1つの消しゴム(3部作・その2)

新作がどうしてもできず、再投稿でしのいでいます。
今日のお話は、昨日登場の平えつ子さんの一人目の親友となる島田さちこさんのお話です。
大晦日の忙しい日に、長いお話は、どうかなあと思いながら、
前・後編一挙に投稿します。
少年時代の作品の中で、1番の力作なんです。読んでくださるとうれしいです。
舞台は、1960年、「三丁目の夕日」の頃です。

=============================

「1この消しゴム」

4年生のとき。
それは、平さんが、私が男子達と遊べるよう、
身を引いてくれた頃だった。

音楽の時間に席替えがあった。
私は背が低い方だったので、真ん中の中央だった。
音楽室の机は2人掛けだった。
私のとなりは、島田さち子さんという女の子だった。
島田さんも小柄だったので前に来た。

島田さんは、クラスで一人ぼっちの子だった。
その原因ははっきりしていた。
着ているものがいつも同じワンピースで、
その服は色褪せていて、どこかうす汚れた感じのものだった。
そして、島田さんは、浅黒くて、
皮膚が荒れていた。
それは、一見汚れているようにも見えた。

クラスの男子は、島田さんの横を通るとき、
わざとらしく距離をおいて通って行くようなことをしていた。

教室で、島田さんのとなりになった男子は、
嘆くようなアクションをして、
机をわざと、島田さんの机から、20cmくらい離していた。
先生に注意されたときだけ机を戻し、すぐに机を離していた。

島田さんは、いつも大人しかった。
ほとんど、しゃべる相手がいなかった。



私は、クラスで席がとなりになった女の子と、
必ず仲良しになった。
そして、いつも楽しく盛り上がっていた。

音楽室の島田さんとも同じだった。
一日目に、すぐ仲良しになった。
島田さんは、大人しい子ではなかった。
普通におしゃべりができる子だった。

ところが、席替え1日目の音楽の時間が終わったとき、
私たちの前を通る男子の数人が、
「へん、純、可哀相。」と言ったり、島田さんに向かって、
「お前なんかに、純はもったいないんだよ。」
そんなことを言って通り過ぎて行った。

言われてうつむいている島田さんに、
私はなんと言っていいかわからなかった。
気の効いた言葉を言えるほど、私は大人ではなかった。



音楽は、1週間に2回あった。
私は相変わらず、島田さんと盛り上がって、
楽しく過ごしていた。

すると、また、授業の終わりに、数人の男子が来て、
「純、島田なんかと盛りあがんじゃねーよ。」
「だって、こいつ、島田だぜ。」
と言った。

普段、ほとんど怒ったことのない私だった。
でも、そのときばかりは、ひどいと思った。
「そんな言い方、島田さんに悪いよ。」私はそう言った。
「悪かねーよ。島田だぜ。」
そう言いながら、数人は行った。
「純、お前、いつから島田の味方になった?」
そうも言っていた。

島田さんは、うつむいてだまっていた。
私は、気の毒でならなかった。



ある、音楽の時間。
たて笛の練習があった。
音楽の先生は女の先生だった。

子供達の間を、回りながら、手に手を取って指導していた。
やがて、先生は、島田さんのところへ来た。
そして、教えようとした。
だが、教える前に、島田さんの掌を見て、
「まあ、こんなに荒れてるじゃないの。
 それに、手のひびに泥が入っているわ。
 手をよく洗ってないのね?
 ね、いいこと。必ず手を石鹸でよく洗いなさい。
 その後、クリームをしっかり塗りなさい。
 いい?わかった?。」
そう言った。

そのとき、クラスのみんなが、笛の練習をやめて、
島田さんが言われているのを聞いていた。

(みんな、何のために、聞いてるの?島田さんが注意されるのを聞きたいの?
 ひどいよ。それは、ひどいよ。
 先生は、そういうの、誰もいないところで、言って上げればいいのに…。)

私は心の中で、そうくり返していた。
そのうち、我慢のできない怒りが渦になって込み上げてきた。

私はいつの間にか、立ち上がっていた。
そして、後ろを向いて、クラス中を相手に言った。

「みんな、何を聞いてるの!島田さんが先生に何を言われてるのか聞きたいの!
 そんなこと、楽しいことじゃないよ!楽しいことじゃないに決まってるじゃないか!」

私は、そこまで言うと、感情が高ぶってしまい、涙が出てきた。
私は、後ろを振り返り、先生に言った。

「先生も、そんなことは、誰もいないところで言ってあげればいいのに!」

そう言ったときには、耐えられず、机に顔を伏せて泣いてしまった。

多分そのとき、島田さんは、先生から手を引っ込め、
たて笛をぎゅっと握ったまま、掌を隠していた。
そして、うつむいていた。

クラスは、水を打ったようにしーんとなった。

やがて、クラスの後ろの方からの声が聞こえた。

「純が怒った…。」
「純が本気で怒ったの初めて見たよ。」
「やべえ。俺ら、相当いけなかったのかな…。」

そのうち、島田さんが、くすんと泣き、そのうち声を震わせて、忍ぶように泣きはじめた。

今まで、どんなに嫌がらせをされても、一度も泣かなかった島田さんだった。
その島田さんが、泣くようすを、クラスのみんなは、初めて見た。



先生の声が聞こえた。

「島田さん、ごめんなさい。加納くんの言うとおりだったわ。
 授業が終わってから、あなた一人に言えばよかった。
 島田さん。ごめんなさい。そして、加納くん、ごめんなさい。
 先生が、いけなかった。二人ともごめんなさい。」

先生が少し泣いていた。

(※40年前。先生の権威は今よりずっとありました。その先生が子供に謝る姿など、クラスのみんなにとって、初めて見ることだったと思います。)

そのうち、授業終了のチャイムがなった。
すると、平さんが、飛ぶようにやってきた。

「島田さん。あたしの母さん、美容師だから、家にクリームいっぱいある。
 だから、今日一緒にあそぼ。あたしの家に来ない?」そう言った。
島田さんも、私も、やっと泣き止んでいた。
「行く。ありがとう。」と島田さんは、平さんに言った。
「ぼくも行っていい。」と私は言った。
「わあ、純も来てくれるの?」と平さんはうれしそうに言った。



平さんの家に、島田さんと3人で言った。
平さんの家に着くと、お母さんがいた。
平さんのお母さんは、背が高くて、すごく若くて、美人だった。
「あ、お母さん、いたの?」と平さん。
「うん、ちょっと用があってね、もどって来たの。」とお母さん。

「ちょうどよかった。島田さんの手を見て上げて。」と平さんは言った。

島田さんは、平さんのお母さんに、掌を見せた。
「これは、汚れじゃないわ。皮膚にひびが入って、血がにじみ出ているの。
 それが固まって、こげ茶色に見えるだけ。
 お湯でやわらかくして、ベビーオイルを塗っとくといいわ。
 大人にだったら、もっといいのがあるんだけど、まだ4年生だからベビーオイルの方が安全。
 手袋して寝るともっといいんだけど。ちょっとうっとうしいものね。」
そう言って、平さんのお母さんは、給湯器からお湯を出して、
島田さんの手を温め、ベビーオイルを塗った。

平さんのお母さんは、すごいなあと私は思って見ていた。

「お家にベビーオイルある?」と平さんのお母さんは聞いた。
「ないと思う。」と島田さんは、答えた。
「じゃあ、これあげるわ。あげたことがわかるように、
 お母さんに、お手紙を書いておきましょう。」とお母さんは言った。
「あたし、お母さんいません。」と島田さんは言った。
「お父さんは?」
「お父さんなら、います。」と島田さんは言った。
「そう。家は、お父さんがいないのよ。」と平さんのお母さんは言って、
島田さんのお父さん宛てに手紙を書いていた。



「お母さん。こちらの子、純。」と平さんは言った。
「あなたが、純くんなの?」とお母さんは、うれしそうな目をして言った。
「江津子から、毎日お話を聞いていたの。
 お会いできて、うれしいわ。
 ほんとだ。可愛いわ。」とお母さんは言った。



平さんのお母さんが出かけた後、
平さんが、島田さんに言った。
「島田さん。純ね、女の子の格好すると、すごく可愛くなるのよ。
 ね、純。今日も女の子になって?島田さんに見せちゃおう。」
「いいよ。」
と私は答えた。(内心すごくうれしかった。)
平さんは私に、可愛い黄色のワンピースを着せた。
そして、髪をとかして、私の耳を出した。
それに、カチューシャを私の髪につけた。

「はい、純子の出来上がり。」と平さんは、喜んだ。
島田さんも、笑いながら、
「ほんとだ。女の子にしか見えない。加納くん、可愛い。」と手をたたいて喜んだ。
「純子よ。女の子になったときは、純子って呼ぼう?」と平さんは島田さんに言った。
「うん。わかった。」と島田さんは、おかしそうに言う。

私たちは、3人の女の子になって、
外で石けりをしたり、ゴム段をしたり、
中で、トランプをしたり、おはじきをしたりした。
前に平さんと2人で遊んだときより、3人の方がずっと楽しかった。

島田さんは、生き生きとしていた。
たくさんしゃべり、たくさん笑った。



楽しい遊びの時間が過ぎて、帰る時間になった。
帰りは、島田さんと私の2人になった。

「加納くん。」と2人になると、島田さんは、私を苗字で呼んだ。
「加納くんは、私がクラスで嫌われていること、知っていたでしょう?」
と島田さんは、言った。
「みんな、私を、汚いって言って、離れて通ったり、机を離したり。」
「うん。知ってた。」
「私、席替えの度に嫌だった。音楽室でも席替えがあったときも、つらかった。」
「うん、わかる。」と私は言った。
「でも、私のとなりに加納くんが来た。
 また、離れて座られるのかなと思ってた。
 でも、加納くんは、そんなことしなかった。
 私のこと、汚いって思わなかった?」と島田さんは聞いた。
「よくわかんないけど、ぼくは、そういうこと、あんまり感じない。」と私は言った。
「あたし、加納くんが、普通に座ってくれて、
 あたしに普通に話しかけてくれて、すごくうれしかった。」
そう島田さんは言った。

「今日の音楽の時間は、ありがとう。」島田さんが言った。
「ぼくが、みんなに言ったこと?」
「あたし、ちゃんと石鹸で手を洗っているのに、
 先生から洗ってないみたいに言われて、悲しかった。
 そのとき、クラスの人みんなが笛を止めて聞いてて、
 恥ずかしかったし、聞かれたくなかった。
 みんなが、おもしろがって聞いてるような気がして、
 死ぬほど悲しかった。

 先生だって私のそんな気持ち分かってくれてなかった。
 この世に私の気持ちなんか分かってくれる人いないって思った。
 でも、加納君が分かってくれてた。
 そして、みんなに泣きながら言ってくれた。
 今まで、絶対怒らなかった加納君が言ってくれた。
 うれしかった。

 あたし、今までどんなにいじめられても泣かなかった。
 泣かないってがんばってきた。
 辛いのは、いくらだって我慢できた。
 でも、うれしい気持ちは、我慢できなかった。
 うれしくて、うれしくて、涙が出てきて、止まらなくなった…。
 加納君、ありがとう…。」
島田さんは、立ち止って、泣き出してしまった。

「今日は、ぼくも泣いちゃったし、二人で泣いちゃったね。」
私はそう言って、少し笑った。
「そうね。」と島田さんは私を見て、涙の目を拭いて笑顔を作った。
 



その日の夜、島田さんのお父さんが、島田さんを連れて、平さんの家へ挨拶に言ったそうだ。

(※以下は、平さんに聞いたお話を、想像を加えて書きます。)

「お手紙読みました。ありがとうございます。」とお父さんは言い、
 何しろ、男手で育てているものですから、娘のことに手が行き届かなくて…。」と言った。
「お困りなことは何でもおっしゃってください。
 家は、男親がいないものですから、ときに男の方の手が欲しくなることがあります。
 お互い様ということで。」と平さんのお母さん。

平さんのお母さんは、奥から、大きな風呂敷包みを持ってきて、
「あの、大変差し出がましいことなのですが、
 これ、去年まで、娘の江津子が着ていたものなのです。
 江津子は、4年生になって急に背が伸びて、全部着られなくなってしまいました。
 どうしようかと思っていたものなんです。
 古着屋に持って行っても二束三文ですし、かといって捨てるにはもったいないし、
島田さんのさち子さんは、小柄でいらっしゃるので、もしかしたら着られるかもしれないと思って、まとめました。着古したもので、大変失礼かと思いますが、もしよろしければ、お受け取り願いませんでしょうか。」
そう言った。
「それは、ありがたいことです。何しろ娘には、同じものばかり着させて、親として辛い思いをしていました。ぜひ、ありがたくちょうだいいたします。こんなにたくさん、申し訳ないことです。」
島田さんのお父さんは、そう言った。



次の日、島田さんは、違う洋服を着て学校に来た。
そばで、平さんがうれしそうにして、話しかけていた。

そのころ、島田さんを特にいじめていた5人グループが私のところへ来た。
その中の大将の田辺君が私に頭を下げて言う。
「純、俺達はこれから島田のところへいって謝るから、俺達を嫌わないでくれ。
 お前に嫌われたら、もうおしまいだ。」

「どういうこと?ぼくはボスでも大将でもないよ。」と私は言った。
「いや、お前みたいないい人間に嫌われる奴は、サイテーということだ。
 純は、俺が一人ぼっちのとき付き合ってくれたただ一人の奴だ。借りもある。
 だから、許してくれ。」田辺君はそう言って頭を下げる。
他のみんなも頭を下げている。
「ぼくは、いいよ。」私は笑って答えた。

それから、5人は、島田さんのところへ行って、一生懸命頭を下げていた。
私は、よかったなあと思って見ていた。
島田さんは、不思議な顔をして5人を見ながら、最後にはうなずいていた。
平さんが島田さんを抱きしめていた。

島田さんへの嫌がらせは、その日からなくなった。



島田さんと平さんは大の仲良しになった。
二人とも、もうさみしくはなくなった。



何週間が過ぎて、音楽の時間、
先生が、来週席替えをしましょうと言った。
みんな、わあーいと言って喜んだ。
島田さんと並んでいられるのは、あと2回になった。



音楽の時間。島田さんと並んでいられる、最後から2番目の日だった。
島田さんは、私の机の前に、綺麗な女の子用の新品の消しゴムを置いた。
「これ、加納くんにあげる。」
「ほんと?」と私は言った。

私は知っていた。
島田さんの筆箱の中には、短くなった鉛筆2本と、
小さくなって、使いづらくなった消しゴムしか入ってなかった。

「これ、島田さんの大切なものじゃないの?」と私は聞いた。
「うん。私のいちばん大切なもの。だから、加納くんにあげる。」
島田さんは、そう言った。
私は、島田さんの思いがわかり、胸の中からこみ上げてくるものを感じていた。

「ありがとう。もらうね。大事にする。
 もったいなくて、使えないかもしれない。」
そう言った。
島田さんは、にっこり笑った。



家に帰って、母に消しゴムを見せた。
そして、島田さんのことを話した。

「そう。じゃあ、純のいちばん大切なものをあげたら。」と母は言った。

その頃の私の一番大切な物は、「スーパーマン」のメンコだった。
4枚で一組になり、紫色の紙テープに巻かれ束になっている。
女の子の島田さんがメンコやるかなあと思ったけれど、私の一番の宝だった。

島田さんと並んで座れる最後の音楽の時間。
「これ、ぼくのいちばんの宝物。消しゴムのお礼。もらってくれる?」
と島田さんに言って、メンコを島田さんの前に置いた。
「いいの?」と島田さんは私を見て言った。
「うん。いい。」私は言った。
島田さんは、スーパーマンのメンコを受取って、
「ありがとう。」
そう言った。



それから、35年後、初めて小学校のクラス会が開かれた。
卒業から33年ぶりで、みんな、45歳になっていた。
島田さんは、出席していた。
とても、感じのいい優しそうな女性になっていた。
(平さんは、スナックをやっていて、夜の仕事で来れないとのことだった。)

私は島田さんと、話をした。
「音楽の時間に、島田さんがくれた消しゴム、覚えてる?」
「覚えてるわよ。」と島田さんは笑った。
「あれ、もったいなくて、とうとう使えなくて、ぼくの宝箱に今でもあるよ。」
と私は言った。
「ほんと?うれしいな。私も純がくれたスーパーマンのメンコ。
 封を切らずに宝箱にしまってある。見る度に、純を思い出す。」
「一生、持ってると思う。」と私。
「私も。」と島田さん。

二人とも、ビールのグラスを持っていた。
「じゃあ、消しゴムとメンコのために、乾杯!」
「乾杯!」

二人で微笑みながら、グラスを当てた。




■次回予告■

明日も再投稿をしたいと思います。
平えつ子さん、2人目の親友・黒田笑子さんのお話です。
この3作で、このシリーズは終わります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※連日再投稿作品で申し訳ありません。
 ポチをくださるとうれしいです。

 



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再投稿・ノンフィクション「平えつ子さんの思い出」

昨日も物語ができませんでしたので、以前投稿したものを再投稿します。
私の子供時代のことです。ノンフィクションなので、いろいろ思い出されて、
なつかしい気持ちになりました。読んでくださるとうれしいです。
(1話完結です。)

==============================

小学3年生から4年生になるとき、
クラス替えがあった。
クラスで、席が決まって、私は1班。
一番廊下側の列の前から2番目だった。
みんなもそうだったが、私も班のメンバーの品定めをした。
私の前は、平(たいら)江津子という子で、
着ている物のセンスがよくて、
色が白くて、いちばん美人でステキだと私は思った。

ところが、昼休みになると、
平さんと同じクラスだった男子数名が、
「こいつ、前はみんなからいじめられてたんだぜ。」
「こいつの言うことみんなウソだからな。」
と平さんの悪口を言っていった。
平さんは、泣いてしまった。
でも、すぐ泣き止んで、明るくふるまっていた。

社会の時間、班での作業となった。
そのとき、みんな自己紹介のようなものを始めた。
A子さんは、お父さんが社長だという。
そして、ピアノを習っているという。
すると、平さんも同じことを言った。
お父さんが社長でピアノを習っている。

平さんはお金持ち。
そして、美人。

クラスのマドンナになる要素を2つも持っている平らさんが、
どうしていじめられたりしたのか、私には分からなかった。

でも、やがてその原因の一つが分かった。
算数の時間、平さんは、すごく簡単な計算ができなかった。
国語の音読も、漢字がまるで読めなかった。

そうか。マドンナの要素、勉強ができること、
それを満たしていないんだなと思った。

そのうち、もう一つの原因が分かった。
平さんのお父さんが社長というのも、
ピアノを習っているというのも、
ウソだといううわさが流れた。
平さんは、そのときも泣いた。
でも、すぐ泣き止んで、明るくふるまっていた。



私は、班の中で、となりの女の子と仲よくなり、
二人でしょっちゅう盛り上がっていた。
すると、平さんが後ろを向いて、
私たちの話に入ってくる。
授業中もしょっちゅう後ろを向いて、
話しかけてくる。

担任の先生によく注意されていた。
先生は女の先生だった。

あるとき、平さんの後ろへの振り向きがあまりにも多いので、
先生が、厳しく注意をした。
そのときある男子が、
「先生、平は、純のことが好きなんだよ。だから、後ろ向くんだ。」
と言った。
すると、クラス中の男子が、「そうだ、そうだ…。」とはやし立てた。

先生はそれを制して、
「平さん。これ以上授業中に後ろを向くと、席を替えますよ。」と言った。
「いえ~い。平、せーきがえ!」などの声が起こり、
平さんは、また泣いてしまった。



そんな日の放課後。
平さんは、私のところへ来て、
「加納くん。(←私。)今日私の家に来て、一緒に遊んでくれない?」と言った。
「いいよ。」と私は応えた。
平さんは、「ほんと!」と驚いた顔をして、うれしそうだった。

ランドセルを家に置いて、平さんと約束したところへ行った。
平さんは、ランドセルをしょったまま待っていた。
平さんは、越境通学をしていて、家はすごく遠かった。
近くに誰もクラスの人がいないので、一人で遊ぶしかないとのことだった。

歩きながら、平さんは、
「どうして、『いいよ。』って言ってくれたの?」聞く。
「だって、さそってくれたじゃない。」私は言った。
「そうっか。さそったから、まっすぐに『いいよ。』って言ってくれたんだ…。」
平さんは、そんなことを言った。

やがて、平さんの家に着いた。中に案内された。
そこは、2DKのアパートだった。

「加納くん。ごめんね。お父さんが社長なんて、ウソ。
 私、お父さんいない。
 ピアノもウソ。家にピアノなんてない。
 お母さんは、美容師。ウソついてごめんなさい。」
平さんは、そう言った。

「そうだったんだ。」と私は言った。
「怒らないの?」と平さんが言う。
「腹が立たないもん。怒らない。」と私。
平さんは、私を見つめていた。
「加納くんは、他の男の子たちと違うね。」と平さん。
「わかんない。」と私は言った。



平さんは、一人っ子で、6畳の洋間をもらっていた。
はじめ私たちはトランプなんかで遊んでいたが、
やがて、平さんが言う。
「加納くん。女の子の格好したら、ぜったい似合うと思うんだけど。」
私はドキッとしてしまった。それは、私の念願だったから。
「これ着てみて。」
と、平さんは、自分の箪笥から、可愛いピンクの半袖のワンピースを出してきた。
私は胸がドキドキしてしまった。

上半身、ランニングシャツ1つになって、ワンピースを着た。

「ズボンを脱ぐの恥かしい。」私がそう言うと、
「じゃあ、ズボン脱いで、パンツの上からこれ履いて。」
と、平さんは、体育のブルマーをくれた。
(ああ、それ、もっとドキドキする。)
と思いながら、私はズボンをぬいで、ブルマーを履いた。

「加納くん。髪の毛から耳を出してみて?」
(私は知っていた。耳を出すと私は女の子に見えてしまうことを。)
でも、いう通りにした。

「わあ~。」と平さんは、すごく喜んだ。
「可愛い。加納くん。女の子にしか見えない。」
私も鏡を見た。目を塞ぎたくなるような女の子ぶりだった。

平さんは、ヘアピンで、私の耳の後ろを両側留めてくれた。

「わあ、可愛い。」そう言って、平さんは、私に抱きついて、何度も飛び上がった。

「加納くんのこと『純子』って呼んでいい?あたし、女の子の友達ほしかったから。」
「うん。いい。」
「私のことは、えつ子って呼んで?」
「いいよ。」



それから私たちは、外で「ゴム段」をした。
電信柱にゴムの端を巻いて、一人が持つ。
ゴム段のとき、女子はスカートが邪魔なので、ショーツの中に裾を巻きこむ。
平さんがそうするので、私もそうした。
なんか、すごく女の子になった気分でうれしかった。

それから、私たちは、「純子」「えつ子」と呼び合いながら、
部屋の中で、チェーン・リングをしたり、折り紙をして遊んだ。

遊んでいるとき、心の中が、すっかり女の子になってしまい、
うっかり女言葉が出そうになってしまった。
「やだぁ。」とか「や~ん、悲しい。」とか「あたし」とか。



夕方まであそび、服を着替えて、さよならをした。
「明日、また遊んでくれる?」と平さんは言う。
「いいよ。」と私は言って、
こうして、私たちは、毎日のように遊んでいた。



ある日の放課後、男子の数人が私のところへ来て、
「純。今日みんなで、駄菓子屋へ行こう。」と言った。
「ごめん。約束があるからダメ。」
「誰と?」
「平さんと昨日約束した。」
少し離れたところに、平さんがいた。
「平との約束なんて、どうでもいいだろう。」とB君は言う。
「よくない。先に約束した。」と私。
「けっ。信じらんねえ。女と遊んで楽しいのかよ。」
「そういうことじゃない。先に約束したから守るだけだよ。」と私は言った。

男子たちは、何か捨て台詞を残して、去っていった。



その日、平さんの部屋で、女の子2人(一人は私)、壁にもたれて、
膝を抱えて座っていた。

「純子。どうして私との約束を守ってくれたの?」
「だって、昨日からの約束じゃない。」
「男子から、嫌がらせされるかも知れないよ。」
「そのときは、えつ子を見習う。」
「どういうこと?」
「えつ子は、泣かされても、すぐ元気になって明るくしてた。
 ぼくは、いつも、えつ子のそういうところ、えらいなって思ってた。
 だから、えつ子を見習う。」
私の言葉を聞いた平さんは、目にいっぱい涙を溜めていた。
やがて、私の胸に顔をうずめて泣きはじめた。

「あたし…、そんなふうに言われたことなかった。
 えらい…なんて言われたことなかった。
 そんなふうに思ってくれた人は、純がはじめて。
 いじめられっ子の私が誘ったら、人気者の純は『いいよ。』ってすぐ言ってくれた。
 私のついたウソを、純は、全然おこらなかった。
 純は、いい人過ぎるよ。あたしのことなんてどうでもいいのに…。」平さんはそう言った。

「えつ子は、スタイルがよくて、美人だから、そのうち絶対人気出るよ。」
私は、そっとえつ子を抱いた。



その日、平さんは、明日の約束をしなかった。

次の日、私は男子の嫌がらせを覚悟していたけれど、
それは、なかった。
私が、「今日は、行く。」と言ったら、「おお、そうか。」と言ってみんなが「よし!」って言っていて、私は、拍子抜けしてしまった。



平さんは、その後、女の子2人と仲よしになり、3人でいつも楽しく過ごすようになった。



2年後、卒業式の日。
式が終わって、私が、学校の裏門を出ようとすると、平さんが駆けつけて来た。

「純。ありがとう。私は、3年間、ずっと純が好きだった。」
「それ、告白?」と私は聞いた。
「ずばり、告白。」と平さんはにっこりして、私の頬にキスをしてくれた。



それから、8年後。
平さんは、ファッション雑誌「anan」のファッションモデルになった。

昔の級友が、「anan」に出ているすばらしく綺麗になった平さんを見て、悔しがって言った。
「ちくしょー!こんなことなら、あいつのこと、いじめるんじゃなかった。」
その横で、私は、
「あはは。」と笑った。





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雑感②「どうやって、女装されていますか?」

今日も、物語が書けませんでしたので、
昨日のように、思うことを書きます。

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「雑感②」どうやって女装されていますか?

大学生になって、一人暮らしが出来る方は、
女装をやりたいだけできると思います。
しかし、家族と同居の高校生だったり、
家族と一緒のお父さんだったりする方は、
どうやって女装をするのだろうと考えます。

私の青春時代に比べ、今はずっとましかなとは思います。
まず、女装の場として、カラオケボックスがあります。
店員さんが、飲食物を運んで来た後は、ほとんどプライバシーがあります。

どうやって女装用品を手に入れるかは、
通販のコンビニ受け取りがあるし、
安売り店に行けば、軽いノリで、いろいろ買えるかも知れません。

私の高校生のときは、カラオケがありませんでしたし、
通販というのは、もし注文して、親が開封してしまうことが怖くて、
なかなか利用出来ませんでした。

そこで、どうしたかといいますと、自分で洋装店に行って買いました。
化粧品も、お店で買いました。
もう、勇気の限りをつくして、買いました。
私は、高校生のとき、中学生に見えましたので、
ほんとに恥ずかしかったです。

私は、家族と同居で、自分の部屋がありましたが、
鍵がなく、プライバシーがありませんでした。
例え鍵があっても、女装中に私に電話なんかかかってきたら、
それで、アウトです。
(そのころ、ケータイは、ありませんでした。)

そこで、家族が寝静まってから、
夜中の2時ごろに、そっと買ってきたものを着てみました。
ワンピースなど。
でも、身に着けても、怖くて、すぐに脱いでしまいました。
化粧品は、いくつかあっても、リップをさっと引いてみるだけでした。

私の中学のころは、
家族の留守のとき、母や姉の下着や服を着てみるだけでした。
初めて、口紅を引いてみたときの感激は、忘れられません。
また、姉の、体操着の上とブルマをつけ、
ブラで、胸を作り、
赤いハチマキを着けてみたときの感激も忘れられません。
私は、髪を長めにしていたので、ハチマキをすると、
ほんとに女の子になった気がして、うれしかったです。

こんなチャンスは、1年に数度あるくらいでしたが、
女装をした自分の姿を胸に焼き付け、
次のチャンスまで待ちました。

時代は進んだとはいえ、今も、私の昔の環境と、
さほど変わらない方も、いらっしゃると思います。

誰もが、女装をオープンにできる日が、早く来ないかなあと思います。


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雑感「いろいろ思うこと」

「雑感」

今日は、次の物語を書けませんでしたので、
いろいろ思うことを書きます。

このところ、1つの物語から、次の物語まで、
間をおかずに書いてきました。
こうするには、1つの物語が終わる2日ほど前から、
次の物語を書いて行きます。

しかし、今回は、次の日の物語を書くので精一杯でしたので、
日数の貯金がなく、連続して書けませんでした。

2話、ほとんどエチではない物語が続きましたが、
その前のお話で、さんざん「アクセス不可」を食らってしまいましたので、
セクシーでないお話にしました。

アクセス不可になりますと、その時間にせっかく来てくださった方が、
読めずに行ってしまわれるので、
私は、危ないときは、一日中パソコンのそばにいて、
1時間おきに、記事をチェックしていました。
これは、1日拘束され、とてもやっていられませんでした。

私は、確実にブラック・リストに入っていると思っています。
だから、当分、大人し目なものを書くつもりです。



コメントで、どうやって物語を作っているのかというご質問がありました。
私は、たいてい、
①主人公とその願いを考える。
②その願いをに協力してくれる人を決める。
③敵を考える。また、障害を考える。
④敵をどう克服するかを考える。
⑤ハッピーエンドの光景を考える。

と、こんなふうに考えています。
しかし、この通りに行かないこともあり、
④から、考えることもあります。

私の場合ですが、休むとそれだけいい物が書けるというわけではありません。
いい題材はないかと、感受性をぴりぴりさせている状態でないと、
発想が浮かびません。
休むと、この「ぴりぴり」が鈍ってしまって、かえって書けなくなります。
そんなわけで、なるべく間をおかずに書いています。

お仕事をしながら、書いてらっしゃる方もいらして、
それは、すごいことだと、頭が下がります。
私の場合、それは、絶対できません。

毎回、つたない物を書いていますが、
読んでくださる方に大きな感謝をしています。

これからも、読んでやってくださいませ。
アイデアが枯渇するまで、書いてまいります。

ラック。

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則子になった孝一⑦「なるようになった」最終回

とうとう、えちシーンがほとんどないまま終わります。
こんなことになるとは、私自身想像もしませんでした。
物語が勝手に進んでいきました。
次回は未定ですが、エピローグを書くかもしれません。
最後まで、物語にお付き合いくださり、
ありがとうございました。

===========================

翌日、吉井梅子、鮎川道子、神戸美佐の3人は、それぞれ、
朝のホームルームで、皆の前に立って、頭を下げた。
吉井は、いじめてしまった則子が許してくれて、逆に女子サッカー部を作って、
その部員になったことを告げた。
悪かった心を入れ替えて、1からがんばりたいと言った。

みんなの反応は、好意的だった。

「今日、吉井を散々非難してやろうかと思っていたけど、
 君島と同じサッカー部員になったのなら、それもできない。
 昨日、相当反省しただろうから、せいぜいがんばれよ。」
と男子の一人が言った。
「しかし、君島も心がでかいな。吉井、そこ、感謝してるか。」
「はい。そう言ってくれたとき、涙が出ました。」
と梅子は言った。

鮎川、神戸の二人も、みなの寛容な反応に救われたと言った。

中休み、4人で、1、2年生への勧誘のポスターを作り、
靴箱のある壁に貼った。
そこへ、下條昌司らが来た。
「校長先生から聞いたよ。とうとう女子サッカー部か。
 これは、おもしろくなってきたな。
 グランドは、俺達半分しか使わないから、残り半分は自由に使っていいよ。」
と下條は言った。
「たまには、女子と男子で練習試合やろうぜ。」と後藤が言った。
「それは、まだまだよ。ボールにさわったこともないような子ばかりが来ると思う。」
と則子が言った。

こうして、女子サッカー部が発足した。
1年生と2年生が、8人来た。全部で12人。
みんな則子のサッカーを見ていて、憧れてきた子ばかりだった。

則子は、夜に、高島孝一にメールで、昨日からの成り行きを知らせた。

『孝一から
 うへー。則子は、めちゃやさしいな。
 でも、則子はすごいよ。やっぱ、孝一の心が半分あるんだな。
 オレも、それでいいと思う。
 オレの心にも、
 あいつらへの恨みがたっぷり残ってる。
 でも、あいつらが退学になったり、少年院にでも行かされたりしたら、
 寝覚めが悪いものな。」

「則子から
 ありがとう分かってくれて。
 今日の練習は、ボールをさわらせないで、まず、走りまくったから。
 みんな、今日はよく眠れると思う。

 ところで、孝一。一度会わない。
 あなたと私の将来のこと。
 あたし達どうなっちゃうのか心配じゃない?」

「孝一から
 大いに心配。今までずっといっしょに暮らしてきた、
 本当の家族とはどうなっちゃうのか。
 それ考えて眠れない日があるよ。」

土曜日の午後2時に、二人は、喫茶店で合うことにした。

則子が先に来た。
則子は、孝一が、茶髪になんかしてないかと心配した。

「お待たせ。」
と孝一が来たとき、今までの爽やかな孝一のままだったので、
則子は安心した。
孝一は、則子を見て、
「おお、則子美人じゃん。ツッパリのときと比べ物にならない。」
と言った。

孝一は言った。
「弟の亮太や妹の沙紀にも、愛情湧いちゃったし、
 父さん母さんにも、もうかなり親しんじゃったし、
 だけど、もう女に戻れない。」

「あたしも。健太や美紀に愛情感じてる。
 父さん、母さんにも、絆が出来てきてる。
 かといって、ずーといっしょだった家族と永遠に別れること、できっこない。
 あたしも。それに、女子サッカー始めたから、責任あるし。
 今、私が、いなくなったら、あの3人、ピンチになると思う。」

「則子は、女の子になりたいって祈ってたんだろう。
 オレも、男になりたいって、毎日祈った。
 オレ、もう女の子に戻るなんて考えられない。
 それに、オレ彼女で来ちゃったし。」

「だれ?」
「大瀬梨花。」
「わあ、学年1のマドンナじゃない。
 孝一とは、お似合いだけどね。
 あたしも、ちょっと好きな男子いる。」
「だれ?」
「サッカー部の、下條昌司。まだ、何もしてないよ。」

「アイツはいい。性格めちゃいいからな。お勧めだよ。」
「昌司君と別れるの辛い。」
「オレも、梨花と別れるのつらい。
 いや、別れられない。かなり本気だから。」

「オレ、軽い気持ちで、女の子とチェンジすること考えていたけど、
 これ、大変なことだな。」
「あたしも、今やっと身にしみてる。」

「でもさ、オレ達のチェンジを叶えてくれたの、
 きっと神様みたいな人だろう?
 何か意味があったんだよ。
 実際、ツッパリの則子が、元に戻れた。
 いじめの3人が、救われた。」

「そうね。意味があった。いくつか、解決した。
 だったら、そろそろ元に戻っちゃうのかな。」
「神様は、悪いようにはしないって。
 大丈夫だよ。後は、神様に任そうよ。」
「うん。わかった。」
二人は、そう言い合った。



朝になりぼんやり目覚めたとき、
則子の目に1番に入ってきたのは、
壁に吊るしてある女子高生の制服だった。

「ブレザーが紺色だ。前のクリーム色じゃない!」
則子はいっぺんで目が覚めた。

次に、サッカーのウエアーが吊るしてあった。
紺の上下。そして、ロング・ソックス。
大きなバッグの中に、靴、小道具、が詰まっている。
ああ、サッカー少女だ。
机にサッカーボールが置いてある。

女の子の部屋であるのは、同じ。
則子は飛び起きて、学校かばんの中を見た。
教科書に書いてある名前が、みんな「高島則子」になっている。
鏡だ!
急いで見た。
「よかった。昨日と変わらない女の子だ。」
じゃあ、じゃあ、と思った。
高島家に帰って来たけど、女の子のまま帰ってきたんだ。
わあ~。超理想!

下に下りて行った。
洗面所に妹がいた。
「美沙、悪い、半分使わせて。」
洗面をして、上に上がった。

『今日は、練習試合だ。旭ヶ丘高校と。』
え?旭ヶ丘高校!!
則子は、興奮した。

試合に備えて、スポーツブラをつけた。
試合の用意と勉強の用意。
そして、下に下りて行った。
みんなそろっていた。
「亮太、おはよう、美沙おはよう、お母さんおはよう、お父さんおはよう。
 お母さん、あたし手伝う。」
といって、味噌汁を配り、ご飯をよそって配り、
みんなで、「いただきます。」をする。
則子の行動に、あの日のようには、みんなは驚かない。

ずっと一緒だった家族の中で、自分だけが女の子になったんだ。
則子の心に喜びがこみ上げてきた。

『きっと、孝一の家でも同じことが起こっているだろう。』
と則子は思った。

ああ、学校行ったらどうなっているんだろう。
梅子、道子、美佐の3人は、向こうの学校へ置いてけぼりかなあ。
そう心配しながら、お弁当をもらい、則子は、「行ってきます。」をした。

梅が丘高校の懐かしい表札を見た。
学校のグランドに着くと、今日の試合のために、
女子のサッカー部員たちが、朝練をしている。
20人はいる。
今までなかった女子サッカー部が出来ている。
3人の3年生が、ベンチで話し合っている。

則子は、誰だろうと走って行った。
「ごめん、おそくなっちゃった。」とベンチに駆けつけた。
「おはよう則子。」と3人はいい、
一人が、
「今、今日のポジション考えてるの。」
と則子を見た。則子もその子を見た。
胸が躍った。
「梅子?吉井梅子さんよね。」と言った。
「吉田梅子だって。則子いつも間違えるよ。」という。
その横の一人に、
「鮎川道子さんよね。」と則子。
「鮎沢道子よ。もう、則子の名前覚えられないのには、あきれる。」
と道子は、くすくす笑った。
「神戸(こうべ)美佐さん、よね。」
その一人は、
「もう、やだ。神戸(かんべ)美佐だったら。
 ほんと、則子に何度教えたかわからないよ。」と美佐は笑う。

『ああ、三人がいる。名前が少し違うけど、絶対あの三人。』
則子は、興奮してしまった。

「ね、あたし、勉強どうなんだろう。」
「学年で1番。サッカーはキャプテン。可愛い。学校の女子の憧れの的。
 これ聞いて、満足した。あと3回言ってあげようか?」と梅子。
「うん、1度でいい。何回聞いてもいいけどね。」と則子。

「ねえねえ。三人は、どうして女子サッカーに入ったんだっけ。」
と則子は聞いた。

「その話またするの?何回も話したよ。」と梅子は言い。
「いーい。則子。あたしたち3人は、1年生のとき、いじめっ子で、
 とんでもない悪だったの。
 それを、則子は、ある日、あたしたちを火ような勢いで怒って、
 あたしたちで、女子サッカー部作ろうよって言ってくれたんだよ。

 あたしたち、みんな一人ぼっちで寂しくて、それで、ワルやってたから、
 則子が言ってくれたことが、うれしかった。
 それから2年。今、ここにいるの。則子、今度は、覚えてね。」

「そうか、そうだったよね。あたし、やっと思い出した。」
と則子は、こみ上げる喜びを隠さずにいた。

男子サッカー部から、一人走ってくる。
その人物を見て、則子の胸はさらに躍った。
「今日さ、試合、女子、男子、どっちが先にする?」
とその男子。
下條昌司ではないか。

梅子が答えた。
「上條君。女子が先の方がよくない。やっぱ男子は、しめくくりだから。
 則子、それでいいよね。」

「は?」と則子は、言って、「下條昌司君よね?」と聞いた。
「則子、今日は、特に天然来てるよ。いつもの3倍。」と梅子が言う。
「あははは、そうね。天然入ってても、あたし、今朝は幸せ。
 そのわけは、だーれにも、言えません。」と則子。

「則子、ごたく並べてないで、早く着替えてらっしゃい!」と梅子が言った。
「ハーイ!」と則子は、走っていった。

則子は、走りながら、胸が躍っていた。
「みんな、いる。心配だった人も、いてほしいと思った人も。
 きっと男子には、後藤君も、宮城君も、あの5人みんないる。
 孝一も、いてほしい人がみんなそばにいると思う。
 彼女の、大瀬梨花さんもそばにいる。

 大瀬さんは、きっとマネージャかなんかやってたりしてて。
 神様のような方。ありがとうございます。
 一体どんな仕組みかは、わからないけれど、あなた様は、イケてます。」

則子は、グランドから歩道への段へ、一飛びで乗り、
早朝の道を、誰よりも幸せそうに、走っていた。


<おわり>

■次回予告■
ただ今、思案中です。エピローグにするかも知れません。

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則子になった孝一⑥「則子、奇跡の提案」

今日で、問題が解決されますので、少し長く書きました。
最後まで、お付き合いくだされば、うれしいです。
なお、次回を最終回にする予定です。

===========================

その日の、7時に、加害の3人、その両親と、3人の担任。
則子と母恵子と、則子の担任の佐野、校長、副校長、教務主任、
生活指導主任が集まり、報告と話し合いがもたれた。

吉井梅子は、そのとき一番恐かったのは、校長でも、担任でも、親でもなく、
則子だった。
廊下でにらみ付けられたときの恐さを忘れることができなかった。
則子のいる前で、梅子は、到底ウソはつけないと思っていた。

校長から、「いじめられ記録」に基づき説明があり、
その通りかと問われたとき、梅子は、すべてその通りだと答えた。
あとの二人も同様だった。

校長は、警察に指紋の照合を頼んだ結果、指紋は則子のものであり、
3人が脅し取ったことは、明白であると述べた。
そして、その過程を記録するボイスレコーダーの内容も全員が聞いた。
加害の3人の親にとっては、耳を塞ぎたい内容だった。

3人の親達は、反論の余地もなく、ただ黙って首を垂れていた。

吉井梅子の父親が、恐る恐る手を挙げた。
「あのう、被害者の君島則子さんが、万が一『許す』と言ってくださった場合、
 警察に行かないで済む可能性はあるのでしょうか。」
校長が答えた。
「それは、あります。警察に訴え出ないのですから、警察は何も知りません。
 しかし、校長の私を代表として、学校は、この犯行を知っているのですから、
 学校としての処分はします。重くは退学、軽くは、停学、などです。」

梅子の父は、さらに聞いた。
「警察に行くことになれば、その先はどうなるのでしょうか。」
校長が答えた。
「警察の尋問のあと、書類送検され、
 家庭裁判所が、措置を決めます。
 犯行の内容により、少年院送り、
 自立支援施設、昔の教護院です、そこに送られる。
 また、家庭にいながら指導を受ける保護観察というケースもあると思います。」

校長は、さらに言った。
「何とか、停学程度に収めたかったのですが、
 そうもいかなくなりましてね。吉井梅子さん、説明してくれますか?」

梅子は言った。
「則子さんを脅して、10万円を取りました。
 その10万円を佐野先生と河本先生に、取りあげられました。
 せっかくとった10万円だったのにと悔しい気持ちで3階にきました。
 そこに則子さんがいました。

 私は、すれ違うとき、「へん、お前のせいで。」と則子さんに言ったのです。
 則子さんが、先生に言い付けなかったら、
 お金は、先生に取られなかったという意味でした。

 信じ難いほどの自分本位の言葉でした。
 あたしが脅してあたしが奪ったというのに、
「お前のせいで」というのはとんでもない言葉です。

 その私の言葉に、則子さんは、火のように怒りました。
 則子さんは、私の胸をつかみ、にらみました。
 その則子さんが恐くて、私は、今までした悪いことを、白状しました。

 それを、3年生の人達が、ほとんど集まってきていて、全部聞かれてしまいました。
 私のオシッコを、則子さんに飲ませたことまで、聞かれてしまいました。

 則子さんは、私が、みんなからの攻撃に遭わないよう、3年生みんなに、
 裁きが終わるまで3人には何もしないで、と言ってくれました。
 だから、今日だけは、何もされませんでした。
 でも、明日からは、もう学校へいけません。
 停学にしていただいても、その先も学校へいけません。

 1年生のとき学年で成績が1番で、すごくやさしかった則子さんを、
 私は、妬んで、いじめをし勉強をさせませんでした。
 その結果、ある日則子さんは、
 眉をそり、髪を金髪にして、完全な不良になって登校するようになりました。
 全部、あたしのせいです。
 それから、1年半の間、則子さんは、いつもたった一人で、学校にいました。
 大切な高校生活の半分を、わたしは則子さんから奪ってしまいました。
 お金なら返せるかも知れないけど、則子さんの1年半は返ってきません。

 3年生になって、則子さんは、不良を止め、大変な努力をして、勉強を取り返し、
 髪も黒くして、やっと真面目になろうとして、ついに、学年で3番と言う成績をとりました。
 それなのに、私には、反省の欠片もありませんでした。
 そんな則子さんを、勉強はするなと、また脅し、おまけに10万円を脅しとったのです。

 私は、救いようのないワルです。鬼です。
 学校にいさせてもらおうなんて、とんでもありません。
 ただ一つ、鮎川さんや神戸さんを道連れにしてしまったことが、悔やまれます。

 この2人は、ほとんど悪くないのです。
 私が恐くて、手先になっていただけなのです。
 1年生のときにせしめた12万円も、あたし一人がもらって、
 二人には、たまにアイスクリームをおごってあげる程度でした。

 今度の10万円も、私一人のものにするつもりでした。
 だから、鮎川さんや神戸さんまで、私と同罪になってしまったら、
 私は、二人の将来もめちゃくちゃにしたことになります。
 則子さんの1年半と合わせて、取り返しのつかないことをしました。
 
 則子さん、ごめんなさい。鮎川さん、ごめんなさい、神戸さんごめんなさい。」

梅子は、そこまで言ってデスクの上につっぷして、泣き始めた。

それを聞いて、梅子の母親も、デスクに泣き伏した。
その泣き声は、号泣にかわり、やがて慟哭とも言える声となった。
梅子は、母親の背の上に重なるようにして泣いた。
父親も、片手で顔を覆って、声を出し男泣きに泣いた。

鮎川道子、神戸美佐も泣いた。その両親も泣いた。



みんなが、やっと泣き止み、静寂が訪れた。
校長は、則子に最後の気持ちを聞いた。

則子は、静かに立った。
皆が、則子を一心に見つめていた。
則子は、口を開いた。

「私の気持ちは、家を出たときにもう決まっていました。
 私は、不良となり、1年半の間、友達がいなくて、淋しい思いをしました。
 だから、私は、夜のグランドに行って、走りました。走って、走って、
 気絶するまで、何度も毎日走り続けました。
 走っているときだけは、淋しさから逃れることができたからです。

 こんないい方は、梅子さんに失礼かと思いますが、
 私は、梅子さんも私と同様に、一人ぼっちで、ずっといたのだと思います。
 道子さんと美佐さんと、3人はいつもいっしょでしたが、
 梅子さんの心の中は、
 一人ぼっちの淋しさで、いつも悲しかったのではないかと思うのです。

 さっき、梅子さんご自身がおっしゃっていました。
 『二人は、私が恐くて、手先になっていただけ』だと。
 二人は、私が恐いから、いっしょにいてくれているだけだ。
 別に、二人に好かれているのではない。
 本当は、自分は、一人ぼっちなんだと。

 私は、その悲しさを経験しました。
 だから、今なら、梅子さんを許せるのです。

 梅子さんが、私を引きずり落としてまで、
 トップの成績を取りたかったのは、
 淋しさの裏返しだったのだと思いました。

 今日、3年生のほぼ全員に、梅子さんの口から、
 いじめた内容を言わせてしまいました。
 私は理性を失っていました。
 きっかけは、梅子さんの言葉であっても、
 むごいことをしてしまったと思っています。
 これでは、3人は、明日から学校に来られません。

 私は、それをどう解決すればいいのか。
 3人が、みんなに冷たくされず、ひどいこともされず、
 どうすれば、学校へ来られるようにできるだろうかと。
 そればかり考えました。

 そして、一つだけ、方法を思いつきました。
 私は、サッカーが好きです。
 だから、女子サッカー部を作りたいのです。
 同好会でもいいです。
 そして、私をキャプテンとして、
 梅子さん、道子さん、美佐さんに、是非、
 女子サッカー部員になって欲しいのです。
 
 そうすれば、3年生のみんなは、
 3人を、女子サッカー部員と真先に見ます。
 部員同士の結束は固いので、部員の一人に手を出せなくなります。

 そして、いじめた私といっしょにサッカーをやっていれば、
 みんなは、仲直りしたのだと思うと思います。

 友情で結ばれることがむずかしくても、
 サッカーで結ばれることは、可能だと思います。

 これは、3人に恩を着せるのではなくて、
 女子サッカー部は、私自身の夢であるからです。

 幸い、梅子さんも、道子さんも、美佐さんも、
 成績は上位の人です。
 サッカーが受験に差し支えることは、ないと思います。

 練習は、男子サッカー部のグランドの隅を借りてします。
 校長先生に、女子サッカー部を認めてくださるように
 お願いしたいと思います。

 もちろん、過去のことは不問にし、
 3人には、学校の寛容な処分をお願いいたします。」

則子は、礼をして座った。

だれもが、予想もしなかった則子の言葉だった。

校長は、同席の先生方に、視線を向けた。
どの先生も、「OKだ。」とのサインを目で送っていた。
校長が、やっとほっとした表情を見せた。
そして、梅子に言葉をかけた。

「吉井さん、どうですか。サッカーをやってみますか。」
梅子は、すがるような表情で言った。
「はい。やります。あたしは、則子さんが、男子とサッカーをする姿を見て、
 憧れました。やりたいです。則子さん、ありがとう。」
と梅子は、最後は、則子を見て言った。

道子と美佐も、同じ様に目を輝かせて「やりたい。」と言った。

校長が、則子の母恵子に。
「お母様は、それでよろしいですか。」と聞いた。
「はい。則子の夢でしたから、叶えてやりたいと思います。」と恵子は答えた。

校長は、ほっとしたように笑顔を見せた。
「では、私は、校長として、女子サッカー部を認めます。
 顧問は、そうですね、佐野浩介先生、いかがですか?」
佐野は、
「はい。やらせていただきます。」
と言った。

最後に、校長がしめた。
「これで、一件落着となりました。
 本来なら、吉井梅子さんの学校での処分は、退学でした。
 また、鮎川道子さん、神戸美佐さんは、4週間の停学でした。

 しかし、君島則子さんから、奇跡と思える温かな提案があり、
 私は、感激しました。

 そこで、吉井梅子さんの退学は取り消し、
 その代わり、卒業までの11ヶ月間、学校における保護観察処分とします。
 担任を保護教官とします。
 梅子さんは、毎日、一日の日記を書き、担任に提出します。
 それを、私が見ます。
 また、週に1度、私と面談をします。
 鮎川さん、神戸さんは、3ヶ月の保護観察処分とし、後は、吉井さんと同様です。

 許されるということが、どれだけありがたいことか、
 今3人は十分経験したことと思います。
 校長である私自身も、より人を許せる人間になりたいと思います。
 ご質問がなければ、これで、閉会といたします。」

梅子が、真先に則子のところへ来て、則子に抱きつき、
「ありがとう。ありがとう。あたしサッカーがんばる。」
と言った。
道子も美佐も来て、4人固まって泣いていた。

親達は、床に手を付いて、恵子に何度も頭を下げていった。



外は、夜が更けて、星の綺麗な晩だった。

母との帰り道、則子は聞いた。
「あれで、よかったのかな。」
「最高だったわよ。則子のツッパリ時代も無駄ではなかったのね。
 あの期間がなかったら、今日のような言葉言えなかったと思うわ。」
「明日から、サッカーだ。お母さん、いいでしょう?」
「目隠しでリフティングする娘に、ダメとはいえないでしょう。」
「えへへ。」
則子は、母の腕を抱いた。


つづく

■次回予告■

大きな問題が残っている。
二人の実の家族とはどうなるのか。
二人は、これからも入れ替わったままなのか。
次回、最終回にて、すべてが明らかに。

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 幸せです。




則子になった孝一⑤「則子の怒り炸裂」

もう、えちを忘れました。物語は、今日、次回辺りが佳境です。
読んでくださると、うれしいです。

===========================

則子は、内心ニマッとして、胸のボイス・レコーダーをONにした。

主犯の梅子が早速脅しにきた。
「則子、あんた何よ。あたし達に絶対勉強しないって約束したのに、
 それやぶったね。あんたが、3位を取らなきゃ、あたしが3位だったのよ。」
「あたし、なんにも覚えてないわよ。」
「また、あたしたちと遊ぶ?」
「遊ぶって、なんだっけ?」
「へ。道子言ってやって。」

道子が出てきた。
「トイレの水飲むとか、便所用のモップをしゃぶるとか。」
「何よ、それあたしだけがやらされたんでしょ。
 あんた達は、見て笑ってただけじゃない。」と則子。
また、梅子が言った。
「人間サンドバッグってのもあったわね。
 則子、あたし達に蹴られるのだい好きで、
 もっとやってとよがってたわね。」
「完全ないじめじゃないの。」則子は言った。

「それは、感じ方の違いじゃない?
 それが嫌なら、お金でもいいけど?」
「1年のとき、3万円ずつ4回もゆすったじゃない。
 全部で12万円よ。」と則子。
「今度は、3年生になったから、10万円、一回でいいよ。」
「それで、1年間、あたしに何にもしない?」

「1年間とは言ってない。少しの間は何にもしない。
 だが、勉強だけはゆるせねー。今日からやらせない。」
「1年間何もしないなら払う。パソコン買いたいから、今お金もってるし。」則子。
「今払えるのかよ。よし、特別に2ヶ月何もしないでいてやろう。
 2ヶ月たったら、また払えよ。」

則子は、胸内ポケットから10万円の入った封筒を渡した。
梅子は、思わぬ金が簡単に手に入ったと、ほくそ笑んだのだった。
梅子は、中を改め、ニヤリとして、制服の内ポケットに入れた。」
「もう、行っていい?」則子は聞いた。
「ああ、いいよ。また声かけるからな。」

則子は、体育館を抜け出し、急いで職員室の担任の元へ行った。
担任の佐野浩介は、32歳の頭の切れる頼れる担任だった。
「先生。あたし今、3年生の女子3人に脅されて、10万円を取られました。」
「だれだ?」
「吉井梅子、鮎川道子、神戸美佐の3人です。
 10万円はピン札で、私の指紋が着いています。
 今すぐ、取り上げれば、証拠になります。
 お金は吉井梅子の内ポケットです。」則子は言った。

佐野浩介は、
「よし!」と言った。

佐野は、家庭科のベテラン教師、河本冴子を頼み、
通り道である職員室横の廊下で、体育館からやって来た3人を捕まえた。
「吉井梅子、制服の内ポケットを改めるぞ。」と佐野が言った。
3人は、ひーと顔を引きつらせた。
河本冴子が、吉井梅子の内ポケットから、10万円の封筒を見つけ、取り上げた。

佐野は、3人をにらんで、言った。
「お前ら、わかっているのか。これは、恐喝といって、
 立派な刑事犯罪だ。もし、このお札から、元の持ち主の指紋が見つかったら、
 お前らは、犯罪者だ。後で、呼ぶから学校内で神妙にしていろ。
 場合によって、警察に行くことになるぞ。」

3人は、佐野の言葉に震え上がった。
警察という言葉が、頭の中にがんがんと響いていた。

教室に帰りながら、3人は、まさか、まさか警察なんてありえない。
親がなんとかしてくれる。
お金は、返せばいい。
学校もうまく納めてくれると思いながら、
やや安心をして、3年生のクラスの3階へ来た。
3人は、真ん中の教室であるC組の向こうだった。

進もうとすると、則子が立っていた。
吉井梅子は、則子のそばを通るとき、チラリとうらみがましい目を向けて、
「へん、お前のせいで。」と捨て台詞を口にした。
そのとき、則子に、燃えるような怒りが湧きあがった。
則子は、完全に理性を失った。
ぐいと梅子の胸ぐらをつかんだ。

すごい力だった。
梅子の目の前に、則子の顔があった。
孝一時代、サッカーの県大や全国で、
ライバルと戦うときに見せる気迫や眼光は半端なものではなかった。
それに、1年半のヤンキー時代の恨みも重なった。
則子の燃え上がるような怒りの目が、吉井梅子の両目を完全に威圧していた。
則子は、吉井の胸ぐらを、さらに、ぐいと弾き寄せた。

梅子は、初め薄ら笑いを浮かべていたが、
やがて真顔となり、目に恐怖の色を浮かべた。
そのうち、目に涙を潤ませた。
横にいた道子も美佐も同様におののいて、体をこわばらせた。

梅子は、そのうち体を震わせはじめた。
心の底から、恐いと思い、目をそらせたかったが、それが出来なかった。
梅子は思った。
『自分はどうしてこんな恐い相手をいじめたり出来たんだろう。』
『どうしてこんに恐い相手から、お金を巻き上げることができたんだろう。』
梅子の唇は真っ青になり、恐怖に歯をガチガチと鳴らしていた。

3年生はほぼ全員、集まって来ていた。
後ろの生徒は前の生徒から内容を聞いていた。

「さっき、なんて言った。もう一度言って。」
と則子は言った。
梅子は、涙を流しながら、
「へん。お前のせいで、と言いました。」と蚊の鳴くような声で言った。
「あたしのせいで、どうなったのよ?」と則子は言った。
「先生にお金を取り上げられました。」
「それが、あたしとどう関係があるのよ。」
「あなたを脅してとった10万円です。あなたの10万円です。」

梅子なボロボロと涙を流した。
一時も則子の目から目をそらすことができなかった。

梅子の足はガクガクとなり、立っていられず、膝を折っていた。
それを、則子は腕の力で、梅子を引き付けていた。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」と梅子はくり返した。
「ほかに。何がごめんなさいなのよ。」則子は言った。
「1年生のとき、あなたをいじめて、勉強させませんでした。」
「それで。」
「12万円脅し取りました。」
「ほかに。」
「あなたの体をバットで叩きました。」
「ほかに。」
「トイレの水を飲ませ、あたしのオシッコを飲ませました。」
則子の胸が、だんだん悔しさにあふれてきた。
則子は目に涙を潤ませていた。
「それだけか!」
「ほかにも、いっぱいやりました。」

「あたしが、ヤンキーやった1年半を、どうしてくれるのよ。
 友達も誰もいないで、あたしが毎日楽しかったとでも思ってんの!」
則子は、涙をこぼした。

「『お前のせいで。』なんて言わなければさ、こんなことしなかったわよ。
 あたしにこんなことさせたのは、あんただからね。
 わかってるの!」
「はい。あたしが悪かったです。あたしが馬鹿でした。ごめんなさい。」
梅子は歯の震えで、すでに言葉になっていなかった。

則子は、梅子の胸を離した。
3人は、並んで、則子の前に這いつくばった。
そして、ごめんなさいを、何度もくり返し始めた。

「もう、いいよ。裁くのは、あたしじゃない。
 校長先生なり、警察だからね。」
則子はそう言った。
その後で、則子は、集まっている3年生に大きな声で言った。
「みなさーん。校長先生や、警察が裁くまで、この3人に手を出さないで。
 普通にしていて。お願い。まだ、容疑者の段階だから。」
「ああ、わかった。OKだ。」
というみんなの声が聞こえた。

これで、3人がやったことの一部が、全3年生に知れてしまった。
「お前のせいで。」という吉井梅子の一言で、大きな結果を生んでしまった。
梅子は思った。
則子に「お前のせいで」なんて、どうして言ってしまったのだろう。
脅したのも自分、お金を巻き上げたのも、全部自分だったのに。
なんであんな捨て台詞を口にしたのだろうと、
梅子は、いくら後悔しても後悔し切れなかった。



給食の後、則子は、担任の佐野に、ボイスレコーダを渡した。
佐野は、その録音を聞いて、
「この録音とお札の指紋が君のものと照合すれば、
 これで、決まりだな。」と言った。
則子は、もう一つ、元の則子が書いた「いじめられた記録」を渡した。

佐野はそれを見て、
「ずいぶんひどいことをされたね。
 未成年だからといって、許されるものではないな。
 君島もよく耐えて、復活したな。
 だれもが出来ることではないよ。」
とねぎらってくれた。
則子は、心の中の氷が少し解けていくように思った。


つづく

■次回予告■

いよいよ学校会議室に関係保護者、本人達が集まる。
3人の処分は、どうなるのか、則子は最後の返答をする。

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則子になった孝一④「いじめ退治・準備OK」

一体えち場面は、何時出るんだー!とお叱りを受けそうです。
首を引っ込めながら、健全場面ばっかり書いてます。
どうも、私のは、いじめ退治になっちゃうんです。
読んでくださるとうれしいです。
(明日出かけますので、前日に投稿いたします。)

============================

則子は、夕飯のとき、今日のサッカーのことを嬉しそうに話した。
父の雄三が、
「え?則子は、サッカーできるんだっけ」と言った。
「オレ、則姉のサッカーなんてみたことないよ。」
と弟の健太が言った。
「じゃあ、いいよう。夕飯終わったら、リフティングでも見せて上げる。」
と則子はいった。
「あたし、リフティング3000回はできるな。」
と則子がいったので、
「じゃあ、夕飯終わったら、見せてみろよ。」
と健太が言い、則子は、家族に披露することになった。

庭に、健太と則子が出て、家族が、硝子戸をあけて、見ている。
初め、健太が、軽くリフティングを、30回ほどやって見せた。
「はあ、うまいものだな。」と雄三は感心した。
「はい、パス。」と則子は言った。
健太は、ぽんと則子にボールを蹴った。
それを、見事にすくい、
則子は、ボールをあげて、1回転して、ボールをつないだり、
自由自在に、ボールを操って見せた。

「目隠ししても、30回はできるわよ。」
と則子は言った。
「うそだあ、やってみてよ。」と健太。
則子は母から、タオルをもらい、それで、目隠しした。
そして、リフティングを始めたのである。
「はい、30回。」
と則子は得意げに言った。

「わあ、お姉ちゃん、すごい。」と美紀が言った。
「すげえ、オレそんなの見たことない。
 則姉、ほんとに上手いんだ。」と健太が言った。
則子は、とても得意に思った。



中間テストが1週間後に迫っていた。

則子は、英語のリスニングのために、
母から、ペンシル型のボイスレコーダを買ってもらっていた。
胸に差すことができて、トップがマイクになっていて、
そこをねじることによってON、OFFが出来る。
主に、英語の時間に使った。
先生の範読とリスニングの教材の音声を録音して、
家で、何度もくり返しきいた。

1年半のブランクがさほど影響しない世界史や、化学、物理は、
範囲内をやればいい。
英単語は、500語の遅れ、国語の漢字は、120。
だが、則子は、元則子の能力に驚いた。
英単語は、1度書いただけで覚える。
漢字は、見たけで覚え、空で書ける。
数学は、短期間で、いっぺんに追いついた。

則子は、1週間で、テスト範囲の学習の準備ができた。

テストの日。
則子は、問題が簡単すぎるように思えた。
全部できた。うっかりミスを入れて、9割は出来たと思った。

その3日後、生徒の靴箱の正面に、成績優秀者トップ50名まで発表された。
則子は、第3位、女子の中では、第1位だった。
クラスのみんなが、誉めてくれた。
「ツッパリ時代のブランクがあるのに、よくがんばったね。」
と、女子達は、誉めて、抱きしめてくれた。

則子は、女子2位の吉井梅子、女子3位の鮎川道子、
女子5位の神戸美佐の名を見て、記憶をよみがえらせた。
この3人が、1年のとき自分をいじめた。
妹の美紀は、その3人はもう来ないと言ったが、
則子は、ツッパリをやめた今、また来ることを確信していた。

悪いことをした3人は、このまま許されてはいけない。
それなりの罰を受けなければならない。



家に帰って、総合で3位だったことを家族に告げると、
母の恵子は、また涙を流して喜んだ。
父の雄三も興奮して、
「則子、よくがんばったな。」と目頭を押えた。

そんな、うれしい日の夜。
則子が、部屋で勉強していると、
ケータイにメールの音がした。
友達のいなかった則子は、メールをすることもなく、
ケータイを充電したまま、ケータイがあることも忘れていた。

則子は、ケータイを手に取った。
そして、送り主の名前を見て、
目を見開き、体に旋律を覚えた。
その名は、「高島孝一」。
自分が、則子になる前の自分からだった。
『そうか、元則子は、自分のケータイのアドレス知ってる訳だから…。』

メールをドキドキしながら、開いてみた。

『やあ、則子。どうだい?
 オレの方は楽しくやってる。
 お前の心の半分は、こっちに残ってる。
 孝一っていい奴な。
 オレ感激した。
 イケメンだし、勉強できるし。
 だけど、サッカーには参ったぜ。
 則子の方にいっちゃった。
 で、オレは、下手っぴだから、足が故障したことにして、逃れてる。
 君の方が心配だ。ヤンキーの則子だからな。
 でも、タカシの心も半分そっちなら、もうちゃんとしてるだろうな。
 まずは、こんなとこ。返事くれるとうれしい。
 孝一。』

『孝一へ。
 そうだよね。メルアド知ってるんだし、気が付かなかった。
 ヤンキーは即やめたよ。
 あんたの学力のなさにがっくり来たけど、
 もともと則子は、頭がいい。
 一気に挽回して、今度の期末学年で3位になったよ。
 あたしは、サッカーでなんとか楽しくやってる。

 一つ教えて。今度あたしがいい成績取ったから、
 また、あいつら、あたしをいじめにくるよ。
 あたし、今度はこてんぱんにやっつける。
 孝一さあ、一年半前にいじめられたときの記録とか、
 証拠ない?」

『則子へ。あるよ。
 オレのサイドの引き出しの一番奥に、大学ノートがある。
 それに、全部ある。俺だって、バカじゃないさ。
 蹴られたり抓られたりしたときは、そこの写真をとり、
 必ず医者に行って、診断書もらってる。
 それを、日記の横にはってある。
 3万ずつ、4回にわけてゆすられた。
 そんとき、ATMでおろした残高明細もとって、
 ノートの横に貼ってある。
 警察にもって行けば、有力な証拠になる。
 後一つ、決定的なものがほしいけどね。』

『孝一へ。
 わかった、ありがとう。
 後一つの決定的証拠は、あたしがどうにかする。
 また、メールする。
 中間も終わったから、今度はあいつらを懲らしめることに集中する。
 あたしの家族は、元気?元則子の家族は元気だよ。』
『則子へ。
 元孝一の家族も元気だ。みんな元気だ。
 じゃあ、またな。
 君は頼もしいな。あの3人を懲らしめてくれ。』

則子は、今孝一が共にいる家族のことを思って、胸が痛んだ。
家族に会いたい。その気持ちが、心の奥から強く湧いた。

元則子が作った「いじめられた記録」を読んだ。
前の則子が可哀相で、則子は涙を流した。
同時に、絶対許すもんかと、腸がにえくり返った。

その日、則子は、胸騒ぎがした。
パソコンを買い替えようと用意したピン札の10万円を引き出しから出し、
1枚1枚に自分の指紋をたくさんつけた。
それを封筒に入れ、胸のポケットに入れた。
胸にボイス・レコーダー。充電済み。

昼休み、とうとうやってきた。
窓から、首謀者の吉井梅子が、顔を出した。
「則子、ハーイ。学年3位、おめでとう。
 道子や美佐もおめでとうって言いたいって来てるの。
 ちょっと来て。」
という。
「うん、わかった。今行く。」
則子は言った。

「行かない方がいいよ。」と忠告してくれるクラスメイトもいた。
「大丈夫。」と答えて、
則子が廊下に出ると、いたのは、梅子一人だった。
「後の二人は?」と聞いた。
「うん。体育館にいるの。来て。」
最後の言葉に、梅子は、ドスを利かせていた。

歩きながら、驚いた。
1年のとき背が高かった梅子が、自分より低い。
則子は高校で背が伸びて、162cmになっていた。
梅子は、157cmというところか。

中休み入ってはいけない規則の体育館に入り、
倉庫に入り、鉄の扉をしめた。

子分の道子と美佐がいた。
全員背が低い。
あの頃は、全員自分より背が高かったのに。

『ここで、あたしを脅す気ね。せいぜい脅してみて。昔のあたしとは、違うからね。』
則子は、内心にまっとして、胸のボイス・レコーダーをONにした。


つづく

■次回予告■

則子の計略にまんまとはまるいじめっ子3人。
3人へ、則子の怒り爆発です。

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則子になった孝一③「サッカー・則子の実力」

今日は、もうサッカー一色です。こういうの書くの好きですので、
ついつい乗ってしまいました。物語は終盤に入りました。
読んでくださると、うれしいです。

============================

サッカーができると、うきうきしながら、則子は教室に帰った。
席にすわっていると、なんとなく、クラスメイトが、自分を取り囲んでいる。
やがて、クラス委員をしている佐藤百合という生徒が、恐る恐る話しかけてきた。
「あの…則子、あたし見た。あなたのシュート。感激した。」
周りのみんながうなずいていた。
「オレ、女の子があんなシュートするの見たことない。」と藤井忠男という生徒が言った。

「ごめんね。」と阪井美紀という子が言った。
「昨日からの則子、ちがってたのに。あいさつされて、返事をしただけで、
 話しかけなかった。休み時間も、則子を一人ぼっちにしちゃった。」竹田慧という子が言った。
「則子がツッパッているとき、ただ遊んでいるだけだと思っていたけど、
 きっと、がむしゃらにサッカーやってたんだね。
 あたし、則子がツッパリになった理由知ってるから。」
「まだ、ちょっと則子が怖かったから、話かけられなかったの。
 ごめんね。でも、これから、則子を一人ぼっちにしない。」

 則子は、うれしかった。
 正直、休み時間一人でいるのは、惨めで淋しかったのだ。
 則子は、ふと涙を流した。
「みんな、ありがとう。淋しかったけど、仕方ないことだと思ってた。
 みんなの言葉、うれしい。ありがとう。」
則子は、そう言って、こぼれる涙をふいた。

「サッカーの人達ともお友達になれそうだし。
 今日は、あたしにとって、すごくいい日。
 今日、放課後、サッカー部の練習に参加できるの。」
則子がいうと、
「え?じゃあ、オレ見に行く。部活は2年でおしまいだしさ。」
「あたしも、行く。則子のプレーみたい。」
私も、オレもで、クラスのほとんどが、見に行くといい出した。
則子の学校は、受験校だった。
そこで、3年生で部活を引退する部が多かった。
「うん。大勢が見てくれるとうれしい。
 部の人達もやる気出るんじゃないかな。」
と則子は言った。



待ち遠しかった、放課後になった。

則子が孝一だったときは、サッカー部は強く、全国大会へ行く実力だった。
そこのキャプテンだった孝一は、上手いなんてものではなかった。
ただ、則子の体がどのくらい動くか、それが心配だった。
様子を見ながらやろうと思っていた。

則子は、下はジャージ。上は半袖のTシャツ。
おへそが見えると恥ずかしいので、TシャツをINにした。
両脇の髪をゴムで束ねた。

校庭に行くと、2年生が、
「先輩、女子だから、すね当てと肘のパッド付きのサポーターしてください。」
と言い、則子はそれを着用した。

クラスメイトは、みんな、グランドから少し離れたところに、
横に並んで見ていた。中には、学生カバンの上に腰を下ろしているのもいる。
これは、なんだと、他のクラスの3年生も、注目し始めた。
「則子が、練習に出るのよ。」と、佐藤百合が言った。
「上手いの?」
「昼休み、オーバーヘッドシュート決めたのよ。」
「うへえ。ほんとかよ。ちょっと見て行こうぜ。」
と観客が観客を呼び、いつの間にか、200人近くが集まっていた。

「お、おい、なんだよ。あの見物人はよ。」
背の高い、後藤が昌司に言った。
「多分、君島の人気じゃね。」と昌司は笑いながら言った。
「うへー、オレ、やる気200%。彼女見てるかなあ。」
「3年生、ほぼ全員だよ。」と昌司は言った。
昌司も気づかなかったが、職員室の先生達も、ほとんど見に来ていた。
ツッパリの則子が、普通にもどり、サッカーをやるという。
これは、先生達も見たかったのである。

サッカー部は、準備運動を終え、
3年生対1、2年で、コート半分での練習試合をすることになった。
キーパーは、3年生だが、後藤。
昌司は、ミッド・フィールダーで司令塔。
則子は、左のフォワードだった。

笛がなると、すごい声援が起こった。
則子は、走った。
体が軽い。これなら、いくらでも走れる。
そうか、ツッパリのとき、則子は、どこかで走りこんでいたのだ。
柔軟と筋トレもやっている体だ。
よし!思う存分出来そうだ。

早くも、ボールが来た。
高いボールを、足で軽くゴロに変え、猛烈に走った。
観客の盛り上がる声が聞こえる。
ガードを、簡単に1人、2人抜いた。
そのたびに声援がすごい。
3人抜いて、シュートかとゴールキーパーが出てきたときに、
シュートの体制から、ひゅっと、センターにパスした。
キーパーのいない、ゴールになんなくボールは、転がった。

「うおー!」と観客のすごい声援が起こった。
昌司は、則子のプレーを見て、全身が震えた。
『すごい。どうして、そこまで、出来るんだ。』
その思いは、他の部員も同じだった。
『あの人は、すごい。男以上だ。』と1、2年生も感じていた。

昌司は、則子の実力を出来るだけ見たいと思い、
則子にチャンスボールをどんどん出した。

そのチャンスボールが来た。
ゴールまで、まだ距離があった。
則子は、ボールを少し運び、まだ遠いと思われるところから、
大きく、山なりのシュートを打った。
観客の誰もが、あの距離じゃ無理。キーパーに楽勝で取られてしまう。
則子、判断を誤ったか、と思っていた。
しかし、3年生の部員は一同に、『君島、すげえ。』と思っていた。

楽勝でキャッチできる山なりボールだが、
3年の後藤はわかっていた。
キャッチ・ポジションから、一歩前に出た。
ところが、ボールは、アーチの山を過ぎた頃から、
信じ難い角度で、急降下し始めた。
「もっと前か!」とキーパーの後藤があわてて前に出たが、
ボールは、キーパーの手前でバウンドし、
キーパーの頭を超えて、無人のゴールへ転がって入った。
後藤の読みをはるかに凌ぐ、豪快なドライブ・シュートだった。

「うへえ。」と観客達は、最高に興奮した。
「信じられない角度で落ちたよ。」と言っていた。

3年生は、嬉しさに、6人固まって、喜びあった。
「君島、お前って奴は。」
「どれだけ、テク持ってんだ。」
「オレ、落ちるってわかってたんだぜ。」と後藤。
「めちゃ、興奮したぜ。」
そう言い合った。
則子は、うれしかった。
もう、男女関係なく抱きあった。

観客の数人は言った。
「いいなあ、君島と同じクラスのやつ。」
「ヤンキーかと思っていたけど、あれが本当の君島なんだな。」
「オレ、1年のとき君島好きだった。」
「今日の君島、最高だな。」
「ああ。」

昌司は、最後に、ファンサービスをしようと思った。
ゴール中央が混戦していた。
そこに則子がいた。
ボールが弾かれ、中央の昌司に来た。
昌司は、そこから、山なりの大きなボールを則子に送った。
「君島!」と昌司は叫んだ。
則子は、ゴールを背に、昌司を見ていた。
その山なりボールは若干低く、オーバーヘッドは、むずかしいと思われた。
しかし、則子は、やってきたボールを、一度胸で弾き、
真上に2mほどボールをあげて、
瞬時にキーパーの位置確認、
そこで、オーバーヘッド・シュートを放った。
ボールは、見事にゴールネットを揺らした。

「ついに、見たー!」
「わあーー!」と観客達は飛び上がって喜んだ。

3年生は固まって、則子を讃えた。
「アシスト低すぎたと思ったんだ。
 そしたら、胸で一度ボールを上げるんだもんなあ。
 ほんとに、恐れ入ったよ。」昌司は言った。
「もう、今日は、最高のプレーを見た。満足だ。」
「君島が女子とは思えねえ。」
と言い合った。

昌司は、則子は、ここで止めた方がいいと言った。
初日だから、これ以上は無理だと。

サッカー部員立ちは、観客に向かって、礼をした。
「君島さんは、初日だから、今日はここまでです。」と昌司は大声で言った。
観客達が大きな拍手をした。
「感動した。」
「ありがとう。」などと言葉を残し、去って行った。

先生達は、職員室に歩きながら、
「君島は、もう安心ですね。」
「ええ、君島にとって、長い1年半だったでしょうからね。」
「よかった、とにかくよかった。」
と涙を浮かべている先生もいた。

則子は、部員のみんなを前に、
「ありがとうございました。」
と頭を下げた。同時に涙がこぼれてきた。
「俺達も、最高に楽しかった。ありがとう。」と昌司は言った。
則子のヤンキー時代を知る3年生たちは、目を潤ませていた。
「次の、練習も来てくれる?」と昌司。
「はい。」と則子は、大きな声で言った。

一陣の風が吹き、皆のシャツをはためかせた。


つづく

■次回予告■

中間テストがおわり、好成績をとった則子に、
また、あのいじめの3人が接近。
しかし、則子は、もう昔の則子ではない。
そんなとき、驚く人物からメールが。

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則子になった孝一②「オーバー・ヘッド・シュート」

このお話は、えち系にするつもりでしたが、書いているうち、なんだかスポコン風になってしまい、どうしようかと当惑しています。いずれにしても、読んでくださるとうれしいです。

==============================

旭が丘高校、男子サッカー部のキャプテン3年生の下條昌司は、
体育倉庫の鍵を開け、サッカーボールを出していた。
そのとき、信じられないものを見た。

制服の女子が、一人、猛スピードでサッカーボールに走って行き、
約30m先のゴールへ、
胸のすくような弾丸シュートを決めた。
サッカー学校ナンバー1である下條昌司にも打てないようなシュートだった。
「すげえ。なんだあの女の子は。この学校にあんな子がいるのか。
 髪型からすれば、アイツしかいない。君島則子。
 だが、君島がサッカーをやるなんて、聞いたこともない。
 部活をやる奴なんか、コケにしている女だ。」
下條昌司は、そう考えた。



則子は家に帰り、母に美容院のお金をねだった。
茶髪を止めて、髪にストレート・パーマをかける、と則子が言ったら、
母は、気持ちよくお金をくれた。

長い髪は則子の憧れであったが、
それを、洗う自信がなく、
髪を肩のところまでにした。
ストレート・パーマをかけ、剃ってある眉を隠すように、
前髪を長めにカットしてもらった。
眉も一番いいラインを描いてもらった。
すこし、額をのぞかせると、かなりの美少女である。
則子はうれしくて、胸がキュンとなった。
背が162cmの則子は、脚が長く、抜群のプロポーションをしていた。
「ステキだわ。男子にモテモテよ。」と美容士さんがいった。
「それは、まだまだ、遠い道です。」
と則子は本心で言った。

家に帰ったら、美紀がいたので、
則子は、美紀の部屋へ行った。
美紀は、則子の髪を見て、
「お姉ちゃん、元にもどったのね。よかった。」と言った。
「『戻った』って、初めはこうだったの。なんでツッパリになっちゃったの。」

則子は聞いた。
「お姉ちゃん、覚えてないの。」
「うん。」
「お姉ちゃんは、学年で成績がトップだったんだよ。
 それを妬んでさ、1年のとき、ナンバー2らの連中が、お姉ちゃんをいじめたの。
 そこで、お姉ちゃんは、プッツんと切れちゃって、
 ツッパリになって、勉強を一切しなくなった。
 ツッパリになったお姉ちゃんを、あいつらビビって、
 もう、嫌がらせを止めたってわけ。」

「そうだったんだ。教えてくれて、ありがとう。
 あたし、そいつらが許せない。
 でも、もうツッパらない。
 勉強で、もう一度あいつらの上をいってやる。」
「うん。あいつら一度お姉ちゃんのツッパリ見てるから、
 今、普通になっても、恐くて、二度と悪いことしないよ。」
『そうかな…。』と則子は思った。

その日の夕飯も母の手伝いをし、
則子は、楽しい話題を飛ばし、笑い声があふれる明るい夕食になった。
食器も則子が洗った。
「則子、そこまでしなくてもいいわ。もう、十分。」と母の恵子は言った。
「ううん。このくらい手伝うのが普通だと思う。」
則子はそう言った。

則子は、食器を洗って、テーブルを拭くと、
すぐに自分の部屋に行き、勉強を始めた。
1年の途中から、1年半分の勉強が遅れている。
則子は、1年生の教科書を見つけ、勉強を始めた。

やりながら、驚いた。
すごい理解力だ。
孝一よりすごい。
美紀が言っていた。学年でトップだったと。
「そうか。もう一度学年でトップだ。」
と則子は、気合を入れた。

則子ががんばっていると、
母が、リンゴをむいてもって来てくれた。
「勉強してたの?」と母の恵子。
「うん。1年半サボったから、取り返すの。
 今日の授業、何にもわからなかったから。」則子は言った。
「そう。がんばってね。」恵子はそう言い、また涙ぐんでいた。
「お母さん、ごめんね。この1年半、心配かけちゃった。」
「ううん。則子はきっと戻ってくると思ってた。」
母は、ますます涙ぐんだ。

気が付くと、夜の11時を過ぎていた。
お風呂に入らなくては。
則子になって始めてのお風呂。
則子は緊張した。
首から上が可愛くなって、孝一としての則子への評価は高まっていた。

パジャマと新しいショーツを持って、風呂場に行った。
自分の体なのに、見ちゃいけない気がした。
裸になって、風呂場に入る。
体を簡単に洗う。湯船に入る。
そっと体を見た。
胸がドキンとした。
柔らかい体の感触。
ああ、女の子になったんだなあと、しみじみと思った。

女の子のパジャマを着て、自室に行くときの気分はなんとも言えない。
前の則子は、ズボン型のより、ワンピース型のパジャマを好んでいたようだ。
今日も、それを来て、布団にもぐり込んだ。
少し、イアフォンで、音楽を聞いた。

初めて向かえる女の子としての夜のベッド。
「どうしよう。してみようかな。」と則子は、心で言った。
そっと胸に手を当て、もんでみた。
やわらかく体を走る快感。
そのうち胸の先端が感じることに気が付いた。
そこを刺激すると、ツンツンと頭に電流が走る。

下着をぬらしたくない。
ショーツを取った。
そっと禁断の場所に指を当てた。
ああ…っと思わず声が出そうだった。
もう止められなくなっていた。
声を必死に殺し、則子は、体を走る電流に、体を振るわせた。
すごい…これが女の子の体なんだ…ああ、耐えられない。
やがて、則子は、脚を閉じ、足先まで震わせながら、達した。
『ああ、感動。』
則子の心は満ち足りていた。



翌日、学校へ行き、クラスの席に座っていた。
昨日のように、来る生徒に、「おはよう。」を言っていた。
すると、みんなは、髪を変えた則子を見て、かすかな驚きを見せた。
だが、まだ話かけてくれる生徒はいない。

則子は、よい姿勢で一心に授業を聞いた。
すると、昨日よりわかってきた。
問題は、英語と数学だ。

昼休み。則子はやっぱり一人ぼっちだった。
少し惨めだが、サッカーをやっている男子をそばで見たくて、
一人で校庭に出た。
ゴールを背に、10mくらいのところで見ていた。
5人ほどが、ボールをパスしながらやってくる。
上手なパスだ。
『うらやましい。いっしょにやりたい。』
そう思いながら、則子は見ていた。

5人の中に、下條昌司がいた。
昌司は、昨日と髪型は違うが、則子に気が付いた。
『よし、試してみよう。』と思った。
則子は、ふと、よそ見をした。
昌司は、則子に高いトスを上げた。
ボールが則子の頭上に落ちて行く。

「君島、上だ!」と昌司は叫んだ。
則子は、はっと上を見た。
ボールが落ちてくる。
次に、さっとゴールを確認した。
ゴール前で遊んでいる生徒が数人いたが、
右よりの部分に隙間がある。

落ちるボールに合わせ、則子は背を反らせジャンプした。
ゴールは後ろ。
弓なりに宙に浮かんだ体のお腹の下辺りにボールが落ちてくる。
特上のアシストだ。
則子は、空からくるボールにタイミングを合わせ、
まず右足を振り上げた。
その右足と交差するように、強烈な左足がボールをとらえ、
見事なオーバー・ヘッド・シュートを放った。
『ああ、この感じ、最高!』則子は思った。
ボールはねらい通り、ゴールの右上のコーナーに突き刺さった。
体側の手と右足で受身を取る。

「おお!」と昌司は、思わず握り拳を強く握った。
「すげえ。」といっしょに来ていた、4人が言った。
そのとき、ゴールの周りには、30人ほどいて
偶然、則子のシュートを見た生徒達が、「おおお。」と大拍手をした。
「おれ、パンツ見ちゃった。」と感動する男子もいた。

則子は服についた土を払っていた。
胸の中が、スカッとしていた。
昌司と4人は、則子のところにやってきた。
「君島さん、すごいよ!」と昌司が言った。
「だって、最高のアシストだったもの。」と則子は頬を赤らめて言った。
「君島さん。昨日放課後30mシュートを決めたろ?」
と昌司が言った。

「あれ?見られてたの?」と則子は笑顔で言った。
「すごかったよ。どこでサッカーやってたの?」と昌司。
「ちょっと、地域でね。」と則子はごまかした。
「今のオーバーヘッド、最高だったよ。普通じゃねーよ。」
「完璧だったよ。」
と4人が口々に言った。

「よかったら、今日俺達の部活に参加しないか?
 10人しかいないんだよ。君で11人だ。
 俺達、君に勝てないかも知れない。」と昌司が言った。
「うん、やりたい。いいの?」と則子は目を輝かせた。
「ああ、大歓迎だ。」と昌司と4人はうれしそうに言った。

『やっと友達ができるかも知れない。男子だけど。』
則子は、胸の奥から込み上げてくる嬉しさを感じた。


つづく

  ■次回予告■

  サッカーで人望を得る則子。
  則子を昔いじめた3人と対面。
  さあ、則子はどう出るか。そして、
  思いもしない人物からメールが。

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則子になった孝一①「ああ、女になってる!」

前から一度は書きたかった「スワップ物」に初挑戦してみました。
書きはじめてみると、ものすごくむずかしいことがわかりました。
物語を作れるかどうかわからないのですが、がんばります。
読んでくださると、うれしいです。

===========================

「則子になった孝一」

朝、目覚めてみると、何かがちがう。
いや、何かが…なんてものではなく、
全部が違う。

オレは別人になったのか。

初めに目に入ったのは、壁に吊るしてある女子高生の制服。
え?
ここは、女の部屋だ。
自分は、ベッドの上。
かぶっている布団は、花柄の模様、腕を出して見ると、
パジャマが、女の柄だ。
布団をめくってみると、ワンピース型のパジャマの裾がまくれて、
2本のなまめかしい脚が目に入った。
わあ、女の脚だ。
綺麗な長い脚だ、ととっさに思った。
胸。ある。感激!
ショーツの中。ない!
鏡を見れば、きっと女になったオレが映っていそうだ。

真島孝一は、高校3年。
クラスで一番女の子に持てる男子生徒だった。
サッカーは、学校でナンバー1。
ハンサム。身長178cm。
やさしい。いい奴。
勉強、学年で5番以内。
だが、心の奥の孝一の願望を誰も知らなかった。
孝一は、女の子になりたかったのだ。

「どうか、目覚めたら女の子になっていますように。」
そう何年祈って来ただろうか。

その念願がついに叶ったみたいだ。
多分だけど、ヤッター。
オレは、いや、あたしは女の子になったの!
いや~ん、サイコー!
神様、ありがとう。

と、神様にお礼を言ったまでは、よかったが、
次々と、困難があることに気が付いた。
今までの自分が、そのままの環境で女になったのではない。
どこか、知らないところの女の子になったようだ。
まず、自分の名前を知らない。
家族の名前を知らない。
どこの学校へ行き、何年何組かも知らない。
友達が誰かも知らない。

とにかく自分の名前くらい調べなくちゃ。
孝一は、起きて、学生カバンのなかの教科書を見た。
君島則子。
『「のりこ」だろうな。「そくこ」のはずない。』

則子(以下則子)は、それから、学校名や、クラスを調べ、
出来るだけのことを調べ、
自分の顔を見ることに気が付いたのは、10分も後だった。
部屋にある鏡を見た。
「はあ~?」
と則子は、口をポカンと開けた。
顔は、すごい美人のようだが、眉毛がない。
ヤンキーの姉ちゃんだ。
あたしは、不良かあ?
長い毛を茶髪にし、ちりちりにカールをかけ、ライオンのようだ。
いやだ、そんなの。
女になったからには、クラスのマドンナになりたかった。

今日は、すぐストレートパーマをかけて、髪を黒に染めてもらおう。
可愛い前髪も作ってもらおう。

まずは、歯磨き。
とにかく、下に行かねば。
家族に会うのが恐い。

妹に会った。
「おはよう、美紀。」と言った。
え?と則子は思った。何で妹の名前を知ってるの?
「美紀、ごめん、あたしに半分使わせて。」
と洗面のところで言った。
(女言葉が、ナチュラルに出てくる。どうなってるの?)

ブラを着けて、感動。
制服を着て、感動。
スカートを短くするために、折ったところに折れ目ができている。
則子は、そんなの嫌だった。
普通の長さにして、履いた。それでも、ミニ。
ブラウス、リボン。上着。
ああ、女子高生だ!

そして、キッチンへ降りて行く。
「お父さん、お早う。健太、お早う。お母さん、お早う、あたし手伝う。」
そう言って、則子は、母がもっている味噌汁のお盆をとって、
みんなに配った。
みんなのご飯をついだ。
茶碗を見て、誰のだかわかる。
不思議。まあ、いいか、と思いながら、せっせと母を手伝った。
それが、孝一が思い描いてきた、あたり前の女の子の姿だった。

そのとき、家族みんなが、ぽかんと口を開けて則子を見ていたことに、
則子は気が付かなかった。

席についたとき、則子は初めて、みんなの視線に気が付いた。
「え?何?あたし、どこか変?」と則子は言った。
「則姉(のりねえ)さ、めちゃくちゃ変だよ、今朝。」
と小学6年生の健太が言った。
「どこが?」と則子。
「だって、今まで、朝のあいさつなんかしたことない。
 朝からふくれっ面。
 お父さんは、オヤジ、おかあさんは、オフクロって呼んでたし。
 おまけにお母さんの手伝いするなんて、これ、雪じゃない、アラレが降っちゃうよ。」

則子は悟った。昨日までの則子は、そういう子だったのだ。

「ああ…、それは…あたし、ツッパるの止めたの。
 普通の女の子になりたいの。
 普通に勉強して、普通に遊んで、みんなと話して、家族といる時間大切にしたい…。」
則子は言った。
見ると、母の恵子が涙ぐんでいた。
父の雄三も込み上げて来る思いを抑えているようだった。
美紀と健太は、則子を見つめていた。

うふふ…と則子は、作り笑いをした。

「まあ、せいぜい長続きしますように。」
と、場を救うように、中2の美紀が言った。
「こら。あたし、本気よ。」
言いながら、則子が笑った。

君島家に新しい風が吹いた朝だった。



さあ、学校かあ。
五月の気持ちのいい日だった。

自然に体が動き、電車を乗り換え、学校へ歩いて行く。
則子は、前の則子の大切な記憶が残っているのだろうと結論づけた。

旭ガ丘高等学校と門に書かれている。
男子生徒の姿がある。
『共学かあ。』と思った。

教室まで、自然に体が動く。
則子は、会う人会う人に「おはよう」と言い続けてきた。
教室は3年C組だった。
自分の席もわかる。

則子は、自分はツッパリグループの一員かも知れないと思っていたが、
どうも一匹狼で、学校にはそんなグループは無さそうだった。
仲間らしいのが誰も来ないし、どこにもいない。

則子は、自分の席に着いて、きちんと座り、
来るクラスメイト全員に「おはよう」を言い続けた。
今朝の家族の反応と同じ。
みんな、信じられない顔をして、「おはよう」と言ってくる。
則子は、だんだん、みんなの驚く顔を見るのが楽しくなって来ていた。

クラスにみんなが登校してきているのに、則子のそばに誰も来ない。
『そうなんだ。則子には、友達がいない。』
則子は気がついた。
まず、今日は、自分からは、誰かを求めて行くまいと思った。

1日勉強してみて、
則子の学力のなさに呆れた。
一体、元の孝一の何が自分に残っていて、何を置いてきたか、
それを、知りたかった。
学力は、どうやら置いてきたようだ。

その日の授業が終わり、部活に入っていない則子は、
校門への道を一人で歩いていた。
すると、サッカーボールが1つ、20mほど向こうの校庭に転がっていた。
その30mほど先にサッカーゴールがある。
則子は、無性にそのボールを蹴りたくなった。
カバンを置き、則子は、ボールに向かって一心に走った。
そして、蹴った。
ボールは、唸りをあげ、ものすごい勢いでゴールの中に飛び込んでいった。

「そうか。サッカーは、持ってきたんだ。」
則子は、うれしさに、強く指を組み、空を仰いだ。


つづく

■次回予告■

弾丸シュートを、誰かに見られていた。
美少女になる則子。懸命に勉強に取り組む。

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スーパー洋子・出版社の巻(後編)「洋子・激怒の岩崎と対面」

この後編で終わりです。もっと長く引きたかったのですが、
出来ませんでした。読んでくださるとうれしいです。

===========================

「洋子さん。遊んでいる暇はないわよ。」
と百合子が来た。
「終わりました。」と洋子。
「うそ!1000ページよ。」
「はい、でも、終わりました。
 校正の理由書も、作りました。」
洋子は言った。

百合子は、キツネにつままれたような顔をして、
洋子の机の上の原稿を数ページ見た。
「なによ。」と百合子は真っ青になった。
「どのページも、赤と青の線だらけじゃない。
 世界の岩崎芳郎先生の作品よ。
 字句校正ならともかく、
 青鉛筆で、先生の表現まで校正を入れているじゃない。
 こんなの見せたら、先生は、立腹どころか、激怒なさるわ。
 ねえ、坂田君。何か言って。」と百合子。

「洋子先輩ほどの校正を、ぼくは逆立ちしてもできません。
 ぼくは、先輩の足元にも及びませんから、
 先輩を信じるのみです。」
坂田は、そう言った。

百合子は、自分でも洋子の校正を見たが、さっぱりわからなかった。
岩崎芳郎ならわかるのかも知れないと思って、
洋子の校正を、そのまま、岩崎に送った。

心配した通り、岩崎から、烈火のごとくお叱りの電話がかかった。
そして、第1校正者から第3校正者、3人がすぐに岩崎家に来るように言われた。

3人は、岩崎家の応接間に通された。
そこに、低い長テーブルがあり、3人は、洋子を真ん中にして、ソファーに並んだ。
周りは、全て本棚で、本で満たされていた。
書生と思える学生さんが、2人いて、お茶を入れてくれた。
百合子は、カチンカチンになっていた。

岩崎は、和服でやってきて、3人に向かって座った。
ボンと、洋子のやった校正を机に置いた。
「私は、いままで、これほどの校正をされたことはない。
 それだけ、自分の文章に責任をもって書いているつもりだ。
 この校正を主にしたのは、誰だね。」と聞いた。

百合子が答えた。
「は、はい。第1校正を、隣におります、倉田洋子がいたしました。
 彼女は、わが社でもっとも優れた校正者ですので、
 第2、第3の校正者である、私や、その隣の坂田は、ほとんど見ておりません。」

「では、聞こう。第一ページの「衒学者」にルビをふれとあるが、その理由は。」
洋子が答えた。
「はい、校正では、一般の人の6割が読めないと思われる漢字には、
 ルビをふるか、ひらがなで書くことをお勧めしています。」

「では、その6割が読めないと、どうしてわかる。君の勘なのかね。」
「違います。国立国語研究所が、5年に一度行う調査の結果を元にしています。
 『どの漢字を、どれだけの人が読めるか』というデータをもとにしました。」

「『衒学者』は、何%かね。」
「17%の人が読め、意味もわかる人は、5%です。」
「私は、ルビは好かん。その漢字をひらがなにしたのでは、
 文のもつ美観が損なわれる。」

「先生は、文の美観を最優先され、読者が、読めないし、意味もわからなくても、
 それで、よしとなさるのでしょうか。読みたい人は、自分で調べなさいと。
 大方の人は、読めない漢字があったとき、それを飛ばして読みます。
 国語辞典ならまだしも、漢和辞典を使ってでも調べる人は、
 希ではないでしょうか。
 しかし、先生がそういうお考えでしたら、
 私が、『ルビ』と指摘したところは、すべてお忘れください。」

横で、百合子は、冷や汗をかいていた。
洋子が、岩崎芳郎に食ってかかっている。
坂田は、うきうきとしていた。
校正者として一歩も引かない洋子に、胸のすく思いでいた。

岩崎は、憮然としていた。
「では、次に聞くが、君が青線を引いてあるところは、私の表現に関する部分だ。
 校正者が、表現に立ち入っていいものかね。」

「ですから、赤ではなく青で記してあります。
 その青は、先生が過去に1度以上お使いになった表現です。
 読者は、素晴らしい表現に出会ったとき、
 心の中にいつまでも、忘れずにいるものです。
 その表現が、他の作品でも使われていたとき、読者はがっかりすると思います。
 そういう意味で、先生が過去に1度以上使われている表現に青線を引きました。
 先生は、例えば、「銀色の目をした猫」という表現を、他の作品の中で、
 26回も使ってらっしゃいます。」

岩崎は、少し驚きの色を見せ、書生2人を呼んだ。
「確かめてみようじゃないか。」
岩崎がそう言った。
洋子はこのとき、600ページからなる、「校正の理由書」を出した。
「これを参考に、お探しください。」
そこには、同じ表現が使われている本の名と、ページ数と行数が書かれていた。

書生は、それを見ながら、岩崎の後ろに並んでいる本を一つ一つ調べた。
そして、「銀色の目をした猫」が、26回使われていることを確認した。

岩崎は、しばらく何か考えながら、やがて言った。
「『銀色の目をした猫』を26回も使っていたとは、思わなかった。
 これは、恥ずかしいことだ。
 すると、何か、君が、青線を入れたところは、全て、過去に使った表現なのか。」
「はい、そうです。」
「君は、どうやって数えたのかね。私には到底できないことだ。」
「先生の作品48冊を、何度も読み、よい表現を短冊に書き出し、
 同じ表現をまとめ、整理しました。」
(それは、ウソだと坂田は思った。先輩は、全部頭の中でやった。)

「その面倒な作業を、君はやったというのか。」
「はい。たまたま、先生の他の作品を読みますうち、
 これは、過去に読んだ表現ではないかと思い、校正者の努めとして、
 他の作品についても調べました。」

「そして、この約600ページはありそうな理由書を作ったのかね。」
「はい。これがないと、探せませんので。」

「さっき少し見せてもらったのだが、これは、只の理由書ではなく、
 私のこれまでの48冊の全文学的表現が網羅されていた。
 しかも、あいうえお順に並べられている。つまり、私が、今まで使った
 表現かどうか、使ったとすれば、どの本の、どこで使ったか、
 簡単に探せる辞典になっている。」
「はい。どうせ作るならと思いました。」

「それに、君は、もう一つ、物語の中で、未完で終わっているエピソードが、
 いくつかあると指摘している。
 君なら、48巻全部について、それが言えそうだな。」
「はい。全部言えます。とりあえず、今度の作品についてだけ、意見書を添えました。」

岩崎は、着物の袖に両手を入れて、しばらく考えていた。
そして、顔を上げたときは、表情が穏やかになっていた。

「いやあ、これは、驚きというか感激だ。
 ここまでの校正をやってもらえているとは、夢にも思わなかった。
 倉田さんが作ってくださった「校正の理由書」は、私がいただいてもいいものかな。」
「はい。先生の原稿と共にあるものですから。」
洋子は言った。

「それは、ありがたい。600ページほどある理由書というより辞典。
 これほどのものを作ってくれる人など、過去にも先にもいないだろう。
 我家の書生が10人で1年かかっても作れないものです。
 私は、この理由書をいや辞典を宝のように大切にし、座右において、
 これから物を書くとき、同じ表現を使っていないか、調べながら書くでしょう。
 ありがたいことです。

 また、未完にしたままで物語を終わらせたところは、
 すべて、解決させて、終わらせます。
 その私の不備を、今まで、言ってくれる人がいなかった。
 少しえらくなり過ぎたのかも知れない。
 それを、指摘してくださったことも感謝に耐えません。
 
 ルビについても、倉田さんの考えが正しい。
 さっき、私はついむきになってしまったが、
 私だって、全ての言葉を読んで欲しいのです。

 何から何まで、いきとどき、作家への思いやりに満ちている。
 今後、私は、三栄出版社さんには、全幅の信頼を置きます。
 今後も、出版をお願いすることもあるかと思います。
 
 ここまでのことを、してくださっているとも知らず、
 腹を立て、3人の方を、呼びつけたことを、恥ずかしく思うばかりです。
 本来、私が伺うべきでした。その非礼をお詫びいたします。
 申し訳ありませんでした。
 そして、ありがとうございました。」
そう言って、岩崎は、深く頭を下げた。

百合子も坂田も、夢見る思いだった。

岩崎の家を出たとき、
百合子は、洋子を抱きしめた。
「もう、洋子ちゃん。相手は、あの岩崎芳郎よ。
 先生があれだけ感謝し、頭を下げてくれるなんて。
 先生の原稿が、今後来るかも知れないわ。
 大手柄なんてものじゃないわ。
 早く社に帰ってみんなに言いたい。」

「洋子先輩は、ほんとにすごい人です。
 今日ぼくは、大興奮して聞いていました。
 今でも、夢を見ているようです。」
と坂田も言った。

洋子は密かに思った。
ずっとスーパーでいたいけど、
そうではないところが、辛いなあ…。

『でも、まあ、いいか。』
とポジティブになるところが、
洋子のいいところだった。

ピンチのときは、きっとスーパーになるだろう。


<おわり>

     ■次回は、未定です。無念。■


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スーパー洋子・出版社の巻(前編)「相手は天下の岩崎芳郎」

「スーパー洋子・出版社の巻・<前編>「相手は天下の岩崎芳郎」

スーパー洋子の素性は、倉田洋次の勤める出版社の校正部員です。
校正部のお話は、3話書きましたが、新作を書きました。
前・後編の2回で掲載します。
読んでくださると、うれしいです。

=========================

ここは、倉田洋次のいる三栄出版社、校正部。

「ああ、どうしよう。どうしよう。
 大変なことが起きちゃったの。」
と百合子は、分厚い原稿を持って、部にやってきた。

「どうしたんですか。」とそばの人が聞くと、
「とんだ方からの原稿が来ちゃったのよ。」と百合子。
「といいますと。」
「誰から原稿が来たと思う?」と百合子。
「すごい人?」
「そう。今日本でノーベル文学賞にもっとも近いと言われる岩崎芳郎さんの原稿なのよ。」
と百合子が言うと、みんなは、ひえーと声をあげて身を引いた。

「また、なんでそんなすごい人の原稿が、うちに来たんですか?」

「それが、前の出版社と喧嘩をしたらしく、
 やぶれかぶれに、うちに来たらしいの。
 A4で、1000ページなのよ。1000ページ。
 第3校正は、坂田君、第2校正は私、さて、第1校正は誰がいいかしら。」
と百合子がいうと、みんな、百合子から目をそらし、
自分のデスクに向かってしまった。

そのとき、洋次は、まったく別のことを考えていた。
というのは、またお腹がいたくなって来ていた。
これは、いつも不吉な兆しなのである。
ああ、トイレに行きたいと思って、前を向いていたのは、
洋次、一人であった。

「倉田君。あなたがいたわ。
 ごくたまにスーパーパワーが出るじゃない?
 今度も窮地に立てば出るかもしれないわ。」
そう言って、百合子は、ドンと高さ10センチほどある原稿を、
洋次のデスクの上に置いた。
「え?何?これなんすか?」
と洋次は、間の抜けた声を上げた。

「それを、校正すればいいだけのことよ。」
と百合子が言う。
「分厚いですよお。」と洋次は言った。
「100ページずつになってるから、
 出来たものからあたしに回して。」
と百合子。

洋次は、作者名を見て、ウソかと思った。
「岩崎芳郎…ええ?あの?あの岩崎芳郎ですかあ。」
と洋次は声を上げた。
「そうよ。」と百合子は、おもしろそうにいう。
「これ、いじめじゃありませんかあ。」
と洋次は言って、お腹が痛くなり、トイレに行った。

個室にしゃがみ、神様に祈った。
ああ、出たときにスーパー洋子になっていますように。

祈りとは通ずるものらしく、
個室を出たとき、そこは、女子トイレだった。
「わあ、やった!」と思い、鏡を見てみると、
いつもの童顔。まるで高校生。
可愛い前髪を、洋子は、ふーと息で飛ばした。

洋子は意気揚々と帰ってきた。
座敷わらしのように、社のみんなは、洋子を見ても、
前からいる社員のように思っている。

洋子は、洋次のデスクに座った。
原稿を前にして、どうもやる気が起きなかった。
今をときめく世界の作家・岩崎芳郎の本をまだ一冊も読んだことがない。
上の図書室でも行って、読んでくるかと席を立った。

百合子が見ていて、
「洋子ちゃん、逃げる気ね。だめよ。」と言う。
「あの、上で先生のご本を見てみようと思って。」と洋子。
「1時間だけよ。」
「先生の本、全部ありますか。」
「あるわよ。」

洋子は、図書室で、岩崎芳郎の著書全48巻を、
20分で全部読み、文章を全部暗記した。
「ふーん、天下の岩崎芳郎でも、問題を未解決のまま終わらせているものが、
 いっぱいあるではないか。きっちり終わらせてよね。」
と独り事を言った。

20分で帰ってきたとき、
隣の席の坂田郁夫が、
「何かおもしろいのありましたか。」と聞く。
坂田郁夫は、まだ2年目の新人だが、IQ180、
T大文学部を主席で出た、超秀才。
今や、校正部No.1の実力で、第3校正を任されている。

「おもしろいんだけどさ、いろんな人物の問題が未完のまま、
 本が終わっちゃうの。
 あの件どうなったの?って聞きたくなっちゃう。
 読者は、あれで納得して来たのかしら。
 それが、48巻全てその調子なのよ。」
洋子は言った。

「え?先輩。まさか、あの時間で、48巻読んじゃったんですか?」
「坂田君だって、速読の中級だから読めるでしょう。」
「まさか、20分じゃ、無理ですよ。
 でも、さっき先輩がおっしゃったこと言えてます。
 私も、同感です。あの先生の作品、
 未完で終わらせているエピソードが多いんです。
 読者がどうして、文句をいわないのか、不思議に思っていました。
 言わば『岩崎ワールド』みたいなのがあって、ファンは心酔してます。
 頂点に立つ人だから、誰もケチをつけられないんですよ。」

坂田は、そのとき、洋子がスーパーモードであることを確信していた。

「洋子先輩。この際、校正で、そういうところガツンと指摘してやりましょうよ。
 相手が、どれだけえらかろうが、関係ありませんよ。」
坂田は言った。

「うん、そうよね。」と洋子は言った。
洋子は続けて言った。
「それとね、あの先生、同じ表現を何度も使うの。
 猫の目の表現をするのに、26回も同じ表現を使ってた。
 48巻通じてね。それって、みっともなくない?」
「みっともないです。でも、先輩、まさか48巻の文が全部頭に入っているとか。」
「頭に入った文を、今、同表現をまとめて、あいうえお順にしているところ。」
「先輩、それ、大きな声で言わない方がいいですよ。人間扱いされなくなります。」
「そうね。」
と洋子は、うひひと笑った。



洋子はしばらくぼーとしていて、
「さあ、やるか。」と気合を入れた。
洋子は、赤と青の鉛筆を持ち、
赤は、直すべきところ。青は、直した方がいいと思われるところに分けて、
作業を始めた。
校正をしながら、パソコンで、
校正の訳を書いた「校正の理由書」を書いていた。

手書きの赤、青を入れるため、
さすがの洋子も、1000ページに2時間かかった。
「校正の理由書」の方は、今回の表現に限らず、
岩崎が過去に使った表現を、全48巻から抜き出し、
あいうえお順に並べ、その表現を、
過去のどの作品のどこで使ったかが一目でわかるようにした。
全部で、600ページの大作。

「先輩、神業ですね。信じられない速さです。
 理由書もただの理由書じゃないみたいですね?」
と隣の坂田が言ってきた。
その坂田も、みんなから、信じられない速さと言われている。

「うん。どうせなら岩崎芳郎さんに役に立つもの作ろうと思って、
 がんばっちゃったの。」

2時間で仕上げ、洋子は、また、引き出しのゴム人形を戦わせ遊んでいた。


つづく

■次回予告■

洋子の校正を見て、かんかんに怒る岩崎芳郎。
はたして、洋子は説得できるのか。


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海斗と晴美②「海斗のカムアウト」最終回

切れるところが見つからなくて、後半を一挙投稿します。
少し、長いのですが、読んでくださるとうれしいです。

==========================

「あたし、性同一性障害なんだ。」と海斗は言った。
「そうだと思うよ。」と晴美は言った。
「5年生の初めに診断が降りて、ホルモン治療ももう2年になる。
 胸もBカップくらいになってるの。
 お尻も大きくなってるし、もうすぐ、いろんなところを隠せなくなる。」
「GIDの診断があったら、女子生徒として学校行けるんじゃない?」
「うん。でも、みんながGIDを分かってくれるかって心配なの。
 それに、女子とうまくやっていけるか自信がないの。」
海斗はそう言った。
晴美には、その気持ちが、よく分かった。

「ホルモンって、長くやってると後戻りできないんでしょう?」と晴美は聞いた。
「うん。できない。だから、あたしは、女として生きていくしかないの。」
「自信なんて、何もしなければ、つかないよ。
 女の子宣言して、女子とどんどんお話したり、遊んだりした方がいいと思う。
 カムアウトして、クラスの全員が引いちゃっても、ぼくがいつもそばにいるよ。」
「ほんと?」と海斗は、晴美を見て、目を潤ませた。
「うん。どんなことになっても、ぼくは、春海の味方だよ。」
「ありがとう。」と春海は涙を流した。

「あたし、今日両親と相談して、カムアウトするかどうか決める。」
と春海は言った。
「春海は、一人っ子?」
「うん。そう。」

晴美は、その日、春海から、いろんな女の子の服を着せてもらって、
最高に幸せな時間を過ごした。
春海が言うには、晴美は女の子に見えるそうだった。
晴美自身も、髪がもう少し長ければ、女の子だなあと思った。



その夜、晴美の家の方に電話がかかった。
母がとり、
「晴美、ハルミさんって女の子からよ。」と言った。
母が「女の子」と言ったので、晴美は、にまっと笑った。
「はい。春海?」と晴美は言った。
「今日、5時ごろ、両親と学校へいったの。
 そして、担任の坂井先生と、校長先生に、
 女の子としてカムアウトしたい…って話したの。
 そして、明日から、女の子で通うの。
 女子の制服も買った。
 美容院へも行って、完全な女の子カットにしてもらった。
 晴美が励ましてくれたから、勇気が出たの。
 いろいろありがとう。」
「そう、それはよかった。大丈夫。ぼくは絶対の味方だから。」
「ありがとう。」
春海は電話を切った。



春海にとっても、晴美にとっても、眠れない夜を過ごした。
『みんな、どんな反応するだろう…。
 みんな明るく受け止めてくれたらいいあ。』と晴美は願った。
今のクラスは、明るくて、みんないい人だ。
きっと大丈夫な気がする。
晴美はそう思った。

春海は、祈るのみだった。
トイレも、更衣室も女子になる。
女子が受け入れてくれないと、かなり辛いことになってしまう。
でも、晴美がいうように、いつかは勇気を出して行動に移さないと、
自信なんて生まれない。
それに、女を隠して学校生活をすることは、もう限界だ。



次の日の朝になった。
学校のショート・ホームルームの時間に、立原海斗の席は空いていた。
やがて、担任の坂田則夫と、女子の制服を着た、立原海斗が入ってきた。
スカートであり、首のネクタイの代わりに、ふっさりしたリボンだった。
そして、海斗は、女の子風にステキな髪型に変えていた。
みんなが、わあーと反応した。

担任の坂田則夫は、まだ20歳代の先生だが、
とても知性的で、話が上手だった。
坂田は、性同一性障害がどういうものであるか説明した。
そのときこんなことをした。
「みなさん、少し目をつぶってみてください。」
みんなが目をつぶった。
「自分が、男であるか、女であるか、自分でどちらかに思っていますね。
 ここで、想像してください。
 目を開けたとき、自分の性の反対の性の体をしていたら、どうでしょう。
 目をつぶって、例えば、自分が男だと思っている人を例にあげます。
 その人が、目を開けてみて、もし女性の体をしていたら、
 どっちを信じますか。体の性を信じて、明日から女として生きていきますか。
 それとも、心で思った性を信じて、例え体が女でも、あくまで、自分は男だと
 心で思った方を信じますか。
 心で思った性は、変えられないと思う人、手を挙げて。」

ほぼ全員が手を挙げた。
坂田は、続けた。
「では、目を開けてください。
 目を閉じて、心の性と体の性がちがっているというのは、
 今、仮にやってみたことです。
 でも、ここにいる立原海斗さんは、実際にそのように生まれてきたのです。
 心は、女の子として、体は男の子としてです。
 その人の性を決めるのは、心です。
 だから、立原さんは、これから女子として生きていきます。
 だから、服装も女子です。当然、女子トイレをつかい、女子更衣室を使います。
 立原さんは、これから、立原春海と名前を変えます。」
坂田は黒板に、春海の字を書いた。

「これから、みなさんが、立原春海さんを女子として、
 気持ちよく接してくれるとうれしいです。」

晴美は、みんなの反応を祈るような気持ちで見ていた。
みんな、真剣に聞いていた。

「何か、質問なりありますか。」と坂田が言ったとき、
クラスの女子で、一番しっかりしている高橋美津子が手をあげた。
先生は指名した。
高橋は立って、発言した。

「これは、質問ではありません。私の今の思いです。
 私は、立原春海さんが、今日ここに、
 どれだけの勇気を出して来たことだろうと思って、涙が出そうです。
 きっと、昨日は眠れなかったと思います。
 でも、安心してください。
 私は、誰がなんと言おうと、春海さんは、女の子だと思います。
 これから、いっぱい大変なことがあると思います。
 くじけないでがんばって欲しいです。」
高橋は涙を浮かべて着席した。

高橋に賛成する拍手が、ほとんどの生徒から起こった。

男子が一人手を挙げた。
安井和夫という生徒だ。
おもしろくて、言わば男子のリーダー的人物だ。

「こんなこというと、立原さんは、怒るかも知れないけど、
 立原さん以外の男達は、ずっと前から、
 立原さんは、女の子だと信じていました。」
(女子から笑いがもれた。)
 女の子が、何かの事情で、男装している。そう思っていました。

 だから、体育で着替えるときなんか、俺ら、
 立原さんを絶対見ちゃいけないと思って、誰も見ませんでした。
 トイレだって、男子トイレの個室使ってるのは、気の毒だなあと思っていました。
 体育で走るとき、女の子走りでも、歩くとき女の子歩きでも、
 それは、当然だと思って来ました。
 ドッジボールのときなんか、立原さんには、強いボールを投げませんでした。

 だから、今、立原さんが、女の子だと聞いても、全然びっくりしません。
 ああ、やっぱりって思いました。

 密かに、立原さんが、好きだと思ってる奴、俺、何人か知ってます。
(クラス、笑い。)
 つまり、俺の言いたいことは、性同一性障害は大変なことだけど、
 立原さんが、今日女の子宣言ができて、ほんとによかったなあと思うことです。
 これで、立原さんは、思いきり『女の子』やれるし、
 立原さんを好きな男子は、思いきり好きになれます。
 とにかく、女の子宣言、おめでとう。」
(クラスで、なごやかな笑いが起こった。)

安井の言葉にも大きな拍手が起こった。

「あたしは、学年で1番の海斗くんが、春海さんになって、
 1番が女子になったことがうれしいです。」
と元気にいう生徒がいた。

「そう、もう一人の晴美くんは、立原さんを抜けません。」
と次の生徒。
「ええー?」と晴美が反応した。

クラスの空気はとても和やかだった。

「じゃあ、立原さんから言葉がある?」
と担任の坂田が言った。
「はい。」と言って春海は、口を開いた。
「高橋さんが、言ってくれましたが、昨日は眠れませんでした。
 でも、今日、女の子宣言をして、
 みなさんが温かく向かえてくださった気がして、
 感激でいっぱいです。

 今までの、あたしは、ぜんぜんしゃべらない生徒だったと思います。
 それは、口を開けば、女言葉が出そうで、黙っていたんです。
 あたし、本当はおしゃべりなんです。
 だのに、黙っていることは、つらいことでした。
 女が出てしまって、からかわれることが恐くて、
 みんなといっしょに遊びにも出られませんでした。

 でも、あたし、女だとバレバレだったことを、
 安井くんの言葉で知りました。
 あたしみたいな男子はオ△マなんて言われて、
 からかわれるのが、普通だと思います。
 でも、あたしをからかう人は、このクラスにいませんでした。
 どうも、ありがとう。
 あたたかい、やさしい人達に恵まれて、あたしは幸せです。
 (春海は、涙ぐんでいた。)

 最後に、菅原晴美くんへの、特別な感謝を伝えます。
 菅原君は、友達のいなかったあたしの友達になってくれました。
 今日の、女の子宣言をして、もし全員が引いてしまっても、
 自分だけは、春海のそばにいるよ、と言ってくれました。
 その言葉がなかったら、あたしは、今日の「女の子宣言」は、
 できませんでした。
 菅原君。本当にありがとう。
 では、こんなあたしですが、よろしくお願いします。」
春海は、頭を下げた。
みんなから、盛大な拍手が起こった。
そのとたん、
「晴美、お前、やるじゃないか。」
「いつの間に、友達になったんだ。」
とか、男子に髪をくちゃくちゃにされていた。

2時間目が終わり、中休み。
高橋美津子を中心としたグループ6人が早速来て、
「春海、いっしょにお手洗い行こ。」と誘いに来た。
「うん。ありがとう。」と春海はうれしそうに言った。

その中休みで春海は、グループとすっかり仲良しになった。
春海が、早口に、おしゃべりをするのを、
晴美は、離れたところから、うれしそうに眺めていた。

その後、春海は、いろんなグループのひっぱりだこになり、
いっそ、クラスの女子全体で遊ぼうということになった。

昼休み、外で、女子全員で、楽しそうにドッジボールをしながら、
キャーキャー言っている春海を、晴美は見た。
「よかったなあ。」と心の中で言った。

さあ、今日は、女子のドッジボールにいれてもらおう。

「いれてー!」というと晴美がいうと、
「男子は、左手たよ。」と女子たちがいう。
「OK。」と言って晴美がやり出すと、
どんどん男子が入ってきた。

春海が、額に汗を一杯かいて、
キャーキャー言いながら、何度も笑っている。

青い空の下。
晴美の心は、喜びに弾んだ。



<おわり>  


◆次回予告◆『スーパー洋子出版社・校正部の巻』

日本を代表する世界の文学者・岩崎芳郎。
その校正を任された倉田洋子。巨大な相手に蜂の一刺しをしたい。
一体校正者に何ができるのか。前編・後編の2回でお送りします。

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海斗と晴美①「二人が友達になる」

体調は戻りましたが、まだエネルギー今ひとつで、
そこで、小品を書きました。2話くらいで終わると思います。
読んでくださるとうれしいです。

============================

新学年の五月。
菅原晴美(男子)は、中学1年。
子供のときから女装の趣味があったが、
家でも学校でも、そんなことおくびにも出さなかった。
背は低くて、前から3番目。
性格は明るく、クラスでも男女から人気があった。

晴美がいる1年C組に一人変わった男子がいた。
立原海斗(かいと)。
背は、中くらい。
成績は、学年で常にトップをとる生徒だ。
1位が海斗、2位が晴美だった。
晴美は、どうしても、海斗を抜くことができなかった。

クラスで、海斗は、ほんとうは女の子では
ないかといううわさが立っていた。

海斗は、昼休みは、いつも教室にいて本を読んでいた。
ほとんど誰ともしゃべらない。
話せないのではない。
先生から指名されると、国語の教科書をすらすら読んだ。
だが、その声は、女声に聞こえるのだ。
中学1年では、変声期を向かえた男子は、半分ほどだった。
しかし、変声期前でも、男女の声の質はちがう。
それが、海斗の声は、女の子の声に聞こえるのだ。

教室移動のときなど、海斗の歩き方は、
内股の女の子歩きだった。
給食の食べ方、書く字など、女の子のものだった。
全体に、仕草、動作が女の子だった。

海斗は、長髪にしていて、
顔立ちは、女の子のようで、目鼻立ちが整い、
女の子にしたら、さぞ、可愛く美人になるだろうと思われた。
海斗は、トイレは、いつも男子の個室を使っていた。

しかし、海斗はいじめられたり、嫌がらせをされたりはしていなかった。
1つは、勉強が学年で1位だったこと。
2つ。人に嫌がられることは、しないこと。
そして、3つ。海斗には、生まれ持った気品のようなものがあり、
そのオーラで、みんなは、いじめる…という発想が浮かばなかった。
もう一つ加えると、クラスには、意地悪な生徒がいなかったためだ。

しかし、海斗には、友達がいなかった。

晴美は、可愛い顔立ちだったが、端整な顔をした海斗に、心の中で、
女装をさせてみることがあった。
晴美の心のなかで、海斗は、美少女になった。
それを、実現したいなあと思っていた。

晴美は、海斗と友達になりたかった。
海斗に女装させたいという気持ちとは別に、
友達になりたいタイプだった。
いくら海斗が、女の子のような子だからと言って、
女装が好きかどうかわからない。

海斗も晴美も部活には入っていなかった。

五月の中旬。
その日、晴美は、自分の帰る方向とは違うが、
海斗の後をつけた。
10分くらい後をつけて、学校が遠くなったところで、
晴美は、勇気を出して、海斗に話しかけた。

「あの、立原君。」
海斗は立ち止まって、晴美を、まるで、
信じられないものを見るような目で見た。

「あ、ごめんね。驚かせた?」
「うん。」
「いっしょに帰ろう。」と晴美は言った。
「うん。」と海斗は、当惑した顔で言った。
「あの、迷惑?」
「ううん。」と海斗は、首を横に振った。

それから、二人で歩き始めたが、
海斗は何も言わず、晴美は、話題が見つからず、
苦しい思いをしながら、歩いていた。

晴美は、とうとう本当のことを言おうと思った。
「あのね、立原君。ぼく、一つウソついてる。」
「なに?」
「ぼく、帰る道こっちじゃないんだ。」
「知ってる。」と海斗は言った。
「どうして知ってるの?」と晴美は驚いて聞いた。

「ぼく、君が帰るとき、あとつけたから。」と海斗は言った。
「ほんと!!どうして?」と晴美はさらに驚いて聞いた。
「ごめんね。そんなことして。
 ぼく、君と友達になりたかったから。
 でも、勇気が出なくて、話しかけられなかった。」海斗はそう言った。

「あ、ぼくは、君と友達になりたくて、
 今、後をつけてきたんだよ。」
「声をかけてくれたとき、すごくうれしかった。」
と、海斗はそのとき初めて晴美を見て、笑顔を見せた。
初めて見る海斗の笑顔に、晴美の胸は高鳴ってしまった。

「わあ、なーんだ。よかった。でも、何でぼくと?」と晴美は聞いた。
「それは、ぼくが聞きたい。なんでぼくなんかと?」海斗はいう。
「『ぼくなんか』なんて言わないで。」と晴美は言った。
「あ、そうだね。いじけたいい方だね。ありがとう。
 じゃあ、聞き直すね。どうして、ぼくと?」海斗言った。

晴美は、そのとき一大決心をした。
海斗と友達になるのに、隠し事はいけないと思った。
嫌われてもいいから、正直に言おうと思った。

「あのね。ぼくの気持ち言ったら、君は怒るかもしれない。
 でも、ほんとのこというね。
 ぼく、変な趣味があって、女の子の服着たいの。女の子になりたいの。
 それで、海斗君見てて、女の子の格好したら可愛いだろうなと、
 いつも思ってたの。だから、友達になりたかった。
 でも、それだけじゃないよ。
 君は、ぼくが友達になりたいタイプだったからっていうのが、ほとんど。」

『ああ、言ったあ。』と晴美は思った。
これで、嫌われてもいいやと思った。

「そうなんだ。やっぱり菅原くんは、ぼくのこと分かってくれる人だと思った。
 菅原君。今日、このまま、ぼくの家、来ない?
 菅原君が正直に話してくれたから、ぼくも、正直に君に伝えたい。」
海斗は、言った。
「うん。行く。君が伝えたいことって、何だろう。」



海斗の家は、ものすごく大きな家だった。
長いエンタランスの向こうに玄関がある。
「ただいま。」と海斗が玄関の扉をあけると、
海斗似のすごく綺麗なお母さんがいた。
「あら、海斗。お友達?初めてだわ。」
と、お母さん。
「菅原晴美くん。」
晴美は、「こんにちは。」と言った。
「こんにちは。」
と、母の芳恵は、にこにこして言った。

海斗が部屋のドアを開けるとき、
「菅原君、びっくりしないで。」と言った。
そして、二人で中に入った。
広い部屋だった。普通の家のリビングほどある。
海斗の「びっくりしないで。」の意味が分かった。
その部屋は、一目で女の子の部屋だと分かるところだった。

「わかった?」と海斗が言った。
「うん。わかった。ぼくの理想の部屋。うらやましいな。」と晴美は言った。
「家では、女の子でいるの。今、着替えるね。ソファーで待ってて。」
海斗はそう言うと、箪笥を開けて、クリーム色の七分袖のワンピースを出した。
男子の制服を脱ぐと、海斗は、女子の下着をつけていた。
晴美は、海斗のつけているブラが、羨ましかった。

ワンピースを着て、海斗は、ドレッサーの前に座った。
髪にブラシをかけ、前髪に丸みを付け、セミロングの髪を外巻きにした。
唇に、ほんの少し赤いリップを引いた。
白いソックスを履いて、晴美のそばに着た。
そのときの海斗は、晴美が心の中で女装させていた海斗以上に可愛かった。

「立原くん、可愛い。どこから見ても女の子だよ。」
「ありがとう。家では女の子してるから、あたしのこと、春海(はるみ)って呼んで。」
「ぼくと同じ名前だね。どんな字?」
「春の海。」
「ああ、いいね。」
「それから、あたし、自分のこと『あたし』って言って、女言葉使っていい?」
「もちろん。そんなに女らしくて、男言葉じゃおかしいよ。」
「ありがとう。」
春海は、またステキな笑顔を見せた。

「あたしね。学校では、女言葉が出ちゃうから、しゃべらないことにしてるの。」
「だから、おとなしいんだね。」
「でも、家ではおしゃべりなのよ。きっと晴美驚くと思う。」
「もう、驚いてるよ。」
「あたし、もうそんなにしゃべってる?」
「学校よりかね。」晴美は、今このときを楽しむように、幸せな顔をしていた。

「晴美のこと『晴美』って呼び捨てにしていい?」と海斗は言った。
「春海、もうしてるじゃない。」
「あ、そうね。」と言って、春海は、うふふと笑った。
「あたしって、家では、こういう性格なの。すごい、どじ。」
「学校では、完璧なのにね。」

「ちがうの。学校では、どじをしないように、緊張200%なの。
 だって、あわてると、女が出ちゃう。1度出ちゃったらおしまいでしょ。
 オ△マとか言われちゃう。
 虫なんか、首の中入ったら、『キャー、いやーん、助けてー!』って言っちゃうと思う。
 そうならないように全神経を使っているから、すごく疲れちゃう。」
海斗は、早口に、表情豊かにしゃべっていた。

 晴美は、くすっと笑った。
「なあに?」と海斗が聞いた。
「春海が、家ではおしゃべりだって、ようくわかった。」と晴美は笑顔で言った。

「晴美に抱き付いてもいい?」と少し真面目な顔で海斗が言う。
「うん、いいよ。」と晴美は言った。
春海は、そうっと晴美の胸に頬をあて、抱き付いて来た。
晴美は、そっと春海の背に腕を回した。
「春海は、甘えん坊なの?」と晴美は聞いた。
「友達に、こんなに女言葉で話せたの初めてなの。
 感激してるの。最高に幸せ気分なの。」
海斗の髪から、フェミニンないい香りがした。
晴美は、海斗が男の子であることを、完全に忘れていた。



つづく(次回は、『春海のカムアウト』です。)

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再投稿 私の初投稿フィクション

体調はよくなりましたが、まだ、新作が書けていません。
そこで、もう一作、過去の作品を投稿します。
これは、私が、このブログで初めて投稿したフィクションです。

時代は、1960年代。
中学を卒業して、地方から都会へ集団就職にやってきた若者を描きました。
ちょうど、映画「三丁目の夕日」の時代です。

前・後編、一挙に投稿します。

========================

「クリーニング店の幸夫」

幸夫は、クリーニング店で働いていた。
幸夫の仕事は、洗い上がった洋服を届けることと、
洗濯物の注文を聞いて、それをもらってくること。

黒い自転車の荷台に、大きな布製の箱が取り付けられていて、
そこに洗濯物を入れる。

幸夫は中学を出て上京し、そのクリーニング店で働き2年目になる。

この店で働くことに、幸夫は秘密の楽しみを持っていた。

幸夫にはお得意の中で、特別に憧れているお客があった。
その女性は、大きなマンションで、一人住まいであるらしい。
名前は、邦子という30歳位のきれいな人だ。
邦子は、毎日洗濯を出す。

その日も、幸夫は洗い上がった洗濯物を持って、邦子のマンションに行った。
午後の2時ごろだった。
ブザーを押すと、邦子が出て着て、
「いつもありがとう。今日はこれをお願いね。」
と言って、洗濯物を預ける。
洗濯物の袋に、名前を書いて、幸夫は、あいさつをし、
1階の横に置いてある、自転車の荷袋に入れる。

それから、幸夫は猛スピードで、
自分の3畳のアパートへ行く。
そして、邦子の洗濯物をもって、部屋に入る。
部屋は殺風景で、部屋に不釣合いな、大きな姿身がある。
幸夫が、思い切って買ったものだ。

幸夫は、その姿見の前で、邦子さんの洗濯物を取り出す。
そして、自分は、パンツ1つになり、邦子のドレスを1着取り出す。
今日のドレスは3着あった。
幸夫は、赤いワンピースを取り出した。
幸夫が、一番興奮するときだ。
心臓がどきどきして、手が震える。

邦子のドレスに、体を入れ、ワンピースの袖に腕を通し、
肩を入れて、背中のファスナーをあげる。

幸夫は、長い髪を女の子風にして、
姿見に自分を映してみる。
心臓が高鳴る。
そこに、女に変身した自分がいる。
「あたし、邦子よ。」と鏡に向かって言ってみる。
最高に興奮する一時だが、
幸夫は、自分で自分を慰める方法をまだ知らなかった。

もやもやした気持ちに耐え難くなりながら、
幸夫は、邦子の洋服を脱ぐ。

そして、何事もなかったように、クリーニング店に帰る。
幸夫には、そんな女装の趣味があった。



ある土曜日のこと。
いつも通り、幸夫は、邦子のマンションへ行った。
「玄関に入って、ドアを閉めて。」と言われた。
幸夫がそうしていると、
「はい、今日のね。」と邦子から、洗濯物を渡された。
幸夫が行こうとすると、邦子が呼び止める。
「あなた、お名前は?」
「幸夫です。」
「あなた、あたしの洗濯物をお店に届ける前に、
 自分の部屋に持って行って、着てない?」と邦子が言う。
幸夫は、ドキンとして、心臓が止まりそうになり、
顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「はい。すいません。
 でも、どうしてわかったんですか。」と幸夫は聞いた。

邦子は、ちょっと笑って、
「いつも、あなたが来ると、あたしの香水の匂いがするの。
 それは、あなたが、お店に届ける前に、一度あたしの服を着ている証拠じゃない?」

「すいませんでした。」と幸夫は言った。
「いいわよ。あなたの願いを叶えてあげる。明日の日曜日お仕事は?」と聞いた。
「明日は休みです。」
「じゃあ、ちょうどいいわ。明日の午前10時に、ここにいらっしゃい。
 あなたを、思い切り女の子にしてあげる。」と邦子は、言った。

幸夫は、邦子の言葉に夢心地となって、お店に帰った。

*   *   *

日曜日。
もうすぐ10時になる。
7時に起きて、今まで何も手につかなかった。
心臓をときめかせ、邦子のマンションのドアのチャイムを鳴らした。
手が震えた。
「いらっしゃいませ。」との声と同時に顔を出したのは、邦子ではなかった。

年はちょうど幸夫くらいの女の子で、美容院の制服のような、
淡い水色のワンピース型の作業着を来ている。
髪は、後ろ1本に結んでいて、前髪があった。
「どうぞ、入ってください。」
そう言われて、玄関に入った。
そこに邦子もいて、
「幸夫君。愛子ちゃんを紹介するわ。今日あなたを女の子にしてくれる子よ。」
そう言った。
幸夫は複雑な心境だった。
美人で憧れの邦子が自分を女の子にしてくれると思っていた。
少し、がっかりもしたが、同い年くらいの愛子にも魅かれるものがあった。



「さあ、幸夫さん、お風呂に入りますよ。」と愛子に言われ、
バスに行き、裸になった。
すると、愛子が来て、「お世話いたします。」と言う。
女の子と風呂場を共にするなんて、幸夫はびっくりした。
「すねの毛をそったり、しますから。」と愛子はてきぱきとしていて、
幸夫におかしな考えを起こさせなかった。

湯船から出て、小椅子に座った幸夫の前で、
愛子はせっせと幸夫の足のすねに石鹸を塗っていく。
愛子は化粧をしていなかった。
そのためか、のっぺりとした顔立ちに見えた。
だが、2つの瞳はとても綺麗だった。

愛子は、上手に肢の毛を剃っていく、
「幸夫さんはどこから?」そう聞く愛子の言葉になまりがあった。
「ぼく、徳島から。」
「なんや、うち香川からよ。」
「ほな、近いがね。」
「ほやな。」と愛子は言った。

「なんで、大阪にせんかったん?」と幸夫。
「大阪には知っとる人が多いけん。」
「誰も知らんところがよかったん?」
「うん。女になるには、その方がええやろ。」
「愛子ちゃんは、女やがね。」幸夫は驚いて言った。

「女に見えるか?ありがとう。うち、男や。」と愛子が言う。
「ほんま???」と幸夫はひっくり返りそうになった。
「幸夫さん、危ないがね。びっくりしてくれるのは、うれしいけど。」と愛子は言った。
愛子が男と聞いて、幸夫は一気に興奮して、
あそこが上向いてしまっていた。

「うちでも、男の子、こんな風にできるんやね。」と愛子は幸夫の上向きのものを触った。
「愛子ちゃん、可愛いもん。男や思たら、もっと興奮する。」
「邦子ママも男性よ。」と愛子が言う。
「ええ?」邦夫は、再び衝撃を受けた。
「幸夫ちゃん、きっと美人になるよ。あたしわかるんや。」と愛子は言った。

幸夫はすねの毛も、脇の下の毛もきれいになり、風呂を出た。
「これ履きますよ。」と愛子に言われ、ショーツとブラとガーターベルトを渡された。
でも、幸夫の部分は、まだ、上を向きっぱなしで、とてもショーツをはけない。
「じゃあ、タオルでこないして、お化粧先にしましょう。」
と愛子は、タオルを幸夫に女の子巻きした。
タオルから出た肢は、女の子のように、つるっとしていて、余計に興奮しそうだった。
「幸夫ちゃんは、肢が綺麗で、真っ直ぐで長い。ステキやわ。
 背は、160cmくらい。うちと同じくらいやね。」と愛子が言った。

化粧室のストールに座り、鏡を見た。
愛子は、慣れた手付きで、次々と作業を進める。
幸夫の髪にホットカーラーを内まきにつけて。
「眉をいじるけど、かまへん?」と愛子が言う。
「うん、そうして。」と幸夫は答えた。

眉を女の子に形に整え、前髪を梳いて、まばらに額が見えるようにした。
メイクはピンク系で、手早く仕上げ、付けまつげを上向きのつけた。
ホットカーラーをはずし、髪を整えると、幸夫は見違えるように美少女になった。
「どや。鏡にいるの幸夫ちゃんやで。」と愛子は言った。
幸夫は思わず鏡の自分に見とれてしまった。
こんな美少女になるとは思わなかった。
うれしくて、涙が出そうだった。
「愛子ちゃん、ありがとう。ぼくうれしい。」

ショーツは、ブルマ型にした。
膨らみはガードルで押さえ、ストッキングをガードルに留めた。
ブラを着ける。その中にストッキングを丸めていれる。スリップをかぶる。
すると、女のシルエットが浮かぶ。
そして、メイクに合わせ、長袖のピンクのワンピースを来た。
真珠のネックレスとイアリングをつけて、できあがり。
「幸夫ちゃん。あたしが思たとおり、綺麗や。うち、うれしい。」と愛子が言った。



「ママ、できました。」と愛子がママを呼びにいった。
やって来たママは、
「まあ、可愛い。幸夫君、可愛いわよ。」と言った。
「はい。うれしいです。」と幸夫は言った。

「ママ、あたしもメイクしてきます。」と愛子が言った。

邦子は、幸夫を寝室に連れていき、そこのドレッサーの前に座らせて、
たっぷり変身した姿を眺めるように言って、ソファーに戻った。
幸夫は驚いていた。
自分がこんな美少女になれるなんて…。
嬉しさがこみ上げて来る。



10分もたたないうちに、愛子がやって来た。
さっきの化粧無しの顔とはまるで違って、美貌の少女に変身していた。
髪にヘアーピースをつけて、背中まである長髪にして、
前髪をふっくらさせていた。
頭にヘヤバンド。
花柄のミニの長袖のワンピース。
ミニのワンピースから出た肢が真っ直ぐでとても長い。
見違えるほどの、都会的な少女になっていた。

「まあ、可愛い。早く幸夫君に見せてらっしゃい。」と邦子が言った。
「いっしょに寝てもいいですか?」と愛子は小声で言った。
「愛子に譲るわ。」と邦子は言った。
愛子は、嬉しそうに笑って、幸夫のいるベッドルームへ行った。

ベッドルームの鏡で、自分に見とれている幸夫の後ろから、
愛子はそうっと入って。幸夫の目隠しをした。
「だれ?」と幸夫。
「あたし。」愛子は標準語に戻っていた。
幸夫は、振り向いて、愛子を見た。
「愛子ちゃん??」と幸夫は首をかしげた。
「そうよ。」
「わあ、別人みたい。綺麗や。お化粧で、そないに変われるの?」
「幸夫ちゃんだって、すごく可愛い。別人になったわよ。」
「感激…。こんな可愛い人が、ぼくのお世話をしてくれたなんて。」
幸夫も標準語になっていた。

「幸夫ちゃん。もう幸子よ。それに、ぼくじゃなくて、あたし。」
「うん。あたし、びっくりした。」
「ベッドの上に二人並ぼう。」と愛子が言った。
「うん。いいわ。」と幸夫は女言葉を初めて使ってみた。
なんだか、ぞくっとする。
長く鏡を見ていたので、自分は女だと自然に思っていた。

「ぼく、いえ、あたし、こんな可愛い女の子と、並んだことないの。」
とベッドの上で幸夫は言った。
「抱いて。」
「うん。」幸夫はぎこちなく、愛子を抱いた。
愛子は、自分からも、幸夫を抱いた。
「愛子ちゃん、いい匂いがする。」
「香水つけたの。」

愛子はベッドルームの引き戸をしめた。
薄暗くなった中で二人は互いを見つめた。

口づけをして、抱き合って、
そのうち2人で、スリップ1枚になった。
「ほんとや。愛子ちゃんは男の子や。信じられんけど。」幸夫は言った。
「幸子も信じられない。」と愛子も言った。

絡み合い、もつれ合って、やがて二人は夢の国へ行った。


<おわり>


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再投稿・スーパー洋子初登場の巻き

体調がまだすぐれず、新作が書けません。
そこで、昨日のように、過去のものから、私のお気に入りを再投稿します。
これは、「スーパー洋子」が初めて登場するときのお話です。
前編、後編一挙に投稿します。(ちょっとラストを変えました。)
読んでくださるとうれしいです。

=============================

「スーパー洋子初登場の巻」

倉田洋次が、自分が未来世界から間違って派遣された
「スーパー機能クローン」だと知ったのは、23歳のときだった。
クローンであるから、人間と同じであって、
お腹もすくし、排泄の要もある。
しかし、洋次には、恐るべきパワーと、知能が搭載されていた。

洋次は、大学を出て、ある出版社に勤めた。
今は、10月、入社してから6ヶ月になったが、
仕事が極めて遅かった。

「もう、倉田くん、いい加減にしてよね。
 その校正、3週間前からの依頼なのよ。
 100ページもあるのに、どれだけ進んだの?」
直属の上司である、25歳の近藤百合子にせっつかれた。
百合子は美人で、洋次の好きなタイプなのに、
キツイのが玉にキズだなあと洋次は思っている。

「すいません。今、やっと25ページ…。」
洋次は首を引っ込めるように言った。
百合子の手に持ったノートが丸められ洋次を襲ってくるからだ。

「あのね、あなたは知ってるかどうか知らないけど、
 この作品は、あの「すべてはKより拡散する」をお書きになった、
 数学者、山崎先生の推理小説なの。
 極めて論理的な方で、めったにミスをなさらない。
 校正なんか要らないくらいの方なの。
 だから、勉強にと思って、倉田君に第一校正をさせてあげてるの。
 一つでも、ミスを見つけたら、誉めてあげるわ。」
「ええ?そんな偉い方の、ぼくやってんすか。
 どうりで、いくら見ても、ミスが見つからないと思った。
 ミスがないと、つまんないすよ。」洋次は言った。



洋次は、「はあ~あ。」とため息をついた。
出版社なんて、自分に向いてなかったのか。
作家の書いた小説の校正をするのが、洋次の主な仕事だ。
本が好きだからと思って入ったが、
現実は、本が好きか嫌いかなど関係ない。

洋次は気分転換にトイレに立った。
トイレに来て、小用だから立ってできるが、
しばらく個室で休みたかった。
『ほっとできるのは、トイレの個室だけとは。』
トホホと洋次は、またため息をついた。

休憩にも限度があると思って、個室のドアを開けたとき、
「うそ!」と洋次は思わず、個室にもどり鍵をしめた。
トイレに女子社員がいた。
しかも、個室の正面も個室だった気がする。
男子が立ってするための便器もなかった気がした。
ここは、女子便所なのだ。

これは、自分が間違って、ぼんやりと女子便に入ってしまったのか。
洋次は焦った。
だが、ふと見ると自分は、スカートを履いて、ショーツ、パンスト、そして、女子の靴を履いている。
股間に男の証がない。
胸を見て、どきりとした。
会社の女子社員の制服を着ている。
白いブラウスに、紺のベスト。
胸を触った。膨らみがある。
髪が長い。
洋次は、段々と自分を把握して来た。

体が、女になってしまっている。
洋次は、個室のドアに耳をつけ、
人の音がしなくなるのを待った。
そして、人の声が消えたとき、
「それ!」とばかりに、個室を出た。
そのまま外に逃げようと思ったが、立ち止まり、
トイレの鏡に映っている自分を見た。

女だ。女になってしまっている。
しかも、可愛い。
肩にかかる髪。
少女のような前髪。少し分けた隙間に、丸い賢そうなおでこを見せている。
洋次は、感動した。19歳くらいに見える。

洋次は、小さいときから、女装の趣味があった。
姉に内緒で女物の下着をこっそり着たりした。
女の子になりたいと、どれだけ願ったことか。
それが、鏡の中に本物の女である自分がいる。
ああ、うれしい、と洋次は奇跡だと、歓喜し、
トイレの中で、手を広げて、くるくる回っていた。

その内、一人の女子社員が入ってきた。
「あら、洋子さん。百合子さんが、
 かんかんに怒っていたわよ。
 一体どこで油を売ってるんだって。」
「え、そうなの?やだ、ああ恐い。」と洋次は言った。
そして、ドキッとした。声も女だ。
女の言葉をすらっと話した。

その女子社員は、自分を見ても、なんの驚きもせず、
自分を「洋子」と呼んだ。
どうやら、洋次が洋子になり、座敷ワラシのように、
洋子を前からいた社員のように、見ている。

洋次は、試しに、自分のデスクに戻ってみた。
そこに、百合子が鬼のように立っていた。
「仕事も終わってないのに、何サボってるのよ!」
百合子にこっぴどく叱られた。

どうやら、洋子になって洋次のデスクに座っても、
なんの支障もないらしい。

「ひ、一つ見つければ、いいんすよね。ひとつ。」
と洋子(以後、洋子)は、ごまかすように百合子に言った。
「そうよ!」と百合子の恐い声。

洋子は、ワープロで打たれた、懸案のA4・100枚の原稿を見た。
25ページはやった。
そのとき、洋子は、原稿を見て驚いた。
そのページの文章のミスが、一目見た瞬間にわかった。
百合子は、1つでいいと言ったが、
第1ページですでに、4箇所ミスがあるではないか。
そして、自分が済ませた残り24ページも、
見逃した校正が75あることもパラパラと見ただけでわかった。

洋子は、そのときある仮説を立てた。
スーパーマンのように、自分は今、人力を越えた能力をもっている。
女・洋子になるには、男子トイレに入ればいい。
出たときは、洋子になって女子トイレから出てくる。
逆に女子トイレに入れば、自分の意志によって、洋次に戻れる。

同時に思った。
この能力は、あまり知人の前で見せてはいけない。
昔から、超能力者は、人から疎まれ、たいてい悲劇が待っている。
100ページの校正原稿。
3週間のものを、
たぶん、20分で終わりそうだ。
しかし、20分で終わらせてはいけない。

それにしても、なんという能力だろう。
1ページを瞬時に読んでしまえる。
洋子は、3ページ目に出てくる人物の名が「啓治」となっていて、
その後一度も登場せず、
97ページで、やっともう一度出てくる同じ人物の名が「啓次」となっている間違いを、
一読しただけで気が付いた。

試しに、校正のレベルを上げてみる。
例えば、ある同じ状態下の猫の目を形容するのに、
同じ表現が3回も使われているとき、これは、まずい。
接続語も近い文中での重複は、避けたい。
また、あえて漢字をひらがなで書いたのなら、
最後まで、その漢字はひらがなで書くべきである。
読者の60%が読めない漢字はルビを振るか、
ひらがなにすべきである。
『しかし』と使うなら『しかしながら』などと後で使うべきではない。
言語レベルは、全体に統一していなければならない。
さらに文の長短、リズムも考慮にいれる。
このように、校正のレベルを上げれば、
例え、完璧な文を書くと言われる山崎の原稿でも、
いくらでも校正の箇所は見つかるのだ。

相手は、超論理派の数学教授か。
よし、校正レベルを最高値に上げて、
全力で校正するぞと、洋子は闘志を燃やした。

*    *    *

洋子は、仕事を始めた。
みんなにバレないように「洋次」のスピードでやっていた。
しかし、遅くて遅くて、じれったくてたまらない。
とうとう、じれったさに負けて、1時間で仕事を終えてしまった。
後の時間何をすればいいのだ。
デスクを立つと、百合子にどやされるだろう。
ああ、仕事もなしに、デスクにただいるなんて、何たる苦痛だろう。
洋子は、そう思った。

そして、洋子は、とうとうその苦痛に耐えかねて、百合子に原稿を渡した。
「うそ!」と百合子は目を丸くした。
そして、一見しただけで、赤が方々に入っている校正に、百合子は激怒した。
「あなた!私が1つでいいと言った腹いせに、やぶれかぶれに赤を入れたわね!」
「質問してくだされば、赤を入れた理由を説明をします。」
洋子は首をすくめて言った。
百合子は、かっかとして、洋子の校正原稿をもって自分のデスクに行った。

校正は、3人の校正者で3回見ることになっている。
洋子のした校正を見るのは、次に百合子だ。
百合子は、校正に関しては、プロ中のプロである。
普通では、信じられない速さで文字を読む百合子であった。

百合子は、ぷりぷりしながら、斜めに腰掛け、
洋子の原稿を、手に持って眺めていた。
そのうち、百合子は姿勢を変えた。
原稿を机に置き、姿勢を正し、
前のめりになって、原稿を見始めた。
百合子は、洋子の校正した原稿のたった1ページにもたもたしていた。
百合子は、洋子の記した赤の半分も理解できなかったのである。
ふざけたものでないことは、一目でわかった。
百合子の威勢はだんだんとどこかに消え、
デスクの前で真顔になって、洋子の校正に取り組んでいった。

百合子は、ふと洋子を見た。
洋子は、乙女チックな前髪を、下唇を出して、ときどきふーっと息で吹き飛ばしながら、
童女のように、ストラップをいじっていた。



百合子は、ある段階に来て、自分の力の限界を感じた。
まさか、第一校正として、ここまで水準の高いものに出会うとは思わなかった。
1時間ほどが過ぎて、百合子は、謙虚な気持ちで、ギブアップした。

百合子は恐る恐る洋子のところに来た。
洋子は、あわててストラップを隠した。
百合子は聞いた。
「た、例えばよ。ここだけど、どうして赤なの?『蘇る』は、この字であっているでしょう?」
百合子は、そう言った。声に勢いがなかった。

「あ、それはですね、100ページの中で、『よみがえる』は7回使われていて、『甦る』が使われているのが6回、最後から2番目に1回だけ『蘇る』になっています。山崎先生のことですから、二つの漢字の使い分けに意図があるのかと読みましたが、とくにそれは感じられませんでしたので、すべて、「甦る」に統一しました。
また、長編なら別ですが、100ページ相当の短編で、「甦る」のような印象度の高い漢字を7回も使うのは、どうかと思い、末に一筆書いておきました。」
洋子は、言った。

百合子は、打ちのめされた。
これほどまでの校正を自分はしたことがない。いや、できない。

百合子はもう一つだけ聞いた。
「この推理小説に数学者が出てくるわよね。
 その数学者の書いた数式の『n』にあなたの赤がある。これは?
 いやしくも、著者は、T大の数学の教授よ。その数式に私達が赤を入れていいものかしら。」
「あ、その数式は展開されてますよね。正しく書かれているなら、
その4番目の式の、『n』は『n2』になるはずです。
 書いた方の単純な筆記ミスだと思います。電話で確認してください。」
洋子は空でするすると言った。

「あなた、この数式がわかったの?大学の博士レベルの数式よ。」と百合子はさらに聞いた。
「一応やってみただけです。ちがっているかも知れません。
 それから、この推理小説は、推理にミスがあって、可能性が最後に2つ出てきてしまいます。
 これでは、犯人を一人に絞れません。著者の方に、再考をお願いした方がいいと思います。」
洋子は言った。
百合子は、口をぽかんと開けたまま、洋子を見つめた。
相手は、今をときめく知的推理小説家である。
明晰な論理を貫き、読者に知的興奮を誘って止まない超知性派の作家である。

「洋子さん、ほんと?だったら、この方に電話して、社に来ていただくわ。
 この方、大学の数学の教授なの。
 あたしじゃ太刀打ちできない。
 洋子さんが、直接話して。」



百合子は、小説の作者・山崎三郎に電話した。
山崎三郎は、48歳の今を盛りとする数学者であり、推理小説作家だ。
山崎は在宅で、百合子は、「n」は「n2」ではないかと指摘した。
山崎は、仰天した。そして、全くその通りだと言った。

さらに、百合子は、推理が完成していないと、第一校正の者が言っていると言うと、
山崎は、すぐにでも、その校正者と話したいと言った。

洋子は、電話に呼ばれた。
「倉田洋子と申します。
 それでは、申しあげます。
 この作品の85ページ目に、犯人を特定する鍵となる数式が出てきます。
 数式を展開する中で、5行目の展開に『複素数』の存在を考えますと、
 やがて、それは2乗され-1となります。
 第3式で、すでに「無意味」として除外された『-1』を残しておけば、
 やがて、乗法の関係にあるそれと結びついて『+1』となり、
 最終の答えが、1とならず2になると思います。
 最後に、1とならなければ、犯人を1人に特定できないと思いました。」
洋子は言った。

電話の向こうで、山崎が驚嘆している声が聞こえた。
「いやあ、ありがたい。ここまでの校正をやってくださるとは、
 夢にも思いませんでした。あなたのおっしゃる通りです。
 数学者でありながら、複素数の存在を忘れるとは、赤面の至りです。
 これをそのまま世に出していたら、私は、世間に大恥をさらすところでした。
 助かりました。ありがとうございます。原稿は、全面的に書き変えます。」
山崎は興奮を隠さない声で、そう言った。

電話は、百合子に戻り、山崎は、百合子に洋子を絶賛し、会社への厚い感謝の言葉を述べた。

課の全員が、洋子の説明を聞いていた。
みんな、夢でも見ているような面持ちで、洋子を見つめていた。

電話を切った百合子は、満面の笑顔で洋子を抱きしめた。
「あなたって人は、もう、なんて人なの。ありがとう。
 これで、山崎さんの作品は今後全部うちに来るわ。大手柄なんてものじゃないわ。」
洋次は、ほのかに好きだった百合子に抱きしめれて、天にも昇る気持ちだった。

「洋子さん。もうこれからは、あなたに敬意をもって接するわ。
 どうして急にスーパー社員になってしまったの。
 部長にも社長にも、あなたの話を自慢して歩くわ。」

「あのう、今日は、少しお腹が痛くて、これで帰っていいでしょうか。」と洋子は言った。
「いいわよ。エネルギー使ったでしょ。もちろん、課長も聞いていて、わかっているわ。
 ね。課長。いいですよね。」
課長は、にこにこして、うんうんと首を振った。

洋子は、後悔をしていた。
ああ、パワー全開しちゃった。これから、どうしよう。

洋子は、女子トイレに入った。
これで、さえない洋次に戻るのかと、
淋しい気持ちでトイレの個室を出た。
するとそこは、未だ女子トイレではないか。
『あれ、もう少し、洋子でいられるのかな?』
洋子に、喜びが込み上げてきた。

お腹が痛かったことなど、飛んでしまった。
デスクに帰ろうかと思ったが、
せっかくもたった早退だ。
洋子は、スキップを踏みながら、社を出た。


<おわり>


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再投稿 『催眠術師VS栗林真吾』

体調を崩してしまい物語の続きを書けませんでした。
そこで、前作は、あそこで終了といたします。
本日は、私の過去に書いた物語の中から、私のお気に入りを再投稿いたします。
元気になりましたら、また、新作に挑戦したいと思います。
2話のものですが、一挙に投稿します。

=============================

<催眠術師VS栗林真吾>

栗林真吾は、高校3年生。
受験勉強に苦しんでいた。
彼は、頭脳明晰で、推理小説を読んでは、その犯人を推理するのが趣味だった。
小説の途中まで読んで考え、犯人を当てたことが、数多くあった。
しかし、受験勉強において、真吾には、集中力に欠けるという大きな欠点があった。
15分も勉強をすると、他のことがしたくなる。
どうしても勉強に集中できない。
推理小説では、あれだけ集中できるのに、
勉強となるとまるでだめだった。
もし自分に集中力さえあれば、
どんな難しい大学にも合格できるものを…と思えもしていた。

彼の集中力のなさには、もう一つの原因があった。
彼は、女装をして女の子になることに、性的な欲求をもっていた。
女の子の服が着たい。女の子の髪型でいたい。
女の子の下着を着けたり、女の子のパジャマを着て寝たい。
女の子の言葉でしゃべり、女の子の仕草をして一日過ごしたい。
と、勉強のふとした合間に、そのことを思い、
いてもたってもいられなくなるのだった。

真吾は、鏡を見て思っていた。
自分が女装すれば、きっと可愛くなれる。
女の子のような目鼻立ち、唇。
女の子のような、体型。
女の子のような声。
自分は女の子になる資質に恵まれている。
だのに、その夢が果たせないのが無念だった。
せめては、空想の中で、真吾は美少女探偵になって、
数々の事件を解決することをよくした。



秋の公開模試の帰り。
真吾は電車の中から、「催眠治療」の看板を見た。
古びたビルの正面に、大きな字で、
「『催眠治療』対人恐怖、赤面恐怖、吃音・・・・。」
果ては、多重人格障害などのすごいものまで書いてあった。

そうだ、と真吾は、催眠治療で、自分の集中力のなさを治せるかもしれないと思った。
真吾は、その催眠治療院の電話番号をメモした。

しかし、真吾は、たくさん読んだ推理小説などで、催眠術を使ったいくつかの犯行を知っていた。
自分が催眠術にかかることに一抹の不安があった。

催眠治療院へ前もって電話をすると、1回の催眠治療代は、8000円だという。
そして、集中力を高める治療も可能だと言う。
保険がきかず、かなり高いと思ったが、これで、自分に集中力がつけば、安いものだと思った。
真吾は、予約をとって、その翌日の日曜日、学生服を着て、催眠治療院に行った。
親には、内緒にした。

真吾は、治療院に入って待合室で回りを見た。
診療室の中が丸見えだ。
こんなにオープンでいいのかと思った。
治療院には、受付に人がおらず、先生の助手らしい人もいなかった。
先生一人で、全部やっているようだ。
真吾はちょっと心配にもなった。
人の目は先生の他にない。何をされてもわからない。

治療室には、先に女性の患者がいて、椅子に座った彼女は、先生の催眠術にかかっていた。
先生は、白衣を着ていて、35歳くらいと若く、細身で色が白い。
なんとなくソフトで女性的な感じだった。
しかし、掛けている眼鏡も手伝ってか、いかにも知的な感じがした。
推理小説の謎解きでは、先生に負けるかも知れないと真吾は思った。
先生の声は、やわらかく、やさしく包まれる感じだった。

「君は今からバイオリンを弾く。いい気持ちで弾く。」
と先生が女性に言うと、その女性は、とても幸せそうにバイオリンを弾く動作をするのだった。

真吾の中で、催眠にかかる怖れより、集中力をつけたいとの願いの方が数段勝っていた。

「ああ、ぼくもあんなに深く催眠にかかりたい。
 そして、集中力をつけたい。8000円もお小遣いを使うのだから。」と真吾は思った。

その女性は、どうも「赤面恐怖」の治療に来ているようだった。
先生から、もう人が怖くない、というような、暗示をかけられていた。

その女性が終わり、真吾は、先生に呼ばれた。



先生から、何を治したいのかと聞かれた。やさしい、眼差しだった。
真吾は、集中力のなさを治したいと言った。
「何が原因か、自分でわかる?」と聞かれた。
「生まれつき、気が散りやすいんです。」とそれだけ答えた。
(女装のことは言わなかった。)
「わかりました。」と先生は言って、
糸で吊るした5円玉を、真吾の前に揺らしながら、
暗示を掛けていった。

真吾はそのとき、催眠にかかりたい一心だった。集中力をつけたい。
「君のまぶたは重くなる。どんどん重くなり、私の声しか聞こえなくなる。」

先生の声を聞きながら、実は、真吾は焦っていた。
まぶたが重くならないのだ。ここは、重くならなければいけないのに。
そうしないと先に進めない。
真吾は、重くならないまぶたを、自分の意志で閉じた。
どうか、次の暗示にはかかりますように…そう懸命に願った。

「君の手は軽くなる。どんどん軽くなって上に上がっていく。」
先生の声は響いた。
真吾は、再び焦った。手が軽くならないのだ。
軽くなれ、軽くなれと願えば願うほど、自分が冷静になっていく。
8000円もするのに、催眠にかからなくては、無駄になる。
真吾は、ここも、自分の意志で、手を上に挙げた。

先生の暗示は、どんどん進んで、バイオリンを弾いたり、
オーケストラの指揮をしたりとあった。
真吾は、どれも、暗示の通り身振りをしたが、
すべて、それは自分の意志によってであった。
真吾は、催眠にかからなかった。

「今、君は深い催眠の中にいる。私の声がすべてである。」
真吾はそのように、首をたれ、じっとしていた。
しかし、心にあるのは、焦燥と失望だった。

そのうち、真吾は、信じられない先生の声を聞いた。
「君は、今から女の子になる。可愛い可愛い15歳の女の子だ。
 君は今、男の子の服を着ているが、それは間違っている。
 急いで女の子の服に着替えなくてはいけない。
 目を覚まして、私が鈴を鳴らすと、君はその行動をとる。
 そして、私に抱かれたいと思う。
 性的欲求が耐えられなくなり、私にその解決を求める。」

『なんだ、この先生は。』と真吾は驚いた。
とんでもない変態先生じゃないか。
こうやって、小説のように、女性を裸にしたり、言うなりにさせているのか。
だが、待てよ。これは、自分の女装の夢が叶うチャンスかもしれない。
催眠にかかっている振りをして、女の子にさせてもらってしまおう。
真吾は、心理戦で、その変態先生に勝ったと歓喜した。

先生から、「はい。」と言われて、真吾は催眠から覚めた振りをした。
そのうち、先生が、鈴を鳴らした。
『ああ、鳴った。』と真吾は気を引きしめた。
ここは、自分の演技力の見せ所だ。ああ、興奮する。

真吾は、はっとした素振りを見せ、
それから、はっきりした意識の行動に移った。

「あら、あたし、なぜこんな服着てるの。
 ね、先生、あたし、男の子の服着てる?なぜ?すぐ着替えなくちゃ。」
真吾は声のキーを上げ女声で言った。

「そうだね。君の服は、あっちの部屋にあるから、好きなのを着なさい。」
先生は言った。
真吾は「あっちの部屋」の引き戸を開けて、中に入った。
そして、思わず「あ。」と叫んだ。
そこは真吾が夢にまで見た、女装のための部屋のようだった。
2つの洋服箪笥に女の子の服がたくさん吊るされてあった。
そして、大きなドレッサー、明るい照明。化粧品もあり、かつらも、ずらり並んでいた。

『なんのために、こんな部屋があるんだ。』真吾は考えた。
おそらく、先生は、男色の趣味があり、自分のような女っぽい青年が来たら、
催眠によって、女の子にし、女装をさせ、セックスを楽しんでいるのだ。

が、しかし、自分はそれを利用させてもらおう。
女の子にされた自分を存分に楽しむのだ。
またもや、先生に勝利だ。真吾はぞくぞくとした。

*   *   *

真吾は、夢中でドレスを見た。
セーラー服があった。それが、まず真吾の夢であった。
箪笥の引き出しを引くと、女子の下着が詰まっている。
ブラを付ける。ショーツを履く。スリップをかぶる。
鏡を見る。ああ、心が躍る。
女の子になっていく。
そして、ついにセーラー服。何着かあった。
自分の通っていた中学のものに一番似ているものを選んだ。
セーラー服の女子を見て、どれだけうらやましく思ったことだろう。
着てみれば、びっくりするほど、自分にジャスト・サイズだった。
白のスカーフをセーラーに差し込んで、前でリボンに結び、
靴下を履いて、出来上がり。

かつらがあんなにある。
真吾は、いちばん乙女チックな、ロングのボブヘアーをかぶった。
前髪を少し分けておでこを見せた。

せっかくあるので、化粧品も使った。
チークと、そして、ピンクの口紅を薄く引いた。

鏡を見た。
ああ、女の子だ。中学3年生くらい。
可愛い。びっくりした。
真吾は喜びに震えた。
ずっと自分を見ていたかった。
うれしさと同時に、性・的・興・奮も訪れていた。

治療室を見た。
一人の女性が、治療を受けていた。
真吾はその間、ずっと鏡を見ていた。
ときどき立って、くるっと回ってみたりした。
スカートがパラシュートのように膨らみ、
広がって落ちる髪が、頬を撫でる。ああ、ステキ。
鏡に向かって、小さな声で、女の子のお話をした。
「ね、あなた、だれ?」
「あたしは、ルミよ。どう?あたし、可愛い?」
「うんと可愛いわ。とってもステキ。」
「うれしいわ。」
などとやっていた。

そのうち、女性が帰った。
真吾は先生のところへ行かねばならないと思った。
暗示にしたがうと、次は先生に抱かれることになっている。
抱かれることは、嫌ではない。自分が女装をしている限り、抱かれることは喜びだ。
真吾は、先生のところに行った。

「先生。あたし女の子だから、この服にしたの。これで、いい?」
「ああ、いいとも。とっても可愛い。お名前は。」
「ルミっていうの。」
「そう、いい名前だね。
 君があんまり可愛いので、抱きしめてもいいかい?」
「ええ。抱いて。」
先生は、立って、真吾を抱いた。
「もっと強く抱いて。」
先生は、強く抱いた。
『ああ、うれしい。心の中まで女の子になっていく…。』真吾は思った。

「先生。あたし、変なの。ここに男の子のものがある。
 それが、すごく大きくなってて、恥ずかしいの。」
「そう、じゃあ、先生がなんとかしようか?」
「ええ。お願い。」
「じゃあ、向こうへ行こう。」

真吾は、先生に抱きかかえられ、隣の部屋のベッドに寝かされた。
『先生の暗示通りにやっている。ぼくは、変・態・先生を利用している。』真吾は痛快だった。
先生は、真吾のスカートをめくり、ショーツを下げて、
真吾の大きくなったものを、口腔内に含み、
やさしく口を上・下させた。

真吾は、初めて味わうような陶・酔の中にいた。
自分で処理するときとは、全然ちがう。
人にされるのは、これほどまでに気持ちがいいものかと思った。
そのうち、痺れるような快・感に襲われ、
耐え難くなり、真吾は、女の子の声をたくさん発して果てていった。
天にも昇る気持ちだった。



真吾は、セーラー服を着たまま、先生の前に再び座った。
「もう一度催眠をかけるからね。」
と先生は言った。
『ははあ…。』と真吾は思った。
先生は、今のことをぼくの記憶から消去するつもりだ。
あるいは、ぼくが、またここに来て、女になりたがるよう、暗示にかけるのだろう。
『先生、残念ながら、ぼくは暗示にかからないのです。』
そう心で言い、真吾は、先生に対する優越感に浸った。

他に患者はいなかった。
先生は、銀製の万年筆をキラキラと真吾の目に反射させた。
「はい。君はもう催眠の中にいます。」
先生の声が聞こえた。
『全然、かかっていませんよ。』真吾は心の中で、にやりとした。

「手を上に上げてごらん。あがらないから。」
先生の声に、真吾は膝に乗せていた手を、試しに少し上げてみた。
あれ?あがらない。どうしてもあがらない。真吾はあわてた。
ここで、先生の催眠にかかったら、ぼくは何をされるかわからない。
今、催眠にかかっちゃいけない。
しかし、手は指1本もあがらなかった。

真吾はそれから、深い催眠に落ちて行った。
先生の声が、神のように聞こえた。

「君が女装したくなるのは、日曜日だけです。
 他の日は、女装のことを忘れます。
 大学受験が終わったら、また元にもどり、毎日女装のことを思います。
 それと、君は集中力があります。今催眠にかかっているのが、その証拠です。
 自分を信じましょう。君は、今から勉強にも集中できます。
 では、目覚めたら、とっても気分がさわやかです。
 さあ、目覚めます。はい。」

真吾は、ぱちっと目が覚めた。
さわやかな気分が胸に満ちていた。

「これで、終わりです。今日からの君は、違うと思いますよ。」と先生は言った。
「先生。ぼく、今セーラー服着てます。女の子になってる。なぜですか?」
真吾は、自分の願いが叶ったとはいえ、やはり先生を糾弾せずにはおれなかった。
「それは、君の意志でやったことです。君が理由をいちばんよく知っているでしょう。
 私に、たまたま女装の趣味があったので、私の物を君に貸しました。」
真吾はたじろいだ。その通りであったからだ。
「ぼくをイ・かせてくださったのは、先生ですか。」
「そうだよ。私は、女装した男の子が好きなので、つい、してしまった。ごめんね。」
「いえ。求めたのは、ぼくだし、うれしかったです。」と真吾は正直に言った。

「先生は、ぼくが女の子になりたいってこと、どうしてわかったんですか。」
「それは、催眠のとき、君が自分で言ったんです。」
「先生。ぼく、催眠にかからなかったんです。
 かかった振りをして、女装をしました。」
「君がかからなかったのは、5円玉を使った2度目の催眠です。
 私は、君に催眠をかけた振りをしたのです。
 だから、君にかかるわけがありません。

 1度目に私は自分の眼鏡を小道具に、君に催眠をかけました。
 そして、君の気が散る原因は何か、思うことを言ってもらいました。
 そのとき、君は女装への思いを語りました。
 その後、私は、その1度目の催眠を君の記憶から消したのです。
 だから、君は、かからなかった2度目の催眠を、初めての催眠だと思ったのです。」

「じゃあ、2度目のニセの催眠の意味はなんですか。
 そんなことしなくても、ただ『女装していいよ。』と言ってくだされば、ぼくは喜んでしました。」

「そうかな?私に恥ずかしがらずに、身も心も女の子になれたでしょうか。
 服を着て、カツラをかぶるくらいは、できるでしょう。
 しかし、初対面の私に女言葉を使い、女の子の振る舞いができたでしょうか。
 初めてのときは、照れくさくて、自分を『あたし』と呼ぶことさえむずかしい。
 2度目のニセ催眠で、君は、催眠にかかったふりができました。だから、
 私の前でも、恥ずかしくもなく、女の子として振舞えたのではないでしょうか。
 私は、2度目のニセ催眠で、君に身も心も女の子になる口実をプレゼントしたのです。
 聡明そうな君のことです。私のニセの暗示をきっと利用すると思いました。

 もし、私が、本当に催眠状態にある君を、暗示で女装させ、抱きしめ、
 性・的・行為を行ったのなら、これは、犯罪です。
 君は、私に抱かれることも、私に、ベッドでされたことも、
 すべて、自分の意志で受け入れたことだと思います?
 嫌なことなら、君の意志でいつでも拒否できたのですから。

 今回、君の一番の幸運は、私も女装マニアだったことです。」
先生は、微笑んだ。

『そうだったんだ…。』と真吾はすべての謎が解けた思いでいた。
そして、自分より何枚も上手であった先生に対し、感謝と敬意の念を抱いた。

先生は言った。
「そんなことより、君は、日曜日になると女装をしたくなると思います。
 そのときは、ここにいらっしゃい。あの部屋を使い放題使っていいですよ。只です。
 そして、可愛いナースの服を用意しておきますから、できるなら、
 君が受付のアルバイトを2、3時間やってくれるとうれしいです。
 もちろん、アルバイト料は払います。
 私は、治療代を自分の手でもらうのは、治療士として、ちょっとはずかしいのですよ。」
先生は少し照れた笑顔を見せた。
「はい。わかりました。受付のお仕事、させてください。」
と真吾は、うれしそうに言った。

学生服に戻って、治療院を出た真吾は、
ナース服を着た自分を思い浮かべて、うきうきとした。
「あ、女装のこと考えてるけどいいのかな。」とふと思った。
いいはず。今日は、女装の解禁日、日曜だった。


<おわり>


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無超能力者・高島忠男⑤「少年を救え!」準最終回

今回の⑤が、事実上の最終回です。
次回の⑥は、エピソード的なものを書きます。
読んでくださるとうれしいです。

===========================

小広場は、すごい人だかりができている。
パトカーと救急車、消防のはしご車が来ている。
十数名の警官が、見物の人達の輪を広げるのに懸命だ。
周りを青いマットで固めた黄色いレスキュー・マットが、
少年の下辺りの地面に置かれている。

見ると、8階建てのマンションの屋上に、高校生くらいの男の子がいる。
屋上周りの低い塀に座り、しきりと何かを叫んでいるが、
野次馬達の騒音で、聞き取れない。

少年が、屋上から飛び降りる可能性が十分にあるようだ。
少年の要求が聞き取れず、
警察は、野次馬のうるささにイライラしていた。

警官が拡声器で「静かに!だまってください!」
と、何度も呼びかけているが、次から次とくる野次馬が騒ぐ。

少年の母親は、警官に抱かれて、
上を見ながら、涙ながらに、ぶるぶると震えている。
その横で、父親は、怒りとも心配ともとれる表情を見せていた。
「人騒がせをしおって。」とつぶやいた。

警部らしき人が、部下に言った。
「屋上の入り口から入り込むのは、絶対にだめだ。
 刺激は、一切だめだ。
 下手な説得は、逆効果だ。
 多分、少年は、今まで何かをずっと理解されなかった。
 それを、今になって寛容な態度など見せたら、
 かえって彼の反発心に火をつける。」

「じゃあ、どうすればいいんですか。」と部下の一人が言った。
「少年の要求が、野次馬で聞こえん限り、何もできない。」
警部は、血が出るほど、握りこぶしに力を入れた。

忠男と3人がやってきた。
野次馬にさえぎられ、真下にいけない。

忠男は、一心に少年を見た。
目を細めて、少年に全神経を傾けた。
「わかった。ぼく達が来たわけがわかった。
 あの子は、GIDだ。
 女の子になりたいのに、家族も、学校も、友達も誰も理解してくれない。
 女として生きていけないなら、今死んだ方がましだ。
 そう言ってる。」

「どうして、わかるの?」と美咲が聞いた。
「なんとなくわかるんだ。
 しかし、どうやって上に行くかな…。」忠男は、頭を抱えて思案した。

「それは、あたしにお任せください。」
と女の子が現れた。どこかメルヘン的な子だ。
「みなさん、手を取って横一列になってください。」
忠男を先頭に、みな、一列になった。

ルリが、棒を振り、「ピロリン!」というと、
ルリは、鳩に、あとの4人は、小さな人形になった。
鳩は、忠男の片手をくちばしにくわえ、
屋上めがけ、その翼をはためかせた。
「わあ、すごい。」
とみんなは言った。

そのまま、目立たぬように、マンションの裏に回って、
屋上に着いた。
「あたしができるのは、ここまでです。下にいます。」
そういって、ルリは鳩になって飛んでいった。

4人は、元の大きさにもどった。

4人は、横に並んで、深呼吸を1つした。
美咲が、前に出た。そして、大きな声で言った。
「あなた、あたし達を見て!あたし達みんな男なの。」

真一は、はっとして、振り向いた。
真一は、高校生らしいが、まだ、中学生のように色が白く可愛い子だった。
髪を寅刈りにされていた。

「あたし達は、あなたの気持ちがわかるわ。」エリが言った。

「うそだ。君らは、男じゃない。女の子が来て、ぼくをだましているんだ。」
「じゃあ、今、ここで服を脱ぐわ。男の証拠を見せるわ。」
美咲が言った。

美咲が服を脱ぎ始めた。
後の2人も脱ぎ始めた。
忠男は、一人年齢が違うので、下がった。

脱ぎながら、一人一人語りかけた。
エリが言った。
「あたしは、女装じゃなくて、GIDなの。だから、女の子になりたい。
 女として、生きて生きたい。あたしは、あなたの苦しみがわかると思う。
 あたしも、何回も死のうとした。」
真美が言った。
「あたしは、女装子だから、今のエリほど深刻じゃないけど、
 あなたの気持ちは、わかるつもり。」
美咲。
「あたしたちと、友達になりましょう。
 毎日会いましょう。そしたら、辛いこと耐えていけると思うけど。」

寒い屋上で、
3人は、スリップ1枚になっていた。
少年は、座る向きを、こちらに向けた。
そのとき、下から、「おおおおお・・・。」と声が湧いた。

3人が、ショーツに手をかけたとき、
少年は、塀から飛び降りてこちらへ来た。
下で、また、声が湧いている。

少年は、早足で歩いて来て、3人に言った。

「いい。もういい。ごめん。疑ったりして。
 ありがとう。赤の他人のぼくに、ここまでしてくれるなんて。
 ごめんなさい。」

真一は、涙を浮かべていた。

「世界中の誰も分かってくれないと思っていたけど、
 そんなことないんだってわかった。
 ありがとう。わかってくれる人達にやっと会えた。
 お友達になってくれたら、うれしい。」

「うん。もちろんよ。」と3人も涙を浮かべていた。
「ぼくもう死なない。ありがとう。」
そう言って、真一はぽろぽろと涙を流し、屋上のコンクリートの上に正座した。

「飛び降りようとしたけど、恐かったの。
 心の奥で、誰かが止めてくれることを願ってた。
 止めてくれて、ありがとう。」
そう言って、真一は号泣した。
3人が真一の周りに来て、真一を抱きしめた。

忠男は、涙を拭きながら、さっきの魔法少女を探した。
ルリは、野次馬の後ろで、宙に浮いていたので、すぐわかった。
試しに、テレパシーを送ってみた。
(少年は、もう大丈夫。ご両親だけ屋上に来て欲しい。)
ルリは、頭の上に丸を作った。(ああ、通じた。)

ルリは地面に降りて、警部に話をした。

まもなく、両親が、屋上への扉を開けて、やってきた。
「真一!」と母親は叫び、真一は立ち上がった。
真一と固く抱き合い、お母さんは泣いた。
「真一のことは、わかっていたの。
 だけど勇気がなくて、父さんに言えなかった。
 ごめんね。辛い思いをさせてしまった。」
母は、そう言った。

その後ろに距離をおいて、真一の父が、たたずんでいた。
忠男は、父親のそばへ行った。
「今、真一さんの、心の姿をお見せします。」
忠男は、自分に超能力が戻って来たことを確信していた。

忠男は、真一の心のままの女の子の姿が見られるよう、
父親に幻覚を与えた。

父親ははっと息を呑んだ。
母親と抱きあっている白い服を着た髪の長い可憐な少女の姿が父親に見えた。

「ご覧になっているのが、真一さんの真実の姿です。」忠男は言った。
父親は、目を見張っていた。
忠男は、語った。
「真一さんの心は、あんなに清純なお嬢さんです。
 お父さんのお気持ちがわからないではありません。
 でも、あなたは、あんな汚れのないお嬢さんの髪を寅刈りにしました。
 お父さんから見れば、一人の息子さんだったことでしょう。
 でも、傷ついたのは、真一さんの心であるあのお嬢さんです。

 真一さんは女の心を持って産まれたんです。
 そんなふうに産まれてきた子に、罪などあるでしょうか。
 そのように産まれた真一さんを、助けてあげるのが、
 真一さんを産んだ、お父様とお母様ではないでしょうか。
 真一さんは、女の心をもったまま、今まで、ずっと耐えてきたのです。
 だれの理解も得られずに、懸命に生きてきたのです。」

父親は、膝をつき、正座をした。
膝に手を置き、しばらく考えていた。
そして、首を落とした。
「分かりました。私は、間違っていました。これから、真一を私達の娘と考えます。」
父は、うつむき、涙をぼろぼろと膝に落とした。

お父さんは、抱きあっている、妻と真一のところへ行った。
膝を折り、言った。
「真一。お父さんが悪かった。
 お前のことが今やっと分かった。
 俺と母さんで、真一は、今このときから、父さん達の娘だと考える。
 いままで、ひどいことをした。許してくれ、真一。」
お父さんは、涙ながらに、語った。
父は、真一を見た。
真一は、「お父さん。」と言って、父に抱きついた。
父は、真一を強く抱きしめた。

魔女っ子ルリがやってきた。
「一つ忘れました。」
そう言って、真一に短い棒を向けて、「ピロリン。」と言った。
すると、真一の髪は、もとの肩までの髪に変わった。

「わあ~!」と美咲たちは歓声をあげた。

ルリは、うふっと皆に言って、行ってしまいそうだった。
「待って、君は誰?」と忠男はいった。
「えへっ、忠男さんに、ペプラム・ワンピースを、
 一番初めに見せてもらったものです。」
「じゃあ、あのお婆ちゃん?」と忠男。
「はい。今のあたしが本来の姿です。
 みなさまの行動に感動しました。」
とルリは、ウインクを1つして、鳩になり飛んで行った。


つづく (次は、『全てがハッピーエンドに』最終回です。)


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無超能力者・高島忠男④「女装子2人の訪問」

少し長くなっています。この記事の次の次が、最終回です。
最後までお付き合いくださると、うれしいです。
また、今回は、特別企画として、友人のノンフィクションをご紹介します。
この記事のバナーの下にあります。

============================

朝になった。
美咲は、一足先に起きて、コンビニで、髭剃りを買ってきてくれていた。
これがあれば、女になんとか戻れるかもと思った。
さっぱりして、ドレッサーの前に座った。
「美咲、まさか、コンシーラ(痣・髭隠し)持ってないよね。」
と忠男は言った。
「ありますよ。あたし、今使ってませんけどね。」
「美咲は、永久脱毛したの。」
「高かったけどしたの。」
「いいなあ。」

「忠男さん。今朝、二人来ると思うの。話を聞いて上げて。」
「だれ?」
「一度は会っている子。」

忠男が一応メイクが終わって、カツラをかぶりいつもの黒いスーツを着たころ、
チャイムが鳴った。
「あ、来た。」
と美咲が言った。

二人の女の子が入ってきた。
二人とも、かなり可愛い。

美咲が、忠男に、座ってくれるように、ジュータンの上にマットを置いた。
そして、美咲も2人に入り、3人になって、3人が正座して、頭を下げる。
「あたしは、女装子のエリといいます。」
「あたしは、女装子の真美といいます。」
「あたしは、女装子の美咲です。」
「この度は、すみませんでした。」
と3人が頭を再度下げる。

真美という可愛い子が、説明した。
「あたし達は、大学で、三人でアングラ劇をやっていて、
 今まで『街頭パフォーマンス』をやってきたんです。
 それで、昨日は、渋谷のあそこで、
 女の子が2人の男に因縁をつけられて、体を触られて、
 そこを、うまく脱出するという街頭劇をやっていたんです。
 毎週金曜日の9時からやってます。
 で、女の子役は、あたし達の中で人気なので、交代でやります。
 昨日は、たまたま美咲でした。」

忠男は、言った。
「じゃあ、あの時の二人の男の子は、君達?」
「はい、男装していました。」と真美が答えた。

街頭劇というのは、知っている。分からなくもない。
忠男は聞いた。
「質問。どうせやるなら、どうしてもっと賑やかなところでやらないの。
 あんなところじゃ観客がいないじゃない。」

説明をエリが代わった。
エリは、小柄で、どう見ても可憐な女の子で、声も全く女の子だった。
そして、とびきり可愛い。

エリは言った。
「賑やかなところだと、警察がすぐきます。
 また、周りの人がほうっておきません。
 あそこなら、人が来ないから安全です。
 この半年、来た人は、忠男さんお一人です。」

「観客は?」と忠男。
「あそこは、マンションに囲まれています。
 みなさん、あたし達がやってること知っていて、
 金曜日の9時になると、窓から見てくれます。
 お芝居だと知っているので、警察に電話する人いません。
 劇を見た感想など、紙に書いて、紙飛行機にして、
 あたし達に、飛ばしてくれたりします。」

「なあるほど。」と忠男は、納得した。

真美が言った。
「それが、昨日は、忠男さんがいらして、
 あたし達初めてのことだったから、どうしていいかわからなかったんです。
 今、拝見すると、忠男さんは、やさしい方ですが、
 あの時の女性を、ものすごく恐く感じて、あたしたち、
 足がすくんで、逃げることもできなかったんです。
 窮鼠猫をかむっていうんでしょうか、追い詰められて、
 ぼくたち、攻撃するしかなかったんです。
 あんなに、恐かったのは、生まれて初めてです。」

忠男は言った。
「わかった。始めに『肩叩き』攻撃にきたのは、エリちゃんでしょ。」
エリ。
「はい。あたし、根っからの女だから、殴るなんて、どうするのかわかりませんでした。」
忠男。
「回し蹴りは、真美ちゃん。」
真美。
「はい。すいません。痛かったですか。」
忠男。
「うん。痛かったよ。
 でも、これで、全部わかった。あたし、好きよ、そういうの。
 面白いことやるみなさんのような学生さんがいるんだね。」
と忠男は、愉快そうに笑った。
三人。
「どうもすいませんでした。」と頭を下げた。

『それにしても。』と忠男は思った。
『こんなに可愛い女装の学生が、3人もよく集まったものだ。』と。

*    *    *

昨日の深夜のこと。
高校2年生・大森真一は、小さな公園の石山のトンネルの中で、
ジャンパーを頬まで上げて、寒さの中、震えていた。
女の子として生きたい…そう父親に言ったら、
父はかんかんに怒り、せっかく伸ばした髪をバリカンで寅刈りにされた。
母は、そこまでしなくともと、父を止めてくれたが、
結局、父には勝てなかった。
学校でいじめられていることも、女みたいなお前が悪いと、父にも母にも言われた。
兄弟のない一人息子だ。
親の気持ちが分からないでもない。

いじめられることに疲れた。
先生は、父母と同じことをいう。
女みたいに、なよなよしているからいけないんだ。
友達は、一人もいない。

お腹がすいた。
ぼくは、女の子だ。男らしくなんかできっこない。
このまま、体が、男らしくなるのが恐い。
疲れた。とにかく疲れた。
悲しむ気力もない。
この公園で2日目。
水しか飲んでいない。

誰も、ぼくのことをわかってくれない。
親は、探しにも来てくれない。
もう、何回も家出している。
ぼくのいる場所を知っているのに。
ぼくなんか、いなくてもいいんだ。
男のくせに、女になりたいという息子なんて、いらないんだ。

真一は、ポケットから、手紙を出した。
それは、遺書だった。
明日、これをビルの屋上に置いて、ぼくは、飛び降りよう。
朝の内に飛び降りてしまおう。
あんな裏通り。誰にも見つからず、ぼくは、死ぬ。
真一は、最後の力で泣いた。
さめざめと泣いた。

*     *     *

4人で、朝は、ハンバーガーのモーニング・サービスを食べに行くことにした。
3人とも自分を「あたし」と呼ぶ。
声も姿も、全く3人の女の子だ。
忠男一人が浮いていた。

忠男は、昨日、真美とエリが、自分のことを、
どうして、あんなに恐がったのか考えていた。
一人の女性の危機に際して、特別な力が出たのだろうか。

ハンバーガーの店まであと少しというとき、
忠男に衝撃が走り、足を止めた。
昨日の彼らのパフォーマンス広場あたりで、何かが起きている。
もっとわかってきた。
忠男は言った。
「みんな、聞いて。今ぼくたち4人がいっしょにいることは、
 偶然じゃない。タクシーで駆けつけよう。」

みんなで、広い道路に出て、タクシーを拾った。
そして、あの高架下の小広場へ駆けつけた。

魔女っ子ルリは、家族と朝食を取っていた。
が、ふとその手を止めた。
「ママ、パパ、あたし行かなくちゃ。ごめんなさい。」
ルリは、自分の部屋へ行き、箸のような杖を持ち、唱えた。
「今、鳩となりて、渋谷へ行かん。ピロリン!」
ルリの姿は、鳩となり、
開けた窓から一直線に渋谷に飛んだ。


つづく(次は、「少年を救え!」です。

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<紹介作品>               作:詩織

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私は女装子。
名前は詩織(仮名)。
本当の名前?
このブログの読者で私のことを知っている人も何人かいそうなので秘密でお願いします。
年齢?
29ということにしておいてください。


もう少し自己紹介しますね。
私は、普段は男性として生活をしているんです。
でも、仕事が休みの日は女装をして外出するのが日課。
ひとりでぶらっとショッピングに行ったり、映画を観に行ったりするのが好き。
女の子の格好をしているだけで幸せ。

でも、断っておくけど、私はノンケ。
男性には興味はないし、他の女装子さんとも仲良くなることはあるけど、恋仲になることはありえない。
つまり、恋愛対象は女性だけ。

なのに、こんなことになってしまうなんて。。。


「ホテル Alila」

ちなみにノンフィクションですので。。。



彼と会うのは今回で2回目。

一度目はお友達の紹介で知り合った。
それはたしか11月の最後の土曜日の夜。
年齢は聞いてなかったが、多分私よりは少し年上。

あのときは、車で送ってもらっただけ。
それなのに、その場でメアドの交換までしちゃった。
「今度、いっしょに食事にでも行こう。気が向いたら連絡をくれ。」
私を車から降ろすと、彼はそう言い残して去った。

翌日。
わざわざ車で送ってもらったので、彼にお礼のメールを入れた。
「昨日は、ありがとうございました。
今度、どっかお食事に行けるといいですね(*´∀`*)」

返事はすぐに来た。
「詩織さん、おはよう。
今度の土日で都合のいい日を連絡して。
いっしょに食事しよう。」

お食事だけならいいかな、なんて思い
「じゃ、日曜日。
時間と場所はどうしましょう?」
と返信。

お食事だけならいいよね。。。



1週間後の約束の日はあっという間にきた。
彼がランチをご馳走してくれるというので、素直に甘えることにした。

何を着ていこうかな。
前回会ったときは、かわいい系のお嬢様風のピンクのワンピを着ていったので、今回はがらっとイメージを変えて青を基調としたカットソーとデニムのミニスカというカジュアルスタイルにしてみた。

待ち合わせ場所には30分前に着いた。
「今、待ち合わせ場所に着いたよ~♪」
待ち合わせ時間5分前にメールを入れると、すぐ彼の運転する車が駐車場に現れた。
「行こうか。」
「どこに行くの。」
「いいところさ。俺に任せなよ。」

午前中から低く垂れこめてきた雨雲から今にも雨が降り出してきそうな空模様だった。
「雨降らないといいね」と私。
「天気予報では雨とは言ってなかったはずだから大丈夫さ」
「詩織、今村(仮名)さんのことなんてお呼びすればいい?
名字?それとも下の名前で?」
「下の名前でいいよ。
Ken、Kenさん、Kenちゃん。。。
なんでもいいよ。
「ぢゃ、『Kenさん』で」
漢字でどう書くのか聞くのを忘れた。

そんなことを話ながら1時間。
パラパラと雨も降りだしてきた。
「お腹空いてきたかい」と彼。
「うん。お腹空いちゃったw」
「もうすぐ着くからね。
あと少しの辛抱さ。」

車は海沿いの道を進路を東に走らせた。
「雨じゃなきゃ燈台にでも登ろうと思ったんだけどな。」
「だめよ。この風じゃ、ウィッグ飛んぢゃうもの。」
「ははは。」

和んだ雰囲気。
出会って2回目だというのに。
これが男女のカップルなら恋愛モード突入、というところだろうが、私にはそんな気はない。
そんなことも時々口にすることで距離をおいた。。。つもりだった。

「ここだよ」
彼がそう言って車を止めたのは、和風のたたずまいの落ち着いた感じのお店だった。
海沿いのお店ということで新鮮な魚が美味しい、と彼は説明をしてくれた。

入り口の右手には大きな「いけす」がある。
この中を遊泳している魚を調理してくれるのだろうか、そう思いながらブーツを脱ぎ座敷に足を運んだ。

「何にする?」
彼が開いてくれたおしながきには、安いものでも私が普段口にする食事の2倍から3倍の値段が書き込まれていた。

「じゃ、これで」
ボリュームのあるものは食べられないかな、と思い、一番安い定食を注文してもらった。
彼は、天ぷら定食をオーダー。

「おまちどうさま」
仲居さんが運んできたのは、豪勢なお魚の造り。
舟盛りといってもいいぐらいの木枠に入れられている。
さざえも付いている。

お箸から伝わる刺身の弾力に驚いた。
生き生きとした感触がお箸ごしに伝わってくる。

一口食べてみたら、さらにビックリ。
こんな新鮮で味わい深いお刺身は初めてだ。
「おいしい。。。」
本当においしいものを食べたときは、言葉が出ないというけど、そんな感じだったのだろう。

食事中は何の話をしたんだっけ。
忘れちゃったw
忘れるくらいだから、きっとたわいのない話だったと思う。

食事が終わり、店を出た。
雨は止んでない。


車は海沿いの道を進路を西に走らせた。
車を運転しながら、彼は私の膝を触ってきた。
まぁそ食事もごちそうになったし、これぐらいはいいかな。
私は拒むことはしなかった。

しばらくしたところで彼は左にウインカーを点滅させた。
そこは『リゾートホテル Alila』

「えっ、ダメ。詩織、その気ないよ。
 えちは嫌だからねっ」
焦りながら、そう言うと
「何もしないよ。話をするだけだから。
 だってこの雨だろ。外には出られないし。
 それともこのまま車を走らせろって言うの。」彼は半ば強引だった。

駐車場に車を止め、無言のまま車を降りる彼。
私も続いて車を降りた。
部屋を決め、どんどんエレベーターに乗る彼。
何も言わずについて行く私。

薄暗い明かりの中、彼はソファに腰掛け、その横に私を誘った。
話だけ。。。
そう話だけするつもりできたんだ。

ここでも何の話をしたか覚えていない。
覚えているのは、私の肩に回す彼の左腕と私の脚を撫で回す彼の右手の感触だけ。

その腕の感触が、私を引き寄せる力に変わるまでそう時間はかからなかった。
「話だけ。。。」
呪文のように自分でそう何度も念じていたはずなのに。
「恋愛対象ゎ女性だけ」
男性に抱かれるなんてありえない話だったのに。

でも、カラダは彼の誘うがまま。
く・ちびるを重ねられても抵抗一つしなかった。
彼の舌がは・いってくる。
拒むどころか、その舌に自分の舌をか・らめる。
肩に回していた彼の左手はいつしか私の胸をも・み、脚を触っていた彼の右手はスカートの中に忍び込んできた。

「だめ。話だけって言ったじゃん。」
「『話だけ』なんて言ってないよ。
『話も』って言ったのさ。」
「話が違う。。。」

都合のいいように言う彼。
それ以上反論しない私。

こうなることを拒んでいながらも、心の中ではこうなることをこうなることを望んでいたのではなかったのか。
彼と議論するのをやめ、自分自身に問いかけた。

場所はソファからベッドへ。
彼の熱い舌は、は・だかになった私の首筋、わき、胸をせめてきた。
「あぐぅ。ん。う~ん。
 いい。いいよぉ。詩織、気持ちいいよぉ。変になっちゃうよぉ。」
「変になっちゃっていいんだよ。」
「何なのこの感覚。詩織、男の人になんて興味ないのに。
 あ、あ。う、んぐぅ。」

いつしか彼の右手は私のPを触りだしていた。
「き、気持ちよすぎるよぉ。
 どうして。心は嫌だって言っているのにカラダが言うこと聞かないよぉ。」
私はあ・えぎながら、も・だえ、身をよじらせた。

私のカラダを這っていた彼の舌は、ついにPもし・ゃぶりだした。
「ひゃあ。ダメ。ダメだよぉ。いやだよぉ。」
でも体は嫌がっていなかった。

「こんなに気持ちいいの初めてだよぉ」
涙を流しながら、されるがままにされていた。

なんでこんなに気持ちいいの?
男の人にされるのは初めて。
男性として女性との性・体験は何度も経験あるけど、いつもする側でされる側じゃなかった。
されるってこんなに気持ちいいの?
それとも、私の女性の部分が目覚めちゃったから気持ちいいの?

いつしか彼もズボンを脱ぎだして、自分のPと私のPを重ねこすりだした。
私は。。。
私も腰を動かしている。

一度私のカラダから離れた彼は、ベッドの横に置いてあったカバンを開けている様子だった。
すぐに何やら取り出し、ベッドに戻ってきた。
Pに触れる彼の右手の感触からそれが何かわかった。
ローション。

彼は左手で私のち・くびをまさぐり、右手はPからAへと移行していく。
「ダメだよぉ。そこだけはダメだよぉ。」
気持ちのよさと恐怖心が入り混じりながら。。。
気が変になりそうだった。

「あ、入ってる。指が入ってるぅ。
 ダメ。ダメ~。
 でも。。。気持ちいいよぉ。」

「あ、あ、イ・クぅ。イ・っちゃう。」
「あ、あ、あ~」

私の温かいものが飛び散った。
「イ・っちゃったよぉ。詩織、イ・っちゃったよぉ。」
彼はティッシュを持ってきて、私のカラダを拭いてくれた。

「気持ちよかったかい。」
「詩織、気持ちよかったよぉ。」
「でも。でも、男の人にイ・かされちゃったよぉ。
 やだよぉ」
白いシーツを頭までかぶりながら駄々っ子のようにイヤイヤしながら答えた。

彼もシーツの中に入ってきて私を抱擁しながら、また唇を重ねてきた。
でも、彼はそれ以上はしてこなかった。
「もうこれ以上はしないよ。
 詩織がイヤがっているんだもん。」

してほしいという思いと、怖い、嫌だという思いの葛藤から解放された瞬間だった。


帰りの車の中で
「今日はありがとぉ。
 とても楽しかった。
 えち以外ゎ。」
イタズラっ子のよぉな表情で私は「イ~っ!」と言ってやった。

また、誘ってもらえるのかなぁ、なんて期待しながら。




The End

無超能力者・高島忠男③「美咲のマンションにて」

今日の記事は、危ういなあ…。どうか長持ちしますように。
読んでくださると、うれしいです。

===============================

美咲の部屋は、1ルームマンションだった。
ダイニングキッチンがあり、ベッドの部屋に、全てが置かれている。
2人がけのソファーがあった。
忠男は、ソファーに座った。
美咲が隣に来た。

思った通り、座った美咲の太ももは、半分以上が露出している。
美咲の呼吸は、すでに乱れていた。
それは、忠男も同じ。
美咲は、何も言わず黙っていて、
突然、忠男に抱き付いてきた。
「ああ、お姉様。好きなの。あたしのタイプなの。」
美咲はそう言った。

忠男は一回美咲を抱き締め、
美咲を前向きに座らせた。
忠男は片手を、美咲の肩に置いて、
もう片方の手で、美咲のベストのボタンをはずし、
美咲のブラウスのボタンを2つはずした。
美咲は、白い下着だ。

美咲の呼吸がどんどん荒くなる。
忠男は、美咲の胸に手を入れた。
あまり大きくはないBカップのくらいの胸だ。
忠男は、そっと手を動かし、
やがて、Bカップの先端を、爪で刺激した。

美咲が声をあげた。
必死に何かを耐えるように。

忠男は、パン・ストに包まれた美咲の太ももに、
手を移した。
『ああ、OLのパン・スト。最高。』と思いながら。
柔らかい感触の美咲の太ももをたっぷりさすり、
やがて、憧れのデルタ地帯に手を入れた。

パンストの縦のシームにタッチして、
シームに沿って、何度も指を滑らせた。
『ああ、感激。』と忠男は思った。
美咲が小さな声をあげる。

初めて、美咲に口・づけをした。
荒くなっている美咲の呼吸を吸い込むように。

その内、美咲が、忠男を押しのけて、立ち上がった。
座っている忠男に向かって立った。
「お姉様、あたしもなの。」
美咲がそういう。
忠男には、意味が分からなかった。
美咲は、スカートに手を掛けた。
そして、中のパンストとその奥のショーツに手をかけて、
一気に膝まで下ろした。
そして、自分のスカートを、徐々にめくり上げていった。

「ああ…。」と忠男の目は釘付けになった。
美咲の股・間には、女子にあってはならない物があり、
それは、隆々として、忠男の顔あたりに突き出ていた。

「美咲、君は…。」と忠男は、ガーンと頭に衝撃を受けた思いだった。
レストランからの美咲の姿をずっと思い描いた。
あの可愛い美咲は、男の子だったのか。
『ああ、美咲は男の子、美咲は男の子。』
忠男は、美咲の可愛い顔と、そのものを何度も交互に見比べながら、
感激で震える胸を、押え難く思っていた。

「お姉様、がっかりなさった?」と美咲は言った。
「とんでもない。最高。美咲みたいな可愛い子に、アレがあるなんて。
 夢みたい。感動。」
忠志は、美咲の目を見て言った。
忠男は、興・奮に気が狂いそうだった。

美咲は、ショーツを脱いで、制服も脱ぎ、ブラも取り、スリップだけになった。
「お姉様も、立ってくださらない?」と美咲。
忠男が立つと、美咲は、忠男のワンピースの背中のファスナーを下ろし、
それを脱がせた。
忠男の下着は、黒で統一されていた。
「お姉様のような美人が、女装子だなんて、信じられない。見せて。」
そう言って、美咲は、忠男の前にしゃがみ、
忠男のパンストとショーツを下ろした。

そして、見た。
しゃがんだ美咲の顔辺りに、忠男のものは、突き出ていた。
「ああ…、感激。お姉様は、女装子。」
と美咲は言い、美咲自身のアレをさらに隆起させた。
「美咲、あたしにこれがある方が好きなの?」忠男は聞いた。
「こういうレズビアンが、あたしにとって最高なの。」美咲は言った。

二人は、スリップだけになって、ベッドにあがり、毛布をかけた。
忠男は、自分に胸があるのが不思議だった。
二人で抱き合った。
男のもの同士が触れ合う。

「お姉様。」と美咲のくちびるが、迫ってくる。
口・付けをかわした。
そうしながら、お互い、相手の男の証に手を伸ばしていた。
「お姉様みたいな綺麗な人が、男性だなんて、信じられない。」
「あたしもよ。OLで可愛い社員のあなたが、男の子だなんて、奇跡だわ。」

二人は、くんずほぐれつして、高みに達した。
「ああ…お姉様…最高…。」
「美咲…可愛い…ああ…たまらない…。」
ベッドが汚れることも省みず、二人は放射してしまった。

忠志は、美咲を抱いていた。
「ああ、夢見たい。美咲みたいな可愛い子とできたの初めてだった。」
「あたしも、お姉様のような、ステキな人とできたの初めてだった。」
二人は、顔を見合わせて再びくちびるを交わした。



忠男は、夜中に目を覚まし
トイレにベッドから降りた。
隣に美咲がいる。自分は可愛いパジャマを着ている。
そうだ、ベッドのあと美咲とビールを飲みすぎた。

トイレを終え、洗面で手を洗おうとして、鏡を見た。
『あらら。綺麗な自分は終わり。ダサイ忠男になっている。』
一体、あの美女は、何だったんだろうなと思った。

このダサイ顔は、美咲に見せたくない。
髭まで伸びて最悪だ。
タクシーで帰るかと思い、ベッドサイドで、パジャマを脱ごうとした。
すると、美咲の手が伸びて忠男の手首をつかんだ。
「行かないで。」と言う。

「起きてたの?」
「うん。あの綺麗な人じゃなくてもいい。
 忠男さんでいいから、行かないで。」
「俺の本当の顔見たの。」
「あたしの方が先にトイレに行ったから。」
「俺、全く魅力のない男だよ。」
「そんなことない。あたしを助けに来てくれた。
 何にも抵抗しないで、殴られっぱなしで、
 全然強くないのに、来てくれた。
 強い人なら、来てくれるかも知れない。
 でも、強くないのに来てくれる人なんてめったにいない。」
「そ、そう言ってくれると、嬉しいけど。」
「せめて、朝までいて。朝食を食べていって。」
美咲はそう言った。
「うん。わかった。」と忠男は、ベッドにもぐり込んだ。


つづく(次回は、『女装子2人の訪問』です。


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無超能力者・高島忠男②「忠男・渋谷裏通りを行く」

今日は、ちょっと長くなりました。
読んでくださると、うれしいです。

==============================

昔からの繁華街といのは、華やかな裏に、
必ずさびれた、暗い、怪しげな区画がある。
渋谷もその例外ではない。
忠男は、街のそういう裏の地域が好きであり、
自然に足が向いてしまう。
安い場末の女装酒場があったりする。

時刻は、9時になろうとしていた。
忠男は、まるで戦時中を思わせるようなところを見つけて、
うれしくなり、歩いて行った。
『やっぱりな。渋谷と言えど、ちゃんとこんなところがあるのよ。』
忠男は、独り事を言った。

そこは、広い道路の高架下であり、暗い。
高架の壁がある。
周りには、マンションが並んでいるが、
そこだけは、ぽっかり取り残されたように、人がいない。

忠男が高架から降りて、そこにやってきたとき、
二十歳くらいの女の子が、二人の男に因縁をつけられていた。
女の子は、怖くて、高架下の壁に張り付いて、
今にも男から暴行を受けそうである。

「待てー!」と行って、忠男は、階段をかけ降り、
女の子の前に立ち、両手を広げた。
そのとたん、忠男は、後悔した。

『そうだ。俺、今は、超能力使えないんだっけ。』
いつもなら、超能力を使い、
相手に、忠男が、最強のプロレスラーか、
ヤクザの大親分に見えるような幻覚を与える。
すると、ほぼ100%相手は、逃げていく。

そんなことができるから、忠男は、どんな怖い場面でも、
助けに入って来たのだった。
それが、つい今までのつもりで、止めに入ってしまった。
『どうしよう。』
忠男は、震えた。
しかし、殴られればいいだけのことだ。
レイプはない。俺は男だから。

「早く、逃げて。」と女の子に言った。
「でも…。」と女の子はもじもじしている。
「逃げなさい!」と忠男は大きな声を出した。
女の子は、「すみません。」と行って、地面に落ちたバッグを拾って、逃げて行った。

「さあ、あたしを、殴って、早く消えて。」
と忠男は言った。
忠男は、武道の心得があったのだ。
大学の4年間それに明け暮れた。
超能力がなくても、2人を倒すことくらいできそうだった。
しかし、館長の教えがあった。

『街で因縁をつけられたら、殴られること。
 早めに、気絶をした真似をすること。
 お金を取られそうになったら、5000円ほど払え。
 そのために、ポケットに常に5000円用意せよ。
 それが、一番早く終わる。』

二人はなかなかかかってこない。
「早く。お出でよ。」と忠男は、両手を下げた。
その内、一人が、かかって来た。
だが、忠男は呆れた。

パンチというのは、ふつう真っ直ぐ相手に水平に出すものだ。
しかし、それが、このチンピラは、手を上から下に降ろすだけで、
まるで、お母さんの肩たたきをしている子供のようだ。
それは、「殴って」いるのではない。「たたいて」いるのだ。
威力も何もない。
忠男は、全て肩に打撃を受けていた。
『これじゃあ、気絶できないじゃない。』

だが、もう一人が、気の利いた足蹴りをした。
左から回し、忠男の脇腹に入った。
『これだ!』
とばかり、忠男は、なよっと地面に倒れ、
目をつぶり、気絶をした真似をして、
微動だにしなかった。

二人が、のぞき込んできた。
「お前、どうして逃げなかったんだ。」
「だって、怖かったんだ。足がすくんでさあ。」
「実は、俺も恐かった。足がすくんだ。
 で、たまりかねて、攻撃したんだ。」
「俺もだ。だけど、女の人をやるなんて。」
「俺達サイテーだな。」

「死んじゃったかな。」
「まさか。俺の脚蹴りで人が死ぬかよ。
 俺、本気じゃなかったし。」
「婦女暴行になるのかな。」
「なるよ。暴力ふるったんだから。」
「とにかく、逃げようよ。」
「ああ、これは、やばいな。」
そう言って、二人は走って行った。

声が若い。
中学生の不良かと思った。(あり得ることだ。)
お金も取らなかった。
『ラッキー、チンピラではない、ふつうの若者だ。』と忠男は思った。

しばらく寝ていると、さっきのされていた女の子が飛んで来た。
忠男の体を揺すって、
「あの、大丈夫ですか。大丈夫ですか。」
とくり返す。
忠男は、ぱちっと目を開けて、
「うん。大丈夫だよ。」と言って、起き上がった。
「全然平気。」と言って忠男は立ち上がった。
「ああ、よかった。」と言って、女の子は忠男を抱いて泣き出した。

「あの、何かお礼をさせてください。」とその子が言う。
「お礼って?」
「お食事はまだですか。」
「うん。」
「じゃあ、イタリア料理でいいですか。」
「ご馳走してくれるの。」
「はい。」とその子は言った。

その子が連れて行ってくれたのは、かなり小奇麗なお店だった。
ピザとビールをたのんだ。

女の子は、オーバーを脱いだ。
すると、紺のタイトスカートに、白いブラウス、紺のベスト。
つまり、OLの制服である。
「え、お仕事中だったの。」と忠男は聞いた。
「週末だから、洗濯しようと思って、制服のまま帰ってきちゃったの。
 オーバー着ればわからないし。」
と言う。
忠男は、女子のOLの制服が憧れの的だったので、密かに萌えてしまった。
おまけに、彼女のスカートは、かなりミニである。
見えはしないが、太ももの半分以上は露出しているはず。
『ああ、見たい。』と忠男は思った。

女の子は、美咲と言った。
「お名前聞いてもいいですか。」と美咲が言う。
「忠男。」
「うそ?」と美咲が驚く。
「どうして?」
「女の人じゃなかったんですか。」と美咲がまだ驚いている。
「またまた。あたしを喜ばす気?
 あたし見て、女装男だって、5m向こうからでも分かるでしょう。」

「わかりませんよ。誰が見たって、女性です。」と美咲は言う。
「このう、うまいんだから。ちょっとトイレ行ってくるね。」
と、忠男は言って、オーバーを脱いだ。
「わあ、そのペプラム・ワンピ、ステキ。」と美咲が言った。
「名前知ってるの?」
と言って、忠男は「え。」と思った。
『どうして、今、着てるんだ?あれえ?』
着替えた覚えなんてない。

忠男は首を傾げながらトイレに行った。
そしてすぐに帰って来た。
「だめ。男女共用じゃなかった。
 あたし、どっちも入れない。こまったな。」
「あの、女装がばれるって意味ですか。」美咲は言った。

「そう、こんなバレバレの女装で、女子トイレ入ったら、
 訴えられちゃう。
 でも、一応女装してるから男子トイレもはずかしい。
 ああ、入れないと思うと、どんどん行きたくなる。」
「絶対、女性でOKですよ。忠男さんを男性と見る人なんて、どうかしてます。」
美咲はそう言う。

忠男は、美咲にいっしょに来てもらった。
「中に誰もいないか見て。」
「いません。OKです。」
「じゃあ、入っちゃうね。神様ごめんなさい。」
そう言って、忠男は、女子の個室に入った。
助かったあと思いながら、用を済ませた。

人がいないことを確かめ、手を洗いながら、鏡を見た。
「うそー!」と思わず声が出た。
鏡に映っているのは、完全な女。そして、すごい美女。
ストレートの背中までの髪。
前髪がスダレで、額をまばらに隠している。
メイクも完璧。
あのステキな紫のワンピース。
Vに開いた胸に、ネックレス。
両耳に金属のピアス。
少し下がって鏡を見ると、抜群のスタイルをしている。

「わあ~、すごーい。」
と忠男は、夢うつつで、美咲のところへ帰った。

「美咲ちゃんさ。俺、急に超いい女になってた。
 いつものあたしじゃない。別人。どうして?」
「あたしを助けてくださったときも、
 今と同じ、すごくお綺麗な方だと思いましたが。」
「じゃあ、そのときは、もう…。」

忠男は、不思議なことが起こると、
謎が解けなくても、すぐ気にならなくなるという得な性格だった。

「じゃあ、『俺』なんて行っちゃダメね。名前なんにしよう。」
と忠男は、美咲に聞いた。
「あたし、『お姉様』って呼んでもいいですか。」
「え?それどういう発想?
 普通、お姉様って呼ぶの、レズビアンの子よ。」
「実は、あたし、そんなようなものなの。
 お姉様見たときから、胸がドキドキしてた。」
「あたし、女装の男よ。」
「それ聞いて感激したの。」

美咲は、可愛い。それに憧れのOLの制服。
女装に理解がある。
忠男は、ある物が、持ち上がって来そうだった。

料理を食べて、少しお酒を飲んだ。
「あのう、お姉様、殴られてケガをしてらっしゃるといけないから、
 あたしのマンションで調べて、お手当てします。
 来ていただけますか?」
と美咲は言った。
「うん、行く。」
『傷の手当ては、口実だ。美咲は、多分なになにを求めている。』
ああ、理想的な展開。忠男の胸はときめいた。



魔女の家の魔女っ子ルリは、自分の部屋の中から、夜空を見ていた。
「やさしい方。たった一晩の魔法なの。楽しんでくださいますように。」


つづく(次回は、『美咲のマンションにて』です。)

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無超能力者・高島忠男①「ブティックは恐い」

「スーパー洋子」の他に、「超能力者の高島忠男」というのをシリーズで前に書いていました。
今回は、超能力を失った高島忠男を綴ってみました。超能力が復活するかも知れないのですが。
読んでくださると、うれしいです。

=============================

高島忠男は、超能力者であった。
相手に幻覚を与えたり、感情を操作できる。
しかし、この頃、どうした訳か、超能力が使えない。
だが、彼は、めったに超能力を使うことはなかったので、
それを、失っても日常は、同じ様なものだった。

高島忠男は、役所の窓口の係りだった。
独身、一人暮らし、32歳。
毎日同じ仕事で、達成感もない。
いつもよれよれの黒い背広を着て、ネクタイも緩んでいる。
そして、黒縁の流行とはかけ離れた眼鏡をかけている。
髪もぼさぼさ。役所の中でも、最も目立たず、あてにもされていない人物だった。

忠男には、女装の趣味があった。
役所は、必ず定刻の5時に帰れるので、それが気に入っている。
忠男は、長年女装の趣味を持ちながら、少しも上達しなかった。
細身であることだけが幸いしている。
女性の下着をつけ、いつものように、黒のスーツ。
スカートは、ややミニ。

化粧をして、かつらを被る。
カツラはセミショートのもので、長年こればかりつけている。
というより、他のものを買わない。
お決まりのメイクをして、(驚くことに)職場の黒縁の眼鏡をかけて、
バッグをもち、夜の街に繰り出す。

完全に男とバレバレだ。
第一に、女らしい歩き方や、仕草、動作をしない。
平気で地声で話す。
忠男には、パスしようという気がまるでない。
ただ、女装をしていることだけで、十分なのだった。

その夜、女装して、黒のオーバーをはおり、
8時ごろの繁華街へ行った。
外は、寒いなと思って、
駅ビルのブティック街をのぞいていた。

こういうとき、一番嫌なのは、店員に声をかけられることだ。
一歩、店の中に入ると捕まる。
また、店員とは、絶対目を合わせてはいけない。
目と目が合ったら、もうOUT。

だが、その夜、忠男は不覚を取った。
ショーウインドウが、店の中につながっている店で、
つい、店の中に2、3歩入ってしまったのだ。

はっと気がつくと、40歳くらいの着飾った店長らしき女性がそばにいて、
満面の笑みを忠男に向けている。
忠男が女装者であることを、もちろん見抜いている。

「お客様。ワンピースをお探しですか?」
とにこにこと店長。
彼女は、この世の幸せは我にあり…というような笑顔を絶やさない。

『ああ、捕まった。』と忠男は、観念した。

「いえ、ただ、ちょっとぶらっと。」と忠男は言った。
「けっこうですわ。でも、ちょっと、ちょっとだけ。
 新作のいいものがありますのよ。ご紹介だけいたしますわ。」

店長の有無を言わせぬ「幸せ笑顔」に呑まれて、
忠男は、彼女の後ろについて行くしかなかった。

それから、店長の「ご紹介」が始まった。

「先ほど、このワンピースをご覧いただいてましたわね。
 お目が高こうございますわ。
 今、大人気の新作アイテムでございまのよ。
 これは、ジャケットの中に着るぺプラム・ワンピースです。
 上がニット・レースでぺプラム部分が花柄になっています。
 バックルで締めたり、ジャケットで甘辛ミックス。
 トレンチやファージャケットでキレイ目ガーリーもステキです。
 次のアイテムですが、バイカラーニットワンピ。
 長さも十分にあり身長のある方はもちろん、
 低めの方でも、下の絞りの長さがアレンジできますので、
 ご覧のように、あげて着たり、ベルトでしめたり、
 色んなアレンジが楽しめる万能アイテムでございます。

 あ、こちらもご覧になってらっしゃいましたね。
 またまたお目が高いですわ。
 こちらは、ファー素材ドルマントップス。
 オールファーで、肌触りはもちろん、着心地もよく、
 なんと腕の部分が花模様のニットレースになっておりまして、
 ガーリーキュートな趣でございます。
 また両袖が幸せフリルになっていまして
 大人可愛い気分にさせてくれます。
 これは、細身のスカートでキレイ目コーデにして、
 ヒラミニやチュチュなどに合わせて、
 ガーリー系や、スキニーでかっこよく決めるもよし、
 中にヒョウガラのタンクなんて、
 ちょっと意外で、ドッキリ・キュート。キラリ・アクセントで、
 胸キュン・スウィートのコーデも楽しめます。
 こんな感じで、今当店イチオシのアイテムでございすのよ♪」

「はあ~?」
忠男は、唖然としていた。
店長の言葉が、何にもわからない。
「アイテム」って何?
しかし、忠男は、「ペプラム・ワンピース」とやらを、
高い値段で、買ってしまったのである。
2万円近くした。
買いながら、何を買ったのかもわからなかった。

キレイな紙袋を提げて、忠男は、逃げるように駅ビルを出た。
『今日は、安い女装酒場で、いっぱいやるつもりだったのに、 
 とんだ出費でどうしよう。』
と思っていた。
『新宿ぶらりもいいけれど、渋谷にでも行ってみるか。』
電車もいいけれど、忠男は、バスで、夜の街をゆっくり見るのが好きだった。

渋谷行きのバスは、新宿の繁華街からはずれた、
淋しいところにある。
忠男はやってきた。
ベンチがあって、そこに80歳くらいのお婆ちゃんがいる。
気の毒に、昔のチャンチャンコを着ていたが、
袖や、胸元が開いているので、寒いらしく少し震えていた。

忠男は、自分の着ているオーバーを脱いだ。
そして、お婆ちゃんの横に座り、
お婆ちゃんの背中に、自分のオーバーをかけた。
「まあ、ご親切に。」
とお婆ちゃんは、忠男を見た。
「でも、それでは、今度は、あなたが寒いわ。
 どうか、オーバーを着てください。」
「いいの、いいの。女装すると不思議だけど寒くないのよ。
 女性の下着着るだけで、興奮するのかな、寒さを感じたことはないの。
 バスの中は暖房が効いているから、待つ間だけでも、着ていてください。」
と忠男は言った。

「そうですか。すみません。」とお婆ちゃんは言った。
「お買い物なさったの?」とお婆ちゃん。
「うん。無理に買わされたって感じ。すごい出費。すごい後悔。」
「少し、見せていただいてもいい?」
「うん。もちろん。」
忠男は、袋から1枚包装を取って、
ワンピースをお婆ちゃんに見せた。

「まあ、ペプラムワンピースだわ。ステキだこと。」
「ええ?」
忠男は、お婆ちゃんが、そんな言葉を知っていることにビックリした。
「お婆ちゃん、服見てペプラム何とかってわかるの?」
「そりゃ、女ですもの。」
とお婆ちゃんは、お茶目な目をして、くすっと笑った。
『女だって、ふつうわからないでしょう。』と忠男は心で思った。

バスが来た。
お婆ちゃんは、忠男にコートを返し、重々お礼を言い、
乗り込んだ。
そして、お婆ちゃんは、
渋谷まで行かず、途中の淋しいところで降り立った。
「お婆ちゃん、ぼくも降りて送りますよ。ぶっそうですよ。」
と忠男は言った。
「あなたは、どこまでも、やさしい方ね。
 大丈夫です。
 ありがとうございました。」
と頭を下げて、バスを降りて行った。
忠男は、バスの中から、お婆ちゃんを見送り、
やがて、すいたバスの座席に座った。



お婆ちゃんは、少し歩き、
外灯だけの暗い戸建の団地に入って行った。
その中の一件のドアを開け、
「ただいま、ママ!」と元気に言った。
母なる美形の人が顔を出し、
「ルリ、またお婆ちゃんごっこやったの?」

ママが、短い棒を、ルリにチロリンと振ると、
ルリは、お婆ちゃんの姿から、
17歳のチャーミングな娘に変わった。

「だって、ママ、お婆ちゃんになってみると、
 親切な人が、すぐ分かるんだもの。
 自分もお年寄りには、こうしなくちゃって勉強になるわ。」
とルリ。
「まあ、反対はしないけど、人様に迷惑をかけてはダメよ。」とママ。

「今日、特別親切な方にあったの。
 その方、男性で女装した方だったのだけど、
 あたしを見て、なんとご自分のオーバーを脱いで、
 あたしにかけてくださったの。
 『自分は寒くない。』っておっしゃってたけど、
 そんなはずない。
 あたしには、あんなことできないと思った。」
ママは、
「そう。それで、何かお返しをしたの?」
「ええ、ちょっとだけ。」
ルリは、そう言って、お茶目な笑いを見せた。


つづく(次回は、「忠男、渋谷裏通りを歩く」です。)

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男装の女の子に見えるケイ⑦「女子としての出発」最終回

軽くちょっと書くつもりで始めましたが、
今までで最長のお話になってしまいました。
これで、最終回です。
最後までお付き合いくださった方々、
ありがとうございました。

==========================

小部屋のソファーに座り、エリカがケイに言った。
「ケイ。このまま女の子で家に帰って、
 ご家族にカムアウトしたらどうかな。」

「エリカは、いつカムアウトしたの?」
「あたしは、高校に入るとき。
 長かった髪を、ベリーショートにして、家に帰ったの。
 みんなビックリしたけど、わかってくれた。
 お家の人がわかってくれると、ものすごく楽だよ。」

「そうだね。ぼく、女でいる方がずっと居心地がいい。
 小さいときから、女の子に間違えられるのが、嫌で、
 初めての人に会うのが、怖かった。
 今日の会してくれたでしょう。
 そのとき思ったの。女の子でいるって、ぼくにとってずっと幸せだなあって。
 女の子に間違われる恐怖から、逃れられるって。」

「あたしは、学校ではカムアウトできていないけど、
 ケイは、今日の会で、クラスの全員にカムアウトできたわけじゃない。
 もし、お家の人が分かってくれて、ジェンダー・クリニックで、
 女の子での生活の方がふさわしいっていう意見書もらえれば、
 学校も、女の子で通えるよ。」

「そうなんだ。うん。アドバイスありがとう。ぼく、そうする。」
ケイの言葉に、エリカはにっこりした。



ケイは、カラオケでの服と、エリカのウィッグを借りたまま、
家に帰った。
そして、エリカに言ったのとほぼ同じことを両親に話した。
そばに、美紀もいた。

父の政夫は言った。
「いいよ。ケイの気持ちは、ずっと前からわかっていたから。
 明日、ジェンダークリニックに行って、ケイがどのくらい女の子なのか診てもらおう。」
母の康子も賛成した。
「ケイは、女の子そのままだものね。今まで辛かっただろうなと思ってた。
 明日、クリニックにいきましょう。」
美紀が言った。
「お兄ちゃん、よかったね。
 それに、今日のお兄ちゃん、最高にステキだよ。」

翌日、学校を休み、両親とケイで、クリニックを訪ねた。
いくつかの内科的な検査と、外科的な検査と、
心理テスト、そして、先生との問診があった。

3時間ほど待って、医師から診断を聞いた。

「結論から言いますと、ケイさんは、性同一性障害とは、言えません。
 しかし、女の子として学校へ通うことをお勧めします。
 私は、ケイさんの外見上の女らしさは、あるストレスによって、
 男性ホルモンより女性ホルモンの方が優位であった時期があったのだと思います。
 これは、あくまで仮説ですが。

 小さい頃から、女の子に間違えられるのが怖いという思いが、
 トラウマになっているように思えます。
 そのトラウマから、開放されるために、いっそ女子として生活する方が、
 望ましい場合があります。

 また、心理テストを、3種行いましたが、高い母性性と、典型的な女性性がうかがえました。
 女性的な心をお持ちです。
 ただ、ご自分の身体の性への違和感が少ないことと、恋愛対象が女性であること、
 性自認が、男性であることから、性同一性障害とは認めません。

 そこで、学校で女子生徒として生活できるように、意見書を書きます。
 この意見書は、診断書とほぼ同等のものですので、
 それを、学校に提出すれば、女子として扱ってくれるはずです。
 女子トイレの使用、女子更衣室の使用、体育は女子の扱いとなるでしょう。
 あ、1つ大きなこと。服装は、女子生徒のものとなります。

 性同一性障害と認められませんので、ホルモン治療は、今のところお勧めできません。
 男性化を食いとめるための抗ホルモン剤の投与は、様子を見てはじめましょう。
 これは、女性ホルモンと違って、後戻りができます。
 女子としての生活を体験してから、男女どちらで生きていくか、考えていきましょう。」
医師はそう言った。

クリニックで、もう一つ。
医療用の最高級の人工乳房を購入した。
胸に吸着し、感触が本物の乳房に限りなく近い。

ケイの両親は、その日の内に、学校長と担任に「意見書」を見せ、
ケイは、女子生徒として扱われることとなった。

六月の下旬で、ちょうど夏服に変わるときであり、
女子の夏のセーラー服も、その日に買った。

ケイは、同じ日に、美容院へ行って、
一番女らしく見えるショートヘアーにしてもらった。

翌日の朝、夏のセーラー服を着たケイが、教室に座っていた。
後から来る生徒みんなに、「可愛い、おめでとう。」と言われた。

担任から、ケイに関する説明があった。
「というわけで、ケイさんは、今日から女子です。」
と担任は最後に言ったが、みんなは、すでに理解していた。

中休み、外に出ないで、もじもじしていた「もてない4人男」のところに、
ケイは、真先に行った。
「これからも、友達で、いてくれるよね。」とケイは言った。
「もちろんだ。ケイ、セーラー服、すごい似合ってるな。」
「ぜってえ、女の子だよ。」

そんな風に話していると、「美形4女子」が来た。
「あなた達だけで、ケイ独占するのずるい。」と郁美がいい。
「いっしょに、おっしゃべりしよう。」とエリカがいった。

「もてない4人男」にとって、これは大変なことだった。
「美形4女子」といっしょにいる。夢みたいだ。
「あなた達、もてないと思ってるようだけど、そうでもないんだよ。」と郁美が言った。
「そうよ。4人ともやさしいじゃない。」と愛美。
「自信もっていいと思うよ。」香奈。
と4女子から言われた。
男4人は照れていた。

そこへ、クラスにいたほぼ全員が、集まってきた。
「俺達も、入れろよ。」
「そうよ。ケイはみんなのものよ。」

こうして、20人くらいが集まってきた。
こんな光景が、毎日のように見られた。



ある日、男4人は、ケイといっしょに遊園地に行こうと決めた。
4女子がそれを聞きつけて、いっしょに行こうということになった。
男4人は、またまた、夢かと思った。

4女子は、それぞれ、カラフルにオシャレをしていた。
ケイは、メッシュの帽子をかぶっていて、すごく可愛かった。

香奈が、試合がありこれなかったので、
ちょうど、4対4になり、なんとなくカップルができた。
小柄の小坂に、小柄な愛美。
長身の長田にエリカ。
細井に郁美。
ケイに太田。

二人乗りの自動車で、洞窟を巡るアトラクションに乗った。
太田とケイがいっしょに乗り先頭だった。
太田はケイに言った。
「ケイは、天使だな。」
「どうして?」
「だって、俺達、美形4女子といるんだぜ。
 ケイが起こしてくれた奇跡だ。」
「4人男子が、やさしいからよ。
 だって、女みたいなあたしを仲間に入れてくれた。
 4人がいなかったら、あたし学校来れなくなっていたかも知れない。」
「そう言ってくれるのか。ケイはほんとにいい奴だ。
 『奴』じゃないな、『いい子』だ。」太田は笑いながら、涙をにじませていた。
「ありがとううれしい。」とケイは言った。

楽しい一日が過ぎた。
遊園地を出たところで、早く帰りたいという女子達とお別れをした。

遠ざかる女子達を見ながら、男達が言った。
「楽しかったなあ。」
「夢みてえだったな。」
「女の子が急にいなくなると、俺、淋しくてたまんねえ。」
「俺もだ。」

「あのう、あたし、ここにいるんだけど。」とケイが後ろから顔を出した。
「え?ケイ、女子達と帰らなかったのか?」
「だって、あたしたち5人組じゃない。仲間でしょ。」とケイ。

「おおー!」と4人は、喜んで飛びあがった。
「じゃあ、これから、もんじゃ焼き行って、ゲームセンターいって、
 カラオケ行って、たっぷり盛り上がろうぜ。
 ケイ、付き合えるか。」
「もちろん。最後まで、つきあうわよ。」とケイ。
「うぉおおおおおおお。」と男達は、空に向かって歓声を上げた。

午後の6時過ぎ。
六月の空は、まだまだ明るかった。


<おわり>
      ※次回は、まだ未定です。


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男装の女の子に見えるケイ⑥「ケイ、女の子デビュー」

長くなりました。次回、最終回です。

==========================

ケイの女の子デビューの当日になった。
時間は、7時から。
「美形4女子」は、カラオケで、30人入る部屋を予約していた。
そして、小さな部屋を、ケイの着替え用に借りた。
クラスのみんなに知らせた。
クラスは、35人。
何人来るかな?と4人は、考えた。
「20人は、来るよ。」とスポーツ少女の香奈が言った。
「いえ、全員来ると思う。」と才女の郁美が言った。

4人は、ケイのために、リサイクルショップに行って、
ステキな服を用意していた。
そして、靴、バッグ、装飾品。

7時近くなって、クラスの生徒がどんどん来た。
愛美と香奈が案内をし、人数を数えてきた。
学生服を着たケイが来た。
ケイを、すぐ郁美とエリカが別室に連れて行った。

4人が用意したのは、ステキな赤いワンピースだった。
胸が丸く開いていて、膝上10cm。
たっぷりなフレア・スカートで、裾にフリルがあしらってある。
アンダー・バストの少し下に幅広のリボンがあり、
背中で大きな蝶々結びにする。
ほとんど肩見せだが、少しだけ、赤い袖が肩の上を隠している。
郁美とエリカで、着せ替え人形のようにして、
ケイを女の子にしていった。

エリカが、ばっちりとメイクをした。
パッチリとしたつけ睫。眉を少し細くした。
シャドウも、派手にならない程度に、赤系統にした。
チーク入れる。服に合わせて、赤いルージュ。グロス。
そして、エリカは、ロングのウィッグを被せた。
完璧なお人形の出来上がり。

赤いサンダルをはく。くるぶしに装飾がある。
手に、黒いメッシュの手袋。
最後に、首に黒のベルト飾りをつけた。首の正面に赤いバラがある。
手持ちの黒い小さなバッグを持たせた。

「わあ、ステキ。すごく脚が長いから、ほんとお人形。」と郁美は言った。
「ね。正直言って、ケイより可愛い女子いないよね。」とエリカが言った。
「大きな声で言えないけど、その通り。」郁美は言った。
「あ、ありがとう。こんなにステキにしてくれて。」とケイは言った。
「絶対、みんな驚くよ。楽しみ。」と郁美は、ケイに言った。
「ケイ。少し挨拶の言葉考えておいて。」とエリカ。
「30秒くらいでいいんでしょ。」とケイ。
「うん。もっと長くてもいいけど。」とエリカは言った。

カラオケの大部屋には、郁美の予想通り、クラスの全員が来ていた。
周りのソファーでは足りず、ストールを10ほど出し、超満員だった。

ケイの部屋に、愛美が、
「OK?」と顔を出した。
ぱっとケイを見て、愛美は、「わあ~!」と目を輝かせた。
愛美が大部屋に戻った。

「みなさん、お待たせしました。ケイちゃんが来ます。」
カラオケから、音楽がなった。
「ケイ。行こう。」とエリカが言った。
「うん。」ケイは言った。
郁美と三人でいった。

ドアが近づいてくる。
ケイは、もう心臓が爆発しそうだった。
エリカが、扉を開けて、
「ケイちゃんでーす。」と言った。
ケイが、姿を見せた。
全員「はあ~。」と口を開けて、ケイに見とれた。
数秒して、すごい拍手が起こった。
女の子たちが、「キャー、可愛い!」とか、「うそー!」とか叫んだ。

「はい、音楽を止めて、静かにしてください。」
と郁美が言った。
「ケイちゃんから、ご挨拶があります。」
と言った。
音楽が止み、みんなは、シーンとなった。
ケイは、エリカを見た。
エリカはやさしそうに、目で、『どうぞ。』と言った。
ケイは、少し息を吸った、そして、話した。

「あのう、今日は、ぼくの女の子デビューということで、
 大勢集まってくれて、ありがとう。
 女の子デビューだから、『あたし』って言った方がいいのかな。
 あたしが、男であるか女であるか、実は、このごろ自分でもわかりません。
 どっちでも、いいかなと思っています。

 ぼくは、すごく女の子にみえるみたいで、一番男らしい学生服を着ていても、
 ラーメン店のお客さんから、『姉ちゃん』なんて呼ばれたり、
 駅のトイレに入ろうと思うと、『女の子は、あっちだよ。』なんて言われたり、
 嫌な思いをたくさんしました。
 そして、もっと男らしくなりたいといつも思っていました。

 普通、ぼくみたいな、女っぽい男子は、学校で、嫌がらせをされたり、
 いじめられたりすることが、多いようです。
 だけど、このクラスでは、そんな嫌なことをする人が誰もいなくて、
 ぼくは、毎日楽しく過ごすことができ、仲良しもできました。
 みなさん、やさしくしてくれて、ぼくは、幸せです。
 ほんとに、どうもありがとう。」

ケイは、そこまで、言うと、胸に込み上げてきて、涙を流した。
郁美が、さっとハンカチを渡した。

「今まで、自分で、男らしくなろうとして来ましたが、
 それは、やめました。女の子みたいでもいいんだって思えて来て、
 これから、女の子として、やっていけたらなと思っています。
 ぼく自身、半分くらいは女の子の心を持っているなって気がつきました。
 だから、これから、女の子としてのケイも受け入れてくれるとうれしいです。
 今日は、自分のことを「あたし」と呼びたいと思います。
 今日の会を開いてくれて、幹事さんありがとう。
 みなさんも、来てくれてありがとう。
 これで終わります。」

ケイは、頭を下げた。
男子も女子も、中に、何人も泣いている子がいた。
なかよしの4人の男子はみんな泣いていた。

少しの間の後、すごい拍手が起こった。
それから、みんな、ケイの取りあいになった。
そばの女の子たちの中に座ると、
「ケイ。もう、最高。可愛い。」
「もう、一番可愛い。」
そう言って、女の子たちが抱きしめた。
「ありがとう。うれしい。」とケイは言った。

男子のグループに行った。
「ちょと待て。ケイ。可愛過ぎる。俺、緊張してしゃべれねー。」
「俺も。超緊張。でも、ケイは、女の子でいてくれると俺はうれしい。」
「俺もだ。もう、ケイの可愛さに参ってる。」
「ありがとう。そう言ってくれて、すごくうれしい。」とケイは笑顔で言った。

ケイは、やっと「もてない4人男」のところへ言った。
4人ともすごく緊張していた。
「ケイ、ほんとに明日からも、俺達と付きあってくれるのか。」と太田が言った。
「もちろんよ。」とケイは言った。
「俺達、女の子との付き合い方知らないけど、どうしよう。」と細井が言った。
「あたしを、男だと思ってくれれば、いいよ。」ケイ。
「思えねえよ。ケイ、可愛過ぎる。」小坂。
「でも、さっき『仲良し』って言ってくれたの、俺達のことだろう。」と長田。
「そうよ。」とケイ。
「うれしくて、泣いちゃったよ。」と太田。
「4人とは、これからもいっしょ。ずっと仲良くしてくれる?」とケイ。
「ああ、もちろん。俺、うれしいよ。」と小坂。

「おーい、そこ長すぎる。今度こっち。」と対面のグループが言った。

その後、食べたり、歌ったり、
すごい熱気のまま、2時間がたった。

郁美が、最後にみんなを静かにさせた。
「はい、静かにね。
 では、最後に、聞くよ。
 ケイが、女の子だと認める人!」
「おー!」とすごい声が上がった。
「ときどき、男になってもいいと思う人!」と郁美。
「いいよー!でも、ずっと女の子がいい。」と何人かがいった。
「じゃあ、ケイに聞くぞ!今日は、身も心も女の子になれたか!」と郁美。
「はーい、なれました。最高にうれしかった!」とケイが立って叫んだ。
「はい、拍手。」と郁美。
みんなで盛大な拍手をして、会は終わった。



会が終わり、みんなが帰った後、
ケイと幹事の4人が残った。
エリカが愛美、郁美、香奈の3人に、
ケイと大事な話があるからといって、3人に先に帰ってもらった。

小部屋のソファーに座り、エリカがケイに言った。
「ケイ。このまま女の子で家に帰って、ご家族にカムアウトしたらどうかな。」


つづく(次回は、「ケイと大切な仲間」最終回 です。)

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男装の女の子に見えるケイ⑤「ケイ女の子疑惑」

なんだか、お話がすごく長くなっています。
(そんなつもりでは、なかったのに…。)
最後まで、がんばりたいと思います。
お付き合いくださると、うれしいです。

============================

<ケイ女の子疑惑>

ケイが、こっそり女子の下着を着けて学校に行くようになって、
10日くらいたった。
ショーツを履いているから、トイレでは、個室を使わないといけない。
学校のトイレはウォシュレットだったので、
ケイは、ちゃんと座って、終わった後は、
アレを、後方に曲げて、ビデをあてた。
そして、ちゃんと紙で拭く。
インターネットで、女の子に見えるショーツの履き方もわかった。
アレを股の下に回して、タマタマを体内に入れる。
そうして、ショーツを履く。

ブラもして行く。
ケイは、ブラパッドを1対買って、その厚みだけ、こっそり膨らませていた。
スリップ。
そして、Yシャツに学生服。

部屋の姿見で、背中を確認。
バレないなと思っていた。

ところが、ケイは気が付かなかった。
姿見では、わからなかったが、
学校の椅子に座って、机に前かがみになり、
腕を机に置くと、学生服の上着がピンと横に張って、
ブラのラインがわかる。
女の子のセーラー服だって、
机に前のめりになると、ブラのラインがわかる。

ケイが気が付いたとき、クラスの多くの男女が、
ケイの背中のブラのラインを確認していた。

そして、クラスのここそこで、
『ケイは、本当は、女の子ではないか。』
といううわさが広がっていった。

クラスに、『もてない5人男』というのがいた。
太目の太田。細めの細川。背の高い長田、
背では、ケイの後ろに並ぶ、小坂。そして、5番目にケイ。
5人は仲良しだった。
その5人目のケイが、「女の子疑惑」で別扱いになり、
今では、『もてない4人男』になった。

4人は、昼休み、校舎の陰に行って、ひそひそと話していた。
太田「ケイがブラしてるの確実だよな。」
細川「ああ。ケイは女の子だ。」
長田「でもよ。トイレは立ってしてたぜ。」
小坂「あれは、カムフラージュだよ。
   俺ら、ケイのチ△チン見たわけじゃねーじゃん。
   立ってやってる振りしてさ、後からこっそり個室行くんだよ。」

太田「俺、個室入ってくケイ知ってる。
   終わったとき、トイレットペーパー、カラカラと引く音聞いたもん。」
細川「水(ビデ)で、あそこ洗ってる音もきいた。」
長田「じゃあ、間違いない。ケイ、女の子だったんだ。」
太田「考えてみりゃ、あんな可愛い男、いるわきゃねーよ。」
小坂「おれ、ケイが女だったら、絶対惚れる。
   だって、俺より背が低いし。」

太田「俺も。エリカは美人。ケイは、どの女より可愛い。」
細川「でも、ケイはどうして男の格好してるんだ。」
長田「あれだよ。性同一性障害。それだと、学校でも男扱いだぜ。」
小坂「もったいねえ。あんなに可愛いのに、男になりたいのかよ。」
太田「俺達の力でさ、ケイに女でいることの幸せ教えてやろうぜ。」
細川「どうやって?ケイが男でいるから、俺達と友達だったんだぜ。
   ケイが女の子に戻ったら、俺達には、一気に高嶺の花だよ。」

そのころ、「美形4女子」という女子の4人グループがいて、話していた。
エリカ、小柄な愛美、才女の郁美、スポーツの香奈。
愛美「ケイが女の子って間違いなし?」
郁美「だって、誰が見立って女の子じゃん。」
香奈「ブラしてるし。ズボンのあそこ膨らんでないし。」
愛美「どうして、男の子の格好してるの?」
郁美「性同一性障害。女から男への方向。」

エリカは、何もかも知っていて、心で笑いながら参加していた。
エリカ「ね。あたしたちで、女でいることの幸せ教えてあげようよ。」
香奈「どうやって?」
エリカ「可愛い女の子の格好させてあげて、男子からモテモテになれば、
    女の子の喜び感じないかな。」
香奈「そんな簡単なもん?」
愛美「それ、いいかも。男子だけじゃなくて、
   あたしなんか、ケイが女装したら、抱きしめたくなるよ。」
郁美「そうよね。女の子だって、可愛い女の子好きだもんね。」

うわさ話からの実行力は、「もてない4人男」より、
「美形4女子」の方が、断然上だった。
『ケイが女の子の姿になり、カラオケボックスで、女の子デビューする。』
そういう計画が、「美形4女子」を幹事として、密かに進んで行った。

エリカは、こっそりその計画を、メールでケイに知らせた。
「今、『ケイ、女の子疑惑』があるの知ってる?
 クラスの大半の子は、ケイが実は女の子だって信じてる。
 そこでさ。ケイ、カラオケの大部屋で、女の子デビューしない?
 男子には、きっとモテモテになるし、女子のアイドルになるよ。
 これから、中に女子の下着着てたって、みんなあたり前だと思うし、
 学園生活楽になると思うんだけど。
 ケイは、男になりたい女の子だと、みんな思ってるの。
 だから、ケイは、自分は男でもあり女でもあるの。
 つまり、自分の性別なんて、言わないでいいと思う。
 ありのままのぼくを受け止めてっていえばいい。どう?」

ケイは、びっくりした。でも、すごくおもしろそうだった。
今まで、女の子にもてなかったけど、女の子のアイドルになれたら楽しい。

ケイは、エリカにOKの返事をだした。

ケイのカラオケでの、女の子デビューの日が決まった。

その前日、ケイは、「もてない4人組」に、昼休み、
体育館の裏に来てくれないかと言われた。

体育館うらで、太田がもじもじと言った。
「明日、カラオケがあるだろう。ケイが女の子デビューしたら、
 もう、俺達の届かないとことへ行っちゃう。
 だからさ、俺達「もてない5人男」のよしみで、
 1度だけ、ケイを抱き締めてもいいかな。」

「あ、ぼく、自分が男とも女とも言ってないよ。
 それで、いいの?」
「いいんだ。どっちでも。ケイは俺達の中で、アイドルだったからよ。」
細川が言った。

「ぼくにとってみんなは、ずっと仲間だよ。これから先もずっと仲間だよ。」
ケイは言った。

「え、ほんとか?ずっと俺達と付きあってくれるのか。」
小坂が言った。
「あたり前じゃん。ずっと友達だよ。」
「おお、うれしい。」と細川は言った。

「ケイ、1度抱きしめていいか。」と太田。
「いいよ。」とケイ。

太田は、恐る恐るケイの前に立った。
そして、ケイを抱きしめた。
「ケイ、お前やっぱり女の子だ。細いしやわらかい。」
「うん。」と言って、ケイは太田の頬に、キスをした。
「おおーー!」と太田は喜んだ。

それから、細井、長田、小坂に抱かれ、
ケイは頬にキスをした。

みんなは、「ヒャッホー!」と飛び上がった。

「もし、ぼくが男でも、怒らない?」とケイは聞いた。
「怒らない。どっちでもいい。ケイはケイだよ。」
とみんなは言った。


つづく(次は、『ケイ、女の子デビュー』です。)

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男装の女の子に見えるケイ④「キューピッドのケイ」

何度投稿しても、「アクセス不可」にされます。
今日は、外出しますので、再投稿ができません。
そこで、長いのを一挙に投稿します。
これで、「アクセス不可」になったら、泣いてしまいます。
どうか、1日もちますように。
読んでくださるとうれしいです。

============================

ケイには、ユタカが女の子としか思えなかった。
体をぴたりとくっつけた。
ユタカは、ケイの腕を抱いて、ケイの肩に頭をあずけてきた。
ケイは胸がドキドキした。
ユタカが可愛くてたまらない。

ケイは、周りを見た。
ボックスは、プライバシーがあり、囲われていた。
ケイは、ユタカのワイシャツのボタンを一つはずし、
その中に手を入れた。
思ったとおり、ユタカは、スリップとブラを着けていた。
ケイは、ユタカの体を下着の上から、なで回した。
ユタカは目をつぶっている。

ケイは、そっと、ユタカにくちびるを合わせた。
それを、何度もしているとたまらなくなってきた。
ユタカを抱いて、強く口づけをした。
ユタカが、かすかな声をあげた。
そして、ケイに抱き付いてきた。
(これ以上はまずい、と思った。)

「ねえ、ユタカ。安売り店で、女の子の服を買って、
 カラオケに行かない?」
とケイは言った。
「ええ、意味わかる。」とユタカは言った。

二人は、喫茶店の外に出て、「安売り王」なる店の前に来た。
だが、その隣に、リサイクルの店があった。
そこへ入って、可愛いミニのワンピース。サンダルを1000円で買った。
「安売り王」に行って見ると、ウィッグが、2000円で売っていたので、
セミロングのボブヘアーのを二人おそろいでかった。
100円ショップで、化粧品をいくつか買った。
そして、カラオケ・ボックスに入った。

「かつら、あたし初めて。ケイがいなかったら買う勇気でなかった。」
とユタカが興奮気味に言う。
「ぼくも、自分のカツラは初めて。」

二人で、男の上着を脱いだ。
「ユタカ、脇の下、綺麗にしてるの。」とケイ。
「もちろんよ。」とユタカは言う。
下着姿になった二人は、壁の大鏡で並んで映して見た。
「ユタカ、背がぼくと同じなんだね。」
「そうね。学生服脱いだケイが、
 こんなに女の子体形だとは思わなかった。背中の脇の下のラインが最高。」
「ユタカは、細くてモデルタイプだよ。」

二人は、アイメイクをして、ピンクのリップを引き、チーク。
ワンピースは、上がキャミソールになっている花柄。膝上15cm。
着てみると、二人ともばっちりだった。

ウィッグをユタカにかぶせた。
ブラシで整える。
「わあ、感激。」とユタカが言った。
「可愛い。たまらない。」とケイは言った。
ケイもかぶった。
ケイは外巻き、ユタカは、内巻きにした。
前髪に、ちょっと隙間を開ける。

ウィッグは、二人の女の子度を一気に上げた。
サンダルを履く。
2つのお人形の出来上がり。
ユタカもすごく脚が白くて長い。

二人は、大鏡の前で、飽きるほど自分達を見た。
「うれしいね。」と鏡を見ながらユタカが言った。
「うん。神様が、ユタカとあたしを引き合わせてくれた。」

二人は今度は、向き合って、
お互いの腰に腕を回し、
ガールズトークをはじめた。

「ユタカ、好きな男の子言って。」
「あたし、大里君かな。」
「え?アイツのどこがいいの。」
「だって、やさしいよ。この前掃除のとき、あたしのバケツ持ってくれた。」
「ユタカが好きだからじゃない?」
「彼、授業中、よくあたしのこと見てる。」
「ユタカも、アイツのこと見てるんでしょ。」
「実はそう。」
「わあ、もうラブラブの一歩手前ね。」

「ケイは、だれ。」
「あたしは、タカシ。」
「カッコよすぎじゃない。競争率高いよ。」
「でも、もう、手をにぎったよ。」
「うそ!急接近じゃない。」
「えへ。キ・スもしたりして。」
「うそ?ほんと!」
「ほっぺたにだけどね。」
「十分よ。ケイ、やるなあ。あたし負ける。」
「内緒だよ。」
「うん。わかってる。」

二人で、あはは・・と笑った。

「ガールズトーク、楽しいね。
 いままで、相手がいなくて心の中でやってたの。
 ケイに会えてよかった。」
「あたしも。」

そう言って、向かい合ったまま、
二人は、相手の体のいろんなところを触りあった。
ちょっと呼吸が乱れてきた。
二人はもっと接近して、くちびるを合わせた。
「ああ、ケイ、可愛い。」
そう言って、ユタカが、抱き付いてきた。
ケイも抱きしめて、深くくちびるを合わせた。

「ケイ。あたし幸せで、涙でそう。」とユタカは言った。
「あたしも幸せ。このまま時間が止まって欲しい。」ケイも言った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  ※ここは、割愛しました。

  ケイは、ユタカを立ったまま、

  天国へいざないます。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ケイは、ユタカのものを飲み込んだ。
立って、ユタカを抱いた。
「ああ、してもらったの初めて。天国にいっちゃった。」
ユタカは言った。

ソファーに座って、今度はユタカが、ケイをあいぶした。
ケイは、何度も女の子の叫び声をあげて、やがて天国へ行った。



二人ともすっきりして、ジュースを頼み、
それを飲みながら、ケイはユタカに言ってみた。

「ユタカは、体のことがなければ、男の子が好きなんでしょう。」
「うん、正直にいうとそうかな。レズも負けずに好きだけど。」

「ぼくの友達に、すごい美人の女の子だけど、男装が好きな子がいるの。
 ぼくは、レズっ子で、男の子は苦手だから、彼女もぼくの前では、
 完全な男装しないでいてくれるの。

 でも、彼女の本心は、男のメイクして、
 完全な男として女の子とセックスしたいんだと思うのね。
 で、ユタカと同じように、彼女も、体のコンプレックスがあるから、
 純の女の子とはできずにいるの。

 そこで、ぼく、彼女と、ユタカは、合いそうな気がするの。
 どう?一度会ってみる気ない?すごい美形だよ。」

「そう。お互い、コンプレックスがある同士なんだ。
 だったら、あたしが待ち望んでいた人かもしれない。」
「ぼくは、ユタカとレズ友でいられたらそれでいいから。」

ケイはそう言った。



ユタカと別れたその日の夜、ケイは、エリカに長目のメールを書いた。

「エリカ。
 今日ぼく、ぼくと同じ女装子のすごい可愛い子に会ったの。
 ぼくより、数倍女の子で、超可愛いの。背も年もぼくと同じ。
 ぼくは、どちらかというと、タカシよりエリカの方が好きなのね。
 でも、ぼくは、エリカは、
 思い切りタカシになって、女の子としたんだと思うの。

 その子とぼくは、レズ友だけど、
 その子の本心は男の子が好きなの。
 でも、体が男だから、純の男の子とは、
 コンプレックス感じて、できないでいるの。
 そこで、その子にエリカのこと話したら、
 『あたしが待ち望んでいた人かも知れない。』
 っていうの。

 エリカ。どう?その子に会ってみない?
 ぼくは、エリカとレズっ子の友達でいられればそれでいいの。
 だから、ぼくのことは、気にしないで。」

エリカから返事が来た。

「ケイ。ありがとう。
 ケイは、キューピッドになってくれてるんだね。
 あたし、その子に会いたい。
 ケイより可愛いなんて信じられないけど、
 世の中広いんだね。

 ケイは、タカシよりエリカの方がいいんだって、
 あたし、わかってたの。
 だから、タカシのときは、男のメイクを控えてた。
 ケイ、それ全部わかっててくれたんだね。

 だから、思い切りあたしが「男」やれるように、
 その子紹介してくれるんだ。
 ありがとう。
 その子、『タカシが、待ち望んでいた子かも知れない。』
 ケイ。じゃあ、アレンジお願いしていい?
 あたしの家は、日曜日は、必ずあたししかいないから。
 ありがとう。

 PS: 
 ケイとエリカは、永遠のレズ友だから、忘れないでね。
                     エリカ  」



エリカとユタカの約束の日。
ケイは、学生服で、エリカの最寄の駅で、
午後2時に待っていた。
やがて、ユタカが来た。
ユタカは、クリーム色の半袖のワンピースで、膝上15cmの丈。
生地は、薄い布との2重になっていて、
ふわふわですごいフェミニン。

ユタカは、ストレートの前髪のあるロングのカツラをかぶっていて、
メッシュのつば広の帽子をかぶっていた。
それが、キュートでたまらない。
メイクもばっちり決めていた。
肩から斜めに小さなバッグを提げ、サンダルを履いていた。

「わあ、ユタカ、超可愛い。勝負服に、勝負メイクだね。」
とケイは言った。
「ありがとう。昨日からドキドキして眠れなかった。」
とユタカは言った。
「タカシ、きっと一目惚れだよ。」
「だと、いいけど。」ユタカは言った。

エリカの家に着いた。
インターホンで、エリカを呼んだ。
「ユタカ連れてきたよ。」
「今すぐ、ドア開ける。」とエリカの声。
「じゃあ、ユタカ。後は一人だよ。
 ぼくはここで消えるから。」
「ええ?そうなの。いっしょにいてくれるのかと思った。」
とユタカ。

「ぼく、そんなに気が利かないヤツじゃないよ。」
「わかった。」ユタカが笑った。

ユタカが玄関に歩いて行った。
タカシがドアを開ける。
タカシは、エリカを見て、びっくりした顔をした。

そこまで、見届けて、ケイは、さっと駅に向かった。
電車の中で、想像していた。
エリカは、髪にジェルを塗って、男の子の髪を決めている。
メイクをして、誰が見てもイケメンの男の子になっている。
ユタカと少し話をして、そのうち、我慢できなくて…。
うふっ。
最後はどうするのかな?
そこは、わからないけど…。

ケイは、にまにましている自分に気が付いて、
あわてて顔を引き締めた。


夜になって、エリカではなくタカシの名でメールが来た。

「ケイ、ありがとう。
 俺、ユタカのことめちゃめちゃ好きになっちゃって、
 もう、めろめろだよ。ユタカは、120%女の子なんだもん。
 可愛い仕草見てるだけで、俺、むらむらと来ちゃって、抱きしめた。
 声が、めちゃ可愛い。

 体に、コンプレックスもってる同士だから、気が引けることなかった。
 二人で、最高にコーフンして、ベッドの上で、声出し放題。
 ありがとう。ユタカは、俺=タカシの恋人になってくれるって。
 早速デートの約束しちゃった。
 ケイ、ありがとう。ちょっと、エリカと代わるね。

 ケイ。あたしエリカ。
 タカシのこと。ありがとう。
 あたしの姿は、ユタカに見せなかった。
 エリカは、ケイだけのもの。
 あたしのはだかは、ケイにしか見せないから。
 タカシは、女装すると萌えるから、
 エリカとなって、ケイとまた愛しあたいって思ってる。
 タカシのことありがとう。

 エリカ                   」


ユタカからも、メールが来た。

「ケイ。ありがとう。
 あたし、タカシにめろめろ。
 ケイが言ったように、最高にステキな人。
 そして、やさしいの。
 タカシに抱かれて、幸せだった。
 生まれてはじめて、男の子とできて、
 感激して、泣いちゃった。
 タカシとデートの約束した。
 今、夢見る気分なの。
 ケイに、タカシを紹介してもらって
 本当によかった。

 ケイとは、今度、レズっ子遊ぼうね。
 タカシと同じくらいケイも好きだから。
 じゃあ。ありがとう。

 ユタカ               」

二人のメールを読んで、ケイは幸せな気持ちになった。
ジェラシーなんて、少しも湧かなかった。
エリカは、タカシとして、当分ユタカのもの。
ま、それは、しょうがないかと、
ケイは、くすっと笑った。


つづく(次回は、「ケイの女の子疑惑」です。)

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男装の女の子に見えるケイ③「ユタカとの奇跡の出会い」

再投稿 18:20 一部かつ愛したものを投稿こうします。

どう表現を変えても、「アクセス不可」になり、仕方なく、その部分を割愛して投稿します。
そんなに、過激な表現はなかったのですが、残念でなりません。
読んでくださるとうれしいです。

===============================

「あたし、せっかく服着たのに、また脱ぐね。
 ルミも下着だけになって。」
エリカはそう言って、服を脱ぎ始めた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ルミとエリカは、ベッドの上で、

ルミがお姉様になって、

エリカをなぐさめます。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

波が聞いたとき、エリカは、ルミを抱いてきた。
「ああ、ステキだった。やってもらったの初めてだから。
 ああ、幸せ。ルミ、ありがとう。」
エリカは、そう言った。
「あたし、ステキなエリカの様子を見ているだけで、
 もうたまらなくなって、いってしまいそうだった。」
とルミは言った。



エリカはワンピースを着て、ケイは、男の姿に戻った。
コーヒーテーブルで、またお話をした。
「ケイは、あたしが浮気したら怒る?」とエリカが言う。
「うーん、相手による。」とケイ。
「例えば、あたしが女の子としたら?」
「多分、ジェラシーしない。」
「可愛い女装子さんとしたら。」
「ぼくも、その女装子さん好きになっちゃうから、ノージェラシー。
 3人でしたくなる。」
「あたしが、女になって、イケメンの男の子としたら?」
「あ、それジェラシー。ぼく、カッコいい男子に劣等感あるから。」
「そうか。安心して、あたしが、男っぽい男の子とするなんて絶対ないから。」
「それ以外なら、エリカが誰としても、平気。」

「あたしは、ケイに対して、そうだなあ。
 ケイが女の子になって、カッコいい男の子としたら、悲しい。
 あたし、本物の男子には、かなわないから。引け目感じて辛い。
 それ以外なら、ジェラシー感じない。」

「ぼく、エリカを独占しようなんて思ってないから、
 エリカは、自由だよ。」ケイは言った。
「あたしも、ケイを独占しようと思わない。
 ケイみたいな子、めったにいないから、独占しては、悪い気がする。」とエリカも言った。

エリカの家から帰るとき、
エリカは、大きな紙袋一杯のお古の服や下着をくれた。それを、2つ。
ケイはうれしかった。

「またね。」とケイは言った。
「うん、絶対またね。」
と、エンタランスの入り口でまで見送りにきたエリカは言った。
見送られるときは、やっぱり、タカシよりエリカがいいかな。
ケイは、そう思った。


<ケイ、ユタカと奇跡の出会い>

六月の中旬だった。
2年生としては、初の模擬試験があった。

ケイは、エリカに服や下着をもらってから、
外に行くときは、ブラとショーツを着け、
スリップをかぶり、その上からYシャツに学生服を着て行くことを覚えた。
女の子の下着をつけているだけで、うれしかった。
しかも、それは、エリカの。

模擬試験の会場は、池袋だった。
ケイは、試験を終えて、昼になったので、
駅構内の立ち食いが集まっている店に入った。
大好きな、てんぷらそばを、
丸い大テーブルにおそばを運んで食べていた。
ケイは黒に金ボタンの制服を着ていた。

そのとき、丸テーブルのケイの向かいに、
制服を着た可愛い女の子がそばを食べていた。
髪は、ケイくらいのショートで、
ゆるい天然のウエーブの髪と、ほっそりした首が、とてもその子をキュートに見せていた。
ネクタイ式の、ブレザーの制服を着ている。

女の子が、立ち食いの店で、一人で食べているのは珍しい。

ケイは、その子の可愛らしさに惹かれ、
そばを食べながら、ちらちらと見ていた。
すると、なんとなく、その子も、ケイを見ている気がした。
目が合うと、二人ともさっと目をそらす。
『なんで、ぼくを見ているんだろう。
 また、女の子に見られているのかな。』とケイは思った。

そのうち、その子が食べ終わって、
お盆を持って、食器の返却口に持って行った。
そこで、ケイは見たのだ。
その子は、スカートではない。ズボンだったのだ。
ケイは、ガーンと衝撃を受けた。
じゃあ、あの子は、女の子ではなくて、女の子に見える男の子。
自分と同じ。

絶対友達になりたい。

その子が、行ってしまう。
ケイは、少しそばの汁が残っていたが、
それを、素早く返却して、その子の後を追いかけた。

ケイは勇気を出した。
追いついて、声を掛けた。
「あのう、君。」
その子は立ち止まって、ケイを見た。
「あのう、もしかして、君もぼくと同じ運命かと思って。」
その子は、にっこりと笑顔を作った。

「よかった。声をかけてくれて。ぼくから、君に声をかける勇気なかったから。」
「ほんと。よかったら、どこかでお話しない。」
「うん。うれしい。」
とその子は言った。
「ぼく、ケイ。ケイって呼んで。」
「ぼくは、ユタカ。ユタカって呼んでね。」

二人ならんで、駅の外に出るところだった。
ユタカのすぐ足元に、誰かが吐いたゲロがあった。
ユタカがそれを踏みそうだった。
「ユタカ君、足元!」とケイが教ええた。
ユタカは踏む寸前だった。気が付いてユタカは、
「いやん。」と言ってケイの腕にしがみついた。
(あ、ユタカはぼくより、女の子。)

ユタカは、自分が発した言葉と動作に、
気まずそうに、顔を赤らめうつむいていた。
ケイは、フォローしなくてはと思った。
「ぼくも、ときどき、そういう言葉言っちゃう。」
とケイは言った。
(ケイが言うのは、女の子になったときだけだったが。)
「ありがとう。フォローしてくれて。」
ユタカは、そう言った。
ユタカは人の心がわかる子なんだなあと思った。

後ろから見れば、すぐわかったのだろうが、
ユタカの歩き方は、女の子歩きだった。

少しゆったりできる喫茶店に入った。
ボックスがしっかり出来ていて、プライバシーがある。
ユタカはきちんと背を伸ばして座っている。
「ぼく、ユタカのこと、可愛い女の子だなって見てたの。
 でも、ズボン履いていることがわかって、すごくうれしかった。
 あ、ぼくと同じ運命の人だなって。」

「あたしは、あ、ごめん、ぼくはケイが学生服だったから、男の子だと思ったけど、
 それにしては、可愛過ぎる子だなって思って、胸がドキドキしてたの。」
「ユタカは、性同一性障害?」とケイは聞いた。
「ちがうと思うわ。女装子だと思う。女の子好きだし。
 でも、あたしが、女の格好でいるときは、男の子に抱きしめられて、
 くち・づけされたいって思う。
 でも、あたし、自分の体のことが恥ずかしいから、男の子は、無理。」

「ユタカは、ぼくより、ずっと女の子なんだね。」
「ええ、多分そう。ケイのことあまり知らないけど。
 あたし、女の子でいるとコーフンしちゃうの。
 GIDだったら、女装してもコーフンしないでしょ。
 あたし、女の子の真似すると、コーフンするの。
 声とか、話し方とか、仕草とか、練習した。
 心で、話すときも、女なのよ。それだけでも、感じちゃう。
 GIDの子は、練習なんかしなくても、自然に女の子じゃない?」

ウエートレスが来た。
「コーヒー。」とケイは頼んだ。
「あたし、オレンジジュース。」
とユタカは言った。
ユタカが、『あたし』と言ったことに、
ウェートレスは、特に反応しなかった。
ユタカを女の子と思ったんだと思う。

気が付くと、ユタカは、完全に女言葉になっていた。
言葉だけではなく、動作や仕草、表情が、全部が女の子。
ケイは、それに、少なからずコーフンしてしまっていた。
今、すぐ、キ・スしたい衝動にかられていた。

「可愛い女装子さん見ると、萌える?」ケイは聞いた。
「ええ。萌える。だから、ケイのこと見てたの。」
「ぼく、今、ユタカに萌えてる。
 ユタカの女らしい様子だけで。」
「うれしい。いつかレズごっこしよう。」
ユタカは笑った。その笑顔がキュートだった。

オレンジジュースとコーヒーが来た。

「オッパイあったらいいと思う。」とケイが聞いた。
「もちろん。」
「アレを、失くしたいって思う。」
「ルックス的には、失くしたい。
 でも、あたし、シーメール好きだし。
 綺麗な女の人にアレついてるの見ると、萌えちゃう。」
「やっぱり、ユタカは、GIDじゃないみたいだね。ぼくと同じ。」

「ユタカの隣、行っていい?」とケイは聞いた。
「ええ、来て。」とユタカは言って奥に体をずらした。


つづく(次回は、『天下の女装子ユタカ』です。)


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男装の女の子に見えるケイ②「マドンナの秘密」

<再投稿>17:56
どこで切っていいかわからなくて、一挙に投稿します。
少し長いです。読んでくださるとうれしいです。

=============================

どこもそうだが、ケイのクラスにも、マドンナがいる。
背は、168cmで長い髪。
抜群のスタイル。
クラスの女子の2番目に背が高い。
顔の堀が深くて、色白なので、ハーフのようにも見える。
セーラー服をいつもきちんと着ていて、おしとやか。
相原エリカという。
クラスの男子のほとんどが、エリカが好きだった。
知的な顔立ちなのに、唇が少し厚くて、そこがとてもセクシーだ。

ケイもエリカが好きだった。
クラスの男子が羨ましかった。
背が中くらいの男子でさえ、エリカの168cmは超えている。
せめて、エリカと同じだけ背があったらなあと、
ときに、とても悲しくなる。
自分は、男らしさから、遠く離れた人間だ。
バスケやサッカーでたくましい筋肉を見せて汗をかいている男子を見ると、
ジェラシーに胸が痛くなる。

そんな、ケイの悲しい日々に、ある日奇跡が起きた。
部活に属していないケイは、みんなより早く帰る。
靴箱の外靴を取ると、二つ折りのメモが入っていた。
開いて見ると、簡単な伝言。

『明後日の日曜日、遊びに来て。エリカ』

うそー!と思った。
いや、ぬか喜びは禁物。
エリカが自分にこんなメモをくれるはずがない。
これは、男子のいたずらだ。
ぼくが、メモを信じて、のこのこエリカの家に行き、
エリカに、「何のご用?」と言われ、追い返されるのを笑う気だ。
『その手にのるか。』とメモを丸めようとして、ふと見ると、
メモの裏に、メールアドレスと、電話番号が書いてある。

メルアドはニセ物という可能性はある。
しかし、電話はかけてみれば、エリカのケータイかどうかわかる。

でも、エリカがどうしてぼくを家に招いてくれるのか。
ありえない。
エリカが、男子と組んで、ぼくをからかおうとしている。
それは、ない。
エリカはそんなことをする子では、絶対ない。
心のきれいな子だ。
じゃあ、メルアドも電話番号も本当だろうか。
ケイは、夢見るような気持ちで家に帰った。

夕食後、1時間ほど待った。
ケイは、エリカに電話をかけようと思った。
本人かどうか、電話の方が確実だと思った。
聞きたいこともある。
エリカと話しをするには勇気がいる。
でも、メモが本当なら、エリカと1対1で話せる絶好のチャンスだ。
ケイは、電話番号を押した。
数秒待った。
「はい、エリカです。ケイくん?」
エリカの声だ。
(わあ、すごい、やったー!と思った。)

「あ、ぼく。メモ、びっくりしちゃった。あれ、ほんと?」
(ケイは、外では自分を『ぼく』と呼ぶ。)
「うん。ほんと。他に方法思い付かなくて。」
「ぼく、信じられなくて、誰かのいたずらじゃないかって、
 さんざん迷った。どうして、ぼくなの?」
「ケイくんならわかってくれそうな気がしてるの。」
「何を?」
「それは、来てくれたら、打ち明ける。」
「うん。わかった。じゃあ、ぼくからメールするから、
 そのアドレスに相原さんの住所教えてくれる。
 パソコンで場所探していくから。」
「うん。そうする。ありがとう。」

メモは、本当だった。
エリカがわかって欲しいことってなんだろう。
それにしても、エリカと二人きりになれるなんて、
ああ、どうしよう。
今夜は眠れないかも知れないと、ケイは思った。



日曜日の2時に、エリカの家に着いた。
大きな家だった。
インターホンを鳴らすとエリカの声がした。
「今すぐドアを開けるから。」とエリカは言った。
ケイは、エンタランスを歩いて、ドアの前に立った。
ドアが開いて、ビックリした。
一瞬、エリカのお兄さんかと思った。
「ケイ君、入って。」と声はエリカだ。
ケイは、玄関に入った。

学校で長い髪のエリカは、ケイと同じ様なショートヘアだった。
(妹の真美の言葉によれば、女の子風ショートだ。)
黒のコットン・パンツを履いていて、
黒いサマーセーターを着ていた。
胸の膨らみがない。

一口に言えば、エリカは、男装していた。

エリカの部屋に通された。
とても、広い。ソファーとベッドとピアノがある。
エリカの部屋は、どちらかというと男の子の部屋だった。
「今日、家族いないの。飲み物もって来るね。」
とエリカは部屋を出た。
エリカが、紅茶とリンゴを持ってきた。
ソファーの前のコーヒーテーブルで、
ジュータンに座った。
エリカは、女の子座りだった。

「相原さん、髪の毛切ったの。」とケイは聞いた。
「これが、あたしの本当の髪。学校での髪は、かつらなの。
 便利よ。長い髪を洗うのって大変だけど、
 カツラだと、そんなに洗わないで済む。」とエリカは、言った。

「あのう、それからさ。相原さん、胸がぺったんこ。」
「ああ、これね。ナベシャツっていうの着けてるの。
 胸の膨らみ隠してくれる。」エリカは言った。

「もう、わかった?」とエリカがいう。
「性同一性障害なの?」
「そこまで、いかないと思う。
 女装子さんっているじゃない?

 あたしは、男装子かな?
 家に帰ったら、カツラをとって、
 男の格好をして、男のメイクを少しして、
 男言葉使っているの。自分のこと『俺』って呼んでる。
 男の格好をするとき、少し興奮する。
 ねえ、胡坐かいて座っていい?」とエリカが言う。
「うん、もちろん。」ケイは言った。
エリカは、男の子のように胡坐をかいた。

「ぼくみたいな、男子が好きなの?」
「あたしは、男っぽい男子は好きになれない。
 同性だって思うから。
 可愛い女の子や、可愛い女装子さんが好き。」
「ぼくは、どの部類?」

「ケイ君には、失礼だけど、
 ケイくんを見てると女の子って感じるの。
 すごくあたしのタイプなの。
 初めてケイ君見たとき、胸がドキドキした。
 ケイ君が女装してくれたら、最高。
 あたし、完全に萌えちゃう。」

「女装したぼくに、口・づけしたいなんて思う?」
「うん。抱きしめて、口・づけして、最後まで……。」
最後まで…。
ケイは、エリカの言葉に、気絶しそうだった。

「この前、妹が、ぼくを女装させて、メイクまでしてくれたのね。
 本心をいうと、嫌じゃなかった。逆に興ふんしちゃった。」

「本当?じゃあ、女装して。あたしのためにしてくれる?」
エリカは、目を輝かせた。
「メイクはできないから、相原さんしてくれる?」
「うん。うれしい。」

リンゴを食べ終え、エリカは、紙袋を持って来た。
「ケイ君。これ、着古しで悪いんだけど、
 あたしの背が、ケイ君くらいだったときの衣類なの。
 これ、着てもらっていい?
 ケイ君が女装してくれるかも知れないと思って、選んでおいたの。」
とエリカは言った。
ケイは、マドンナ・エリカの一度着た服というだけで、
胸がときめいた。新品より、ずっとうれしい。

ケイは、上半身はだかになり、後ろを向いた。
「ケイ君の脇の下、綺麗にしていい?」とエリカが言う。
「うん、いい。」
「じゃあ、両腕を上に挙げて。」とエリカ。
ケイがそうしていると、エリカは、包装用の強力なテープを切って、
ケイの脇の下に、それぞれ上下2枚ずつ貼った。

「ちょっと痛いかも。」
エリカは、そう言って、そのテープを、毛の向きと逆に、ピーとはがした。
「触ってみて。」とエリカが言う。
ケイが触ってみると、脇の下が無毛になっている。
『ああ、いい感じ。コーフンする。』とケイは思った。
「この女性ホルモン入りのクリーム塗ると、1ヶ月は生えて来ないと思う。」
エリカは、そういって、クリームを塗ってくれた。
甘いバラの香りがした。

エリカは、次にブラをつけてくれた。
『わあ、エリカのブラ。』と思って、ケイは、震えた。
ピンクのブラに、細くて赤いリボンがついている。
エリカは、ブラの隙間につめ物をした。
そして、ピンクのスリップを着せ、
膝上15cm位のピンクの半袖のワンピースを着せた。
アンダーバストくらいから、スカートになっている。
胸が大きく開いて、白い大きな丸襟がついている。

「ショー・ツだけは、新品だから。
 目をつぶっているから、履いて。」とエリカは言った。
ケイは、ズボンとトランクスをぬいで、ピンクのショー・ツを履いた。
ああ、手が震える。

「わあ、ケイくん、脚長いね。」
とエリカはうれしそうに言った。
脚に膝上までの白いストッキングを履いた。
絶対領域が少しある。

ドレッサーのストールに座った。
エリカは、アイメイクをばっちりとやり、
シャドウやチークを手早く塗った。
薄くピンクのリップを引き、グロスをたっぷりと塗った。

ケイは、鏡を見た。
そして、ドキン。
美紀がやってくれたあの女の子に再びなっている。
今日の方が少し華やかで、ピンクっぽい。
「あたし、ウィッグ2つもってるから、これね。」
といって、エリカは、長い髪で、前髪のあるウィッグを被せた。
ロングへヤーになった自分を見て、
「あ。」とケイは声がでそうになった。
ウィッグで、一気に女の子度がアップした。
エリカは、ピンクの花がついたカチューシャを、ケイの頭に差した。

「可愛い。予想したより、ずっと可愛い。
 絶対、だれが見ても女の子。」
エリカがうれしそうに言った。
ケイも我ながら、恥ずかしいほど女の子だと思った。
立って見ると、脚が長いので、お人形である。
「ぼく、女の子に見えちゃうね。」とケイは言った。
「見えちゃうなんてもんじゃないよ。超女の子。」

「ケイ。女の子になったんだから、自分のこと『あたし』って呼ぶの。
 いい?」
「うん、そうする。」
「それから、女の子言葉使うの。」
「うん。できると思う。」
「ええ、できると思うわ、って言ってみて。」
「ええ、できると思うわ。」とケイ。少し恥ずかしい。

「じゃあ、今から、あたし、男言葉使っていい?」
「ええ、いいわよ。」
「自分のこと『俺』って呼ぶけど、いい。」
「いいわよ。」
ケイは、女言葉を使うたびに、倒錯的な喜びを感じている自分に気が付いた。
ああ、うれしい。もっともっと女の子になりたい。そう思った。

「ケイ、俺のこと『タカシ』って呼んでくんない。」
エリカの言葉が変わった。声も低く男の声に聞こえる。
「いいわよ。」ケイは、タカシ(以下、タカシ)を見て言った。
「ケイのこと『ルミ』って呼ぶ。ルミは、自分のこと『ルミ』って呼ぶ。いい?」
(あ、それ、感じる…とケイは思った。)
「ええ、そうするわ。」とルミ(以下、ルミ)は、言った。

「ルミ、可愛い。」
そう言って、タカシは、ルミを抱き・しめた。
ああ、気絶しそう。
抱きしめてくれているのは、タカシでありエリカなのだ。

タカシのくち・びるがせまってきた。
(え?ほんと?)
タカシのくち・びるが、ルミのくち・びるをとらえた。
(ああ、エリカが口づけしてくれてる。夢なら覚めないで。)
ルミは、一気にこう・ふんした。

二人でソファーに座った。
「あ…、ルミ、可愛い。俺のもの。あ…、たまらない。」
そういいながら、タカシは、ルミの首や、胸や、頬に口・づけをしてくる。
そして、ルミの体のいろいろなところをなでた。

「aaん、タカシ、ルミもうたまらない。」
こう・ふんするにしがたい、女言葉が、どんどん出てくる。
「aaん…。」
そう言ってみて、さらにこうふんする。

タカシの息が荒くなっている。
タカシの手が、ルミのももをなでる。
「あ…ん。」と声が出る。
ルミは、たまらなくなっていた。
ショ・ーツの中で、何かが悲鳴をあげている。
タカシが、ルミのショ・ーツをぬ・がしにきた。
「あ、いや、ルミ、はずかしい、い・や。」
「大丈夫。やさしくするから。」タカシが言った。

ショー・ツを脱がされ、ルミの秘密の物は、スカ・ートの中でフリーになった。
タカシが、それをとらえる。
「aaa…。」
タカシが、ルミのスカ・ートを少しめくった。
そして、ルミにとっては、夢にも見なかったこと、
あのエリカが、あたまを沈め、ルミのものをくわ・えた。
(うそ。エリカが、くわ・えてくれてる。ああ、気が・狂いそう。
 その事実だけで、イッ・てしまう…。)

「aaん、タカシ、ルミもうだめ。イっ・ちゃう。イっ・ちゃう。」
「いいよ、イっ・て。俺が飲んじゃうから。」

とうとう時がきた。
「タカシ、aaa、ルミ、イく、ルミ、イっ・ちゃう。」
体を震える。
震えが止まらない。
aaaa…体をけい・れんさせながら、ルミは、果てていった。

タカシは、ルミのものを綺麗になめて、
ルミを抱きしめた。
「ああ、ルミ、可愛いんだもん。俺、完全にこう・ふんした。」
「ルミも、天国へ行った。」



ケイは、エリカがまだであることに気が付いた。
「タカシ。今度はタカシを気持ちよくさせたい。」とルミは言った。
「俺、いい。気持ちよくさせてあげるの専門。」とタカシは言う。
「そんなはずない。どうすればいいの?教えて。」

「俺、タカシのままだと、女のあそこ見られるの嫌だから、
 エリカにもどる。ルミとレズっ子同士ならしてもらえる。」
「うん。じゃあ、エリカにもどって。」ルミは言った。
「じゃあ、5分くらい、目をつぶってて。」タカシは言った。

「いいわ。」
とのエリカの声で、ルミは目を開けた。
わあ~。
目の前にエリカがいた。
水色のワンピース。
長い髪。
少しメイクを施したエリカは、ため息が出るほど綺麗だった。
「わあ、エリカ、メイクすると近寄り難い美女になるね。」ルミは言った。
「ちょっと恥ずかしいな。」とエリカが言った。

「あたしね、家で男でいるでしょ。
 だから、こうやって女装すると、女装子さんと同じ気分。萌えちゃうの。」
とエリカは笑っていう。
「わあ、それ、おもしろい。なぞなぞみたい。」とルミは言った。
「ちょっと変でしょ。」とエリカが言って、二人で笑った。

エリカは、ルミの手を引いて、ベッ・ドに連れて行った。



つづく(次回は、『タカシ、エリカにもどる』です。)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




男装の女の子に見えるケイ②『エリカの秘密』

どこで切っていいかわからなくて、一挙に投稿します。
少し長いです。読んでくださるとうれしいです。

=============================

どこもそうだが、ケイのクラスにも、マドンナがいる。
背は、168cmで長い髪。
抜群のスタイル。
クラスの女子の2番目に背が高い。
顔の堀が深くて、色白なので、ハーフのようにも見える。
セーラー服をいつもきちんと着ていて、おしとやか。
相原エリカという。
クラスの男子のほとんどが、エリカが好きだった。
知的な顔立ちなのに、唇が少し厚くて、そこがとてもセクシーだ。

ケイもエリカが好きだった。
クラスの男子が羨ましかった。
背が中くらいの男子でさえ、エリカの168cmは超えている。
せめて、エリカと同じだけ背があったらなあと、
ときに、とても悲しくなる。
自分は、男らしさから、遠く離れた人間だ。
バスケやサッカーでたくましい筋肉を見せて汗をかいている男子を見ると、
ジェラシーに胸が痛くなる。

そんな、ケイの悲しい日々に、ある日奇跡が起きた。
部活に属していないケイは、みんなより早く帰る。
靴箱の外靴を取ると、二つ折りのメモが入っていた。
開いて見ると、簡単な伝言。

『明後日の日曜日、遊びに来て。エリカ』

うそー!と思った。
いや、ぬか喜びは禁物。
エリカが自分にこんなメモをくれるはずがない。
これは、男子のいたずらだ。
ぼくが、メモを信じて、のこのこエリカの家に行き、
エリカに、「何のご用?」と言われ、追い返されるのを笑う気だ。
『その手にのるか。』とメモを丸めようとして、ふと見ると、
メモの裏に、メールアドレスと、電話番号が書いてある。

メルアドはニセ物という可能性はある。
しかし、電話はかけてみれば、エリカのケータイかどうかわかる。

でも、エリカがどうしてぼくを家に招いてくれるのか。
ありえない。
エリカが、男子と組んで、ぼくをからかおうとしている。
それは、ない。
エリカはそんなことをする子では、絶対ない。
心のきれいな子だ。
じゃあ、メルアドも電話番号も本当だろうか。
ケイは、夢見るような気持ちで家に帰った。

夕食後、1時間ほど待った。
ケイは、エリカに電話をかけようと思った。
本人かどうか、電話の方が確実だと思った。
聞きたいこともある。
エリカと話しをするには勇気がいる。
でも、メモが本当なら、エリカと1対1で話せる絶好のチャンスだ。
ケイは、電話番号を押した。
数秒待った。
「はい、エリカです。ケイくん?」
エリカの声だ。
(わあ、すごい、やったー!と思った。)

「あ、ぼく。メモ、びっくりしちゃった。あれ、ほんと?」
(ケイは、外では自分を『ぼく』と呼ぶ。)
「うん。ほんと。他に方法思い付かなくて。」
「ぼく、信じられなくて、誰かのいたずらじゃないかって、
 さんざん迷った。どうして、ぼくなの?」
「ケイくんならわかってくれそうな気がしてるの。」
「何を?」
「それは、来てくれたら、打ち明ける。」
「うん。わかった。じゃあ、ぼくからメールするから、
 そのアドレスに相原さんの住所教えてくれる。
 パソコンで場所探していくから。」
「うん。そうする。ありがとう。」

メモは、本当だった。
エリカがわかって欲しいことってなんだろう。
それにしても、エリカと二人きりになれるなんて、
ああ、どうしよう。
今夜は眠れないかも知れないと、ケイは思った。



日曜日の2時に、エリカの家に着いた。
大きな家だった。
インターホンを鳴らすとエリカの声がした。
「今すぐドアを開けるから。」とエリカは言った。
ケイは、エンタランスを歩いて、ドアの前に立った。
ドアが開いて、ビックリした。
一瞬、エリカのお兄さんかと思った。
「ケイ君、入って。」と声はエリカだ。
ケイは、玄関に入った。

学校で長い髪のエリカは、ケイと同じ様なショートヘアだった。
(妹の真美の言葉によれば、女の子風ショートだ。)
黒のコットン・パンツを履いていて、
黒いサマーセーターを着ていた。
胸の膨らみがない。

一口に言えば、エリカは、男装していた。

エリカの部屋に通された。
とても、広い。ソファーとベッドとピアノがある。
エリカの部屋は、どちらかというと男の子の部屋だった。
「今日、家族いないの。飲み物もって来るね。」
とエリカは部屋を出た。
エリカが、紅茶とリンゴを持ってきた。
ソファーの前のコーヒーテーブルで、
ジュータンに座った。
エリカは、女の子座りだった。

「相原さん、髪の毛切ったの。」とケイは聞いた。
「これが、あたしの本当の髪。学校での髪は、かつらなの。
 便利よ。長い髪を洗うのって大変だけど、
 カツラだと、そんなに洗わないで済む。」とエリカは、言った。

「あのう、それからさ。相原さん、胸がぺったんこ。」
「ああ、これね。ナベシャツっていうの着けてるの。
 胸の膨らみ隠してくれる。」エリカは言った。

「もう、わかった?」とエリカがいう。
「性同一性障害なの?」
「そこまで、いかないと思う。
 女装子さんっているじゃない?

 あたしは、男装子かな?
 家に帰ったら、カツラをとって、
 男の格好をして、男のメイクを少しして、
 男言葉使っているの。自分のこと『俺』って呼んでる。
 男の格好をするとき、少し興奮する。
 ねえ、胡坐かいて座っていい?」とエリカが言う。
「うん、もちろん。」ケイは言った。
エリカは、男の子のように胡坐をかいた。

「ぼくみたいな、男子が好きなの?」
「あたしは、男っぽい男子は好きになれない。
 同性だって思うから。
 可愛い女の子や、可愛い女装子さんが好き。」
「ぼくは、どの部類?」

「ケイ君には、失礼だけど、
 ケイくんを見てると女の子って感じるの。
 すごくあたしのタイプなの。
 初めてケイ君見たとき、胸がドキドキした。
 ケイ君が女装してくれたら、最高。
 あたし、完全に萌えちゃう。」

「女装したぼくに、口・づけしたいなんて思う?」
「うん。抱きしめて、口・づけして、最後までイッ・ちゃいそう。」
最後まで…。
ケイは、エリカの言葉に、気絶しそうだった。

「この前、妹が、ぼくを女装させて、メイクまでしてくれたのね。
 本心をいうと、嫌じゃなかった。逆に興ふんしちゃった。」

「本当?じゃあ、女装して。あたしのためにしてくれる?」
エリカは、目を輝かせた。
「メイクはできないから、相原さんしてくれる?」
「うん。うれしい。」

リンゴを食べ終え、エリカは、紙袋を持って来た。
「ケイ君。これ、着古しで悪いんだけど、
 あたしの背が、ケイ君くらいだったときの衣類なの。
 これ、着てもらっていい?
 ケイ君が女装してくれるかも知れないと思って、選んでおいたの。」
とエリカは言った。
ケイは、マドンナ・エリカの一度着た服というだけで、
胸がときめいた。新品より、ずっとうれしい。

ケイは、上半身はだかになり、後ろを向いた。
「ケイ君の脇の下、綺麗にしていい?」とエリカが言う。
「うん、いい。」
「じゃあ、両腕を上に挙げて。」とエリカ。
ケイがそうしていると、エリカは、包装用の強力なテープを切って、
ケイの脇の下に、それぞれ上下2枚ずつ貼った。

「ちょっと痛いかも。」
エリカは、そう言って、そのテープを、毛の向きと逆に、ピーとはがした。
「触ってみて。」とエリカが言う。
ケイが触ってみると、脇の下が無毛になっている。
『ああ、いい感じ。コーフンする。』とケイは思った。
「この女性ホルモン入りのクリーム塗ると、1ヶ月は生えて来ないと思う。」
エリカは、そういって、クリームを塗ってくれた。
甘いバラの香りがした。

エリカは、次にブラをつけてくれた。
『わあ、エリカのブラ。』と思って、ケイは、震えた。
ピンクのブラに、細くて赤いリボンがついている。
エリカは、ブラの隙間につめ物をした。
そして、ピンクのスリップを着せ、
膝上15cm位のピンクの半袖のワンピースを着せた。
アンダーバストくらいから、スカートになっている。
胸が大きく開いて、白い大きな丸襟がついている。

「ショー・ツだけは、新品だから。
 目をつぶっているから、履いて。」とエリカは言った。
ケイは、ズボンとトランクスをぬいで、ピンクのショー・ツを履いた。
ああ、手が震える。

「わあ、ケイくん、脚長いね。」
とエリカはうれしそうに言った。
脚に膝上までの白いストッキングを履いた。
絶対領域が少しある。

ドレッサーのストールに座った。
エリカは、アイメイクをばっちりとやり、
シャドウやチークを手早く塗った。
薄くピンクのリップを引き、グロスをたっぷりと塗った。

ケイは、鏡を見た。
そして、ドキン。
美紀がやってくれたあの女の子に再びなっている。
今日の方が少し華やかで、ピンクっぽい。
「あたし、ウィッグ2つもってるから、これね。」
といって、エリカは、長い髪で、前髪のあるウィッグを被せた。
ロングへヤーになった自分を見て、
「あ。」とケイは声がでそうになった。
ウィッグで、一気に女の子度がアップした。
エリカは、ピンクの花がついたカチューシャを、ケイの頭に差した。

「可愛い。予想したより、ずっと可愛い。
 絶対、だれが見ても女の子。」
エリカがうれしそうに言った。
ケイも我ながら、恥ずかしいほど女の子だと思った。
立って見ると、脚が長いので、お人形である。
「ぼく、女の子に見えちゃうね。」とケイは言った。
「見えちゃうなんてもんじゃないよ。超女の子。」

「ケイ。女の子になったんだから、自分のこと『あたし』って呼ぶの。
 いい?」
「うん、そうする。」
「それから、女の子言葉使うの。」
「うん。できると思う。」
「ええ、できると思うわ、って言ってみて。」
「ええ、できると思うわ。」とケイ。少し恥ずかしい。

「じゃあ、今から、あたし、男言葉使っていい?」
「ええ、いいわよ。」
「自分のこと『俺』って呼ぶけど、いい。」
「いいわよ。」
ケイは、女言葉を使うたびに、倒錯的な喜びを感じている自分に気が付いた。
ああ、うれしい。もっともっと女の子になりたい。そう思った。

「ケイ、俺のこと『タカシ』って呼んでくんない。」
エリカの言葉が変わった。声も低く男の声に聞こえる。
「いいわよ。」ケイは、タカシ(以下、タカシ)を見て言った。
「ケイのこと『ルミ』って呼ぶ。ルミは、自分のこと『ルミ』って呼ぶ。いい?」
(あ、それ、感じる…とケイは思った。)
「ええ、そうするわ。」とルミ(以下、ルミ)は、言った。

「ルミ、可愛い。」
そう言って、タカシは、ルミを抱き・しめた。
ああ、気絶しそう。
抱きしめてくれているのは、タカシでありエリカなのだ。

タカシのくち・びるがせまってきた。
(え?ほんと?)
タカシのくちびるが、ルミのくち・びるをとらえた。
(ああ、エリカが口づけしてくれてる。夢なら覚めないで。)
ルミは、一気にこう・ふんした。

二人でソファーに座った。
「あ…、ルミ、可愛い。俺のもの。あ…、たまらない。」
そういいながら、タカシは、ルミの首や、胸や、頬に口・づけをしてくる。
そして、ルミの体のいろいろなところをなでた。

「aaん、タカシ、ルミもうたまらない。」
こう・ふんするにしがたい、女言葉が、どんどん出てくる。
「aaん、い・や・~ん。」
そう言ってみて、さらにこうふんする。

タカシの息が荒くなっている。
タカシの手が、ルミの太ももをなでる。
「あ…ん。」と声が出る。
ルミは、たまらなくなっていた。
ショ・ーツの中で、何かが悲鳴をあげている。
タカシが、ルミのショ・ーツをぬがしにきた。
「あ、いや、ルミ、はずかしい、い・や。」
「大丈夫。やさしくするから。」タカシが言った。

ショー・ツを脱がされ、ルミの秘密の物は、スカ・ートの中でフリーになった。
タカシが、それをとらえる。
「aaa…。」
タカシが、ルミのスカ・ートを少しめくった。
そして、ルミにとっては、夢にも見なかったこと、
あのエリカが、あたまを沈め、ルミのものをくわ・えた。
(うそ。エリカが、くわえてくれてる。ああ、気が・狂いそう。
 その事実だけで、イッ・てしまう…。)

「aaん、タカシ、ルミもうだめ。イっ・ちゃう。イっ・ちゃう。」
「いいよ、イっ・て。俺が飲んじゃうから。」

とうとう時がきた。
「タカシ、aaa、ルミ、イく、ルミ、イっ・ちゃう。」
体を震える。
震えが止まらない。
aaaa…体をけい・れんさせながら、ルミは、果てていった。

タカシは、ルミのものを綺麗になめて、
ルミを抱きしめた。
「ああ、ルミ、可愛いんだもん。俺、完全にこう・ふんした。」
「ルミも、天国へ行った。」



ケイは、エリカがまだであることに気が付いた。
「タカシ。今度はタカシを気持ちよくさせたい。」とルミは言った。
「俺、いい。気持ちよくさせてあげるの専門。」とタカシは言う。
「そんなはずない。どうすればいいの?教えて。」

「俺、タカシのままだと、女のあそこ見られるの嫌だから、
 エリカにもどる。ルミとレズっ子同士ならしてもらえる。」
「うん。じゃあ、エリカにもどって。」ルミは言った。
「じゃあ、5分くらい、目をつぶってて。」タカシは言った。

「いいわ。」
とのエリカの声で、ルミは目を開けた。
わあ~。
目の前にエリカがいた。
水色のワンピース。
長い髪。
少しメイクを施したエリカは、ため息が出るほど綺麗だった。
「わあ、エリカ、メイクすると近寄り難い美女になるね。」ルミは言った。
「ちょっと恥ずかしいな。」とエリカが言った。

「あたしね、家で男でいるでしょ。
 だから、こうやって女装すると、女装子さんと同じ気分。萌えちゃうの。」
とエリカは笑っていう。
「わあ、それ、おもしろい。なぞなぞみたい。」とルミは言った。
「ちょっと変でしょ。」とエリカが言って、二人で笑った。

エリカは、ルミの手を引いて、ベッ・ドに連れて行った。



つづく(次回は、『タカシ、エリカにもどる』です。)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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