雑談、愚痴、泣き言、ほか

さあ、何もネタがないけれど、何か書こうと思っていましたが、

今日は、ギブです。

書くときは、一応最後までの大体のストーリーを考えているんですが、

今、途中までのばっかです。

そこに、私の一番嫌いな「年賀状」を思いだしました。

あ、やだやだやだ。やりたくないよー。



ペタですが、このところ、いただいた内の、3分の2は、宣伝ペタ。

それを見るたび腹が立ち、これは健康に悪いと、設定をOFF にさせていただきました。

ところが、今度は、「宣伝コメ」が来るのです。

私にとって、コメントをいただけるのは、大きな喜びですが、

開いて見たとき、それが宣伝コメであったときの失望。いえ、怒りですね。

あれだけは、やめて欲しいなあ。

小さな子供に、空っぽのクリスマス・プレゼントを渡すようなものです。



このところ大好きだったブログが運営困難になってしまったり、

いつも、楽しみに読んでいる方のブログが、一時閉鎖になったり、

休止宣言されたり。

それも、お一人やお二人ではなく、

私は、ただただ悲しい思いをしました。

気落ちがブルーになり、自分も消えてしまおうかなんて気も、ときどきするのです。

みんなが、復帰されるまで、ずっと続けていたいです。

もう私とっくにネタ切れなんですが、なんとかやりくりしたいです。

みんなが、帰ってきたとき、「まだ、やってたの?」とあきれた声で驚いてほしいです。



さて、年賀状をやらないと、新しい物語を考えちゃいけない気になってます。

嫌なことは、早く済ませちゃおう。

みなさまも、今、同じようなご事情かと。

ではでは、これにて。
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超能力者・高井忠志⑥「恵子の気持ち」後編

<お知らせ>
「ペタ」についてですが、宣伝ペタがあまりにも多いため、ペタ機能をoffにしました。
悪しからず、ご了承ください。
===============================

忠志はめっためったになぐられた。
しかし、恵子の前を一歩も引かなかった。
殴っていた二人は、忠志の打たれ強さに、驚いていた。
普通ならとっくに気絶だ。
だかコイツは、正気を保って、少しも顔色を変えない。
ひょっとしたら、武道の達人で格段に強いのじゃないかと思い、
うす気味の悪さといい知れぬ恐怖を感じていた。
例えば、男から最後に強烈な一発が飛んできて、
その一発で、自分たちは地獄行きになるような気がしていた。
殴るのを止めるきっかけが欲しかった。

「ほら、警官が来たぞ!」と忠志は頃合と見て、指を差した。

「お、いけねえ。ずらかるぞ。」と言って二人は、逃げた。
逃げながら、二人は、命拾いをしたと思っていた。

あれだけ殴られたことになっている。
立っていては不自然だ。
忠志は、ぐらりと揺れて、地面に倒れた。
「高井くん、高井くん。」と恵子が忠志を抱き、忠志の頬に頬をつけた。
忠志は薄目を開けて、
「恵子さん、大丈夫だった。何もされなかった?」と聞いた。
「大丈夫。高井君が全部守ってくれた。ありがとう。ありがとう。」
と恵子は、忠志の額に頬をつけて泣いた。
恵子の涙が、忠志の目にいく筋も伝わった。
<恵子さん。ごめんね。ぼくは、少しも痛くないんだよ。神様、ごめんなさい。>
忠志は、懺悔した。

忠志は、さほどダメージを受けていないようだった。
そこで、恵子は、タクシーを捕まえ、自分のマンションに連れていった。
タクシーの中で、恵子はしきりに、
「痛い?痛い?」と聞いた。
忠志は、
「平気。平気。」とどこまでも言う。

忠志を肩に担いで、恵子は、マンションに入り、
忠志をソファーに座らせた。
救急箱を持ってきたが、忠志は、耳と肘しか出血していなかった。
「ぼくね、武道やってたから、殴られてもクッションで受け止めることができるのね。
 だから、あいつらのパンチほとんど効いていないんだよ。」
「高井くんが武道やってたなんて、聞いたことない。」恵子は言った。
「ほんとだから、信用して。体に傷なんかほとんどないでしょ。」忠志は言った。
「そういえば、そうね。」恵子は言った。

「でも、高井くんのこと、誤解してた。あんなに度胸のある人だなんて。
 あたしが恐がってるのは、クマの人形だって言ってくれたじゃない?
 胸ぐらつかまれてるのに、涼しい顔で言えるんだもん。あんな人いない。」
「言ったじゃない。ぼく武道やってたから、あいつらなんか恐くないって。」
「そうか。きっとすごく強いのね。
 あたし、中学のとき、ああいう人に死ぬほど恐い思いさせられて、それから、トラウマなの。」
「うん。恐い思いしたんだね。それが、今でも消えないんだ。」
「一生消えないトラウマ。」恵子は悲しそうに言った。

恵子はふと思いついたようにいった。
「高井君。あたしにセッ・クスアピール感じるって言ってくれたでしょう?」
「うん。いったよ。」
「じゃあ、20秒目をつぶってて。」
「あ、うん。何?」
「喜んでもらえたら、うれしい。」

「もういいわ。」と恵子の声に忠志は、目を開けた。
目の前に、恵子が黒いスリ・ップ姿で立っていた。
「大竹さん…。」と忠志はつぶやいた。
「あたし、彼がいるから、脇の・下だけ。このくらいしかお礼ができない。
 ベッドで、あたしの脇の・下を好きなだけ舐めて。」恵子が言った。
忠志は思わずごくりとつばを飲み込んでしまった。
「そ、それ、ぼくには、うれしすぎる。いいの?」忠志は言った。
恵子は、忠志の洋服をつかんで、ベッドルームに誘った。
そして、ベッドに寝て、両腕を上に上げた。

忠志は、恐る恐るベッドに上がって、
恵子の脇の下に口・づけをした。
もう一方の脇の下にも口・づけをして、
そっと舌でな・めた。
恵子は目をつぶっていた。
忠志はたまらなく体が燃え・てきたが、それを抑えるものが自分の中にあった。
「大竹さん。ぼく、もう十分だよ。だって、君には彼がいるし。」
忠志はそう言った。

すると、恵子は目を開けて、忠志の首に腕を回して、忠志を引き寄せ、
思い切り忠志に口・づけをした。
恵子がしたを入れてきた。
忠志が拒絶するわけがない。
忠志は夢中になって、恵子のしたを吸った。
そして、自分の舌を恵子の中に入れた。
恵子はそれを吸って、激しい口・づけとなった。

くち・びるを離すと、恵子は、夢中で忠志の服をぬ・がせた。
ネクタイをとり、ワイシャツもシャツもぬ・がせ、ズボンもぬが・せた。
そして、忠志の上に乗り、乳・ぶさを忠志の胸に押し付けてきた。
「大竹さん、いいの?彼はいいの?」忠志は言った。
「今夜だけ、高井君に抱かれたいの。」恵子は言った。

忠志は完全に火がついた。
恵子のインナーをぬ・がせ、二人丸・裸のまま、
互いに抱き合い、あい・ぶした。
恵子の腕を上に上げ、脇・の下に口・づけをすると、恵子は声を上げた。
「ああ、かん・じる、もっとして。」
恵子の言葉に、忠志は、その脇・の下をな・めた。

忠志は、恵子の体中をあい・ぶし、
最後に、恵子のもっとも感じるところに指を入れた。
忠志の指の愛・ぶに、
「あ…………あ。」と恵子が身を反らせた。

恵子は激しく身をくねらせ、快・感を訴える声を上げ、
忠志に早く来るように訴えた。
「大竹さん、いくよ。」
「ええ、来て。」
忠志のものをいれると、恵子は、声を上げた。
恵子は忠志の頭を抱いた。
やがて、忠志にそのときが来た。
忠志は、近くにあったタオルに放・出した。

恵子がまだだ。
忠志が、恵子に口・づけをしながら、恵子の部分を刺激した。
唇を離すと、恵子は、
「高井君、好き、大好き、あい・して、あい・して…。」と口走った。
「大竹さん。ぼくも好き。大・好き。一番好き…。」と忠志も言った。

やがて、恵子にそのときが来た。
恵子は、大きく背骨をそ・らせ、
激しく痙・れんして、ぴ・くぴくとしながら、ベ・ッドに沈んだ。
たった1回の絶・頂で、恵子は天国へ行った。。



忠志は、背広を来て、ネクタイをしめ、
恵子の脇・の下をぬれタオルで拭き、下半身を拭きショ・ーツを履かせ、
毛布をかけた。

そして、恵子のベッドに座り、恵子に出来事を忘れる念をかけた。
忠志が、恐いお兄さんから恵子を守ったこと、自分とのセ・ックス、
それから、強い念。
忠志は、恵子の額に手を触れて、恵子の中学のときの忌まわしい出来事を忘れるようにした。

ブリーフケースを持ち、
「お休み、大竹さん。ありがとう。」
そう言って、マンションの扉をくぐった。



翌日、恵子は明るい笑顔を見せて、出勤して来た。
「やあ、高井君。」
と言ってそばに来た。
小さな声で、
「今日、飲みにつきあってあげようか。」と言う。
「え、ほんと?でも、ぼくのおごりでしょ。」と忠志言うと、
「今日も、あたし、ノースリーブなんだ。」と恵子は言う。
「あ、じゃあ、行こう。安いところだよ。」
「いいよ。」



歌舞伎町の安そうな居酒屋。
入るとき、恐そうなお兄さんが出て来た。
忠志は、ちらと恵子を見た。
恵子は平気ですれ違った。
そんな恵子を、にっこりと見た忠志のやさしい眼差しに、恵子は気づかなかった。
「大竹さん、彼いるんでしょ。何でぼくなの。」忠志は聞いた。
「えへん。あたし、脇の下見せたがり、舐めてもらいたがり。彼がいるのは嘘。」
恵子は、小さな声で言って、えへっと笑った。


<おわり>(次回は、未定です。)

超能力者・高井忠志⑤「職場1の美人とデート」前編

えー、女装物のお話が、できません。何も投稿しないよりましだろうと思い、評判の悪かった、超能力物を投稿します。読んでくださるとうれしいです。

=================================

12月の22日に、役所の部の忘年会があった。
忠志は、いつものように冴えないスーツで、
よれよれのネクタイ、ダサイ眼鏡をかけて出席した。

部の中では、忠志は、なんの取り柄もない、ダサイ男として通っている。
歓談の間で、先輩の女性たちから、忠志はさんざんお説教をされた。
「高井君。ちょっとは、身なりピリッとしなさいよ。」
「それじゃあ、女性に持てるわけがないじゃない。」
とかなんとか。
「ぼくは、どうもスーツとか興味がなくて。
 クリーニングには、ちゃんと出してるんですよ。」と忠志。
「そうかしら。よれよれよ。」
などと、さんざん酒の肴にされていた。

忘年会の最後、びっくりするような企画があった。
独身者はみんな前に出されて、
くじ引きを引き、ペアになった男女は、宴会のあと2人で帰るというものだった。
「ええええ?」と独身者たちは言った。
「おおおおおお。」と既婚者たちはおもしろがった。
独身者で呼ばれた人の中には、けっこう高齢の女性もいて、
いいのかなあと忠志は思ったが、彼女たちは開き直って喜んでいるようだった。

独身者の中には、部で1番の美女、大竹恵子もいた。
忠志は29歳。恵子と同じ年だ。
同期で入社して、彼女は才能で、どんどん指導的な仕事につき、
忠志は、いまだに、窓際にいた。

だれに当たるかな。
まあ、自分は誰でも、がっかりなどしない。
自分ほどもてない人間はいないと思っていたから、忠志は、
相手には、ちょっと悪いなと思っていた。
その忠志が、大竹恵子と当たってしまった。

会場はどよめいた。
「高井、びびんなよ。」
「どうどうと帰るんだぞ。」と野次が飛んだ。
忠志は、えへへと笑っていた。
大竹恵子が、さぞ嫌な顔をしているかと思ったら、
けっこうにこにこして、おもしろがっているようだった。



宴会のあと、忠志と恵子は二人で歩いた。
忠志はまったくリラックスしていた。
ここまでモテない自分だと、かえって見栄を張る必要もない。
恵子も逆に、リラックスしていた。
この忠志になら、口説かれたりする心配はまるでない。
自分の色香で、ちょっと忠志をからかってみたいような気分になっていた。

二人は、新宿の高層ビルのパブに行って、
少しお酒を飲むことにした。
コートを受付に預けた恵子は、ベージュのワンピースに上着という服装だった。
髪は、セミショートで、前髪を斜めに下ろして、耳にステキな金のピアスを下げていた。
それがゆれて、きらきらとしている。

忠志は、こういう自分より遥かに格上の女性には、
姉にでも甘えるように、完全に素直になれる。
そして、お酒も手伝ってか、言いだした。

「大竹さん。俺、変態なんだ。」と忠志。
「何よ、高井君。どう変態なの。」
「笑ったり、怒ったりしない?」
「しないわよ。」
「するよ、絶対。」
「じゃあ、聞きたいから、指きり。」
二人は指きりした。

「さあ、教えて。」と恵子が言う。
「俺さ。女性の脇の下見ると萌えちゃうの。けー、恥ずかしいー!」
「そんなのあるの。じゃあ、脇の下フェチ、って感じ?」
「ま、まあ、そうかな。フェチ。そうなんだ。」
「見るだけ?」
「舐めたりできたら、最高。」
「ふーん。」と恵子は言うと、イタズラっぽい笑みを浮かべた。

そして、やおら、上着を脱いだ。
すると、恵子のワンピースは、ジャンパースカートになっていて、
完全な肩見せ。少しでも、腕をあげると脇の下が見える。
部で一番の美女の恵子の脇の下。

「高井くん。上着取ったあたし、どう?」恵子は言う。
「ま、ま、ま、待ってよ。俺ダメ。鼻血出そう。」
「あたしが、上着脱いだだけで。あ、高井君、髪の毛に何かついてる。」
そう言って、恵子は、右手を上げえて、忠志の髪の毛に腕を伸ばしてきた。
脇の下が完全に見える。

忠志は、一気に興奮してしまった。
「大竹さん。やめてよ。俺、その、萌えちゃったよ。」
恵子はお酒のせいもあったのか、さらに悪乗りして、
両腕を、頭の上に乗せて、背伸びをするように、
「ああ、肩こっちゃった。」と言った。
忠志は、完全に参ってしまった。

見えるチャンスの夏の電車の中なら、いざしれず、
見えない冬のレストランでの不意打ちは、数倍のショックだ。

ああ、恵子は、冬だというのに、脇の下を完璧につるつるにしている。
彼氏がいるとでもいうのか。
「大竹さん。まいった。俺撃沈。」と忠志は言った。
「えへ、参ったか。」と恵子は言って、腕を下ろした。
「大竹さん。彼氏いるの。」
「どうして。」
「だって、冬は手入れしないでしょう。」
「あたし、この服みたいの着るから、冬でも手入れしてるよ。」

「そ、そういう人もいるんだ。」
「えへー。ほんとは彼氏いるんだ。だから、1年中綺麗にしてる。」
「やっぱり、そうなんだ。いいなあ彼。」
「なにが?」
「だって、大竹さんの脇の下、なめたりしてるんでしょう。」

「な、なんかリアルになってきたから止めて。」
「大竹さん美人だもん。セックスアピール、ぷんぷん。」
「そうお?あたし、セクシー?」
「俺にとってはね。」
「わあ、ありがとう。今日一晩高井君にお付き合いしちゃおうかな。」
「やめてよ。また、鼻血ブーだから。」
「アハハハ。」
とけっこう、恵子は忠志との会話を楽しんでいたのだった。



高層ビルを出て、新宿の駅に向かっていた。
地下のオフィス街の通りだった。
そのうち、道の向こうから、いかにも柄の悪そうな男二人が来た。

そのとき、恵子は、ビクンとして、忠志の背に身を隠した。
忠志は、少し驚いた。
狭い繁華街の通りではない。
オフィス街の広い通りだ。
ジロジロ見ないようにして通れば、なんのことはないはずだ。

だが恵子はかすかに震えている。
恵子は、きっと過去に何か、あんな連中から恐い目にあっている。
それが、トラウマになっているのかもしれない。忠志は思った。
恵子を守らなければ。

恐れたとおり、柄の悪い二人は、恵子の反応に因縁をつけてきた。
「おい、お嬢さんよ。何か?俺たちが悪人なのかよ。」
「そんな恐いお兄さんかよ、俺たちゃあ。」
「恐がられっとよ、恐いお兄さんになっちゃうんだけどなあ。」
「ええ?どうなんだよ。」と最後の言葉に、どすを入れてきた。

恵子は、忠志の後ろで、忠志のコートにしがみついて、震えていた。
「彼女は、他のもの見て、びっくりしただけですよ。」忠志は平然として言った。
「何を?他の何見て恐いってんだよ。」
一人が、忠志の胸ぐらをつかんできた。

「ほら、あそこに、クリスマスのクマの人形があるでしょう。
 彼女は、クマ恐怖症なんですよ。
 子供のとき熊に追いかけられてね、死ぬほど恐かったから。」忠志は言った。
そろそろパンチがくるころだ。忠志は念を用意した。

「ふざけんじゃねえ。」サングラスの男が、忠志の左頬にフックをもろに入れてきた。
このとき忠志の入れた念は、殴った本人は、深く入ったつもりで、
実際には、寸止めでなぐっていない…というものだった。

忠志は、殴られた方に飛んだ。
「ああ、高井くん!」と恵子が叫んだ。
傷の男が、恵子に手をかけようとしていた。
忠志は、飛んで行ってそれを阻止した。

そこで、お腹を思いきり蹴られた。
蹴ったと思っているのは本人だけ。
忠志のダメージはゼロだった。
忠志は痛そうにして立った。
そして、両手を広げて恵子の前に立った。
「コノヤロー。」と強烈なボディが来た。
忠志は、うっと腹をくぼませたが、本当は、ダメージはゼロ。

顔面にパンチが来た。
鼻血くらい出しておこうと、軽く鼻をかすらせた。
鼻血が少し出た。
あと、耳からも少し血を出した。

人だかりが、50人と超えていた。
見ているだけで、助ける人はいない。
50人がいっせいにかかれば、こいつらをいっぺんで抑え込めるのに。
忠志は、そう思った。


つづく(次は、後編「恵子のマンションで」です。)

英二のサンタさんへのお願い⑥「その後の二人」最終回

これまで、長いのを読んでくださって、ありがとうございます。今日でやっと最終回です。
明日から、どうしようと考えています。

================================

英二は5年生になり、クラス編成があった。
教育的配慮なのか、岬と同じクラスになった。
境遇の似た二人を離さないようにしてくれたのだろう。
岬は背が伸びて、身長が150cmの英二より2,3cm高くなった。
他のクラスにも名が知れて、岬をからかうものはいなくなった。

5月の連休のころ、英二は、岬を家に呼んだ。
家族には、岬のことをしょっちゅう話していたので、
家族は、岬を歓待した。
「岬くん、ステキねえ。かっこいいわ。」
と母の和歌子は、岬を見て言った。
父の啓二も出て挨拶をした。
「いえ、まだ、全然です。」と岬は言った。
英二は、岬を自分の部屋に連れて、階段を上がった。

和歌子は、「ほんと男の子ね。でも顔は可愛い。」と啓二に言った。
啓二は、「あの二人、男女のカップルなんだよな。」と感慨深げに言った。
和歌子は「ほんと。結婚してくれればいいのに。赤ちゃん作れる。」と冗談で言った。
啓二は、「お。それ名案だよ。でも、そう上手くはいかないか。」
と和歌子と顔を見合わせ笑った。



岬は、英二の部屋を見て、
「うへー、『ザ・女の部屋』だな。気持ちわりー。
 ぬいぐるみ並べちゃって、ピンクピンクしてら。
 それに、AHBだらけじゃね。まあ、これは、女の部屋はどこも同じか。
 アランの桜木のポスターデカデカはちゃって。
 恥ずかしくねーのかよ。」
「いいじゃないの。好きなんだから。」

英子は机の整理をしながら言った。
「英子は、やっぱ男好きなんだ。」
「そりゃね、女だから。
 岬だって、男だから、女の子好きでしょう。」
「まあな。可愛けりゃ、たいてい好きだよ。」
「クラスで、だれか、好きな子いたりして。」
「いねーよ。みんなブスばっか。」
「あたしがいるじゃない。」
「バカ、おめーとは、同士だろう。例外だよ例外。」

「あたしは、岬のこと、女の子だと思ったことないよ。
 とくに、最近、すごくカッコいいし。」
「え?俺、最近いいの?」
「うん、女の子にかなり人気高いよ。
 それに、女の子たち、岬が女の子なんてこと、もう忘れてるよ。」
「え?ほんとかよ。ウソだろ。」

「そこでさあ。」
と英二は片付けが終わって、岬と二人、ベッドを背にして、床に座った。
「これからは、真面目な話。」と英二は言った。
「ななんだよ。」
「もうそろそろさあ、大人になり始めるじゃない。
 もし、大人っぽくなって、髭なんか濃くなってきたら、
 あたし、死にたくなる。」英二は言った。

「俺も、そうなんだ。
 実は、おっぱい少し出てきた。
 それに、背も伸びたし、
 女には生理ってのがあって、血が出んだって。
 体だって、脂肪がついて、ぽやぽやになる。
 俺、そんななるの、死ぬほど恐ええ。」

「中学になって、男子の制服着るの、絶対いや。」
「それ、俺の方が悲惨だぜ。
 俺、スカートなんかはかされたら、学校いけねー。
 男がスカートだぜ。耐えられると思うか。
 女がズボンの方が、まだましだろうよ。」
「わかる。岬にとって、地獄だよね。」

そこで、英二は、K子から聞いた、GIDの話をした。

「それでね、お医者さんに見てもらって、GIDだって診断されたら、
 岬は、男の子扱いで、制服も男子、トイレ、更衣室、全部男子の使えるの。
 あたしは、反対に、女子の制服で、全部いけるの。」
岬は目を丸くした。
「すげえ。中学、男で通えたら、俺泣いて喜ぶよ。」
「あたしだって。」

英二は、ホルモンの話も、きっちりとした。

「そうかあ。恐いものなんだな。
 でも、俺、とにかく制服がいやだ。
 それさえクリアできたら、あとはぼちぼち考える。」
「クリニック、行く気ある?」
「あるある、ダメ元じゃん。」
「でも、GIDって、大変なことだと言われた。」英二は言った。
「おれ、自分で完全にGIDだと思う。
 どんなに大変だろうが、そうなんだもん、しょーがねーよ。」

「岬は、そうだろうなって思う。
 でも、あたしは、少し心に男が残ってる気がするの。
 でも、あたし、好きになる子は、男の子だし、女じゃなきゃ生きていけない。
 それで、GIDじゃないなんて言われたら、泣く。
 だけど、GIDって言われるのも恐い。」
英二は、膝の上に顔を埋めた。

岬は、英二の肩に手をかけた。
「英子、お前らしくねーぞ。気持ちわかるけどさ、
 何事も先に進まなけりゃ、変わらないって。
 このままじゃ、地獄が待ってるだけだぜ。
「うん。そうだね。」
と英二は顔を上げた。

和歌子は、果物を持ってきて、
二人の最後の方の会話を聞いた。
二人のいじらしさに、涙が出た。

涙をふき、気を取り直して、部屋に入っていった。
「さあ、どうぞ。」と差し出した。
「わあ、うれしいっす。」と岬は言った。
「ありがとう。」と英二は明るく言った。

5年生でもたいしたものだな、と和歌子は思った。

*    *    *

英二の近藤家と、岬の浅井家とで連絡を取り、
6月の初旬に、ジェンダー・クリニックに言った。
問診、各種テストをいくつかした。

2週間後に結果を聞きに、両家族は、クリニックを訪れた。
岬に関しては、GIDの項目をほぼ満たしていて、診断が下された。

英二は親子三人で、先生の部屋に入った。

主治医は言った。
「英二さんは、言ってみるなら、10のうち9くらいが女子で、
 1ほど男子の心が見られます。
 これは、性自認において、自分はわずかに男性性があると思っているようです。

 しかし、1つの検査の中で、母性性において、極めて高い数値が出ています。
 その他においては、ほぼ女子としてのラインを超えています。

 性志向、つまり男女どちらに異性を感じ恋愛をするかというのも、
 男子を好きになると答えています。これは、とても大きなことです。

 また、書く字も、典型的な女子の字を書きます。これは大きな判断材料なのです。
 社会的性という点も、小学校のすべてを女子として送っていて、
 女子への適応は十分と言えます。

 診断を下すには、100%近い結果が必要なので、
 今は、GIDの疑いが、極めて高いとしておきます。
 
 10のうち9が女子ですから、これでは、男子としての生活は耐え得ないとして、
 意見書を作成します。これで、中学は、女子の扱いで通えると思います。
 つまり、セーラー服で通えるということです。

 なお、今後定期的に通っていただいて、第ニ次性徴を抑える意味で、
 極微量のホルモン治療を行うことも考えていきます。
 また、精神的な面をフォローするために、定期的なカウンセリングを受けていただきます。」

 主治医の説明は以上だった。



クリニックを出ると、岬の家族が待っていてくれた。
「英子、どうだった?セーラー服、OK?」と岬が聞いた。
「うん、OK。3年間、女子生徒だよ。」
「わあ、よかったなあ。俺は、楽勝だった。男子生徒だ。」
二人は手を取り合って、ぴょんぴょん跳ねながら喜んだ。

二人の両親は、共に、そろって、喜び合う二人を見ていた。
「これで、よかったみたいですね。」と啓二は、岬のお父さんに、話しかけた。
「そうですね。うちのは、根っからの男の子でしたからね。」
「ほんとに、2人そろってなんて、夢見たいですね。」
と和歌子が、岬のお母さんに言った。
「これからも、家族同士のお付き合いを、お願いします。」と岬のお母さんは言った。
「こちらこそ。」と啓二と和歌子は言った。

*    *    *    *

2年後、12月22日。
校門をくぐるカップルがいた。
英二と岬。
二人は、その後、もう生まれた性に戻る可能性はほぼゼロと見られ、
6年生のときから、微量のホルモン治療を受けている。
英二の乳房は、ほんのりと大きくなった。
ヒップにも脂肪が付いてきた。
身長は、158cmで、横ばいになった。
髭も濃くならず、声も、女子のまま変声期を過ぎた。

岬は、背が163cmを越え、まだ伸びると思われた。
声も、男性的になり、筋肉もたくましくなった。
顔立ちも、アゴの骨格が発達して、女子の面影はなくなった。

校門を二人は抜け、並んで歩いた。
だれが見ても、仲のいいカップルだった。

二人は、歩いていて、あるチキンの店の大きなクリスマス・ツリーを見た。
綺麗なイルミネーションがちりばめられている。
横に大きなサンタの格好をした、人形がある。


「ね、岬、サンタさんに、お願いしない?」
と英二は言った。
「お、いいね。」
岬はそう言って、ツリーに向かって、二人は指を組み、目をつぶった。

「英子、何をお願いした?」
「えへ。将来、ウエディングドレスを着られますようにって。」英二は言った。
「岬のお願いは、何?」
「俺の?俺は、ガキのころから、願いは1つさ。」
「え?ずーと同じなの?何何?」
「そりゃさあ、なになにが、生えてきますようにって。」

「『なになに』って何よ?」
「決まってんじゃね。英子にあって、俺にないものさ。」
英二は考えた。
「あ、わかった。『あたしにあって』っていう言葉が、イヤ。
 生生しいじゃない。ああ、あたしの綺麗なお願いが、けがれる。
 岬のバカ!バカ!」
英二は、学生かばんで、岬の頭をぶとうとした。
岬は、かばんを頭に乗せて、逃げた。
「だって、本心なんだからさ。」と言いながら。
「バカバカ。」と言いながら、英二は追いかけていく。

ツリーの横の、サンタのおじさんは、
心なしか、笑っているようだった。


<おわり> (次回は、まだ、考えていません。)

英二のサンタさんへのお願い⑤「K子さんのお話」

最終回を、クリスマスの日に持って来たかったのですが、できませんでした。
明日で、最終回です。読んでくださるとうれしいです。

==============================

K子は、美人であるとともに、
見るからに聡明そうな人だった。
30歳くらい。桜色のスーツを着ていた。

ボックスで、挨拶をしたとき、
「わあ、あなたが英子さん。おシャレだし、ステキな女の子だわ。」
とこぼれるような笑顔で言った。
声も完全に女性の声だった。
英二は、いっぺんでK子が気に入った。

和歌子がK子の隣、K子の向かいに英二、隣に啓二が座った。
K子がリーダーシップをとった。
「今日は、ご本人の英子さんからの、心配や、悩み、疑問などにお答えしたいと思います。
 その後で、ご両親から、質問なりをお聞きいたします。」
K子はそう言った。

K子は、英二に心配なことを聞いた。
英二は言った。
「今、一番の悩みは、中学生になった頃、髭が濃くなったり、ごっつい体になったり、
 声変わりして低い声になってしまうのが、恐いです。
 それから、背がものすごく高くなったらどうしようかと恐いです。
 そして、他の女の子に乳房があるのに、あたしだけないのが、悲しいです。
 女の子にないものが、自分にあるのが悲しいです。」

英二の言葉を聞いて、啓二と和歌子は驚き、自分達の認識を改めた。
4年生とは、まだ子供だと思っていた。
女の子になるといっても、髪や服装だけのことだと高をくくっていた。
「女になる」ということを、英二はずっと深く考え、悩んでいたことを知った。

K子は英二の目を見て答えた。
「あたしが、男としては生きていけないと思ったのは、20歳のときなの。
 そのときは、もう体は男性として出来上がっていたのね。
 髭がありました。これは、いちいち一本一本抜いていたの。
 髭剃りでは、どうしても、青く見えて、化粧で隠すことはむずかしかったから。
 でも、肢のすねの毛なんかは、シェーブでOKでした。

 声だけど、低い声だったんですよ。今も低いの。こんな声。」
そう言って、K子は、完全に男性の低い声を出した。
みんな、びっくりしてしまった。

「だけど、今話しているのは、女性の声に聞こえているでしょう。多分だけど。」

「完全に女性の声です。」と英二は言った。

「ある訓練をすれば、かなり声の低い男性でも女性の声で話せるようになります。
 あたしがやったのは、『メラニー法』というもので、必死でトレーニングして、
 約2年かかったかな。他にも「ウィスパー法」とか2つくらい方法があるの。

 髭のことだけど、今は、永久脱毛という治療を受けて、もう髭を抜かなくて
 よくなっています。でも、これは、目が回るほどお金がかかります。

 乳房ですが、これは、女性ホルモンを打ちました。
 女性ホルモンを打つと、女性的な体になるし、髪の毛や皮膚の感じも女性的になります。

 でもね、女性ホルモンを打つというのは、命がけです。
 後戻りができないの。女性になりたいと思って打っていて、
 やっぱり男性に戻りたいと思ったとき、それができないの。
 たまに、若くて綺麗なときだけのことを考えて、女性ホルモンを打つ人がいますが、
 それは、間違っています。女性ホルモンは、ある期間打ってしまったら、
 一生打ち続けなければならないの。おばあちゃんになるまでね。
 だから、ものすごく覚悟のいることです。

 私は20歳から打ちましたが、女性ホルモンの開始は、早いほど効果があります。
 声変わりする前に打てば、それをある程度防げます。髭も濃くならずにすむこともあります。
 こう言うと、早く始めるのは、いいこと尽くめみたいだけど、そうじゃないの。
 さっきも言った通り、後戻りができないの。
 だから、しっかりと自分や世の中のことがわかってきてから決める必要があるの。
 例えば、結婚とか、赤ちゃんのこと。あたしは、ここまで女性ホルモンを打っているので、
 普通で言うパパにはもうなれません。もちろん、子供を産むことは、はじめからできません。」

「よくわかりました。ありがとうございました。」と英二は言った。
英二は、K子の話を聞いて、不安が半分になったと思った。

和歌子が聞いた。
「あの、担任の先生から、クリニックや病院には、早く行った方がいいと言われたのですが、
 4年生で、早すぎないでしょうか。」

K子。
「早すぎないと思います。ちょうど4年生くらいから、第二次性徴がはじまりますから、
 決して早すぎないと思います。もし性同一性障害との診断が出た場合、市や学校は、
 英子さんを女子として扱わなければなりませんから、服装、トイレ、更衣室、水着など、
 すべて女子として配慮がなされるはずです。
 これは、GIDとして認められたときであって、もしその診断がでなければ、
 男子として生きていけるということなので、それは、ずっと安心なことではないでしょうか。
 GIDであるということは、それこそ、大変なことですから。」

啓二は言った。
「今日は、自分達の目からウロコが何枚も落ちた感じです。
 英二が、ここまで深くいろいろ考えているとは思いませんでしたし、
 女性ホルモンは、逆戻りができないということも、びっくりすることでした。
 GIDというのが、どれほど深刻な障害であるかもわかりました。
 私達夫婦は、少し能天気過ぎました。お恥ずかしい限りです。」

「あら、こういうことは、少し能天気な親御さんの方が、お子さんにとってはラッキーなんですよ。
 明るくポジティブなお父様とお母様とお見受けしました。
 英子さんは、よいご両親をお持ちです。
 そして、英子さんは、利発でいらっしゃる。
 もってる雰囲気が、魅力的ですわ。男女どちらになられてもステキな人になるでしょうね。」
とK子はにっこりとして言った。

K子と別れた。
三人は同じことを思っていた。
いちばん魅力的なのは、K子さんだったと。



つづく(次回は、やっと最終回です。「その後の二人」)

英二のサンタさんへのお願い④「岬のけんか」


3学期の始業の日から、5日後。
岬は、男子に受け入れらて、男子の中でサッカーをするようになった。
岬は、男子の中でもサッカーが1、2番に上手だった。

英二は、毎日違う服を着て登校し、クラスでファッションリーダー的存在になっていた。

給食後の休み時間に、みんなで外に出るときだった。
隣のクラスの廊下あたりで、喧嘩が起きた。
あいにく2つのクラスとも先生がいなかった。
ある女の子が、クラスに飛んできて、
「英子、英子じゃないと止められない。早く来て。」と言った。

「うん。わかった。」と言って英二が飛んでいくと、
喧嘩は、隣のクラスのA男と岬だった。
喧嘩は、岬の方が圧倒的に優勢で、
岬はA男の上にまたがって、A男を殴っていた。
英二は、岬の後ろ脇から岬の肩をとって、
岬をA男から、引き剥がした。
「どうしたの?」と英二が聞いた。
「コイツが俺のこと『男女』って言いやがった。」と岬は言った。

すると、フリーになったA男が、
「ほんとのことだろう。女のくせに、男の真似すんじゃねー。」と言った。
すると、岬が英二の中で、激しくもがいた。
「岬君だめ。あなたが本気出したら、損するのあなただから。」
そう言って、英二は、岬の肩をとったまま、階段を上り、
屋上前の踊り場まで連れて行き、そこへ座らせた。

しばらく抑えていると、岬の闘志はしずまり、言葉に変わった。
「アイツ、後でぶん殴って、ぼこぼこにしてやる。
 絶対このままじゃおかねー。ぶっ殺してやる。」
岬は、荒い息をしていた。

やがて、ののしる言葉は、涙に変わった。
「俺だって、好きで女に生まれたわけじゃねえや。
 人が一番気にしてること、からかっていいのかよ。
 自分じゃどうしようもねーこと、からかっていいのかよ。
 俺をからかって、うれしいのかよ。
 俺をからかって、得でもあんのかよ。
 一生言われんのかよ、俺。」
岬は、こぼれ出る涙を、服の袖で何度も拭きながら言った。

「わかるよ、岬君の気持ち。」英二は言った。
「お前には、わかんねえよ。
 お前は女で、男になりてえなんて、思わねえだろ。」
「岬君、まだ気づいてないと思うけど、あたし男だよ。」
「え?」
岬は、驚き、泣くのを忘れた。

「近藤英二っていうのが、あたしの本当の名前。
 こうやって女の子の格好で学校来れるようになったの、やっとこの4年の3学期から。
 それまでは、男の格好で女の子やってた。
 今のクラスでからかう人はいないけど、
 1、2年のころは、よくからかわれた。
 どんな言葉でからかわれたかわかるでしょう。」
英二はそう言った。

「し、知らなかったよ。お前、男の雰囲気ねえもん。
 そうだったんだ…。」
「女の子が男みたいなのと、男の子が女みたいなのと、
 どっちがからかわれると思う?」
「そりゃ、男が女みたいな方だ。」
「だから、けっこうつらいものがあったよ。」
「そうだ。英子の方が、俺より根性あるよ。」
「だから、あたしは、岬君の気持ちがわかります。」
英二は、えへんと胸を張って言った。

「うん、そうだな。
 英子が、男だなんて、まだ、信じらんねーけど、
 それが本当なら、俺の気持ちわかってくれる。
 俺、正直うれしい。
 なんか奇跡みてえだ。
 似たようなのがさ、学校に2人もいて、席並んでんだぜ。」
岬は英二を見た。
「ほんと。これ絶対、普通じゃないよね。」
英二がそう言って、二人で笑い合った。
岬の怒りは、消えていた。



後で、両クラスの先生に、A男と岬は呼ばれた。
先生たちは、A男に、
「人が努力してもどうにもならないことを、からかうのは最低だ!
 岬が怒るのも、当たり前だ!」と怒鳴り散らした。
岬には、少しやさしい調子だった。
「どんなに腹が立っても、手や肢を出さないように努力するんだ。
 世の中、いくら相手が悪くても、手を出した方が、負けなんだよ。
 手を出した方が、警察に連れて行かれるんだ。」
そう言われ、二人とも自分の悪かった分を謝った。
岬は、二人の先生ともいい先生だと思った。


*    *    *    *

1月の下旬。
小林先生の計らいで、英二一家は、
GIDの当事者であるK子さんに会えることになった。
母和歌子とメールのやり取りをして、
ファミリーレストランで会うことになった。
和歌子が、互いの目印をいいあったとき、
K子は、
『少女マンガを読んでいます。または、客の中の1番の美女です(笑)。』
とメールを返してきた。
それを見て、英二は、
「けっこうお茶目な人だね。」と笑った。
「ほんとだね。」と啓二も笑った。

K子は、夫妻だけでなく英二本人も来るようにと言って来た。
英二は一人っ子なので、親子3人で行った。

和歌子は、少女マンガを読んでいる人を探した。
啓二と英二は、一番の美女を探した。
「あ、あの人が一番美人。」と英二が見つけた。
その人は、少女マンガを熱心に読んでいた。


つづく(次は、「K子さんに会う」です。)

英二のサンタさんへの願い③「転校生が来た」

クリスマス・イブが終わり、朝になった。
英二は、自分の欲しかった通りの洋服が枕元にあり、
大はしゃぎをした。

クリスマスの日に、母から言われた。
「英二が学校で、女の子でいるって、小林先生に聞いたの。」
「ごめん、お母さん。ぼく変な子だよね。」と英二は言った。
「そうじゃないの。英二が女の子をするなら、もっとちゃんと女の子にしてあげたいの。
 小学校を卒業するまで、服を買ってあげるし、
 髪も美容院へ行って女の子風にカットしてもらう。
 でも、これは、卒業するまで。中学になったら、それができないから。」

母の言葉を聞いて、英二は目を輝かせた。
英二は、父啓二の顔を見た。啓二はうなずいていた。
「家でも、女の子でいいのよ?」
「英二が望むならね。」と啓二は行った。
「わあ~い、それ最高。男の服で、女の子やるのちょっと惨めだったんだ。
 お父さん、お母さん、ありがとう。」と英二は言った。

英二は、和歌子に美容院に連れて行ってもらい、女の子らしくカットしてもらった。
着替え用に、下着や服をたくさん買ってもらった。
英二は、最高の幸せを感じていた。

*    *     *

冬休みが終わって、3学期が始まって第一日目。
英二はスカートをはき、膝上までの紺のソックスを履き、
完全に女の子になってやってきた。
クラスのみんなは、やいやいとはやし立てた。
「わあ~ん、流行の髪形じゃない。いいなあ。」
「英子、似合うよ。いいなあ。」
と何人かの女の子が、うらやましがった。

そのうち、始業のチャイムがなり、
小林先生が来た。

はじめにやるのは、席替え。
このとき、いつももめる。
男女が並ぶことが原則だった。
しかし、英子が男子と並ぶと男同士だと不平が出、
英子が、女子と並ぶと女同士だと不平が出る。
そこで、英二はいつも手をあげて、
「あたし、一番後ろの一人席でいいです。」と言う。
そこで、英二は、ずーとその指定席できた。

二日目に、先生は、一人の子と、朝やって来た。
「わあ、転校生だ。」とみんなははしゃいだ。
その後、その子を見て、みんなは、首をかしげた。
白い肌で、とても可愛い顔をしている。
髪は、細くて、さらさら、耳が隠れるくらいのショートへヤーにしている。
ぱっと見、女の子だが、首から下の服装は、完全に男子だった。
そして、全体から感じられる雰囲気が、男の子なのだ。

「浅野岬さんです。今日からこのクラスになります。」
小林先生は、男子も「さん」づけで呼ぶので、「浅野さん」では、わからない。
「岬」という名も、男女不明。
先生は、岬に、自己紹介するようにいった。
岬は、言った。
「えーと、俺は女子だけど、男だと思ってくれるとうれしいです。
 自分でも自分は男だと思っています。」
岬の声は、大声を出し続け、自分で声をつぶしたような、ハスキーな声で、
男の子の声に聞こえた。

岬の言葉を聞いて、みんなは、思わず英二を見た。
「お仲間がきたよ。」とみんな言いたげだった。
英二は、猫を追い払うように、シッシと手でみんなの目線を払った。

岬の席は、一人がけをしている英二の隣へ、
机と椅子を持ってきて、二人は並んだ。

20分の中休みになった。
岬のそばにわあーと来たのは、男子ではなく、女子だった。
岬は思った。自分はまだ男として、認められていないのか…。

女子たちは、岬を誘って、ドッジボールをしにいった。
もちろんその中に英二もいた。
英二は、利き手の反対で投げる決まりになっていた。

「俺、けっこうすごいボール投げるけど、本気出していいの?」と岬は聞いた。
「いいよ、いいよ、見て見たい。」と女子たちは言った。

校庭に出てドッジボールが始まった。
岬は、あまりボールを投げないように逃げて回っていた。
本気で投げたら、女の子は怪我をすると思っていた。
ところが、コートのど真ん中にボールが来て、
それをキャッチした岬は、余りの絶好球に、我を忘れた。
そして、つい渾身のボールを、相手コートのど真ん中に向けて投げてしまった。
「あ、やっちゃった。」と岬は舌打ちをした。

ボールは、すごいスピードで、コートのど真ん中を突ききる。
女子たちは、左右にぱらぱらと避けて分かれた。
しかし、コートの真ん中の後ろに英二がいて、低く構えていた。
岬は、心で叫んだ。
『だめだ。俺の球は、ホップアップする。その構えじゃ顔面に当たる。よけてくれ。』
英二は球をじっと見据えていた。
そして、球が浮いて来るのを見切り、上体を宙に浮かせ、
剛速球を、がっちりお腹でキャッチした。
「おおお、すげえ、アイツ。」と岬はうれしくなった。

そして、英二も同じ、あまりの剛速球に対して、
一瞬我を忘れて、利き手を使い、岬めがけて低いボールを、すごい速さで投げた。

胸のすくようなローボールが来る。
「いいぞ、よし来い。」と岬はうれしくなり、低く構えた。
すると、ボールは、岬の手前で、急に速さを増し浮き上がる。
「すげえ。」岬は、感激しながら、身を浮かせ、かろうじてボールをキャッチした。
岬は、爽快な笑顔を見せた。
自分と同等の女子がいることが、たまらなくうれしかった。

チャイムが鳴って帰り道、
「おい、お前、やるなあ。俺の球、男でも取れないぜ。」と岬は英二の肩に手をかけた。
「岬くんこそ、あたし後ろにいなかったら、取れなかった。」
と英二は言った。
二人は、なんだか友だち同士になる予感がしていた。


つづく(次は、「岬の怒り」です。)

英二のサンタさんへのお願い②「担任の先生に会う」

二人は、担任の先生との面談を申し込んだ。
担任の先生は、小林という名で、40歳くらいの優しそうな男の先生だ。
勤務外の夜の6時に先生は会ってくれた。

和歌子は、英二の5歳のクリスマスから、いままでの英二の願い、
それを、親2人で叶えてやり、小さいころは、それをおもしろがり、
7歳で、七五三の写真を女の子として撮ってやったりまでしたことを話した。
和歌子は、そこまで話して、先生に聞いた。

「英二は、学校でどんな風でしょうか?」
「今までの担任の先生からお聞きにならなかったのですか。」と先生。
「あの、特別な子だったのでしょうか。」和歌子は聞いた。
「そうか…、まだ、3年生だったからなあ…。」
と小林先生は言った。
「あの、なんでしょうか。」と啓二が心配して聞いた。

小林先生少し考えながら言った。
「英二くんは、学級では、女の子として、振舞っています。
 自分のことを『あたし』と呼び、女言葉を使い、
 歩き方や、仕草も全く女の子です。
 そして、ほとんど女子と遊んでいます。
 ときどき、他の女子と洋服を取りかえっこして喜んでいたり、
 また、友だちに、髪の毛を可愛らしく結ってもらっています。
 英二君は、髪も長く、顔立ちも可愛く、女子として通りますので、
 男子は、それを受け入れていて、男女から英子と呼ばれています。」

啓二と和歌子は、目を丸くして驚いた。
和歌子は言った。
「知りませんでした。そんなことで、男子からいじめられたりしていないのでしょうか。」

小林先生。
「英二君は背も高い方だし、大変人柄がよくて、おもしろいし、勉強も運動も抜群にできますので、
 男子の中で、英二君に嫌がらせをする子はいません。
 もし嫌がらせなどされたら、英二君は、だまっていません。
 喧嘩をすると誰よりも強いですから、相手に必ず謝らせます。
 でも、そんなことは稀で、学級では、ナンバー1の人気者です。」

啓二と和歌子は、英二への認識を全く新たにした。
英二は、どちらかというと、大人しく、女の子のようなので、いじめられるタイプだと思っていた。
和歌子は言った。
「少しも知りませんでした。家では普通に男の子でいます。」

先生。
「学校と家での振るまいが全く違うというのはよくあることです。」
啓二は、
「どうしたら、いいでしょうか。」と聞いた。

先生は言った。
「学校でも、児童理解という会議の場で、英二君のことを私は、紹介しました。
 英二君は、ただ女子の格好をすることで喜びを感じているだけか、
 それとも、心も女子であり、つまり性同一障害かも知れないとのことでした。
 そこで、早期に、専門の病院か、クリニックで診断を受けてみるべきである。
 そう、ご家庭にお話しする必要があるとの意見が多数でした。この会議は最近のことです。」

和歌子は聞いた。
「あの、私たちが、あの子の幼い頃、女装させて喜んでいたのがいけないのでしょうか。」
先生は、
「これは、私の推測ですが、性同一障害なら、生まれついてすでに自分は女の子だと思っていることが多いので、後天的にそうなるとは思えません。
 また、女装の趣味と言う点でも、最初に、女の子の服をサンタさんにお願いしたのは、英二くんだっ たのですよね。ならば、その時点で英二君の女装への憧れはすでに出来上がっていたのだと思います。
 ご両親が、その願いを叶えてあげたことは、英二君にとって幸せなことだったのではないでしょうか。」

啓二と和歌子は、少し安堵した。

小林先生が付け加えた。
「あの、今日お家へ帰って、英二君に根掘り葉掘り聞かないでいただきたいんです。
 性同一性障害は、略してGIDと呼ばれています。
 実は、私の知人に、GIDであり、女性として事務職に就いている人がいるんです。
 私は、彼女に英二君のことを、何度かメールで相談しました。

 彼女が言うには、素人が下手に本人に聞いてみたりしてはいけないというんです。
 小さい子の場合、暗示にかかってしまう危険性があるとのことです。
 例えば『あなた、女の子になりたいの?』と聞いたとします。
 すると、『うん、女の子になりたい。』とその子は答えたとします。
 そう、発言することで、その子は、自分は女の子になりたい子なんだと思ってしまう。

 でも、小さい子は、『女の子』とうものが、何を意味するのかはっきり認識していません。
 髪が長くて、スカートはいて、女言葉を使うのが女の子だと思っていたりします。
 将来、成人として女性の体をもつ女の子としては、イメージしていないことが多いです。」

啓二と和歌子は、納得した。

小林先生は、
「もし、クリニックに行く前に、当事者とお話したいということでしたら、
 私は、そのGIDの女性とお話ができるよう、アレンジします。
 とても信頼のおける人です。
 ゆっくりお考えのうえ、また、ご連絡ください。」と言った。

「あの、先生、とりあえず今年のクリスマスのあの子の願い、先生のご意見はいかがでしょう?」
和歌子はそう聞いた。

先生はちょっと考え、
「私が、親だったら、思いきり女の子をさせてあげます。」と、にっこりした。



学校からの帰り道、
「あなたは、どうしましょう。クリスマス・プレゼント。」と和歌子は聞いた。
「先生のお話をきいて、先生と同じ気持ちでいる。」と啓二は言った。
和歌子はこう言った。
「私は、一年中英二に、女の子の格好をさせてあげたい。
 男の子の服で、女の子をやっているなんて、惨めだわ。
 あの子が、可愛そうで涙が出そうだった。
 ちゃんと女の子の下着を着させて、髪も女の子らしくカットしてあげたい。
 中学になったら、どうせ制服になるでしょ。
 だったら、せめて小学校の間だけでも、女の子の格好をさせてあげたい。」
啓二は答えた。
「そうだね。俺も英二が可哀相に思った。和歌子の言う通りにしよう。」
和歌子は、啓二の腕を抱いた。


つづく(次は、「新入生がやってきた」です。)

英二のサンタさんへのお願い①「女の子の服をお願いする男の子」

えーと、超能力ものは、評判が悪いらしくて、ランキングがどんどん下がってしまいました。
そこで、女装物を投稿します。あんまりおもしろくないかもしれません。全部書き終わっていなくて、
見切り発射で、投稿します。

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英二は利発で、5歳のときにひらがながかけた。
そこで、サンタさんのクリスマスのお願いにこんなこと書いた。

『ぼくに おんなのこのふくを ください。』

両親の啓二と和歌子は、それをほほえましくみた。
英二は、髪を長く伸ばしていたし、女の子のように可愛い子だったので、
女の子の服がさぞ似合うだろうと思った。

そこで、コールテンの赤いワンピースを買って、
それを袋で包み、リボンをつけて、クリスマス・イブの日に、
寝ている英二の枕元に置いた。



明くる朝、英二は誰よりも早く起きて、
サンタさんのプレゼントを見つけた。
「わあ~い、お願いがかなった、お父さん、お母さん、見て!」
と英二は言った。
「あら、よかったわね。」母の和歌子は、そう言って、
英二に服を着せ、それから、英二の長い髪を、より女の子風にセットしてやった。

英二は大はしゃぎだった。
啓二も和歌子も悦び、写真やビデオにたくさん治めた。
1日じゃもったいなと英二がいうので、大晦日まで、女の子でいいことにした。
夕食のテーブルで、英二が、「ぼく」なんていうと、
和歌子は、「女の子は、あたしでしょ。」などと言って、おもしろがった。

啓二と和歌子は、英二を連れて、近くの公園に行ったし、
映画館にも行った。
英二は、大はしゃぎだった。



英二が6歳の、クリスマスの日。
英二は、また、同じお願いをした。
啓二と和歌子は、また、うきうきしながら、
可愛い女の子の服を買いに行った。
英二は、大喜びして、大晦日まで、女の子になった。
楽しい日々を家族中で過ごした。

英二は、小学校にあがった。
英二は、髪を切ることを、死ぬほど嫌がったので、
啓二と和歌子は根負けし、肩に届きそうな長髪のまま、英二を入学させた。

その年の、七五三のとき、啓二と和歌子は考えた。
「そのうち髪も切るだろうし、英二の髪の長いうちに、女の子として、写真を撮ってみない?」
という和歌子の提案に、啓二は、賛成した。

英二は美容院で、和風に髪を結ってもらい、少し化粧をして、
きちんとした着物を着て、記念の写真を撮った。
だれも、英二が男の子だとは思わなかった。
啓二と和歌子は、英二を、英子と読んでいた。



英二が、小学1年生になって、
クリスマスが近づいてきた。
英二は同じお願いを書いた。

英二が寝た後、
啓二と和歌子は、英二の女の子へのなりたがりは、
いつまで続くんだろうと考ええいた。
そのうち、プラモデルや、ゲームを欲しがるよ、と啓二は言った。
そうね。英二の女装は見られなくなるけど、そうなるわよね、と和歌子も思った。

ところが、英二は、2年生になっても、3年生になっても、
女の子の服を、サンタさんにお願いした。
3年生のときは、ちゃんと女の子の下着もくださいと書いてあった。

啓二と和歌子は、顔を見合わせた。
「いくらなんでも、来年4年生になったら、もう女の子の服は願わないよ。」
「そうね。4年生が、サンタはいないってわかる年頃だと聞いたし。
 今年が最後だと思って、盛大にやってあげましょう。」

この年、啓二と和歌子は、女の子の下着を買い、バッグと靴も買い、
外出用のおしゃれなドレスを買った。
そして、遊園地へ行ったり、レストランに行ったり、英二を喜ばせた。
大晦日まで、和歌子は、英二の髪型を毎日変えてやった。



英二は、4年生になり、クリスマスのシーズンが近づいた。
英二は、また、紙にサンタへのお願い事を書いて、
クリスマス・ツリーのところへ置いた。

英二が寝た後、啓二と和歌子は、その紙を見た。
すると、女の子のファッション画が描いてあり、
こんなデザインの服をください、と描かれてあった。

「どうしましょう。」と和歌子がため息をついた。
「こまったな。もう、女の子の流行りの服を意識しているよ。」
「もう、1年、やってやる?」と和歌子。
「来年は、やめると思うか?」と啓二。
「思わない。6年生になってもやめないと思う。」と和歌子。
「サンタさんなんか、ほんとうはいないんだって話そうか。」
「じゃあ、お父さんとお母さんが、買って、っていうわ。」
「そうだな。同じことだな。」と啓二は言った。

「私達の責任かもね。」と和歌子が言った。
「英二が幼いとき、英二の女装をおもしろがってちやほやしたのあたし達だもの。」
「そうだな。七五三の写真まで撮っちゃったな。
 あの次期に、女装への喜びを与えてしまったのかな。」
「そうかも知れない。ああ、どうしよう。」和歌子は頭を抱えた。
「学校での様子を担任の先生に聞きに行こう。」
「そうね。まだ冬休みに間に合う。」


つづく(つぎは、「学校での英二」です。)

高井忠志の超能力④「美加の後悔」後編

長いです。2つに分けようと思いましたが、後編なので、一気に投稿します。
読んでくださると、うれしいです。

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二人は、ソファーのある壁に向かって、横一に並んだ。
MCの合図で、
音楽がガーンと鳴った。
美加はポーズをとった。(決まったと思った。)
隣のおっさんの不恰好を見たくて、ちらりと見た。
すると、おっさんは、床に手をつけたような、大胆なポーズを決めていた。
美加は、目を見張った。
そのおっさんのポーズのあまりのかっこよさに、美加は度肝を抜かれた。

おっさんの背がぐんと高くなったように見えた。
また、音楽が、ジャーンと鳴った。
おっさんは、ポーズを変える。それも、身が震えるほどかっこいい。
美加は息を呑み、思わず見とれてしまった。
「美加、なにやってんのよ。」
「ポーズはどうした!」
回りの何人かがいった。

美加はあわてて、ポーズを取ろうとした。
だが、おっさんの、10分の1もかっこよくできない。
美加は、おっさんに圧倒され、立ちすくんでしまった。
その後、顔面蒼白になった。
横にいるのは、世界のスーパースター、マイルス・ジャクソンだ。
まさか、まさか、まさか…。
このクラブにお忍びで来ていたんだ。
だから、ダサイ格好をしてきた。
美加は、そう思った。

はっ。彼のポーズに合わせなきゃ。でも、どうやって?
あんなかっこいいポーズできっこない。美加は顔がいっぺんで上気するほど焦った。
音楽が進み、マイルスは、肩を揺らし、ものすごく切れのいい肢さばきで来る。
彼が迫ってくる。ああ、どう合わせればいいの?
美加は、ただ歩いて下がるのが精一杯だった。

彼は、美加の動揺を悟るように、ムーンウォークで下がり、フォローしてくれた。
当然、美加は、ムーンウォークで、ついていかなきゃならない。
でも、ムーンウォークで前に進むなんてできない。
だが何としても進んで、彼と並び、双子のようにロボット踊りをするんだ。
ロボット踊りなら得意だ。でも彼に比べたらその上手さは天地の差だ。
やれば、恥をかくだけだ。
それなら、やらない方がましだ。

みんなが見てる。あたしは、棒立ち。ああ、どうすればいいんだ。
彼が、美加の手を取りにきた。
え?どう動けばいいの。美加の不調法を彼が全部フォローしてくれる。
手をとる振りで、三回転をみせる。
美加は棒立ちだ。思わず頭を下げて、謝ってしまった。

「おい、美加、あれ謝ってんのかよ。なんだよあれ?」
そんな声が美加の耳に聞こえた。
美加はますます焦った。頭の中は真っ白だ。
彼の肩が波のように動いて、美加をさそう。
どう入っていけばいいの。波のようには入れない。

ああ、逃げたい。逃げ出したい。こんなことするんじゃなかった。
あたしはアマチュア。彼は、プロ中のプロ、
その中のプロ中のプロ、その遥か上に君臨する、世界のナンバー1。
自分が相手なんかできっこない。
だが、しかけたのは自分だ。何てことしたんだ。

美加は、深い後悔の中にいた。
天下のマイルスにあたしは、パンツを見せてからかったのか。
なんてことだ。ダサイ格好を見て、『コイツ』だの『エロ』だの言った。
お忍びで来ていることがわからなかった。
ああ、なんてことだ。後で、なんて謝ればいい。
ああ、こんなみじめな思いは初めて…。

美加が、後悔に暮れる間、美加は、ほとんど棒立ちだった。

あたしは、つけあがっていた。
こんなクラブのナンバー1ってだけで、いい気になってた。
ちんけなのはあたしだ。ダサいのはあたしだ。
ああ、恥ずかしい、恥ずかしくて、消えてしまいたい…。

回りの連中にはこう見えていた。
おっさんは、立って適当に体を揺らしている。
それなのに、美加は必死で不恰好に踊り、
自分で自分の肢を踏み、何度もおっさんにあやまり、
立ち往生し、顔を真っ赤にして、今にも泣き出しそうだった。

忠志は、これでは、美加があまりにも可哀相なので、
美加が見ている幻覚を、10秒だけ全員に見させた。
若者たちは、あ、と息もしないで、世界のスーパースターの踊りを見た。
受付で忠志を入れなかった若者も見た。彼も、固まってしまった。



美加はとうとう床に座りこみ、両手で顔を覆って、泣きだした。
音楽が止まった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。とても、ついていけません。
 あたしは、あなたにスカートをめくってみせたり、失礼なことをしました。
 あなたの格好を見て、バカにしました。

 あなたとダンスの勝負をして、あなたの不様をあざ笑うつもりでした。
 それなのに、あなたはあたしのミスを全部フォローしてくださった。
 何て優しいんだろうって思いました。
 比べて、あたしは、何て意地悪だったのだろうと思いました。

 あなたがダンスに負けたら、みんなで、袋叩きにして、
 外へ放り出すつもりでした。

 初めから自分が100%勝つと分かっているのに、
 無理やりダンスの勝負をさせました。
 何て卑怯だったんだろうと思っています。

 いざ、自分が負けてみて、
 自分のしたことの冷酷さや意地悪に気が付きました。
 約束です。あたしを好きにしてください。」

そこまで言うと、美加は、腕で顔を覆って、床に泣き崩れた。
ホールの誰もが、美加が謝っている理由を理解した。

忠志のテーブルを蹴った二人が、美加の横に来て両手をついた。

「俺たちも、あやまります。失礼なことをしました。乱暴なことをしました。」
「純粋に踊りを見に来ている方に、とんでもなかったです。すいませんでした。
 それと、美加の代わりに、俺を好きなようにしてください。お願いします。」

美加と若者の言葉を聞いて、みんなは、うなだれた。
みんな、自分は美加と似たり寄ったりだと思っていた。
ホールに、しーんとした空気が流れた。
みんな、忠志の言葉を、恐れながら、待っていた。

「ちょ、ちょっと待ってよ。」と忠志は言った。
「美加さんは、『みんなで好きにしようよ。』って言ったんだよ。
 みんなって、君たちでしょ。
 だから、美加さんをどうするかは、君たちが決めるんだよ。」
忠志はそう言った。

「そうか…。」
という声がして、30人達は、丸くなって、相談を始めた。
美加の代わりになるといった青年にリーダーシップがあるらしく、
彼を中心に、話し合っていた。
「私たち、美加と同じに悪いんだから、美加にどうにかなんてできないわよ。」
「俺たちだって、反省したし、美加だってあれだけ反省してんだから、もういいだろう。」
そんな声が聞こえた。



やがて、例の青年が先頭になって、全員が忠志に向かって正座した。
彼は、言った。
「俺たち、これから例え場違いな人が来ても、
 その人が真面目な人だったら、やさしく声かけて、
 ダンスが踊れなかったら、ていねいに教えます。
 ダンスが上手いからって、いい気になるのやめます。

 どんなに下手な人でも、楽しむことが大事だから、
 からかったりするのやめます。
 そして、ここを感じのいいクラブにします。

 美加は、もう十分反省してるし、俺たちも反省しました。
 だから、美加には何もしません。俺たちできる立場じゃないです。
 あなたに、ひどいことをしたことを、みんなであやまります。
 それで、許してくれたら、うれしいです。
 ごめんなさい。」
そう彼が言うと、みんなが頭を下げて、ごめんなさいと言った。

そのあと、みんなが、忠志の顔を見た。

「いいよ。」と忠志はにっこりして言った。

若者たちが、わあ~と喜んだ。

ホールにみんなのほっとした空気が広がった。

忠志は、美加の肩を取って、美加を立たせた。
「君は、ほんとはもっと踊れるってこと、わかってたよ。」と言った。
美加は、やっと明るい顔をした。
例の青年が来た。
「君は、リーダーシップがあるんだなあ。」と忠志は言った。
「いえ、とんでもないです。」と青年は言いながら嬉しそうだった。

美加は、震える手で、忠志に握手を求めた。
そのあと、全員が、忠志に握手をもらいに来た。

忠志は、みんなに惜しまれる中、ホールの外に出た。
入り口の青年は、「失礼しました。これから、服装で決めないことにします。」
と頭を下げた。
「時と場合ね。」と忠志は彼の肩を叩いた。

賑やかな渋谷の雑踏。
忠志はまた懺悔した。
<今日は、ハイレベルな念を使ってしまいました。ごめんなさい。>
そして、いつものように、安い焼き鳥の屋台の暖簾をくぐった。


つづく(次は、「職場ナンバー1の女性とデイト」)
      ※女装ネタ、まだ書けません。

高井忠志の超能力③「忠志クラブへ行く」前編

えー、女装物がなかなか思い浮かばず、高井忠志シリーズをもう少し続けます。
読んでくださると嬉しいです。女装は出てきません。すいません。

================================

ある冬の日。
忠志は、電車の中で、女性の脇の下を拝むことはできなくなった。
そこで、忠志は一度、夜中にやっている「クラブ」というところに行ってみたいと思った。
あそこなら、女の子達が、タンクトップや肩見せのドレスで踊っているだろう。
腕を上げる子もいるかもしれない。
それが、見たい。
動機は不純だったが、忠志は一度だけ行ってみることにした。

出かけた服装は、いつものくたびれたスーツに、ネクタイ、ダサイ眼鏡。
土曜の夜中12時に、渋谷へ行ってみた。
ケータイで調べた、まあまあのクラブを選んだ。

地下への階段を降り、ドアをくぐろうとすると、
店の若者が、
「ちょっと、すいません。」
と忠志を止める。
「何。」
「お一人ですか。」
「そうだけど。」
「ここ、男性のお一人は入れないんですよ。」
「どうして。」
「クラブの目的以外で入ってくる人いるもんですから。」
「どういうこと?」忠志は聞いた。

「例えば、女の子見に来るとか。」
(忠志の図星だったが、そんなことで引き下がれない。)
「女の子がいたら、見ちゃうだろう。」忠志は言った。
「それに、お客さん、クラブ来るんだったら、それなりの格好してもらわなくちゃ。」
「背広とネクタイじゃ、だめなの。
 どんなレストランでも、これで、OKだよ。」
「なんていうかな。今風なそれっぽい格好じゃないと、
 他のお客さんの中で浮いちゃうんだよね。」

そのとき、男女の二人連れが、忠志の横を通っていった。

「ほら、あんなふうに、今風なカッコじゃないとね。」
「そういう君は、どうなの?」
忠志は、少しだけ若者が、ステテコにランニングで下は下駄である幻覚を見せた。
「あ、うそ!」と若者はあわてた。
「その格好で、ぼくをダサいって言うわけ。」
「そ、そんなはずじゃあ…。」
「どっちなの、ぼくを入れるの入れないの?」忠志は聞いた。
「ど、どうぞ。入ってください。」若者は首をかしげながら言った。
忠志は入場料を払って中に入った。

中は、狭いコンクリートのホールで、
正面がガラス張りになっていて、DJがレコードを回している様子が見える。
すでに、30人くらい来ていて、みんな、MCの若者の声にあわせて、体を揺らし、
思い思いの踊りをしている。

回りは座れるようになっていて、小さな丸テーブルもあり、
そこでは、主に、男女の二人連れが体をくっつけあっていた。

来た甲斐があって、中央の女の子たちは、みんな肩見せの服を着ていて、
腕を上にあげて踊っている。
忠志は、回りのソファーに座って、オレンジジュースを頼み、
女の子の脇の下を鑑賞していた。

そのうち、ちょっと柄の悪そうな若者が2人で来た。
「おっさん、こんなとこ座ってなにしてんのよ。」と一人が忠志の隣に座って言う。
「若い子が踊ってるの見に来てんだよ。」
「はっきりいやー、女見に来たんだろ。」
「まあね。」と忠志は言った。
もう一人の若者が、反対の隣に座った。
「そういうスケベおやじ、店にはいらねんだよね。」
「そう、俺たち、白けんだよ。」
「そうなの?」忠志は言った。
「あったりめーだろうが。」
と右側のが、すごんだ。
「どこが悪い。」と忠志は言った。
左側のが、
「だいたいこのよれよれの上着はなんだよ。
 こんなダサイネクタイなんか締めてる奴はいねんだよ。」
「だから?」と忠志は言った。
「ふざけんな、てめー!」と左のがテーブルを蹴った。
ジュースがユカにこぼれ、コップが割れた。

MCの若者が、音楽にストップをかけた。
ほぼ、クラブの30人あまりが集まってきた。
「なによ、どうしたっていうの。」ある女の子が言った。
「このおやじ、気持ち悪りいんだよ。
 店にただ、女見に来やがった。」
「しかも、ダッセイ格好でさ。」
バーテンが来て、ガラスのしまつに来た。

奥から一番スタイリッシュな女の子が来た。
髪も長く、顔も可愛い。ここのマドンナだろう。
「なあに?」と回りに聞いた。
「このおやじ、キモイんだよ。店の女目当てできた。」
「大人しく座ってるだけじゃダメかな。」忠志は言った。

「確かに、キモイねコイツ。」とナンバー1娘が言った。
「ほら、女見たいんなら、見せてやるよ。」
とその娘は、スカートをまくって、忠志の顔前にショーツを見せた。
そして、得意そうな顔をみなに振りまいた。
回りが、ゲラゲラと笑った。
「店主を呼んでくんない。」と忠志はいった。
「今、用足しに行って、いねーよ。」誰かが言った。

集まっている全員がにやにやしている。
誰一人でも、助けてくれないのか。
今外に出ていってもいいけど、やられっぱなしも悔しい。

「おっさん、エロなら、あたしが相手してやるよ。
 踊れんだろう。」
とナンバー1娘が言う。
「おい。美加、本気かよ。」とだれか。
「本気よ。おっさんが踊れなかったときは、みんなで好きにしようよ。」
美加がそういう。
美加は、踊りでおっさんをキリキリ舞いさせてやるつもりだった。
「ぼく、踊れないけど。」忠志は言った。
「だったら、こんなとこくんじゃねーよ。だた、女見に来たじゃ、帰せねーよ。」他の男が言った。
「そうだ、そうだ。」とみんなはニヤニヤしながら言った。
そして、忠志と美加のために、みんなは、真ん中にゆったりのスペースを作った。

忠志は、また神様にごめんなさいをした。
忠志は、美加だけに、忠志が、世界で一番踊りの上手いスーパースターである幻覚を用意した。
「美加さんは踊りがうまいの。」忠志は聞いた。
他の誰から、ナンバー1だよとの声。
「そうなの、ナンバー1なんだ。」
「まあね。」美加は言った。
「このダサイおっさんについて来れる?」忠志は聞いた。
みんなが、ゲラゲラ笑った。美加もくすりっとしてにやにやした。


つづく(次は、「美加の後悔」後編 です。)

高井忠志の超能力②「生意気なギャルをこらしめる」後編

忠志は、さっきから腸が煮えくり返る思いで見ていた。
忠志は、超能力を使う気にとっくになっていた。
だが、どんな幻覚を見させるのが、一番のお灸になるかと、考えていた。

忠志は、考え、二人のギャルに、若者が、やくざの大親分に見えるよう念をかけた。
えい!
そのとたん、ギャル二人ははっと顔色を変え、立ちすくんだ。
二人とも、恐怖に体をぶるぶる震わせている。
大親分は、やおら身を起こした。
「こっちが黙ってりゃ、好き勝手なことをしてくれたな。」

二人は、電車の床に土下座をした。あまりの恐怖に声がでない。
「お前らの尻をなでたのはよ、さっき出ていった高校生のラケットの柄なんだよ。
 それを、俺がやったと、よく言ってくれたもんだ。
 これだけの人の前でよ。

 さあ、お前らをどうしようかな。
 俺の急所を2度も、蹴りやがったからな。
 それに、お前の汚ねえあそこで俺の顔に座りやがった。
 あんまりにおいが強烈なんでな、気が遠くなったぜ。
 人の顔に乗りたけりゃよ、ちったあ綺麗に洗っとけよ。」

「すいません。すいません。」とギャル2人は、土下座をしたまま、必死で謝った。

「今頃謝っても、おせえんだよ。
 これから、俺の事務所へ来いや。
 まず、お前らを丸坊主にしてやろう。
 それに、レーザーをかけ、永久脱毛して、二度と髪が生えないようにしてやろう。
 口の中の歯を、全部抜いてやろう。総入れ歯にでも勝手にしろ。
 ゆびを、2、3本もらおう。それを食わせてやる。
 それと、耳を削ぎ落とし、鼻も削いでやろう。
 そのくらいで勘弁しとくか。

 俺を、それだけの人間と知りながら、
 お前らは、俺を、散々いたぶってくれたわけよ。
 お前らほど、度胸のいいメスは見たことがねえ。
 いいか、次の駅で、降りるぞ。
 覚悟はいいな。」

ギャル2人は、二人とも余りの恐怖に失禁していた。
声を押し殺したように泣きはじめた。

「泣いてる場合じゃねえ。
 お前らが漏らしたションベンの始末、すぐにしろい。」

「は、はい。」
その声に、二人は、着ていたキャミソールを脱いで、
それで床を拭いた。
キャミだけではたらなかった。

「ちゃんと拭けい!」
そういわれて、二人は、ショーパンとミニスカを抜いで、それでふいた。
下半身の下着はすでにびしょびしょである。

「下着姿じゃ、連れて行けねえ。早くそれを着ろ。」
二人は、小便でぬれた上下の服を着た。

忠志は、そこで、2人への念を解いた。
念が解かれても、恐怖の余韻は十分に残っていた。

二人は、若者に、
「すいません。すいません。」と土下座をして言い、
二人で若者を立たせて、服の汚れたところをはたいた。
そして、バッグの中のものを戻し、若者に差し出した。

若者は、なんのことだか、さっぱりわからない。
「ありがたいけどさ、あんたたちの手、オシッコついてるんじゃない?」若者は言った。
二人のギャルは、はっと下がり、土下座をして、
「失礼しました。お許しください。」とはいつくばった。

「なんか、全体に、君たちオシッコ臭いよ。あんたたち。オシッコ・マニア?」
若者は言った。
「はい、そうです。オシッコついた服着ると萌えます。」と二人は言った。
「そんなのあるの。変わってるね。
 でも、こんなところでやるもんじゃないよ。臭うから、隅っこにいた方がいいよ。」
若者はそう言って、次の停車駅で降りていった。

二人のギャルは、床にへたばり、
「あたいたち、許してもらえたのかなあ。」と一人が言った。
「あれだけのこと、しちゃったのに?」
「だって、降りて行っちゃったよ。」
「うん。そうだね。許してくれたんだ。」
二人はそう言って、床に座ったまま抱き合ってわあわあ泣いた。

それからの二人は、電車の隅にしゃがんで、猫のように大人しくしていた。

あの二人は、もう生意気をやめるだろうと、忠志は思った。
ギャルの格好をするのは自由だ。忠志自身そういう女の子にも萌える。
思い上がりと生意気さえ止めれば、可愛い子なのに。

忠志は、毎度のこと。超能力を使ってしまったことを懺悔した。
<ああ、神様、すみません。しかし、ぼくは、我慢ができなかったんです。>
そう、心で言って、何事もなかったように、新聞を読みはじめた。


<おわり>(次回は、「高井忠志クラブへ行く」です。)
       ※女装ものが、まだ書けません。

高井忠志の超能力①「生意気な2人のギャル」

とうとうネタ切れとなり、最後の手段、私がいたずらに書きました、超能力ものを投稿します。
暴力や、不快な言葉がでてきます。おまけに女装は出てこないんです。
すいません。次のアイデアがうかびましたら、それに移ります。

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高井忠志は、超能力の持ち主だった。
それは、人の意志や感情を意のままにに操れるというものだった。
また、相手に幻覚を与えることができた。

忠志は、平凡な公務員だった。
仕事以外のときも、たいていくたびれたスーツを着てよれよれのネクタイをしている。
流行遅れのメガネをかけ、中肉中背。
リクルートヘアー。
何の特徴もない、街を歩いていると、人ごみの中に溶け込んでしまう、
どこにでもいるような容貌とスタイルをしている。

忠志は、その能力を最大限に発揮すれば、
日本を転覆させることもできるかもしれなかった。
例えば、国会の総理大臣の答弁で、嘘を言わなくさせ、本音を言わせる。
これは、大変な騒ぎになるだろう。

しかし、忠志は、懸命な人物であった。
自分の能力を、ほんのわずかな場面で、
少ししか使わなかった。

もう一つ、忠志には弱みがあった。
彼は、女性の脇の下をみると、欲情してしまう。
言わば、「脇の下フェチ」だった。

*    *    *

夏。
この季節は、忠志にとって最もうれしい季節であると共に、悩ましい季節であった。
女性の服が薄着になる。肩見せの服を着た女性が腕を上げると、脇の下が見える。
綺麗な脇の下をみると、忠志は欲情してしまい、
必死に理性を保とうとするのに懸命となった。

ある日曜日の午後2時頃、休みの日だというのに、
忠志は、スーツにネクタイを締めて電車に座っていた。
忠志は女性の脇の下を見たいがためにそこにいた。
他に何の目的もない。
電車は思いのほか混んでいた。
忠志は、自分の目の前に、好みの女性が来て、
つり革につかまり、脇の下を見せてくれることを願っていた。

その日は、なかなか忠志の好みの女性が来て、
ノースリーブの脇を見せ、つり革につかまってはくれなかった。
忠志は、環状線をぐるぐる2周も回っていた。

ある駅から、二人のギャルと見える子が乗って来た。
二人は、座席に座らず、ドアとドアの中央のスペースに立ち、
ガムを噛みながら大声で話していた。

車内を我が物顔で、ゲラゲラと笑い、大声を止めなかった。
一人は、デニムのショーパンを履き、綺麗な長い肢を見せている。
もう一人は、赤い皮の超ミニのスカートを履き、同じく長くて綺麗な肢を見せていた。
上着は二人ともキャミソールで、金色に染めた髪をくるくるとカールさせ、
胸にはジャラジャラとアクセサリをぶら下げていた。

忠志は、まったく場を心得ぬギャルだと思いながらも、
二人にある種のセックスアピールを感じていた。
濃い化粧の裏に、可愛い素顔がうかがえた。
二人のギャルは、プロのモデルででもあるのか、スタイルは抜群であり、
自分たちを見る男は、みんな自分たちに欲情するだろうとの自信を見せているようだった。
そんな自分たちは、何をしても許されるのだ、
そう勘違いでもしているのか。



ある駅で、多くの乗客が降りた。
そのとき、忠志は見た。
テニス部であるような高校生が下げているバッグから、
テニスラケットの柄が出ていて、
その柄が、二人のギャルのお尻を撫でていった。
高校生は、それを知らぬままに降りて行った。

ギャル2人は反応した。
運悪く、その後ろに立っていたのは、
小太りで、メガネをかけ、肩から大きなバッグを下げ、
一見オタクをイメージさせる若者だった。

「痴漢だー!」とショーパンのギャルが、叫んだ。
「こいつ!」とミニスカが、青年をにらんだ。
「ぼ、ぼくは、知らないよ。高校生がラケットの柄で君らのお尻を撫でていったんだよ。」
若者は言った。

「いい訳すんじゃねえ、てめえ。」とミニスカが言った。
(忠志は、女の子の言葉遣いに幻滅していた。)
「ちがうよ、ぼくは何にもしてない。」と若者は言った。
「ざけんな!」とショーパンが、若者のお腹を、自分のピンヒールで思いきり蹴倒した。
若者は、その痛さに、そのまま後ろに倒れた。
そして、仰向けになった若者を、二人のギャルは、ピンヒールで何箇所も踏んだ。

若者の股間をヒールで踏みながら、
「どうだ、お姉様に、こうされてんだろう。」
「お前は、そういう顔してるよ。」
「このM野郎。」
若者の布製の入れ物から、中のものがはみ出していた。
ギャルたちは、それを手に取り、
「なんだコイツ、フェチじゃね。おい見てみろよ。」と一人が相棒に見せた。
「おお、コイツ、ミニスカ・フェチかよ。
 じゃあ、あたいたちがしたこと、コイツ喜んでたんだよ。」
「じゃあ、こんなのもされたいか。」
と、ミニスカのギャルは、若者の顔の上に、自分の下腹部にあたる部分を擦り付けるようにまたがった。

「おい、どうだ、コイツ興奮してるぜ。江里、確かめてみな。」
江里というショーパンは、若者のズボンのベルトを解き、トランクスに手を当てた。
「ちょっと、反応あり。
 なんだよ、これじゃあ、あたいたち、コイツにサービスしたようなもんじゃん。」
「あははは。」
と二人は、まだ床に寝転がっている若者をあざ笑った。

「ふざけんじゃねんだよ。」ショーパンが、若者の股間を思いきり蹴った。
「楽しんでんじゃねーぞ、こら。」とミニスカがもう一発、同じところに蹴りを入れた。
若者は、急所に2発の蹴りを受けて、
苦しそうに、局部を押さえ、うつむきになって、苦しみはじめた。

車内は、すいているというのに、誰も若者を助けない。
悪いことに、電車は急行で、長い間次の駅につかなかった。

忠志は、さっきから腸が煮えくり返る思いで見ていた。
超能力を使う気にとっくになっていた。
だが、どんな幻覚を与えるのが、一番のお灸になるかと、考えていた。


つづく(次回は、後編です。)

幼な顔の亮太・第二部③「エルちゃんに会う」最終回

亮太の大学生活は、亮太が思っていたより、
ずっと、スムースにいった。
亮太を見て、男だと思う学生はまずいなかったし、
授業では、「近藤涼子さん」と呼ばれるので、
だれもが女の子だと思った。

亮太は、メイクが日に日に上手になったし、
女の子として必要なものも次第にわかってきた。
たまに自分のことを「ぼく」と呼んでしまうときもあったが、
それは、十分ご愛嬌で通った。

亮太はブログを毎日更新していた。
自分の女の子スタイルも、本人とわからない程度に載せた。

5月のゴールデン・ウィークのとき、
亮太は、ブログ友の「エル」という女の子と、実際に会う約束をした。
エルは明るく、いつもポジティブで、いいアイデアをいつもくれる。
亮太と年も同じ。
ブログの中でも、人気者だった。

亮太は、エルにメッセージで、メールアドレスを教えた。
そして、会うことになった。
会う場所は、エルの方から指定してきた。
○○駅の駅前ビルの11階のレストランの景色が見える奥のテーブル。
亮太は、エルの指定が、詳細過ぎると少し思った。
『なんで、そこなのかな?』

昼をいっしょに食べる約束で、12時の待ち合わせだった。
亮太は、15分前に行って待っていた。
エルは素顔で行くと言っていた。
だから亮太も素顔にし、ジーンズに長袖のTシャツを着て入った。
こうなると、亮太は、性別不詳の小学生が中学生に見えてしまう。
でも、エルが、お互い素顔で会いたいということだと思った。

12時が近づき、レストランの入り口に、母と娘の二人が入ってきた。
娘は小学生4年生くらい。お母さんは、娘の肩をしっかり抱いていた。
そして、二人は、亮太の席にゆっくり向かってきた。
娘の方は、エルちゃんだと思った。
娘は、亮太を見て、少し笑顔を見せた。
四角いテーブルの亮太の迎えにお母さんは、エルを座らせ、
「もう、平気?2時間したら、また迎えにくるから。」と言った。
「お、お母さん、あ、ありがとう。あ、Rくんがいるから、もももう平気。」
とエルは言った。
お母さんは、亮太に、「よろしくお願いします。」と言って、去っていった。

エルは、座りながら、少し震えているようだった。
そのエルは、ブログの中のエルとまるで違っていた。
亮太は、どうしてエルがこの場所を指定したか、わかる気がした。
人が少なく、回りの景色が見える。広くて、空気が動く。
亮太も、狭く、閉じ込められたような場所が恐いことがあった。

「あ、Rくん。こ、こ、これが、ほ、ほんとうのあたし。」エルは言った。
「うん。わかった。辛い思い、たくさんしたんだね。」亮太は優しい目を向けてエルに言った。
エルは、亮太を見つめて、涙を流した。
「うん。た、たくさん、つ、辛い思いした。
 あ、Rくんなら、わ、わかってくれると、お、思って、あ会いたかった。」
エルの思いが、つたわり、亮太も涙を流した。

ウエイトレスが注文を取りに来た。
エルは、やっとの思いで、オムライスを注文した。
亮太も同じにした。

「ぼくね、ブログに書かなかったけど…。」
そういい始め、亮太は、学生証を作りに行った日のことを話した。
「そ、それ、悲しい、ど、どうやって耐えたの?」エルが聞く。
「エルちゃんのアドバイス読んだんだ。
 女の子になっちゃいなって。
 そうしたら、メイクができるからって。
 そうか…と思って、希望が湧いた。エルちゃんのおかげだよ。」
「ほ、ほんと?あ、あたし、うれしい。
 あ、あたし、ブログだと、ど、どもらないし、人が恐くないから、ち、ちがうあたしになれるから。」

「ぼくは、ブログのエルちゃんが、ほんとうのエルちゃんだと思う。
 とっても頭がよくって、前向きで。」
「そ、そんなことない。ひ、人が恐くて、た、たまらない。ひ、一人で、外に、い、行けない。」
「うん。わかるよ。そうなって当然だよ。でも、治るさ。
 エルちゃん。ぼくは、高校に入るとき、ピンチだったんだ。
 知らない人に大勢会うのがものすごく恐かった。子供に見られるのが、死ぬほど辛かった。」

「あ、あたしも同じ。」
「で、高校が始まって、思った通り、最悪になって、中学からのことも全部思い出して、
 パニックになって、学校に行けなくなりそうだった。」
「ど、どうなったの?」
「偶然、ある言葉に出会って、乗り越えることができた。」
「ど、どんな言葉?」エルは身を乗り出した。

「『過去は、過ぎ去ることしかできない。
  だから、過去は、もう君のそばに来て、君を脅かすことはできない。』」

亮太はそう言った。
エルは、はっとしたような顔をして、言葉を唇で何度も唱えた。
「過去は、過ぎ去ることしかできない。
  だから、過去は、もう君のそばに来て、君を脅かすことはできない。」
エルは声に出して言った。
あああ…と言ってエルは、両手で顔を覆い、その言葉を呑み込むようにした。
「いい言葉ね。その通りだわ。その通り、その通りよ。
 あたしの辛さが、半分になる。もう、あたし、過ぎた辛いことを思い出すの止めるわ。」
エルは言った。

亮太は、うれしさいっぱいの顔で、エルを見ていた。
「エルちゃん、言葉が治ってるよ。」亮太は言った。
エルは、はっとした。
「うそ。ほんとだ。あたし、どもってない。あいうえおかきくけこ。
 ほんと?あたしの言葉治っているの?」
亮太は、やさしい顔をして、エルを見てうなずいた。
エルは、いろんな言葉を口にして、どもっていないことを確かめた。
そして、ぽろぽろと涙をこぼした。

「エルちゃん、続きがあるんだ。」
「何?教えて。」

「『未来はまだやって来ていない。やがて、君を通り過ぎて、一瞬で過去になる。』」亮太は言った。

「ああ、意味わかるわ。例えば、前から人が来るでしょ。あたしは、勝手に、子供に見られるかなと心配する。まだ、変な顔されてもいないのに。やがて、その人が本当に変な目であたしを見たとする。でも、その人が通り過ぎたら、もう過去のこと。過去は、もうあたしのそばに、やって来られない。
つまり、まだ来ていない未来のことを先回りして心配するな。」
エルは言った。
「そう、その通りだよ。これで、未来も恐くなくなる。」
「そうね。この2つの言葉で、完璧だわ。
 ああ、うれしい。あたし、Rくんに会ってよかった。」

エルはそう言って、席を立ち、亮太の方に来た。
亮太も、立った。
エルが、涙を浮かべ抱きついてきた。
「Rくん、ありがとう。」
「よかったね、エルちゃん。ぼくもうれしい。」
亮太はそう言って、エルを抱きしめた。
レストランで抱き合っている2人の小学生。
回りはどう見ただろうか。
そんなこと、今の二人には、どうでもよかった。


<第二部 おわり>

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《エピローグ》

レストランの中で、二人でキャーキャーワーワーと話しが盛り上がっていた。
「Rくん。あたし、人も恐くなくなった気がする。」とエル。
「ほんと?」亮太は目を輝かせた。
「なんか、甘いもの食べよう。あたし、
 あそこのウエイトレスさんのところ行って、メニューもらってくる。」
「わあ、できたらお祝いだよ。」
「多分、だいじょうぶ。」
エルはそう言って、席を立ち、ウエイトレスさんのとことへ行って、メニューをもらってきた。
「どうだった?」と亮太は身を乗り出して聞いた。
「できた。全然怖くなかった。あたし、今、いろんな人に話しかけたい気分。」
「すごい。エルちゃん、これお祝いだよ。」と亮太はうれしくてたまらなかった。
ウエイトレスさんが、注文を取りに来た。
「Rくん何にする。」
「ぼく、ソフトクリーム。」
「あたしは、ニューヨーク・チーズケーキと紅茶。」
エルはすらすらと言った。
オムライスをはじめに頼んだときと、大変な違いだった。
「Rくん。あたし、対人恐怖も多分、一気に乗り越えたみたい。」
エルがちょっと恥ずかしそうに言った。
「きっと、そうだね。」
「ああ、早く母と父に伝えたい。」
「そうだね。」

二人はそれから、大人に見える化粧法の話しで盛り上がっていた。

そうしているところにお母さんが来た。
「あ、お母さん。」とエル。
「絵里、そろそろ帰らないと、電車が混んでくるから。嫌でしょ。」とお母さん。
「そうね。でも、あたし、多分平気だよ。」とエル。
「そんなこと言ったって…。」
そこまで言って、お母さんは、エルを見た。
「絵里、まさか…あなた。」とお母さんはエルを見つめた。
エルはお母さんを見て、うなずいた。
「絵里、治ったの?何か言って。」
「お母さん。あたし、治ったの。人も平気になった。今まで心配かけてごめんなさい。」
エルは言った。
お母さんは、エルを見つめたまま、口に手を当て、ぽろぽろと涙をごぼした。
「絵里、絵里、ほんとなのね。治ったのね。」
「そうよ、お母さん。Rくんが治してくれたの。」
エルは椅子から立って、お母さんと抱きあった。
「ああ、夢じゃないかしら。うれしい。お母さん、うれしい。」
お母さんは、エルを抱きしめた。



「お父さんにも知らせたいから、早く帰りたい。
 Rくん。ごめんね。だから早く帰る。」エルは言った。
「うん。一刻も早く帰って。今度、ゆっくり会おう。」亮太は言った。

エルのお母さんは、亮太に何度も頭を下げて、レストランを出て言った。
亮太は、エルのお父さんが喜ぶ姿を思い浮かべ、
幸せいっぱいな気持ちで、二人を見送っていた。



幼な顔の亮太・第二部②「18歳に見えた亮太」

「さあ、今朝から女の子だ!」
と亮太は気合を入れて起きた。
そして、女物の下着をつけ、胸にパッドをいれ、
典子からもらった、ブルーのワンピースを来た。
ワンピースは、お腹のあたりまでの白い前ボタンで、
胸がVに重なり、シャープな衿のついた、大人っぽいものだった。
典子はそこまで考えてくれたんだなあと思った。
メイクをしていないのに、それだけで、5歳くらい年上になった気がした。

トーストを食べて、それから、時間が来るまでまって、
10時に間に合うように、家を出た。
肩のバッグも、白い靴も、典子のボストンバッグに入っていたものだ。



10時に、典子のマンションに来て、チャイムを鳴らした。
すぐに扉が開いて、典子が顔を見せた。
典子は、ベージュの膝下のワンピースに、レースのボレロを着ていた。
大学でのきりっとしたスーツと違い、やさしくやわらかい感じがした。

2LDKだろうか、明るいマンションだった。
「いらっしゃい。女の子で外に出るの、これがはじめてじゃない?」と典子が言った。
「あ、そうか。まだ女の子っていう自覚がなくて、男丸出しで歩いて来ちゃった。」
と亮太は言った。
「大丈夫。涼子さんのその格好見て、男の子と思う人いないと思うわ。」と典子は言った。
亮太は、「涼子さん」と呼ばれて、また、「あ、そうか。」と思った。

明るいソファーで、コーヒーをいただいた。
亮太は、ボストンに入っていたもののお礼を言った。
典子は、「いえいえ。」と言うばかりだった。



早速、メイクの研究を二人でした。
典子は、亮太をストールに座らせ、さっと、亮太の髪に髪バサミを入れて額を出した。
「結局、ポイントは、頬に影をつけて顔を細長く見せることと、シャドーを落ち着いた色にすることと、
 目を、横長に見せる、目蓋を立体的に見せることだと、あたしは理解したの。」
典子は、亮太がもらったプリントと同じものをもっていた。
「あ、ぼくもそう思いました。でも、グラデーションとか、むずかしそうでした。」
「そうむずかしくないの。3段階に暗いシャドウをつけるだけ。こんなふうに。」
典子は、亮太が持ってきた番号つきの化粧品を亮太に確認させながら、頬のグラデーションを作った。
「なるほど、ぼくにもできそう。」
「あたしにも…でしょう。」
「あ、そうですね。あたしにもできそう。」
亮太は、右頬をやってみた。
「あ、2歳くらい年上になった感じですね。」
「そうね。」と典子は嬉しそうだった。

それから、目の一番むずかしいメイクをした。
マスカラを目尻の上に流すようにする。
目蓋に、さっきのグラデーションをつける。

チークは、高い位置に、斜め上に跳ね上げる。
鼻の両脇に、ブラウンのシャドウを極薄く。

リップは、オレンジ系にして、グロスで華やかにする。

髪ばさみを下ろし、ヘアを整える。
美容師さんにやってもらった、大人に見えるヘアー。
頬のカールを、くしゃくしゃっとして、可愛くする。

出来上がり。

「わあー。」と亮太は言った。
「ほんとだ、ちゃんと18歳に見える。」と典子。
「ああ、ぼく、うれしい。典子さんありがとう。」
亮太は、鏡を見ながら、満足でいっぱいだった。
年齢相応に見えたのは、生まれて初めてだった。



「ちょっと早いけど、お昼にしましょうか。
 あたし、お料理得意なのよ。」と典子がいう。

「あ、すいません。いただいていきます。」

典子は、特別においしいスパッゲッティーをつくってくれた。
「ほんとだ、にんにくがすごく効いてて、おいしいです。」亮太は言った。
「明日、日曜日だから、大丈夫でしょう。」
「そうですね。」

食事中、典子は、亮太に、10枚くらいを閉じたプリントをくれた。
「あたしね、メイクだけじゃなくて、亮太さんは、涼子さんになるじゃない。
 だから、女装に関する資料をあつめたの。
 あたしの知らないこともたくさんあった。ちょっと女のあたしにははずかしいのもあるけど。」
典子はそう言って笑った。
亮太はそれを見ながら、
「あ、これでしょう?『女の子に見える、ショーツの履き方』」
「ええ、それそれ。けっこう大事かもしれないわ。」典子はおかしそうにしている。
「へーえ。これすごい。水着を着ても大丈夫だって。
 あ、こっちは、痴漢にあっても、だいじょうぶ、だって。」
「涼子さん、お家でやってみて。ここでは、しないで。」
「ここではしませんよ。」
と二人で笑った。


つづく(次回は、「エルちゃんに会う」最終回です!)

幼な顔の亮太・第二部①「典子がくれた物」

女の子になるために、いろいろ買ってきたものの、
実際それらを身に着けてみると、足りないものにたくさん気が付いた。
まず、靴。そして、バッグ。雨の日の傘。
同じ服を続けて着ていけないので、服は複数いる。
寒い日のためのコート。
ああ…と亮太は気が遠くなるようだった。
明日から、大学だと言うのに。
だが、明日は、履修科目を決める日なので、授業はない。
なんとか、明日一日、凌ごうと思った。

そのとき、大学の学生課の課長から電話があった。
とれなかった学生証の写真をとりたいから、
午前の9時に学生課に来て欲しいということだった。



翌日どうにかこうにか女の子の格好をして、学生課に行った。
あのときの典子が来たので、亮太はあえて笑顔を見せた。
典子は、その笑顔に救われたような表情をした。
「涼子さん。」と典子に呼ばれた。
あ、今女なんだっけと思い出した。

亮太は写真を撮られ、しばらく待たされた。
呼ばれて、課長のところへ行くと、
仮の学生証をくれた。
写真入で、きちんとパウチされていた。
それを見て驚いた。
名前が、「涼子」となり「女」となっていた。

課長は言った。
「正式な学生証は、後で郵送します。
 それには、本名と性別は、男子となっています。
 しかし、その仮学生証は、1年使えますので、使ってください。
 今、学内の表向きの事務処理は、すべて、涼子さん女子として登録してあります。
 ですから、今日の履修届けも、涼子さん女子で行ってください。
 各講座の学生名簿は、すべて涼子さん女子として記載されます。
 ですから、今後テストなどでは、女子名を書いてください。
 しかし、内部的には、亮太さん男子に変換されますので、
 成績表などは、本名で打ち出されます。
 でも、それは、誰にも見られないものなので、差し支えないと思います。」

「そうですか。それは、すごいです。ありがとうございます。
 ああ、じゃあ、女の子になりきらなくちゃいけませんね。」
と亮太は笑って言った。

そのとき、典子が、膨らんだボストンバッグを持ってきた。
「あの、これ妹のお古で申し訳ないんですが、衣類や小物が入っています。
 妹は、涼子さんと背が同じくらいなので、当座、役に立つかと思って持ってきました。
 いらないものは、捨ててください。受け取っていただけますか。」
「あ、それは、うれしいです。昨日買い物したのに、足りないものにたくさん気が付いて困っていたんです。ありがたく頂戴します。ボストン・バッグは、明日お返しします。」
亮太は、うれしそうにして、お礼を言った。
典子は、やっと安心した笑顔を見せた。
「重いでしょうから、帰りに持って行ってください。」と典子は言った。



課長が言ったように、履修届けは、女子名で、すいすいと通って行った。
そのたびに、亮太は、自分は女子だという気持ちにどんどんなって行った。
禁断の地であった、女子トイレも入った。
幸い人がいなかった。
ピンク系で明るい。いいなあと感慨深いものがあった。



履修届けを済ませると、亮太は、ボストンバッグをもらいに行って、マンションに飛んで帰った。
典子がくれたボストンバッグの中が見たかった。
中を開けて感激した。
靴3足、各種下着、パジャマ、ワンピース3着。
典子は、妹の古着と言っていたが、それらは、値札は取ってあるものの、
どうみてもみんな新品だった。
典子が買ってくれたのだと、亮太は思った。
そのほか、女物の折り畳み傘、お風呂で使う、ヘアカバー、シャンプー、リンス、
その他その他、亮太が気が付くもしないものが、どっさり入っていた。
典子は、昨日の勤務のあと、これらのものを、すべて用意してくれたのだと思った。

中で、亮太が一番感激したものがあった。
ネットのあるページをプリントしたもの。
「大人っぽく見せる化粧法」と題されたプリント。
絵と図があったが、化粧品や道具の名前がわからなかった。
ところが、あるビニール袋を開いてみると、化粧品がどっさり入っていた。
よくみると、どの化粧品にも、番号のついたシールが貼られている。
そして、プリントに登場する化粧品、化粧道具に手書きの番号があり、
説明書の番号と化粧品の番号が対応している。

それは、典子がネットで打ち出したプリントを見て、
そこに登場する化粧品や化粧道具を全部買いに行ってくれたのだ。
そして、夜遅くなるまでかかり、番号をつけてくれたにちがいない。
亮太は典子に感謝した。胸が熱くなる思いだった。

バッグのものを全部出したとき、手紙が入っていた。
典子からだった。
中を読んでみると、昨日のお詫びの後、
明日の土曜日、メイクの仕方でわからないことはお手伝いしますから、
私のマンションにいらっしゃいませんかと書いてあった。
典子は一人暮らしなので、誰にも気がねはいらないとのことだった。
そして、メール番号、典子のマンションの地図、電話番号が書いてあった。

亮太は、体育館で、典子に辛い思いをさせられたが、
本当は、典子のような女性が好きだった。
すらっとしていて、知的で、美形で、ショートな髪型もステキだった。
その典子の部屋にいけるなんて、亮太はドキドキしてしまった。
亮太は、早速メールを送った。
品物のお礼を書いて、明日、10時に行っていいかと送信した。
典子からすぐ、OKの返事が来た。


つづく(次回は、「典子のマンションに行く」です。)

幼な顔の亮太③「4人の訪問」第一部最終回

今回は、とても長くなってしまいました。すいません。一応、第一部・最終回です。

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午後2時ごろ、
自分のマンションに帰った亮太は、しばらく呆然としていた。

ネットを開いて、自分のブログを見ていた。
さっきあった辛いことをブログに書こうと、
長らくスクリーンを見つめていた。
思い出すたび泣けて来る。

だから、その前に、これまで、同じ悩みを持つ人からの言葉を、
何回も読んだ。
「R」というのが、亮太のハンドルネームだった。
亮太は、「エル」とういう女の子に特に親しみを持っていた。
エルも今年から大学生だ。

エルはある日のコメントで、こう書いていた。
『Rくんも、女の子だったらよかったね。
 女の子なら、メイクで大人っぽくできるから。
 Rくんの写真見てて思ったんだけど、
 (怒らないでね。)Rくんは、女の子にも見えるから、
 思いきって、女子学生として、通っちゃえばいいんじゃないかな。
 髪だって今長いし、美容院へいって、女の子風にカットにしちゃいなよ。
 悪くないと思うよ。』

このエルの言葉が、ずっと亮太の胸に残っていた。
亮太は、いままで、何度か、女の子になりたいと思ったことがある。
女の子なら、幼く見られても、あまり恥ずかしくない気がした。
考えて見ると、自分が今までしてきた遊びは、女の子のものが多かった。
自分が、女の子の心を一部分持っていることを自覚していた。

今日の出来事で、大学を諦めるのは、家族をもがっかりさせる。
それは、できないと思った。
でも、このままでは大学に通う自信が湧かない。
しかし、女子学生としてなら、通える気がする。
自分の声も女の子のものだ。

亮太は、決心が鈍らないうちにと、美容院へ行った。
ブログには、まだ何も書かなかった。
女の子になれたとき、そのことを書こうと思った。

亮太は、美容院へ行った。
「そして、女子学生に見える髪形にカットしてください。」
と美容師に頼んだ。
「あなたは、おいくつ?」と年を聞かれた。
「恥ずかしいけど、19歳です。」
「そう、お若く見えるわ。じゃあ、大人っぽくしましょうね。」
美容師は、鋏をふるった。
全体を7:3に分け、一部を前髪にした。頬の辺りからカールを少し入れた。
ちょっと大人っぽくて、可愛い女の子の髪型になった。
「眉を整えますか。」と美容師は言った。
「お願いします。」と亮太は答えた。
眉を整えた自分の顔に、亮太は満足した。

「あの、これで、女の子に見えますか?」と亮太は聞いた。
「あら、男の方だったの?あたし、ずっと女の方だと思って、カットしてましたが。」
と美容師は、笑った。

亮太は女の子になるための服や下着、コスメを買ってマンションに帰ってきた。

すると、マンションの入り口に4人の人が立っていた。
典子が、学長に合図を出した。

学長は、亮太の方へ一歩出て、
「近藤亮太さんですね。成華大学学長の白海圭吾です。
 今日は、大学職員江原典子が、あなたにしました許し難い言動に対し、
 4人そろって、お詫びに来ました。」

亮太は腰を抜かすほど驚いた。
入学式で全体に話をした、あの学長だ…とあわてた。
「あ、あの、お待ちになってらっしゃったのですか。」
「はい。3時ごろからおります。」と学長は言った。
「わあ、じゃあ、一時間も。
 狭いところですが、お上がりください。」と亮太は言って、部屋に案内した。
ダイニングのテーブルが5人用だったので、座ってもらった。

4人は、一人一人名乗った。
学長が言った。
「本日は、亮太さんに、近藤が、信じ難い無礼な言動をし、あなたを侮辱し、傷つけました。
 あなたの心の打撃、屈辱に対し、お詫びする言葉もありませんが、ただ、こうして頭を下げることで、亮太さんのお怒りが少しでも慰むものならばと、お詫びに上がりました。
 我が大学の職員のしましたこと、実に申し訳なく、今後このようなことがないよう、学長として指導監督に努めます。このとおりです。」

そう言って、4人は、頭を下げた。

その後、典子が、涙ながらに、謝罪した。
典子は、話しながら、声が嗚咽となってしまい、反省の程がうかがえた。

亮太は、これほどまでの謝罪をしてくれるとは、夢にも思わなかった。
怒りは、消えた。
そして、これから女子として大学へいくことで、希望を見出していたこともあり、寛容になれた。

「あの、もう十分です。頭を上げてください。
 学長先生まで、歩いて来てくださっただけで、感激です。
 そして、1時間も待ってくださって、申し訳ありませんでした。
 どうか、頭をお上げください。」
亮太は言った。

4人が頭をあげたとき、学生課長が言った。
「亮太さんは、大学へ通うことに何か心配があるのでしたら、
 学生課の方でできることなら、何でもします。どうでしょう。」

亮太は今さっき決意したことを思い切って言った。
「ぼくは、顔もそうだし、声も女の子に聞こえます。
 さっき、ネットのブログで相談していたんですが、
 女子学生として通えば、メイクができるので、大人っぽく見せられます。
 そう思って、さっき美容院で女の子風なカットをしてきました。
 トイレなんかは、男女共用のトイレを使います。
 だから、格好だけですが、女子学生として通うことを認めてくださるとうれしいです。」

課長は言った。
「服装は自由ですから、問題はありません。
 また、女子トイレも使ってかまいません。
 いかにも男性という学生が女子トイレに入るのはまずいのですが、
 トイレの中の平穏を乱さない限り、女子の姿なら男子が入ることは可能です。

 また、亮太さんを、仮名で例えば「涼子」さんとすることも可能です。
 各授業で、教官たちが、「涼子」さんとあなたを呼ぶようにできます。
 ただ、学生証は、本名と男性になります。
 でも学生証は、電車の定期を買うときなどにしか使わないと思います。
 そして、卒業証書や成績証など公的なものは、本名になります。」
課長は付け加えた。
 
「わあ、それは、うれしいです。『涼子』がいいです。
 堂々と女子学生で通えるんですね。」
そう亮太は言った。



一同は立った。

最後に、学生課長が、白い封筒を亮太に差し出して、
「言葉では限りがあります。これは、言わば慰謝料としてお納め願いますか。」
と言った。
亮太は、辞退したが、どうしてもということで、受け取った。

亮太は、典子に言った。
「あの、江原さん。もう気にしないでください。
 ブログにだって、何も書いていないし、
 ぼく、案外ポジティブだから、もう忘れています。
 それより、明日から女子学生になれることを楽しみにしています。」

典子は、亮太を見つめて、ほろりと涙をこぼした。
「ありがとう。女子学生になるお手伝いならなんでもします。」と言った。
「はい。ご相談に上がるかもしれません。」
亮太は笑顔で言った。
典子の顔に、わずかな安堵が見られた。

亮太は、4人を玄関まで送った。

今まで、小学生に見られ、謝罪を受けたことがあるが、
これほど丁重に謝罪されたのは、初めてだった。
一端は絶望しかけた大学への愛情が、また芽生えて来た。

部屋に帰って、もらった封筒を開けてみた。
すると、10万円が入っていた。
わあ、と亮太は驚いた。
じゃあ、この10万円で、女子学生になるための資金にしよう。そう思った。

新学年早々の、長い一日だった。


<第一部 完>

幼な顔の亮太②「後悔に沈む典子」

典子は、真っ青な顔をして、机に戻って来た。
そして、隣の係りの人に、自分の仕事の兼任を頼み、
所属する学生課の課長のところへ向かった。
背中に自分を非難する多くの学生の声と視線を感じていた。



課長は、50歳を少し過ぎたくらいの男性だ。
典子は、課長のデスクの前に立ち、自分がしでかしてしまったことのすべてを話した。

「江原くんほどの優秀な職員が、なんとしたことだね。
 普通なら、さっさとその学生に手続きをさせて、学生証を作らせ、
 疑いがあるなら、願書の写真とを後からゆっくり照合すればいいことだろう。
 そんな判断もつかなかったのかね。」
課長は言った。

「はい。自分に驕り高ぶりがありました。第一印象で決めつけてしまいました。」
課長
「君のしてしまった罪を言ってごらん。」
典子。
「はい。重大な人権侵害です。
 彼が、小学生に見られることで、これまで、どれだけ大きな劣等感を抱いてきたか。
 その劣等感に私は、ギリギリと穴を空けるような、ひどいことをしました。
 また、彼を、最後には、『詐欺』呼ばわりしました。耐え難い侮辱を与えました。
 それを、約200人もの学生に聞かせてしまいました。
 この大学のイメージを、著しく失墜させました。」
課長。
「君が、彼だったら、この先どうなると思うかね。」
典子。
「もう、大学にはいけません。
 浴びせられた侮辱を何度も思い出し、トラウマにいつまでも苦しみます。」

そこまで、言って、典子は、両手で顔を覆って、泣きはじめた。

「取り返しのつかないことをしました。ひどいことをしました。
 謝っても、謝っても、謝りきれません。」
典子は、床に泣き崩れた。

課長は、
「君が辞表など出しても、責任逃れにしかならん。それはだめだよ。」と言った。

課長は、しばらく待って、典子をソファーに座らせた。
そして、自分もソファーに移った。

「一つ、私が彼なら、もう一つする。」と課長は言った。

「なんですか。」と典子は不安げに涙の顔を上げた。

課長は、典子に言い聞かすように言った。

「これから、最悪の事態を想定してみよう。
 これは、君を脅すためではない。最悪の事態を考え、それを食い止めるためだ。

 私が彼なら、悔しくて、悔しくて、ネットのブログなどに、ことのすべてを書き殴るね。
 そして、自分を慰めるだろう。もう大学に行く気などないから、大学の名も書くだろう。
 彼に復讐の意図がなくても、そのブログは、ツィッターなどで、日本中に広まる。
 そうなると、新聞社が動くだろう。新聞社は、人権問題には、うるさいからね。
 大学が、正規の学生を小学生に見えるという理由だけで、追い返した。
 過去に例のない格好のネタだよ。

 彼と同じような、悩みを抱えている人達は総決起するだろう。
 人権問題として、小人症の人達などを支えるN.P.Oも立ち上がるだろう。
 こうなると、テレビのニュースとなり、日本中に知れ渡る。
 つまりは、これは、大学を揺るがす大問題に発展し学長は首だ。

 学生たちは、この大学の学生であることを恥と思い、
 卒業生も、自分の出身大学を恥ずかしくて、名乗れなくなる。
 また、各企業も、我が大学の卒業生を嫌い、就職率にも著しく響く。
 こうなると、来年度の受験者数は、激減し、大学は立ち行かなくなり、その先はわかるだろう。
 
 政治家を見てごらん。ほんの少しの失言で、辞職に追い込まれるだろう。
 そればかりか、党全体が国民の支持を失い、次の選挙で敗北を期す。
 たった一つの失言が、これだけの破壊力を持つのだ。
 学長の首だけで済めば、まだありがたい。
 江原くん。わかるかね。われわれは、それだけの覚悟と配慮をもって、仕事をしなければならんのだ よ。その自覚が、今日の君には、欠けていたということだ。」

「はい、その通りです。言葉もありません。
 もしも、大学がそんなことになったら、私は生きていけません。」
典子はぶるぶると震えはじめ、再び泣きはじめた。
「だから、君が生きていけるためにも、これから全力を尽くすんだ。」課長は言った。



課長は言った。
「まずすることは?」
典子。
「私は、彼の住所を調べ、謝りに行きます。」
課長。
「君一人で足りると思うかね。」
典子。
「課長と私で?」
課長。
「足りるものか。」
典子。
「では、学部長もですか?」
課長。
「学長の首に関わる問題と言ったろう。」
典子。
「じゃあ、まさか、学長も。」
課長。
「いいか。誠意というものには、手抜きがあってはならないのだよ。
 常に最大限の反省と誠意を見せなくてはならないのだ。
 間違ってはならん。大学を救うためではない。
 近藤亮太くんに謝罪し、彼の心の痛手を少しでも軽くするためにするんだ。」
典子。
「はい。わかりました。」

事態を重く見た課長は、迅速に動いた。
そして、学部長を含め、学長を説得することに成功した。
学長は、
「謝罪に行くのに、えらそうに車なんかで行ってはならんぞ。」と言った。
午後3時、亮太のマンションへ学長はじめ4人は、
徒歩と電車で向かった。


つづく(つぎは、「4人の訪問者」です。)

幼な顔の亮太①「もらえなかった学生証」

すみません。初っ端、長いです。読んでくださると、うれしいです。

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近藤亮太は、この春大学生になった。
都内にワンルームマンションを見つけ、
部屋の整理もやっと整ったところだ。

大学生になるに当たって、亮太には大きな悩みがあった。
亮太は、普通にしていると、誰が見たって小学生に見られるのだ。
さらに悪いことに、女の子に見える。
中学生のときは、小学校の3、4年生に見られた。
高校生になれば、背も伸びて、大人の顔になると期待していた。
が、そうはならなかった。
高校3年間で、背は2センチ伸びて、153cm。
体重41kg。
髭や体毛がほとんどない。
声は、可愛い女の子のものに聞こえる。

子供みたいなだけで、辛いのに、「お嬢ちゃん」などと、
高校生になって呼ばれたりすると、さすがに落ち込んだ。

だか、高校のときは、誰もが亮太を知っていて、
そんなヤツだと思われていたので、よかった。

今、亮太は髪を伸ばしていた。
短くすると坊ちゃん刈りに見え、ますます幼く見えてしまうからだ。

亮太は、これから多くの人に出会う大学が怖かった。
受講する科目の度に、新しい学生が自分を見るだろう。
そして、「なんで小学生がいるんだ?」と奇異な目を向ける。
せめて、声だけでも大人っぽいバリトンならばと思った。

亮太の場合、いわゆる「小人症」というのとは違っていた。
実際、その可能性も考え、病院に行ってもみた。
内分泌異常なども調べた。
しかし、亮太のは、あくまで発育上の個体差の範囲であると言われ、
極めて健康体とのことだった。



亮太は、パソコンを買って、接続を済ませると、
早速、「幼顔」について、自分と同じ悩みを持っている人を調べた。
そのうち、中国の女性で、メイクによって、
5歳から、40歳までの顔に、自分を変えてみせるという人がいて、
亮太は驚いてしまった。彼女の5歳の顔は、どう見ても5歳の幼児にしか見えなかった。
一方、40歳の顔は、ちゃんと40歳に見えた。
これを一人の人がやっているとは、とても思えなかった。

だがしかし、と亮太は思った。
この人は、メイクを使っている。
自分が女なら、メイクを使えるが、自分は男だ。
この人のようには、いかない。
いっそ自分が女ならよかった、と真から思った。

亮太は、とにかく、仲間やアドバイスが欲しかった。
そこで、「幼顔・童顔で困っています」というタイトルのブログを立ち上げた。
別にやましい内容ではないので、自分の正面写真、横顔、全体写真をとって、
ブログに乗せた。

これは、思った以上の反響があった。
ぼくもそうです、あたしもそうですというコメントがぞくぞくと集まった。
そして、みなさんのブログを訪ねてみると、プロフィールに出ている写真は、
みなさん、びっくりするほど幼く見える。

亮太はうれしくなった。
どの人も大人なのに、自分ほどではなかったが、少なくても、少年、少女に見えた。
中には、小学生に見えるという主婦の人からも来た。
娘の学校へ行くと、保護者として見てくれない。
実際その人は、小学4年生の娘と同年齢に見えた。

みんなの悩みは、共通していた。
それは、大人なら行けるところへ行けない…というものだった。
二十歳を過ぎているのに、外でお酒を飲めないなど。



そうこうするうち、大学が始まった。
オリエンテーションの後、
学生証を作ることが一番初めだった。
大学の合格通知を持ってくることになっていた。

体育館ホールに列ができている。
テーブルが並んでいて、自分の姓名、所在、学籍などを記入した用紙と、
合格通知証を持って並ぶ。
亮太は列に並んでいるとき、たまらない居心地の悪さを感じた。
近くの学生全員が自分を見ている気がした。
小学生が、なぜいるんだ。彼らの疑問はその一点だろう。

いよいよ亮太の番が来た。
机にいたのは、30代くらいのスーツ姿の女性だった。背の高そうな綺麗な人だった。
彼女の仕事は、合格通知証を見て、台帳の学生名簿と照合し、
通過した学生をチェックすることだった。

彼女は、亮太を見ると、用紙を見ながら頬杖をついて動作を止めてしまった。
「あなたが、これが自分だという証明書とかある?」と彼女は聞いた。
「そんなの、ありません。これからもらう学生証がそれです。」
彼女も、回りの学生も、亮太の声を聞いた。
少年というより、それはむしろ少女の声に近かった。
「運転免許証とかない?」彼女は言う。
「ありません。どうして、ぼくだけに、そんなこと言うんですか。」亮太は言った。
聞かれる理由はわかっていた。自分は大学生に見えないからだ。
なんだか、泣けて来そうだった。

『最悪だ。こんな場面が、一番怖かった。』
その場から、もう、逃げ出したかった。

『あなたは、何か体質的な問題を抱えている?』
彼女は、そう紙に書いて、亮太だけに見せた。
「いいえ。」と亮太は答えた。

「わかったわ。悪いけれど、あなたは、大学生に見えないの。
 正直に言えば、小学生に見えるのね。
 あなたに、体質的な問題がないなら、
 小学生が、大学生の学生証を作りに来たとしか思えないの。
 例えば、お兄さんの代わりに学生証を作りに来た。
 じゃあ、なんのために?全く理由が考えられない。
 一体どういうことなの?」
彼女は責めるように、亮太を見た。

いつの間にか、亮太の回りに100人以上の人だかりができていた。

亮太は、悔しくて涙が出てきた。

ある女子学生が出てきて、机の女性に言った。
「言葉が、ひど過ぎやしませんか。
 そんないい方して、彼が、もし本人だったら、どれだけの侮辱であるか、わかりますか。」

すると、机の女性は、きっとなり、女子学生に言った。
「あたしが、何年この仕事をしていると思ってるの。
 これまで、何万人の学生を見てきたと思ってるの。
 これは、一つ間違えると、詐欺行為ですからね。」机の女性が言った。

回りの学生がざわざわと声を出した。
回りの学生は、200人ほどに膨れていた。

亮太は、もう大学なんて行くものかと思った。もう、どうでもいい。
怒りと屈辱と悲しさで、涙があふれ、心がつぶれそうだった。

亮太は、合格証を彼女の手から奪い取り、踵を返し、列にそって、校舎を出た。

そのときだった、集まっていた学生の中から、
人を分けるようにして、ある男子学生が出てきた。
その学生は、言った。
「彼は、近藤亮太。去年まで、青葉高等学校3年生。ぼくと同じクラスです。
 若く見えるかも知れないけど、彼は、この大学に受かった正規の学生ですよ。」

回りの学生が、「おお!」と声を上げた。
机の女性江原典子は、それを聞いて顔色を変えた。
「ほんとなの?」と、その学生に力なく聞いた。
「その紙に近藤亮太ってあるでしょう。
 うそなら、ぼくが名前知ってるはずないでしょう。」と学生は言った。
典子は、もう一度、用紙の名前を見た。
そして、ああ…とつぶやくと、片手で顔を覆って、机に肘をついた。
典子の動揺振りは、見るに明らかだった。
典子は顔を上げ、よろけるように立った。
そして、亮太の足取りを追いかけ、
廊下を突き切り、表に出て探した。

亮太の姿は、すでに、校舎内にも、校舎外にもなかった。


つづく(次回は、「後悔のどん底に沈む典子」です。)

ぼくの民男くん⑤「結ばれる二人」最終回

やっと最終回です。少し長いのですが、読んでくださるとうれしいです。

================================

修と民男は、民男がお休みの日曜日には、必ず会って、デイトをし、
民男の部屋で愛を交わした。
お互いに相手を思う気持ちは、変わることがなかった。



それから2年。
修は、大学の医学部に合格した。
修と民男で合格祝いにあるレストランに行った。
そのとき、修は、民男に言った。

「ねえ、衿子(=民男)、お家の人が、衿子に帰ってきて欲しいって言ったら、
 衿子帰る気ある?」
「母さんや、姉ちゃんには会いたい。でも、父さんと上手くいく自信がない。
 男が女になるなんて、絶対認めない人だから。」民男は言った。

「お姉さんたち、結婚して、今、お父さんとお母さんと二人暮らしだよ。
 淋しいんじゃないかな。
 ぼくさ、衿子の家に行って、お父さん達の気持ち、聞きに行ってもいいかな。」

「ええ。それは、いいわ。うんって言わないと思うけど。」
民男はそう言った。



善は急げ、二人は夕食を終えレストランを出た。
そのまま、民男の家に向かった。
9時ごろだった。
修と民男は、民男の家のそばに来た。
家から少し離れたところで民男は待つことにして、
修が民男の両親と話をして、OKなら民男を呼ぶ。だめなら、民男と二人で去ることにした。

修は民男の家を訪ねた。
子供のころ、いろんな人で賑わっていた民男の家は、
民男の父と母の二人がいるだけだった。

「民男君は、今元気です。体も女性になって、水商売をしています。
 もし、お父さんと、お母さんが民男君に戻ってきて欲しいというお気持ちがあったら、
 ぼくは、民男君にそのことを伝えます。」
修は、そう言った。

お母さんは言った。
「あたしは、この6年間、民男を思わない日はありませんでした。
 あの子は、女の子になりたかったのに、世間体ばかり気にして、
 叶えてやれませんでした。
 そして、中学1年までしか、育ててやれませんでした。
 あの子があの年で、どんなに苦労をしているかと思うと、つらくて、つらくて、
 眠れない日が何度もありました。
 親として育てる義務も果たせなくて、
 民男に会わせる顔がありません。
 でも、民男があたしを許してくれるなら、いっしょに住みたいです。
 我が子が可愛くない親はいません。」

お母さんは、涙ながらに言った。

「お父さんは、どうですか。」
と修は、尋ねた。

お父さんは、体の大きながっちりした人だった。
お父さんは、腕を組み、じっとしていたが、
やがて、ポロリと涙を流した。
お父さんは、その目を押さえて、言った。
「俺の頭がかてえばっかりに、民男には辛い思いばかりさせた。
 俺は、民男に何一ついいことをしてやれなかった。
 民男にすまねえと思っている。
 民男がもしここにいたら、俺は、両手をついて謝りてえ。
 だが、民男が俺を許してくれるとは、思えねえ。
 民男、すまなかった…。」

お父さんはそう言って、こぼれる涙を手で押さえた。

そのとき、部屋の襖が空いた。
民男が顔中涙だらけにして立っていた。

「民男か!」お父さんは、叫んだ。
「父さん!」と民男は父信夫に抱きついた。
信夫は、民男を抱きしめた。
「民男、すまなかった。許してくれ。」
信夫は言った。
「あたし、うれしい。父さんと母さんに会いたかった。
 毎日会いたいと思って寝た。たくさんたくさん甘えたかった。」
母重子が、そばに寄って、
「民男、母さんのところにも来ておくれ。」と言った。
「母さん!」と民男は母に抱きついた。
重子は、民男を抱きしめた。
「ごめんよ、ごめんよ、だめな母さんだった。許しておくれ。」と重子は泣いた。
「辛いとき、母さんに抱いて欲しかった。母さんが恋しくて何度も泣いた。」民男は言った。
「民男、ごめんね。ごめんね。」と重子は民男を強く抱きしめた。
三人は、抱き合い一つになって、泣いた。

修は涙をいっぱい浮かべ、よかった、よかったと、何度も心でくり返し言った。

*   *   *   *

家に帰ることになった民男は、水商売をやめることにした。
民男と親子3人で、店のママに挨拶に行った。
ママは、気持ちよく民男を祝福してくれた。

民男の家の新聞配達所は、朝が目が回るようにいそがしい。
6人の若い配達員がいた。
5時に来て、新聞の仕分けと折込を入れて、配達員は出る。
その間、6人と家族の朝食を用意する。
民男は朝の食事を作り、足腰の悪くなった母の仕事をほとんど引き受けた。
キッチンの大テーブルで朝食をみんなで食べる。
ママのお手伝いさんとして鍛えた、民男の料理の腕がものを言った。

配達員たちは、食事がおいしくなったと大喜びした。
それに、若くて可愛い民男がいることで、
キッチンに花が咲いたように活気が戻った。

民男は、夕方からは、できなかった勉強がしたいと言って、夜間の高校へ通った。
中学の勉強をしていない民男には高校の勉強はむずかく、
修は、毎日、民男の隣で自分の勉強をしながら、民男の勉強を見た。
そして、民男は、4年で見事卒業し、次は、通信制の大学へ進んで、国文を専攻した。
修は、毎日民男の隣で、それぞれの勉強を続けた。

*    *    *    *

民男が家に帰ってから、6年が経った。
修は、医師の国家試験を受け合格した。
民男こと衿子は、通信大学の3年生になっていた。

国家試験の合格祝いに、修と衿子は、レストランでお祝いをした。
衿子は、24歳の美しい女性になっていた。

「ね、覚えてる?ぼくの大学の入学祝いの後、
 衿子は、家に帰ったんだよね。」修は言った。

「ええ。あたしの人生のとても大きなこと。
 あれから、気が付くと、あたし大学生。
 あたしがよ。これ、夢見たい。」
と衿子は笑った。

「ぼくもこれから、お金を稼げるようになる。
 そこで、衿子に渡したいものがあるんだ。
 衿子が受け取ってくれるとうれしい。」
修は言った。

「何?何?」と衿子は身を乗り出した。

修は、背広のポケットから、紫色の小箱を出し、衿子の前に置いた。

「え、まさか。」と言って、衿子は、その小箱を恐る恐る開いた。
ダイアモンドのリングがきらめいた。

「うそ…。うそ…。」と衿子は今にも泣きそうに、修を見た。

「ぼくは、一生衿子といっしょにいたい。
 受けてくれる?」修は言った。

「だって、あたしは、あたしは…。」衿子は言った。

「世の中で衿子のこと一番分かってるのぼくだと思わない?」
「ええ。そう。」
「それにぼくは、医者だよ。内科の他に、婦人科と内分泌科も専攻した。
 なぜだかわかるよね。
 だから、ぼくにわかりきった説明なんかいらないよ。

 ぼくの両親には、もう言った。
 ぼくの両親は衿子がどんなにいい女性か知っているから、
 OKしてくれた。
 あとは、衿子のご両親。ぼくはがんばってお願いする。」

衿子は、ぽろぽろと涙を流した。
そして、目にハンカチを当てて泣き出した。

「衿子はいま大学3年。
 卒業したら、結婚式を上げよう。
 ぼくは、衿子のウエディングドレス姿が見たくてたまらない。」

「ありがとう。ありがとう…。」
と衿子は泣き暮れた。



衿子は勉強をがんばって、2年後に卒業ためのすべての単位をとった。
卒業式は、全日制・夜間の学生とともに、日本武道館で行われた。
晴れがましい席に両親と共に座った。
式が終わり外に出ると満開の桜が咲き誇っていた。
その下で3人記念写真を取った。

「お前が、大学を卒業するなんて、夢にも思わなかった。」と母重子は泣いた。
父も涙を浮かべていた。
「全部、修ちゃんのおかげなの。」衿子は言った。
「いや、衿子もがんばったさ。」と父信夫は言った。
衿子は、青い空を眺めて、息をいっぱい吸った。
「修ちゃん、ありがとう。」そう心で言った。

帰って、卒業証書を衿子は修に一番に見せに行った。
「わあ、すごい、やったね。」と、
修は、飛び上がって喜び、衿子を抱きしめ宙に回した。



卒業よりもっとうれしいことが、待っていた。
約束通り、二人は、小さな教会で結婚式を上げた。
双方の家族だけの、小さな式。
ウェディング・ドレスの衿子は美しかった。
二人が口付けをしたとき、みんなが泣いた。
衿子も、頬に涙を流した。



修は、それから、3年後、実家から近くに、内科の医院を開業した。
衿子は、看護士の資格をとった。
ナース服を着た衿子は、修の最高の助手として、活躍。
二人は、いつもいつも、いっしょで、
近所にある二人の実家をしょっちゅう訪ね、
みんなで賑やかに、幸せに暮らした。


<おわり> 

ぼくの民男くん④「一つになった二人」

夢中だった。
修は、体の中が幸せな気持ちでいっぱいになった。
「民君、ぼく体が熱くなってたまらない。」と修は言った。
「待って。」と民男は言って、押入れを空けてお布団を敷いた。
毛布をその上にかけた。
民男は布団の上に寝た。
「修ちゃん。あたしの服を脱がせて。」民男は言った。
「う、うん。」修は、緊張して、ごくりとつばを飲み込んだ。
民男の白いセーターを脱がせた。
民男の白く細い腕が眩しかった。
スカートに手をかけた。
ファスナーを下ろして、スカートを下ろした。
スリップから、民男の白くてやわらかそうな長い肢が露になった。
「修ちゃん。裸になって、あたしの横に寝て。」民男は言った。

「うん。」
修は裸になって、民男の横に並び、毛布をかぶった。
「修ちゃん。あたし、水商売だけど、キスもさっきがはじめて。
 だれにも抱かれたことないの。だれかとお布団の中でいっしょになるの、
 これが、初めて。」
民男はそう言った。
「ぼくも、全部はじめて。」
毛布の中で、民男は真っ裸になった。
修は民男を抱きしめた。
驚くほど民男の体は柔らかかった。
「民君。やわらかい。」
「ホルモンのせいかな。
 女の子みたいになってるの。」
民男の乳房はもっと柔らかかった。
修は感激した。

「民君。ぼくたまらなくなった。
 どうすればいいんだろう?」修は言った。
「あたし、まだ本物の女じゃないから、口でいい。」
「うん。」
民男は、毛布から起きて、修の大きくなったものを口に含んだ。
修は限界に来ていたので、すぐに果ててしまった。
民男は、修の横に戻ってきた。
「ああ、天国に行くみたいだった。民君ありがとう。」
「あたしも、修ちゃんにいいことできて、うれしかった。」

しばらく抱きあっていた。
修は言った。
「ね、ぼくは、民君をどうやって満足させてあげればいいの。」
「あたしは、いいの。男の部分、はずかしいから。」
「ねえ。なんでも言って。民君のためなら、なんでもしたい。」
修は何度もそう言った。

「じゃあ、あのね。男の体にも女のあそこと似たところがあるの。
 そこへ入れてもらうと、うれしい。
 ふつう汚いところだけど、ちゃんと綺麗にしてあるの。
 クリームも塗ってる。」
民男は、恥じらいながら言った。
「うん、わかった。ぼくにさせて。」

民男は、再び元気になっている修の部分に、クリームを塗り、
自分はうつぶせになって、修のものを誘導した。
修のものが入ってくると、民男は声をあげた。
「ああ、修ちゃん、あたし、うれしい。」
「民君とぼく、一つになってる感じだ。
 ぼく、動かしていい。」
「ええ。して。あたし、感じてしまうから。」

修は、本能のまま、体を動かした。
「ああ、うれしい、修ちゃん…。」
と民男は女の子の可愛い声を上げ、次第に声を激しくして言った。
「あああ…。」と民男は悲鳴を上げた。
修は、もう一度、波が来ていた。
「民君、行くよ。いい?」
「ええ、いいわ。あたしもいく。」
二人は、ああ…と声を上げて、同時に果てた。

「ぼくたち、二人で一つになれたね。」
修が言った。
「うん。長い間の夢だったの。あたし、うれしい。」民男は言った。
二人はまた、厚いキスをした。


つづく(次回は、「結ばれる二人」最終回です。)

ぼくの民男くん③「二人の再会」

修は、高校の2年生になった。
修は民男の写真を机の引き出しの中に入れていた。
それを見るたび、民男のことを思った。
今、どこで、どうしているんだろう…。
修は、自分にだけは、連絡して来てもいいのにと思っていた。

2学期の9月、修に電話があった。
「修、衿子(えりこ)さんて人からよ。」
母に言われて、修は電話を取った。
「修、あたし、民男。」
「え、民君。」
「あんまり、大声出さないで。
 修に会いたい。高円寺の駅に来れる?」
「いけるよ。今すぐ。」
「じゃあ、来て。北口の白木屋の入り口にいる。」
修は、何も持たずに、駅の白木屋に走って行った。

入り口に、赤いミニスカートを履いた、髪の長い、スタイルのいい女の子がたっていた。
修は、民男かなと思いながらも、話しかけられずに立っていた。
「修。」とその髪の長い女の子が話しかけてきた。
「わあ、やっぱり民君。
 すごく可愛い女の子がいると思ってたんだ。
 わあ、民君。女の子になれたんだね。」
「女に見える?」
「見えるさ。スタイルいいし、可愛いし、どこから見てもステキな女の子だよ。」
修は感激して言った。
昔、修より少し背が高かった民男だが、今は、修の方が高かった。
「ありがとう。」
「よかった、民君、元気そうで。」
「うん。元気でいたよ。修、あたしの部屋、電車ですぐなんだ。来ない?」
「あ、うん、でも、あわてたから、財布持ってこなかった。」
「あたしが出すから、大丈夫。」
女の姿をした民男は、女の子そのものだった。



民男の部屋は、新宿に近い、3畳のアパートだった。
中に入ると、小さな置きテーブルがあって、
修はそこに座った。

壁に、派手なドレスが並んでいた。
「お店で働いてるの。」修は聞いた。
「うん。見てのとおり。ゲイバーで働いてる。
 お店では、法子(のりこ)って呼ばれてる。」
民男は、オレンジジュースを修に出して、修の向かいに座った。

「あたしね、運がよかったの。」
と民男は話し始めた。
「新宿行って、ゲイバーがたくさんあるところへ行って、
 あるお店に入ったの。
 そして、女になりたくて、家出してきたって言った。
 お店の人は、みんなそんな人たちで、あたしのことすぐ分かってくれた。
 そして、35歳くらいのステキなママさんが、
 あたしを、ママの家のお手伝いさんとして、部屋もくれて、
 住まわせてくれたの。
 家事をみんなした。お料理得意よ。
 あたし、まだ、中学生だったから、お店には出せないからって。
 でも、16歳から、18歳ってことにしてお店に出してもらった。
 今、キャリア、1年半。」

「よかったね。ラッキーだったんだね。
 ぼく、家出娘の怖い話し、知ってたから、すごい心配した。」修は言った。

「ママは、あたしに女の子になるためのこと、みんな教えてくれた。
 ホルモンで、胸も少しずつ大きくしてくれてる。
 これ、本物だよ。触って見る。」と民男は言う。
「いいの?」修は、そう言って、テーブルを回って、民男のおっぱいをセーターの上から触った。
 それは、修の手のひらに余るくらいあった。

「わあ、すごい。いいな。うらやましい。」と修は言った。
「あら、修は、まだ女の子になりたいと思ってるの?」民男が愉快そうに言う。
「うん。大きくなったらそんな気持ち消えると思ったんだよ。
 でも、未だに同じ。そういう気持ちってなくならないんだね。」
「あたしも、自分は女の子だって気持ち、ぜんぜん変わらない。
 でも、修は、女の子の格好がしたいだけで、心は男の子でしょう。」

「多分そう。女の子を好きになるから。
 でも、民君みたいに、男の子なのに女の子みたいに可愛い子、一番萌える。」
「じゃあ、あたし見て、萌える?」
「うん。すごく萌えてる。だって、民君、すごく可愛いし。」
修は、頬を少し赤くした。

民男は、修の言葉を聞いて、テーブルのジュースを片付けた。
そして、テーブルを脇に置いて、修と二人、壁にもたれて座った。
修は、胸がドキドキした。
「あたしの学校での楽しい思い出は、修ちゃんと遊んだことだけ。
 修ちゃんのことが、ずっと好きだった。
 修ちゃん以上の人現れなかった。
 修ちゃん以上にやさしい人いなかった。」
民男は言った。

「ぼく、言ったでしょう。小学1年生のとき、民君が好きだって。
 ぼく今まで、民君が男の子だと思ったことない。
 民君を女の子として、それで好きだった。今も同じ。」
修は言った。

「うれしい。」民男はそう言って、修に抱きついた。
二人は抱きあって、畳に崩れた。
修も、民男も息を荒くしていた。
民男は目を閉じた。
修は、民男の唇に唇を重ねた。


つづく(次回は、「一つになれた二人」です。)

ぼくの民男くん②「民男の家出」

あれ?昨日投稿するの忘れてる。昨日は、夢中で他の話を書いてたんだっけ。
この話は暗いと思って他の話を。暗い話しだけど、がんばって最後まで書きます。

=================================

小学校の6年間。
民男は変わらなかった。
担任の先生や、親から、男らしくなるように言われた。
だが、民男の女の子の話し方や仕草は少しも変わらなかった。
みんなは、民男はそういうヤツだとして、
さほど気にしなくなった。
修は、みんなの中で遊んでいることが多かったが、
民男は、たいていブランコの柵に座って、みんなを見ていた。

学校では、休み時間は、全員外に出ましょう…という決まりがあり、
そういう決まりは、民男のような子には、辛いだけのものだった。
友達のいない民男は、一人でみんなを見ているしかなかった。

修はみんなと遊ぶ方が楽しかったが、
民男を見つけると、遊びを抜けて、民男のそばにいき、
民男と話をした。

「修ちゃん、いい人ね。」とよく民男は言った。
「どうして?」と修は聞く。
「だって、わざわざ、ぼくのところに来てくれる。」
「民君とは、幼馴染じゃないか。
 1年生のとき、民君のこと好きだっていったじゃない。」
そう修は言った。

民男は親の反対で絶対髪を伸ばさせてもらえなかった。
だか、顔立ちは、ますます女の子のようになっていった。
そんな民男を修は女の子を見るような思いで好きだった。



民男は、中学になって、いじめられた。
小学校が同じだった生徒は、民男に慣れていたが、
他の学校から来た生徒が、民男を受け付けなかった。
民男は毎日のように泣かされた。
修は、懸命にかばったが、かばい切れなかった。
そのうち、民男をかばう修までいじめられそうになった。

「修ちゃん。ぼくがいると、修ちゃんまでいじめられる。
 ぼく、明日から学校へ行かない。」
民男は、1学期の6月ごろ修にそう言った。
次の日から、民男は学校に来なくなった。
修は、毎日のように民男の家に遊びに行った。
家にいるときの民男は、いつもと変わらぬ民男だった。



民男は、ある真夜中、ボストンバッグに必要な物をいれて、
こっそり家を出た。
翌朝民男の家はあわてたが、
民男の置手紙があった。

『ぼくは、男として生きていけません。
 家の人が認めてくれない限り、
 ぼくは、出て行くしかありません。
 今まで育ててくれて、ありがとう。
        さようなら。』

翌日、修は、民男を学校に誘いに、民男の家にいった。
すると、お母さんが、修の所へ来て、
「民男が家出しちゃったの。女の子になるって。」そう言った。
修は割り切れない思いがした。

「どうして、どうして家出なんかさせたの。
 女の子にしてあげればよかったじゃない。
 民君は女の子なんだよ。
 毎日いっしょにいれば、そんなことくらいわかったじゃない。」
修はそう言って泣いた。

民男のお母さんは、
「修君。そうは言っても、民男は男の子だし、
 ご近所になんていえばいいの。
 ある日突然、女の子になりましたじゃ、すまないでしょう。」
お母さんはそう言った。

修は食い下がった。
「ある日突然じゃないよ、おばさん。
 民君は生まれたときから、心は女の子だったんだよ。
 それを、どうしてわかってあげなかったの。
 民君が学校でどれだけいじめられたか、知ってるの。
 あれで、いままで、学校に行ってたのが不思議なくらいだよ。」
修は、感情が高ぶり、そう言い残して、民男の家から走り去った。

修は、学校へ行く途中の公園のブランコに乗り、
顔を伏せて泣いた。
民男が不憫でならなかった。
民男は、新宿に行ったと思う。
一体どこでどうしているんだろう。


つづく(次は、「民男との再会」です。)

ぼくの民男くん①「民男とぼく」

今から50年位前を舞台にしています。
モデルがいるお話です。ちょっと悲しいお話になりそうです。すみません。

=================================

修は、物心ついた5歳くらいのときから、
女装をした人を見ると、性的興奮を覚えた。
その頃から、自分もと思い、髪を伸ばしていた。
家族がどれだけ髪を切ろうとしても、
どうしても言うことを聞かなかった。

修は、顔立ちも女の子のようで、
体格も小柄だった。
そこで、家族とどこへ行っても、
「お嬢ちゃん」と呼ばれた。
修は、お嬢ちゃんと呼ばれるたび、
幼心に興奮した。

小学校へあがるとき、さすがに髪を少し切った。
それでも、耳が隠れるくらいの長さがあった。
修は、見かけは女の子のようであったが、
活発で運動もできたので、クラスで長い髪を
からかわれることはなかった。

学校から帰ると、近所の子と遊んだ。
英一という子と、民男という子の2人が近所だった。
民男は変わった子だった。
髪は坊ちゃん刈りだったが、
仕草や、行動、話し方が、まるで女の子だった。
民男は、修より少し背が高かったが、
顔立ちは女の子のようで、
もし、修くらいに髪を伸ばしたら、
だれでも、女の子に見るだろうと思われた。

修は民男と同じクラスだった。
民男は、当然、みんなからからかわれた。
人から嫌なことをされたとき、
相手をぶとうとする仕草は、まるで女の子だった。
自分のことは、「ぼく」と言っていたが、
そのほかのことは、女言葉だった。

英一は、民男を嫌がり、離れてしまった。
そして、修は民男と二人で遊ぶことが多くなった。

修は、民男を少しも嫌いではなかった。
それどころか、心ひそかに、自分も民男のように、
女の子みたいな子になりたいと思っていた。
自分ができない女の子の仕草をする民男を、
むしろ、うらやましいと思っていた。

民男の家は、新聞の配達店で、家は広かった。
修はいつも民男の家に行って遊んだ。
民男は外遊びが嫌いだった。
そこで、おはじきとか、トランプとかの女の子遊びをした。

民男の走り方は、女の子走りで、
他の男子のように走ることができなかったからだ。

修と民男は、小学校の2年生になった。
クラスはまだ同じだった。

ある日、民男は修に聞いた。
「修ちゃんは、どうしてぼくなんかと遊んでくれるの?」
「民君が好きだからに決まってるじゃない。」
「ぼく、変態だよ。」
「どんなふうに?」
「ぼく、女なの。」
「うそ。おち△ちんがあるでしょ。」
「それは、あるわ。でも、ぼく女の子なの。」
「そうっか。民君は女の子だから、女の子みたいなんだね。」
「そうよ。」
「ぼくね。」と修は言った。
「何?」
「民君はもう女の子だけど、ぼくは、女の子になりたいの。」
「修ちゃん、女の子になりたいの?だから、髪の毛長いの?」
「うん。だから、民君が変態だったら、ぼくも変態。」
民男は修の顔を見て、とてもうれしそうな顔をした。

修は言った。
「だけど、ぼく、この気持ちないしょにしてる。
 恥ずかしくて言えない。
 でも、民君は、堂々と女の子でいる。
 民君はえらいよ。」

民男がまたうれしそうな顔をした。
「ぼくに、えらい、なんて言ってくれたの、
 修ちゃんが初めて。ぼく、うれしい。」

このとき、二人は、初めて心から打ち解けた。
学校で、民男が意地悪されていると、修が飛んで行って助けた。
修は、強くはなかったが、何をされても民男をかばった。
民男は、修が助けに来てくれる限り、何をされても耐えることができた。


つづく(次回は、「民男の家出」です。)

大泉寮5年生・神崎大吾⑤「美雪の恋人」最終回

「ああ、恥ずかしいな、先輩なのに、美雪より先にいっちゃうなんて。」大吾は言った。
「エリがいくの見て、完全に興奮しちゃった。」
「もう、あたし、美雪にスペシャルで可愛がっちゃう。」
大吾はそう言うと、美雪の上にのり、特別丁寧に美雪の体中を愛撫した。
美雪は、女の子の可愛い声を出しっぱなしで、
体をくねらせ、ばたばたと暴れて、激しくもだえて、
「ああ…。」と小さく叫んで、果てていった。
大吾も美雪の噴出物を口の中で捕らえた。



布団の中で抱きあって、波の静まるのを待った。

「美雪は、ほんとに女の子だね。」と大吾は言った。
「もう、身も心も女の子になっちゃった。あたし、激しかった?」と美雪が聞く。
「もう、見てるだけで興奮した。」と大吾はにっこりした。

「もう、この部屋へ、引っ越してお出でよ。」大吾は言った。
「引越したいけど…。」と美雪は口ごもった。
「なんかあるの?」
「うん。あたし、ルームメイトのソープ行く高井先輩のこと心配だから。」
「高井君、いい人?」と大吾は聞いた。
「ソープ行く以外は、すごくいい人なの。
 あたしより3つも上なのに、先輩ぶらないし、そういうとこエリと似てる。
 でも、なんだか、あたしがいないとダメになりそうで…。」美雪は言った。

「じゃあ、今日、女の子の格好のまま、部屋に帰ってごらん。
 高井君、なんて言うか楽しみじゃない。
 なんとなく、美雪を受け入れてくれそうな気がする。
 そしたら、そのまま、女の子で住んじゃいな。」
「うん。そうしてみる。エリ、ありがとう。」

大吾は、美雪に、明日の着替えの女の子の服と下着を持たせた。
そして、かつらと白いオーバーも貸した。
美雪は、女の子のまま帰って行った。



ぽつんと一人になった大吾は思った。

「美雪は、高井君に、ひょっとして恋してる。
 美雪の心は、女の子かもしれない…。
 ああ…これは大変だ。美雪の女心に火をつけちゃった。」


*   *   *   *

美雪が出て行って、5分も立たないうちに、
美雪が、血相を変えて、戻ってきた。
「エリ、先輩の意識がないの。死んだみたいに。」
コタツに当たっていた大吾は、飛び出した。
「何にも食べてないんじゃない。」
「ええ。ここ3日、水だけで寝てたの。」
「美雪、何か食べさせなかったの?」
「高井先輩は、後輩の情けは受けないって、いつも強情なの。」
「わかった。」
大吾は、ちゃんちゃんこを羽織って、下駄を履いた。
「えーと、えーと、何か流動食…。」
と大吾は当たりを見回して、
ジュースがあったので、栓を抜いて持って出た。

美雪の部屋は、3つ隣の104だった。
入って見ると、高井が、布団に寝ていた。
二人で畳に上がって、高井の上半身を起こした。
「高井君、しっかりしなさい。」
大吾は高井のほっぺたを、軽く叩いた。
高井に反応がない。
「美雪、ジュースを飲ませて。」
「はい。」
美雪は、そう言って、ジュースのビンの口を持って行ったが、高井は口を開けない。
「美雪、口移し。」大吾は言った。
「あ、はい。」
美雪はそう言って、ジュースを口に含むと、
高井を抱いて、キスをするようにして、口移しで飲ませた。
一口、二口、三口飲ませたとき、高井は目をぼんやり開けた。

「先輩、あたしがわかる?」と美雪は言った。
高井は、白いコートの美雪に目の焦点を合わせ、
「わしは、今、天使を見とるんかいのう。」とつぶやいた。

「メガネ…。」と高井は言った。
美雪が布団のそばにあったメガネを高井にかけた。
高井のメガネは、度の強い牛乳ビンの底のようなメガネだった。
綺麗な目をした高井の目が小さく見える。

「美雪、残りのジュースを高井君に渡して。」大吾は言った。
「はい。」美雪は、高井にジュースを渡した。
高井は、ビンを持って、自分で飲んだ。
意識がはっきりしてきたようだ。

「あんたか、わしにキスしてくれたんは?」高井は美雪を見て言った。
「キスじゃないの。口移しで飲ませたの。」美雪は言った。
「ありがとう。命が助かった。ところで、君は誰?」
「あたし、清美、清美よ。」
(こんな、緊急時も、美雪は、女言葉で話している。大吾は密かに思った。)

「清美君は、男の子や。君は、女の子じゃないか。」高井はゆっくりと言った。
「あ、そうか。」と美雪は、やっと今自分が女の子になっていることに気が付いた。
「女の格好してるけど、ぼく、清美。よく見て。」美雪は言った。
高井は美雪をよく見て、
「そう言えば、清美君に似てるな。
 清美君、可愛い。天使みたいに可愛い。キスしてもろて、うれしかった。」
「そうお、ほんとに?」
「うん、ほんとや。」
「うれしい。」そう言って、清美は、高井に抱きついた。

大吾はそのようすを、にこにこしながら見ていた。

「きのうのオジヤの残りがあるから、温めて、三人で食べよう。」
大吾は言った。
「あ、大吾先輩、いたんですか。」と高井は言った。
「はじめから、いるよ。
 高井君、君に先輩として命令がある。
 これからは、後輩の情けも受けなさい。」
「あ、はい。わかりました。」高井は、頭をかいた。

大吾は、部屋から鉄鍋をぶら下げてきた。
「なんか、あんまりたくさんはないから、二人で食べなさい。」
と大吾は言った。
「あ、はい。」と高井。
「じゃあね。」と大吾が出て行こうとすると、美雪が追いかけて来た。
「いろいろとありがとうございました。」と美雪は、丁寧語で言った。
「いろいろ、よかったね。」と大吾は笑った。
「あ、はい。」と美雪は照れていた。

大吾は部屋のコタツに戻って、
二人が仲良く鍋をつついている様子を思い浮かべた。
そして、「くすっ。」と一つ笑った。


<おわり>(次回は、どうしようかと思案中です。)

大泉寮5年生・神崎大吾④「ファミレスでのおしゃべり」

本日の定食を食べながら、二人で話をした。
清美は、言った。
「エリって、すごい不思議な人。みんな言ってるわ。大泉寮の七不思議だって。」
「どんなとこが。」

「例えば、エリは可愛いくておっぱいがあるのに、
 どうしてニューハーフ・クラブで働かないんだろうって。」

「ニューハーフ・クラブって、夜が遅いの。
 明け方の4時5時まで、あるんだもの。」

「お金がありそうなのに、
 どうして大泉寮なんかにいるんだろうって。」

「あたし、恥ずかしいけど、5年生になっても親から仕送りしてもらってるのね。
 でも、それ、全部女になるために使っちゃうの。
 洋服買ったり、ホルモンだって安くないし。
 先生の診察料も高いし。で、生活費がなくなっちゃう。
 だから、あの寮から出られないの。」

「土曜日にやっているエリのビジネスは、すごく安くて、
 みんな『先輩の後輩への慈善事業』だって言ってるわ。
 実際、美雪にだって、ただで全部してくれてるでしょう。」

「あのビジネスは、生活のためよ。昨日だって、2700円入ったし。
 7で割ると、1日約400円。
 インスタントラーメンで凌げば、1週間なんとかなるもの。」

「知ってる先輩で、性欲の塊みたいな人がいるの。
 彼は、仕送りが来ると、ソープに飛んで行く。
 1回9000円だって。それと比べたら、
 エリのは、タダも同然だってみんな言ってるわ。」

「その彼、あたし知ってる。仕送り来たら、
 ソープへ3回連続行って、お金使い果たして、
 あとの27日、即席ラーメンだけで暮らしてるって。
 ときどきラーメンも切れて、水だけ飲んで、寝てるって。
 あたし、そういう子、好きだなあ。」

「実は、あたしのルームメイトなの。
 おバカだわ。計画性ゼロなんだもん。
 ほんとは、もう4年生なのに、
 3年生になれなくて、2年留年して、まだ2年生なの。」

「美雪は、1年生よね。」
「ええ。先輩が心配。」

「だからさ。そういうおもしろい子もいて、
 みんなそれぞれ、どこかで無駄金使って、
 それをやめられない。そして、結局貧しいのよ。
 だから、あたしの値段、あのくらいでしょう。
 高くしたら、お客さん来てくれない。」

「あたしもエリにここまでしてもらって、
 これから、女の子の服とか、アクセサリーとか、
 今、いっぱい買いたくなってる。
 美容院にも行きたい。
 生活費切り詰めても、洋服や靴を買ってしまいそうなの。」

「ね。そういうものが、誰にでもあると思わない?」
「思う。ソープ通いの先輩のこと笑えない。」

ガールズ・トークにしては、内容がシビアだったが、
清美は、気が付いてみると、心が完全に女の子になっていた。



「あ、あたし、今エリと話してて、心が完全に女の子になってた。」
清美は言った。
「もう、男に戻れないわよ。」大吾はにやっとして言った。
「どうしよう。あたし、普段でも女言葉が出てしまいそう。」
「普段も女の子になればいいの。」
「無理よ。」
「あたしの部屋にお出で。そして、毎晩、セッ・クスしよ。」大吾は言った。
「いや~ん。今のエリの言葉で、あたし、あそこ、大きくなっちゃったわ。」
「ほら、どんどん女の子になっていく。」
「ああん、美雪もう男に戻れない。」
「いいの、戻らなくて。さ、帰ってレズビアン・ラブしよ。」
「あん、あたし、興・奮しちゃった。」



大吾は、清美を連れて店を出た。
寮に帰って、清美を部屋に入れた。
大吾の万年布団は、全然ロマンチックではなかったが、
コートを脱いで、そこへ雪崩れ込んだ。

二人で抱きあって、キ・スをした。
「ああん、エリとキ・スしちゃった。
 あたし、感激。」と美雪は言った。

大吾はセーターとスカートを脱いだ。ストッキングも。
それから、美雪の背中のファスナーを下ろし、ワンピースを脱・がせて、
ストッキングを取った。
二人で下・着だけになって、布団にもぐった。
「ああ、エリ、好き、好き…。」と言って美雪はエリのいろんなところへキ・スして来た。
「美雪、あたしのオッ・ぱい触ってみる?」と大吾は言った。
「あん、さわりたい。」と美雪は、甘ったれた声で言った。
大吾は、ブラをとり、スリ・ップの紐を下ろした。
「わあ、すごーい。」美雪はそう言って、恐る恐る触ってきた。
「もん・で。」と大吾はいった。
「うん。」と言って、美雪は、もみは・じめた。
「先のところ、くりくりっとして。」大吾は言った。
「こう?」
「うん、そう。あ、あ…。」
「わあ、エリ、感・じるの?」
「うん、すごく感・じるの、ああ、美雪、もっと強くして。」
「キ・スして、吸ってもいい?」
「あ、それ、最高。」
「美雪、あたしもう我慢できない。
 あたしのショ・ーツぬが・せて、あたしの恥・ずかしいところ、マッサ・ージして。」
「うん。」
美雪は、言われたとおりにした。
「エリ、感じる?」
「あ…、あ……、美雪、上手、あ…、あ…、美雪、キ・スして…。」
美雪はキスをした。
唇を離したとき、大吾がもだ・えた。
「あ…ん、美雪、あたしイく、イっちゃう、あ………、もうだめ・・・・。」
美雪はとっさに、大吾の噴出物を自分の口の中で捕らえた。


つづく(次は、最終回「美雪の好きな人」)

大泉寮5年生・神崎大吾③「清美の女言葉」

そうだ、清美に、女の子言葉を使えるようにしよう、と大吾は考えた。
はじめは、照れくさくて、女言葉がなかなか使えないものだ。

「清美、十分鏡見て、心が女の子になった?」と大吾は聞いた。
「はい。すごくうれしい時間でした。」
「清美は、女の子名前だけど、生まれてから使われている名前じゃ、おもしろくないでしょう。
 女の子になったときの名前を考えよう。何か好きな名前ある?」
「それなら、美雪です。」と清美は言った。
「美雪か、いいわね。」
「じゃあ、あたしのことは、エリって呼んで。ときには、お姉様。いい。」
「はい。」
「それともう一つ。丁寧語はなしね。丁寧語って、男女の差がなくておもしろくないの。
 あたしに、友たち言葉で話すの。いいこと?」
「はい。」
「はい、じゃなくて、『ええ、いいわ。』っていうの。さあ、言って。」
「ええ…いいわ。」
「そうそう。じゃね、『あたしは美雪よ。』って言ってみて。」
「ちょ、ちょっと恥ずかしいです。」
「じゃあ、『いや~ん。あたし、恥ずかしい。』って言ってみて。」
「・・・・・・・。」
清美は、うつむいている。
「『きゃー!やだ。』って言ってみて。」
「・・・・・・。」

「美雪は、はずかしがりね。でも、気分が出たら、あんがい言えるのよ。」
「気分って?」
「これからわかるわ。」
大吾は清美を鏡に向けたまま、清美のスカートからショーツに忍び込み、
ショーツに隠してある清美の男のものを出した。
そして、そっと愛撫し始めた。
「ああ…、センパイ…。感じます。」清美は言った。
「ちがうわ。『やん、お姉様、あたし、感じるわ。』って言うの。
大吾は、清美の肩に顔を置いて、清美の耳にささやくようにいった。
清美は、大吾の愛撫で、息が荒くなってきた。
「ああ、お姉様、あ、あ、あ…。」
大吾は愛撫に力を入れた。清美は、『あたし』が言えないでいる。

やがて、清美から声が漏れた。
「ああ…あたし、感じるわ。お姉様、ああん、あたし、感じる…。」
清美は、興奮の中で、女言葉を口走った。
大吾は、どんどん刺激をしていった。
清美がもだえてきた。
「ああ、やん、やん、お姉様、あたし、たまらない。あたし、もうだめ。」
堰を切ったように、清美からどんどん女言葉が出てくる。
大吾は愛撫を続ける。
「ああん、お姉様、あたし、もうダメ。いくわ、あたし、いっちゃう、ああ、許して…。」
大吾は、清美の熱くなっているものにゴムをかぶせた。

「美雪、可愛いわ。鏡を見るのよ。どうみても可愛い女の子。可愛いわ。」
「ああ、もうだめ。お姉様、もう、ゆるして、お願い。」
「自分のこと、美雪って呼んでごらん。もっとステキよ。」
大吾の言葉は、効いた。清美がびくんと震えた。
清美は、放出寸前だ。
「ああ、あん、あん、美雪いっちゃう。美雪いくわ。いくわ、いく、もうダメ。」
清美は、背中を反らせた。がくんと震えて、あるものをゴムの中に放出した。

大吾は、清美の男性自身を拭いて、綺麗にした。

「美雪、これから、自分のこと『美雪』って呼べそう。」
「ときどきなら言えそう。」
「そう、あたしはエリ。エリに話しかけて。」
「エリ、ありがとう。美雪幸せ。女言葉が使えたわ。あたし、うれしい。」清美は言った。
これで、合格。清美は、恥ずかしさを乗り越えて、女言葉が使えるようになった。
大吾は、ある達成感を覚えた。



「美雪。美雪の誕生祝い。ファミレスで、お昼おごるわ。」と大吾が言った。
「ああ…。外に出るの?」
「大丈夫よ。お姉様がメイクしたのよ。」
「その…歩き方とか、仕草とか…。」
「外に出ると、回りの目を気にするから、自然と女の子になれるわよ。」
「ええ。じゃあ、がんばってみる。」
「そう、その調子。」

大吾は、清美に、白いふわふわのオーバーコートを貸した。
靴は、白のローヒールのパンプス。
そして、肩から下げるバッグ。清美のは、ハンカチとティッシュしか入っていない。
大吾は、そのまま、黒のオーバーコートを着た。

寮の部屋の外に出た。
すると、馴染みの学生がいた。
「わあ!先輩、となりの女の子、誰っすか。」と清美を見て、目を輝かせた。
「可愛いでしょう。美雪っていうの。あたしの高校の後輩。」大吾は言った。
「おっす!俺、健二っていいます。美雪さん、可愛いっすね。」と健二は言った。
「ありがとう。」と清美は、可愛い声で言った。

寮を出るまでに、何人もの学生にあった。
みんな、健二のようなことを言った。

「美雪、ばれてないでしょ。」大吾は小声で言った。
「ええ。あたし、うれしい。」と清美は言った。



ファミレスに入った。
コートを脱いだ。
隣のブースの若者が、大吾と清美を意識していた。
「エリ、あたし達見られてる。」清美が言った。
「あたし達、可愛いからよ。」
「そう、思っていいの。バレてたりして。」
「ばれてたら、彼ら耳を集めてひそひそ話しするはず。
 してないでしょ。3人がそれぞれ、ちらちら見てる。
 これは、一人ずつ意識してるのよ。」
「だったら、うれしい。」と清美は言った。

注文を取った。

「あ、あたし、お水もらってくるわ。」
と清美は、立ち上がって、清涼水の機械の方に行った。
大吾はそうっと後を付いて行った。
そして、清美がグラスをとろうとしたとき、
清美のお尻を、すうっと撫でた。
「やん、何するの?」と言って、清美は後ろを向いた。
そこには、大吾がいて、笑っていた。
「ちょっとテスト。こういう事態で、美雪がどんな反応するか、知りたかったの。
 美雪、合格よ。『やん。』なんて言葉がとっさに出れば、もう心は女の子よ。」

「もう、エリったら。あたし、心臓止まりそうになった。
 実は、あたし、子供のときから、心の中では女言葉使ってたの。」
「ほんと?なら、もう筋金入りじゃない。
 じゃあ、『キャー、ステキ!』なんて言ってたの?」
「そう。恥ずかしいけど。」
「いや、立派よ。」
二人で、笑いながらテーブルに帰って来た。



つづく(次は、「ファミレスでのおしゃべり」です。)
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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