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美加とユナ <第2話>「超傑作のDVDを見ながら」

第2ブログへようこそ!
昨日の2人が登場し、第2話です。私は、ピアノの先生と生徒というシチュエーションが大好きで、実は、もう2度も書いています。そして、今日もなんです。「あきれる…。」なんておっしゃらないで、読んでくださるとうれしいです。

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美加とユナ <第2話>

アメリカに行っている美加とユナの友達涼子から、
DVDが送られてきた。
中を見るとアダルトものだが、涼子の手紙には、「超傑作」と書いている。

そのとき美加の部屋にユナもいた。

表紙を見ると、金髪のセミショートの美しい先生に、
髪の長い、妖精のような女の子が抱き付いている。

「まず、この先生は、絶対あれがあるわよね。」と美加は言った。
 涼子が、傑作と言う限り、それは間違いないわ。」
「ピアノの先生だから、すごく気品があるわね。
 こんな美しい人に、あれがあったら、あたし気絶する。」とユナが言った。

「抱きついている妖精みたいな子、若いわ。」と美加。
「うん。14が15歳くらいに見える。
 これこそブロンドっていう綺麗な髪だわ。背中の真ん中まである。
 ふわっとカールされた前髪が可愛い。」とユナが言った。

「先生が、この少女にえちをするのね。」とユナ。
「この少女は、未成年よ。それは、ビデオでも無理じゃない。」と美加。
「でも、この国って、けっこうなんでもありだったりするじゃない?」ユナ。
「半分、ロリータものってわけね。」美加。

このとき、美加は、茶のタイトなニットワンピースを着ていた。
ユナは、チュニックを2枚重ねをしていた。
見せブラをつけている。

ビデオの中の先生は、下は黒のタイト・スカート。
上は、光沢のあるシルクのブラウス。
少女は、肩見せの、前ボタンの白いムームーのような薄手の服を着ていた。
少女の頭につけた、大きな白いリボンが、少女を幼く見せている。

画面の中では、ピアノの丸い椅子に腰掛けた先生に、
後ろから、金髪の少女が、甘えるように、先生の首に腕を巻き、
腕をクロスして、先生の胸に、手を当てている。
そして、先生の胸を、ゆっくりと揉み始めていく。

「ユナ、ちがうわよ。少女の方が、先生を愛撫してるわ。」
「わあ、ほんとだ。先生の顔、赤くなってる。」
「『やめて、アリス、恥ずかしいわ。』って言ってるのかな。」

残念ながら、声は英語である。よくわからない。

「わあ、女の子、とうとう先生のブラウスに手を入れたわ。」
「ああ、萌えちゃう。」
「先生のアソコ、早く見たい。」
「早送りしようか。」
「だめよ。」

少女は、とうとう先生のブラウスのボタンを全部はずして、
それを脱がせ、ブラウスで先生の手を背中の後ろで縛った。
そして、先生のブラを上にあげ、本格的に愛撫を始めた。
ときおり、胸の先を、両手で、くりくりと揉む。
そのたびに、先生が快感に震える姿が映る。

「美砂。あたし、かなり来ちゃった。
 いっしょにショーツ脱がない。」とユナが言う。
「うん。」美沙もショーツを取った。
「そろそろ、少女が、先生のスカートに手を入れると思わない。」
「思う。ああ、早く入れて。」とユナは言った。

少女は、先生の上半身を散々愛撫しておいて、
そのころやっと先生にキスをした。
(先生は、ブラウスで、手を後ろに縛られている。)
濃厚なキスを、少女がする。
少女の手が、先生のタイト・ミニの黒いスカートにかかった。

「ああん、美沙、あたし、我慢できない。」
美沙は、ユナの「男の子」を、そっと撫でているのだ。
ユナも、美沙のニット・ワンピースに手を入れて、
美沙の「男の子」にタッチしている。

ビデオでは、先生は、懸命に足を閉じようとしているが、
少女によって、白いデルタがあらわにされる。
少女は、そこを刺激すると、先生は、脚を開いてしまう。
先生のスカートは、腰まで上がってしまい、
中のショーツに、男の証が、くっきりと浮かび上がっている。

「あああん、美沙、やっぱり先生は男の子、たまらない。いきそう。」
ユナが言った。

少女は、先生のショーツに手を入れて、マッサージをはじめる。
先生は、声を殺しながらも、快感の声をもらしている。

そのとき、少女は、一時、先生の愛撫を止め、
自分の肩見せのワンピースに手を入れ、自分のショーツを抜いだ。

美沙とユナは、見た。
少女の柔らかなワンピースのスカートの一部が山になっている。

「いやん、美沙。あの子も男の子じゃない?」とユナ。
「そうみたい。どうしよう。あたし、気絶しそう。」と美沙。

少女は、自分の膨らんで固くなったものを、
先生の背中でこすり始める。
先生の驚く顔。
「アリス、まさか、あなたも、男の子?」
と先生が言っているかのようだ。

少女は、先生の前のピアノの上に腰をかけ、
先生の目の前で、少しずつスカートを手繰って行った。
やがて、少女の固くなったものが、先生の目の前に現われる。
それは、上を向いていた。
驚く先生の顔。

「あああん、あたしだめ。美沙、ゴムはめておこう。
 そそうしちゃう。」
「うん、あたしも。」
美沙とユナは、抱き合いながら、あそこを互いに愛撫しながら、
ビデオを見た。

少女の「男の子」を、先生は前にかがんで、口の中に含む。
少女の陶酔の声は、英語でもわかる。

少女は、思い立ったように、ピアノから降りて、
先生の脚を広げ、ショーツを剥ぎ取る。
先生の「男の子」も、硬直して上を向いている。

少女は、先生を立たせ、強く抱いてキスをした。
少女は、先生の後ろに回り、先生のブラウスの縛りを解いて、
先生のタイトミニの中央をたくし上げて、先生の恥ずかしいものを上に向けた。
いやいやをする先生。
快感の声を連発し、体を震わせている。

「アリス、先生だめ、もうだめ、いくわ。いく、いく、ああああああ・・。」

先生は、白い液を、ピアノのところまで、
発射してしまった。

その後、先生は、がっくりとなり、ふかふかのジュータンの上に女の子座りをした。

アリスは、先生の顔の前に立って、スカートを上げ、
先生の口の中に、自分の「男の子」を入れた。
そして、先生の頭を押さえながら、先生の口を丘し始めた。

激しく、腰を動かすアリス。

やがて、恍惚とした表情を見せ、
苦痛に似た表情を見せ、
言葉を発しながら、ぶるぶると震え、先生の口の中へ果てていった。

美沙が、ビデオを止めた。

美沙とユナも果てていた。
「美沙、何時いっちゃった?」ユナが聞いた。
「先生が、いっちゃうところ。ユナは?」
「先生の口を、アリスが丘しているところ。」
「ビデオ、まだ20分よ。あと4話あるみたい。」と美沙。
「もったいないから、別の日に見よう。」とユナ。

美沙とユナは、昼を作って食べた。

それから、1時間くらいして、
まだ、興奮の余韻が残っていて、
ベッドの上で、ビデオなしの2回目をした。


<第2話 おわり>


■次回予告■

新作が、もうすぐ書けるといいのですが、
また、この2人か、過去の作品を再投稿します。

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ブログランキング、「人気ブログ」は、4位で安定しています。
どうぞ、この順位で安定させてくださいませ。
ポチをくださると、うれしいです。





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美加とユナの冒険<1話完結>

第2ブログへようこそ!
ちょっとリラックスして、短編を書きました。1話完結です。
この2人の冒険は、シリーズ化できたらいいなと思っています。
読んでくださるとうれしいです。

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「大井美加と高崎ユナ」<第1話>

大井美加(女装名)と高崎ユナ(女装名)は、
今、鏡の前で、女の子に変身したところだ。
ある女子高の制服を着ている。
胸にふさっりとしたリボン。そして、クリーム色の上着。
紺の膝下のソックス。
二人は、これから冒険をしてみるところだ。

二人は大学1年生。
ブログをもっていて、女装ランキングで、
トップ2を誇る二人だ。

美加の方は、都心にワン・ルームマンションを借りている。
ユナは、母と息子の2人家族で、女装は、母の公認である。
だから、髪を伸ばし、大学も女装で通い、24時間女の子で過ごしている。
そのユナも母に言えないことがある。
女装子同士でセックスをしていることと、自分が女性ホルモンを打っていることだ。
高2のときに打ち始め、2年間で、今、Bカップほどの胸がある。

大学生の二人だが、二人とも童顔で、16歳くらいにしか見えない。

二人は、近くにある女子高の名門桜台女子学園の制服を買った。
そして、靴、カバンも。

二人の大学のない水曜日、二人は、桜台女子学園に侵入しようと企んだ。
学園はメイクが禁止なので、すっぴんで行かねばならない。
美加は、この日のために、美容院へ行って、
一番女らしい髪型にしてもらった。
そして、眉も細くしてもらった。
ユナは、すでに髪と眉はクリアしている。

二人は、桜台の制服とカバンを持って、美加のマンションを出た。
二人とも背は160cm前後。
風景に溶け込んでる。

「ね。少し自信つけにいかない。」とユナが言った。
そして、ひそひそと話した。
二人は、コンビニに入り、チョコをお互いに買った。
カウンターには、同年の高校生の女の子がいた。

美加がまずレジでチョコを買った。
次のユナは、レジで、
「ね、さっきの子、今はやりの『男の娘』じゃない?」と聞いた。
「え?ほんと?うそ!女の子よ。可愛い子だったもの。」とレジの女の子。
「あたしは、『男の娘』なんだけど。」
「冗談。なしなし。」とレジの子は、冗談にも乗ってくれなかった。

ユナが出てくると、
「どうだった?」と美加。
「パスよ。高校生の女の子にパスできたから、絶対。」ユナ。
「ユナは、あたしより遥かに女の子だもんね。」美加。
「じゃあ、自信もっていこうか。」ユナ。

二人は、女子学園の下校の3時ごろを見計らって、
やってきた。
「みんな、下校してるのに、中に入るの変じゃない?」とユナ。
「そういう子もいるんじゃないの。」と美加。

二人は、門を通り、守衛のおじさんに、にっこり挨拶をして入った。
女生徒が、いるいる。ところかしこにいる。
「あたし、興奮してきちゃった。」とユナ。
「あたしも。でも、ショーツで押さえてあるから大丈夫。」

「ね。思い切って、校舎の中入っちゃおうよ。」
「うそ。本気?」
「そのために、上靴もってきたんじゃない。」と美加。

二人は、靴箱の並んでいる昇降口に入った。
靴を取り替えて、中に入っていった。

「わあ、まだ人が大勢いる。」とユナ。
「空いてる教室見つけて、入っちゃおう。」
「うそー。だめよ。」
「じゃあ、トイレ入っちゃおう。
 そこで、ショーツ脱いで、ハレンチごっこで行こう。」
「美加、本気?」
「本気も本気。」

二人は、女子トイレの並びの個室に入った。
幸い人はいなかった。
「ユナ、いい、ショーツとるのよ。」
と隣から、美加の声がする。
「やってるわよ。」ユナは言った。

出てきた。
「美加。どうしよう。興奮して、スカート盛り上がってる。」とユナ。
「カバンを前にしておけばいいの。」と美加。
「そうか。」
再び廊下を歩いた。
「ああん、美加。下からすーすーして、たまらない。」
「最高のスリルね。」
「お願いだから、外行こう。」
「うん、いいわよ。」美加が言った。

大学並みに広い校舎で、回ったらきりがない。
「美加。あたし、たまらない。」
「それって、処理したいってこと。」
「うん。だれもいないところ探そう。」

二人は、古い倉庫が並んでいる裏の並木道へ行った。
「ここなら、誰もこないわ。」と美加。
「うん。」
そう言って、ユナが美加に胸を当ててきた。
「ユナ、あなた胸があるんだから、あたし感じちゃう。」
「この高校にもレズの女の子いるかなあ。」
「いるわよきっと。」
「ユナ、後ろから抱いてあげる。」

「うん。」
美加は、大きな木にもたれて、ユナを後ろから抱いた。
そして、ブラウスのボタンを1つはずし、
ユナのブラの中に手をいれた。
「いいなあ。本物があるって。」美加は言った。
ユナの息がだんだん荒くなっていく。

美加は、ユナの乳房の先を、指でくりくりと揉んだ。
「ああん、そこ感じる。」
「両手でやってあげる。」
美加は、もう一つボタンを開けて、
ユナのブラを上にずらして、両乳首をくりくりともんだ。
「あああああ・・・・・。」
ユナは、外でもあることから、声を殺してうめくように声を上げた。
ユナは、カバンを下に置いている。
ユナの、スカートの一部が、完全に山になっていた。

美加は、ユナのスカートをたぐって、
ユナの、女の子にあるはずのないものを露にした。
そして、ゆっくりと上下にマッサージをした。
「だめ。恥ずかしい。」とユナが体を震わせた。

戸外ということの刺激で、快感が2倍にも3倍にも感じられる。

「ああ、ユナ、可愛い。どの女の子よりも可愛い。」
美加はそういいながら、優奈のPを刺激していった。
ユナは、懸命に声を殺している。
だが、それでも、声が漏れる。
美加は、刺激をはやくした。

「美加、あたし、だめ、いきそう。お願い、いかせて。」
ユナの体の震えからも、それが感じられた。
美加は、ユナのスカートを大胆にたくし上げた。
固く大きくなったものが、上を向いている。
「ユナ、ここは外よ、出しちゃっても大丈夫、そのままいってしまなさい。
「いやん、人が見てたら、いや。恥ずかしい、死ぬほどはずかしい。」
「恥ずかしいのっていいでしょ。大勢が見てると思っていってしまいなさい。」
「ああ、もう我慢できない。あたし、いく。いっちゃう。あああああ・・・・。」
ユナは、体を激しく震わせながら、前方に、噴射した。

美加は、ユナの前に来てしゃがみ、ユナのものを綺麗になめた。



その後、ユナも美加と同じようにして、美加をいかせた。

「ああん、最高。外でするのやめられない。」美加がいった。
「あたしも、最高の刺激だった。忘れられない。」ユナがいった。
「誰かに本当に見られてたら、もっと興奮するかなあ。」とユナが言った。
「うん、多分、興奮しまくっちゃうかも。
 でも、それって危ない領域だから、やめておこう。」美加は言った。
ユナが、くすっと笑った。

ふたりは、満足した後、女子高の制服を着ていることが、
急に重く感じられて、美加のマンションへの道を急いだ。



<第1話 おわり>


■次回予告■

新作を考えているのですが、書けないときは、
この2人の<第2話>を書きたいと思います。

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ランキングが、4位に下がりましたが、
私としては、十分満足しています。
いつもありがとうございます。
今日もポチをくださると、うれしいです。







倉田洋二の物語⑦「世界陸上・出場資格獲得大会」最終回

最終回です。このお話は、ノンフィクションの部分もありますが、
敬子が出場する大会や、敬子の記録は、すべてフィクションです。
書いている内に、つい乗ってしまい、とても長くなりました。
終わりまで、お付き合いくださると、うれしいです。

=============================

「体育科クラス対抗リレー」が終わった次の日だった。

敬子と洋二が練習の準備をしていたとき、
クラスのみんなが、グランドの丘の道路のところに集まってきた。
見るとクラスの連中だけではない、中・高クラスの連中も集まっていて、
100人近くになっている。

道路から、長田という男子が叫んだ。
「俺達さあ、倉田の100m全力走を見に来たんだよ。
 片桐は、女子のチャンプだから、
 倉田は、その片桐よりどれだけ速いか見たい。」
「この前は、400mだったから、100mの走りが見たいんだ。」
と別の学生が行った。
「二人で、一緒に走ってよ。」

洋二は、ワンピースではなく、ジャージを来ていた。
「倉田君、どうする?」
「みんなの見てる前で、リラックスして走る、敬子の練習になるね。
 OKしよう。」と洋二は言った。
敬子が、OKマークを出した。
みんなが、「おおおおお。」と完成をあげた。

「そういえば、倉田君と競争したことない。
 倉田君、どこまで速いの?」と敬子が聞く。
「ぼく、速いぞー。」と洋二が、笑いながら言った。

「『スターティング・ブロック』があたしのしかない。」と敬子。
「ぼく、いらない。スタンディングスタートでいく。」と洋二。

洋二は上着を脱いだ。

多くの学生は、純粋な短距離では、敬子の方が速いとと見ていた。
ストップ・ウォッチを持って計測している者もいた。

係りが行って、「よーい、ドン!」をした。
やはり、スタンディングスタートであっても、洋二が体1つ速い。
ここで、「おーすげえ!」とわかる学生もいた。

猛ダッシュの30m、ここで、敬子は3m抜かれた。
そこから、50までに、差は5m。
『速い、やっぱり、倉田君は速いんだ。』と敬子は感激していた。

50から70mまでに、差は、7m。
そこからの、洋二は、ヒューンと行ってしまう弾丸に見えた。

敬子は、洋二に、10mは、抜かれた。
完全に1秒ちがうと思った。

計測していた一人が、
「すげっ。10秒1!オリンピック並みだよ。」と叫んだ。
「やっぱり、本当に速いんだ。」
「あんな、速い走りみたこともなかったよ。」
みんなが、すごい拍手をした。

「ありがとう。目の保養になったよ。」
「俺らもがんばるよ。」
そんな言葉を残して、みんなは、解散した。

敬子は、感動に近い気持ちでいた。
「倉田君。もし倉田君が、選手やってたら、
100mで、オリンピックいけたんじゃない?
ブロッグおいて、スパイク履けば、10秒の壁破れるかも知れない。
それなのに、あたしのコーチやってくれるの?
あたし、倉田君がもったいなくてたまらない。
ほんとに、あたしのコーチでいいの?」
敬子はそう言った。

「コーチやらせてってたのんだの、ぼくの方だよ。
 ぼくは、毎日片桐さんが走るの見るのが、心の安らぎだった。
 陸上って孤独なスポーツだから、2人でやれたらなあと思ってたの。
 ぼくにも、孤独な気持ちがあったから。
 感謝したいのは、ぼくの方だよ。
 二人で、世界陸上で、金メダルを狙おうよ。」
洋二はそう言った。

敬子は、涙一杯にして聞いていた。
「うん、がんばろう。」敬子はそう言った。



暑い夏の練習を終えた。
敬子と洋二は、筋肉トレーニングや、部分練習を重ねてきた。
「片桐さん、もも、あと7ミリ上げる!」
と洋二の声がかかる。
「あと3ミリあげる!」
「肩を、1cm落とせ。」
と常人には不可能なコーチングが、洋二から出る。

敬子は、20日ごとに、記録を0.1秒ずつ縮めていき、
8月の終わりに、ついに、11.0秒を出した。

「わあ、やったー。」と敬子は、その場で、膝をついて、泣いた。
計時をしていた恵美(A子)や良子(B子)も、
敬子に抱きついて泣いた。
「敬子、よくやったね。世界タイ記録だよ。」と恵美は言った。
「みんな、ありがとう。みんなのおかげ。」と敬子は泣きながら言った。

「敬子、世界のトップ・スプリンター達だって、毎日練習してる。
 10.7秒くらい出しておこうよ。」
洋二は言った。
「うん、そうだね。」
敬子は言った。



敬子は、公式記録の経歴が高校以来なかったため、
顧問教官の押切義男に相談した。

押切義男は、三段跳びで、オリンピック4位に入った経歴をもっていて、
顔が広かった。

押切の手配で、大阪で行われる、「関西学生陸上大会」に出場した。
敬子が大学生になって初めて出る、公式戦だった。

コーチ1人洋二が付き添った。
大阪までの旅は楽しかった。

競技までの時間、洋二は、敬子の柔軟を手伝いながら、
「勝とうと思っちゃだめだよ。あくまで、自分の走りをするんだよ。」
洋二は言った。
敬子には、洋二から何百回も聞いた言葉だった。
勝とうとすると、体が硬くなる敬子の癖を、洋二は知りつくしていた。

第一予選 11秒3。
第二予選 11秒3
決勝   11秒2

が出たとき、陸上界と報道は、沸きに沸いた。

『日本新記録。世界記録に0.2秒に迫る新星・衝撃のデビュー』
などと、新聞に報道された。
テレビ各社は、敬子の若さと美貌を評価して、
インタビューを数回、テレビ出演も2回行った。
大手新聞にも出た。
おそらく、日本中で、片桐敬子の名を知らぬものは、少なくなった。

待たれるのは、1ヶ月後の「世界陸上選手権・出場資格獲得大会」だ。
このレースで、上位2名に食い込めば、
次年度の「ヘルシンキ世界陸上」への出場が決まる。

そのころ、敬子は、10秒台を頻繁に出せるようになっていた。
ベストは、10秒8。

あるとき、敬子は洋二に聞いた。
「もしもよ。あたしが、10秒8を出せたら、
 大変なことになると思うの。
 報道機関の要請は、前の大阪大会の比でははくなると思うし、
 なんか、自分のペースが、崩れてしまいそう。
 次の大会は、11秒1くらいで走る方がいいかも知れないって。」

洋二の考えは、はっきりとしていた。
「全力で走らないなんて、大会に失礼だよ。ライバルにも失礼だと思う。
 日本中の期待に対しても申し訳ないよ。
 今、プロの人たちは、みんなマスコミの攻撃に合ってる。
 でも、そんなのにつぶれるプロの人はいないじゃない。
 マスコミの人たちは、日本中に片桐さんのことを伝えてくれる。
 すると、片桐さんに憧れて、陸上への夢をもつ子供達が増えて行く。
 子供だけじゃない。片桐さんの走りから、元気をもらう大人もいる。
 大勢の人を勇気づけることができるかもしれない。
 だから、常に全力だよ。
 それしかないよ。」

「そうか。倉田君は、あたしより、いつも少し大人だね。
 あたしも、倉田君のように考えられる人になりたい。」
「ぼく、敬子のコーチだからね。」
二人で、笑った。



10月の末になり、いよいよ「世界陸上選手権・出場資格獲得大会」の日となった。
会場は、名古屋だった。
付き添いは、洋二と共に、陸上部顧問の押切義男加わった。

大会は、テレビ放映されるため、
関係者は、皆テレビを見ていた。

敬子の家族は、長野で、両親と妹が二人いた。
「お姉ちゃん、これに勝つと、外国の大会へいけるの?」
と中1の朱美が言った。
「そうらしいよ。」と父の正志が言った。
「外国行くの、お金かかるね。」と高2の好美がいった。
「なんか、陸上連盟で出してくれるそうよ。」と母の美紀子。
「じゃあ、ただで行けるんだね。」と朱美が言った。

洋二の家では、母と妹二人。
「洋二が、片桐さんのコーチだって。」と母。
「信じらんないよね。」と妹の弘子。
「お兄ちゃん、ひどい運動音痴よ。」と下の妹の美砂。

大学の体育科の1年から4年生のほとんども、テレビを見ていた。
特に、敬子のクラスは、大学のテレビ室に集合して見ていた。

敬子は、そういう人々の顔を思い浮かべた。

予選が2つ。そして、決勝。
敬子は、洋二の言葉。
「出し惜しみをするな。全部思い切り走れ。」
を思い出していた。

第1次予選。
敬子は、いきなり11秒0を叩きだした。
日本女子100m初である。
これには、日本中が沸いた。

それぞれの家庭で、喜んでくれている様子が、敬子の目に浮かんだ。

第2次予選。
同じく11秒0。

ずべて、トップでゴールした。
11.0秒がまぐれでないことを証明した。

決勝戦の前。
洋二が、柔軟を手伝いながら言った。
「いままで、追い風だったけど、決勝戦は無風になるよ。
 公式記録を出すチャンスだよ。」
「倉田君の言いたいことわかった。
 10秒台を出せ、でしょ。」
「あはっ。その通り。」

洋二が予想した通り、決勝戦は無風だった。
集まった、6人の選手の中に、敬子が今まで尊敬してやまなかった依田恵理子がいた。
依田は、30歳の最年長。

みんなが、スターティング・ブロックに着く前に、
依田が、大きな声で言った。
「みんな。勝っても負けても、あとくされなしでいこうね。
 してきた努力は、みんな同じだからね。」
みんなが、にこっと微笑んだ。
ああ、ステキな人だと敬子は思った。

ブロックに足をつく。
敬子のブロックは、前足と後ろ足が近い。
洋二と工夫した、弾丸スタートを切るためのものだ。
これには、腕の力を必要とする。
そのトレーニングもした。

心臓がドキドキして、音が聞こえるようだった。

やがて、「用意。」の声がかかる。
地面を見ながら、音だけを聞く。

ピストルが鳴った。

やった、体1つリードだ。

敬子は、洋二と工夫した、脚を少し内股にした走法でダッシュする。
30メートル地点を、1位で通過した。
「ももを高く、飛ぶように走れ!」
はっと洋二の声が聞こえたような気がした。
見ると洋二が、前を走っている。
ああ、体が、洋二に吸い込まれる。
はじめて、ラビットをしてもらったあの感じだ。

50メートルを通過した。
「速く走ろうと思うな。足の動きに手を合わせろ。」
その声を発しながら、洋二が、どんどん走っていく。
ああ、付いていける。少しオーバーペースだけど、行ける。

「さあ、70メートル地点だ。かかとをつけるな。息を止めるな。」
洋二は、一番苦しいところでスピードを逆に上げる。
しかし、付いていける。
「90メートル地点だ。フォームを変えるな。ただ、ゴールを突ききれ!」

敬子は、ゴールを突ききった。
思わず、周りを見たが、洋二はいない。

2位に大差をつけていた。
いいタイムが、予想された。

やがて、電光掲示板に、1位10.7秒の数字が出た。

敬子は、タイムを見ながら、
その場で、手で顔を覆い、膝を地面につけて泣き出してしまった。

わああ~と、会場中は、総立ちとなり、拍手や声援を送った。

「すごい、お姉ちゃん、すごい。」と敬子の妹の朱美が飛び跳ねた。
家族中で抱き合って喜んだ。

大学の教室では、敬子と洋二のクラスメイトが、みんなではしゃぎ回った。

グランドの招待客でいた押切は、回りの客から、握手攻めに合った。

テレビでは、アナウンサーの熱狂的な声が繰り返されていた。

敬子と戦った5人の選手が、敬子を囲んで、抱きしめてくれた。

敬子は、ゲートを見て、洋二のところへ走って行った。
「片桐さん、最高の走りだったよ。初めてだけど、100点をあげる。」
と洋二は涙を流しながら、にっこりとして言った。
二人は、強く抱き合った。
「何もかも、倉田君のおかげ。走ってるとき、倉田君が前で走ってくれてた。
 あたしは、ただ付いて行っただけなの。」
「さあ、ウイニングランをしておいでよ。」と言って、洋二がバスタオルを渡した。

「世界初の10秒台。公認記録です。今、日本中が感動と興奮に包まれています。
 片桐さん、おめでとう。感動を、ありがとう。」
アナウンサーは、そう言った。

観客に手を振りながら、ゆっくりとグランドを走る敬子を、洋二は見ていた。
そして、敬子の走った美しい姿を、脳裏に描いていた。

「片桐さん、おめでとう。今日の君は最高にステキだよ。」
洋二は心でそう言い、幸せに包まれていた。


<おわり>

■次回予告■

ちょっとセクシーな、1話完結のお話です。
私の願望がそのまま出ているような…。

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うれしいです。ありがとうございました。
今日も、ポチをくださると、うれしいです。





倉田洋二の物語⑥「クラス対抗リレー」

今日は、少し早い時間に、投稿いたします。もし、昨日の記事をお読みでないときは、
そちらから先に読んでくださると、うれしいです。

============================

4月の末、ゴールデン・ウィークの前に、
1年体育科、リレー大会が行われる。
小学クラスA、B、中学クラス、高校クラス。
この4つのクラスで、対抗レースをする。

1クラス、女子2グループ、男子2グループ。
1グループ8~9人。
一人200m、アンカーのみ400m。

つまり、合計4グループずつ全部で4レースずつ行われる。

洋二のいる小学クラスAでは、誰がどのレースに出るか、
わいわいと話し合っていた。

「どうせ、高校クラスは、ダントツだろうよ。」
「みんな、大会のメダリストばかりだ。」
「はあ~、俺たちせいぜい、もう一つの小学クラスBとビリを争うことになるな。」
「ビリは、免れたいよな。」

男女2レースずつやるが、後のグループが速いグループである。
女子の第2レースのアンカーは、片桐敬子に決まった。

「片桐は、男の誰よりも速いからな。」
「おお、男で陸上部の短距離いねーしな。」

男はどうするというときになった。
「倉田君。片桐さんより速いと思うわ。」とある女子が言った。
「ええ??ウソー。聞いたことない。」と男子。
「だって、敬子のラビットやってるのよ。
 ラビットって、選手より速くないとできないでしょう。」とその女子。
「そうだ。片桐のコーチやってるんだよな。」と男子。

それまで、ぽかんと聞いていた洋二に、
「倉田、第4レースのアンカーに決まったぞ。」
と誰かが言った。
「え?うそ。第4レースのアンカーって、
 あの各クラス、一番速い人が出てくるんでしょ。」と洋二。
「ああ、400mの本チャンが出てくる。高校クラスの松岡は、
 高校全日本記録保持者だ。
 中学クラスの、江崎は、1500mの記録保持者。」
 小学Bクラスは、1500mの大沢がいる。大沢も速い。
 つまり、俺たちには、倉田しかいないってことだ。」

こまったなあ…と洋二が考えていると、心のなかで、洋子の声が聞こえた。
『引き受けろ!洋二。あたしに走らせろ。松岡が、なんぼのもんじゃ!』

「ぼくで、いいのなら、いいよ。」
と洋二は答えた。
「おお!」とみんなは、アクションをしたが、本当は、ほとんど期待はしていなかった。

「倉田君。一緒にアンカーだね。」と敬子が言ってきた。
「うん、400mなんて走ったことないから、心配。」と洋二。
「あたしのコーチだもん。大丈夫よ。あ、プレッシャーかけちゃだめね。」
「『だめ元』って言ってくれると、一番うれしい。」と洋二は言った。



当日がやってきた。
この学年リレーは、授業の一環として行われるので、
体育科の教官たちが、大勢見に来ていた。

昼休みに、敬子が、洋二に、陸上用のランニングシャツと、短パンを持ってきた。
「これ、サイズ合うと思うから、着て走って。
 短パンは、ナイロンだから、引きつらないで、絶対走りやすいと思う。
 スパイクは、ないんだけど、倉田君、スパイクなしで速いもんね。」
「わあ、ありがとう。じゃあ、がんばらなくちゃ。すごく、うれしい。」
と洋二は言った。

洋二は、敬子のランニングと短パンを履いて、嬉しくてたまらなかった。
『敬子と一体となって、走る気分。』とにこにことした。
そして、その上にジャージを来て行った。
400mグランドに行くとみんな整列していた。
先生も大勢。
陸上部の松岡が、ルール説明や、このレースの目的などを言った。
拍手が起こり、いざ、第一レース。
女子の前半グループ。

選手は走り出し、すごい声援だった。
洋二のいる小学クラスAは、残念ながらビリ。
しかし、ムードは、ドンマイ、ドンマイだった。

次は、敬子の出る第2レース。
6人で走る。アンカーの敬子だけは、400m。
初めて、ビリじゃないレースが期待できた。

敬子は、速かった。
初めの100mで、1人抜いた。
そして2位に浮上。
先頭まで20mはなれていた。
しかし、先頭の女子は、400mが専門で、
200mを過ぎてから、ぐんぐんスピードを上げ、敬子に40mの差をつけて1位。
敬子は2位をキープ。

「ああ、やっとビリじゃないよ。」
などと言い合って、
小学Aのみんなは、肩を抱き合った喜んだ。

男子第1レースは、第3位に大差をつけられ、無念のビリに終わった。

そして、洋二の出る最終レースとなった。
洋二は、上着と、ズボンを脱ぎ、陸上のスタイルになった。
それを見たクラスのみんなは、わいわいと喜んだ。
「倉田、本格に見えるぞ!」
「倉田!また、奇跡を見せてくれ!」
「そのウエア、誰に借りた!」(敬子からと言ったら、みんな怒るだろうな。)
「倉田、脚長いな。その脚で、つっぱしれ。」

最終レースということで、洋二のクラスも、速い者をそろえていた。
野球部の吉田が、100m、12秒0、テニス部の江原が、100m、12秒8と、
このへんで、なんとか2番、3番を取りたいと思っていた。

スタートのピストルが鳴り、4人の選手はスタートした。
他のクラスにどんどん抜かれる。
期待のテニス部江原に来たとき、3位に20mはなされていた。
次、洋二の前の期待の吉田。
3位に離された20mを、15mに縮めた。

「いけ!いけ!」のムードが湧き上がったが、
洋二の手前、3mのところで、まさかの転倒をしてしまった。
吉田は運動神経が良く、転がりながらも、洋二にバトンを渡した。

これで、さらに差が開き、前の小学B組に25m、
その前の2位の1500mの記録保持者の江崎に60m、
先頭の400m記録保持者の本チャン中の本チャン、松崎に90mの差になった。

洋二がバトンをもらったとき、
『洋二、いくぜよ。』と洋子の声がした。
『うん、思い切り走る。』

バトンをもらった洋二。
速い。すごい、ストライドで、ぐんぐん飛ばず。
初めて、洋二の走りをみた男子の連中は、口を開けて見ていた。
「すげえ、本当に、速ええ。」
「おお、知らなかったな。」などと言っていた。

初めの、70mで25m先にいた小学Bクラスを抜いた。

「おおおおお!!」と声が出た。

敬子は、洋二の走りを惚れ惚れと見ていた。
考えれば、初めて見る。いつも自分が注意されるところを、洋二は完璧に走っていた。

最終レースとあって、すごい声援である。
「洋二のあれ、100m用のスピードだぜ。」
「ああ、あれで、400m持つかなあ。」
同様に、敬子は思っていた。
自分は、200mを過ぎたころから、一気に疲れが出た。
短距離選手では限界がある。

しかし、100mを過ぎても、洋二のスピードは、少しも落ちない。
次は、35m先の1500m記録保持者江崎に、200mの地点で、
肉薄したのである。
「わあ、すげえ!」と誰かが叫んだ。
皆の興奮は沸騰し、声援で何も聞こえない。

とうとう、江崎を、210mの地点で抜いた。
「おおおおおおおお・・・・。」とすごい声援が起こった。

あとは、一人、400m専門の松崎に30mだ。
コースは、残り200m。
松崎は、ビリを100m抜かそうと全速力で走っていた。
ここで、ビリを確かめた。
そして、仰天した。
ビリであった、小学Aクラスの倉田が、自分の後ろ30mにいるのだ。

「まさか、ありえない。高校全国1位の俺に差をつめられる訳がない。」
松坂は、焦った。
「差を広げて、初めて勝ったといえる。」
松坂は、気合のすべてをかけて、残り200mを走った。

しかし、洋二の速さは、初から少しも衰えない。
むしろスピードが増しているようにも思える。
「おーい、洋二のスピード落ちないよ。」
「どうしてだ。始めから全速力なのに。」
「まさか、まさかがおきやしねーか。」
小学Aのクラスの連中が、話していた。

それは、300m地点で明らかにわかった。
洋二が、松崎にあと15mと迫ったからだ。
残り100m、直線コースだ。
洋二のスピードは、一向に落ちる気配がない。

皆の心に、「これはもしや」という期待が生まれた。
「行けーーーーー。」とクラスの一人が大声を上げた。
グランドの声援は、最高潮に達した。
もう話し声も聞こえない。
全国高校No.1の松崎が抜かれる。
高校クラスの連中まで、皆、洋二の応援をしていた。

洋二のスピードは変わらない。
あと50mの地点で、洋二が松坂の真後ろにきた。
そして、70m地点で抜いた。

皆の声援が沸騰した。
「たのむ、たのむ、たのむ。」と洋二のクラスの中には、祈っている者もいた。

残り30mで、5mの差をつけて洋二はゴールを切った。
「うわあ~。」
「すげ~~。」
「感動だ~~~。」
男子も女子も、洋二につめかけた。

洋二のクラスの連中が、洋二を肩車して、練り歩き、
喜びを分かち合った。
その周りには、感動を一にした中学や高校のクラスの連中もいた。

力尽きている松崎のところへ、剣道の笹塚と柔道の近藤が来た。
「松崎、落ち込むことはないぜ。」
「あいつの怖さは、俺たちがよく知ってる。」
松崎は、二人を見て、
「それが、不思議な気持ちなんだ。
 俺、今、なんか感動しているんだ。負けたっていうのに。」
「わかる。その気持ちもわかるぜ。俺もそうだった。」と近藤が言った。
「なんなんだろうな。」笹塚は言った。

敬子は、泣きながら思った。
「倉田君、すごい。あんなにすごい人なのに、あたしのコーチをやってくれてる。
 もったいないよ。あたしは、世界で一番の贅沢者だよ。」

教官たちは、帰りながら、言い合っていた。
A「そうすると、なんですか。全国1位の松坂を抜いたということは、
 倉田は、全国1位ということですな。」
B「1位なんてもんじゃありませんよ。はじめ、90m後ろだったんですよ。」
C「あ、そうか。これは、大変なことですね。」
押切(陸上部顧問)「彼をほしいんですけどね、内の短距離の片桐敬子のコーチをしとるんですよ。
 また、そのコーチ振りが見事でしてね。二人は、世界陸上をねらっとるらしいんです。」
A「世界陸上100mでメダルが取れたら、これは、我が体育科最高の殊勲ですね。」
押切「そう思って、そっとしています。」
B「それが、いいです。それも、青春ですからなあ。」
などと言って、先生たちは、「あはははは。」と笑った。


つづく

■次回予告■

最終回です。
世界陸上出場権獲得大会。
敬子と洋二は、いよいよ世界陸上への切符をかけて、
出場権大会に出ます。ここで勝てば、夢の世界陸上です。

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倉田洋二の物語⑤「結ばれる二人」

今日は、後半、ちょっとひっかかりそうなんですが、
こっちの方に書くことにします。だめだったら、第2ブログに投稿しなおします。

敬子と洋二は、ほぼ毎日のように、一緒に練習した。
麗子の癖を直すのに、部分練習を何度もやった。
そして、タイムが、少しずつ上がっていった。
当時、世界記録は、11秒07。
しかし、12.0から11.5へは、比較的簡単。
この11.5からの0.1秒ずつが大変な重みをもつ。
「あと、0.5かあ…、重いなあ。」と洋二は言った。
「倉田君、まさか、世界陸上の優勝を考えてくれているの?」敬子は言った。
「もちろんだよ。世界最高の素質の片桐さんと、世界最良のコーチだよ。
 ぼくは、片桐さんのももが、どれだけ上がったか、ミリ単位でわかるよ。」
「わあ、頼もしい。あたし、うれしい。」と敬子は、洋二に抱きついた。
それが、洋二の一番嬉しいときだった。

そんな、4月の末に、クラスのコンパがあった。
(コンパと言うのは、一緒にお酒を飲む会。)
400mグランドの西に合宿場があって、
20畳の畳の部屋がある。
そこで、クラス一同集まった。

洋二は、ちゃっかり敬子の隣を占領していた。
洋二は、まだ、女の子座りができなくて、スカートなのに胡坐をかいていた。
敬子は、さすが女の子で、脚をそろえて、きれいに斜めに流していた。

会は始まり、初め司会がいたが、みんなの飲むペースが速く、
途中から、酔っ払いが続々増えてきて、司会の用はなさなくなった。
洋二は、注がれるままに飲んでしまい、すぐに、
バンザイの状態で、畳に伸びてしまった。

会が終わり、
酔っ払いは、それぞれ、付き添いが付いて帰って行った。
洋二はどうしよう…となったとき、敬子が、あたしが連れて行くといった。
敬子は、洋二をなんとか立たせ、連れていった。
残った中で、しらふの男数人は、洋二をうらやましがった。
「洋二、いいな。片桐だぜ。」
「ああ、でも洋二は半分女の子だからな。俺たちとはちがう。」
「でも、半分男だぜ。いいよなあ。」
などと言っていた。



翌朝、洋二がベッドで目覚めると、明るい朝の日差しの中で敬子がいる。
じゃあ、ここは、敬子のアパート。
「片桐さん、ぼくを泊めてくれたの?」
「うん、そうよ。」と敬子。
「片桐さんも、このベッドで寝たの?」
「そうよ。倉田君と抱き合って寝たの。」敬子はくすっと笑った。
(わあ~、鼻血が出そう、と洋二は思った。)
自分は下着、ワンピースは、壁に掛けられていた。

敬子に新しい歯ブラシを借りて、シャワーに入った。
敬子は、新品のショーツと、敬子の下着を貸してくれた。
そして、小さめのワンピースを貸してくれた。
『わあ、片桐さんの下着かあ~。』
洋二は、また鼻血が出そうだった。

キッチンテーブルで、トーストとオムレツをご馳走になった。

コーヒーは、ベッドの前のコーヒーテーブルでゆっくり飲もうと、敬子は言った。
広い部屋ではなく、洋二と敬子は、ベッドを背もたれにして、
二人ならんで、コーヒーのテーブルに向かった。

「あたしね、この前、倉田君から、目標は世界だって言われたとき、
 すごくうれしかったの。今までスランプで、地獄の底を歩いていたのに、
 視野が一気に、世界大会の会場に広がった。
 倉田君は、不思議な人。

 あたし、もう一つ、生涯にわたる大きな悩みがあるの。
 倉田君になら、相談に乗ってもらえそう。」

「なんでも言って。陸上とは全く別のことなんだね。」洋二は言った。
「あたしね…女なのに、男の人を愛せないの。女の子しか愛せない。
 あたし、中・高と私立の女子高で、男子と接する機会がなかったことも原因だけど、
 小学校からそう。いつも女の子に恋愛感情持ってた。

 高校のとき、A子っていう子を好きだったの。
 二人で、いつもべたべたくっついてて、キ・スだってしてくれた。
 ある日、あたし、A子と最後までしたいと思って、
 あたし、アパートだったから、誘ったの。

 下着姿になって、毛布に入って、キ・スして、胸も触りあったの。
 A子は、気持ちよさそうな声を上げてた。
 それで、あたしは、A子のショーツの中に手を入れようとしたの。
 そしたら、A子は、笑うの。
 『あたちたちは、ごっこでしょう。』って。最後までなんて、まずいよって。
 そうだったんだと思って、あたし悲しかった。
 A子に合わせて、笑って見せたけど、心では、泣いてた。
 それ以来、誰とも、友達以上の関係は求めなくなった。」

「そうだったんだ。それは、悲しいよね。」と洋二は言った。
「わかってくれるの、あたしの気持ち。」と敬子は言った。
「痛いくらいにわかるよ。」と洋二は言った。
「レズビアンっていうんだと思うけど、治ると思う?」敬子は言った。
「残念だけど、治らないと思う。
 だって、女の子が好きな男の子に、男の子を好きになれっていっても無理じゃない。」

「あたし、倉田君のこと、女の子だっていう気がするの。
 そして、女の子として、倉田君が好き。」敬子はそう言った。
洋二は、胸がドキドキとしてしまった。
「ぼ、ぼくは、男として、片桐さんのこと好きだよ。」
「ほんと?」

「そうじゃなきゃ、片桐さんのコーチなんてしない。」
洋二は、恥ずかしさにうつむいていた。
「あたしのために、女の子になってくれない?」
「ぼく、半分女の子だから、なれると思うよ。」
「じゃあ。」と言って、敬子は、顔を近づけてきた。
(これ、キ・スだよね。)と洋二は思い、どぎまぎした。
「ぼく、女の子だから、強引にしてきて。」洋二は言った。
「うん。」と言って、敬子は、洋二を抱きしめ、倒して、キ・スをして来た。

片桐さんのやわらかい唇。
(ああ、夢じゃないかな…。)洋二は思った。
敬子は、ジュータンの上で、洋二にキ・スの嵐をしてきた。
そして、自分のワンピースのファスナーを下げ、下着になり、
洋二のワンピースを脱がせた。

敬子は、洋二をベッドの上に誘って、毛布をかけた。
そして、上に乗り、洋二の首筋や、耳や、頬にキ・スをしてきた。
「ああ、片桐さん、好き。」洋二は言った。
「お姉様って言って。あたし、倉田君のこと、洋子って呼ぶ。」
「うん。お姉様。」

敬子は、洋二のスリップの肩紐をはずし、ブラのホックをはずし、
胸に頬を寄せてきた。そして、先端を歯で噛んできた。
洋二の胸は、女の子と同じように感じる。
「あああ、お姉様、すごくいい。」
敬子にたっぷり攻められて、洋二は、完全に興奮していた。
男の部分が、大きくなってしまい、ショーツの隙間であいえでいる。

洋二は、敬子の上になって、敬子がしてくれたのと同じことをした。
敬子は、すでに息を荒くしていて、洋二が歯で噛んだとき、悲鳴を上げた。

洋二は、ふと、ふだんのおしとやかな敬子のことを思い浮かべた。
すると、目の前に敬子に、たまらなくのぼせてしてしまうのだった。

「お姉様、お姉様のいちばん感じるところへ、ぼくの指を持っていって。」
洋二はいった。
「うん、ここなの。」
敬子は、洋二の中指をもっていった。
「ここだね。」と洋二がいうと、
敬子が、背を反らせて悲鳴をあげた。
「お姉様、わかった。昔の友達、これをしてくれなかったんだね。
 ぼくは、本気だから、お姉様のしてほしいことなんでもするよ。」

「うん、うん、ありがとう。」敬子は、体をばたばたさせて、快感を訴えた。
「ああん、洋子、あたし、だめ、いく、あああ、もう、がまんできない。」
敬子はそういって、激しく身を震わせて、少しあけた唇を痙攣させた。
大好きな片桐さんが、今、いってしまうところなんだ。
それは、洋二にとり、感動的なことだった。

洋二は、もんもんとしたまま、敬子の横にいた。
そのうち敬子が、洋二の上になり、
「あたし、男の子の触るの苦手だけど、これなら、できる。」
敬子は、そう言うと、洋二の大きくなったものを、自分の女自身に入れた。
そして、身を起こし、洋二を見ながら、洋二にまたがった。
そして、静かに腰を上下させた。
「あたし、バージンだけど、運動で、もう膜がないの。
 だから、心配しないで。」
敬子はそういった。

敬子は、そのうち、体を倒し、手を洋二の頬の横に付いて、
まるで、男の子のように、洋二を突いてきた。

「ああ、なんだか、ぼく、女の子みたい。丘されてる感じ。」
「あたし、女の子を、丘してる感じ。
 洋子、女の子の声を上げていいわ。」
敬子は、動きを早めて言った。
洋二の心で、なんだか、女の子気分が体に充満して来た。
「あああ、いやあ、ああん、すごくいい、感じる。」

そのうち、どんどん女の子の言葉が出てきて、
その言葉が、自分を興奮させるのだった。

洋二も、敬子と同じように、首を振り、体をばたつかせ、
甲高い声を上げて、快感の高みへと上っていった。
ああ、出そうだった。
「お姉様、でちゃう。ぼくから抜いて。早く。」洋二は叫んだ。
敬子は、急いで抜いて、洋二の噴射を口で受け止めた。

二人で、興奮の波が収まるまで、抱き合っていた。
洋二は、たまらなく幸せだった。
敬子と結ばれた気がした。

「あたし、感動してる。」と敬子は言った。
「ぼくも。」
「あたし、男の子のあそこさわれたし、最後までいけた。」
「ぼくは、ぼくの中の女の子の部分、満足させてあげられた。」
「あたし、昔あたしを笑ったA子のこと、これで忘れた。」
「それは、いいね。明日のタイム、0.1上がるよ。」
「ほんとに。」と敬子。
「うん。心の安定って、大事だから。」

ここに、2人の男女が、一歩心の前進をした。


つづく


■次回予告■

1年生体育科で、リレー大会をします。
陸上部の競合と並び、洋二は、アンカーにさせられてしまいます。

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倉田洋二の物語④「敬子のラビット」

洋二は、どの部にも属していなかった。
授業が終われば、フリーである。

あるうららかな日、洋二は授業を終えて、
のんびりと西門に向かって、まっすぐな道を、歩いていた。
ワンピース、スニーカー、リュックのスタイル。
髪を左右にゴムで結んでいる。前髪あり。

今は、使っていないグランドで、クラスの女子たちが、
サッカーの真似ごとをしていた。
その中に、洋二が好きでたまらない片桐敬子がいた。

そのうち、こぼれ球が、洋二に向かって転がってきた。
「倉田くーん、お願ーい。」
と女子たちは、叫んだ。
片桐さんのいるところで、かっこよく捕って、キックでボールを返したかった。
「洋二くん、とれるかな。」
「さあ、どうかな?」
という女子達の悪気のない言葉が聞こえた。

しかし、洋二は、転がって来たなんでもないボールを、
トンネルしてしまったのだ。
急いで、ボールを手で拾って、キックで返そうとした。
そのキックも失敗。
自分の真横に飛んでしまい、あわてて、手で取りに行った。
そして、手でボールを投げたが、それが全然飛ばない。
ぽとぽととゴロになって、やっと彼女たちのところへいった。

「ありがとう。」
と彼女たちは言いながら、くすっと笑っていた。

「はあ~。」と洋二は、ため息が出た。
男子なら、誰でも捕れるボール。誰でもキックで返せる。
体育科だというのに。
片桐さんが見ているというのに。
五郎は、落ち込み、歩いて行った。

そのとき、内なる声がした。
『洋二、落ち込むなって。
 いざというときは、あたしが出てくるから。』そう言う。
『あ、君は、あのときの。どうやったら出てきてくれるの?』
『「ここは、絶対」と思ったとき、あたしは、出てくるから。』
『絶対じゃなきゃだめなの。ふつうにじゃ。』
『来るよ。「洋子、出てきて!」って心で言えばいつでも来るよ。』

「ふ~ん。」と洋二は、うれしくなった。
でも、むやみに洋子を呼んではいけないんだろうなと、同時に思った。

歩いていくと、そのうち、空手部の部室の前に来た。
地面に刺した丸太の棒の上部に縄を巻いたものへ、回し蹴りをやっている。
やっているのは、同じクラスの坂田健吾。
坂田は、性格のやさしいいい奴だ。
和同流。白帯だが、段位をもらうことを拒否していて、
実際は、3段の腕前らしかった。
変わった奴だ。

「おう、洋二。来いよ」と坂田が声をかける。
「なあに?」と洋二はそばに行った。
「剣道の笹塚や柔道の近藤はいいよな、お前とやれて。
 空手は授業にないから、お前とやれない。」
「あれは、全部まぐれだよ。」
「何を言うか。俺の目は、節穴じゃないぜ。
 お前のスピードをちゃんと見たのは俺くらいだ。
 そうだ。『初回打ち』をやろう。」

 それは、空手の構えをして、互いに手の甲を密着する。
 その手の甲で、先に相手の額を打った方が勝ち。

それを聞いて、洋二の心の中で、
『あたしにやらせろ!』と洋子がさわいだ。
『いいよ。』と洋二は、洋子に言った。

「安心しろ。俺は、寸止めをする。
 洋二は好きに当てていいぞ。」と坂田は言った。

二人は、体をほぼ横にして、腰を落とし、
手の甲を合わせた。

呼吸を合わせ、にらみ合う。
瞬発力と速さの勝負だ。

坂田が、一歩踏み出した。手の甲が来た。
だが、ややスローモーションに見える。
洋二は、手の指でOKマークを作り、坂田のおでこに、デコピンをした。

横で見ていたものには、一瞬の出来事である。

「洋二、嘘だろ。あの一瞬に指を作って、デコピンかよ。」
坂田は、おでこを擦りながら、
「いやあ、参った。すげーや。笹塚や近藤が負けたはずだよ。」
と言って、坂田はうれしそうに、洋二の肩をぽんぽんと叩いた。

洋二は、さっきの女子のサッカーボールの醜態が、
帳消しになる気がして、うれしかった。



洋二の片桐敬子への想いは、日に日に強くなるばかりだった。
片桐敬子は、背が170cm近くあり、洋二よりも10cm高かった。
クラス1の美人で、マドンナ。
陸上部で、短距離の選手だ。
100m11秒台の記録を持っていた。

クラスの皆は、朝から、ジャージ姿が普通だったが、
敬子だけは、ワンピースや、ブラウスにつり紐のあるスカートを着ていた。
髪は、洋二と同じ、肩までのボブヘアーだった。
そして、前髪の端をカラーのヘアピンで留めていて、
それが、とても愛らしかった。
おしとやかで、動作仕草がとても女らしく、一見か弱い女の子に見える。

ところが、部活になると、短パンにランニング。
100mを走る姿は、豪快そのもので、まさにビューティフルだった。
洋二は、そんな敬子を、心から素敵だと思っていた。

洋二は、授業の帰りに、よく陸上のグランドを見ていた。
陸上部は、球技と違い、一人一人が自分のメニューに従って練習を行う。
だから、みんな一人だ。
敬子も一人で、いつもメニューをこなしていた。
何か孤独と戦っているようで、見ていて励まされる思いがした。
洋二も、自分の特異体質に、一人孤独感に襲われることがあった。
だから、陸上の練習を見るのが好きだった。



片桐敬子は、そのころスランプに苦しんでいた。
高校3年のとき出した、自己ベストの11.8秒を出せない。
記録は下がる一方で、今、11秒台も出せなくなっている。
何がいけないのかわからなかった。
先生たちは、コーチをしてくれるわけではない。
先輩とは、種目が違って、教えてくれない。
敬子は、孤独な戦いにもがいていた。

グランドの敬子を見ていて、洋二はふと思いついた。
「洋子、出てきて。」
「はいはい。」
洋子の声だ。
「洋子、走るの速い。」
「速いよ。」
「あそこにいる、片桐さんより速く走れる?」
「もちろん。」
「あのさ、選手が走るとき、
 横で少し速く走ってあげるとやりやすいって聞いたことあるんだけど。」
「ラビットのこと?」
「あ、そうそう。ぼく片桐さんのラビットになってあげたいんだけど、
 そのとき、洋子出てきてくれる。」
「OK。お安いご用だよ。」
「片桐さんの欠点わかる?」
「もちろん、1度見ればわかる。」
「じゃあ、その欠点を補うような、ラビットやってくれる?」
「諒解!」
洋子は、そう言った。

翌日の放課後、
洋二は、運動着に着替えた。
上は、白いTシャツ。下は、紺のジャージ。
TシャツをINにした。
(胸のふくらみが目立つのだが。)
洋二は、脚が長い。

洋二は、100mコースにいる敬子のところへ行った。
「片桐さん。差し出がましいんだけど、
 ラビットがいたら、走りやすい?」
片桐は、きょとんとした。

「あ、倉田君。うん。あたしのペースを知っているラビットなら、絶対ありがたい。」
「ぼく、君のラビットになれるかも知れない。
 よかったら、やらせてくれない。」
「ほんと?でも、あたし速いし、陸上部でも、ラビットしてくれる人いないのに。」
「ぼくを試してみて。ぼく、毎日片桐さんが走っているの見ていたから、
 片桐さんのペースも欠点もがわかる。」
「わあ、欠点まで?じゃあ、やってくださる?
 男子が、倉田君、ときどきすごいって言ってた。」
「みんな、まぐれだよ。」洋二は行った。

「じゃあ、何本もやれないから、みんなに頼んで、計時してもらう。」
敬子は、そう言って、1年生の部員を呼んだ。
「敬子以外に、敬子より速い人がいるの?」と部員のA子が言った。
「うん、倉田君。女の子に見えるけど、男の子なの。」敬子は言った。
「ああ、知ってる。笹塚と近藤に勝った女の子みたいな子。もう有名よ。」
とB子は言った。

片桐は半信半疑だった。
しかし、ラビットをやってくれるという洋二を断ったら、
洋二が、傷つくと思った。



コースに立った。
「向かい風、0.2m/秒。昨日の片桐さんの記録は、無風で12秒0。
 今日、11秒7で走れたら、最高記録だよ。」
洋二はそう言った。
「うん、11秒7だね。自己ベストは、11秒8だから、7で走れたらうれしい。」
敬子は洋二の言葉に、内心びっくりしながら聞いた。
(見ていただけで、タイムがわかるなんて。)
洋二は言った。
「それから、片桐さん。いつも手を握って走っているけど、平手で走ってみてくれない。」
「うん、意味があるのね。」
「大きな意味があるんだ。」洋二は言った。

A子による「用意。」の声がかかった。
敬子は、金具があるので、クラウチング。
洋二は金具がないので、スタンディング。

バーン!ピストルが鳴った。

洋二は、敬子より体半分速くでた。
敬子は驚いた。
(スタンディングなのに。スパイクも履いていないのに。)
走りながら、さらに敬子は驚いていた。
洋二が、自分の前方2m前をきっちり走っていく。
完全に敬子のペースがわかっている。
洋二の後さえ付いていけばいい。そんな気がした。

30mラインを過ぎた。
洋二は若干失速した。
(倉田君疲れたかな、と敬子は思った。)
「ももを2センチ高く。飛ぶように走れ!
 速く走ろうと思うな!」そう洋二が鋭く言う。
敬子はそれに従った。
ああ、走るのが楽、敬子は思った。

50mを超えた。
敬子は、不思議な感覚にとらわれていた。
前を行く洋二に、自分が吸いついていく感じがした。
若干のオーバーペースだ。
だが、体が洋二に付いていく。

残り70m。
「かかとを付けるな!吐く息を止めるな!」洋二の声。

デッド・ポイントと呼ばれる、一番苦しいところ。
洋二の言葉が、敬子に喝を入れた。

80m地点。
洋二のペースがさらに上がった。
しかし、敬子の脚と腕が、洋二にぐんぐん付いていく。

残り10m。
「フィニッシュをするな!そのまま突き切れ!」
猛烈に洋二が加速する。
敬子の体が付いていく。
ゴール!

「やった!」と洋二は思った。11秒5のスピードで走った。
敬子が、それに付いて来た。いいタイムが出たはず。

時計を見ていた部員のB子は、
「わあ~!」と飛び上がった。
「11秒5!すごい、敬子!」と言った。
「ほんと!」と敬子は時計を見た。
「ほんとだ!自己ベスト、0.3も超えた。わあ~!」
と言って、敬子は洋二を抱きしめた。

「ありがとう!倉田君。」と敬子は、再び洋二をきつく抱きしめた。
洋二は、大好きな敬子に抱きしめられて、天にも昇る気持ちだった。

部員のA子が駆け付けてきて、いっしょに喜んだ。

「ラビットの効果ってこんなにすごいのかしら。」とA子は言った。

敬子は言った。
「ね、ラビット効果だけじゃないでしょう。種明かしをして。」

洋二は、言った。
「う~ん、全体に片桐さんは、肩に力が入りすぎてたから、
 手を平手にして、30mから50mの間を、
 トップスピードを利用して、流すようにしたの。
 その力の温存が、ラビットに付いていけた理由。
 70mの苦しい地点で、フォームが崩れるから、
 かかとを地面につけないことと、
 そこで、息を止めないことをアドバイスしたの。」

「そうかあ、そうだったんだ。
 あたし、まだまだ欠点があるでしょう。」と敬子。
 
「うん。いくつかあるよ。片桐さんの記録は、まだ、0.3秒伸びると思ってる。」
「じゃあ、これる日は、来てくださらない。あたしの最高のコーチって気がする。」
「いいよ。」と洋二は、にこっと笑った。

「でも、倉田君。どうして、陸上部に入ってくれないの。」とA子が言った。
「そうよ。敬子のラビットができるなんて、信じられない。」とB子。
「男子だって、1年生は、あたしより速い人いないのに。」と敬子は言った。
洋二は、にっこりして、
「ぼく、早く家に帰るの好きだから。」
と言って、
「明日また来ていい?」と聞いた。
「うん、うれしい。お願い。」と敬子は言った。
「じゃあ。」と言って、洋二は、照れながら走って行った。

残った3人の内、A子が言った。
「倉田君、毎日グランド見てたよ。
 女の子だと思って気にしなかったけど、
 きっと敬子ばかり見ていたんだよ。
 だから、敬子のことがわかってた。」
「もしかしたら倉田君、敬子のことを…。」とB子。

「今は、そんなこと考えないの!
 私は今、倉田君の親切に感謝する心でいっぱいなの。」
敬子は、少し赤らめながら、そう言った。


つづく

倉田洋二の物語③「近藤敗れる」


このお話は、ISである私の、少し思い入れのあることを書いています。
言わば、半ノン・フィクションです。いえ、限りなくフィクションに近いかな?
評判がもう一つなのですが、もう少し続けてみます。読んでくださると、うれしいです。

==========================

「あ、近藤が、1本背負い失敗だ。」
見ていた何人かが、叫んだ。
それは、近藤が、素人相手に考えられないことだったのだ。

近藤は、洋二に上に乗られ、胸がつぶれ、窒息しそうだった。
起き上がろうにも、到底洋二を持ち上げられない。
実践なら、このまま寝技に入られイチコロだ。
「倉田君。悪い。一応場外ということで、横に下りてくれないか。」
近藤は、屈辱的な願いを、洋二にしなくてはならなかった。

近藤は、洋二と組みながら、前後左右に動いた。
近藤は、驚いていた。
あの重い体で、洋二がふつうに動いている。信じられないことだった。

近藤とやっているのは、洋二の中の洋子だった。
洋子は、柔道のすべての技を知っている。

組み合いながら、洋二が、すごいスピードで、大外狩りを打ってきた。
そのスピードに驚きながら、近藤は、見事にかかり、洋二と共に、後ろへ倒された。
360kgが、ドーンと体に乗ってきた。
完璧に決まり、実戦なら1本。

近藤は、再び起き上がれなかった。
「悪い、倉田君。君が先に立ってくれないか。」
近藤は、再度、屈辱の言葉を吐かなければならなかった。
洋二は、立ち上がり、近藤の手を取って、近藤を起こした。

はや、乱捕りの稽古をしていた学生達は、それを止め、近藤と洋二を見ていた。
柔道部の連中は、近藤のあれほどまでの醜態を見るのは初めてだった。
『近藤が、洋二に手を取り立たせてもらっている!』
一体何が起こっているんだ。

洋二はそのとき、心の中の声を聞いた。
『みんなが見てる。一発派手にいこうよ。』と女の子の声が言う。
『だれ、君?』
『スーパー洋子ってところかな。洋二と別人ではないよ。』
その声は言った。

立ち上がった近藤は、皆に見られていることを意識した。
不敗伝説をもつ近藤だった。
これ以上の醜態は許されない。

近藤は、息を整えた。
一本背負いしかない。
今度こそと猛然とかかって行った。
近藤が、洋二の袖に手を触れたとき、
洋二の目にも止まらぬ1本背負いが炸裂した。
『見えない。俺は、今、宙にいるのか。』
近藤の体が、宙にまっさかさまになった。
「すげっ!」と誰かが、叫んだ。

洋二は、今までのお返しとばかり、
近藤の宙の状態から、渾身の力で、畳にたたきつけた。
ズバーン!!とすさまじい音がした。
そのあまりの速さに、近藤は受身を取れず、
もろに、背中を畳に打ち付けた。
「ううう・・。」と近藤は、顔をしかめ、瀕死の形相を見せた。
「おおおおお。」と学生たちは、声を上げた。

柔道の天才と謳われた近藤は、1本背負いが真骨頂だった。目にも止まらない。
その自分が、目にも止まらない1本背負いを食らった。しかも、相手は鉄のように重い体だ。
あの重さで、なぜ、俺より速い1本背負いができる…?
近藤はわからなかった。

「近藤君。どうして下手な真似をするんだ。
 ぼくを、どこまで馬鹿にすれば気が済むんだ。」
自分の強さに気づいていない洋二は、素直な気持ちでそう言った。

そう言われて、近藤は立った。
しかし、体は、すでにバラバラだった。
死ぬ気でかかっていくしかない。
相手は、女のようなずぶの素人の倉田だ。
その倉田に、死ぬ気で行かねばならないのか。
プライドは、とうにズタズタになっていた。
近藤は、突進した。

気がつくと、洋二の顔が下にあった。
「巴投げにかかっているのか?!」
近藤は、それまでのことが何もわからなかった。

洋二の「えいっ!」という声とともに、
近藤は、宙3mも上げられ、5mも向こうに投げられた。

今や、乱捕りをしているものは、誰もいなかった。
近藤が、立てないほどにやられた。
この奇跡としか思えない光景に、皆の目は、釘付けになっていた。

しばしの静寂が訪れた。

近藤は、仰向けになり身動きならぬまま、洋二に言った。
「まいった。君が初め手加減をしていてくれているとも知らず、
 いい気になり、好き放題投げた。自分がはずかしい。

 相手に柔道で制裁を与えようなどと、思い上がっていた。
 柔道は、制裁の道具ではない。
 剣道の大森が言った言葉を聞いておきながら、同じことをした。
 柔道を悪用した俺は、もはや柔道をやる資格がない。
 倉田君。すまなかった。許してくれ。」
近藤は、そう言って目をつぶり、眠りに陥った。

教官の安川は言った。
「剣道の立石先生から聞いている。
 中・高クラスでは、陰謀を図り、倉田を授業の時間を使って、
 制裁を加えているようだな。
 前の剣道の時間に懲りず、またやったな。
 今日の近藤の件に関わった者、立てい!」

巨漢の安川の気合は、半端ではなかった。
また、剣道教官の立石ほど紳士的ではなかった。
5人が震えるように立った。
安川は、5人に言った。
「お前らは、この授業のあと、即刻、今の部に退部届けを出せ。
 そして、柔道部に入部しろ。
 俺が、お前らを卒業までの4年間、徹底的に投げ飛ばし、稽古をつけてやる。
 それとも、倉田に投げてもらうか。
 言っておくが、今日の倉田は、俺でもかなわん。
 何か質問あるか。」

5人は、うつむいて、涙を浮かべながら、
「わかりました。」と答えた。

近藤は、退部を免れ、1ヶ月の稽古禁止となった。

5人は、皆サッカー部だった。
子供のころからサッカーをしてきた。
サッカーが命だった。
だが、自分らの悪巧みのために、サッカー部は、必ず退部とされる。
柔道の安川が、そう言ったなら、それは、絶対なのだった。
4年間の柔道部。地獄だった。

3年の主将に泣きつき、顧問の高坂のところへ行って、
こっぴどく叱られた。
部長と顧問に付き添われ、安川に謝りに行った。
5人は、やっとサッカー部にとどまることができ、
その代わり、1ヶ月の練習禁止となった。
安川に言われた。
「倉田洋二は、この大学の体育科でもっとも恐ろしい学生である。
 ゆめゆめ、制裁など考えるな。」と。
5人が、顧問と部長に付き添われ、
正式に洋二に謝罪に言ったことはもちろんである。
5人は、怖くて洋二の顔を見ることができなかった。



剣道の笹塚、柔道の近藤が洋二に敗れたことは、
中・高校クラスの男子には、強烈な記憶として残った。
そして、洋二を馬鹿にするものは、もう誰もいなくなった。


つづく

■次回予告■

洋二は、恋をします。相手は10センチも背が高い
クラスのマドンナ。陸上部短距離の選手です。
その彼女と接近の糸口ができるまでのお話です。
スーパー洋子が、洋二と対話できる形で出てきます。

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倉田洋二物語②「陰謀の一角崩れる

私は、アクションを書くのが好きなので、
いつもこういう展開になってしまいます。
最後まで、お付き合いくださるとうれしいです。
途中から、ラブストーリーになる予定です。

==============================

教官が、「稽古を続けい!」と言ったので、皆は稽古に戻った。

「大森君。まじめにやってよ。ぼくを馬鹿にするのやめてくれない。」
洋二はそう言って、大森を起こした。
「ああ。」と言って、大森はふらふらしながら、構えた。

大森が、またスローモーションで来た。
「まだ、ぼくを馬鹿にする気なの!」と洋二は、かっとなって怒鳴った。
しかし、大森のスローモーションは変わらない。
洋二は腹が立って、大森の「コテ」と「面」の2段打ちを思い切りやった。

振り向くと、大森が竹刀を落とし、腕をかばい、頭に手を当て、もだえている。

高校剣道全国2位の笹塚は、見ていた。
全国7位の大森が、ものの見事に「コテ、面」をやられた。
笹塚の目にも留まらぬ動きだった。
『信じられん。』笹塚は、一声もらした。
そして、洋二のところへ来た。

「倉田君。悪いが、俺と1本やってくれないか。」と洋二に言った。
「いいけど。でも、大森君どうしたの?」と洋二は聞いた。
「君に打たれて、痛がっているのさ。」
「うそでしょう。大森君、ふざけてたよ。」
「そうは、見えなかったが。」笹塚は言った。

3、4人が、大森を道場の隅に運んだ。
そして、洋二と笹塚が見合うことになった。

回りの連中は、しばし、稽古をやめて、二人を見ていた。
教官までが見ていた。

二人は礼をして構えた。
洋二は、笹塚を見ていた。
笹塚は、右足を出し、竹刀を振り上げたが、
それもスローモーションだったのだ。
(しかし、大森よりは、かなり速い。)

そのとき、洋二は思い出した。
中・高課程のクラス男子全員が陰謀で、ぼくを痛めつけようとした。
では、この笹塚も、仲間か。
気がついたとたん、猛烈な怒りがこみ上げてきた。

洋二は、これ1本とばかり、全身全霊を込めて、
笹塚の脳天に、「面」の1本をたたきつけた。
竹刀の重心がきれいに、笹塚の脳天をとらえ、
笹塚の体は、ゆっくりと前に倒れていった。

笹塚は、倒れたまま、動かなかった。



教官の立石元治は、剣道部顧問であった。
小柄で細身、50歳に近い年であったが、
かつての、世界選手権の優勝者でもあった。
剣道部主将も到底かなわない。

笹塚の気絶で、学生を集め、皆を正座させた。
笹塚もやっと意識を回復していた。

立石は言った。
「大森、立て。これは、どういうことだ。
 お前は、初め倉田を滅多打ちしておったぞ。」
大森。
「すいません。倉田君は、女みたいでけしからんと、
 何人かで相談し、倉田君を滅多打ちする計画を立てました
 笹塚は、無関係です。」
立石。
「相談した何人かの者、立て。」
4、5人が立った。
立石は、言った。
「今どう思っている?」
一人が、言った。
「倉田君が、あんなに強いとは思わなくて、
 やめておけば良かったと思っています。」
立石。
「他の者も、同じように思っているのか。」
「はい、そうです。」と4人は言った。
「大森は、どうだ。」と立石。

「剣道を、制裁の道具に使ってしまいました。
 自分にはもう剣道をやる資格がないと思っています。
 それに、弱いと思って倉田君を滅多打ちにするなど、
 剣道部である自分は、卑怯もいいところでした。
 倉田君に打たれてみて、初めて、打たれる者の痛みがわかりました。」
と大森は言った。

「その通りだ。大森は、退部のところだか、反省もあるようだ。
 3週間の稽古を禁止する。

 あとの4人は、真の反省に至っておらん。
 私が、相手をするから、1本ずつかかってきなさい。」

立石教官は、防具を付けていなかった。
4人は、一人一人かかって行った。
そして、4人とも、面を打たれて、一発で気絶をした。

洋二は、教官の竹刀のスピードは、スローモーションに見えなかった。
それは、教官のレベルが、どのくらいかを示すものだったのだが、
洋二は、「やっぱり先生は、ふざけない。」と思っていた。

大森が、洋二に謝りに来て、両手を床に着いた。
「倉田君。この通りだ。手加減をしてくれていたのは、君だったのに、
 それにも気づかず、君を打った。自分が恥ずかしくてたまらない。
 申し訳なかった。どうか、許してくれ。」

洋二は、あっさりと言った。
「もう、あんなことしないと約束してくれれば、いいよ。」
「そうか。もう2度としない。本当に、悪かった。」
そこには、あのニヒルな大森の表情はなかった。



授業が終わったとき、柔道部の近藤勇次が言った。
「へん。剣道部の情けねえ。代わりに柔道部が、倉田をやつけてやるよ。」
回りにいた4、5人は、「ぜひ、頼むぜ。」と、ニヤリとして言った。

近藤は、高校で全国1位。
175cmの引き締まった体。
それで、190cmは超える無差別級の巨漢たちを、
すべて、倒した男だった。
運動神経の塊である。
今、柔道部で、2年、3年、4年も、だれも近藤勇次に勝てないでいる。
近藤の、1本背負いの速さは、尋常なものではなかった。
ただ一人近藤に勝てるのは、現役オリンピック出場者の顧問・安浦猛だった。



2日経った金曜日。
柔道の授業だった。
これも、中・高クラスとの合同である。
洋二は、緊張するとトイレが近くなるので、前もって言っておいた。
男子トイレの個室に入り、出たときは、女子トイレであった。
スーパーモードの洋子になっていることに、まだ、気がつかなかった。

教官の安浦は、学生に、「出足払い」と「一本背負い」を教えた。
その後、二人組みになり、乱捕りの稽古に入った。
近藤は、やさしい声で、洋二に「一緒に組んでくれない?」と誘った。
洋二は、近藤が巨漢ではなく、細身に見えたので、安心してイエスと言った。

洋二のクラスの連中は、おとといの洋二のすごさを見ているので、
何かあるかも知れないと、二人の組み合わせに、クレームをつけなかった。
中・高クラスの連中は、洋二が痛めつられる様子を、今度こそ見ようと、
乱捕り半ばで、二人を見ていた。

近藤は、容赦ない背負い投げを、洋二に3本浴びせた。
それも、投げたあと、畳に思い切りたたきつける。

洋二は、近藤に言った。
「あのね、ぼく初心者なんだから、手加減してくれる?」
「ああ、悪かった。ごめん。」
と言いながら、近藤は前よりも強烈な投げを決めてきた。

『そうか、剣道のときと同じだ。ぼくを痛めつけるのが目的か。』
洋二が、そう思ったとき、
すくっと体にすごいパワーがみなぎってくるのがわかった。

洋二の中の洋子は、体の重量を、8倍にした。
45kgの洋二が、約360kgになった。
(力士・小錦は、270kgくらい。)
体が、そのまま鉄になった重さほどある。

見合った。
近藤は、すごい速さで、洋二に出足払いをかけた。
その瞬間、近藤は痛みに顔をしかめた。
洋二の足は、びくともしない。
近藤は、洋二の足が、鋼鉄の柱のように重く硬く思ったのだ。
思い切りかけただけに、足がしびれ、立っているのがやっとだった。

1本背負いで様子を見るか…。
近藤はそう思い、洋二をすごいスピードで背負った。
「これは?!」近藤は、心で叫んだ。
重い。信じられぬ重さだ。
洋二を背負ってしまった近藤は、その場で耐えられず、床につぶれた。
つぶれたとき、洋二の360kgが、ドンと乗ってきた。
「ううう・・。」近藤は、うめいた。


つづく

■次回予告■

洋二の心の中に、スーパー洋子が現われます。
近藤ごときに勝つのは、必定です。

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倉田洋二物語①「洋子出現」

スーパー洋子の出現を、倉田洋二を主人公に書いてみたく思います。
読んでくださると、うれしいです。

=============================

スーパー洋子こと倉田洋子は、いろんな時代にたくさんいます。
同じように、倉田洋二もたくさんいます。
これは、そのうちのある倉田洋二の物語です。
時代は、1970年です。

*     *     *

倉田洋二の大学への初登校の朝。
洋二は、Bカップほどに膨らんだ胸を鏡に写し、
そして、白いブラを、付けた。
女子のショーツをはき、スリップをかぶり、
水色のワンピースを着た。
そして、靴下。

肩までのボブヘアーの髪にブラシをかけ、
後はすっぴんだった。

家族に完全女装を見せるのは、初めてだ。
洋二は、意を決して、階下に行った。

父はいない。
母の美佐江と、妹の弘子、美沙がすでにテーブルにいた。
「やっぱり、女の子の姿でいくんだ。」と高2の弘子が言った。
「おにいちゃん、ヒゲも何にもないし、可愛いから女の子に見えるよ。」
と中3の美沙が、励ましてくれた。

母の美佐江が、
「ほんとに不思議だねえ。胸が膨らんで来てしまうなんて。」
と言った。
「胸だけじゃないんだ。ぼくの体、後ろから見ると、女の体に見えるんだって。
 声も女だし。今まで、女の子に間違えられて、苦労したから、
 女の格好でいる方が、居心地がいい。高校のときは、胸隠すの辛かったから。」

専門機関に行けば、ISの診断が出たかも知れない。
しかし、町の内科、病院を回ったが、
「特異体質」とか、「ストレスによるホルモンバランスの乱れ。」とか言われるだけだった。
「特異体質」とは、まことに便利な言葉である。

倉田洋二の、自分へのコンセプトは、「女の格好をしている男子」だった。
あくまで、男子で行こうと思っていた。



洋二の行く大学は、国立の教育学部の小学校課程体育科であった。
洋二は、運動がからきしであったが、
高校の進路指導の先生が言った。
「国立で教育学部行きたいなら、体育科しかないぞ。」
「え?ぼく、体育科は一番行きたくないところですよ。美術科に行きたいです。」

「美術科は、募集30名だ。体育科は、70名だ。有利だろう。」
「でも、運動ばっかりやらされるの地獄ですよ。ぼく、運動音痴なんですよ。」
「なあに、小学校課程だろ。普通の授業に、ちょっと体育の授業があるだけだ。
 これが、中学・高校課程だと、体育一点張りだけどな。
 とにかく私立は金がかかってだめとなりゃ、お前の成績ではここしかないぞ。」

そう引導を渡されて、体育科を受験した。
実技の2次試験があった。
その日、あつまった連中は、誰もが、マッチョなスポーツ青年ばかり。
洋二のような、貧弱な体格の受験者は誰もいなかった。
『こんな、はずじゃなかった。先生のうそつき!』

洋二は、心から後悔した。
どうかこの大学に落ちてほしいと願っていたが、受かってしまったのだった。



いよいよ、大学の初授業。
教室に入ったとき、洋二は、がっくりとした。
ほとんどの学生は、自分の部活の運動着である。
柔道部のものは、柔道着を着ている。
ほとんどの連中は、初授業前に、部活に入り、もう練習に入っているのだ。
全員、男子も女子も、例外なく、スポーツ一点張りである。

教室にいるのは、1つのクラスらしく、クラス担当の教員が来た。
坂東栄太と名乗った。
出席を取り始めた。みんな立って、一言言う。
みんな、部活の名前を言っていた。

「倉田洋二」と呼ばれた。
洋二は、はいと言って立った。
「あれ?君は、女子だなあ。名簿は男子だが。」坂東は言った。
「男子ですが、訳あって、女子の格好をしています。」と洋二は言った。
「訳を聞いてもいいか?」
「実は、胸が女子のように膨らんでいます。特異体質だそうです。
 体つきが女子だし、声も女声なので、女子の姿でいた方が、変な目で見られません。」
洋二は、思い切って言った。

「なるほど。了解だ。みなさん、そういうことだそうだ。」
と坂東が言ったとき、クラスのみんなは、笑顔で拍手をしてくれたのだった。
あれ?歓迎されている…と洋二は嬉しくなり、安心した。
「よろしくお願いします。」と洋二は、大きな声で言った。



クラスのみんなは、わかってくれて、運動音痴の洋二にやさしかった。
まるで、女の子のように扱ってくれた。
しかし、柔道と剣道だけは、嫌な中学・高校課程の連中と合同なのだ。
中学・高校課程の男子は、洋二を徹底的に馬鹿にしていた。

「何だアイツ。男なのかよ。じゃ、なんでブラ付けてんだ。」
「なんで、女の格好してるんだよ。オ△マかよ。」
「あんな奴が、体育科か。体育科も落ちたもんだぜ。」

3回目の、剣道の授業。
中・高課程の男達は、洋二を痛めつける計画を立てていた。
二人組みになって打ち合う稽古で、洋二の相手に、
剣道部・高校剣道全国7位の大森啓太をつけ、
洋二を滅多打ちにしようと考えた。

剣道の教官が、
「では、二人組になって、打ち合いの稽古を始める。
 めいめい組を作ること。」
と言った。

このとき、大森は洋二のそばに来て、
「俺と組んでくれる?」とやさしく言った。
洋二は、やさしそうな人だと思い、「いいよ。」と言った。
160cmの洋二に対して、大森は、180cmの長身だ。

稽古が始まった。
二人で見合って、試合のように打ち合う。
大森は、剣道3段だ。
「面!」と言って、洋二の脳天に思い切り竹刀を振り下ろした。
『痛い!』と洋二は、気が遠くなりそうだった。
大森は、面の金具ではなく、高い位置から、洋二の頭頂を打ってくる。
また構えて、また、すごい振り下ろしの面を打たれた。

洋二は、大森のところへ行った。
「あのね、ぼく下手なのね。手加減してくれる?」
「ああ、いいよ。ごめんね。」と大森はやさしく言った。
しかし、次の打ち込みで、大森はもっと痛い面を入れてきた。
それを、3回やられた。

洋二は、悟った。
あいつは、わざとやっている。
初めから、ぼくと組んで、ぼくを痛めつける気なのだ。
相当うまい奴だ。では、中・高クラスの陰謀か?

「ちょっとごめん。」と洋二は言って、男子トイレの個室に行って座った。
頭が痛い。もう何回やられただろう。
便器に座って休みたかった。

休むのもこれ以上無理だろうと思って、トイレから出た。
洋二は、そこが女子トイレであることに気がつかなかった。
そして、下腹部が、女性になっていることにも気がつかなかった。

「ごめん、待たせちゃったね。」
と洋二は、大森に言った。
大森は、ニヒルに何も言わない。

大森と構えた。
大森が、動きを見せた。
足が出る、竹刀を振り上げる・・・。
あれ?っと洋二は思った。
大森の動きが、スローモーションなのだ。
途中から速くする気だな。
そこまで、ぼくを馬鹿にするのか!

穏やかな洋二も、さすがにカーッとなった。
大森がスローモーションで、竹刀を振り上げたとき、
『じゃあ、1本もらうよ。』
と、洋二は、竹刀を振り上げた。
そして、振り下ろすとき、その速さで竹刀が弓なりになった。
大森は、打ち込みに入り、体勢が低くなった。
そのときに、洋二の竹刀は、大森の頭頂部を、バチーン!と打った。
「面!」の声とともに、洋二は、大森の左を抜けた。

『なんだ、打たれるまで、スローモーションやってたの?』
そう思い、洋二は振り向いた。
すると、大森は、防具の上から頭を押さえて、
息もできずに、うずくまっていた。

「すげー、洋二。今のお前の動き、見えなかったよ。」
と洋二のクラスの小川が来て言った。
「ああ、俺も洋二があんまり速くて、見えなかった。」
「大森は、全国7位だぜ。」
と皆が寄ってきた。
「まぐれだよ。」と洋二は照れながら言った。

倉田洋二、スーパー洋子の出現であった。


つづく

■次回予告■

大森のあと全国2位の笹塚が出てきます。
洋二は、まだまだ、スーパー洋子の出現に気がつきません。

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三丁目の魔女⑥「コピーロボット・麗子」最終回

最終回です。このお話は、書き終わるのが、少し淋しい気がしています。
私の子供のころ、隣の隣に綺麗なお姉さんがいました。
そして、私は、そのお姉さんに、ほのかな恋心を抱いていました。
この作品を書いているとき、いつもそのお姉さんのことを思い描いていました。
さて、最終回、読んでくださると、うれしいです。

==============================

麗子と二人で、シャワーを浴びて、
麗子も五郎も気楽な木綿のワンピースに着替えた。
麗子は、白、五郎は、水色。

五郎は、あと1時間もすると、夕食の時間なので、
男に戻るのが、辛かった。

麗子が、ハーブティーを入れてくれて、
キッチンのテーブルで飲んでいた。

「お姉さん、ぼく、ほんとに男に戻れるの?」と五郎は聞いた。
「1秒で戻れるわよ。」
「ほんと?じゃあ、よかった。もうすぐ、夕食の時間だから。」

「あたし、もうすぐ任務が終わるの。」と麗子は言った。
「任務って?」
「あたしの正体知りたいでしょう?」
「うん。魔法使いだと思ってる。」
「ちょっと違うの。
 あたしは、五郎の孫の孫の孫の孫の孫のそのまた孫なの。
 その未来から来たの。」
「じゃあ、お姉さんとぼくは血がつながってるの?」
「うん、そう。」
「わあ、すごい。」
「あたしの時代では、なんでもできるの。
 男になったり女になったり、子供になったり大人になったり。
 背を高くしたり、低くしたり。
 美人になるもの、ハンサムになるのも超簡単なの。
 だから、美人であることなんて、何の価値もないの。
 誰でもすぐなれるんだもの。」

「ああ、わかってきた。誰でも美人になれるなら、希少価値じゃなくなる。」
「だから、この時代に来たの。
 この時代は、いろんな個性があって、たくさんの価値がある。」
「うん、そうだね。」
「そこで、あたしの先祖の五郎ちゃんが、女装が好きってわかってたから、
 五郎ちゃんのそばに引っ越してきたの。
 16年前に来て、五郎が、16歳になるのをずっと待ってた。
 そして、五郎ちゃんの夢を叶えるのが、あたしの任務。」

「任務って?」
「あたしは、本物の麗子のコピーなの。
 いろんな変身機能を搭載された、成長型ロボット。」
「そんなのあるの?」
「うん。みんな、仕事とか苦しいことは、コピーにさせたりする。
 でも、あたしは、五郎といっしょに女装したり、
 セッ・クスしたりだから、すごく楽しかったけど。」
「じゃあ、ぼくの目の前にいるお姉さんは、いなくなっちゃうの。」
「うん。でも、代わりに本物の麗子が家族で来る。
 麗子の家族は、永住の時代として、この時代を選んだの。」

「ぼく、今、目の前にいるお姉さんと別れるの辛い。
 お姉さんが、ロボットでも関係ない。」

「いつでも会えるのよ。」
麗子は、そういって、五郎の前にコンパクトを置いた。
「これを五郎に渡して、あたしの使命は終わり。」

五郎は、そのコンパクトを開けてみた。
「それは、五郎の時代の、ス△ートフォンに似せて作られてるの。」
五郎は、コンパクトを開いて、いろいろ操作してみた。
たくさんの女の子の姿が、カタログ的に出てくる。

「一人の女の子を選択すると、五郎は、瞬時にその子になれる。」
「ほんと!」
五郎は、試しに、制服を着た女子高生を選んでみた。
その瞬間、五郎は、その女子高生になった。
「わあ、すごい。」
五郎は、鏡を見にいって、そう叫んだ。

「お友達っていうページを出して。
 どれかを選択すると、五郎のそばに現れるの。
 あたしが、その中にあるから、それを選択してくれれば、
 あたしは、いつでも五郎のとなりに現われる。」
「じゃあ、いつでもお姉さんと会えるんだね。」
「コピーのあたしの方だけど。」麗子は言った。

「雑誌で、可愛い子を見つけたら、その写真を撮れば、
 サンプルの中に、一人増えるの。
 五郎が、元に戻りたいときは、『変身終了』ボタンを押せば、
 瞬時に元に戻れる。」

「試してみていい?」
「うん。もう時間だし。」
五郎は、変身終了ボタンを押した。
その瞬間、五郎は、元の五郎に戻った。

「わあ、すごい。ヘアスタイル変えたり、洋服変えたり、自由なんだね。」
「うん。そうなの。あたしのおじいちゃんが、そのコンパクトを、
 先祖の五郎のために作ったの。」
「そうなんだ。このコンパクト、使えるのぼくだけ?」
「五郎と血のつながった人なら使える。」

「わあ、超貴重品だね。失くしたらどうしよう。」
「安心して。コンパクトは、持ち主の五郎のところへ、自力で戻ってくるの。」
「充電は?」
「電池は、100年電池。」
「わあ、うれしい。これで、お姉さんと別れても平気。ありがとう。」

五郎は、席を立った。
麗子も立った。

「ときどき呼んで。あたし、五郎が大好きだから。
あたしは、子供になったり、男の子になったり女の子になったりして、
 ずっと五郎ちゃんのそばにいたの。
 16年間、五郎ちゃんばかり見つめてきたの。」麗子は言った。
「そ、そうなんだ。知らなかった。ありがとう。
 ぼくは、16年間、お姉さんに憧れ続けてきた。」
五郎は、涙を頬に流した。
麗子も泣いていた。
二人は、抱き合って別れを惜しんだ。



家に帰ると、美紀が、手ぐすねを引いて待っていた。
美紀は、五郎の服の袖を引っ張ると、五郎を自分の部屋へ入れた。
「さあ、お兄ちゃん、説明して。
 あたし、全部見てたんだから。
 あの髪の長い超可愛い子、お兄ちゃんだったんでしょう?
 そして、麗子さんが、魔女だったんでしょう?」

五郎は、大体の説明をして、美紀にコンパクトを見せた。
「わあ~、すごい。血がつながっていればいいなら、あたしも使えるのね。」
と美紀は、目を輝かせた。
「うん、そうだと思うよ。」
美紀は、コンパクトをいじりながら、
「わあ、この人、モデルの浅井ルカじゃない?
 じゃあ、これを選択すれば、あたし、浅井ルカになれるの?」
「うん、やってみれば。」
美紀は、浅井ルカを選択した。
そのとたん、美紀は、浅井ルカになった。
美紀は、姿見を見ながら、
「きゃーっ!ほんとだ。あたし、浅井ルカだ。超、脚長い。」
と興奮して言った。
五郎も、超美形のモデルを目の前にして、どぎまぎしてしまった。

美紀は、元の美紀に戻った。
「お兄ちゃん、コンパクト、ときどき貸してね。」
「いいよ。」
「お兄ちゃんが、女の子になりたがるの、黙っててあげるからね。」
と美紀が言った。
「約束だよ。」
「うん。」美紀は、笑った。



翌日は、日曜日だった。
五郎は、朝食を食べて、麗子の家を見に行った。
すると、小早川という表札に、5人の家族の名前が書いてあった。
その中に、「麗子」もあった。
『本物の麗子の家族が引っ越してきたんだ。』五郎は思った。

コピーロボットの麗子は、どこでどうしているのだろう。
五郎は、任務を終えたロボットの麗子が、未来都市のどこかで、
動かずに寝ている姿が心に浮かんだ。
それが、悲しく思えてならなかった。

昼になった。
五郎は、もう一度麗子の家を見に行きたくなり、玄関を出た。
そのとき、麗子の家から、家族5人が、そろってお出かけのようで、やってきた。
五郎は、道路に面した車置き場で、5人を見ていた。
五人は、近所の人にするように、五郎に笑顔で会釈をして言った。
麗子も同じだった。

『ああ、コピーのお姉さんではない。』
五郎は、たまらなく淋しくなり、涙が出そうだった。

家族の後ろ姿を見つめていた。
すると、麗子が家族を止めて、一人こちらに走って来た。
そして、にこにこしながら言った。
「五郎ちゃん、あたしのコピーロボットRGの願いで、
 RGとあたし、同化したの。だから、あたし、RGでもあるの。
 RGの持っている五郎ちゃんの16年間の記憶、全部あたしのものになったのよ。」
「じゃあ、昨日のことも、みんな知ってるの?」
「うん、スリのおばあちゃん助けたことも、ベッドの中のこともね。」
麗子は、ちょっとウインクをした。
「わあ、ほんと。それ、うれしい!」と五郎は、飛び上がった。

「それとね。」と麗子は、周りを確かめ、
「未来のことを知らせるのは、絶対タブーなんだけど、こっそり、これ。」
麗子は、バッグの中から1枚の写真を五郎に見せた。
ウエディングの写真で、新郎と新婦が、手をつないで走るように階段を上って来ている。

「あ、ウエディング・ドレスの人、お姉さん?」
「そう、あたし。新郎は?」
「あ!ぼくだ!」と五郎は、麗子を見て目を輝かせた。
「当たり!」麗子は、こぼれるような笑顔を見せた。
五郎は、胸の奥から喜びが湧き上がり、
「ヤッター!」と叫んだ。
「じゃあね。」と麗子は、写真を持って、笑いながら、走って行った。

お姉さんは、昨日のお姉さんでもあるんだ。
ぼくのこと全部わかってくれてる。
最高の人だ。

ずっと未来の人と結婚できるなんて、
その仕組みが、わからなかったが、
きっとそのうち解明されるのだろうなと思った。

麗子の家族を見ると、ちょうど曲がり角を曲がって見えなくなった。
だが、麗子がもう一度顔をみせて、
五郎に投げキッスを送った。

五郎は、にっこりとした。
幸せな気持ちが、胸一杯に広がった。


<おわり>


■次回予告■

新作を投稿したいのですが、まだ十に分できていません。
無理なときは、過去の作品を再投稿いたします。

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三丁目の魔女④「二人で青山通り」

④と⑤が逆になっています。
⑤の前にこちらをお読みください。

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「さあ、これから五郎は、100%の女の子になるの。」
お姉さんは言って、五郎を、ドレッサーの前に座らせた。
ズボンを脱いで、黒いショーツを履いた。
お姉さんが、後ろからショーツの中に手を入れた。
すると、ショーツのふくらみが消えた。
「お姉さん、今のまさか…。」五郎は聞いた。
「そのまさかよ。あなたは、これで女の子。どう感じが違う?」
「うん。憧れのまっ平。」
ショーツ以外裸になって、お姉さんは、五郎の胸をもんだ。
すると、五郎の胸がCカップになった。
それに合うようなブラをつけた。
腰までのスリップ。
全部黒。

お姉さんは、五郎をストールに座らせた。
「さあ、お顔よ。五郎は顔立ちが可愛いから、そのまま女の子風にするね。」
そう言って、お姉さんは、五郎の顔を何度かなでた。
あごを少し尖らせ、えらを滑らかにし、鼻筋を狭くして、おでこが丸くなった。
頬に少し脂肪がついて、やわらかそうになった。

「わあ、女の子の顔。誰が見ても女の子だね。」と五郎は嬉しくてはしゃいだ。
「髪を長くするわよ。」
そう言ってお姉さんがブラッシングすると、髪がどんどん長くなる。
そして、背中の中ほどまで伸びた。
前髪にカール、7:3に分けて、おでこを少し見せる。
長い髪は淡い色で、全体にふわっとしている。

ブルーと黒のボーダーの薄いストッキング。
その上に、光沢のある水色のタイトな超ミニのワンピースを着た。
肩見せ、胸は水平。
黒のかかとの高いヒールを履いた。

「さあ、これで、完成。メイクをするわね。
 服装が派手だから、濃い目にするわ。」
お姉さんは、メイク用品を使わずに、
10本の指で、瞬く間にメイクを終えた。

「立ってみて、どう?」とお姉さんは言った。
五郎は、もう嬉しくて気絶しそうだった。
顔はメイクで、都会的な超可愛らしい女の子。
雑誌の中にいるモデルさんのようだった。
くびれたウエストに、豊かなピップと胸。
超ミニから伸びた長くてふくよかな脚。

「これから、二人で、青山通りでも歩いてみよう。
 みんなに振り向かれるわよ。」とお姉さん。
「あ、でもぼくうまく歩けないと思う。」と五郎は言った。
「そうそう、脳の無意識運動の領域を、女の子仕様にするね。」
お姉さんは、そういって、五郎の頭に2本の指を当てた。
「これで、五郎の動作、仕草、歩き方、みんな女の子になるわよ。」
「わあ、すごい。」

お姉さんは、最後に、ピアスとアクセサリーを五郎につけた。
そして、お姉さんは、30秒もかからず、
エンジのタイト・ミニでメイクを済ませ、やってきた。

二人で並んで鏡を見てみた。
モデル並みの二人だった。
「あたしは、21歳。五郎は、16歳。
 断然五郎の方がモテるわよ。」
とお姉さんは言った。

手持ちの小さなバッグを持った。

さあ、外に出る。
お日様が眩しかった。

妹の美紀が、家の車の陰で、見張っていた。
目の前の路を、眩しいくらいに綺麗な女の子が通った。
『あれの一人がお兄ちゃんか…。わあ、これは、すごいわ。』
美紀は、興奮した。

「お姉さん。ほんとだ。ぼく、ヒールの靴で、かっこよく歩いてる気がする。」
「気がするだけじゃなくて、してるの。」

駅まで歩いたが、もうほとんどの人が、ぽかんと口を開けて見ていた。
電車の中でも、ジロジロ。
五郎は、なんか嬉しくてたまらなかった。
「見られて嬉しいって、女の子の特権だね。」
「そうよ。女はいいわよ。」と麗子は言った。

やがて、原宿に来た。
すごい人通りだ。
いろんな面白い格好の若い子が、大勢いる。
その中でも、麗子と五郎は目立っている。
正統派の美女と美少女は、やっぱり貴重品だ。

青山通りに入った。
オシャレなブティックが並んでいる。
そのウインドウに、二人の姿が映る。
その度、五郎は、これはまるで夢じゃないかと思った。
少し背の低い、若い子がぼくなんだ。
うれしい。

コーヒー店のテラスで、ウインナー・コーヒーを飲んだ。
麗子は、かっこよく脚を組んでいた。
五郎は、自信がなくて、脚を揃え、スカートの裾にバッグを置いている。
それも、女の子仕様されているので、形よく出来ている。

麗子が大きめのサングラスを、五郎に渡した。
そして、自分もした。
二人で、サングラス。
「サングラスするとね。タレントとか有名モデルと思われて、
 人はもっと見て行くわよ。」と麗子が言う。
「ほんとだ。みんな見て行く。すごくうれしい。
 こっちからも、みんなを見やすい。」と五郎は言った。

「ああ、こんなうれしい思いをしちゃったら、
 男に戻ったら、みじめだろうな。」と五郎は言った。
「まだまだ、うれしい思いをしてないわよ。」と麗子が言う。
「え?今が、最高の気分だけど。」と五郎。
「もっと、いいこと、あたしとするの。」麗子が言う。
「もっと、いいことって、まさか…。」五郎は、夢のような想像をして、顔を赤らめた。
「あたしは、あなたの心がわかるのよ。当たってるわ。」と麗子が言う。
それを、聞いて、五郎は、もう真っ赤になってしまった。
「あなたのような、美少女が赤くなるのって可愛いわ。」麗子はそう言った。

昼にパスタを食べて、二人で腕を組んで、オシャレな街を歩いた。
五郎は、ほとんど夢心地だった。

通りの角を曲がった。
すると、オシャレな通りではなくなっている。
どこにも、こう言う裏道があるものだ。

ふと見ると、おばあちゃんが、柄の悪そうな男二人に、
何か、言いがかりをつけられている。
おばあちゃんは、もっている巾着の布袋を大事に持って、
壁を背にしている。

「お姉さん、助けなくちゃ。」と五郎は言った。
「うん、あたし恐いからここで見てる。」と麗子は言う。
「お姉さん、じゃあ、バッグ預かってて。」
五郎はそう言うと、おばあちゃんと男二人の間に分け入り、
おばあちゃんを守るようにして、男二人をにらんだ。

「お年寄りに何するの!」五郎は言った。
「なんだ、お前。この婆あはな、ここらじゃ有名なスリなんだ。」
「そうだ、さっきサラリーマンからすった財布を、本人に返してやろうとしているだけよ。」
二人はそう言う。
「おばあちゃん、そうなの?」と五郎は聞いた。
「とんでもないです。いいがかりです。」とおばあちゃんが震えながら言った。

「女、どけ。どかねえと、可愛い顔がめちゃくちゃになるぜ。」
男は、ビンタの手を上げた。
その手が、まともに五郎の頬に飛んで来て当たった。
(痛い。ビンタされるのなんて、初めてだ。)
五郎は、強いわけでもなんでもなかった。
ただ、おばあちゃんを見て、何も考えず、助けに入ってしまったのだ。

もう一発、反対側からビンタが飛んできた。
唇を切って、血が出た。
五郎は、両手で後ろのおばあちゃんを守りながら、男をにらんでいた。
次は、ボディブロウでも来るかもしれない。
恐かった。
しかし、3発目は、来なかった。

「ちぇっ、大の男が無抵抗の女なぐっちゃ、男がすたらあ。
 姉ちゃんよう。今日は、お前に免じて、見逃してやるが、
 その婆あが、スリだってのは、本当だぜ。お前は、悪い婆あを助けたってことだ。」
男二人は、そう言って、行ってしまった。

五郎は安心した。
「おばあちゃん、本当にスリなの。」そう聞いた。
「それがあ…。」とおばあちゃんが、言葉を濁した。

そのとき、麗子が、一人のサラリーマンを連れてきた。
「おばあちゃん。この人に早く返して。」と麗子は言った。
「はい。」と言って、おばあちゃんは、巾着の布袋から、
サラリーマンの黒い財布を返した。
サラリーマンは、麗子と五郎にお礼を言って、去っていった。

五郎は、拍子抜けがして、おばあちゃんを見た。
おばあちゃんは、すまなそうな顔をして、五郎を見た。
「ごめんなさい。もうしません。
 でも、長年やってきたことを、簡単にはやめられないし、
 やめるように、努力します。」とそう言った。
「うん、できるだけ止めてね。」と五郎は言った。

おばあちゃんは、ぺこぺこ頭を下げながら、歩いていった。

「きゃー、ステキ!」と麗子が五郎を抱き締めた。
「ひょっとして、五郎は強いのかと思ったの。
 でも、強くないのに、飛んでいったのよね。
 そういうのがほんとの勇気かも。
 おばあちゃんを守っているときの、五郎の目、美しかったわあ。」
とまた麗子は言って、また五郎を抱きしめた。
「ぼく、無茶なだけ。学校でも、よく無茶しちゃう。弱いのに。」
と五郎は言った。

「唇の血を舐めてあげるね。」
そう言って、麗子は、まるでキスをするように、
五郎の唇に唇を寄せた。
五郎は、胸がドキンとした。

そして、麗子は、五郎の頬を撫でた。
すると、頬の痛みは、いっぺんで直った。

「さあ、五郎は偉かったから、あたしの家に帰って、いいことしよう。」
と麗子がいった。
『いいこと…。わあ。』
と五郎の胸はときめいた。

帰りは簡単だった。
麗子が五郎を抱きしめ、ある言葉を唱えたと思うと、
そこは、もう、麗子の家の中だった。
『いいことが始まる。』
帰りが早くて、まだ、心構えができてないけど…。
五郎は、胸を高鳴らせた。


つづき

■次回予告■

お姉さんと二人、お姉さんの家に戻ってきた。
これからの成り行きに、五郎の胸の高鳴りは頂点に。
最終回ではありませんが、クライマックスです。

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三丁目の魔女⑤「麗子といいこと」

順番で、④の投稿が後になってしまいました。
上の④の記事を先にお読みくださ。

=============================

居間で、立ったまま、麗子と向き合った。
麗子は、五郎を見つめたまま、五郎の身体を触ってくる。
「五郎も、あたしの体、触って。」と麗子は言った。
「う、うん。」と言った五郎の声は、震えていた。
ピップを触られ、背中をなでられ、そして、胸も触られた。
五郎も麗子に対して、同じことをした。

撫でられただけで、ぞくぞくしてくる。
女の子の体は、これほど敏感なのかと、五郎は思った。
五郎の吐息は荒くなっていった。
麗子も同じだった。

麗子も、興奮していると思うとうれしかった。
「お姉さん、ぼくの体さわって、興奮してくれてるの?」
「あたりまえじゃない。16歳の可愛い女の子を触って、
 何も感じないはずないじゃない。」
麗子は言った。

「軽くね。」と言って、麗子が、唇を寄せてきた。
『ああ、感激。』
五郎は、その唇に唇を重ねた。
何度も、くっつけたり、離したりした。

「ソファーにいこう。」麗子が言った。
座ると、前に大きな鏡がある。
自分が見える。
『ああ、これ、刺激的。』五郎は思った。

麗子は、五郎に体をぴったり寄せて座った。
厚いキスを何度もした。
麗子は、自分のストッキングをとった。
そして、五郎のも取った。
それから、麗子は、ショーツをとった。
五郎のも取った。

五郎は、大きくなったのを見られると焦ったが、
麗子が、あそこも女の子にしてくれたのだった。

「五郎はどっちが好き?」
と、麗子は、五郎の股間に手をやり、軽くなでた。
すると、五郎のあそこは、男の子になってしまい、
スカートを突きあげている。
麗子は、五郎の超ミニのスカートをめくって、
五郎のそれを、露にした。
「お姉さん、ぼく、恥ずかしい。」五郎は言った。
「でも、逆に萌えない?」
「複雑な気持ち。」
「あたしは、両方好き。」
麗子は言った。

「あたしも、お付き合いしようか?」と麗子が言う。
「え?」
麗子も、自分のあそこをなでた。
そして、スカートを少しめくった。
麗子も、男の子になって、五郎に負けないくらいになっている。
五郎は、気が狂いそうになった。
『ああ、お姉さんに、あれがある…もうたまらない…。』

麗子は、五郎の体をなでながら、
「名前だけ女の子にしない?五郎だと気分出ないでしょう。」と麗子は言った。
「じゃあ、ルナって呼ばれたい。」
「中学で好きだった女の子ね。」
「それも分かるの?」
「うん。五郎、ルナになってみたい?」
「なれるの?」
「うん。」
麗子は、五郎の男のものに触って、
五郎を再び、女の子にした。
そして、自分のも、女に戻した。

麗子は、五郎の顔を一撫でした。
すると、五郎の顔は、メイクをしたルナの顔になった。
「ああああ。」と五郎は、鏡に見入った。
『可愛い。ルナだ。ああ、感激。』

「はい、ルナは、終わりよ。」
麗子に顔を一撫でされて、五郎に戻った。

「さあ、ベッドルームへ行こうか。」
麗子に言われ、五郎は、ドキンとした。
今日一日、何度ドキンとしただろう。



麗子に手を引かれ、ベッドルームに来た。
五郎は、「うわあ~。」と声をあげた。
周りの壁、天井も全部鏡が貼られている。
いやがおうにも、自分の姿が目に入ってくる。
五郎は、改めて、自分の美少女の姿に感激した。

「ルナ、背中のファスナー下ろして。」と麗子に言われた。
麗子も、黒い下着だった。
麗子が、五郎を抱くようにして、五郎の背中のファスナーを下ろして、
黒い下着姿にした。
「ルナ、ブラだけ取って。」と麗子が言う。
麗子もそうする。
五郎もそうした。

ブラを外すポーズ大好き。
ショーツは、もう取ってしまっている。
二人とも、スリップ1枚になった。
胸には、本物の乳房。
五郎の、胸の高鳴りは、最高潮に達していた。

「さあ、毛布にもぐりこもう。」麗子が言う。
二人で、毛布にもぐり込んだ。
麗子に抱かれて、キスをされた。
髪の長い二人の美女と美少女が、からみあっている。

麗子が、五郎の上になり、五郎の腕を上にあげた。
そして、腕からキスをして、五郎の脇の下に唇をあてた。
五郎は、ぞくぞくとした。

麗子が、五郎を上にして、
「あたしにも同じことして。」と言った。
麗子のきれいな脇の下にキスをしたとき、
麗子は、声をあげた。
五郎は、もうたまらない気持ちになっていた。
脇の下は、ある意味、禁断の場所だと五郎は思っていた。
五郎は、とっくに女の子のあそこを、濡らしていた。

「ルナ、あたし、今、こんなになってるの。」
麗子に指を取られ、その指を、麗子のあそこに持っていかれた。
麗子も、五郎と同じくらい潤っていた。
(ああ、お姉さんも、ぼくと同じに、感じているんだ。)
五郎は、それが、たまらなくうれしかった。

「あたし、五郎の言葉だけは、女の子仕様にしなかったの。
 五郎は、自分の意志で、女の子ルナになって、女の子の声をあげるのよ。
 本当は、思いっきりルナになって、叫んでみたいでしょ。」
麗子はそう言いながら、五郎のスポットを撫でた。

「あああ。」五郎は叫んだ。
五郎は、めくるめく快感に襲われ、
自分が、男の子だったことを忘れていった。

毛布は、とっくに床にずり落ちていた。

天井や壁に黒いスリップの美少女が映り、もう一人の美女に愛撫されている。
ああ、女の子の声が出る。五郎は思った。

「ああん、お姉様。いい。いいわ。もっと、もっとして。
 あたしを、めちゃめちゃにして…。」
五郎は、恥ずかしさの壁を越えて、女の子の言葉を発した。
その声が、また自分に興奮を呼ぶ。
「ルナ、可愛い、もっと、もっと、いじめてあげる。」麗子はいう。
「ああん、やん、やん、あたし、気が狂いそう…。」

麗子は、じらして、指を離し、五郎にキスした。
そして、胸を、ゆっくりともんで、てっぺんを爪で刺激した。
「ああ、お姉様。じらさないで。あたし、一気に行ってしまいたい。」
「女の子同士は、ゆっくり、ゆっくりするのよ。」と麗子は言う。
麗子は、五郎の上に乗って、スリップの紐を下ろした。
そして、体をこすりつけてくる。

天井には、二人の美女が重なっている姿が映っている。
五郎は、天井から目が話せなくなっていた。

麗子の手が、また五郎の下腹部に伸びた。
そして、タッチ。
「ああああああ。」と五郎は叫ぶ。
そして、ゆっくりとスポットをこすられ、
五郎の理性は、完全になくなっていく。

「ルナ、3分だけ、ルナの脳を女の子にしてあげる。」と麗子。
「どういうこと?」
「今に分かるわ。はい、女の子!」
「ああ、わかった。お姉様。あそこだけ、男の子になって入って来て。」
五郎はそう言った。
「いいわよ。」
麗子は、五郎の脚を開いた。

「ああ、入ってくる。お姉様は、男…。」五郎は思った。

五郎は、麗子に激しく突かれて、絶叫した。
『ああ、女になっていく。丘されてる。ああ、あたし、心の底まで、女の子になる。』
その思いが、どんどん強くなっていく。

天井に映っている。
美少女は、長い髪を乱して、のた打ち回っている。

「お姉様、ああ、ルナ行きそう、ルナ行っちゃう、ああ、もうだめ。」
五郎は、自分をルナと呼びながら、激しく震え、背を反らせた。
「あああ…。」
五郎は、ある高みへ到達し、天国へいくような陶酔感に浸った。



麗子は、五郎の体をやさしく撫でた。
五郎は、ゆっくりと天国から舞い戻った。
うっすらと目を開けた。

「ね、次は、お姉様が、女の子になるのよ。」と五郎は行った。
「あたしは、いいの。お姉様だから。」
「そんなことない。今度は、ルナのあそこを男にして。
 そして、お姉様は、女になるの。
 ルナは、もともと男だもん。」
「うん。じゃあ、して。」と麗子は、無邪気に笑った。
そして、五郎の下半身を男にして、自分は、女になった。

やがて、麗子が、声をあげ、小刻みな呼吸をはじめた。
五郎は感動していた。
快感に耐えて、いやいやをしている麗子の顔が、たまらなくセクシーだった。

やがて、麗子は、激しく快感をうったえ、体を震わせた。
そして、「あああ…。」とアゴを突き上げながら、達していった。
五郎は、体を麗子に重ね、二人は抱き合った。


つづく

■次回予告■

次回、最終回です。
一体麗子の正体は?
麗子は、五郎に素晴らしい贈り物をします。

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三丁目の魔女③「もうほとんど女の子」

私は、ISです。昨日それをここで、カムアウトしました。
簡単な文面ですが、それは、この記事の下にあります。
見てくださると、うれしいです。
では、物語の続きです。読んでくださると、うれしいです。

============================

五郎は、家に帰るのが恐かった。
「ただいま。」を言わず、そっと家に入って、
まっすぐ自分の部屋に行って、鍵をかけた。

姿見を立てて、制服の全身を映してみた。
ま、なんとかOKじゃないかと思った。
上着を脱いでみた。
『わあ!まずい、これ。』
ゆるゆるのズボンの、そのベルトが、信じられないほど高い位置にあり、
そして、信じられないほど細い。
股上が悲鳴を上げている。

五郎は、ズボンを脱いでみた。
そして、Yシャツも脱いだ。
ランニングシャツも脱いだ。
そして、嬉しさと困惑で、心臓がドキドキした。

ハイウエスト、60cm。
そこからなだらかなピップのライン。
柔らかなピップ。
そして、色っぽい長い脚がむっちりとして、
膝を過ぎると、細く締まっている。
首も細くて長い。

加えて、昨日の肩腕背中の女の子ライン。
脚には、1本もスネ毛がない。
五郎は、腕を上にあげて見た。
再度、ビックリ。
脇の下の毛が全くない。
まるで、赤ちゃんのように綺麗だ。

五郎は悟った。
胸が薄いだけで、シルエットは、『完全な女』だ。
横向きにも。
かっこいいヒップ・アップ。

五郎は、女の子のショーツに履き変え、
男の証を股の下に回した。
こうすると、女の子に見える。
ブラをつけた。
ピンクのタンクトップを着た。
デニムのミニのタイトスカートを履いた。
膝上、10cm。

ベッドに座ると、タイト・ミニのスカートから脚が大幅に出る。
むちっとしていてたまらない。
ああ、綺麗な脚だ。まっすぐで、膝小僧もでこぼこしていない。
触ってみると、どこもかもが、柔らかい。
五郎はこうふんしていた。
股に回してあるものが、悲鳴を上げている。

かかとが8cmあるサンダルを履いた。
手が震える。
そして、全身を、再び映してみた。
モデルのようにかっこいい。
タンク・トップからでた肩や腕がステキだ。
『ああ、もう、こんな身体になっているんだ。』
喜びが、胸の奥から湧きあがってくる。

五郎はたまらなくなり、鏡の前に椅子を置き、
そこに座って、自分を見つめながら、自己処理を始めた。
ショーツを脱いで、脚を広げた。
ああ、たまらない。
思い切り女の言葉を叫びたい。
ああ、もっと大きな胸がほしい。
女の子の可愛い声が欲しい。
長い髪が欲しい。
「ああ、あたし、もうどうなってもいい。
 お姉様、あたしを完全な女にして。
 可愛い女の子にして。
 お願い、ねえ、お姉様…。」
心で、そう叫びながら、五郎は果てていった。

理性が戻ってくる。
裸になると、後姿は、全くの女だ。
風呂に入るとき注意。
男のブリーフを履いて、今まで一番ゆるかった、女物のジーンズを履いた。
それでも、お尻はぱんぱんだ。
股上が短く、おへそは、丸見え。そこから、くびれたウエスト。
厚手の大きめなTシャツを着た。
その上に、ストライプの入った、ぶかぶかのYシャツを着た。
Yシャツが、大きなお尻や細いウエストをなんとか隠してくれる。
なんとか、OKだと思った。
いや、まだだ。
細い首。
そうだ、Yシャツの襟を立てよう。
今度こそOKだと思った。

五郎は、様子をうかがいながら、階下に降りて行った。
「お母さん、ただいま。」
台所の母は、チラッと五郎を見て、
「帰ってたの?おかえり。」と言った。
「うん、さっきね。」と五郎は答えた。
どうやら、母は、OKだと思った。

夕食の時間が来た。
五郎は、美紀が一番恐かった。

やがて、みんながそろった。
美紀がちらっと見たが、何も言わなかった。
美紀もクリアーかなと思った。
「いただきます。」をした。
みんなは、楽しく会話をしていたが、
五郎は、生きた心地がしなかった。
『ああ、これは、まずい。身が持たない。
 明日お姉さんに、全部元に戻してもらおう。』
五郎はそう思った。

次の日は、土曜日だった。
まずい。自分もお姉さんも、休みだ。
そうか。お姉さんの家を訪ねよう。
そうすれば、いいんだ。
五郎は、ややほっとした。

その夜、五郎は、勉強で遅くなると言って、
夜中近く、みんなが部屋に入っているとき、
そっとお風呂に入った。
白い長いむちむちの脚を見るたび、興奮した。

お風呂の中で、身体を拭いて、
出るとすぐ、パジャマを着た。
美紀は、カーテンの隙間から見ていた。
『お兄ちゃんの身体が、女の子になってる。
 なぜだかわからないけど、ここは、知らんふりをしてあげよう。』
美紀はそう思った。



次の日の土曜日、午前10時頃、
五郎は、自分の生活バッグを肩からさげ、
友達のところへ行ってくると言って、家を出た。

五郎は、ずっと遠回りをして、お姉さんの家に来た。
インターフォンを鳴らした。
「はい。どなた?」とお姉さんの声がした。
やったあ!と思った。
「五郎です。」
「そう、今すぐ開けるから。」
お姉さんが、扉からすぐ顔を見せた。
水色のワンピースを着ていた。
「来るのわかってたのよ。」とお姉さんが言った。
五郎は、初めてお姉さんの家の中に入った。

美紀は、ずっと五郎の後をつけていて、
五郎がお姉さんの家に入っていくのを見届けた。
「そうか。そうだったんだ。
 お姉さんが、『三丁目の魔女』だったんだ。」
そう発見し家に帰った。

五郎は居間に通された。
お姉さんの他、だれもいなかった。
「お姉さん、家族の人はいないの?」
「あたし、ここで一人暮らしなのよ。」とお姉さん。
「魔女だから?」
「その通り。」

「さて、五郎の気持ち当てようか?」
「うん。わかる?」
「『もう、こんなに女の身体になったら、家族と暮らせない。
 元に戻して欲しい。』でしょ?」
「うん。お姉さん、何でもわかるんだね。」
「安心して。」とお姉さんは言った。
「いつでも元に戻れる仕組みになっているから。
 でも、その前に、残ってる男の部分も女の子にして、
 完全な女の子体験をしてからでも、遅くないと思わない。」

『完全な女の子』と、その言葉を聞いただけで、五郎は興奮してしまった。

「うん。完全な女の子になりたい。元に戻してもらえるなら。」
と五郎は言った。

「まあ、紅茶でも飲みましょう。」
とお姉さんは、紅茶をソーサーの上に置いて、出してくれた。
「ありがとう。」と言って、五郎は、紅茶を飲んだ。
緊張していたので、すごく紅茶がおいしかった。

五郎は、飲んで、「ふーー。」と息を吐いた。
あれ?と思った。
「お姉さん。」と言ってみてわかった。
声が女の子になっている。
「お姉さん。声を女の子にしてくれたの。この紅茶で。」五郎は女の子の可愛い声で言った。
「そうよ。あたしの好きな、女の子の声にしたの。どう、可愛い声でしょう。」
「うん、うれしい。あーあーあーあー、わあ、可愛い~。」
と五郎は、歓喜した。


つづく

■次回予告■

五郎はお姉さんにより、完全な女の子になります。
モデル風な服を着て、お姉さんと青山通りにくり出します。

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三丁目の魔女②「どんどん女性化」

五郎は、急いで学校から帰ってきた。
母の紗枝子と妹の美紀がいたが、
「ただいま。」と言っただけで、見られないように、自分の部屋に入り鍵をかけた。
姿見を置いた。
そして、制服を脱いで、上半身裸になった。
はっとした。
華奢な肩と腕。
筋肉がほとんど見えない、肩から腕の柔らかなライン。
「女だ!」と我ながらドキリとした。
胸は、思ったより出てる。Aカップ半というところ。

五郎は、こっそり買った女装用品が入っている、ベッドの下のケースを出した。
そこから白いブラジャーを出して、着けて見た。
Aカップの胸を補正するパッドがあり、つけて見ると、胸があるように見える。
五郎は、そっと後姿を映してみた。
ドキッ!女だ!と思った。
脇の下のライン。
首から肩へのラインが女なのだ。
これほどまで、女だったのか。
みんなが、抱き締めたくなったのは、無理もない。

五郎は、小学校のときの裁縫道具の中から、メジャーを取った。
まず、アンダーバストを計って見た。
73cm。パッド付きのブラのまま計ってみた。
82cm。
五郎は、サイズを間違えて買った7号のワンピースを取り出して、着てみた。
上がキャミソールになったものだ。

背中のファスナーをあげてみた。
楽々ファスナーがあがり、上半身にジャスト・フィットした。
『ああ、7号が着れるサイズになったのだ。』
ああ、これで、ウエストが細くて、女の子のハイ・ウエストの位置だったら、
このワンピースが、完全に切れる。
細いウエスト、高いウエスト。
できれば、今のゴツゴツした脚を、長くまっすぐにしてほしい。
脚の長さだけは、自信があるのだ。

ズボンを履いているから、脚ならばれないんじゃないか。
ウエストなら、上着を着ているのでばれないんじゃないか、そう思った。
お姉さんにあったら、今度はそれをお願いしよう。

五郎は、ジーンズを履いて、Tシャツを着た。
そこで、気がついた。
胸のトップが、Tシャツのその部分を尖らせている。
ええ?
今日体育があったけど、こんなに目立っていたのかな。

季節は5月。
Tシャツ1枚では寒い。
五郎は、上から、ゆったりしたサマーセーターをかぶった。
これで、わからない。

夕食まで、そのスタイルで、好きなことをやっていた。
やがて、「夕食よー。」の母の声がした。
階下に降りて行った。

はじめ、みんな何も言わなかったが、
そのうち、中2の妹の美紀が、言った。
「お兄ちゃん、少しやせた?」
父の靖男と母の紗枝子は、五郎を見た。
「気のせいだろう。」と父。
「いえ、ちょっとやせたわ。五郎、まさか、ダイエットなんかしてないわよね。」
と母が言った。美紀が、
「お母さん。お兄ちゃんみたいな痩せ気味の子が、ダイエットするわけないじゃない。」
と言った。
美紀の言葉で、救われて、なんとか食事の時間を切り抜けた。

五郎は、食べながら、
『あと、ごまかせるのは、脚、ヒップ、ウエスト、足くらいかな。』と思った。

その日の夜、姿見を立てて、何度も自分を見た。
両手で胸を抱くようにして、肩の後ろまで、手を出すと、
後姿が、誰かに抱かれているように見える。
それに、たまらなく萌えてしまった。

Aカップ半ある胸も、いろいろ調べた。
もむと気持ちがいいことがわかった。
てっぺんは、爪で刺激すると、たまらない。

身体がこうふんしてくると、理性が遠のいていく。
五郎は、ベッドの毛布の中で、
お姉さんに、身体の一つ一つを女の子にされ、
やがて、完全な女の子になる想像をした。そして、
「ああ、お姉さん、あたしを女の子にして、早くして、後悔しないから。」
そう言いながら、自分を慰めていった。



翌朝、五郎は、お姉さんの車が後ろから来ることを祈りながら、
道をゆっくり歩いていた。
「五郎ちゃん、今日も乗っていく。」
(やった!)
「はい。うれしいです。」
「昨日の肩と、腕の女の子化、どうだった。」とお姉さんが言う。
「クラスのみんなから、色っぽいっていって、抱きつかれました。」
「あはは。肩と腕でそうなの?今日はどこにしようかな。」
「脚とお尻とウエスト。胸は、今のぎりぎりだから、もう大きくしないで。」

「脚とお尻とウエストか。服で見えないもんね。今日体育ある?」
「ないです。」
「女の子のウエストは、細いだけじゃなくて、高い位置にあるの知ってる?
 だから、それをするなら、肋骨を少し絞るけどいい?」
「いいです。」
お姉さんは、車を左に寄せて止まった。
そして、五郎の服の上から、撫で始めた。
「ウエストは、実寸60cmくらいにしておこう。
 おへそのうえ7cmの位置。
 ヒップは、大人し目の85cm、
 わあ、五郎ちゃん、脚長いのね。素敵だわ。
 背、いくつ?」
「162cmです。」
「なんだ、あたしと2cmしか違わない。」
「お姉さん、164cm?」
「もっとあるかと思った?」
「うん。」

「ももはむっちり、すねは細く。
 足も女の子。1cmくらい靴がぶかになるかもよ。
 最後、おまけ、首も細く少し長くしておこう。

 いいわ。服の上からじゃ、わからないわ。
 かろうじて女の子程度にしておいたから。」
とお姉さんは言った。

「ズボンのお尻がぱんぱんに張ってる。」と五郎。
「じゃあ、83cmにしよう。はい。」
「ああ、大丈夫。楽になりました。」
お姉さんは、駅まで送ってくれた。
「じゃあ、今日もがんばってね。」
「はい。」

麗子は、しばらく運転しながら考えた。
「…すると、あとあの子、手と、顔と、髪以外は、女の子になったのか。
 あらまあ、これは、今日当たりまずいかも?ま、いいか。」
あまり、深く考えない麗子は、るんるんと車を飛ばした。



学校に来た。
朝から、皆の自分を見る目がちがう。
みんなが寄ってきた。
「おはよう、五郎ちゃん。」という。
嫌な、雰囲気だ。

そのうち、浅田という背の低い生徒が、
「五郎さ、俺、姉ちゃんから、ワンピース借りてきたんだけど、
 五郎、女の子みたいだから、着てみてくんね。」
という。
浅田が見せたのは、赤い、上がキャミソールになったワンピースだ。
「嫌だよ。やめてくれよ。」と五郎は言った。
しかし、浅田は、床に両手を着いて、拝むように頼む。
周りのみんなも、同じポーズをして頼む。

『昨日より、さらに女っぽくなってる。どうしよう。』と五郎は思った。
だが、困惑する気落ちとは裏腹に、
女になった自分を見せたいという心が働くのだった。

「じゃあ、いいよ。着るから、昨日みたいに抱きついてきたりしないでくれる。」
五郎は言った。
「うん。それは、我慢する。なあ、みんな。」と浅田は言った。

「じゃあ、みんな。目をつぶってて。ぜったい見ないでよ。」
そう言って、五郎は、裸になり、ワンピースを着たのだった。
五郎は、トランクスが嫌いで、ブリーフだった。
着てみて、我ながら、興奮してしまった。
ジャスト・フィットなのだ。
ウエストの位置。細いウエスト。
膝までのスカート。そして、肩にかけるひもの長さ。
自分の足を見た。
可愛い。女の子の足だ。
何より、スカートから出た、脚が綺麗だ。
スカートを少し手繰ってみた。
むっちりした太もも。
ああ、たまらない。幸せだ。

五郎は、男子にしては、女の子のような可愛い顔をしている。
髪も長髪だ。

みんなは、目を開けた。
そして、目を見張った。
「おおおおお。」と言った。
「五郎。女の子だ。お前は女の子だ。」と浅田が言った。
「ちょっと立って、くるっと回って。」と小林が言った。
五郎はそうした。
「おおおおおおお。」とみんながまた言った。

男達は、男と女の体形の違いを詳しく知るわけではなかった。
だが、『目』が知っている。
五郎が、可愛いワンピースを着た姿を、女だと見ている。

「五郎、かんべんだー!」そう言って、小林が抱きついて着た。
みんなで、五郎を倒し、何人かが五郎の綺麗な脚に頬ずりし、
4人ぐらいが、身体を抱きしめてきた。
2人が、キ・スをしてきた。

五郎はもういいやと思い、好きにさせた。
自分の身体に、これほどの男達が萌えている。
迷惑なようだが、女になった気持ちがして、悪くはなかったのだ。
本当なら、
「やん、やめて、いや、やめて、ああああん、いや、いや。」
こんな風に女の子の声を上げてみたかった。
でも、声はまだ男だし、そんな声を上げたら、
男達は、もっと萌えてしまうに決まってる。

五郎はチャイムに救われて、
急いで、制服に着替えた。


つづく

■次回予告■

五郎は、お姉さんの家にとうとう招かれます。
そして、残る部分を女の子に・・・。

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三丁目の魔女①「憧れのお姉さんの車に乗る」

前作のエピローグを書くつもりでしたが、うまく書けませんでした。
そこで、新作を書きました。読んでくださるとうれしいです。

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「三丁目の魔女」

三丁目には、魔女が住んでいるという。
それが、誰だか、誰も知らない。

榎木五郎は、三丁目に住んでいた。
ここで生まれて、16年になる。
一時、この三丁目の魔女が誰なのか、
夢中になって探したことがある。
しかし、わからなかった。
そして、いつしか魔女のことは忘れてしまった。

魔女とは別に、五郎には、この三丁目に憧れのお姉さんがいた。
五郎の家の隣の隣である。
五郎が小学3年生のとき、中学2年生だったお姉さんで、
そのときから、好きだった。
背は高い方。スタイルがいい。色が白くて、髪が長い。
五郎が、6年生のとき、高校2年生。
このころのお姉さんは、飛びぬけて綺麗で、
五郎はお姉さんを見つけると、いつも道の辻まで追いかけて、
お姉さんが小さく見えるまで、見ていた。

お姉さんの名前は、小早川麗子と言った。

五郎は、女の子の服を着たいという願望があった。
出来れば、身体も女の子になりたかった。
だか、それは想像の中で、自分が出来ることは、女の子の服を着ることだった。
五郎はいつも、お姉さんの姿に憧れた。
あのくらいいいスタイルで、あのお姉さんの服を着たい。
そう思っていた。

あるときから、お姉さんの服装が、制服ではなくなった。
学生になったのだ。
そして、お姉さんの通る時刻に道で待っていても、
お姉さんは、車で、通り過ぎて行くようになった。
五郎のがっかりした日々だった。

五郎は、高校1年になった。
お姉さんは、メイクをするようになり、
ますます、綺麗になった。
しかし、車通勤のお姉さんをよく見ることができない日々だった。

ところが、運命の神様が微笑んだ。
五郎が、駅へ行く道を歩いていると、
お姉さんの車が後ろから来たのだ。
そして、五郎の横で止まり、窓が下がって、
「五郎ちゃん、駅まででしょう。上り坂だから、乗っけていくわ。」
お姉さんがそう言ってくれたのである。
「わあ、お願いします。」
五郎は、天にも昇る気持ちだった。
車に入ると、お姉さんのいい匂いがする。

「お姉さん、ぼくのこと知ってたんですか。」と聞いてみた。
「知ってるわよ。赤ちゃんのときからよ。
 あたしが5歳くらいかな?あたし、赤ちゃん好きだから、
 毎日見に行ったのよ。
 五郎ちゃんのおしっこ顔にかけられたこともあった。」
とお姉さんは笑った。

そうかあ、ぼくは、知らなくても、お姉さんが、ぼくを知っていることがあるんだ。
五郎はそう思った。
五郎は、そのとき、ふと魔女のことを思い出したのだ。
5年長く住んでいるお姉さんなら知っているかもしれない。

「お姉さんね、三丁目に魔女が住んでるってほんと?」
「ほんとよ?」
「え?お姉さん誰だか知ってるの。」
「知ってる。それ、あたしが言いふらしたことだから。」
「なんだ、お姉さんが、言いふらしただけなの。じゃあ、魔女はいないの?」
五郎は半ばがっかりして言った。

「いるわよ。一番初めに言いふらせる子って、一番初めに魔女が誰だか知った子。」
「でも、魔女本人は自分だって知ってるんだから、言いふらした子は2番目じゃない。」
「あたしが、1番早く言いふらしたって言ってるじゃない。」
「じゃあ、お姉さんが、魔女だったりして。」
「やっと気がついた?」
お姉さんは、うふふと笑った。

五郎は、「あはは。」と笑った。

「ほんとよ。」とお姉さんは言う。
「じゃあ、お姉さん、魔女なら、ぼくの心当ててみて?」
「わかるわよ。あたしのこと好きでしょ。」
「あはは、それ、誰だってあたるよ。
 ここらの若い人、みんなお姉さん好きだよ。綺麗だから。」

「そうお。じゃあ、もう一つ、当てようか。」
「当ててみて?」
「五郎君は、女の子になりたい。」
「え?!」
五郎は、ドキンとして、うつむいて真っ赤になってしまった。

「当たり?」とお姉さん。
「うん。お姉さん、どうしてわかるの?」
「魔女だっていったじゃない。」
「信じたくなってきた。」
「信じさせてあげようか。」
「うん!」
五郎は目を輝かせた。

お姉さんは、車を左側に止めた。
「じゃあ、五郎ちゃんのどこかを女の子にしてあげる。目立たないところ。
 そうね、手がいいかな。手を出して。」
とお姉さんは言う。
五郎は手を出した。
「お姫様の手でいい?」
「うん。」
じゃあ、といって、麗子は、五郎の手をもんで、全体を撫でた。
「わあああ!」
五郎が見ると、白くて細く、可愛い女の子の手になっていた。

ここで、五郎は、完全に、お姉さんが魔女だと信じた。
「あ、でも、お姉さん、ぼく、困る。
 この手じゃ、みんなに変だってばれちゃう。」
「そうお。手ってそんなに見るかしら。」
と麗子は言う。

「見るよ。一番、外に出してるところじゃない。」
「じゃあ、手は戻してと、肩と腕と胸。胸、小さめにしておくね。」
麗子はそう言って、五郎の肩と腕と胸を撫でた。
「ああ、今度は、ばれない。ぜんぜん自分が変わった気がしない。」と五郎。
「そう。よかった。」
そう言って、麗子は、発車した。

そして、五郎は駅で降りた。
『わあ~!やったあ!お姉さんとお話して、手まで触ってもらって、魔法も。』
五郎は、そっとYシャツのボタンをはずし、手を入れて見た。
ある。これがAカップというんだろうか。
制服脱いでも、ほとんど目立たない。
肩は、さわった感じ、少し薄くなっているみたいだった。

五郎の高校は男子校だった。
その日は、3時間目に体育があった。
20分休みにみんな着替える。
五郎の席は、窓側だった。
ひょっとして、Aカップの胸が目立つといけないので、
窓の方を向いて、着替えていた。
すると、何人かが後ろで、声を上げる。

「五郎。なんか背中の感じ変だぞ。」と小林が言う。
「うん、なんというか、色っぽい。」と木村。
「なんか、こう、抱き占めたくなるような。」工藤。
「細いのにやわらかそう。」小倉。
「ちょっと、抱かしてくれ。」
そう言って、小林が抱いてきた。

「わあ、やめろ!何すんだよ。」と五郎が言ったが、ときすでに遅し。
「なんかこう、女の子みたい。女の子ってこうだろうなって気がした。」と小林が言った。

じゃあ、俺も、俺もで、みんなが抱きしめに来た。
「わあ、女の子抱いたみてえ。感動。」などという。

『わああ、困るなあ。どうしよう…。』
自分ではよくわからない。

五郎は、後で、家に帰って、鏡で見てみて、やっとわかるのだった。


つづく

■次回予告■

もっと女の子の身体になりたいが、
家族や学校があるしと、五郎は悩みます。

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GID事務主査・江崎陽子④最終回

最終回です。ハッピーエンドに終わります。読んでくださるとうれしいです。

=============================

夫妻は、はっとしたように正夫を見た。

「ね。お母さんに聞きたい。言ってよ。
 お母さんは、何を根拠に、ぼくの心は男だというの。」
正夫は、母に言った。

「だって、あなたは男の子でしょう。男の子なら心も男でしょう。」母は言った。

正夫は、怒りをむき出しにして言った。

「お母さん、今言ったこと。それが根拠だって、本気で思ってるの?
 今まで、校長先生、高坂先生に、根拠を言えとさんざん言っといて、
 お母さんは、今の言葉が根拠になると、本心で思ってるの?」

母は、だまったしまった。
言われてみると正夫の言うとおりである。
『男なら心も男でしょ。』とは、あきれるほど稚拙な返答である。
第一、根拠ではない。自分達が先生に求めたのは、具体的な事例である。
だから、ここは、正夫に心が男だという、
具体的事例やエピソードを答えなければならない。

見当違いな理由を述べた昌子は、恥ずかしさに、頬を紅潮させた。
しかし、根拠の何たるかを意識してなお、根拠が何も思い浮かばないのだ。
なんということだ。
先生を責めることだけを考え、正夫の心が男だという根拠を、
何一つ用意していなかったのだ。
昌子は、なすすべもなく、うつむいてしまった。

正夫は言った。
「お父さん、お母さんの代わりに言ってくれない?」正夫は、聞いた。

父雅史も、妻の言葉以上のことを言えず、うつむいてしまった。

「ぼくが、一番疑問なのは、お母さんは、個人面談から帰ってきて、
 みんなで食事をして、そして、お父さんと学校へ出かけた。
 その間、どうして、本人であるぼくに聞かなかったの?
 正夫の心は、男なの、女なのって。
 それが、一番早くて、確実じゃないか。

 今、ぼくは、ここではっきり言うよ。
 お父さん、お母さんが、先生から聞きたかった根拠を、本人のぼくが言う。
 ぼくの心は女です。
 生まれたときから、ぼくの心は女です。
 ぼくが心で話すのは、女言葉です。
 ぼくは、毎日日記を書きます。その言葉は全部女です。

 ぼくが、5歳のとき、女の子になりたくて、おち△ちんをハサミで切ったでしょう。
 恐くて、全部は切れなかった。
 たくさん血が出て、ぼくは、お母さんを呼んで、
 救急車で病院に運ばれた。

 手当てが終わったとき、
『なぜ、そんなことをしたの?』って先生に聞かれた。
 ぼくは、おち△ちんがなければ、女の子になれると思って、しましたって言った。
 おかあさんは、全部聞いてた。
 あんな大事なこと、お母さんは、忘れてしまったの?
 お父さんには、言ってないでしょう。
 なぜ、言わなかったの。」

正夫は、涙を流していた。

「ぼくは、小学1年生に上がるとき、はっきりお父さんとお母さんに言った。
 ぼくは、女だから、赤いランドセルが欲しいって。
 そのとき、ぼくは、ひっぱたかれた。
 お父さんもお母さんも、何かあるとすぐビンタをする。
 ビンタをされると、どれだけみじめな気持ちになるか知ってる?
 だから、それ以来、ぼくは、自分の心を語ることを止めた。

 ぼくは、女の子を同性と感じます。
 男の子を異性と感じて、意識してしまいます。
 今、好きな子がいます。それは、男の子です。

 高坂先生が、ぼくの心は女かも知れないとおっしゃった1番の根拠は、
 ぼくが、先生に、『ぼくの心は女です』と言ったことです。
 先生から聞かれた訳じゃない。
 ぼくが、先生に聞いて欲しくて言ったんです。
 
 でも、ぼくが、先生にそう言ったことを、お父さん達が知ったら、
 ぼくは、家で、どれだけビンタされるかわからない。
 ぼくは、ビンタが、死ぬほど嫌いです。

 ぼくが、家でビンタをされないように、
 先生は、ぼくから聞いたことを、一切、言わないでくれたんです。
 ここで、お父さん、お母さんから、何度責められても、
 先生は、ぼくのために、だまっていてくれたんです。

 お父さん、お母さん、ぼくは、こんなにたくさん言いました。
 これでも、まだ根拠が足りなのなら、
 学校での1年生から今までのこと、
 ぼくの心が、どれだけ女の子で、
 そのために、どれほど悲しい思いをしてきたか、
 全部言ってもいいです。
 それとも、日記を読んでください。100も200も書いてあります。

 高坂先生は、そんなぼくのことをわかってくださって、
 親に話してみると言ってくださった、初めての先生です。

 お父さん、お母さん。根拠というのは、今ぼくが言った様なことです。
 これに、負けないほどの、『ぼくの心が男だという根拠』があるなら言ってください。」

正夫は、目に一杯涙を溜めて、最後にそう言った。
その後、担任の茂男のそばに行った。
茂男は、ソファー半分にすわり、正夫を座らせた。
茂男は、正夫の肩に力強く手をかけ、「よく言った。」という気持ちを伝えた。

陽子が、校長に呼ばれて来ていた。
陽子は言った。
「私は、事務のもので、江崎陽子といいます。性同一性障害です。
 根拠をお探しとお見受けしました。

 小さい頃からの正夫さんの行動を思い起こしてください。
 男の子のおもちゃを与えて喜べば、それは男の心である根拠の1つです。
 逆に、男の子のおもちゃには、目もくれず、女の子のおもちゃを欲しがれば、
 それは、女の心である根拠です。

 そういうことを一つ一つ思い起こしていただけませんか。
 正夫さんの男の心である根拠がどれだけあったか。
 女の心である根拠がどれだけあったか。
 正夫さんと高坂先生は、まだ1年間のお付き合いです。
 それより、生まれたときから知ってらっしゃるお母様、お父様は、
 一番よくお分かりかと思います。

 そして、正夫さんが、男の心を持っているという根拠を、
 言ってあげてください。正夫さんは、それを知りたがっています。」

母の昌子は、思い出してみた。
1つ1つ。女の子の心だという根拠は、いくらでも思い起こすことができた。
人形遊び、女の子向けの小物、すべて女の子向けの物を欲しがった。
一番大きなことは、救急車で運ばれた日のことだった。

一方、男の子の心だと言う根拠は、一つも、見つからなかったのだった。
父親とキャッチボールをしたり、男子の中で遊ぶことは、一度もなかった。

相原夫妻にとって、大きな事実を受け入れるときが来ていた。

父も母も涙ぐんでいた。
母は、ハンカチで、目の涙を拭き言った。
「正夫。あなたの心が男だという根拠が1つも見つかりませんでした。
 逆に、女の心だという根拠は、いくらでも見つかりました。
 あなたの心は、多分女の子です。
 そう認めざるを得ません。」
母は、夫を見た。
「あなたも、同様ですよね。」
父は、うなづいた。
「ああ、お母さんの言うとおりだ。
 5歳のときの救急車は、ただの怪我だと思っていた。
 しかし、今、真相を聞いた。
 正夫が、幼心に体と心の性の不一致に心を痛め、思いつめて、
 そこまでの行動を取ったのかと思うと、正夫が不憫で、俺は、俺は…。」
父の雅史は、言葉を詰まらせ、目を手で覆い、肩を揺らして泣いた。

母は、正夫をそばに呼んで、泣きながら抱きしめた。
「お母さんも、お父さんも、あなたにビンタしたりは、もう絶対しない。
 いままで、ごめんなさい。どうか、許して。
 クリニックには、明日にでも行きましょう。」

父も、正夫を呼んで抱きしめた。
「すまなかった。正夫のことを、真正面から見ようとしなかった。
 正夫の心は、女の子だと思う。悪かった。ビンタは、もう絶対にしない。
 ずいぶんと悲しい思いをさせた、許してくれ。」
父も母も、そして、正夫も、声を上げて泣いた。

父と母と正夫は、立ち、並んで挨拶をした。
父が、言った。
「どうもありがとうございました。
 今考えますと、高坂先生のお言葉を、初めから受け入れながらも、
 それを認めるのが恐くて、こちらまできて、あがいていたように思います。
 校長先生や高坂先生、江崎先生に、大変苦痛なお時間を与えてしまいました。

 しかし、おかげさまで、
 やっと息子の性同一性障害を受け入れることができそうです。
 明日にでも、クリニックを調べ、行ってまいります。
 また、江崎さんのような方がいらっしゃることは、私達の幸運です。

 たびたび相談に来させていただきたいと思います。
 その折は、高坂先生、江崎先生、よろしくお願いいたします。
 この度のこと、本当に、ありがとうございました。」
3人は、頭を深々と下げた。

陽子は、比較的近い2、3のジェンダー・クリニックのパンフレットと、
S医大の精神科のパンフレットを用意していて、それを渡した。

高坂は、性的マイノリティにやさしい私立中学があることを知らせ、
学校案内のパンフレットを渡した。



皆を、玄関まで見送った。
正夫は、父母にぶらさがったり、甘えながら帰って行った。
「今日の正夫はすごかったけど、やっぱり子供なんだなあ。」と高坂は言った。

「いやあ、高坂君、やったなあ。
 これは、大殊勲だ。教員になってよかったと思うのは、こういうときだな。
 それに、江崎さんがいなかったら、すべてが始まらなかったことだ。
 江崎さんが、カムアウトしたいといった考えが、少しわかってきた。
 じゃあ、今日は、3人で、一杯やりに行くか。」
と校長が言った。
「ええ?私は、明日も、個人面談ですよ。」と高坂。
「かまわん。校長の俺がすべて責任を持つ。」
「そんな責任の持ちようがないでしょう。」と高坂。
横で、陽子が笑っていた。



<おわり>


■次回予告■

ちょっと短めのエピローグを書きます。
その後、新作が書けるといいのですが。

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 ありがとうございました。
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お知らせ






         本日投稿の記事はありません。

GID事務主査・江崎陽子③「夫婦で怒鳴り込んでくる」

校長室に怒鳴り込んできた、正夫の両親。
言いたいことを言えずにいる校長、担任高坂は、窮地に追い込まれます。
そこへ、正夫が姿を現し、起死回生の反撃を始めます。
読んでくださるとうれしいです。次回、最終回です。

=============================

陽子は、相原正夫とわかれた。
十中八九GIDの子だと思った。
しかし、診断は、あくまで専門医が行わなくてはならない。

翌日、学校の相談室で、正夫、陽子、茂男の3人は顔を合わせた。
茂男「相原くんさあ。性同一性障害って知ってる?」
正夫「知るも知らないも、ぼく、ずばりそれです。
   江崎さんと同じです。」
茂男「どうしてそう思うの?」

正夫「だって、ぼく生まれたときから、自分は女だと思ってきました。
   自分の体を見ると、男だって思うけど、心は女です。
   男の体が嫌で、死にたいと思ったこと何度もあります。」
茂男「そこまで、はっきり思っているんだ。」

陽子「正夫くん、お家の人にそれを言ったことある?」
正夫「小学校に入るとき、言いました。
   赤いランドセルがいいって。ぼく、本当は、女の子だからって。」
陽子「ご両親の反応は?」
正夫「ひっぱたかれました。お母さんからも、怒られました。
   それから、そういうこと、もう言わないようにしました。」

陽子「高坂先生は、正夫くんの代わりに、
   それをお母さんに言おうかと迷ってらっしゃるの。」
正夫「それ、無理だと思う。かんかんに怒ると思う。
   父さんは、もっと激しく怒ると思う。」

茂男「そうか。困ったな。週1で見えるカウンセラーの先生なら、
   聞いてくれるかな。」
正夫「誰に言われても、無理です。
   だから、ぼく、少し大きくなったら家出します。」

茂男「そこまで、思ってるんだ。
   じゃあ、さ、正夫とここで話し合ったの全部内緒ね。
   それで、先生はどれだけ怒られてもいいから、言うだけ言ってみる。
   君から聞いたことは言わない。先生が、あくまで自分で観察したことだけ言う。
   そうすれば、正夫が言ったことにならないから、怒られないんじゃないかな。」

正夫「やっぱり、怒られると思う。お前が男らしくしないから、個人面談で恥をかいたって。」
陽子「わかるなあ。私の場合といっしょ。
   見た目、五体満足だから、『障害』だ、なんて言われるとカーと来ちゃう。
   心は、鍛えたり、努力で、変わると思ってらっしゃるのよ。」
茂男「困ったなあ。これでは、どうしようもない。」

正夫がこのとき決心したように言った。

正夫「先生。ぼくがどれだけ家でビンタされてもいい。先生、言ってください。
   そうしないと何も進まない。いろんな人から言われれば、両親も、少しずつ
   わかっていくと思うから。」
茂男「正夫。君は立派な子だな。先生より断然勇気がある。
   先生がご両親に言うのは、GIDの疑いがあるから、クリニックに行ってはどうか。
   こんなことだよ。」
正夫「はい。それで十分です。お願いします。」

陽子は、正夫の前向きな姿勢に、心打たれていた。
この子のためなら、なんでもしてあげたいと思った。



陽子は、茂男に、性同一性障害に関する本を5冊貸した。
入門的な本から、専門書に近いものまで。
高崎茂男は、相原正夫の保護者との個人面談に向けて、
その本を、すべて読んだ。
知らないことが、たくさんあり、読んでよかったと思った。

次に、学校カウンセラーに相談した。
カウンセラーは、ことがこじれる場合があるので、
自分のような外部の人間が告げたほうがいいと言った。
しかし、自分は、まだ本人の観察が十分できてないので、
担任の先生からするほかはないと言った。

校長にも相談した。
「まず、こじれるだろうね。」と校長は言った。
「じゃあ、言うなということですか。」と茂男は、むっとして言った。
「言わないのも、選択肢の一つだ。6年生だ。中学に任せる。」と校長。

茂男はかっとなり、机を叩いて怒った。

「私は、小学校の内だからこそ、言わないといけないと思ってます。
 そのまま、中学にいけば、いじめを受け不登校になる可能性も高い。
 私立校を探しましたが、性的マイノリティにやさしい学校があります。
 GIDの子が、すでに多くいる学校もあります。
 もし、今診断を得ることができたら、そういう学校を受験できます。」

校長は、茂男の言葉を聞いてしばらく考えていた。
「なるほど、それは、君の言うとおりだ。
 よし、わかった。
 その保護者が、夫妻で、抗議にくるだろうね。
 江崎さんに対する偏見も見せるかも知れない。
 それは、私が全部引き受けましょう。
 高坂先生、いいよ。やってくれたまえ。
 ここは、一つ、パアーと、
 相原正夫くんを救おうじゃないか。」
校長は最後にそういった。
あまり好きな校長ではなかったが、茂男は校長をかなり見直した。

面談の日となった。
相原正夫の母、昌子は、正夫に似て、かなりの美貌だった。
知性的であるが、やや冷たい印象だった。

教室の児童の机を4つ組み合わせてテーブルにしている。
茂男は、初め成績がよいなど、いくつか誉めた後、本題に入った。

茂男「ところで、お母様は、『性同一性障害』という言葉をご存知ですか。」
昌子「はい、知っておりますが。」
茂男「例えば、心は女性で、体は男性というような。」
昌子「そうですね。」
(次のことばに、茂男は勇気を出した。)
茂男「正夫君ですが、私は、実は、その性同一性障害の可能性があるのではないかと疑っています。」
昌子「・・・・・・。」

茂男「ですから、1度、専門の病院かクリニックを訪問されるよう、お勧めしたいと思っています。」
昌子「それは、心外です。何を根拠にそうおっしゃるのですか。」
  (昌子は、思った通り顔色を変えた。)

茂男「正夫君の身体は、健康な男子です。しかし、歩き方、仕草、動作、話し方、書く字に、
   女性的なものを感じます。ご家庭では、いかがですか。
   正夫君が、女の子的だとお感じになったことはありませんか。」
昌子「それは、活発な男の子と比べると、女性的であると思います。
   でも、女性的な子は、いくらでもいます。
   その中で、何を根拠に、うちの子だけが、その障害だとおっしゃるのです。」
  (昌子は、相当に憤慨していた。)

茂男「女性的な男子の中で、特に…ということなのですが、
   ご参考までに申し上げただけで、無理にというわけではないのです。」
昌子「参考程度のものでしたら、お口になさるべきではないと考えます。
   失礼します。」

と、相原昌子は、憤慨して教室を出ていった。

茂男は、正夫が、体育の時間、見学をしていて、女子の制服を着たことは、
言えなかった。言ったら、正夫がどれだけ叱られるかわからないと思ったからだった。

相手を怒らせたが、性同一性障害という言葉を耳に入れただけでも、
一つ成しとげたことであると思い、茂男は、面談が失敗だとは思わなかった。



その日の夜、思った通り、相原夫妻が、校長に抗議に来た。
不確かな根拠で、息子を「障害」呼ばわりしたことについてである。
校長室のソファーで、校長と茂男。対面に相原夫妻。
茂男は、一切何も言うなと校長から言われていた。

両親は、何を根拠に「障害」呼ばわりしたかを、
何度もしつこく問い、怒りをぶつけた。

校長は、「担任の高坂が申し上げた通りです。」とその一点張りだった。

正夫は、父の雅史と母の昌子が、学校に行くとき、そっと後をつけていた。
そして、校長室に両親が入ったとき、
こっそり中に忍び込み、ついたての陰に隠れて、すべてを聞いていたのである。

「さっきから、同じご返事ばかりじゃないですか。
 何を根拠に、内の息子の心は女だなどというのです。」
父の雅史が、また同じことを言った。

正夫は、もうたまらなくなり、立って、姿を見せた。

「お父さん。何度聞けば気が済むの。
 先生は、ちゃんと根拠を5つ答えてるじゃない。

 じゃあ、反対に聞くよ。お父さん、お母さんは、何を根拠に、
 ぼくの心は、男だと言うの。言えるものなら、言ってみてよ。」
正夫は2人をにらむようにして言った。


つづく

■次回予告■

最終回です。
正夫の反撃に両親は、言葉を失います。
もちろん、ハッピーエンドです。
最終回の次に、エピローグを置くつもりです。

GID事務主査・江崎陽子②「正夫と陽子が出会う」

陽子の女性としての到達度から、
女子トイレ、女子更衣室の使用は、当然とされた。

その日から、1週間ほど経った。

陽子は、自分に対する職員のタイプは、3通りあると思った。

①偏見をおくびにも出さないように、細心の注意を払って、接してくる人。
②偏見を隠せず、不自然な態度で、接してくる人。(悪気はない。戸惑いである。)
③気さくに話しかけてきて、周りに人がいないと、ずけずけと質問をしてくる人。
 
洋子は、その中で、③の人たちが、一番接しやすかった。
飲みにいったりすると、陽子の隣を占領して、陽子と話したがる。



6年生の学級担任である高坂茂男は、③のタイプだった。
30歳を過ぎたばかりで、熱心な教師だった。

ある日の放課後、高坂茂男は、事務室へ来て、
「江崎さん。ちょっと、相談したいんですが。」
と言った。
「場所を変えますか。」と江崎が言うと、
「是非に。」と茂男は、言う。

だれもいない応接室に行った。
「実は、私のクラスに、相原正夫くんという子がいまして、
 私は、彼はGIDではないかと思っているんです。つまり、MtFです。」
(MtFという言葉を知っているなんて、先生は、かなり勉強しているなと、陽子は思った。)

「まあ、どんなところが?」と陽子は聞いた。

「歩き方、仕草は、女の子です。書く字も女の子です。
 自分のことは、一応『ぼく』と呼んでいます。
 で、ある体育の時間、その子は、見学をしていて、
 教室に一人残っていました。

 そのとき、ある女子の服を着てしまって、
 それを、クラスの男子1人に見られてしまいました。
 幸い、その子は、いい子で、言いふらしませんでしたが、
 私だけに、こっそり教えてくれました。

 それから、音楽の時間に、唯一仲のいい女子に、
『自分は女の子になりたい。』と言ったそうです。
 江崎さん、これどう思いますか。
 実は、来月から、個人面談がありまして、親に言おうか迷っているんです。」
茂男は、そう言った。

(そういう子のためにも、私はカムアウトしたのだ。)
陽子は、茂男が、自分に相談してくれたことが、うれしかった。
しかし、ここは不用意な発言をしては、ならない。

陽子は、言った。
「女の子の服を着たのは、女装子=服装倒錯かもしれないし、
 いきなりGIDと決め付けることは、できないと思います。
 仲良しの女の子に「自分は女の子になりたい。」と言ったことも、
 軽い気持ちで言ったのかもしれない。
 動作、仕草が女の子みたいだというのは、女姉妹の多い子に見られるし、
 今のところ、GIDだとは、決められないと思います。
 ただ、女の子文字を書くというのは、かなりGID的だという気がします。」

「その子に、もう少し聞いて見ましょうか。」と茂男。
「それは、危険です。私達素人が、下手に聞くと、
 子供の場合、暗示にかかってしまうことがあります。
 『君、女の子になりたいって思ったりする?』なんて聞くと、
 自分は、そういう子だとの思いを高めてしまうこともあります。

 こちらからの直接的な質問は避けて、
 あくまで、その子が自分から言うようにすることが、大切です。」
と陽子は言った。

「じゃあ、親に言ってみましょうか。」と茂男。

「受け入れる親と、受け入れない親がいるの。
 ADHDや高機能自閉症だって、すごい剣幕で怒る親がいます。
 専門家でもない先生が、何を言うか。みたいな調子で。」

「じゃあ、どうすればいいんですか。」と茂男。
「私が、休み時間なんかで、さりげなく接してみます。
 この件では、茂男先生より、あたしの方が、少し経験者ですから。」
陽子は言った。
「お願いします。」と茂男は頭を下げた。
(もう6年生だし、見過ごすこともできるのに、いい先生だなと陽子は思った。)

相原正夫は、6年生で友達がいなかった。
昼休みは、全児童が外に出る学校の決まりだった。
友達のいない子にとっては、迷惑な決まりだった。
しかし、従わないわけには、いかない。

相原正夫は、いつも一人で飼育小屋で、ウサギを見たり、
花壇の花を見たりしていた。
とても可愛く、女の子のような顔立ちの子だった。
髪も長めにしていた。

陽子は、2、3日様子を見て、
正夫が、花壇の菜の花の陰に身を沈めていたとき、
何気なく、正夫の隣にしゃがんだ。

「全員外に出なきゃいけないなんて、いい迷惑じゃない?」と聞いた。
「あ、事務室の江崎陽子さん。」と正夫はうれしそうに言った。
「まあ、あたしの名前覚えてくれていたの?」
「はい。始業式のときのお話を聞いて、うれしかったから。
 学校で、ただ一人、ぼくをわかってくれる人だと思いました。」

「もう少し、詳しく聞かせて?」
「ぼく、男でいるの嫌です。女の子になりたい。
 始業式の日、先行きのことを考えて、実は、死を考えていました。
 でも、江崎さんが学校に来てくれました。
 江崎さんは、とっても美人で、女らしくて、ぼく希望をもちました。」
「そう。ありがとう。美人と言ってもらえてうれしいわ。」
「江崎さんと、すぐにでもお話ししたかったけど、できませんでした。
 だから、今、ぼくのそばに来てくださって、すごくうれしいです。」

「ね。担任の高坂茂男先生といっしょに一度、お話しない?
 高坂先生は、あなたのことわかってくださる先生よ。」
「はい。ぼく、高坂先生大好きです。お願いします。何もしないと、何も始まらないから。」
正夫は、陽子を見て、少し笑った。
賢そうで、前向きな、いい子だなと、陽子は思った。


つづく

■次回予告■

担任高坂と陽子そして正夫の3人で、相談をします。
高坂は、正夫の母と個人面談をします。
思ったとおり、正夫の母は、立腹し帰ってしまいます。

GID事務主査・江崎陽子①「カムアウト」

やっと新作を投稿します。
今度のお話は、全くのフィクションではありません。
そのため、少しシリアスです。全4回で終了します。
読んでくださると、うれしいです。

============================

江崎陽子は、28歳。
小学校の事務室の主査である。
つまり、県の職員であり、事務室の長である。

江崎陽子の本名は、江崎陽太。
陽子は、性同一性障害だった。
今、陽子をみて、男性と思うものは、まずいなかった。
美貌であり、声も完全な女性であった。
背は、162cm。
中学1年のときから、ホルモン治療を受けていて、
胸があり、ピップも女性並みにあった。
声は、少年の声であったが、
女性の声に聞こえように、
メラニー法の訓練を受けた。

事務主査は、3年で学校を異動することが多い。
もう2つの学校を歴任した。
初めの学校では、自分のGIDを校長以外秘密にしていた。
次の学校でも、秘密にした。
だが、今度の学校では、全職員、全校児童にカムアウトしてはどうかと考えていた。

そのころ、ある女性歌手が、GIDであることをカムアウトした。
そして、もう一人、あるファッション・モデルがGIDをカムアウトした。
2人とも、トランス度が高く、
まず、誰が見ても、美しい女性であり世間は騒いだ。

そんな彼女達が、一歩間違えると世間から異端視されるとこを覚悟して、
なぜ、カムアウトしたのか。
江崎陽子は、その気持ちがわかる気がしていた。

一つは、世間を騙しているという罪悪感だ。
理屈では、世間に何も迷惑をかけておらず、罪悪感を持つ必要などないのに、
女子として、周囲が接してくれればくれるほど、
『ほんとは、生まれつきの女性ではない。』
という気がして、それが、自分の良心を責めるのだった。

陽子のもう一つの気持ちは、GIDの何が悪い、GIDに偏見を持つほうが悪い、
堂々とGIDでいる方が、正しいのではないかという思いだった。
とくに、大勢の子供の前で、GIDというものを知らせることの方が大切だ。
1000人子供がいれば、そのうちの2人くらいはGIDの子がいると思えた。
その子達のためにも、自分がGIDの先輩だということを知らせたいと思った。

この2つの思いで、陽子は、カムアウトを考えていた。

新しい、学校での校長面接で、そのことを話した。
校長は、渋い顔をした。
「あなたの、容姿、声、どこをとっても女性です。
 そのあなたがなんでわざわざ、カムアウトするのです。」
陽子は言った。
「なぜか無性に、カムアウトへの衝動が湧くのです。
 秘密を持っていることに、居心地の悪さを覚えるのです。」

「わかりませんなあ。私には、そのお気持ちがわかりません。
 カムアウトすれば、必ずといって、一部の子供達、
 またその保護者達から、そしりを受けるでしょう。」

「それは、覚悟の上です。」と陽子は言った。

「どうしてもと、あなたがおっしゃるなら、無理に止めませんが。」
と最後に校長は言った。

春休みが終わり、始業室の前日、
校長は、陽子を職員に紹介するとき、陽子のGIDのことを話した。
陽子も、簡単にそのことに触れて、自己紹介を終えた。
職員は、極力特別な反応をしないようにしているように見えた。
『悪い職場ではない。』陽子は、そのとき、そう直感した。

そして、いよいよ始業式の日。
児童数約1000人の前で陽子は、自己紹介のため、朝礼台に立った。
いよいよ、カムアウトだ。
いくら、決意を固くしていたとは言え、体が震えるほど緊張した。
陽子は、口をひらいた。



相原正夫は、明日の始業式から6年生になる。
自分では、はっきり分かっていた。
自分は、GIDである。
だか、両親に理解がなかった。
正夫は、体つきも華奢で、顔立ちも女の子のようだった。
6年生になるのが恐かった。
男の体になるのが恐かった。
昨日、自分の鼻の下に1本だけ、大人の髭を発見した。
大きなショックだった。
急いでそれを抜いた。

男の体でいることが辛くて、今まで、2回、自殺してしまおうかと思った。
5歳のとき、自分の男の証を、ハサミで一部切ったこともあった。
たくさんの血が出てきた。
さすがに恐くなって母を呼んだ。
そして、救急車に運ばれた。
そんなことをした理由を後でドクターから聞かれて、
「女の子になりたかったんです。」と答えた。
母は、それを聞いていた。

そして、昨夜の髭の発見である。
正夫は、自分の行く末を思って、3度、死んでしまいたいと思った。
このまま髭が濃くなり筋肉が発達し、男の顔や体になるなら、生きていけない。
正夫は、暗澹たる思いで、死を覚悟しながら、学校へ行った。

4月、学年当初の始業式が校庭である。
小柄な正夫は、列の前から2番目だった。

朝礼台で行われていることなど、心に映らなかった。
何気なく朝礼台を見ていた。

校長から、新しい先生の紹介があった。
一人、綺麗な女の先生がいるなと思った。
3人目の先生が自己紹介をした後、
「では、事務の江崎陽子先生です。」と校長は言った。
綺麗な先生が朝礼台に上った。
正夫は、ぼんやりと聞いていた。
そのとき、その女の先生は、こう言ったのである。

「私は、女性に見えると思いますが、生まれたときは、男子でした。
 体は、男子、でも心は女子にうまれたのです。
 心を変えることは、できません。だから、体を女性に近づけました。
 私のような人は大勢いて、性同一性障害と呼ばれています。
 私の心は、女性ですので、私を、女性と思ってくださると、うれしいです。」

正夫のぼんやりとした頭は、いっぺんで覚めた。
まさか、まさか、まさか。
あんな綺麗な先生が。
正夫の胸は、喜びにあふれた。
自分と、同じ学校に、GIDの先生が来てくれるなんて。
しかも、全児童の前で、カムアウトしてくれた。
うれしい。うれしかった。涙が出てしまった。
死んでしまいたいという気持ちが飛んでしまった。
正夫の心に希望の光が差した。


つづく

■次回予告■

GIDの小学6年生相原正夫と陽子は出会います。
担任高坂茂男は、正夫を救おうと陽子に相談をもちかけます。

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緑川高校女子バスケットボール部の巻

「緑川高校女子バスケットボール部」の巻

緑川高校の男子部は、洋子によって、部員が運営する平和な運動部が出来た。
しかし、洋子を知らない女子部では、洋子に対しまだ見方がくずぶっていた。

女子バスケットの主将森下亮子の回りに3年の部員が集まっていた。
森下は言った。
「だいたい何なの、あの倉田洋子って1年。
 男バスに勝っていい気になってるようだけど、女子バスは、また違うんだからね。
 聞けばドリブルだけで逃げたっていうじゃない。
 シュートができないのよ。
 あたしたちに、シュートを見せてもらおうじゃないの。
 あたしたちは、シュートの緑川って言われてんだからね。
 全国2位、負けるもんですか。」

その日、部員の3年生一人が、1年の教室に来て、
洋子を呼んだ。
「今日、女子バスに来てくれない。上手なとこ見せてよ。」
そう言って、去って行った。

清水和夫と、浅田恵子がすぐ来た。
「目的は何だと思う。」洋子が聞いた。
「ただ、洋子が生意気だと思ってるだけよ。」と恵美。
「こてんぱんに、やっつければ、もう文句言ってこないよ。」
リーダーの冴子は言った。

放課後、洋子が体育館に来た。
いつもの制服姿だった。
観客は、和夫、恵美、冴子の3人。

主将の森下亮子が来た。
「倉田さん。今日はシュートを見せてくれない?
 男バスのときは、シュートしなかったっていうじゃない。
 今日は、思い切り入れていいわよ。
 ただし、あたし達のディフェンス破れたらの話だけど。
 あたしたちも、一応全日本2位だからね。」

「わかりました。じゃあ、いろんなシュートをすればいいんですか。」と洋子。
「できるならね。だた、ノーマークじゃないわよ。あたし達がいること忘れないで。」
「試合をするんですか。」と洋子。
「そうよ。そうしないと、実践の力わからないでしょう。」
「試合時間は?」
「なし。先に『まいった』した方が負け。」

キャプテン森下は、1、2年を、コートの外に体育座りで並ばせた。
正座させないところが、まだいい、と洋子は思った。
1、2年は言っていた。
「まいったを言うまでだって。」
「これ、バスケで洋子をいたぶろうってことじゃない。」
「嫌いだわ。こう言うの。」

「馬鹿だなあ。女子バス負けるに決まってるじゃない。」
男子の試合を見ていた恵美はそう言った。
「まあ、見ていようよ。」と冴子が行った。

女子バスは、自信満々だった。
疲れ果てて、床に両手をつく、洋子の姿を思い描いていた。

ジャンプボールは、身長189cmの藤崎が出てきた。
笛が鳴って、ボールが上がる。
洋子は、驚くようなハイジャンプをして、マイボールとした。
「うそ…。」藤崎は、目を白黒させた。
次の瞬間、洋子は、リングを背にしたまま、まさかの背面ロング・シュートをした。
無理無理と、部員は、ボールも見なかった。
だが、ボールは、綺麗なアーチを描いて、リングにすぽりと入った。

わあ!と1、2年が歓声をあげた。

5人は、度肝を抜かれた。
『まさか。』
『シュート苦手なんじゃないの?』
全員そう思った。

女子チーム、スローイン。
速攻で、1、2とロングパスをし、ハーフラインを越えた。
3へパスをして、フリースローゾーンに持ってきたが、
そのボールを、洋子が簡単に盗んで、そこからジャンピングシュート。
入って3点。

わあ~と1、2年が騒いだ。

ほぼエンドラインからのシュートだった。
女子バスケのだれも、思い切り投げても届かない距離だ。
5人は、顔面蒼白になった。

この時点で、5人は、自分達がとんでもないことをしてしまったと悟った。
(男バスが負けたことを、もっと考えるべきだった。)

エンドラインから、敵のスローイン。
ハーフラインを超えると、洋子が奪って、シュート。
3ポイントシュートがすべて入る。
これを何度もくり返し、洋子の点は、上がるばかりだった。

そのとき、体育館の扉が開いて、
ぞろぞろと、男子バスケットボール部が、1、2年を連れて全員来た。
「おい、何で言わねんだよ。けちくさいぜ。
 洋子が、今日はシュートするんだって?」
「俺ら、一目でも見てーよ。」
と言って、コートの女子の1、2年の向かいのサイド・ラインを占領した。

(じゃあ、いいとこ見せちゃおうかな。)洋子は思った。
洋子は、後方で、ボールを盗むと、ドリブルをして、
コートのハーフラインから、1、2、ジャンプで大きく飛び、
ダンクシュートを決めた。
ハーフラインからである!

「うへーーー!」と男子たちが、歓声をあげた。
「ハーフ・・ラインからだったぜ。」
「おお、ジョーダン並みだよ。」と男子。

『シュートができないなんて、とんでもないじゃない。』
4人は、一様に森下を見た。

また、パスが、洋子に取られた。
洋子は、猛烈にドリブルをして、1、2、ジャンプ。
ボールを一度ボードに当てて、弾んだボールを、リングに叩きつけた。
「わあ、あれ、アメリカの黒人選手がやるやつ!」
1、2年は興奮した。
男子も大喜び。

次、洋子は、ジャンプして、脚の下をくぐらせて、シュートした。
「わあ、あれも、NBAで見た。すごい、もっとみたい。」
観衆は、熱狂した。

洋子は次に、驚くべき技。
1、2、ジャンプで、後ろを向き、バック・ダンク・シュートを見せた。
「うおーーーー!」と男子は、興奮して、立ち上がった。
「信じられねえ。」
「すご過ぎる。」
1、2年の部員も、総立ちになっていた。
すっかり洋子に魅了され、観衆全員が、洋子を味方しているようであった。

その後も、洋子は、嫌というほど荒業を見せて、
それから、パスをカットしての3点シュートに移った。
3年チームが動けば動くほど、洋子に点を取られるだけだった。

洋子のロング・シュートは驚くことに、すべて、ボードもリングにも触らずに、
ネットにスポッと入る。

5人は、どうしようもない。
どんなパスを出しても、奪われ、その場で3点シュート。
ドリブルすれば、即座にボールを奪われ、3点シュート。
それが、全部入る。1本のミスもない。

『洋子はシュートができないなんて、とんでもない。世界ランク並だ。』
みんなが思った。

時間は、まだ、5分も経っていない。
だが、得点は、150対0だ。
2秒に1回のペース。

洋子から、到底ボールを奪えそうになかった。
男バスが5人で、20分かけて、ボールに触りも出来なかったことを思うべきだった。
自分達に、得点が入らない試合というのは、疲れる。
5人は、焦りと惨めさで、どうしようもない気持ちでいた。
体は少しも疲れていない。
デフェンスをしても、洋子の動きが速くて見えず、何も反応できないからだ。

5人は、ゾーンデフェンスを組んだ。
しかし、それは、洋子には全く無意味だった。
ゾーンの外から、軽々と3点シュートをいくらでも打たれるからだ。

得点を取られ、エンドラインからのスローインし、
1パス、2パスをどこへ投げても、洋子にカットされ、
そこから、ロング・シュートを打たれる。

わずか10分で、得点は、350対0になった。

5人にとっては、絶望の点差である。
0点というのが、決定的な屈辱である。
相手は1人なのだ。

森下は、試合を時間制にしなかったことを後悔した。
体は、全く消耗していない。
それでいて、「まいった」をすることは、許されない。
泣きたい気持ちだった。
心ではとっくに泣いていた。
多分、後の4人もそうだろうと思った。
森下は、4人を巻き添えにしたことを深く後悔した。

大きな敗北感と無力感に襲われながら、
この実力差で、試合を続けるのは、拷問の様だった。
全国2位のブライドは、もうとっくに粉々になっていた。

男子が負けたことから、少し考えれば、洋子の実力がわかったのに。
洋子に対し、もっと謙虚に、シュートを見せてくれるように、頼むべきだった。

いつ終われば、いいのだ。
考えている間に、得点は、400対0になった。

そこに助け舟が入った。
男子主将の山口が声をかけた。
「ストップ、ストップだ。」
そう言って森下のところへ来た。
「いつ止めることになってるんだ。」と山口。
「どちらかが、まいったをするまで。」森下。
「じゃあ、なんで早くまいったをしない。」山口。
「体は、元気だから。」

「点数を見てみろ。このまま意地を張れば、
 1000点、10000点まで取られるぞ。
 洋子のスタミナははんぱじゃねえぞ。
 俺達の5倍動いて、汗1つかいていなかった。
 お前らが、まいったをしなければ、夜中まで平気で戦う相手だぞ。
 20000万点取られて、朝を迎えたいか。」

「ううん。」と森下は、涙を流して、頭を横に振った。
 俺にまかせるか。」
「うん、お願い。」森下は、涙を拭いた。

山口は、
「おーい、男子も5人足して、10対1だ。
 それで、洋子が1000点行くか、俺達が1本でも決めたときが終わりだ。」
おーーーーと言って、男子のレギュラーが来た。
1、2年は大喜びだった。

前代未聞の10対1が始まった。
しかし、洋子は強い。
ボールを持つと、風のようにデフェンスを抜けて、シュートを決める。
ロングパスを出すと、必ず空中でカットされ、そのままロングシュートを決める。
だが、7分後に、奇跡的に、男子がロングシュートを決めて、2点取った。
そのとき、洋子は、870点だった。

試合は終わった。

女子5人を座らせ、対面に洋子が座り、
山口と男バスのレギュラーが間に入った。

「で、森下達は、男バスを破った洋子が、いい気になっているとでも思ったのか。」と山口。
「うん。なんとなくだけど。」森下。
「ドリブルだけで、俺達をたおした洋子は、シュートができないとでも思ったのか。」
「うん。」森下。
「それは、俺達男バスに対してあんまりじゃねーか。
 たった1人で、俺ら5人を床に這わせるほどのドリブルがどんだけのもんだったか、
 ちょっと想像して見ろよ。洋子のドリブルは、速くて見えねんだよ。
 それほどの洋子が、シュートをできねえわけがねーだろうよ。

 ある顧問の先生に40発のビンタをされて、その日に自殺した倉田健二。
 高校サッカー界、No.1の天才と謳われた倉田健二。
 洋子が、健二の妹だってこと知らなかったのか。」

「え?」と森下は、洋子の顔を見た。
あとの4人も驚いて洋子を見た。

「洋子は、だから、暴力を憎み、暴力のない運動部にしようと、
 それこそ命がけでやってきたんだよ。
 剣道の顧問の先生との試合なんか、下手すると命はなかったんだ。
 そうやって、俺ら男子の暴力顧問の先生達を反省させてくれたのが洋子なんだ。
 部員の自主でやれるようになって、俺ら、どれだけやる気になれたか。
 それも、全部、洋子一人のおかげなんだ。
 それだけの気高い精神をもった洋子が、いい気になったり得意がったりすると思うか?!」

それを聞いて、森下達5人は涙を流した。
「そうだったんだ。倉田さん、ごめんなさい。
 何にも知らないで、あなたのこと、こてんぱんにやつけようと思ったの。
 思い込みで、あなたのこと生意気だと思ってた。
 ごめんなさい。
 あたしは、自分のしたことがはずかしい。
 あなたが、強かったからよかったけど、
 あなたが、弱かったら、あたし達のしたこと、『暴力』そのものだった。
 あなたが、死ぬほど憎んでいる暴力を、あたし達やろうとした。
 ごめんなさい。ごめんなさい。」
そう言って、森下は、号泣した。
あとの4人も、声を上げて泣いた。

「洋子、もう怒ってないか?」と山口が言った。
「はじめから、怒っていません。」洋子は言った。
「森下、洋子は、怒ってないって。
 じゃあ、形だけだけど、握手でもするか。」
山口は、そう言って、森下の手を取って、洋子と握らせた。
「ほんとに、ごめんなさい。」と森下は洋子の手を両手でつかんだ。
「気にしないでください。」と洋子が言った。

1、2年生が、拍手をした。

山口のおかげで、一同解散した。
「それにしても、洋子は、すげーなあ。」と斉藤が言った。
「なんで、あれだけできるんだ。」と吉井が言った。
「兄がどこかで、応援してくれてるみたいです。」と洋子。
「サッカーが出来るのなら、納得。ほかのもできるだろう。ほんと不思議だ。」と斉藤が言った。
「では。ありがとうございました。」
と言って、洋子はわかれた。

3人が待っていてくれた。
「洋子、ハッピーエンドでよかったね。」と和也が言った。
「それにしても、洋子はすごいなあ。」と冴子。
「今日も、お疲れの洋子に、アイスクリームみんなでおごってあげるからね。」と恵美。
「試合の度に、アイスが食べられて、あたし、うれしい。」
と洋子がいい、みんなで笑った。

夕暮れのさわやかな風が吹いていた。


<おわり>

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スーパー洋子・男子バレーボール部の巻

スーパー洋子の緑川高校の中で、織り込めなかった、バレーボール部との試合を、
投稿したいと思います。読んでくださるとうれしいです。

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「男子バレーボール部」の巻

――ここでは、「スパイク」をかつてのいい方「アタック」としています――

洋子と3人組が、バレー部を見に行ったとき、
一人の部員が、他の部員に囲まれて、集中的にアタックを打たれていた。
中の部員は、頭をかばって、亀のようにうずくまっていた。
近くの1年生に聞いて見ると、遅刻をするとその罰を受けるとのことだった。

「そんなあ。」と冴子はいった。
「遅刻なんて、クラスの事情で、行けないときもあるじゃない。」
冴子の言うとおりだと、みんな思った。
男子バレー部に来て、3回とも、その集中アタックを見た。

4回目に来ると、また部員がやられている。
顧問杉下の命令だ。

「遅刻で、あんなアタックの集中攻撃、ひどすぎやしませんか。
 クラスの事情で、遅くなることもあります。」
と洋子は、杉下の横で行った。
杉下は洋子をにらんで、
「何だお前は。人の部にケチをつける気か。」
「そうです。あんなことやっているから、選手が萎縮してしまうんですよ。」

「お前、我が部は、全国1位と知って、ものを言っているのか。」
「国内で1位でも、世界では歯が立ちません。」
「何を!」と杉下は、怒った。
「弱いと言っているんです。私一人で6人を相手に出来ます。」と洋子。
「何を、馬鹿な。いいだろう。休憩がてら相手をしてやろう。」
「お前が負けたらどうする。」
「学校を辞めます。」
「では、俺も、チームが負けたら、学校を辞めてやろう。
 バレー部を解散してもやろう。」
杉下は、部員を集める笛を拭いた。

「名とクラスは。」
「1年B組、倉田洋子です。」
「この倉田と言う1年の女が、遅刻した部員の集中攻撃はけしからんと言う。
 あんなことをしているから、お前達のプレーは萎縮しているという。
 つまり、弱いという。
 なんと、自分一人で、6人を相手に勝てるという。
 どうだ、やって見るか。」

部員達の反応は、笑い声だった。
「ちょっと頭、おかしんじゃないすか。」
「俺達、全員190cmは、超えてんだよ。わかってる?」
など、散々に洋子を批判した。
「えー、倉田が負けたら、倉田は学校を辞めるそうだ。
 その代わり、我がチームが負けたら、俺が学校を辞める。
 そして、バレー部も解散としたいが、これはお前らの承諾がいる。」
「解散でいいすよ。」と全員ニヤニヤとして言った。

「ルールは。」と杉下が言った。
「私は一人ですから、1、2、3を一人でやっていいことにしてください。
 15点先取、デュースは無しで終わりです。」
「いいだろう。お前が退学をかけると言う。それに、レギュラーで応えよう。」
杉下は言った。

レギュラーは位置についた。
「まいったな。時間の無駄だ。しかも、俺達レギュラーを。」
「こんなん意味ねーな。」

レギュラーは、全員190cmを超えていた。
歴代No.1と言われた名セッターの大蔵だけが、170cmだ。

サーブ権のジャンケンをした。
洋子が負けて、相手チームになった。

「サービス・エース15本で終わりだな。」
「つまんねーな。」
と選手の二人が言った。

始めのサーブの高井は、生意気な女に、全日本1位のレベルを肝に銘じさせてやろうと思った。
身長、196cm、1m以上ジャンプが出来る。
サーブの威力、チームNo.1である。
『女は、1cmたりと動かせん。』
高井は、そういう気合を入れて、2、3歩助走をつけて、
トスを上げ、高いところから、豪快なドライブ・サーブを放った。
高井の会心のサーブだった。

サーブは、ネットすれすれに、S字を描いて飛んでいった。
6人で守っても捕れないものだ。

6人が、顔色を変えたのは、次の瞬間だった。
洋子は、ボールが来る道筋を占っていたかのように、
その場所にいて、軽々とレシーブをした。

「お!取りやがった。」と皆が思った。

洋子のレシーブは、ネット間際まで飛んで行った。
普通なら、ここでセッターが上に上げて、アタックである。
ところが、洋子は、ネット際に飛んでいくボールを追いかけ、追いついて、
ネットの低いところから、クイック・アタックをしたのであった。

1、2、3で来ると思っていた選手は、誰もジャンプしなかった。
洋子は、針の穴を抜くように、一筋あいた空間に、アタックし、
ボールを、床に突き刺した。

「まいったな。」
「ああ、驚いたぜ。」
「奇襲作戦ってとこか。」
「だが、2回目は、通用しないぜ。」
そのとき、一番青ざめていたのは、セッターの大蔵だった。
『奇襲なんて、ものじゃない。どこに打てばいいか、瞬時に判断しやがった。』
大蔵だけが、密かに身を震わせていた。

6人にとって、信じられないプレイであった。
だが、まだまぐれだろうとの思いがあった。

サーブ権洋子。
「おい、気を引き締めろよ。」と大蔵が言った。
「まぐれ1本で、びくびくするなよ。」と皆は、まだ笑っていた。

洋子は、高く7mもトスを上げ、助走をつけて、
そして、3mはあると思われるジャンプをし、爆発的なサーブを放った。
ドライブサーブが唸りを上げて飛んできて、ネットを超えると、
信じがたい角度で床に落ちた。
だれも、取れず、全員が見送ってしまった。

「うそだろう。」
「見たこともねえ。」
「俺達が見送るなんて。」
何人かがいった。
「本気でやってりゃあ、取れたぞ。」と大蔵が言った。
「次は、まかしとけ。」皆は言った。

洋子、第二サーブ。
同じく信じがたい高いジャンプで、ドライブサービスを出し、
落下前に、くくっとカーブした。それも誰も反応できなかった。

6人の表情は、みるみる変わって行った。
だが、偶然だろうという気持ちがまだ残っていた。

そんな変化球であるのに、ボールのスピードが恐ろしく速い。
言わば、洋子のサービスは、打ったと思うと、瞬時にこちらのコートに来ている。
6人は、全日本の大会でも、これほどのサーブは見たことがなかった。

洋子、第3サーブ。
高いところからの剛直球。ズバーンと放たれ、
センターの選手を直撃した。
洋子が打ったと思ったら、もう目の前にあるボールに、
その選手は、胸ではじいて後ろに倒れた。
ものすごいボールの威力だった。

カウントは、3対0。
レギュラーは、まだ、無得点である。
さすがに、ニヤニヤ笑う選手はいなくなった。
「おい、真剣にやらないと、勝てないぞ。」と一人が言った。
「大蔵が初めから言ってただろ。」と一人が答えた。

偶然ではない。あの女の実力だ。
この時点で、みんなは、それが、やっとわかった。

サービスだけで、洋子をやつけるどころではない、
今、自分達が、サービスだけでやられている。

次、洋子から比較的甘いサービスがきた。
「よし、チャンスだ。」
バックが、しっかりレシーブし、セッターへ。
名セッター大蔵に渡った。
大蔵は、顔の前10cmで、トスの方向を瞬時に変えられる。
洋子が、前に来ていた。
大蔵が向いている左側に時間差をするためのおとり選手が二人。
洋子の体が、左に備えて、3m動いた。

ここで、大蔵は、顔10cmのところで、右にいる
198cmのチーム最高のアタッカー鳥居にクイック用のトスをひゅんと出した。
クイックなら絶対間に合わない。
クイックと言えど、すごい音を立てて、鳥居のアタックが出た。
これぞ、緑川バレー部を、日本1に導いた、取って置きのトリック・プレーだ。
これで完全に決まりであると誰もが思った。

だが、皆が気がつくと、ボールは、クイックをした鳥居の背中の後ろに落ちていた。
洋子は、ダイビングして、鳥居に追いつき、クイックボールを、
ポンと力を吸収して、鳥居の背中の真後ろに落としたのだ。

6人の選手は、夢でも見ているかのように、そこに立ちすくした。
自分達を全国1に導いた、最高級のトリック・プレーだった。
それが、やられた。
しかも、相手は女子一人だ。
そのショックは大きかった。
必死でやらないと、勝てない。皆、そう思った。

ブロックポイント4対0。

次。洋子は、典型的な、1、2、3をやってみたいと思った。
一本、サーブミスをして、敵ボールにした。
すごいサーブが来たが、
セッターの位置に、綺麗にレシーブを返した。
セッターの位置に走って、左に高くトスをした。
左側に198cmの選手が3枚ブロックに集まる。
3人が、手を挙げジャンプしたら、4mに近い高さになる。

それを超えないと意味がない。
洋子のジャンプに合わせ、3人がブロックのためのジャンプをした。
だが、洋子のアタックは、
3人の壁よりもさらに1mも高い位置からのものだった。
ボールは、3人を超え、コートのど真ん中に、爆音をたてて突き刺さった。
3枚でブロックをしてやられた。これ以上のブロックはできない。
選手の心に、大きなダメージを与えた。

5対0。
6人のレギュラーは、血の気を失った。

最後に、洋子は、止めを刺そうと思った。
甘いサービスを出した。
チームは、レシーブをし、名セッター大蔵に返し、
大蔵は、これしかないと、鳥居に高い理想的なトスを上げた。
助走をつけて、鳥居は、すごいハイ・ジャンプを見せ、渾身のアタックを放った。
これ以上のアタックはできない。これが、ブロックされたらおしまいである。

鳥居の目の前に、洋子が、同じくジャンプをしていた。
そして、洋子は、鳥居のアタックを、ダイレクトアタックで、
相手のコート内にたたきつけた。

ブロックならまだしも、鳥居のアタックをダイレクト・アタックをするなど、
悪夢以外の何物でもなかった。

6対0

6人のレギュラーには、もう出すものが何も残っていなかった。
すべての技能、パワーにおいて洋子の方が上である。
どんな、トリックプレーも通じない。
2m近い3人のブロックの上を行く。
最初、ニヤニヤして試合に臨んだ自分達が、たまらなく恥ずかしく思えた。
洋子を始め笑い者にしたことも、ひどく後悔した。
世の中に、こんな女がいるのか。
全日本で勝ち抜いて来たときの、優越感は、粉々に砕けた。
洋子が言ったように、自分達がどれだけ弱いかが身に沁みてわかった。

戦意は完全に消失していた。

洋子は、その後、サービス・エースを9本続け、15対0で圧勝した。

みんなが、顧問杉下の元に集まってきた。
「倉田、言葉があるだろう。」と杉下は言った。
洋子は言った。
「私が6人いても、世界の壁はやぶれません。
 遅刻している人を、みんなで痛めつけている暇があったら、
 どうして、もっと練習しないのですか。
 もっとも、その体罰は、先生の命令だと思いますが。

 大蔵さんの、顔10cmからのトスでは見抜かれます。
 顔3cmが、今の世界の水準です。
 鳥居さんは、2m50cmの選手の3枚ブロックに対して、
 どうアタックを決めるかという目標があるじゃないですか。
 今のアタックでは、2回に1回はダイレクト・アタックを決められます。
 みなさんが、目指すのは、世界ではありませんか。
 そして、ここは、その素質をもった方々の集まりです。
 みなさんに、それぞれ、しっかりした目標があれば、
 体罰などいらないと思います。それが、私の思いです。」

杉下が言った。
「俺は学校を去るでいい。
 約束では、部も解散だったが、ほんとに彼らは、
 もうバレーボールをできないのか。」
「先生だけの辞職で済むところを、
 選手のみなさんを巻き添えにしたのは、先生ですよ。」
と洋子は言った。
杉下は、ばつの悪そうに下を向いた。
「その通りだ。俺一人が辞めるだけでよかったものを。」

洋子は部員達に言った。
「今の、バレーボール部は、解散ですが、
 新たにバレーボール部が始まると思います。それは、体罰のないバレー部です。
 顧問の先生なしの、部員の自主運営の部です。
 そのときは、みなさんに来ていただければうれしいです。
 もう少し、私に時間をください。
 先生については、学校のご判断もあるかと思います。」

それを聞いて、部員達の顔が明るくなった。

洋子は礼をして、バレー部を去った。

いつもの3人が待っていてくれた。
「洋子、バレー部だけは厳しいと思っていたけど、
 また、0点で押さえたね。」と冴子が言った。
「今日もお疲れだった洋子に、アイスをごちそうするからね。」と恵美。
「ちょっと高いアイスだよ。」と和也。
「ありがとう。アイスだけが楽しみなの。」と洋子は言った。

いい友達がいて、癒される。
洋子は、心でそっと言った。


<おわり>


■次回予測■

緑川高校女子バスケットボールとの、
番外のお話を綴ります。

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第2話 優奈の悩み

<第2話> 優奈の悩み

女子高の冒険から、美加のマンションに帰ってきた二人は、
白いスリップ姿で、ベッドの毛布をかぶっていた。

「悩みがあるんだ。」と優奈は言った。
「何?」
「あたし、もう2年以上ホル打ってるでしょう。
 毎月検査はしてもらってるけど、GIDの診断もらってるわけじゃないの。
 ホル打ったから、あたし、もう男に戻れない。
 でも、あたし、一生女で生きる覚悟したわけじゃない。
 もっと女の子に近づきたいっていう気持ちだけで、始めたの。」
「でも、優奈の場合、あまりにも女の子で、
 それで、男として生きていくの辛くない?」

「小学校からだけど、女の子に見られて、うれしい様で悲しかったの。
 中学では、『女』っていうのが、あたしのあだ名だった。
 もっと男らしくなれば、からかわれないと思って、そうしようとしてみたの。
 でも、ダメだった。
 だったら、もっと完全に女の子になれば、からかわれないかなって思ったの。
 あたしは、動機が不純なの。
 GIDの子は、生まれつき自分は女の子だと思ってるんでしょう?
 男の体では、生きられないって。
 でも、あたしは、からかわれないために女になろうとしてるの。」

「女の子になるとき、萌える?」

「萌える。できれば、女の子とセックスしたい。
 でも、女の子とのセックスは、劣等感感じてできない。
 セックスできるのは、美加みたいな女装子とだけ。
 男の子は、興味がないの。
 GIDの人は、男の人に恋愛するでしょう。
 あたしは、違う。
 あたしは、女装子なの。
 女装子が、ホルやってもよかったのかなって。
 せっかく女になって、男の子を愛せないって、これで、いいのかなって疑問に思ってる。」

「女装子で、最後の手術までいっちゃう人大勢いると思うけど。」
「ホルで、Pが、元気出なくなるかもしれない。あたし、それも悲しい。」
「それは、個人差があるそうよ。」

「だから、あたし、試したいの。」
「何を?」
「後ろ。A。感じるか感じないか。
 あたし、ホルのため、1日1回しかできない。
 だから、美加が嫌じゃなかったら、あたしのAに入れてみて。」

「いいよ。あたし、あと1回はできる。優奈のAに入れてみる。」
「じゃあ、あたし、ウォシュレットを最強にして、
 Aの中、綺麗にして、そして、中にクリームを塗ってくるね。」

美加は、恥ずかしそうに帰ってきて、
ベッドの上に、うつ伏せになった。
「美加、あたし初めて。来て。」
「うん。」と返事をして、美加は、優奈のショーツを取った。
そして、自分もショーツを脱ぎ、優奈の体の上に重なった。
「優奈、入れるよ。」
「ええ。入れて。」
美加は、恐る恐る優奈のお尻の割れ目にPを入れた。
美加のAの入り口に当たり、ぬるっとした感じがして、
美加のPは、優奈に入っていった。

「あああ。」と優奈が声を上げた。
「どんな感じ?痛くない?」
「平気。男の子のものを受け入れている感じ。
 すごく女の子になった感じ。」
「あたしからいうと、優奈、女の子と同じ。」
美加は、ゆっくりと出し入れをした。
「あああ。」
「いいの?」
「うん。入ってくると、息が詰まって、『犯されてる』感じ。
 『ああ、女になってる』って気持ち。感動。」
「そうなんだ。あたし、女の子知らないけど、こんな感じなんだね。」
「うん。ああ、気持ちがいい。感じる。感じる。」
美加は、たまらなくなって、ピストンの運動を速めた。」
「あああ、すごくいい。ああん。あたしは女、女の子。」
「うん、優奈は今、完全に女の子だよ。
 ぼく、無理やり男になってしまう。
 優奈をめちゃめちゃ、犯したい。」
「うん、犯して。もっと、もっと犯して。」

美加は、優奈を四つん這いにした。
美加は、あそこを大きくさせていた。
「優奈、優奈も感じてるんだ。」
「うん、すごく。」
「ぼく、獣になっちゃうよ。」
「ええ、あたしをもっと、もっと女にして。」
美加が突くと、優奈は、女の声をあげて、
腰を使って、美加と同調し始めた。
美加はどんどん攻めた。
「あああん、あたし女、男の子を受け入れてる。ああ、犯されてる。
 いや~ん、やめて、許して、あああ、いやああああんんん。」
優奈がそんな声を連発し、その言葉の刺激を受けて、
美加は、どんどん興奮してたまらなくなってきた。
「優奈、行きそう。行くよ。行く、あああ、いくううう。」
「来て、来て、あああ・・・」
美加は、優奈の体内に、放射した。
優奈は、体の中に、美加の熱いものが入ってくるのがわかった。
それこそ、女になった気分だった。

美加のPが入ったまま、二人はベッドに重なって、
美加は優奈を抱き、余韻に浸っていた。

「優奈、女の子になれた?」
「女の子、そのものになってる気持ちがした。」
「そうなんだ。ぼく、男に戻された感じがした。」
「また、一つ女の子に近づいた感じ。」
「女として、生きていけそう。」
「不安が一つ消えた。」
「よかったね。」
「うん。」


<第2話 おわり>


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女装子・美加と優奈<第1話>

<第1話>

大井美加(女装名)と高崎優奈(女装名)は、
今、鏡の前で、女の子に変身したところだ。
ある女子高の制服を着ている。
胸にふさっとしたリボン。そして、クリーム色の上着。
紺の膝下のソックス。
二人は、これから大冒険をしてみるところだ。

二人は大学1年生。
ブログをもっていて、女装ランキングで、
トップ2を誇る二人だ。

美加の方は、都心にワン・ルームマンションを借りている。
優奈は、母と息子の2人家族で、女装は、母の公認である。
だから、髪を伸ばし、大学の時間をのぞく他は、女の子で暮らしている。
その優奈も母に言えないことがある。
セックスをすることと、自分が女性ホルモンを打っていることだ。
高2のときに打ち始め、2年間で、今、Bカップほどの胸がある。

大学生の二人だが、二人とも童顔で、16歳くらいにしか見えない。

二人は、近くにある女子高の名門桜台女子学園の制服を買った。
そして、靴、カバンも。

二人の大学のない水曜日、二人は、桜台女子学園に侵入しようと企んだ。
学園はメイクが禁止なので、すっぴんで行かねばならない。
美加は、この日のために、美容院へ行って、
一番女らしい髪型にしてもらった。
そして、眉も細くしてもらった。
優奈は、すでに髪と眉はクリアしている。

二人は、桜台の制服とカバンを持って、美加のマンションを出た。
二人とも背は160cm。
風景に溶け込んでる。

「ね。少し自信つけにいかない。」と美加が言った。
そして、ひそひそと話した。
二人は、コンビニに入り、チョコをお互いに買った。
カウンターには、同年の高校生の女の子がいた。

美加がまずレジでチョコを買った。
次の優奈は、レジで、
「ね、さっきの子、今はやりの『男の娘』じゃない?」と聞いた。
「え?ほんと?うそ!女の子よ。可愛い子だったもの。」とレジの女の子。
「あたしは?よく『男の娘』って言われるの。」
「冗談。なしなし。」とレジの子は、冗談にも乗ってくれなかった。

優奈が出てくると、
「どうだった?」と美加。
「パスよ。高校生の女の子にパスできたから、絶対。」優奈。
「優奈は、あたしより遥かに女の子だもんね。」美加。
「じゃあ、自信もっていこうか。」優奈。

二人は、女子学園の下校の3時ごろを見計らって、
やってきた。
「みんな、下校してるのに、中に入るの変じゃない?」と優奈。
「そういう子もいるんじゃないの。」と美加。

二人は、門を通り、守衛のおじさんに、にっこり挨拶をして入った。
女生徒が、いるいる。ところかしこにいる。
「あたし、興奮してきちゃった。」と優奈。
「あたしも。でも、ショーツで押さえてあるから大丈夫。」

「ね。思い切って、校舎の中入っちゃおうよ。」
「うそ。本気?」
「そのために、上靴もってきたんじゃない。」と美加。

二人は、靴箱の並んでいる昇降口に入った。
靴を取り替えて、中に入っていった。

「わあ、まだ人が大勢いる。」と優奈。
「あいてる教室見つけて、入っちゃおう。」
「うそー。だめよ。」
「じゃあ、トイレはいっちゃおう。
 そこで、ショーツ脱いで、ハレンチごっこで行こう。」
「美加、本気?」
「本気も本気。」

二人は、女子トイレの並びの個室に入った。
幸い人はいなかった。
「優奈、いい、ショーツとるのよ。」
と隣から、美加の声がする。
「やってるわよ。」美加は言った。

出てきた。
「美加。どうしよう。興奮して、スカート盛り上がってる。」
「カバンを前にしておけばいいの。」
「うん。」
再び廊下を歩いた。
「ああん、美加。下からすーすーして、たまらない。」
「最高のスリルね。」
「お願いだから、外行こう。」
「うん、いいわよ。」美加が言った。

大学並みに広い校舎で、回ったらきりがない。
「美加。あたし、たまらない。」
「それって、処理したいってこと。」
「うん。だれもいないところ行こう。」

二人は、古い倉庫が並んでいる裏の並木道へ行った。
「ここなら、誰もこないわ。」と美加。
「うん。」
そう言って、優奈が美加に胸を当ててきた。
「優奈、あなた胸があるんだから、あたし感じちゃう。」
「この高校にもレズの女の子いるかなあ。」
「いるわよきっと。」
「優奈、後ろから抱いてあげる。」

「うん。」
美加は、大きな木にもたれて、優奈を後ろから抱いた。
そして、ブラウスのボタンを1つはずし、
優奈のブラの中に手をいれた。
優奈の息がだんだん荒くなっていく。

美加は、優奈の乳房の先を、爪ではじいた。
「ああん、そこ感じる。」
「両手でやってあげる。」
美加は、もう一つボタンを開けて、
優奈のブラウスを上にずらして、両乳首をくりくりともんだ。
「あああああ・・・・・。」
優奈は、外でもあることから、声を殺してうめくように声を上げた。
優奈は、カバンを下に置いている。
優奈の、スカートの一部が、完全に山になっていた。

美加は、優奈のスカートをたぐって、
優奈の女の子にあるはずのないものを露にした。
そして、ゆっくりと上下にマッサージをした。
「だめ。恥ずかしい。」と優奈が体を震わせた。

戸外ということの刺激で、快感が2倍にも3倍にも感じられる。

「ああ、優奈、可愛い。どの女の子より可愛い。」
美加はそういいながら、優奈のPを刺激していった。
美加は、懸命に声を殺している。
だが、それでも、声が漏れる。
美加は、刺激をはやくした。

「あん、あん、あん、あたし、だめ、いきそう。お願い、いかせて。」
優奈の体の震えからも、それが感じられた。
美加は、優奈のスカートを大胆にまくった。
固く大きくなったものが、上を抜いている。
「優奈、ここは外よ、出ちゃっても大丈夫、そのままいってしまなさい。
「いやん、人が見てたら、いや。恥ずかしい、死ぬほどはずかしい。」
「恥ずかしいのっていいでしょ。大勢が見てると思っていってしまいなさい。」
「ああ、もう我慢できない。あたし、いく。いっちゃう。あああああ・・・・。」
美加は、体を激しく震わせながら、前方に、噴射した。

美加は、優奈の前に来てしゃがみ、優奈のものを綺麗になめた。



その後、優奈も美加と同じようにして、優奈をいかせた。

「ああん、最高。外でするのやめられない。」美加がいった。
「あたしも、最高の刺激だった。忘れられない。」優奈がいった。
「人に本当に見られてたら、もっと興奮するかなあ。」と優奈が言った。
「うん、多分、興奮しまくっちゃうかも。
 でも、それって危ない領域だから、やめておこう。」美加は言った。
優奈が、くすっと笑った。

ふたりは、満足したあと、女子高の制服を着ていることが、
急に重く感じられて、美加のマンションへの道を急いだ。



<第1話 おわり 第2話につづく>


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良夫と礼子のスワップ⑥「絶妙なカップル」最終回

健太のお誕生日が、3日後の日曜日だった。
良夫は、礼子を招待し、みんなに紹介することになった。

良夫は、女の子のお友達と言っていたが、
家族みんな、ガールフレンドだと思い、
興味200%で、楽しみにしていた。

当日、家族は、何か緊張していた。
そして、良夫とやってきた礼子を見て、
みんな、ぽかんと口を開けた。
「きれい…。」と健太。
「うん。すごい美人。」と五郎。

「みなさん、はじめまして、五十嵐礼子といいます。」
と礼子は挨拶をした。
母の敏子が、
「まあ、良夫に、こんなお綺麗なお友達が。びっくりだわ。
 でも、礼子さんに初めてお会いした気がしません。なぜかしら。」と言った。
「あ、ぼくもそう。いつもいっしょにいた人みたい。」と健太。
「うん。不思議。」と五郎。

由紀一人がわかっていた。
『それにしても、こんなステキな人が、お兄ちゃんとしてがんばっていたなんて。
 礼子さん。大変な努力だったろうなあ。』
由紀はそう思っていた。

良夫と礼子は、エプロンをして、お誕生日の料理を作り始めた。
すばらしい連携プレイ。
礼子にとっては、勝手知ったる他人の家で、
良夫から、何を言われても、さっと出す。
「片栗粉とって。」と良夫。
礼子は、下の扉を開けて、「はい。」という呼吸のよさ。

由紀は、料理を二人に任せて、二人の息の合った料理を見ていた。
お兄ちゃんは、モテないタイプだけど、やさしくて、頼もしい。
礼子さんは、お兄ちゃんの良さを、みんな理解してくれてる。
お兄ちゃん、よかったね。
由紀は、そんな言葉を心で兄に投げかけた。

やがて、豪華なスペアリブ、カナッペ。サンドイッチ。
その他、ヨーグルト、パフェなど並んだ。
「わあ、すごい!」と健太は言った。

楽しい食事が始まった。
由紀は、礼子の隣だった。
こっそり言った。
「お兄ちゃんは、鼻をかく癖があるんですよ。
 でも、この3ヶ月、ありませんでした。」
礼子は、目を見開いて、
「ああ、じゃあ、由紀さんは、何もかも・・・。」
由紀を見て言った。

「礼子さんが、どれだけがんばったか、あたしが一番よく知っています。
 最後の方は、お兄ちゃんの上を行ってましたよ。
 健太に読み聞かせまでしてくださった。」
「わあ、由紀さんが誉めてくださると、あたし、最高にうれしいです。
 どうも、3ヶ月たくさん教えてくださって、ありがとう。」
と礼子は、頭を下げた。
「こちらこそ。」
と由紀もにっこりして、二人顔を見合わせて笑った。

その後、バースデーケーキにろうそくを立て、
みんなで、ハッピーバースデイの歌を歌った。

礼子一人がいるだけで、家は、花が咲いたように賑やかになった。

「お姉ちゃん、また来てね。」
とお別れのとき、健太が言った。
「うん、来る。また、あたしを呼んでくださいね。」
と礼子は、言った。
「毎日、来てくれてもいいよ。」と五郎が言ったので、みんなで笑った。



さて、礼子の家では、遠藤と竹中の誕生日が近いので、
同じ日にお祝いをすることになった。
礼子は、男のお友達を招くことをみんなに伝えた。

遠藤は、それを聞いて興奮した。
「お嬢様に、男のお友達だって。それってつまり。」と遠藤。
「ボーイフレンドでしょうね。『彼』と言い直してもいい。」と竹中。
「わあ、会ってみたい。すごく、楽しみ。」
「お嬢様、最近、人を見る目がおありだから、意外な人かもよ。」
「はじめてよね。彼を連れてくるなんて。」
「そうね。楽しみ。」
と二人で、興味200%でいた。

子供達も同じ。
悠太「ねえねえ、男のお友達って、好きな男の子のこと?」
四郎「多分ね。」
美沙「まだ、そこまで言うのは早いんじゃない。
  「好きに成りかけてる、男の子じゃない?」
三人「どっちにしても楽しみ。」と言った。

誕生日のお料理は、全部二人で作ると礼子は言った。

やがて、礼子は良夫といっしょに来た。
みんな、ダイニングで待っていた。

「大川良夫さんです。」と礼子は言った。
良夫は、礼子より2cmほど背が低い。
決してハンサムではない。

皆、一様に思ったことは、やさしそう、たくましそう。
そして、もう一つ。
まるで、つい最近までいっしょだった人のように、
親しみを感じた。

「ああいう男の子を友達にするとは、礼子も目が越えてきたね。」
と雄三は言った。
「はい、特別なやさしさと、頼もしさを感じます。」
と早苗は言った。

悠太が来て、良夫にぶら下がった。
「ねえ、お兄ちゃん、お姉ちゃんと同じくらいお料理が上手なの。」
「お姉ちゃんの方が、上手かも。」と良夫は言った。
「悠太。あたし、全然、かなわないのよ。」と礼子が言った。

厨房で、良夫と礼子は、コック服を着て、
料理を始めた。
竹中と遠藤が見にきた。
「わあ、二人の息がぴったり。」と遠藤が言った。
竹中が二人に言った。
「良夫さん、お嬢様。ちょっと試験を。
 これ、新しいソースです。今までのものに、もう1つ何かを入れています。
 当たったら、もう大変です。」
竹中はそう言って、冷蔵庫からお醤油のようなソースを出し、
小皿にとって、二人に渡した。
良夫と礼子は、記憶を共有しているので、
ニンニク、レモン汁、黒砂糖は、すぐに言えた。

「あと1つ。何かしら。
 なんか、とても食欲をそそります。」と礼子。
「酸味が少し。」と良夫。

「これしかない。」と良太は言った。
「あたしも、これしかないと思う。」と礼子。
「わあ、当てられそう。絶対わからないものなのに。」と竹中。
隣で、遠藤が冷や冷やして聞いていた。
「礼子、せーので言おうか。」と良夫。
「ええ、いいわよ。せーの、『梅干!』」と二人。
「わあ、そうです!」と竹中は拍手をした。
遠藤は、いつのもように、飛びあがって喜んだ。
「さすが、お嬢様のお友達。あたし、感服しました。
 お嬢様も、よくぞここまで。」
と竹中は言った。

二人は、うれしくてたまらなかった。

テーブルにみんなそろって、会食になった。
「わあ、豪華だね。」と雄三が言った。
「私なんかが、出る幕ありませんでした。」と竹中が言った。
ケーキは、食事の後だった。

会食の中で、良夫は言った。
「竹中さんは、火傷をなさったと聞きましたが、
 もう、すっかりいいんですか。」と良夫は言った。
「ええ、あのときは、お世話になりました。」と竹中は言った。
そして、自分の言葉にはっとした。
遠藤が、すぐ言った。
「あの時は、お嬢様に助けられたのよ。」
「あ、そうです。お嬢様、お世話になりました。」と竹中はいい直した。
竹中は、ふっとそんな気がして言ってしまったのだった。

竹中は、目の前の良夫に、鼻の頭を、ちょっとかく癖を見た。
ここ3ヶ月くらいのお嬢様の癖だった。
今の、お嬢様には、その癖がない。

そうか、そうだったのか。
竹中は、思った。
だから、良夫に特別な親しみを感じるのだ。
そして、お嬢様は、どこかで、大変な努力をして、
やさしくて、頼もしいお嬢様になって帰ってきた。

「竹中さん。なに考えてたの。」と遠藤が言った。
「うん、ちょっとね。後で教えてあげる。」竹中は言った。

食事のあと、バースデイ・ケーキが運ばれ、
ろうそくを立て、みんなで歌を歌って、ケーキを食べた。

誕生日会が終わり、
駅までの道、礼子は、良夫と歩いていた。
「竹中さん。私達のこと、気がついたみたい。」と礼子は言った。
「どうして、わかったんだろう。」と良夫。
「由紀ちゃんも、あたし達のこと知ってた。」
「そうなの?!」
「わかっていて、あたしに何もかも教えてくれたの。」
「どうして、わかったんだろう。」
「良夫には、鼻の頭をちょっとかく癖があるのに、私がいた3ヶ月それがなかったって。」
「そうか、竹中さんもそうだね。」
「良夫は、竹中さんといるときが、一番多かったでしょう。」
「うん、そう。」
「だからだと思う。」礼子は言った。



竹中から、話を聞いた遠藤は、びっくり仰天した。
「じゃあ、あのチョコレートをくれたときからね。」と遠藤。
「あたしもそう思う。」と竹中。
「お嬢様、同じくらいやさしくて、たくましい人になって帰ってきた。」と遠藤。
「それは、お嬢様が、どこかのご家庭で、 
 大変な努力をして、やさしさとたくましさを取り戻したのだと思う。」と竹中。
「だから、良夫さんに会って、初めての人に思えなかったんだ。」遠藤。
「多分、そう。」竹中は言った。



駅への道で、良夫は言った。
「あの最後の日の夢の中で、女の人声がしたでしょう。」
「うん、した。」
「ぼくね、もっとモテるようになりたいですって言ったの。
 そしたらね、女の子みんなからモテなくても、
 ステキな女の子一人に好かれれば、それでいいでしょう、って言われた。
 そして、その願いは、もう叶っていますよって。
 ぼく、そのとき、礼子のことが心に浮かんだ。」

礼子は、にこっとした。
「叶ってるよ。あたしのこと心に浮かべてくれて、正解。
 良夫は、あたしのこと、どうなの。」
「好きだよ。ずっと前から。
 でも、綺麗な礼子は好きだったけど、心の方は初め好きじゃなかった。」

「いつから、心も好きになってくれたの。」

「ぼく達が、入れ替わった初めの日。
 礼子は、すごいショックの中にいたと思う。
 後で、ぼくが助けに来たでしょう。
 ぼくは、あのとき、礼子がふてくされて、怒って、
 逃げ出してるかもしれないと思ってたの。

 そうしたら、
 礼子は、洗濯物をちゃんと取り込んで、
 苦労して、畳んであった。
 なんとかしなくてはと、必死にやってくれてた。
 そのとき、礼子の心も好きになった。
 礼子は、ぼくのこと、いつ好きになってくれたの?」

「同じ、あの日。良夫が、助けに来てくれて、
 ショーガ焼きを、二つの中華鍋を両手にもって、
 瞬く間に作ってくれたでしょう。
 それ見て、カッコイイなと思ったの。
 それが、初め。」

そうか、そうだったんだと、二人は思った。

駅のそばに来ていた。
「話してると、すぐ駅に着いちゃうね。」と良夫が言った。
「今日は、ありがとう。明日、学校で会えるね。」
「うん。みんながこっそり見に来ると思うけどね。」と良夫は笑った。
「あれ、まいっちゃうわよね。」と言って、礼子も笑った。

駅は、夕日に照らされて、
良夫と礼子を、オレンジ色に染めていた。



<おわり>


■次回予定■

すいません。未定です。

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良夫と礼子のスワップ⑤「スワップ解除!」

1ヶ月がたった。

良夫の料理の腕は、格段に上がった。
中華鍋を、片手で軽々ともてるようになり、
2つの中華鍋を、同時に使えるようにもなった。

熱心な研究の末、毎日ちがった料理を作り、
家族みんなを喜ばせた。
「お兄ちゃん、すっかり勘を取り戻したね。」
と由紀に言われた。
「そう?だったらうれしい。」
と良夫は言った。

夜、健太と五郎に絵本を読んでやることも楽しみの1つになった。
「ねえ、お兄ちゃん。今日も読んでくれる?」と小学1年生の健太が言う。
「うん、いいよ。」と答える。
「やったあ!」と健太が喜ぶ。
そういう健太が、つくづく可愛いと思う。

健太と五郎が布団を並べている部屋で、
下の健太の布団に入り、本を読む。
本を終わりまで聞かないうちに、健太は寝てしまう。
『自分が読むことで、健太を寝かせることが出来る。』
これは、良夫の大きな喜びだった。

幸せな顔で寝ている健太を見ると、可愛くてたまらなくなる。
健太が寝ると、4年生の五郎は、
「あとは、ぼくが一人で読むから、お兄ちゃんはいいよ。」
と言う。
やさしい子だなと、いつも思う。

良夫は、自分の部屋のベッドで布団から、腕を出して思った。
「家事は大変だけど、なんて幸せなことだろう。
 それは、きっとこの家の子達が、いい子で可愛いからだ。
 いや、こうして一つ屋根の下でいっしょに暮らすと、みんな可愛く思えるのかな。」
良夫は、そうも思った。

ここは礼子の家。
夕食前の厨房には、いつも3人の姿が見られるようになった。
竹中と遠藤と礼子。
礼子は、白いコック用の姿で、竹中の隣で、料理をしている。
今では、すっかり、竹中の片腕だった。
礼子は、たくさんの本格料理を習った。
「お嬢様は、お教えすると、1回で覚えてしまわれますね。」と竹中が言った。
「そうでもないわ。教わったこと、後でメモして、何度もくり返すのよ。」と礼子。
「わあ、その熱心さがあれば、すぐ一人立ちできますよ。」と竹中。
遠藤が、
「お嬢様が、将来、ママになられたら、ご家庭のみなさんは、お幸せですね。」
と言った。
「ママになるのは、お二人の方が先じゃありませんか?」
と礼子が言ったので、三人で笑った。

食事は、5人固まって食べた方がずっと楽しい。
それが、竹中の火傷のときにわかり、
その後、ずっと5人でいっしょに食べている。
礼子が、明るい話題を振りまき、毎日楽しい食事になった。


<スワップから3ヵ月後 スワップ解除の夜>

――以後、良夫は良夫、礼子は礼子と記述します――

良夫と礼子は、同じ夢を見た。

良夫の耳に、近くからのような、遠くからのような、不思議な女性の声がした。

「良夫さん。あなたは、持ち前の性格で、この家の人々を幸せにしました。
 どうでしたか?」
「毎日が幸せでした。みんないい人で、楽しかったです。
 そして、ぼくは、とっても美人な女の子として過ごせて、最高でした。」
「それは、よかったですね。でも、明日から、もとの良夫に戻りますよ。」

「え、この家の人にお別れもなしにですか?」
「そうです。明日は、本物の礼子がいるのだから、お別れは、変でしょう。」
「そう言えば、そうですね。」
「二人が、スイッチして元に戻っても、二人のこの3ヶ月の記憶は共有されます。
 あなたは、ここで過ごした3ヶ月の記憶と、礼子のあなたの家での3ヶ月の記憶の
 両方を持てます。さもないと、不都合が起きるでしょう。
 記憶だけでなく、覚えた技能も共有されます。」

「ああ、よかった。それは、ありがたいです。」
「最後に、がんばったあなたに、1つだけ願いを叶えてあげます。
 何がいいですか。」
「うーーん。思い浮かびません。ぼくは、けっこう満ち足りています。
 あ、もっとお料理の知識が欲しいです。」
「それは、努力によって得られるものです。
 何か、普通では不可能な望みはありませんか。」

「じゃあ、もっとモテるようになるとかはどうでしょう。」
「大勢の女の子から、モテる必要はありませんね。
 ステキな女の子一人からモテれば十分でしょう。
 そのあなたの願いは、すでに叶っていますよ。」

良夫は、礼子のことを思って、顔を赤くした。

「あなたは、女の子になりたいのではありませんか。」
「なりたいです。でも、ぼくの家族に対しては、ぼくは、みんなの知っているぼくがいいです。」

「わかりました。あなたは、欲のない人ですね。
 じゃあ、こんなものをプレゼントしましょう。
 『女の子になれる夢』です。夢と言っても、現実と見分けがつかないくらいリアルな世界です。
 夢だから、どんな女の子にでもなれるし、いつでも覚めることができます。
 夢を見たくない日は、見たくないと思えば、見ません。」
「わあ、すごいですね。それ、一生の能力ですか。」
「はい。一生です。」
「じゃあ、その『女の子になれる夢』がいいです。」
「わかりました。明日の朝、あなたは、元の家で目が覚めます。
 では、さようなら。」

一方、礼子も夢を見ていた。
「礼子さん、よくがんばりましたね。
 大変な努力をしました。

 今日で、二人のスイッチは終わりです。
 明日の朝、あなたは、礼子としてあなたのお家で目覚めます。
 3ヶ月の記憶は、良夫さんと共有できます。
 そして、料理などの技能も共有されます。

「うれしいです。でも、この家の人たちとお別れになるのですね。
 それは、悲しいです。」
「良夫さんのガールフレンドとして、遊びにくればどうですか。」
「ああ、そうですね。」
「がんばったあなたに、1つプレゼントをします。何がいいですか。」
「良夫さんのように、やさしく、賢い娘になりたいです。」
「その願いは、もう叶っていますよ。今のあなたは、やさしさに満ちています。
 そして、十分に賢いのです。よいことに発揮すればいいのです。
 これも、すでに願いが叶っていますね。」
「料理の知識が欲しいです。」
「それは、努力で得られるものです。
 もっと、努力しても叶わない願いはありませんか。」

礼子は、考えた。そうか、と思った。
「それならば、あたしにも、優しい妹と、可愛い弟が2人欲しいです。」
「いい願いです。では、その願いを叶えましょう。
 あなたが、明日起きたら、3人のご兄弟がいます。
 お父様やお母様は、その3人が生まれたときからいるように思います。
 お手伝いの2人も、3人が始めからいたように思います。
 礼子さんも、3人の生まれたときからの記憶を持ちます。」
「わあ、うれしいです。」
「では、明日の朝を楽しみに。」
そこで、声は消えた。



良太は目覚めた。
ここは、あ、我が家だ。
礼子の家との別れは悲しいが、やっぱり我が家はいい。
急いで、着替えて、下に降りていった。
洗面所をみんなが競い合っている。
「由紀、五郎、健太、おはよう!」と言った。
「わあ、お兄ちゃん、おはよう!とみんなが言う。
『ああ、いるいる、みんないる。』

母の敏子が、朝ご飯を作っている。
「おかあさん、いいよ。ぼくがやるから。」
と良夫は、母とフライパンを代わった。
『今日は、竹中さんにならった、洋風オムレツにしようかな。』
玉子5つ分をかき混ぜ、塩少々。
平たいフライパンに注ぎ、
手首をトントンと叩くようにして、ふんわりしたオムレツを形作る。
「わあ、お兄ちゃん、カッコイイ。それ、洋風オムレツじゃない。」
とそばに由紀が来ていて言った。
「うん、中、ふかふかだよ。」と良夫。
「後で教えてね。」と由紀が言う。

みんな、テーブルに着いて、
「わあ~!」と言った。
「玉子焼きじゃないね。これがオムレツ?」と五郎が言った。
「うん。ちょっと感じがちがうよ。」と良夫。
みんなで、おいしい、おいしいと言って食べた。

食べながら、良夫は、鼻をちょっとかいた。
由紀は見ていた。
『あ、お兄ちゃんが帰ってきた。』
じゃあ、お兄ちゃんだった女の子も、帰って行ったんだなと由紀は思った。
いつか会いたいな。



礼子は目を覚ました。
「あ、家に戻ってる。」
良夫の家族と別れたのは悲しいが、やっぱり我が家はいい。
『そうだ。ほんとに兄弟がいるのだろうか。』
礼子は、急いで洗面をして、学校の制服を着て、下に降りて行った。
ダイニングに来た。
みんな先に来ている。

「いる!三人がいる!名前もわかる。
 由紀じゃなくて、美紀。五郎じゃなくて、四郎。
 健太じゃなくて、悠太。みんな、似ているけど違う。」
悠太が、椅子から降りて、礼子に飛びついてきた。
「お姉ちゃーん!」
「悠太、おはよう!」
「今日も、絵本読んでくれるの?」と悠太が言う。
「うん、読んであげるよ。いい子にしてたらね。」
「うん、いい子にしてるよ。」と悠太。

礼子の胸はわくわくしてきた。
「お父様、お母様、おはようございます。」と言った。
父も母も、にこにこしていた。

食事を運びに来た、竹中と遠藤に、
「おはようございます!」と行った。
「あ、お嬢様。おはようございます。」
と竹中と遠藤もにっこりと言った。

竹中も遠藤も、朝食はみんないっしょだ。
みんなで8人!
『わあ~!にぎやかでうれしい。』
礼子の胸は喜びにあふれた。

どの人の顔もみんな笑顔だった。

*    *    *

朝、教室に入ると、良夫がいたので、
礼子は、良夫の袖をひっぱり、廊下の隅に行った。
「ね。良夫は、何を願ったの?」
「ぼく?ぼくは、好きな夢を見られるようになった。」
(女の子になる夢とは、言えなかった。)
「礼子は?」
「それが、すごい願いなの。なんと、妹一人と弟二人が欲しいって願ったの。」
「かなったの?!」
「かなったの!それが、美紀、四郎、悠太。
 ね、そっくりでしょう。」
「うんうん。今度遊びに行って、会いたい。」
「あたしも、良夫の家で、みんなに会いたい。」

クラスの大勢が、廊下に顔を出して、廊下の隅で盛り上がっている二人を見ていた。
「良夫とマドンナ。わからねえ。どうしてなんだ。」
「俺達もがんばれば、なんとかなるってことかな。」
「なんとか、ならねえ奴がほとんどだろうよ。」
「そんなこと言うな。」
そう話している数人を、女子達が笑っていた。


つづく

■次回予告■

最終回です。
二人は、それぞれの家に招いて、家族に紹介します。
みんなは、どんな反応をするでしょうか。

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良夫と礼子のスワップ④「礼子の采配」

クラスの連中が不思議に思うことがあった。
この頃、良太と礼子の仲がいいのだ。

良太は、学校で暇さえあれば、料理の本を見ている。
そして、しょっちゅう礼子のところへ聞きにいく。
礼子は、少しも嫌がらず、良夫に丁寧に教えている。

二人は、料理という趣味で結ばれた仲間なのかとも思えた。
しかし、昼休みなど、校庭の木の下で、
二人で仲良く話していて、ときどき大笑いをしていたりする。

クラスの男子は、言動がしっかりしていて、勉強もできる良夫を認めていて、
蔑むものなど1人もいなかった。
しかし、同時に、良夫を、モテる奴だと認める者もいなかった。

とくに、最近、性格がよくなってきた礼子は、
表情まで明るくなり、マドンナとして男達の評価は高まる一方だった。

その礼子と良夫の組み合わせが、皆には、不思議でならなかったのである。
度胸がなく、礼子のそばにも寄れない男子も多くいた。
だから、教室で、まっすぐ礼子に教えてもらいに行った良夫に、
皆は、目を見張ったのだった。

校庭の木の下で、良夫と礼子は、毎日の出来事を、情報交換していた。
誰か、そばで聞いているといけないので、
良夫は男言葉、礼子は女言葉を守っていた。

良夫:この頃、寝る前、五郎と健太に絵本の読み聞かせしてるんだ。
礼子:わあお、良夫すごい。あたしもやれないできたのに。
良夫:それがね、読みながら、ぼくが先に寝ちゃったりするの。
礼子:あはは。自分の当番の日は、けっこう辛いわよね。
良夫:礼子の方はどうなの。
礼子:ちゃんとうまくやってるよ。みんな誉めてくれる。
良夫:だろうな。礼子のように、性格よくなりたい。
礼子:良夫がんばってるじゃない。良夫が料理の本読んでいるとうれしい。
良夫:うん。みんなが、おいしいって言ってくれると、本当にうれしいから。

陰で聞いていた同じクラスのA男は、発見した。
二人は、「良夫、礼子」と呼び捨てで呼び合っている。
これは、大変なことだ。

ひえ~~~~とA男は、みんなに知らせようと走って行った。



1週間が経った。

礼子は、料理に興味があるので、
竹中と遠藤が夕食を作るのを毎日のように見に行った。
そして、メモを取った。

「お嬢様、お料理のお勉強、熱心ですね。」
竹中が言った。
「ええ、竹中さんのように、おいしいお料理が作れる人になりたくて。」
と礼子は言った。

「このソースわかりますか?」
と竹中が、お醤油のようなソースを小皿に取って礼子に渡した。
礼子は、それを指につけて、味見をし、
「わあ、複雑な味。おいしい。
 多分、お醤油にニンニクを漬けて、それにレモン汁が少し入っていますか?」
と礼子は言った。
「わあ、お嬢様、すごい。そこまで当てるなんて。」
と竹中。
「でも、それだけじゃない。もう一つ隠し味に何か。」
と礼子は言った。
竹中は、にこりとした。
「かすかに甘いの。お砂糖より風味があるもの。ほんの少しだけど、黒砂糖?」
「わあ、お嬢様すごい!その通りです。お嬢様、いいコックになれます。」
竹中は、拍手し、横にいた遠藤は、飛びあがって喜んだ。
このところ、遠藤は、すっかり礼子のファンになっていた。



その次の日、礼子は、厨房に行くのが、少し遅れた。
厨房のそばに来ると、
「キャー。」と言う、竹中の声が聞こえた。
急いで厨房に駆けつけると、
竹中が、右肩から右腕に油を浴びて床にいた。
竹中は痛みに声も出ない様子だった。

遠藤が、竹中の作業服を脱がそうとしていた。
「遠藤さん。服をぬがせないで。」
礼子は言った。
「竹中さん、何かにすべったんです。
 そして、熱い中華鍋の油を浴びたんです。」
遠藤が説明した。
父と母も見に来た。

大やけどは、弟の五郎のときに経験していた。
礼子は、竹中を横に抱き上げ、風呂場に行った。
そして、浴槽のそばに、竹中を座らせ、
まだ空である浴槽の中に、竹中の肩と腕を入れ、
冷水のシャワーを強にして、肩から腕にかけた。

「ああ、水を浴びてると痛くないです。」
と竹中は言った。
見に来ているみんなに、礼子は、
「お母様、救急車を呼んでください。
 遠藤さんは、竹中さんの着替えと、
 健康保険証の入っていそうなバッグを探してください。」
「はい。」と言って、母と遠藤は飛んで行った。

やがて、救急車の人たちが来た。
二人が竹中をタンカに乗せて、一人が冷却用のキャタビラで竹中の患部を包んで、
風呂場から、外に出した。
「お母様と遠藤さんは、付き添いを。
 お父様は、お留守番を。
 あたしは、厨房を整えます。」
礼子は言った。
それから、礼子は遠藤に、病院を出るときに、電話をくれるように頼んだ。

救急車の中で、隊員の一人が、言った。
「見事な応急処置です。
 すぐに冷やすことが、第一なのです。
 流し水がベストです。
 肩を冷やすのに、浴槽でシャワーを使うなど、
 我々でもなかなか思いつきません。
 それに、油の火傷のときは、服と皮膚が接着している場合がありますので、
 服を脱がすと、皮膚がはがれてしまうことがあります。
 服を脱がさないことが、正解です。
 一体どなたの采配ですか。」

母の早苗は、少し照れながら、
「娘です。」
と言った。
「そうですか。それは、素晴らしいお嬢様です。」
と隊員は言った。

竹中と遠藤は、あのときの礼子の行動が目に焼きついていた。
礼子が、あれほど頼もしく、そして、ステキに見えたことはなかった。
とくに、竹中にとっては、礼子が救いの天使のように思えていた。

礼子は、みんなが戻ってくる間に、
キッチンペーパーで、床の油を完璧に拭き取り、
竹中の作ろうとしていたものを、下ごしらえを見て考えた。
『若鶏の竜田揚げ・オニオン甘辛あんかけソース。』そう見た。
厨房にあるコック服を着て、白い帽子をかぶった。

父に言った。
「みなさんが帰ってきましたら、竹中さんはあの状態ですから、
 遠藤さんとお二人、私達といっしょに、ここで夕食をいただいては、どうでしょうか。
 あたしが、お料理の続きをやってみたく思います。」
「礼子がお料理を。礼子のいう通り、5人かたまって食べよう。」
父は礼子を頼もしく思った。

礼子は、スープを作り、サラダを作り、あっさりしたチャーハンを一人少量作り、
オニオンソースを作った。
前に見せてもらった、ニンニク醤油のソースに酢をまぜ、
微塵切りにしたオニオンを混ぜ、砂糖を加え、火を入れて、
片栗粉少々をいれ甘酢あんかけにした。

病院から、今から出るという遠藤の連絡があった。
礼子は、時間を計算に入れ、みんなが帰ってきたときに、
ジャストタイムで、竜田揚げを仕上げた。
竹中のために、1つの皿は、包丁を入れて、すべて一口サイズにした。
テーブル・セッティングはされていた。

父と礼子で、3人を玄関で出迎えた。
竹中は、三角巾で、右手を釣っていた。
竹中を二人でねぎらった。

「礼子が、竹中さんのお料理を完成させて、
 今日は、5人固まって食べようと言うんだ。
 それも、いいと思わないか。」と父の雄三は言った。
「賛成です。」と早苗が言った。
わあ、と竹中と遠藤は喜んだ。

雄三の左に、竹中と遠藤が並び、
早苗のとなりが礼子の席。

ワゴンに乗せた料理を配る。
サラダとスープが配られ、次にチャーハン、そして、竜田揚げが配られた。
竹中は、料理を見て、
「まあ、お嬢様。竜田揚げだとお分かりになったのですか。」と言った。
「ええ、あたし、竹中さんのお料理の弟子ですから。」と礼子は、にこっと笑った。

竹中の前に竜田揚げが置かれたとき、
竹中はそれを見て感激した。
すべて左手だけで食べられるように、一口サイズになっている。
「まあ、お嬢様。」と言って、竹中は、思わず涙を浮かべた。

「どうしたの?」と早苗に聞かれた。
「お嬢様は、あたしのために、あたしのだけ、小さく切ってくださっているんです。」
竹中は、言った。
「おお。」と雄三はうれしそうな顔をして、
「そこまでの心遣い。今日の礼子は、100点満点だね。」と言った。
「わたしは、300点ぐらいあげたいです。」と早苗は言って、
救急車の人に誉められた、礼子の素晴らしい応急処置のことを話した。
雄三は、さらに喜び、
「それは、300点だね。」と言った。

礼子は言った。
「また、300点いただくために、明日から、竹中さんの腕がよくなるまで、
 竹中さんにそばにいていただいて、あたしが、竹中さんの腕となって、
 お料理を作らせていただきます。
 そして、その間は、ずっとこうして、5人固まって、お料理をいただきませんか。」

「それは、いい。そうしよう。」
と雄三が言って、みんなが拍手をした。

お料理を口にしたみんなは、一様に、「おいしい!」と言った。
「お嬢様、あのニンニク醤油漬けをお使いになりましたね。」と竹中。
「はい、おいしさの秘訣は、全部あたしの先生によるものです。」
と礼子はみんなに言った。
「いえいえ、揚げ方といい、甘辛ソースの配合といい、もう、教えることがありません。」
と、竹中が言ったので、礼子はうれしかった。
みんなの顔はにこにこして、幸せいっぱいな気持ちだった。


つづく

■次回予告■

二人のスワップが解除になります。
そのときに1つの願いが叶います。

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良夫と礼子のスワップ③「礼子の努力」

このブログが消去された場合の準備をしています。
そのときは、「新女装小説&自叙伝」という名のブログにします。
このブログが消えている場合は、ブログ名で検索して来てくださるとうれしいです。
では、第3話です。読んでくださると、うれしいです。

==============================

1日の仕事が終わるのに、10時半までかかった。
みんなには、家事の仕事を、何かの拍子に全部忘れちゃったと言って、
ごまかした。
その分、妹の由紀に全部やってもらった。
由紀は、嫌な顔1つせずにやってくれた。

良夫は、由紀の仕事を、そばで全部見て、懸命にメモした。
ふと思った。
今日の自分のような醜態を、もしお手伝いがしたら、
自分は、どれだけ怒鳴り散らしただろうか。
それなのに、良夫の家の人は、少しも怒らなかった。
ありがたいと思った。
そして、今までの自分を反省した。

良夫は、朝、由紀に言われ、大慌てで、洗濯物を干して、やっと学校に着いた。
学校にいる方が、よっぽど楽だと思った。
だが、その思いをすぐ否定した。
それは、自分が礼子のつもりでいたからだった。

自分は、今、良夫なのだった。
クラス1モテない男子なのだ。
良夫の学校生活は、つらいものがある。
礼子一派に嫌がらせを受けるからだ。

その良夫が今、礼子。
礼子である良夫は、された嫌がらせを全部知ってる。
先生をごまかせても、本人にだけは、ごまかせない。
今まで、良夫にしてきた、嫌がらせの数々、
その復讐を全部されたら、自分にとり学校は地獄だ。

礼子になった良夫から、
一体どれだけの仕返しをされるだろうかと、恐怖し、
教室に来た良夫は、机で、小刻みに震えていた。

家で、あれだけの家事をして、
学校で、あれだけ嫌がらせをされたのでは、
誰だって、たまらない。
自分は、なんとひどいことをしてきたのだろうと良夫(=礼子)は思った。

良夫は、廊下側の席の前にいる礼子を見た。
礼子が、恐かった。

礼子の取り巻きの4人が来た。
4人は、さっそく良夫をさげすむような視線で見た。
(ああ、あたしへの嫌がらせの相談をしている。)
4人の一人が、
「ねえ、今日は、こんなことしてやろうよ。」
と良夫の方に目をやって言った。
それを聞いた礼子は、にまりとするかと思った。

しかし、礼子は、それを跳ね除けた。
そして、言った。
「あたしね。昨日すごく怖い夢見たの。
 夢で、クラス全員からいじめられるの。
 それはそれは、怖かった。
 だから、あたし、今日からいじめやめる。
 今までのこと、良夫君に全部謝って許してもらう。」

「礼子、本気?」
と4人の内の美沙が言った。
「うん、本気。」と礼子。
「じゃあ、あたしも、いじめやめる。」と美沙が言った。
「どうして?あたしに付き合うことないのに。」と礼子。

「今なら言えそうだから、言うけど、
 あたし、今まで、礼子が恐かった。
 だから、付き合っていただけなの。
 グループ抜けると何されるかわからないじゃない。
 それが、恐くて、いっしょにいただけなの。

 でも、今日の礼子は、恐くない。なんか、やさしい感じがする。
 今の礼子となら、心から、友達になれる気がする。
 良夫へのいじめなんて、ぜんぜん楽しくなかった。
 良夫は、クラスで、一番いい奴なのに。」
美沙は言った。

エリが言った。
「あたしも、美沙と同じ気持ち。
 今まで、礼子といっしょにいるの辛かった。
 礼子は、女王様。あたし達は、召使い。
 楽しいわけないじゃない。

 いつ礼子から意地悪されるかと、ご機嫌とりばっかりやってた。
 礼子が恐いから、抜けられなかった。
 したくないいじめに、付き合ってた。
 でも、礼子が、悪いことやめて、いばらないなら、
 ほんとの意味での友達になれる。」

由里や加奈も美沙と同じことを言った。

そのやりとりが、良夫の耳にはっきりと聞こえてきた。

『やっぱり、そうだったんだ。みんなあたしのこと、
 心の中では、嫌いだったんだ。
 確かに、今までグループを抜けた子を、散々にいじめた。
 だから、4人は、抜けられなかった。
 女王様の召使いなんて、嫌に決まってる。

 あたしを好きでいっしょにいてくれる人なんていなかった。
 あたしは、本当は、孤独だった。
 クラス1番の嫌われ者だった。

 本当は、分かっていた。
 だから、みんなを脅して、あたしから離れられないようにした。
 一人ぼっちだと認めたくなかった。
 一人でぽつんとしているなんて、プライドが許さなかった。

 でも、そのために、多くの人をいじめ脅した。
 あたしといることで、みんなの楽しい時間を犠牲にさせた。
 あたしは、悪人だ。どうしようもない最低の人間だ。』
良夫は、うつむいて出てくる涙を懸命にこらえた。

礼子と4人が、良夫の机の近くに来た。
みんな、床に正座をした。
礼子が、言い始めた。
「大川君、いままでのことごめんなさい。
 あたしたちひどかったと思う。
 昨日恐い夢見て、やっと分かったの。
 あたし達がどれだけひどいことをして来たかを。

 ごめんなさい。もう絶対しません。
 許してくれたら、うれしいです。」

そう言って、5人は、床に両手をついた。

良夫はなんて答えたらいいのか、分からなかった。
今までの礼子の心に従えば、絶対許さない。
5人を罵倒し、言葉で叩きのめす。
だが、今自分は良夫なのだ。
良夫はやさしい。クラスで一番やさしい男子だ。
自分は、良夫の心で、答えなくてはならない。
クラス中のみんなが、見ている。

良夫は言った。
「いいよ。気にしていないから。
 そんな、床に両手をつかないで。
 今までのこと全部忘れるから。
 もういいから、早く立って。」

「ありがとう。」と5人は立った。
4人は、ほっと胸をなで下ろした。

礼子は、良夫(=礼子)に、「復讐などしないよ。」と伝えたのだった。
つまりは、良夫(=礼子)をいじめから助けてくれたのだった。

やさしい言葉で許した良夫は思った。
こんなやさしい礼子(=良夫)を、自分はどうしていじめて来たのだろう。
良夫(=礼子)は、深く自分を咎めた。
そして、思った。
『夢でいじめられた』などという絶妙な作り話で、助けてくれた。
礼子(=良夫)は、やさしいだけではない。
人間として、自分より遥かに上の人だ。



3日がたった。
良夫にとって、夕食を作るのが、一番のプレッシャーだった。
必死で料理の本を読んで、作った。
試食してみると、ものすごくまずい。
酢とお酒を間違えたり、だしを入れるのを忘れたり、
塩と砂糖を間違えたときは、最悪だった。

自分でさえ、食べられないものを、
小1の健太から由紀、そして母も、一言の文句も言わずに食べてくれる。
「人が作ってくれたご飯に文句を言うなんて、もってもほか。」
みんな、そう教えられているのだ。
良夫は、涙が出そうだった。
自分が礼子のとき、味がちょっとでも気に入らないと、
料理の竹中に文句を言い、作り直しをさせた。
なんという心ないバチあたりだったのだろう。

それから、3日後。
良夫は、オムライスに挑戦した。
なんども料理の本を見て、
試作もした。
一つだけ、上に乗せる玉子焼きが、
どうしても、ぐちゃぐちゃになってしまう。

そこで、5分休み、学級で、礼子に聞いた。
「上に乗せる玉子を破らないようにするのは、どうすればいいの。」
「あ、玉子を裏表焼こうとしてない?」
「あ、してる。そういうものでしょ。」
「両面焼く必要はないの。始めの面だけ焼いて、上は半熟。
 炒めご飯の上に、フライパンから、そのままスライスすればいいの。
 上にデミグラスソース。その上にパセリかグリンピース1つでいいから乗せるの。」
「五十嵐さん、ありがとう。よくわかった。」

まっすぐ、礼子に聞きに行く良夫に、クラス中が目を見張った。
そして、やさしく良夫に教える礼子の姿にも、クラス中が目を見張った。
「礼子、変わったね。」
「うん、今の礼子、すごくいい感じ。」
そんな声がここそこでした。

良夫は、今度こそ「食べられる料理」をと、がんばっていた。
にんじんを、みじん切りにして、ご飯に混ぜ、炒めご飯にした。
5人分を、2つの中華鍋で作った。
形を整えて、お皿にもり、
礼子から教わった方法で、2つの玉子を、平たいフライパンで焼き、
お皿のご飯の上に、スライスさせる。
できた!そうか、そうか、こうやればいいんだ。
デミグラスソースをかけて、グリンピースを1つ乗せる。

スープを作り、飲み物を添えて、みんなを呼んだ。
みんなが、来た。
「わあ、オムライスじゃない。」
「これ、面倒だから、作ってもらえないんだよね。」
と、五郎と健太が言った。

良夫は、すごいプレッシャーの中にいた。

「いただきます。」をした。
良夫は、心の中で神様に手を合わせた。

「あ、おいしい。お兄ちゃん、これ、すごくおいしい。」と五郎が言った。
「玉子の上が半熟で、すごくおいしい。」と健太が言った。
母も、由紀もおいしいと言った。
自分で食べてみた。
本当においしい。
うれしい。
やっと「おいしい」と言ってもらえる料理を作れた。
良夫は、うつむき涙が出てくるのをこらえた。
隣の由紀が、やさしく良夫の肩に手をかけた。



由紀はなんとなくわかっていた。
兄の鼻をかく癖がない。
髪を耳にそって撫でる女の子の癖がある。
今のお兄ちゃんは、お兄ちゃんじゃない。
どこかの女の子が、必死にお兄ちゃんをやっている。
多分、家事なんて全然やったことのない子。


つづく

■次回予告■

クラスのみんなは、良夫と礼子の仲良しを不思議がります。
礼子は、竹中の大火傷に、見事な采配をふるいます。

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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
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