやる。
もう、ユキエの手は、怜奈のショーツの中に入っている。
怜奈は、このスピードセックスが好きだ。
怜奈は、辺りをはばからず、声を上げる。
「ああ、ああん、イっちゃう。あたし、早すぎよね。
 でも、イっちゃう。ユキエ、上手すぎるよ。
 あああ、だめ、ほんと、イく、イく、あああいっちゃう。」
怜奈は5分でイってしまう。
だが、正確には、5分だけではない。
プリクラにいるときから、
心は、どんどん高みへと昇っていたのだ。

今度は、ユキエが、壁を背にし、怜奈が、犯す。
ユキエのショーツもやはり、十分濡れている。
『ユキエも、今までずっと感じていたんだね。』
怜奈は思う。
ユキエのあそこを愛撫した。
ユキエはその端正な顔を、歪め、早くイかせてと懇願する。
「いいわ。イっても。」怜奈は、指を速める。
「ああああ。」とユキエは、首を振りながら、
「イっちゃう。あたし、イっちゃう。あああん、だめえ・・・。」
ユキエは、あっけなくイった。

このプリクラ専用クラブで、素顔を聞くのはタブーだ。
しかし、ユキエは聞いた。
「怜奈、あたし、怜奈のこと、本気で好きになったようなの。
 タブーだけど、1つだけ聞いてもいい?」
「いいわよ。あたしも、ユキエのこと本気で好きだから。」
「怜奈は、男の人?女の人?」
「聞いてもがっかりしない?」
「しない。約束する。」
「男。」怜奈は、言った。
「あたしは、女。」
「あたし達、男女なんだね。」と怜奈。

「怜奈。今度、2時間全部、セックスしない。
 そのとき、怜奈は、怜奈のその姿で、あそこだけ、男の物がある設定で来てほしいの。」
「いいわよ。あたし、ユキエと結ばれたいから。」
「2時間立つ前に、わかれよう。あたし、自分に自信がないから。」ユキエは言った。
「わかったわ。あたしだって、男の自分に全く自信がないの。」怜奈が言った。
「素顔のままで、愛し合えたら、どんなにいいかしら。」とユキエ。
「ありえないわ。素顔のあたしは、今までモテた試しがないの。」
怜奈は少し、悲しそうに言った。

二人が会うのに、1週間も待たなかった。
2日後の日曜日に、会った。
怜奈は、比較的清楚な水色のワンピースを着て、
メイクも控えめにした。
やってきたユキエも、同じく、木綿のピンクのワンピースだった。
メイクも控えめだった。

「怜奈、そういう大人しいのもいいね。」
「ユキエも、清楚でステキだよ。」と怜奈は言った。

二人は、女同士でも入れるラブホテルに行った。
入ってすぐにキスをした。
ユキエはもう燃えていた。
怜奈は、それに応えた。
怜奈の下半身は男だ。
股の下に、あれを回してきたが、
大きくなって、ショーツを押していた。

キスばかり長くしていた。
その内、お互いに体を触り合った。
「ああ、怜奈、可愛い、大好き。もう、たまらないの。」
「ユキエ、あたしだって、我慢できないで来たの。」
「あん、怜奈は、柔らかいわ。
 可愛くて、たまらない。」
「ユキエ、あたし、今日は男なの。
 犯される覚悟はいい?」
「早く犯して欲しい。」
ユキエは、そこにしゃがんで、怜奈のショーツを脱がせた。
そして、怜奈のスカートを上げて、
すでに、隆々とした、怜奈の男の子を、口にふくんだ。
「ああ、ユキエ。あたし、感じるわ。」
「怜奈みたいな女の子に、こんなものがあると、あたし興奮する。」
ユキエの荒い息遣いを感じた。
「ユキエ、脱がして。」
「うん。」
ユキエは、自分も脱ぎながら、怜奈を、スリップ1枚にした。
ユキエも、スリップだけになった。

ユキエは、怜奈を抱いて、ベッドに運んだ。
ベッドで、体を合わせた。
二人で、体中を愛撫し合った。
ユキエは、愛液で、シーツを濡らした。

怜奈は、指で、ユキエの最も感じるところを攻めた。
ユキエは、悶えた。
大きな声を上げ続けた。
「怜奈、来て、お願い。」
「うん。行くわよ。」
怜奈は、ユキエに挿入した。
「あああ。」とユキエは声をあげた。
「あたし、バージンじゃないけど、初めてなの。」
とエリカは言う。
「あたしも、童貞なの。恥ずかしいけど。」
怜奈は、言って、体を動かしていった。
「ああ、これが、男の子なのね。」
「これが、女の子なんだね。」

怜奈は、どんどん感情が高まって、激しく突いて行った。
「怜奈、ステキ。あたし、幸せ。」
「ユキエ、感じてるのね。私もよ。」
「うん、すごい。もっと、犯して。もっと犯して。」
「いいわ。これでどう?」
怜奈は、激しくついて行った。
ユキエは、身もだえした。
声が途切れ途切れになり、やがて、叫び声を発した。

「怜奈、イきそう、イくわ。イっちゃう。ああ、イっちゃう。」
「あたしも、イっちゃう。いっしょにイこう。」
二人は、体を震わせ、叫びながら、果てて行った。

怜奈は、1度しかイけなかったが、
指を使って、ユキエを3回行かせた。
ユキエは、満足の表情をして、そのまま、眠ってしまった。
ユキエに毛布をかけて、
怜奈は、服を着て、ソファーに腰かけ、
可愛いユキエの眠顔を見ていた。

怜奈が、プリクラで変身して、2時間まで、あと10分だった。
ユキエも、同じころであるはずだ。
『そうか。今日のセックスで、ユキエと怜奈の関係を最後にして、
 ユキエは、本当の姿をカムアウトする気だったんだ。』
怜奈は思った。

怜奈もそのつもりだった。
「怜奈」としての最後のセックスにする。そして、
ユキエに自分の本当の姿を、見せる覚悟でいた。

10分が経った。
ユキエは、寝ていたが、毛布の中で、元に戻った。

『ユキエは、そんな女の子だったんだね。』
すでに、元に戻っている剛三は思った。
ユキエは、背が180cmを越える背の高い人だった。
横にも、ぽっちゃりとしている。
顔立ちは、可愛いとは言えないが、剛三は、親しみを感じた。

ユキエは、眠りから覚めていた。
目を細く開けて、ソファーにいる剛三を見た。
『そうだったの。怜奈は、背が低い人だったんだ。
 そして、やせている。
 でも、眼鏡の奥の瞳がやさしい。
 年は、私より、少し上。
 モテる人ではない。
 きっと、自分はモテないと、劣等感を抱いて来た人だと思う。
 私も、劣等感の塊で来た。
 怜奈なら、あたしの気持ちをわかってくれるかも知れない。』

ユキエは、毛布を胸に当て、起き上がった。
「あたしは、由紀恵。漢字なの。怜奈、名前を教えて。」
「ぼくは、剛三っていうんだ。怜奈とは、似ても似つかない。」
「服を着るから、向こうを向いていてくださる?」

由紀恵は服を着て、剛三の隣に座った。
「ビールでも、飲まない?」と剛三。
「ああ。いいわね。」
冷蔵庫から、ビールを出して、二人で、乾杯した。
「ぼくねえ、女性とこんなにゆったりした気持ちでいられるの、初めて。」
剛三は、言った。

「あたしもなの。仕事以外で、男性に面と向かって話せたことないの。
 だから、今、とても不思議な気持ち。」
由紀恵は言った。

「例えばだけど、由紀恵さんは、ぼくと並んで歩くの、恥ずかしくない?」
「剛三さんが気にしないでいてくれたら、私も平気。」
「由紀恵さんは、思い切り背が高いから、
 ぼくは、かえって平気。」
「あなたが、平気なら、あたしも平気。」

二人は、見つめ合った。

剛三がにっこりした。

「由紀恵さんに出会うまで、ぼくは、38年も待った。」
「あたしは、剛三さんに出会うのに、36年も待ったの。」

二人は、目と目を合わせ、ほほ笑んだ。
「もう一度、乾杯しない?」
「ええ。しましょう?」
「乾杯!」

もちろんのこと、二人は、結ばれます。

めでたし、めでたし。


<おわり>


■次回予告■

次は、可愛い高校生男子のお話です。
2300タウンがどんなところであるか、
それも、少し紹介されます。

プリクラ2300・小峰剛三の巻①「次世代プリクラ登場」

プリクラ2300・小峰剛三の巻①「次世代プリクラ登場」

小峰剛三は、38歳。小さな銀行のサラリーマンだった。
なんとか窓口勤務は逃れたものの、
もっとも単純な、帳簿の整理が主な仕事だった。
身長は、152cmと大変小柄だった。
そして、とてもやせている。
しかも、黒縁の度の強いメガネを掛けている。
このスタイルは、中学のときから同じで、
剛三は、中学、高校、大学と、女子にモテたという経験がなかった。
いや、話したことも、ほとんどない。

イケメンでカッコイイ男子を、どれだけ羨ましいと思ったことだろう。
運動ができる奴を、どれだけ羨んだことだろう。
そんな、剛三が、唯一の心の支えとして、楽しんだのが女装だった。
女になれば、低い身長は、めっだたない。
ただ、女装をしても、剛三は、女性的な顔立ちではなかった。

剛三が高1のとき、プリクラがあった。
だがその頃のプリクラは、
女の子の顔の欠点を見事に隠し、みんな可愛い子に写してくれる、
小部屋型の写真スタジオだった。
女子限定のマシーンだったが、
剛三は、女装をして、自分を撮りに行った。
すると、出来て来る写真は、とても可愛い女の子だった。
もう、他人とも言える写真だったが、
剛三はうれしかった。
その写真をとっては、貯めて行くのが、剛三の密かな楽しみだった。

社会人になっても、そんな日が、ずっと続いていた。
それが、剛三が、34歳のとき、
カラオケの画期的なマシンが、レトロタウンで許可になった。
2時間という制約があるが、その新カラオケは、
人を変身させてくれると言う。
剛三は夢かと思った。
女子のみという制約がないらしい。
ただ、変身の年齢に制限があった。
18歳以上のものは、18歳以下になれない。
18歳未満のものは、18歳以上になれない。
また、2時間変身したら、24時間以内、変身はできない。

大変な人気で、連日すごい行列だった。
剛三は、人気が落ち着くまで、1年待った。
そして、35歳のとき、初めて、カラオケの小部屋に入った。
音声ガイドにしたがって、
どんな女の子になるかという設定を進めるうち、
最後の選択に残った4人の女の子を見て、
『ほんとに、この中の一人になれるのだろうか。』と、身が震えた。
ファッション・モデル級の女の子だった。
長い髪で、抜群のプロポーション。
くっきりとした洋風の顔立ち。

剛三は、最後に、一人の特別に可愛い女の子を選んだ。
後の設定を、すべて標準にした。
いよいよ、「変身ボタン」を押すときが来た。
剛三は、胸が震えてならなかった。
深呼吸をして、変身ボタンを押した。
眩い光に包まれた。
「変身が終わりました。」の声。
剛三は、そうっと目を開けた。

「ああ・・・。」
鏡に映っているのは、自分には遥か高嶺の花である、
ファッショナブルな女の子だ。
「3分後に、声や無意識的行動が、発動します。
 2時間で、変身から、元に戻ります。」
そう、アナウンスがあった。

剛三は、小部屋の外に出た。
脚を見ると、ハイヒールを履いている。
肩から、オシャレなバッグを下げている。
小物まで、変身していることが不思議だった。

3分がたった。

外に出た。
ショウウインドウに移っていたのは、ステキな女の子だ。
白いワンピース。
胸にアクセサリーがある。
ウィンドウに映っている自分の歩き方は、女の子だった。
『道を聞いてみよう。』と思い、男の子に人に、聞いた。
「それは、あっちだよ。」と高校生風な子は、言った。
自分の声が女の子だった。
うれしい。
ときどき、髪をかき上げる。
そんな癖まで、身についている。

剛三は、あまりのうれしさに、下着をぬらしてしまった。
剛三は、いい年をしてと思いながら、カラオケ・ボックスに入った。
そして、女の子としての初めての自イをした。
鏡に映っているステキな女の子が、
快・感に身を震わせ、切なそうな表情をして、
首を振りながら、果てていった。
最高だった。
こんな喜びが、この世にあることに感激した。
そのときの感動は、一生忘れられないと思った。

3年後。

剛三は、プリクラの使い方にも慣れて来た。
変身後、どう遊べばいいかも、バリエーションを増やしていった。

最近は、金曜の夜、ファッショナブルなミニの、ドレスに身を包み、
渋谷に似た街で、深夜からのディスコに行くことが、
剛三の楽しみになっていた。

金曜日の午後になった。
この頃、剛三は、ある決まった女の子にばかりなっていた。
その子を、剛三は好きだった。
年は、19歳に設定。
この日は、真っ赤なワンピースを着ていた。
スカートは超ミニで、裾にフリルがたっぷりとあった。
ルージュも真っ赤で、アイメイクもばっちりな女の子だ。
そんな自分を、剛三は怜奈(以後剛三を怜奈)と名乗っていた。
完全な肩見せて、細い紐が、肩にかかっていた。

クラブでも、「プリクラ中・お断り。」というところがあった。
逆に、「プリクラ中・専門」というところもあり、
怜奈は、そちらに行った。
こちらの方が、ずっと気楽だ。
いちいち客同士、「プリクラ中です。」と断る必要がない。
覗く限りでは、プリクラ禁止クラブより、プリクラ専門クラブの方が、
イケメン、美少女の集まりで、ずっと水準が高く見えた。
プリクラでは、ダンス技能のオプションがあるので、
みんな上手に踊っている。

怜奈は、ここで、体を動かしながら、音楽のシャワーを浴びるのが好きだった。
「ユキエ、来てるかな。」と怜奈は思った。
ここで知り合った、怜奈の友達だ。
いた。
今日は、紫のドレスで、エナメルの黒い靴を履いている。
人の間をぬって、怜奈は、ユキエのところに行った。
ユキエが、怜奈に気がついた。
「怜奈。わあ、また、今日はステキね。」
そう言って、ユキエは、怜奈を抱きしめ、
それからは、チークで踊った。
怜奈が、少し背の高いユキエの首に腕を回している。
ふと、思う。
いや、何度も思った。
ユキエが、自分の実態を知ったら、幻滅するだろうな。
しかし、ユキエだって、どんな人かもわからない。



■次回予告■

さてさて、二人の運命はどうなるでしょうか。
ま、ハッピーエンドに決まっているんですけどね。
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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