続・女塾⑧「愛LOVE you make me HAPPY」最終回

だらだらと長々と書いてしまい、すみません。
この最終回も、だらだら書いてしまいました。
読んでくださると、うれしいです。

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二人のデュエット・シンセの時間が終わった。
ここで、2曲、新曲の披露。
そして、いよいよ最後の曲「愛LOVE you make me HAPPY」
を歌った。

会場に挨拶して引っ込んだが、期待通り、すごいアンコールの拍手が止まなかった。

「じゃあ、行こうか。」
とシンセで最年長の橋本が言った。

みなで出来きた時、また拍手が大きく鳴った。

「では、クリスマスも近いことですし、クリスマスソングをメドレーで歌います。」
ジュリアが言った。
ドラムの合図で、「サンタが町にやってくる」「赤鼻のトナカイ」「ブルー・クリスマス」

最後に、Junのピアノの伴奏とジュリアで、「ホワイト・クリスマス」を歌った。
会場は水をうったように静かに聞いた。
Junのムーディーな伴奏と、ジュリアの歌唱力に酔いしれた。
最後に、銀テープが会場に発砲された。

ここで、一応終わりだった。
ジュリアとバンドのみなが、前に出て、手をつないで、会場に礼をした。
そして、舞台を去った。

しかし、会場の拍手が鳴りやまなかった。
いつまで経っても続く。

「すごいね。普通あれでおわりだよ。」と橋本が言った。
「会場、電気ついてないよ。迷ってるんだよ。」ドラムの木下が言った。
「もう一発、Junとジュリアで行ってお出でよ。」と橋本が言った。

Junジュリアで出て行った。
すごい拍手が湧き起こった。
ジュリアはマイクを持った。
会場が静かになる。

「えーと、みなさま、ほんとに、ほんとに、ありがとうございます。
 今、すごく感激しています。
 私達は、デビューしたばかりですので、持ち歌があまりありません。
 カバーですが、あたしが、歌謡界にデビューするきっかけになった曲を最後に歌います。
 小柳ゆきさんの「be alive」です。

Junピアノで、ジュリアは歌った。
これは、女塾の3ヶ月の終わりに、みんなに囲まれて歌った歌だった。

ジュリアは歌い始めた。
歌いながら、あの頃のことが思われて、何度も声がつまりそうになった。
頬に涙が伝わった。
しかし、自分はプロなんだからと思って、気持ちを整え歌った。

ジュリアが歌い終えたとき、会場は、しばらく無言だった。
ジュリアの思いが伝わってか、会場の人々は、感に打たれていた。
そのうち、パラパラと拍手が始まり、それが波紋のように広がり、
会場中に広がった。
「ジュリア、よかったー。」「がんばれよー。」「今日は最高だったー。」「ありがとー。」
と方々から声が飛んだ。
会場が明るくなった。それでも、ジュリアは、舞台に立っていた。
Junがそばにきた。
去っていく人に、二人で手をふった。

舞台袖に戻ると、控え室で、バンドの人達が待っていた。
「イエーイ。」といわれ、「この、天才坊や。」と言われながら、
Junがみんなにめちゃくちゃにされた。
「ジュリアお疲れ様。」と言われ、「お疲れ様です。」とジュリアは言った。
みんなの顔が笑っていた。
「今日の出来は、120点だな。」と橋本が言った。
みんなが、うんうんとうなずいた。

舞台の下が、招待客のホールになって、飲み物が配られた。
ジュリアは、まず3人の友達に抱きつかれた。
「もう、悠子ったら、涙出ちゃったよ。」
「よかったあ、もう、最高だった。」
「すごく、いいライブだった。温かい気がした。」
「ありがとう。」
ジュリアは言った。

Junは、典子ママを真先に見つけた。
「ママ、来てくれたんですね。うれしいです。」
ママはにこにこして、
「あたし、天才少女を店に置いてたのね。
 あの、シンセ、すごかったわ。
 何より、その赤いリボンが可愛いわ。」
Jun「うれしいです。今度お店行きますね。」
ママ「お忍びでね。」ママは、笑った。

悠子は家族の所に言った。
「お姉ちゃん、最高。もう泣いちゃったよ。」と妹の紗江が言った。
「すごくうれしかった。お父さんと二人で泣いたわ。」と母の信子が言った。
父も、にこにこしていた。

「お父さん、見えた?」
とJunは、父の元へ駆けつけ、しゃがんで聞いた。
父は、何度もうなずき、
「見えた…見えた。よく…がんばった。」と言った。
父は、笑って、Junの腕を叩いた。
母がそばで泣いていた。

「お兄ちゃん、ギリギリChop会場中が驚いてたよ。
 まわりの人、うへーって言ってた。」
「歌のとき、男の子ってバレたかもよ。」
と二人の妹は言った。
「うん。ばれてもいいことになってるの。」とJunは言った。

ホールで、事務所の社長の挨拶があった。
それから、水島が、ジュリアとJunを呼んで、
「どうぞ、二人をよろしく。」というような言葉を言った。
ジュリアとJunが一言ずつ言葉をいって、
ホールでのひとときは終わった。

こうして、東京公園第一日は、興奮の中に終わった。



4年の月日がたった。
悠子も、Junも20歳になった。
水島は1年の契約が終わると、去っていった。
水島の仕事を、Junがやるようになった。

ジュリアとJunのCDは、2ヶ月に1枚のペースになり、
それでも、この4年間、ミリオンセラーをずっと続けて来た。
そして、年末のライブも続けて来た。
Junは、あるときから作曲の目が開かれ、
ジュリアと同じくらいいい曲を作るようになった。
そして、自分でもCDを出すようになった。
Junが男子であることがわかると、
人気が倍になり、売り上げも2倍になった。

Junの父建治は、ジュリアのライブの後、
刺激を受けて、本気でリハビリを始めた。
そして、しゃべることは、ゆっくりなら何でも話し、
杖があれば、車椅子を必用としなくなっていた。

Junは、坂本家の離れに、大きな音楽スタジオ兼住まいを作った。
ジュリアは朝から晩まで、そのスタジオにいたので、
二人は、いっしょに暮らしているも同然だった。

「悠子、ぼく達二人とも20歳になったね。」
とJunがあるとき言った。
「そうね。」とジュリア。
「今日、お祝いに、レストランに行かない?」
「わあ、うれしい。行く。」
悠子はそう言った。
しかし、悠子には、ずっと前から心にかかることがあった。
自分には、秘密がある。
もし、Junからプロポーズされたとき、夫婦として秘密を持っていてもいいものだろうか。
そのことを、ずっと悩んできた。
20歳を過ぎれば、Junにいつプロポーズされても不思議はない。
その日、Junの言葉に、ジュリアは、その可能性を感じていた。


7時を過ぎた頃、二人は、
高層ビル街の最上級の展望レストランにいた。
ジュリアは、紫色にビーズがあしらわれたロングのワンピースを着ていた。
ネックレスとピアス。
薄くメイクをした悠子は、美貌のオーラを放っていた。
Junは、黒いズボンにYシャツ、そして、オシャレな黒いベストを着ていた。

二人で昔話をしながら、食事をした。
悠子は、話に笑いながらも、心の中で、秘密のことを考えていた。

Junは、咳払いを一つした。
何か、決心をしている様子に見えた。
悠子の胸は高鳴った。

Junは、おもむろに言った。
「悠子覚えてる。新宿の喫茶点で、悠子がジュリアだって、
 打ち明けてくれたこと。」
「うん。もちろん、覚えてる。」
「あのとき、悠子は、もう一つ大きな秘密があるっていったよね。
 それは、例え口が裂けても言えないもので、もし言ってしまったら、
 何人かの友達の将来も崩してしまうものだって。」
「うん。言った。」
「実は、僕にもそのくらい大きな秘密があるんだ。」
「え?Junにも?」

「うん。例え悠子にだって言えない。口が裂けても、殺されても言えない。
 そのくらい大きな秘密。」
「そうだったの。知らなかった。」悠子は驚いて言った。
「悩んだ?」と悠子。
「悩まない。それを秘密にすることには、少しも悩まなかった。」
「そういう秘密もあるんだ…。」悠子は言った。
「そこで、ぼく達どうすればいいか、考えたんだ。」
そういうと、Junは、ポケットから、小箱を2つ出した。

Junは、一つをとって、
「これは、悠子の秘密。」そう言って、悠子に渡した。
悠子は、中を明けた。大きな真珠が入っていた。
「もう一つ、これは、僕の秘密。」
Junは、悠子に中を見せた。同じ真珠が入っていた。
「悠子の真珠は、悠子の秘密。僕の真珠は、僕の秘密。
 今ここで、お互いの真珠を交換することで、
 相手に秘密を打ち明けたことにしない?
 あ、意味分かるかな?」

悠子の胸に、感激がこみ上げてきた。
「わかる。わかる。Jun、ありがとう。」
悠子は、頬に涙をこぼした。
「これで、悠子の気持ち、軽くなる?」
「うん。軽くなる。」悠子は言った。
「じゃあ、これを受け取ってくれる?」
Junは、3つめの箱を出した。
それこそ、プラチナとダイアモンドのエンゲージリングだった。
「結婚してくれる?」Junは言った。
悠子は、目を涙で一杯にして、何度もうなずいた。
「うん。Junと一生いっしょにいたい。」
Junは、にっこり微笑んだ。

二人は、残ったワインをグラスに注いだ。
「じゃあ、なんて乾杯しようか。」とJun。
「愛LOVE you make me HAPPYは?」と悠子
「ちょっと長いけど、いいか。」
「愛LOVE you make me HAPPY!」

=僕は君を愛し、君は僕を幸せにしてくれる=


<おわり>
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続・女塾⑦「ライブ前半」

ついながなが書いてしまいすいません。女装場面もないのに。
えー、次回で最終回になんとかしたいと思います。最後まで読んでくださると、うれしいです。

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12月17日土曜、東京ライブ当日。
会場6時の1時間前から、渋谷公会堂の前の広場は、
入場をまつ客であふれていた。
みんな、まだかまだかと浮き足立ち、広場は熱気があふれていた。

好美と悦子と江里奈は、30分前に来て、
「わあ、あたしたち、あそこから入れるのよ。」
と興奮した。
その入り口には、「招待客入り口」と書いてあった。
三人は、チケットの裏の「招待」という字を見せて、
広場の人々より30分早く入った。

席は、前から5番目の中央だった。
「わあ、ただできて、悪い気がする。」と江里菜が言った。
「ほんと、いい席でよかったよね。」と悦子が言った。

Junの家族が来た。
車椅子を見ると、テーブルにいた人がすぐに案内にたった。
ホールの前のほうに、平たく車椅子用のコーナーがあった。
その横に付き添いの人のパイプ椅子があり、そこに母の百合子。
その横の座席が美紀と由希の席だった。
そして、その横が、悠子の家族席だった。
みんな、初対面だったので、挨拶に花が咲いた。



開場になって、大勢の人が入って来た。
グッズもたくさん売られている。
6時半を過ぎると、みんな席に付き始め、
開場に、BGMが流れ始めた。
7時開演。
その5分前になると、ほとんどの人は、話をやめ、
じっと前を見て待っていた。

前には、薄いスクリーンの幕が下りていて、
7色の光が、交差するように動いていた。

やがて、ジャスト7時になった。
今まで左右に動いた7色の光がまとまり、
その光が、「JULIA」という文字をスクリーン一杯に描いた。
開場が暗くなり、「JULIA」の文字がぱっと消えた瞬間、
薄いスクリーンの向こうに、ジュリアの姿が現れる。
スポットを浴びてシンセを弾いている。
そして、弾き語りの歌が始まる。「恋の雫」。
会場から、「キャー!」とか「ジュリアー!」とかの声が飛んだ。
だが、それはすぐ静かになる。
みんなは、静かに聞きに入っていく。

ジュリアはブルーにラメの入ったワンピース。

1曲終わるとすごい拍手があった。
ジュリアは、続けて、静かな曲を歌う。
会場は誰も立ってはいない。

続けて3曲やったとき、やっと舞台が明るくなった。
バンドの人達が入ってくる。
Junは、お決まりの魔女のキキのスタイルで、舞台に向かって、一番左にいた。

「お父さん。あのリボンの子が、淳一ですよ。」と妻の百合子は言った。
 父は、「うふふ。」と笑った。

ここで、ジュリアのMC。

「えー、みなさま、今日はようこそお越しくださいました。
 ジュリアです。」
そういうと、大きな歓声が上がった。

「えーと、先週大阪でライブをやってきました。
 あたしは、生まれて初めてのライブで、上がってしまい、
 初めから、終わりまで、何を歌ったのか、覚えてないんです。」

(会場、笑い声。)

「でも、今日は、2回目ですので、歌った曲くらい覚えているようにしたいと思います。」

(会場、拍手。)

「では、少し速い曲を3曲行きます。初めは、「夢は甘いシャーベット」。へーい。」
ギターと、ドラムがなり、激しい曲は始まった。
会場は、ここで総立ち。
みんなが立っても、Junの車椅子お父さんは、ちゃんと見えるようになっている。

ジュリアは、ここで、カッコいい踊りを決めながら歌った。
今までパーカッションだった女の子が2人両脇で
踊りをサポートしていた。

会場は、ガンガン乗り、会場が大揺れに揺れる感じだった。

「わあ、ジュリア、カッコいいね。」と江里奈が言った。
「うん、憧れちゃう。」と悦子。
「やっぱ、この曲乗るね。」と好美。

3曲で、会場はかなり燃焼した。

「では、ちょっとお休みください。」
とジュリアが言ったので、みんなは、座った。

「ええ、メンバー紹介します。
 右、シンセの橋本さん!」
橋本が、少し演奏する。
わーという拍手。

こうして、一人ずつ紹介された。
「えー最後に、魔法使いキキこと、ピアノのJunちゃん。」
わあ~と、一際大きな拍手。

この間に、舞台中央に、2台のシンセが用意されていた。

「えー、ここで、ピアノのJunちゃんとあたしとで、
 少し、弾き語りトークというのをしたいと思います。
 Junちゃん来てください。」

黒い魔女のキキのスタイルで、頭に赤い大きなリボンをつけたJunが、舞台左側に座った。
お父さんのいる方だった。

Junが来ると、大きな拍手が起こり、人気だった。
「可愛いー!」なんて声も聞こえる。
「わあ、Junちゃん、けっこう人気ですよ。」
「このスタイル貫いてますから。」
会場笑い。
「Junちゃんは、あたしの歌のほとんどの歌詞を作ってくださってるんですよね。
会場から、「あーそうかあ。」という声がした。
「あー、そうかあって、今気がついた方もいらっしゃるようですよ。」
「はい。そうなんです。」
とJunがほころぶような笑顔でいったので、その表情がうけた。

「えー、Junちゃんは、作詞だけじゃなくて、このバンドのバンマス、
 また、このライブの音楽監督、そして、編曲者なんですよね。」
うわーすごい!という声が飛ぶ。
「ほら、すごーいって声がしますよ。
 でも、Junちゃんは、お若いのに、あんな、怖そうなバンドのみなさんに、
 よくダメ出しができますね。」
「みなさん、めちゃめちゃやさしいですよ。」
(バンドの人達が笑っている。)
「とくに、シンセの橋本さんなんか、やさしくて、やさしくて、
 顔を思い出す度、胃が痛くなります。」
(会場、バンドの人、爆笑。大阪とはちがう落ちだった。)

「じゃあ、今日は、Junちゃんと私で、1曲ずつ弾き語りができるんですが、
 Junちゃんの思い出の曲ってありますか。」
「それね。アタシが中学のとき、辛いことがあって不登校になりそうだったんですね。
 そのとき、毎朝この曲聞いて、気合入れて、学校行ったんです。
 お世話になりました。B’zの『ギリギリChop』です。」
「え?あの松本さんのギリギリChopをシンセで弾き語るんですか?」
「はい。挑戦してみます。ジュリアもちょっと手伝って。」
「では。」
とジュリアが言ったとき、
Junのものすごい前奏が始まった。
信じられないくらいのテクで、会場から、おおおおおという声が聞こえた。
Junは、アームマイクに口を寄せて、歌い始めた。
歌もうまい。歯切れのいい声で、難解な歌を歌いこなす。
声が少年ぽくて「女の子?」と思った人もいたかもしれない。

♪ギリギリ・・・・・・・ふらふら・・・

というところだけ、ジュリアがコーラスを入れる。
そして、間奏。
ここで、また、Junの信じ難いテク。
シンセで、あの難解なギターの演奏に近づいている。
また、すごい拍手が起こった。
最後の所は、ジュリアも手伝って、ジュリアのテクも披露した。

1曲終わったとき、会場は、総立ちになって、Junに拍手を送った。
「キキいいぞー、さすが魔法使いだー。」と誰かが叫んだ。
Junは立って、例のにっこりを言ってくれた人に向ける。

「さて、ジュリアは、何歌いたいの。」
「あたしですか。それは、もう聖子ちゃんですよ。」
「そうくると思った。『夏の扉』でしょ。」
「わあ、大当たり!」
Junが音をピアノにもどして伴奏を始める。
ジュリアはメイン伴奏。Junがサブでリズム伴奏を取る。
Junの伴奏が曲芸のように上手で、
会場は、知らずに乗らされてしまう。
ジュリアの声が冴え渡る。
二人とも、鍵盤をほとんど見ていない。

会場は、立ちっぱなしで、みんな体を揺らしながらの手拍子。
会場と二人が一体となった。

このライブの、一番の山が、ここに出来たとも言えた。



つづく(つぎは、「ライブの終わり、そして、数年後の二人」最終回です。)

続・女塾⑥「ライブ前10日間」

ライブの会場と日にちが決まった。
チケットは1万枚売れると予想し、
大阪で1日2500席、次の週末、渋谷で、2日間2000席×2。
そして、同じく渋谷で、追加公演をする予定だった。

会場が決まると、
大滝は、2日で両会場用の台本を書き、美術・舞台効果の方にも手を回した。



事務所の中。
大滝は、出来たてのライブ台本をJunとジュリアに渡した。

「Junは、音楽監督だから、私の考えた曲目、自由に入れ替えていいし、
 全体の音楽構成を自由に変えていいよ。」
大滝は、Junにそう言った。

大滝の台本の中に、ジュリアとJunが、2台のシンセを並べ、
シンセを前に座って、
話しながらカバー曲を歌うコーナーがあった。

「悠子、見て。こんな楽しいコーナーがあるよ。
 悠子と僕とで、二人でお話しながら、自分の好きな曲、1曲ずつカバーできる。」
「うん。ここ楽しそう。Junの歌の上手いところ披露するチャンスだよ。」
悠子は言った。
それは、大滝の目論見でもあった。

それから、Junの忙しさは、殺人的なものになった。
バンド曲が、7曲ある。これのバンドの楽譜を全部書かなければならなかった。
そして、新曲も3つ用意する。

しかし、Junは何とかやりこなし、
12月10日、大阪ライブの10日前になった。

チケットは、11月10日の発売と共に、即日に完売した。
ジュリア・ファンの多くがチケットを手に入れることができなかった。

悠子とJunは、家族や友達を招待できるように、招待チケットを10枚もらっていた。



悠子は、クラスで仲良しの好美、悦子、江里菜の3人をライブに招待するつもりだった。
そこで、東京公演の12月17日・土曜日の夜は、空けておいてくれるように、前から言っておいた。
悠子は、3人がだれもジュリアのライブのチケットを買えなかったことを知っていた。

その日の昼休み、悠子とJunは、3人を体育館の裏に呼んだ。
3人を前に、悠子は言った。
「3人に、あたしとJunが出るライブのチケットもらって欲しいんだ。
 できたら、当日来てくれるとうれしい。
 だから、12月17日空けといてって言ってたの。」悠子は言った。
「わあ、ライブやるの、すごい。だから毎日二人で早く帰ってたんだ。」
と、悦子が言った。
「うん、そう。」悠子は言った。
「これ。」そう言って、悠子は3人に細長い封筒に入ったチケットを渡した。
「それ、招待チケットだから、スタッフonlyの入り口から入れるの。」
悠子は言って、Junと顔を見合わせた。
3人は、チケットの封筒から、チケットを出して、目を丸くした。
「これ、ジュリアのライブじゃない。すごい。ほとんど手に入らないよ。」
と、好美が言った。
「悠子、これに出るの?コーラスか何かに入れたの?」江里菜が言った。

「ボーカルだよ。」と悠子は言った。
「どういうこと?」と3人は言った。
「3人にだけは、正直に話すね。他の人には、絶対の秘密だよ。」
悠子は、そう言って、結んだ左右の髪をほどき、眼鏡をはずした。
「わあ、悠子、綺麗。」
「こんなに美人だったの。」
「知らなかった。」
と3人は言った。
「誰かに、似てない?」と悠子は言った。
3人は、じーと悠子を見た。
そして、同時に声をあげた。
「ジュリア、ジュリアに似てる。」
「え?もしかして、わあ~、もしかして。」
「悠子は、ジュリアなの?ジュリアが悠子なの?」
「うん、これまで隠して来てごめん。そうなんだ。」
「わあ、わあ、わあ、大変。」
「うそー!うそー!」
と3人は口々にいった。

「じゃあ、あたしたち、ジュリアとお友達なの?」
「毎日、ジュリアと遊んでいたわけ。」
「うん。」悠子は言った。
3人は、大興奮した。
「わあ、わあ、すごーい。感激!」
と言って、3人は、悠子に抱きついた。

「で、淳一は何なの?」と悦子が聞いた。
「あたしの曲を作詞してる『Jun』って、淳一君なの。」悠子は言った。
「じゃあ、CDのジャケットに出てる、魔女のキキは、淳一なの?」江里菜が言った。
「はい、そうでーす。」と淳一は言った。
「Junは、バンマスだし、ライブの音楽監督で、えらいのよ。」悠子は言った。
「わあー、知らなかった。淳一すごい。」悦子が言った。
悠子は、髪をまた2つにまとめて、眼鏡をかけた。

教室に帰りながら、
「ああ、みんなに言いたい。私達のクラスにジュリアがいるよって。」と好美が言った。
「だめ。それだけはやめてね。」と悠子。
「うん。3人だけの秘密にする。親や兄弟にも言わないから。」と江里菜。

こうして、昼休みは過ぎた。
東京ライブまで、あと17日だった。



ライブ前、最後の日曜日、
体を休めるために、OFFとなった。
悠子は、Junと共に、まだ行ったことのないJunの家に挨拶に言った。
家族みんなが、ジュリアがくるということで、
どこへも行かずに待っていた。

悠子は、クリーム色のワンピースを着ていた。
Junに案内されて、父が車椅子でいるリビングに通された。
「みんな、ジュリアだよ。」とJunは言った。
中学の妹の美紀と由希は、「わあ~!」と声をあげた。
悠子は、みんなに挨拶をされ、挨拶を返した。
車椅子のJunの父建治は、あまりうまくしゃべられずにいた。
悠子は、父建治のそばにいき、ジュータンに膝をついて、
建治に挨拶した。

「ジュリア、本当の名は、悠子です。
 淳一さんがいないと、私は、曲が作れませんでした。
 淳一さんに感謝でいっぱいです。」
と、建治に言った。
建治は、何度もうなずき、「ありがとう。」と一言をやっとの思いで言った。
「お父さんも、ライブに来てくださると聞きました。
 淳一さんと二人で、トークをして歌うところがあります。
 そのときは、淳一さんを近くでご覧になれると思います。
 私もがんばります。」
悠子は、言った。
「…たのしみです。がんばってね。」
と、建治は、言った。
ほとんど話さなくなっている父が、言葉を言おうとしている姿を見て、
母の百合子や妹の美紀と由希は、少し涙ぐんでいた。

それから、ソファーのテーブルを囲んで、
楽しくおしゃべりをした。
ジュリアが来て花が咲いたように、明るくなった。
美紀と由希は、初め遠慮をしていたが、
その内だんだん慣れてきて、たくさんしゃべるようになった。
父建治は、発作を起こしてから、何かと塞ぎがちだった。
その父が、楽しそうに笑顔でいた。
Junは、それが何よりもうれしかった。


つづく(次は、「ライブ」です。)

続・女塾⑤「結ばれる二人」

翌日、淳一と悠子は、典子ママのところへいった。
そして、CDを進呈した。
典子ママは、目を丸くして喜び、二人を抱きしめた。
淳一は、これからは、毎日来られないことを話した。
典子ママは、お店になど来ないで、今の仕事に全力を注ぐように言った。
淳一は、典子ママの言葉に従った。



10月の中旬。日曜日。
悠子の部屋で、悠子と淳一は、ジュウタンに並んで寝そべりながら、
仕事をしていた。
「恋は甘いシャーベット」は、大変な評判で、
初回の80万枚は、5日間で売り切れた。
今、3段がリリースされ、200万枚に届く勢いだった。

11月の曲は、終わった。
二人は、12月発売の曲作りをしていた。
大滝は、3番目のシングルこそ大事だと言った。
3回連続ヒットを飛ばせば、後は安定して売れて行くと。

「高橋さん、これでどう?」
淳一は、出来たての歌詞を見せた。
「ねえ、あたしたち、十分親しいから、その高橋さんやめない?
 あたしも、淳一君やめて、Junって呼ぶ。」と悠子は言った。
「うん、わかった。じゃあ、僕は、悠子って呼ぶ。」
「Jun.」
「悠子。」
二人で、顔を見せながら笑った。

「ねえ、ちょっと休憩しない?」と悠子が言った。
「いいよ。ちょっと疲れたね。」とJun。
悠子は起きて、
「Junに、女の子の服着てもらいたい。」と言った。
「どうして?」
「だって、Junの、女の子の姿、ステキなんだもの。」
「ええ??ちょっと恥ずかしいけど…。」
結局、Junは、説得された。
悠子は、箪笥から、
「はい、これ、スリップ、ブラ。ブラに詰める物、ショーツ。」
「え?悠子のショーツまではくの。
 ジュリアだよ悠子は。ジュリアのショーツなんか履いたら、
 ぼく、気絶しちゃうよ。」
「いや~ん。『ぼく』なんていっちゃいや。『あたし』って言って。」
「うん。」
Junは、悠子の下着をつけた。
ジュリアの下着だと思うと、あそこが興奮してたまらない。
股の後ろに回して、どうにか押えることができた。
「これ、あたしの記念のワンピなの。これ着て。」
それは、悠子が、初めて女の子になったときに着たものだった。
悠子より3cm高いJunに、ワンピースはぴったりだった。
スカートのすそから、Junの長い脚が伸びている。
Junは、顔も手足も無毛の体質だった。

「ねえ、ドレッサーに座って。」悠子は言った。
Junを座らせ、
「Junは、唇が女の子みたいにサクランボウ色だから、
 グロスだけでいいね。」と悠子は言う。
Junの下唇にブロスをぬると、それだけで、一気に女の子になった。
「魔法使いのキキみたいに、大きなリボンのついたカチューシャ。」
水色の大きなリボンが、髪に乗り、Junは、ますます可愛らしくなった。
悠子は、たまらない気持ちになっていた。
Junも、内心すごく興・奮してしまっていた。

ジュリアといっしょに、普通こんなこと、あり得ないと思った。
悠子も、下唇にブロスを塗った。それだけで、すごくセクシーになった。
悠子は、Junの耳元でささやいた。
「今日、家族いないんだ。あたしたちだけ。
 女の子同士、ちょっとイチャイチャしない?」
Junは、たまらなかった。
このシチュエーション。子供のころから何度夢見たことだろう。
女装をして、きれいなお姉さんとおままごとをする。
「うん。」Junはやっとの思いで言った。
悠子は、Junの手を引いて、ベッドルームへ誘った。

ベッドに並んで座った。
Junは、心臓が飛び出しそうだった。
悠子も同じだった。
大好きな実物のJunが、女の子の格好で自分のそばにいる。
「Jun。あたし、夜Junの夢ばかり見るの。
 これって、Junが好きってことだと思うの。」悠子は言った。
「ほんと?ぼくなんか、朝から晩まで、悠子のこと考えてる。
 これ、好きってことだよね。」
「うれしい。」
「ぼくも。」
「あたしでしょ。」
「あたしも。」
二人の唇は、接近した。
そして、触れ合った。
離しては触れ、離しては触れながら、
そっと舌を出した。舌と舌が触れ合った。
Junは、たまらずに、悠子を抱きしめた。
「ああ、悠子、好き、死ぬほど好き。」
「あたしも、Junが好き。Junに抱かれて気絶しそう。」

それからの二人は、夢中だった。
ワンピースをお互い脱いだことも、覚えていない。
Junは、悠子の下着の上から、悠子をあいぶし、キ・スをした。
悠子は、快・感の声をあげた。
Junは、カチューシャを取った。
気がつくと二人は、何も着ていなかった。
Junは、悠子に入っていきたかった。
「待って。」と悠子が言った。
「あたし、バージンだから、血が出ちゃう。今、バスタオル敷くね。」
悠子は、バスタオルを腰の下に敷いた。
「Jun、来て。」
「うん。」
Junは、本能にしたがい、体を動かした。
悠子のあげる声が、Junをますます興・奮させた。
悠子は、感激していた。
『これが、男の子なんだ。』
Junを受け入れている自分に感激した。
はじめて、完全に女になれたという喜びが、
胸の奥からあふれてきて、涙が出てくる。

「悠子、ぼくいきそう。」
「うん、あたしも。」
Junは、出そうになる寸前、そのものを引き出した。
そして、悠子の上に体を被せた。
二人は、絶頂のときをむかえた。

しばらく、Junが悠子の上になり抱きあっていた。
「悠子は、ぼくにバージンくれたんだ。」
「うん。Jun以外に考えられない。」
「ジュリアのファンが知ったら、怒るだろうな。」Junが微笑んで言った。
「そうだといいけど。」悠子も笑った。



悠子は、汗をかいたからと言って、バスタオルを体に巻いて、
部屋を出て行った。
Junは、自分の男物の服を着て、悠子の下着をたたんだ。

悠子が来るまで、何気なく本棚の本を眺めていた。
そして、本棚のいちばん下の段の背の高い本が並んでいるところに、
少し出っ張っている木の板のようなものを見た。
それは、何かの「賞」の盾だと思った。
何の賞だろう?
そっと、引き出して見た。

『全日本ピアノコンクール 中学生部門 優勝 高橋悠太』

『悠太』…。
Junは、はっと思い、急いで盾をしまった。
そうか…そうだったんだ。
だから、自分の女装に、あれだけの理解を示してくれた。
悠子が、もう一つ絶対言えない秘密があると言っていた。
何人かの将来まで崩してしまうから…と。

悠子は、何人かで、どこかへ行って、女の子になるという夢を叶えた。
そして、完全な女の子になって、帰って来た。

『悠太くん。君は、大きな大きな夢を叶えた。
 僕は、君の叶えた夢を、そばで一生守っていく。それを誓うよ。』
そう、Junは、心に刻んだ。

Junは、自分は、悠子の夢だったものを最も理解する一人だと思った。
そして、今自分は、悠子の秘密と同等の秘密を持ったことを悟った。
それは、一生口が裂けても言えないことだ。
悠子の秘密が何かを知ったという秘密だった。


つづく(次は、「ライブに向けて」です。)

続・女塾④「セカンド・シングル・リリース」

このお話には、悪い人、意地悪な人、嫉妬深い人は、
一切出てきませんので、安心してお読みいただけます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次の日、悠子は、事務所に行った。
悠子のマネージャー兼ボイストレーナーの大滝は、
淳一の詞を見て、「いいねえ。」と言い、あっさりとOKした。
作曲がジュリアだから、いいと言った。
「世間の人は、作詞より作曲の方が、偉いと感じているんだ。
 だから、作曲がジュリアならほぼシンガー・ソング・ライターと見る。
 しかし、本当は、詞の方こそ大切なんだ。
 ジュリアも、今回曲を作ってみてわかったろう。」
大滝は言った。

「はい、この淳一君の詞だと、メロディーがどんどん浮かぶんです。」
「彼とも近々会いたいね。レコーディングのときなんかいて欲しいし、
 まず話がしたい。」
大滝は、にっこりして言った。

事務所を出た悠子は、うれしくて飛び上がりそうだった。
すぐに、淳一にメールした。
「OKが出た。次のシングルの作詞は、Junだよ。」
「ヒャッホー!うれしい!ありがとう!」
という、淳一のメールが返ってきた。



次のシングルの作詞者はJunと決まり、
淳一は、ウエイトレスを辞めた。
これから、悠子にたくさん協力しなくてはならない。

淳一が作詞者と決まった次の日、悠子と淳一は大滝に会いに事務所を訪れた。
事務所の音楽スタジオで悠子が曲の練習をする中、
大滝と淳一は面接をした。

「ちょっと、女の子みたいって言われる?」大滝はにっこりして言った。
「もう、しょっちゅうです。」と淳一は笑った。
「それも、君の売りになると思うよ。今度作戦を練ろうね。」と大滝。
淳一は、大滝の偏見のない、やさしそうないい方が気に入っていた。

「ジュリアもね、ピアノじゃ相当なタイトルを持っているんだけど、
 そのジュリアが、ピアノじゃ、君が上だというんだ。
 君の最高のタイトルは?」
「NKKのピアノコンクールで、中2のとき優勝しました。」
「年齢枠なしの部門で?」
「はい。」
「わおう、じゃあ、その年の日本ナンバー1じゃないの。」
「ええ、まあ。」淳一は、少し照れて言った。

「どうして、クラシックの道に行かなかったの?」
「父の病気もありますが、ぼくは、クラシックの世界は性に合いません。
 それより、ポップスの世界で、たくさんの人が身近に愛してくれるような音楽を作りたいです。」
「君は、作詞は得意、作曲は苦手と聞いたんだけど、
 君みたいな人に限って、アレンジ、つまり編曲がすばらしく上手だったりする。
 どう、一つの曲をいろんな伴奏で弾いたりするの、好きでしょ。」

「どうしてわかるんですか?」淳一は、うれしくなった。まさに、その通りだったのだ。
「ま、長年この業界にいるからね。
 じゃあ、早速、腕試しに行こうか。」大滝は言った。

大滝と、淳一は、悠子が弾き語りしている部屋に入って入った。
次のシングルとなる「夢は甘いシャーベット(仮題)」を悠子が弾き語るのを聞いた。

それが終わったとき、大滝は、
「じゃあ、Jun、即興でいいから、3通りくらい1コーラスずつやれる?前奏あり。
 ジュリアは、そろぞれに合わせて歌ってみて。」

淳一が、ため息が出るくらい美しい前奏を奏でた、そして、悠子に合図する。
悠子は、歌いながら、「ああ、ステキ。私の伴奏より断然いい。歌い易い。」そう思っていた。
次の伴奏で、淳一は、全然違う、現代音楽のような奇妙でいて、心地よい伴奏を弾いた。
悠子は、それもいいと思った。斬新なのに、歌い易い。
3番目。クラシック系の流れるような前奏が流れ、スケールの大きな曲になった。
悠子は、まるで、映画音楽を歌うような気分で歌えた。

「ジュリア、どうだい。Junの伴奏は?」大滝が聞いた。
「いいです。私の伴奏よりどれもいいです。」悠子は言った。
「じゃあ、これで決まりだ。今回はJunの伴奏で行こう。
 ジュリアは、何番目がよかった。」大滝が聞く。

「2番目のがおもしろいと思いました。新しい感じがしました。」と悠子。
「私も、同感だ。Junは、どう思う。」
「はい、2番目のは、弾いていて楽しいです。音が少ないので、
 ボーカルが生きるかなっと思って。」
「では、決定。次のシングルは、
 ヴォーカル ジュリア
 作曲 ジュリア
 作詞 Jun
編曲 Jun

カップリングの曲も、Junに任せる。
 Junがピアノだけでやってもいいし、バンド用のを作ってくれてもいい。」大滝は言った。
大滝は、淳一に絶大な信頼を寄せたとも言えた。

「わあ、すごい。そこまで、させていただけるんですか。」淳一は言った。
「ああ、君は、すでに一流だ。」大滝はそう言った。

「わあ。」と悠子が淳一の手を取った。
「大滝さん、ありがとうございます。高橋さん、ありがとう。」淳一はぼーとしていた。



淳一は、カップリングは、ドラムとギターとピアノ、ベース4人のバンドの楽譜を書いた。
大滝は、その道の超プロフェッショナルを集めてくれた。
淳一の知っている人達ばかりで、淳一は感激して、何度も頭を下げた。
そして、レコーディングでは、惇一が、バンド・マスターとして采配を振るった。
その時の淳一は、遠慮なくだめ出しをした。
淳一の言い方はやさしく、しかし、説得力のあるものだったので、
メンバーは、感心しながら従った。
そして、前作の「恋の雫」に勝ると思える完成度の高い2ndシングルを仕上げた。
題名は、「夢は甘いシャーベット」。ロマンチックな歌だ。

前作「恋の雫」からちょうど1ヵ月後の、10月1日にリリースされた。
テレビや雑誌に出ないジュリアだけに、ファンのセカンド・シングルを切望する声は高く、
超スピードのリリースとなった。

事務所を出たところで、
出来上がったCDを悠子と淳一で見ながら、喜びを分かち合った。
表面は、ジュリアがピアノを弾いている写真だが、
裏の写真は、ジュリアが踊っていて、
その向こうに小さく、魔法使いのキキのような、黒いワンピースを着て、
頭に大きな赤いリボンをつけた女の子がピアノの伴奏をしている。
これが、淳一だ。そして、バンドの人がいろいろな方向にあしらってある。

「大滝さん、Junを性別不詳で売り出すつもりよ。」
「あはは。それなんか、すごくうれしいな。」と淳一は笑って言った。
「12月のライブでもそうするって。」
「え?ぼく、ライブ出るの?」
「あたり前じゃない。ライブの音楽監督は、Junだって言ってたわよ。」
「わあ、すごいけど、一度に言わないで。気絶しそうだから。」と淳一は言った。

「もう少し、気絶しに、コンビニへ行こう。」と悠子はいった。
「なあに。」と淳一。
「淳一君、事務所に教えた銀行のカード持ってる?」
「うん、持ってる。」
「じゃあ、行こう。」

二人は、コンビニに来た。
「淳一君、多分全然気がついてないと思うの。」
「気がついてないよ。なあに。」
「ATMで、1000円でもいいから、引き出してみて。
 残高シートももらってね。」悠子は言った。
淳一は、言われるままにした。
1000円が出てきた。
「残高シートを見て。」と悠子が言う。
「うん。」
淳一は、それを見て、目を大きく開けた。
そこには、気の遠くなるような高額の残高が、記されていた。
「高橋さん、これ、ど、どうして?」と淳一目を丸して聞いた。
「やっぱり、淳一君は、お金のことなんか考えてなかったんだ。
 印税よ。印税ってふつうCDが売れてから支払われるんだけど、
 あの事務所は、初めに予想して、その額をくれるの。
 『恋の雫』が200万枚今売れてるから、
 今回、初回リリースは80万枚なの。
 淳一君は、作詞。それと編曲もだから、その分もあると思う。」
「はあ…。」と淳一は、呆然としていた。
「今回のできがいいって評判だから、
 追加リリース絶対ある。その度にこのくらいの金額をもらえると思うんだ。」
「わあ、高橋さん、ありがとう。君がいなかったら、こんなチャンスこなかった。」
「それは、あたしのセリフ。淳一君がいなかったら、このCD出せなかった。」

「僕、早く家に帰ってこのこと知らせたい。」
「うん。今頃お家に、作者プレゼントとして、CDが100枚送られていると思う。」
「ほんと?じゃあ、僕、典子ママにも、お礼に進呈したい。」
「じゃあ、それ、あたしもついてく。お世話になったし。」



淳一は、家に帰った。大きなオシャレな家だった。
父建治の車椅子の周りにみんなを呼んだ。
母百合子と、中学生の美紀、由希の妹。
「あのね、これはナイショにしてね。
 ぼくの学校に転校してきた女の子が、僕の隣に座ってるの。
 その子、実は、ジュリアだったの。」淳一は言った。
「うそ、あのジュリア?」と二人の妹は飛び上がった。
「うん。ジュリアが僕の書いた歌詞気に入ってくれて、
 次のCDのために使ってくれたの。
 で、これ。作詞は、Junとなってるけど、ぼくのこと。」
淳一は、みんなにCDを見せた。

「まあ、それは、すごいわ。」と母は言った。
父の安雄も言葉が不自由だったが、喜びの声をくれた。
二人の妹は、大興奮していた。CDを見ながら、
「あ、これお兄ちゃんでしょう。魔法使いのキキみたいな子。」
「わあ、すごい、お兄ちゃんもいる。女の子になってる。」
「どれどれ。」と母も見て、父に見せた。

「それから、もう一つすごいことがあるの。
 僕は、作詞と編曲やったから、印税が入るの。
 それを、前払いでくれたの。
 初回80万枚リリースで、こんなにたくさんもらった。」
淳一は母に残高シートを見せた。二人の妹が覗きこんだ。
母百合子はあっと声をあげた。
二人の妹は、数字の数を数えた、わあ~すごい、とため息を漏らした。
百合子は、すぐに父建治に見せた。
建治は、涙を流し、うんうんとうなづいていた。

「CDは、きっともっと売れるから、またお金をもらえると思う。
 それから、僕、ライブの音楽監督になったみたいなの。
 だから、どんどん収入があると思う。
 お母さん、このお金は僕のものじゃない。
 家族のお金だと思って、妹達の教育費や、お父さんの手術の費用、
 そして、全部家計費として使って。」
母は泣いた。
「今だって、毎日12時まで働いて、そうしてくれているじゃない。
 淳一、お母さんはうれしい。ありがとう。お父さん、そうですね。」
父も、涙を流しながら、何度もうなずいた。


つづく(次回は、「結ばれる二人」です。)

続・女塾③「悠子のカムアウト」

この物語は、悪い人、意地悪な人、嫉妬深い人は、
一切出てきませんので、安心して読んでいただけます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
時間は、5時半だった。
喫茶店の終了は、8時。
淳一と話がしたい。8時まで、こんなところで待てない。
悠子は、思い切って喫茶店に入って行った。

一つのソファに座った。
淳一が、トレイに水を持ってくる。
「いらっしゃいませ。」と淳一に女の子のような声で言われた。
「オレンジ・ジュースを。」と悠子は言った。
「あ。」と淳一は気がついた。
「なぜ?」と淳一は小声で聞いた。
「ごめんなさい。淳一君のこと知りたかったの。」
「ナイショにしててくれる。」
「もちろん。」と悠子は言った。

淳一の作詞のノートがある限り、することはあった。
悠子は、スケッチブック型の5線譜を出して、
淳一の詞を見ながら、曲を書いていった。
『すばらしい。曲が簡単に出てくる。』と感激した。
いつもの自分なら、曲を作って、それに言葉を当てはめていく。
そういう方法もあるが、詞があってそれに曲をつけるのが基本だ。

悠子は、集中していた。
淳一が、オレンジジュースを持ってきた。
「お待ちどうさま。」と声を聞いてやっと我に返った。
客と無駄口を利かないのが、店の決まりだ。
淳一は、それだけ言って行ってしまった。

悠子は、家に電話をした。
友達の家でオール(泊まり)をするから、帰れないかもしれないと言った。

閉店の8時までに、悠子は5つの詞に曲をつけた。
悠子は、もう8時かと思い、店を出て、惇一を待った。
淳一は、黒いコットンパンツに、黒いサマーセーターを着て出てきた。
手に提げている紙袋は、カバンと制服だろうと思った。
「夕食のために30分、お話ができるよ。」と淳一が言った。
たった、30分でも、悠子はうれしかった。

二人で、コーヒーとホットドッグが食べられる店に行った。
「淳一君、働いていたんだね。」と悠子は言った。
「うん。9時から12時まで、もう一つ働くんだ。」と淳一は言う。
「だから、学校で、5分休みも勉強してたのね。」
「うん。宿題だけは、やっちゃわないとね。」
「えらいなあ。」
「高橋さんも、お仕事しているんでしょう。」
「そう見える?」
「あの3人がすぐ帰っちゃうって嘆いていたから。」
「うん。でも、自宅でできるから、淳一君の方がたいへんだよ。」

二人は、コーヒーとホットドッグを口に入れた。
「淳一君の詞、もう、5つ曲がついたよ。」
「ほんと?見せて。」
淳一は、悠子の5線譜を手に取り、それを開いた。
淳一は、曲を読むのが、ものすごく早い。
「わあ、すごい。うれしいな。高橋さん、すごい才能だね。
 だって、書き直ししてない。モーツアルトみたい。
 全部、気に入っちゃった。」

「あの、あたし、曲作って売ってるのね。
 で、淳一君の名前作詞者で入れるから、そういうふうにしても、いい?」
と悠子は、核心に迫ることを、言った。
「うん、それ光栄だよ。じゃあ、そのときは、僕の名前『Jun』にして。」
「うん、わかった。」
30分があっという間だった。

「じゃあ、いかなくちゃ。」淳一は席を立った。
「じゃあ、あたしも。」悠子も立った。
喫茶店を出て、「じゃあね。」と言って淳一は走って行った。
悠子は、別れたふりをして、淳一のことを追いかけた。
淳一のことを最後まで知りたかった。

淳一は、どんどん走り、新宿通りを曲がり、
人々が「ゴールデン街」と呼んでいる、
怪し気なお店がたくさんあるところに入って行った。
悠子は、怖かったけれど、淳一が入っていくお店を認めた。
お店の前に「ラーメン」と書かれた、提灯があった。
ラーメン屋さんかなと思った。

悠子は、この一画の雰囲気が怖かった。
淳一はこんなところで働いているのか。
淳一は、12時までと言っていた。
そんな遅くまで、制服姿で、こんなところで待てっこない。
悠子は、店の近くをうろうろしていた。

そのとき、一人のホステスが出てきた。
真っ赤なカクテルドレスをきて、金髪の髪。
長いつけ睫をつけ、紅い口紅を引いていた。
ホステスは、店の外灯りをつけに出てきた。
で、ふと、悠子を見つけた。

「高橋さん。どうして?ここまで、ついてきたの?」
そのホステスが、淳一だと、悠子は、やっとわかった。
「淳一君?ごめんなさい。淳一君のこと最後まで知りたかったの。
 その、ドレス、淳一君、とってもステキ。」悠子はそう言った。
「だめだよ。ここは、そんな制服の高校生が来るとこじゃないよ。
 じゃ、お店入って。」と淳一は言った。

中に入ると、35歳くらいの美人のママがいた。
従業員は、淳一との2人らしい。
「あら、ナナのお友達。」とママ。
「うん、学校で並んでるの。アタシのことが知りたくて、ついて来ちゃったんだって。」
「じゃあ、お店手伝ってもらおう。奥の部屋で、ワンピース着て、
 あなた綺麗だから、メイクはリップだけでいいわよ。」とママは言った。

淳一は、奥の部屋で、悠子に黄色いワンピースを出して、オレンジ系のリップも渡した。
「靴は、これを履いて。」
と黄色いハイヒールを出した。
「あの、メガネかけてていい?とると何にも見えないの。」と悠子は言った。
「ママ、メガネないと見えないそうです。OKですよね。」と淳一はOKを取った。

お店に立った。
悠子は、実はうれしくてたまらなかった。
水商売風の衣装を着たのは初めてだった。
背中が大きく開いている。
それより、可愛いアメリカ人形のようでいる淳一が可愛らしくて、
何度も見惚れてしまった。
男の子の淳一もステキだが、女装の淳一もステキで好きだ。
悠子が男の時代何度も憧れていた世界だ。

淳一の隣に立った。
悠子は、すごい時間を今過ごしているなあと思った。
客がくる。
新人はちやほやされる。
淳一は、綺麗な衣装を着ているのに、
氷を割ったり、洗濯したお絞りを巻いたり、
裏方の仕事をたくさんしていた。

11時になって、客足がとだえた。
ママが、
「今日は、もういいわ。悠子ちゃんを送り届けて。
 それから、悠子ちゃんにそのワンピースと靴、貸してあげて。
 この時間、制服で町にいられないでしょう。」と淳一に言った。
「そうですか。すみません。」と淳一。
「すみません。」と悠子は言った。

悠子は、学生カバンと制服を入れた紙袋、
淳一も、紙袋に同じものを入れていた。
「高橋さんは、無茶するんだなあ。」と、外に出たとき淳一は言った。
「だって、淳一君に興味があったから。」
「どうして?」
「それは…。」(好きだから)という言葉を悠子は呑み込んだ。
「喫茶店に入ろう。お話が足りないみたい。」淳一が言った。
「うん。」悠子はうれしかった。
家には、オールだと言っているし。

今度は、地下の大きな喫茶店に入った。
ボックスが広くて、落ち着き、プライバシーがある。

二人ともコーヒーを頼み、それが来たとき、淳一が言った。
「僕のこと知りたいって、それで、あんな姿見られてしまって、幻滅したでしょう?」
「全然、全然、そんなことない。」
「どうして?」

「あ、あたし、小さいときから、女の格好した男の人大好きだったから。
 ウエイトレス姿の淳一君見て、可愛くて、胸がきゅんとしたし、
 スナックでのお人形みたいな淳一君見て、胸がときめいてしまった。」
「ほんと?高橋さんみたいな女の子いるんだ。まるで偏見がないんだね。僕うれしい。」

「どうして、毎日お仕事してるの?」と悠子は聞いた。
「僕の家、裕福で、僕にピアノの英才教育してくれたくらいなんだけど、
 僕が、中3のとき、父が、脳梗塞で倒れちゃって、今は、車椅子から立てない。
 会社の役員だったから、役員手当てみたいのくれるけど、
 それだけじゃやっていけない。
 妹二人いるし、だから僕が働いてる。」

「ピアノのお仕事しないの。」
「仕事をつないで行くのがむずかしいんだ。昼になることもあるし。
 高校は出たいから。
 今の典子ママのところの方が、安定収入あるから。ママすごくいい人だし。」
「えらいんだね。みんな淳一君のことガリ勉って言ってるけど、とんでもないよね。」
「女装して働いてるから、それがバレるよりガリ勉の方がいいよ。」
「女装するの好き?」

「うん。子供のときから、なぜか、女の子の格好するのがうれしかった。」
「すごくよくわかる。」
「え?」と淳一が反応した。
「あ、いえ。私が女装の子好きっていうのと似てるかなと思って。」
「なるほど、そうだね。」と淳一は子供のような笑顔を見せた。

悠子は、ここで、ジュリアであることを打ち明けようと思った。
淳一の秘密を知った以上、そうするべきだと思った。
「淳一君の秘密を知ってしまったから、あたしも一つ秘密を打ち明けるね。
 秘密、2つあるんだけど、もう一つは、絶対言えないの。何人かの将来を崩してしまうから。
 だから、1つだけでいい?」悠子は言った。
「うん。」淳一は、真剣な顔で答えた。

悠子は、左右2つ結びしているゴムをはずした。
首を振って、長い髪の毛を、ストレートにした。
そして、黒縁の眼鏡をそっとはずして、惇一を見た。
「すごい、美人なんだ…。」淳一は、悠子に見とれていた。
「だれかに、似てない?まだ、あんまり有名じゃないけど。」悠子は言った。
淳一は、悠子の顔をじっと見ていて、やがて、
「まさか…。」と言って、口をぽかんと開けた。
「ほんもの?ジュリア?高橋さん、ジュリアなの!」
悠子は、うなずいた。

「わあ、どうしよう。じゃあ、僕は毎日学校でジュリアと並んでいるの?
 ジュリアにわからないことを教えたり、
 音楽室で、いっしょに歌ったの本物のジュリアだったの?
 ジュリアが僕の詞を見て、曲を付けてくれたの?
 わあ、ど、どうしよう。」
淳一は言った。

「幻滅、してない?」と悠子は言った。
「するわけない。グレイトだよ。今、最高に感激してる。」
「よかった。もしかしたら、嫌われるかも知れないって思ってたの。」
「どうして嫌うの?感激以外の何ものでもないよ。」
「絶対秘密よ。」
「うん。わかるよ。秘密守るから。」

「あの、さっき詞で困ってるって言ったの本当なの。
 そして、淳一君の詞なら、曲が出てくることもほんとなの。
 明日にでも、事務所に行って、
 淳一君の詞を使っていいか聞いてみる。
 もちろん、作詞者として淳一君の名を入れる。
 私は、シンガーソングライターって売りだから、
 作詞のところが崩れるけど、それで、いいか聞いて見る。」

「わあ、僕、高橋さんが作るの、自作のCDだと思った。
 メジャーのCDなんだ。『恋の雫』の次のシングルのこと?」
「うん。事務所の人がOKくれたら、淳一君と共作になる。」
「そうなったら、いいなあ。僕、今日眠れないよ。」
「あたし、OKが出ること祈ってる。」


つづく(次は、「作詞家Jun誕生」です。)

続・女塾②「淳一の秘密」

このお話には、悪い人、意地悪な人、嫉妬深い人は、
出て来ません。安心してお読みいただけます。

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聞いていた3人は、ため息をついて、
「ああああ、すごく、よかった。昨日聞いたのと同じだった。」好美。
「本物を目の前で聞いた感じがした。」江里菜。
「悠子、惇一は、ガリ勉だけど、ピアノと歌だけは、聞けるでしょう。」悦子。

「聞ける…なんて、すばらしかった。もう、ほれぼれしちゃった。」悠子。
「いやー、高橋さんのコーラスに痺れちゃったよ。すごくいいんだもん。」と惇一。
「惇一、CDもってないんでしょ。だのに、あれだけ歌えて弾けちゃうの。」と悦子。
「うん、だいたい1度聞けばね。でも、かなりごまかしたとこあったから。」と惇一。
「ううん。前奏から、終わりまで、パーフェクト。1音も間違えてない。すごい。」
と悠子は言ってはっとした。
みんなが、見た。
「あ、あ、あたし、CD持ってるから、昨日研究したの。」
「え?持ってるの?」と3人。
「昨日、夜走って買いに行ったから。」と悠子。
「じゃあ、カップリングも知ってるの。」と好美。
「知ってるよ。」と悠子。
「じゃあ、やってみて。」と3人。

悠子はピアノを惇一と代わった。
カップリングは、速くてリズミカル。
悠子は、歌いながら、ピアノを何度も上り下りして、
ジェットコースターのような曲を弾いた。
すごい、ピアノのテクニックが要る曲だ。
みんな、もうノリノリで、ほうきをギターにして歌うマネをしたり、
最高に盛り上がった。
廊下にいた連中もみんなやってきて、
音楽室の中はライブショーとなった。
悠子は、全部で3回弾かされた。



悠子の家は裕福で、
ピアノの英才教育を受けてきた悠子の部屋は、特別に大きかった。
20畳くらいの部屋に、グランド・ピアノがあり、防音だった。
ベッドがあり、机、そして、ソファーがあった。
作曲の仕事をするのに、十分の広さだ。

1週間が経った。
悠子は、風呂を終え、パジャマ姿で、ベッドの上で考えていた。
好美、悦子、江里菜という仲良しもできた。
女の子として、女の子と普通に過ごせたことがうれしかった。
そして、もう一人、坂本惇一。
彼のことが気になってならなかった。
未来都市の先生は、その内、脳が解放されて、
男子に恋をするようになるだろうと言っていた。
この感情はそれに、似たものだろうか。

悠子は、部屋のカーテンを閉めて、電気を消し、
ベッドの毛布をかぶった。
「しちゃおうかな…。」
ぽつんと言った。

目をつぶって、自分の胸をそっともんだ。
何度も何度も。
恍惚とした気持ちになってくる。
悠子は、パジャマのボタンをはずし、
起き上がって、上着を脱いだ。
そして、下のズボンとショーツもとった。
真っ裸で、毛布を被った。
両手で、体中をなでた。
そして、ちぶさの先に指をやった。
そこを揉むと、ずんずんと快・感が訪れる。
女の子のような坂本惇一に、そっと抱かれているイメージが浮かぶ。
惇一が、悠子の胸の先端にキスし、歯で軽く噛んでいる。
「あ…、惇一君、感じる。あ…。ああ…。」
淳一のイメージがもっと鮮明になってくる。
淳一に体中をあいぶされ、悠子は、次第にあそこを潤ませていく。

悠子の手が、ももにのびる。
「あ…。」
悠子のあそこが、どんどん潤んでくる。
淳一にキスされながら、淳一の指が、悠子のスポットに達する。
「うううう・・・。」
悠子はビクンとした。
ぬれた部分の周りを、指で何度もあいぶする。
愛えきが、手をぬらすほどでてくる。
イメージの淳一が、スポットを激しく刺激してくる。
「ああ、淳一君、あああ・・・。」
悠子は、心で叫ぶ。淳一の代わりを自分の指がしている。
「ああ、淳一君。好き、大好き…。」
悠子の指は、激しく動き、淳一に強く抱き締められるイメージの中で、
達しようとしている。
「ああ…ああ…。」
体が微動を始める。その内大きな波となり、震えがきた。
「あああ……。」
悠子は声を殺して叫んだ。
「いく、淳一君、あたし、いく…。」
悠子は、背中を大きくのけ反らせ、脚をきゅっと閉じて、果てていった。

その行為の中で、悠子は、淳一への自分の気持ちをはっきりと自覚した。
自分が好きになる男子は、背が高く、男らしいタイプではなかった。
女の子のようだけど、やさしくて、デリカシーがあって、子供のような人。
これが恋なのか…悠子が初めて経験した思いだった。



次の日、学校で淳一に会い、「おはよう。」と言ったとき、
悠子の心臓はドキドキした。
ああ、やっぱり、好きなんだと思った。

3時間目の、現代国語の時間だった。
ガリ勉君にしてはめずらしく、淳一は、一冊の大学ノートをだし、
そこに何かを書いていた。
横書きに縦長に。
『詩を書いている。歌詞かな。』悠子は思った。

悠子は、惇一が1つ書き終わったのを見て、
「見せて。」と手を伸ばした。
惇一は、いやいやをしたが、悠子は、絶対見せて!という風に手を伸ばした。
悠子は、ゲットした。
そして、開いた。
詩ではなく、歌用の歌詞だ。
悠子は、作曲には、ある程度の自信があったが、
自分は作詞の力が足りないと思っていた。

ところが、淳一のノートを開いてみると、初めのページからすばらしい。
悠子は、夢中で読んだ。
自分は、見る目はあると思う。
いい詞を見ると、その場で、曲が自然に浮かんでくる。
淳一の詞は、そんなのばかりだ。自分の詞よりも、遥かにいい。
どんどんメロディーが浮かぶ。

国語の時間が終わったとき、悠子は淳一に、
「お願い。これ、3日貸して。曲つけてきていい?私、詞が苦手、曲が得意なの。
 もう、曲ついてるのあったら、教えて。それは、抜かすから。」と言った。
「わあ、曲つけてくれるの。ぼく、詞が得意、作曲が苦手なんだ。まだ、1曲も曲ついてないよ。」
と、淳一が言う。
「じゃあ、成立。」悠子は言った。

その日、悠子は、すぐにでも淳一の詞に曲をつけたかったが、
それより先に、確かめたいことがあった。
毎日、淳一は、飛んで帰る。家で勉強するためか。
あれだけピアノのできる淳一は、なぜピアノをやめたのか。
疑問が一杯あった。

さよならをして、淳一は、急いで出て言った。
悠子も、急いで出た。3人が声をかけてくれたが、ごめんをして出てきた。
目立たないよう、淳一から距離を取りながら、後をつけた。
淳一は、新宿駅で降りた。そして、高層のビル街へ歩いて行く。
そのうち、高層ビルの1階の明るい喫茶店に入った。
従業員の更衣室に入っていく。
「働いているのかな。」と悠子は、外から窓の中を覗いていた。

その内、更衣室から、ウエイトレスが出て来た。
少しミニのワンピース型の藤色の制服を着ている。

淳一はまだかなあと覗いていた。
しかし、いくら待っても誰も出てこない。
「じゃあ…、でも、まさか。」悠子は、あの時出てきたウエイトレスを探した。
よく見た。
「似てる。可愛い。」悠子が、惇一を女の子にしたらと考えていた姿に似ている。
『そうか、そうだったんだ。淳一は、働いていたんだ。
 だから、家で勉強ができない。
 だから、学校で、寸暇を惜しんで勉強していたんだ。
 ガリ勉なんてとんでもない。
 それで、学年のトップをとるなんて、すごい。よっぽど頭がいいんだ。』
悠子は思った。

つづく(次は、「淳一へのカムアウト」です。)

続・女塾①「高橋悠子の入学」

ご無沙汰しました。新しい物語ではなく、女塾の続編を書きます。
まだ、全部書いてなくて、途中でずっこけるかもしれません。
エッチな場面が極少ないのですが、お読みくださるとうれしいです。

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この物語には、悪い人、意地悪な人、嫉妬深い人などは、一切出て来ません。
いい人ばかりです。ですから、安心してお読みいただけます。

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翌日、九月1日。
新しい梅が丘高校に行く日である。
制服は、上は白の半袖。胸にリボン。
悠子は、髪を左右に束ねて、カムフラージュに黒縁の眼鏡をかけていった。
それだけで、別人のようになる。
とくに美人に見えない。
これなら、もしマスコミがつめかけても分からないだろうと思った。

担任は、吉永由紀子という先生。
始業式なので、転校生は紹介のため、体育館の舞台袖に待機させられていた。
校長の話があり、転校生の紹介のとき、悠子は、舞台で挨拶した。
その後、段を下りて、ピアノの横で待った。
次は、校歌斉唱だった。

このとき、ハプニングがあった。
音楽教師の前田俊夫が、腹が痛いと消えたまま帰って来ないのだ。
ピアノは、ちょうど悠子の前にあり、楽譜が置かれていた。

先生達は右往左往し、ピアノの弾ける先生を探し、
一方で、CDのカラオケを探していた。
それが、見つからない。

悠子は、出しゃばるなと思いつつ、見ておれず、
近くの副校長に、
「あのう、あたし、ピアノ弾けますが。」と言った。
「だって、君は転校生だろう。曲も知らずには、無理だろう。」
「あのう、楽譜があれば、大丈夫です。」
「え、練習もなしに。」
「はい、多分。」
「よし、この際、君に頼もう。」

悠子は、さっと、楽譜を見た。
それで、もう曲が分かった。
全日本ピアノコンクールの中学の部で優勝した悠子には、
簡単なことだった。
舞台に一人指揮の女子の生徒が立っている。
彼女と目を合わせ、悠子は、ピアノを弾いた。

すばらしい伴奏が体育館に流れた。
この校歌の伴奏はこんなにもいい曲だったのかと思えた。
曲は、無事に終わった。

ピアノのすぐ前の列が1年1組、悠子のクラスだった。
男子の列の一番前に、髪を肩まで伸ばし、前髪もあり、
色が白く、女の子のように可愛い男子がいた。
その子は、悠子を見ていた。
悠子が目をやると、
彼は、胸の前で指で丸を作った。
「ナイス、演奏!」
そう言っているように見えた。



教室で、挨拶した。
席は一番後ろの男子のとなり。
あの胸の前で丸をくれた子だ。
背は悠子より3cmほど高そうだった。
悠子は体育館から、ずっと興味をもっていた。
『女装したら、可愛いだろうな。』と思った。

悠子が席に着くと、隣のその男子は、
素晴らしい笑顔で、首を傾けた。
そのあまりの屈託のなさに、悠子は一瞬たじろいだほどだった。
(感じがいいけど、変わった子だな。)と悠子は思った。
教科書の名前をみると、坂本惇一とあった。

1時間目と2時間目が終わって20分の休憩時間、
女の子達が、悠子のところへ寄ってきた。
いろいろ質問攻めが待っている。
悠子は連れて行かれた。

ふと坂本惇一をみると、
外へ出ずに、せっせと勉強をしていた。
(変わってる。)とまた思った。
「ねえ。坂本君、いつも勉強なの?」悠子は聞いた。
「うん、アイツはガリ勉だから。成績もトップだし。」
「じゃあ、すごい、じゃない。」と悠子は言った。
「ガリ勉なら、当然でしょう。」と誰かが言った。

勉強では、悠子は遅れている。
悠子こそガリ勉をするべきであった。
それに、学校のあとは、
自宅だが、作曲の仕事がある。

そう思って、次の10分休みは、勉強することにした。
みんなに訳を話して。

分からないことがあると、熱心に勉強している惇一に、
恐る恐る聞いた。
すると、惇一は、にこっとして、
少しも嫌がらずに、悠子が納得するまで教えてくれる。
いい人だなあと、悠子は思った。

悠子は、勇気を出して聞いた。
「勉強のことじゃないんだけど、校歌の伴奏のあと丸くれたでしょ。
 どうして?」
「ああ、あれね。君の演奏がすばらしかったから。」
「伴奏なのに?」
「伴奏こそさ。君は、全日本の高校生で5本の指に入る人だと思ったよ。」
「坂本君もピアノやってるの。」
「今は、やってない。前にやってた。」
「今度坂本君のピアノ聞きたい。」
「君の前でなんかはずかしいよ。僕こそ君のピアノもっとききたい。」
「じゃあ、今日の昼休み。」
「よし、そこだけは勉強しない。」
悠子は、悠子のピアノを5本の指に入ると言ってのけた坂本に限りなく興味を持った。

1日にして、悠子には3人の仲良しができた。
一人は好美という、小柄で甘えん坊の子。悠子は、有紀とイメージがだぶってしかたがなかった。
もう一人は、しっかりものの悦子。大阪の梨奈そっくりだった。
もう一人は、背が高くて、目の大きな、江里菜。その子は海老ちゃんに似た唯そっくりだった。

昼お弁当を食べた悠子と惇一は、二人でどこかへ行こうとする。
好美や悦子や江里菜が見逃すはずがない。
「あの坂本惇一が勉強しないのは、完全におかしい。しかも、悠子と。」
3人が音楽室にくると、
「ああ、ばれたか。」と惇一が言った。
「そうよ、二人して、何よ、何よ。」と悦子は言った。
「惇一は、ガリ勉だけど、ピアノだけはうまいのよ。」と悦子が悠子に言った。
「じゃあ、何か、弾き語って?」と悠子。
「まさか、昨日発売のジュリア、弾けたりして!
 惇一のことだからさ。」と好美が言った。
「『恋の雫』?」
「そ、そう。もうどこいっても売り切れ。」
「こんなんだよね。」
惇一は、ピアノにすわり、前奏を弾き始めた。
1音も違わず弾いている。
しかも、悠子がうっとりするほどやわらかい音だ。
悠子は、うれしくて、身が震えた。
やがて、惇一が歌い始めた。

♪君は硝子戸の向こうで うつむいて
 一つ落とした あれは恋の雫
 もう明日なんかいらないと 君は何もかも捨て
 あてもないまま  旅立った

 自分が信じられない 誰もあてにできない
 そう思って立ちすくんだ ガードレール、
 君は落とした ぽたり掌に
 それは、命の泉から湧き出るもの
 どうしても なくせないもの 恋の雫

すばらしい声だ。うっとりさせられる。
後の3人は、息を殺して聞いている。

惇一のピアノはすばらしい。1音もはずさない。それより音がステキだ。
悠子は、惇一こそが、5本の指の一人だと思った。

やがて歌が、サビのコーラスが入るところに来た。
悠子はそこで、高い声でコーラスを入れ、はいって行った。
ピアノの惇一がうれしそうに悠子を見た。
息がぴったりだ。
そして、最後まで、ハーモニーで行く。

1コーラスで、惇一はピアノの手を膝に置いた。


つづく(次は「淳一の秘密」です。)
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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