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双子の兄弟・カイとケイ⑤「心の変化」最終回

2回に分けようと思いましたが、一気に最終回まで、投稿します。
長いですが、読んでくださるとうれしです。

===============================

学校へ行く日の朝。
二人は緊張していた。
「ねえ。ブラ着けていく?」と海。
「女の子宣言するんだから、着けていこうよ。」
「中にも詰めて。」
「うん、詰めていこう。」
「ショーツ履いていく?」
「当然。」と圭。

学校へ行く電車の中で、二人はジロジロ見られた。
まるで、女の子が男子の制服を着ているようであった。
「学校で、嫌がらせされないかな。」海。
「当然、からかわれるよ。」圭。
「いやじゃない?」海。
「耐えよう。自分達の好きなことするためには。」圭。
「そうだね。」と海。

ところが、学校でのみんなの反応は、まるで逆だった。

高校の教室で、海と圭は、後ろに二人並んでいる。
海と圭は、女の子の髪に、白いYシャツ、紺のスーツとネクタイという男子の制服で来た。
二人がくつ箱に来たとき、周りの男子が反応した。
「お、うそー。女の子かと思ったよ。海と圭か。」と誰か。
「おはよ。あたし達、今日からオンナだから。」
圭が言った。

二人が教室に入るまで、みんながぞろぞろついてきた。
教室に入って席に着くと、もっと大勢の男女が集まってきた。
「わあ、可愛い、女の子みたい。」と、ある女子。
「ね、そうやって座ってると、まるで、女の子。
 ね、ネクタイの代わりに、あたしのリボンつけてみて。」
とA子は、自分のリボンをとって、海に渡した。

「うれしい。」と海は言って、ネクタイをとり、リボンをつけた。
「や~ん、完璧女の子。可愛い。」とその子。
「あたし達、今日から女の子でいくの。みなさん、よろしくね。」と圭が言った。
「トイレはどうすんの。」とある男子。
「それは、男子トイレ。」と海。
「やん、それ可哀想。女の子なのに。」と女子。
「ヘアスタイル、すてき。今流行ってるヤツじゃん。」と女子。
「いいなあ。圭も海も、チョー似合ってるよ。」と女子。

そんなことで、みんなは、わあわあと言った。
海も圭も、女言葉を連発した。
海と圭のクラスは、意地悪な男女がいないことが、救いだった。

海と圭のそのヘアスタイルと、女言葉に、クラスのみんなは、
朝の時間だけで慣れてしまった。

二人は、嫌がらせをされることを覚悟していたのに、
結果は逆。
男子がちやほやしてくれる。
圭と海が男子トイレにやってくると、
3人ぐらいが、男子の立ちションが見えないように、手を広げて隠し、
「海と圭、俺らが隠してるから、早く個室入れ。」とやってくれたり、
体育の更衣室では、4、5人が、海と圭の着替えを隠してくれる。
二人は、一応ブラとショーツを着けているので、それはとても助かった。

「みんな、ありがとう。」と二人がいうと、
「な、なんでもねえよ。」と男子は恐縮しているほど。
体育の先生は、二人を見て、ちょっと首をかしげ、
「胸は、本物か?」と聞いた。
「いえ、偽物です。」と二人は答えた。
「じゃあ、ボールが当たっても、平気だな。」と先生は言った。
何も咎められなかったのが、不思議なほどだった。

1日を終えての帰り道。
「なんか、びっくりしたね。あたし、からかわれるの100%覚悟してた。」と圭。
「あたしも、嫌がらせされると思った。」と海。
「みんながあんなに気を使ってくれるなんて。」
「思いもしなかったよね。」
「先生達も何にも言わなかった。」
「不思議だね。きっとGIDの生徒が、昔いたんだよ。」
「あ、お姉ちゃんだ。同じ高校だもの。」
「そうかあ。きっと、お姉ちゃんのときは、学校中大変だったろうね。」
「うん、そう思う。お姉ちゃんは、一人で闘った。」
「うん、お姉ちゃんのおかげだよ。」
その二人の幸せは、その後も続いた。

次の日、女子数人が、二人をカラオケに誘ってくれた。
「女の子だけなの。いこ。」と言われ、
「いくいく。」と答えた。
女の子として、認められた。

二人で家に帰って、女の子服に着替えた。
海は、大好きはデニムのミニショート。
タンクトップ。長目のカーデガン。
圭は、茶のレーザーのミニスカに、Tシャツ、長目のベスト。
サンダルを履いて、バッグを持って出かけた。

二人がカラオケルームに来ると、大歓迎された。
「キャー、可愛い。」
「女の子の服だと、完璧女の子。」
「わあ、脚が白くて長い。むちむちで完全に女の子の脚じゃない。」
「この長さだと、前からデルタ見えるから、バッグを上に置いておくのよ。」
「うん、ありがとう。」と海。
みんなで、キャーキャー、ワーワーやっているうち、
海も圭も、不思議な感覚に捉えられていた。
女の子達を異性とは思えない。同性と思えた。
そして、自分は、彼女達の一員なのだと。

女の子たちと遊ぶ日が毎日がつづいた。
圭も海も完全に女の子たちと同化していた。
仕草も、動作も、すっかり女の子になっていった。

圭も海も、始めクラスの、倉崎和香という可愛い女の子が好きだった。
彼女は、いつも遊びグループにいた。
それが、次第に、倉崎和香は、異性ではなく同性だと思えてきた。
可愛いとは思っても、恋愛感情がなくなってしまった。
多分、倉崎和香の裸を見ても、今は何も思わないだろうと思えた。
海も圭も思った。自分の心は、女の子になってしまった。

部屋のジュータンに寝そべって二人は天井を見ながら話した。
「あたし達、心も女の子になっちゃった気がする。」圭。
「うん。そんな気がする。」海。
「コンビニでさ。エロ本見ても、何も感じない。」圭。
「あたしも。女の子の裸見ても、何とも思わない。」海。
「あたし、今なら、女子更衣室入っても、エッチな気持ちにならない。」圭。
「そう、逆に男子の更衣室で着替えると恥ずかしい。」海。

「女の子が、同性だと感じる。」圭。
「うん。逆に男子が異性だと感じてる。」海。
「男子に好きな子いる?」圭。
「いる。岩崎省吾。」海。
「好きなんだ。」圭。
「そばにいくとドキドキする。」海。
「あたしは、柿沼聡史。」圭。
「彼、いいよね。圭に気があるかもだよ。」海。
「だったらうれしい。この前重いもの代わりに持ってくれた。」圭。
「うれしかった?」海。
「うん、どきどきした。」圭。

「どうしよう。あたし達、心は女でも、体は男だよ。」海。
「つらいね。お姉ちゃん、苦しんだだろうな。」圭。
「うん。あたし達ホルモンやってないから、元に戻れるよ。」海。
「無理。女の子の楽しさ知っちゃった。今、女の子といっしょの方がくつろげる。
 男子といると、緊張する。」圭。
「あたしも同じ。女の子の方が同性だから何でも言える。
 男子は、異性として意識しちゃう。」海。
「きっと生まれたときから、こうなる運命だったんだよ。」圭。
「女装から始まったとき、きっとこうなる運命だったんだね。」海。
「彼のこと考えると辛いな。体が男って。」圭。
「あたしも辛い。女の子として生まれてきたかった。」
しばらく、それぞれで泣いた。

そのうち、海がガバと起きた。
「圭、だめだよ、ネガティブになっちゃ。
 お姉ちゃんは、女子医大で、精神科のお医者さんになる。
 あたしは、外科医になる。タイに勉強に行くんだ。」と言った。
「じゃあ、あたしは、婦人科と内分泌科医になる。」圭も起き上がって言った。
「そうよ。みんなで、ジェンダー・クリニックをやるの。
 せっかくいい高校に入れたんだから、夢じゃないよ。」海が言った。

「あたしたち、男の心も、女の心もわかる。だから、いい医者になれるよ。」圭が言った。
「好きな男の子のことは、後で考える。女の子たちとは、たくさん遊んで、
 勉強は、勉強でしっかりやろう。」海。
「うん。わかった。クラスの男の子はみんな、あたし達のこと知っているし、
 気が楽じゃない。」圭。
「そうね。セッ・クスの心配は、まだ後でいいよ。」海。
「うん、わかった。なんだか、力が湧いて来た。」と圭が言った。



夏休みに、二人は、姉とも両親とも相談し、
ジェンダー・クリニックへ行った。
そこで、いろいろ外科的検査や心理検査をした。
その結果、9割が女脳。そして、性同一性障害という結果が出た。
問診の中で、
・女子を同性と思うか。それに二人ともイエス。
・恋愛の対象は、男子か。それにも二人ともイエス。
この2つが大きく診断の元になった。

学校では、この診断書をもって、女子として学校生活を送れることになった。
つまり、女子トイレの使用、女子更衣室の使用。
体育の授業は女子として、名簿も女子とする。
もちろん、女子の制服の着用が認められる。

二人は、容姿としては十分に女子であったが、
ホルモン治療を始めることになった。



2学期が始まって、二人は、女子の制服で学校に来た。
朝来たみんなは、よかったよかったと言ってくれた。
担任から、二人はGIDの診断が出たため、
女子として、みんなが認めるようとの話があった。
その話がなくても、クラスのみんなは、海と圭をすでに女子として見ていた。

先生の話が終わったとき、みんなが寄ってきて、
祝福してくれた。

*   *   *

海と圭は、3年生になった。
身長は、二人とも162cmで止まった。
歩き方や、表情、何なら何まで、女性になった。
ホルモンで、胸はBカップを越えた。
夏休み、二人は、外国へ行って性別適合手術を受ける予定だ。
もう決心は変わることがなかった。

青葉がとても綺麗な、4月の中ごろ。
ある昼休み、二人は、校庭の隅の大きな木にもたれ、
校庭でみんなが遊ぶようすをみていた。
そこへ、新入生徒思える男の子がやって来た。
髪を伸ばしていて、可愛い顔をしている。
その子は、海と圭にお辞儀をして、
「海さんと圭さんですね。」と言う。

「そうよ。」と二人は言った。
「ぼく、お二人がいるから、勉強必死でして、この学校へ来たんです。」
「ふーん、どうして。」
「ぼく、女の子になりたいんです。
 だったら、この学校に行けって先生に言われました。」
「え、あたし達のことそんなに広まってるの?」圭が言った。
「先生は、GIDに理解のある学校だと言っていました。
 お二人のことは、何も言ってませんでした。
 でも、入学して、その訳がわかりました。」
「それで。」と海。
「ぼく、家にフライバシーのあるところなくて、何にも女装ができないんです。
 だから、ぼくを女の子にしていただきたくて、お願いにきました。」
海と圭は顔を見合わせた。

「いいわよ。たっぷり女の子にしてあげる。」海が言った。
「わあ、やったー。うれしいです。あ、僕は、1年D組みの宇野明といいます。」
「じゃあ、今日いっしょに帰ろう。校門に3時半。」
「はい。きます。うれしいです。あ、先輩お二人とも美人ですね。」
そう言い残して、その子は、走って行った。

「可愛い子だったね。」と圭が言った。
「あたし達の、1年の頃思い出すね。」と海。
「じゃあ、ここは、二人で腕まくりしようか。」圭。
「あの子が、手術までいっちゃったら、どうする。」と海。
「それは、あたし達と同じ。あの子が決めること。」圭は言った。

二人の手術は、7月。
経験者の姉が付いてきてくれるので、とても心強い。

二人は、葉桜からもれる木漏れ日を、
眩しげに見ていた。


<おわり>(次回は、スパー洋子を書きます。ときどき書きたくなるんです。)
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双子の兄弟・カイとケイ④「両親へのカムアウト」

やがて、海も同じヘアスタイルにしてもらい、待合のソファーに来た。
カールが、ちょうど肩に触れるくらいの長さで、
後ろも髪がばっちり決まっている。
前髪を斜めに分けると、眉が見える。
真っ直ぐに降ろすと、眉が隠れる。
細くなった眉を見せる方が、すっきり可愛い顔になる。

アーケードを歩きながら、圭は言った。
「ここまで、女の子になっちゃったら、もう男にもどれないね。」
「うん。学校でも、ばればれ。だって女の子としてばっちりだもん。」海。
「今から、もう『ぼく』って呼ぶのきっぱりやめない?」圭。
「学校でも?」海。
「うん。学校でも『あたし』。オ△マって多分言われるけど、
 もう、女で通すの。」圭。
「女言葉使って?」海。
「家でも。」圭。
「家で使うのが一番はずかしい。」海。
「3日でなれるよ。そうしたら、あたし達、24時間、女の子になれる。」圭。
「それ、魅力だなあ。女の子のパジャマで寝たいもの。」海。
「朝、起きたら女の子のパジャマ着てる。いいと思わない?」圭。
「思う。たった1回の人生だもんね。好きなように行きたい。」海。
「そうだよ。悔いのない高校生活にしよう。」圭。


父母がかえって来るのは、6時半。
夕食は、7時半だ。

海と圭は、部屋で、一番フェミニンなワンピースを着て部屋にいた。
7時半が近づいて来るまで、心臓が高鳴ってならない。
始めに何ていおうか。
二人で、いろいろシュミレーションをした。
「ああ、ドキドキして死にそう。」と圭が言った。
「あたしも。もう、たならない。」海が言った。
そのうち、運命の声、「お食事よう。」という母の声がした。

「よし、行こう。」
「うん。」
と二人で行って、階下へ降りて行った。
姉の律子はすでに来ていた。
律子と父の啓太が、始めに見た。
味噌汁をよそっている母明美が、見た。
それで全員。
父は目を丸くしていた。
母は、味噌汁を落としそうになった。
「ああ、なんだ、そのう、圭と海か。」と父が言った。
「うん。あたしたち、圭と海。」
圭が、『ぼく達』ではなく『あたし達』と言った。
父母は固まっているというのが、ぴったりな表現だった。

「馬鹿者!」と雷を落とす父ではない。
母も、椅子についた。
「つまり、何か?仮装大会なんかでなくて、真面目にその格好なのか。」
父が言った。
「女の子の格好をしたいってこと?」母が聞いた。
「うん。あたし達、女の子の格好で一日過ごしたいの。」海が言った。
「小さいときからの夢だったの。女の子でいたい。」圭が言った。

「一生か?それとも、今だけか?」
父が、思ったより核心を突くことを言った。
さすが、医者だと思った。
「それは、わからないけど、小さいときから思ってたから。
 女の子として過ごして、満足して男に戻りたくなるかも知れないし、
 どんどん、女の子になってしまうかもしれない。」
海は、言った。

圭も海も、次の父の言葉に驚愕した。

「そうかあ。律子だけかと思っていたのに。」そう父は言った。

「え?お父さん、今なんて言ったの。」
そう聞いたのは、海も圭もいっしょだった。

「律子。二人に話してもいいよな。」父は言った。
「うん。二人のことがわかったから。」と律子は言った。

「ねえ。なんなの。お姉ちゃんがどうしたの?」
海が聞いた。

「圭、海。律子は、男の子として生まれたんだよ。
 性同一性障害。二人ならよく知っているだろう。GIDだよ。」と父が言った。

「えー!うそー!」
と海と圭は、叫んだ。
「だって、お姉ちゃんの、男の姿なんて見たことない。」圭が言った。
「律子は5歳のときから、ずうっと女の子として暮らしてきたから、
 圭や海には、お姉ちゃんだと思ったと思う。
 小学校の5年生のときからホルモン治療を受けて、女の子と同じように第二次性徴をとげた。
 高校3年の夏休みに、性別適合手術を受けた。今は、律子は正式な名前、
 戸籍の性別も、女性だ。」
父は言った。

「わあー、知らなかったあ。」と圭と海は驚いた。

母が言った。
「律子が、私のお腹にいるときに、多分ホルモンの関係で、
 律子は、体が男子なのに、女脳になったのだと思うの。
 だから、圭と海も、半分くらい女脳になったのね。
 あたし、自分のせいだとは思わないけど、神様がそうされたと思ってる。」

「じゃあ、あたし達が、こんな格好してきても、
 お父さんも、お母さんも、あんまり驚かないんだ。」圭が言った。

「驚いたわよ。でも、『やっぱり。』っていう気持ちもした。」と母は言った。

「結局、あたし達がいちばん驚いちゃったんだね。」
と圭と海が顔を見合わせて言った。

「圭と海の気持ち、あたし小さいときから分かってたけど、
 だまっていて、ごめんね。」
と律子が言った。

「ううん。お姉ちゃん、苦労しただろうなあって、今それ考えてる。」圭が言った。
「きっと、すごく辛くて、死にたくなるとき、いっぱいあっただろうなって。」海が言った。

それを、聞くと、律子は、両手を顔にあて、泣き出した。
「ありがとう。わかってくれて。だれもわかってくれないときもあったから。」
律子は、そう言った。



男3人、女2人のはずだった食卓が、
男1人、女4人の食卓になった。

「あ~ん、それ、あたし、まだ一つしか食べてない。」と海。
「海は、さっきお肉食べたじゃない。これは、あたしの。」と圭。
「じゃあ、あたしのこれ、あげるわよ。」と律子。

父の啓二は思っていた。
『本当は、妻の明美だけが女性だ。今は、女性が4人。
 眺める風景として、この方が華やかかな。』と。


つづく(次回は、「心も女の子に」です。)

双子の兄弟・カイとケイ③「姉へのカムアウト」

第3話くらいで終わる予定でしたが、だらだらと長くなってしまいました。
最後まで、お付き合いくださると、うれしいです。

=============================

その日から1週間がたった。
海と圭の女子言葉は、かなりナチュラルになっていた。
二人でいるときは、ほとんど女の格好でいた。

海と圭の父は、内科医だった。
家から近いところに医院がある。
母はそこの会計とナースをしているので、
夜の6時までは、2人ともほとんど家にいない。
海と圭の姉は、女子大へ行っていて、家にほとんどいなかった。

「圭、これもうやった。」と教科書を持って海がくる。
圭がちょっと海のお尻をさわる。
「や~ん、今、勉強じゃない。」と海。
「ごめん。」そういいながら、圭が海のワンピースのスカートに手を入れる。
「や、やだ。あたし、感じやすいんだからね。」と海。
「あそこ、ちょっと、大きくなった?」
「ならない。圭のバカ!」
「なったくせに。」と圭が追いかける。
海がつかまって、ジュータンに倒される。
圭は上から乗って、
「お姉様。あたしの、好きにさせて。」
「今、勉強中よ。」
圭が口・づけをする。
む~ん、と海が脱力してしまう。
そして、最後まで行ってしまう。

こんなことを交代で、しょっちゅうやっている。

そんなある日、ジュウタンに二人並んで寝て天井を見ていた。
圭が言った。
「あたしたち、どんどん女の子になっていくね。」
「うん。もう男に戻れない気がする。」と海。
「学校での男の時間が苦痛。」と圭。
「お肌の手入れとか、むだ毛の処理とか全然いやじゃない。」海。
「町で女の子見ても、その子のファッション見てる。」圭。
「そう。前は、女の子の顔を見て可愛いなんて思ってたけど、
 今は違う。その子のメイクとか、ヘアスタイルとか見てる。」海。
「あたしたち、心が、どんどん女性化してるね。」圭。
「うん、絶対してると思う。」海。
「学校へ、女子の制服で行きたいね。」圭。
「それ、最高の夢。」海。
「それより、家族にカムアウトしたい。」圭。
「だと楽だよね。」海。
「お姉ちゃんだけならなんとかなるかな。」圭。
「なりそうな気がする。」海。
「じゃあ、お姉ちゃんに、あたし達の姿みせちゃおうか。」圭。
「一か八かやってみよう。」海。

二人はこう相談した。
二人の姉律子は、女子大の1年だった。
可愛い顔立ちの海と圭の姉だけあり、
高1で、157cmの二人に比べ、背が163cmあるすらっとした美人だった。

姉は、いつも水曜日だけ、早く帰ってくるので、その日に決めた。
その日、二人は、ピンクのワンピースを来て、髪の毛を、耳の上から1つ房を作って垂らしていた。
「じゃあ、電話してみるよ。圭、いい?」と海が言った。
「なんか、どきどきする。笑って終わりだと思う?
 怒って終わりだと思う?」圭が聞く。
「笑う方に6割。」と海。
「ぼくもそう思う。やっぱ双子だね。」圭。

海は、部屋にいる姉に電話した。
「お姉ちゃん。今ぼく達、おもしろいことしてるの。見に来てくれない?」
「なあに、電話なんかして。部屋に来ればいいじゃない。」と律子。
「そうも、いかないんだ。お姉ちゃん、来てみて。」海。
「うん。わかった。」
律子は電話を切った。

二人はドキドキして部屋の真ん中に並んで立っていた。
「あと、5秒だね。」海。
「4、3、2、1、0」
ドアが空いた。
律子は部屋に入ってきて、あっと驚いた。
「なによ。なんなの。文化祭でもあるの?」と言った。
「ちがう、ぼく達、女の子の格好したいの。
 これ、真面目にやってるの。」海は言った。
「ふ~ん。」と言って律子は、二人をジロジロ見た。

「知ってたわよ、あたし。」と律子は言った。
「何を?」と海と圭とで言った。
律子は、ベッドの上に腰をかけた。
「2年前かな。海、あたしのスリップ、盗んだでしょう。」と律子が言う。
「うそ!お姉ちゃん、気がついてたの。」海は驚いて言った。
「もちろんよ。自分の下着の数くらい、ちゃんとわかってるわよ。」
「どうして、知らないふりしてくれたの?」
「海が、それ着たかったんだろうなと思ったから。」
「そんなこと、どうして許してくれたの?」
「可愛い弟の願いを叶えてあげようと思っただけよ。」

「ありがとう。おねえちゃん。」
「どういたしまして。
 それにしても、二人そろって同じ趣味を持ってるなんてね。
 やっぱり双子なんだね。」
「お姉ちゃん、ぼく達の味方になってくれる?」圭が言った。
「何のための味方?」と律子。
「お父さんやお母さんに、言うとき。」と圭が言った。
律子は、ちょっと考えて、
「いいわよ。」と軽く言った。

「わあ、やったあ。お姉ちゃん、話せる。」と二人は喜んだ。
「ま、それはいいとして、あんたたち、女の子に生まれるべきだったわね。
 もう、ほとんど女の子じゃない。声だって女声だし。ばれないわよ。
 でも、1つ。髪の毛をどうにかしないと。
 きょう、美容院へ行って、ちゃんと女の子のカットをしてもらいなさい。
 今は、長いだけで、ふぞろいだし、そこでばれるかな?」

「うん。行ってくる。」と海と圭。
「で、行っちゃったら、もうお父さん達に隠せないわよ。
 学校の友達にもね。もう『女で行く宣言』しないとね。」
「うん。海、もう覚悟決めようよ。」と圭が言った。
「うん。覚悟決めた。」と海。

「じゃあ、お小遣いあげようかな。ヘアダイも入れて、一人5千円。
 あたしのいつも行ってるところ知ってるでしょ。
 あそこの横田さんを指名するといいわ。上手だから。」
そう言って、律子は二人に1万円をくれた。
「お姉ちゃん、ありがとう!」
二人は天にも昇る気持ちだった。



早速美容院だ。
二人はドキドキした。
律子の行っている美容院だ。
二人は、タイトミニのデニムのスカートに、
草色のサマーセーターを来て行った。
もちろん、中にはブラをした。

横田さんを指名したので、少し待たされた。
やがて、横田さんが来た。
可愛い女性だ。

始めに圭が行った。
「すごく女の子っぽいヘアスタイルにしてください。」
と圭は言った。
「失礼ですが、男性?」と横田さんが言った。
「はい。だから、女の子に見える髪型にしてください。」
「女性だと思いましたわ。じゃあ、任せてください。」
と横田さんは言った。

まず、髪をこげ茶に染めた。
それから、髪の毛をそろえるくらいのカットをして、
前髪にゆるいパーマネントカール。
髪の下から10センチくらいに、ゆるいパーマネントカール。
「眉を整えますか。」
と言われた。
圭は一瞬迷い、だが、ここまで来たんだと思い、
「はい。」と答えた。
「もう、どこから見ても女の子になりますが、いいですね。」
と横田さんに言われた。
「はい。いいです。」と圭は応えた。

眉を細くされると、圭の顔がいっぺんで、さらなる女顔になった。
最後にパーマネントのローラーを取り、櫛を入れ、
髪の下部のカールを、くしゃくしゃっとすると、
今流行りの女の子の髪型になった。
カールされた前髪は、ふわっと頭頂から7:3に分け、
うっとうしさを無くした。
細くなった眉がのぞいている。

「どうですか?」と横田さんは言った。
「女の子に見えますか?」と圭は聞いた。
「100人が見て、100人が女の子に見ると思います。」
「ポニーテイルにすると、こんな感じです。」
横田さんは、圭の髪を手でポニーテイルにして見せた。
可愛い前髪、短めな耳の前の髪が、頬を隠す。
そして、ポニーの部分がカールされた髪で、柔らかい房を作っている。
圭は、その可愛さに、一瞬ドキッとした。
「うれしいです。これでいいです。」
と圭は感激して言った。


つづく(次回は、「両親へのカムアウト」)

双子の兄弟・カイとケイ②「兄弟で、口・づけしていいの?」

後姿を見合った。
肩は狭く、腕も細い。
細いけど筋張ってなくて、やわやわとしている。
後ろ姿は、女の子だ。

髪も背中にかかるくらいに伸びてきた。

スリップを脱いで、デニムのミニ・スカ・ートを履いた。
まさに、ぴったりだった。
ハイウエストにぴたっとボタンが来て、
ヒップにピンとフィットしている。
その上に、タンクトップを着ると、それだけで十分女の子に見える。

メイクは、口紅だけピンクのものを引いた。
口紅で、さらに女の子度がアップする。

髪の毛は、後ろで2つに束ねた。
お互いに二人で、髪を束ねあった。
こういいうとき2人だと便利だ。

二人で、鏡をのぞいた。
「わあ~、女の子じゃない。すごい。」
「うれしいね、こんなに女の子になれるとは思わなかったね。」
二人でそういった。
二人は鏡を見なくても、常に相手が自分の姿であるので、
いつも自分の姿を確かめられる。
双子に生まれてきてよかった、と二人は思った。

「海、ステキだよ。脚が長い。タイトミニから出てる脚が白くて柔らかそうで色・っぽい。」
と圭が言った。
「圭も同じだよ。」海が言った。

二人は、ジュータンに座りベッドにもたれた。

「あのさあ。圭は、女の子の格好すると、その…興・ふんしちゃう。」と海が聞いた。
「つまり、あそこが、大きくなるってこと?」圭が聞く。
「うん。そう。」と海。
「なるよ。」
「ぼくも。」
「例えばさ、ぼく達口・づけなんかしたら、まずいかな?」海が聞いた。
「兄と妹ならまずいと思うんだ。男と女だから。
 でも、ぼく達、男同士で、お遊びみたいなものじゃない。いいんじゃないかな?」圭は言った。
「ぼく、女の子好きでしょう。だから、女の子になった圭見て、口・づけしたくなる。」と海。
「ぼくも、可愛くなった海に口・づけしたい。」
「してみる?」
「うん。」

二人は、肩をとって、そっと唇を合わせた。
やわらかいち・ぶさが触れて、それがうれしい。
「わあ、海の唇やわらかい。」
「圭もいっしょだよ。」
「もう一度。」
「うん。」

二人は再び、口・びるを重ねた。
興・ふんして、呼吸が荒くなっていた。

「あ…、ぼく、興・ふんして、あれしないと気が狂う。」と海。
「あれって、あれ?ぼくも。」圭。
「ねえ、背中向けて、自分でやっちゃう?」と海。
「それだったら、お互いにやりっこしても、同じじゃないかな?」と圭。
「そうだよね。同じことだよね。」海。
「じゃあ、しよう。」
と圭が言った。

「ね、ちょっとエッ…なことしない。
 海さ、ベッドに浅く座って。」圭が言う。
「こんな風に?」海はベッドに浅く座り、圭を見た。
圭は、女の子座りをして、海の膝小僧の間をみつめた。
「わかった、圭、ぼくのあそこのぞ・いてる。」
「ねえ、『ぼく』は、やめよう。女の子言葉で行こう。」圭が言った。
「わあっ、それ興・ふんしちゃう。
 圭、あたしのデ・ル・タのぞいてる?」と海。
「うん、すごくいろっぽい。だって、海むちむちよ。」と圭。
「あ…ん、見られてるだけで、興・ふんする。」海。
「ちょっと脚・開いて。」圭。
「やあよ。圭のえ・っち。」そう言いながら海は少し膝を開いた。
「あ、丸見え。」と圭。
「すごい、恥ずかしい。」海。
「ね。少しだけ。手、つっこんでいい?」圭。
「少しだけよ。」と海。
圭は、そっと手を忍ばせた。
そして、海の太・モモをなぜた。
「あ、圭、たま・らない。あ・ん、やめて。」海は女の子の声をあげた。
「海、今の声、女の子そのもの。もう一回言って。」圭。
「い・やん、あ…ん、かん・じる、あ…、かんじ・ちゃう。」海。
言いながら、海は自分の女声にうっとりしてしまった。
「圭も女声出るはずよ。何か言って。」海。
「お姉・様。お姉・様のこと、丘・したい。」圭も女声で言った。
「あ…ん、可愛い声。あたし、萌・えちゃう。」と海。
圭の手が奥に入るにしたがい、海は、膝を開いて行った。

圭は、我慢ができなくなり、海を覆い倒して、
ベッドの中央へ運んだ。
「海、ショ・ーツとるわよ。」と圭。
「あ…ん。いやあ。」と海。
圭は、海のショーツをとり、まくれたスカ・ートを元に戻した。
「お姉・様。可愛い。可愛い。」
そういいながら、圭は、海のスカ・ートに手を入れ、
海の熱くなったものを、そっと握った。そして、上下に手を動かす。
「あん、あん、あん、圭、口・づけして。」海が言う。
「うん。」圭が言い、海にきっ・すをした。
夢中になっていて、海の口の中にシタを入れた。
初めての、大人の口・づけだった。
圭は海の首を抱いた。そして、口・づけを続ける。

海が、唇を離し、
「圭、イっ・ちゃう、あたし、イっ・ちゃう。」と叫んだ。
「うん。」圭はそう言うと、そばにあったティッシュを3枚ほど取り、
海のあそこに当てた。
「あ…、あたし、イく、イっ・ちゃう。」
海は、圭の腕の中で、ぶるぶるとけいれんをしながら、果てて行った。



「ああ、最高。やってもらうのって、5倍いい。」
海は、満足げに言った。
「あたし達、しちゃったね。とうとうやっちゃった。」圭が言った。
「今度は、あたしがする番。圭がお姉様になるのよ。」
そう言って、海が圭の上になった。
圭のショ・ーツを取る。
口・づけをしながら、圭のタイトミニに手を入れる。
何度も口・づけをして、圭にたくさんの女の子の声を出させながら、
やがて、圭もフィニッシュの時が来た。
「あ…、海、出ちゃう、あ…、あたし、ダメ、イっ・ちゃう。」
圭も震えながら、声を上げた。
海も圭のものをティッシュで受けた。

「ほんとだ、自分でするのより、5倍いいね。」圭は言った。
「二人ともやっちゃったね。」と海。
「うん。我慢できなかった。」と圭。
「いけないことだったかな。」と海。
「でも、だれにも迷惑かけてないよ。」圭。
「うん。だったら、いい気がする。」海。
「あたしも。」圭が言った。
「でも、人に言えないね。」と海。
「あたしも言えない。その分イケナイことかな。」と圭。
「多分、少しイケナイことかも。」と海。


つづく(次は、「お姉ちゃんへのカムアウト」です。)

双子の兄弟・カイとケイ①「やっぱり双子だね」

海(かい)は、圭(けい)という双子の兄弟の弟だった。
二人は大変よく似ていて、高校一年という今、
親でさえときどき間違えるくらいだった。
学校の成績も同じくらいであり、同じ高校へ進んだ。

海と圭は、10畳の部屋をもらい、2つベッドを置いていた。
その部屋の中で、二人は、お互いにほとんど隠しごとはないくらい仲がよかった。
しかし、海は、1つだけ圭に隠していることがあった。
それは、女装への願望だった。
それは、小学校へ上がる前から、持っていた。
可愛い女の子の着ているものを見ると、それが着たくてたまらなかった。
長い髪を可愛く結っている子をみると、
自分も長い髪をして、同じスタイルにしてみたかった。

海には、プライバシーがなかった。
それは、圭といつもいっしょにいるからだ。
中学2年のとき、
海は、3つ上の姉・律子の洗濯物から、1つスリップを盗んだ。
ほんとは、少し借りるだけのつもりだったが、
律子がなくなっていることに気が付いてないようなので、
そのまま、もらってしまった。

それが、海の唯一の宝物だった。
海は、女性の下着の中で、スリップに一番の女らしさを感じていた。

圭と離れるのは、圭がお風呂に入っているときしかなかった。
海は、その時間を見て、部屋で、ブリーフ型のパンツ1枚になって、
スリップを着る、そして、姿見で自分を見る。
髪は、男子としては長髪だった。
その耳の横の髪を後ろにやり、耳を出すと、女の子に見えるのだ。
女の子に見える顔と、スリップのなまめかしいラインを見て、
海は、恍惚となった。

海は女装がしたいために、長髪にしていたが、
圭も同じく長髪を望んで、二人とも同じ髪型をしていた。
海は、女装には向いた体つきをしていた。
小柄であり、肩幅が狭く、運動はほとんど苦手だったので、
華奢な肩と細い腕をしていた。
その割に、ピップが大きく、太もももぽっちゃりしていて、
シルエットを見ると、女の子のようだった。
そして、目が大きく睫が長く、ソフトな顔立ちで、
女の子に間違えられることが、しょっちゅうであった。
年齢よりずっと若く見られ、中2のときは、小学生に見られた。
そして、これはそのまま圭も同じであった。

女のようであることで、海がいじめられたことはなかった。
それは、いつも圭といっしょだったからだ。
二人は、学校での行動もいっしょだった。



高校に入ってから、1ヶ月がたち、5月のゴールデン・ウイークのときである。
夕方、いつものように、圭が風呂に行ったとき、海は、こっそりスリップ姿になっていた。
髪を女の子のようにして、姿見に見入っていた。
しかし、そのとき、風呂に入っているはずの圭が、部屋にもどってきた。
(あ、鍵を掛けていなかった。)
「なんで?」と海は心臓が止まる思いだった。
「あ、下着忘れたから。」
と圭は言った。
海は絶体絶命だった。
しかし、次の圭の言葉は意外だった。
圭は、中に入ってきて、部屋の鍵を閉めた。
「海、ぼくは、6年間、海に隠してきた。でも、そんな必要なかったんだ。」
「どういうこと?」海は言った。
「ぼくも、女の子の服が着たい。女の子になりたいってずっと思ってきたんだ。」圭は言う。
「ほんと?じゃあ、ぼくたち同じ?もう圭に隠さなくていいの?」
「うん。同じ。ああ、うれしい。ぼくたち、さすが双子だね。」圭が言った。
「わあ、やったあ!」と海は圭に抱きついた。
「海、今女の子だから、ぼく抱きつかれてちょっと興奮した。」
「ああ、そうだね。ごめん。」

海と圭が同じ願望を持っていることを知り、
二人のプライバシーは、時間的にも空間的にも一挙に広がった。



海も圭も学校の部活などは入らず、言わば、帰宅部。
そして、自分達の部屋で、「女の子研究」に没頭した。

まずは、二人で買い物に行った。
一人ではとても恥ずかしくて入れなかった女子の下着売り場も、
二人で行けば恥ずかしくない。
洋服を見ても、二人なら恥ずかしくない。
二人の力とは、こんなに大きいものかと思った。

二人でお揃いを買った。
1つは、憧れだった、デニムのタイトミニのスカート。
タンクトップ。キャミソール。Tシャツ。
ワンピース。サマーセーター。

下着は、白系のショーツ、ブラ、スリップ、
そして、ピンク系で一揃い。
パンスト、ソックス、膝上までの紺のソックス。
最後に、サンダル。

それから、百円ショップにいって、必要な化粧品を買った。

「とりあえず、このくらいだね。」と海が言った。
「憧れのものが、二人だと簡単に買えちゃったね。」と圭が言った。

部屋にどっさり持ってきて、
部屋の鍵を掛けた。

商品の値札をハサミではがすのさえ、もどかしかった。

始めにショーツを履いた。
「こう履くと女の子に見えるんだよ。」と圭が海の履き方を直した。
それは、男のものを股の間に回してしまう方法。
「ほんどだ、圭、こんなことも研究してたの?」と海は感心して言った。

それから、ブラ。隙間にはティッシュを詰めた。
それから、スリップ。
二人で履いて見合った。
「ぼく達、ヒップがあるの不思議だね。」と圭。
「うん、ほんとに女みたいに生まれたんだね。」海が言った。


つづく(次回は、「兄弟でキ・スしてもいいの?」です。)

カウンセラー高杉和也⑦「コアラとミサの統合」最終回


最終回なので、少し長くなってしまいました。読んでくださるとうれしいです。

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コアラは、ミサの返事がうれしくて、
朝一番に、和也に電話した。
電話の向こうで和也が、飛び上がって喜んでいるのがわかった。
「時が来たのかもしれない。」と和也は言った。
そして、学校が終わったら電話するから、家にいて欲しいと言った。

コアラは、学校が終わって飛んで帰って来た。
まもなくして、和也から電話があった。

治療院の弘から、コアラとミサの「統合」の時が来たのかも知れないので、
コアラとご家族全員とで診療院に5時に集まって欲しいとのことだった。
そして、和也がタクシーで迎えにくるとのこと。

コアラは、そのとき青いワンピースを着ていた。
コアラの母淑恵は、よくわからなくて、コアラに聞いた。
周りに弟や妹達もいた。
「祐希、一体何が起きるの?」
「ぼく、ミサと一人になれるかも知れないの。」
「今だって、同じ子じゃない。」
「違うじゃない。ミサがいるとき、ぼくはいないでしょう。
 ぼくが、いるとき、ミサはいないじゃない。
 それが、ぼくとミサがいっしょになれるの。
 ミサとぼくが合わさった新しい一人の子になれるの。」
「ああ、わかった。2つの心が1つになるのね。」
「うん。なれるかもしれないの。」
「ああ、それは、いいことね。母さん、ミサがずっと可哀相だったから。」
母の淑子は、それを聞くと、何かに拝むようにした。

2台のタクシーが来た。
和也は、ミサとの馴染みを考えてか、女装で、ベージュのスーツを着ていた。

コアラの家族と和也は、弘の治療院に直行した。

治療院につくと、弘は、男装で白衣を着ていた。
ルミは、赤いワンピースにカーデガンを羽織っていた。



コアラが、診察のソファーに座った。

弘は、家族に聞いた。
「上手く行けば、祐希さんとミサさんが、統合できます。
 そのことに反対の方はいますか。」
「そうなれたらうれしいです。お願いします。」と母は言った。

「では、祐希さんに催眠をかけます。
 そして、祐希さんとミサさんとっての神様のような人に現れてもらいます。
 そして、統合ができるかどうか、聞いてみます。
 その人が、イエスと言えば、統合ができます。」
弘はそう言った。

そして、胸に差した銀の万年筆を持ち、
光を反射させて、コアラを催眠にかけた。
そして、深い深い催眠にコアラを導いていった。
始めに、ミサを呼び出した。
「ミサさんですね。」弘は言った。
「ミサさんは、祐希さんと統合することを願いますか。」
「はい。」ミサは言った。
「わかりました。では、マリアさんを呼んできてくれますか。」
やがて、コアラの顔が、はっきりと変わった。

知性のオーラを放っている。
人がこれほどまで、神々しくなれるものだろうかと思われるほどだった。
「マリアさんですね。」弘は言った。
「はい、マリアです。」マリアは言った。子供の声だったが、人の心を打つ響きがあった。
「祐希さんとミサさんは、統合できる状態でしょうか。」
「はい、できます。無理ならば、私の方で、また2人にしますから、
 心配はありません。」
「統合をお願いできますか?」
「はい。祐希があばれると思います。ベッドの上に寝かせてください。」
そう言って、マリアは消えた。

催眠状態のままのコアラを、隣の部屋のベッドに移した。

みんな、心の中で祈っていた。
祐希の妹や弟は、何か厳粛なものを感じてか、
母のスカートを握ってじっとしていた。
中3の下の妹恵理は、赤ちゃんを背負った母をしっかり支えていた。

和也とルミが、両側でコアラの手を取っていた。

そのうち突然、コアラが暴れ始めた。
何かを払いのけるように、手をばたばたとさせ、
「やだ、やだ、やだ、やめて、やめて、おねがい…。」
そうくり返しながら、泣きわめいた。

ミサが、抱えていた幼児期の死ぬほど恐い体験が、
今、コアラに流入しているところだった。

母の淑子は、それがなんであるか、すぐにわかった。
コアラが3歳のとき、義父のひどい行いを止めることができなかった。
その自分に、罪の意識をずっと持ってきた。
祐希の恐怖の叫びを聞いて、耐え切れず両手で顔を覆い泣き始めた。

やがて、コアラは静かになった。

和也は、コアラの涙をハンカチで拭いた。

弘は、コアラの催眠を解いた。
コアラは目を明けた。
来ている弟や妹に、にっこり笑った。
そして、起き上がって正座をした。
コアラの表情や雰囲気は、ミサに近いものだった。
コアラは言った。
「先生、和子さん、ルミ、どうもありがとう。
 お母さん。コアラとミサは、一番辛い記憶を、
 二人のものにできたよ。
 だから、お母さん、もう泣かないで。
 二人が一人になるとき、二人で考えたの、
 祐希を女の子風に、『ユキ』にしようって。
 だから、これから、あたしをユキって呼んでください。」

みんなは、統合の成功を知って、わあっと喜んだ。

「じゃあ、これから女の子として生きていくのかな。」
と弘は聞いた。
「はい。コアラも女の子になりたかったし、ミサは女の子だから、
 体は男だけど、女として生きていきます。」
そう、ユキは言った。

母の淑子が、泣きはらして、ユキのそばに来た。
ユキは、ベッドから降りて、淑子を抱きしめた。
「よかった、よかった、ミサ、お母さんを許して、ごめん、ごめんなさい。」
「お母さんが、謝ることなんて、何もないじゃない。
 あたしは、ミサのときのお母さんも、祐希のときのお母さんも、わかる。
 お母さんは、二人にずっとやさしくしてくれた。」ユキが言った。
その言葉をきいて、淑子はさらに泣き始めた。

「ねえ、お姉ちゃんにも見えるし、お兄ちゃんにもちょっと見える。どっちなの?」
と5歳の弟が言う。
「どっちでもいいの。でも、お姉ちゃんと言ってくれたほうが少しうれしい。」
とユキは微笑みながら言った。
「あたしは、お姉ちゃんができてうれしい。」中3の恵理が言った。
「そうだよ。お姉ちゃん、すごく明るくなったよ。今のお姉ちゃんすごくいい。」
と小3の美香が言った。
「お兄ちゃん、女っぽかったからね。それで、いいんじゃない。」
と小1の健吾が言った。
「こら、生意気ないい方して。」
とユキは、健吾をくすぐり笑わせた。
「あ、まだ、お兄ちゃんが残ってる。」
と健吾が言ったので、家族みんなが笑った。
新しく誕生したユキを中心に、家族に明るい花が咲いていた。

ベッドのところは家族水入らずにして、
3人は、診療室に来た。

ルミ「あたし、すごい感動した。もっと簡単なのかと思ったけど、
   なんだか、出産シーンをみるような、厳かなものだった。」
和也「出産と同じよ。新しい一人が誕生するんだもの。」
弘 「統合なんて、めったに見られないからね。
   これで、ここも看板に偽りなしだな。
   多重人格障害、コアラが初めての患者だから。」
和也「でも、弘さん、経験あるんでしょ。」
弘 「病院にいた頃ね。でも、1回あるだけ。」
和也「今日、堂々としてたわよ。」
ルミ「そう、先生かっこよかったわ。」
弘 「私は、いつでもカッコイイでしょう。」
と弘は言い、みんなで笑った。



弘は、さらさらとある書類を書いた。
「これ、ユキが、学校へ女子の制服で通い、女子の扱いを受けられるようにする、
 精神科医としての診断書。
 それから、ユキには、3日間、学校を休ませて。
 新しい自分に適応できるように。
 その間、和子は、ユキのお母さんと学校に言って、ユキが女子として扱われるように説得して。
 そして、職員や生徒にも、ユキのことを説明し、生徒の理解を得て欲しい。
 ユキが、次に学校へ行くときに全てのことが、整っている必要があるから。
 ユキのお母さんは、そういうの不得手だろうから、和子が代行してあげて。」
弘はそう言った。

「相変わらず、お仕事速いし、行き届いてるわね。」
と和也は、言った。

そのとき、ユキの母が、白い封筒を持ってきた。
「あのう、これ、今家にあるお金を全部持ってきました。
 治療費のことなんか全然気が付かなくて、すいませんでした。
 きっと少なすぎると思いますが、受け取ってください。」
母は、そう言った。

弘はそれを断った。
「お母さん、治療費は、いただきません。
 今回のことは、ビジネスではなく、私たちの勉強として、取り組みました。
 私としては、当治療院の実績を作ることができました。
 私たち3人はそれぞれ得るものがありました。
 ですから、受け取れません。
 その封筒のもので、ユキさんの高校の女子の制服を買ってあげてください。」
和也とルミがうんうんとうなずいた。

「本当にいいのでしょうか。ありがとうございます。」
と母は、頭を下げた。



ユキの欠席の3日間に、和也は忙しく回った。
学校へ行き、ユキの女子生徒としての扱いを願い出た。
学校は、以前に性同一性障害の生徒を卒業させた経験があり、
校長は承知した。職員の理解もあった。
校長は、学年の生徒の理解を図るため、全力を尽くすと約束をした。

和也は、ユキのいる学級には、特別に自分が出向いて、説明をした。
生徒たちは、真剣に話を聞き、
中には、ユキのこれまでの苦悩を知り、涙を流す生徒もいた。

女子の制服は、母がユキと二人で行って、買ってきた。
ユキは、それがうれしくて、何度も着て家族に見せた。



いよいよ、学校へ行く日となった。
ユキは、制服を着て、胸をドキドキさせていた。
母の淑恵は赤ちゃんを負ぶっていた。
和也は、男装で付き添いでいった。


始めは、校長室に来るように言われていたので、
そこのソファーで、校長と話していた。

やがて、ユキのクラスの女生徒が、ユキを呼びに来た。
ユキの後ろに、母も和也もついて言った。

2階の廊下は静かだった。
「はい、ユキさん、どうぞ。」
とその子がドアを開け、ユキは教室に足を踏み入れた。
すると、教卓の前辺りの天井にあったクスダマが割れ、
『ユキ、お誕生日おめでとう!』という垂れ幕が下がった。
同時に、クラスのみんなが大きな拍手をした。
担任の藤崎もにこにこと拍手をしていた。

ユキは、感激した。

ユキは、教卓の前に立たされた。
三崎里奈というしっかりした女の子が立って、言葉を述べ始めた。

「ユキさん、お誕生日おめでとう。
 このクス球は、この二日間、みんなで必死に作りました。
 うまく割れて、ほっとしています。
 カウンセラーの方からユキさんのお話を聞き、
 私は泣いてしまいました。
 たくさんの辛いものを背負いながら、
 コアラさんとミサさんがなんとか生活をしてきたこと。
 私達はそんなこと何にも知りませんでした。
 だから、コアラさんとミサさんが一人になれた奇跡のようなことを、
 心からうれしく思いました。

 コアラさんに、男子はたくさん嫌がらせをしました。
 はい、男子立ちなさい。」
里奈がそういうと、男子はみんな立った。
そして、口々に
「コアラ、ごめん。ひどいことをした。」
「ごめん、ほんとうに、ごめん。」
などと何度も言い頭を下げた。

「ユキさん、どうでしょう。
 この人達は、先生からも女子からも、さんざん怒られました。
 このくらいで、許してくれますか。」

ユキは、笑って、うなずいた。

里奈は続けた。
「私は、女子を代表して、誓います。
 ユキさんを、完全な女の子として、
 女子全員で、男子からあなたを守ります。
 そして、ユキさんが、楽しくて平和な毎日が送れるよう、
 クラスのみんなで、あなたを守ります。
 新しい仲間、ユキさんを、心から歓迎します。
 ユキさん、お誕生日おめでとう。」

クラスみんなの大きな拍手があった。

司会の子が、
「ユキさん、一言ありますか。」
と言った。
ユキは、感激して涙があふれていた。

「みなさん、ありがとう。
 今日、学校に来るのが、心配でたまりませんでした。
 でも、勇気を出して来ました。
 来てよかった。ほんとうによかったです。
 うれしくて、うれしくて・・・・。」
そう言って、ユキはハンカチを目に当てて泣いてしまった。
みんなが、大きな拍手を送った。

廊下で見ていた、母の淑恵は、目の涙を拭った。
「よかったですね。」
和也は潤んだ目で、そう言った。
「ありがとうございます。」
と母は言った。

二人は教室を後にした。

教室はその後、ユキの誕生会をしているようだった。

後ろの教室から、たくさんの笑い声や歌が聞こえてくる。

「お誕生日か…。そんな言葉、思い浮かびませんでしたね。」
と和也は言った。
「ほんとに。一度お祝いをしましたが、今日は、ケーキを買ってやります。」
「それは、いいですね。」と和也が言った。

遠ざかる教室から、
今も笑い声がしていた。


<おわり>(次回を、ああ、どうしようかと困っています。)

すいません

「カウンセラー高杉和也」の「最終回」を今日投稿すると、
昨日書いてしまいましたが、急用ができ、投稿ができません。
実は、まだ最終回の途中までしか書いていないんです。

明日には、投稿できると思います。
読んでくださると、うれしいです。

カウンセラー高杉和也⑥「ミサからの一言」

多重人格障害という大きなテーマに取り組んでしまいました。そこで、若干説明が長くなっています。
これまで、読んでくださった方、ありがとうございました。明日が最終回です。読んでくださると、うれしいです。

===============================

弘は、4人で、丸テーブルを囲んで座るようにいった。
「和子は、もうわかっていることなんだけど、
 ルミは勉強のため、コアラは自分のため、ちょっと説明するね。

 コアラは、自分の中にもう一人、ミサという名の女の子の人格がいます。
 こういうの、解離性同一性障害、また多重人格障害とも一般にはいうのね。
 コアラは、コアラとミサの2人だから、今『二重人格障害』なのね。

 これは、こんな仕組みで起こってしまうの。
 3歳くらいのAちゃんが、大人から、死ぬほどのひどいことをされたとする。
 くり返し、くり返し。毎日。
 3歳だから、逃げることもできない。次、また、されるのが死ぬほど恐い。

 そして、その恐さで、Aちゃんの心が壊れちゃいそうになる。
 そのとき、自分の心を守るために、Aちゃんは、Bちゃんっていう人格を作って、
 自分の意識を、Bちゃんに移す。記憶は移さない。
 すると、Bちゃんには、恐いことされた記憶がないから、
 明るく過ごしていられる。

 Aちゃんがまた、ひどいことをされそうになると、
 さっとAちゃんに意識をもどして、Aちゃんとして、そのひどいことに耐える。
 で、それが終わったら、また、Bちゃんに意識をもどす。
 Bちゃんは、何も知らないで元気。Aちゃんには、つらい記憶だけがどんどんたまっていく。
 Aちゃんがどんなに辛い経験をしても、意識はBちゃんにあるから、平気なんだよ。
 こうやって、死ぬほどつらいことをしのぐんだね。

 さて、Bちゃんは、その後、大きくなっても、自分に辛いことがあると、
 また別の人格を作って、そこへ逃げる。これをくり返していると、
 人格がどんどん増えていき、多重人格になってしまうわけ。
 多い人は、200も、300も人格を作ってしまう。

 ふつう、この障害の人は、6~9人くらいの人格をもっているの。
 そして、この障害には、一人神様のような全知全能の人格がいる。
「自己内救済者(ISH)」て呼ばれてる。この人は、完全なる味方です。
 多重人格の人の場合、このISHは、人の形をしているのが普通。
 コアラとミサにとっては、4年生くらいの女の子マリア。

 例えば、8重人格の人を考えてみるね。
 セラピストとISHでがんばって、
 8人格をまとめたり、消去したりして、2人格にするまでは、成功する場合が多い。

 でも、最後の2人格、コアラとミサ、この2人を一人にするのは、
 至難のことなの。
 なぜか。それは、さっきのミサが言っていた通り。
 Aちゃんは、いつも辛い役。Bちゃんは、何も知らずにるんるん。
 Aちゃんから見て、Bちゃんを許せないよね。
 Aちゃんは、Bちゃんを憎んでいる場合が多い。
 だから、むずかしい。

 そこで、2人を1人にしないで、『共存』って形でいくこともある。
 2人が1つになることを、『統合』って言うんだけど、これが叶ったら最高。
 ミサは、死ぬほど辛くて恐かった記憶を持ってる。
 『統合』したら、その記憶がコアラに流れてくる。
 コアラがそれに耐えられるかどうかが、問題。
 それは、マリアに聞いて見ないとわからないのね。」



「ぼくは、そのBちゃんなんですね。そして、ミサがAちゃん。」
そう言って、コアラは、目に涙をためた。
「何にも知らなかった。ぼく、ミサにずっと悪いことしてきた。」
と泣き出した。

「コアラ、もし二人が1人になれたら、コアラの楽しかった思い出が、
 ミサにも全部流れるの。ミサを幸せにできる。」
弘が言った。

和也は、コアラの肩を抱いて言った。
「だから、これから、どうすれば、2人は1人になれるか、
 みんなで、考えようとしてるんじゃない。
 セッ・クスの後で、ミサが出てきたでしょう。
 あれは、すごい進歩なんだから。ね、弘子そうよね。」

「その通り。そして、ミサは、あれだけのことを話してくれた。
 ものすごい進展だよ。」と弘は言った。

コアラは、やっと少し笑った。



ミサは、自分を恨んでいる。
そのミサの気持ちを、少しでも和らげること。
コアラは、今までミサがしていたつまらないこと。
それを全部、自分がしようと思った。
そして、楽しいことを全部ミサに譲ろうと思った。

それから、ミサへ、大学ノートに毎日メッセージを書こうと思った。
返事など、もらえっこない。だけど続けようと思った。
ミサは女の子だから、家では女装をしようと思った。
ミサが出てきたときその方が喜ぶから。

ミサは、性的虐待を受けた。
だから、やさしい愛情のあるセッ・クスを何回も経験する必要があった。
そのために、和子のマンションや、ルミのアパートへ行って、
セッ・クスを重ねることを頼んだ。

2週に1度、催眠治療院へ言った。
毎回、和子が来てくれた。ルミもいた。



コアラは、リサイクル・ショップへ行って、
ほとんど只のような、女の子の服をたくさん買ってきた。
家では、女の子として暮らそうと思った。

朝一番、女の子の服を着て、母の朝食作りを手伝った。
「あら、どうしたの。その格好。ミサかと思った。」と母が言った。
「うそ!母さん、ミサ知ってるの?」コアラは驚いて言った。
「だって、毎朝手伝ってくれるもの。」と母が言う。
「ぼくと、ミサと区別がつくの?」
「つくわよ。近づいてくるだけでわかる。」
「そうなんだ。」コアラはそう思った。

「ミサはお料理が上手?」と聞いた。
「毎日食べてるくせに。」
「お母さんが作ってたんじゃないの。」
「あたしは、お料理下手だもの。ミサの手伝いをしてただけ。」
「今日、ぼくが作るからね。」
コアラがそう言ったときに、意識を失った。

気が付くと、朝食ができていて、自分は、テーブルに座っていた。
『この朝食は、ミサが食べるべき。ミサ、ここで出て来て、朝食を食べて!』
コアラは、目をとじて念じた。
だが、いくら念じてもミサは出てこなかった。



学校へは男子の制服で行く。

20分休み、トイレに行こうとした。
すると、男子トイレにいた数人が、コアラを通せん坊した。
「コアラ、お前は、女子だろう。」という。

コアラには、はじめての、ことだった。
そうか、こんなとき、ミサが出てきて、自分の代わりに嫌がらせを受けたんだ。
コアラは、そう察した。

コアラは、1階に行って、静かな男子トイレに入った。
ふと思いついて、個室の方に入った。
もし、リサが出てきたとき、立ってしていては、恥ずかしいだろうと思った。
そして、思った。
『さっきは、ミサが出てこなかった。』
やった、辛いことを1つ、自分が受けることができた。



昼休み、コアラは、男子の激しい遊びは苦手なので、
教室の窓から、ぼんやり校庭を眺めていた。
そのとき、ふっと意識がなくなり、
気が付くと、20分休みが終わっていた。
『あ、今、ぼくは、ミサだったんだ。』
そう思った。

学校で、ミサになれたのは、あと1回。
音楽の時間に意識が飛んだ。
音楽の時間によくこうなる。
ミサは音楽が好きなんだと思った。

学校からかえって、ワンピースに着替えた。
そして、赤ちゃんを乳母車にのせて、子守りをしていた。
弟、妹達が寄ってきた。
「なんだ、今日は、お姉ちゃんじゃないんだ。」
と弟妹達がいった。
「ぼくじゃ、だめ?」とコアラは言った。
「お姉ちゃんの方が、やさしいよ。」
と妹が言った。
そのとき、コアラの記憶は消えた。

夕食を作ろうとしたが、朝と同じ、
気が付いたら、テーブルに座っていた。
ミサは、出てこなかった。
コアラが食べた。

夕食が終わって、家族みんなで、お笑いのテレビを見た。
『こんな番組を、ミサに見て欲しい。』コアラは、強く思った。
みんなで、ゲラゲラ笑っているとき、コアラの意識は飛んだ。
気が付くと、テレビを見ながら、2時間経っていた。
ミサが見ることができたのかな。
それならば、うれしい。コアラは思った。



その夜、コアラは、ミサへのメッセージを書いた。
『ミサへ。
 今日は、ミサの仕事をしようとがんばってけど、全然、ダメだった。
 ごめんね。学校で、女の子扱いされ、嫌がらせされた。
 今まで、あんなとき、ミサが出てきて、嫌がらせを受けてくれたんだね。
 ありがとう。
 今日テレビを見ているとき、意識が飛んだ。
 ミサが、テレビを見られたのだったら、うれしい。
 じゃあ、今夜はこれで。
 おやすみなさい。 コアラ 』

ミサからの返事は、一度もなかった。
自分を恨んでいるミサにとって、それは、あたり前だとコアラは思った。
しかし、コアラは書き続けた。



それから、3か月余りが過ぎた。
もう9月の中ごろだった。

コアラは、努力を、毎日続けた。
ミサの出てくるときが、少しずつ増えてきた。

朝起きたら、真先にノートを見るのが、コアラの習慣になっていた。
一度も返事があったことがない。
それでも、期待して、見た。

そして、ある朝、コアラは、見た。

『コアラへ ありがとう。 ミサ。』

コアラの目にいっぺんで涙が、あふれた。
ミサが…ミサが…と思い、コアラは、声を上げて泣いた。


つづく(次回は、「コアラとミサの統合」最終回です。)

カウンセラー高杉和也⑤「強力な味方」

次の日の日曜日、和也は、男の服装で、コアラの家を訪ねた。
コアラは、斉藤祐希と言った。
午前10時の約束で、コアラは、最寄の駅で男の子の姿で待っていた。
男性のスーツ姿の和也を見て、コアラは、ビックリした。
そして、和也の声にもびっくりしていた。
「先生、ちゃんと男の人に見える。声もすごい男の人。」とコアラが言った。
「一応ね。仕事してるから。」と和也は言った。

コアラの家は、3DKほどあるマンションだった。
コアラに父はいなかった。
下に、小さい兄弟が、4人もいて、一番下の子は、赤ちゃんだった。

和也は、名刺を出して、初対面の挨拶をした。
母は、赤ちゃんを抱きながら、まだ幼い感じの人で、
話をしても、暖簾に腕押し的で、
なんでも、「はい。」とか「お願いします。」と言った。

「祐希さんは、ときどき女の子のようになりますか。」と和也は聞いた。
「はい。しょっちゅうです。下の赤ちゃんを子守しているときは、女の子になっています。」
「今まで、それが、変だと思いませんでしたか。」和也は、少し憤りを感じて言った。
「はい、変ですよね。いつか、病院で相談しようと思っていました。」と母は言う。
頼りない言葉だと和也は思った。

和也は、祐希が3歳くらいのとき、辛いことがなかったかを聞いた。
すると、母は、初めて、母らしい言動をした。
母は、涙を流しながら、祐希の3歳のときの出来事を話した。
「止められなかったのですか。命がけでなら止められたはずじゃありませんか。」和也は言った。
「はい、でもあの人は恐い人でしたから。すいません。すいません。」
と言いながら、母は、涙を流した。

母は、3人の男と離婚と結婚をくり返し、
祐希と血のつがらない2番目の夫に、祐希は3歳の頃ひどいことをされた。

保護者である祐希の母に、治療の許可を得た。
母は、「お願いします。」と言ったきり、病院の名も、治療費なども聞かなかった。
まるで、子供が大人になったような人だと思った。

和也は外に出て、妹たちと遊んでいるコアラを呼んだ。

「今日、私のマンションに一度帰って、
 女の子の姿になって、二人で、ある先生の所へ行こう。
 それと、コアラの自由帳も持ってきて。女の子の字がある。」和也は言った。
「はい。」和也はそう言った。



和也の女装友達に精神科の医師がいる。
その医師・加納弘は、精神科の医師だが、催眠治療だけをしている変わり者だ。
その治療院に、栗林ルミというお手伝いがいるが、
ルミは、大学生1年生、女装の子で、土日だけアルバイトに来ている。
とても可愛い子で、中学生くらいに見える。
性格のいい子なので、コアラときっと仲良くなれると思った。

日曜の午後は、加納弘の治療院は、休みのときだが、
加納もルミもコアラのために、開いてくれると言った。

治療院に入ると、時間外のためか、
院長の加納弘は、女装でいた。
端正な顔立ちの美女だ。
見るからに聡明な感じがする。
背は、和也よりも6cmくらい高い。
肩くらいのウエーブのヘアーに、前を7:3に分けていた。
白のタイトスカートに草緑のサマーセータを着ている。
和也は、白のブラウスにピンクのスーツを着ていた。
お手伝いのルミは、薄いピンクのナース服。
コアラは、昨日の白いワンピースをもう一度着ていた。

「まあ、弘子も女装なの?」
と和也はいった。
「だって、診療時間外だもの、自由でしょ。」と弘は言う。
ルミは、コアラを見て喜んだ。
「わあ、可愛い。中学生にみえる。あたしはルミ。あなたは?」
「コアラっていうの。」とコアラは言った。
「わあ、可愛い名前。」とルミははしゃいだ。

「二人は、衣裳部屋で、着せ替えごっこでもやっていなさい。」と弘は言った。
「わあ、いこいこ。」とルミはコアラを誘った。



診療室のソファで、弘と和也は、話した。
「解離性同一性障害なの?」
「そう思うの。」
「ふぁ、また厄介な子連れてきたわね。」
「治療費の保証はないの。お父さんがいなくて、お母さんは、子供みたいな人で・・。」
と和也は言った。
「いいわよ。ルミにも見せたいし、和子も初体験でしょ。」
「お願い。あたし一人じゃ、手に余ると踏んだの。」
弘は、コアラの自由帳や、和也がメモしたミサとの会話、ミサの行動など詳しく聞いた。
「診断を下していいかもね。」
と弘は言った。
「セッ・クスの後で、ミサは出てきたのね。」
「ええ、そう。」
「じゃあ、今日は、ルミとセッ・クスさせちゃおう。」

「みてみて。」とルミがコアラと二人で出てきた。
二人とも、お揃いの黒いメイド服をきている。
完全に肩見せで、腕の肘まである手袋。
膝上のミニ。白い半透明のソックス。
コアラも、うれしくて、はしゃいでいた。

弘がルミの耳に話した。
「わあ。あたしがんばる。」とルミは言った。
ルミは、コアラを連れて、ベッドルームへ言った。



「だまって待ってるのもなんだし、あたし達もラブしようか。」
治療室のソファーで、弘は言った。
「あたしを可愛がってくださるの?」と和也。
「いいよお。」そう言って、弘は和也に口づけをした。
そして、手を、和也のスカートの中に入れようとした。
「いや~ん、弘子、直接なんだもの。あたし、ちゃんとブラウスで来てるのよ。」
「だって、タイトスカートみると、手を入れたくなるの。」
「おあずけ。」
「わかったわ。」
弘は、そう言って、和也のブラウスのボタンをはずした。
そして、手を背中に回して、ブラのホックをはずした。
和也のCカップのものを、ゆっくり撫でて、揉む。
和也から声がもれはじめる。
Cカップのものの先をいじられ、和也は、もっと声を上げた。
息が荒くなっている。
弘は、和也の上半身を何度も撫で回した。
和也は、声を殺しながらも、出てくる声はどうにもならない。

弘は、和也のスカートに両手を入れ、ショーツを脱がせた。
「あ~ん。」と和也は声を上げた。
弘は、和也のめくれたスカートを元にもどした。
弘は胸のポケットに入れておいた、ゴムを出し、
スカートに手を入れ、
和也の熱くなったのものにかぶせた。
「あ…ん。」と和也は言った。
「ああ、タイトスカートに手を入れるのは、萌えるわあ。」
と弘は言いながら、和也のものを刺激していく。
和也は、ああ…といいながら、陶酔の域にはいって行く。
「口づけをして。」と和也は言う。
弘の口付けの中で、和也は小刻みに震えていく。
和也は、唇を離し、声をあげた。
「ああ、もうだめ、あたし、いく、いく、抱いて、抱いて、あ………。」
弘に強く抱かれた腕の中で、
和也は、体を激しく前後した。
そして、ああ、と小さく叫び、果てて行った。

和也は、弘の肩に頭をもたげた。
「ああ、うれしかった。」と和也は言い、「ショーツをちょうだい。」と言った。
そして、トイレに行った。

和也が帰ってきたとき、ルミが着て、
「弘子さん、コアラの人格が変わった。」といいに来た。
「そう。じゃあ、和子は、メモボード用意して。
 ルミは、ミサをここに連れて来て。」と弘は言った。

ミサは、ルミに連れられて、診療室のソファーに座った。
「大勢いるので、びっくりしたでしょう。
 ここはね、診療室なの。ミサがね、もっと外に出れるように、
 みんなで、考えようとしてるの。
 これから、聞く事に答えてくれる。いやなことは、答えなくていいよ。」弘は言った。
「わかりました。」とミサは言った。

「ミサは、心の中にいるとき、どんな場所にいる?」
「暗くて、つい立で仕切られていて、その中の一つに座っています。」
「もう、他にだれもいないの?」
「前は、いたけど、今は、あたし一人です。」
「ときどき、あなたに命令したり、あなたを止めたり、偉い人がいるでしょう。」
「はい。マリアのことですね。」
「どんな人?」
「まだ、4年生くらいの子供です。でも、いちばん賢くて、
 なんでもできる人。あたし達、マリアのことなら、なんでもいうこと聞きます。」

「ありがとう。では、質問です。
 ミサは、祐希のことどう思ってる?」
「祐希は、ずるいと思ってます。いいとこばっかり取るの。
 夕飯を作るのは、あたし。でも、食べるのは祐希なの。
 乳母車で赤ちゃんの世話をするのは、あたし。
 それが終わって、遊びに行くのは祐希。
 祐希は女の子みたいだから、学校でからかわれてる。
 でも、嫌な事言われて、我慢するのはあたし。
 あたしは、全部いやなことやらされる。
 祐希は、そんなこと何も知らないで、明るく元気。」

ミサは、涙を頬に流していた。
「ミサにそうしろというのは、マリアなの?」
「マリアは、もっと大きなときに出てくるだけ。
 あたしが、一度死んでしまいたいと思ったときに、
 それを止めたのはマリア。マリアは私の大好きな人になって、私を説得した。
 マリアは、私に幻覚を与えることができるの。」
「じゃあ、ふだん、ミサのつらいこと、祐希がするにはどうしたらいいの?」
「わからないけど、祐希が、強く思ってくれれば、いいと思う。」
「ミサは、小さいときにとても辛い思いをしているでしょう。
 その記憶は、ミサ一人がもっているんだね。」
「祐希は、知らない。全部記憶をあたしに持たせた。
 あたしが我慢強い子だからだと思う。」
「ありがとう。思い出したくないことも、思い出させて、すまなかったね。」

「はい、コアラ。」と弘は、コアラの背中を叩いた。
コアラが、出てきた。


つづく(次回は、「リサがくれた一言」です。)

カウンセラー高杉和也④「コアラの異変」


「あたし、スリップだけで、抱き合うのが好きなの。」
和也は、そう言って、ワンピースを脱いで、
ブラもとってしまった。
和也のスリップは、黒だった。
「コアラも、ブラはとってしまって。
 ショーツとスリップだけで、着て。」
和也はそういって、毛布をかぶった。
コアラが、スリップとショーツだけになって、
和也の毛布に入ってきた。
「ショーツもとるの。あたしも取るから。」
和也は言った。
「なんだか、すごくスリルがある感じ。」
とコアラは言った。
「あたしのこと、お姉様って呼んで。」
「はい。お姉様。」

二人は口づけを交わした。
そして、きつく抱きあった。
上になり下になり。
下半身のお互いの男の証がふれあった。
「ほんとだ。お姉様は、あたしと同じ仲間。」
「あたしの、乳ぶさに触って。」
「はい。」
コアラは、和也の乳ぶさを揉みはじめた。
「やわらかい。」コアラは言った。
「先のところをね。くりくりっと指でもんで。」
「こう?」
「あ…ん。そう、ああ、たまらない。」
「お姉様。感じるのね。」
「う、うん。」
「お姉様、可愛い。小さい子みたい。」
「あん、たまらない。歯で噛んでみて。」
「こう?」
「そう。あ…。」
和也は、首をふり、声を出し始めた。
「あたし、お姉様を喜ばせてるの?」
「う、うん。あたし、すごく喜んでるの。」
「うれしい。もっと、もっとね。」
「あ………ん。」
コアラは、和也に、口づけをした。
コアラの口の中に、和也の声が入っていく。
コアラが、唇を離したとき、
和也は、大きな声をあげた。
「あ…。お姉様の声にあたし興奮しちゃう。」コアラは言った。

「お姉様をいかせてもいい?」
「うん。もうたまらないの。」
コアラは、和也の声を聞いて、毛布を上げて、和也の熱くなったものを口にふくんだ。
和也が、ううっと声を上げた。
コアラがゆっくりと頭を上下して行く。
何度も何度も。

やがて、和也は達しそうになってきた。
「コアラ、あたし、イく。もうすぐ、イく。」
そう聞いて、コアラは、強く加えて、スピードを上げた。

和也は、到達していく。
「あ…。コアラ、あたし、あ…、イっちゃう…。」
和也は、背を反らせ、ぶるぶるっと痙攣をして、
コアラの口の中に、果てて言った。

コアラは、それを飲み込んだ。

コアラは、和也の隣にもどってきて、
「お姉様、すごく可愛かった。小さな女の子みたいだったわ。」
とコアラは言う。
「ほんと。そんなに可愛かった?」
「うん。」
「じゃあ、今度は、コアラをもっと可愛い声を上げさせちゃう。」



和也は、コアラの頬やコメカミ、手から、
腕、そして、脇の舌を何度も舐めた。
コアラは、脇の下にすごく反応した。
「あ、あ、あ、」と声をあげた。
そして、コアラのスリップをずらして、体中を愛撫した。
足の先から、ももまでも、手でなんども擦った。
それだけで、コアラは、シーツを握り、首を何度も振って、
快・かんを訴えた。
荒い息をしている。
そろそろ、フィニッシュ。
和也も、コアラの熱い部分を加えた。
コアラは、驚くほど、反応した。
体をバタンバタンした。
息が速くなり、イかせて、イかせてと懇願した。
和也は、もう限界と思って、コアラを夢の国に行かせた。
口の中に入ってきたものを、和也は、飲み込んだ。
コアラは、ぐったりとして、眠りに入ったようだった。
和也は、毛布をかけて、可愛いコアラの隣に寝た。

コアラの異変は、そのとき起こった。

「ここは、どこ?」とコアラは言った。

和也は、ドキッとした。
コアラの声ではない。純粋な女の子の声だった。
まさか、と思いながら、和也は聞いた。

「あたしの家よ。
 あなたのお名前を教えて。」
「ミサです。」
「そう、あたしは、和子です。
 今まで、あなたと、毛布の中にいたのよ。」
「覚えてません。」
「そんなこともあるわ。さ、服を着ましょう。」

和也はそう言って、ミサが服を着るのを手伝った。
和也も手早く服を来た。
「わあ、女の子の服。はじめて。」
「今までは。」
「あたし女の子なのに、ずっと男の子の服だったの。」
「そう。」

和也は、ミサを連れて、ソファーのあるジュータンに座らせた。
そして、ジュースを出した。
「すいません。」と言って、ミサはおいしそうに飲んだ。
雰囲気が、コアラと別人だった。
完全な女の子のオーラが出ていた。

解離性同一性障害(=多重人格障害)。

和也は心の中で、ぽつんと言った。

ミサは、こちらから話さないと、ほとんど無口でいた。

和也は、紙と鉛筆を持ってきて、
「ここに、あなたの名前と住所を書いてもらっていい。」と言った。
ミサは、さらさらと書いた。

そのとき、ミサは、コアラにもどった。
「あれ?また、記憶が飛んでる。」とコアラは言った。
「そんなふうに、ときどき記憶がとぶの。」
「はい、しょっちゅ。一時間目が始まったと思ったら、もう終わってたり。」
「お部屋の机のまわりに、人が書いたような字があったりする。」
「はい。あります。女の子の字で、自由帳に落書きしてある。」
「自分で、不思議だとは思わなかった?」
「すごく不思議だった。ぼくの部屋をその女の子といっしょに使っている気がしてます。」

「ちょうどいいわ。コアラも、その紙に名前と住所を書いて。
 ウソの住所でもいいのよ。」
「いえ、ほんとの住所書きます。」
コアラは、書いた。
和也は、二人の字を比べた。
典型的な、女の子文字であるミサの字と比べ、
コアラの字は、少しコミカルな、男の子の文字だった。
二人は同じ住所と苗字を書いていた。斉藤祐希は、コアラの名前。
斉藤ミサは、あの女の子の名前。

解離性同一性障害に間違いない。
この障害は、背中に、大きなものをしょっている。

可哀相にコアラ。

和也は、コアラを抱きしめた。
そして、心で言った。
『心配しないで、コアラ。あたしが治して上げる。』


つづく(次回は、「コアラの治療」です。)

カウンセラー高杉和也③「コアラ女の子になる」

「じゃあ、次行こうね。」と和也はごまかし、
コアラに、白いスリップを渡した。
「次は、ショーツ。立ってズボンぬいでね。」と和也は言った。
コアラは、ショーツを履いた。
「あのね、こんな風にすると、女の子に見えるの。」
和也は、コアラのタマタマを恥骨の中に入れ、
長い物を、マタの間に回して、ショーツを上に上げた。
「わあ、すごい。女の子みたい。
 和子さんは、先生だから、こんなことも知っているの?」
とコアラが聞いてくる。
「ま、こういうのも、大事な知識なの。」と和也は言った。

それから、コアラに簡単なメイクを施した。
髭もなく、きれいな肌だったので、
ベースクリームを極薄く塗り、ピンクのシャドウと、チーク。
睫をカールして、マスカラを塗り、ピンクのリップを引いた。
それだけで、コアラは、花のように可愛くなった。

「脇の下の毛を無くしちゃおうか。」と和也は言った。
「はい。」とコアラは言う。
和也は、透明なガムテープを10cmくらい脇の下に貼って、
それを巻くように、ピリピリっとはがした。
それを上下、左右の脇の下に行うと、脇の毛が、完全になくなった。
コアラは、脇の下をなでながら、
「これ、すごく女の子になった気分がして萌えちゃう。」
そう言って、鏡で見たりしていた。

そして、いよいよワンピース。
和也は、洋服店で、一番フェミニンなものを選んだ。
白い半袖のワンピースで、オレンジ色の細いリボンが飾りに縫い込まれている。
コアラにそれを着せて、背中のファスナーを上げ、
最後に、ウエストの太い帯を後ろで蝶々に結んだ。
膝すれすれのスカート丈。

「長い髪の毛にしてあげようか。ストールに座って。」と和也は言った。
「は、はい。」とコアラは言った。
和也は用意してあった、ロングのボブヘアーを、
最後にコアラにかぶせた。
頭に合わせて、ブラシをかける。
髪が整い、コアラの肩より少し下に、髪が前後にかかる。
先が少し内巻きになっている。
額がすこしずつ見える前髪。
そして、コアラに、白い薔薇の髪飾りをつけた。

妖精のように可愛い女の子が、できあがった。

コアラは、鏡の中の自分に見とれていた。

「可愛いなあ。もうびっくり。」和也は言った。
「和子さん。ありがとう。ぼく、うれしくて涙が出そう。」
「そう、よかったわね。それから、女の子になったんだから、『あたし』って言うのよ。」
「はい。あたし、うれしくて、涙が出そう。」

ソファーに行って、ケーキを食べた。
和也は、コアラが自分を見られるように、姿身をコアラの前に置いた。
コアラは、ちょこちょこ自分を見ていた。
コーヒーテーブルで、二人ともジュータンに座った。

「コアラは、ちゃんと女の子座りできるのね。」和也は言った。
「はい、一人のときは、部屋でできるだけ女の子らしくしてるから。」
「今日、ここへくるとき、女の子歩きだったわよ。」
「それ、生まれつき。みんなからからかわれるから、学校では、
 意識して男歩きしてるけど、知ってる人がいないときは、あたし、女の子歩きするの。」

「ふーん、そうなんだ。
 今、外へ行って、コアラを男の子だと見る人、いないわよ。
 これで、コアラを男の子と見る人はどうかしてる。」
「ほんと。あたし、男かな女かなって見られるのが辛いの。
 だから、どっちかにしたい。
 あたし、女の子に近いから、いっそ女の子に見られたい。」
「わかるわ。」

和也は、自分が女の子に間違えられた、学校時代のことを思い出していた。
「和子さん、そういうのわかってくれるの?心理の先生だから?」
「コアラに、白状しちゃおうかな。」
「何を。」
「あたし、電話をもらった人に、ここまでするって、特別だって思わない?」
「思う。超親切。」
「実は、あたしもコアラと同じ、仲間なの。」
コアラは、きょとんとした。
「あたしも、男なのよ。」

「うそ!」と思わずコアラは、口からケーキのかけらを落とした。
「ほんと?」
「うん。ほんと。」
「本物の胸があったわ。」
「女性ホルモンをずっと打ってきたの。」
「わあ、感激!すごい。あたし、今すごい萌えちゃった。」
「がっかり、しなかった?」
「反対。感激した。」
「だから、同じ運命の人として、コアラにいろいろして上げたくなったの。」
「あたし、超幸運だったんだ。」
「不思議な出会いよ。」和也は笑った。

ケーキが食べ終わった。
「コアラ、女の人からキ・スされたいっていっていたじゃない?」
「はい。」
「あたしで、いいかしら。」
「もちろんです。」
「じゃあ、ここに着て。」
和也は、ソファーに座り、コアラが自分を見られるように、
姿身を動かした。
コアラは、和也の隣に来た。
少し震えているようにも思われた。

「ああ、コアラは可愛いなあ。」
和也はそういうと、コアラを抱いて、口づけをした。
はじめは、唇だけ。
2回目は、舌を少し入れた。
3回目は、舌と舌をからませて、ディープな口づけをした。

唇を離したとき、コアラが、「はあ~と」息をついた。
「あたし、もう死んでもいいと思った。」とコアラがいう。
「コアラは、大げさなんだから。」
和也は、コアラに鏡を見させながら、
コアラのスカートを、上にずらしていった。
「ほら、すごく色っぽいわ。」和也は言った。
身長の割に長いコアラのももが見えて行く。
「こういうの、好き?」
「はい。すごく興奮してる。」
「長くて、きれいな肢だわ。」
和也は、コアラのももを何度も撫ぜた。

「好き?こうされるの。」
「はい。好き。感じてしまう。」コアラは赤くなって、うつむいた。
「もう少し、感じよう。」
和也はそう言うと、コアラのショーツに手をかけ、それを脱がせた。
コアラの男の証が現れて、上を向いている。

「あ…ん、恥ずかしい。」コアラは、鏡から目をそむけた。
「ちゃんと見るの。女の子に、恥ずかしいものがあるわ。」
「やあん。そういうの、興奮しちゃう。恥ずかしい。」
和也は、コアラのそこに、ゴムをかぶせた。
コアラを抱き寄せ、口付けをした。
そして、あそこをソフトにゆっくりと上下した。
「鏡を見て。」和也は言った。
コアラは、鏡を見ながら、苦痛に似た表情をした。
「あ…ん。だめ。もう、だめ。」
コアラはそう言って、和也に抱きついてきた。
「女の子の格好してから、ずっと興奮してたから、
 すぐ、イっちゃう…。」そう小さな声を上げると、
体をびくんとさせ、泣きそうな声をあげて、
和也にしがみつき、震えながら果てて行った。

和也は、コアラのそこを、濡れたタオルできれいにして、ショーツに収めた。
コアラは、まだ、そこを大きくしたままだった。
「コアラ、ベッドに行こう。下着姿で抱き合うの。」和也は言った。
「はい。」とコアラは言った。


つづく(次は、「コアラの異変」です。)

カウンセラー高杉和也②「コアラに会う」

しばらくして、コアラが電話にもどってきた。
「先生?」
「和子でいいわ。」
「和子さん、ぼく、楽になりました。今、すごく感激してます。」
「早い子は、小学校でこれをしてるわ。」
「ぼく、遅いですね。でも、感動しました。」
「さっきより、楽になったでしょう。」
「はい、さっきは女装したくて、気が狂いそうだったんです。
 電話を受けてくださったのが、女の人でよかったです。」
「今、女装したいって、まだ、思う?」
「さっきほどじゃないけど、やっぱり思います。」
「苦しいほど?」
「はい、苦しいです。」
和也はここで、考えた。
コアラの願いを叶えてやりたい。
でも、カウンセラーとして、逸脱行為ではなかろうか。
でも、コアラは、苦しんでいる。
苦しんでいる青年を見過ごしには、できない。
自分は、コアラを助けることができる。

「コアラさん。あたし、コアラさんの願いを叶えてあげるわ。」
「ぼくに女装をさせてくれるってことですか?」
「そうよ。これも何かの縁だわ。
 背はいくつ?」
「158cmです。」
「体重は?」
「43kgです。」
「そう、細いのね。」
「はい。中学生に見られます。」
「声も、若く聞こえるわ。」
「ああ、それ、ぼくの最大の劣等感なんです。」
「でも、女装には向いているわ。ラッキーよ。」

和也は、次の土曜日に、コアラと会う約束をした。
和也のマンションに近い、駅を出たところで。
出口は1つしかない。
目印に、コアラは、「コアラのマーチ」の箱を持っていると言った

和也の身長は、163cmだった。
自分の衣服では、全て大きいと考えて、
和也のサイズの服と下着を一通り買うことにした。

季節は5月の終わりだった。
カーデガンはまだいらないと思った。



コアラの電話のあった日、
和也は、家に帰って、ドレッサーの前に座り、
厚い黒縁の眼鏡をとった。
女性と見まごう顔立ち。
ネクタイをはずし、ワイシャツを脱いだ。
胸の膨らみを隠すナベシャツというのを脱いだ。
すると、Cカップほどの形のいい乳房が現れる。
ズボンを脱ぐと、女性用のショーツを履いている。
ストールに座って、
ウエーブのかかった長目の髪にブラシをかけ、
女性の髪型にした。
頭から後半の髪の毛を膨らませ、前髪を7:3に分け、
眉が隠れるくらいにする。
耳の横の髪を、耳を隠しながら、後ろに流す。
こうすると、女性の髪型になる。
もともと女性のセミショートの髪にウエーブを掛けてもらった。
それを、昼は、男のようにしているだけだ。

顔と肢の永久脱毛を終えているので、
顔はきめの細かい餅肌だ。

肩が狭く、腕も細く、
アンダーバストは、72cm。
ウエストは、実寸で60cm。
8年間打ち続けてきた女性ホルモンで、
ウエストからピップまでの女性的なラインを得た。
そして、Cカップの胸。
胸にブラをつけて、スリップをかぶり、水色の木綿のワンピースを着た。
足が長くて、自分でも、なかなかの女ぶりだと思う。
和也は、キャリアを積んで、将来は、女性として働きたいと思っている。
ここまでやっている和也は、GIDではなかった。
あくまで、女装愛好家だった。
それが高じて、こうなってしまった。
今では、女でいる方が、居心地がいい。

簡単にメイクをした。

この姿と女性の声で、100%近くパスする。

和也は、近くの洋装店まで、コアラの衣類を買いに行った。
コアラが、女装に向いた顔立ちだといいなと思った。
そんなことを想像しながら、自分より10歳若い女の子の服を選んだ。
それは、とても楽しいひとときだった。



約束の土曜日になった。
時間は、午後の2時。

和也は、朝から、ドキドキしていた。
自分は、女に見えるだろうか。
普段は絶対の自信を持っていたが、
面と向かって話をしてバレないだろうか。
そんなことを考えていた。
そして、コアラがどんな子か、
会うのが楽しみでならなった。

和也は、赤と白のチェック柄のワンピースを着て、
家を出る直前に思いつき、胸まであるピンクのエプロンをした。
エプロンをすると、バッグが入らない。
和也は、エプロンの前のポケットに左右手を入れて、
駅に向かった。

電車の時刻だと、コアラは先に着いているはずだ。
駅に近づくにつれ、それらしき男の子が見えた。
手に、「コアラのマーチ」を持っている。
可愛い。女の子のようだ。和也の胸は躍った。
髪の毛を女子でいうおかっぱにしている。
眉にかかるくらいの前髪。
ジーンズを履き、だぶだぶのブルーのワイシャツを上着のように着ている。
3人に1人は、コアラを女の子と見るだろうと思えた。
とても、17歳には見えなかった。
第2次性徴前の中学生に見える。

「コアラさん。」と和也は近づいて声をかけた。
コアラは、目を大きく開き、うれしそうな顔をした。
「わあ、先生、美人。なんか想像してた通り。」
「先生はやめて。和子って呼び捨てにして。
 今日は、お仕事ではないから。」和也は言った。
「ぼく、ドキドキしゃちゃって、昨日あんまり眠れませんでした。」
「あたしもよ。コアラちゃんに会うのが楽しみで。
 あなた、可愛いわ。そのままで、女の子に間違えられるでしょう。」
「声を出したら、あら、女の子だったのって言われます。
 そう言われないときは、初めから女の子に見られたとき。」
「あはは。」と和也は笑った。



和也のマンションは、2LDKだった。
1室は、ベッドルーム。もう1室は、勉強の部屋。
リビングルームに、ソファやコーヒーテーブル。
キッチンに、テーブルと椅子があった。

和子は、コアラを部屋に案内し、ソファーに座るように言った。
紅茶を入れて、ソファーに並んで飲んだ。
コアラは、表情が豊で、少しでも驚くと、目を大きく開けた。

「じゃあ、そろそろ、女の子になろっか。」和也は言った。
「はい。」とコアラは大きくうなずいた。
和也は、コアラをベッドルームのドレッサーに座らせた。
和也のベッドルームは、照明がたくさんあって明るい。

コアラの上を裸にした。
華奢な体だった。本当に女の子みたい。
「じゃあ、ブラをつけるわ。自分でやってみて。」和也は言った。
コアラは、なんとか苦戦して、やっと後ろのホックをつけた。
ほんとうに初めてなんだなあと、和也は思った。
「じゃあ、胸にこれをつけるのよ。」
和也は、人工の乳ぶさを、コアラの胸にあてがった。
それは、吸着式で、感触は、本物に近い。
コアラは、それをブラの上からもんだり押したりして、
「わあ、これ、本物そっくりですね。」と言った。
「あら、本物知らないくせに。本物は、こんな感じよ。」
と和也は、つい男同士だという気楽さで、
コアラの手を、自分の乳ぶさに当てた。
コアラが、いっぺんで顔を赤くした。
「あ、ごめんなさい。」と和也も顔を赤くした。


つづく(次は、「コアラ、女の子になる」です。)

カウンセラー・高杉和也①「電話先の男の子」

「カウンセラー 高杉和也」

高杉和也は、心理相談のカウンセラーだった。
心理学を専攻し大学を出て、
臨床心理の大学院を出、臨床心理士の国家資格を持っていた。
キャリア3年。27歳だった。

和也の主な仕事は、市の教育委員会より派遣され、
小、中学校に出向き、学校の問題行動のある児童、生徒を見て、
所見を述べることであった。
ADHD、広汎性発達障害、アスペルがー症候群など、
その可能性を伝え、医療機関への差し渡しをすることが、
主な仕事であった。
もちろん、そういう児童、生徒に対し、
学校がどのように対応すれば言いか、
そのアドバイスを与えることも、大事な仕事であった。

彼には、もう一つ仕事があって、
「性の悩み相談」というのを、
週6時間、4時から6時までを3回行っていた。

それは、市の教育委員会に属する仕事で、
委員会のそばに、カラオケルームのような防音の小さな部屋があり、
そこの電話の前で、2時間電話のかかって来るのを待つ。
そして、かかってきた電話の相手と相談するというものだ。
対象は、小学生、中学生、高校生だった。

電話はたいしてかからず、
楽であるが、退屈な仕事であった。

質問は、多種多様、他愛ないものから深刻なものまであった。
電話が鳴ると、和也や、やや中性的な声で、
「もしもし。」という。
相手が男の子だと、お兄さんとして話をする。
相手が女の子だと、お姉さんとして女性の声で話す。
女子は、女性同士の方が、心を割って話ができるからだ。

この女声を、和也は、自分の女装の趣味から学んだ。
女装をして、外出するのが、彼の最高の喜びだった。
見かけは女性的で、外見では、完全にパスした。
しかし、声は低くて、外では一言も口を利けなかった。
それを、彼は、「女声を出す研究所」というところに
有料で通い、2年通って、やっと美しい女声で話せるようになった。
それも、3種類くらいの声を使い分けられる。
小学生くらいの声、高校生くらいの声、大人の声。
小学生の声は、声帯にかなり負担がかかり、長時間は無理だった。



その日かかって来た電話は、中学生くらいの女子だと、
和也は判断した。
そこで、大人の女声に切り替えた。
「もしもし、年齢と、ウソの名前でいいから教えてくださる。」
と和也は、27歳くらいの女性の声で言った。
「17歳、コアラです。」とその子は言った。
「あたしは、和子。あたしの年齢は、勘弁してね。」
17歳とは、かなり可愛い声だ。
「ご相談やお悩みは、何ですか。」和也は言った。
「あの…ぼく女の子の服を着たくて、たまらないんです。
 ぼくは、異常でしょうか。」
とコアラはいう。
和也は、びっくりした。男の子だ。
高校生で、中学生くらいの女の子の声では、
声で苦労していないだろうかと思った。

「服を着たいだけですか。体も心も女の子になりたいのですか?」
「そこは、よくわかりません。」
「じゃあ、男の子に恋をしますか。」
「しません。好きなのは女の子と、女装をした人です。」
「わかったわ。」
和也は、言葉どおり、本当によくわかっていた。
自分と同じタイプだ。

「生まれたときから、女の子の服を着たいと思っていた?」
「はい。小さいときからです。」コアラは言った。

「質問のお答えですが、まず異常じゃないわ。
 でも、只の趣味でもないわ。」
「はい。」
「コアラさんは、もし女の子の服が着られたら、
 性的に興奮しませんか。」
「します。」
「そこが、只の趣味じゃないところなの。」
「治すことができますか。今、とても辛いです。」
「残念だけど、治すことはできないと思うわ。
 多分、一生のものです。」
「じゃあ、どうしたら、いいですか。」とコアラは言う。

「あなたは、オ△ニーをしますか。」
「名前だけ知ってます。したことありません。」
まあ…と和也は思った。
「今、言ったことをすれば、辛い気持ちが少し和らぐの。」
「どうやってするんですか。今まで誰にも聞けませんでした。」
声の様子から、相手が自分をからかっているとは思えなかった。
ああ、どうしよう。
オ△ニーを教えることも、自分の仕事だろうかと思った。
しかし、ことは深刻だ。

「今、あなたにプライバシーがある。」
「あります。家族は今外に出ているし、ぼくの部屋は鍵がかかります。」
「じゃあ、念のため鍵を閉めて。」
「締めました。」
「そばにティッシュがある?」
「あります。」
「じゃあ、ズボンを脱いで、あなたの男の証を、
 3枚くらいのティッシュでくるんで。」
「はい、できました。」
「じゃあ、それを、上下にゆっくりマッサージするの。」
「はい、してます。」
「だんだん、気持ちよくなってくるでしょう?」
「はい、変な気持ちです。」

「あなたは、今、可愛い女の子になってると想像して。」
「はい。ああ、言われただけで、すごく大きくなりました。」
「そして、自分がいちばんされたいこと、想像するの。」
「女装のきれいなお姉さんにキ・スすること。」
「じゃあ、そう想像して。」
「はい。」

「ああ、コアラちゃん、可愛いわ。キ・スしてもいい?って聞かれるの。」と和也。
「はい、女の子の言葉で、答えるの。」とコアラは聞いた。
「お姉様、キ・スして。」コアラは言った。呼吸が荒くなってきていた。
「いいわよ。コアラは、女の子、可愛いわ。
 女の人は、そう言って、キ・スをする。」和子。

「ああ、ぼくもうだめ、変な気持ち。」
「男言葉は、だめ。コアラは今女の子なの。言い直して。」
「はい。ああ、あたしもうダメ、変な気持ち。
 お姉様、だいて。だいて、キ・スして。」
「いいわよ。大好きな、コアラ。可愛くてたまらない。」
「あ…あ、お姉様、あたし変、何かが出そうになってる。」
「いいの。出しても。ティッシュを巻いてるから大丈夫。」
コアラは、そろそろ達するところだった。
「あ…ん、イや、イや、あたし、イく、この感じ、何?
 あたしの頭が狂っていく。」
「いいのよ。出していいのよ。」
「あ…あ、お漏らししちゃう。ああ、あ…………あ。」

電話の向こうで、コアラが、果てて行くのがわかった。


つづく(次回は、「コアラの夢を叶える」です。)

「GIDの男の子を救え!」⑦シリーズ・スーパー洋子「決着」最終回

長いお話を、これまで読んでくださり、ありがとうございました。
これで、最終回です。終わりに「エピローグ」をつけました。

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次に、巨漢の横井が出てきた。

「寝技が得意なやつよ。気をつけて。」夏樹が言った。
「もう一度、観客サービス。寝技の前に、投げるよ。」洋子は言った。

横井は、宇野を倒したヤツだけに、慎重に技をイメージしていた。
自分の重量で突っ込み、相手に肢を掛けてつぶす。
そのまま寝技に持って行けば、相手はひとたまりもない。
自分の勢いに、宇野に掛けたような小技は通用しない。

「始め!」の声がかかった。
寝技を得意とする、横井は、低く構えて突進して来た。
『低さなら、あたしの勝ちよ。』
洋子はそう独り事を言い、横井が眼前に来ると、さっと横井より身を落とした。
しめた、自分からつぶれるとは…と横井は思った。
洋子は、横井の両腕をがっちり外からつかむと、後ろに身を倒した。
夏樹にかぶさっていった横井は、勝利を確信した。
だが、洋子の片足が、横井の腹にぴたりと吸い付いていた。
洋子の足は、横井の腹を、思い切り蹴り上げ、
後方に、えい!と巴投げを打った。
洋子のものすごい脚力によって、横井は天井を向いたまま、3mほど飛ばされた。
受身も何もできず、横井は、すごい音を立てて、背中から落ちた。

「1本!」の声。

豪快な大技・巴投げに、
わあ~!というすごい観客の拍手があった。
観客は、すっかり夏樹ファンになってしまい、沼田たち5人は、抱き合いながら喜んだ。

気絶をしている横井を、神田と大将の大熊が引きずって行った。
「神田、相手は、オリンピック級の選手だと思え。いいか。」
大熊が言った。
「まさか、あんなチビが。横井は、自分の勢いを過信し、逆に飛ばされた。
 まぐれだよ。まぐれ。大熊、いつから臆病になった。」
と副将の神田は、聞く耳を持たなかった。

「神田は、全日本5位よ。」夏樹は言った。
「みんな同じ。ふつうにやるわ。」洋子は言った。

神田は、引き締まった体の、筋肉質だった。
スピードに自信を持っているタイプだ。
じゃあ、スピードには、スピードかな。
洋子はそう計算した。

神田は、イメージしていた。
横井のような勢いには頼らない、
「始め」と同時に、相手の袖をとり、
目にも止まらぬ速さで、一本背負いをかける、
ただ、それだけのことだ、
スピードでは、全日本、誰にも引けをとらない。
神田は、そう思いにやりと笑った。

「始め!」の声で両者、ガーと組みに行った。
よし、袖をとった、と神田が思ったとき、自分の体は、大きく宙を舞っていた。
自分で何が起こったか、まるでわからなかった。
受身もとれず、背中からもろに落ちた。動けなかった。
『俺が、一本背負いを食らったのか。まさか…。何も見えなかった。』
神田は、悪夢を見ている気持ちだった。

大将の大熊が来て、神田を抱えた。
「やっとわかったか。」大熊が言った。
「ああ、あんなヤツが、いるのか…。」
「世の中には、恐ろしいヤツがいるもんだ。」大熊は言った。

観客達の声援は、最高潮に達していた。
「あと一人」コールが始まっていた。

「主将は、全日本2位。投げも寝技もできる。欠点がない。
 いままでの4人とは、比べものにならないほど強い。」と夏樹。
「得意は?」と洋子。
「相手に投げさせ、寝技に持って行くのが、最高。」と夏樹。

大将がやっと出てきた。
巨漢の横井が小さく見えるほどの巨漢で、それでいて、全ての投げが得意とは。
さすが、全日本2位。
『投げさせて、寝技ね。OK。受けて立とうじゃないの。』洋子に気合が入った。

大熊は、今までの4人と桁が違う。みんなそれを知っていた。
観客は、緊張感に包まれ、ホールはシーンとなり、みんな固唾を飲んで見ていた。

「始め!」
声と同時に、二人は、ガーと組みに行った。

巨漢の大熊は、小柄な洋子に対し、猫のように身を丸め、洋子のふところに入った。
洋子の袖をとり瞬時に体をひねり、一本背負いを打った。
速い。
会場から、キャーという声がもれた。
夏樹がやられる。

夏樹の体が、初めて宙に浮き、
大熊の一本背負いが完全に決まったかに見えた。
しかし、宙にある洋子は、大熊の左手首をがっちりつかんでいた。
その手をねじり、大熊の体を反転させながら、大熊のもう一方の手をつかんだ。
大熊は、仰向けにされ、洋子は、大熊の腕を引きながら、大熊の上に戻るように落下した。
そして、大熊の胸に頬をあて、がっちりと、四方固めに入った。
投げられて、逆に固めに入る。これこそ、大熊の大本領だった。
大熊は、その自分の大本領を、小柄な夏樹から逆に食らってしまった。
大熊は、驚くと同時に、心から感動していた。
『すばらしい。これこそ、柔よく剛を制すだ。』

固めに入った洋子は、柔道部員に、
「時計!」と叫んだ。部員たちはあわてて時計を見始めた。

大きな大熊に対して、その何分の1しかない夏樹が押えている。
観客には、不思議な光景だった。
あんな小さな夏樹を、あんな大きな人がどうして払いのけられないのだろう。
大熊はばたばた肢を動かすだけで、上半身は、微動だにできずにいる。
すごい、これは、ほんとうに、すごい。
柔道部の2年生も、1年生も、観客も、
夏樹のすごさを心から認めた。

やがて、試合終了の声がかかった。
「1本!」の声。
洋子の勝ちである。

観客は、なぜかしーんとしていた。
みんな、何か大きなものに心打たれていた。

2年生の5人は、横一列に正座した。

洋子と夏樹も正座して並んだ。

端にいた大熊が真ん中に来て、洋子と夏樹に手をついて頭を下げた。
「お願いがある。俺達が負けたら、部の看板を渡す約束だが、
 俺達に、もう少し、柔道をやらせてくれないか。
 俺は、さっき及川と試合をして、感動した。
 俺よりずっと小さな及川が、俺の一番得意とする業で、
 俺を押さえ込んだ。及川にとっては一番不利な固め技で。
 『柔よく剛を制す』それが本気でわかり、
 柔道の深さに、身の震える思いがした。俺は、もっと稽古をして、
 強くなりたい。固め技のときわかった。及川は女子だと。
 それなのに、男の俺を破った。素晴らしくて涙が出そうだった。
 俺は、柔道をしたい。お願いだ。もう少し俺達にチャンスをくれないか。」

大熊がそう言ったとき、副将の神田が出てきた。
神田は、目にいっぱい涙を溜めていた。神田も手をついた。
「及川、君を根性がないと、さんざんいじめてしまった。大熊の知らないことだ。
 でも、今日君に負けてわかった。自分より弱いと思って君をいじめてきた自分が、
 どんなに卑怯だったか。俺を、何百回でもいい、殴ってくれ。
 看板を持っていく代わりに、殴ってくれ。俺も柔道がしたい。君に負けて、心から思った。
 及川、許してくれ。お願いだ、頼む。」
神田は、ぼろぼろと涙を流し、そう言った。
後の3人も出てきた。
そして、神田と同じように涙ながらに頭を下げた。

洋子は、夏樹を見た。
夏樹は言った。
「実は、私が夏樹なの。今日は、みんなを騙してごめんなさい。
 運動の得意な、洋子と変装をしあって、洋子に柔道をしてもらったの。
 2年の人達に、嫌がらせをされたのは、辛かったけど、
 今、心から謝ってくれたから、もう気持ちが済みました。
 私だって、今日皆さんをだまして、お相子だから、
 部の看板を持って行ったりできません。

 私、今日、柔道部の皆さんのこと好きになってしまいました。
 もともと私、柔道が好きなんです。
 もし、よかったら、私を柔道部のマネージャーにしてくれませんか。
 少しでも、お役に立ちたいんです。」

夏樹の言葉に、柔道部員は歓喜した。

神田が、
「ほんと?ほんとに?みんな、もちろんいいよな。
 あんな優しいマネージャーだぜ。いいに決まってるよな。」
後の2年生が、うんうんとうれしそうにうなずいた。

みんなは、夏樹に、ごめんなさいと、ありがとうを連発した。
1年生も、可愛い夏樹に、うきうきし、喜んだ。

回りの観客が、すごい拍手をした。
「おーい、今日は最高にいいもの見せてもらった。ありがとう。」
「うん、感動した。」
「最高だった。よかった、よかった。」
と観客は、皆、声をかけながら引き上げて行った。
「夏樹も洋子も柔道部も最高!」沼田たち5人も、にこにこして声をかけていった。

「じゃあ、マネージャーは、明日からということで。」
と夏樹は言って、洋子と道場を出た。



「さすが、夏樹だな。やさしいよ。」と洋子は言った。
「洋子には、白状しちゃおうかな。」と夏樹。
「なになに?」
「あたし、実は主将の大熊君のこと、1年生のときから好きだったの。」と夏樹。
「あ、あ、あ、あ、そうなの!じゃあ、わかった。
 だって、マネージャーになるなんて覚悟、簡単にしちゃうんだもの。」洋子。
「あたし、がんばる。ごめんね。洋子を利用したわけじゃないのよ。」夏樹。
「いくらでも、利用してください。いくらでも、キューピッドになるわよ。」
と洋子は笑った。

夏樹は、ふと立ち止まって空を見た。
「ん?」と思って、洋子も同じ空を見た。
「洋子、ありがとう。あたしを、完全に助けてくれた。」
「だって、あなたを助けに来たんだもん。」
「3日前、死のうと思っていたあたしが、今、希望に燃えてる。」
「あの雲みたいに?」
「あ、うまい。」
と夏樹は言い、二人は、笑い、しばらく、赤く燃える雲を見つめた。


<おわり> (次回は、未定です。)


=================================

《エピローグ》

家のトイレから出てきた洋次は、あれ?洋次になってる、
ときょとんとした。
「じゃあ、問題は、全て解決したのか…。」

洋次は、母に聞いた。
「おととい辺り、弘子の中学のときのセーラー服、だれかにあげた?」
「あげたわよ。友達の弟さんだけど、女の子みたいに可愛い子。
 その子はセーラー服で学校行くんだって。」と母の美佐江は、言った。
「じゃあ、僕も通った稲葉中だね。」
「そうね。」と母。

洋次は、無性にその子(多分夏樹)に会いたくなった。
そして、自分がいなくなり、その子はどうしているのか?
それを知りたくてたまらなくなった。

一週間ほど経ち、会社を早退できる日があった。
洋次は早退し、稲葉中に行ってみることにした。

午後の3時半頃、稲葉中についた。
体育館の裏に行って、そこの金網のフェンスで立ち止まった。
女の子が、水場のそばで、タライに入れた柔道着に水を張り、
素足で道着を踏み、洗濯していた。
「夏樹だ。」と洋次は思って、うれしくなった。
そこへ、もう一人女の子が来た。
「あ、洋子、助かる。絞って。」と夏樹。
「はいはい。」と言ってその子は、びしょぬれの柔道着を、
すごい力で絞った。
「わあ、さすが洋子、一絞りね。」と夏樹。
洋子は、一絞りして、ふーと前髪を息で飛ばした。

『あ、あれは、洋子だ。』
洋次は、うれしくなった。
「ねー、学校楽しい?」と洋次は、フェンス越しの夏樹に大声をかけた。
夏樹は、こちらに、可愛い笑顔を見せ、
「はい、すごく楽しいです。」と大声で言った。
隣の洋子は、首をかしげていた。
「あの人、何となく、知ってるわよね。」洋子は言った。
「うん、思い出せないけど、とても親しい人に感じた。」と夏樹。
「あたしも。」と洋子も笑顔を見せ、Vサインを送った。

Vサインを返し、フェンスから離れながら、洋次は思った。
『洋子は、ちゃんと残っているんだ。
 仕組みは、わからないけど、安心した。』

洋次は、思わずスキップをしたくなった。




「GIDの男の子を救え!」⑥シリーズ・スーパー洋子「道場破り」

岸川五郎は、生活指導主任だった。
その日の職員会議のために、
県教育委員会から、毎年全教員に配布されている、
「人権教育の手引き」から、「性同一性障害」に関するページを見つけ、
それを、印刷して、職員会議に臨んだ。
そして、「性同一性障害」について学校はどうあるべきかを、力説した。

同内容が記されている、岸川の配布物は、県教育委員会からのものであり、
学校においては、絶対的なものだった。
校長以下、全ての教員が、その理解に勤め、
学校では、全教員が、学級にて、GIDの理解を生徒に徹底することになった。
(夏樹は、その後、性別適合手術を日本で初におこなった、S医大へ行き、
GIDの診断を得て、正式に学校は、夏樹に対処するようになる。)



職員会議が終わったとき、保健の養護教師である杉田景子は、岸川のそばに来た。
「先生。私、岸川先生を今まで誤解していましたわ。
 今日の熱弁、ステキでした。私は、胸のすく思いで聞いていました。」
「いや。杉田先生には、大きな感謝をしております。 
 及川夏樹をトイレにいかせてくださった。ありがとうございました。
 担任をしながら、今まで、夏樹のことを理解できず、恥じ入るばかりです。」
と岸川は、頭を下げた。

*    *    *

長い一日だった。
夏樹と洋子はいっしょに帰りながら、
「昨日洋子と話したこと、夢が全部本当になった。
 あたし、まだ夢を見ているみたい。」
「言ったじゃない。あたしは、夏樹のために来た、お助けマンだって。」
洋子は、笑った。
「柔道着まだ持ってる?」と洋子。
「うん、持ってる。ほとんど着なかった。」
「明日、持ってきて。道場破りをやろう。」
「え?あいつら強いわよ。県大でナンバー1、全日本のベスト4だよ。」
「あたしの方が強いから、安心して。」
洋子は、笑って見せた。



翌日、帰りの会の後、洋子はクラスメイトに言った。
「今日、あたし達二人で、柔道部の道場破りするから見に来てー。」

「ほんと?無茶だよ。」
「私行く。」「私も。」とみんなが言い出した。
例の5人は、完全に夏樹に優しくなっていた。
「あたしたち、夏樹をがんがん応援するから。」と絵美と4人が言いにきた。
「うん、がんばる。ありがとう。」と夏樹は笑顔で言った。

トイレで、洋子は、柔道着に着替えた。一応、中にTシャツを着ている。
洋子は、心配そうにしている夏樹の頬に両手をあてた。
そして、夏樹の顔全体を擦った。
そして、その手で自分の顔を擦った。
洋子が手を下げたとき、夏樹はあっと驚いた。
洋子の顔が、夏樹の顔になっている。
洋子は、自分の髪の一部を房にしているゴムをとり、
夏樹に同じように、結んだ。
「夏樹の顔は、今あたしの顔よ。」
「うそ!」
と思って、二人で鏡を見た。
「ほんとだ、あたし、洋子になってる。洋子があたしの顔。」夏樹が言った。
「うふん。これで、道場破りをするの、夏樹になったわよ。」
「すごい。」夏樹は言った。



柔道場は、新設の3階建ての体育館の2階だった。
剣道場と柔道場が並んでいる。

行ってみると、一年生20人くらいが、練習をしていて、
恐ろしく体格のいい2年生が5人、1年生の練習を見ている。
2年生の中で、ひときわ縦にも横にも大きな生徒がいる。
「洋子、あれが、全日本2位の大熊。
 あとの4人も、みんなベスト20には入っている。
 洋子、ほんとに大丈夫?」
「いくら強くても、スライムには投げを打てないよ。」
洋子は言った。

2年生の一人が、洋子と夏樹を見つけた。
にやにやと笑い。
「おう、みんな、来いよ。見ろ、及川が柔道着で来てるぞ。
 いつも俺らから逃げてるくせによ、気でも狂ったか。」Aが言う。
2年生の3人が来て、
「なんだ、その柔道着はよ。畳みの雑巾がけでもしに来たか。」
「1週間で辞めた根性なしがよ。」
とそれぞれに言う。

「柔道部が、あんまり弱いから辞めたのよ。
 ちっとは、強くなったかと思って見にきたけど、
 相変わらずね。帰ろうか、洋子。」
と夏樹に見える洋子が言った。

「なんだと?気は確かか。」
「いいぜ、やってやっても。」
「お前ら、挑発に乗るんじゃねえ。
 それより、練習だろう。」主将の大熊がやってきた。
「大熊、今俺ら舐められたんだぜ。ほっとくのかよ。」

その頃、夏樹のクラスのみんながやって来た。
友達も連れてきたのか、100人くらいになっている。

「もう、後に引けんだろう。見物人がきたぜ。」
副主将とみえるその男子が、1年生に言い、全員道場の隅に並ばせた。
観客は、柔道場の周りの通路から見ることができる。
「夏樹、強いのかよ。」
「わかんねえ。何か、なきゃ、来ないだろう。」
「夏樹、いつも柔道部の連中にいじめられてたのに。」
「強くなったのかなあ。」
「まさか、何か仕掛けがあるのよ。」
観客の中から、そんな声がした。

「まず、はじめに言っておくわ。
 あたし達は、道場破りに来たのよ。
 だから、あたし達が勝ったら、柔道部の看板もらうわよ。」洋子は言った。
2年生の部員達は、ゲラゲラと笑った。
「ああ、いいともよ。勝ったらな。」一人が言い、また、ゲラゲラと笑い始めた。

「ルールは?」と副主将の神田が勝ち誇ったように言った。
「勝ち抜き、制限時間なし。降参だけあり。
 それと、あたし達は、柔道着が一つしかないから、
 あたしが負けたら、この倉田さんと柔道着を交代する。」洋子は言った。
「あいよ、柔道着が一つか。笑わせらあ。
 制限時間なんて、いらねえって。秒殺でおわり。」神田は笑いながら言った。

柔道部5人が、正面に並んだ。
廊下側に、夏樹と洋子が並んだ。
戦うのは、夏樹に見える洋子だ。

初めに来たのは、江藤といった。
「5人の中で、一番弱い。でも、全国ベスト20。」と夏樹が言った。
「そう、同じよ。」と洋子は言った。
洋子は立って、江藤と向かった。
審判は、1年生の強い部員が交代でやった。
江藤は、「始め!」と同時に、一本背負い。0.2秒で終わりだと
頭の中にイメージしていた。

「始め!」
江藤は突進し、洋子の襟をとり、完全に投げを打つ体制になった。
『これで、終わりだ。俺だけが楽しませてもらった。』
そう思い、猛烈な投げを打った。
会場の女子生徒の何人かが「キャー。」と言った。
江藤は、はっとした。手応えがまるでない。
洋子が、べたりと背に貼り付いている。
「え?」と思って、江藤はそのまま、前のめりになった投げの体制と洋子の重みで、
畳みに向かって、顔から倒れた。
一本背負いを掛けていて、受身なんかとれない。
まともに、顔から行った。

観客がわあーと喜んだ。
「これは、いいぜ。」
「スライムみたいに貼り付いてる。」
「あれじゃ、投げられないわ。夏樹考えたね。」
と沼田絵美は4人に言った。

江藤はまた一本背負いを打った。
結果は同じ。
さっき、打ちつけた反対の顔を、もろに畳みにぶつけた。
「コイツは、まるで、スライムだ。背中にべったり貼り付きやがる。」
江藤は、それから、全ての立ち技を試みた。
15本打ったが、どれも背中に張り付かれ、顔は、目が見えないほどに腫れていた。
スライムに寝技は通じない。
それから、投げを10本ばかり放った。
そのたびに顔面を打った。
相手は、ただ脱力し何も技をかけていないのに、自分だけが体力を消耗し、顔の腫れで目が見えない。
両目が見えなければ、戦えない。江藤は、「参った」をした。

通路の観客が、すごい声援を送った。
「スライム戦法で勝っちゃったよ。」
「あれだって、立派な技だよ。」
「夏樹すげえ、何にもしないのに、勝った。」観客の男子が言った。

もどってきた、江藤は、同じ部員にさんざんに言われていた。

次に来たのは、一番背の高い宇野という部員だった。

「ねえ、あんなに背が高い宇野には、スライムできないんじゃない?」
「そうね、足が浮いちゃうね。」
「夏樹、どうすんのかなあ。」
沼田絵美と4人は言い合っていた。
観客は、みんな同じように思っていた。

「アイツは、全国ベスト8だよ。
 さっきの江藤とは訳が違うわ。」夏樹が言った。
「スライムじゃ、観客が飽きてるから、技かけてみようか。」と洋子。
「できるの?」
「もちろんよ。」

構えの体勢に入ると、宇野が言った。
「貼り付くだけかよ。技見せてみろ!」
「いいよ。」洋子は言った。

「始め!」の声。宇野がさっと歩を進め、洋子の袖をつかもうとした瞬間、
宇野は、真横になり、宙に浮かんだ。それを、洋子が、宇野の襟をとって、
すごい勢いで畳に叩きつけた。
「1本!」の声がかかった。
柔道の初歩の初歩、「出足払い」だ。

何があったか、誰にもわからなかった。
宇野が洋子の袖に触れた瞬間、右足が前に出る。
その脚が、畳につく寸前に、その足を、内側にはらう。
畳に着こうとする足がはらわれるので、当然体勢が崩れる。
体勢がくずれたときに、投げを打ち決める。
ただ、洋子の、足のはらいが余りにも強烈だったため、
宇野は、それだけで宙に浮いてしまったのだった。

観客から、すごい声援が起こった。
スライムだけと思っていた夏樹が、宇野を宙に浮かせたからだ。

宇野は、足が折れたことを思い、
信じられないものをみるように洋子を見た。
「お前、何者だ。」宇野は言った。
「及川夏樹よ。言ったじゃない。あんた達が弱すぎるから、退部したって。」
洋子は言った。

宇野は肢を引きずりながら、自分の所へもどった。
「宇野。相手が弱いと思って、油断したな。それが、お前の弱いところなんだよ。」
と隣の横井が言った。
宇野は心で言っていた。
『油断なんかであるものか。あの払いのスピード、尋常じゃない。』

次に、巨漢の横井が出てきた。


つづく(次回は、「決着」最終回です。)

「GIDの男の子を救え!」⑤シーリーズ・スーパー洋子「5人の反省」

子分4人がやってきた。
絵美は、その4人を見て、ぞっとした。
4人とも、顔は似ているが、男顔だ。

鏡を背にして、しゃがんで顔を隠している絵美に、4人は、代わる代わる言った。
「絵美、どうしたのよ。」A。
「あたし、あたし、男になってる。」絵美は顔を隠しながら言った。

洋子の与えた少しの記憶は、4人にこう言わせた。
「今頃なに言ってんのよ。あたし達、昔から男じゃん。」B
「うそ!5人とも?」絵美。
「あたり前じゃん。だから、いつもいっしょにいるんじゃない。」C。
「じゃあ、なんで女子トイレ使ってきたの?あたし達。」絵美。
「それは、女子が許してくれたからじゃない。
 セーラー服着てるなら、別にいいよって。」C。

「じゃあ、及川は、何で女子トイレ使えないの?
 今日、セーラー服着てたよ。」絵美。
「それは、たった今、絵美あんたが入れてやらなかったからじゃん。何言ってんのよ。
 しっかりしてよ。自分のやったことも覚えてないの。」D。

「及川は、なぜ、職員室トイレ使ってたの。」絵美。
「それは、あんたが、男子に命令して、及川の個室を上からのぞかせたからじゃん。
 及川を、男子トイレからも女子トイレからも、しめ出したの絵美、あんただよ。」A。

「あたし、何でそんなことしたの?」絵美はまだ顔を隠しながら言った。
「それは、及川が可愛いから、あんたがジェラシーしたからじゃない。
 及川は、初めあたし達のアイドルだったんだからね。」B。
「絵美、あんたがジェラシーなんかしなけりゃ、あたしは、今でも及川好きなんだからね。
 今更、何言ってんのよ。」C。

「あたし、及川をいじめまくった。どうやっていじめたんだっけ。」絵美。
「及川に、オ△マとか、キモイとか、
 男のくせになよなよしやがってとか、さんざん言ったんだよ。
 それだけじゃ、全然ないけどね。」A。

「どうして?あたしだってオ△マだし、男なのにセーラー服着てるじゃん。
 及川は、男だから学生服着てた。どうして、そんなこと言えんのよ、あたし。」絵美。
「それを、あんた言ったんだよ。だから、洋子から何度も言われたじゃん。
 オ△マのあんたが、何言ってんだって。それ言われても、絵美は何にも反応しなかった。
 あたし、絵美の頭狂ったかって思ったよ。」B。

「可愛くて、めちゃ性格のいい及川いじめるの、あたし、本当は死ぬほど辛かった。
 そんな命令しておいて、覚えてないなんて、そりゃ、あんまりじゃない。」D。
「絵美の言うこと聞いちゃった自分が、悪いんだけどさ。」A。
「絵美だけが悪いんじゃないよ。あたしたち、全員悪いんだよ。」B。

「男のあたし達が、女子トイレ使わせてもらって、
 及川には使わせないって、あたし、すごい不公平じゃん。」と絵美は泣き声になっていた。
「そうだよ。不公平だし、最低だよ。」とBも泣き始めていた。

「男子トイレも女子トイレも使わせないって、ひど過ぎるじゃん。」絵美は泣いていた。
「そうだよ。人間のすることじゃないよ。及川を殺すことと同じだよ。」Cも泣き出した。

「体が男だってだけで、こんなに辛いのに、
 同じ仲間をいじめるって、ひど過ぎるじゃん。」と絵美は、肩を揺らして泣き始めた。
「うん。ひど過ぎたよ。そのひどいことずっとしてきたんだよ。」Dも泣いた。

「あたしがそんなことされたら、生きていけない。」絵美はぼろぼろに泣いていた。
「あたしだって、そんなことされたら死ぬよ。
 あたし、及川がいつ死ぬんじゃないかって、
 そればっか心配してた。あたし、本当は、及川好きだったから。」Aは号泣した。

絵里は、うめくような声を上げて、膝の中に、顔を埋めた。
「及川、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。・・・」
絵里は、泣きながら何度もそうくり返した。
周りの4人も、絵里の回りに一塊になって号泣した。



絵里は、5時間目も6時間目も、顔を隠していた。

帰りのホームルームの時間になった。
「帰りの会」に司会の日直が、
「他に何かありませんか。」と言ったとき、
沼田絵里が立った。
「及川さんにも、みんなにも、謝りたいことがあります。」
と絵里は顔を伏せたまま言った。

絵里は、教卓を背に、泣きはらした顔を向けた。
すると4人の子分達も二人ずつ、絵里の左右に立った。

絵里は言った。
「私は、及川さんに、許されないほどのいじめをしました。
 及川さんは心が女子だから、男子トイレでは個室しか使えません。
 それを、知りながら、男子に命令し、及川さんの個室を
 上から覗くようにさせました。
 そして、及川さんに男子トイレを使えないようにしました。
 及川さんは、学生服だったので、女子トイレを使うわけにもいきません。
 一人の人を、トイレに行けないようにするなんて、
 心ある人間がすることではありません。
 それは、鬼のすることです。
 でも、そんなひどいことを私はしてしまいました。
 保健の先生が、及川さんに職員トイレにいかせてくれたから、
 どうにかなりましたが、そうじゃなかったら、
 及川さんは、どうなっていたか。
 私だったら、生きていけません。
 私は、人を死なせるようなことをしました。」

絵里は、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、続けた。

「そのほか、ここにいる4人で、キモイとか死ねとか、
 毎日毎日さんざんひどいことを言いました。
 及川さんの机に、ひどい落書きをしたり、
 靴をかくしたり、牛乳をわざとこぼしたりしました。
 ほんとに、ひどいことをしました。
 
 謝って済むことではありませんが、今は謝ることしかできません。
 及川さん、ごめんなさい。
 男子にも、あんな命令したりして、ごめんなさい。
 及川さん、ごめんなさい。
 やっと、及川さんの気持ちがわかりました。
 ごめんなさい。ごめんなさい・・・・・。」

絵里は、肩を揺らして、嗚咽を吐き、やがて、慟哭に近い声を上げながらしゃがんだ。
横の4人も、謝りながら、しゃがみこみ、号泣し、それが、慟哭となった。


しばらくして、
「個室をのぞいた男子、立て。」と岸川が言った。

10人の男子が立った。

「お前らを、これから、トイレには行かせんが、それで、いいか。」
と岸川は、言った。
10人は、すでに泣いていた。

「いいのか!わるいのか!」と岸川は怒鳴った。
10人は、縮み上がった。こういうときの岸川の迫力は、尋常ではなかった。

「すいませんでした。もうあんなこと2度としません。」
と一人が、泣きじゃくりながら言った。
「じゃあ、自分達がどれほどの悪いことをしたのか、わかっているのだな。」
岸川は言った。
「はい。ひどいことをしました。」
10人は、肩を揺らして泣き始めた。

「女子5人は、及川のところへ行って、直接に謝ってこい。」と岸川は言った。

5人は、一番後ろの席の夏樹のところへ来て、
床に手をついて何度も謝った。

「あたしが、女の子だって、思ってくれる。」夏樹は言った。
「うん、及川さんは、女の子。今度はあたし達が、及川さんを守ります。
 今までしたことの償いをさせて。お願いします。」
と絵里と4人は夏樹にすがるように言った。

「じゃあ、いいわよ。あたしに対して、普通にしてくれたら、
 それで、十分だから。」と夏樹は言った。

「ありがとう。ありがとう。」と5人は、言った。

10人の男子も来て、手をついて謝った。
夏樹は、その10人も許した。

全員を席にもどし、岸川は、言った。

「そういう俺も人のことは言えん。今朝、及川に謝ったところだ。
 間違いをしたら、反省し、あやまり、2度としないことが大事だ。
 5人は、親子同伴で、学校へ来てもらうことになるだろうが、
 とりあえず、俺が代表で、及川の家に行って、謝っておく。
 さっきの沼田や4人の反省は、本心と見た。
 及川、とりあえず、これでいいか。」
と岸川は、夏樹を見た。

「はい!いいです。」と夏樹は張りのある声で言った。
「なんだ、及川は、セーラー服の方が、いい声が出るな。」と岸川が言い笑った。



夏樹はうれしそうだった。
「夏樹、これで安心できる?」洋子は聞いた。
「うん。洋子、ありがとう。昨日、洋子と話した夢が、みんな叶った。」
夏樹は笑った。
「あとは、柔道部だけね。任せておいてね。」洋子は言った。
「あ、そうか、一つ残ってた。どうしよう。」と夏樹。
「簡単に決着がつくよ。見てて。」
「うん。」
二人で顔を見合わせ、笑った。

このとき、洋子は、幻覚を与えた全ての人の幻覚を解いた。
幻覚がなくなったとはいえ、そのときの記憶は強烈に胸に焼きついている。
夏樹への理解は、この先もずっと続く。


つづく(次回は、「道場破り」です。)

「GIDの男の子を救え!」④シリーズ・スーパー洋子7「家族の理解」

朝を迎えた及川家。
朝食に集まった家族は一言もしゃべらずテーブルについていた。
全員、寝不足の青い顔を下に向けていた。
一睡もできなかった。

夏樹は、セーラー服を見て、喜び半分、恐さ半分だった。
これを着てみんなのテーブルに行ったらどうなるか。
洋子は、大丈夫だと言っていた。
夏樹は、セーラー服を前にして、我慢できるはずがなかった。
そして、セーラー服を着た。
鏡をみると、ジャストサイズで、うれしかった。
きっと、女の子に見えると思った。
やっぱりうれしい。

夏樹は、おそるおそる、階段を下り、テーブルについた。
みんなうつむいている。
味噌汁をすくっている母が、まず夏樹を見た。
そして、気まずそうに、目を逸らせた。
夏樹が、咳払いを一つした。
みんなが、自分を見た。
しかし、誰も何も言わない。

夏樹に不安に似た感情が湧いた。
「みんな、おはよう。」そう言った。
みんなは、うつむいたまま、おはようと言った。

『みんなどうしたの、ぼくが目に入らないの?』
やがて、その思いに耐えられなくなり言った。
「父さんも、母さんも、ナルもエルも、なんで無視するの!
 ぼく、今、セーラー服着てるんだよ。
 なんとか言ってよ。怒るなら怒ってよ。
 無視されるのが、いちばん辛いよ。
 もう、ぼくなんてどうでもいいわけ!」
夏樹が涙ぐみ、立ち上がろうとしたとき、
「お兄ちゃん、ちがうの!」
そう叫んで、そばの席のナルが夏樹の服の袖をつかんだ。

「違うの、お兄ちゃん。やっとわかったの。
 一晩、眠れずに考えて、やっとわかったの。
 お兄ちゃんが、これまで、どれだけ辛い思いをしてきたか。
 やっとわかったの。
 お兄ちゃん、ごめんなさい。今までひどいこと言ってしまった。
 お兄ちゃん、家族にまでそう言われて、死ぬほど辛かっただろうって、
 やっとわかったの。」
そう言って、ナルは、わあっと泣き出した。
隣で、エルも言った。
「あたしも、ごめんなさい。キモイなんて、お兄ちゃんに何度も言った。
 最低の言葉だよね。お兄ちゃんは、外でだって辛い思いしてるのに、
 家で、同じこと言われたら、たまんないよね。
 お姉ちゃんみたいに、昨日やっとわかったの。
 お兄ちゃん、これから絶対言わない。
 ごめんなさい。
 そのセーラー服のお兄ちゃん、似合ってて可愛いと思う。
 いつも、女の子の服着るべきだと思う。」
エルもそう言って、わあっと泣き出した。

母も泣き出した。
「夏樹、ごめんね。お母さんが間違ってた。
 心は変えられない。誰だって心は変えられない。
 それが、やっとわかったの。
 夏樹、許してしょうだい。
 ご近所からどう見られようと、
 あたしはこれから夏樹を女の子だと思います。
 今日、女の子の服を買いに行きましょう。
 今までのこと、許してちょうだい。
 ごめんなさい、夏樹。」

父も、テーブルに肘をついて、涙の目を覆っていた。
「ナルやエルの言う通りだ。
 父さんも間違ってた。
 許してくれ、夏樹。
 これから、夏樹の好きな服を着ていい。
 セーラー服で通えるよう、父さんは、学校に話をする。
 今まで、辛い思いをさせた。
 ほんとうにすまなかった。」

夏樹は、しばらくきょとんとしていたが、
家族みんなの温かい言葉を聞いて、
涙があふれてきた。

「みんな、ありがとう。ほんとは、ぼく、昨日死のうと思っていたの。
 学校でさんざんいじめられて、トイレも入ることができなくて、
 いつも、保健の先生に頼んで、職員用のトイレを借りてたの。
 でも、倉田洋子さんが転入してきて、ぼくをわかってくれた。
 それがうれしくて、死ぬのを延期した。
 でも、もう延期じゃない。ぼく、死なない。
 今までは、家に帰るのも辛くて、居場所がなかった。
 でも、家族のみんながわかってくれたから、居場所ができた。
 わかってくれて、ぼく、うれしい。みんな、ありがとう。」
 
夏樹は涙の目をハンカチで拭いた。
夏樹の言葉を聞いて、家族は、もっと泣き出した。
涙に暮れた朝だった。

*    *    *

夏樹の父は、胸にサラシをぐるぐる巻いて胸を押え、
夏樹と一緒に学校へ行った。

まずは、担任の岸川に面会を申し出た。
岸川も、胸にサラシをぐるぐるに巻いていた。

職員室の入り口にいる2人に、岸川はやってきた。
岸川は、夏樹の顔を見るなり、しゃがんで、
「及川、俺は今まで間違っていた。
 男は男らしくなどと、それが正しいと思っていた。
 だがそんなことはない。男女それぞれいろいろだ。
 及川を男らしくしようと、出席とるとき厳しくした。
 もう、しない。これまで及川に辛い思いをさせた。
 申し訳なかった。許してくれ。」
夏樹は、夢かと思いながら、岸川の言葉を聞いた。
セーラー服の夏樹をみても、咎めの言葉一つなかった。
父康夫が、セーラー服の許可を岸川に願った。
岸川は、2つ返事でこう言った。
「心が女子なら、女子です。女子がセーラー服を着るのは当然のことです。
 今日、職員会議があります。その席で、私は、全力で校長や他の職員を説得します。
 ご安心ください。」

岸川のその言葉にも、夏樹はビックリした。

「夏樹、いい先生じゃないか。」と父は帰りがけに言った。
「うん、そうだね。」と夏樹は、まだ夢うつつであった。

セーラー服の夏樹が心細い思いをしているかと思い、
洋子は、早く来て、靴箱のところで待っていた。
お父さんと別れた夏樹のところへさっと着て、
「夏樹、どうだった?」と聞いた。
「もう、夢みたいなんだよ。今朝、家族みんながわかってくれたの。
 それどころか、岸川先生までセーラー服のこと分かってくれた。
 もう、どうなってるんだろう。」夏樹は言った。
「今度は、教室よ。あたし、夏樹を守るからね。」洋子は言った。

教室で、夏樹と洋子は、セーラー服同士で並んでいた。
次々と生徒が入って来た。
みんな、夏樹を見るなり「あ!」と言って、
しかし、見て見ぬふりをして、自分の席についた。
朝のこの時間は、及川の厳しい命令で、着席をして、自習をしていなければならなかった。
だから、だれも、夏樹のところにこなかった。

やがて、岸川がきた。
いつものように出席をとったが、
夏樹の小さな「はい。」も、1度でOKだった。

出席をとり終った岸川は言った。
「えー、及川夏樹だが、及川の心は女子である。
 俺は、心の性別を優先する。
 よって、これから及川の扱いは、女子とする。
 そういう訳で、及川は女子にふさわしくセーラー服を着とる。
 何か質問あるか?」
生徒は、岸川が恐くて、誰も手を上げなかった。

岸川が行ってから、ひそひそ話だけが聞こえた。
この時間は、次の授業の準備、予習なので、だれも席を立てなかった。
これも、岸川の厳しい指導のためであった。



1、2時間目の先生は、岸川から言われていたのか、
夏樹のセーラー服には、何も言わなかった。

2時間目が終わり、20分休みになった。

「夏樹、いっしょにトイレ行こう。」洋子が言った。
「どっち?女子トイレ?」夏樹は心配げに言った。
「先生、ちゃんといってくれたじゃない。夏樹の扱いは女子だって。」
「みんな、納得してるかな。」
「ダメなら、保健の先生にまた頼もう。」洋子は言った。

洋子と夏樹が腕を組んで、女子トイレに来た。
すると、案の定、沼田絵美とその子分達が待っていた。
そして、通せんぼうをする。

「どいて、あたしたちトイレ行きたいんだから。」洋子は言った。
「先生が、ああ言ったかもしれないけどさ、
 あたしたちは、男を女子トイレに入れるわけにはいかないのよ。」沼田絵美は言った。

「じゃあ、男子トイレにはいるわ。」洋子はそう言って、夏樹と男子トイレに入ろうとした。
すると、そこにいた男子達は、焦った。
「ま、まずいよ。セーラー服着てんだから、女子行けよ。」と誰か。
「だって、女子が入れてくれないだもの。じゃあ、あたし達どっち入ればいいの。」と洋子。
「女子だよ。先生言ったじゃん。女子として扱うって。」

二人はまた女子に行き、
「男子、ああ言ってるのよ。やっぱ、あたし達女子に入る。」と洋子。
「男は、だめだって言ってんだろうが!」と沼田はすごみをつけて言った。
洋子は、ここで幻覚を発動した。子分4人には、幻覚と少しの記憶をプレゼントした。

「沼田さん。あたし、昨日から言ってるでしょ。
 沼田絵美、あなたは、男だって。
 男のあんたが、女子トイレ入ってて、
 あたし達はだめだって、それどういうわけよ。」洋子は言った。
「お前、何言ってんのよ。」
と言ったとき、沼田絵美は、自分の体に、違和感を覚えた。
胸が軽くなった。
沼田は、はっと胸に手を当てた。ない。胸が平らだ。まさか。
思わず、股間に手を当てた。ある。まさか。

沼田は、真っ青になり、走って行った。
1階の保健室の近くまで来た。
そこに、大鏡がある。
沼田絵美は、鏡を見てぞっとした。
小さいお尻で、スカートが寸胴になっている。
近づいて顔を見ると、濃くなりかけた髭を剃ったあとが、青くなっている。
顔は自分の顔だが骨格がどことなく、男顔だ。
何よりの証拠に、自分には、男子しかもってないものがついている。
絵美は恐怖に顔を引きつらせ、絶叫した。


つづく(次回は、「絵美と4人の反省」です。)

「GIDの男の子を救え!」③シリーズ・スーパー洋子「家族のGID体験」

洋子は、母に、夏樹のだいたいのことを話した。
「そう。まず、学校にセーラー服で通えるようになるといいわね。」と母は言った。
「お姉ちゃんの、昔のセーラー服、あげていいかな?」
「うん。じゃあ、出しておくね。それから、女子の靴も必要ね。」と母。
「ご家族の理解がないことが厳しいの。でも、あたし、何とかする。」
「お父さんの、不思議パワーを、夏樹ちゃんのために発揮する気ね。」母が言った。
「うん。天国のお父さんに、毎日祈ってる。どうか、力を貸してくださいって。」
「友達に使うことも、大事だわ。きっと、上手く行くわ。」母は言った。

ジュースをもって部屋に行った。
夏樹は立って、手伝おうとした。
その姿は、まるで、妖精みたいだった。
テーブルにジュースをおいて、ベッドに二人で並んだ。
「夏樹、よかったね。女の子みたいに生まれて。
 あたしといるときは、女の子の言葉をつかってね。」
「うん。洋子は、ほんとにあたしを助けに来てくれた。ありがとう。」
夏樹の目が潤んでいた。
洋子は、ハンカチを上げた。
夏樹はそれを目に当て、
「あたし、うれしい。一回も女装したことなかったの。
 夢で何度も見た。その夢が叶った。だから、うれしい。」
と夏樹は、ハンカチを何度も目に当てた。
「ね、楽しい、楽しい、ガールズ・トークをしよう。」と洋子。

「まず、夏樹は、セーラー服で学校へいけるようになるの。」
「うん、あたし、それが一番幸せ。」
「それから、もちろん女子トイレを使えるようになる。」
「それ、最高。あたし、そうなったら、何度もトイレいっちゃう。」
「クラスのみんなが、夏樹を好きになって、夏樹は、モテモテになる。」
「それは、夢どまりかも。あたし、モテないから。」
「わかんないわよ。夏樹は、敵をばたばたやっつける。」
「うん。いいわね。そのときは、衣装を変えたいな。」
「そうね。えーと、夏樹の今の最大の敵は。」

「まず、クラスのあの5人でしょう。
 それと、あたしね、中学入って、強くなればいじめられないと思って、柔道部に入ったの。
 それが、すぐ自分の間違いだとわかって、1週間で辞めたの。
 それから、その柔道部の人達に、ずっと嫌がらせされてる。」
「ほんと。そういうの、あたし一番得意だから任せて。あたし、忍者だから。」
「わあ、ほんと?なんか、洋子と話していると、
 死ぬほど辛いことが、みんな乗り越えられるような気になってくる。
 洋子は、とっても不思議な人。」

「そうよ。死んだあたしの父さんがね、夏樹を救うために、あたしを遣わしたの。」
「困ってる子を見つけて、助けてくれるの?」
「その通りよ。」
「なんか、ドラマみたい。」夏樹は、うれしそうに笑った。

それから、二人で、いろんな楽しいお話をして、夕食のときとなった。
「あたし、7時に帰ってないと、しかられちゃう。」夏樹は言った。
「待って。だったら、夕食のとき、夏樹のご家族、その時間全員そろってる。」
「うん。だけど、どうして?」
「あたしを、ご家族全員に会わせて欲しいの。1分でいいの。」
「うん、大丈夫。できるわ。」夏樹はそう言った。

衣装を脱ぐとき、夏樹は悲しそうな顔をしたが、
また、毎日お出でよと洋子は言った。

帰るとき、母がセーラー服を箱にいれて、渡してくれた。
その中には、一揃いの下着やソックス、女子の靴もあった。
夏樹はきょとんとしていた。
「姉のお古で悪いのだけど、夏樹へのプレゼント。」洋子は言った。
夏樹は、涙を流さんばかりに喜んだ。

家を出て、夏樹の家に行った。
新しく立てた家で、とってもオシャレだった。
「みんな、そろってる?」
「うん、多分。」
「じゃあ、あたしをみんなに会わせて。
 それと、夏樹。このセーラー服で、明日登校してみて。
 きっといい出来事がたくさん待っているわ。」
「どういうこと。」
「今は、内緒。まず、ご家族から。」

ただいまと言って、夏樹は家に入った。
7時を少し過ぎていた。
母がすぐに来たが、洋子を見て、夏樹を咎める言葉を飲み込んだ。
「母さん。倉田洋子さん。今、ぼくのお友達。
 父さんやみんなに、倉田さんがあいさつしたいんだって。いい?」
夏樹はそう言った。
「もちろんいいわ。じゃあ、倉田さん、どうぞいらして。」
と母はいい、洋子をダイニングへ通した。
夏樹の母は、大変な美人だった。

ご家族はみんながそろっていた。
下の2人の妹は、驚くほど、可愛かった。

洋子は挨拶をした。

洋子の目的は一つ、全員に幻覚を与えるためだった。
発動時刻は、今夜の10時。

洋子は、目的を達し、すぐに夏樹の家を後にした。



家の中で、夏樹は、Tシャツにジーンズの姿でいた。
夏樹は、姿勢を正し、典型的な女の子食べをしていた。
箸にご飯を少しとり、前からご飯を口の中にいれる。
仕草の、一つ一つが女の子だ。
「お兄ちゃん、キモイよ。男の子はもっとガツガツ食べるよ。」
すぐ下の6年生の妹の、ナルが行った。
「お兄ちゃん、お願いだから、髪くらい切ってよ。
 それでなくても女みたいなんだからさ。
 あたし、恥ずかしくて、お兄ちゃんといっしょに歩けないよ。」
その下の4年生のエルが言った。
「なかなか、直らんなあ。」と父の康夫が諦めたように言った。
「あたしは、もう言うのに飽き飽きしました。」母の吉江が突き離すように言う。

夏樹は、箸を置いた。そして、うつむいて涙を浮かべた。
「夕食が、ぼくの一番楽しみなときなのに、
 どうして、毎日同じことを夕食のときに言うの。学校でも辛いのに、
 家でも、ぼくを苦しめないでよ。
 ごちそうさま。」

夏樹は、席を立った。
まだ少ししか食べていなかった。
お腹は、満ちていなかった。
悲しかった。
夏樹は、自分の部屋のベッドにうつぶせになり、泣いた。



洋子の幻覚発動時刻午後10時になった。

始めは父からだった。
父康夫は、風呂に入いろうとしていた。
湯船に入って、ぎょっとした。
自分の下半身が、女になっている。
Dカップの大きな胸がある。
体毛が全てない。
鏡を見ると、髭が完全にない。
筋肉質だった体に、筋肉は見られず、
代わりに、たぷたぷの脂肪があった。
女のように、お尻が大きい。
「ウソだ、ウソだろう。」と何度見ても間違いはない。
自分の体は女だった。
康夫は、着替え室のカーテンをしめ、
服に着替えようとした。しかし、Dカップの胸は、どうしようもない。
ズボンが大きなお尻のため入らない。
康夫は、ズボンのファスナーを明けたまま、
胸を隠し、逃げるように自分の寝室に行った。

母吉江が、次に風呂に入った。
きゃーと叫んだ。
体が男になっている。
吉江も、逃げるように、ベッドルームへ行った。

下の妹ナルは、トイレで気が付いた。
真っ青になった。男の証がある。
胸がまったくなくなっている。
お尻が小さい。

ナルは、トイレを出て、急いで自分の部屋に閉じこもった。

その下の妹エルも、風呂場でキャーと叫んだ後、
体もろくに拭かず、自分の部屋に閉じこもった。

4人はそれぞれ、四様に、驚き、嘆き、苦悩し、明日からの自分を思って、
絶望し、布団の中で身動きもせず、まんじりともせずにいた。

一人、夏樹だけが、セーラー服を着るのを楽しみに、
うきうきしながら安らかな眠りについた。

*    *    *

時間は遡って、午後7時。
担任岸川五郎の部屋。
岸川は、42歳。独身でマンションの気楽な一人暮らしだった。

幻覚発動の時間であった。
五郎は、ビールを飲みながら、枝豆をほつり、
テレビのお笑い番組を見て笑っていた。
ふと、枝豆をとろうとして、体の異変に気が付いた。
腕に柔らかい感触を感じた。
むっ。あ、なんだこれは!
自分の胸にDカップの胸があることに気がついた。
思わず、股間に手を当てた。
ない。男の証がない。
岸川は、思わず立って、ジャージをパンツごと脱いだ。
そして、絶叫した。
次に、シャツを脱いで、また、絶叫した。
夢ではないかと何回も確認した。
結果は同じ。自分の体は、女になっていた。

明日からどうすればいい。
胸を隠して登校するか。
生徒になんと言えばいい。
「男は、男らしく、女は、女らしく」が自分の口癖であり信条だ。
「自分の言葉に責任を持て。」
それも、生徒に口をすっぱくして言ってきた言葉だ。
今、自分の言葉に責任を持つならば、女は女らしく、
自分は明日から女の服を着て、女らしくせねばならない。
できるものか。俺の心は男だ。
男の心を変えるわけにはいかん。心は何があっても変わらん。

ふと、及川夏樹のことが頭にうかんだ。
あいつの心は女だ…。それなのに俺は…。
ああ…、と五郎は頭を抱えた。
「及川、許せ。許してくれ。」
五郎は、生まれて初めて、男泣きに泣いた。


つづく(次回は、「それぞれの反省」です。)

「GIDの男の子を救え!」②シリーズ・スーパー洋子「夏樹の女の子体験」

中休みに、クラスの女子達が、わっと洋子の回りに集まってきた。
そして、質問攻めにしていた。
それから、いっしょにトイレに行こうと言ってきた。
洋子は、夏樹のことが気になっていた。
「ごめん、あたし、職員室に呼ばれてるの。
 昼休み、一緒に遊ぼう。」
洋子は、そう言って、みんなを逃れた。
そして、何気なく夏樹の後をつけた。
夏樹は、やっぱり、トイレには行かなかった。
階下へ下りて、保健室に行った。
そして、保健室の先生に一言言った

保健室の先生といっしょに出てきた。
そして、職員用のトイレに行った。
男子トイレに入り、
保健の先生は、男性職員が入らないように見張っていた。

出てきた夏樹は、保健の先生にお礼を言って、こちらにきた。
洋子は、笑顔で待っていた。
「あ、倉田さん。見た?」夏樹は言った。
「わかるよ。これしかないよね。」洋子は言った。
「倉田さんは、どうしてそんなに理解してくれるの?」夏樹は聞いた。
「だって、あたし、夏樹君を助けるために、この学校に来たんだもの。」と洋子は言った。
「わあ、ほんと?だったら、ぼく、救われるの?」夏樹は無邪気に言った。
「そうよ。見ててね。」洋子は言った。

そのとき、夏樹は、急に立ち止まって、涙を見せた。
「ぼく、ほんとは今日死ぬつもりだったの。」
「そうだったんだ。」洋子は言った。
「でも、倉田さんが来てくれて、延期したの。英語の時間のノートの会話、うれしかったから。」
「よかった。あたし、間に合ったんだね。」
「わあ、その言い方、本当に助け人みたい。」
「ほんとよ。」
そう二人で、話していたとき、クラスの女子らしい5人が行く手に立っていた。
夏樹が、さっと緊張した。
「だれ?」と洋子は聞いた。
「ぼくを一番いじめる女子グループ。沼田絵里とその子分達。」夏樹は言った。

沼田絵里は、髪が長くて背が高く、ちょっとお嬢様風でかなり美人だ。
だが、目が意地悪そうだった。後の4人は、只の小物に見えた。

沼田と4人が、おもしろそうに二人を眺めていた。

夏樹と洋子が近づいていくと、子分達が通せんぼした。
「何がおもしろくて、コイツなんかと楽しそうにしているわけ?」
沼田がそう言った。
「楽しいからよ。」洋子が言った。
「そいつ、オ△マよ。男のくせに、女みたいになよなよしやがって。」と沼田。
「それを、言うなら、沼田さんも、同じじゃない。
 男のくせに、女の格好してさ。後の4人も、みんな同じ。全員オ△マのくせに。」洋子は言った。
5人は、洋子の言葉の意味がさっぱりわからずにいた。
ただ、洋子の言い知れぬ存在感に、気圧されていた。

洋子は、このとき、この5人に、自分の体が男であるという幻覚を植えつけた。
とりあえず、48時間有効にしておいた。それで、懲りなければ、1ヶ月。
洋子の与えた幻覚は、明日、タイミングを見て発動させようと思った。

「さ、夏樹君、行こ。この5人は、自分のことオ△マって言ってるよ。」洋子は、言って、
5人をすり抜けて行った。

夏樹は、洋子に学校中を案内した。
そして、教室に帰ってくると、洋子の回りに誰もこなくなっていた。
さては、あの5人が、洋子に口を利くなと伝令を飛ばしたにちがいない。

担任の岸川にも、洋子は朝幻覚を与えた。
自分の体が、女であるという幻覚だ。それは、今日の夜7時に発動するようにした。



洋子の回りに人が来ないようになったことは、幸いだった。
夏樹といっしょにいることができた。

「夏樹君。今日、あたしの家にこない?
 夏樹君を女の子にしてあげる。」と洋子は最後を夏樹の耳のそばでいった。
「ほんと。すごくうれしい。」と夏樹は言った。



夏樹の家に寄って、それから、洋子の家に行った。
母の美佐子がいた。
「母さん、この子、夏樹さん。ほんとは女の子なんだけど、学生服登校しているの。」
洋子はそう紹介した。
「まあ、可愛い人ねえ。どんな事情があるのか知らないけど、がんばってね。」
と美佐子はいた。

洋子の部屋に行くとき、
「優しいお母さんだね。」と夏樹が聞いた。
「夏樹君のお母さんは?」と洋子が聞いた。
「外見ばっかり気にする人。だから、ぼくのことわかってくれない。」
「お父さんは。」
「うん。堅物。建築現場の監督。」
「ご兄弟いる?」
「うん、妹二人。美人だけど、ぼくのこと分かってくれない。
 お兄ちゃん、キモイっていう。」
「そうか。環境としては、最悪だね。」
「うん。最悪。」

夏樹とベッドに座っていると、母がジュースを持ってきた。
二人でそれを飲んで、
「さあ、夏樹ちゃんを、女の子ちゃんにするわよ。」と洋子が言った。

夏樹は、心臓をときめかせていた。
「まず、髪の毛の下の方にカールしておくね。それから、前髪にも。
 じゃあ、裸になって。私のだけど、この下着をつけて。あたし、後ろ向いてるから。」
夏樹の興奮は、高まっていった。
ああ、ステキなピンクの下着だ。
ショーツを履いた。そして、生まれて初めてのブラをつけた。
なんとか、後ろのホックを留め、スリップを被った。
ブラに詰め物を入れた。ああ、感激。

「洋子、着たよ。」
「わあ、外からもわかったけど、肩幅も狭いし、腕細いんだね。
 色も白い。やっぱり女の子に生まれてくればよかったね。」と洋子は言った。
夏樹の長い脚。ピップが足りないので、洋服でごまかそうと思った。

夏樹をドレッサーの前に座らせ、簡単なメイクをした。
「わあ、メイクまでしてくれるとは思わなかった。」と夏樹は言った。
夏樹の睫をマスカラで太く長くした。
そして、ピンクのリップ、チークを入れると、夏樹の顔は見違えた。
「わあ、夏樹、すごい美人だね。」と洋子は言った。
「今、うれしくて、天にも昇る気持ち。」と夏樹。

「セーラー服がいい、ピンクのワンピースがいい?」と洋子は聞いた。
「ワンピースがいい。」と夏樹は言った。
シルク感触のピンクのワンピース。背中のファスナーを空けて、夏樹を入れ、
袖を遠し、背中のファスナーをあげる。
ウエストの太いリボンを後ろで蝶々に結ぶ。可愛い。
真珠のネックレス。
そして、髪に巻いてあったホットカーラーをみんなはずして、
櫛とブラシで、ヘアスタイルを整える。出来上がり。

「はい。全身を見てみて。」と洋子は言った。
「わあ~。」と言って、夏樹は、鏡に見とれた。
可愛い。予想以上だった。
洋子は、夏樹にストールに座らせ、ずっと鏡を見させた。
「あたしは、下で飲み物の用意をしてくるから、ずっと見ているといいわ。」
洋子は、そう言って、下に行った。
それは、夏樹にゆっくりと鏡を見る時間をあげるためだった。


つづく(次は、「家族全員GID体験」です。)

「GIDの男の子を救え!」①シリーズ・スーパー洋子7

このお話は、1998年、Windows98が、登場し、各家庭にパソコンがやや普及し始めた頃を舞台としています。そのころは、まだ、「性同一性障害」という言葉は、ほとんど知られていませんでした。

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「スーパー変身マン・倉田洋次・第7話①「GIDの男の子を救え!」

6月になった。
稲田第2中学の2年生・及川夏樹は、
朝から、考えていた。
もう、死んでしまおうか、それとも不登校になろうかと。
不登校になっても、家族の理解がない。
自分には、もう行くところがない。
道は1つだと。

夏樹は男子であったが、生まれたときから、
自分は女子であると思ってきた。
それを、誰も理解してくれなかった。
いや、一人、保健室の杉田景子先生だけが理解してくれる。
だが、家族も、学校の生徒も、先生達も誰もみんな、わかってくれない。
女なのに、男の身体を持っていることが、どれだけの苦しみであるか。

朝のホームルームを待つ時間、夏樹は、自分の明日を考えていた。
一番後ろの席で一人でいた。
男子も女子も、夏樹をキモイと言って、隣になるのを拒んだ。
しかし、夏樹にとっては、その方がずっと気持ちが楽だった。

夏樹は、長い肩まで届くストレートの髪に前髪。
そして、男子とは思えない女性的な可愛い顔をしていた。
体は細く、学生服がだぶだぶに見えた。

今日が自分の最後の日かも知れない。
どうか、今日くらい、嫌なことが何も起きませんように。
夏樹は、そう、祈っていた。

その朝のホームルームに、
担任の岸川が、一人の女子生徒を連れて来た。
担任は、いかにも体育会系と言った感じで、
背も高く、体格もビア樽のようによかった。
学校で、一番恐い先生であった。

「えー、みんな、転入生の倉田洋子だ。
 名前は、こうだ。」
そういって、岸川は、黒板にでかでかと洋子の名前を書いた。
「じゃあ、倉田は、自己紹介しなさい。」と先生が行った。
倉田という子は、おかっぱの髪をした、可愛い子だった。
髪の一部に一房、髪を束ねている。
みんなに、挨拶するまえに、自分の前髪を、息でふーと飛ばした。

「えーと、倉田洋子です。なんの取り柄もありません。
 みなさん、どうぞ、よろしく。」
ときびきびした動作で挨拶をした。

「じゃあ、倉田は、後ろに空いてるだろう、
 あの、及川の隣に行け。」岸川は、そう言った。
クラスでざわざわと声がした。
まるで、その席に行ってはいけないような。
倉田洋子は、夏樹の隣に来た。
座るときに、夏樹を見て、にこっと笑顔をみせた。
夏樹は、洋子にいい印象をもった。
同時に、自分がどんな生徒であるかわかったら、
クラスの女子と同じように、自分を避けるのだろうな、
夏樹は、そう思った。
いすれにしても、この子と並ぶのも、
今日が最後になるかも知れないと思った。

担任の岸川が、出席をとりはじめた。
やがて、夏樹の名前に近づき、
「及川!」と言った。
夏樹は、消え入りそうな声で、
「はい。」と言った。
「なんだ?聞こえんぞ。いるならはっきり言え!」
岸川は、大きな声で言った。
先生が恐くて、しーんとした教室。
夏樹の声が聞こえぬはずはない。
洋子は、担任の岸川に、少しの意地悪を感じた。
夏樹は、震える声で、「はい。」と言った。
「男なら、でかい声で言えい!」
と岸川はどなり、耳をこちらに向けた。
夏樹が、涙を浮かべて、消え入りそうな声で、「はい。」と言ったとき、
洋子は、その「はい。」の音声を、
唇を丸く絞り、ふーっと空気を鉄砲玉のようにして、
岸川の鼓膜まですごい速さで飛ばした。

「わあ!」と言って、岸川は黒板まで飛んだ。
他の生徒は、何があったのか、まるでわからない。
岸川は、ものすごい音量の「はい。」に直撃された。
岸川は、ショックで、ただ、夏樹を見つめていた。

しばらく岸川の片耳は聞こえなくなっていた。

それどころか、残響が、頭の中にこだまして、岸川は、
残りの生徒の「はい。」を聞くことができない。
「もっと、大きな声で言ってくれえ。」
と最後は、神頼みのようにして生徒に頭を下げていた。
岸川は、さかんに首をかしげながら教室を出て行った。

これでもう、あの担任は、夏樹に「大きな声で。」とは言わないだろうと洋子は思った。

夏樹には、何がなんだか、少しもわからなかった。

洋子は、少し夏樹を観察した。
首から上は、女の子。可愛い。
背筋を伸ばし、きちんと膝をつけていることも女の子。
「はい。」の声も女の子みたいだった。
学生服を着ていることだけが、男の子。

さて、女の子が、男の子になりたくて、学生服を着ているのか。
それとも、男の子が女の子になりたいのに、仕方なく学生服を着ているのか。
及川夏樹、名前は、男女どちらでもあるえる。



1時間目は、英語だった。
洋子は、夏樹の動作、仕草を見た。
『女の子だ。すべての仕草、動作が女の子。』
及川夏樹は、心が女の子、体が男の子。きっとそうだと思った。
後ろに、一人でいるということは、クラス中から弾かれている。
トイレに苦労しているだろうな。
個室じゃないとできないだろう。
男子が上から覗いてからかってもいるだろう。
これじゃ、安心してトイレも行けない。
担任からしてあの態度だ。
学校からも理解されていない。
長髪にできているのは、これだけは譲れないと夏樹が死ぬほどがんばったからだ。
私がここにきた理由がわかった。
夏樹を救うことだ。
夏樹は、今絶対絶命のところに立っている。
多分、今日あたり、死の覚悟をしている。
洋子はそう思った。



英語の授業が始まった。
しばらくして、夏樹は、となりの洋子が、
何か書いたノートを見せに、夏樹の机に突き出してきたのがわかった。
「Are you GID?」
夏樹はビックリして、洋子を見た。洋子はにっこりしていた。
夏樹は、今まで、「性同一性障害」という言葉さえ、誰にも理解されずにきた。
それを、その省略語である、「GID」なんていう言葉を知っている人に出会ったこともない。
夏樹は、うれしくて、「Yes!」と自分のノートに書いて、洋子に見せた。
洋子は、また、にっこりして、ノートに書いてきた。
「MtF?」
夏樹は、心で飛び上がって喜んだ。
こんな言葉も知っている女の子が来てくれるなんて。
「Yes, I am.」
と書いて洋子に見せた。
洋子は、にこにこして、ステキなウインクを、夏樹にして見せた。

夏樹は思った。
『倉田さんは、GIDではないだろう。でもそれを、わかってくれる人だ。

今日、死のうと思っていた。
それは、延期だ。』


つづく(次回は、「夏樹、女の子になる」です。)

スーパー変身マン・倉田洋次外伝「スエーデンの森」 1話完結

すいません。これは、私一人のお楽しみとして、自分のために昔書いたものです。
次回作のアイデアが浮かびませんので、これしかなくて、一応投稿します。
読んでくださると、もちろん、うれしいです。

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ガミガミうるさい上司の近藤百合子に叱られ、
倉田洋次は、また胃の痛む毎日だった。
自分はどうしてこうも仕事ができないんだろう。
はあ~と思ってトイレに行った。
「すぐ帰ってくるのよ。」とすかさず、百合子に言われる。
トイレで、ストレスの回復を図っていることがばれている。

『ああ、また、スーパー洋子になれないかなあ。』
洋次は、個室の便器に座り、ため息をついた。
そして、自分の足を見て、あれ?
女の子の足。
じゃあ、女の子になったのかも。
スカートを履き、外に出ると、そこは女子トイレだ。
「おお、やったー。」と思い、トイレの鏡を見ると、
いつものトッポイ洋子になっている。
どうしてまあ、幼い顔になるんだろう。
身長は、155cmくらいか。
前髪、ストレートな髪の毛は、肩くらい。
前髪をピンで少し留めて、おでこを見せている。
『推定年齢、16歳。高1か…。』
とほほと思った。
そして、いつものくせ。下唇を出して、ふーと前髪を飛ばした。

トイレの外に出て思った。
少し変だ。廊下が古い。
そういえば、トイレも古かった。
え?ひょっとして、過去にでも来たのかな。
そんなのありなのかな?
洋子は、ポケットからケータイを出して見ようとしたが、
そんなもの入ってない。
変だ。

オフィスに戻った。
やっぱりオフィスが古い。

それよりも、自分は、スーパー洋子になっているはずなのに、
ぜんぜんそんな気がしない。

案の定、自分の机に、鬼の百合子が待っていた。
「3分20秒。長過ぎよ。」と言う。
「計ってたんですかあ?暇ですねえ~。」
と洋子は言った。
「こうしないと、あなた、いつもサボるからね。」
百合子がそう言って、行ってしまったので、
急いでカレンダーを見た。
1970年。うわ、40年も前の時代に来た。
それなのに、近藤百合子はそのまま、課長も同じ人、
他の社員もみんな同じだ。

そこへ、百合子がきた。
「倉田さんって、英文科よね。」と百合子が猫撫で声でいう。
「一応そうですけど、英検2級、立派に落ちました。
 自慢じゃありませんが、英語できません。」
と洋子は言った。
「まあ、ご謙遜を。洋子ちゃんは、お仕事が速いから、
 これね。たった3ページの論説文。間違いをチェックしてね。
 たった、3ページですからね。」
百合子は、最後の言葉を、洋子の耳元で言った。

『くわあ~。腹立つう。』と洋子は、百合子の後ろ姿に「キー!」とした顔をした。

ああ、まだスーパー洋子になった気がしないなあ…と洋子は嘆いた。

3ページの論説文は、世界に不動の座を誇るロック・グループ、
ザ・ヴェートルズの新曲「スウェーデンの森」に関する哲学的な考察とあった。
『なによこれ?』洋子は首をかしげた。

論文の第一ページは、英語の歌詞と、その対訳が載っていた。
それから、「スウェーデンの森」という言葉の、哲学的意味が、第2、3ページに述べられていた。
きっと、音楽雑誌の1記事になるのだろうと思った。

洋子は、曲の歌詞をざーと読んで見た。
そして、あらまあと思った。
歌詞は、ナンパした男が女に出し抜かれるトンマな話を綴ったもの。
最後は、悔し紛れに、女の部屋に火をつけている。
『放火の歌じゃん。』と思った。
または、女と上手くやれて、「へへへ。彼女にその気あり。」とほくそ笑んでいる歌だ。
『となると、火をつけたのは、煙草でも吸ったということかな?』
多分、ジャン・レオンが、自分の浮気のことを、自嘲的に、歌った楽曲だろう。

ここにどんな哲学的考察があるっていうの?
洋子はそう思った。

あれれれ?と洋子は思った。自分の力では、こんなに英語は読めない。
英語の歌詞は、なおさらむずかしい。
スーパー洋子になってるのかな?
じゃあ、何かの使命がある。
この3枚の論説文を校正することなのか。
え?そうなの?と思った。



原題は「Swedish Wood(「スウェーデンの森」)

ああん、もう題名から、すでに誤訳だ、と洋子は思った。
「Swedish Woodは、「スウェーデン木材」のことじゃん。
「森」ならば、「the」が頭につくか、「woods」と、
最後に「s」がつかないとおかしい。
スウェーデン木材は、安くて、ランクの低い松材だ。

洋子は、歌詞を見て誤訳を確信した。

歌詞の対訳の一部は、こうなっていた。

『あるとき女をナンパした。
 それとも俺がされたのか。
 女は俺を部屋に招いた。
 そこは、スウェーデンの森だった。
 まあ、いいか。
 ・・・・・・・・』

「そこは、スエーデンの森だった。」
はあ~?なによこれ?全く意味不明。

『女は俺を部屋に招いた。
 そこは、安っぽいスウェーデン木材の部屋だった。
 まあ、いいか。』

これなら、通じる。

論説文の女史は、『おんなの部屋が、スウェーデンの森だった』ことについて、
その「スウェーデンの森」の意味を、哲学的な味付けをして長々と説いている。

ヴェートルズの信奉者は、「スウェーデンの森」という言葉を好み、
そこに、哲学的意味を模索することを好んでいた。
女史の論説は、まさにそのような若者を対象にして述べられたものだった。

洋子は、再びあらまあ、と思った。
題名の誤訳を指摘すると、女史の書いた論文の全てが意味をなさないことになる。

洋子は、また、ふーと前髪に息を拭きかけた。
困った。どうしよう…。

「洋子ちゃん、進んでるかな。たった3ページだもんね。」
と百合子が見に来た。
「何よ、何にも赤が入ってないじゃない。」
と百合子は言う。
「あたしをこの仕事からはずしてください。」
洋子は言った。
「何よ。内容がむずかしいってわけ?
 英語があるけど、ちゃんと対訳がついてるでしょう。
 だから、あなたでもできると思ったのよ。
 このくらいで音をあげるの?」
百合子は言った。

「ちょっと違います。」
と洋子は、「ブー。」と頬をふくらませて言った。

「題名が誤訳です。
 誤訳なのに、その題について書かれている論説文ですから、
 できることは、ただ2つです。全文書き換えか没です。」
洋子は言った。

「どうしてなの。」
と百合子は言った。
「『Swedish Wood』は、『スエーデンの木材』と訳すべきです。
 百歩譲って、題名だから、きれいに『スウェーデンの森』でもいいです。
 でも、歌詞の対訳の中では、『安物のスウェーデン木材』と訳すべきです。
 この歌に、哲学的考察なんて必要ないです。
 だって、女をナンパして、振られたトンマな男の話ですよお。

 ジャン・レノンは自分の浮気のことを歌にしただけです。
 表向き、女に出し抜かれたトンマな男にしてます。
 だって、ナンパが成功した歌なんて、世に出せません。
 でも、歌詞の端々に、浮気が成功したことを暗示させる言葉があります。
 題名をもっと正確に訳せば、『彼女にその気あり』です。
 ジャン・レオンの浮気は、成功していたんです。」
洋子は一気に説明した。

百合子は言った。
「だって、この曲は、リリースから5年も経つけど、
 『スウェーデンの森』として、日本中に知られているわ。
 それが、誤訳だなんて指摘、聞いたこともないわ。」

「指摘がなかったことが、不思議なくらいです。」
洋子は言った。

洋子が、こうすらすら自信をもって言うのは、不思議な力をもっているときだ。

百合子は、念を入れ、翻訳課にネイティブのイギリス人の若い女性がいるので、
洋子の原稿を持って、彼女の所へいった。

ミス、ウェルソンは、背の高いインテリジェンスあふれる女性だ。
日本語もかなり話せる。
百合子は、洋子の話をミス・ウェルソンにした。
彼女は、
「洋子さんは、英語の歌詞を見て、『彼女にその気』ありが、
 最もふさわしい題だとおっしゃったのですか?」

「そうなの。バカげているでしょう?」
と百合子は言った。

「おー、洋子は、ワンダフルです!
 どうして、洋子が、英文の歌詞だけから、
 その言葉を見つけられたのか、不思議なくらいです。」

ミス・ウェルソンは、続けた。
「洋子の言ってることは、全面的に正しいです。
『Swedish Wood』というのは、ジャンが最後にこじつけでつけた題です。
 意味は、安価なスウェーデンの木材のことです。
 
 ジャンは、『彼女にその気あり』って言いたいのを、
 語呂の似た『Swedish Wood』に替えたのです。
 だから、Swedish Woodについて、深い意味を考えるなんて、ナンセンスです。
 これは、イギリスのヴェートルズのファンなら、誰でも知っていることです。」
と、ミス・ウウェルソンは、笑いながら言った。

はあ~と百合子は思った。
体から、力が抜けるようだった。
そして、最終確認として、ヴェートルズのレコードを出した、
TSレコードの翻訳担当の高橋という人へ、電話をした。

「スウェーデンの森」は、高橋さんが翻訳なさったのですね。」
「はい、私です。」高橋は言った。
「実は、内の社のものが、高橋さんの「スウェーデンの森」は、誤訳で、
 本来は、「スウェーデンの木材」と訳すべきではないかと言っているんですが。」
百合子は言った。
すると高橋は、
「いやーあ、それなんですが…。実にその通り。私は、訳を完全に取り違えた。
 少なくとも、訳文では、木材にすべきだったんだがね。
 もう、世に出しちゃったから、知らんふりしてたんだよ。
 どうか、ご勘弁願いたい。」

「じゃあ、『スウェーデンの森』という言葉を深く考察することは、無意味ですか。」
「そうなんです。私が、歌詞の中の訳も、『スウェーデンの森』としたので、
 多くの若者に深読みをさせてしまっている。私の罪です。申し訳ありません。」
高橋氏は、そう謝った。
「なぜ、訂正なさらないんです。」
百合子は、出版人の良心として、そう問い詰めた。

「それは、この5年間、『スウェーデンの森』を巡るいろいろな方の論説が出まして、
 今、誤訳を私が認めたりすると、それらの論説を全て無意味化してしまいます。
 そこに哲学的意味を求めている多くの若者の夢も壊します。ですから、できなかったのです。
 大変、申し訳ありませんでした。」

「それでも、訂正なさるべきでした。イギリスの人達から見て、
 それらの論説や、題名を巡って語り合う若物が、さぞ滑稽に思われたことでしょうね。」
百合子は、腹を立て、自分の方から、電話を切った。



百合子は、がっくり疲れたようすで、洋子の隣の椅子にすわった。
「あなたが、正しいわ。また、スーパー洋子ちゃんになったのね。
 この原稿、著者にお返しするわね。
 うちじゃできませんって。理由も言って。
 洋子すごいわ。やっぱ、英文科ね。」
「英検2級、自慢ではないですが、落ちました。」
洋子は笑いながら、言った。

原稿の著者、秋野和子は、百合子の話しに納得しなかった。
そして、他の出版社に持っていき、それは、雑誌の一部になって、
販売された。

こうして、1970年代には、「スウェーデンの森」の誤訳を指摘する人はいても、声は届かず、
長い間、「スウェーデンの森」の意味について、いろいろに語られた。

それから、約20年後、70年代当時、誤訳に気が付かなかったインテリ界の人々に対し、たっぷりな皮肉を込めて、ある若者が、同名のタイトルをつけ、ある小説を出版した。

「スウェーデンの森」 村下夏樹。



<おわり> (次回は、未定です。)

11歳法⑧「性別適合手術」最終回

美加は3年生になった。

美加の身長は162cmになった。里奈は、160cmで止まった。
高志は、175cm、修司は、178cmになっていた。

性別適合手術をするかしないか、いよいよ選択の学年である。

帰り道、美加と里奈は話した。
「里奈、もう決めた。」美加は言った。
「うん。自分がこんな選択するなんて昔は思ってもみなかった。
 あたし、修司とドナーになり合って、完全な女の子になる。
 修司と出会ってから、迷ったことない。」
里奈は言った。
「うん。あたしも、高志と結ばれてから、迷ったことない。」
美加は言った。

「あたし達、Aクラスなんだよね。女装子なのにね。」と里奈。
「そうだね。男の子の存在って大きいね。」
「うん。美加と高志くんが、あたしを修司に会わせてくれなかったら、
 あたしの選択違っていたかも。」と里奈。
「二人とも、女の子になっても、里奈とあたし、できるもんね。」美加。
「そうね。純レズになるね。」
「ほんとに。」
二人で、くすっと笑った。



学校に最終に意志決定を提出するのは、12月だった。
3年生になると、ペア中学である男子校の3年生同士で、
懇親会が何度も開かれ、お互いにペアを見つける。
ほとんど、ペアが見つかる。
見つからない生徒は、他校に問い合わせ、調節する。

12月になり、美加と里奈は、「希望する」として、意志決定を出した。
もちろん、高志も修司も希望した。

手術は、正月の明けた、1月10日から順に行われる。



美加と忠志は、里奈と修司より1日早く、明日に手術を迎えていた。

夕飯の席で、「いただきます」をしても、
美加は、うつむいたままだった。
「お姉ちゃん、どうしたの。」と由梨が聞いた。
美加は目に涙をたくさん浮かべていた。

「お父さん、お母さん、あたし、明日で女の子になります。
 男の子だと思って育ててくれたのに、
 女の子になってしまうの。ごめんなさい。」
そう言って、美加は、涙を膝に落とした。

父は、
「いいんだよ。父さんは、美加の選んだ道を行ってくれれば、
 それが、いちばん幸せだから。
 手術が終わったら、赤飯焚いて、お祝いしような。」
と言った。
母は、
「この3年間、あたしの娘美加と毎日過ごしてきた。
 男の子のときの美加のこと、忘れちゃったわ。
 生まれたときから、美加はずっと女の子だった気がしてる。」
と言った
由梨は、
「お姉ちゃん。1年生のときは、まだまだ全然女の子じゃなかったけど、
 今のお姉ちゃんは、女の子として、100%合格だよ。
 どこにも男の子が残ってない。おめでとう、お姉ちゃん。」
と言った。

美加は、涙の顔を上げた。
「ありがとう。厳しい由梨から合格点もらったから、
 あたし、自信をもって女の子になるね。
 明日の手術、がんばる。」
美加は、笑顔を見せた。



翌日、病院に、美加は家族みんなと来た。
高志も家族とやって来た。
家族同士、さかんに挨拶をしていた。

「いよいよだな。」と高志は美加に言った。
「うん、とうとうこの日ね。」と美加。
「俺、昨日から楽しみで眠れなかったよ。」と高志。
「あたしも、早く女の子になりたくて、眠れなかった。」と美加は言った。

二人は家族に挨拶し、準備の部屋に案内された。
そこで、手術用の服に着替えた。
少し広めの手術台があり、そこに二人並んで寝た。
二人は、手をつないでいた。
消毒を受けて、手術室に入った。

手術は、すべてコンピュータが、データ処理をして、指令を出し、
一人につき、20本のロボットアームで行う。
一人の医師だけが、監視する。

麻酔をかけられ、二人は眠った。
手術は始まった。
RG光線という新開発の光で、切断し、二人の臓器が交換され、
20本のアームが、対応するすべての物を接合していく。
血管、リンパ管、道管、筋肉…。
接合されたところは、完全密着し、その場で接合を完了する。

こうして、大手術ではあるが、30分ほどで終わった。
異常なし。手術は成功した。

二人は手をつないだまま、麻酔の眠りのまま、病室へ運ばれた。
目が覚めたとき、もう普通に歩けるし、移植したものも機能する。

家族は手術の成功を知らされ、喜んで家に帰った。



次の日の朝、二人は目覚めた。
手をつないだまま、それぞれシーツを掛けられていた。
「美加、起きてるか。」高志は言った。
「うん、今、目が覚めた。」美加は言った。
高志は、シーツで被われた下腹部を見て言った。
「美加、見てくれ。俺、テント張ってる。おお、感動!」
美加はそれを見て笑った。
「高志ったら、もう、やあねえ。」
「なんで、朝からこうなるの?美加、教えろ。
 美加も毎朝こうだったのか?」
「知らない。言えっこない。聞かないで。」美加は向こうに寝返った。

看護士さんがやって来た。
「はい、すぐ退院できますよ。もう完全です。
 すぐにでも、試せますよ。」
と看護士さんは、最後の言葉を小声で言った。
「看護士さん、『試せる』ってつまりなんですか。そのお…。」高志は言う。
「高志、もう止めてったら。わかってるくせに。」美加は真っ赤になった。
「美加、試せるって。早く試そう。」
「大きな声で言わないで。もう、高志ったら。」美加は、枕で高志の顔を塞いだ。

更衣室で、
美加は、ショーツを履いたときに、下半身にぴたっとフィットすることに感激した。
高志は、トランクスを履いて、
「なんだ、こいつ。美加、右にするのか?左にするのか?
 迷うじゃねーか。こんな事態、考えてなかったぜ。」
としきりに言っていた。

二人は、家に帰る前に、カラオケ店に行った。
やはり、一番に試して見たかった。
小テーブルを動かして、ふかふかのジュータンの上で二人は抱きあった。
「おお、美加、感動。俺のかちんかちん。美加、さわって。夢見てえ。」
高志は言って、
美加は笑った。

それから、二人は口付けをして、体中を撫で回した。
高志の手が、美加の新しい器官に達した。
高志は、その器官について知り尽くしていた。
だから、美加を最高に喜ばせたいと思った。
美加は、あそこが潤っていることに感動した。
高志の指が周辺をなでる。
何度も何度もじらす。
美加は、それだけで気が狂いそうになっていた。
『ああ、すごい、すごい、こんなに感じるものなんだ。女の子っていい、うれしい。』
そう思っていた。
やっと、高志の指が、あのスポットに触れた。
「あ………。」
美加は、想像を絶する快・かんにのけ反った。
感動だった。ああ、うれしい。こんなに感じるの?すごい。幸せ。
それは、序の口だった。
知り尽くした高志のあいぶに合い、美加は絶叫した。
1オクターブ高い女の子の声を連発した。
そして、高志のものが入ってきた。
ああ、本当に受身になってる。高志のすることなら何でも受け入れられる。
何度も入ってくる高志のものに、美加は、感動して涙が出てきた。
高志は、自分のもので、美加がこれまで見せたこともないような半狂乱になっていることに、
心の底から喜びを感じた。女の子を喜ばせる、それが、そのまま男の喜びだとわかった。

やがて、美加が達していくのがわかった。男のように急激には来ない。
ゆるいカーブを描くように上昇していく。
美加は、全身を痙攣させ、やがて高みへと向かって行く。
高志は、自分も達しそうだった。もうすぐいく。
美加が陶酔の境に達っしていく。
高志は、限界が来ていた。
「ああ、美加、俺、もう行く。」
「あああ。」と美加がアゴを突き出し、小さな叫びを上げた。
美加は、到達した。
高志は、自分のものを抜いて、美加のお腹の上に起き、
美加に覆いかぶさり、体を少し動かした。
高志も到達した。
高志は、美加を力強く抱いた。
美加の波は静かに引いて行った。

美加も高志を抱き返した。
そして、二人で口づけをした。

「高志、ありがとう。最高のプレゼントをもらった。」
と美加は言った。
「それは、俺の方さ。男になってみて、初めてわかった。
 好きな子を、喜ばせることの喜び。いままでは、本当にわかっていなかった。」
高志は言った。
「うん。最高に喜んだ。こんなにステキだとは思わなかった。
 女の子になってよかった。なんだか、涙が出てくる。」

二人は、また抱き合い、口付けを交わした。



家に帰ったら、テーブルにお祝いの料理がならんでいた。
家族のみんなは、にこにこしていた。
赤飯もあった。
テーブルについたら、みんなが、「おめでとう!」とクラッカーを鳴らした。

「いいな、お姉ちゃん。本物の女の子になれて。」と由梨が言った。
「由梨は、あと2年のがまんだね。」と美加は言った。
「気分は、どう?」と母が聞いた。
「それはもう、最高!」と美加は答え、笑った。


次の日の夜、里奈から電話がかかってきた。
「里奈?」
「うん。」
「泣いてるの?」
「うん。うれしくて泣いてるの。」里奈。
「感動したよね。」美加。
「うん。感動して、涙が出てきた。」
「あたしも。感動して涙が出た。」美加。
「もう、気絶しそうだった。」里奈。
「女の子になって、よかったよね。」美加。
「うん、よかった。」里奈。

日曜日は、美加と里奈がいっしょに過ごせる日だった。
午後、里奈が来て、
美加は、里奈とスリップ1枚になって、
毛布にもぐった。
「ああ、お姉様。」
と里奈は、抱きついてきた。
「女の子は、何回もイけるんだって。」と里奈。
「うれしいね。」と美加。
「試そうね。」
「うん。」
「高志が言うんだよ。
 そんなの、女の子同士が、じゃれてるようなもんだろうって。」と美加。
「じゃれてる、以上だよね。」と里奈。
「そうじゃれてる以上よね。」と美加。
「男の子には、それ言わないでおこう。」と美加。
「賛成。」
二人は、くすっと笑い、口びるを重ねた。




※長い物語を読んでくださって、ありがとうございました。
 次回は、未定ですが、何か書きたいと思います。

11歳法⑦「全員女の子として合格」

長々連載してきましたが、次回で、最終回としたいと思います。これまで、読んでくださって、ありがとうございました。今日と明日の最終回、読んでくださるとうれしいです。

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二学期が始まった。
美加が教室に来て見ると、里奈がみんなに囲まれていた。
「や~ん、里奈、超可愛い。あたし、がまんできない。」と誰か。
「ね、今日、あたしと遊んで。あ、でも競争率高そう。」と別の子。
遊ぼう…とは、……の意味。

女装子のAクラスのみんなは、互いに女装の子が好きだ。
ある子に対して独占欲はなく、
可愛い子は、みんなのものだった。
そこは、C、D組のGIDの子達と決定的に違うところだった。

夏休みの期間、みんな何かしら整形をしていたが、
里奈のように完璧にやった生徒はいなかった。

里奈は、今やクラスのマスコットであった。
美加は、よかったね…と心で里奈に言った。

里奈は、休み時間に、いろんな子に外に連れ出され、
抱かれたり、口づけをされたりしていた。

しかし、帰りになると、里奈は必ず美加の所へ来て、
いっしょに帰った。
「里奈。もう完全にクラスのマスコットだよ。」美加は言った。
「うん。うれしかった。でも、里奈の心は、お姉様だけ。」里奈は言った。
「修司君もいるくせに。」
「あ、そうだった。」と里奈は赤くなった。
「二日に一回は会ってるんじゃない?」
「うん。メールもめちゃ交換してる。」
「完全にラブラブじゃない。」
「まあ、そうなの。彼のこと一日中考えてる。」
「わあ、熱いなあ。」
「えへ。美加のおかげ。」
「あたし達、今、本当のガールズ・トークやってない?」と美加。
「そうね。彼のこと考えただけで、あたし、女の子になっちゃう。」と里奈。
「あたしも、高志のこと一日中考えてるけどね。」
「わあ、ガールズ・トーク全開。」と里奈は言った。
「あたし達、どんどん、女の子になっちゃうね。」
「うん。すごくうれしい。」

そんなことを、話しながら、里奈と別れ、
美加は、家に帰った。

美加には、2歳違いの由梨という妹がいた。
正確に言えば、由梨は真治という名前だった。
由梨は、典型的なGIDだった。
3歳のころから、髪を伸ばし、
着るものは、女の子の服しか着なかった。
5歳のときには、完全な女言葉を使い、
自分を由梨と名乗った。
女の子として、学校にも行き、GIDの診断を受け、女子として扱われた。
今、小学4年生で、11歳になるのを切望していた。
顔立ちは、美加よりもさらに可愛く、整形の必要がなかった。

夕食の席で、由梨は、
「お姉ちゃん、どんどん女の子になってきたね。」
といった。
「どんなところが?」と美加は聞いた。
「食べるとき、脇を離さないし、背筋伸ばしてるし、
 お箸に乗せるご飯だって、少しずつになった。」
と由梨は言った。
「そうお?由梨に誉められると、うれいしな。」と美加は言った。

「息子が2人できたと思ったのになあ。」
と父の良夫が言った。
「ほんと、美加は男の子でずっと行くのかと思った。」
と母の涼子は言った。
「ごめんねえ。こうなっちゃった。」
と美加は、食べながら謝った。

食事が終わった。
皿洗いを、美加と由梨が手伝う。
「女の子になってくれて、こういうことは楽だわ。」と母は言う。

「これ終わったら、由梨の部屋見に行っていい。」と美加は言った。
「いいわよ。」と由梨は言った。

由梨の部屋は典型的な女の子のファンシーな部屋であった。
「もう、女の子の部屋以外の何ものでもないわね。」美加は言った。
「お姉ちゃんの部屋は、まだ全然だめよ。」
「だから、勉強しにきたの。」

「ねえ、女の子は、どうして、女の子の字が書けるの。
 由梨の書く字、典型的な女の子字じゃない。」
美加は、由梨のノートの字を見て言った。
「女の子は、みんな練習してるのよ。どう書いたら可愛い字かって。」
「そうなの?生まれつき女の子の字って決まってるんだと思った。」
「あたしは、練習したよ。友達なんかの可愛い字を見ると、
 それ真似したり。」
「そうなんだ。あたしも、女の子の字を書きたい。」
「今からでも、遅くないよ。」と由梨は言う。

「それにしても、」と美加は言った。
「なあに?」と由梨は言う。
「女性ホル打ってないのに、由梨には、女の子オーラあるよ。
 そばによったら、超女の子感じる。何から何まで女の子。」美加は言った。
「そりゃ、生まれたときから、女の子やってるもん。
 お姉ちゃんもがんばりなよ。最近、かなりいい線だよ。」と由梨は言った。
「ど、どんなところが?」と美加は身を乗り出して聞いた。
「ほら、そうやって、目をぱちぱちするでしょう。
 それ、男の子が、ぐっとくる可愛らしさだよ。」
「わあ~!」と美加はよろこんだ。
妹に誉められて、有頂天になるなんて。
どっちが姉だかわからない姉妹だった。

*    *    *

美加は、2年生になった。
この頃、クラスのみんなは、ほとんどの整形を済ませ、
みんな、里奈並みの美少女になっていた。
1年前、男の子がセーラー服を着ているだけという様子など、
思い出せないほどの変化だった。

体育の時間、教室で着替えるときも、
100%女の子たちの着替えの風景だった。
ブラ、スリップ。男の子が見たら、気絶しそうなほど色っぽい。
そして、ブルマーに白い体操着というスタアイルも、
全員女の子のシルエットになっていた。
みんなハイ・ウエストで、なだらかなピップラインを得ていた。
そして、むっちりした太もも。
みんなBカップ、Cカップの胸。
走るとそれが、上下に揺れる。

美加は、昨年の9月から、肋骨の矯正下着を着用してきたので、
アンダーバストが、68cmにキープされていた。
そして、女性ホルモンによって、脂肪がつき、
脚が長かったので、ハイ・ウエストからピップへの綺麗なラインを得ていた。
髪は、肩から背に届くようになった。
身長は、157cm。最終的に162cmくらいになると言われていた。
里奈は、肋骨を抜いていたので、55cmのウエストでまるでお人形だった。
美加は、58cm。
クラスのみんなも、里奈や美加に負けないプロポーションだった。

女の子座りは、みんな、何時間でもできるようになっていた。
脚の開脚、左右、前後、みんな180度開くようになっていた。

体育教師の近藤早苗は、少し、遊びでこんなことを言った。
「みんな、今日は、利き手で投げていいわ。
 男丸出しでいいから、すごいドッジボールをやって見せて。」
みんなは、「わあ~い。」と言って喜んだ。
そして、紅白に別れて、ゲームを始めた。

中には、スポーツ少年だった子も多くいるはず。
これは、楽しみと近藤は、思っていた。
しかし、始まってみると、みんな利き手で投げているはずなのに、
まるで女投げなのだ。
「や~ん、おかしい。ボール投げられない。」
「あたしも、昔みたいに投げられない。どうして?」
とみんな言い出した。
捕る子も、ボールをとれない。
「あ~ん。ごめんなさい。」と言って、みんなミス・キャッチをする。
コート内の子達は、どんなにゆるいボールも捕ろうとせず、
「キャー、こわい。」
「いや~ん。あたしの方に投げないで。」
といって、逃げて回る。

近藤は、これは、何たることかと見ていた。
女の子としての洗脳が、利き手にまで及んだのか。
それとも、女の子らしくありたいという強い気持ちが、
彼女らにきついボールを投げさせないのか。

ドッジボールを切り上げて、近藤は、体育館の斜め30mを走らせて見た。
すると、全員が「女の子走り」なのだった。
肩の横に拳を置き、拳を(前後ではなく)左右に振って走っている。

みんなを集めて近藤は行った。
みんな、走った後で、荒い息をして、女の子座りで先生を見ていた。

「あなたたち。もう、根っからの女の子だわ。
 この1年、あなた達を鍛えてきた甲斐があったわ。
 みんな、おめでとう。全員女の子になったわ。」
そう近藤は言った。

みんなは、わあ~などといって、近くの子と手を取り合ったり抱き合ったりして喜んでいた。
そんな様子も女の子そのもの。

そのあとは、鬼ごっこをやったが、
みんな女の子走りで逃げ、女の子走りで追いかけ、
「キャーキャー」いいながら、つかまったら、「や~ん。くやしい。」といい、
それは、完璧に女子の体育の風景だった。
しかも、女の子女の子した。



A、Bクラスというのは、言わば、理想的なクラスだった。
全員が美少女になった。
もともと、女装の子が好きな子同士のあつまりだった。
大げさに言えば、どの子も、自分以外の可愛い子がみんな好きだった。
そして、こと女装子に関しては、独占欲がなぜか、ない。(仲良しはいても。)
だから、ジェラシーを抱くことはなく、極めて平和だった。

C、Dのクラスの子は、同じ境遇の生徒ばかりで、互いに理解し合える唯一の仲間であり、
それは、それで、ある一体感が生まれ、平和であった。

高校は、今の大学にあたり、広いキャンパスをもち、
とても開放的なところだった。
クラスというものは、ほとんどなく、自分の好きな講座を希望して履修する。
多くの生徒は、サークルに参加して、青春を謳歌していた。

そして、大学は、今の大学院にあたり、自分の研究をするところとなっていた。

そんなことで、狭い教室に閉じ込められて、学習するのは、中学までであった。
そして、その中学を無事終えれば、生徒達には、明るく自由な高校が待っていた。


つづく(次回は、「性別適合手術」最終回です。)

11歳法⑥「新しい恋人同士の誕生」

土曜日の午後、美加は高志の部屋にいた。
「高志。怒ったらごめんね。
 あたし、クラスのある女の子とせっ・クスしちゃった。怒る?」
「平気だよ。美加が他の男としたなら、俺怒り狂うけど、
 女の子同士てやるのは、全然平気。
 友達同士じゃれてるのと同じじゃん。」
高志は言った。
「よかった。高志怒るかと思って冷や冷やしてたの。
 その子ね、全身整形やって、超可愛くなったの。
 高志もそういう子好きでしょう?」と美加は聞いた。

「基本的に、男は、可愛い子はみんな好きだよ。
 でも、他にどんな可愛い子が大勢いても、
 自分の好きな子が、いちばんいい。
 俺は、美加よりどんなに可愛い子がいても、
 多分、心移りしないな。あくまで多分だよ。」
高志がそう言った。
「多分で十分だよ。あたし、幸せ。」
美加は言った。

「その、美加の友達さ。ひょっとしたら、俺みたいな男と経験ないんじゃない?」
「うん。その子は、あたしが好きで、レ・ズだって言う。」
「俺、その子も、男子を経験した方がいいと思うんだ。
 まだ、知らない自分が見つかるかもしれないもの。
 その後で、やっぱりレ・ズだっていうならそれでいいし。」

「高志、だれか紹介したい男の子いるんじゃない?」
「実は、一人、いい奴がいるんだ。
 でも、すごい内気でさ、女の子に話しかけもできない。
 だけど、誠実で絶対いいヤツ。
 女の子時代、学校のマドンナだったヤツだから、ルックスは最高だよ。」
「じゃあ、あたしの友達、里奈っていうんだけど、
 二人を会わせてみようか。
 里奈も、男の子に対して、すごく内気だよ。
 ものすごく可愛いのに。」
「うん、いいね。そいつは、修司って言うんだ。」

こうして、美加と高志は、二人を会わせる計画を立てた。
そして、美加は、里奈を説得する言葉を考えていた。



明くる日、美加は里奈の部屋を訪ね、説得を試みた。
自分を好きだと言ってくれた里奈に対して、
里奈を傷つけないように、細心の注意を払い、言葉を選んだ。
里奈は、最後に首を縦に振った。

夏休みは、終わりに近づいていた。
里奈と美加、高志と修司は、
流行りのドーナツ店で、会った。

修司は、色が白く、髪の色が少し色素が少なく、
栗色の髪の毛をしていた。ヘアスタイルは、
高志のように、全体に長めで、前髪を伸ばしていた。
高志より、少し背が高く、全体に細っそりしていた。
顔立ちを見て、美加は、『すごいハンサム。』と思った。

里奈は、特別可愛い服を着てきた。
ふりふりの白いスカートに、体にフィットした桃色のラメのTシャツ。
それが、里奈の細いウエストを際出させていた。
小さな真珠のネックレス。耳に真珠のピアスをしていた。

里奈は、修司を見るなり、「あ、ステキ。」と思った。
修司も、「あ、可愛い。」と思った。
4人でドーナツを食べコーヒーを飲んだら、すぐに席を立った。

表通りに来て、美加と高志は、二人を残して、別行動をとった。

「ね、二人、上手くいくかな?」と美加は高志に言った。
「アイツ、うつむいてたけど、里奈ちゃんのことばかり、見てたよ。いけそうだよ。」と高志。
「里奈も、うつむいて、修司さんのことばかり見てた。いけそうね。」と美加も言った。



ほつんと2人残された里奈と修司は、表通りを歩いていた。
しばらく、黙っていた。
やがて、
「里奈さん、ごめんね。ぼく、女の子といると上がっちゃって、上手くしゃべれなくて。」
と修司は言った。
「それは、あたしも同じ。女の子になってから男の子と二人になるの初めてだから。
 今、すごくあがってる。」里奈は言った。

「ぼくね、まだ、男になりきれてなくて、自分のこと『俺』って呼べない。
 俺って呼びたいのに、どこか、はずかしくって。
 女だったころの自分の意識が残ってて、女っぽくないかって、いつも冷や冷やしてる。」
修司は言った。

「それは、あたしも同じ。全身整形して、今は少し可愛くなれたけど、
 鏡を見ていないと、前の男顔だった自分に心がもどってしまうの。
 そして、どんどん自信を失ってしまう。
 修司さんみたいなステキな人といると、劣等感の塊になっちゃう。」

「里奈さんの気持ち、すごくよくわかる。ぼく達、どこか似てるね。」と修司。
「うん。似たもの同士。あたし、少し安心して来た。」
「ぼくも、里奈さんといると安心する。とっても不思議。」
「あたしも。修司さんは、他の男の子とちがう気がする。あたし、今くつろいできた。」
「里奈さんも、特別な人に思える。だって、ぼくたち、今、けっこうお話してない?」
「ほんとだ。けっこうお話してるね。」と里奈は、修司に笑顔を見せた。

「ぼくね、里奈さん見て、一目惚れしちゃった。」修司は言った。
「あ、あたしも、修司さん見て、胸がドキドキしちゃった。
 男の子は、好きになれないと思っていたの。
 でも、この気持ちは、修司さんを好きになってるんだと思う。はじめての気持ち。」
里奈は言った。

「あの、里奈さんの肩に腕を掛けていい?」と修司は言った。
「うん。あたし、多分、うれしいと思う。」里奈は言った。
修司は、里奈の肩に、そっと腕をかけた。
里奈の心の中に、新しい感情が生まれようとしていた。
『男の子といると、自分は、どんどん女の子になっていく。』
それは、幸せな感情だった。

いつしか、里奈は、修司に体を寄せて、修司の背に腕を回し、
寄りかかるようにしながら、道を歩いていた。



あてどなく歩いているつもりが、
二人は、カラオケ店に来ていた。
「里奈さん。今日会ったばかりなのに、こんなところ来ちゃった。
 どうしよう。」
「あたしも、多分、ここへ来たかったんだと思う。」
「じゃあ、入ろうか。」
「うん。」里奈は明るい声で言った。

二人は、もちろん「プライベート・ルーム」を頼んだ。
飲み物を飲んだあと、二人は、見つめあった。
「あ、その、ぼく震えてる。カッコ悪いな。」と修司は言った。
「全然カッコ悪くない。あたし、もう胸がドキドキ。ねえ、触って。」
そう言って、里奈は、修司の手をとり、胸に当てた。
里奈は、何気なくやったのに、修司の手を、ち・ぶさの上に置いてしまった。

修司は、はっとした表情を見せ、
「里奈さん。ぼく、里奈さんが好きだ。」
そう言って、里奈を抱いた。
思ったよりずっと力強い修司のホウヨウの中で、
里奈は、息がつまりそうになり、
そのとき、初めての感情が心の底から湧いた。
『あ…、身も心も女の子になっていく…。』
強い男の子に包まれ、自分は弱くて華奢な女の子だと感じ、
男の子に、すべてを任せたいという感情でもあった。

「あたしも、修司さんが好き。たまらなく好き。」
里奈は言いながら、修司の背に腕を回した。

二人はジュータンの上に、一つになって転がり、
修司は、女の子の恋人ができたら、してみたいと憧れてきたことを、
里奈に一つ一つしていった。
里奈は、それを、すべて受け入れた。

最後の段階にきたとき、修司がバー・ジンであることを思い、
里奈は、バッグの中からタオルを取り出し、体の下に敷いた。
里奈の熱くなったところに、修司がかぶせるようにしてきた。
『あ…、彼と一つになっている。』という思いがして、感激した。
そして、修司のものが、自分の中に入ってきているように感じられ、
里奈は、修司にすべてを捧げている自分を思った。
それは、女子としての悦びだった。

里奈は、思い切り女としての声をあげた。
やがて、到達がやってきた。
「修司さん。里奈、もうだめ。早く、里奈から抜いて。」
と里奈は言った。
「うん。俺も、いく。」
修司は言い、体を離し、里奈と重なり合って、共に果てていった。

しばらく、二人は抱きあっていた。

「修司さん。里奈、心の底から感動しちゃった。
 男の子との……が、こんなにステキだとは思わなかった。」
里奈は言った。
「俺も。女の子との実際が、こんなにすばらしいとは思わなかった。」
修司は言った。

「あ、修司さん。自分のこと『俺』って言ってる。」里奈は言った。
「ほんどだ。俺、完全に男の気持ちになってたから。里奈さんのおかげ。
 里奈さんも、自分のこと『里奈』って言ってるよ。
 それ、すごく可愛い。」
「修司さんが、里奈を女の子にしてくれたの。」
「ねえ、もうお互い『さん付け』やめない?」と修司は言った。
「あ、そうね。修司って呼びたい。」
「俺も、里奈って呼びたい。」

ここに、一組の恋人同士が誕生した。


つづく(次回は、「晴れの二学期」です。)

11歳法⑤「里奈の願い」

カラオケは、2080年にも、健在だった。
いろいろな部屋が用意され、中でも「プライベート・ルーム」は、
中から鍵を掛けられ、ドアに小窓がなく、広いソファーがある。
床はふかふかのジュータンが敷かれている。
そして、ソファーの正面の壁に大きな鏡が貼られている。
このため、実質は、若い中学生のせっ・クスに使われる所になっていた。
元々カラオケ・ルームなので、どんなに大きな声を出してもかまわなかった。

カラオケでジュースをたのみ、二人は話した。
里奈は、したことをみんな教えた。
肢を真っ直ぐにするための、膝小僧の整形。
ウエストラインを高くする為の肋骨の切除。
骨盤を広くするための骨盤の拡張。
ウエストからピップラインまでの、脂肪の注入。
モモ全体の脂肪の注入。
首を細くするための、筋肉の縮小。
Bカップの豊胸。
顔全体の整形。
顔や皮膚全体の脱色。
歯並びの矯正。
声の整形。

「まだ、他に細かいところもあるんだけど、
 全身整形コースっていうのがあって、それにしたの。
 髪の毛だけは、今ウィッグ。」
里奈は言った。
「うんうん、大変だったね。でも、やった価値はあるよ。」
「あたらしい自分に慣れるために、1週間のリハビリをやって、
 おととい再検査して、合格して退院したの。」
「ふーん、声だって、可愛いよ。」と美加。
「あ、それ、美加の声もちがう。すごく可愛い。」
「あたしも、それだけはやったの。」と美加。

「ここまでやって、やっとあたし、美加くらいになれた感じ。」
「何言ってるの。里奈は今ダントツに美少女だよ。
 もう、女性ホルモン要らないんじゃない?」
「そんなことないの。この状態を維持するために、ホルは必要。
 ホルで大きくなったら、詰めた物を少しずつ抜いて、
 最後は、ホルだけのものにしていくみたい。
 だから、これからも病院にいくの。」
里奈は言った。

「世界変わった?」美加は聞いた。
「うん。でも、まだ全然慣れない。
 前の男顔だった自分の意識が頭の中にいっぱい残ってる。
 周りの人の態度も少しちがうの。だから、戸惑ってる。
 道を歩くと、すごく見られる。
 それは、自分がみっともないからだと、すぐ思っちゃう。
 見られる自分に馴れてないから、とっても疲れる。
 今までは、自分が女の子を見る立場だったから。」
「わかるなあ。でも、すぐに慣れるよ。」美加は言った。



しばらくして、里奈が言った。
「あたし、美加と友達だけど、ほんとは、美加のこと好きだったの。
 美加と女同士で、その…したいって…。
 あたし、美加にレ・ズビアンの友達になって欲しくて、整形したようなものなの。
 だから、可愛くなりたかった。美加にお姉様になって欲しかったの。
「ほんと?」と美加は聞いた。

「うん、ほんと。美加に抱かれたい。
 美加に、口づけしてもらいたい。
 あたし、美加に、彼氏がいること知ってる。
 でも、彼がいても、レ・ズならOKなんじゃないかって気がするの。」
美加はドキドキしながら、里奈の言葉を聞いた。
高志にとって、自分がレ・ズをするのは、多分OKだと思った。
高志が、学校の男同士で行為をしても、自分にジェラシーはわかないと思ったからだ。

「里奈、は初めて?」
「うん。」里奈はうなずいた。
里奈が自分のために整形したなんて言葉を聞くと、
胸が熱くなり、涙が出そうだった。

「里奈。あたしでいいのなら…。」
美加は、そっと里奈の肩に手を掛け、里奈を引き寄せた。
そして、そっと口・びるを重ねた。
里奈は少し震えていた。
美加は喜びを感じた。
もともと、自分は、女の子か、女装の子が好きだった。
可愛い里奈を見て、心が燃えないはずはない。

口・びるを離すと、
「ああ、お姉様。」と言って、里奈が抱きついてきた。
美加は、里奈をきつく抱きしめた。
「里奈、整形しなくても、言ってくれたら、あたし、里奈としたよ。
 里奈が好きだったから。
 あたしのために整形までしてくれたって聞いて、感激した。
 ああ、里奈、可愛い。大好き。」
その言葉に、里奈は泣きはじめた。
「里奈、どうしたの?」
「あたし、うれしい。可愛くなれてうれしい。
美加にいちばんそう言って欲しかったから。」里奈は言った。

美加は、そっと里奈をソファーに寝かせた。
そして、里奈のキャミソールをぬが・せた。
自分も、ピンクのTシャツを抜いだ。
そして、里奈の首筋や、胸、脇の下にたくさん口・づけをした。
色が白くて綺麗な肌だった。
里奈のブラに手をかけた。
それをはずして、ち・ぶさに口づけをした。

「はあ……。」と里奈が声をあげた。
美加もブラを取った。ち・ぶさは、まだ未発達だったが、感じる。
美加は、もう一度里奈に口・づけをしながら、
里奈のち・ぶさに自分のち・ぶさを擦りつけた。
口びるの中で、里奈のあえ・ぐ声がわかった。
口びるをはなしたとき、
「ああ、お姉様、好き。大好き。あああ、もっとだい・て、もっとだい・て。」
と里奈が言った。
美加は、里奈を強く抱きしめた。
「里奈、可愛い、好き、あたしも大好き。」

美加は、里奈のち・くびを、くりくりとつまんだ。
里奈が声を上げた。
体中をあい・ぶした。
スカートの中に手を入れて、ももをな・でた。
里奈の呼吸がどんどん激しくなっていく。
「あ…、お姉様、お願い、あたし、もう・だめ…。」
里奈が口走った。

里奈はもう限界だと、美加は思った。
美加は、里奈のショ・ーツを取った。
股かんに回してあった里奈の物が、開放されて、前に現れた。
美加は、それをそっとなでていった。
「ああ、お姉様、あたし、はずかしい、そんなのがあるのがはずかしい。」
と里奈は言った。

里奈は女の子の声を盛んに上げ、快・かんを訴えた。
美少女となった、里奈のその表情は、美加を興・ふんさせた。
やがて、背中を反らせて、
「ああ、お姉様、ああ、イっ・ちゃう、イっ・ちゃう・・・・・」
と里奈は連呼したので、美加は里奈のものを口に含んだ。
やがて、里奈は、大きく痙・れんして、美加の口の中に放出した。
美加は、それを飲み込んだ。

美加は、ぐったりしている里奈に、ショ・ーツを履かせ、
ブラをつけ、キャミソールを着させた。
そして、自分もブラをしてTシャツを着て、座った。

美加は、可愛い里奈の到達する表情がセクシーで、
頭の中からはなれず、ショ・ーツの中のものを大きくしてしまったままだった。
股・かんの中で、それは、あえいでいた。
すると、里奈が起き上がって抱きついてきた。
ちょうど正面に鏡があり、二人の全身を映していた。
「お姉様、見て、二人とも、女の子だわ。」
「うん、女の子だね。」
「今度は、里奈が、お姉様を丘すわ。」
「うん。」と美加は恥ずかしげにうつむいた。
里奈は、まず始めに、美加のスカ・ートに手を入れ、
ショ・ーツをぬが・そうとした。
美加は抵抗し、
「やん、はじめにそんな。あたし、恥ずかしい…。」と言った。
しかし、里奈は、強引にショ・ーツを取った。
「あん、いや。」美加は横を向いた。鏡に恥ずかしい物が映っているからだ。
「お姉様、だめ。鏡を見るの。」
「いやよ。里奈のバカ。」
「お姉様は、ずっと鏡を見ていて。里奈はお姉様を愛していくから。」
里奈はそう言って、美加のスカ・ートをめ・くって、美加のものに頭を沈めた。
『あ…、すごい感じる。』
美加の目は、鏡に釘づけになってしまった。
美加はたまらなかった。服を着たまま丘・されている自分。
女の子の姿で、あそ・こを大きくさせ、美少女に、丘さ・れている。
それは、小さいときから夢に見て、興・ふんし続けてきたシーンだった。
『あ…、たまらない。女の子なのに、恥ずかしいものがある。』
恥ずかしければ、恥ずかしいほど胸が高鳴る。

里奈をイか・せて興・ふんしていた後だけに、美加の絶頂は、すぐにやってきた。
「里奈、里奈、あたし、だめ、もうイっ・ちゃう、あ…、あ…………あ…。」
美加は背を反らせて、首を振った。そして、果てていった。

二人で抱きあって、ずっと鏡を見ていた。
いくら見ても飽きなかった。
「里奈、お姉様のものが飲めて、幸せ。」
里奈が言った。里奈はいつのまにか、自分を里奈と呼んでいた。
それは、とてもキュートだった。
「あたしも、里奈の飲めて幸せ。」と美加。
鏡をずっと見ていた。
「あたしね、彼との行・為も好きだけど、
 今日みたいな女の子同士も好き。今日、すごく興・ふんしちゃった。」
と美加は言った。
「里奈なんか、気絶しそうだった。お姉様上手なんだもの。」
と里奈が言う。
「何か頼んで、それ食べたら、またやろう。」美加は言った。
「賛成!」と里奈が美加に抱きついた。


つづく(次回は、「里奈の男の子体験」です。)

11歳法④「里奈、美少女になる」

1学期の終了式が終わった。
夏休みだ。
里奈は、ダイエッとが上手くいき、驚くほどスリムになっていた。
細い美加と同じくらいになった。

学校からの帰り道、里奈は言った。
「あたしさ。この夏、全身整形するかもしれない。」
「ほんと?とうとうやるの?」
「うん、あたし男顔だから、もっとチャームにしたい。
 体も痩せたし、ご褒美に親がお金出してくれそう。」
「それは、よかったじゃない。
 あたしも、ちょっといじりたいところあるんだ。」
「美加は、十分可愛いよ。
 あたし、歯並びも一気に治すの。
 TOMOが言ってたじゃない。
 全身矯正したいと思ってるんだ。
 骨盤の拡張や肋骨の切除も。
 それで、あたし、もう違う子みたいになると思うけど、
 それでも、美加はあたしと仲よくしてくれる?」
「あたりまえじゃない。里奈は里奈だもの。
 可愛くなったら、里奈のこともっと好きになるかもよ。」
「じゃあ、ちょっと安心した。」
里奈はそう言った。



夏休み。
昔より、ホルモンの働きがいいのか、美加の胸は、少し乳くびが飛び出て、
ほんのりと、小さな山ができていた。
先をつまんでみると、少しの痛みと快感が走った。
『うれしいな。』美加は、感激していた。
お尻も少し大きくなった気がする。
里奈は、大整形をすると言っていたが、
美加が今望むのは、声だった。

変声期前でも、男女の声は幼い頃から違う。
同じキーの声を出しても、男女の区別はつく。
美加は、少年の声をしていた。
これを少女の声に変えたかった。
ある周波数の声を出なくすることで、少女の声になるらしい。
手術は簡単とのこと。

美加は、母と一緒に、整形病院の声帯科に行った。
医師から、どんな声がいいか、いろいろサンプルを聞かされた。
母と相談しながら、声を決めた。
気に入った可愛い声を選んだ。
手術はとても簡単だった。
喉に麻酔を掛け、美加の声帯の状態を調べた。
そして、その情報と希望の声とを比べ、
コンピュータが、光線を当てる数値と場所を計算する。
あとは、コンピュータまかせ。
喉に光線が3分ほど当てられて、
手術は終わりだった。

「声を出してご覧。」と先生に言われた。
「あたしは、美加よ。」と言った。
すると、その声は、サンプルで選んだ、可愛い少女の声になっていた。
「わあ、すごい。お母さん。女の子の声に聞こえる?」と美加は言った。
「聞こえるわ。すごく可愛い声よ。」と母に言われた。
うれしかった。こんなに簡単だ何て。
「3日くらいは、大きな声を出さないようにね。」
医師からのアドバイスはそれだけだった。

帰り道、母の久子といろいろとおしゃべりした。
そのうち母は、
「ああ、美加可愛いわ。ほんとに女の子といるようよ。」と言った。
「ほんと?うれしいな。すごく、女の子になった気がする。」と美加は言った。
「ホルモンで、かなり変わったでしょう。
 今の美加は、まず、女の子よ。」
「でも、あたし、お尻がまだ小さいし、ウエストもくびれてないから、
 スカートが似合わない。髪も、やっと頬までだし。」
「手術したって、いいのよ。」
「ううん。あたしできるだけ、ホルモンでいきたいの。」
「どうして?」
「少しずつ、女の子になりたいの。いっぺんにじゃ、つまらない気がする。」
「なるほど。その気持ちも、なんとなくわかるわ。」

母と二人で、パフェを食べて帰った。



美加は、あれから白川高志(=絵美)と1週間に2回は会っていた。
髪を男の子の髪にするといってた高志が、坊主や五分刈りにするのではないかと、
美加は少し心配していた。
しかし、高志は、横や後ろの髪をショートにしただけで、
前髪は頭のてっぺんから、斜めに目にかかるくらいに伸ばし、
ロック系の男の子のようなスタイルにしていて、うれしかった。

声の手術をして、高志に聞かせたかったので、明くる日、
すぐ会いたい…とメールを出した。
今すぐOKというメールが帰って来た。
美加は、体にフィットする白いチビシャツと
ふりふりの黄色のミニのスカートを履いて行った。
お尻が小さいので、タイトなものは、まだ、厳禁。

高志の部屋をノックして、入った。
「よお、入れよ。」とTシャツとジーンズの高志は言った。
高志も、4月から7月までの4週間で、大きな男性化を遂げていた。
成長ホルモンの効果で、美加より背が5cmも高くなっていた。
肩幅が広くなり、肩や腕に筋肉が見られる。
大きかった乳房が、美加の現在と同じくらいになり、
Tシャツを2枚着れば隠せるようになっていた。

腰の脂肪を吸引したらしく、ずん胴になり、
美加が上げたジーンズが入るようになっていた。
そして、声の手術を美加より先に受け、
15歳くらいの少年の声になっていた。

「美加、よっぽど脚長いんだな。
 俺の方が背高いのに、履けちゃうよ。」
高志は、ジーンズの足のところを触りながら言った。
「あ、あたし、折って履いてたから。」と美加が言ったとき、
高志は、あっと美加を見た。
「美加、俺一瞬、他に誰か女の子がいるのかと思った。」
「えへ。あたし、昨日手術したんだ。どう?」
「おお、可愛い声。すんごい可愛いよ。おれ、もうだめ、抱かせろ。」
そう言って、高志が抱きに来た。
美加は、
「や~ん。今来たばかりよ。高志はこのまま最後までいっちゃうんだから。
 あたし、喉が渇いてるの。何か飲み物ご馳走して。」
「ああ、可愛い。もっとしゃべって。もっと聞かせて。」
と高志はにこにこ顔だった。
「ジュース。」と美加はねだった。



ジュースを飲みながら、
「高志、男っぽくなったね。今、誰が見ても男の子。そして、ハンサム。ステキよ。」
美加は言った。
「ほら、見てくれ。」
と高志は、Tシャツの腕を巻くって、腕を曲げてみせた。
「もう、小学校のときの俺じゃないだろ?」
美加は、小学生のときの妖精のような女の子だった高志を思い出した。
「うん。想像もつかない。顔だって、頬骨が出てきて、男らしい。」
「美加は、顔が少し丸くなって、女の子そのもの。抱いたとき柔らかい。」
「高志は、全体が固くなってきた。抱かれると、あたし、体の力抜けちゃう。」

ジュースを飲み終わり、高志が美加を立たせた。
そして、強く抱きにきた。
「ああん、あたし立っていられない。」
美加は言った。

高志は、美加を抱いて、ベッドに運んだ。
そして、覆いかぶさってきた。
手を、美加のスカートに入れようとする。
「や~ん。少しずつ。高志、せっかちなんだもの。
 女の子は、そっとやさしく少しずつされたいの。」
美加は言った。
「ああ、わかってるって。」
高志は、美加にむしゃぶりついてきた。
美加は、たくましい高志に上に乗られ抱かれて、たまらない幸福感を感じた。

やがて、二人は最後の段階に来た。
高志は美加に覆いかぶさり、体を上下する。
美加は、このごろこの行為のとき、
自分の方が高志に入れられているように錯覚するようになった。
自分が完全に受身と感じている。

美加は、可愛い声を出しっぱなしだった。
それが、高志を燃え上がらせた。
まもなく、二人は頂点に達した。

*    *    *

夏休みも終わりに近づいた、8月の下旬、
美加に、里奈からメールが来た。
『今、美加の家のすぐそばに来てる。よかったら、美加の方が降りてきて。
 カラオケ行こう。』

そうあったので、美加は、外に出る格好で、
部屋の階段を下り、外に出た。
里奈を探した。
10mくらい先に、すごい美少女が立っている。
美加が見ると、その子が手を振った。
「まさか…。」美加は近づいた。
長くゆるいウェーブの髪に、前髪があり、
目のパッチリした、色の白い可愛い子。
セクシーな唇。
白いプリーツスカートが、細くて高い位置のウエストから、
綺麗な曲線を描いている。
上に着ているピンクのキャミソール。
細い肩、細い腕。長い首。
全体にビックリするほどの美少女だ。

「里奈…?」と美加は聞いた。
「うん。おととい退院したの。あたし、どうかなあ?」と里奈は言った。
「どうかなあなんてもんじゃない、すごいよ。タレント並みだよ。
 超可愛い。わあ、里奈。すごい。わあ、よっかったね。」
美加は、里奈を抱きしめた。
里奈は、しきりと照れていた。
「里奈は、これで、クラスのナンバー1美少女だよ。
 ほら、見て。みんな、里奈に振り向いて行くよ。」
「まだ、馴れてなくて、どうしていいかわからない。」里奈は言った。
「すぐ、馴れるよ。ね、お話聞かせて。カラオケ行こう。
 誰にも、聞かれないし。」美加はそう言った。


つづく(次回は、「カラオケ店で里奈と」です。)

11歳法③「性への別れ・その2」


美加は、絵美を抱きしめた。
そして、二人でベッドに乗り、美加は絵美にキ・スをした。
絵美の束ねた長い髪の毛がほどけ、美加の頬に絡みついた。
心臓がドキドキした。初めてのセッ・クスだった。
美加は、絵美の胸を服の上から撫でた。
「あ…ん…。」
絵美は、女の子の可愛い声を上げた。
『ああ、こんなに可愛いのに、どうして男の子になっちゃうの。
 悲しい、僕は、悲しい。』
そう思いながら、美加は絵美をあいぶしつづけた。

一枚ずつ服をぬぎ、二人ははだ・かになった。
服をぬがすたび、
「あ……、いや、はずかしい、いやあ…。」
と絵美は言った。
最後の1枚をとるとき、絵美は、両手で顔を覆った。
「あ…あん。」と絵美は羞・恥の声を上げた。
美加は、絵美の美しいはだ・かの姿を見た。
美加は、絵美を抱き、いろんなところを愛・ぶした。
絵美は、たくさんの女の子の声を上げた。

やがて、最後の段階に来てた。
「絵美、いくよ。」美加は言った。
「うん、来て。」
絵美は言った。
絵美と美加は一つになった。
絵美は痛みの声をあげた。
ベッドに敷いてあるバスタオルはそのためだと思った。
『絵美も、初めてだったんだ。』と美加は思った。
美加は夢中になって体を動かした。
美加が先にイってしまいそうだった。
とっさに、入れていたものをはずして、タオルに放出した。
絵美がまだだ。
美加は、絵美の最も感じるところを刺・激した。
まもなく、絵美は、体を振るわせ、最後の声を上げた。

毛布をかぶり、しばらく、二人で抱・きあっていた。
そのうち絵美が言った。
「武田君を、『美加』にしてあげる。」
『どういうこと?』と美加は心で言った。
絵美は、美加の上に乗ってきた。
そして、美加の口・びるを奪った。
絵美は、それから、美加の首筋や、胸にキ・スをしながら、
「美加は、これから、女の子。女の子の声を、あたしのために、聞かせて。」
そう言った。
絵美に上に乗られ、抱き締められた。
驚くほど強い力だった。
一瞬男の子に抱かれている気がした。
美加の心の中の、女の子が芽生え、心を占領する。
「ああ、白川君。」
美加は、ついに女の子の声をあげ、絵美にだきついた。
「美加、好き、好きだよ。美加は俺のもの。」
「ああ、あたしも白川君が好き、死ぬほど好き。あたしは白川君のもの。」
美加は、女の子の声で、そう口走った。
「美加は、可愛いよ。ずっと俺のもの。離さないよ。」
「うん。離れない。あたし、白川君から離れないわ。」
絵美の手が、美加の下腹部に伸びた。そっと、なでられる。
「あ……、ステキ、あ……、いや~、あ…ん、いや・~ん。」
美加は声を上げた。
いつの間にか、美加の方が肢を広げ、
絵美が、美加のものを中に入れて、攻撃して来た。
「あ……、白川君、いい、あ…ん、あ…ん、もっと、もっとして。」
「あ…、美加、可愛い、たまんない、あ…、好きだよ、あ…、たまらない。」
二人は、激しく体を動かした。
「あ…、お、俺、イきそう。美加、たまらないよ。美加、俺イきそうだ。あ…あ…。」
「あたしもだめ、いく、白川君、あ…あ、イっちゃう、イっちゃう、お願いはずして。」
絵美は、とっさに美加から体を抜いた。
そして、抱きあったまま、お互いに、身を振るわせ、同時に果てていった。



絵美がどっと美加に体重を掛けてきた。
二人はだきあった。
美加は、絵里のほつれた髪をなでた。
「美加、俺、やっぱ男だろう?」絵美が聞いた。
「うん。あたしが女にされちゃうくらい、男の子だった。」美加は言った。
「美加は、めちゃめちゃ女の子だったよ。」絵美は言った。
「ちょっとはずかしい。」美加はいった。
「中学行っても、美加は、俺の彼女でいてくれる?」
「うん。白川君から、離れられないわ。
 あたし、これから、もっと、もっと、可愛い女の子になるね。がんばる。」
「じゃあ、俺も、たくましい男になって、美加をヒーひー言わせてやるから。」
「やん。表現がエッ・チ。」
「この、美加の『女』め!」
「この白川の『男』め!。」
そう言って、二人で笑った。

帰り際。
「美加、俺の今までの服、捨てるのもったいないから、
 美加が、全部もらってくんない?」
と絵美が言う。
「わあ、いいの。下・着も?ああ、あたし、履くだけで興・奮しちゃう。」
美加は言った。

「この、変・たい。全部あげるよ。可愛いのいっぱいあるぜ。
 せいぜい履いて、俺を忘れないでくれな。」
「きゃ~、うれしい。」と美加。
「あ、じゃあ、あたしの男の服も、白川くんが、もらってくれない。ろくなの無いけど。」と美加。
「うん。それは助かる。新品って、けっこうかっこ悪いからな。ジーンズなんか特に。」絵美は言った。

家族に後で車をたのみ、服の交換は終わった。
二人とも、いっぺんで衣装もちになった。

そして、美加の心の女度は、一気に急上昇した。
きっと絵美の男度もアップしただろうなと美加は思った。

美加は、自分が愛せるのは、女の子、元男の女の子だけと思っていた。
しかし、今、元女の男の子も愛せることに気が付いた。
もっとも理想的な相手かもしれない。

*    *    *

美加が、女子中学に通い始めて、2週間が過ぎた。
里奈は一番の友達だった。
クラスは大いに代わった。
坊主や、坊ちゃん髪だった子たちは、みんなカツラを被ってくるようになり、
一見女の子に見えるようになった。
カツラの技術も格段に進歩し、軽くて、被ればめったなことでははずれないものになっていた。
ヘアスタイルも、より取り見取りだった。
胸のブラに詰め物をしてくる子も増えた。
この詰め物も、皮膚に密着し、柔らかさ、弾力、重さも、本物と見分けがつかない物が市販されていた。
美加もそれを着けていた。

クラスの雰囲気は、女の子の集団として、とても華やかになった。
みんなの心の中から、女の子になる恥ずかしさが、完全に消えたからだ。

みんなの仕草や動作は、妙に女の子女の子して、お姫様のようで、ナチュラルさに欠けたが、
それは、女の子になるための、ステップだった。
その点、D組の子は完璧だった。
小さいときから、女の子として過ごしていた子達だ。
キャリヤが違う。

学校の生徒たちは、月に2度来校する医師によって、女性ホルモンの投与を受けた。
この女性ホルモンの投与は、生殖器には影響を与えず、
それ以外の部分だけに作用するのもであった。


つづく(次回は、「里奈、美少女になる」です。)



<参考>

これは、2050年代に、男女の生殖機能を全く損なわないで、他の部分だけ、異性として成長させるホルモンの投与法が開発されていた。
これは、大きな開発だった。
それと言うのも、同じく、2050年代に、男女の生殖器を丸ごと移植し、完全な性適合手術が開発されたからだった。つまり、正常な生殖器をもつ男女のペアーが見つかれば、生殖器を丸ごと交換できる。
つまり、完全な性転換が可能になった。このために、異性のホルモンによって、生殖器が損なわれない投与が開発されたことは、大きなことだった。

そして、2080年の「11歳法」により、中学3年の3学期に、GIDの、女子になりたい生徒と、男子になりたい生徒が組になり、互いにドナーとなり、性適合手術を行えるようになった。女子のドナーがが若干不足したが、性適合手術を望まない男子もいたため、両者のバランスは、うまく取れていたのだ。



女性ホルモンは希望者に対してだけであったが、全員が希望した。投与を受けた生徒は、月に一回、内分泌の検査があった。
他に、ダイエットのための錠剤もあり、
ジョギングをすることで、従来の10倍も脂肪を燃焼する優れ物が30年前に発売された。
里奈は、その錠剤を呑んでいた。
2週間で、4キロ体重が減ったと喜んでいた。

白川絵里(男性名=高志)は、同じく、男性ホルモン。そして、微量の成長ホルモンを呑んでいた。
男子校では、3年間で、大体身長が170cmを越えるように計画されていた。
男性ホルモンで、肩幅が広くなり、筋肉質になり、皮膚が厚く、刺激に耐えるものになってくる。
髭が濃くもなるのだか、髭や体毛は、あまり女子にモてないので、髭を永久脱毛する生徒もいた。
永久脱毛は、今と違い、格段に楽になっていた。
だいたい、2時間の施行1回で痛みも無く、永久脱毛を遂げることができ、3回で終了する。

11歳法②「性への別れ」

1日目に、体育の授業があった。
先生は、元男性の女性であった。

みんな、一応は、女子の下着をつけていた。
ショーツ、ブラジャー、スリップを履いていた。
胸の無いAクラスの生徒にブラジャーは、不要であったが、
女子への道として、一応はつけるのが規則であった。
下着姿が、気の毒な生徒もいた。
まるで、似合っていない。
美加などかなりマシな方であった。
そして、上は、白い体操着、下は、ブルマー。
ブルマーなど、女子の昔の体育着であったが、
この学校は、あえて、女子の象徴であるブルマーを履かせた。
上着はブルマーの中にINであった。

体育は、体育館で行われた。
みんなで、マットを出し、そこで、柔軟体操をする。
まず、正座の代わりに、マットの上で、女の子座りをする。
膝を付け、足は広げて、その中に腰を入れて座る。
馴れてないみんなは、5分でギブアップだった。
どうしてもだめなときは、斜め座りができる。
しかし、回復したら、また女の子座りをする。

そこから、上体を後ろに倒し、寝る形をとったり、
背筋を伸ばす運動をしたり、
バレーでよくやるような、開脚、前後の開脚、
また、ブリッジ。
主に、脚と背の柔軟運動を徹底的にやらされる。

それから、ドッジボール投げをした。
みんな利き手を使わず、その反対の手で投げる。
すると、女の子のようなフォームになる。

捕球は、必ず始めはミスしないといけない。
そして、「いや~ん、ごめんなさい。」とはっきりした声でくやしいがる。
「いや~ん。」の代わりに、「キャー。」でも「やだ。」、「あ~ん。」でもよい。
そして、投げるときは、「いくわよ。」「いいわよ。」と声をかけさせられる。

その外、先生のことは、「お姉様」と呼ぶ。
敬語、丁寧語は、禁止。
「△△さん、わかるかしら?」とお姉様に言われたとき、
「ええ、あたし、わかるわ。お姉様。」などと言えれば、最高点ある。
クラスのみんなに言うときも、丁寧語禁止であった。

こうした約束は、どの授業でも同じだった。
先輩にも敬語は不要で、先輩と呼ばず、お姉様という。

教室では、椅子に座っても絶対膝を離してはいけない。
猫背になってはいけない。

こうして、第一日目の帰りには、
女言葉を恥ずかしがっていた生徒のほとんどが、
自分を、「あたし」と呼び、女言葉を話すようになっていた。
もともと、女言葉を使いたくて、たまらずに来た生徒ばかりだったので、
一度、垣根を越えれば、女言葉がするすると出てくるのだった。

美加は、里奈と一緒に帰った。
「美加、あたし、女言葉平気になってきちゃった。」と里奈。
「あたしも。なんか不思議。女言葉で話すの、すごい楽しい。」美加。
「あたしも。こんなに早くなれちゃうなんて、ビックリ。」と里奈。
「女の子座り、きつくない?」と美香。
「きつい。家でも全部女の子座りって宿題よ。」
「里奈できそう?」
「できなくても、がんばる。女の子座りすると、
 女の子になったみたいでうれしいから。」と里奈。
「あたしもそう。なんか、ぞくぞくしちゃうね。」美香。
「ね、あたしたち、今、ガールズ・トークしてると思わない?」里奈が言った。
「ほんと、してるわ。これで、好きな男の子の話しなんかしてたら完璧ね。」と美香。
「そうそう。でも、まだ、男の子好きになれないからな。」
「あたしもそう。女の子か、もと男子の女の子なら好き。」美香。
「C組とD組の人達と、ここが違うのよね。」里奈。
「だから、高校になるまで、性適合手術はできないって、納得よね。」美香。
「中学の3年間で、女の子の生活しながら、
 じっくり考えなさいってことね。」里奈。
「そうだと思う。」美加。

美加は、午後の4時ごろ、家に着いた。
「学校どうだった?」と母に聞かれた。
「うん。すごく楽しかった。あたし、「あたし」って呼べるようになったの。」
美加は、学校の延長で、家でも「あたし」と言ったことに、急にはずかしくなった。
「そう、よかったわね。」
「うん。つい『あたし』って言っちゃった。」
「女の子なんだから、当然よ。」と母が言った。



自分の部屋に入って、女の子の普段着を来た。
そして、メールチェックをしたら、
小学校のとき、美加の大好きだった、白川絵美からメッセージが来ていた。
美加は、ビックリした。
白川絵美のことが大好きだったけれど、ろくに話をしたこともない。
絵美のメールは、
『セーラー服で、あたしの部屋まで来て。もし、時間があったら。』
とあった。
美加は、急にそわそわしてしまった。
すぐに行かなくちゃ。
でも、何でセーラー服なんだろう。

絵美は、クラスで一番可愛い子だった。
色が白くて、サラサラのステキなロングヘアーの子だった。
パッチリと目が大きくて、笑顔が最高に可愛い。
とても、女らしい子で、女の子特有の仕草をよくする子だった。

美加は、メール返しをして、セーラー服を着て、絵美の家に行った。
絵美のお母さんに、ドアを明けてもらい、絵美の部屋に入った。
そして、あっと驚いた。
絵美は、男子の学生服を着て待っていた。
「うそ!白川さん、なぜ?」と美加は叫んだ。
「もしかして、白川さんは、男子を選んだの?」
「うん。」と絵美はうなずいた。
「ね、ベッドに腰掛けて。」
絵美に言われて、美加はベッドに座った。
絵美がそのとなりに座った。
絵美は、前髪を残して、長い髪の毛を後ろで1本にまとめていた。
「あたしの男子校、明日からなんだ。
 だから、今日があたしの女の子最後の日。」絵美はそう言った。
「そんなあ。だって、白川さんは、クラスで一番女の子らしかったじゃない。」
「男の子になりたいって気持ち隠すために、
 わざと女らしくしていたんだと思う。
 でも、小さいときから、ずーと、男の子になりたかったの。
 11歳になるのを、ずっと待ってた。」
「そう。」美加はうつむいた。
「今日の夜、あたし髪を切って、男の子にみたいにするの。
 その前に、武田くんに会いたかった。」
「どうして、ぼくに?」
「決まってるじゃない。武田くんのこと好きだったから。」
「そうだったの?ぼくは、ずっと白川さんのこと好きだった。」
「うん。なんとなくわかってた。だから、メール出す勇気が出たの。」
「そう。」
「あたし、女の子の服、全部ダンボールに始末したの。
 今、男の子の服しかない。だから、武田君にセーラー服で来てってメールしたの。
 今、武田君とあたしの服、交換して着てみない?私の方が背が少し高いだけだから。
 最後の女の子の姿を武田君に見てもらいたい。
 そして、最後の武田君の男の子の姿が見たい。」
「うん。そうしよう。」美加は言った。

二人は、服から下着まで交換して身につけた。
絵美のセーター服姿は、美加自身と比べられないほど、ステキで可愛かった。
「武田君の学生服、やっぱり、似合うわ。
 あたしが着たんじゃ、お尻が大きすぎて全然様にならない。」

「白川さんのセーラー服こそ、もうぴったりだよ。
 もったいないなあ。男の子になっちゃうなんて。」美加は言った。
「あたしは、心が本当は男だったから、
 武田君がちょっと女の子みたいで可愛いところ好きだったんだと思う。
 もちろん、性格も女の子みたいに優しかった。」
絵美はそう言うと、美加のお腹の辺りを抱き締めてきた。
「女の子として、最後に武田君に抱かれたい。」
絵美はそう言った。



この時代に、小学生のセックスは禁止だったが、
中学生になれば、セックスは普通に行われていた。


つづく(次回は、「里奈、美少女になる」です。)

11歳法①「美加、中学校に入学」

2080年、「11歳法」という画期的な法案が議会で可決された。
これは、性科学の権威・吉野敬三博士より提案された。
「子供は、11歳が自我の転機であり、自らの国籍、名前、性を自由に選択できるよう、政府は、その整備を図るべきである。」という提案だった。

2060年代、国内に、爆発的に、女になりたいと願う男子、男になりたいという女子が増えた。
お茶の間のテレビでも、可愛さとスタイルのよさを売り物にする大人数からなる少女アイドル・グループが、大きな人気を博したが、彼女達は、全員元男子であった。

吉野博士は、その原因の1つとして、環境ホルモンが、過去で類を見ないほど食品にみられるようになり、母体での成長過程で、男子が女脳に生まれ、女子が男脳に生まれてくる確率が高くなったことを指摘した。

その頃から、整形手術をするのは、ヘアスタイルを変えるくらいにあたり前のこととなり、整形の技術も格段に向上していた。

その20年後、政府はやっと予備調査を行った。
すると、11歳の男子の4分の1、女子の5分の1が、自分の性を変えたいとの願望を持っていることが分かった。
それは、無視できない数値であり、性マイノリティーNPOのからの強い要請もあり、法案は可決された。
そして、この法律により、全国にある、公立の中学校・高校の4分の1を、性を変えたい生徒のための専門学校とした。
小学校は、11歳(5年生)まで。中学は、12、13、14歳の生徒。
そして、高校は、15,16,17歳までとなった。
そして、異性に転換する教育をするのは、主に中学校の役目となった。



武田健一は、小学校を卒業し、女子になることを希望した。
親は驚いた。
健一が、今までそんな素振りを見せたことが、一度もなかったからだ。
しかし、健一は、生まれたときから、女の子になりたいと思ってきた。
そして、11歳になることを、切望してきたのだった。

名前は、武田美加とし、戸籍の変更を行った。
そして、今まで憧れて続けて来た、中学に入学した。
中学の名前は、「三つ葉女子中学校」といった。

美加は、これまで女子になりたいと言う願望を、誰にも話さないできた。
そこで、女子として生活するには、全くの初心者だった。
学校で面接や、心理テストを行い、
学年で、4クラスある中の、もっとも初級であるAクラスに入った。

A組…女の生活に全くの初心者。
B組…少しは女子の生活をした経験のある者。
C組…GIDであるが、女子としての生活経験が1年未満である者。
D組…GIDの診断を得て、子供の頃から女子として生活し、
   すでにホルモン投与を開始している者。

クラスは、だいたいこのように別れていた。

入学式を終え、健一こと美加は、初の授業登校だった。
教室に入って、自分の番号の席に座り、クラスメートを眺めた。
2080年になっても、制服は、セーラー服だった。
セーラー服は、言わば女子生徒のシンボルであり、
この時代になっても、生き残っているのである。

美加自身がそうであったように、
クラスメイトは、男の子がただ、セーラー服を着ているに過ぎない、
という状態だった。中には、まだ坊主頭である子もいた。
美加は、髪は少し長目であったが、男子の髪型であり、
セーラー服は、まるで似合っていなかった。

朝のHRまでの時間に、
隣の席の生徒が、美加に話しかけてきた。
「ぼく、里奈、よろしくね。」と里奈は言う。
「あ、ぼくは、美加、よろしく。」と美加は答えた。
となりの、里奈は、まだ女子としてはほど遠かった。
髪は、坊主に近く、体重があり、男顔だった。
「美加はいいよね。ほっそりしてるし、顔は可愛いし、
 僕の好きなタイプ。」里奈は行った。
「体重とか、顔は、今整形でどうにでもなるじゃん。
 里奈は、2年生になる頃は、見違えてるよ。」
「だと、いいけどな。」里奈は、言った。



休み時間になり、里奈と友達になった美加は、二人で、
いちばん女の子に近づいているDクラスを見に行った。
少し、覗くと、クラスは、まるで女の園であった。
みんな、スタイルがよくて、可愛い子ばかり。
胸がちゃんと膨らんで入る。
そして、2人、3人で、それぞれ完全なガールズ・トークをしている。
きゃ~ん、いや~ね。あたし、知らない!や~ん、可愛い、ちょうラブリー、
などの女の子用語が、普通に使われている。

「すごいね。完全に女の子達だ。」美加は言った。
「ぼく、なんか興奮してきちゃった。」
「里奈は、女の子好きなの。」
「女の子も好き。でも、女装の子も好き。」里奈は言った。
「ぼくも、そう。だから、このクラスの子見て、萌えちゃう。」美加は言った。

二人は、窓のそばに一人でいた、特別に可愛い子を見つけ、
話しかけた。
「ぼく、美加。」
「ぼくは、里奈。」
「あたしは、TOMO」とその可愛い子は言った。
「聞いていい?」と美加は言った。
「君、すごい可愛いんだけど、生まれつき?」
「まさか。」とその子は笑った。
「じゃあ、どんなことやってきたの?」と里奈が窓から乗り出して聞いた。
「4年生から、ホルモン打ってきた。」
「それだけ?ぼくなんか見て?こんな男顔で、女の子になれるかなあ。」と里奈が言った。
「あたしも、あなたくらい男顔だったの。かなり整形したわ。
 それから、肋骨矯正で、アンダーバスト68にしたし、
 肋骨も左右1本ずつ切除したの。」TOMOは言った。
「わあ、すごい。じゃあ、ぼくもいろいろ手術したら、
 TOMOみたいに、可愛くなれるかな?」里奈は聞いた。
「うん。なれるよ。ぜったい可愛くなれる。」TOMOは言った。
「あのお、あそこも手術をしちゃったの?」と美加は勇気を出して聞いた。
「適合手術は、15歳未満は、まだダメなの。」TOMOは言った。
『そうかあ、このクラスの子は、まだ、みんなアリアリなのかあ。』
美加は、そう思いなぜか萌えてしまった。

里奈は、希望をもって、Dクラスを後にした。
美加は、アリアリが、まだ頭に残っていた。
「やったー!あんなに可愛い女の子になりたい。夢じゃないんだ。」と里奈。
「そうだね。だけど、思わない?あの子の雰囲気。
 そばに寄っただけで、女の子オーラがあったじゃない。
 仕草から、話し方から、何から何まで女の子だった。
 あれは、手術では無理だよ。ぼくたち、自分で学ばなきゃ。」美加は言った。
「そうだよね。ぼく、まだ、自分のこと『あたし』って呼ぶのはずかしい。」里奈は言った。
「ぼくも。照れくさくて、『あたし』って言えない。」と美加。
「まず、そこからだよね。」
「うん。そう。」


つづく(次回は、「女の子修行」です。)
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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