ごあいさつ

これまで、1年間、間をあけずにほとんど書いてきたのですが、
とうとうネタ切れです。
今度ばかりは書けません。

またゆっくり、本など読んだりして、
英気が湧いてきたら、書きます。

これまでの作品、読んでくださって、
ほんとうにありがとうございました。

では、また。
            ラック
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女装診療所③「叶った願い」最終回

英二が、鏡の中にみたのは、妻幸子の結婚したときの顔だった。
どうして、妻の顔にしたのか。
先生に聞こうとするより前に、
「幸子さん、いらっしゃい。」と先生は言った。

やがて、奥の部屋からやってきた人物を見て、
英二は、もう一度キモをつぶした。
妻幸子は、英二の顔や姿になっていた。
「どうして?」と英二は幸子に聞いた。
「あなたが、女性になりたい気持ちを知っていたの。
 あなたのダンボール箱の中に女装の衣類やカツラがあったから。
 そして、あたしは、レズビアンで男性になりたいという願望を持っていたの。
 お互い、そんなこと言えないでしょう。」
幸子は言った。だが、声は英二だった。
幸子は、言った。
「旅行に行ったのは、ウソなの。
 あたし、死ぬほどの決心をして、この診療所に来たの。
 初めは、信じていなかったけど、現実に私をあなたにしてくれた。
 あたし「女装診療所」の名刺を、あなたのいないときに、
 こっそり家に帰って、テーブルの上にさりげなく置いたの。
 あなたは、きっと来てくれると思っていたの。
 そして、来てくれた。そして、あたしになってくれた。」

「女になって幸子をあきらめようとした俺を許してくれるの?」
「それは、あたしの言葉。あなたを裏切ったのは、あたしが先。
 でも、お互いに本当の心を隠して、一生暮らすくらいなら、
 一か八か自分が男になろうと思ったの。」
「ここを、どうやって知ったの。」
「ケータイで探したの。一番評判のいいところって推薦が殺到していたから。」
「幸子、俺になってうれしい?」と英二は聞いた。
「夢のようだわ。あなたは、どう?」幸子は聞いた。
「うん。恥ずかしいけど、うれしい。
 自分の最愛の妻になれるなんて、夢のようだよ。」
「あたし、男らしくするわ。」
「俺は、幸子みたいに女らしくする。」
「よかった。」
二人は抱き合った。

「では、最後のオペです。乳房のドナーになることに、
 幸子さんは、同意しますか。」と先生。
「はい。」と幸子。
「英二さんは、幸子さんの乳房をもらうことに同意しますか。」
「はい。」
「生殖器を互いに交換することに同意しますか。」
二人は声をそろえて、「はい。」と答えた。

幸子が手術服に着替え、二人並んでオペが始まった。

15分くらいで、全てのオペが終わった。
幸子は完全な英二になった。
英二は、完全な幸子になった。
すぐに動いても何をしてもいいという。

英二は、幸子が持ってきた服、靴など一式を身に着けた。
花柄のワンピース。ジャスト・フィットした。
妻の目の前で、こんな格好ができるなんて。
英二は感激した。
英二の着ていた服を、幸子が着た。

「じゃあ、もういいですね。」
と礼子が来て、先生の首の後ろにあるスイッチをOFFにした。
すると、先生は、ガクッと人形のように動かなかった。

「あの、先生は・・・。」と幸子になった英二は聞いた。
「先生は、ロボットなんですよ。高性能の手術用ロボットです。
 例えば、幸子さんの顔を触ることによって、
 データを記憶して、年齢を少し若くして英二さんの顔のオペをしました。
 手からは、常にいろいろな光線が出ていて、骨や皮膚の拡張や収縮をしていました。
 長い研究と試行の末、人間型ロボットが完成したんです。」
「どうして、こんなところで?」と英二になった幸子は聞いた。
「あんまり有名になって欲しくないからです。
 私達は、いろんな時代にワープして、どの時代がいちばん売れ行きがいいか、
 調べているんです。」
礼子は言った。



幸子(以下・英二)と英二(以下・幸子)は外に出た。
手をつないで、夕方の町を歩き始めた。
「えーと、幸子。わあ、なんだか恥ずかしいわ。」
「俺、じゃないあたしも。」
「今すぐ何をしたい。」と英二。
「決まってるじゃない。」幸子。

二人はぎこちない会話をしながら、ラブホテルに入って行った。
入るなり、バッグをおいて、
「あなた、抱いて。」と幸子は言った。
「ああ、『あなた』って呼ばれたかった。幸子大好き。」英二は幸子を抱いた。
「思い切り抱いて。」
「ああ。」
二人は、口づけをした。
『ああ、こうされたかった。幸せだ。』幸子は思った。
『思い切り抱きしめたかった。ああ、うれしい。』英二は思った。

ベッドに移り、
英二は、幸子に対して、男になったらやってみたいことを、すべてやった。
幸子は、全てを受け入れ喜びに震えた。
そして、幸せの叫びをあげた。
「脚を広げるよ。」
「ええ、恥ずかしいけど。」
幸子の部分は十分に潤っていた。
「いくよ。」
「うん、来て。」
幸子は、生まれて始めての挿入感に感動した。
英二は、幸子をめちゃめちゃに丘して、喜ばせたかった。
英二は、挿入後、激しく幸子を丘した。
黄色い声を上げながら、快・感を訴える幸子を見て、
英二は思った。
(ああ、英二さん。あなたはやっぱり女になるべきだった。よかった。)
同じく、幸子は思った。
(幸子、こんなに激しいのが好きだったんだね。ああ、感じる。女に成れて幸せだ。)

二人は、3ラウンドを終えた。
結婚後初めての完全な満足感だった。

二人は、毛布をかけ、お互いを見合った。
「明日から、毎晩楽しみ。女を丘したの初めて。」英二は言った。
「あたしも。完全に女になれた気がした。感動。」幸子は言った。

「ところで、月曜から仕事どうしよう。」
と幸子は言った。
英二は笑った。
「こんな名セリフがあるんだよ。」

「どんなの?教えて。」と幸子。
「明日のことは、明日考えましょう。」英二。
「あはっ。そうね。」と幸子。
二人は、顔を見合わせて笑った。


<おわり>

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《エピローグ》

月曜日、向田英二こと幸子は、黒のスーツをびしっと決め、
英二の会社に入って行った。
そして、販売部の課長杉原の前にたった。
課のみんなが見ていた。

課長は、目の前に現れた美貌の女性に目を白黒させていた。
「おはようございます。向田の妻でございます。
 実は、夫が昨日病に倒れまして、妻のわたくし幸子が参りました。」
課長は、幸子を惚れ惚れと見て、
「英二君の奥さんかね。代わりに仕事を?」
「はい、昨日一日かけまして、すべての引継ぎをいたしました。」と幸子。
「今日の予定は、わかっている?」
「はい。5店の会社に出向き、販売契約を結ぶことです。」
「そこまで、わかっているの。
 いいよ。部長に内緒で、やってもらう。
 実際人手がなくて、向田君に休まれちゃ困るとこなんだ。
 無理しないでいいよ。1つでも契約をとれたら上々だから。」
課長は、そう言った。

部の人達が、みんな幸子を見ていた。
男子社員は、恐らく幸子の美貌を、
女子社員は、英二の妻がこんな綺麗な人であったこと、
それに、驚いていた。

幸子は、初めの会社に行って、いつもの担当と会った。
ここには、もう3度も脚を運んでいる。
いつも、けんもほろろだ。
担当のA氏がやってきた。
幸子をみるなり、「おっ。」と表情を変えた。
そして、態度が柔らかくなった。

話し合う内、幸子は思った。
男性は、相手が女性だとまるで態度がちがう。
幸子のような美貌の女性には、とくに。
自分だってそうなる。
セールスには、女性の方が向いている。
今日、あと4件の担当は、全員男性だ。



その日、驚くことに、
幸子は、4件の会社と販売契約を結ぶことに成功した。

会社に帰って、部長にそのことを伝えると、
デスクの人達が、みんな驚いて拍手をしてくれた。
課長も大喜び。
「えーと、幸子さんだったね。
 営業には、君のような女性がいいね。
 明日から、ずーと来てくれないか。
 部長には、許可を得ておくから。」
そう言った。
『やった!』と幸子は、心で叫んだ。



そのころ、英二・元幸子は、家事にいそしんでいた。
そして、思っていた。
『セッ・クスは、男役がいいけれど、家事はあたしがやりたいわ。』

夕飯に、英二は、幸子が毎日会社に行けるようになったことを聞く。
「わあっ。それ、理想。」と英二は言った。
「うん、あたしも、家事は苦手だから。」と幸子は言った。

こうして、向田家の夜は、
ハッピーエンドに包まれていった。


完  (次回は未定です。)

女装診療所②「女になる英二」

「次は、顔の脱毛です。髭だけではなく、頬やアゴ全部ご希望ですね。」と言われた。
「はい、できるなら。」
英二は言った。

今度は、さっきより小さなバキュームで、顔の髭を全部抜かれた。
そして、赤い光線を当てられて、終わりだった。
「ついでに脇の下とビキニラインにも、当てますね。」
そう言われ、バキュームと光線を当ててもらった。
鏡に脇の下を映すと、子供のように毛の跡が少しもなかった。

先生がやってきた。
「次は、ハイウエストですね。」
「できるんですか?」と英二はまさかと思って聞いた。
「これは、あたしがやります。」先生は言った。
鏡が上半身を映すように設置させた。
先生は、英二の頭の方に立って、
両手を脇腹に当てて、何度かこすった。
それは、まるで、粘土の彫塑をやるように、
先生の手の通りに、英二の体は形作られていった。

先生は言った。
「ハイウエストにするには、そこを細くすればいいだけじゃだめなの。
 ウエストから脚の膝までをなめらかな女性のラインにすること。
 それを、お望みですね。」

英二は、一瞬ためらった。
脚の無毛は、まだ妻に隠せる
しかし、女性のお尻。女性の太ももになったら、もう言い訳がきかない。
しかし、顔の髭がなくなり、女のような無毛の脚になった今、
理性のブレーキがゆるくなっていた。

知性美の看護婦が元筋肉質の柔道家と知り、性的な興奮状態にあった。
会社を辞め、妻と別れることになる。
性的な興奮と理性との間で苦しんでいるとき、
例の知性美の看護婦が来た。
「迷ってらっしゃるのね。ここを触っていいわ。」
と彼女はいい、英二の手をナース服のスカートの隙間に入れた。
そして、あるものを触らせた。
「あ。」
英二の頭にかーと血が上った。
看護婦は、ショーツを履かずに、あれをむき出しにしていた。
英二は、性的な絶頂の手前に至り、思わず、
「お願いします。」と言った。

英二の理性は、女体になりたいという願望に屈した

「わかりました。」と先生は言い、
「礼子ちゃん、脂肪の注入。」と言った。

知性美の看護婦礼子は、大きな注射器のようなものをもってきた。
それを、おへその横あたりから、注入し、先生は擦り、
次第になめらかな女性のラインを作っていった。
脂肪は、太ももも綺麗に形作っていく。
うつむいてお尻への注入も受けた。

ああ、どんどん女体になっていく。
これで、もう妻の前に立つことができない。
『幸子、許してくれ。』
英二は心で叫んだ。
女体に近づくほど、自分の願望は膨らむばかりで、止めることができなかった。

英二は、仰向けにされ、体を見て、感動した。
それは、女体に限りなく近い下半身だった。
先生が言った。
「中途半端はかえってよくないの。
 いっそのこと、完全な女体にしましょうか。」
先生の言葉が、たまらなく甘味なまじないのように聞こえた。
『なりたい、女になりたい。』
とうとう幸子を失うのか。
まさか、幸子が、レズビアンで、女体を好む…それはあり得ないことだった。

急な坂道を転がるように、もはや英二の願望にブレーキをかけることはできなかった。
『幸子、許してくれ。願わくば、幸子が女も好きでありますように。』
あり得ない期待をしながら、
「お願いします。」
英二は言った。

「じゃあ、少し脚を長くするわね。
 首も細くする。
 肩幅を狭くして、腕全体を細くします。
 肋骨が分厚いので、薄くして、
 背骨を全体的に縮小して、
 そうそう、骨盤を広くしなくちゃ。
 これで、出来上がりは、162cmの身長。
 ウエスト58、ヒップ88、バスト88。
 まあまあよね。

 乳房と生殖器は、本物の方がいいから、
 ドナーが現われるまで待ちましょう。」
と先生は言った。

英二は、すべて先生に任せることにした。

20分後、先生の言った通りのことがなされた。
英二は、ベッドから立って、姿見を見た。
股間のものと乳房を除いて、
あとは、素晴らしいプロポーションの女性ができていた。
それが、自分かと思うと、喜びが、体の中からあふれてきた。

この診療所は、偽者ではない。
多分、未来の技術が使われているとしか思えない。

英二は、手術着を閉じた。

「次に、声を女性の声にしますね。」
先生は、そういうと、ある器具を喉に当てた。
「あーと言い続けてください。」
先生に言われて、英二は、あーと言い続けた。
言いながら、英二の「あー」は、音色と高さが変わってきた。
やがてそれは、女性の声に突入した。
「はい。ここですね。」
と先生が言った。
英二は、声を出してみた。
女性の綺麗な声だ。
声までも変えてくれるのか、と英二は感激した。

「では、最後の美容をしますので、こちらにいらしてください。」
礼子に言われて、英二は、ドレッサーの前に移った。
礼子は、英二の髪を、ブラシで梳き始めた。
驚くことに、ブラシで梳けば梳くほど、髪の毛が伸びてくる。
英二の髪は、瞬く間に、肩までのロングへアーになった。

礼子は、美容院のように、英二に前掛けをして、
髪の毛をカットした。
毛の先にカールをかける。
前髪にも。
少し長目の前髪を7:3に分けた。
やさしい顔立ちの洋次は、すでに女性に見えた。

「じゃあ、最後に顔に映ります。」
先生は言って、英二をベッドに寝かせた。
「あなたのお好きな顔がわかります。
 看護婦なら、美香より礼子がお好きですね。
 そして、ちょっと唇を厚くセクシーな感じ。」
「どうしてわかるんですか。」と英二は聞いた。
「あなたが、美香より、礼子を見ている回数の方が多かったからです。」
「そうでしたか。いや、参ったな。」と英二は言った。
「お顔は私に任せてくださいますね。
 気に入らなければ、何度でも、整形できます。」
「はい、お任せします。」
「では。」

このときだけは、先生は鏡を見せなかった。
先生は、英二の顔に手を当て、
粘土細工のように、
「全体に小さく、知性的な額、澄んだ目、少し厚い唇…。」
などとつぶやきながら、
「はい、できましたよ。」
そう言った。

英二は、恐る恐る鏡を見た。
そして、キモがつぶれるほど、驚いた。


つづく(次は、「終結」最終回です。)

女装診療所①「診療所の治療を受ける英二」

向田英二は、31歳。
2歳年下の美貌の妻幸子を得て、サラリーマン生活も安定していた。
二人には、まだ子供ができなかった。
英二は、自分の妻とのセックスが十分愛し合えていないことが、
その原因の一つだと思い、妻幸子に申し訳ない気持ちでいた。

それは、英二は、子供の頃から女装の趣味があり、
どちらかと言えば、自分が女になって、愛されたいという願望があったからだ。
女性も好きであったが、女性に対し、自分から愛することが、苦手であった。
どちらかと言うと、自分が受身になって、女性に愛されたかった。
とくに、愛の行為の最後にする、動作が、自分がいかにも男である気がして、
ともすると、せっかく大きくなった男性自身が、萎えてしまうことも少なくなかった。
美貌でセクシーでさえある幸子と結ばれながら、
自分は、なんというもったいないことをしているのだ…と自分を責めることがあった。



マンションに帰ってくると、部屋はがらんとしている。
そうだ、妻が友達と、2泊の温泉旅行に行っているのだ。
英二は、ふとキッチンの上を見た。
1枚の名刺サイズの宣伝カードがある。
見れば、『女装診療所』とある。
これはなんだ、と英二は胸がドキンとした。
自分の女装趣味を知り、妻がこれをテーブルに置いたとしたら大変だ。
焦り考え込んだが、すぐに分かった。
自分だ。
昨日テーブルにこんなものはなかった。
2日前、取引先の招待で、ニューハーフ・クラブに行ったのだ。
そのとき、ホステスが、自分の内ポケットに入れたのだろう。
それを、後で見ようと、妻が留守であることに気をゆるめ、
こんなところに置いたのだ。
置いた記憶はなかったが、それしか考えられない。
妻が見たとしたら、その場で詰問されたはずだ。
英二は、ほっと胸をなでおろした。

ところで、そのカードが気になる。
『診療所』というのは、医師が開業するときの正式な名称だ。
それを、医院としようが、クリニックとしようが、それは自由である。
しかし、『診療所』と名乗れるのは、正規の医師でなくてはならない。
例えば、カイロプラクティックの資格者は、医師ではないので、
『診療所』を名乗れない。
『女装診療所』とは、誠にシンプルな名だが、
『診療所』を名乗れる正規のところなのか。
第一、医学の分野で、「女装」などない。

英二はそのカードを一笑にふそうと思ったが、
ふと、裏を見て、興味を引かれた。
「できないこと」
・記憶の操作
・心の入れ替え
・性的嗜好の植え付けあるいは消去
・子供を大人にすること
・大人を子供にすること

と、5つが書いてある。
ということは、この5つ以外ならできるとでもいうのか。

英二は限りなく興味を持った。
英二は、髭と脚の永久脱毛をしたいと思っていた。
これだけは、やっても妻にあまりばれない気がした。
「髭は、昔から無かったじゃないか。」などと言えそうだった。
さらに、できることなら、ウエストラインを高くしたい。
これは、妻にばれてしまうだろう。
ダメだろうなと思った。

英二は、試しに電話をしてみた。
綺麗な声の看護婦らしき人が出た。
英二は、さっきのことができるか聞いてみた。
すると電話の声は、
「はい大丈夫ですよ。」と言う。
「あの、ウエストラインを上げることもですか。」
「はい、できますよ。」と看護婦は、簡単に言う。
「あの、治療費はどのくらいでしょう。」と英二。
「内は、一律何をやっても10万円です。
 ですから、たくさんおやりになった方がお得ですよ。」
彼女はそういう。

英二は、それは安いと思った。
永久脱毛だけで、全身やったら、気の遠くなるほどのお金がかかる。

英二は、明日金曜日の6時に予約をした。



さて、診療所を訪ねてみると、そこは、雑居ビルが並んだ、
古めかしいところである。
そこの小さなビルの3階だった。
外階段がぎしぎしいい、ビルの壁は、いたるところヒビがはいっている。
そこに、「女装診療所」と小さい札が貼ってある。
もう、目立たなくても一向にかまわない、と言わんばかりである。
とにかく、あやしい。
しかし、こういうあやしげなところに、あんがい掘り出しものがある。
英二は、勇気を出して、ドアを開けた。

「どうぞ、いらっしゃいませ。椅子におかけください。」
と言ったのは、知性美にあふれる驚くほどの美しい看護婦だった。
あの電話に出た、女性なのか。
もう一人は、肉体派のセクシーの塊のような看護婦だった。
やがて、先生が奥からやってきた。
女性だった。
男の先生とばかり思っていた英二は、少なからず驚いた。
しかも、先生は、先ほどの看護婦を越える美貌だった。
「向田英二さんね。じゃあ、さっそく裸になって、
 手術服に着替えて、患者用のベッドに横になってください。」
先生は言う。
アルトの痺れる声だった。
「あの、カルテとか、住所なんか聞かないんですか。」
英二は、不安になって尋ねた。
「うちは、モグリなの。だから、そういうのあっちゃ困るのね。」と先生が言う。
セクシーな看護婦さんが、
「オペが見えるように、鏡を設置しますから、これは『イヤ』と思ったら、
 すぐに、そう言ってください。そのオペを止めますからね。安心でしょう?」と言った。
このとき、英二はそっと彼女に聞いてみた。
「あのう、ここ信用していいところ?」
すると、セクシーな看護婦は、英二の手を取って、彼女の股間に当てた。
『あ、男だ。』英二は、仰天した。
「あたし、そこいらにいるオヤジだったんですよ。」と彼女は言う。
「うそー?じゃあ、あの綺麗な看護婦さんは。」
「あたしも綺麗ですけど。」と彼女は言う。
「ごめんなさい、あなたはセクシーです。私の言うのは、もう一人の人。」
「彼女は、マッチョな柔道家でした。」
「ええ?」英二は半分疑い、半分期待した。
そして、男の物を大きくしてしまった。
セクシーな看護婦はそれを見て、
「ちょっとここだけ麻酔をしましょう。」
と1本打った。
英二のそこは、萎えた。

脚が見えるように鏡が、設置された。
「じゃあ、脚の永久脱毛をします。美香、お願いするわ。」
セクシーな看護婦は美香という名だった。

彼女は、掃除機のようなものを脚に当てていった。
驚くことに、その掃除機は、毛まで抜いて吸い取ってしまう。
脚2脚、裏表に5分もかからなかった。
それから、秘密にお尻にも当ててもらった。
「次に、光線を当てます。」と美香は言って、赤外線のようなものを当てた。

「はい、脚はこれで終わります。もう永久に毛は生えませんよ。」
と言われた。
「え?あれだけで、おわりですか。ほんとに?」
英二は驚き、起き上がって、脚を触ってみた。
すべすべの白い肌。英二は感激した。
もう毛が生えて来ないかどうかは、わからない。
しかし、脱毛されたのは、事実だ。
現に、脚の毛は産毛までなくなっている。
痛みを全く感じなかった。
只の脱毛でも、いいじゃないかと思った。


つづく(次回は、「先生の本格的治療」です。)

ぼくの体を見て③「家族へのカムアウト」最終回

由梨が言ってくれたものの、
ひろみは、体のことを、どうしても両親に言えなかった。
そのまま、とうとう5年生になった。

ひろみは、泣きたくなった。
1cmくらいあったおちんちんが、とうとう、0mmになってしまった。
2つのたまたまも、体の中に入り込んでしまった。
オシッコをするとき、おちんちんのまわりの皮膚を陥没させてやっとできる。
家でなら、そのまま、しゃがめばいい。でも、紙で拭かなくてはならない。
これでは、女の子と同じだ。

胸は、多分、Aカップくらいになっていた。
乳くびだけでなく、全体に盛り上がってきた。
もうすぐ隠せなくなるだろう。

ひろみは、どうしよう…と思い、自分の部屋のベッドの布団の中で泣いた。

幼稚園のときから、女の子に憧れてきた。
女の子の服が着たかった。
髪を伸ばしたかった。
女の子のマネをするのが楽しかった。
一方、男子と同じような激しい遊びができなかった。
自分が女の子ならどれだけ楽かと思った。
でも、体まで女の子にとは、望んでいなかった。
だが、由梨が、自分の体は、もうほとんど女の子だと言った言葉を思い出した。

クラスの由梨が好きだった。
だから、心は男なんだと思った。
でも、女の子の格好をして可愛くなる男の子も好きだった。
テレビで、綺麗なニューハーフの人を見ると、萌えてしまった。

学校の保健の授業で、「男の子と女の子の体の違い」というのを習った。
習って愕然とした。
自分の体のどこもかも女の子だった。
どうしてこんなことが起こるのだろう。
ぼくは、男の子として生まれたのに。

ひろみは、学校の身体測定を休んだ。
夏の水泳の授業を全部ずる休みした。
移動教室では、風呂に入らなかった。
夏を何とかごまかせば、後の季節は、胸を隠すことができると思った。



5年生の10月だった。
ひろみは、いつものように「覗かないでね。」と強く言って、風呂に入った。
そして、出てきて、バスタオルで体を拭いているとき、
母の道子が、物を取りに、うっかり着替え場に入ってしまった。
「ダメ!」ひろみはそう言って、戸を閉め、思わずバスタオルで胸を隠した。
「あ、ごめんなさい。」と道子は言ったが、ちらっとひとみの体が見えてしまった。
一瞬、女の子だと思った。
乳房を見たわけではない。男の証を見たわけではない。
体全体からくる感じが女の子だったのだ。

「ひろみ、ひろみの体をお母さんに見せて。
 お願い。ひろみ、何か隠しているでしょう。」母は言った。
「ダメ。隠してない。なんでもない。」ひろみは泣きながらそう言った。
「ひろみ。怒らないから。お願いだから、この戸を開けて。」
中で、ひろみは考えているようだった。
いつまでも秘密にしておくわけには行かない。
家族が知っていてくらたら、楽になる。

ひろみは、タオルを女の子巻きにして、母を、着替え場に入れた。

そこで、母は、ひろみの体の全てを見た。
母は、ひろみを抱きしめた。
「ひろみ、いつからなの。」
「4年生のときから、オッパイが出てきた。」
「ごめんなさい、ひろみ。今まで気がつかなかったなんて。おかあさんがいけなかった。
 どれだけ辛い思いをしたでしょう。ごめんなさい、ひろみ。」
母は、ひろみを抱きしめて泣いた。
「ありがとう。ぼく、今まで、どうしたらいいかわからなかった。」ひろみは言った。
「あした、病院へ行きましょう。」そうしたら、なんだか分かるわ。

「家族のみんなには、知らせるけどいい?」
「うん。もう隠せない。」ひろみは言った。

夕食のときに、母はみんなに言った。
「ひろみのことだけど、ひろみは、今、女の子の体をしているの。
 なぜだかわからない。病院で見てもらうわ。
 ひろみは、今まで辛かったと思うの。それをわかってあげて。」

2歳年下の里香が言った。
「うん。お兄ちゃんのこと、ときどきお姉ちゃんって呼びそうになった。
 その訳が、わかった。お兄ちゃんは、お姉ちゃんだったのかも知れないね。」
「私も、ひろみの後姿見て、まるで、女の子だと思ってた。
 胸もあるんだね。」
と3つ上の優衣が言った。

「うん、正常な、女の子と見た目はほとんど変わらないの。」
母の道子は言った。

「不思議だな。なんなのだろうな。」と父の辰夫は言った。



翌日、ひろみは母といっしょに、病院へ行った。
始めは内科から、次は、内分泌科へ、婦人科、外科、そして、精神科へ行った。
一日がかりだった。
そして、最後に、精神科の先生に言われた。
「ひろみさんの場合は、私達が、今まで経験のない症例なのです。
 体の仕組みは正常なのに、同じ年齢の女子と同じ女性ホルモンが分泌されています。
 また、精巣が萎縮して、十分機能していません。
 IS(インターセクシュアル)でもなければ、その他のものでもありません。
 心理テストは、どれも、女子としての反応を示しています。
 ただ、性自認において、自分は男の子だと答えています。
 しかし、これは小さい頃、男のシンボルがあったわけですから、
 言葉では、だれでも『自分は男の子』だというでしょう。
 しかし、ひろみさんは、毎晩神様に、女の子にしてくださいと祈っていたそうです。
 それは、体は、男子だが、心は女子だという認識を裏付けるものだと思います。
 
 つぎに、男女どちらに恋をするか。性志向ですね。
 それは、女の子が好きと答えています。
 その限りにおいては、典型的な性同一性障害とは言えないのです。

 しかし、体がこれだけの女性化を遂げている限り、私は、男子としての生活は極めて困難と考えます。
 性器の形状以外、骨格、とくに骨盤においてもほぼ完全な女子の体です。
 そこで、我々は、身体的には女子であり、精神的にも女子に近く、男子としての生活は困難であること。そして、女子としての生活に、順応が高いと見て、総合的に、女子としての扱いがされるよう、意見書を書きたいと思いますが、いかがですか。」

そう聞かれた。
「ひろみ、明日から女の子として生きていけるけど、どう?」母が言った。
「うん。うれしい。女の子になりたいっていつも思ってたから。」
ひとみはそう答えた。



その日、ひろみは始めての、女の子の服と靴を勝ってもらった。
翌日、姉の優衣の使った赤いランドセルをしょって、
女の子の服を着て、母と学校へ行った。
担任を訪ねた。
そして、校長室で、病院の意見書を出し、簡単な説明をした。
「そうですか。子供達には、女の子なのに、男として育った。
 それが、女の子に戻って暮らすことにした…とかいうことにしましょう。
 学校の公文書では、男子ですが、その他の扱いは、全て女子にします。」
校長は言った。

朝の会のために、担任は、ひろみといっしょに教室に言った。
母は、入り口までついていった。
担任は、まだ若い、20代の男の先生だった。

教室で、担任の横に立ったスカート姿のひろみを見て、
みんなは、「わあー。」と言った。

「えー、実はだね。梅宮ひろみ君は、女の子だったんだ。
 いろいろな事情で男の子として育ったのだけれど、
 もうそれは無理ということで、今日から女の子に戻った。」
みんなが、すごいどよめきの声を上げた。
「そうだと思ってたんだよ。」
「ひろみは、女の子って、ちょーバレバレだったもん。」
「変だと思ってたんだよ。」
「いままで、苦労したでしょう。女の子に戻れて、よかったね。」
などとみんなは言った。

「えー、ひろみから一言ある。」と先生に言われ、ひろみは言った。
「えーと、あたしは、女の子になりましたので、女の子の遊びに入れてください。
 男の子は、あたしのこと好きになってもいいです。」
そう言ったので、男子は、あははと笑った。
しかし、実際、ひろみは可愛かったので、好きになる男子もいそうだった。

「じゃあ、みんなで、拍手かな。」
先生が言ったので、みんなは拍手した。
その中に、橘由梨もいた。
ひろみは、由梨と目を合わせた。
「よかったね。」
由梨の目がそう言っていることがわかった。



その日の夜、
由梨の家から、由梨が1サイズ小さくなった服を全部持ってきてくれた。
由梨が、
「ひろみとの約束だったんです。女の子で通えるようになったら、
 小さくなった服、全部上げるって。」
ひろみの母は、
「それは、助かります。さしあたり何を着せようか、困っていたんです。」と言った。
由梨のお母さんが、
「あたし、ひとみさんが白いワンピースを着ているの見ているんです。
 あんな可愛いお嬢さん、近所にいたかしらって思っていたんです。
 あれは、ひろみさんだったんですね。」と言った。
ひろみの母は、
「まあ、そんなことをしていただいていたんですか。
 申しわけありません。」と言った。
ひろみのお父さんも来た。
「あそこで、お話が聞こえていまして、
 ほんとにありがとうございます。
 由梨さんが、ひろみを支えてくださったので、
 ひろみもなんとかやってこれたのだと思います。
 由梨さん、どうもありたとう。」
「あ、いえいえ。」と由梨は言った。

由梨とひろみは大人の話を抜け出した。
「ひろみ見てみて。」と由梨が空を見た。
「わあ、すごいお星様。」
「ひろみは毎晩お願いしていたんでしょ。」
「うん、今もしてる。」
「それ続けると、ひろみ、完全な女の子の体になれそうな気がする。」
「うん。だって、今までも奇跡の連続だもん。もう少し、奇跡をお願いしますって言うね。」
「きっと、奇跡はつづくよ。」
「だといいな。」

二人は、晴れ渡った空に満天の星をみた。
奇跡が続きますように。



ひろみは、中学2年の終わりに、体の全てが女性になった。
橘由梨とは、いつまでも親友だった。


<おわり>(次回は、「女装診療所」です。)

ぼくの体を見て②「由梨に体を見せる」

ひろみは、考えた末、ガムテープを切って、そこに押し当てた。
すると、乳くびの色を隠せたし、飛び出した形もなんとか隠せた。

体育で着替えるときは、ランニングシャツを脱がないようにした。
友達で、太っている子は、乳房があるようにみえた。
だったら、自分もOKかなと思ったが、
やせているのに、やっぱり乳房はおかしいと思った。

身体検査や、夏のプールは全部見学した。

学校でのひろみは、男子の中で遊べず、
一人教室で、絵を描いていることが多かった。
その絵は、少女マンガの主人公の顔が多かった。



季節は、秋の終わりに入っていた。

ひろみは、帰りが同じ道の、楠由梨という女の子と仲がよかった。
というより、楠由梨だけが仲良くしてくれた。
性格のいいひとみは、クラスで嫌われているのではなかった。
ただ、男女どっちつかずのひろみを、みんなは遊びにさそわなかっただけだった。

由梨は、美人で、背が高く、勉強もでき、クラスではリーダー的存在だった。



ある秋の日、いっしょに帰っていると、由梨は言った。
「ひろみは、女の子みたいだね。」
「どんなとこ?」
「気がついてないの?」
「うん。」
ひろみは、気がついていたが、あえてそう答えた。
「まず、歩き方。」
「そんなに?」
「うん。女の子歩きしてるよ。次は声。」
「子供に女の子の声ってあるの。」
「あるよ。聞けば分かるじゃん。」
「ぼくの声は女の子声なの?」
「うん。次は、男の子の体してない。」
「例えば?」
「肩がせまい。」
「ほかに?」
「お尻が大きくて、出てる。」
「ほかに?」
「ウエストが女の子みたいに上の方にあって細い。」
ひろみは、ガムテープで隠している胸のことを言われたらどうしようかと思った。
「これで、おっぱいがあったら、完全に女の子だよ。」
(由梨には、すでに乳房があり、外からでもわかった。)
「そう…。」ひろみはうつむいてしまった。
「仕草とか体の動かし方が、女の子。」
「え?それも。」
「うん。髪の毛も長いし。」
「髪は短くしたくない。」
「もっと長くして、女の子になっちゃうか、
 もっと短くして、男の子に近づくか、どっちかにしたらいいよ。」
「髪を切るの、死ぬほどつらい。」
「じゃあ、伸ばして、女の子になるといいよ。」
「もっと、長くしたいけど、友達いなくなっちゃう。」
「あたしが、友達でいてあげる。」
「ありがとう。」ひろみは、力なく言った。

「今日、あたしの家来ない?」と由梨は言った。
「いいの?」とひろみが言った。
「うん。女の子の服着せてあげる。」由梨は言う。
「ほんと?じゃあ、ぜったいに行く。」ひろみは言った。



由梨の家とは、近かった。
由梨の家は、近所では、いちばん大きな家だった。
チャイムを鳴らすと、「どうぞ。」と由梨の声がした。
チャイムからドアまで、少し歩くほどある。
由梨がドアを開けて、顔を出した。
ひろみを連れて、階段を上がると、お母さんが顔を出した。
「ジュースも、お菓子も、何にもいらないから。」と由梨は言った。

由梨の部屋は、広くて、白い感じの部屋だった。
「すごいね。ピアノまである。」
「あたし、一人っ子だからね。」と由梨は言った。

「さっき、あたしの去年の服出しておいたんだ。
 今のじゃ、あたしの方が大きいから。」
由梨はそう言って、すべての窓のカーテンを閉めた。
「ひろみ、あたしの前で、はだかになれる?」由梨は聞く。
ひろみは、胸に貼ってあるガムテープが恥ずかしかった。
それに、短くなったおち△ちんが恥ずかしかった。
「ぼくの体がどんな風でも笑わない?」とひろみは言った。
「笑わない。約束する。」由梨は言った。

ひろみは、由梨の前で、1枚1枚脱いでいき、
パンツとランニングシャツだけになった。
思い切りランニングシャツを脱いで、
由梨の前で、胸のガムテープをはがしてみせた。
由梨は、思ったほど驚かなかった。
「わかった。パンツも脱げる?」
「うん。」そう言って、ひろみは、パンツも脱いだ。
由梨は、ひろみの1cmしかないおち△ちんを見た。
「そうだったんだ。」と由梨は言った。

「じゃあ、このショーツ、履いてみて。去年のあたしのだけど。」
「うん。」
ひろみは、美人の由梨の下着だと思い、胸がドキドキした。
ひろみは、履いた。どんぴしゃりだった。
1cmのおち△ちんは、ほとんど目立たなかった。
たまたまは、体内に入っていたので、それもわからなかった。
「これ、スリップ。胸にパッドがあって、ふくらみしか見えないよ。」由梨は言った。
ひとみは、体か震えてしまった。
うれしかった。初めて、女の子の服が切れる。
「このスカート履いて。」と由梨は、黄色いスカートを差し出した。
ひとみのハイウエストと大きなピップにスカートもぴったりだった。
「この夏用のセーター来て。」
と由梨は、白いサマーセーターを渡した。
それは、体にフィットした薄手のセーターで、
ひろみの細いウエストを浮き出させていた。

「どう?」由梨は聞いた。
「すごく、うれしい。」ひろみは言った。
ひろみは、夢心地だった。
「女の子にしか見えないよ。」
由梨はそう言って、ひろみをドレッサーの前に連れて行った。
「ほんとだ。女の子みたい。」
「みたいじゃないよ、女の子そのものだよ。」と由梨は言った。

それから、由梨は、ひろみにいろんな服を着せた。
最後に、白いワンピースが一番似合っていて、可愛いことが分かった。
襟が丸く開いて、ピンクの丸襟がある。
ウエストピンクのに太いリボンがあって、それを後ろでむすぶ。
由梨は、ひろみの頭に、ピンクのリボンのついたカチューシャを差した。

二人で、着て見た服を、全部片付けた。
由梨は、ドアを開けて、
「おかあさん、ジュースをちょうだい。」と大声を出した。
やがて、母が、ジュースとお菓子を持った来た。
「こちら、ひろみさん。」と由梨は言った。
「まあ、可愛い方ね。どこかで、お見かけしているかしら?」
と母は言った。
男ひろみとしては、毎朝誘いに行くので会っていた。
でも、母はどうしても、気がつかなかった。
「ね、お母さん。あたしの小さくなった服。ひろみにあげてもいい」と由梨はいった。
「いいわ。そうしてくれると助かる。捨てるのもったいないし、困っていたの。」
「じゃあ、そうするね。」由梨は、手を打った。

母が行った後、由梨は言った。
「ひろみ、お母さんとお父さんに言って、学校へ女の子として行けるようにたのむの。
 今日、ひろみの体みたら、もう、女の子だよ。その体で、男の子やるの無理だよ。
 そして、女の子で、学校行けるようになったら、あたしの古い服でよかったら全部あげる。
 あたしは、ひろみを応援してるからね。」
由梨は力強くそう言った。
そんなときの由梨は、ものすごく頼もしく思えた。


つづく(次回は、「カムアウト」最終回です。)

ぼくの体を見て①「ひろみの体に起こっていること」

30年ほど前ですが、アメリカでこんなことが起こったというルポを読みました。
そこから、想像して、あくまでフィクションということで書きました。
今の医学では、わかるのかも知れません。

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梅宮辰夫、道子夫妻は、
郊外の駅から近い3LDKの中古マンションに引っ越した。
そのとき、長女優衣8歳、長男ひとみ5歳、次女里香3歳だった。
ひとみは、男の子だったので、自分一人の部屋をもらっていた。
その部屋には、ドアの横に姿身が貼られていた。

ひろみは、少し変わった子だった。
寝る前にいつも神様にお願いをした。
「神様。どうか、僕を女の子にしてください。」と。

梅宮夫妻は、息子ひろみの体のことについて、
そのときに気がつくべきであった。
女の子になりたいと思っているひろみは、
小さいときから、髪を切ることを嫌い、
幼稚園の年長さんのとき、
髪の毛を肩までのばしていて、
お風呂に入るときは、髪の毛をアップにしていた。

ひろみは、お風呂から出てくるとき、
バスタオルを女の子のように胸に巻いて、
「ねえねえ、見て見て。」と両親にいう。
バスタオルを女の子巻きにして、
髪をアップにしたひろみは、まるで女の子のようだった。
夫妻はそれを、ひろみの顔が女の子にように可愛いことと、
長い髪のせいだと思った。

ひろみは、ほら、といって、バスタオルを取って見せる。
すると、ひろみは、お△ん△んを股の後ろにはさんで、
女の子のような股間を作っている。
「ほら、ぼく女の子。」とひろみはおどけてうれしそうな顔をする。
辰夫と道子は、顔を見合わせて、困った顔をする。
「さあ、はやく体ふいてらっしゃい。」と道子がいうと、
「はーい。」といって、ひろみはバスタオルで胸を隠し、着替えの場に戻る。
その後ろ姿も女の子のそのものだった。

後姿もなぜ女の子に見えるのか、辰夫も道子も深く考えなかった。
もし、注意深く見ていたなら、
ひろみのピップが、女の子のように一回り大きく、出っ張っていて、
お腹は、丸く前に少し出ていることに気がついたかもしれない。

いや、気がついても、どうしようもないことだったのだが。

小学校に上がるとき、ひろみは長かった髪を切らされた。
ひろみは死ぬほど嫌がったが、女の子のおかっぱくらいにすることで親子は妥協した。



ひろみの部屋にある姿見は、ひろみの宝物だった。
ひろみは、部屋の鍵を閉めて、
真っ裸になり、こっそり持ってきているバスタオルを女の子巻きにする。
すると女の子に見える。
髪をおかっぱにしたので、前ほどでもないが、
おかっぱでも十分女の子に見えた。
ひろみは、鏡に近づいて、
「あたしは、女の子。」
と言ってみる。
すると、決まって、下半身のある部分が興奮して大きくなる。
その感じがたまらなかった。
ひろみは、女の子のような自分の顔に、十分満足していた。
実は、もう一つ、ひろみを女の子に見せているのは、女の子のような体のラインだった。

ひろみには、女の子の服は何もないし、
女の子になるには、バスタオルしかなかった。



ひろみは、バスタオル女装で我慢しながら、小学4年生になった。

ひろみが、自分自身、はっきり自分の体がおかしいと気がついたのは、
そのころだった。
ヒップはますます大きくなってきていた。
上半身が華奢で、下半身のももが、ぽっちゃりしてきていた。
そのために、ブリーフ型のパンツは、2学年上の6年生用を買わないと脚が通らなかった。

ひろみが母と、ズボンを買いに行くと、店員は迷わず「ガールズ」のコーナーに案内した。
母が、「男の子なんですよ。」というと、店員は驚いて、
「まあ、女の子のように可愛い坊ちゃんですね。」と上手なごまかしを言った。
しかし、ボーイズのズボンは、ひろみのヒップが大きくてどれも合わない。
結局、ガールズから選ぶことになる。
ガールズは、ジーンズでも、赤いテープ飾りがあったり、金属の飾りがあったりしたが、
ひろみは、むしろそれがうれしかった。
夏は、カールズの短パンを履いたが、長ズボンに比べ、いっそう女の子のお尻に見えた。

だが、母はまだ変だとは思わなかった。
ひろみは、特別にお尻の大きな子だろうと、そう思っていた。

ひろみが、はじめて自分の体が変だと気がついたのは、
胸が膨らんで来たときだった。
そして、おちん△んが、だんだん短くなり、1cmくらいになってしまったことだった。

トイレは、そのおちん△んを、ぐっと突き出すようにして、
周りの肉をくぼませて、何とか立ってできた。
ひろみは、自分自身、胸には困っていた。
膨らみは隠せるとして、大きくなった乳くびをどうしようかと思った。

女の子になりたいといつも願っているひろみにとって、
おちん△んが小さくなったことや、胸が出てきたことは、うれしいことだった。
だが、家族に知られたり、学校で友達に知られることは、辛いことだった。


つづく(次は、「由梨に体を見せる」です。)

SF4次元変身サロン⑥「2人それぞれの家庭へ」最終回

時は遡って、月曜日の夜。
父靖史は、研究授業の「ご苦労さま会」があって、帰宅が遅くなったが、
ちゃんと家族にケーキを買って帰るのを忘れなかった。

「お父さん、お疲れさま。」と加奈はいちばんに迎えた。
家族のみんなも来た。
「あなた、授業はどうでしたか?」妻の吉江が言った。
靖史は、こんなに家族に迎えられるのは、初めてだった。
「いやー、子供はいきいきしていたし、授業は盛り上がるし、
 協議会じゃ、みなさんべた誉め。
 講師の先生からも、絶賛されたよ。
 うれしかったなあ。
 もうこれも、みんな、加奈のおかげ。
 加奈、明日も授業あるから頼むよ。
 はい、これケーキ。」

妹達は、ケーキにわーいと言った。

みんなでわいわい言い、
ケーキを食べながら、
靖史は、喜びの中にいた。
今まで、何度も研究授業があったが、
家族は、それを知りもしないし、
帰ってきても、なんの反応もしてくれなかった。
運動会があったって、それを知りもしないし、
話題にもしてくれなかった。

それが、今回は、みんなが心配し、
成功を喜んでくれている。
多くは、加奈のおかげた。
加奈が、こんなにできた娘であることを、
あらためてうれしく思った。

寝る前に、明日の「ごんぎつね」の授業を加奈に教わった。
「研究授業の後も、盛り上がったまま終わりたいからさ。」と靖史は言った。
「できるだけ、がんばる。」と加奈は言った。
そして、その日も、靖史は、何度も納得し、膝をたたいてよろこんだ。
「これ、今日のより盛り上がるよ。すごい。加奈。お前ってヤツは!」
と靖史は喜んだ。
そして、また、妻に、
「吉江。加奈は普通じゃない。もう、宝物みたいなもんだ。」と言った。
「あら、あなた、ラッキーね。もう、国語恐くないわね。」
「ああ、得意科目になりそうだよ。」
加奈は、うれしかった。
本物の加奈のお父さんは、子供心をもった、いいお父さんだと思った。
学校でも、子供達に好かれていることだろう。
それに、比べて、自分は、少し固かったかなと思った。

*    *    *

加奈とチェンジしてから、期限である1ヶ月が近づいてきた。
豊(以後:豊)は満足していた。
加奈の写真を撮って、中田浩介に、ちゃんと写真を送った。
中田浩介は、あれから、みんなと少しずつ遊ぶようになり、
今は、よく笑う明るい生徒になっていた。

里奈は、みんなの中に混じって、毎日楽しく過ごしていた。
そして、試験が近づくとみんなに頼られ、勉強を教えていた。
里奈との週末の秘密の時間は、ずっと続いていた。
それが、レズビアンとしての里奈の心を安定させていた。

父との国語の勉強は、一日の楽しみな時間になっていた。
とくに、靖史は、感情をすべて表に出すタイプだったので、
豊はアドバイスのし甲斐があった。
だが、この先、1ヶ月が過ぎると、加奈にはこの役目ができない。
それが、気にかかるところであった。

豊は、加奈になってみて、加奈がまれにみるできた子であることを思っていた。
レズビアンとうわさされる里奈に対して、偏見をもたず口をきき、友達になった。
それは、誰もができることではないと思った。
加奈の写真を盗み撮りしていた中田浩介を説得したのも、半分は加奈の感情だった。

加奈との、メール交換は毎日行っていた。
そして、豊の家や学校でも、加奈のいいところが生かされ、家族にも学校でも、
人気がすごく上がっているようだった。

豊は思った。元にもどっても、加奈の記憶を全部ほしい。少なくとも、過去5年分ほどほしい。

そのころ、豊でいる加奈も思っていた。
加奈にもどって、そこから父と国語の勉強ができなくなるのは悲しい。
豊の教員としての記憶を全部ほしい。
里奈と、文学を語りたい。

1ヶ月を明日に控えた日、豊と加奈は、そんなことをメールで話し合っていた。



土曜日。
いよいよ、元へ戻る日が来た。
豊は、1ヶ月親しんだ家族をしっかりと見た。
今まで、家族や友達とお別れになることを、あまり考えなかった。
それが、急に惜別の情にうたれ、涙があふれてきそうだった。
精一杯さり気なく、家を出た。
道を歩きながら泣いた。

変身サロンに来たとき、豊の姿をした加奈がすでに来ていた。
「悲しくありませんでしたか。」と豊は聞いた。
「来る道で、何度も泣きました。
 みんなとのお別れのことは、あまり考えてなかったんです。」と加奈は、言った。
「私もです。交代の日まであと何日ということばかり考えていて、
 みんなとのお別れを考えていませんでした。」豊は言った。

やがて、係りの女性が来た。
豊は言ってみた。
「あのう、交代していた1ヶ月の記憶の交換だけでなく、
 お互い、いままでの記憶を、二人分持てるようにできるでしょうか。」
女性は、
「できますよ。」と簡単に言った。
「みなさん、よくそうおっしゃるんですよ。あの、全記憶ではなくて、
 満10歳以後くらいの記憶で十分ではありませんか。
 ご自分の記憶は、生まれたときからあるわけですよね。
 子供の頃の記憶は、混同しやすいので、そこはシンプルなのがいいですよ。」

豊と加奈は、顔を見合わせ、納得した。

二人は、カプセルに入り、記憶のコピーと交換を終えた。
お互い、自分の全記憶と相手の満10歳以後の記憶を得た。

豊と加奈は、近くの喫茶店に入り、互いの1か月間の記憶を追体験していた。
加奈は、笑って、
「ああも、簡単に父に謝ってくださったんですね。
 みんなのぽかんとした顔が、おもしろいです。」
「ええ、私にわだかまりなんて、何もありませんでしたからね。
 それより、里奈さんとベッドを共にしたときは、
 胸がドキドキして手が震えました。」
と豊は言った。
「私だって、豊さんの奥様と夜を過ごすとき、未経験なので、
 豊さんの3ヶ月の記憶をたよりに、必死でした。」
「そうですよね。そんなことまで、初め考えませんでしたね。」
と豊は言った。

「これからも、メールを差し上げます。私の家族のこと気になりますでしょう。」と豊。
「はい、知りたいです。私もメールをします。特に、父のことがご心配ですよね。」
二人で、もう一度、メール・アドレスを確認した。

二人は、喫茶店の外へ出た。
外は、清清しい秋の空気だ。

「それでは。どうもありがとうございました。」と豊は言った。
「こちらこそ、ありがとうございました。」と加奈は言った。

豊は、我家の方に向かった。
なんだか、体の中からエネルギーがわいてきた。
きっと加奈の記憶をもらったからだ。
家族のみんなに会うのが楽しみだった。

そう言えば、今日は、娘達の好きなロック・グループ「エスカエル」のベストアルバムの発売日だ。
それを、知っているのは加奈のおかげ。
そのCDとケーキも買って帰ろう。

豊は、うきうきする足取りで、CD店に向かった。


<おわり>  (次回は、未定です。)

SF4次元の変身サロン⑤「里奈とのレズビアン」後編

また、長々書いてしまいましたが、次回が最終回です。読んでくださるとうれしいです。

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ベッドに二人並んで寝たとき、加奈は言った。
「里奈は、されたい、したい?」
「されたい。お姉様にされたい。」このときも里奈は迷わず言った。
「あたしをお姉様って呼びたいの?」
「うん。加奈が嫌じゃなかったら。」
「いいわ。あたしは里奈のお姉様。お姉様が、里奈を可愛がってあげる。」
「ああ、うれしい。」里奈は、そう言って加奈に抱きついてきた。
里奈の腕ごと、加奈は、里奈を抱きしめた。
そして、深い口づけをした。

里奈の制服の上着とリボンを取った。
加奈は、自分のをとった。
里奈のブラウスを脱がす。
加奈の豊の心が震えた。
相手は、女子高生だ。しかも、成績が1番と言う。
里奈の白い下着が目に眩しかった。
(加奈は、受け入れていいっていったよね。今がそのとき。豊は加奈に呼びかけた。)
加奈も自分で下着姿になった。
里奈のスカートを取った。
里奈のブラをはずして、スリップだけにした。
自分もブラをとり、スリップになった。
毛布をかけ、里奈を抱きしめた。
「ああ、お姉様。うれしい。あたしを好きにして。」
「うん。里奈、可愛い。あたしのペットにするわ。」
「ええ、あたしは、お姉様のぺっと。」
豊は、女性とのセッ・クスは、妻を相手になれていた。
それに、加奈の記憶が、女としてされたいことを知っている。

加奈は、里奈の首筋に口づけをして、耳を愛撫し、ふーと息をかけた。
それだけで、里奈は反応した。
里奈がぶるぶると身を震わす。
里奈の両手を上にあげ、
里奈の、脇の下に口づけをして、舐めた。
「ああん、お姉様、あたし、たまらない。」と里奈は言った。
「もっと、もっとよ。」加奈は言った。

里奈のスリップの紐をはずし、綺麗な形のちぶさをゆっくりと、
下から上へもんだ。
その度に里奈は声をあげた。
胸の先っぽを吸って、噛んだ。そして、指で刺激した。

加奈は、興奮して、自分の下着をぬらしていた。
きっと里奈はもっとだろうと思った。
里奈のショーツをとり、自分もぬいだ。
里奈の体中を、撫でて、
里奈のももに手を入れ、ももをあいぶした。
「ああ、ああ、お姉様、もう許して、あたし、気が狂う。」里奈が言う。

里奈は、十分過ぎるほど潤っていた。
ある部分の周りを撫でて、里奈をたっぷりとじらせた。
加奈は、里奈にもう一度口づけをしながら、
里奈のいちばん感じるところへ指をおいた。
「うううううう。」と里奈が加奈の口の中で叫んだ。

加奈は里奈を強くだきながら、そのスポットを攻めた。
里奈から唇をはずすと、里奈は、大声をあげた。
そして、加奈に抱きつき、
ああん、お姉様、もうだめ、もうだめ、と何度も叫んだ。
加奈は、まだまだ、たっぷりとじらせて、里奈のあえぐ声を聞いた。
里奈は、半狂乱になって、バタバタとあばれた。
加奈は、フィニッシュに行くことにした。
指の速さを速めて、里奈のスポットを刺激した。
「はあああああん。」と里奈はいいながら、激しく痙攣をして、
やがて、体を弓のように反らせて、ある高みへと上って行った。

しばらく、里奈はぐったりとしていた。
加奈は、里奈をそっと抱いていた。

その内、里奈は、目を開けて、
「今度は、あたしがお姉様を可愛がって上げる。」
そういって、里奈は、加奈の上になり、加奈がしたことを順番にはじめた。
加奈が里奈にしたことは、つまりは、加奈自身がされたいことだった。
だから、加奈は、里奈のしてくれる全てのことが、喜びだった。
そして、最後には、里奈と同じように、大声を出し、
身を振るわせ、激しい痙攣をして、果てて言った。
豊の心は、感激していた。
思っていたよりも、何倍もの、喜びだった。

二人は、裸のまま、毛布に身を包んでいた。
「加奈、あたし、今日がこれまでの日々で最高の日。最高に幸せな日。」
里奈が言った。
「うん、あたしも。感じちゃって、気が狂いそうだった。」
と加奈も言った。
「あたし、今まで、ずっと一人ぼっちで淋しかった。
 平気な顔してがんばってたけど、淋しくてたまらなかったの。
 それが、今日加奈があたしの願いを叶えてくれた。
 だから、もう、平気。あたし、一人でもやっていける。
 加奈、ありがとう。」
里奈はそう言って、涙を流した。

「里奈、あたしが男の子とセッ・クスしたらジェラシー?」加奈は言った。
「それは、全然ジェラシーじゃない。
 でも、加奈が他のレズの子としたら、多分泣いちゃう。」里奈は言った。
「じゃあ、あたしは男子が好きだから、里奈の恋人にはなれない。
 でも、里奈に女の子の恋人ができるまで、あたし達、セッ・クス・フレンドにならない?
 週に1回会うとかして。」加奈は言った。
「え?ほんと。それすごくうれしい。」と里奈。

「里奈は、今みたいに、前髪を下ろして、髪も1本にしないで、
 コンタクトにすれば、こんなに可愛いじゃない。
 それで、女の子と腕組んだりしないで、普通にしていれば、
 みんなそばにくると思うな。
 学年で1番で、こんなに可愛い子、みんな放っておかないよ。
 レズだって、まだうわさじゃない。
 里奈が本当のレズの子だって知ってるのあたし一人だよ。
 あたしは、絶対口が固いから。」
加奈は言った。

「そうよね。あたしレズでも、学校でそれっぽくしなければ、普通の子だものね。
 うん。今加奈が言ったようにする。」
と里奈。

「ほんとはさ、レズだってわかってても、
 みんなが普通に里奈に接するのが正しいと思う。
 だけど、それなかなかむずかしいものね。」
と加奈。

「うん。あたしがレズでも、普通に接してくれたの、加奈一人だったから。」
里奈は言った。

*    *    *

次の日、山田里奈は、髪を肩のところで内巻きにして、
眼鏡をコンタクトにして、前髪を下ろして、やってきた。
教室にきちんと座っていると、
「あれ?里奈?」とある女の子が言った。
すると、何人かの男女が寄ってきた。
「勉強1番の山田じゃないみてえ。」
「里奈、その方がいいよ。ずっと可愛い。」
「うん、勉強1番には見えねえよ。」
「ちょっとイメチェンしたの。」と里奈。
「これで、お前が男が好きならな。」と一人が言った。
「ねえ、里奈。そのうわさ、本当なの?一度ちゃんと聞きたかったの。」
里奈は、一瞬考えた。そして、言った。
「自分でもわからないけど、あたし『安全な子』だから、それだけは信じて。」
「うん、わかった。安全な子なら、それで十分だよ。ね、みんな。」とその子は言った。
「うん。里奈、これからいっしょに遊ぼう。」
「うん、ありがとう。あたし、うれしい。さみしかったから。」
そう言って、里奈は、一筋涙を流した。
「おお、里奈の涙。絵になるな。おれ、ぐっと来た。」
「からかうんじゃない!」と女子。
「からかってねえよ。本当にそう思っただけだよ。」
「からかってる!」
といざこざになったが、里奈は、笑顔を見せた。

その日の夕方、里奈から加奈にメールが来た。
『加奈。今日みんなといっしょに遊んだよ。
 うれしかった。  ありがとう。』

加奈は、うれしくて、何度も携帯の文字を見た。
『よかったね。里奈。』
そう、心を込めて返信した。


つづく(次回は、「それぞれの家庭へ」⑥最終回です。)

SF4次元変身サロン④「里奈とのレズビアン」前編

山田里奈。
打ち合わせのとき、豊が加奈から、自分を好いているレズビアンの女の子がいると聞いた。
そのときは、豊は、ちょっと派手目な小柄でキュートな女の子を思い浮かべていた。
そのときイメージした里奈と、実物はまるで違っていた。
もっとも、記憶の交換をしたときには、わかっていたことだが。

休み時間、山田里奈は、図書室で静かに本を読んでいた。
素晴らしい知性美の女生徒だが、唇が少し厚くそこがセクシーでもあった。
セミロングのボブへヤーを後ろで1本に結び、前髪があるが、それを左右ピンでとめ、
賢そうな額を全部見せていた。
眼鏡をかけている。

里奈は、姿勢を崩さず、微動だにしないで本を読んでいた。
加奈は、図書室に来て、里奈を見つけた。
今日は、前から約束していた里奈の家に遊びに行く日だ。
家族が留守で他に誰もいないという。

里奈は、学年で成績が常に、No.1の生徒だ。
加奈は、400人中20番以内に入っていたが、里奈には遠く及ばなかった。

豊は文学青年であったため、豊の心は、里奈が読んでいる本を知りたかった。
加奈は、そっと里奈に近づき、後ろから本を見た。
ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」第十三編「アリョーシャの別辞」
豊の心は、ページを一目見ただけで分かった。
豊の心は躍った。自分も高校のときに読んで一番感銘を受けた本だ。

「『アリョーシャの別辞』、いよいよ最終だね。」加奈はそう言った。
里奈は、え?と驚いて後ろを見た。
「ページ見ただけでわかるの?」と里奈は言った。
「うん。一番感動した本だもの。」加奈は言った。
「加奈、読んだの?」

「うん。ドストエフスキーは、みんな好き。」
「そうなんだ。うれしいな。こんな本読んで、あたし浮いちゃうだけだと思ってた。」
「ごめんね。一番いいところ邪魔しちゃって。」
「ううん。一番いいところは、ちゃんと身を清めてまとめて読みたいから。
 ここで、止めようと思っていたところ。」
里奈は、透き通るような美声だった。

「今日、里奈の家に行く日だよね。」と加奈は言った。
「うん。ずっと楽しみにしてた。」
「帰り、里奈のクラスに行く。」
「うん。わかった。」里奈はそう言った。

里奈がレズビアンであることは、学年中の生徒が知っていた。
中学のときにすでに知られていて、その中学から来た生徒が広めてしまった。
だから、里奈と親しくする女子も、レズビアンと言われ、
だれも、里奈に近づく女子はいなくなり、里奈は孤立していった。
しかし、加奈は、気にしなかった。
加奈は、純粋に友達として里奈に魅力を感じていたからだ。
里奈の博識に魅かれた。里奈の持っている学術的世界はステキだった。

里奈といっしょの帰り道、
ドストエフスキーの話をずっとした。
里奈は、加奈の解釈や好きな部分の指摘をすごく喜んだ。

里奈の家は、2階建ての大きな家だった。
玄関まで、長いエンタランすがある。
里奈の部屋は、10畳ほどの洋間だった。
一つの壁が全部本だった。
「これ、全部読んだの?」と加奈は聞いた。
「うん、一応ね。」と里奈は言った。

大きなベッドがあり、ステキな毛布がかかっていた。
L字のソファーがあり、コーヒーテーブルがあった。

里奈が、紅茶を入れてきたので、
ジュータンに座り、コーヒーテーブルで、飲んだ。

「加奈は、何であたしの友達になってくれたの?」と里奈が聞く。
「何でって、学年でトップの子となら、誰だって友達になりたいじゃない。」加奈は言った。
「学年の子、とくに女子は、誰もあたしに近づかない。
 加奈もその理由を知っているでしょう。」
「うん、知ってるよ。それ、本当なの?」加奈は聞いた。

「うん本当。
 あたし、中学2年のときA子って子と大の仲良しだったの。
 とっても可愛くて、勉強もできて、大好きだった。
 あたし達は、いつも手をつないだり、腕を組んだり、
 ふざけて抱き合ったりしてたの。」里奈は言った。

「それは、仲良しなら普通よね。」加奈は言った。
「でも、あたしの気持ちはそれ以上だったの。
 A子のほっぺにキスした。
 それには、A子は怒らなかった。
 でも、あたしは、A子の唇にキ・スがしたかったの。
 A子を思い切り抱きしめたかったの。
 あるとき、A子の表情が、あまりに可愛いくて、
 あたし、とうとうA子の唇にキ・スをしてしまった。」と里奈は言った。

「A子、怒った?」加奈は聞いた。
「うん。怒った。猛烈に怒ったの。
 『そんな目的で、あたしの友達でいたの?里奈は普通じゃないよ。
 あたし、もう里奈とお友達になれない。』って言って、離れてしまった。
 言われてもしょうがないの。あたしA子に、友達以上の気持ち持っていたから。
 A子は、里奈に近づかない方がいいよって、みんなに言ったんだと思う。
 それから、あたし一人ぼっちになった。

 高校に入って、同じ学校の子が言いふらして、
 高校でも、一人ぼっち。
 でも、あたしは、C組の加奈を見て、一目惚れをしちゃった。
 死ぬほど勇気を出して、加奈に話しかけてみた。
 そしたら、加奈は、自然にあたしにお話をしてくれた。
 うれしかった。」里奈は言った。

「そうだったの。」と加奈は言い、
「あたし里奈に友達以上の気持ちはもてないけど、
 キ・スするくらいなら平気だよ。」そう言った。
「ほんと?」と里奈は、加奈を見つめた。
加奈はソファーに座って、
「里奈も、ここに座って。」と言った。
里奈は、恐る恐るソファに上がった。

「里奈は、したい?されたい?」加奈は聞いた。
「されたい。」里奈は迷わずに言った。
加奈は、里奈の前髪のピンをはずした。
そして、1本に結んでいるゴムを取って、里奈の髪を整えた。
髪を垂らし、眼鏡をとり、前髪をたらした里奈は、違う子のように可愛くなった。

「里奈、こうするとすごく可愛いよ。」と加奈は言い、
「じゃあ。」
そう言って、里奈の肩に手をかけて、里奈を引き寄せながら、
口びるを重ねた。
里奈は、震えていた。
そんな里奈を、加奈は強く抱きしめた。

加奈が口びるを離したとき、里奈の頬に涙が伝わっていた。
「あたしのファースト・キ・ス。ありがとう。」と里奈は言った。
「あたしだって、初めて。」
「もう一度いい?」と里奈は言った。
「うん。」
加奈は、里奈の口の中に、舌を少し入れた。
里奈は、それを強く吸った。
そして、今度は、里奈が舌を入れてきた。
加奈は、それを強く吸った。

唇を離したとき、
「ああ、あたし幸せ。加奈とキ・スができなんて、夢にも思わなかった。
 加奈、大好き。愛してるの。」里奈は、そう言い加奈に抱きついてきた。
加奈は、思い切り里奈を抱きしめた。
「里奈、もう少し先までいいよ。ベッドに移ろう。」と加奈は言った。
里奈は、大きくうなずいた。加奈は里奈の手を引いて、ベッドに連れていった。


つづく(次回は、「里奈とのレズビアン」後編です。)

SF4次元変身サロン③「中田浩介はストーカー?」

夜になり、お風呂の順番が来た。
加奈の豊の心が、ドキドキしていた。
下着とパジャマを持って、着替え場に行く。
肩までの髪が濡れないように、ヘアベルトをかける。
さあ、裸になる。豊の心はドキドキ。
裸になっても、自分の体を見てはいけない気がした。
この体は、加奈という女性のものだ。
体を洗う。体に触らざるを得ない。
かけ湯をして、湯船に入る。
どうしても、体が見える。
白くて長い綺麗な脚だ。
乳房はCカップかな。

やっと風呂を出る。
体にバスタオルを巻く。
ああ、この動作に憧れていた。
男でこれをしたのでは、シルエットが寸胴だ。
タオルがちゃんと胸で止まる。
タオルからはみ出した脚が、すごく色っぽい。
洗顔をして、歯を磨く。
体を拭いて、ヘアベルトをとり、下着をつけて、パジャマを着て、
自分の部屋に行く。

ああ、女の子模様のパジャマでいる。
なんという幸せだろう。
顔の手入れをする。加奈は、化粧水をつける程度。



寝る前に、パソコンでメールチェックをした。
すると、豊になった加奈から来ている。

今日は、娘達が好きなユニットのCDリリースの日だったので、
買って帰ったら、娘3人から、激感謝され、
家中で、踊った。
「お父さん、いつから踊れるようになったの?」と娘達は大喜び。
熱狂的な夜を過ごせたとのこと。

めでたい、めでたいと豊の心は思った。
自分の株を、加奈の心は大いに上げてくれた。

お返しに、豊の心は、
加奈がお父さんに謝り、1年間の冷戦状態が終結したこと。
お父さんの研究授業をいっしょに考え、
お父さんから、絶賛されたこと、などを書いた。

『父と仲良くなれてうれしいです。』と加奈の心から。
『父親の株を上げてくれて、感謝、感謝。』と豊の心は、返事をした。

さて、女の子の可愛いパジャマと、
ファンシーな部屋で、幸せな眠りにつこう。
加奈は電気を消した。

*   *   *

月曜日、加奈は実際女の子としていく学校が楽しみだった。
制服は、紺のプリーツスカートにブラウス。
クリーム色のブレザー。ネクタイではなくリボン。
女生徒の制服かあ…と豊の心は感激した。

3ヶ月分の記憶があるから困ることはない。
母から弁当をもらい、家を出た。

教師としていく学校は辛いものだが、
生徒として行く学校は、楽しい。

靴を替えて、2年C組に入ったとたん、もめている。
中田浩介という男子が、男女8人の生徒に責められている。
中田浩介は、学校でほとんど口を開かない生徒だ。
感じが暗くて、みんなから気味悪がられている。

加奈が教室に来ると、一人が、
「ああ、加奈、ちょっとこいよ。お前のことだ。
 中田の奴さ、金曜日の社会科見学で、こっそりお前のこと盗み撮りしてたんだよ。」
「卑劣よ。ストーカーみたい。」
「お前の取った加奈の写真、全部見せろ。そして、俺達の前で削除しろ。」
「肖像権ってあるんだぜ。断りもなく、人撮っちゃいけねんだよ。」
「ほんと、最低よ。キモイわよ。」
中田は、ただうつむいていた。

加奈は、豊として思い出していた。
中学生のとき、好きな女の子のことをカメラで撮りたかった。
他の物を撮る振りをして、その女の子が、フレームに入るチャンスをねらっていた。
幸か不幸か、好きな子の写真は撮れなかった。

さあ、どうしようかと加奈は考えた。

「この件は、中田君とあたしだけで、解決するから、
 中田君、みんなのいないとこ連れて行くね。」

加奈は、そう言って、中田浩介の手を取った。
廊下をぐんぐん手を引いて、靴を取り替え、体育館の裏に行った。
そこに、古いベンチがあり、並んで座った。

「怒ってないから、正直に言って。」と加奈は言った。
「うん。」と中田は、小さな声で言った。
「あたしのこと、好いてくれているの?」加奈は聞いた。
浩介は、しばらく黙っていた。
そのうち、涙を流し始めた。
「うん。」と浩介は、消え入るような声で言った。
「じゃあ、あたしが写るように、こっそりシャッターを押したの?
 怒らないから言って。」
「ごめん。」そう言って中田はまた泣き始めた。

「泣くことないよ。
 他の女の子はどうだかわからないけど、
 あたしは、腹なんか立たない。
 だって、中田君の気持ちわかるもの。
 あたしだって、中学のとき、好きだった男の子の写真こっそり撮ろうとしたの。
 失敗したけどね。
 その男の子が鉄棒で握ったところ、すぐその後で握りたかった。
 その男の子が触ったドアのところ、あたし、すぐに行って触りたかった。
 そういうことでしか、つながれなかった。
 でも、それだけでも、うれしい気持ちになれた。
 だから、中田君の気持ち、あたしわかるの。」

中田浩介は、しばらく黙っていた。やがて、
「木島さん。やさしいね。
 女の子から、こんなに優しい言葉聞いたのはじめて。
 ぼく、撮った写真全部消去する。」と言った。

「その代わりさ、あたし妹に頼んでちゃんとした写真撮る。
 それ、プリントにするから、それをもらってくれる?
 学校だと渡しにくいから、郵便で送る。」と加奈は言った。
「ほんと?大事にする。ありがとう。」
「みんなにはさ、写真を全部削除することになったって言えばいいじゃない。
 それ、本当のことだし、嘘ついたことにならない。」
「うん、そうだね。」
加奈は、そのとき、中田浩介の笑顔を初めて見た。



教室で、中田浩介を責めていた8人は、体育館の外の角まで見に来ていた。
そして、二人の話を聞いた。
聞きながら、みんなは、だんだんうなだれた。
「加奈、すげえいい奴だな。」と一人が言った。
「あたし、加奈の言葉聞いて、少し泣けてきた。
 好きな人への思い、あの通りだったから。」
「俺ら、心狭かったな。」
「ああ、中田の気持ちなんてまるで考えなかった。
 みんな、似たような気持ちもってるのに。」
「後で、中田に謝ろう。言い過ぎたって。」
「そうね。」
「そうだな。」
8人は、そう言い合った。

その後、教室で、8人が中田に謝る光景が見られた。
中田は、
「ぼくが、悪かったんだから。
 でも、謝ってくれて、ありがとう。」
と言い、最後に少し笑顔を見せた。

「中田、そういう笑顔もっと見せてくれよ。俺達も気をつけるからさ。」男子A。
「そう、笑うとステキだよ。」と女子A。
「うん。ありがとう。」と中田は本当にうれしそうな笑顔を見せた。

それが、中田浩介が明るくなる突破口になりそうな気がして、
加奈は、うれしかった。


つづく(次回は、「レズビアンの里奈」です。)

SF4次元変身サロン②「加奈と父の冷戦の終結」

加奈と別れた、豊は、うれしくてたまらなかった。
すれ違う男達が、自分を見ていく。
自分だって、加奈ほどの子が歩いていたら見る。
見られているというのは、こんな感じなのだ。
恥ずかしいような、うれしいような。

豊は、もっと自分をじっくり見たくて、
カラオケのプライベート・ルームに入った。
そこは、前後左右の壁が鏡でできている。

中に入り、豊はバッグをおいて、鏡に近づいて見た。
肩までのストレートの髪。終わりが少し内巻きになっている。
前髪は、少しスダレになっていて、7:3に分けても可愛い。
細いウエスト豊なピップ。
そして、Cカップくらいの乳ぶさ。
触りたかった。
でも、これは人様のものだ。
でも、少しだけ。
柔らかい。
揉まれるというのは、どんな感じなのだろう。
豊は、少しだけ揉んでみた。
頭に、ぞくぞくという感じが走った。

そのとき、豊の中の加奈の記憶に、
カラオケ・ルームの中で、自いにふけったことが思い出された。
だったらいいかあ。

豊は、サマーセータをめくって、ブラも上に上げ、
ちぶさの先端をくりくりと揉んだ。
あ…、すごい。直接脳に来る感じだ。
すでに、ショーツがぬれてきた。
豊は、バッグの中をのぞいた。
小さなティッシュがあったので、ショーツのなかに当てた。
ちぶさのしげきだけで、果ててしまいそうだ。
豊は、ショーツの中に手を入れた。
そこは、すでに十分に潤んでいた。
いちばん感じるところを触った。
うっと思わず声が出た。
そのまま夢中でさわってしまった。
ああ、すごい。
女の子って、こんなにかんじるのか。
ああ、そろそろくる。
ああ、おおきな波のように、快かんが押し寄せてくる。
ああ、一度、二度、三度、あ………気が遠くなる…。
体中を震わしながら、豊は、達した。

男の数倍かんじる。
(家内はいつもこんなに感じていたのか。)
ふとそんなことを思った。

加奈ちゃん、ごめんね。
そう心で思って、豊は、服や髪を整えた。
ルームに入ってまだ15分だったが、
もうそれ以上いる理由がなかった。

真っ直ぐに家に帰った。
「ただいま。」というと、何事もなく、母吉江は、「お帰り。」と言った。
二人の妹は、キッチンでテレビを見ていた。
「理沙、絵里、ただいま。」と言った。
「おかえり。」と二人は言う。
挨拶はいい家なんだなあと思った。

加奈(以後=加奈)は、自分の部屋に入った。
ノートパソコンがある。
自分のブログをチェックしてコメントの返事を書かなければと思った。
暗証番号も全部記憶にあるので、問題はなかった。
自分が返事してもいいのかなと思いつつ、
なるべく加奈の返事を見て、それらしく返事を返した。

余所行きのオシャレな格好だったので、
水色の楽なワンピースに着替えた。
胸を何度か押えてみた。
本物というのは、すばらしい。

7時になり、「ご飯よー。」の母吉江の声がかかった。
加奈が席に着くのが一番遅かった。
「ごめんなさい。」と言って座った。
テレビがついていた。
二人の妹は、テレビを見るため首を曲げている。
「いただきます。」と母が言った。
「いただきます。」と二人の妹は言いながら、テレビを見ている。

「理沙、絵里、テレビを消しなさい。今、夕食の時間よ。」
と加奈は言った。

そのとき、全員が加奈を見た。
加奈は理由が分からなかった。
「なに?あたし、なんかいけないこと言った?」と聞いた。

「だって、お姉ちゃんが夕食のときもテレビ見せろってお父さんと大喧嘩したんじゃない。」
とすぐ下の理沙が言った。
「そうなの?いつのこと?」と加奈。
「1年前よ。それから、お父さんとずっと1年間も口も利かないでいるんじゃない。」と理沙。
(ああ、記憶は3ヶ月。1年前のことは知らない。)

「だったら、あたしが、間違ってたわ。
 テレビがついてたんじゃ、お話ができないもの。家族の団欒がなくなっちゃう。」
加奈は父靖史に向かって、
「お父さん、ごめんなさい。そんなこと言ったのなら、あたしがいけなかったの。
 あやまります。ごめんなさい。」
家族一同が、加奈を見た。
1年もつづいた父と加奈の冷戦が、こうもあっさり終わろうとしている。
「理沙、お願いだからテレビを消して。
 だって、お父さん、月曜日、研究授業よ。
 お父さんのお話も聞かなくちゃ。」

それを、聞いて、みんなはさらに驚いた。
中でも、父靖史自身が一番に驚いていた。
「加奈、お前、俺の研究授業を知っていてくれたのか。」と父。
「うん、お父さん、先週の月曜日『あと、1週間かって言ってたもの。」と加奈。
理沙は、テレビを消した。
「研究授業ってなあに。」と6年生の絵里が言った。
「ほら、先生の授業を、大勢の先生が見に来るじゃない。
 その中で、授業やんなきゃならないの。すごいプレッシャーなのよ。
 あたしの小学校のときの先生なんて、その日は、緊張で給食も食べられないって言ってた。」と加奈。
「加奈、あたし、うっかりしてた。加奈が覚えてるなんて。」と母吉江。
「たまたま、覚えていただけ。で、お父さん、何やるの?」
と加奈は1年間の冷戦を忘れたかのごとく自然に話しかけた。

「俺のいちばん苦手な、国語、4年生、『ごんぎつね』なんだ。」と父。
「わあ、たいへん。絵里は6年だから習ったばかりじゃない。
 覚えてる?」加奈。
「うん、悲しいお話だったことは覚えてる。」と絵里。
「あたしは、初めに読んだときがいちばんよかった。
 それが、授業が進む度につまらなくなったの。」理沙。
「そうなんだよ。俺いつもそうなんだ。初め読むじゃん。
 それを、詳しくやればやるほど、子供達あきあきして来るんだ。
 これ、辛いんだよ。
 1回読んで終わりにしちゃだめ?って俺いつもいいたい。」と父。
「物語教材は、苦しいわよね。」と加奈。
「もうそのとおり。みんながわかってくれて、うれしいよ。」と父。

靖史は思っていた。自分の仕事のことで、これだけ家族が話題にしてくれたのは、初めてだった。
それが、心からうれしかった。



夕食が終わり、靖史は、月曜日の指導案をソファーで見ていた。
加奈(=豊)は、国語が専門で「ごんぎつね」は、得意中の得意だった。
「お父さん、見ていい。」と加奈は、父の隣に座った。
「これ、グループ研?それとも、お父さんの一存で変えていいもの?」
「その後の方。今から変えるのあり。」と父。
「だったらさ、・・・・・・」
と加奈は、いくつかの具体的な「発問」を父に伝えた。
「『キンキンもずの声が』っていうんなら、子供達に一人一人にやらせてみてはどうかな。
 そうしたら、10人の子にあてられるじゃない。上手な子には拍手も出るし、盛り上ると思う。」加奈。

父は加奈に言われるまま、大きく何度もうなずき、膝を叩いて喜び、
最後は、「おーー!」と声を上げた。
「やった!加奈のおかげで、授業大成功まちがいなし。
 憂鬱なのが、全部吹き飛んじゃった。むしろ、月曜日が待ち遠しい。」

「母さん、聞いてくれ。加奈が全部考えてくれた。
 もう、俺、るんるんだよ。」と靖史は吉江に言った。
「それは、よかったわね。あなた、1ヶ月前から、毎日憂鬱な顔でしたよ。」
吉江も喜んで言った。
なにごとかと、二人の妹もやってきた。
「なんか、お父さんにいいこと?」
「そう、胃が痛くなるほど嫌だったものが、楽しみに変わったんだ。
 全部、加奈のおかげ。」
「お姉ちゃん、すごいじゃない。」と二人。
加奈は、「うふふん。」と笑った。


つづく(次は、「浩介はストーカー?」です。)

SF4次元変身サロン2①「45歳・豊・女子高生とチェンジ」

2101年。
10月になりやっと凌ぎやすくなった。
ここは未来都市にある「レトロ・タウン」。
すべてが、2010年の時代を真似て作っている。
タウンの広さは、東京都くらいあり、タウンの中だけで、
独立し、街が経営されている。

中森豊のケータイに土曜日、電話がかかった。
「こちら、変身サロンXですが、
 中森様の変身のお相手が見つかりましたので、
 本日の4時に来ていただきたいのですか。
 お相手も、その時刻にお出でです。」
とのこと、
豊は、昔から女装趣味があり、若い女の子に一度はなってみたかった。
そこで、「変身サロンX」に、自分と入れ替わってくれる若い女性を申し込んでいた。
豊は、高校2年の長女の他、計3人の娘がいる。
娘の世代の話に付いていけず、家族の中で浮いていた。
豊は、42歳。小学校の教員だった。

レトロタウンの新宿から、怪しげな通りにはいると、サロンがある。
豊がいったとき、すでに相手が来ていて、テーブルで待っていた。
美人だった。こんなステキなお嬢さんに自分はなれるのかと思うと、
胸が高鳴った。
豊は、女の子と面と向かって座った。

やがて、説明の女性が来て、椅子に座った。

「えーこちらの木島加奈さんは、1ヶ月お父さん体験を希望しています。
 そして、こちらの中森豊さんは、若い女性体験を1ヶ月お望みです。
 そこで、要求が合えば、記憶の操作をいたします。
 しばらく、お相手の情報や、要求をお話ください。」

木島加奈から話し始めた。
「あたしは、高校2年です。学校では、一応真面目な生徒です。
 あたしは、父とこの1年、喧嘩したまま、口を利いたこともありません。
 謝りたくとも、どうしても謝れません。
 だから、お父さん体験を通じて、父を理解したいのです。
 父は、小学校の教員をしています。
 あたしは、学校では、一応クラスのマドンナ的立場でいます。
 あたしは、レズビアンの里香という子に好かれています。
 私も彼女に好意を持っていますが、セッ・クスはまだしていません。
 男子とのセックスの経験はなく、バージンです。
 大体、このようなところです。」

次は、豊が言った。
「私は女装の趣味があります。生まれて1度でいいから、女の子になってみたいのです。
 そして、女の子のセッ・クスを体験したいのです。
 私は、加奈さんのお父上と同じ小学校の教師です。
 家では、3人の年頃の娘がいて、私は娘たちの会話に入れず、疎外感を持っています。
 大体このようなところです。」

加奈は、
「あたしの体ですが、自いは、自分でもしています。特別な性的嗜好はありません。
 そういうのは、やめてください。」
そう言った。
豊は、
「レズビアンの里奈さんに迫られたらどうしますか。」
と聞いた。
加奈は、
「受け入れてください。あたしも里奈が好きですから。」
「男子とのセックスはダメですね。」と豊。
「絶対ではありません。あたし、バージンを守る気持ちはありません。」加奈は言った。

時間と見て、説明の女性がやってきた。
「お二方の記憶は、そのまま残します。
 そして、お互いの記憶の3ヶ月分だけのコピーをチェンジしてインストールします。
 つまり、お二人とも、自分の記憶はそのままと、相手の記憶の3ヶ月分を両方持つわけです。
 話し方や、動作、仕草、反射的行動と司る小脳付近の記憶は、置いたままにしますので、
 チェンジをしても、例えば、豊さんは、加奈さんの話し方や、仕草で行動できます。」

「1ヶ月したら、ここに来ればいいのですね。」と豊は聞いた。
「はい、そのときは、お二人の脳に、信号をお送りしますので、忘れるということはありません。」



二人はカプセルに入った。

「これより、全記憶を交換します。」

「次に、相手の記憶の3か月分のコーピーをお二人にインストールします。」

「次に、『意識』の交換をいたします。これは絶対忘れないという暗証番号を唱えてください。」
豊は、唱えた。
「はい、完了です。」
と声がして、カプセルが空いた。
豊は、起き上がった。
加奈の白い真っ直ぐな脚が目に入った。
隣のカプセルをみると、豊になった加奈が置きあがって、自分を見ていた。

「ああ、うれしい。」と豊は、そばの鏡で自分を見た。
ピンクのセーターに、白いふわふわのスカートを履いた、17歳の美少女がいる。
声を出してみた。ああ、女の子の声だ。
心の中に、2系統の記憶がある。一方は加奈のものだ。
自分の記憶もちゃんとある。
「1ヶ月、この姿でいられるのか。」豊は歓喜した。

説明の人が、
「尚、お二人の緊急事態のために、お互いのケータイの番号を交換なさるといいと思います。」
「携帯も取り替えた方がいいですか。」加奈は聞いた。
「いえ、お互いが自分の友達などにメールするときに、そのままのをお持ちになっている方がいいです。」
「わかりました。」と二人は言った。

「では、お互い、1ヶ月を満喫しましょう。」と豊(=加奈)は言った。
「はい、では。」と豊になった加奈は頭を下げて行った。

「ああ、加奈の3ヶ月のことだけが分かる。」と豊は思った。
「同時に、加奈にも私のことが3ヶ月知られているんだなあ。」
この3ヶ月、恥ずかしいことをしなかったか、豊は、赤面しながら考えた。


つづく(次回は、「お父さんと仲直り」です。)

大高建治の女装ライフ⑤「二人の幸せ」最終回

軽く書くつもりだったのに、5回も書いてしまいました。
今回は、あまり評判がよくなかったようです。
やっと、最終回です。読んでくださるとうれしいです。

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ルイは、有香に卒業証書をもらってからも、有香のマンションに毎日行った。
いつも、高校生くらいの子が着ているファッションをあえてしていく。
髪は、ボブヘアー。
髭のコンデションが悪いときは、マスクをかけていった。
有香は、幼な顔のルイが高校生に見えると言った。
そして、有香に代わって受付をした。
ルイの声や姿を見て、多くの客は、ルイを女子高生に見ているようだった。
「先生。ジュースの用意ができました。」とルイが言う。
「あ、ルイちゃん、ありがとう。」と有香は言う。

客が帰った後、有香とのお話しで、女言葉の練習。
高校生の女の子の声で話す。
女の子のボーイッシュ言葉はなし。
「そうだよ。」ではなく、「そうよ。」
「それ、いいね。」ではなく「それ、いいわ。」
会話の中で、「やん。」とか「あら。」を多発する。
「やん、あたし、知らなかったわ。」とか、
「あら、今日土曜日。あたし、金曜日だと思ってたわ。」とか。
有香と、女らしい女の子の言葉遣いをした。

有香と、女の子女の子した話し方をしていると、
ルイは、いつも興奮してくる。

「ルイ。女子高生の制服2つあるのよ。二人で着ない?」と有香が言った。
「やん、ほんとう?」とルイ。
有香がもってきた。
「キャー、うれしい。」とルイは言った。
「ルイ、今の声、小学生になっていたわよ。」と有香。
二人で更衣室で着替えた。
「ルイ、ショーツは履かないの。ハレンチごっこするのよ。」有香が言う。
「ええ。わかったわ。」

二人でソファーに並んで座った。
スカートは、膝まであったが、座ると、ももが見える。
「有香、待って。あれが上向いてきちゃうの。ももで挟むから。」ルイは言った。
有香は、移動式の姿身をもってきて、ルイの前においた。
「あ~ん、鏡見ると興奮するわ。」とルイ。
「わあ、その声、すっかり女の子になったわね。」
ルイの声は、少し鼻に抜ける声だ。
「あたし、自分の声でまだ興奮しちゃう。もう、たまらないわ。」
有香が、身を乗り出し、口づけをしてきた。
深い口づけをしながら、ルイのももをさすっていく。
そして、大きく上を向いているものも。
「ああ、お姉様。あたし、もう、イきそう。」
「あ、その声も可愛い。女の子の声だわ。」
「ああん、耳元で言われると感じる。」
「どんどん感じていいのよ。」
「お姉様は、今どうなってるの。」
ルイは有香のスカートに手を入れた。
「ああん、お姉様のも、あたしみたい。」
「ああ、ルイの声どんどん可愛くなるわ。今、小学生だわ。」
「だって、感じると、声が高くなるの。ああん、ああん。」
有香は、胸のポケットから、ゴムを出して、ルイのものにかぶせた。
そして、ルイに深い口づけをした。
有香があそこを刺激すると、ルイは、有香の口づけの中であばれた。
有香が、くちびるを離すと、ルイは声をあげた。
「ああん、ルイ、もうだめ。ああん、もう、イかせて。」
「わあ、女の子の可愛い声。ルイ、可愛い。」
有香がそういうと、
ルイは、幼い子のような可愛い声を上げながら、体を痙攣させ、果てて言った。
有香は、ルイのゴムをとり、きれいになめた。

「ああ、制服のまま、イっちゃうなんて。」
「最高でしょう。」
「うん。でも、お姉様は、裸にしちゃうからベッドよ。」
ルイは、有香の手を引いて、ベッドにいざなった。



有香は、1枚1枚裸にされ、体中たっぷりあいぶされて、
ルイの可愛い声に興奮し、
ルイの3倍くらい激しい声を上げながら、果てていった。



二人に毛布をかけ、ルイは、ぐったりと目をとじている有香を見ていた。

やがて、有香がぼんやりと目を明けた。
「ああ、ルイの可愛い声で、萌えちゃった。」
「それは、うれしいな。
 ね、有香は、手術をして、女性になりたいって思ってる?」
「性別適合手術のこと?」
「そう。」
「前は、男の部分があってもいいと思ってたの。
 でも、今は、ちがうの。女になりたいの。
 でも、どうしてそんなこと聞くの?」有香は言った。
ルイは、建治の声になって言った。
「有香がさ、手術をして、名前も戸籍も変えて女性になったら、
 ぼくと結婚してくれない?」
有香は大きく目を開いた。
「だって、反対されない?ご両親やご兄弟に。」
「僕は、2年前に母が死んで、兄弟もいない。天涯孤独。
 遺産が少しあるよ。」
「あたし、子供産めないのに?」
「子供より、有香が大切。
 この世の中で、有香ほど僕のことわかってくれる人はいない。
 子供欲しさに、有香以外の人を考えるなんて、できっこない。
 有香は、僕にとって、何よりも大切。有香を愛してる。
 有香さえよかったら、結婚してほしい。」
有香は目に涙を一杯溜めて、建治の言葉を聞いていた。
そして、毛布の縁で涙を拭きながら、
「ありがとう。あたし、ルイと結婚したい。
 自分が結婚できるなんて思いもしなかった。
 うれしい。うれしい…。」
有香はそう言って、建治の胸で泣いた。



有香は、すぐ決断して、タイへ旅立った。
教室は、ルイが帰って来られる6時から、9時まで、
ルイが指導することにする代わりに、講習料を5割引にした。

有香は、3週間で帰国して来た。
帰国しても、毎日患部の手入れが大変だった。
しかし、レッスンはすぐ始めた。

戸籍の変更も早々に行った。
有香は、桜井有香と正式な名を得て、戸籍は女性になった。

そのお祝いをした。
いつも行っているイタリアン・レストランで。
ルイは、青いセミフォーマルなドレスで言った。
有香は、赤い膝丈のフォーマルドレスを着ていた。

席に着くと、いつもの黒服の人が来た。
「有香は何にする?」とルイは聞いた。
「なんでも、ルイにお任せするわ。」と有香は言った。
ルイは、黒服の人に、
「これと、これと、これ、それから、白ワインをお願いします。」と言った。

すると、黒服の人は、ルイを見つめうれしそうな表情を見せた。
「お客様、お声が・・・。」と彼はそう言った。
「あ、あたしのは、心理的なものだったの。
 こちらの人が治してくれたました。」ルイは言った。
「それは、ようございましたね。では、ワインは店のプレゼントとさせていただきます。」
と彼は、にっこりとして言った。
「それは、ありがとうございます。」と二人で言った。

「あたし男声だったから、今まで話せない人の振りをしてきたの。」
「なるほど。」と有香は言った。



二人で、ワインで乾杯した後、
建治は、小さい入れ物を有香に渡した。
有香はそれが何かわかっていたが、
実際にフタを空けて、宝石の輝きを見ると、うれしさがこみ上げてきて、目を潤ませた。
「ありがとう。実際にいただいてみて、こんなにうれしいものだとは、思わなかった。」
有香は、そう言って、頬に涙を流した。



建治は男の格好をして、有香の家に挨拶に言った。
天涯孤独の建治とは別に、有香の家は、兄弟6人の賑やかな家族だった。
両親もそろっていて、
「有香が結婚できるなんて、思ってもいませんでした。」
と涙ながらに、お礼を言われた。
「賑やかなご家族は、私の憧れです。よろしくお願いいたします。」
と建治は言った。



ラスベガスの小さな教会で、二人だけの結婚式を挙げた。
ウエディングドレス姿の有香は、眩しいほど綺麗だった。
建治は、男性用の白いスーツ。
牧師さんの、
「汝、その健やかなるときも、病めるときも、 喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか。」

建治が「イエス。」と言った。
有香も「イエス。」と言った。

そして、唇を合わせた。

昼過ぎに式は終わった。
二人は、私服にもどり、教会を後にした。
有香が言った。
「建治さんも、ルイになって、ウエディングドレス着たかったでしょう?」ルイが言った。
「うん。もう、たまらなかった。ね、もう一度やらない?
 僕が、花嫁になるの。」
「だから、言ったじゃない。二人で、ウエディングドレス着ようって。」
「そ、それは絵にならないでしょう。
 会社に帰ったら、写真見せなくちゃならないもの。」
「男の建治さんもステキよ。」
「え?そうお?男の僕は、なんか情けないだけでしょう。」
「そんなことないわ。女性的でステキ。」
「それ、誉められてるの?」
「そうよ。初夜は、ルイと有香でするの。
 可愛がってあげるね。」
「ああ、その言葉に弱い。すぐホテルに行こう。」
「だめよ。ギャンブルで儲けてからね。」

ラスベガスの空は何処までも青く、
新婚の二人を見守っているようだった。


<おわり>(次回は、未定です。)

大高建治の女装ライフ④「あえぎ声法ってどんなの?」

これから、毎日、有香は女声の出し方を、ルイに教えてくれると言う。
ルイは、家に帰って、薄いメイクを手早くして、ウィッグをかぶり、
水色のワンピースで出かけた。
女声の練習に女装は必須だという。
女の自分を見ながら練習をすると効果が高いそうだ。

いつものイタリアン・レストランで食事をして、
有香のマンションに出かけた。
途中で、有香のために、コンビニでお弁当を買った。
地図を見て、すぐに、有香のマンションがわかった。

中に入ると、家具の何もない部屋があり、
壁には大きな鏡が貼られている。
5人ほどの人が、鏡を見ながら、声の出し方を練習している。
有香は、黒いスーツ姿で、一人一人を回って、アドバイスをしている。

有香は、ルイを見て、「見学していてもいいわ。」と言った。

中に、二十歳くらいの可愛いニューハーフと思える人は、
もう、ほぼ女声が出せている。
あんな、声が出せたらいいなあとルイは思った。

8時にレッスンは終わりだった。
女姿のまま帰る人と、メイクを落とし男の服に戻る人もいた。
きっと家族もちの人だと思った。
その人達用の更衣室もある。

8時半には、みんなが帰った。
ルイは有香にお弁当を渡した。
「ありがとう。」と有香は言って、ソファーで食べ始めた。

「もうちょっとの人もいたね。」とルイは言った。
「あのニューハーフの人ね。
 もう6ヶ月も通ってるの。優秀な生徒さん。」
「あたしも、あんな声だせるかなあ。」とルイ。
「任せておいて。」と有香は笑った。

お弁当を食べた有香は、歯を磨いていた。

「ルイは、そんな薄いメイクだと余計可愛いね。」と有香が言った。
「あ、そう?ありがとう。」とルイ。

「じゃあ、始めよう。ここに来て。」と有香はソファーに座り、ルイを招いた。
「あのね、セッ・クスのとき、女っぽい声が出るじゃない。
 その中の、ルイの女声のポイントを見つけるね。」
有香は、そう言って、ボイスレコーダーのスイッチを入れて小テーブルに置いた。
「ショーツをとって。」と有香が言う。
ルイは、ショーツを取った。
有香は、ルイのスカートの中に手を入れて、
ルイのあそこを、そっとあいぶし始めた。

「ああん、ああんって、自然に任せて声を出して『ああん』だけね。」有香が言う。
ルイはしばらくして、興奮が高まり、声を出した。
「ああん、ああん、ああん・・・・・・」
「少し高い声で言える?」
ルイは、感じてきていて、言われなくても高い声がでた。
「ああん、ああん、ああん。」
「あ、それ、そこを覚えて。」と有香は言った。

「じゃあ、聞いて見るわよ。」
そういって、「ああん」を再生した。
ルイは、自分では、どれも女声を出しているつもりだった。
でも、再生の声を聞いてみると、みんな男声だった。
そして、13回目の「ああん。」が、ちょっと女声だと思った。
その「ああん。」の次に、「あ、それ、そこを覚えて。」という有香の声が聞こえた。

「ルイの女声ポイントは、さっきの声辺り。その声の前後で、他の言葉も話せるようにするの。」
有香は言った。
有香は、もう一度ルイをあいぶし始めて、ルイに「ああん」を出させた。
「そう、そこ。その声で、『あたしは、ルイよ。』って言って見て。」
「あたしは、ルイよ。」
「もう一度。」
「あたしは、ルイよ。」
ちょっと女の子の声に聞こえた。
「『今日はいい天気だわ。ね、どこか行かない?』をちょっと鼻声で言って。」と有香が言う。
ルイは言ってみた。
ルイは、かなり、いいと思った。

ボイスレコーダーで、確認した。
「あ、ちょっと、女声に近づいてるけど、まだまだね。」とルイ。
「自分だと、完全に女声に聞こえてたでしょう。」
「うん、聞こえてた。」
「でも、それを信じちゃだめなの。
 ボイスレコーダーで確認して、女声を確かめて、初めて合格なの。」
「自分だとどうして女声に聞こえるの?」ルイは聞いた。
「心が女になっているので、脳が女声と認識するみたい。
 女声って、高い低いのピッチの問題ではなくて、
 ある周波数の声を出さなくすると、女声になるらしいの。
 少年の声は高いけど、少女の声とは違うじゃない。」
「なるほど。」とルイはうなずいた。

1時間練習した。
疲れた。
ルイは、有香にあそこを刺激されっはなしで、かなり参っていた。

ルイは、有香に受講料を払おうとした。
すると、有香はいらないと言った。
ルイは、恋人だから、早く女声を聞かせて欲しくてやっているのでいらないと。

「ね、有香の男声、ちょっと聞かせて。」
「こんな声よ。」と有香は、完全な低い男声で言った。」
「わあ、驚き。そんな声なのに、今みたいな綺麗な声が出せるの。」
「うん。びっくりでしょ。」と有香。
「うん、すごい。」
「じゃあ、ベッド行こ。」
「うん。お礼に、有香をとことん可愛がってあげる。」
「うん、可愛がって。」

二人は、ベッドルームに入り、明かりを小さくした。



1ヶ月がたった。
有香の厳しい特訓の毎日だった。
有香から、卒業証書をもらった。
ルイは、自分のマンションで新聞を読んでみた。
ボイスレコーダーに録音して見る。
そして、聞いた。
それは、完全に女子アナの女声だ。
それから、少女マンガを見て、
少女のセリフだけ読んでみた。
「ミカ、どうしたの。」
「なんでもないの。そっとしておいてくれない。」
「何かあったら、言うのよ。ミカのこと親友だと思ってるんだから。」
「ありがとう。」
ボイスレコーダーで聞いて見る。
聞きながら、自分で興奮してしまった。
これは、自分が出した声なのだ。
多分、15歳くらいの女の子の声だ。

20歳くらいの女性の声。
15歳くらいの中学生の声。
この二つなら、がんばって声を出さず、普通に出せる。
5歳くらいの女の子の声も出せるが、それは、30分くらいで疲労する。

あとは、女の子の特有のしゃべり方。
ルイは、ニューハーフではないので、普段女のしゃべり方をしない。
声は100%なのだから、しゃべり方の練習も大切。
例えば、お尻を触られて、
「やん、やめて。」とか「きゃー、何するの。」などという言葉がすぐに出るかどうか。

それに、女の子の仕草。鼻の下に指を当てたり、
「熱い。」と思ったときに、手を引っ込める仕草。
椅子に座ったときの姿勢。

ルイは、会社が終わったときから、心の言葉をすべて女言葉にした。
「いや~ん、電車、遅いわ。」とか。
「やん、このドレスステキ。」とか。
「あ、あの子のファッション、ステキ。あんなの着てみたいわ。」
とか。
ちょっとわざとらしい言葉もあったが、このくらいがいいそうだ。
女装のときはもちろん、男装のときもやった。
会社のときは、やめにした。とっさに女言葉と女声が出てしまいそうだったからだ。

こうして、ルイの女声は、どんどん上達した。

※この「あえぎ声法」は、私がある人に試みただけのもので、一般に効果が認められたものではありません。


つづく(次回は、「二人の幸せ」最終回です。)

大高建治の女装ライフ③「結ばれる二人」

二人は立って、お互いを見詰め合った。
「ルイは、自分で思ってるよりずっと可愛いわよ。」
「ほんと?男に見えるんじゃない?」
「見えない。可愛い女の子に見える。」
「ほんと?」
「うん、ほんと。すごく可愛い。」
「うれしい。」
二人は、口びるを突き出して、そっと触れた。
「セク・シーな口びるだわ。」有香が言う。
「有香の口びるもセクシーで、ちょっとイン・ラン。」
「ルイもイン・ラン。」
二人は、肩を抱き合い、強く口びるを当てた。
有香の舌が入ってくる。
ルイはそれを吸った。
今度は、有香がルイのくちびるを吸う。
二人で舌を絡めて、深い口づけをした。

「ルイ。スカートの中の下着、全部ぬぐの。あたしもぬぐから。」
「うん、わかった。」
ルイは後ろを向いて、ガードルとショーツを脱いだ。
また向かい合う。
二人は、スカート同士を押し当てた。
「わあ、これ、刺激的過ぎる。」とルイ。
「ルイのがわかる。」と有香。
「今始めて、有香が男だって信じられる。」

「ね、スカートの前をあげて、あれを直接触れさすの。」と有香。
「それ、チョー刺激的。」とルイ。
二人はスカートの前を上げて、お互いのものを触れさせた。
「ああ、たまらない。」とルイ。
「あたし、すごく恥ずかしい。」と有香。
「あたしも、恥ずかしい。」ルイ。
「あ…。」と声を上げて、二人は抱きあった。
そして、何度も口づけをした。
「有香、あたし、ダメ、このまま、イきそう。」
「じゃあ、ベッドに横になろう。」と有香。

ベッドの上で、有香がルイの上になった。
有香は、ルイの腕を上に上げた。
「綺麗にお手入れしてるのね。」とルイの脇の下にキ・スをしながら、有香は言った。
「永久脱毛したい。」とルイ。
有香は、ルイの脇の舌を何度も舐めてくる。
「ルイを脱がせていい?」
「いいわ。」
有香は、ルイの首の紐をほどき、背中のファスナーを下げ、ワンピースを脱がした。
ルイは、黒いブラと黒いコルセットだけになった。
「コルセットしてるんだ。どうりで細いと思った。ウエストいくつ?」
「58cm。」
「わあ、すごい。女の子の位置がくびれてる。」
「もう、3年もやってるから。」
「すごい。細いウエストがたまらない。ああ、ルイ、ステキ。女の子。」
有香は、ルイの腕を上に上げさせたまま、キ・スをしてきた。
「有香、もう、ダメ。たまらない。シーツ汚しちゃう。」
「わかったわ。」
有香はそういうと、ルイの下腹部に大きく上を向いているものを口に含んだ。
「あ・ん、あ・ん、有香、ダメ、あたし、イちゃう。あ…あ……。」
ルイは身震いをしながら果てた。
有香は、それを飲み込んだ。

「今度は、有香の裸が見たい。」ルイは言った。
「じゃあ、脱がせて。」有香は言う。
ルイは、有香のワンピースを脱がせ、
黒いスリップ、ブラをとり、有香を裸にした。
「わあ、胸、Dカップじゃない?」
「まだ、Cよ。」
「ああ、やわらかい。女の子。ああ、有香は女の子と変わらない。」
そう言いながら、ルイは、有香の体中を、唇であいぶした。
「脇の下がつるつる。永久脱毛したの?」ルイは聞いた。
「うん。子供みたいでしょ。」と有香。
「いいなあ。」そう言いながらルイは、脇の下に口づけをした。
有香は、ハイウエストから、自然なカーブを描いてヒップに至っていた。
「脚も脱毛?」
「ううん。毛が濃くなるまえに、ホルモン打ったから、セーフなの。」
「顔も?」
「うん。初めから薄かったんだけどね。」
「いいなあ。」
ルイは、そう言いながら、有香の脚をなで、
体中をあいぶしていった。
有香の、男性の証が大きくなっていて、
そこを除けば、有香は、女の子と何も変わらなかった。

ルイは、有香のその部分をゆっくりあいぶしながら、
胸の先端を噛んだり、吸ったりした。
だんだん、有香が陶酔の声を上げ始めた。
声を上げ、身をくねらせた。
完全な女声の有香の声がたまらない。
有香の声が荒くなってくる。
「ああ、ルイ、ああ、いい、感じる・・・。」
有香の声がだんだん激しくなって、
ルイに抱きついてきた。
体が小刻みに震えている。
そのうち、首を振り、激しい声を上げた。
女性の声だ。
ルイは、また燃えてきそうになった。
「ああ…ああ…。ルイ、いく、いくわ。あああ、でちゃう。」
有香がそう叫んだ。
ルイは急いで、有香のものを口に入れた。
やがて、有香は激しく身を振るわせて、ルイの口の中に放出した。

毛布をかけて、二人で抱きあっていた。
「今日会ったばかりなのに、ルイのこと好きになったみたい。」と有香が言う。
「有香は、あたしが今まであった女装子の中で最高。一番好き。」ルイは言った。
「あたしね、ルイに取っておきの方法で、女声の出し方教えたい。」
「取っておきなの。」
「うん、普通、メラニー法、ウィスパー法、カエル声法の3つくらいなのね。
 週1で通って、早い人で6ヶ月くらいかかるんだけど。
 あたしが開発したのがあるの。短期速習。
 1ヶ月くらいでなんとかなるの。でも、好きな人に対してしかできないの。」
「何、何、教えて。」とルイ。
「『あえぎ声法』っていうの。」
「わあ、よさそう。」
「セッ・クスのときって、声が女の子っぽくなるでしょう。
 とくに、イっちゃうとき。その声で、ふつうの言葉もしゃべられるようにするの。」
「それ、あたしに教えてくれるの。」
「そう、一番好きな人にしかできないから。」
「わあ、ラッキー。『あえぎ声法』ね。ちょっとイン・ランでステキ。」
うふふと二人で顔を見合わせた。


つづく(次は、『有香の・あえぎ法始まる』です。)

大高建治の女装ライフ②「有香とマンションで」

電車の中でもジロジロ見られた。
『私の何を見ているのだ。多分派手さだろうか。
 男だと見ているのだろうか。
 まさか、いい女だと見ている男もいるだろうか?』

新宿の街に出ると、さすが新宿、あまり自分を見る人はいない。

建治は、感じのいいイタリアン・レストランに一人で入った。
声を出したくないので、聾の人を装い、メニューを指差して注文した。
トイレに行きたくなった。
建治は、迷わず女子トイレに入る。
新宿の店なら、ジロジロみられない。
トイレでは、自分は女だと思うことにしているので、
やましい気持ちにはならない。
トイレから出たとき、2人の女性が、化粧治しをしていた。
建治は、ゆっくりと鏡が空くのを待って、
化粧を直して席に戻った。

出てきた料理を楽しみながら、建治は考えていた。
声をどうにかしたい。
トレーニングで女声を出せるそうなので、一回行ってみようか。
だけど、1回、8000円くらいするらしい。
そして、週1で半年くらいかかるそうだ。
ちょっときついな。

レスロランを出て、建治は、ある高架のある裏通りに来た。
何でこんなところにきたのかわからない。
ふとみると、二十歳くらいの黒いスーツを着た女性が、男2人にからまれている。
建治は、迷うことなく近づいていった。
建治は、子供のときから合気道をやっていて、2段の腕前だ。
2段というのは、相手がナイフを持っていても、
それを取り上げ、投げを打てる実力。

「こら、相手が嫌がっているじゃないか。」
建治は、かまわず男声を出して、二人の男の後ろ襟をつかんで、女性から離した。
「何をー。」と男達はかかってきたが、
二人は、軽く建治に投げられて、その痛みに立てなくなっていた。
「さあ、早くここを去りましょう。」
と建治は言って、女性の手を引いて、高架の階段を上がった。

「ありがとうございました。」
歩きながら、女性は言った。
「いえいえ。」と建治は言って、女性を連れ、
上の道路に出て、駅に近い方へ歩いて行った。

「なんで、あんな暗いところにいたんです?」と建治は聞いた。
「ケータイを見ながら歩いていて、つまづいて、ケータイをあそこへ飛ばしてしまったんです。
 それが、男の人に当たってしまって。」
「なるほど。」と建治は言った。
「あの、何かお礼をしたいので、ケーキでもご馳走させてください。」
と女性は言った。
「そうですか。甘いものは大好きです。」
と建治は言った。
その女性を見ると、なかなかの可愛い人だった。
セミショートの髪にゆるいウェーブをかけて、
前髪を下げている。
背は、建治より、3cmくらい低かった。
黒のスーツからして、新入社員か。

明るいケーキ店で、向かい合って座った。
女性は、桜井有香と名乗った。
「本名?」と聞いた。
「ごめんなさい。あなたとだけの名前。」と有香は言った。
「じゃあ、あたしは、寺山ルイ。」そう建治は名乗った。
「あのう、失礼だけど、ニューハーフの方?」と有香が聞く。
「あはは。ただの男です。ニューハーフって、ホルモンとか打ってる感じでしょ。
 わたしは、何にもしてないから。」
「ルイさんは、声を聞かなければ、女性に見えるわ。」と有香が言う。
「いやあ、女性には、かなわない。有香さんを目の前にして、
 女性オーラに、今劣等感の塊ですよ。」建治はそう言った。
「水商売の方だと思ったんです。でも、お声やお話のしかたが爽やかな男性でした。」
「サラリーマン。週末は、ケバイ女になって町を歩くのが趣味なの。」
「あたしは、インストラクター。」
「え、何のです?」
「ルイさんとお会いできたの何かの縁ですわ。」
「え?どういうこと?」
「あたしね、男性が女声を出すためのインストラクターです。」
「え、それ、まさに、わたしの願いだけど、有香さん女性でしょう?
 女性がそんな仕事する?」
「もう、そろそろ白状しようかな。あたし、男です。」
「え!!!」と建治は驚き、一気に興奮してしまった。

「あのそこまで女性に見えるのは、ホルモンを打ってるの?」
「中学2年から打ってる。」
「じゃあ、納得。でも、それならGID?」
「GIDだと自分では思ってたの。でも、違うみたい。」
「じゃあ、その…アリアリ?」
「うん。」と有香は言った。
「じゃあ、わたしみたいなの好き?」
「好き。女装子さんが好き。だから、GIDじゃないみたい。」
「わたし、好き?」
「うん。可愛いもの。」
「その…セッ・クスしたいって思う?」
「うん。可愛がってあげたい。」有香は言った。
「やったあー。実はあたし、有香さんが男だって聞いてから、
 興奮しっぱなしなの。すぐ行こう。あたしのマンション。」
「うん。」有香は返事をした。



建治は、待てなくて、タクシーを拾って、マンションまで来た。
建治は、女装の気があるためか、部屋を女性風にしている。
「わあ、男性の部屋じゃないわ。」と有香は言った。
「ありがとう。有香、あたしみたいな派手派手にならない?」
「うん。なりたい。ルイに似せて。」
「うん。OK。」
建治は、何着もある派手派手ドレスから、黄色と白の縞模様のドレスを選んだ。
有香がそれを着るときは、他所を向いて、有香をドレッサーに座らせ、
メイクを手伝った。

最後に有香の髪に、大きな黄色いリボンのついたカチューシャを差した。
オレンジのリップを唇より大きく塗った。
「キャー、完全にケバイ女になったわ。すごくうれしい。」と有香は喜んだ。
二人で、鏡を覗いた。よく似た姉妹のようだった。
「1950年代のファッションって感じじゃない?」と建治は言った。
「あ、そうね。ポニーテールなんかもいいかも。」と有香。

「今、飲み物入れるね。ジンジャエールでいい?」と建治。
「うん、ありがとう。」

飲んだコップにべっとりと、口紅がついた。
建治は、有香にティッシュを渡した。
「口紅だけ、少し落としておかないとね。」建治。
「そうね。」と有香は悩ましげな瞳を向けた。


つづく(次回は、「有香との……」です。)

大高建治の女装ライフ①

今度は、平凡な女装物を書こうと思います。読んでくださるとうれしいです。

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大高建治は、24歳、入社2年目。
1年目より会社はだいぶ楽になり、土日は完全に休めるようになった。
そこで、土曜は、一週間我慢をしてきた女装をする。
それが、建治の唯一の楽しみだった。

昨日の金曜日、鼻の下の髭や、頬、アゴの髭を全部抜いた。
これは、なかなか大変で、永久脱毛をいつかしたいと思っている。
髭を抜いて持つのは、せいぜい1週間。
それを過ぎると、もう皮膚の下に毛が伸びてきて、青く見える。
足のすねは、シェイバーをかける。
シェイバーの寿命は、1日。
翌日には、触るともうざらざらになる。
髭の伸びる速さと同じくらいだ。

安全剃刀で深剃りするともっといいが、
次に生えてくる毛が、皮膚の下に伸びてきてしまい、
その処理を針でするのが大変だ。
ひどいときは、血だらけになる。
だから、シェイバーで妥協している。

1日経つと、髭を抜いた顔が落ち着く。
シェイバーをかけた足。
同じくシェイバーをかけた脇の下。
建治はうれしくて、すねや脇の下を撫でる。

ワイシャツとランニングシャツを脱ぐと、
コルセットをしている。
これは、もう学生のころから始めて3年になる。
女性のハイ・ウエストにくびれがくるように、
肋骨から矯正し、おへその上7cmくらいにウエストができた。
その位置で、60cmのウエストだ。
そして、アンダーバスとは、70cmになった。
いまでは、コルセットをしていても、なんの圧迫も感じない。
むしろ、それをはずすと、頼りなく思うくらいだ。

建治は、コルセットをはずすと、裸になりシャワーを浴びた。
女装をする前は、必ずシャワーで身を清める。

シャワーから出てくるときは、バスタオルを女性のように体に巻いて、
ショーツを女の子に見えるようにはき(例のものを股に回して)、
ドレッサーの前に座る。

髭を前の日に抜いたときが、肌の調子が最高だ。
建治はなれた手つきでメイクをしていく。
童顔の建治は化粧をすると、かえって若く見える。
建治は、女に「変身」することで、性的な興奮を覚えるので、
もとの自分の顔が分からないほどに、厚く化粧をする。
ファンデーションは、極薄く塗るが、
目は、上も下もつけ睫をつけ、アイラインも、しっかりと引く。
シャドウも、紫のラメ入りのものをばっちりと塗り、
頬紅。そして、リップは真紅のものを唇より大きく、娼婦のように塗る。
そこに、グロスで艶を出す。
そして、ウィッグを被る。
茶のもので、前髪はストレートだが、
サイドは、ゆるいカールのあるもの。
長さは、肩に髪が触れる程度。
その髪に、赤い大きなリボンのあるカチューシャを差す。

カツラを被って顔ができたとき、建治は一番興奮する。
顔立ちのいい建治は、けっこういい女になる。

あそこが大きくなっている。
「ダメよ、これからだもの。」
と建治は、男の証に言って聞かせる。

黒いコルセットの紐を、少しひっぱり、ウエストを58cmにする。
黒い紐なしのブラをつける。
中に、吸着性のシリコン・パッドを入れる。Cカップ。
あそこがあばれるといけないので、黒いガードルを履く。
ピップは、83しかないが、ウエストが細くなっているので、
ヒップがあるように見える。

建治の女装の考え方は、どんなにバレてもいい。
きちんと、女装ができていればいい…というものだった。

今日は、思い切り派手にいきたかった。
そこで、肩見せの赤に白い水玉のあるドレスを選んだ。
紐を首の後ろで結ぶようになっている。
幅のある、エナメルのベルト。
肌色のストッキングを、履き、それは、もものところで、止まるように、すべり止めがある。
黒いエナメルのハイヒール。甲に赤のリボンがついている。
建治の身長は、160cmで、そのヒールを履くと、163cmくらいになった。
男としては、低い方だが、女としては、普通だ。

建治は、姿見で、チェックした。
長い脚に産んでくれた両親に感謝した。
狭い肩には、筋肉がなく、腕は細くて白い。
娼婦のようなタラコ唇が、なかなかセクシーだ。
建治は、唇を突き出して、キスをせがむポーズをとってみた。
なかなかだ。あばずれ女の感じがとてもいい。
スカートは、膝までの丈、フレアーがたっぷりあり、
広がっている。

『これで、大杉建治と見るものは誰もいない。』

これで、外に行ったら目立つだろうなと思った。
だが、水商売なら、このくらいは普通かな?

頭の大きなリボンが可愛く、全体に、二十歳くらいに見える。
これほど、女装に恵まれた建治に一つだけ恵まれないものがあった。
それは、声だ。喉仏は、大きくなく、声も低い方ではないが、
女声は出せないでいた。
だから、外では、なるべくしゃべらないようにしていた。

黒の小さめなバッグを肩から提げて、
「さあ、町に出よう。」と、建治は、ワンルームマンションから出た。

五月の生暖かい夜だった。

それでも、肩が少し寒いので、ラメ入りの紫のカーデガンを羽織った。

午後の7時を過ぎていた。
目指すは新宿だ。
マンションから、最寄の駅近くに来たとき、
喉が渇き、コンビニに入った。
客がいっせいに自分を見た気がした。
何人かは男と見ているだろう。

建治は、女性向きのドリンクをとって並んだ。
前にも後ろにも、二十歳くらいの女性がいた。

建治は、女性がそばにいるといつも思う。
自分はこれだけの女装をしていても、
本物には到底かなわない。
本物の女性には、「女オーラ」がある。
それは、女性の美醜には関係ない。
そばに来るだけで、「女だ。」と感じさせるものだ。
ホルモンでも打てば、この女オーラを得られるのだろうか。
女オーラに当てられるたび、建治は、劣等感を感じる。

コンビニチェックはどうでもいい。
女の格好をしていれば、女として、キーが押されることを知っている。


つづく(次は、「スーツの女性有香とで合う。」です。)

スーパー洋子8⑥「カップル誕生」最終回

「冒険活劇」などを長々書いて、すみませんでした。この最終回には、アクションはありません。
読んでくださると、うれしいです。

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翌日の朝、洋子とルミが、学校の靴箱に来ると、
冴子とハンザムな青年が、二人を向かえていた。

洋子とルミが、「だれ?」と思っていると、
「俺だよ、大塚真治だよ。」と彼は言う。
大塚は、リーゼントを辞めて、油のない髪の毛を、ぱさりと垂らしていた。
それは、いかにも真面目な爽やか青年に見えた。
「わあ、大塚先輩。そうやると、最高にさわやかじゃないですか。」と洋子。
「そうですよ。すごく、ステキ。」とルミは言った。

「洋子。今度のこと、ありがとうな。
 俺まだ呼ばれてなかったから知らなかったけど、
 俺の分も言ってくれたんだってな。」真治は言った。
「冴子先輩が、大塚先輩も是非にって。」と洋子。
「ありがとう。洋子の気持ち、無駄にはしない。
 せっかく抜けられたんだ。俺、勉強死ぬほどやる。」真治は言った。
「それで、勉強できたら、めちゃモテですよ。」と洋子は言った。
「とにかく、ありがとう。一生恩に着る。」真治は言った。
「なんか、冴子先輩と、大塚先輩と、お似合いな感じです。」とルミが言った。
「こら、からかわないの。」と冴子に言われ、二人は、逃げるように階段を上がって言った。



その日、四天王に勝った洋子は、どれだけみんなに話をせがまれるかと覚悟していたが、
大杉隆と的場早苗が、話し上手で、二人は机を並べた上で、一手に説明を引き受けていた。
みんなは、その二人がおもしろく、集まっていった。



その日の放課後、
大塚真治と小島冴子は、グランドの隅のベンチに腰かけていた。
「めちゃ、勉強するってほんと?」と冴子は言った。
「ああ、本気だ。俺のおやじは病院の院長で、
 なんでも、金、金、金って人間だった。
 俺、それに反発して、少しずつグレてった。
 しかし、俺は、医者って仕事には憧れてる。
 おやじの知らないところで、いい医者になってみせる。」

「実は、あたしもなんだ。医者になりたいの。
 あたしみたいな子の専門医になりたい。」
「そうなの?ほんと?それは、いいや。あのさ、」と言って真治は真面目な顔になった。
「あのさ、もしよかったら、俺とつき合ってくんね。」
「つき合うって、1回か2回ってこと。」
「ああ、いい方悪いな俺。つまり俺の彼女になって欲しいってことだよ。」
冴子は少なからず、驚いた顔をした。

「だって、真治知ってるじゃん。あたしは女じゃないって。」
「知ってるよ。知ってても、変わんないんだ。冴子を思う気持ち。
 1年生のときからずっと好きだった。
 そのうち、冴子の体のこと知った。でも、同じなんだ、冴子が好きだって気持ちは変わんねえ。」
「ほんと?」と冴子は真治を見た。「あたしだって、真治のこと好きだよ。」
真治は、飛びやがって喜んだ。
「だったら、それで、十分じゃん。今、俺達まだ中学生だぜ。
 お互い好きで十分じゃん。大人になってからのことは、おいおいでいいじゃん。
 な、冴子、そうだろう。」真治は言った。

冴子は真治の顔を見て、涙を流した。
「うん。そうだね。今は、好き同士でいいよね。」
「やったー!」と、真治は冴子を抱きしめた。
「あ、ごめん。うれしくてつい…。」
「変わりにキスしよ。」冴子は目をつぶった。
「あ、ああ。」と言って、真治は、手を洋服でぬぐい、冴子の唇に唇を重ねた。
唇をはなした真治は、バンザーイと飛びあがって、校庭のトラックを走りはじめた。
そんな真治を冴子は、ほほえましく見ていた。
幸せだった。

*    *    *

冴子は、グループを解散したが、グループであった、あとの4人のことが心配だった。
そこで、隣のクラスの真治に相談した。
「あのさ、真治のグループだった子と、あたしのグループだった子と、
 いっしょにカラオケいかない?」と冴子は言った。
「わかった。一組でも、カップルできたらいいなってことだな。」真治は察した。
「まあ、全部カップルになったらいいけど、真治のグループ一人多いんだよね。」
「あ、それ心配いらねえ。浩二のやつ、彼女自分でみつけたから。4対4だよ。」
「ほんと?洋子とルミも呼ぼうと思うんだけど。」
「ルミ、もて過ぎねえ?」
「大丈夫。ルミ、洋子にぞっこんだから。男相手にしないよ。」
「あはは。そりゃいいや。」
二人で、ルミと洋子に話したら、聞き耳のいい大杉隆と的場早苗が、
仲間に入れてくれないのは、ずるいと言い出し、総計大所帯になった。

4月の終わりに、カラオケの大部屋で、計14人が入った。
男4人、女4人がお見合いの形で座っていた。
みんな私服なので、女の子達は精一杯おめかしをしていた。
だいたいニーハイのソックスにミニスカートが多い。
端に洋子とルミ、向かいに隆と早苗が並んで座った。
洋子だけはいつものセーラー服。

マイクを持って、大塚真治が言った。
「えー、今日は、元冴子のグループと、俺のグループとの懇親会だ。
 男達は知っていると思うが、冴子のグループの女子は、身体的には男子だ。
 しかし、心は女子だ。男か女かは心が優先だ。
 彼女達を女子だと思えねー奴は、今すぐここから出て行ってくれ。
 いねーか。よし。
 それから、我々は、健全な青年になったのだから、酒、煙草はなしだ。
 それから、エッチもなしだ。キスくらいはいいかな。
 ジュースでも酔おうと思えば酔える。
 席がえは自由だ。積極的なもんが、彼女をゲットだ。
 以上。」
おおおと拍手が起こった。
「はい注文聞きます。」
「はい、何にしますか。」
と隆と早苗は、こう言うときになると、サービス精神の塊になる。
ルミは、洋子の腕をとって、ずっとべったりしていた。

テーブルは、デカンタのソーダや焼きそばが山もりになり、
盛大に懇親が始まった。
カラオケを歌う者はだれもいない。
みんな、話に夢中だ。

「なんで、今までマスクなんかでいたんだよ。
 こんなに可愛いのに。もったいねーよ。」
「ありがと。幸夫も、リーゼントより、今のがいいよ。」

「俺、聡史。」
「あたし、久美。」
「久美は、女にしか見えねえ。俺、もう参ってる。」
「聡史も悪くないよ。クールだよ。」
「そうか、久美がそう言ってくれるなら、自信もっていいかな。」

隅に大人しくいた賢治は、向かいに一人でおとなしそうにいる吉江が気に入っていた。
賢治は勇気をだして、吉江の横に行った。」
「俺、口べたなんだ。女の子といるとあがっちゃう。」
「あ、あたしもなんだ。」
「俺、賢治。」
「あたし吉江。」
「吉江さんと俺、合いそうな気がして、勇気出してここ来た。」
「あたしも、賢治さんが来てくれたらいいなあって思ってた。賢治さん優しそうだから。」
「ほんと?俺、吉江さんとなら、なんか、うまく話せそう。」
「あたしも。」

こんなふうにして、1時間もすると、なんとなくみんなカップルになっていて、
いい感じになっていた。

「なんか、あぶれる子、一人もいないみたい。」
冴子は言った。
「俺達、悪やってても、女の子に縁がなかったんだよ。
 だから、みんなうれしくてしょうがねんだ。」
真治はそう言った。
「それは、内も同じかも。みんな、体の劣等感あったから、
 女の子として接してもらって、うれしくてしょうがないみたい。」
冴子は言った。

3時間が、あっという間に経った。
サービスの隆と早苗は、ふらふらになっていた。

時間になり、真治が声をかけた。
「おーい、楽しいとこ悪いが、時間だ。
 はい、おしゃべりやめ!」
みんながシーンとなった。

「じゃあ、まず、今日、一番サービスしてくれた、隆くんと早苗さんに、
 ありがとうの拍手だ!」

みんなは、盛大な拍手をした。
隆と早苗はニコニコしていた。

さらに真治は、
「きょうで、仲良しになれたものは、全員起立!」

すると、全員が立った。
(おー、うまくいった。)と真治は思った。

「じゃあ、来週またやるから、全員くること。
 それまで、デートするなりは自由だ。」
みんなから、うおおおーと声が上がった。

「洋子とルミは、何にもしなかったけれど、一応拍手!」
一応の拍手があった。
洋子とルミは、頭をかきながら、礼をした。



こうして、懇親会は百点満点上手くいった。
帰るとき、ちゃんとカップルができていた。

「やってよかったな。」と真治は言った。
「うん。みんなが喜んでくれて、うれしい。
 真治、ありがとう。」冴子が言った。
「俺達だけうまく行ったんじゃ、なんか調子悪かったんだ。」
「うん。あたしも。」

「じゃあ、ぼく達はこれで。」と隆と早苗が言った。
「あ、ありがとう。つぎも来てくれる。」と真治。
「もちろん。こういうの好きですから。」二人はにこにこして帰った。

「ああ、楽しかったね。」とルミが言った。
「うん。あたしたち、何にもしなかったけどね。」と洋子。
「この次は、隆と早苗に楽してもらおう。」ルミ。
「うん。そうだね。」と洋子。

いい夜の空気だった。
踏み切りの向こうに、三日月が傾いていた。


<おわり>(次回は、未定です。)

スーパー洋子8⑤「四天王との戦い終結」

長く書いて来ました。武道大会まで書くと延々と続きますので、
一応、次回で「第1部 完結編」にしたいと思います。
最後まで、読んでくださるとうれしいです。

==============================

残り2人のうち、一人が来た。
男は、木刀を持っていた。
「俺は、剣道だからな。なんならお前も1本持て。」木刀男が言った。
「あたしは無手だからね。武器なんてチャライだけよ。」
「じゃあ、無手であることを言い訳にするなよ。」
「いいわよ。」洋子は言った。
男は、木刀を、立てて、左に高く構えた。
『ははん。薩摩の「チェストー」だね。
 薩摩・示現流一刀の構え。
 一撃必殺。どんな剣でも槍でも、初太刀で武器ごと相手を切り裂く。
 四天王なら、相当なんだろうね。
 よし向こうが正統派でくるなら、こちらも、正統派で行こう。
 合気道奥義の1つ「長刀取り」でいくわ。』
洋子は、そうして、チェストーを待った。

やがて男は、すごい気迫で迫って来た。
「チェストー。」の声と共に、斜め左から、斜め右に木刀を降ろして来る。
洋子は、その剣筋に体を添えて、木刀をいなし、
男が振り終わったときに、男の手首をひねるようにもち、
木刀を奪いながら、「えいっ。」と男を3mほど投げた。

「あの見切り、信じられん。」と男は言った。
「明治3年、示現流は、合気道の『長刀取り』に負けているのよ。」
洋子は言った。
洋子のスカーフの止め布が、パラリと外れていた。
「初太刀を交わされたら、終わりでしょう?」
「ああ。」
男は、参ったを宣言した。



「お前まで出るとはなあ。恐れ入ったぜ。」番長が言った。
「4人全滅にはさせませんよ。」
そう言って出てきたのは、小柄なサルのような男だった。
坊主だが、後ろの髪だけ長く三つ編にして、弁髪のようにしている。
サルというのは、身のこなしであって、顔は可愛く幼い顔をしている。
「コイツはできる。」洋子は本能的に感じた。
そして、思わずパワーと敏捷性を、50%に上げた。

構えた。サルは、斜めに構えている。
サルは、いつも薄っすら笑っていた。
そして、びゅーんと洋子の顔面に蹴りを入れると、
洋子の肩を踏み台に、もとの位置に戻った。
洋子はやっとの思いで、後ろに下がりかわした。
洋子の目で見ても、普通の速さに見えた。
これは、よっぽど速い。人間離れしている。
「50じゃ、足りないか。60%にしよう。」
洋子はそうした。これで、やっとやつの動きがかわせる。
敵ながら、恐ろしいヤツ。洋子は思った。
番長は、こいつに勝ったのかあ…。

ヤツが、滑り込みに来る。普通なら目に見えない速さだ。
滑り込んで、足をはさみ、ひねり倒す気だ。
そこから、両足をとって、エビ固めか。
だが、洋子には、見える。
洋子は、サルの足が来る寸前その場を蹴り、低めに前に飛んで、
サルのアゴをカウンターで蹴り向こうへ着地した。

『後ろに下がれば、俺のスライディングが伸びるのみ
 横に飛んだら、足バサミの思うツボ。上に跳んだら着地で挟む。
 だが、前があったか…。しかも前に飛びながら俺のアゴを蹴っていくとは。
 その判断を一瞬にしたのか…。』
サルの経験で一度もないことだった。大きなダメージも食らった。
そして、不思議でならず首をかしげていた。
だが、それは一瞬。

サルは、その場で後ろ向きにジャンプした。
空中から洋子の背をとり、
体のバネで、洋子の頭を後ろ地面に、叩きつけるつもりだった。
洋子にはそれが見えていて、そのまま後ろに頭からジャンプした。
サルより高いジャンプだ。
そのため、サルは、洋子の背をつかめず、そのまま背から落ちた。
洋子は、仰向けのサルの腹に空中から落下の頭突きをかました。
サルは、2度目のダメージを食らって身を丸めた。
どの技もはずされたのは、初めてだったのだ。
「アイツは、なぜ俺の技がわかる?」
サルの顔から、うっすらした笑いが消えた。
洋子は、サルの目の動きから、サルの技を読んでいた。
目は、次の技の方向へと微妙に動くのだ。

サルは、びんっと床をけり、ムササビのように道着広げ、洋子の頭上に飛んだ。
それで、洋子の首を包み、首をひねり折る。
相手を殺しかねない。だが、コイツなら死なないと思った。
洋子は頭上のサルを見て、自分から真上に敏速に飛び、ムササビの腹に強烈な頭突きをかまし、
落ち様、ムササビの頭をとって、地面に豪快にたたきつけた。
さすがのサルも、落下の勢いに加え、背中を床にもろに叩きつけられ、苦痛の顔を見せた。
サルの笑顔は完全に消えていた。そして、初めて息を乱した。

大番長が、これほどのサルの苦戦を見るのは、自分とやったとき以来だった。
喧嘩十段、人間業を越えるスピードで、これまでどんな相手にも、
一糸も触れさせず倒してきたサルだ。
そのサルが、まだ一撃も相手にダメージを与えられぬまま、4度のダメージを食らって入る。
驚嘆に値するのは、洋子であった。

洋子に対し、どんな技も通じない。
それがサルを焦らせ、恐怖させていた。
サルは、最後の業に出た。

サルは、洋子に寄って来ると、自らコマのように回った。
すごい回転だった。洋子の行く方へと寄ってくる。
パンチがいつどこから出てくるか、普通では分からない。だが、洋子には見えていた。
来るパンチを腕で受けて、サルの回転の勢いで、サルの右腕の骨をメキッと折った。
また飛んでくる左腕も折った。もう手は使えない。
その瞬間足も飛んできた。
洋子には、手にとるようにわかり、その足を引き出し、コマの回転を崩し、
左足の骨を、サルの右足の骨をてこの支点にして折った。
サルの回転はとまった。

残るは片足と口のみ。するならこれしかない。
サルの目がチラリと宙を見た。
飛ぶ…洋子は察した。
サルは、片足だけで、すごいジャンプを見せた。
これが、牙男の試合を見ていなかったサルの命取りになった。
サルは、大きく牙をむいて、洋子の首に噛み付こうと顔から落ちできた。

「馬鹿め、同じ技が通用するか!」と番長は舌打ちした。
洋子は、そばの石を拾い、サルの口の中に思い切り放り込んだ。
同時に、洋子も背面から飛び上がり、
サルの背を腕ごと抱き、いっしょに落ちて行った。
防御不可能。
『このまま脳天から行けば、サルは死ぬ。』
洋子はそう思い、サルの弁髪を引き、サルの顔を床に向けた。
サルは洋子によって落下の衝撃を2倍にされながら、顔から落ちて行った。
サルの顔面が潰れたが、首がクッションになり死を逃れた。
洋子は、ひょいと身を起こす。
サルは、そこで終わった。
『カムイ必殺・飯綱落とし』と洋子は言った。



「やれやれ、四天王と言われたこいつらが、
 4人そろって、たったの一撃も与えられんとはなあ。
 お前には恐れ入ったぜ。」
番長は洋子に言った。
番長の前に3人は並んだ。
「俺は、約束は、守る。小島冴子は抜けてお咎めなし。大塚も同じだ。
 せいぜい勉強にでも励むがいいぜ。
 それから、倉田。お前、おもしろいこと言ったな。
 県下の武道大会があるってな。それは、ほんとうか。」

「はい。7月です。各学校2名ずつ。
 戦争やるより、いいでしょ。それに勝った人が、県でいちばん強いってこと。
 いちばん強い人のいる学校が、いちばん強い。」洋子は言った。
「おもしれえ、俺だって無駄に兵隊の血、流させたくはねえ。
 学校で2人なら、俺と、四天王を倒した、お前だ。
 途中で、他のヤツに負けんじゃねえぞ。」と番長。

「人間業越えたサルをやっつけたんですよ。
 番長とできるのを楽しみに、がんばります。」
「おお。」番長は、にやりと笑った。
「そうだ、偵察が、2人おったぞ。明日の朝は、
 四天王敗れたりのニュースで持ちきりだな。」
番長は、ハハハと笑った。



隆と早苗は、学校へ走っていた。
「わーい、洋子が四天王に勝った。やったー、おーい、洋子が勝ったぞ!」
「すげー、とにかく、すげー、おーい、聞こえるかー。」
二人を囲んで、見る間に大きな輪ができた。

鉄工所を出た三人。
ルミが、「ああ、ああああ、もう、ひやひやして死にそうだった。」
冴子「洋子ったら、ほんとに勝つんだもの。すごかったあ。夢見たい。
 番長言ったよね。抜けてもお咎めなしって。ねえ、ルミも聞いたよね。」
ルミ「聞いたよ、しっかり聞いたよ。もう、悪いことしなくてもいいんだよ。」
冴子「ああ、うれしい。夢なんてもんじゃない。命助けてもらった。
 洋子、ありがとう。何百回ありがとういっても、足りない。」
そう言って、冴子は、洋子に抱き付いて、泣き出した。

ルミは、冴子の肩に手をかけた。
洋子「なんの、なんの。それより、冴子とグループの人と、ルミは同じ境遇だから、
 仲良しになってくれたら、うれしい。」
冴子「ルミみたいな真っ直ぐな子が、汚れたあたし達と仲良くなってくれたら、それは夢だよ。」
ルミ「そんなことない。仲良しになろう。」
冴子「他のヤツらもさ。ほんとは、いい奴らなんだ。いやいや悪いことしてただけでさ。」
ルミ「うん。わかってる。みんなで仲良くしよう。」

大きな夕日が沈みかけていた。
倉庫やみんなの顔を赤く照らしていた。

*    *    *


倉庫のなかでは、大番長の前に、四天王が座り並ばされ、
説教を受けていた。
「お前らがどうやって、洋子から命を助けてもらったか言っておこう。
「まず、牙、お前は洋子から、背中向きに壁に放られていたら、即死だ。
 顔から投げてもらったから、両手の受身ができ、かろうじて生きている。
 洋子は、それを百も承知だ。

「次に、空手。最後に洋子にコメ髪を指で打たれただろう。
 両目突きに行ったお前には、容赦などはない。
 容赦のないのがお前の強さでもある。
 だか、洋子には、容赦があった。あのコメ髪突きを普通に受けていたら、
 お前は、一生盲人だ。
 どう思う。容赦をした倉田が甘いか、それとも、容赦をしてもらって、今目が見える。
 それが、ありがたいと思うか。」
「それは、…容赦をしてもらって、今、ありがたいと思っています。」空手は涙を見せた。

「示現流には、言うまでもないな。『参った』のない喧嘩の世界なら、
 洋子に一振りされて、終わりだ。洋子はそこで止めた。
「サル、自分の技が決まらなかったときに、いちいち態度にだすんじゃねえ。
 初めから、にやけてやるなら、最後の最後まで、にやけていろ。
 敵から、どれだけのダメージを受けたか敵に教えるようなもんだ。

 牙男の試合を、洋子をバカにして、余所見をしただろう。
 それを見ておれば、サルは、最後の業など使わなかったはずだ。
 牙と同じ技を出して、同じ技をくらったのよ。
 最後の落下で、サルは脳天から落ちて死んでいた。
 それを洋子は、サルの弁髪を引いて顔から落ちるようにしてくれたのよ。
 顔なら、首のクッションが効くからな。

 どうだ、お前ら、強い敵に対して、ここまでの考えてをして戦えるか。
 洋子は、お前らより、1枚も2枚も上手だ。
 言わば、お前らは『完敗』というとこだ。

 今、お前らに、洋子への憎しみはないだろう。
 むしろ全力で戦えた喜びがあると思う。
 だが、もし、サルが死んでいてみろ。洋子への恨みだけが残ったはずだ。
 いいか。喧嘩をしても、10割勝ってはならん。
 1割の容赦を残しておけ。そうすれば、人はついて来るのよ。」

4人は、心より感じ入り、はあーと頭を下げた。


つづく(次回は、「それぞれの青春」⑥ 第1部・完結編 です。)

スーパー洋子8④「番長の四天王と戦う」

ああ、ランキングが下がる一方。これ、女装出てこないものな。
やっぱ、「冒険活劇」まずかったかな。でも、ここまで書きました。
書き終えるのみ。一人でも多くの方が読んでくださるとうれしいです。

===============================

四月の終わりころ、冴子へ、大番長から呼び出しが来た。
その日、冴子が洋子とルミに会いに教室まで来た。
冴子はウエーブのショートカットを止め、
髪も黒に染めて、
ストレートに髪を下ろしていた。
そういう冴子の方が、ずっとステキに見えた。

気を付けをして、礼をしようとする教室の1年生に、
冴子は、いいのいいのと言った。
洋子とルミは廊下にやって来た。
「今日、呼び出しがきちゃった。あんた達と会えるのは、最後かもしんないから、
 顔見に来たよ。ルミも安全そうだね。」冴子は言った。
「ええ、おかげさまで。」とルミ。
「じゃあね。」と冴子が言おうとした。

「待って、もちろんあたし、いっしょに行くよ。
 それで、冴子のこと頼みに行く。冴子を守るって言ったでしょう。」洋子は言った。
「そんな、あれはあのときの冗談じゃん。」
「違うわよ。本気も本気。絶対行くからね。」洋子は言った。
「あたしも行く。洋子とはいつもいっしょだよ。」とルミ。

「イガグリ倒した話聞いた。でも、大番長のそばの奴ら、
 桁が違うよ。でも…。」と冴子は考えた。
「洋子、不思議な子だからね。じゃあ、いっしょに来て。」と冴子は言った。
「うん。行く行く。」と洋子。
冴子は、洋子に不思議な力を感じていた。
何か、不可能を可能にしてくれる力。
「ありがとう。二人に何かあったら、あたし命にかけて守るから。」冴子は言った。
「守るのは、あたしだって。」洋子は、余裕の笑みを浮かべた。

大杉隆と的場早苗は、その話を聞いた。
「絶対見に行くよね。」と隆。
「もちろん。あたし達、ルミと洋子の守り神だもん。」と早苗は言った。



大番長のいるところは、ある鉄工所の廃屋になったところだった。
暗く、奥まで光が差さない。
小さな窓がいくつかあり、それが、大番長を逆行に照らしていた。
そこの、鉄の大扉をあけると、大番長と四天王と呼ばれる4人がいた。
この4人で広域の3年生を牛耳っている。

大番長は、背が180cmほどあり、体中筋肉の塊のような男だった。
うわさによると、胸の骨が1枚板になっていると言う。
髪は、モヒカンで、学らんの硬派の格好に不釣合いだった。
この大番長を見たのだから、リーゼントの大塚はびびるはずだと思った。

洋子はセーラー服。その洋子から口を切った。
「あのさあ、ここにいる冴子だけど、もうワルやめたいって。
 もう真面目にいきたいんだって。許してくんない。」と洋子は堂々といった。
冴子は立っていたが、膝の震えは隠せない。
ルミは、洋子の服にしがみついていた。

大番長は、もの珍しいものをみるように洋子を見た。
「ほう。俺を見て、少しもびびらねえとはな。大した女だ。
 イガグリをやつけただけのことは、あるな。」

「あたしはね。大番長とは、今日はやりたくないんだ。
 今度、県の武道大会があるからね。そこでやりたい。
 だから、ナンバー2とやりたい。
 ナンバー2にもし勝ったら、冴子と大塚が抜けるの許して欲しい。」洋子は言った。

「ここに、いる4人は、全員ナンバー2だ。
 どれ一人とっても、他の学校で番張れるやつらだ。
 つまりよ。4人全部やったら、冴子と大塚を許してやるよ。」大番長は言った。

「二言はないわよね。仕置きなしだからね。」洋子。

「ああ、完全に許してやる。一切手出しはしねえ。
 まあ、一人にでも勝ったら、誉めてやるがな。」と大番長。
大番長の座る鉄の箱の周りに、それぞれに座っている
後の4人もゲラゲラと笑った。

洋子は、『こいつらは、強い。』と直感し、体のパワーを上げた。
あのイガグリとやったときのパワーを2倍にした。
つまり、イガグリのときは、20%、それを40%にした。

「ああ、大変だ。隆、みんな呼んどいでよ。」と早苗が、鉄の大扉のところで言った。
「だめだよ。ここは、わあわあやっちゃだめなんだ。命がけの勝負だよ。」隆が言った。
「わかった。そうだね。」早苗が言った。

「はじめは、誰よ。」洋子は言った。

「俺だ。」
出てきたのは、口が耳まで裂けた男だ。
全の歯を尖った銀の差し歯にしたのか、全ての歯を鮫の歯のようにしている。
言わば牙男。そして、頭が大きく、爬虫類的な筋肉の付き方をしている。

「コイツに噛まれたら、おしまい。」と冴子がそばでいった。
「二人とも下がって。」洋子は言った。
二人は下がって、鉄骨の陰にしゃがんだ。

牙男と洋子は見合った。
後の3人は、興味もなさそうに、余所見をしていた。
大番長だけが見ていた。

やがて、牙男が猛烈な速さで進み、ある場所で宙高くジャンプした。
そして、洋子の首を目がけ、大口を空けて頭から襲ってきた。
それはあたかも、恐竜が襲っている光景に似ている。
洋子は、気合を入れ、足元に転がっていた、児玉スイカくらいの石を、
ものすごい勢いで、牙男の口の中に蹴り上げた。
石は、見事に牙男の口の中に入り、男は、地面に顔から落下した。
洋子は、牙男の足が地に着かぬ間に、牙男の両足を持ち、ブルルンと目に見えぬ速さで3度振り回すと、
ハンマー投げのように遠方のコンクリートの壁に投げつけた。
男は、顔面からもろに壁にぶつかり、
全ての歯を失った。
そして、そのまま、壁にずるずるとすべって落ち気絶した。

「わあああ。」とルミは手をたたいた。
そして、小声で言った。
「洋子、本当に強いね。」
冴子は、ちょっとうなずき、静かにしていた。あと3人ある。

わずか、1秒足らずの決着だった。

余所見をしていた、番長以外の3人は、「おっ。」と顔を上げた。
「まさか。ほんの余所見のすきに、やられたのか。」3人は、同じことを思った。
信じ難いことであった。
相手の手のうちを見なかった…。
それを、わずかに後悔した。

「次は俺だ。やってくれるじゃねーか。
 おもしろくなってきやがったぜ。」
と次の男は、黒い道着を着て、空手のポーズをとった。
男は、思っていた。
『一撃必殺。相手の両目に指を2本突いて終わりだ。
 女だろうがかまいはしねえ。
 情け容赦のないのが、俺の強さだ。
 打ち合いなど、たるいだけよ。』

構えるが速いか、空手男は、右手2本指を出し、
ものすごい速さで、洋子の両目をねらってきた。
さらに、左手も次なる目突きとして、やってきていた。
右手はかわされる。だが、第2段目の左手こそ本命だった。
だか、洋子にとって、それは、スローモーションにしか見えない。
洋子は、手刀にして、男の右手の2本指の間をすごいスピードで手首まで切り入れ、
次に来る左手も同様に切り裂いた。

男は左手もやられ、信じられないような顔をした。
しかし、さすが四天王、一瞬もひるまず、右足で蹴り来た。
洋子は、それも手刀で、足首まで裂き、
次に左足が来たときに、左足をも足首まで、裂いた。
さすがの空手男も、仰向けになって落ち、その落ち様に、
洋子は、とどめの一発、男の両のこめかみに人差し指を、打ち込んだ。
男の背が地面に落ちたとき、洋子のすべての攻撃が終わっていた。
コメ髪の指突きで、男は3時間くらい目が見えない。

これも、1秒足らずで終わった。

ルミはあまりのすごさに、声も出なかった。
それは、冴子も同じだった。

鉄扉の隆と早苗は、息が止まるほどの緊張の中にいた。

四天王、残りの二人は今度こそ見た。
四天王を、2人とも、
たった1秒で終わらせる相手の手の内を1つでも見なかったとは何たる不覚。
二人は、始めの牙男の試合を見なかったことを心から後悔した。
これほどの強い女がいるのか…。
牙男は、どうやってやられたのか…?


つづく(次は、『四天王残り2人』です。)

スーパー洋子8③「洋子初めて強さを披露」

えー、女装も出ず、ここから「冒険活劇」になってきます。読んでくださるとうれしいです。

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1年C組に教室は、すでに1時間目が始まっていた。
担任の佐伯一郎先生のホームルームだった。
2人は、そーと後ろから入って行った。
「えーと、立花真吾くんと倉田洋子さんですね。」
2人は、それぞれに返事をした。
小学校から、真吾を知っている生徒は、「ええ?」という顔をした。
真吾が、セーラー服でいたからだ。

「はい、わかりました。
 君らは、後ろの席ですね。ちょうど並んでいるね。」
と佐伯は言った。
二人は座った。
顔を見合わせにこっと笑った。
例の隆と早苗が同じクラスであることがわかった。
その2人にも、ウインクを交わした。

担任の佐伯一郎は、いかにも利発そうで頭が大きく、体は華奢だったが、
とても紳士的で、洋子は、先生の歯切れのいい言い方と、紳士的な態度が気に入った。

1時間目は、いろいろなガイダンスで終わった。
先生がいなくなると、真吾と同じ小学校だった生徒が寄ってきた。
「立原。俺心配だったんだ。お前の坊主頭なんか、可哀想で、俺、耐えられなかったし。」
「あたしなんか、ルミが自殺するんじゃないかって、心配でたまらなかった。」
「でも、そのセーラー服どうやったの。」
「となりの倉田洋子さんが、事情を知って、二人の制服を取り替えてくれたの。」
と早苗は得意げに言った。

「じゃあ、倉田洋子さんは、女の子?」
「そう。あたしの助け神。」とルミ。
「よかったなあ。でも、今度は、倉田さんがこまらない。坊主じゃないもん。」
「えへん。」と洋子は言って、「ちょっとマジックを使いましたから、一週間くらい、
 2年生は大人しいと思います。」洋子はそういった。
「洋子さんは、不思議な人なの。」とルミは言った。

(洋子は、思った。ルミは小学校のとき、人気があった。やさしいし、可愛い。)



その日、ルミと洋子は、担任の先生に、入れ違っているいきさつの全てを話した。
担任の佐伯一郎は、倫理社会の先生で、若いが、頭脳明晰で、とても話の分かる先生だった。
「そうだったの。まず、立花さんは、女子の制服で通えますよ。
 規則に制服着用とあるけれど、男子は男子のとは書いてない。
 現に2年生のあるグループは男子だがセーラー服を着ているという前例がある。
 立花さんは、制服が揃い次第、着てきていいよ。
 医者から、GIDの診断がでれば、女子トイレも使えます。早く行った方がいいですよ。
 診断が出るまでは、暫定的に、GIDの疑いとして、体育、トイレ、更衣室など女子の扱いとしておき   ますね。」
ルミは、喜んだ。

洋子は、そのとき、膨大な計画を佐伯に話した。
「先生、今、他校との3年生の不良グループの間で抗争が相次いでいますよね。
 毎日、保健室に血だらけの3年生が大勢運び込まれています。
 そこで、あたしが思うのですが、各学校から、一番強い代表が
 一同学校に集まり、異種武道大会を開いたらいいと思うんです。
 武器は持ちません。素手です。
 そして、血みどろの戦いの代わりに、この武道大会で決着とさせるんです。
 各校、代表は2名でもかまいません。
 実は、2名の方がいいんです。」
「なぜ?」と佐伯。
「この学校の番長に、あたし勝ちたいものですから。」
と洋子はにっこりと言った。

学校間の不良達の抗争は、この年に限り、異常発生のように起こり、県下に広がっていた。
どの学校の校長としても頭の痛いものだった。

そこへ、キレ物である佐伯の説得で、どんどん話が進んで行った。
佐伯は、言わば、事務長という役割で、とうとう「県武道大会」として実現する運びとなった。
抗争よりスポーツとして白日の元でやらせた方がいいに決まっていた。

あるとき、廊下を歩いていた洋子とルミに、佐伯は言った。
「洋子の提案した、武道大会が成立するよ。夏休みの7月だ。」
「わあ、先生のおかげです。やっぱり先生は、頼もしいです。」と洋子は飛び上がった。
「因みに、私が、事務長だ。」
わあーいと二人は拍手した。



2年生の男子リーダー大塚と、女子のリーダー冴子が、
なりを潜めたので、1年生はのびのびと過ごしていた。

ルミは、女子の制服を得て、洋子と二人セーラー服だった。

この1年ののびのびした様子を、大塚とは別の5人が見周りに来た。
リーダーっぽいのは、丸坊主で、頭は少しつぶれている。
そして、手に樫の長棒を持っていた。2m以上はある。
大塚と違って、見るからに硬派だった。
学生服を腕まくりし、4人の似たような丸坊主を連れている。
リーダーの栗田は、ぎょろっと辺りを見回し、
「なんだ、なんだ、この浮かれた奴らわよ。
 大塚は何しとんじゃい。」と言った。
「リーダー、大塚は骨抜きですぜ。一度恐い目してから、
 ワルができなくなったそうで。」と子分。
「それじゃ、佐伯と同じか。いったいどいつの仕業じゃい。」
そのとき、洋子は、クラスの男子と、長ぼうきを持ってチャンバラをしていた。
そして、男子に押されて、廊下側に出てきた。
そこを、もろに栗田とぶつかった。
「おい。」と栗田は、洋子の首根っこをつかみ、猫のように、持ち上げた。
そして、どすんと、廊下の床に落とした。
「洋子、大丈夫?」と立花ルミが出てきた。
「うん、平気。」

そのとき、子分の一人がささやいた。
「リーダー、まずいっす。あのルミって女、大番長の女っす。」
「あいつには、手を出さねえ。だが、このメス猫にはいいだろう。」栗田は言った。
「それは、確かに。」と子分は言った。

「何よ。大塚をせっかくやっつけたら、こんなイガグリもいたの。」洋子は言った。
「なにぃー。こんなチビが、大塚をやっつけたあ?
 ほんとなのか。このチビが、大塚を骨抜きにしたのか。あの佐伯もそうか。」イガグリは言った。
「はい。このチビです。」と子分は言った。
「お前、強いのか。」
「あんたよりかね。」と洋子は言った。
「よし、ちょっとひねってやるか。」
イガグリがそう言ったとき、1年生は大騒ぎとなった。

「おーい、倉田がやるぞ。アイツの強えーとこ、見たことあるか。」
「ねーよ。」
「その倉田が、初めてやるぞ。」
「え、ほんとか。ほんとに強いのかよ。」
「おお、恐そうな先輩と向き合ってる。ぜんぜんびびってねーよ。」
女子達も大勢来た。
「だめー、洋子、強いって言ってるけど、無理よ。」
「ああん、止めさせなくちゃ。」
ルミも思った。大塚も冴子も、洋子がやっつけたわけではない。
洋子が喧嘩をやったら負けるに決まってる。
「洋子、やめて。ここはあたしが盾になる。お願い。」
ルミはそうやってとめた。
「大丈夫、ルミ。1度くらい強いとこ見せておかないとね。
 ルミの守り神できないから。」洋子は言った。

そうこうするうち、全クラスの1年生で教室の中はあふれる生徒。
廊下は、少し離れたところに押すな押すなの観客。

洋子とイガグリは、見合っていた。
「ちょっとアンタ、女相手に武器持つわけ。」と洋子は言った。
「お前も持て。」イガグリが言った。
「あたしは、無手だから。武器はじゃま。」
「抜かしたな。俺を怒らせるなよ。」
「2年坊の三下でしょ。大塚より弱いんじゃん。いつでもお出でよ。」
イガグリが怒りで、耳から蒸気を吹いた。
イガグリが息を吸った。
「キエーイ。」とイガグリの棒は、洋子の喉を一直線に突いた。
すごい一撃だった。
しかし、洋子は、棒が来る前に、その場で空中に飛び、
やってきた棒の上に片足でのり、そのまま1と歩を進め、
2の足で、思い切りイガグリのアゴを蹴り上げた。
サッカーで言う弾丸シュートの勢いだ。


アゴをハンマーにでも打上げられたような衝撃で、声も出ず、
イガグリは、3mほど後方にとんだ。
子分の4人も、呆気にとらわれていた。
4人が、リーダーのそばにいくと、イガグリは完全に白目をむいている。
子分達は、あわててイガグリを引きずって行った。
「おーい、忘れ物よ。」
と洋子は、棒を、びゅーんと回転をつけて投げた。
その棒は、イガグリの股間に見事命中した。

1年生は、すごい歓声を上げて喜んだ。
大杉隆と的場早苗も大興奮して拍手を送っていた。

立原ルミがそばに来た。
「洋子…。洋子はほんとに強いんだ。
 今まで、マジックだと思っていたけど、ほんとなんだ。
 あたしや、冴子先輩を守ってくれるって、本気なんだ。
 もう、ステキー!」とルミは洋子に抱きついた。
「うふん。」と洋子は言って、前髪をふーと飛ばした。


つづく(次回は、「番長の四天王との勝負」です。)

スーパー洋子8②「女番長を助けろ」

ルミを止めていた、大杉隆と的場早苗はその様子を見ていた。
「あの倉田って人、只の人じゃないね。」と隆。
「ほんとにルミの救済者かも。」と早苗。

洋子とルミが階段を上がると、またいた。
今度はスケ番ブループか、と洋子はうんざりした。
洋子は、ふーと前髪を飛ばした。

リーダーは、ショートカットの冴子。ウエーブのある髪を、金髪に染めていて、
長いスカートを履いている。かなりの美人だ。
残り4名は、マスクをかけている。
洋子は、髪を見るだけで、性別がわかる。
女子の髪は細くさらさらしていて、艶がある。
こいつらには、それがない。
この5人は、全員男だ。

リーダーは、洋子ではなく、
真吾の方に目をつけた。
「女の子はさ、確か、頬までのおかっぱだよね。」とリーダー。
「はい、そうです。」と子分達。
「だけどさ、この子、肩まで髪があるよねえ。」
「はい、ありますね。」
「じゃあ、規則違反だから、切ってあげよう。」
「はい。」と子分の一人が鋏を渡した。
ルミは、恐怖に引きつった顔をした。
「ルミ、5本くらい切らそう。」洋子は小声で言った。
リダーの鋏が、ルミの目の下くらいに入った。
「この辺でそろえて、ワカメちゃんにしてあげよう。」
そして、パラリと、10本ほどの髪が床に落ちた。

「ばかやろう!やめろー!」
とさっきの男リーダーの大塚が、すごい勢いで飛び込んできて、
女リーダーをなぎ倒した。
「髪を切ったのか!」と小倉。
「ああ、何が悪いのよ。」と女リーダー冴子。
「あああ。」と大塚は頭を抱えてうずくまった。
「何よなんなのよ。」と冴子は言う。
「アイツは、ルミといって、大番長の女だ。」大塚は言った。
「え?」と言ったきり、女リーダー冴子は、頭のてっぺんから青ざめ、体中固まった。鋏を手からとろうとした。
しかし、体が硬直していて取れない。
スケ番全員は、ルミの前に、土下座をした。
「すいません、すいません、とんでもないことをしました。ごめんなさい。ごめんなさい。」

冴子も子分も知っていた。
大番長というのが、どれだけ恐ろしい人物か。
大番長は、めったに学校へ来ない。
普段は、密偵を学校中に放って、何が起こっているか見ている。
女リーダーが、ルミの髪を切ったことは、もう密偵が飛んで知らせに行っているだろう。
男リーダーが、全員に徹底するといいながら、それができなかったことも、知らせが行っている。

1年生の教室がある2階の廊下にほぼ全員が見に出ていた。
みんなが見る中、女リーダーは、血迷い、一人言をはじめた。
「ああ、もう、おしまいだ。おしまいだ。
 指一本触れちゃいけないのに、あたしは、女の命の髪を切った。
 もう、いい訳は効かない。
 あたしは何をされるかわからない。恐い。恐いよー。ああ、ああああああ。」
と廊下を這い周り、やがて、頭を抱えてうずくまり、そのうち、横に倒れ、激しい呼吸を始めた。

「過呼吸だ。」洋子は分かった。
「この人、保健室に連れて行くよ。」
洋子は、ルミにカバンを持ってもらって、
女リーダーを軽々と腕に抱えて、階段を一段抜かしで下りて行った。
ルミがそれに付いて行った。

保健の先生がまだなのか、ドアは開いていたが、先生がいなかった。
女リーダーを、ベッドに寝かせて、真吾に紙袋を探してくれるようにいった。
洋子は、女リーダーの口に、紙袋をあてて、呼吸をさせた。

このとき大杉隆と的場早苗が見に来た。
「かばん持って行って、先生に一言言っておくから。」と早苗が言った。
「ありがとう。」とルミは言った。

「こういう風にやるのね。」とルミが言った。
「うん。酸素を取り過ぎる症状だからね。」洋子は言った。

「ルミ。」
「なに?」
「この人、多分、男の人だよ。あとのグループの子も、みんな同じ。」洋子は言った。
「どうして、わかるの。完璧に美人の女の人に見える。」真吾。
「髪の質が、男性。美容士さんなら、すぐわかると思う。」
「ふーん、じゃあ、あたしと仲間だ。」
「だから、なるべく助けてあげよう。」
「うん。そうね。」

しばらくして、女リーダーは、目を明けた。
二人を見て、はっと起きようとしたが、二人で止めた。

1時間目は始まっている時刻だった。

「あ、あたしの体見た?」
と女リーダーの冴子は言った。
「見ないよ。でも、ぼくにはわかるよ。」洋子が言った。
「あたし、女じゃないの。グループの子もみんなそう。」
そういう冴子は、かなり落ち着いて来ていた。

「どうして、そんなこと話すの。」ルミが言った。
「わかんない。死んでからばれるなんて、不様だからね。」
「やられないよ。ぼく、リーダーを守ってあげから。」洋子は言った。

冴子はにやっと笑った。
「冗談でも、そう言ってくれるとうれしいよ。」
「もう、悪いことやめたら。」ルミは言った。
「うん、さっきのことで、悪いことしたくてもできなくなった。トラウマってわかる?
 多分、悪いことしようとすると、さっきの恐怖思い出す。だから、できない。」
「どうして不良になったの。」とルミは聞いた。

「小学校のとき、女になりたくてさ、女らしくしてたら、
 女達から、オカマ、オカマって嫌がらせされた。
 それが、悔しくて、仕返しがしたかった。
 だから、1年の女子にオシャレ許さなかった。」
「わかるわ、その気持ち。」とルミが言った。
「純女なんかにわかってたまるか。」冴子は言った。
「あたし、男よ。」ルミは言った。

「うそ、あんた大番長の女じゃない。大番長、カマの趣味ないよ。」
「あれウソ。男のリーダーにそう思わせただけ。」洋子。
冴子は、がばと起き上がった。
「ほんと!じゃあ、あたしにお仕置ないの?」
「うん、ないよ。安心して。」洋子。
「ほんとお。ほんとなの。」と冴子は洋子にすがって、みるみる涙を流した。

「だから、無くした命だと思って、やめたら。」と洋子。
「そうしたい。でも、只じゃ抜けられない。指1本とか2本とか。」と冴子。
「だから、守って上げるって言ってるじゃない。」洋子。
「どうやって?」
「ぼくが、大番長に勝てばいいんでしょう。」
「どうやって。この近隣の番長を全部やつけた人だよ。」
「でも、ぼくより、弱い。」洋子は言った。

冴子は笑った。
「うん。わかった。あんたが番長やっつけてくれたら、グループを解散する。
 それまでは、悪いことしない。いや、今のあたしにはできない。
 それに、こんないじめた1年生に助けられてる。」
「じゃあ、約束だよ。」と洋子は、指を出した。
冴子も指を出し、三人で約束をした。

「ごめんね。髪切っちゃって。」冴子が、ルミに言った。
「全然平気。気にしないで。」
「あたしも、あんたみたいな真っ直ぐな女の子になりたい。」
「リーダーは、恐くなければ、最高にステキですよ。」とルミは言った。
「恐くなければか、あはは、そう努めるね。」冴子は笑った。


つづく(次回は、「洋子は本当に強いのか?」です。)

スーパー洋子8①「県下1の不良中学へ入学」

えーと、すいません。ときどき書きたくなる「スーパー洋子」です。
これは、ノンフィクションとして、純を主人公に1度書いたものですが、洋子向けにリメイクしました。
ストーリーは、かなり違うと思います。女装が少しだけ出てきます。読んでくださるとうれしいです。

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スーパー洋子8①「県下1の不良中学へ入学」


洋次が朝のトイレから出てくると、変身している。
「そうだ、昨日入学式、今日は初授業だ。」と気がついた。
鏡を見ると、おかっぱ頭の可愛い中学生になっている。
中学のセーラー服を着て、食卓に座った。
ふーと息で前髪を飛ばした。

「洋子、泉中、気をつけてよ。」
と姉の弘子がいう。
「そうね。今一番悪い学校になってるって。」と母の美佐江。
「うん、県下1番の不良学校だってね。」洋子は言った。
「恐くないの?洋子は。」と弘子。
「うん、悪いことしなけりゃいいんでしょ。ごちそうさま。」
洋子は、そう言って、カバンを持って出て行った。

学校へ近づくに連れ、新一年生を見かける。
男子は、みんな坊主頭だ。
女子は、きっちりアゴまでのおかっぱ頭。
髪飾りなど一切なし。
靴の先から頭まで、目立つところは一切なし。
これは、よほど先輩達が恐いのだろう。

小学校のとき、美少女のマドンナたちは、
みんな越境して、評判のいい中学へ行ってしまった。
あるいは、私立。
勉強のできる男子も同じか私立。

『ここに入学してきているのは、他の中学に行けなかった生徒達かあ。』
洋子は思った。

洋子が、学校まで100mくらいに来たとき。
3人がもめていた。
近づくと、もめごとではない。
ある生徒が学校へ行くのを、男女2人の生徒が止めている。
止められているのは、男子だが、女の子のように肩まで髪があり、
首から上は女の子だ。
とても可愛い顔をしている。
だが、下は学生服。
「ダメだよ、立花。そんな髪で行くのは自殺行為だよ。」隆は言った。
「そうよ。今日は一端帰りなよ。家でよく考え得て、髪を切ってからお出でよ。」早苗が言った。
そう言われている立花という生徒は、
「いやよ。坊主になるなら死んだ方がましよ。あたしは、これで通す。
 殺されたっていい。」と言う。
「無茶いうなよ。死んでいいわけねえだろう。」と隆。

「ちょっと。話は大体分かった。」と洋子は中に入った。
「こいつは、小学校ではずっと女の子できたんだ。
 言葉だって、何から何まで女の子なんだ。
 だから、泉中入るなんて、無茶だったんだよ。」
隆が言った。
「あたしは、倉田洋子っていうの。いい考えがある。
 今ここで、あたしと立花さんで、服を取り替える。
 えっと、立花何さん。」
「立花真吾です。」と本人が言った。
「みんなは、ルミって呼んでる。」と隆。
「あたしが、男子服で、立花さんが、セーラー服で、あたし倉田洋子になるの。
 どう?」洋子は言った。
「あなただって、髪長いし、こんどは、あなたがやられるわ。」と早苗が言った。
「平気。あたし強いから、誰にも負けない。
 あたし、立花ルミさんを守るためやって来た気がする。」
二人は、不思議と洋子に、ある頼もしさを感じた。
話は決まった。
学校のそばの、公衆トイレの中で、二人は着替えた。
真吾は、中に女の子の下着を着け、ブラまでしていた。

立花真吾は、ドンぴしゃり、セーラーのサイズが合い、可愛い女の子になった。
洋子は、何とか男の子。
「いい、あなたはだれ?」と洋子。
「倉田洋子です。」と真吾。
「あたしは、立花真吾。よし。真吾さんは、いつでもあたしといっしょにいて。」
「うん。ありがとう。」と真吾は言った。

止めていた2人は、今度は、真吾になった洋子の方へ心配が移った。



『それにしても、ルミは、ほんとに女の子だなあ。』と洋子は見ていた。
歩き方から、髪をなでる仕草、何から何まで。

いよいよ校門に来た。
「ルミ、入るわよ。」
「はい。」と真吾は言った。
靴箱で靴を取り替えると、早速2年生らしき、6人の男子グループがいた。
1年生は、坊主なのに、自分達は、長髪で、リーゼントに決めている。
その中で、一番背の高いリーダーっぽいのが、洋子を見つけ、
まるで、おもしろいものに近づくように寄ってきた。
あとの、数人もニヤニヤしている。

「おい、お前。お前はバカか、それとも命知らずか。」とリーダーの小倉が言ってきた。
「どっちでも、ないよ。」洋子は言った。
「他のヤツラが、全員坊主頭にしてるのによう、
 その髪は、いってえ、なんなんだ。」
とリーダーは、そう言うと、洋子の髪を鷲づかみにして、
振り回した。
真吾は、真っ青になって、「ちがうの、ちがうの・・。」と言いそうになった。
「洋子、だまってて!」洋子は、ルミを止めた。

このとき、洋子は、その場にいた6人全員に、
洋子が、彼らの大番長であるという幻覚を見せた。

リーダーは、つかんだ髪が、ずっしり重くなったことを感じた。
「おい、大塚と言ったか。もう、ええ加減にせいよ。
 俺の髪は、真ん中しかねえからよ。抜いてくれるなよ。」
低い奈落の底から出てくるように声。

リーダーの大塚は、その声の主を見て、
内臓から硬直してしまった。
「お前、何のために、俺の髪ひっぱんよ。」洋子は顔を上げた。
大塚以下6人は、「ヒー!」と顔を引きつらせ、
亀のように廊下に這いつくばった。
「すいません、すいません。確か生意気な1年生を・・。」
大塚は、ここで失禁してしまった。

「仕置きの沙汰があるまで、せいぜい震えておれ。
 それまで、新入生に手出しはならん。
 それからな、ここにいるのは、俺が気に入っている女、ルミだ。
 2年、3年にお前らから、徹底しておけ。
 ルミの顔をよく見ておけ。忘れんじゃねえぞ。
 コイツに指一本触れてみろ。只の仕置きじゃすまねえからな。」
「はい、はい、わかりました。」とリーダーとそれ以下。
「わかったら、自分のションベンの始末早くしておけ。」

洋子とルミは、グループを後にして、教室に向かった。
ルミは、狐につままれたような顔をしていた。
「ね、真吾、どうして、あいつら、あんなに言うこと聞いちゃったの。
 ビックリしちゃった。私を一気に安全にしてくれた。」
洋子は、うふんと笑って、
「あたし、ルミを守りに来たんだよ。天よりの使者なの。」
洋子はそう言って、階段を上がった。


つづく(次は、「2年のボス達を成敗」です。)
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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