トイレより愛を込めて⑤「ナミのカムアウト」最終回

二人は、それから、毎日デートをした。
女の子同士だったり、弘が男だったり。
洋装店へ行って、服を見たり、アクセサリーを見たり。
カラオケ店で、いちゃいちゃしたり、
映画も行った。
レストランにも行った。



ある夜、ナミと映画を見た後、歩きながら弘は言った。
「ぼくね、前にナミがこれからどうすればいいか考えるって言ったでしょう。」
「うん、お覚えてるよ。」とナミ。
「ナミは、大学で8人くらいの美術同好会に入っているっていったよね。」
「うん。男子4人、あたしを女子として女子4人。」
「その同好会の人、いい人ばかりだって言ったよね。
 いい人ばかりだから、逆に辛くなるって。」
「うん、言った。」

「思うんだけど、その人達にだけは、カムアウトしたらどうかな。
 ナミが、GIDであること。でも、ちょっと心に男が残っていることも。
 全部正直に。多分、わかってくれるんじゃないかな。
 もし、だめだったら、同好会辞めればいいんだし。」弘は言った。

「ありがとう。ずっと考えていてくれたんだ。
 あたしには、ヒロっていう、何もかもわかってくれる恋人ができた。
 前のあたしとちがう。
 今のあたしは、ヒロのおかげで、勇気を持てる。
 あたし、みんなに話してみる。」ナミはそう言った。



ナミのカムアウトの日、ナミの頼みで、弘も女装をしてついて行った。
ナミはその日、スカートにサマー・セータ、
カツラはやめて、自分の綺麗な長い髪。
眼鏡は、バッグにしまった。

弘といっしょに、同好会の教室まできた。
弘は、ドアから少し離れたところで、聞いていた。
その日、同好会には全会員が来ていて、それぞれ自分の絵を仕上げていた。

ナミは、中に入って、自分の絵の前に座った。
みんなが、自分を見ているのがわかった。
ナミは、自分の描きかけの絵に向かって、
そばにある絵の具と筆をとって描き始めた。

良子というしっかりした女の子がきた。
「ちょっとあなた。これは、ナミっていう子の絵よ。
 他の人が筆を入れるなんて失礼よ。
 あなた、だれ?」
良子は、そう言った。
「ナミの友達です。今日はナミの代わりに来たの。」ナミは言った。
「おかしいわ。ナミがそんなこと頼むはずがない。」

良子の声に、みんなが集まってきた。
ナミは7人に向かって立った。
「ナミは、みんなに嫌われてると思って、ここに来られなくなっているの。」

そのとき、男子のA君が言った。
「ナミがそう言ったの?
 だったら、反対だよ。俺達がナミに嫌われてるんだよ。
 ナミは、俺達の中で一番いい絵を描く子なんだ。
 ナミの絵だけ、俺達よりダントツなんだよ。
 だから、俺達みんなナミと話したり、教えて欲しいことがいっぱいある。
 だけど、ナミは、いつもうつむいて、俺達がそばにいると辛そうにしてる。
 だから、あんまり話しかけなかっただけなんだ。」

B子が付け加えた。
「あたし、ナミの絵にずっと憧れ続けて来たの。
 だから、お友達になりたかった。
 でも、ナミは心を開いてくれない。
 だから、せめて、ナミをそっとしておいてあげたいって思ったの。
 みんなナミのこと尊敬してるし、ナミが好きなのよ。」

ナミは聞いた。
「みなさん、そうなの。」
うん、うんと全員がうなずいた。

ナミは、うれしさに薄っすらと涙を浮かべた。
「実は、ナミには秘密があるの。
 ナミから必要なら言ってって言われているので、あたしが言います。
 ナミは、その…男の子として生まれたの。」

みんなは、え?と声を漏らしたが、その後、しーんとして、次の言葉を待った。

「男の子として産まれたけど、女の子として育ったの。
 中学のときから、体も女の子になるように、女性ホルモンを打ち初めて、
 完全じゃないけど、女の子の体に近づいた。
 でも、体と同じように、心のほとんどは女の子だけど、男の子の心も少し残ってるの。」

C子が言った。
「それ、性同一性障害のこと?」
ナミ。
「うん。そういう診断を小学生のときもらったの。
 だから、中学も高校も女の子として扱ってもらった。
 中学、高校のときは、学校生徒全員がナミはそういう子だって説明されたの。
 だから、ナミは、気持ちが楽だった。
 
 でも、大学ではそういうのがなかった。だから、女の子で通った。
 そのうち、女の子の友達ができたけど、自分の秘密を隠していることが辛くなってきた。
 一緒にトイレに入るでしょう。ほんとは男なのに、女子トイレにいるなんて、
 みんなを騙しているようで辛かった。
 男子に対しては、自分が男なのに、ナミを異性として接してくれる人を、騙しているようで、
 やっぱり辛くなったの。

 でも、やっとみなさん達にだけは、本当のことを知って欲しくなって、
 今日、あたしがここにいるわけなの。」

みんな、シーンとしていた。
良子が言った。
「あたしにとって、ナミは女の子。多少障害があっても、
 障害なんて、みんな一つ位持ってるし。関係ない。
 トイレだって、ナミにはやましい気持ちはなんだもの、
 女子トイレに当然入るべきだと思う。」
D男。
「俺も、ぜんぜん気にならない。心に男の部分があるって悩んでるみたいだけど、
 俺だって、心に女の部分がある。少女マンガ読んで泣いちゃったりするし。
 100%男とか100%女なんて人、この世にいないよ。
 だから、ナミは全然気にする必要はないよ。」

そうだよ、そうだよ、とみんな口々に言った。

ナミは、感激して涙を流した。
そして、バッグの中の度の強いいつもの眼鏡を出して、目にかけた。
みんなが、「ああっー。」と言った。

「みんな、ありがとう。みんなの言葉、あたし直接聞いた。うれしかった。
 ほんとのあたしを見て欲しくて、今日はそのままのあたしで来たの。あたし、ナミ。」
ナミは眼鏡を取って、涙を拭いた。

「ナミ、超美人じゃん。」と言って良子がナミの手を取った。
「これこそ、許せんわよ。今まで、美人を隠してたなんて。」ある女子が言った。
「美人がいなかった美術同好会に美人誕生!」と誰かが叫んだ。
「なにー、今の言葉許せん。」と女子がつっかかっていた。

ナミがみんなに言った。
「今日、あたしの恋人に付いて来てもらったの。
 今紹介するね。」
ナミは、弘を呼んだ。
弘は中に入った。

「え?女の子なの?」と誰か。

ナミが、
「恋人のヒロです。」と言った。
「みなさん、はじめまして。」と弘は言った。
「ナミは、女の子が好きなの?」と誰かが言った。
「実は、彼女、男性なの。」とナミ。
「えー?こんなに可愛いのに。」と誰か。
ナミは言った。
「あたしの男の心が、女の子のヒロが好きでいる。
 あたしの女の心が、男の子のヒロが好きでいる。
 ね、みんな、上手くできてるでしょう?
 こういう人にやっと巡り会えたの。」

「うんうん、完璧なカップルだよ。
 ナミ、おめでとう。」
と誰かが言い、みんなが拍手をした。

ナミはほっと安心したのか、また少し涙ぐんだ。

「ナミ、なんかやっていけそうだね。」弘は言った。
「うん。ヒロ。ありがとう。」とナミが言った。

「今日は、ヒロさんもいっしょに、みんなで飲みに行こう。」とD君が言った。
「新しいナミの誕生祝い!」
「うん、そうね、いいね。」
とみんなは、ガヤガヤと浮かれていた。

「もちろん、行くよね。」と弘が言った。
「うん、もちろん。」ナミが笑顔で答えた。

それは、ナミの大学に入って初めての
記念すべき飲み会だった。


<おわり>
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トイレから愛を込めて④「結ばれる二人」

今回長くなってしまいました。いいところで切れなかったんです。
明日、最終回です。読んでくださるとうれしいです。

===============================

「ぼく、まだ、女装の子とセックスしたことない。
 女装の子の友達いなかった。
 もちろん女の子となんかしたことない。」弘は言った。
「あたしもだよ。
 アリアリだから、男の子とはもちろん、女の子ともない。
 女装の友達に今まで巡り会えなかった。」
ナミは言った。

「女装サロンみたいなところあるじゃない。
 行かなかったの?」と弘は聞いた。

「1回行った。サロンの中ではよかったの。
 綺麗だって、みんなにちやほやされた。
 でも、みんな男に戻っていっしょに帰ろうとすると、
 みんな、あたしのそばを避けるの。
 あたし、さっきみたいな男の格好してた。
 でも、あたしが、女の子っぽ過ぎて、同類だと思われるのがイヤだったみたい。
 それ以来行ってない。
 だから、ヒロがさっきあたしが腕を取っても平気で歩いてくれたでしょう。
 あのとき、すごくうれしかった。」
ナミは言った。

「それ、悲しかったね。
 ぼくも一度行った。ぼくの場合は、お金がなくて、一度しかいけなかっただけ。
 それと、たまたまだと思うけど、年配の人が多くて、友達を見つけられなかった。」
弘は言った。

「中学や高校のときは、どうだったの?」と弘は聞いた。

「あたしは、GIDの診断を小学校のときもらったから、 
 中学も高校も女子として扱ってくれた。
 そして、学校は、学校中の生徒にあたしの説明をしてくれたから、
 みんなあたしのこと知っていて、あたしは楽だった。
 女の子が友達になってくれたし、男子も、あたしが部分的に男だから、
 気楽に話しかけてくれた。
 嫌がらせも受けたけど、守ってくれる人の方が多くて、あたしは辛くなかった。

 でも、大学に来て、壁に突きあたったの。
 女の格好で行って、女子の友達ができたけど、
 あたし、その子達を騙しているみたいで、辛くなってきた。
 いっしょにトイレや更衣室なんかいくと、余計騙している気がした。
 男の子も同じ。あたしを異性と思って好意を寄せてくれる男子もいたの。
 だけど、あたし本当の女じゃないから、辛かった。」ナミは言った。

「それで、今日みたいな格好で大学へ行くことにしたんだね。
 女の子の友達ができないように。男の子には、相手にされないように。」
弘は言った。

「あたし、美術同好会に入ってて、みんなすごくいい人だけど、いい人だから余計辛い。
あたし、本当は明るいのに、ぼさぼさ髪と眼鏡で、暗い女の子演じてる。」
ナミは言った。

「ぼく、ホルモン打って、ナミのようになりたいと夢に描いていたけど、
 ナミの辛さがわかった。
 今、ナミの気持ちがすごくよくわかる。
 ナミ、ぼくもナミといっしょに、どうしたらいいか、考えるね。」
「ありがとう…。そんなこと言ってくれた人初めて。」
そう言って、ナミが涙を流した。



「ね、ヒロの髪、あたし、ハサミでちょっといじっていい?女の子に見えるように。」
ナミは言った。
「男にもどれる?」
「戻れないかもしれない。」
「でもいい。女の子風にして。」弘は言った。

弘はドレッサーの前に座った。
弘の首に風呂敷きを巻いて、ナミはハサミを振るった。
弘の目を隠すような前髪は、眉をすれすれに隠すくらいになった。
そして、頬の横の髪を、1段短くした。
「ほら、こうするとさ、ポニーテールにしたとき、
 耳の前の髪の毛が、房になって耳の前に垂れるの。
 これ、可愛いよ。」
ナミがそう言った。

弘は、鏡を見て少しはずかしくなった。
カツラを被らなくても、どんどん女の子に見えてくる。
「ねえ、男に戻るときはどうすればいいの?」と弘は聞いた。
「こうやってさ、髪をぐちゃぐちゃにすればいいの。」
ナミはそう言って、弘の髪をぐちゃぐちゃにした。
「あはは。ほんとだ。男になった。」と弘は笑った。
ナミは、弘の髪を丁寧にブラッシングして、また女の子にした。

「ヒロは、素顔で女の子に見えるね。
 ホルモン打ってないのに奇跡だよ。」とナミ。
「ほんと?」
「うん。ルージュだけで、まず100%パスする。」
「だったら、うれしいけど。」

「ね。ヒロも女の子になって。」ナミが言った。
「ぼく、女の子の服持って来なかった。」
「あたしのを貸すよ。」

ヒロは、下着と黄色のワンピースを借りた。
髪型で、ずっと女の子になったヒロは、見違えるように可愛くなった。

「ヒロ。あたしの鉛筆画、スケッチブックにもっとあるの。
 見てくれる。」
「それ、絶対見たい。」ヒロは言った。

ナミはうきうきして、スケッチブックを持ってきた。
ベッドに二人並んで座って見た。
ヒロは、始めの絵を見て、もうノックアウトだった。
女の子が、机に向かって勉強している。
しかし、女の子のスカートはめくれていて、ショーツを履いていない。
そして、女の子の股間のものが、大きくなって、直立している。
女の子は、言っている。
「お願い。今はダメ。勉強してるの。」
女の子の困ったような顔が絶妙だ。

「ナミ、ぼくダメ。もう興奮しちゃった。」
「次見て。」とナミ。

次はもっと刺激的だった。
セーラー服の可愛い子が、後ろから背の高い男子に抱かれている。
男子は、女の子の胸を抱き、
片手は、女の子の股・間を露にしている。
女の子は、女子のそこにあってはならないものを大きくしている。
女の子は言っている。
「いや、そこだけは、恥ずかしい。」

ヒロは完全に参ってしまった。
ヒロは、ナミに抱きついた。
「ナミ、ぼく、もうだめ。我慢できない。」
ナミもヒロを抱きしめた。
「ヒロ、あたしを好きにして。あたし、やり方わからないから。」
「ぼくもわからないけど、ナミにキ・スしたい。」
「いいよ。キ・スして。」
弘は、ナミを抱いて、キ・スをした。
弘は感激した。ナミの柔らかい唇。
弘は少し、舌を入れた。
ナミがそれを吸う。
ナミも舌を入れてきた。
弘は、思い切り吸った。

弘は、ワンピースを脱いで、ブラもとり、スリップとショーツだけになった。
その間に、ナミは上のセーターを脱いで、スカート脱いで、ブラも取った。
ナミもスリップとショーツだけになった。
二人で、ベッドの真ん中に行った。
抱きあって、またキ・スをした。
「おっ・ぱい、どうすれば気持ちいいの?」ヒロは聞いた。
「下から上に揉まれて、先のところをくりくりされたり、かまれたり。」
弘は、ナミのスリップの紐をはずし、ナミの乳・ぶさを露にした。
そして、ナミに言われた通りにした。
「ああ…。」ナミが声をあげた。
その声に刺激され、弘は、さらに興奮した。
ナミのちぶさの先を、言われたようにすると、ナミは、もっと激しく声をあげた。

「ナミ、ナミのショーツとっていい。」
「大きくなってるものが出てきちゃう。あたし、恥ずかしい。」
「ぼくだって同じだよ。ね、取るよ。」
弘はナミのショーツをとった。
ナミが生まれは男の子だという証拠が、大きくなっていて、
露になった。
「ああ、恥ずかしい。大きくなってるのが恥ずかしい。」
「ぼく、感激してる。ナミの描いた絵みたいだよ。」
「ああん、ヒロ、言わないで。」
ナミは、恥ずかしさに、両手で顔を覆った。
弘は、ナミの大きくなっているものを、そっと口の中に入れた。
「あああん。」とナミが声を出す。

やがて、ナミは、激しい声をあげ、呼吸が速くなり、
叫ぶ声が1オクターブ高くなり、
「ああん、いく、いく、いく、ああ…。」
そう言って、シーツをつかみ、やがて、弘の口の中に、放出した。



ナミはショーツを取り、女の子履き(アレを股下に回して履く)をした。
「今度は、ヒロだからね。天国へいかせてあげる。」
ナミはそういうと、ヒロに濃厚なキ・スをして、
体中にキ・スをして、ヒロのショーツを取った。
ヒロの硬くなったものが、天を向いている。
ナミはそれをほおばり、口を上下した。

弘は、だんだん女の子言葉を口走り、自分のことを「あたし」と言い、
女の子特有の声をだし、「いやん、いやん、ああ、あたし、だめ…。」
声が幼い女の子のようなになり、
体をくねらせながら、ナミの口の中に、リリースした。



毛布をかぶり、二人はスリップだけのまま、抱きあった。
「ナミは、女の子と何も変わらない。ぼく、女の子の経験ないけど。」
「ヒロはホルモン打ってないのに、まるで女の子。柔らかいし。奇跡だよ。」
「ナミのこと、恋人だと思っていい。」弘は言った。
「いいよ。あたしも、ヒロのこと恋人だと思っていい。」
「うん。」
そう言って、キ・スをし合い、2度目のセッ・クスをした。


つづく(次は、「ナミのカムアウト」最終回です。)

トイレより愛を込めて③「女の子になったナミ」

「ウソ!」弘は、トイレの絵を見たとき以上に驚き興奮した。
「ナミは、眼鏡と前髪で顔を隠してたけど、
 仕草や声、体のライン、みんな女の子だよ。
 ぼく、ナミに女の子オーラ感じてる。男なんてあり得ない。」弘は言った。

「あたし、ホルモン中学生のときから打ってる。
 もう7年目になるの。だからじゃないかな。
 ホルモン打つと、女の子特有の好香が出てくるから。
 胸Cカップ。今、ナベシャツ着て隠してる。」

「ナベシャツって?」と弘。
「女の子の胸の膨らみを隠してくれるシャツ。
 オナベの男役の子が着るみたいよ。」
「ナミはいつから女の子やってるの?」
「小さいときからずっと。テレビにも出たんだよ。5歳のとき。」
「どんな?」

「『ドッキリ映像』っていう番組。視聴者が撮った映像を選んで流すもの。
 5歳のとき、あたし、髪を肩の下まで伸ばしてて、
 髪をアップにして、お風呂から出てくるの。
 そして、髪を下ろして、真っ裸で髪を拭いてる。
 そのあたしは、だれが見ても女の子。やがて、カメラは、あたしのお△ん△んを映す。
 そこで、ドッキリってわけ。すごい反響があったの。
 そして、今度は、赤い女の子のワンピースで、正式に番組に出たの。
 ゲストの人、みんな、すごく驚いてた。」

「じゃあ、女の子になるの、その頃から、お家の人承認だったんだね。」
「テレビに出る前から、あたし、女の子だった。」
「それでなんだ…。ナミ、男装してても、仕草や歩き方で
 女の子ってばればれだったよ。」
「やっぱり…、もうあたし、男の子になれなくなったのかな…。」
ナミは少し淋しげに言った。

「ナミは、GID?」
「ずっと自分は、GIDだと思ってた。
 でも、最近、あたしは、女装子かも知れないって思ってるの。」
「わかるよ。ぼくは典型的な女装子だけど、やっぱりホルモンで胸を大きくしたいし、
 体毛を全部無くしたいと思うもの。」
「あたし、ホルモンで大きな胸やお尻を得たり、変声期を逃れたり、体毛を防いだりしたけど、
 セックスの対象として女の子が好きだし、女装の子も好き。
 男性とのセックスも夢に見るけど、恋をするのは、男性じゃない。
 あたし、今、ヒロと初対面だけど、ヒロを好きになりかけてる。」

「ぼくは、もう、ナミに恋してる感じ。」
「ほんと?」
「うん。ナミの顔が好き、声も好き、性格はちょっと変わってるけど好き。」
「例えば、あたしとセックスしたいって思う?」
「もちろんだよ。」弘は言った。



ナミのアパートに行くことにした。
喫茶店から、歩いて30分のところらしい。
歩きながら、ナミが言う。
「ねえ、あたし今、こんなに頭ぼさぼさだし、
 度の強い眼鏡かけて胸ペッたんこだけど、ヒロの腕に抱きついて歩いていい。」
「いいよ。その格好でも、ナミは女の子に見えるからね。」
「うれしい。ヒロは、心が広いね。」ナミは嬉しそうに言った。
実際、弘の腕を抱くナミの腕は柔らかくて、
ナミが男の子だとは、弘はどうしても思えなかった。



ナミのアパートは、外壁が全部木でできた変わった建物だった。
中に入ると、部屋は2部屋。
一つは、板間で、壁もすべて板張りだった。
そして、絵を描く油の匂いがした。
キャンバスが乗っているイーゼルがいくつかあった。
そして、腕の長いライトが付いた机があった。

「このアパートね。画学生専門のアパートなの。
 油絵のアトリエに使えるように、板の間になっているし、
 油が匂うから、どの部屋も油絵を描く人だけ。」ナミは言った。
「ナミの絵はいいね。好きだよ。」
弘はほぼ完成している絵を見て言った。
「ありがとう。ヒロも絵が好き?」ナミはうれしそうに言った。
「うん。描けないけど、見るのは好き。ナミの絵は色が綺麗。」ヒロはそう言った。

そして、となりの部屋。
そこはファンシーな、女の子の部屋になっていた。
ベッドがあり、ソファーとテレビとラジカセがあった。
綺麗な白いドレッサーがあり、姿見もあった。
洋服ダンスもあって、下は白いふかふかのジュータンだった。
8畳はあるかと思われた。
ここに来ると、油の匂いがしなかった。
代わりに、ラベンダーの香りがして、気分を落ち着かせる。

ナミが、コーヒーを淹れて持って来た。
ソファーの前のジュータンに座り、小テーブルで、二人で飲んだ。
「あたし、コンタクトにしてくるね。」
そう言って、ナミは立ち上がって、ドレッサーの前に座った。
眼鏡を取った。
それから、ナミは、髪に両手を当てて、髪の毛をずらした。
ぼざぼざの髪は、かつらで、ナミのふっさりとした、長い髪が、下りてきた。少し茶髪だ。
弘はびっくりして見ていた。
ナミは、長い髪を7:3に分けて、7の方の髪が、斜めに眉を隠していた。

「わあ、それがナミの本当の髪なの。」と弘は行った。
「うん。」
「すごく、ステキだよ。」
「ありがとう。大学には、ぼさぼさ髪と眼鏡で行ってるんだ。」
「どうして?そんなに美人なのに。」
「目立たない女の子でいたい。」
「どうして?目立てばいいのに。」

「本物の女じゃないから。」ナミはそう言った。
少し悲しそうな声の色を感じて、弘は、それ以上は言わなかった。
ナミが、弘のとなりに来て、弘の腕を抱いた。

「あたし、まだ、『アリアリ』だし。」とナミが言う。
「そうなんだ。その内手術しちゃうの。」
「わからない。自分がGIDだったら取っちゃうと思う。
 でも、女装子って気がするから、残しておきたい。

 あのトイレの絵あるでしょう。
 あたしあんな風に、自分の見かけとアレがあることのギャップに、
 未だに、感じちゃう。
 姿見の前で、あの絵と同じことやって、一人で興奮してる。
 GIDの子は、そんなことやらないでしょう。」
「別にいいじゃない。GIDに女装子が混じっていたって。」弘は言った。
ナミは、少しうれしそうな顔をした。

「ちょっと着替えてくるね。」
ナミはそう言って、下着とワンピースを持って、バスの着替え場に行った。
5分もすると、ナミは帰って来た。
白いプリーツのミニスカート。桃色のセーター。豊な胸があり、100%女の子になってきた。
唇だけ少し桃色に染めて、あとはノーメイクだった。
「ナミ、女の子そのものだね。すごく綺麗。」弘は、我を忘れてナミを見た。


つづく(次回は、「二人で女装」)

トイレより愛を込めて②「ナミに会う」

こうして、絵は毎日、少しずつ進化し、
弘とナミの一言交換コメントが、1週間ほど続いた。

弘はどうしても、ナミに会いたくなった。
そこで、弘は、自分がいつも本屋のトイレに行く午後5時より、
2時間早く、トイレに行った。
そのとき絵は昨日のままだった。
『この本屋で、5時まで待てば、その子が来るに違いない。』
弘は、トイレの入り口が見えるところで、本を見る振りをして、
じっと、ナミと思われる人物が、トイレに入って出てくるのを待った。
始めの1時間くらい、トイレに入っていったのは、本屋の女店員2人だけだった。

しかし、4時を過ぎたころ、
大きなスケッチブックを入れた黒い布バッグを下げた女の子が入って行った。
なんだ、女の子かと思ったが、とても気になる子だった。
黒のサマー・セーター、黒のコットンパンツ、髪は、ミディアムでぼさぼさにしていて、
度の強い黒縁の時代遅れの眼鏡をかけ、前髪を眼鏡まで垂らしていた。
見えるのは、鼻と口だけ。しかし、女の子だとわかった。

その子は、トイレに入り、10分ほど出てこなかった。
絵を描いているんだと弘は思った。
あの子は、自分が男装しているつもりなんだ。
(胸がぺたんこだった。)
そして、男子トイレに入り、絵を描いている。
女の子がなぜ?と思った。

その子は、出てきた。
そして、本屋の絵画のコーナーに行って、一冊本を手に取り見始めた。
弘は、女の子が、しばらくあそこにいるだろうと思って、トイレの絵を見に行った。
すると、新しい絵が描かれていた。
これで決まり、あの子しか考えられない。
弘は、そのときだけは、絵をじっくり見ずに、
女の子のいる絵画コーナーに急いで行った。
そして、その子を眺めていた。

男装のつもりだろうが、女の子丸出しだ。
胸のふくらみはほとんどない。(何かを巻いているのだろう。)
でも、細くて高い位置のウエスト。男子にしては大きすぎるピップ。
背は、弘くらい。
歩き方は、完全に女の子。
女の子は、本を何度も取り替えて見ていたが、
そのときの手の動きも、女の子特有のものだった。
弘は、もう少し近づき女の子に並んだ。
すると、その子から、女の子ならではのオーラを感じた。

弘はどうしようかと迷った。
女装の好きな学生どうしなら、話しかけやすい。
でも、女の子には、気軽に声をかけにくい。
しかし、と思った。
その子と自分は、トイレの絵を通じて、すでに心を通わせている。
全くの他人ではない。女装画を好んで描いている子だ。
たとえ、女の子でも、少しくらいは話しがしたい。
せめて、女の子なのに、男装までして、なぜあんな絵を描いているかを聞きたい。

弘は、本を見ながら、勇気を奮った。
「ぼく、ヒロ。」と小さな声で言った。
女の子がぴくんとした。その子も本を見たまま、
「あたし、ナミ。」と言った。
弘にとって、嬉しい言葉が返ってきた。
「喫茶店行かない。」と弘は行った。
「いいわよ。」とナミは言った。
ナミの声は女の子のものだった。

二人で本屋を出て、落ち着ける広い喫茶店に行った。
コーヒーを頼み、面と向かって座った。
「ヒロの眼鏡をとった顔を見たい。」ナミが会話の口火を切った。
「うん。」と言って、弘は眼鏡をはずした。
「髪の毛を少し上げて、お顔を見せて。」とナミに言われ、
弘は、そうした。

「わあっ。」とナミは喜び、「ヒロは、可愛いね。女の子みたい。」と言った。
「ナミの顔も見たい。ぼくと同じにして。」と弘は行った。
ナミは眼鏡をとって、おでこを見せた。
ナミは、知的で整った顔立ちをしていた。
「わあ、ナミは、美人じゃない。」と弘は感激して言った。
「ありがとう。」とナミは言った。
「トイレの絵、もうすごい興奮しちゃった。
 ナミは、女の子なのに、なんでわざわざ男装してまで、
 男子トイレに絵を描いてるの?」弘は聞いた。

ナミは、ちょっとお茶目な表情をした。
「ヒロ。あたし、男だよ。」
ナミは、そう言った。


つづく(つぎは、「ナミの事情」です。)

トイレより愛を込めて①「トイレの中の名画」

新しい物語を始めます。ちょっとふざけたような題ですが、
けっこう真面目に書いてます。読んでくださると、うれしいです。

==============================

長かった夏休みも終わり、9月の中旬。
猛暑は去り、過ごしやすい日々が続いていた。

駅前の大きな5階建てのビルは、
2階が全部本屋になっている。
戸川弘は、大学の帰り、いつもその本屋へ寄る。
その日、本を見ているときに、トイレに行きたくなり、
上の階へ上がろうと思った。
しかし、本屋の中にもあるかも知れないと思って試しに店員に聞いた。
すると案の定、会計の一つ裏にトイレがあった。

弘がずっと気がつかなかったくらいなので、
トイレには、誰もいなかった。
弘は、小用のときも、女の子のように個室でするのが好きだ。
一つある個室に入り、ウォスレットになっている便座に座った。
そのうち、左のドアをふと見ると鉛筆で描かれた絵がある。
弘は、その絵を見て、一気に興奮してしまった。

可愛いワンピースの美少女が、風にスカートの前を舞い上がらせている。
美少女は、何か橋の欄干に背をもたげ、欄干を両手で持っている。
そして、何か苦痛の表情をし、下腹部に下着はなく下半身が丸出しになっている。
そして、その下半身には女の子にあるはずのないものが、描かれていた。
それは、興奮し膨張していて、
少女の「それ」が風で露になったことの恥ずかしさと、自らの露出の喜びとを、
両方訴えているような、絶妙な表情が描いているのだ。

漫画と劇画の中間くらいのリアルさであるが、無駄のないラインで描かれている。
吹き出しがあり、女の子は、「いや~ん、はずかしい…」と言っている。

弘は、絵に魅了され、食い入るように見入った。
そして、自らのものを完全に大きくさせてしまい、どうしようと途方に暮れた。

弘には、女装の趣味があった。
可愛い少女に、あってはならないものがある。
その少女が女らしくあればあるほど、
美しくあればあるほど、そのギャップに興奮は高まる。
トイレの絵は、弘が今まで見てきた関係の絵の中でも、
最高とも言えるものだった。
これを、書いた人は、自分と同じ趣味だ。
同好の者を興奮させるツボを、完全に心得ている。

弘は、忘れずに、しっかりとケータイのカメラに絵を収めた。



弘は、その日、自分のワンルームマンションに帰り、女装をした。
シャワーを浴び、裸になり姿見に身を映す。
弘は、大学2年生。
160cmと小柄であったが、真っ直ぐな長い脚にめぐまれていた。
ももが、むっちりとしていて、すねは細い。まるで女の子の肢だった。
顔の髭も薄くて、毛抜きで抜いてしまってしまえば、ほとんど手間がかからなかった。

白いショーツをとり、男のものを股の後ろに回し、女の子にみえる履き方をした。
すねにある少し伸びた毛を、シェイバーで剃った。
脇の下にも当てる。
白いブラ、スリップ、胸に人口乳房を入れ、
光沢のある白いワンピースを着た。
7号が入るほど上半身は細身だった。

トイレで見た絵が頭にあり、聖少女のようになりたかった。
弘は、眼鏡を取った。
すると、弘の女の子のような可愛い顔が現れた。
目を隠すほど前に垂らしている髪を、ピンで留め、おでこを出した。
細く手入れをした眉が現れる。
長い前髪は、それを隠すカモフラージュだった。
薄くメイクした。ピンクのリップを薄く塗り、
マスカラを少し使った。
これだけで、弘は十分女の子に見えた。

髪は肩まであったが、緩やかなウェーブのあるロングのカツラをかぶった。
トイレで見た女の子の絵は、ヘアリボンをしていた。
弘も同じように、首の後ろから、白いリボンを回し、頭の上で、蝶々を作った。

鏡を見た。
大体17歳くらいに見える。
弘は満足した。
我ながら、可愛いと思った。

弘は、ケータイで撮ったトイレの絵をパソコンに取りいれ、
大きな画面で見た。
何度見ても興奮する。
ある行為をしたくなった。
だが、我慢した。
せっかく女装したのだ。
弘は、ベッドの前の勉強机に座り、
女言葉の練習をしたりした。

女装の友達が欲しかった。
今はいない。
机に立てかけてある鏡に向かって、
「あたし、ヒロミよ。あなたは、誰?」
「あたしは、ユカよ。どうぞよろしく。」
などと女言葉で、鏡と対話をしながら、
女の子の仕草をしたり、部屋の中を女の子歩きをしたりした。



弘は、次の日も、大学帰りに本屋のトイレに絵を見に行った。
すると、絵が進化していた。
『描いた人が、描き加えたのだ。』と弘は思った。
女の子の横に、学生が2人いて、女の子のあそこを見て、驚いている。
女の子の吹き出しが、「いや、見ないで。」となっていた。
弘は思った。
この人は、興奮させるツボが完全にわかっている。

弘は、ふと思いついて、バッグから鉛筆を出して、
絵の下に、「大興奮しました。ありがとう。ヒロ。20才。」と描いた。

次の日も絵を見に行った。
新しい絵が描かれてあった。
高校生くらいのセーラー服の女の子が、スカートを上げ、
ショーツを取った自分の下半身を姿見で見ている。
例のものは、大きくなっていて、女の子は、戸惑いの表情で、
「あたし、男?女?」と噴出しに文字が描かれていた。
女の子の表情が絶妙だった。

弘は、またもや、一気に興奮してしまった。
そして、嬉しいことに、昨日書いた弘の言葉の横に、
『見てくれてありがとう。ナミ。19才。』と書かれてあった。
弘は歓喜した。自分と1才違いだ。ナミとは、女の子の名前だが、
この男の子の、女名前にちがいない。
この子と友達になりたい。弘は、そう強く願った。


つづく(次回は、「絵を描いた人物との出会い」)

推理小説家・大西洋次・エピローグ「加奈による種明かし」

<エピローグ> 

「加奈が語るマジックの種明かし」

加奈は、洋次と恵子に説明をはじめた。

「あたし、52枚が全部同じカードならできるのにって思いました。
 でも、それでは、初めにカードを扇にして見せたとき、
 いっぺんで、ばれますよね。
 だから、52枚じゃなくて、何枚ならばれないかなって考えました。
 少ない方がいい。
 結論は、2枚でした。
 同じカードが2枚ずつ並んでいるなら、扇にしてぱっと見せたとき、ばれない。

 だから、私は、おもちゃ屋さんで、そっくり同じトランプを2ケース買いました。
 そして、家で、2組のトランプを、全部同じーカードを合わせてペアにしました。
 52組のペアができます。
 そこから、赤、黒、絵札、マークのバランスがいいように考えながら、26組を選び、
 配列も考え、52枚のトランプにしました。
 そのトランプでやったんです。
 上から、2枚ずつ同じカードになっています。

 まず、カードを扇にして、数字の方を見せ、「普通のカードですよね。」
 と言いました。洋子さんとママから、ここはクリアしました。
 ぱっと見せられて、ペアが並んでいると見抜く人は極めて少ないと思っていました。

 カードを山にして置きました。
 さて、ここにナイフが入ります。
 ここで、ナイフの入り方は2通りあります。
 1つは、ペアとペアのちょうど間に入る場合。これを、「場合1」とします。
 もう1つは、ナイフが、1つのペアに割り込んで入る場合。
 つまり、ペアを別れさすように入る場合。これを、「場合2」とします。

 「場合1」を考えます。私は、ナイフの上の山をもらいます。
 残った山にナイフが乗っている。ナイフの真下2枚は同じカードですね。
 そして、その山が、初めにあたしがもらった山の上に来ます。
 1つの山になったカードのトップの2枚は、同じカードです。」

洋子
「わかった!この場合、トップのカードを私達が見て、中に入れる。
 つまり、トップに同じカードがあるから、トップに来る。

加奈
「そうなんです。つまり、場合1では、トップにくるんです。
 では、場合2を考えます。
 ナイフによって、ペアが引き裂かれました。
 ナイフの真上と真下が同じカードです。
 そして、あたしは、ナイフの上の山をもらいました。
 つまり、あたしのもらった山のボトムが、最後までボトムになります。

 そして、ナイフの下の山が、あたしのもらった山の上にきます。
 ナイフは一番上に乗っています。
 ナイフの真下のカードは、全体の山のボトムと同じカードです。」

ママ。
「この場合、トップを中にいれると、ボトムが同じカードだから、ボトムに来る。」
洋子。
「うおーー。わかって来たわ。」

加奈。
「そうなんです。こうして、カードは、トップに来るかボトムに来るかなんです。」
洋子。
「でも、場合1になるか、場合2になるかは、わからない。
 でも、加奈は当てたわよね。トップかボトムか。それ、どうやって当てたの。」
加奈。
「それに、すごく悩んだんです。やっぱり、当てないとつまらないですよね。
 で、考えに考えたら、答えは、簡単に出ました。

 初め、ナイフの上の山を、いただきましたね。
 あのとき、あたしは、もらった山のボトムのカードを、
 カードをそろえる風をして、そっと見ておいたんです。

 最後に、カードは一つの山になります。しかし、あたしはボトムのカードを知っています。
 そこで、一番上のカードが、山に入った後で、聞きました。カードは何ですかって。
 相手の言ったカードが、あたしの見たカードと同じなら、場合2。ボトムです。
 相手の言ったカードと、あたしの見たカードが、違っていたら、場合1。トップです。」

「わかったー!」と洋子が飛び上がった。
「加奈ちゃん、あなたは、なんて賢いんでしょう。」
ママが、ぼんやりしている。
洋子が、
「ほら、場合2は、トップとボトムが同じ数じゃない。
 だから、あたし達が見たカードと、加奈の見たボトムと同じになるでしょう。
 あたし達は、トップのカードを、加奈に言うわけだから。」
ママ。
「ああ、わかった。キャーすごい。加奈これ1日で考えたの?」
加奈。
「洋子さんのマンションにいるとき、大体できたんです。
 でも、実際にやってみないと、自信がなかったから。
 洋子さん、カードがペアになっていることで、小説に差し支えませんか。」
洋子。
「大丈夫。いけるわ。だって、仕掛けのない普通のトランプでは、絶対不可能なんだから。
 加奈ちゃん、あたしのマンションで、『そうか。』って言ったでしょう。
 あれは、このトリックのどこを思いついたときだったの?」
加奈。
「トップかボトムかを占うには、もらった山のボトムを見ておけばいいって、気が付いたときです。」
と加奈は、微笑んだ。
洋子。
「それ、最後の詰めじゃない。じゃあ、あの短い間に、マジックを完成させたのね!」

加奈は、
「はい。なんとか。」
と照れながら言った。

「この、天才少女め!」
洋子は、そう言って、加奈にチュチュとキスをして、原稿を書くために飛んで帰っていった。

ママは、言った。
「あたし、とんでもない子を、店においちゃったわ。」

洋子は、新宿駅へと走りながら、決めていた。
次の小説の名探偵は、『加奈』。




※このトランプ・マジックの種は、私ラックが考えました。
 しかし、世界は広いので、同じトリックを考えた人は、大勢いるかもしれません。
 私は、考えるのに3日ほどかかりましたが、
 それを、数分の内に考えた加奈は、やぱり天才少女だと思います。
 また、このマジックは、5回以上やると、ペアが崩れてきて、できません。

推理小説家・大西洋次⑦「洋次のお礼」最終回

長いのを読んでくださり、ありがとうございます。これで、やっと「最終回」です。

================================

「じゃあ、はじめます。」と加奈は言って、トランプを出した。
トランプを扇にして、数字の面を見せて、全部同じカードでないことを見せる。
(普通のトランプだ。)

加奈は、カードをきちんと山にして、置いた。
「1枚抜いてもらってもいいんですが、この方がかっこいいので。」
そう言って、洋次にステーキナイフを渡した。
「そのナイフで、山のどこかを切って、ナイフを途中で止めてください。」
洋次はそうした。
山の途中をナイフが横に切っている。
「ナイフの真下のカードが主役です。洋子さんが選んだカードだと思ってください。」
加奈は言った。

「では、ナイフより上のカードの山を、あたしにください。」
洋次は、ナイフより上のカードの山を加奈に渡した。
加奈は、もらった山をきちんと山にそろえて横においた。
「では、ナイフが乗っているカードの山、つまりナイフより下の山を、横にある
 さっきもらった、山の上に重ねて置いてください。ナイフは置いたままに。」
洋次はそうした。

加奈は言った。
「ナイフは、洋子さんが好きなところで、切ったので、
 ナイフの真下のカード、つまり今トップのカードに、
 あたしは、なんの仕掛けもできませんよね。」
「ええ、わかるわ。そのとおり。」と洋子。
「では、ナイフを取って、一番上のカードを見てください。」
「とってもいいの。」と洋次。
「はい、手にとって数を覚えてください。」

それは、ハートのQだった。恵子と二人で洋次は見た。
「では、山の好きなところに、入れてください。」
洋次は、もう一度カードがハートのQかを恵子と二人で確かめ、
山の中に入れ、完全にそろえた。

「では、これから、カードが移動しますが、
 カードによって、トップが好きなカードと、ボトム(底)が好きなカードがあります。
 それを占います。
 では、見たカードをあたしに教えてください。」と加奈。
洋次は、緊張に震えた。
「ハートのQよ。」と言った。

「あ、そのカードはトップが好きです。今頃トップに来ていることでしょう。」と加奈が言った。
洋次は言った。
「まって、まって、まって。もし、ハートのQが、一番上に来てたら、
 あたし、気絶するほど驚き、感激で死んじゃう。
 だって、ハートのQは、完全に中に入れたわよね。恵子確認して入れたよね。」
恵子は、
「絶対中にある。上に来ることはありえない。だって、加奈は何もしてない。
 ナイフの真下のカードを予測できない。予測できたとしても、上にもってくることはできない。
 2重3重に不可能よ。」
と言った。

「上に来ていたら、洋子さんのトリック完成と思っていいですか。」と加奈が聞いた。
「もう、十分。これで、十分。」と洋子は言った。
「じゃあ、洋子さんがご覧になってください。」と加奈が言った。
洋子は、心臓がとまりそうなほど緊張して、いちばん上のカードを返した。
それは、ハートのQだった。

二人は、飛び上がるほど驚いた。
「なぜ、なぜ、ありえない。」と恵子が叫んだ。
「加奈、もう感激、感動、やったー、これで、小説が書ける。
 たった一日で、ほんとに考えてくれるなんて、夢にも思わなかった。
 種明かしは、後にしてさ、ボトムの好きなカードだったら、
 いちばん下に来るわけね。」と洋次。
「はいそうです。」と加奈は言った。

そのあと三回同じカードでやった。
カードはトップだったり、ボトムだったりしたが、加奈は全部言い当てた。

そのあと、洋次と恵子は種明かしを加奈から聞いた。(※種明かしは、エピローグで)
洋次は感動した。加奈が眩しくて見られないほどだった。
「加奈、このトリックは、私の知る限り他にはないわ。もう、すごい。加奈は奇跡。」
洋次はそう言った。
「加奈、後で、お礼するわね。」と言って、洋次は小説を仕上げたいからと、すぐに帰った。
「加奈は、やっぱり只者じゃないと思ってた。」とママは言った。
「偶然です。でも、洋子さんに喜んでもらってうれしいです。」と加奈は言った。

*    *    *

その日から、洋次は、恵子の店にぱったり来なくなった。
1ヶ月ほどたって、恵子の店の開店と同時にやってきた。

「ご無沙汰。」と洋子。
「あら、お久しぶり。」と恵子は言った。
「お久しぶりです。」と加奈は言った。

「今日は、加奈ちゃんに、あのマジックのお礼を持ってきたの。」
洋次は、そう言って、一冊の本を加奈の前に置いた。
「できたてのほやほや、来週発売。」と洋子は言った。
「ありがとうございます。」と言って加奈は本を見た。
「あ、これ、あの流行りの本の<その2>ですね。」と加奈は言った。

恵子は、あれだけのマジックのお礼にしては、少ないと思い、洋子のつもりを計りかねていた。

「ひょっとして、作者のサイン入りだったりして。」と加奈はにっこりして本を手に取った。
恵子は、近づいてきて、本を見た。
「まあ、洋子さんたら。粋なことするんだから。」と恵子は嬉しげに言った。

「加奈、よく見てご覧なさい。著者のところ。」恵子は言った。
「え?」と言って、加奈は見た。
『トップがお好き?ボトムがお好き? 赤石実春&加奈 共著』そうあった。
「あ、あたしの名前。」加奈は言った。
「え?じゃあ、赤石実春さんて、まさか、洋子さん?」と加奈。
「加奈は、それを知ってる四番目の人になったの。」と洋子。そして、
「あたし、人のアイデアを自分のものにするようなことしないわ。」と言った。
「だから、あたしの名前を?」と加奈。

恵子ママは、
「加奈、頭いいのにわからないの?洋子さんのことだから、
 印税は、加奈と山分けよってとこよ。一体この本、何部売れると思うの?」と言った。
「あ、え、そうなんだ、まさか、え、洋子さん、いいんですか。」加奈は言った。
「言ったじゃない。あのトリックは、本の半分の価値があるって。
 だから、半分半分で行こう。」洋子はにっこりした。
「わあ…。」と加奈はやっとすべてのことに気が付いて、
感激に両手を口にあて、涙をぽろぽろと流した。
「ありがとうございます。夢みたいです。」と言って加奈は泣き出した。
「きっと、ご家族を救えるわ。」と恵子が、加奈の肩を抱いて言った。
加奈は泣きながら、うなずいた。

「加奈ちゃん。これから、実春、加奈コンビでやっていこう。
 あたし、アイデアもう枯れてるから。」と洋子。
「洋子さん、この店から加奈とらないでよ。それだけはやめて。」と恵子が言った。
「大丈夫よ。あたし、次の名探偵決めたの。
 ゴールデン街に身を潜め、名推理をくり出す天才少女。加奈がモデルよ。」
「ねえ、天才女装少女にしない?」とママ。
「したいのは山々。でも、テレビドラマになったときに、俳優いる?」
「加奈本人がいるじゃない。」
「あ、そうね。」と言って、洋次は恵子と笑った。

加奈が少し笑い、やっと泣き止んだ。


<おわり>(次回は、エピローグ「加奈による種明かし」です。)

推理小説家・大西洋次⑥「加奈、名探偵のオーラ」

エピソードを含む、長い物語になってしまいました。明日の投稿が、やっと最終回になります。
読んでくださるとうれしいです。

==================================

「じゃあ、今度は、あたしのこと。言える範囲で話すね。」と洋次は言った。
「あたし、25歳なんてウソ。ママと同年だから、ママには内緒よ。
 あたし、35歳なの。」
「え?」と驚いて加奈は、洋次を見つめた。
「それで、三流、四流の推理小説を書いてるの。
 あたしが書くトリックなんて、過去の偉い人が考えたトリックを、
 ちょっとずつ頂戴して、アレンジして書いてるわけなの。
 でも、それだけじゃ悲しいじゃない。

 だから、最後に一つ、マニアをにゃっとさせるくらいのトリックが欲しいの。
 今、それで行き詰ってて、締め切りまであと10日なのに、
 アイデアが出なくて苦しんでる。」

「それも、大変ねえ。苦労だと思うな。」と加奈は言った。

「そうだ、加奈に相談してみるわ。
 あたし、加奈はものすごい頭脳の子だと感じるの。
 そうだ、そうだ、加奈がいたわ。ちょっと待ってて。
 あたしの、救いの天使になってくれるかも知れない。」

洋次はそう言うと、急にうきうきして、座を立った。
そして、トランプを持ってきた。

「加奈に考えてほしいのは、新しいトランプのエレベーター・マジックなの。
 小説では、トランプじゃないんだけど、
 トランプでそれができれば、小説が完成するの。」
加奈は、きょとんとして、洋次を見ていた。

洋次は説明をはじめた。
「エレベーター・マジックって、カードの山の中で、
 自由にあるカードを移動させるマジックなの。
 伝統的にはね、手のひらにカードを1枚隠しておく。
 で、相手にカードの山の一番上のカードを見させる。
 ハートのAだったとするね。

 で、手品師は、カードをそろえる振りをして、
 掌に隠しておいたカードを、そっと山の上にのせる。
 で、「はい、あなたの見た一番上のカードを、
 山の中に入れてください。」という。
 相手は、手品師のもっていたカードをもって、
 それを山の中に入れる。
 で、手品師が、ぽんとカードを叩き、一番上のカードを見せると、
 中に入れたはずのハートのAが上にある…って仕掛け。」

「ああ、納得。でも、それ技術がいるね。」
と加奈は言った。

「そこで、加奈に考えて欲しいのは、
 相手がカードの山から、任意に一枚カードを抜く。
 で、カードの山の好きなところへ入れさせる。
 それだけなの。
 でも、ぽんと叩いて、一番上のカードを見ると、
 そのカードが上に来てる。
 どう?こんなマジックできる?」と洋次は言った。

「無理よ。だって、1枚とったカードは、
 入れるまで、引いた人がもってて、
 カードを見てるわけでしょ。そして、確認したカードを中に入れる。
 無理。カードが全部同じ札だったら、できるけど。」
加奈は言った。

「そうなのよ。52枚同じカードじゃなきゃできないわよね。
 やっぱり、だめか。」洋次は言った。

洋次が、ふと、加奈を見ると、
「全部が、同じカード・・・。」
そうつぶやいて考えている。
その加奈を見たとき、洋次は思わず身が震えた。
加奈が、今まで一度も見せなかった、驚くほど利口そうなオーラを放っていた。
そして、深く集中している。
(ああ、加奈、ステキ。これは、名探偵のオーラ。)洋次は、加奈に見とれた。
(次の作品の名探偵のモデルは、加奈にする。)そうも思った。

「そうか…。」と加奈が顔を上げた。
「うそ、加奈、まさか、できそうだなんて…。」洋次は言った。

「洋子、これできたら、洋子助かるんでしょう。
 ストーリーの大切な部分なんでしょう。」と加奈言う。
「うん。大切。1冊の本の半分の価値がある。
 できたら、お礼するわ。
 加奈、なんとかなりそうなの?」

「まだ、わからない。あたし、試してみたいから、もう帰るわ。
 これができたら、洋子喜んでくれるのよね。」
「うん、うん、本ができるかどうかの瀬戸際なの。」
「じゃあ、あたし帰る。」
加奈は、あわてたように飛んで帰って行った。

残った洋次は、つぶやいた。
「まさか、まさか、まさか、ああ、神様。加奈に力をお貸しください。」

*     *     *

翌日月曜日、午後3時ごろ、恵子ママから、メールが入った。
『加奈が、マジックができたそうなので、お店に8時半に来てください。』

「うそー!」と洋次は、飛び上がった。たった、1日で…。
お店は9時からなので、その30分前、客のいないときというわけか、と洋次は思った。
でも、できたなんて、ありえない。でも、ほんとにできてたら、これは一大事だ。

夜の時間が来るまで、洋次は、待ち遠しくて、
部屋の中を走ったり、転がったり、逆立ちしたりした。

やっと夜になった。
恵子のお店に行った。
恵子と加奈がいる。
「ああ、加奈ちゃん。本当にできてたら、あたし気絶する。」
と洋次は言った。


つづく(次回は、『洋次のお礼』最終回です。)

推理作家・大西洋次⑤「加奈の事情」

やがて、マンションについた。
「ここです。」
と洋次は言って、加奈を中に入れた。
「わあー、すごい。すごいマンションですね。洋子さんってお金持ちなんですね。」と加奈。
「そうでも、ないみたいです。ソファーにかけてください。
 今、紅茶を入れます。」と洋次はいった。

洋次は、二人分の紅茶を入れて、加奈の隣に座った。
二人で飲みながら、えへっと洋次は笑った。
「加奈ちゃん、あたし、あたし、洋子よ。」と言った。
加奈はきょとんとして、
「え?どういうこと?」と言った。
「この前のお店のときと違うでしょ。これが、あたしの素顔なの。」
「うそ。だって、絵里さん、中学生に見える。洋子さんは、25歳くらいの人だと思ったのに。」
「5歳若く見えますってクリーム塗ったの。それ、2回塗ったら、こんな風になったの。」
「わあーん、うそ、ほんとに、洋子さん?」
「昼食は、夕食の後に…。」と洋次は言った。
「ああ、ほんとだ。『それ、夜食でしょ』でしょ?」加奈が言う。
「うん。あたし、そう言った。」
「わあ、なんか、年下の女の子といるみたい。あたし、どうしよう。」加奈は言う。
「ねえ。あたしのこと洋子って呼び捨てにして。あたしも、加奈のこと加奈って呼ぶ。
 それと、丁寧語は禁止。友達でいこう。」
「うん。いいわ。洋子は年下に見えるし、洋子って呼ぶ。」
「うれしいー。」と洋次は、思わず、加奈を抱き締めてしまった。
その後で、すぐ、「ごめんなさい。なれなれしくしちゃった。」とうつむいた。
「どうして、いいのに。友達だったら、抱き合ったりするよ。」と加奈。
「そう、じゃあ、よかった。」と洋次は照れながら笑った。

洋次は、加奈にマンションの部屋を案内した。
加奈は、衣装室にビックリし、カツラの数にビックリし、ベッドの大きさにびっくりし、
バスの大きさにびっくりし、姿見が至るところにあることにびっくりした。
「まるで、女装のための天国みたい。」と加奈は言った。

その後、ケーキを、キッチンのテーブルで食べた。
おいしいコーヒーも入れた。

加奈という16歳の友達といることで、洋次の心は、15歳そのものになっていた。
今日の日を待つまでは、セックスのことばかり考えていたのに、
15歳の心は、無垢で純情だった。

二人でソファーに並んで、ハイ・ティーンのファッション雑誌を見た。
二人で、「これ、いい。」「これステキ。」とキャーキャー言いながら見た。
それは、だれが見ても、ふたりの若い女の子だった。

そのうち、洋次は、加奈からとてもいい香りを感じた。
「加奈、いい匂いがする。香水でもない、なあに?」と洋次は聞いた。
「これ、ローズのエセンシャルオイル。
 ハンカチにしみこませてあるの。これよ。」と加奈がスカートのポケットから出して見せた。
「ほんとだ。いい匂い。」洋次は言った。
そのとき、洋次に電撃のような性への欲求が貫いた。
可愛い加奈を恋する気持ちが、胸にあふれそうになり、
心臓がどきどきし、頬が火照り、加奈に抱かれたい欲求に支配されていく。

「加奈、加奈。」と洋次は必死の思いで、名を呼び、うつむいた。
「何?洋子、どうかした?」と加奈は言った。
「加奈……、あの、抱いて、加奈が好きでたまらないの。」洋次はやっとの思いで言った。
加奈は、真顔になり、ファッション誌をテーブルに置いた。
そして、洋子を見つめた。
加奈の腕が、洋次の肩にゆっくりと伸び、そっと洋次を引き寄せた。
そして、腕を回して、洋次を胸をきつく抱きしめた。
「あたしも、こうしたかったの。洋子が好き。」加奈は言った。
洋次の心に、加奈の言葉が甘い蜜のように広がった。
加奈を抱きしめるはずだったのに、いつの間にか抱かれていた。

加奈は抱きしめた腕をほどき、洋次を見つめ、
そして、唇を洋次の唇に重ねた。
それは、甘いレズビアンの香りだった。
体が溶けてしまいそうだった。
加奈の舌が少し洋次の口の中に入ってきた。
洋次は嬉しくて、少し吸った。
そして、加奈の口の中に自分の舌を入れた。
加奈はそれを受け入れ、二人の舌は絡み合った。

唇を離したとき、加奈は息をはずませていた。
洋次はそれがうれしかった。自分はもっと荒い息をしていた。
洋次は、加奈の手を取って、ベッドルームに誘った。

大きなベッドの上で、抱きあった。
洋次はこの上もない幸せを感じた。
服を少しづつ脱ぎ、毛布をかけて、
たくさんの喜びの声をあげながら、
夢の世界を旅した。

抱きあったまま、眠りに落ちて、気が付くと時が過ぎていた。
洋次が目を覚ましたとき、加奈が、にっこり微笑んで洋次を見つめていた。
加奈が、洋次の髪を指で梳いてくれた。
洋次は、幸せだった。



服を来た二人は、ソファーの前のジュウタンに座って、
テーブルを挟み、2回目の紅茶を飲んでいた。
「ママは知っていることだけど、もう一人、洋子にだけは、本当のこと言いたい。」
と加奈は言った。
「無理に言わなくてもいいよ。」と洋次は、言った。
「ううん。洋子には聞いて欲しい。
 あたしね、16歳じゃないの。」
「ほんと?」
「うん。本当は、21歳。大学へ2年行ったけど、この春退学届けを出して、働いてるの。
 あたし、素顔でも女の子に見られたから、昼は喫茶店のウエイトレスをして、
 そして、夜は、恵子ママのところで働いてる。」

「何か、あったのね。」と洋次は聞いた。
「うん。あたしの父は、躁鬱病なの。今までははっきりわからなかった。
 でも、1年前、躁状態になってしまって、
 誇大妄想が始まり、気が大きくなってしまって、
 自分で今までの会社やめて、事業を起こしてしまったの。
 億万長者になれるって豪語していた。

 でも、もともと病気のための誇大妄想によるものだから、
 すぐ失敗して、代わりに、膨大な借金を抱えてしまったの。」
「どのくらいの借金?」洋次は聞いた。
「1千500万円くらい。」
「わあ、それは、痛いなあ。」
「家を売っても古いからお金にならないし、
 貯金を全部合わせても、500万円に届かなかった。
 でも、その500万円って、妹のために貯めてきたものなの。

 妹は、膠原病があって、骨量が失われて、今左足が右足より2cm短くて、
 歩くときは松葉杖なの。そのほか、将来的にたくさんのお金がかかるから、
 特別な貯金だったの。
 それも、使わなければならなかった。
 あたしは、学生やっていられる状況じゃなくて、
 働きはじめた。
 恵子ママはとってもよくしてくれて、高い時間給を払ってくれるけど、
 バイトでは、全然追いつかない。」

「お父さんは?今。」
「病院に通って、お薬を呑みはじめたから、今気分が安定してる。
 でも、もう昔の会社に戻れないし、アルバイトをしても、
 あたしとあまりかわらない。生活するのがやっと。
 あたしは、どんな貧しい生活でも我慢ができるけど、
 妹が可哀相。手術費がないから、した方がいい手術もできないでいるの。」

加奈は、涙を流し、抱えた膝の中に、顔を埋めた。

「そうだったの。加奈の明るい顔を見ていたから、そんなこと想像もしなかった。」
洋次は、加奈のそばに寄って、後ろから加奈の肩を抱いた。


つづく(次回は、『加奈の放つオーラ』です。)

推理小説家・大西洋次④「加奈がやってくる」

洋次は、クリームの2回目をやった。
砂時計が、もうすぐ3分というとき、
顔がまた、ピーンと張り、なんと15歳、まるで中学生のようになった。
洋次は、顔をいろいろな表情に変え、口を動かした。
とくに突っ張り感がない。
これは、いける。

洋次は、鏡の自分をいつまでも見た。
夢のようだった。
ああ、あのおじさんは、天使だったのか、と思ったりした。

洋次は、髪に巻いたタオルバンドをとり、
中学生風に、髪を左右に結び、前髪をすだれ状に降ろした。
「ああ、若い、15歳の女の子だ。」
リップをほんのちょっと塗った。
睫にマスカラをほんの少し塗った。
それ以上のメイクは、かえって老けてしまう。

洋次は、興奮して来てしまった。
「まだ、ダメ。」とかの部分に言いきかし、
ショーツを女の子風にはき、ガードルで押え、
乙女風なブラ。中学生用のブラウス、
紺の、プリーツスカウト。
襟のボタンをしめ、そこに大きなリボン。
グレイと赤のチェックのベストを来て、前ボタンを閉めた。
紺のロングソックス、女子の黒の靴。

立った姿を、姿見で見て、
「あああ。」と息をついた。
本当は35歳の自分が、15歳の女の子になっている。
興奮して、耐えられない。
洋次は、ガードルとショーツをとり、
ドレッサーに座り、
顔を間近で見て感激しながら、
ある行為と共に、天国へと上っていった。



恋する加奈と会うのは、あさってに迫っていた。
洋次は、15歳になって加奈に会いたいと思っていた。
そこで、例のクリームを塗って、
15歳の女の子の服装をして、美容院へ行った。
「いらっしゃいませ。」と可愛い美容士さんが言った。
「あの、流行のヘアスタイルにしてください。」
と洋次は、いつもより可愛い声で言った。
「じゃあ、髪をストレートパーマにして、ちょっと茶に染めて、
 前髪を作って、ところどころ額が見えるようにしませんか。」
と美容士は言った。
「はい、お願いします。」

2時間後、洋次の髪は、流行の女の子のスタイルになり、
来ている洋服とどんぴしゃりになった。
「可愛いですよ。」
と美容士さんに言われた。
洋次は踊るような気持ちで、マンションに帰った。



編集の竹田壮一は、洋次の女の姿を知らない。
そこで、洋次は、竹田に会うときは、男装をしなければならなかった。
胸を隠すためにナベシャツ(乳房を押えるシャツ)を着て、
長袖のTシャツをきて、男物のジーンズを履く。
髪は、後ろで1本にまとめ、前髪は、ヘアピンで左右に分け、
大きなアラレちゃん眼鏡をかける。
まあ、ここまでダサイ格好はないというものだった。

「先生、<その2>をそろそろ出さないと、せっかくの大波が、消えてしまいますからね。
 あと、2週間くらいで、なんとかなりませんか。」と竹田。
「わかってるって。」と洋次は男の声で。「今、最後のトリックが思いつかなくて苦戦してるのよ。それができたら、書くのは一気だからさ。」
「トリック、思い付きそうですか。先生のは、少女向けだけど、1つぐらいは、マニアをあっと言わせるのがないと、くやしいですからね。」と竹田。
「わかってるって。考えてるから。絶対大丈夫。だから、待って。
 せめて、次の日曜日まで、俺を、つっつかないで。」
「何かあるんですか。日曜日に。」
「大事な人と会うのね。それが終わったら、がんばるから。」
「はいはい。」
とまあ、洋次と編集のとの関係はこんなもんだった。



洋次は、日曜日まで、中学生向きのファッション雑誌ばかり見ていた。
どのファッションがいいか、いくつか頭にいれて、洋装店に買いに行った。



やがて、ついに日曜日。午後2時に、洋次のマンションのある駅まで加奈が来る。
数日会わなかっただけで、洋次の思いは募る一方で、加奈が恋しくて、気が狂いそうだった。
学生時代、恵子を好きになって以来の感情だった。
さすが恵子が気に入ってお店に置いた子だ。あんな子はめったにいない。

洋次は、シャワーを浴びて、きちんと顔を荒い、
例のクリームを2回顔に塗った。
美容院で髪をカットしてもらったおかげで、どう見ても15歳の女の子だ。
うれしくてたまらない。
ショーツをつけて、男のものを股下に回して、ガードルをつけた。
ガードルがないと心配。大きくなってしまう。
Cカップの白いブラ。おっぱいをきちんと、ブラに収めた。
白いスリップ。股下まで。
膝下までの紺のソックス。
赤と青のチェックのプリーツスカート。膝上5cm。
白いブラウス。丸い襟。短いエンジのネクタイ。
メッシュのロングベスト。スカートまでとどいている。
髪に、赤いテントウムシのヘアピンで、額を少し見せる。
白とピンクのスニーカー。
肩から斜めにかける小さなバッグ。
そして、思いきって素顔で行った。

『ああ、馴れてないから、コーデがうまくいかないなあ。』と思いながら、
洋次は、時間が来るまで、ドキドキしながら待った。
もう一度姿見で、15歳に見えるか確認。一応自分ではOK。

ちょっと早く出て、コンビニチェックをして見た。
チョコレートをもった。いつもの店員さんがいる。
お金を払い、おつりを受け取る。
「あの、あたし、何歳に打たれました?」と少し可愛い声で言った。
「10歳代です。」
「23歳なんですけど。」と洋次。
「冗談。中学生でしょ?」とお姉さん。
「実はそう。」と洋次。
やったー!とガッツポーズをとった。

加奈が来る2時まで、あと15分。
緊張で心臓がつぶれそうだ。
そのときになって、加奈の素顔を知らないことに気が付いた。
お店では、厚化粧だった。
さらに、加奈にとっても、洋次がわからない。
こんな15歳の格好をしている。
ああどうしよう…と思いながら電車を待った。

やがて、2時5分の電車が来て止まった。
乗客が降りている。
その中に加奈がいるはず。
洋次は目をこらして、来る人を眺めた。
やがて、黒髪の高校生くらいの女の子が来た。
前髪の隙間から額を見せている。
白いバッグを下げて、ピンクのサマーセーター。
白いミニのプリーツスカート。白いソックス。長い脚。
ほとんど素顔。でも、唇が桃色に赤い。

他の乗客が散ってしまっても、その子は、駅前に残っていた。
加奈だ。違いない。
可愛い。お店で見たときより若く見える。
胸が、きゅんとなった。
洋次は、寄って行った。
少し、シナリオを考えておいた。

「あの、加奈さんですか。」と洋次はいつもより可愛い女声で言った。
「はい。」加奈は、洋次を見てもわからないようだった。
「あの、洋子の妹の、絵里と言います。
 姉が、少し用ができ遅れるので、あたしが、お迎えにきました。」
「ああ、よかった。駅を間違えたのかと思いました。」と加奈は、顔をほころばした。
二人で、路を歩いた。
「加奈さん、お綺麗ですね。」と洋次は言った。
「いえいえ。絵里さんこそ。ばっちり流行り系ですね。」と加奈。
「とんでもない。ぜんぜんコーデなんかわからなくて。」洋次は、胸が高鳴ってたまらまかった。
このナチュラルな感じの美少女が男の子だとは、到底思えなかった。


つづく(加奈との一日)

推理小説家・大西洋次③「謎のクリーム」

恵子の店からの帰り、少しお腹がすいたので、洋次は、
新宿に来たのであるし、西口の「ハモニカ横町」に行った。
ここは、どこか終戦直後を思わせるような雰囲気で、食堂が並んで入る。
若い娘なら、まず行かないところだ。
食堂は、どこも安い。
横町は混雑していて、半分は、頭に手ぬぐいのハチマキを巻いたようなおじさんが、
カップ酒をもってうろうろしていたり、風紀がよろしいとは言えない。

洋次は、学生のころから、大体こういうところが好きで、
つい入ってしまう。
その晩も、アルコールも手伝ってか、
昔よく行った、てんぷらの店に行って、長いすに座った。
「小天丼ね。」と一言注文した。
すると酒焼けして顔中真っ赤なおじさんが、隣にきた。
洋次と同じ、小天丼を頼む。
片手に持った大関のカップ酒をテーブルに置いて、洋次をジロジロ見ている。
そのうち話しかけてきた。

「姉ちゃんが、一人こんなとこ来るのは、珍しいな。」と言う。
「『こんなとこ』とは、この店に失礼でしょう。」と洋次は言った。
そのとき、洋次は、だれでもいい、話をしたい気分だった。
「いや。この店言ったんじゃねーよ。この横町のことでえ。」
「なるほど。わかったわ。」と洋次。
「姉ちゃん、べっぴんだなあ。」
「それは、ありがとう。」
「その格好は昔懐かしいな。カフェの女給でもしてんのかい。」
「まあ、そんなとこね。」
小天丼が、洋次とおじさんに来た。
食べはじめた。

「なんだな。女の子は、食べ方がお上品だな。」おじさん。
「なんなら、かっこんでみましょうか?」と洋次。
「おお、やってみてよ。」
洋次は、口を大きく開いて、少しだけ、かっ込んで見せた。
「あははは。」とおじさんは笑った。
「俺、あんたが、気に入ったぜ。」
「どこが?」
「冗談で言ったのに、正直にかっこむなんてな。変わった女だ。」
「あたし、まともよ。」
「そう思ってるのは、姉ちゃんだけ。」
「まあ、失礼だこと。」

「あははは。そう悪く取るなよ。姉ちゃんのおかげで、やっといい気分だ。」
「やなことあったの。」
「まあな。でも、言わねえ。姉ちゃんまで、嫌な気にさせる。」
「まあ、それはジェントルマンだわ。」
「はは、ジェントルマンと言われたのは、何年ぶりかな。」
「言われたこと前にあるの?」
「ねーよ。今がはじめてだ。あははは。」とおじさんは、すっかり上機嫌だった。
天丼を食べ終わった。お金を払い、
「じゃあ、おじさん、あたし行くわよ。」
「ああ、また来いよ。」
「そうね。」
「おう。」

なんだか、不思議。洋次もおじさんと話して、楽しくなった。
なんか、いいことがありそうな予感さえする。
あたしのいいことってなんだ?
と考えながら、マンションのある駅を降りた。
前にコンビニがある。
どうしても寄ってしまう。

またチョコレートをもって、レジに立っていると、
レジ横に、宣伝入りの化粧品が1本売っている。
『塗ると5歳若返る。脅威の化粧品 8000円。』
化粧品の箱に、日本語がない。外国の製品だろう。
おもしろそうだが、8000円は高い。
こんな高い化粧品を、レジ横にポンと置いてあるのも何か怪しい。
だが、8000円なら、効き目が、逆にあるのかも知れない。
洋次は、物は試し、化粧品を買った。

マンションに着いて、洗顔をして、髪にタオルバンドを巻いて、
バスに入った。
今日のことをいろいろ思い出していた。
中でも、あのおじさんのことが、不思議とよく思い出される。
コンビニでかった化粧品が効くなら、おじさんは天使ってことになるな。
そんなことを思ってくすっとした。

風呂からバスタオルを巻いて上がった。
その姿を、前の姿見で見る。
女だ…と我ながらに思う。
胸、ウエストのくびれ、ヒップの張り。まるいお出こ。
のっぺりした白い脚。
ここで、洋次は、いつも少し興奮してしまう。

バスロブに着替えて、ドレッサーに座り、
さっそくコンビニで買ったクリームを試したくなった。
説明書をみると、英語、中国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語とあって、
日本語がない。
「けしからん。」と思ったが、
「いや、ちがう。これは、日本じゃヤバイけど、外国ならよし…という製品だ。」
と洋次は、推理小説作家らしい推理をした。
英語を見た。

顔の脂肪分を綺麗にとること。
薄く塗ること(厚くぬっても効果はない。)
塗ったら、3分間、顔の表情を変えないで待つこと。
すると、皮膚が収縮して、小じわ消え、5歳ほど若返る。
3分以後は、どんな表情をしてもいい。
最高、2回塗りまでできる。
3回塗ると、クリームがひび割れることもあるので不可。
15歳以下の女性は、クリームで特に若くならない。

よし、と理解して、洋次は、薄く手に取り、顔に塗った。
洋次の顔は、もち肌で、素顔で脱毛もしてあり、25歳くらいに見える。
鏡をじっと見て、3分間の砂時計を逆さにした。
2分まで、何も起こらず。2分半。
3分に向かい、顔の皮膚の収縮を感じ、顔が、魔法のように若くなった。
すごい!洋次は歓喜した。
目尻や口の回り、おでこ、目の下のなどの小じわがなくなり、
5歳ほど、つまり顔が20歳くらいになった。

2回までやっていいという。
洋次は、喜びに、体が震えた。


つづく(次は、「15歳を満喫」)

推理小説家・大西洋次②「女装少女・加奈」

「今日は、加奈ちゃんと話そうかな。」と洋次は、その子の前に座った。
加奈は、ママの好みか、いわゆるアメリカの1950年代の服を着ている。
カクテルドレス風、肩見せで、紐で吊っていて、
膝丈のスカート部は、ふわっとパラシュートのように膨らんでいる。
メイクは、長いつけ睫をつけ、全体的に濃い。
髪は、茶髪で、外巻きのカール、そして、前髪。
これは、素顔をカムフラージュするためかと洋次は思った。

「加奈ちゃんは、推理小説なんか読む?」と洋次は聞いた。
「もう全然です。あ、でも、1つ読みました。」
「何、何?」と洋次は聞いた。
「えーと、確か『樽』です。」
「え?クロフツの?」
「あ、そうです、そうです。」と加奈はうれしげに言う。
「あらまあ。」と洋次は驚いた。「それ、一番にあげてくる?ああ恐い。」
洋次がもっとも愛している作品だった。
「他には?」と洋次。
「えーと、『Yの悲劇』かな?」
「まあ、ステキ。なによ、1つだけじゃないじゃない。さては、他にも読んでるな?」
「ああ、思い出してきました。『幻の女』。」
「キャー、ハードボイルド。やるわねえ。」
「それから、『そして、誰もいなくなった。』です。」
「わあお、おぬし。名作を総舐めじゃないの。
 読みませんなんて、カマトトぶるんだから。
 日本もんは?」
「そりゃ、松本清張の『時間の習俗』です。女装が出てきますから。」
と加奈はにっこりした。
「あら、あなた。女の子でしょ?」洋次が突っ込んだ。
加奈は、「あ。」と言って真っ赤になった。
ママが、「洋子さんには、いいのよ。」と言った。

「あはっ。誘導尋問あたしの勝ち。」と洋次。
「負けました。」と加奈は頭を下げた。
「『時間の習俗』、あたし、高校生のとき読んだわよ。
 女装の子が出てくるまで待ち遠しくて、途中読み飛ばしてやろうかと思った。」と洋次。
加奈が、あはは、と笑った。
「今、流行ってる推理小説知ってる。」
「ええ。あの、100万部突破した。」
「正確には120万部なんだけど…。」
「『昼食はディナーの前に』でしたっけ?」と加奈が言う。
「それ、あたり前じゃないの。加奈も言ってくれるわね。」
「当たり前でしたね。あはは。」と加奈は笑った。
「じゃあ、『昼食は、ディナーの後で』かな。」と加奈。
「それ、夜食になっちゃうでしょう。」と洋次。
「あはは。ごめんなさい。」と加奈が肩をすぼめて笑った。
「あーあ、加奈にいいようにからかわれたわ。水割りお代わり。」と洋次は言った。

「あのう、質問していいですか。」と加奈が言った。
「いやよ。」と洋次は即座にいった。
「あなたみたいな子の素朴な質問って、いちばん恐いのよ。でも、いいわ。」と洋次は言った。
「サスペンスとミステリーの違いは何ですか。長年の疑問なんです。」と加奈。
「どうしてあたしに聞くの?」と洋次。
「だってお客様、推理小説にお詳しそうだから。」と加奈。
「ほら、やっぱり来たわよ。素朴で恐い質問が。ママ、助けて。ヘルプ。」と洋次。
他の客がいなかったので、ママが来た。
「うーん、恐いのがサスペンス。謎解きが、ミステリー。どう?」とママが言った。
「ホラーも恐いけど、サスペンスといっしょですか。」と加奈が言う。
「ほら、だから素朴質問って恐いのよ。畳みこんで来るんだから。はい、ママ答えて。」
と、洋次はすっかり逃げている。
「そんなこと言わないで、洋子さん、教えて。」とママ。
「なんで、あたしなの?」と洋次。
「だって、推理小説、先に振ったの洋子さんよ。」とママ。
「えー、そうねえ。つまり…。他の話題にしない?」と洋次。
「ダメです。」と加奈とママ。
「はー。各種定義はあるっていう前提ね。
 謎解きがあるのが、ミステリー。その中で、加害者や被害者の心理的不安や恐怖を前面に出して描いたのが、サスペンス。ホラーは、恐怖させることを第一目的に、人間や、人間以外の者まで登場させて見るものを恐がらせるもの。だから、ミステリー・サスペンスや、ミステリー・ホラーとかあるのね。
その中で、純粋に謎解きオンリーでいくのを、「本格ミステリー」って言ったりする。以上であります。」
「わああ~。」と加奈とママが拍手した。

「長年の疑問が解けました。」と加奈。
「ところで、洋子さんは、女性ですよね。」と加奈が言う。
あまりの話の飛び具合に、洋次はずっこける。
「さっき『時間の習俗』を必死で読んだって言ったでしょ。加奈、推理が甘いぞ。」と洋次。
「あ。じゃあ。」と言って、加奈は、目を大きく開け、口に両手をあてた。
「わあ~、感激。洋子さんてステキです。」と加奈は言った。
「いつでも遊びに来て。あたし、一人暮らしで淋しくてたまらないの。毎日泣いてるの。」
「はい。ママの許可を得て、行きます。」
「ママ、いいでしょ。」と洋次はママに言った。
「特別にね。洋子だからよ。」と恵子は言った。
「やった。」と洋次は可愛らしくいって、水割りのお代わりを頼んだ。

加奈と次の日曜日に会う約束に成功した。
時間と落ちあう場所を決めた。

店に客が混んできたので、洋次は立った。
会計をして、外に出たとき、洋次は自覚した。

あたしは、16歳の女装少女・加奈に惚れた。


つづく

推理小説作家・大西洋次①「何かいいことないかなあ…」

大西洋次は、35歳。
謎の推理小説作家だった。
今、売り上げ100万部を突破した話題の推理小説の著者は、赤石実春というのがペンネームであるが、大西洋次こそ、その赤石実春だった。
赤石実春を知るものは、担当の編集者と、昔世話になった編集長、そして、大学時代の親友の3人だけだった。
彼は、マスコミには一切顔を出さず、取材、インタビューは、一切編集の竹田が行った。
もちろん著作の装丁に自分の顔を出すなどせず、実春という名前では、性別さえもわからなかった。

彼はこれまでも、50万部を突破する小説を立て続けに出しており、
出版社のドル箱であった。
そのため、出版社は、彼に最新の注意を払っていた。

編集の竹田壮一は、竹田壮一と書かれた自宅マンションに帰る。
机や資料があるだけの、殺風景な1LDのマンション。
実は、そこが、大西洋次の仕事部屋である。
打ち合わせのあと、竹田壮一は、ジーンズにフランクなジャンパーと服装を買え、
コンビニでも行くようにして、本当の自宅へ帰る。
こうして、謎の作家の家を報道陣から、カムフラージュしていた。

大西洋次の本当の住まいは、その1LDKのとなりにあった。
雑然とした隣の部屋とは、大きく違い、シャレて、ファンシーなステキな4LDKのマンションだった。

ある日、仕事に疲れた洋次は、ベランダを通って、住まいの部屋に入った。
一人で、紅茶を淹れ、大きなソファーに座り、一言、
「一人では、淋しいなあ。」と言った。
「女装をして、淋しさを紛らわすか。」と彼は言った。

彼は、シャワーを浴び、化粧部屋に入って行った。
胸に巻いたバスタオルをとると、彼には豊な乳房があった。
そして、ウエストからなだらかにラインを描く豊なヒップがあり、
体毛や、顔の髭などは一切なかった。
それは、彼が、二十歳のころからはじめたホルモン治療と
全身永久脱毛のためだ。これには、数えたくないほどのお金がかかった。
洋次は、男性の低めな声をしているが、
ニューハーフを対象とした、「女性の声を出す研究所」というところに3年かよい、
見事、きれいな女性の声を出せるようになった。
同時に、喉仏を取る手術も受けた。
また、額を女性のように丸くする手術もした。
がんばれば、幼い女の子の声も出せる。だか、これは5分で喉の筋肉が疲れてしまう。
彼の体で、男性だとわかるのは、股間に存在するもののみである。

彼は、印税で大金持ちであったが、その割に、地味で質素な女装が好きだった。
髪は、肩までの髪を7:3に分け、前髪を少しまばらに垂らしていた。
もっとも、カツラフェチで、20を越える数を持っていた。

彼は、下着をつけ、水色の木綿のワンピースを着て、
頭にヘアバンドをし、パンプスを履いた。
彼の身長は163cmだったが、かかとのある靴で特別高く見せようとは思わなかった。
その代わり、彼は、すばらしく長くて真っ直ぐな脚に恵まれていた。

今日は、リップと、アイシャドウをほんの少し引いた。
そのくらいのメイクで、彼を男性と見る人はいなかった。
洋次は、美貌であった。

「さあ、なんかおもしろいことがないか、ぶらっと出てみよう。」
彼は、表札のないその部屋からバッグをもって出て行った。

近くにコンビニがあるので、「コンビニ・チェック」でも楽しもうと中に入った。
チョコを買って、お金を出した。
レジの女の子は、気持ちのいい速さで、キーを打つ。
「ね、あたしのこと、何歳で打ったの?」と洋次は聞いた。
「20代です。」と女の子は言った。
「ええ?あたし、19なのに?」と洋次は言った。
「あ、すいません。20代前半だとは思ったんですけど、落ち着いてらっしゃるし。」と女の子。
「いいの、いいの。ごめんね。」と言って、洋次は店を出た。
『あはっ。20代前半かあ。もっとも無理に言わせたかな。』
くすっと笑いながら、町を歩いた。

「さあ、何かいいことないか、子猫ちゃん。」
本屋へ行った。
今、洋次の本は、横置きで重ねられている。
そこの札を見ると、120万部、ついに突破、となっていた。
おお、20万部増えてる。いいぞいいぞと思い、本屋を後にした。

彼の推理小説は、売れ筋本位で、若い子がよく買い、推理小説のマニアからは、散々な評価を受けていた。彼は、そんなこと全く気にしなかった。いつか本格を書いてみたかったが、あれは、疲れるしなあ、と思っていた。

新宿にでも行くか、と思って、電車に乗った。
みんな、ケータイ見てるなと思った。
二駅で新宿に着く。
洋次は、ゴールデン街へ向かって歩いた。

五月のうら暖かい夜。

ゴールデン街には、早、立ちん坊のお姉さん方がいる。
狭い路地を曲がって、行きつけの店。
インテリのママ恵子のいる女装の店に入った。

このママ恵子こそ大学での親友で、唯一女装をわかってくれる人物だった。
洋次の正体を知っている3番目の人物。
狭い、バーと椅子だけのお店。
「あら、洋子さん、お久しぶり。」
とママが言った。ママは、洋次と同年で、二人して若く見える。25歳くらい。
ママの横に、大人しそうな10代の女の子がいる。名前は加奈。
バイトを嫌うママが、最近、特別気に入って入れた子だ。
その子は表向き、16歳の女の子ということになっているが、洋次は、
その子も、男の子であることを知っている数少ない一人だった。


つづく

ケーキ屋さんの由紀夫⑥「最終回」

長い話になってしまいました。やっと最終回です。これまで読んでくっださって、ありがとうございました。(ああ、明日から、どうしよう…。)

==============================

祐は、更衣室にしか使ってない母の6畳を箪笥で半分にしきって、
そこに住み込みで働くことになった。

祐は、働き者だった。そして、気が利いた。
隆志が取って欲しいものを、素早く察して、「これですか。」と渡す。
そして、店が終わってからも、習ったことを気が済むまで練習した。
裕美は、一度家に帰って夕食を済ませた後、
毎晩、お結びを作って、自転車で店にやって来た。
「はい、これ。」と裕美はお結びを渡す。
「いつもありがとう。」と祐は、まるで眩しい人を見るように、裕美を見る。
裕美は、毎日のように、祐の練習のそばにいた。
そして、ときどき自分のパソコンを持ってきて、何かやっていた。

由紀夫は、そんな二人を微笑ましく見ていた。

「ああ、あれが、青春なのね。」などと嬉しそうに、つぶやいた。

由紀夫の夜は忙しい。
お店の制服と、父と祐の作業着を毎日必ず洗い、
アイロンをかける。
同じ制服は2日着ないので、なかなか大変だ。
クリーニングに出せばいいが、例え100円でも節約した。

それから、由紀夫は、今日の売り上げ等をパソコンに入力する。
どのケーキがどのくらい売れているか、1日のどの時間に売れているか、
季節によって、どのケーキが売れているかなど、
すべて、一瞬にしてでるように、関数を組んで、システムを作った。

裕美は裕美で、素晴らしいことをやった。
ニートのときに研究した腕で、「シャロン」のホームページを作った。

ある朝、裕美は喜喜としてやってきて、
「ね、ね、見てください。」と言って、店のパソコンに、「シャロン」と入力して検索した。
美しいホームページが現れた。
店の売り物のモンブランとイチゴタルトが、説明入りで入っていた。
それから、商品のカタログ。
店の地図、アクセス、必要なことがみんな書かれてあった。
「おお、すごい!」
と三人はいった。
「あたし、これ、クリスマスに向けて、パソコン上で予約注文できるようにしたいんです。
 そうすれば、お客さんは、わざわざ行くより、パソコンで注文できるシャロンにしよう…なんてことになりません?」
「おうおう。裕美ちゃんは、だてにニートやってたんじゃないんだなあ。」
と隆志は大喜びだった。
「裕美、これ大大大殊勲よ。でかした裕美!」と由紀夫が誉めちぎった。
裕美は飛び上がって喜んでいた。
「裕美ちゃん、スゲー。俺、勉強できない分、腕磨かなきゃ。」
と祐は、作業着をこすった。

*    *    *

それから10年。

「シャロン2号店」を出すことになり、1人前になった祐がマスターになった。
そして、お店に裕美が移った。
独立採算制であったが、新商品は互いに共有することになっている。

インターネットでの注文を受け付け、宅配で届けるシステムも確立した。
ケーキを型崩れせず冷蔵便で運べる箱を、由紀夫が考案した。

それから、それから、祐と裕美が婚約をした。

祐と裕美が婚約の承諾を得るため裕美の家に行った。
裕美の両親は、祐のことを良く知っていたが、祐が女性だとは知らなかった。
婚約承諾の席で、祐が実は女性だと知った両親は、
「じゃあ、二人は子供を産めるかもしれない。」と気が付いた。
「そのために、あたし達、ホルモンを我慢して来たの。」裕美は言った。
「ほんとに子供ができたら、いいわねえ。」と母は言った。
「裕美、祐さんを大事にしろ。」と父は言った。



それから、また1年半。

産婦人科病院の2階には、あわただしく人が動き回っていた。
今、祐が分娩室に入ったところだ。
隆志、由紀夫、裕美の父忠志、母千鶴子、そして、祐の両親の剛三と美也子が実家から駆けつけた。
「あ、どうもお父さん、お母さん、遠い所から。今、分娩室に入ったんですよ。」と裕美は、祐の両親に言った。
「あたしが、妻なのに、代わってあげられなくて。」と裕美は言った。
「いいんですよ。腕白だったあの子のお腹が大きくなるなんて、
 未だに信じられません。」と祐の母は言った。

そのうち、待ちに待った、産声が聞こえた。
「もしや、もしや、もしや。」と由紀夫は胸で手を組んだ。
看護婦さんが分娩室から出てきて、
「おめでとうございます。立派な男の子ですよ。」と言った。

「うわあ、ばんざーい。」とみんなで歓声を上げた。
騒がしい一団であった。

やがて、白い粉をはたかれた赤ちゃんが、看護婦さんに抱かれて、やって来た。
裕美は、涙を流していた。
「少し抱いてもいいですか。」と裕美。
「どうぞ。」
そう言って渡された赤ちゃんを、裕美は震える手で抱いた。
みんなで、回りを囲んで赤ちゃんを見た。
「可愛いね。」
「そうだねえ。」
とみんなで言い合った。
「じゃあ、もういいいですか。」と言って、看護婦さんが、赤ちゃんを抱いて行った。
「裕美、よかったね。」と裕美のお母さんがハンカチを目に当てて言った。
「よかった。こんなことになってくれるなんて。」とお父さんは目頭を押えた。
裕美は、感激にハンカチで目を押えたままだった。
隆志と由紀夫がくると、両親は、
「何もかも、お二人のおかげです。夢のようです。」と言った。

そのうち、ベッドに乗った祐が出てきた。
祐は、Vサインを出していた。
「裕美、やったぜ!楽勝!みなさん、ありがとうございました。」
と大きな声で言った。
「まあ、元気だこと。」と祐のお母さんが言ったので、みんなで笑った。



帰り路、由紀夫は隆志に言った。
「あの二人、当分、どっちがママになるかで、もめそうじゃない?」
「そうそう、俺も思ってた。もめるよな。見に行きたいよ。」
「行こうね。」
と二人でくすくすと笑った。

外は、気持ちのよい秋風が吹いていた。


<おわり>

ケーキ屋さんの由紀夫⑤「おかしな男の子登場」

短いお話のつもりが、長くなってしまいました。明日、第6話で完結となります。
読んでくださるとうれしいです。

==================================

午後6時、店のシャッターを閉めた。
隆志と由紀夫と裕美は、仕事場に座り込んでしまった。
「ああ、これ、うれしい疲れっていうんだなあ。」と隆志は言った。
「あたし、やっていて、うれしくてたまりませんでした。」と裕美が言った。
「行列ができたなんて、初めてだもん、うれしかったなあ。
 あたし、天国の母さんに見てもらいたかった。」と由紀夫が言った。
「ご覧になってるわよ。きっと。」裕美がいった。
「英理子ー!見てるか。みんなで元気にやってるぞー!」と隆志は叫んだ。

やがて、由紀夫が今日の売り上げを数えた。
「わあおー。」と言った。
「とうさん、裕美、先月の10日分の売り上げ、今日一日だけでいったよ。」と由紀夫が言った。
わあーと二人が拍手をした。
「これ、なんだな。明日は、今日の半分のお客さんが来てくれるとして、由紀子一人じゃ無理だな。」
「うん、無理。」と由紀夫。
「じゃあ、この分だと、給料を払えるから、裕美ちゃん、できたら、毎日きてくれないかな?」
隆志は裕美にそう言った。
すると、裕美は、目にうるうると涙をためて、そのうち泣き出してしまった。
「どうしたの、裕美?」と由紀夫は裕美の肩を抱いた。
「あたし、あたし、ニートで、このままずっと世間に役立たずの子になるのかと思っていたから、
 お店の役に立ってるのかと思って、うれしい。こんなこと考えもしなかったから…。」
裕美は泣きながらそう言った。
「今、裕美がいなかったら、この店やっていけないよ。」由紀夫が言った。
「そうだよ。裕美ちゃんが来てから、この店流行りだしたんだよ。
 言わば、お店の天使みたいなもんだよ。」と隆志は言った。
それを聞いて、裕美はもっと泣きだした。
「うれしい、あたし、うれしい…。」
そう、くり返しながら。

*    *    *

「類は友を呼ぶ」とは、由紀夫があのとき言った言葉だった。
店は、順調に売り上げを伸ばし、毎日シャッターが開くのを待つ客が10人くらいいた。
車の駐車場も、近所の広いところに、10台分借りた。
ただ一つ、ケーキは売れるものの、パテシエの隆志の負担が限界に来ていた。

11月の半ば、シャッターを閉め、裕美がごミ袋をだしているとき、
一人の男の子がやってきた。
外は、もう暗かった。
「あの、お姉さん、この店の人でしょう。」と男の子は言う。
ジーンズにジャンパー、そして、ボストンバッグを提げている。
背は、163cmの裕美と同じくらいだった。
遠くからやって来た子…と裕美は見た。

「ええ、そうよ。」と裕美は言った。
「この店はさ、男でも女として働かせてくれるって聞いたんだけど。」
「え、どこでそんなこと聞いたの。」
「掲示板の2チャンネル。」
「あ、そう。ありえるわね。」と裕美は言った。
「おれ、ここで働きたいんだけど。」
「じゃあ、あなたは、男の子だけど、女の子として、店員をしたいの?」と裕美は聞いた。
見ると、ちょっと女の子っぽい可愛いところがある。
「ちがう。反対。おれ、女。で、ケーキ作りたい。どんな辛いことでもする。
 家出てきたから、もう帰れない。」
「そう、じゃあ、いっしょに中入って。」
裕美はその子を中に入れた。

「マスター、由紀子、変わった子が来たの。会ってあげて。」と裕美は叫んだ。
「夕食まだか聞いて。」と由紀夫が顔を出した。
「まだだって!あたしも食べさせて!」裕美は叫んだ。



裕美は、その子が来たので、みんなと夕食を取ることにした。

テーブルに4人が座った。今日は、す豚だった。

その子は、立って、神崎祐(ゆう)ですと頭を下げた。
「で、祐君は、女の子で、男としてケーキ作りたいんだね。ケーキは女でも作れるから、
 お店の中で男として接して欲しいってことかな。」と隆志は聞いた。
「あ、そうです。このお店は、そういうの気にしないお店だって調べました。」と祐。
「あの、ネットの2チャンネルってとこで、なんでもわかっちゃうんです。」と裕美は言った。

「祐君は、やる気はありそうだ。ちょうど、今手が足りなくて、困ってたし。でもなあ…。」
と隆志は、言葉をにごした。
「俺、経験ないけど、根性あります。男になること家で認めてくれなかったから、
 俺、ボストン下げて出てきちゃったし、もう行くところないんです。」と祐は言った。
「祐君、今住んでるところは?」と由紀夫は聞いた。
「公園で寝てました。だから、俺、におってるかもしれない。」と祐はくんくんと自分の匂いをかいだ。
「大丈夫、大丈夫。」と由紀夫は、にっこりと言った。
「このす豚、おいしいなあ。」と祐は言った。
「あたしが作ったの。」と由紀夫。
「うまいだろ。コイツ、料理うまいんだ。」と隆志。
裕美はどうなるかと、じっと見ていた。
祐に妙な好感をもって、内心応援していた。

隆志は言った。
「君が、女でも男として扱ってくれるという理由で、ここに来たなら、理由として足りない。
 君が、ここが自分を磨くのに一番だと思ったという理由ならわかる。君をやとってもいい。」
「すいません。俺、初めの理由で来ました。でも、今、こんな風に、おいしいお料理を、見ず知らずの俺に食べさせてくれて、こんなに温かくしれくれたこと、今までなかったから、いいところだなって、俺…。」
そう言うと祐は、涙をぽろぽろこぼして、それを腕で何回も拭いた。
祐は続けた。
「俺、死に物狂いで働きます。しろと言われたことは、なんでもします。
 倒れるまででも、働きます。
 ほんとは、俺、昨日来て、モンブランを買って食べたんです。
 俺の、最後のお金でした。そのケーキがおいしくて、俺もこんなおいしいケーキが作れるようになりたいって、思いました。どうか、俺を弟子にしてください。お願いします。」
祐は、立って泣きながら礼をした。

「よし、わかった。祐君、君を雇おう。」と隆志は言った。
「ほんとですか!ありがとうございます。」と祐は頭を下げた。
わあ~と、裕美が拍手した。
「あれ?裕美がなんで拍手するの。」と由紀夫がからかった。
「そ、それは、初めに会ったのあたしだから。」と裕美は少し赤くなった。

それから、しばらく、和やかに団欒した。
そのうち祐が、
「ここは、男でも、女の子として働いてる店って聞いたんですけど、あれ、ウソですね。」と言った。
隆志が、
「祐君。ここにいる4人の中で、生物学上、女子であるのは、君だけだ。
 だから、気をつけたまえ。」と言った。
「えー!」と祐は叫んだ。「じゃあ、裕美さんも由紀子さんも、生物学上、男子ですか!」
「そうよ。女は祐君だけ。危ない所へきたのよ。」と由紀夫。
「裕美さんだけは、女性でしょう。」と祐。
「『だけは』とは、なに?『だけは』とは。」と由紀夫はいたずらな目で見た。
「いや、その、初めに会った人だから。」と祐は赤くなった。
「そう言ってくれるとうれしい。でも、生物学上、男なの。」と裕美。
「ええ?じゃあ、俺、すごい所へ来ちゃったんすね。」と祐が言ったので、
みんなで笑った。


つづく(次回は、やっと完結編です。)

ケーキ屋さんの由紀夫④「人気商品誕生」

「おはようございます。」
裕美が入ってきた。
髪型から、服装から、メイクまで、何からなになで、女の子になってきた。
メイクで、かなりな美人になっていた。

「わあ~。裕美。一気に女の子じゃない。」と由紀夫は言った。
「由紀子のおかげ。24時間女の子でいられるようになったの。」
やってきた隆志は、
「おお、どこの可愛い子かと思った。美人だなあ。」と言った。
「えへ。」と裕美は挨拶して、制服に着替えた。

そのとき、由紀夫は、紙にいろいろ図を描いていた。
「なんだ、それ?」と隆志が、由紀夫に聞いた。
裕美も覗きにきた。
「あたらしいモンブランを考えてたの。
 モンブランって、中が見えないじゃない?
 だから、買う人は、中にどれだけクリームが入っているかわからない。
 だから、カットケーキのモンブランを考えてるの。
 もちろん中にたっぷりクリームを入れて、それをみせるの。」由紀夫は言った。
「なるほど、それ、いい発想だ。
 じゃあ、フル・ケーキのときの形を、半球型にしよう。」と隆志。
「そうっか。それなら、中も見えるし、トップのにゅるにゅるもたっぷり乗る。
 父さん、やったー。」と由紀夫は喜んだ。

隆志は早速、試作をしてきた。
「どうだ、これなら、中のカスタードも栗も見えるし、
 トップは、甘いぐにゅぐにゅもたっぷりだ。
 栗は、小さくして、カスタードの中に混ぜる。でも、見える。」

みんなで食べてみた。
「おいしーい。」と裕美が行った。
「カステラが少ししかない。たっぷりサービスだね。」と由紀夫。
「よし。これを、家の売り物にしよう。由紀夫、アイデア賞だ。
 今日、もうちょっと工夫して、明日は、『今日のケーキ』にしよう。」

このモンブランは、売れた。
「今日のケーキ」の日のケーキの2倍売れた。

「もう、家でこのモンブランの取り合いになってるんですよ。
 だから、4つ全部モンブランを買って行きます。」
とうれしいことを言ってくれる人もいた。

それから、モンブランは、店の人気商品になった。

ある日、また、由紀夫は紙に絵を描いて考えていた。
「今度は、何考えてるの。」と裕美が言う。
父も来た。
「今度はなんだ。」
「うーん。タルトは、切ったり食べるとき、タルトが割れちゃうじゃない?
 だから、簡単に割れるタルトを考えてるの。」と由紀夫は言った。
「でも、タルトは硬いからいいんじゃない。
 固いままで、割れやすいってこと?」と裕美。
「うん、そうなの。」と由紀夫。
「なるほど、割れやすいタルトか。」と隆志。

「よし。鋳造屋さんにたのんで、タルトの型を作ってもらおう。
 型にひだを作ってもらって、タルトを詰め込む。
 すると、凸の型のところは薄くなるだろ。
 そこから綺麗に割れる。
 底は、放射状のひだにする。これで底も割れる。」と隆志は言った。
「父さんすごい。鋳造屋さんなんて知ってるの?」由紀夫は言った。
「ああ、ベーゴマを未だに作ってる友達がいる。彼に頼んで見る。
 フルケーキ用の大きいのと、小ケーキ用のを4つ作ってもらう。」

隆志は、その日のうちに、粘土の型見本を作った。
そして、1週間後に鉄の型が出来上がった。
隆志はさっそく試作した。

「どうだ、できたぞ。」と隆志は持ってきた。
問題は、ナイフではなくフォークで割れるかだ。
由紀夫は、そうっとフォークを入れた。すると、タルトの薄いとことに、
すうっとフォークが入った。底も綺麗に割れる。
由紀夫は、フォークの上のタルトケーキをすっとフォークの上に持ち上げて、
みんなに見せた。
わあ~、と隆志と裕美は拍手した。
「どうだ、簡単にわれたか。」と隆志。
「うん、フォークがすっと入った。」と由紀夫。
「あたしもやらせて。」と裕美がやってみた。
「あ、割れる。きれいに割れるわ。」と言った。
隆志もやって上手くいった。
三人でバンザイをした。
「これは、すごい。モンブランは、他でもあるかもしれない。
 だが、これは、ぜったい日本にここだけにしかない。」と隆志は言った。
「明日の『今日のケーキ』にしよう。」と由紀夫は言った。

裕美は、携帯のグルメサイトのケーキの分野に宣伝をした。
また、情報グループの地区別のところに、「シャロンのケーキ」を宣伝投稿した。
中の見えるモンブランと、フォークで割れるタルトケーキを強調した。

由紀夫と裕美で宣伝のポスターを書き、
当日表に出すのと、店内の宣伝用を貼った。

発売当日、由紀夫は、店の前に出て、デモンストレーションをした。
すると、ビックリするほどの人がきた。
裕美のケータイへの宣伝も効をそうしたようだ。

その日、たくさん用意したモンブランとイチゴタルトは、行列ができ、
裕美と由紀夫はてんてこ舞いに動いた。
売り上げがどうなるか、後で見るのが楽しみだった。


つづく(次回は、「おかしな男の子登場」です。)

ケーキ屋さんの由紀夫③「由紀夫の説得」

由紀夫は話し始めた。

「私は、この十月に母をなくし、
 これまで、ケーキ店を見ていた母の代わりをすると、
 死の床で、母に約束しました。
 そこで、学校を辞め、女性の姿をして、店員をはじめました。

 これは、少しも辛いことではありませんでした。
 なぜなら、私は子供のときから、女の子になりたいという願望を
 持っていたからなんです。仕事のつらさもよりも、
 女として仕事ができるという喜びのほうが、勝っていました。

 私は、今、17歳ですが、女の子になりたいという気持ちは、
 物心ついたときからもっていて、今でも、ずっと変わりません。
 おそらく、一生変わらないと思います。
 私は大人になったら、男の心に変わるのかなと思っていました。
 でも、少しも変わりませんでした。

 そこで、裕美さんのことですが、類は友を呼ぶというのでしょうか、
 裕美さんは、私と同じタイプの人だと思いました。
 いえ、私より強い女性への願望をもった人だと、思いました。

 私は、将来どうなるかということを、あまり考えないようにしています。
 今を精一杯どう生きていくのかが、大切かと考えています。
 裕美さんは、ご自分の部屋に閉じこもっておられます。
 それなら、まず、外に出て、体を動かすことが、今の目標だと思います。

 その裕美さんが、
 やっと、父と私の店でなら働けそうだとおっしゃっているのです。
 裕美さんの将来が、どんなに困難でも、
 それは、裕美さんが乗り越えていくべきものだと思います。
 裕美さんが女装をして働くことに、世間体もあると思います。
 でも、それは一つ先のことではないでしょうか。
 それより、一歩部屋から出て、働くことが、
 今の最優先ではないかと思うのです。」

由紀夫は、そこまで、一気に話した。

そのとき、裕美の母千鶴子が、
「あなたは、もしかしたら、小、中学、高校ともご一緒だった、大杉由紀夫さんではありませんか。」
と言った。
千鶴子が話し始めたことを、驚きの顔で忠雄は見つめた。
「はい。そうです。」由紀夫は答えた。
「千鶴子、それが、どうかするの?」と夫忠雄が行った。
「あなた、聞いて。当時の小学校、中学にいた保護者で、
 大杉由紀夫さんを知らない人はいません。
 今度の高校の生徒でも、
 大杉由紀夫さんを知らない生徒はいないと思います。
 由紀夫さんは、類まれな生徒と言われていました。
 由紀夫さんのいるクラスは、それだけで、
 明るくなり、いじめられる子なんかいなくなると。
 それほどのお子さんということでした。

 人柄のよさと、優しさと、素晴らしい企画力と実行力をもった優れた方です。
 その由紀夫さんと並んでお仕事ができるなんて、
 裕美にとっては、なんて幸運なことでしょう。
 きっと生きていくための大きな影響を受けると思います。
 裕美の女装が世間に知れることなど、
 それに比べれば、小さなことだと思います。」
普段、口を挟まない千鶴子の言葉は、夫忠雄に大きな影響を与えた。

忠雄は、何か考えながら、ある一つのことを振り切ったようだった。
「わかりました。家内がここまで言うことはめったにないことなのです。
 由紀夫さんが目の前にいらっしゃることに、
 よほど感激したのでしょう。
 また、先ほどのご説明の、理路整然としたおっしゃりよう、
 只の方とは思えません。
 人生の教えとはいいません。
 女になりたいと思っている裕美のよき友達になってくださるだけでいいのです。
 実は、親の私達には、裕美をどうすることもできず、
 行き詰まり、悩み抜いておりました。
 こちらこそ、お願いいたします。
 お父さん、どうかふつつかなものですが、
 よろしくお願いいたします。」

忠雄は立って頭をさげた。
みんなで立って、頭を下げあった。
由紀夫は一言言った。
「あの、ご兄弟はいらっしゃらないと聞きました。
 店で女子としてはたらくなら、どうかお家でも、女の子として、
 生活させてくださらないでしょうか。」

忠雄は、妻と目を合わせ、
「わかりました。今日から我が家は、娘がいることにします。」
「ほんと!」と裕美が、目を大きく開いた。
千鶴子は、
「お父さんと、話していたことでもあったの。
 今日で、踏ん切りがついたわ。」と言った。
「うれしい、お父さん、お母さん、ありがとう!」
と裕美は、父母に抱き付いていった。



「よかったなあ。」と隆志は帰り路で言った。
「うん。すごくうれしい。」由紀夫は言った。
「それにしても、由紀子、見事だったぞ。
 あれだけ、よくすらすら言えたものだ。」と父。
「だって、ほんとのこと言ったまでだもん。」
「いやー、俺は、ものすごい息子をもったもんだ。」
「娘でしょ。」と由紀夫につねられ、あははははっと二人で笑った。


つづく(次は、「ヒット商品誕生」です。」

ケーキ屋さんの由紀夫②「やって来た裕美」

「父さん、今月も2割り増しだったよ。」と由紀夫は言った。
「ほんとか。2ヶ月連続で、4割4部の伸びじゃないか。」
「そうだね。」と由紀夫は可愛い笑顔を見せた。
隆志は、由紀夫のすばらしさを改めて思い知った。
妻を失い、悲しみに一時やる気の失せていた隆志だったが、
由紀夫の前向きな姿勢と、アイデアに、
希望と、やる気が、湧いてくるのを感じた。
由紀夫は、すばらしい子だ。どんな困難も乗り越えていく子だと言った先生たちの言葉を思い出した。



10月になり、お店は安定して来た。
遠いとところから、車でやってくる客も増えた。

ある日、店が6時に終わって、由紀夫がごみ出しに店の角にきたとき、
「大杉くん。」との声があった。
由紀夫は、一瞬、女の子を思い浮かべた。
振り向くと、ジーンズを履いて、草色のサマーセーター、
ストレートの髪を、肩まで垂らしる子がいた。
顔立ちが可愛い。
「あの、君、女の子?」と由紀夫は聞いた。
「ううん、男。大杉君は、ぼくのこと知らないと思う。
 でも、ぼくは、君のこと良く知ってる。」
「なんか、あたしに、話があるのね。
 じゃあ、これから夕飯作るから、手伝ってくれる。
 そして、父さんといっしょに3人で食べよう。」
「いいの?初対面なのに?」
「君が悪い人に見えないもの。いいよ。」
由紀夫に言われ、その子は、ケータイをかけ、家に夕食がいらないことを告げた。

由紀夫は、その子を家に入れた。
そして、母の部屋に行き、楽なワンピースに着替えた。
そして、その子にも、ワンピースを渡した。
「これ着た方が、君に似合うよ。」とその子ににこりとして言った。
その子は、一瞬ためらった。だが、由紀夫が何もかも理解してくれている気がした。
「ありがとう。うれしい。」
「お名前教えて。」
「裕美。川田裕美。」
「裕美かあ。いいな。女の子にも使えるじゃない。
 あ、あたしは、由紀子。ニックネームだけど。
 今から裕美は、女の子になるのよ。自分のことは、『あたし』って呼ぶの。」
「ええ、いいわ。あたし自分のこと、あたしって呼ぶ方が呼びやすい。」
裕美はなめらかな女言葉で言った。
『ははん、裕美は心も女の子かな。』と由紀夫は思った。

キッチンのテーブルで、3人で焼肉定食を食べた。
「由紀子の料理はおいしいなあ。」と隆志は言った。
「全部、母さんに教わったものよ。」と由紀夫。
「それは、わかっているけど、一味違う。毎回夕食が楽しみだよ。」
「ほんとに、おいしい。」と裕美も言った。
「おっと、そちらの彼女は?」と隆志は言った。
「裕美といいます。」
「由紀子の友達?」
「あたしからの一方的な友達です。」と裕美は言った。
「高校生?」
「高校やめて、ニートしてます。」

「そうなんだ。今の学校は、行きにくいところだからな。勉強より、友達関係が大変だ。」
「そうなんです。それに、あたし男だから。」と裕美は言った。
「え?」と隆志は、ご飯を噴出しそうになった。
「男の子だったの。由紀子より、ずっと女らしいよ。そうだったのかあ。」
「中学のときから高校でも、ずっといじめられていました。」
「無理もない。裕美ちゃんだっけ。それで、学校いけなくなったんだね。」
「はい。」
「裕美ちゃん自身、女の子になりたいって思ってるの?」
「はい。生まれたときから。」 

「じゃあ、さあ、家でじっとしてるのは、体によくないから、うちで、少しバイトしない?
 もちろん、女の子として、由紀子のとなりでね。1日3時間くらい。
 週何日でもいい。由紀子、今うちアルバイト雇える余裕ある?」
「フルタイムは無理。時給800円として、一日3時間。週3日なら払える。」と由紀夫。
「なら、どう?おじさん、裕美ちゃんは、少し外へ出た方がいいと思うんだ。」
「うれしいです。やらせてください。問題は、両親だけです。」と裕美。
「ご両親、むずかしい人?」と隆志。
「簡単じゃないかもしれない。あたしが、女みたいなこと恥ずかしいと思ってるみたい。」
「今日、あたしといっしょに行こう。あたしから、裕美のご両親に話す。」と由紀夫は言った。
「俺も、行った方がいいんじゃないか。」と隆志。
「うん。大人がいると、重みが出るし、父さんも来て。」由紀夫は言った。



裕美の家は、「シャロン」の店から歩いて20分くらいの、
サラリーマン家庭のようだった。
時刻は、8時を過ぎていた。
裕美は、男の服に着替え、初め一人で家に入って行った。
そして、一人で事情を話し、お店の人が来てくれていることを話した。
お父さんの忠雄は、冷静な人だった。母の千鶴子は、お父さん任せな人だった。

由紀夫と隆志は、裕美に呼ばれ中に入った。
ダイニングのテーブルに忠雄と千鶴子がすわり、
面と向かって、真ん中に由紀夫、両脇に裕美と隆志が座った。

裕美の父忠雄がいった。
「ニートで何もしないでいる裕美が、アルバイトをするということには賛成なのです。
 ただ、女性の姿をして、女店員として働くということに、抵抗があります。」

「お気持ち、十分にわかります。」と由紀夫は言い、
「あの、お父様がたに、私は、女子と映っていますでしょうか。」と言った。
「はい、可愛いお嬢さんと拝見しています。」と忠雄。
「私は、男子です。」
「え?」と裕美の両親は、目を見張った。


つづく(次は、「両親への説得」です。)

ケーキ屋さんの由紀夫①「由紀夫女店員になる」

ああ、一度書いた2日分の物語を、すべて間違って消してしまいました。
しかたないので、2度書き直ししています。涙。読んでくださるとうれしいです。

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町外れに、小さな「シャロン」というケーキ屋さんがあった。
大杉隆志がケーキをつくり、妻の英理子が、店の一切をやっていた。
地の利があまり良くなく、お店には、たまにお客が入るていどだった。
だから、家の暮らしは、やっとやっとだった。

二人には、由紀夫という子供がいた。
その由紀夫は、母英理子が学校へ行くたびに、「素晴らしい子」ですと言われていた。
1年生のときにいわれ、2年でもいわれ、3年生の新担任にも言われた。
担任は若い男の先生だった。
英理子は、思いきって聞いてみた。
「あのう、1年生のころから、素晴らしいと誉めてくださったのですが、
 家にいるときはそうも思えないんです。
 学校で、一体どのようにすばらしいと言っていただけるのでしょうか。」

担任は、少し宙を見て、言葉を選んでいるようだった。
「そうですね。学習成績や運動能力は文句なしで、それだけではないのです。
 一口に言えば、由紀夫くんが一人いれば、クラスが明るく平和になるのです。
 明るく、ユーモアがあって、素晴らしい判断力と、意志の力をもっていて、考えも深いです。
 そして、やさしくて、クラスで孤立している子がいると、すぐに誘って、
 みんなの中に入れてしまいます。
 学級では、1番の人気者ですし、学年中に知れています。
 担任として、もし、クラスのなかに由紀夫君がいると、みんな大喜びします。」
「家では、ほんとに、普通の子なんですよ。
 それより、あの子は、女の子に見えますでしょ。
 そのことで、いじめられたりしないかと、心配しています。」
すると先生は笑った。
「確かに、女の子にみえますが、由紀夫君の力量はそれを遥かに越えています。
 そんな由紀夫君をいじめる子なんて、学年中探しても一人もいませんよ。
由紀夫君は、どんな困難も乗り越えていける子ですよ。」

母の英理子は、安心して家に帰った。
さっそく夫の隆志に行った。
「へーえ、あいつ、それほどのものなの?
 家では、ぜんぜん普通の子っだけどな。女の子にみえる以外は。」
「そのことでも聞いたの。いじめられませんかって。
 そしたら、先生笑ってらした。由紀夫の力量は、それを遥かに上回っているって。」
「ふーん。親の目なんて、いい加減だな。」
「あの子は、笑顔が特別に可愛いわ。」
「俺もそう思う。」
と言って、二人は笑った。

そこへ、女の子みたいな男の子が帰ってきた。
目が大きく、とても可愛い顔をしている。髪の毛を肩まで伸ばしていた。
「遊びにいってっくる。夕飯までには、帰るからね。」
とランドセルをほおり投げて外へ出て言った。

「あの子がねえ。」と英理子は行った。
「ほんとな。」と隆志が言った。



由紀夫は高校2年。
お店は、なんとか貧しいながらやってこれた。
そこに、大きな不幸がやってきた。
母の英理子ががんになり、わずか3ヶ月で他界した。
死のベッドで、英理子は、由紀夫の手を取った。
「父さんをお願い。由紀夫、あなたがいれば母さんは安心。お願い。」
「母さん。わかった。ぼくがんばる。がんばるから、安心して。」
英理子は、由紀夫の手をにぎったまま、息を引き取った。
「母さん。」「英理子。」と泣きはらす二人を残して、英理子は永眠した。

葬儀に5日ほどかかった。
明後日から店を空けるという朝。
「父さん、これにサインして。」と由紀夫が書類をだした。
それは、高校の退学届けだった。
「由紀夫これ…。」と隆志は由紀夫を見た。
「ぼく、明日から、母さんの仕事をする。だから。」
「いいのか。」と隆志は言った。
「勉強はいつでもできるでしょう。でも、このお店は、待ったなしだもの。」
由紀夫はいった。隆志は、意志の固い由紀夫のことを知っている。
隆志は何も言わずにサインをした。

「父さん。明日からぼく、女の子になる。小さいころからなりたかったの。
 それで、店に出て母さんの代わりをする。母さんのお店の服があるし、だいじょうぶだよ。」
「そうだなあ。店員は女の子の方がいい。由紀夫それでいいのか。」
「うん。だから、父さん。今からぼくを、由紀子って呼んで。家でも女の子でいたいから。」
「わかった。由紀夫、いや、由紀子の言うことは、父さんはなんでも聞くよ。」
「じゃあ、父さん。今日美容院に行って、女の子の髪型にしてもらうね。
 それから、遠くからケーキを買い来る人もいるから、
 あたし、ドライアイスをサービスにいれるといいと思うんだ。」
「うん、それはいい。親切だな。でも、ドライアイスはどこで手に入る?」
「あたし、もう手配してあるの。明日の朝届くと思う。
 父さんは、ケーキ作りに専念して。経理もあたしがやるから。」
「うん。わかった。」
隆志は、由紀夫が家庭で見せなかった、「力量」というのに一つ触れた気がした。

次の日から、髪を女の子風にした由紀夫は、薄く化粧をして、
母のユニホームを着て、頭にスカーフをかぶった。
ユニホームはえんじ色。それに、白いエプロン。頭のかぶりものはエンジ色。
だれが見ても、可愛い女の子だった。

由紀夫は、小さい黒板に、ドライアイスのサービスがあることを書いて、
表に立てかけた。イラストが上手な由紀夫の字は、洒落ていて、楽しいものだった。

若い由紀夫の笑顔は100万ドルだった。
小さい子には、アメを上げた。
お客の家までの時間を聞いて、ドライアイスを入れた。

次に、由紀夫は、それぞれのケーキの説明書を作った。
各ケーキの味わい方、何からできているかを、絵入りで説明したものを、ケーキの箱に入れた。

そして、「今日のケーキ」として、あるケーキを少し多めに作り、1割引きで売った。
また、5枚集めれば、1割引きというカードを作り、それを渡した。

そのうち、前は閑散としていた店は、
いつも客がいる店に変わっていった。


つづく

大原勉の冒険・エピローグ

「大原勉の冒険」

<エピローグ1>

勉とルミは熱いキ・スをした。
「ルミ、あたしルミのものお腹に感じる。」
「あたしも、アキのもの、お腹に感じる。」とルミ。
「ね。ハレンチごっこにしない?」と勉。
「それ、ショ・ーツを履かないこと?」
「そう。」
「やだ、それ刺激的。」とルミ。
二人は、ショ・ーツを取った。そして、また抱きあった。
「あ~ん、これすごい。感じ過ぎちゃう。」とルミ。
「あたしも。ルミ、あたし我慢できない。」と勉。
「ね。アキ。スカートの前をめくって、直接触れ合わない?」とルミ。
「ルミ、あたしも今考えてたの。」勉。
二人は、スカートの前をめくって、二人のものを擦り合わせた。
「ああ、すごい、ルミの固い。」
「いや、そんな言い方は、いや。あたしたち女の子よ。」
「じゃあ、ルミ、濡・れてる。」勉。
「アキのもびしょびしょ。」ルミ。
「抱いて。」勉。
「うん。」ルミ。
「キスをまたしよう。」勉。
「うん。」ルミ。
二人はお腹とお腹をなんとなく擦り合わせていた。
「ルミ、だめ。あたし、スカート汚しちゃう。」
「まって。」
ルミはそう言って、2つのゴムを、1つずつあてがった。
二人はまた抱きあった。
二人で体をゆすり、どんどん気持ちが高ぶっていった。
「ルミ、ルミのこと死ぬほど好き、好き、好き、好き。」
「あたしも、アキが好き、好きでたまらない、好きで死にそう。」
「あ……、ルミ、今度こそだめ、いく、いく…。」
「あたしも、ああ、あああ。」
二人は、急いでキ・スをして、強く抱いたまま、震え、
口びるを離して、叫びながら、果てて行った。
セーラー服を着たまま、女の子のまま。

*   *   *   *

<エピソード2>

セーラー服を着たままの二人。
「アキ、この部屋に『秘密のお部屋』があるんだ。」とルミが言う。
「ほんと?だって、全部オープンじゃない。」
「今まで、入れた人もちろんいない。アキだけに見せるわ。」
「ほんと、楽しみ。」勉は言った。

アキに手を引かれ、行ってみると、ほんとうにドアのある部屋がある。
中に入って電気を点けてもらって、勉は感激した。
「わあ~。あたし、わかる。ルミがこんな部屋作ったわけ。」
「わかってくれる?あたしの気持ち。」とルミは喜んで拍手しながら飛び上がった。
その部屋は、4畳くらいの、ちょうど小学5年生くらいの女の子の部屋だった。
狭いベッドがあり、学習机があり、ランドセルがあり、壁には、女の子アニメのポスターがたくさん貼ってあり、壁紙は、ピンクの地に白いハートがあり、窓にはレースのカーテン。
本棚には、少女マンガや、児童図書がいっぱい。
そして、ファンシーな洋服ダンスがあった。

「ルミ。当ててみるわね。あの箪笥の中は、小学生の女の子の洋服がたくさん詰まってる。」
勉がいうと、ルミは、また飛び上がって喜んだ。
「アキならわかってくれると思ってた。
 そうなの。あたし、週に2日くらいは、ここで、小学生になって過ごすの。」
「デザインは、子供向け。サイズは、ルミのサイズ。」と勉。
「そうよ!大当たり!アキもこんな部屋で、小学生の女の子になりたいタイプじゃない?」とルミ。
「うん。すごくなりたい。今度ここで、あたしを小学生の女の子にして。」
「わあ~い。お友達ができた。あたし、うれし~い。」とルミは大喜び。

*    *    *

<エピローグ3>

夜、お腹がすいた勉とアキは、昼間の格好で夜の新宿にくり出した。
そして、ラーメンを食べに、ゴールデン街の典子の店にやってきた。
二人で、中学生丸出しだった。

9時、一番の客。
二人が入ろうとすると、ママが、
「あのう、未成年はだめなのよ。」と言った。
店の奥にいたナナが、勉のことを覚えていて、
「ママ、この前見えたアキさんです。」と言った。
「あ、そうね。でも、未成年同士はまずいわ。」とママ。
すると、ルミは、くすっと笑いながら、ママに耳内した。
「えー!」とママは大声を出し、そして小さな声で、「ほんと?礼子さんなの?」と言った。
ルミは、笑いながらうなずいた。

「ナナ、このお二人OKよ。お相手して。」と言った。
勉とルミは、ラーメンを頼んだ。
「あの、ナナです。はじめまして。」とナナがルミにあいさつした。
「あ、ルミです。はじめまして。」とルミがあいさつした。
「あの、教えてくださいますか。ママはどうして途中から、お二人をOKにしたのですか。」
ナナが聞いた。
「あたしたち、中学生にみえますか?」と勉は聞いた。
「はい。中3くらいに見えます。」とナナ。
「高校生には見えませんか?」と勉。
「見えなくもありませんが、ぱっと見には、中学生のイメージです。」ナナは言った。
「ナナさんも、中学生に見えます。メイクを濃くされてるけど、その奥に少女っぽさが見えます。」
勉は言った。
「あの、ここは女装バーって聞きましたが、ナナさんは、女性ですよね?」とルミが聞いた。
ナナは、答えに困って、ママを見た。
「この人たちには、全部正直に言っちゃいなさい。」とママが小声で言った。
「あの、女性ではありません。」とナナは言った。
「うそ!」と勉とルミは同時に言った。
「あの、お客様は、女性ですよね。」とナナが聞いた。
「女性ではありません。」と二人同時に言った。
「ええ??」とナナは驚きに口を手でふさいだ。

そのあと、本当の年齢を教え合った。
「うそー!」「うそー!」の連続で、最後にルミが言ったとき、
ナナは、ひっくり返らんばかりに驚いた。

「今日は、二人で、中学生ごっこをしたんですよ。」とルミが言った。
「今度、ナナさんも一緒にどうですか?3人だともっと楽しくなりそう。」勉が言った。
「はい。楽しそうです。でも、あたし、中学生に見てくれるかしら。」とナナ。
「すでに、見えてますって。」と勉とルミが同時に言って、みんなで笑った。

ナナは、思った。
この二人のことを覚えておいて、
遠い将来小説に書けたらいいなと。




大原勉の冒険⑤「ルミの告白」最終回

ルミとの約束の日曜日、勉は朝からそわそわしていた。
心は、完全にルミに奪われている。
勉は、内巻きにカールした髪の頬のあたりをくしゃくしゃっとして、
髪をふんわりさせた。前髪にもカールを入れた。
こげ茶のタンクトップに黄色のタンクトップを重ね、
スカートは、フリルが段々についたデニムのミニ。
ベージュのパーカーの七部袖のスカートまで届くもの。
膝上までの黒のソックス。
靴は、スニーカー。

姿見で見て、なんか中学生かな、なんて思った。
ルミは、きっとシンプルな格好をしてくる。

約束の時間に池袋駅の改札に行くと、
ルミの姿があった。
ルミは、ブルーと白のチェックの木綿のワンピースに、白いカーデガンという姿。
小さいバッグを肩から斜めにかけていて、エナメルの靴。
この前の長い髪は、カツラであったのか、
今日は、アゴまでの長さのストレート。
前髪の一部をヘアピンで持ち上げていて、それがとても可愛かった。

ルミと会って、二人でお互いのファッションを誉めあった。
「ルミは、いつもスキッとシンプルでさすがだなあ。」と勉は言った。
「アキこそ今風で、ステキだよ。あたしの服、ダサくない?」
「ステキだよ。でも、なんか、二人して、中学生に見られたりして。」
「あはは。あたしも今そう思ってたの。」とルミが言って、二人で笑った。

二人でデパートの中に入って、たっぷり洋服を見て回った。
女の子同士になった気分で、すごく幸せだった。

「あたし、女装ってこと忘れて、今、心は完全に女の子になってた。」勉が行った。
「あたしたち本当は男なのよね。それ、完全に忘れてた。」とルミも言った。
二人でお店の鏡に姿を映してみた。
「二人とも、完全に女の子に見えてると思うんだけど。」勉が言った。
「あたし、今日カツラじゃないし、我ながら女の子に見えてると思う。
 アキは、完璧だよ。」とルミが言う。
「なんか、うれしいね。」と勉が言った。
「いっそ、中学生で行っちゃおうか。」とルミ。
「それも、なんか萌えるね。」と勉。

それから、二人で、中学生の女の子の遊びのコースを考えながら歩いた。

アイスクリームを食べる。
プリクラで写真を撮る。
ゲームセンターで少し遊ぶ。

カラオケに行って、そこで焼きそばを食べて夕食にする。
スクリーンは無視して、二人でおしゃべりをした。
いくらでも話したいことがあった。
二人で、完全にガールズトークをしているなと勉は思った。
でも、お互いのプライベートなことは聞かなかった。

話しながら、ルミが急にうつむいて黙ってしまった。
「ルミ、どうしたの。」と勉は聞いた。
ルミは何か勇気を振り絞っているようだった。
「どうしたの、ルミ、言って。」と勉は言った。
「お互いプライベートなことは聞かないようにしているけど、
 あたし、アキに打ち明けたいことがあるの。」ルミは言った。
「何?」
「これから、あたしのマンションに来てくれない。」ルミはそう言った。



カラオケを出て、電車に乗り、新宿から2つ目の駅で降りた。
ルミが案内したのは、とても豪華なマンションだった。
その最上階に行って、「ここなの。」とルミは鍵を開け、勉を中に入れた。
明かりが付き、勉は驚いた。

4LDKはあるかと思われるマンションだった。
「ルミ、ここに住んでるの?」と勉は驚いて聞いた。
「うん、ここに一人で住んでるの。」とルミは言う。
広い空間にアトリエと思われる一画、ベッドのコーナー。化粧コーナー。
ウォーク・イン・クロゼット。
豪華なソファーのあるリビング。
オープンスペースの大胆な間取りだった。
ルミは、勉をソファーに座らせ、紅茶を入れた。
そして、勉の隣に座って言った。

「アキは、あたしの年が、アキと同じくらいだと思っているでしょう?」ルミは言う。
「うん、思ってる。19か20歳。」
「あの、あの、あのね、あたし…、今…30歳なの。」ルミはやっとの思いで言ってうつむいた。
「うそ!ルミはどう見ても、20歳くらいだよ。」勉は言った。

「30歳になって、やっと20歳くらいに見られるようになったの。
 子供の頃からものすごい童顔で、若く見られた。
 そこで、学生になって、年相応に見えるメイクを研究して来たの。
 声も大人の声を出せるように、練習した。
 でも、今のあたしが、ほんとのあたし。ほんとの声。30歳のあたしは、メイクで作ったあたし。
 仕事のときは、若いとバカにされるから、作ったあたしで無理してやっているの。」

「ぼくも、大学生なのに、中学生に見られるときがあるから、ルミの気持ちわかるよ。」
勉は言った。
「あたしが30歳って知ったら、アキはもうあたしを愛してくれないんじゃないかって、
 すごく不安で、あたし試さずにはいられなくなったの。
 そして、30歳のメイクと服装で、アキに近づいた。覚えてる?」
「あ、じゃあ、礼子はルミ!」勉は叫んだ。

「ごめんね。だますつもりじゃなかったの。30歳のあたしを見て欲しかったの。」
「どうして、ぼくが、映画館に来る時がわかったの?」
「毎日、映画館のそばで待っていたの。
 3日目に、可愛い女の子がきた。アキだってすぐわかった。
 だって、アキが女の子になった姿をいつも想像してたから。」
「それで、ぼくの後ろに来て、してくれたの。」
「そう。」
「背が高かったよ。」
「10cmのハイヒールを履いていたの。」
「礼子とルミが、同じ人だなんて…。」
勉は頭の中で、二人のイメージを何度も重ねてみた。

「ゲイの人のお店に行ったでしょう。
 あのとき、アキは、あたしを『おばさん』扱いしないで、
 あたしに普通に口をきいて、そして、あたしをイかせてくれた。
 アキは相手の年齢なんか気にしない人だと思って、すごくうれしかった。」

「礼子がイきそうになって、声を出したでしょう。
 ぼくね、そのとき、礼子がすごく可愛いと思ったの。
 思い切り抱きしめたくなったのね。
 今、わかった。あのとき、礼子は礼子を忘れて、ルミになってたんだね。」

「あたし、10歳も年上なのに、アキのこと好きになってしまったの。
 だから、30だってこと隠しているのが辛くてたまらなくなった。
 アキのこと本気で好きなの。でも、あたしは、10歳も年上。」
ルミは、そういうと涙を流した。

勉は、ルミを抱いた。
「ぼくも、ルミが好き。大好き。一日中ルミのこと考えてるの。
 ルミは、年のことで、ずっと悩んでいたんだね。可哀相に。」
「あたしを受け入れてくれるの。」
「もちろんだよ。ルミが好き、礼子も好き。礼子の中から、ときどきルミが見えた。
 そのときの礼子は、たまらなく可愛いかった。」
「うれしい。」ルミは、勉に抱きついた。
勉は、ルミを抱きしめて、キ・スをした。
何度も何度も。



ルミが、唇を解いて、くすっと笑った。
「なあに?」と勉は聞いた。
「だって、アキ、さっきから男の子になってるわ。」とルミが言う。
「あ、そういえば、自分のこと、『ぼく』って言ってた。
 ルミのこと思って、つい真剣になっちゃったの。で、男になっちゃった。
 あたし、あたし、あたしはあたしよ。」と勉は言った。
「あははは。」とルミは笑った。

「ね、今日あたし達、中学生ごっこしたじゃない?
 だから、中学生同士のイケナイ・セッ・クスしない?」とルミが言う。
「あ、それいい。先生に怒られることしよう。」
「セーラー服もあるのよ。」
「ほんと?最高!」



ベッドの上で、夏用のセーラー服を着た二人が抱きあっている。

「ねえ、アキ?あたし達、こうして寝てセッ・クスするの初めてね。」とルミが言う。
「あ、ほんとだ。セッ・クスは、やっぱり寝てするのがいいね。」と勉。
「あたしもそう思う。」
二人で顔を見合わせ笑った。

二人は、カーテンを閉めるのも忘れている。
しかし、ここは最上階。
見ているのは、お月様だけ。


<おわり>(次は、エピローグの予定です。)

大原勉の冒険④「新宿2丁目」

その人は、勉の手を取って、ぐんぐん館内を抜けて、
階段を上がり、外に出た。

勉より10cmくらい背の高い女性だった。
30歳くらい。

「新宿へ行こう。」とその人は行った。
そして、タクシーを拾って、「新宿2丁目」と告げた。

勉はタクシーの中で、その人をよく見た。
肩までの7:3に分けた髪。黒のレザーのタイトミニのスカート。
メッシュの黒いストッキング。かかとの高い黒のエナメルの靴。
黒のタンクトップに、スカートの下まで届く黒のカーデガン。
濃い化粧。赤い唇。美人。

「あなた、可愛いわ。」とその人は行った。
「お名前を聞いていいですか。あたしはアキです。」
「礼子よ。」
「どこへ、行くの?」
「あなた、好奇心強そうだから、いろんなとこ、行ってみよう。」
「あたし、そんな風に見えるの?」
「だって、あんな映画館に一人女・装でくるんだもの、相当なものよ。」
「あたしだけじゃないわ。前に女装の子が来て、あたしがチカ・ンしたんですよ。」
「その子も相当なものね。」礼子は笑った。



タクシーを新宿2丁目でおりた。

礼子は、勉の手を引いて、どんどん歩いていく。

「ここよ。ゲイの人が来るクラブ。
 女装の人も来ていいことになってるの。
 女だけはだめ。」と礼子は言う。
「だって、礼子さん、女性でしょう?」
「『礼子さん』は、やめて。あたし、年増みたいじゃない。礼子って呼んで。」
「はい。礼子は、女性じゃないの?」
「ここに来たってことで、答えになってるでしょう。」礼子は言った。

「ここはね、1ショット(1杯)500円の恐くないところ。
 1ショットごとに払うシステムで、安心なところよ。」
「それ、いいですね。」勉は言った。

礼子に連れられて、勉は中に入った。
中は明るい照明に照らされていた。
若い高校生くらいの子から、年配の人までいる。
ソファは奥にあるだけで、みんな立っている。
スタンディング用のテーブルが、ここかしこ、あしらわれている。
フロアーで踊りの練習をしている若者や、だきあっているカップル。
キスをしているカップル、いろいろだった。
不思議に、みんな黒系の服を着ている。

水割りをたのんで、2ショット、1000円を礼子は払った。
そして、奥のソファーに座った。

「これだけで、何時間いても怒られないわ。」と礼子は言った。
「女・装の人、あたし達だけみたい。」
「あたし達みたいに、図々しい女・装の人は、少ないのよ。」
礼子は、やおら、サングラスを取った。
勉は、礼子の美貌にぞくっとした。
「礼子、美人。」と勉は言った。
「ありがとう。アキも可愛いわよ。
 キ・スしようか。」
勉が、いいと言わない前に、礼子は、キスをしてきた。
それは、やがて、舌を入れた濃厚なものになっていった。
「礼子、あたし、興・奮しちゃう。」
「あたしもよ。アキ、可愛いから。あたしのおっ・ぱい触っていいわよ。」
勉は、礼子のタンクトップの上からち・ぶさを触った。
女性の乳・ぶさをさわったことがない。
比較はできなかったが、礼子の乳・ぶさの柔らかさに感激していた。
「礼子が、女・装の人だって証拠、知りたい。」と勉は言った。
「まあ、やあねえ。でも、いいわ。」礼子はそう言って、席をたった。
トイレに入った様子。
帰ってきた礼子は、手に黒いショ・ーツをもっていた。
「ほら、ショ・ーツ脱いで来たわ。」と礼子は勉にみせびらかして、バッグにしまった。

二人でまたキ・スをした。
勉は、礼子の網タイツに手を滑らせて、ミニのスカ・ートの中に、手を忍ばせた。
勉は感激した。
礼子のミニス・カートの中に、少し大きくなりがちの男性のものがあった。
ストッキングは、中空きのものであるようだった。
勉は礼子のものを触って、そっと愛・ぶをした。
そして、キ・スの主導権を取り、礼子にかぶさるようにキ・スをした。
礼子は、だらりと脱力している。
勉は、片方の手で、礼子の乳・ぶさを愛ぶし、乳・くびを指で揉んだ。
礼子の男のものが、どんどん大きくなってくるので、勉はさらに感激した。
勉は、自分のものも大きくしてしまっていた。
礼子のタンクトップの中に背中から手を入れ、両手でち・くびを責めた。
「あん、アキ、どうして上手なの?」礼子は言った。
「自分がされたいことしてるだけ。」勉は答えた。

じんわりじんわりと、礼子のものを責めた。
礼子は、タイトなスカ・ートをいっぱいに広げ、陶酔の表情を見せて言った。
礼子の息が荒くなる。
「アキ、これ。」と礼子は、ゴムの袋を出した。
勉は封を切り、中のものを、礼子のス・カートに入れて、あそこにかぶせた。
それから、勢いをまして、礼子へのあ・いぶを速めた。

礼子は、勉にしがみついてきた。
「アキ、アキ、抱・いて。抱・いて。」
と礼子が、息を荒くして言った。
勉は、礼子のくちびるを奪い、片方の手で礼子を背中から強く抱いた。
礼子は、勉の体の中で、ぴくんぴくんし始め、
やがて、激しく体を揺らし始めた。
「あん、あん、アキ、アキ、あたし、イ・ク、ダ・メ、いっ・ちゃう。」
礼子はそう言い、傍目も省みず、腰を大きく前後に揺らし、
「あ…………あ。」と小さく叫んで、ゴムの中に放・出した。

勉も興奮の極にいた。
礼子のイク様子は、最高だった。
ずっと年上の女性に見える礼子が、可愛いと思った。
勉は、自分のバッグから、ミニのタオルを出して、
礼子のゴムをはずし、あそこを綺麗に拭いた。
ゴムはタオルに包んで、バッグに入れた。

「ああ、アキ、上手。どうしてなの?
 あたし、もうアキから離れられない。」礼子はそう言って、勉の腕を抱きしめてきた。
「礼子、イッてるとき、すごく可愛かった。」と勉は言った。

礼子は、勉を女子トイレに連れて行った。
男子しか来ないお店に女子のトイレがあるのが不思議だったが、
だれも来ないところだった。

礼子は、トイレの中でショーツを履き、
勉の前にしゃがんで、勉のショ・ーツを下ろし、
大きくなっている勉のものを口にく・わえた。
そして、ゆっくりと頭を動かしていった。
『ああ、いい気持ち。』
この気持ちよさは、何かを思い出させた。
そうだ。ルミもこうしてくれた。
なんとなく、礼子とルミが重なった。
礼子がイクのを見て、興奮の高みにいた勉は、すぐに果ててしまった。



外に出たら、すっかり夜がふけていた。
「さあ、お腹もすいたし、ゴールデン街でラーメンでも食べようか。」
と礼子は言った。
「え?あのゴールデン街で、ラーメン食べられるの?」
「そう。典子さんの店。女装ラーメン酒場ってとこね。」
「女装の店なの?」
「そうよ。新しい若い子がいるの。典子さん、人を雇わない人なのに。
 よっぽど気に入ったのね。」
「へーえ、どんな人だろう?」
「アキに会わせたいな。」
「あ、あたし、もう好きな子いるから。ルミっていうの。」
「じゃあ、浮気できないわね。」
礼子は、にこりとして、二人で、ゴールデン街に歩を進めた。


つづく(次は、「二人のデート」最終回です。)

大原勉の冒険③「女装をして映画館へ行く」

いい遅れましたが、この物語は、今から40年くらい前を想定しています。

==================================

勉は、彼女と喫茶店に行った。
彼女の名前は、ルミと言った。
勉は、女装名を考えてなかったけど、アキに決めた。
そこで、二人で電話番号を交換した。
勉は、ルミが学生に見えたが、ルミは、働いていると答えた。
ルミは、日曜日と夜の7時からならいつでも空いていると言った。
勉は、ルミは、高校を出て、働いているのだと思った。
そして、自分の方がずっと恵まれた身分だと思った。

ルミとまた会う約束をした。
次の日曜日。午後2時に、池袋の西武線の改札で。



ルミに会ってから、勉は、ルミのことばかり考えるようになった。
多分、喫茶店のウエイトレスをしているのかな。
それとも、ケーキ屋さんの店員かな。
可愛い女の子として、働いているにちがいない。
ルミなら、絶対男とバレないと思った。
ルミに会いにそのお店に行きたかった。

ルミに会う日まで、まだ日にちがあった。
勉は、今度は女装をして、あの映画館に行ってみようと思った。
カツラは高くてまだ手に入らない。
そこで、肩まで伸びた髪に、外巻きのカールをかけた。
前髪を中央から分け、額を少しのぞかせた。

季節は6月に入り、まだ梅雨入り前の晴天が続いていた。
しかし、夜は少し肌寒い。

勉は、ち・か・んされに行くのだと、再度自覚した。
されやすい服装として、スカート丈が膝上の赤いワンピースに、
長めの皮のベストを羽織り、パンストは履くのを止めた。

メイクは薄目。

どうかなっと姿身を見た。
まあまあかな。
『肢を長く産んでくれてありがとう。』
と心の中で、両親に感謝した。

肩からバッグを下げて、映画館に向かった。

前回のように800円を払い、映画館の階段を降りて行った。
映画の途中のようで、通路に人影がない。
勉は、そうっと扉を開け、中に入った。
スクリーンのあ・え・ぎ声が、館内にこだましている。

心臓がドキドキした。
ち・か・んをするより、される方がずっと緊張することがわかった。

館内の座席は、半分空いていたが、
例の腕かけのパイプの辺りには、20人くらいの人がいた。
すでにち・か・んをされている人と、している人と、見ている人がいることがわかった。
自分もち・か・んされるとき、これらの人に見られるのかと、ちょっと気後れがした。
だが、せっかく来たのだ、勉は勇気を出して、パイプの空いているところに身を置いた。

女の子なのだからと思って、パイプには手を掛けるだけにして、まっすぐに立っていた。
心臓の音が耳に聞こえそうだった。

やがて、コツコツと靴の音がして、
背の高い女性と思える人が、勉の後ろに立った。
少しの驚きだった。
男性が来るものと思っていた。
その人は、黒ずくめで、大きなサングラスをかけているようだった。
長い髪が見えたが、女性というより、
女装の人なのだろう。

柔らかい手で、お・し・りをなでられた。
「あ。」とあのときのルミのように、声が出てしまった。
その手は、なんども勉のお・し・りをなで、
やがて、前に移って来た。
勉は緊張で、自分の男性・自身を大きくできないでいた。

パン・ストを履いていない。勉のショーツは、楽々とこ・か・んまで下ろされた。
大切なものが、スカ・ートのなかで、あらわになる。

その人の手は、スカ・ートの横から入り、
勉のものを大きくさせていった。
人からされるのは、生まれて初めてだった。
その思いもよらない快・感に、勉は胸を高鳴らせた。

やがて、肢がガクガクしてきた。
ああ、すごい…。
勉の心にむらむらとヨク・ジョウが湧き、
なりふりかまわずワイ・セツな声を上げたくなっていた。

そのころ、勉の箇所に、ゴムがはめられた。
ああ、これで出ても安心と思う気持ちが、勉に火をつけた。
女性の手が少し速くなった。
ああ、声をあげたい。身もだ・えをしたい。
今ならどんなエッ・チなことでもできる。
トイレの穴からのものだってくわえられる。
イン・ランな感情が、勉を攻め立てていた。
あ…、丘されている。
あたしは、女、女、女…。

立っていることができない…。
イ・ク…ああ、イっ・ちゃう…、と思ったとき、
その女性は、一方の手で、勉を強く抱きしめた。
その女性の乳・ぶさを背中に感じた。
勉は、あ……あっと声をあげ、激しく身も・だえして、絶・頂に達した。

見物人には、最高のショーだったに違いない。
激しい身も・だえをし、声をあげてしまった。

心臓の音が聞こえるほどに高鳴っていた。
映画の画面がゆがんで見えていた。

女性は、勉のゴムを取り、タオルで綺麗に拭いて、
ショーツを履かせてくれた。

「いっしょに出よう。」と勉の耳に、女性のささやく声がした。
低いが、女装した男性の声ではないと勉は思った。


つづく

大原勉の冒険②「その後の彼女と」


勉は、彼女のスカ・ートの前から手を差・し入れ、
パン・ティース・トッキングの上から、彼女の男のものをやさしくなでた。
彼女はわずかにふるえはじめた。
あそこを大きくさせてしまい、小さなショ・ーツの上に一部を出してしまっていた。
勉は、彼女のパン・ティーストッ・キングに手を掛け、前を下げ、
そして、パン・ストの後ろに手を回し、一気にショーツごとまた下まで下げた。
「あ……。」と彼女は、声を上げた。

彼女の下半・身は、スカートの中であら・わになった。
映画館の中で、あえ・ぎ声が飛び交う中、彼女の小さな叫びは、勉にしか聞こえない。

勉は、セッ・クスの経験はなかった。
ただ、自分だったらされたいと思い続けてきたことを少女にしていた。

スカ・ートの中で、彼女の男性・自身をそっとなでていった。
彼女のあ・そこは、もうぱんぱんに膨れ上がっていた。
2つのボールの袋を手で握った。
「あ……。」と彼女が可愛い声を上げ、身もだ・えした。

ああ、たまらない。する方もこんなに興奮する。
勉の胸は高鳴っていた。

勉は、肩から下げた布のバッグから、手拭タオルを取り出した。
もって来てよかったと思った。
勉は、そのタオルを彼女のスカ・ートに入れ、
彼女のぱんぱんになっているものを包んだ。
そして、上下にゆっくりマッ・サージをした。

彼女は、手すりにしっかりとしがみつき、
出てくる声を押し殺していた。
やがて、彼女の体の振・動が激しくなってきた。
「あ…、い・や、い・や、い・や…。」
と彼女は、蚊の鳴くような小さな声で言った。
その後、びくんと数回体を振・わせて、
「い・や、い・や…。」と言いながら、
勉のタオルの中に温かいものを放・出した。
勉は、空いた方の腕で、少女を抱・きしめた。
勉も、興・奮して、胸が高鳴っていた。

勉は、彼女から、タオルを抜いて、そこを綺麗に拭いて、
タオルをバッグに戻した。
そして、彼女のショ・ーツとパン・ストを元のように履かせた。

そのあと、彼女はあることをしてくれた。
彼女は、荒・い息が収まると、しゃがんで、
自分のバッグからタオルを出して、
畳んだままのを床に置き、そこに膝立てになり、勉の方を向いた。
そして、勉のベルトを解き、前のファスナーを下ろして、
勉の大きくなってしまっているものを出して、それを口・の中に入れた。

『ああ、これをやってもらうのは初めて。』
と勉は感激した。しかも、可愛い女装の子から。
やさしい口の粘・膜が、勉のあそこをなでる。
「ああ、気持ちがいい。こんなにステキなんだ。」と勉は感激した。
彼女をイかせたことで、興奮の頂に近づいていた勉は、
早くも絶・頂に達した。
『あ…、イく。』
勉は身ぶるいをして、少女の口の中に、あるえき体を放出した。

彼女は、それを飲み込んでしまったようだった。
そのあと、勉のものを綺麗にな・めて、それをズボンの中に戻した。

勉は、胸が幸せな気持ちで満たされていた。

『彼女をよく見たい。』
そう思った勉は、彼女の手を引いて、ホールの外に出た。
そして、女子トイレの個室に二人で入った。
女子トイレは、ほとんど人が来ないと思ったからだ。

「ありがとう。君のことを見たくて、ここに来たの。」と勉は言った。
「あたしも、あなたのことはっきり見たかった。」そう彼女も言った。
はっきりみると、女装とは思えないナチュラルな可愛い子だった。
勉は感激した。

「可愛いね。」勉は言った。
「あなたも、女装子でしょう?女の子みたいに可愛い。髪も長いし。」
「うん。ぼくも、女装マニア。」
「あたし、あなた見て感激して、男子トイレに付いていったの。
 そしたら、あなたが個室に入った。
 だから、あたしは隣の個室に急いで入った。
 あわてて、自分が女装していること忘れちゃったの。
 それで、あんな大胆なことしちゃった。今、思うと死ぬほどはずかしい。」
「ごめんね。あの穴のこと知らなかったから、びっくりしちゃって。
 でも、君みたいな可愛い子のものなら、逃げなかった。
 誰が、入っているのか、ぼくにはわからなかったから。」勉は言った。
「そうか。そうよね。」彼女は納得していた。

『こんな可愛い女の子。』
勉は、再び興奮して来た。
「あの、君を抱きしめていい?」と聞いた。
「うん。あたし、あなたに抱かれたい。」
「キ・スしてもいい?」
「うん、思い切りキ・スされたい。」

勉は、彼女を思いきり抱いた。
彼女の柔らかさに感激した。
そして、口付けをした。
たまらなく、幸せだった。

ただ、ここがトイレでなければ、もっといいと思った。


つづく

勉の冒険・映画館「東和地下」①

大原勉は、大学1年生となり、
都会でのアパート暮らしができるようになった。
勉はこの日を待っていた。
彼は女装趣味があった。
これで、心置きなく女装にふけることができる。
勉は、女装に必要なものを一揃い買い、
毎日女装の研究をした。

勉は女装には恵まれた容貌をしていた。
背は、160cm、女顔で、脚が長かった。
声も、女声だった。

勉は、はじめはアパートの中で女装してみるだけだったが、
そのうち、外を歩きたくなり、
繁華街に繰り出すようになった。

やがて、彼は、女装クラブに通いはじめた。
だが、1回の参加費用は高く、頻繁にはいけなかった。
それに、一切のセックスは禁止だったので、そこがつまらなかった。

あるとき、女装クラブのエルという人と、帰る方向が同じで、
いっしょに帰ったことがある。
二人が池袋の道を歩いているとき、
小さな「東和地下」という成人映画館の横を通った。

「ね、知ってる。ここは、ゲイや女装のたまり場なの。
 痴漢されたいと思ったら、ここに入って映画を見ているといいわ。
 座席に座っててもいいけど、一番後ろに腕もたせのパイプがあるのよ。
 それに、もたれて待っていると、ほぼ100%誰かが来て、痴漢してくれるわ。」
エルはそう言った。



勉は、強い好奇心の持ち主だった。
一度は、「東和地下」に行ってみたかった。
はじめから女装で行くのは危険だと思った。
そこで、男の格好で行くことにした。
入場料800円。
狭い階段を降りて行くと、
映画がちょうど入れ替えらしく、多くの人が、
廊下に出ていた。

勉は、今の内にトイレに行っておこうと思い、
トイレに入っていった。
男子の小便用のトイレはあいにくふさがっていたので、
個室の方で用を足そうと思った。
勉は女の子のように、座って用を足すのが好きだった。

ふと横を見ると、壁に直径4cmくらいの穴が、
便座にすわった勉の顔のあたりに、空いている。
覗こうと思えば、となりの個室が丸見えだ。
しかし、男同士で、覗いておもしろいと思う人はいないだろう。
どうしてこんな大きな穴を、映画館は、放置しておくのだろうと思った。

そのうち、突然、勉に、その穴の意味を教えることが起こった。
隣の個室にいる人の男性自身が、穴から出てきたのだ。
勉は、理解した。
手のマッサージを望んでいるか、口にくわえられることを望んでいる。

好奇心の強い勉だったが、さすがに、トイレの水を流し、
個室から逃げた。
でも、ただ逃げるだけでは不足に思い、
あの男性自身の持ち主の顔が見たかった。
勉は、小便器に並ぶ真似をして、個室から出てくる人を待った。
中年のおじさんをイメージしていた。

ところが、出てきた人を見て、勉は肝をつぶした。
長い髪の女の子が出てきた。
いや、女装をした可愛い女の子だ。
クリーム色のワンピースを着て、その上に白いカーデガンを着ていた。
質素な女装だし、十分にパスする子だった。女子トイレに入ればいいのに。
ある道徳心から、自分は男子だから男子トイレに入ったのだろうか。
それとも、あの穴を利用するために、男子トイレに入ったのか。
いろいろわからなかった。

それにも増して、トイレの中の人達は、女装少女を見て、何も驚かない。
女装の子が来る映画館であると、みんな知っているかのようだった。

あんな可愛い子のものなら、穴から出てきたものを受け入れてあげればよかったと、
勉は、少し後悔をした。
その後悔を挽回するように、勉は、その子の後をつけていった。

その子は、座席ではなく、ホールの後ろのパイプに腕を預けて立っていた。
『あそこにいるということは…。』
と勉は思い出し、女装少女のとなりに立った。
背は、160cmの勉より少し低かった。

やがて、会場は暗くなり、次の映画がはじまった。
勉は心に決めていた。
今日は痴漢されに来たけど、自分がこの子を痴漢しよう。
さっき個室で何もしてあげなかったお詫びだ。
それに、ゲイの人の割に女装の子は少ない。
だから、自分がやって上げなくてはいけない、と勉は思った。

勉は、左右の人達がどんなふうにしているのかを見た。
もう、すでに、4、5組がはじめていた。
される方の後ろへ回り、お尻をなぜ、次第に前側を刺激している。
そのうち、ファスナーを下ろす。

勉は、真似をして少女の後ろへ回った。
そして、お尻をなでた。彼女がぴくんと反応した。
少しも嫌がっていない。
勉は、手を少女のプリーツスカートの前に回し、
彼女の、股間を探った。
すでに、大きくさせている彼女の男のものを
スカートの上からなでた。
「あ。」
少女は、可愛いかすかな叫びをあげた。


つづく

帰ってきました

岩手に行って、無事帰ってきました。

遠かった。

寒かった。

で、物語を考える余裕がありませんでした。

こんばんゆっくり寝て、

明日考えよう。

また何か書きましたら、読んでくださいませ。

ではでは。

ごあいさつ

あけましておめでとうございます。

物語の記事をサボりっぱなしです。

今年は、新年早々、都合があり、急遽、岩手の方に行かねばならなくなりました。

1月5日頃に、帰ってきます。

そのころまた覗いてみてくださいませ。

何か、書けていたらいいなと思っています。

では、みなさまにとって、よい年になりますよう、

お祈りしています。
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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