アメリカ編第三部⑧「女の子になったジュン」


私は、その朝、セクシュアルな夢を見た。
私が女になり、男性からあい・ぶを受けている夢。
ソファーの上に男性が座り、私は彼の膝の上に抱えられて、
彼の手が私のスカートに入り、私は、女の声を出し、
喜びの気持ちを表現している。

はっと目が覚めたとき、私はもんもんとした気持ちがしていた。
トムさんのような大きな男性に、
抱きしめられ、くち・ずけをされたからだろうか。

セッ・クスは、レレイと毎日のようにしている。
私がレレイの中に入ることはしなかったが、
レレイのお腹の上で、果てている。
それで十分で、不満はなかった。



その日、レレイは、早めに私の部屋に来たいと言う。
合気道を早く切り上げて、
レレイと私は、いつもより1時間くらい早くアパートに帰って来た。
コーヒーを飲みながら、私の横でレレイは言う。
「ジュンは、男の人とのセッ・クスも好きでしょう?」
トムさんと会ったばかりの私は否定しなかった。
「前の恋人は、ときどきジュンを女の子にしてくれた?」
「それは、…。」と私は口ごもった。
「そうなのね。じゃあ、今日は、あたしがジュンを女の子にしてあげる。」
レレイはそう言った。
私は、ドキンとしてしまった。
うれしいという感情が、胸の中に広がった。

「ジュンの、男の子の服をあたしに貸して。」とレレイが言う。
私は、ジーンズと、分厚いセーターをレレイに渡した。
バスルームで、レレイは着替えてきた。
髪の毛を少し少年のようにしていた。

ソファーに座っている私の隣に来て、
レレイは、ぐっと私を引き寄せた。
「ジュン、今日は女の子なの。女の子の言葉を使い、女の子の声を出すの。」とレレイ。
「いいの?」と私。
「いいの。あたしも、男の声、がんばって出してみる。」
「うん、ありがとう。」
「ジュン、好きだよ。」とレレイが言った。
私は、その状況にすでに体を熱くしていた。
「あたしも。」
私がそう言ったとき、レレイは、力強く私を抱いて、
荒々しくキ・スをして来た。
私は、レレイに身をまかせた。
ああ、女になっていくと感じた。

レレイとベッドに行った。
横になっている私の横で、
レレイは、キ・スをくり返した。

そのうち、私のワンピースの背中のファスナーを下ろし、
私を下着だけにした。
そして、私の首や肩に、口・づけをして行った。
そして、私の肢に手を滑らせ、なでたり、こすったりした。
私は、女の声をあげた。
すると、レレイは、くち付けをしてくる。

レレイが、私の下半身の下着を、脱がせた。
私は恥かしさに声をあげる。
レレイは、力を入れて私を抱きながら、
私の熱くなったものを触る。
私は、女の声をあげる。
もう、レレイにはずかしいとは思わなかった。

レレイのあいぶに合わせて、私は声を上げて、
レレイに抱きつく。
だんだん声が悲鳴に近くなって、
私は、限界に達して、放出した。
レレイは、タオルでそれを受け止めた。

私の男服を着たレレイが、私を抱きしめてきた。
そして、くち・づけ。
「ジュン、可愛かった。うんと女の子だったよ。あたし、興奮しちゃった。
 ときどき、今日みたいに、交代しよう。」
「うん。うれしい。今度は、ぼくが男の子になるから、交代しよう。」
「うん。」とレレイは言って、セーターとジーンズを脱いだ。



私は嬉しかった。
私の心の底の願いをレレイが分かってくれた。
もう、レレイに隠していることは何もない。
私は、レレイの下着を少しずつ、はずした。


つづく (次回は、フィクションの予定です。)
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アメリカ編第三部⑦「トムさんと会う」

アメリカの飛行機の移動はとても簡単だ。
車で、飛行場まで行く。
そこに、大きな駐車場がある。
そこは、日にち単位の駐車料で、私は1拍5ドルを払った。

そして、荷物をもち、飛行場に入る。
チケットを見せて、飛行機に乗る。
ダラスに着く。空港のヒルトンホテルへいく。
受付で、自分の名前と運転免許証を見せる。
それで、私が男だと知れるけど、
受付の人は、始終「イエス、マーム。」とか、「ミス・カノウ」と言ってくれた。



ヒルトンホテルは、中から見ても、恐ろしい高さのホテルだった。
私の部屋は、最上階から、五つ目の高さの部屋だった。
1泊高いんだろうなあと思った。
部屋をあけて、びっくり。1ベッドだと思ったら、2ベットだった。
ほとんどスウィート・ルームと言えるところだ。
すごい、私は感激した。
生まれてから泊まる最高のホテルだった。
時間は、夕方の5時を示していた。
約束の時間は、7時。

私はシャワーを浴びて、フォーマルな赤のドレスに着替えた。
メイクを少し濃い目にして、
そして、前髪のある、ストレートなウィッグをかぶった。
イヤリング、ネックレスもOK。
もう一つ、トムさんに買ったものが一つ。
準備は出来たけど、お腹がすいたので、持って来たパウンドケーキを食べた。
食べた後、歯を磨く。
香水は控えた。トムさんに香りをつけてしまうから。
6時になった。
ああ、もうすぐだと思って、心臓がどきどきした。

時間というのは、必ずやってくる。
7時近くになったとき、私の胸の鼓動は、最高になった。
ちょうど7時にノックがあった。
私は、急いで明けた。
そこに、大柄でやさしそうな人が立っていた。
「トムです。」
「アリスです。」と握手をした。
「遠いところありがとう。」
「こちらこそ、VIP待遇に感激しました。」と言った。
トムさんは私を見て、
「おお、アリスさんは、アンの記事の通り、写真より、美しくて可愛い。
 まさに、女性そのものではありませんか。」
「ありがとう、ございます。」

小テーブルを挟んで、椅子に座った。
「記事にもありましたが、アリスさんは、声も女性ですね。」
「はい。これで困ったこともあります。」
「どんな?」
「アメリカに来たばかりのとき、女装していないのに、声を出すと、女性に見られました。」
「なるほど。多くの女装者は、声でばれるというのに。」

少しお話をして、食事をと言われた。
しかし、私は胸がいっぱいで、とてもたくさんはたべられないと言った。
トムさんは、
「実は私もです。今日アリスさんと会えると思うと、緊張して、昼からまともに食べられませんでした。」
と言った。
そこで、二人で、軽食の方のレストランに言った。
私は、ソルティードッグ、トムさんは、コーラ。
二人で、1皿のサンドイッチを頼んだ。

それでも、サンドイッチがあまった。
トムさんはそれを包んで、私に持たせてくれた。
「夜中にお腹がすきますからね。」とトムさんは行った。

部屋に入って、小テーブルにトムさんと向かい合って座った。
トムさんが言う。
「私は、実は、文では言葉がいくらでも出てくるのですが、
 こうして、あなたのようなステキな人を前にすると、
 あがってしまい、何を言っていいか分からなくなってしまうんです。
 いくつか話題を考えてきたのですが、それを、もう使ってしまいました。」

「じゃあ、私から。トムさんは、何がお好きなのですか?」私は聞いた。
「それが、数学ばかりの男で、会社でもそうだし、他に経験がないのです。」
「数学は、あたしも好きですが。」
「ほんとですか。数学の話ならいくらでもできます。」
「じゃあ、お聞きしても、いいですか。」
「いくらでもどうぞ。」

「私は、フランスの数学者コーシーが犯した二つの大罪について知りたいんです。」
トムさんは、私の質問にとても喜ばれた。
「アーベルとガロアという若き2人の天才の論文を
 2つとも失くして読まなかったというあれですね。」
「そうです!あれは、どのくらいの罪でしょうか。」
「罪なんてものじゃない。私なら無期懲役ですよ。」トムは笑った。
「もし、コーシーが読んでいたら、どうなっていましたか?」
「それはですね・・・・。」
とトムさんは、熱く語ってくれた。
私は、目を輝かせて、質問を挟みながら、聞いた。

気が付いたとき、トムさんと私は、すっかり打ち解けていた。

「アリスさん。あなたは、素晴らしい人です。
 私のような固い人間を、すっかりリラックスさせてくれました。」とトムさんは言った。
「トムさんは、女装をなさらないんですか。」と聞いた。
「子供のころは、思っていました。でも、厳格な家庭だったので、絶対できませんでした。

 それから、結婚して、子供も出来て、ますます出来なくなりました。
 だから、せめて、女装の人を愛する人間になりました。
 私は新聞でアリスさんを見たとき、生涯これ以上の人に会えないと思いました。
 だから、どうしてもお会いしたかったのです。」

「では、上着とシャツをお脱ぎになって、ドレッサーの前にお座りになりませんか。
 私は下手ですが、少し女装を体験なさいませんか。」
「まさか。」とトムさんは言った。
「どうぞ。」と私は、お誘いをした。
打ち解けた後だったので、言いやすかった。

私は、トムさんにメイクをほどこし、
自分のかぶっているかつらを、被せた。
トムさんは、皮膚に張りのある方で、メイクが上手く乗った。
私は買って来た、3Lサイズのネグリジェを取り出して、
「これに、お着替えください。」と言った。

ネグリジェに着替えたトムさんは、女性だった。
かつらのボブヘヤーは、長くて、前髪があるので、トムさんを、ずっと若く見せていた。

「ステキです。完全に女性です。」私は言った。
トムさんは、鏡を見つめていた。」
「アリスさん。こんな用意をしてくれていたなんて。
 あなたは、なんて、人の心が分かる…。」
「では、あたしもナイトウェアーに着替えます。その間、鏡をご覧になっていてください。」



ベッドに二人で、横になって、見つめあった。
トムさんは言った。
「家内の悪口を言うわけでは、ありません。
 とても、愛しています。
 でも、15年いっしょでいる家内より、
 いま2時間しかごいっしょしていないアリスさんが、
 私の心の一番奥のところを分かってくれた気がします。」
「私たちは、仲間ですから。」と私はにっこりして言った。



ベッドのひとときが終わって、
トムさんが、帰らなくてはいけないという。
「ベッドが2つありますのに?」と聞いた。
「もったいないようですが、帰ります。」

メイクを落とし、トムさんがスーツ姿に戻った。
私は、ナイトウェアーだったので、部屋の中でしか見送れなかった。
「最高の待遇をしてくださって、感激しました。ありがとうございました。」私は言った。
「生涯1度の女装ができました。それも、アリスさんから。この上ないことです。
 一生忘れるものではありません。お会いできてほんとによかった。ありがとう。」
トムさんは、私を思い切り抱いて、ドアの外に消えた。

いい方だったなあ…と、ご一緒だった時間を思い出していた。
それから、大きな2つもあるダブルベッドを見渡した。
窓から、ダラスの町の明かりを見て、
包んでもらったサンドイッチを食べた。

こんなことは、一生に1度しかないだろうなと思った。
トムさんに感謝しながら、ベッドに入り、
地上20階の眠りに就いた。


つづく (次回は未定です。)

アメリカ編第三部⑥「トムさんという人」


新聞に初めて投稿したときから、2週間が経って、
そろそろレレイに頼んで新しい写真を撮りたいと思った。

一つは、薄緑のワンピースを着て、
美しい木漏れ日を少し上向きに眺めている横顔の写真。
もう一つは、派手なピンクの、肩見せの
ナイトウエアーで、丈がおへそが隠れるくらいのもの。
(もちろん、下はパンツ型のピンクの下着がある。)
私の髪は、右側に1本部分テールを作って、
足をくずして、ちょっとセクシーなポーズをしているのを撮ってもらった。
その中の1枚が、とてもよく取れていて、
「ジュン、この写真で、みなさまを悩殺よ。」レレイは言った。

写真が出来たので、私はTVタイムスに2度目の記事を投稿した。
内容は、男子トイレに行けなく、女子トイレも行けず苦労し、
女子トイレ使用の許可書をもらうまでの話。

記事用には、木漏れ日の下での横顔、
個人広告では、ナイトウェアーのセクシー写真をつけて送った。

2週間後、新しい新聞が送られてきた。(早い。)
今度もナイトウェアーの写真は、原寸大で掲載され、
私の記事は写真付きで載り、
アンの書いてくれた、私と会ったという記事も出ていた。
アンは、きっと書くのがお仕事のようで、素晴らしい文章。
私を誉めちぎってくれていた。

今回も副編集長の手紙が入っていた。
『すばらしい写真と、苦労話を書いてくださって、ありがとう。
 前回のジュンの投稿で、新聞の売れ行きが2割伸びた。
 今回はさらに、売り上げが伸びるでしょう。感謝します。』
とのこと。
そばにいたレレイが、
「ジュンは、TVタイムスのアイドルになっちゃうわよ。
 また手紙が、わっと来そう。
 あたし、封筒づめくらいお手伝いするわ。」と言った。
「ジェラシー涌かない?」と私は言った。
「ぜんぜん平気。ただ、このことを両親に自慢できないのが残念。」とレレイは言った。



新聞が発行されて、1週間後、大学の帰り、レレイといっしょに、
郵便局に言った。
私書箱の中をのぞいたら、何もない。
「アリス・ラムですが…。」と言って聞いてみると、
「はいはい、来てますよ。ボックスに入り切らなかったので、袋に入れておきました。」
と言って、買い物袋のような紙袋をくれた。
のぞいて見ると、全部手紙だった。
「わあー!」とレレイと二人で叫んだ。
私のアパートでレレイと手紙の数を数えると、100通を越えていた。
多分、アンの記事が効いたのだと思った。

100通もの手紙に対して、私はしかたなく「指を怪我したのでタイプの字で失礼します。」とお断りして、タイプライターで返事を書かせてもらった。しかし、後付けの言葉(friendly yoursなど)と、私のサインは、手書きにした。そして、写真を木漏れ日とナイトウェアーの2枚入れた。
タイプを使うと、2倍の速さで書けることがわかった。

幸か不幸か、次の日の手紙は、50通くらいで、その次は、30通くらいになって、今までのペースでいけるようになった。
レレイも手伝ってくれて、無事、その日の内に出すことができるようになった。

副編集長のベティさんから、電話があった。
「今度はすごい数の手紙が行ったでしょう。こちらも転送におおわらわでした。」
「初日は、100通を越えました。」
「そうでしたね。最高新記録です。」とベティさんは、電話の向こうで笑っている。
「写真代は、まだなくなっていませんか。」とベティさん。
「はい、もう少し大丈夫だと思います。」
「アンさんがスペシャル・グレイトの記事を書いてくださったので、ジュンの人気がまた高まったのでしょう。」とベティさんが言った。
「うれしいです。」
私はそう言って電話を切った。



手紙の数が安定してきたころ、私は、「トム」さんという方からの手紙が、特別に心に掛かるようになってきていた。
女装をしない方で、いつも私を誉めてくださり、文面に特別な誠意を感じていた。
出した手紙に、また返事をくださり、私の心の中で、親しみが涌いてきていた。
男性としての写真も同封されていた。テキサス州のダラスの方で、距離があっても、一度会ってお話がしたいとおっしゃっている。年齢は40歳くらいの大柄な方だった。

キャロルのときと同じように、私はレレイにトムさんの6通の手紙を見せて、相談してみた。
「この方は、誠実ね。キャロルと同じ。男性のときの写真を送るっていることは、ジュンにすべてをオープンにしているわけだから、信用できると思う。それに、手紙の文がステキ。」

レレイの言葉で、安心した。
私は、トムさんに、私の本住所と電話番号を伝える手紙を出した。

トムさんから、すぐ手紙が来た。
それによると、トムさんは、ダラスを抜けられないので、
飛行機の往復のチケットを私に送り、空港のヒルトンホテルの一室を借りておくので、
そこで、お話をして、食事もしたいとのことだった。

「レレイ、どう思う。」と聞いてみた。
「最高じゃない。飛行機にのって、ヒルトンホテル。
 ものすごくお金かけてでも、ジュンに会いたいってことよ。」

「これは、すごく光栄なことだよね。」と私。
「うん。人生にめったにないこと。」とレレイ。

トムさんにOKの手紙を出した。

日にちや時間が決まって、約束の前の日、
トムさんから電話がかかってきた。

私はどぎまぎして、慌てた返答をしたが、
それがかえって、可愛いと言われた。
新聞記事にあったアンさんの言葉は、本当で、感激だと言われた。
用件は、身分証明を見せる必要がありそうだから、
私の本名が欲しい。その名で予約をしたいとのことだった。
そうだろうなと思った。
私は本名を伝えた。

あとは、会うだけとなった。
私は緊張で、何も手に付かなくなっていった。


つづく (次回は、「トムさんに会う」です。)

アメリカ編第三部⑤「背の高いお客様」

「TVタイムス」の中で、最初に私に手紙をくださった人は、
私の住所を知っている。
私が、私書箱を得る前の人たちだから。
その中に、私のアパートまで歩いて来れるくらいの人がいた。
アンという名前の人で、近いので是非会いたいという手紙を何度ももらったた。
アンの写真をみたが、45歳くらいの人で、派手な化粧と衣装を身に着ける人だった。
ナチュラル派ではないので、そのまま町を歩けば、女装者ということはすぐわかってしまう人だと思った。

アンは、私のアパートを訪ねたいという。
私は、少し躊躇した。明るいときにアンが訪ねてきて、
もしアパートの誰かに見られたら、私も女装者とばれてしまう。
このアパートは、一応女子専門のアパートだ。
そこで、私は、アンに夜の9時を約束の時間にした。

約束した日の夜、約束の時刻、チャイムが鳴った。
私は、ドアを開けて、心臓がドキンとした。
写真では分からなかった。
アンは、背が190cm以上ある人で、ドアをくぐらないと部屋に入れない人だった。
私は、思わず、急いでアンを部屋の中に案内した。

私は、どんなに女装と分かる人でも、女装者同士という仲間意識を持っていた。
だから、もちろんアンを歓迎した。
アンは、私を見るなり、
「まあ、アリス。あなたは、女の子じゃないの。女の子そのものだわ。写真以上よ。
 ああ、何てステキなことでしょう。」
と言ってくれた。
私も、アンのゴージャスな衣装を誉め、メイクがステキだと言った。

アンにソファーにかけるように言い、コーヒーを入れた。
そして、クッキーを添えた。
二人で飲みながら、お話をした。
それから、アルバムに収めている、手紙をくれたみなさんの写真をいっしょに見た。
(写真を公開されている方々なのでいいかなと思った。)

「この二人の方、ユニークなんですよ。お父さんと息子さんなんです。
 親子で女装をなさってるんです。」
「まあ、そんなのありなのね。おもしろいわ。」とアン。

1枚の写真を横に3分の1ずつ切ってある写真を私は指差した。
「この方、初め、膝から下の部分だけの写真を送ってこられるんです。
 で、もっと私が見たかったら、ご返事ちょうだいっておっしゃるの。
 あたし、返事を出しました、すると、今度は下から2番目の写真が来て、
 また同じことおっしゃる。あたし、3回返事を出して、やっと彼女の写真を
 完成させたんですよ。」
「あら、おもしろいことする方ね。あたしなんか、背が高いから、
 5等分しなければ、ならないわ。」とアンが言って、笑った。

アルバムを見終わって、アンが言う。
「このアルバム見ても、アリスより可愛い人はいないわ。
 アリスが羨ましいけど、不思議とあなたにジェラシーがわかない。
 あたし、自分より女装に恵まれた人には、ジェラシーを感じるの。
 うらやましくてね。特に背の低い人。
 でも、アリスは、あたしのジェラシーのラインの上にいるの。
 そのランクにいる人は、もうあたし、ひれ伏して、ただ拝んでしまうだけ。
 もう、アリス様なの。だから、新聞であなたの写真をみたときは、感動したわ。
 めったにない衝撃だった。」

「ありがとうございます。うれしいお言葉です。」と私は言った。

「あたしね。自分のことをわかっているつもり。なにせ、この背でしょう。
 190cmを越える女なんている?ファッションモデルにもいないわよ。
 だから、昼の日中、外になんか出ないわ。
 夜、11時頃、車を少しとばして、人がまばらにいる公園なんかを、少し歩いてみるだけ。
 それでも、十分な喜びがあるの。
 でも今日は、9時にここに来たの。11時じゃアリスに悪いもの。
 私の外出の早い時間の最高記録。
 アリスに会いたい一心だったの。人に見られようが、からかわれようが、
 あたしが拝みたいほどのアリスがいると思って、来たの。
 アリスなら、きっと受け入れてくれると思ってね。」

アンの言葉に、私の胸は痛んだ。
私はアンに対して、自責の念にかられた。
女装と分かるアンを、夜遅くに呼んだこと。
背の高いアンを隠すように、急いで部屋にいれたこと。
そんなことが、アンの気持ちを知り、
申し分けなくて、辛く思った。
でも、そんなことを謝らない方がいいと思った。
アンの気持ちに感謝するだけでいいと思った。

「そんなに私を信じてくださって、うれしいです。
 9時に来てくださったアンさんのお気持ちがわかって感激しました。」
私は、じわんと目が潤んでしまった。(自責の念も手伝っていた。)

「アリスはいい子ね。あたしは、別の意味でまた感激したわ。
 私が来ることで、迷惑をかけてしまったかもしれないのに。」
アンは優しい顔でそう言った。
「私たちは、みんな仲間です。手紙をくださる方たちの、
 95%は、みなさんいい方なんですよ。」と私は言った。

「あら、じゃあ、残りの5%の人は、どんな手紙をよこすの?」
「例えば、男性で、自分は丸裸になり、
 あそこを隆々とさせた写真を送り、
 『俺のが欲しけりゃ、いつでも返事をよこせ。』なんていう。」
「あら、いや~ね。やっぱりそういうのいるのね。見たくもないわよ。」とアンは笑った。
「あと、お前は本当は女だろう。新聞社がでっち上げた偽者だ、とか。」
「それは、まあまあじゃない。アリスがあまりにも女の子に見えるから、
 そうも言いたくなったのかもしれない。社の方が迷惑ね。」とアン。
「あと、マリファナやりながら、セックスしようとか、薬使えば最高だぜ、なんていうの。」
「アリスなら乗らないわよね。しょっぱなから、手紙に書いてくるなんてね。」アン。

「さあ、あたしは、そろそろ失礼するわ。」とアン。
「帰って何をすると思う?」と再びアン。
「ううん、わかりません。」
「TVタイムスにアリスと会った記事を書くの。
 多分こんなこと書くわ。
 アリスが、一目で女装とわかるノッポのあたしを、
 少しも嫌な顔をせず迎えてくれたこと。
 アリスの実際は、写真よりさらにステキだったこと。
 アリスの声は、100%女の子の声だったこと。
 アリスは人柄がよくて、やさしいこと。
 最後にアリスが今日言った最高にステキな言葉。」

「そんないいこといいましたか?」
「あなたとしては、普通に言ったことでしょう。」
「何ですか。」
「(女装をする)私たちは、みんな仲間です、その言葉。
 あたしは、自分より女装で恵まれた人を見て、
 ジェラシーを抱いてきたの。それは辛い感情だった。
 でも、あなたのその言葉をきいたとき、目からウロコだった。
 仲間なら、その人のステキなところを、誉めてあげる気持ちになれるわ。
 いろんな女装の人を見て、一人一人のステキなところを、
 探すようにして見ていける。これは、喜びだわ。
 だから、ステキな言葉だと思ったの。
 あたしを変えてくれた。

 アルバムを見せてもらったことは、伏せておくわね。

 あ、私が、アリスに会えたことを、まず自慢するわ。
 読者の中で、何人の人が、あなたに会える幸運を得るかしら。」とアン。
「アンさんが、最初にお会いした方です。」と私は言った。
「それも、自慢に入れておくわ。」



アンをアパートの敷地の端まで、送って行った。
アンは優雅に道を歩いて行った。
「いい人だったなあ。」と思った。
私のいいところを、あんなにも探してくれた。
アンの言葉を聞いて、変われたのは私自身だと思った。


つづく (次回の内容は未定です。)

アメリカ編第三部④「合気道・ダイアン先生が帰って来た」)


私はそのとき、合気道場で、みんなと受身の練習をしていた。
部員は、10人で、男子5人、女子5人だった。
私は、10人に一気に私を攻撃させ、その10人を次々に倒していた。
部員同士でやることも大切だけど、
たまには、私がある程度本気で投げて、それで受身を取る練習も必要だった。

私は、みんなをばったばったとなぎ倒し、
道場の隅っこをフルに使って、動き回っていた。
相手が10人だと、相当疲れる。
そろそろ、息が切れてきたので、
「ごめん、これで終わらせて。」とみんなに頼んだ。

夢中だったので気が付かなかった。

拍手をする人がいる。
見ると、白い上着に、黒袴の女性。
30歳くらいの黒髪の人。
ストレートな髪を後ろで1本にまとめ、
前髪を7:3に分けている。
とても知性的でステキな人だ。
背は私と同じくらい。

「あ、ダイアン先生だ。」とみんなが言った。
「わあ、先生がもどってきた。」
と、みんなは先生にかけ寄っていった。
「先生、出張が長いわよ。」
「ぼく達、ジュンがいなかったら、悲惨なことになってたんだよ。」
「ごめんね。でも、驚いたわ。受身がものすごく上手くなってる。」
「だって、ジュンが来てくれるまで、受身ばっかやってたから。」

ダイアン先生が私を見た。
先生は、礼をして道場に上がると、
「あたし、ダイアンよ。はじめまして。」と手を出した。
「学生のジュンです。はじめまして。」と私は先生と握手した。
「10人を相手にお見事だわ。あなたのような人が来てくれているなんて、思いもよらなかった。」
と先生は言った。
「あたしは、下のリハビリに友達と来ていて、ここに気が付いたんです。
 知ったときはうれしかったです。」と私は言った。
「日本の方ね。」
「はい。」
「まさか、植芝道場だなんて、言わないでちょうだいね。」と先生は笑った。
「そのまさかです。」と私。
「うそー!わあお、グレイトだわ。じゃあ、創始者の植芝翁の教えを受けたの。」
「はい。毎日、ご指導がありました。」
「まあ、なんて羨ましいことでしょう。」とダイアン先生は言った。

「いくらでも、ジュンとお話したいけど、みんなを待たせてもいけないわね。
 さっきの続きをやりましょう。1人で10人はきついわ。」と先生。

そこで、受身の練習が再開した。
1人5人だと、ものすごく楽だった。

みんなでたっぷりやって、休憩した。

そのうち、
「ダイアン先生とジュンで模範試合見せてくれませんか。」
とAさんが言った。
「ジュン、強いんですよ。柔道部のウェイに勝ったんだから。」
「まさか、あのウェイを倒したの。」
「そう。」
「それは、恐ろしいわね。」と先生はにっこりした。

そのとき、階段のところにレレイが来て、聞き耳を立てていたらしい。
私と同じ黒袴の人が2階へ行ったので、様子を見に来たらしいのだ。

「先生とジュンが模範試合をするんですか?」とレレイは道場のぎりぎりまで来て言った。
「レレイ。何してるの?」と私は言った。
「うふふ。」とレレイは言って、下に飛んで行った。
そして、リハビリの人たちに言ったらしく、エレベーターから、
車椅子の見物の人が、大勢来た。
「やあ、ジュン、来たよ。」なんてみなさんから言われた。

「どうも、やるはめになりそうね。」とダイアン先生は首を振りながら言った。
「はい。うれしいです。」と私は言った。
わあーいと部の人たちが喜んだ。

私は、先生と見合った。
先生の立ち姿を見るだけでも、実力の程がわかる。
三段以上の人だと思った。

しばらく見合った後、
先生が、サーと私の襟をとりに来た。
(わかった。ウェイの時の技を見る気だと思った。)
私はウェイのときと同じように、体を左にかわし、
先生の右腕に私の左手をからませ、
そのまま腕をとって、先生を180度回させた。

「あ、ウェイとやったときの技だ!」と誰かが叫んだ。

私は、先生を回しながら、低く沈め、首の後ろを押した。
ここで、ウェイと同じ、反射的に、先生も首を起こし立とうとする。
そこで、ウェイのときは、上がった首に私の右腕をかけて、エビ反り投げを打った。

ところが、先生は身を起こした一瞬、首を閉め、私の腕を入れさせなかった。
(さすが!)私はしかたなく、先生のアゴに指2本をかけて投げを打った。
だが、指2本では、力が足りない。投げられた先生は、余裕で、身をネジって、
両手を畳について受身を取った。そして、ポンっと立ち上がった。

わあーと、大喝采が起こった。
部の人たちも、リハビリの人たちも、興奮していた。
みなさん、ウェイと私との試合をよく覚えていて、防御不可能と思えるあの時の私の技を、
ダイアン先生が目の前で、見事に防いで見せたからだ。

身を整えている先生に、
「先生、ステキー!つよーい!」といって、部の女子達が先生に抱き付きに行った。

レレイも興奮していた。
「ジュン、先生、すごいね。ファンになっちゃう!」と私に言った。
「うん。ものすごい先生。」と私は言った。

先生と握手しながら、
「先生に勝てる気が、全くしなくなりました。」
と私は言った。
「私こそ、やっとだったわ。せっかくアゴを閉めたのに、ジュンは、小指と人差し指でアゴ投げを打ってくるんだもの。ぞっとしたわ。」と先生は笑った。

ステキな人と出会えることは、うれしいことだ。
わたしは、その喜びに浸っていた。

合気道サークルに、大きな太陽が帰って来た。


つづく (つぎは、「背の高い訪問者」)

アメリカ編第三部③「女の子になったキャロル」

アパートについて、キャロルに紅茶を入れた。
キャロルのすねの毛を見せてもらったけど、
金髪の子は、すねの毛も金髪なので、
ストッキングを履くと分からないことに気がついた。
顔の髭も同じ。生えていても、カミソリで剃れば、剃り跡が青く見えない。
これは、とくだなあと思った。

キャロルにシャワーを浴びるように言い、
これを履いてくるようにと花柄のショーツを渡した。
出て着たキャロルに、女の子に見えるショーツの履き方を教えた。
キャロルは、そこを何度も眺めて感心していた。

キャロルをドレッサーのストールに座らせて、
ブラをつけるように言った。
キャロルは付けあぐねていたので、
前でホックをかけて、後ろに回す方法を教えた。
胸の中に、パッドをいれる。
そして、スリップ。
可愛い花柄で、下がミニのスカートになっているものを選んだ。
このスリップが入れば、私のワンピースはすべて着られる。
キャロルは、OKだった。

キャロルは若いので、ごく薄化粧でいった。
ベースクリームを塗って、パフを薄くつけた。
「眉、どうしようか。細くしちゃう?」と聞いた。
「まずいから、このままでいい?」とキャロルは聞いた。
「大丈夫。何とかできるわ。」と私は言った。
私は、付けまつげを付けるノリを、眉につけて、
乾いてきたときに、指でつまんで、眉を細くした。
その上に、茶のアイブロウで形よく描いた。

二重のキャロルにアイシャドウは入れ易い。
ピンク系のシャドウをつけた。目じりにも同じシャドウ。
ハイライト。
チーク。ピンクのリップを引いた。
リップはやっぱりメイクの決めて。
キャロルの顔が、一気に女の子になった。
「キャロルは若いから、付けまつげはやめるね。
 その代わり、カーラーを使い、マスカラにするから。」私は言った。
キャロルはまつげが長く、マスカラで十分だった。

キャロルは、だんだん女の子になっていく自分に、
息をするもの忘れたように、鏡を見つめていた。

「あとは、ウィッグだけね。」とキャロルに言った。
キャロルは、髪を短くしていたので、ウィッグで変わるはず。
前髪のある、私が決めたブロンドのカツラを、キャロルにかぶせた。
ブラシで整えると、どんぴしゃりだった。
前髪と、頬の当たりのふっくらした髪の毛が、すごく似合っていて可愛い。
「あ。」とキャロルが声を上げた。
「どうしたの?」と聞いた。
「女の子になってる。可愛い。」とキャロルはうつむいて言った。
「うんと、可愛いわ。」と私は言った。

「花柄だから、ワンピースも花柄にするわね。」
私はそういって、白地にピンクと赤の花柄がたくさんちりばめられているワンピースを出した。
キャロルを立たせて、七分袖のワンピースを着せた。
「ワンピースは、服が女の子のハイ・ウエストを作ってくれるし、
 ヒップの小ささもかくしてくれるから、お勧めよ。」と伝えた。
背中のファスナーを上げる。キャロルの細いウエストが際立って、ばっちりだった。
パンティ・ストッキングを履く。
そして、白い靴を履く。
肩に小さな白いショルダーバッグを斜にかける。
ちょうど16歳の女の子が出来上がった。

「キャロル、姿見に見に行こう。」
と私は、リビングに誘った。
キャロルは自分の姿を見た。
「ちょっと待って。」と私は言って、
ツバ広の白い帽子を持ってきて、
キャロルの前髪がよく見えるような位置に、被せた。
可愛い。色も白くて、妖精みたいだと思った。

キャロルは、鏡に見とれ、我を忘れていた。
「くすん。」とキャロルが、泣いた。
キャロルは、帽子をとって、私に抱き付いてきた。
「アリス。ありがとう。ぼく、夢を見ているみたい。
 こんなに可愛い女の子になれるなんて、思ってなかった。」
そう言って、キャロルは、ぽろぽろと涙をこぼした。

「夢がかなった?」と聞いた。
「うん、夢以上に叶った。」とキャロルは言った。

「じゃあ、キャロル。あっちのドレッサーで、
 しばらく自分のこと、ずっと見ているといいわ。
 あたし、その間、ランチの用意をするから。」
私は、キャロルに時間をあげた。



私はゆっくりと、サンドイッチを作った。
コーヒーを涌かして。
それと、わざと新聞を読んだりして、
キャロルが自分を見ている時間を長くした。



キャロルと、サンドイッチを食べた。
「おいしい。ぼく、キャフェテリアでアリスを待ってるとき、
 胸がいっぱいで、何にも食べられなかった。」とキャロルは子供のように笑った。
「じゃあ、どんどん食べて。」
「うん、食べてる。」
「キャロル。これ食べたら、外に出てみよう。
 人のいるところへ言って、スリルを味わうの。
 男の子が大勢、キャロルを見るわよ。
 キャロル、可愛いから。」と私は言った。
「それ、すごくスリリング。」とキャロルは言った。



外は寒かったので、暖房のきいたショッピングモールへ直行した。
キャロルの肢はほんの少しX脚気味で、歩くとそのまま女の子歩きに見えた。
私たちは、買い物のカートを押しながら、様子をうかがった。
男の子が、チラッと、キャロルを見て行く。
「キャロル、今一人あなたを見たわよ。」
「ほんと。」
「ほら、今振り返ってキャロルをまた見ていった。」

その後、キャロルは、すれ違う男の子にほとんど見られていくことが分かった。

こんなふうにして、何も買わずに帰って来た。

「ああ、楽しかった。ほんとに男の子が、ぼくを見てくれたの?」
「ほんとよ。ほとんどの子が、見て行ったわ。」
「男だってバレたからじゃない?」
「キャロルは、完璧パスしてる。自信をもって。」私は言った。

キャロルといっしょにいられる時間が、あと少しになっていた。

私はちょっと真面目な顔をして言った。
「キャロル。今あなたが身に着けているもの、全部あなたにプレゼントする。
 カツラは、ロスでタダみたいに安く買ったものだから、気にしないで。
 下着から、ワンピース。靴。バッグ。化粧品セット。帽子はかさばるからおいていって。
 あなたが、その格好で行けば、ぜったいに女の子で通るから。
 メイクは、初めリップだけでいいと思う。それで、キャロルは女の子に見える。
 声もパスしてる。かえって話した方が、女の子だと思われる。
 その格好で、女物の洋服や、下着や、ほしいもの何でも買っていけるでしょう。わかった。」

「アリスは、どうして、そんなにぼくに親切にしてくれるの。」とキャロルは言った。
「私も、昔、親切な人に、同じように助けられたことがあるからなの。
 その人には、恩返しができないから、次の人にしているの。
 だから、キャロルが、もっと女装になれて、物もたくさん持てるようになって、
 もし、だれか、同じことで悩んでいる人がいたら、助けて上げて欲しいの。ペイ・フォーワードなの。」

キャロルは、じっと私を見ていた。目が少し潤んでいた。
「うん。わかった。ペイ・フォーワードだね。ありがとう、アリス。」



キャロルのメイクを落とし、荷物をまとめて、車に乗った。
キャロルを、キャロルの家のそばまで送った。

「ぼくが、もう少し女装が上手になったら、また写真を送るね。」とキャロルはいった。
「楽しみにしている。」そう言って、私は車を発車した。
バックミラーに映っているキャロルが何時までも私を見送っている。
私は、フォーンを少し鳴らして、道を曲がった。


つづく (次は、「帰って来たダイアン先生」)

アメリカ編大三部②「キャロルという青年」

「TVタイムス」を通しての私への手紙は、毎日平均30通は来た。
私は、写真代がとてもたまらないので、思い切って新聞社に電話をした。
副編集長のベティさんが出て、私は、訳を話した。
すると、あなたへの手紙が多いことは、こちらでも把握している。
あなたは、新聞の売れ行きに多いに貢献しているので、
写真代を新聞社の方で負担したい。
その代わり、新しい写真をどんどん送って欲しい。
との返事がもらえた。

電話を切るとき、
「あなたは、声も女性と変わらないわ。
 新聞に貴女の声を載せられないのが残念よ。」
そんなことを言われた。
そして、3日後に、200ドルの写真代が送られてきた。
(こういうところ、すごくアバウトだった。)

アメリカでの最終学期に入り、私が取らなければならない科目は2科目だけになっていた。
私には時間があった。

私は、実の住所を知られたくないので、郵便局に私書箱を借りた。
新聞に出した仮名の通り、「アリス・ラム」という名前で借りた。
(アメリカの場合、それは、実に簡単。)

私は、みなさんの手紙は、きちんと読んだ。
そして、短い文だか、丁寧に返事を書き、自分の写真を同封した。

そして、同封してあるその人の写真は、ちゃんとアルバムに整理していった。

来る手紙の95%は、真面目で真摯な手紙だった。
その中で、特別に心にかかる手紙があった。
キャロル・アンダーソンと名乗る16歳の高校生で、
「女装がしたいけど、できる環境にない。
 アリスさんに会いたい。毎日夢に見ている。アリスさんに女装してもらいたい。」
というような内容で、彼の上半身の男のままの写真が入っていた。
見ると、可愛い。女装に向いた目鼻立ちをしている。
体格も華奢だ。
返事を書くと、彼は必ず誠意ある返事をよこしてくる。

彼の手紙が、5通ほどになったとき、
私は、レレイにキャロルの手紙を全部見せた。
「どう思う。」
「いたずらじゃないと思う。
 ちゃんと住所が書いてあるし、写真も入ってる。
 文もしっかりしていて、字がきれい。」
とレレイは言った。
「じゃあ、この子の夢を叶えてあげようかなあ。」と私は言った。
「うん。きっとその子、喜ぶと思う。」とレレイは言った。



私は、キャロルに女装をさせることのOKの手紙を書いた。
そして、落ち合う方法や、場所を決めた。
車を運転できる年ではないので、彼はバスで来る。
幸い彼の町は、ニューオーリンズの近くだった。
落ち合う場所は、ニューオーリンズのバス・ターミナルのカフェテリア。
会うのは土曜日。時間は午前10時となった。

キャロルは金髪だ。
私は、ロサンゼルスで、安く買ったブロンドのカツラを調べてみた。
一つは、マリリン・モンロー型。
もう一つは、それに前髪があるもの。多分こちらが可愛いと思った。
背は、163cmなので、私の服が着られると思った。
そして、彼用の下着を買っておいた。



約束の日、約束の時間。
私は、バスターミナルに行った。
自分が若く見えるように、
前髪のあるセミロングのボブヘヤーのカツラをかぶって行った。
少しドキドキした。
彼は、もっとドキドキしているにちがいない。

カフェテリアに行ってみると、一目でキャロルがわかった。
可愛い。16歳には見えない。私の胸は躍った。
キャロルのテーブルの前に座って、
「キャロル?あたし、アリスよ。」と言った。
キャロルは、目を丸くして、
「わあっ。アリス?お写真より、ずっと綺麗。それに若く見える。」
二人で握手した。
キャロルの声は、女の子のようだった。私は感激した。
「何歳くらいに見える?」と私は聞いた。
「うーん、16歳。」
「じゃ、あなたと同い年だわ。」と私は言った。

車でアパートに向かいながら話した。
「ぼく、新聞で、アリスを見たとき、心から感激した。
 女装って暗い世界かと思ってきていたけど、
 アリスの記事や写真を見て、光が差したみたいに思った。
 女装が明るい世界のものに思えて、うれしかった。」
キャロルがそう言った。
「ありがとう。そう言ってくださるとうれしい。」と私は言った。
「アリスには、毎日、すごい手紙が来るでしょう。」とキャロルが言う。
「うん。毎日30通くらいかな。」
「そんなに!だけど、ぼくには、親切な返事をすぐに書いてくれてる。」
「キャロルは、特別。すごく応援したくなる人なの。」
「ありがとう。ぼくうれしい。」

キャロルは、なんて私に似てるんだろうと、私は思った。
女顔、女声。そのことで、今まで、どれだけ苦労しただろう。
このアメリカでは特に。そう思っていた。


つづく (次回は、「女の子になったキャロル」)

アメリカ編第三部①「TVタイムス」

フィクションをもう少し書きたかったのですが、ジュンのアメリカ編をもう少し続けることにしました。ときどきフィクションも書くと思います。読んでくださるとうれしいです。

================================

アメリカでの、最後のニューイヤーが過ぎた。
この大学にいられるのも、あと6ヶ月だった。

レレイは、日常生活では、もう車椅子を使っていなかった。
レレイは、相変わらずリハビリ・センターで、毎日、筋力トレーニングをしていた。
走ったり跳んだりの運動ができるように。
私はその間、2階の武道場で、合気道のコーチをしていた。
そして、帰りは、レレイといっしょに、車で帰っていた。
途中私の部屋で、かならずくつろいでいった。



ある土曜日、(私は、かつらフェチだったので、)
行きつけのかつら屋さんへレレイと二人で、行った。
レレイは、珍しそうに、かつらを見ていた。
レレイは、天然ウエーブなので、ストレートの髪に興味があるようだった。

「ねえねえ、これどうかなあ。」とレレイはストレートボブのかつらを指差して言う。
「あ、それならぼく持ってる。」
「ほんと、じゃあ、かぶらせて。」とレレイは言った。
「いいよ。」と私。

私は、その店でおもしろい新聞を見つけた。
「TVガイド」。ぱっと見には、「テレビ・ガイド」のことだ。
しかし、TVとは、トランスベスタイト(女装者)のことだった。
シャレた名前だなあと思って、私は早速買った。

アパートに戻ってきて、レレイに私のもっているかつらを全部見せた。7つはある。
「わあ~。」レレイは言って、それを1つ1つかぶって楽しんでいた。

その間、私は新聞を読んでいた。
1面は、女装にまつわるおもしろいニュース。
2面は、編集長のコラムだった。
編集長は、ジュディというブロンドの美貌の学生編集長で、性転換済みという人だった。
どうも、このジュディの魅力でこの新聞は売れているらしい。
ジュディの写真がいっぱい登場している。

残りのページは、全て個人広告で、みなさん自分の顔写真をのせて、
文通希望や、写真の交換を目的としていた。

それら、個人広告の人たちの「州」をみると、
アメリカ全土にわたっていて、日本からの広告もあった。
これは、すごい新聞だと思った。
新聞社は、主に広告主同士の手紙の転送サービスをするという仕組みだった。



「ねえねえ、これどう?」とレレイが、かつらをかぶって言う。
私は、レレイのお付き合いをすることにした。
ドレッサーのまえで、美容師のように、1つ1つレレイにかぶせ、
ブラシで、セットした。
その度に、レレイはよろこんだ。
レレイは、前髪のある、ロングのストレートボブがいちばん気に入ったようだ。
「すごく似合ってるよ。」と私は言った。
「かつらっておもしろい。」とレレイは言った。
「よかったら、貸してあげる。かぶって家に帰ったら。
 そして、大学にかぶってくる。」
「いいの?」
「もちろん。」
かつらをかぶったレレイのまま、レレイを送って行った。



その日の夜、私は新聞へ投稿をしようと思い、ジュディ編集長宛てにコラムを書いた。
それは、去年の秋、学生証を作ってもらうとき、
性別をM(男)と用紙に記入して渡したにも関わらず、
出きて来たものは女性の学生証だったというエピソードだ。
私の下手な英語で書いたので、
掲載されることは、ほとんど期待してなかった。

それでも、私は月1回発行の次の新聞を見るのを楽しみに思っていた。

ところが、1週間位して、「TVタイムス」の
副編集長のベティさんという人から手紙が来た。

中を読むと、あなたのエピソードは大変おもしろいので、掲載したいが、女性に間違えられたあなたの写真が欲しい。ぜひ、個人広告の方に写真入りで掲載したい。OKならば、写真と、広告文を2、3行ください、とのことだった。

私は、写真をとるとなると、レレイの協力が欲しいので、
レレイに、私の女装願望のことを詳しく打ち明けた。
女装者同士なら、セックスをしたくなることも話した。
レレイは、女装者同士のセックスなら、ジェラシーは感じないと言った。
(これは、ウォンや恵子の場合も同じだった。)

私は、レオタードを着て、フルメイク、前髪、ヘアバンドをして、長いソフト・ウェイブの髪を垂らした、私の上半身の写真をレレイに撮ってもらった。アメリカ人好みに、胸も大きくした。
10枚の中で、いちばんいいのを選んだ。

そして、「私は日本からの留学生です。写真交換を希望します。」という文を添えて、出版者に送った。



それから、2週間くらい経って、出版者から、次号の新聞がタダで送られてきた。
すると、コラムに私の女子学生証の記事がちゃんと出ていた。
題名は、「これが私のあるがまま」というような気の利いたものになっていた。
私は、うれしくて一番にレレイに見せた。
「わあ、すごいじゃない。全米ネットよ。」とレレイが喜んでくれた。
そして私は、個人広告の方の私の写真を見た。
すると、他の人たちの写真は、みんな縮小されているのに、
私のだけは、フルサイズで、紙面のいちばんいいところに載っていた。
「ジュン、これ特別扱いじゃない。」とレレイが言った。



それから、しばらくして、思ってもみなかったことが起こった。
レレイといっしょに、大学から帰って来たら、私の郵便箱に、郵便が入りきれず、あふれて下にも落ちていた。
レレイと二人で数を数えた。
全部で50通を越えていた。
レレイと二人で、
「オー・マイ・ゴッド…。」と言った。


「ジュン、この人達みんなに写真送るだけでも、写真代大変よ。」とレレイは言った。
切手は、返信用の封筒が入っているので、大丈夫だった。」
「でも、送らないわけにはいかないよね。広告出したんだから。」と私。
「あしたも、あさっても来るのかしら?」とレレイ。
「多分、イエスだよ?」
二人で、もう一度言った。
「オー・マイゴード…。」


つづく

フィクション・「クリーニング店の幸夫」 後編

日曜日。
もうすぐ10時になる。
7時に起きて、今まで何も手につかなかった。
心臓をときめかせ、邦子のマンションのドアのチャイムを鳴らした。
手が震えた。
「いらっしゃいませ。」との声と同時に顔を出したのは、邦子ではなかった。
年はちょうど幸夫くらいの女の子で、美容院の制服のような、
淡い水色のワンピース型の作業着を来ている。
髪は、後ろ1本に結んでいて、前髪があった。
「どうぞ、入ってください。」
そう言われて、玄関に入った。
そこに邦子もいて、
「幸夫君。愛子ちゃんを紹介するわ。今日あなたを女の子にしてくれる子よ。」
そう言った。
幸夫は複雑な心境だった。
美人で憧れの邦子が自分を女の子にしてくれると思っていた。
少し、がっかりもしたが、同い年くらいの愛子にも魅かれるものがあった。



「さあ、幸夫さん、お風呂に入りますよ。」と愛子に言われ、
バスに行き、裸になった。
すると、愛子が来て、「お世話いたします。」と言う。
女の子と風呂場を共にするなんて、幸夫はびっくりした。
「すねの毛をそったり、しますから。」と愛子はてきぱきとしていて、
幸夫におかしな考えを起こさせなかった。

湯船から出て、小椅子に座った幸夫の前で、
愛子はせっせと幸夫の足のすねに石鹸を塗っていく。
愛子は化粧をしていなかった。そのためか、のっぺりとした顔立ちに見えた。
だが、2つの瞳はとても綺麗だった。
愛子は、上手に肢の毛を剃っていく、
「幸夫さんはどこから?」そう聞く愛子の言葉になまりがあった。
「ぼく、徳島から。」
「なんや、うち香川からよ。」
「ほな、近いがね。」
「ほやな。」と愛子は言った。
「なんで、大阪にせんかったん?」と幸夫。
「大阪には知っとる人が多いけん。」
「誰も知らんところがよかったん?」
「うん。女になるには、その方がええやろ。」
「愛子ちゃんは、女やがね。」
「女に見えるか?ありがとう。うち、男や。」と愛子が言う。
「ほんま???」と幸夫はひっくり返りそうになった。
「幸夫さん、危ないがね。びっくりしてくれるのは、うれしいけど。」と愛子は言った。
愛子が男と聞いて、幸夫は一気に興奮して、あそこが上向いてしまっていた。
「うちでも、男の子、こんな風にできるんやね。」と愛子は幸夫の上向きのものを触った。
「愛子ちゃん、可愛いもん。男や思たら、もっと興奮する。」
「わかるよ。うちかて、これから幸夫ちゃんがどないな女の子になるか楽しみ。
 幸夫ちゃん、きっと美人になるよ。あたしわかるんや。」と愛子は言った。

幸夫はすねの毛も、脇の下の毛もきれいになり、風呂を出た。
「これ履きますよ。」と愛子に言われ、ショーツとブラとガーターベルトを渡された。
でも、幸夫の部分は、まだ、上を向きっぱなしで、とてもショーツをはけない。
「じゃあ、タオルでこないして、お化粧先にしましょう。」
と愛子は、タオルを幸夫に女の子巻きした。
タオルから出た肢は、女の子のように、つるっとしていて、余計に興奮しそうだった。
「幸夫ちゃんは、肢が綺麗で、真っ直ぐで長い。ステキやわ。
 背は、160cmくらい。うちと同じくらいやね。」と愛子が言った。

化粧室のストールに座り、鏡を見た。
愛子は、慣れた手付きで、次々と作業を進める。
幸夫の髪にホットカーラーを内まきにつけて。
「眉をいじるけど、かまへん?」と愛子が言う。
「うん、そうして。」と幸夫は答えた。

眉を女の子に形に整え、前髪を梳いて、まばらに額が見えるようにした。
メイクはピンク系で、手早く仕上げ、付けまつげを上向きのつけた。
ホットカーラーをはずし、髪を整えると、幸夫は見違えるように美少女になった。
「どや。鏡にいるの幸夫ちゃんやで。」と愛子は言った。
幸夫は思わず鏡の自分に見とれてしまった。
こんな美少女になるとは思わなかった。
うれしくて、涙が出そうだった。
「愛子ちゃん、ありがとう。ぼくうれしい。」

ショーツは、ブルマ型にした。
膨らみはガードルで押さえ、ストッキングをガードルに留めた。
ブラを着ける。その中にストッキングを丸めていれる。スリップをかぶる。
すると、女のシルエットが浮かぶ。
そして、メイクに合わせ、長袖のピンクのワンピースを来た。
真珠のネックレスとイアリングをつけて、できあがり。
「幸夫ちゃん。あたしが思たとおり、綺麗や。うち、うれしい。」と愛子が言った。



「ママ、できました。」と愛子がママを呼びにいった。
やって来たママは、
「まあ、可愛い。幸夫君、可愛いわよ。」と言った。
「はい。うれしいです。」と幸夫は言った。

「ママ、あたしもメイクしてきます。」と愛子が言った。

邦子は、幸夫を寝室に連れていき、そこのドレッサーの前に座らせて、
たっぷり変身した姿を眺めるように言って、ソファーに戻った。
幸夫は驚いていた。
自分がこんな美少女になれるなんて…。
嬉しさがこみ上げて来る。



10分もたたないうちに、愛子がやって来た。
さっきの化粧無しの顔とはまるで違って、美貌の少女に変身していた。
髪にヘアーピースをつけて、背中まである長髪にして、
前髪をふっくらさせていた。
頭にヘヤバンド。
花柄のミニの長袖のワンピース。
ミニのワンピースから出た肢が真っ直ぐでとても長い。
見違えるほどの、都会的な少女になっていた。

「まあ、可愛い。早く幸夫君に見せてらっしゃい。」と邦子が言った。
「いっしょに寝てもいいですか?」と愛子は小声で言った。
「愛子に譲るわ。」と邦子は言った。
愛子は、嬉しそうに笑って、幸夫のいるベッドルームへ行った。

ベッドルームの鏡で、自分に見とれている幸夫の後ろから、
愛子はそうっと入って。幸夫の目隠しをした。
「だれ?」と幸夫。
「あたし。」愛子は標準語に戻っていた。
幸夫は、振り向いて、愛子を見た。
「愛子ちゃん??」と幸夫は首をかしげた。
「そうよ。」
「わあ、別人みたい。綺麗や。お化粧で、そないに変われるの?」
「幸夫ちゃんだって、すごく可愛い。別人になったわよ。」
「感激…。こんな可愛い人が、ぼくのお世話をしてくれたなんて。」
幸夫も標準語になっていた。
「幸夫ちゃん。もう幸子よ。それに、ぼくじゃなくて、あたし。」
「うん。あたし、びっくりした。」
「ベッドの上に二人並ぼう。」と愛子が言った。
「うん。いいわ。」と幸夫は女言葉を初めて使ってみた。
なんだか、ぞくっとする。
長く鏡を見ていたので、自分は女だと自然に思っていた。

「ぼく、いえ、あたし、こんな可愛い女の子と、並んだことないの。」とベッドの上で幸夫は言った。
「抱いて。」
「うん。」幸夫はぎこちなく、愛子を抱いた。
愛子は、自分からも、幸夫を抱いた。
「愛子ちゃん、いい匂いがする。」
「香水つけたの。」

愛子はベッドルームの引き戸をしめた。
薄暗くなった中で二人は互いを見つめた。

口づけをして、抱き合って、
そのうち2人で、スリップ1枚になった。
「ほんとや。愛子ちゃんは男の子や。信じられんけど。」幸夫は言った。
「幸子も信じられない。」と愛子も言った。

絡み合い、もつれ合って、やがて二人は夢の国へ行った。


おわり


フィクション・「クリーニング店の幸夫」前編

体験談のネタが思いつかず、一つ、フィクションを書いてみました。

フィクションは、初挑戦でまったく自信がありません。読んでくださるとうれしいです。

===============================

今から、40年位前。

幸夫は、クリーニング店で働いていた。
幸夫の仕事は、洗い上がった洋服を届けることと、
洗濯物の注文を聞いて、それをもらってくること。

黒い自転車の荷台に、大きな布製の箱が取り付けられていて、
そこに洗濯物を入れる。

幸夫は中学を出て上京し、そのクリーニング店で働き2年目になる。

この店で働くことに、幸夫は秘密の楽しみを持っていた。

幸夫にはお得意の中で、特別に憧れているお客があった。
その人は、大きなマンションで、一人住まいであるらしい。
名前は、邦子さんという30位のきれいな人だ。
邦子さんは、毎日洗濯を出す。

その日も、幸夫は洗い上がった洗濯物を持って、邦子さんのマンションに行った。
午後の2時ごろだった。
ブザーを押すと、邦子さんが出て着て、
「いつもありがとう。今日はこれをお願いね。」
と言って、洗濯物を預ける。
洗濯物の袋に、名前を書いて、幸夫は、あいさつをし、
1階の横に置いてある、自転車の大袋に入れる。

それから、幸夫は猛スピードで、
自分の3畳のアパートへ行く。
そして、邦子さんの洗濯物をもって、部屋に入る。
部屋は殺風景で、部屋に不釣合いな、大きな姿身がある。
幸夫が、思い切って買ったものだ。

幸夫は、その姿見の前で、邦子さんの洗濯物を取り出す。
そして、自分は、パンツ1つになり、邦子さんのドレスを1着取り出す。
今日のドレスは3着あった。
幸夫は、赤いワンピースを取り出した。
幸夫が、一番興奮するときだ。
心臓がどきどきして、手が震える。

邦子さんのドレスに、体を入れ、ワンピースの袖に腕を通し、
肩を入れて、背中のファスナーをあげる。

幸夫は、長い髪を女の子風にして、
姿見に自分を映してみる。
心臓が最高にドキドキする。
そこに、女に変身した自分がいる。
「あたし、邦子よ。」と鏡に向かって言ってみる。
最高に興奮する一時だが、
幸夫は、自分で自分を慰める方法をまだ知らなかった。

もやもやした気持ちに耐え難くなりながら、
幸夫は、邦子さんの洋服を脱ぐ。

そして、何事もなかったように、クリーニング店に帰る。
幸夫には、そんな女装の趣味があった。



ある土曜日のこと。
いつも通り、幸夫は、邦子さんのマンションへ行った。
「玄関に上がって、ドアを閉めて。」と言われた。
幸夫がそうしていると、
「はい、今日のね。」と邦子さんから、洗濯物を渡された。
幸夫が行こうとすると、邦子さんが呼び止める。
「あなた、お名前は?」
「幸夫です。」
「あなた、あたしの洗濯物をお店に届ける前に、
 自分の部屋に持って行って、着てない?」と邦子さんが言う。
幸夫は、ドキンとして、心臓が止まりそうになり、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「はい。すいません。
 でも、どうしてわかったんですか。」と幸夫は聞いた。

邦子さんは、ちょっと笑って、
「あてずっぽうで言ってみただけなのよ。」と言った。
「じゃあ、違いますって言えばよかった。」と幸夫は言った。
「もう、遅いわよ。」と邦子さんは笑い、
「いいわよ。あなたの願いを叶えてあげる。明日の日曜日お仕事は?」と聞いた。
「明日は休みです。」
「じゃあ、ちょうどいいわ。明日の午前10時に、ここにいらっしゃい。
 あなたを、思い切り女の子にしてあげる。」と邦子さんは、言った。

幸夫は、邦子さんの言葉に夢心地となって、お店に帰った。


つづく

ジュンが新宿で売ってた詩です

先の記事がアクセス不可になってしまいました。
何にも投稿しないよりましかなと思って、ジュンの詩を投稿します。
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『燃えよ 静かに』


火よ 燃えよ 静かに

高原の 広場の 真ん中で
円く囲んだ 子供達に 見つめられながら
持てる熱を 全て 夜空に散らして
何も 求めず 激しく しかし 静かに

子供達は ただ 火に見とれながら 心打たれ
みんなで 見つめた 火を 一生忘れず

ちろちろと またたく ろうそくの火の元で
書を読む人 
家族が 寝静まったその後も
一心に 学ぶのは 誰を思ってか 

照らせ ろうそくの火よ 静かに 書を照らせ
学ぶ人の心を 癒し 勇気を 与えよ

小皿の中で 破り刻んだ文を 燃やす人よ
何かとの別れを 決意し じっと 炎を見つめ
瞳に映る 火の影に 悲しみを 隠し
そっと 惜別の時を 送り 思い出さぬことを 誓い

火よ 燃えよ 静かに 
その人の 意を汲んで 
全て 焼け

ただ 何も求めず

女装クラブ「KFサロン」 P子のこと

気軽に楽しく書きました。しかし、この記事の運命は、風前の灯かと。何時間、ここにあり続けられるか、楽しみにときどき見にこようと思います。

================================

A子とP子と私と、若手が3人いた中で、
P子ほど、女装度の高い子はいなかった。
「やだ。」とか「や~ん。」「いや。」とかの女の子っぽい言葉を自由に使う。
仕草や表情が、甘ったれていて、声も鼻にかかった女女した声。
大人しいA子と比べると、対象的だった。

身長は、170cmと背が高かったが、プロポーションがよくて、脚が長い。
パンティストッキングにタイトなスカートを履いたりすると、
足フェチの人にはたまらないだろうと思える曲線美だった。

「ねえ、ねえ、加奈。今度買った服、見てくれない?」
なんて、言われると、セックスアピール満点で、その場で丘したくなってしまう。

P子には、パトロンが決まっていたので、他の男性会員は、手を出せなかったが、
不思議な規則で、パトロンのいない日は、女同士で、レズプレイをするのは自由だった。
P子の悩みは、そのパトロンのHさんが、月に1度くらいしか来ないことだった。



あるとき、P子が、欲求不満の塊になっていた。
P子の背中を、すっと撫でてみたら、
「や~ん、加奈ったら、なにするの?」とP子は言う。
たぶん、それだけで、P子は、あそこを大きくしてしまっている。
「P子、屋上へ涼みにいかない?」と私は言った。
「あ、その言葉だけで感じちゃう。」とP子。
「ハレンチごっこで、行こう。」とP子の耳にささやいた。
「あ、だめ。その言葉強烈、あたし、もうだめ。」
「手で押さえていけばいいじゃない。」
「うん。」

P子と二人で、下着とストッキングを脱いで、
ハンドバッグをもって、
夜の涼しい屋上に出た。かなり広い。

もの干し場のそばにベンチがあったので、2人並んで座った。
P子は、花柄のミニのワンピースだったので、
ベンチの冷たさを直接に感じているにちがいない。
そして、キスをする。
「男性のキスは、強く抱かれて、激しくされるのがいいけど、
 女同士のキスは、ぺちゃぺちゃ粘っこくするのがいいわね。」とP子が言う。
「そうね。」
私はいいながら、P子のスカートに手を入れて、
長い足をなでた。
「あ~ん。加奈やめて。」
P子はそこを、スカ―トの外からわかるくらいに、膨張させていた。
念のために、P子に部分に、私はゴムをかぶせた。

P子の膝を固く閉じて、足を揃えて、斜めに流していた。
「P子、座るときのお行儀いいね。」と私は言った。
「だって、女だもの。」とP子は言う。
「P子ずっと、そのままのお行儀でいるのよ。
 くずしちゃだめ。いいこと?」と私。
「なんか、それ逆にHね。」
「でしょう。これができたら、町の中でも丘して上げる。」
私の言葉に、P子が反応した。
私はP子のゴムに触れた。
「ここでは、声を出しちゃだめなのよ。」
「無理よ。」
「ハンカチ加えて。」
「うん。」

「うううん…。」とP子が声を上げた。
私は、P子への刺激をつづけた。
P子の肢が開きそうになる。
「ああ、最高、こんな屋上でするなんて。
 最高に感じちゃう。」
「P子、肢が開いてる。」
「あ、いけない。」
P子が、肢を閉じながら、刺激されている。

P子の体が、震えてきた。
「あ、あ。」とP子が小刻みに声を上げる。
「加奈、イきそう。肢開いていい?」
「だめ、最後まで閉じているの。」
「う~ん、我慢できないわ。イかせて。」
「もう少し我慢。」
「う、う、…。う~ん。」
「まだよ。」
「う、ううう…。」
そう言って、P子は、肢を閉じたまま、痙攣して果てて言った。

私は、ティッシュとミニタオルで、P子の部分をきれいにして上げた。

「加奈はいいの?」とP子が言った。
「全然よくない。P子の声で、興奮しっぱなし。」
「じゃあ、手がいい、口がいい?」
「口がいい。」
そういうと、P子は、私のあそこに顔をうずめて、
私を刺激してくれた。
P子は、それがとても上手。
私は、すぐにイかせれてしまった。
P子も、私のあそこをきれいにハンカチでぬぐってくれた。

「昼の駅前広場なんかで、こんなことできたら最高よね。」とP子が言う。
「P子は、姿勢くずさないでできたから、大丈夫よ。」
「それもあるけど、相手は、どうやってするの?」とP子。
「スカートのヒダに切れ込み入れとくの。そこから手を入れる。」
「無理よ。不自然。」
「オープンカフェで、テーブルを引いておく。」
「あ、ちょっと可能性あり。
 でも、変なちびっ子が、よくしゃがんでのぞいてるよ。」
「あはっ。だめね。あきらめよ。」
「ああ、安心した。加奈にどんどん引きずられる気がしちゃった。」
「ばれたら、公衆猥褻物陳列罪だもんね。」
「陳列物と呼ばれるのは、恥かしいわよね。」とP子。
二人で笑った。

 身も心もすっきり。
 夜風が、スカートの中を通って過ぎた。


<おわり>

アメリカ編第二部 ⑮ 「クリスマス・イヴ」第二部 最終回

女装がが全く出て来ないアメリカ編第二部を、15回も書いてしまいました。それにも関わらず、読んでくださった方々に、お礼申し上げます。ありがとうございました。少しの休憩の後、また何か書いて行きたいと思います。読んでくださるとうれしいです。

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レレイは、今日の日の招待状を、1週間前にくれた。
レレイの手書きの心のこもった招待状だった。

私は、薄い黄色の光沢のあるワンピースに、
真珠のネックレス、真珠のイアリングをした。
爽やかに見える、メイクをした。

バックの中に必要なものを確認した。
ワルツのためのカセットテープも入れた。
念のため、ワルツ曲の小さなオルゴールも入れた。
レレイがプレゼントなので、別にフラワーアレンジされた、花飾りを持っていった。

約束の、6時半にレレイの家に着いて、ドアをノックした。
心臓がドキドキした。
お母さんがすぐにドアをあえてくれた。
円卓には、豪華なお料理が並んでいた。
私は、メリー・クリスマスと言って、花飾りを渡した。

レレイは、白い光沢のあるワンピースを着ていた。
髪につけている、白い花が、レレイの可愛らしさを引き立てていた。
レレイは、まるで妖精のようだった。

飲み物で乾杯して、
「さあ、食べましょう。」とお父さんが言った。
「おいしそうです。どれから食べたらいいか、迷います。」と私は言った。
「お好きなものからどうぞ。」とお母さんが言ってくれた。

私は、円卓を回して、おいしそうなものから食べた。
「これは、すばらしくおいしいですね。」と言った。
「ええ、鳥なのですが、かりっとさせるのが、コツなんです。」とお母さん。

「ジュンさんがレレイと作ってくださった、薄皮のシューマイ。
 あれにはびっくりしました。家でも作ってみたんですよ。」とお母さん。
「本に載っていたんです。皮がないときこうしましょうって。」と私は笑った。

お父さんが、
「レレが、ジュンさんは、合気道が出来て、柔道部の黒帯の人に勝ったって、
 すごく興奮して帰って来ました。いままで、そんなこと一言もおっしゃらなかったでしょう。」
私は、
「子供のころから、やっていたんです。勉強は学校で全部済ませて、学校が終わったら、道場に急いでいって、毎日6時間くらい、8年間やりました。」といった。
レレイが、
「そんなにやったの。他の事できないじゃない。」と言った。
私は、
「でも、日曜日は休みだったから。」と言った。
お父さん。
「ジュンさんが、あとから来た黒帯の強敵を倒すのに、ほんの2秒足らずだったって。」
私、
「合気道の試合は、あっという間なんです。」と私は笑った。

お父さん。
「レレイは、ジュンさんと『るすばん君』を作って売ったことが、
 売る側としての初体験で、しかもみんな売れて、ものずごく喜んでいました。」
お母さん。
「私たちからは、広場でものを売るなんて、そんな発想ぜったい涌きません。」
私、
「私たちも、売れるなんで思わなかったんです。ね、レレイ。」
レレイ、
「初め売れなくて、やっぱり無理かなと思っていたら、
 初めのお客がきたら、瞬く間に売れてしまったの。」
お父さん。
「とにかく、ジュンさんのおかげて、レレイには生まれて初めてのことの連続で、
 ジュンさんに出会って、レレイの毎日の表情が生き生きしていて、私たちは、とても幸せに思っていました。ほんとうにありがとうございます。」
私、
「あたしも、レレイを見ていると、いろんな発想が生まれるんです。
 それは、レレイのおかげです。」と言った。

その後、お話は途切れることなく続いて、テーブルのお料理が少なくなった。

テーブルが、一端片付いて、レレイのご両親が、レレイと私にプレゼントをくださった。
私には、小さなもので、リボンがついている。レレイのは細長いもの。

「明けても、いいですか。」と聞いて、
私は、包みを取った。小さいコンパクトに入っていたのは、ステキな水晶のイヤリングだった。
「わあ、ステキ。あたし、イアリングが大好きなんです。どうもありがとうございます。」
とご両親に伝えた。
レレイには、金色のステキなネックレスだった。
レレイは、ものすごく喜んでいた。
きっと、2人とも、高価なものである気がした。



では、レレイから、ご両親へのブレゼントだ。
私はレレイと目を合わせ、OKの合図を出した。
レレイが言った。
「実は、ジュンと私から、お父さん、お母さんにプレゼントがあります。」
「え?」とご両親は言った。

レレイと私は、ドラマチックに見えるように、
お父さんの椅子とお母さんの椅子を食卓の横に並べ移ってもらった。
そこから、5mくらいのところに、レレイは車椅子を位置した。
私は、その横に立っていた。

レレイは言った。
「このプレゼントを作るのに、ジュンと出会った9月20日から、ずっと今まで、取り組んできました。その間、ジュンは、片時も休まず、私のそばにいてくれて、私を励まし、勇気づけてくれました。
ジュンの自由時間であるはずの時間を、みんなあたしのために、捧げてくれました。ジュンにはいい尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。
実は、ジュンとあたしのプレゼントは、「物」ではありません。
これが、お父さんとお母さんへの、プレゼントです。」

レレイはそう言って、さっと車椅子から立った。
ご両親は、目を見張った。
レレイは、それから、ご両親のところへ、歩いていった。
目を開き、目を潤ませているご両親に、レレイは言った。
「お父さん、お母さん。今までありがとう。あたし、歩けるようになりました。」
レレイ自身も涙ぐんでいた。
「レレイ、これは…夢じゃないのか。レレイは歩けるのか。レレイ。」
お父さんは、レレイを抱き閉めた。
レレイも泣いていた。
「レレイ、お母さんのところにも来て。
 こんな大きなプレゼントを、まさか今日くれるなんて、
 あたしは、あたしは…。」
お母さんもレレイを抱き閉めた。
「よくがんばったのね、お母さんはうれしい。」
お母さんは、大粒の涙をレレイの胸にこぼした。

そして、親子3人で抱き合って喜びを分かち合った。
私も涙が止まらなかった。

私は、居間の方にいって、オーディオセットをさがした。
そして、ワルツ曲のテープを流した。
澄んだきれいな音楽が、居間から流れた。

レレイは、
「お父さん、お母さん、つづきがあるの。」と言った。
流れているワルツ曲を聞いて、お父さんは、
「レレイまさか…。」と言った。
「そのまさかなの。」
レレイは、お父さんを居間の方へ誘って、
腕を組み、ワルツを踊った。

それを見ながら、お母さんは、再び、ハンカチを目に当てた。
「ジュンさん、ありがとうございます。
 レレイが踊っています。
 まるで、夢を見ているようです。」お母さんはそう言った。

お父さんは、やがて、踊りを止めて、うつむき、膝を落とした。
そして、涙の目に手をやり、肩を揺らして、泣き始めた。
「レレイ。こんな日が来るなんて、夢にも思わなかった。
 私と今踊ったのは、レレイだね。間違いなくレレイだね。
 レレイ。よくばんがんばったね。」
もう一度、お父さんは、レレイを抱き閉めた。

お母さんも、私も、涙でいっぱいになった。



それから、音楽の終わるまで、私たちは4人でワルツを踊った。
お母さんとレレイ、お父さんと私。
途中で、入れ替わりながら。

至福のときが、美しい音楽に乗って
ゆっくりと流れた。



アメリカ編第二部 完

アメリカ編第二部 ⑭ 「若者達のクリスマス」


今日はウォンのハウスでの、クリスマス・パーティー。
私は少し大人っぽく、ブルーの光沢のあるワンピースを着た。
胸に銀のネックレス。銀のイアリング。
時間になりレレイの家に迎えに行った。

車椅子で出て来たレレイは、ピンクのサテンのワンピースで、
ネックバンドで着けたピンクの花が首の真ん中にあって、
特別に可愛かった。
「わあ、レレイ、可愛い!今日、もてもてだよ。」と私は言った。
「ジュンもすごくステキ。」とレレイは言った。

レレイのお母さんが、
「自家製なんですけど、これを。」と大きな箱をもたせてくれた。
アップルパイとのこと。
「わあ、大きいですね。みんな喜びます。」と私は言った。
レレイが歩けない振りをして、車に乗せ、
車椅子を、後ろにしまった。



「ちょっとドキドキしちゃう。」とレレイが言った。
「みんなも、ハイになってるよ。同じだよ。」と私は言った。
ハウスに近づくと、もう賑やかな人の声がする。
車を止めて、私はまず、アップルパイを玄関にいたウォンに渡した。
ウォンがそれを紹介する声がした。
みんなの、「ウォー。」という声。
私は、車椅子を出して、レレイを乗せた。
そして、ハウスの玄関に車椅子を寄せた。

なんだか、全員そろっている感じ。
私は、レレイを車椅子から抱き抱え、
玄関に入って行った。
すると、「メリー・クリスマス!」というすごい歓声と拍手があった。
クラッカーも鳴った。
みんなそろっている。
ウォンが、「ジュンとレレイには、10分遅らせた時間を教えたの。」と種明かしをしてくれた。
レレイは、その歓迎振りに驚いたようだった。
「ここ、ここ、どまんなか。」とみんながソファーの中央を指差した。
そこにレレイを座らせた。
「みなさん、はじめまして、レレイです。」とレレイは挨拶した。
それだけで、すごい拍手が起こった。
「ねえ、ジュンが土だらけで助けた車椅子の子でしょう?」と誰か。
「そうよ。」と私。
「新聞じゃ写真がなかったけど、こんなに可愛い子だったの?」とまた誰か。
「そうよ。」と私はまた言った。
「可愛いなあ。」とみんな口々に言った。

去年は、クリスがヒロインだったけど、今年のヒロインは、レレイであるようだった。
それからフリーになると、みんなは、レレイの回りに集まって、
次々と質問攻撃が始まった。

私はその間、懐かしい人たちと、話をしに回った。
まず、クリス。
クリスは私を見ると、涙を流さんばかりに抱き付いてきた。
「ジュン。会いたかった。」
「クリス、またきれいになったよ。」
「ほんと、うれしい。」とクリス。
そばにトイがいた。
「トイ、毎週末、車を飛ばしてるんですって?」
「うん。土曜に行って、土曜の夜は止めてもらうんだ。
 で、日曜に帰る。」とトイは言った。
「なかなか出来ないことだと思うな。さすがトイ。」
クリスが言った。
「トイは、かかしたことがないの。必ず来てくれる。」
「クリスが幸せそうでよかった。トイは、ナンバー1の誠実な人だから。」



アシフとリリにもあった。
「アシフ、今も寮にいるの。」
「試験にリリといっしょに受かったんだよ。
 それで、2人で大学のアシスタントしてる。
 で、夫婦用の戸建て寮の方に移れたんだ。
 もう、一日5ドルの生活とはさよならだ。」とアシフは笑った。
「わあ、それはおめでとう。すごい、アシフ、そして、リリ。
 リリ、アシフは、未だに油の手でドアノブ回す?」と聞いた。
「あたしが、うるさく言ってるから、触らなくなった。」とリリは笑った。
「あれ、ぬるっとして、困るわよね。」と私はリリと笑った。



ユンに会った。
「ユン、今日のパーティーありがとう。」
「ぼくも、人の役に立ちたいと思って。」とユン。
「ユンのそういうとこ、変わってないなあ。」と私。
「今、ウォンと仲よくしてる。二人ともジュンを好きだったどうし。」とユンは少し赤くなって言った。
「ユンなら、ウォンを絶対幸せにできると思う。」と私は言った。



レレイのところに戻ると、まだ、青年達が取り囲んでいた。
「ね、今度、ぼくが車椅子押すから、まかして。」
「時間割教えてくれたら行く。」
「俺だって、押したい。独り占めするな。」

「集団ダンス始めるわよー。」とダンスの上手いミミが隣の部屋から叫んだ。
「じゃあ、またね。」と青年達はレレイに言って、ダンスの方へ行った。
他のメンバーも、そっちの方へ言った。
人のいなくなったレレイの隣に私は座った。
「ぼく達の休憩タイム。」と私は言った。
「そうね。」とレレイ。
「どうお?楽しめてる。」
「うん。なんかお姫様になった気分。
 こんなに男の子からちやほやされたの初めて。
 すごく、うれしい。」とレレイは言った。
よかったなあと思った。

「今日ね、世話役のウォンとユンがね、ぼく達に開始時間より10分遅れた時間を教えたの。
 そして、みんながそろってから、ぼく達が来るようにしてくれたの。
 みんなで、レレイを歓迎したかったから。」と私は言った。
「そうだったの。いい人たちね。あたし、感激した。ここの人達と、ずっとお友達でいたい。」
レレイはそう言った。
「来年は、レレイは、あの中で踊っているね。」と私。
「うん。でも、来年はジュンがいない。」レレイが淋しそうな顔をした。
「ぼくの次に、すぐ誰かを好きになるさ。」
「かもしれない。でも、ジュンは、あたしにとって、永遠。
 一生忘れない。」
「ぼくも、レレイのことは、一生忘れない。レレイと踊ったワルツを一生忘れない。」



踊りが終わって、みんながもどってきた。
次は、ユンがギターをもって、クリスマス・ソングをいくつか歌った。
それから、クリスのご両親からのクリスマスケーキとレレイの家からのアップルパイにナイフを入れた。
大勢いたので、すぐになくなっていった。

時間がそろそろ閉会に迫っていた。
レレイが、手を挙げた。
「あのう、お礼の言葉を述べてもいいですか?」と言った。
ウォンが、
「みなさん。会はそろそろ終わりです。
 レレイから、お礼の言葉があります。食べているものをストップして、聞いてください。」
そう言った。

みんなが静かになって、レレイを見つめた。
レレイは、ソファーから立った。

「みなさん。今日はありがとうございます。
 初めてみなさんに会うのに、ドキドキしました。
 でも、やってくると、みなさんがそろっていて、温かい拍手で向かえてくださいました。
係のウォンさんとユンさんが、あたしとジュンに10分遅れた時間を告げてくれたからだとしりました。きっと、あたしが初対面であることと、車椅子であることで、励ましの気持ちを込めて、してくださったことだと思います。おかげで、あたしは、みなさんの中に、こころ温まる気持ちで、すうっと入っていけました。そのご好意が、まず初めにうれしかったです。

 あたしは、4年前に交通事故に遭い、歩けない体になりました。車椅子の4年間、親切にしてくれる人は、大勢いました。でも、今日は、私の回りに大勢の人がきてくださり、まるであたしがお姫さまのようにちやほやしてくださいました。そんなことは、この4年間に一度もなくて、まるで夢のような気持ちがしました。ほんとにうれしくて、泣いてしまいそうでした。

 ここにいる方々の多くは、過去に悲惨な状況の中にいらして、人々の不幸や苦しみを見て、心に大きな傷を今も背負っている方がいらっしゃると思います。だのに、そんな辛いものを、一時横に置いて、車椅子のあたしに特別な歓迎をしてくださいました。そのことが、ありがたくて、今日は感激しました。」

レレイは目に涙を浮かべていた。レレイは続けた。

「実は、今私は、少し歩けるのです。9月から、ジュンがずうっとサポートしてくれて、歩けるようになりました。それは、あたしの両親へのサプライズにしたかったので、ここでは、歩けないように見せていました。でも、車椅子だという私に、厚い歓待をしてくださったみなさんに、このことを隠していては、いけないと思いました。少し嘘をついてしまいました。そのことをお詫びします。ごめんなさい。

 今日来てよかったです。本当によかったです。みなさん。ありがとうございました。ウォンさんユンさんありがとうございました。」

レレイは、涙を流しながら、言い終えた。
みんなから、すごい拍手をもらった。
「歩けるようになってよかったね。」
「おめでとう!」という声もたくさん聞かれた。

閉会の言葉があった。

「レレイ、いい挨拶だったよ。苦労をして来たレレイだから、言えた言葉だったんだね。」
私は言った。
「歩けるようになったこと、言わないではいられなかった。」
「うん。レレイ。正解だったと思う。ぼくがレレイだったら、やっぱり隠せなかったと思う。」

もう一度みんなに握手をして、最後に、ウォンとユンに感謝をした。
「あたしたちに、10分遅れた時間で伝えてくれたなんて、
 だれのアイデア。」と聞いた。
「ぼくの?」とユンが笑った。
「ありがとう。最高のサプライズだった。」と私は言った。
「こちらこそ、レレイの最後の言葉、うれしかった。
 やってよかったなって思った。」ユンは言った。
「うん。泣いちゃった。」とウォンが言った。

2人に別れを告げて、車に乗った。
車椅子は使わずに、車の中に入れた。

「さあ、今度は、クリスマス・イヴだね。」と私は言った。
「ちょっと緊張するな。」とレレイ。
「ぼくもだよ。」
2人で顔を見合わせて笑い、
車のアクセルを踏んだ。


つづく (次回は、「クリスマス・イヴ」。第二部・最終回です。)

アメリカ編第二部 ⑬ 「ウォンの2回目の訪問」

アメリカ編第二部も、今回の次に、あと2回で終了します。最後まで読んでくださるとうれしいです。

===============================

12月の中旬。
レレイは、走る・飛ぶなどの激しい運動はできなかったが、
キャンパス生活で必要な動きはほぼできるようになっていた。
歩く姿は、一般の人と少しも変わらないほどだった。
階段の昇り降り。一般のトイレ。
廊下にしゃがむ、そこから立つ。
コーヒーなどのものを持って歩く。
バッグを持って歩く。

私は提案した。
「レレイ。今日、午前中だけ、車椅子なしでやってみない?」
「うん。やってみる。」
「一日中だと、筋肉が疲れるから、半分だけ。」
「両親にばれないかな?」
「クラスに知ってる子いる?」
「いない。」
「じゃあ、大丈夫じゃないの。車椅子はぼくの車に入れておこう。」
「そうね。」とレレイは言った。
昼になったら、いつものテラスで合うことにした。



昼になってテラスで待っていると、
レレイが、にこやかにやって来た。
「ジュン、大丈夫だった。全然問題なし。砂利道も歩けたよ。」とレレイは言った。
「わあ~、レレイ、やったね。」
「うん。すごくうれしい。」
「知ってる人にあった?」
「大丈夫。あたしのクラス、200人教室ばかりだから、お互い知らない。」
「足、疲れてない?」
「緊張したから、ちょっと疲れた。」
「じゃあ、午後は、車椅子だね。」
「うん。」

2人でコーヒーを飲んだ。
私はレレイの足を、マッサージした。
「ジュンは、こうして9月からずーと、毎日マッサージしてくれたね。
 ジュンほどやさしい人この世にいないと思う。」
「そんなことないよ。レレイに恋しているだけだよ。」そう言って私は笑った。

「年が明けたら、スキップとか、ハード・ウォーキングとか、
 少しずつ、運動もやってみよう。」と私。
「うん。やってみたい。運動ができたら、楽しいだろうな。」
「何を一番したい?」
「踊りたい。今風のをね。」
「そうだね。」



授業が終わったら、私たちはセンターに行く。
私は合気道をする。
合気道部のみんなは、もう20くらいの技を覚えた。
レレイは、筋肉とレーニングと、みなさんのお手伝いをする。

6時にセンターを出て、
2人で私の部屋にいき、ワルツを2回踊る。
レレイはもう完全に踊れる。
それから、レレイを7時までに、家までとどける。
レレイを届けると、ときどきお母さんが、夕食のお料理を包んで私にくれる。
部屋で私は、食べる。いつもすごくおいしい。
それが、7時半。
それから、シャワーを浴びて、勉強する。
11時半まで。
30分好きなことをして、寝る。



その日、ウォンから、8時ごろ電話があった。
今度で二回目だ。
沈んだ声ではなかった。
すぐに、私のアパートに来たいと言う。
「夕飯は?」ときいた。
「うん、食べた。」と言う。

電話から、10分後にウォンは来た。

「コーヒー、紅茶?」と聞いた。
「コーヒー。」とウォンは言った。

2人でコーヒーを飲みながら、
小テーブルを囲んだ。
ウォンは、前にときより落ち着いていた。

「今日は、いい報告。」とウォンは言う。
「わあ、なあに?」
「あたし、ベンみたいな不誠実な男は、こりごりだと思って、
 誠実な人って思って、回りを見たの。
 そしたら、いたの。灯台下暗しってとこかな。」
「だれ?」と私は聞いて、「あ、わかった!」と言った。
「そう、その子。」
「ユンでしょう。」
「当たり。」
「ユンならいい。絶対誠実。」
「あたしもジュンが好きだった。ユンもジュンが好きだった。
 2人とも同じだねって話していたの。
 それから、なんとなく互いに意識し出して、
 つき合っちゃおうかってことになったの。
 で、今2人で、なんとなく彼と彼女。」
「わあ、それはよかったね。ユンどうしてるかなって思ってたの。」
「ジュンには、この前来て、心配かけちゃったから、
 今日は、その報告に来たの。」
「ありがとう、わざわざ来てくれて。」

「それでね。今度ハウスでクリスマス・パーティーをすることになったの。
 去年は、ジュンの部屋でやらせてもらったじゃない。
 だから、今度はユンとあたしが計画して、みんなに来てもらおうと思って。
 去年のメンバーみんな呼んで。
 で、ジュンとレレイも来られないかなって。」
「いつ?」
「12月21日。大学も冬休みだし。」
「じゃあ、レレイに聞いてみるね。」
「台湾からだと、ミミとアシフの彼女のリリも来るし。アシフももちろん来る。
 あたし達ベトナムの子達も、レレイとお友達になりたがってる。
 そう、トイもクリスを連れてくるよ。」
「わあ、クリスに会いたいな。」
「会費は、2ドル。で、できるなら一人1品料理を持って来る。
 プレゼント交換はなし。」

「うん、わかった。それと、まさか車椅子用のトイレはないよね。」
「ない。あ、レレイどうしよう。」とウォンは言った。
「大丈夫。ウォンだけに言うけど、レレイは今少し歩けるの。」
「ほんと?!」
「うん。でも、クリスマス・イヴのご両親へのサプライズにしたいから、
 絶対ないしょね。当日はみんなにもレレイは歩けない振りをするけど、トイレは大丈夫。」
「うん、わかった。」とウォンはにこやかに言った。

ウォンは帰って行った。
前のウォンとは違って、とても穏やかな顔をしていた。



次の日の朝。
例のテラスで、レレイに、ウォンのパーティーのことを話した。
すると、レレイは大乗り気だった。
「あたし、ジュン以外に友達ほとんどいないから、
 パーティーに是非行きたい。」とレレイは言った。
「12月21日。会費は2ドル。できたら、お料理1品。
 プレゼント交換なんてなし。
 台湾の人が、2人いるよ。それに、可愛い白人の女の子が一人。
 ぼくの元ルームメイトのパキスタンの人。
 後は、ベトナムの人たちだけど、彼らとってもやさしいよ。
 でね、車椅子用のトイレはないんだけど、レレイは、もう大丈夫でしょ。」
「トイレには、もう普通のに行ける。大丈夫。」
「だったら、お家の人には、車椅子用のがあるって言ってね。」

「クリスマス・イヴのご両親へのサプライズがあるから、
 レレイは、そのパーティでは、一応歩けないことにする。」
「そうね。念には念をいれてね。」
「それと、レレイは一応恋人がいることにする。でも、それがぼくだとは言わない。
 言ってもいいんだけど、レレイがレズビアンの子になっちゃう。
 適当にうまくとぼけて、楽しんで。
 ぼくが昔好きだったウォンって子がいるけど、ウォンには、今彼がいるから、大丈夫。
 ぼくは、あそこでは、ぜったい男だって分かってはいけないの。訳があってね。
 それと、パーティーの間中、ぼくは、できるだけレレイのそばにいるからね。」
「うん、わかった。」とレレイは言った。うれしそうだった。



レレイは、家で相談した。
そして、OKをもらった。
あとは、パーティーを待つだけだった。


つづく (次は、「若者達のクリスマス・パーティー」)

アメリカ編第二部 ⑫ 「合気道部があった!」


12月初旬。
リハビリセンターでのレレイの練習は、
もうレレイ一人で十分だった。
レレイは、しゃがんで立ち、立ってしゃがむ練習をしていた。
これで、床に落ちたものを拾える。
レレイは、練習の合い間に、他のみなさんのリハビリを見にいき、
お手伝いや、励ましの言葉を投げかけていた。

私は、少しジムの上を見に行きたくなった。
上は、武道の階になっている。

レレイに断って、上を見に行った。
するとそこは、立派な武道場だった。
向こうは、剣道用の板の道場。
手前は、柔道用の畳の道場。
その柔道場の隅っこで、10人くらいの学生が、
柔道着を着て、練習していた。
見て、私の胸は躍った。
それは、まぎれもなく、合気道だった。
合気道のサークルがあるなんて、少しも知らなかった。
そのサークルは、肩身が狭いのか、柔道場の10分の1も場所をもらえていなかった。

その合気道生たちは、見たところほとんど初心者だった。
私は、声をかけた。
「ねえ、ねえ、合気道でしょ。先生は?」
「先生は、出張で、来年にならないと帰って来ない。」
「じゃあ、どうやって練習するの。」
「しかたないから、教わった技と受身だけでもやってる。」
「ねえ、あたし、合気道やったことあるの。
 あしたから道着着てくるから、仲間に入れて?あたし、ジュンというの。」
「いいよ。でも、先生いないからね。」と誰かが言った。
いくら何でも道場でワンピースは失礼なので、その日はあきらめた。



次の日、私は、ボストンバッグの中から、
上は白、下は黒袴の道着を引き出した。
黒袴は、有段者であることを表している。

レレイが練習しているとき、
私は、道着を着て、更衣室から出て来た。
センターの人がみんな驚いた。
「ジュン、なあに、その格好。」とレレイが言った。
「これから、上の階で合気道してくる。」と私。
「ジュン、合気道できるの?」
「うん。レレイ悪いけどぼくを上に少し行かせて。」
私はそう言って、上の階へ飛んで言った。

「みなさん、ジュン、来ました!」と私は言った。
みんなは、私の格好を見て、
「先生といっしょだ。黒い袴だ。」
「ぼく達の先生も女の先生なんだよ。」
「ほんと、それすごい。」と私は言った。
「強そう。」
とみんなは、拍手で歓迎してくれた。
「みんなは、いつからやってるの。」と聞いた。
「9月からなんだけど、先生が10月からいなくなったから、
 ぼくたち、それから受身ばっか。」
「あたしが、お教えいたします。」と私は張り切って言った。

そのとき、下のセンターの人たちが、
エレベーターを使って見に来ていた。
レレイは、階段から来たようだった。

「はい、一人来てください。最初の技は、こうして、こうして、こうです。
 では、2人組みでやってみてください。みなさん、受身は十分だと思います。」

こうやって、次々に技を伝えていた。

柔道部員はまだ来ていなかった。
そのうち、初めにきた体の大きな柔道部員が、そばに来て言う。
「お前ら、そんなお遊戯は恥だぜ。さっさとここから出ていけよ。目障りだ。」
「お遊戯とは何よ。」と私は言った。
「そういうセリフは、俺に勝ってからでも言えよ。
 俺に勝ったら、もう文句言わねーぜ。」
私は彼の帯を見た。白帯だ。
日本で兄に言われていた。ジュンは、試験受けてないだけで、3段の腕があるから3段までなら勝てると。
私は、兄の言葉を信じて、受けて立った。しかし、相手は大きい。

私が立つと、仲間たちが、
「おい、ジュン。無理するなよ。俺達監督連盟に訴えるから。」と言った。
「試しにやってみる。勝てるかもしれない。」と私は言った。
「ジュン、大丈夫?」とレレイも叫んでいる。
レレイに、どうかな?というサインを送った。

相手が仁王立ちになった。
私も自然体で対峙した。
相手が出て来ないと、合気道としてやりにくい。私は待った。
するとシビレをきらした、相手が、右の歩を進めた。
すかさず、私は、右足で、出てくる相手の右足を踏んだ(柔道の出足払いと似ている)。
出そうとした足が踏まれるので、相手は、前のめりになって倒れる。
そこを体を左にかわして、相手の背中をポンとたたいた。
相手は、顔から畳にもろに倒れた。
(これ、実際には速くて、相手は、バタン!という感じ。)
完全に倒れるまで、踏んだ足は離さない。
瞬間彼は、顔を横にした。(せめてもの受身)
これで、1本。

わあーと合気道の仲間たちと、センターのみんなが拍手してくれた。
レレイが夢中で拍手していた。
「なんで、倒れたの?」と聞いている声が方々で聞こえた。

「もういっちょ!」と彼は打った右頬を押さえながら、起き上がったが、
途中から見ていた先輩らしい柔道部員が言った。
「おい、ヘンリー。やめておけ。100回やってもお前じゃ勝てねーよ。」
「なんだ。ウェイ、今のはまぐれだ。」とヘンリーが言う。
「お前が出した足を瞬時に踏んだ、あの女の足の速さがわからねーのか。
ここは俺にまかせろ。」とウェイと呼ばれる次の相手が来た。
引き締まった筋肉。強そうだ。しかも黒帯。

見ている人がシーンとなった。

「待って。あなたとやるなんて言ってないわよ。
 アイツが無理にやろうとしたからやったのよ。
 それにアナタ、黒帯じゃない。」と私は言った。

「はは、とぼけるのはなしだ。柔道ならヘンリーの出足を払った後投げを打つ。だが、お前は、足を踏んだだけで倒した。踏むのがほんの少し早くても遅くとも倒せやしない。絶妙のタイミングだったぜ。
お前をそうとうやれる女と見た。といって、柔道部が女にやられたでは、すまんからな。」とウエイは言った。

ウィイが4、5段ならこれでアウトだと思った。

みんなは、シーンと見守っていた。

私は、「気」を集中させるため、手を合わせ、それを天に上げた。
そして、胸の前に持ってきて息を吐く。



ウェイと対峙した。

威圧感がさっきとはまるで違う。
ずっと見合っていた。

やっと、ウェイが、私の襟を取りに来た。速い。
私は紙一重左に体を半身にかわし、そのまま突き出たウェイの右腕に左手を絡めて、そのまま、畳の低いところにウェイを運び、コマのように180度回した。そして、むんとウェイの首を押さえる。反射的にウェイは、身を起こす。その勢いで、ウェイのアゴに右腕をかけて、エビゾリ投げを打ち、畳まで持って行った。
私の腕が入っているので、ウェイは、アゴを閉めて頭を守る受身が取れず、頭から畳に落ちた。

一時の静寂が訪れた。

次第にぱらぱらと拍手が起こり、
「わあー、ジュンが勝ったのよ!」とレレイの声がした。
合気道の仲間が拍手をして、私の回りに集まってきた。
「ジュン、すごい。あんな強い相手を。」
「ぼく、合気道やっててよかった。こんなにすごい武道だなんて。」
「ジュン、これから毎日教えて。」とみんなから言われた。

ウェイが、起き上がり、ぶるるんと首を振った。
「全ての受身を封じられた。
 下が、コンクリートなら、俺は死んでたな。合気道、恐ろしい武道だ。」
そう言ってウェイが立って私のところに来た。
「ジュンっていうのか。これだけ強くなるには、
 気の遠くなるほど稽古をしたんだろうな。
 俺の完敗だ。もう合気道をバカにしない。」そう言って、握手の手を出した。
私はウェイと握手をしながら、「怖くて震えたわ。」というと、「冗談はよせ。」とウェイは笑った。

合気道の部員たちは、飛び上がって喜んだ。
センターの人も、みんな喜んでいた。

レレイが飛び出してきた。
「ジュン、こんなに強いなんて、今まで一言も言わなかったじゃない。
 もう、感激、感動、ステキ!」と私に抱き付いた。

なんだか、こんな展開になるとは思わなかったけど、
私はとにかくうれしかった。
合気道が認められたことも。
子供の頃から、道場で何度も聞いた言葉。
『合気道の究極は、戦った相手と、仲良くなること。』

「ところで、レレイ。ここまでどうやって来たの?」と私は聞いた。
「あ、あたし、階段を走って昇ってきた。」とレレイ。
「レレイ、すごい。でも、降りるのはむずかしいよ。手すりを使ってね。」
私は、そう言ってレレイを抱きしめた。


つづく (次回は、未定です…。)

アメリカ編第二部 ⑪ 「ワルツをなんとか」


11月の中旬になった。
レレイのリハビリの練習は、どんどん進んだ。
レレイは、自分の空き時間もセンターにいき、リハビリをやっていた。
私の来たときと終わりに、私は必ず、レレイの筋肉をマッサージした。

今やっているのは、階段を上がる練習。
3cmくらいの厚みのゴム版があって、初めは1枚で昇降運動をする。
それが、楽に出来たら、2枚に増やす。
こうやって、10枚が出来たら、階段が上れる。
それが出来たら、降りる練習。
同じように1枚から始める。
レレイは、11月に入ってから、10日で、この運動ができるようになった。
実際的には、学校の階段は、30cmもないので、自分で昇って降りることができる。

次は、しゃがんだ状態から立つこと。
逆に、立った状態から、しゃがむこと。
これも同じくゴム板を使ってやる。
はじめ、10枚に座って立つ。
これを、枚数を減らしていく。
立った状態から座るのも同じ。
これを、レレイは、まだ出来ないでいる。



そんな運動の傍ら、レレイと私は、ワルツのための練習をしていた。
レレイは、もう手を添えることなくして、歩ける。
手を添えれば、後ろへ歩ける。
横の足運びは、サポートなしでできる。
簡単な回転ができる。
ワルツに必要な動きが全てできるようになっている。

私は今日からワルツをやってみようと思って、
ワルツ曲のテープの入ったラジカセを持って来た。

4時間目が終わったとき、私は車からラジカセをもって、センターに言った。
「レレイ、もう来てたの、熱心だね。」と言った。
レレイは、踏み台昇降をやっていたみたいで、額に汗をかいていた。
私は用意してきた、濡れたおるで、レレイの額を拭いた。
「わあ、気持ちいい。」とレレイは言った。

「やあ、ジュン。」とジョンがいた。そばにお母さんがいた。
「あ、どうですか。」と私は言った。
「練習も励まし合えば、楽しいですね。」とお母さんが言った。
「そうですね。」と私はにっこりした。
ジョンもお母さんも、とても生き生きしていた。



私は、レレイとダンスの組み手をして、そっとワルツの足を運んでみた。
1,2,3、1,2,3、何とかできる。
今度はもう少し早く、1,2,3、1,2,3、…。
試しにくるっと回る動作をしてみた。
レレイは、なんとかターンした。
「わあ、レレイやるじゃない。」
「えへ、ちょっと練習したの。」
ターンから戻ってくるのも、レレイはできた。

レレイは、まだ足ばかり見ていたので、
私を見てできるかどうかやってみた。
「ああ、ちょっと怖い。でも、慣れたらできそう。」

私たちは何度も練習した。
そして、なんとかレレイは私を見ながら踊ることができた。
「わあ、やったね。レレイすごーい。」と私はレレイを抱き閉めた。
「うん。あたし、うれしい。」とレレイは言った。



「じゃあ、音楽かけてやってみようか。」と私は言った。
「なんだか、どきどきする。」とレレイ。
「ぼくがサポートしてるんだもの。大丈夫。」

私は、もってきたラジカセにスイッチを入れた。
モダンなワルツ曲がかかった。

「いいい、いくよ。音楽を楽しみがら。」

そして、1,2,3,1,2,3、小さめの音楽は流れた。
レレイは踊った。少しぎこちないけど、速さは十分。
そのとき、私は夢中で、リハビリの人やトレナーさん達が、練習をやめて、
私たちを囲むように、近づいてきて、
私たちを見ていることに気が付かなかった。

「レレイ、ターン、いくよ。はい。」
「そして、戻ってくるの。そう、上手。いけるね。」
「うれしい、あたし踊ってる、夢見たい。」とレレイがいった。

やがて、音楽が終わった。
レレイと私は抱きあった。
「レレイ、よくがんばったね。」
「ありがとう、ジュン。」

そのとき、はじめて回りの人たちに気が付いた。
みなさんは、大きな拍手をしてくれていた。
中に泣いている方もいた。

中年の女性が、
「感激だわ。あたし、レレイちゃんが初めてここに来たときから知ってるの。
 はじめは、何にもできなかった。椅子からの立ち方から始めた。それが、
 こんな短期間に、ワルツを踊れるようになるなんで。感動で胸がいっぱい。」と言ってくれた。
30歳くらいの男性が言った。
「感激で言葉を失いそうです。誰よりも熱心だったレレイが、今私の目の前でワルツを踊った。
 うれしくて涙がとまりません。励まされました。私たちだって、やればできる。そう思いました。」
ジョンが、泣いていた。
「お姉ちゃん、よかったね。よかった。ぼく、うれしい。」
ジョンをお母さんが抱きしめていた。

そんなみなさんの温かい声を聞いて、もう一度嬉しさがこみ上げてきた。
レレイと抱き合い、もう一度泣いた。


つづく (次回は、「合気道部仮入部」)

アメリカ編第二部 ⑩ 「あと8ヶ月」

記事の中で、2人で歌う歌が出て来ます。その歌が聞けるようリンクしましたので、聞いてくださるとうれしいです。

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11月になったばかりの土曜日。
昼前にレレイを私のアパートによんだ。
レレイも私もワンピース姿。
私が手伝って、レレイはジュウタンの小テーブルの前にソファーを背にして座った。
私は、コーヒーを2つもって、レレイの隣に座った。

私がコーヒーを飲もうとすると、レレイがつんつんと私の肩をつつく。
「あ、ごめん。」
私は、レレイにキスをした。
レレイは髪を洗ったばかりらしく、リンスのいい匂いがした。
もう一度、ロングキスをした。



「レレイ、ぼくはっきり言ってなかった気がするんだけど、
 ぼく留学生でしょう。だから、卒業したら日本に帰っちゃう。」
「そうか。ジュンが留学生って知ってたけど、何時帰るのか考えないでいた。」
「ぼく、今年で2年目だから、うまく単位が取れると、
 来年の6月に卒業できるの。」
「え、来年の6月?」
レレイは指で数えていた。
「あと8ヶ月!」とレレイは叫んだ。

「ねえ、あと8ヶ月しかないの?」
「でもね、レレイと知り合ったのは、9月の20日。
 まだ、ぼく達、1ヶ月と10日しかいっしょにいないんだよ。」
「ずいぶん長くいっしょにいる気がする。」
「だから、8ヶ月あるって、けっこう長くある気がするけど。」と私。
「そうね。わかった。あたし、ジュンに付いて日本にいけないもの。
 父母と今別れるわけにいかない。
 あたし、歩けるようになったら、両親に苦労かけた分親孝行したい。」

「ぼくもそう思う。レレイとはずっといっしょにいたいけど、
 レレイはアメリカにいる方がいい。

「だから、これ、ぼくの夢なんだ。
 あのバーボン通りを、歩けるようになったレレイと腕を組んで、もう一度デイトする。」
「それステキ。それ私にとっても夢。きっと叶えよう。あたし、踊りも踊りたい。」
「うん。そうだね。ステップ踏めたら最高だね。」
私たちは顔を見合わせて笑った。



昼食は、レレイといっしょに作ることにした。
レレイを車椅子に戻して、食卓に移った。
「シュウマイを作るんだよ。」と私は言った。
「わあ、どうやって作るの。」とレレイ。
「具は作ってあるから、まずお団子にして。」
2人で、お団子を30個作った。
「皮はどうするの?」とレレイ。
「皮は売ってないから、無しでするの。」
「どういう風に?」
私は、紙の上に小麦粉をたっぷり敷いた。
「この上に、お団子を転がして、たっぷり小麦粉をつける。
 これを蒸かすと粉が皮になるんだよ。」
「そうかあ。ジュン頭いい。」
「ぼくが考えたんじゃないよ。」
蒸し器で15分蒸して、シューマイが出来上がった。
私は、レレイのためにお粥も作っておいたので、
それを温めて、「いただきます。」をした。
「わあ、おいしい。皮がすごく薄くて、どうやって作ったんだろうって思ってしまう。」
「知らない人には、不思議でしょ。」
「うん。お母さんに教えて上げる。」

シュウマイ15個とお粥でお腹がいっぱいになった。



食後にコーヒーを飲んで、ソファーに2人並んで座った。
「ねえ、ギターでなんか歌ってみて。」とレレイが言う。
「いいよ。でも、ギター安物だからね。」
と私はギターをもって構えた。

「ぼく、台湾の歌知ってるよ。」と言った。
「わあ、すごい。歌って。」とレレイ。
「ぼくか勝手につけた題名 『君さえいれば』。」

♪シーコンイース ヨープーフェイ アーシーツーナー ホエユエー

「あ、その歌私も好き。」と言って、途中から、レレイが入ってきた。
そして、最後までいっしょに歌った。
歌い終わって、レレイが拍手してくれた。

「ジュン、歌の発音は、限りなくネイティブだよ。驚いた。
 だれに教わったの?」
「高校2年のとき、台湾から留学生が来て、彼女から教わった。
 ぼくはガリ勉だったけど、そのときだけは勉強しなかった。」

「他に知ってる?」
「『愛情(アイ・チー)』。」「あ、それ、すごい好き。私が台湾にいたとき、すごく流行った。」

ふたりで、『愛情』を歌った。

「何か日本の歌、覚えたい。」とレレイが言った。
「昔の日本の童謡だけど、ぼくこれが好き。」
私はそういって、『浜辺の歌』を歌った。
♪明日 浜辺を さまよえば 昔のことぞ 偲ばるる…

「いい歌ねえ。」とレレイが言った。
レレイが覚えたいというので、アルファベット表記で、歌詞を書いた。
2人で何度も練習した。

レレイは本格的に歌が上手だった。



レレイの帰る時間までまだ少しあった。
「少し時間あるね。」
「うん。」とレレイが答えた。
2人が考えたことは、同じだった。
私はレレイを抱いて、ベッドに向かった。
「今日も、レレイのバージン奪わないようにするからね。」
「ジュンにだったら、捧げたいのに。」
「それは、だめ。お父さんとお母さんは、
 ぼくを女だと思っているから、裏切ったみたいになっちゃう。」
「そうだね。ジュンは考えが深いね。」
「それほどでもないよ。」

レレイをベッドに寝かせた。
「そうだ、レレイはもう歩けるんだから、いっしょに来ればよかった。」
「ううん、ベッドには運んでもらうのが、ステキ。」
「あはっ。映画のタイトルみたいだよ。」
そう言いながら、私達は唇を重ねた。


つづく (次回は『ワルツをなんとか』)

アメリカ編第二部 ⑨ 「るすばん君を売ろう」

「ほら、これどう?」とレレイにある木の人形を見せた。
「わあ、かわいい。これどうしたの?」とレレイ。
「ぼくが高校のとき作って、優秀賞もらったの。」
「わあ。すごい。ほんとに可愛い。」

女装  遥かなる想い

その人形は、「るすばん君」という名前で、
さくらの木の枝を、7cmくらい切って、
木の足と耳を2つずつつけて、木口にのこぎりで口をつけ、
その上に2つの小さな穴を空けて目にする。
そして、背中にのこぎりで切り込みを入れて、
そこにカードが差せるようになっている。
そのカードに「おかえりなさい。」と書いたりして、
家の玄関に置いておく。

「レレイ、これを100個くらい作って、
 ジェファソン・スクエアの回りで売ろうよ。」と私は提案した。
「わあ、買う人じゃなく、売る人になるの。
 それ、最高に楽しそう。」とレレイは大乗り気だった。

こんな日もあると思って、材料は1年前から揃えておいた。
私は100個の「るすばん君」を作る。
レレイは、字が上手なので、「おかえりなさい」のカードをケント紙で100枚作る。

女装  遥かなる想い




私たちは、リハビリの傍ら、人形作りに専念した。
大学の工作室を借りてやった。
そして、1週間かけて、やっと100個の「るすばん君」を作った。

「1個いくらにする?」とレレイに聞いた。
「1ドル。どう?」とレレイ。
「うん。そんなとこだね。」と私は言った。



待ちに待った土曜日。
秋晴れの日。
私は、レレイを迎えに行って、ジェファソン・スクエアに行った。
スクエアの周りには、似顔絵書きや、ドラム缶の楽器で演奏しているひと。
ギターで自分の曲を披露している人など、いろんな人がいる。
通りを歩いている人は、ほとんどが観光客だ。



私たちは、ちょうどいい場所を見つけた。
「売れるかなあ。なんだかあたし、ドキドキする。」とレレイが言った。
「ぼくは、日本で、こんな風にして、詩を売ってたんだよ。」
「ほんと!ジュンは、詩人なの?」
「自分でいいと思ってるだけの詩人。」と私は笑って見せた。

私は板と、ちょうどレレイの膝くらいの高さの箱を持って来たので、
商品をそこに置き、私も折り畳み椅子に座って、レレイとならんだ。
「るすばん君 1ドル」という看板も立てた。

今日は、2人ともワンピースで来たので、2人の女の子が売っているように見える。

「わあ、売る人になると、街の景色が違って見える。」とレレイが言った。
「うん。そうだね。ぼく達が、地元の人みたいだね。」
「ジャズ・ホールなら、演奏している側。」とレレイ。
「うん。そうだね。なんだかうれしいね。」と話していた。

その日、観光客は大勢いた。
でも、眺めている人は多くても、なかなか立ち止ってくれない。
しかし、やっと4,5人の熟年の女性が立ち止ってくれた。
「これ、なあに。」と聞かれた。
レレイが説明した。
「玄関なんかに置いておくと、帰って来たとき、これ見て、ほっとしませんか。
 癒しの人形なんですよ。」
レレイはなかなか説明が上手。
4,5人の女性が立っていると、なんだろうと急にお客がふえる。
10人を越えて、12人くらいの人だかりができた。
一人が「姪のお土産にするわ。」と言って買ってくれた。
「じゃあ、私も。」と5つ6つと売れていった。
買った人は、カードも1枚もらえる。
それをセットにビニールの袋に入れて渡す。
「まあ、丁寧に書かれているわね。」とカードを誉めてくれる人もいた。

人だかりは途切れず「るすばん君」は、どんどん売れていった。
私は、横でレレイが生き生きとうれしそうにしているので、
うれしくてたまらなかった。

30個売れて、一つの波が途絶えた。
「売れるとうれしいね。」とレレイが言った。「あたし、今、最高の気分。」
「ぼくもだよ。うれしいね。」と私は言った。

私は、もしかしたら、レレイが車椅子だから、
何かうったえる力になっているのかなと思った。
それは、年配の車椅子の男性が来たときだった。

その人は言った。
「お互い、車椅子同士ですね。」
「はい、そうですね。」とレレイ。
「私は、あなたのような人が、こうして積極的に街に出て、
 自分のために何かをしていることが、とてもうれしいのです。」
「それは、ありがとうございます。
 あたし一人ではできませんでした。ここにいるジュンが、考えて誘ってくれました。」
「そちらは、ジュンさんとおっしゃるのですか。いいお友達なんですね。」
「あたしは、レレイといいます。」
「私は、ボブです。」
お互いに握手をした。
そのとき、ボブさんの奥さんと思える人が来た。(奥さんは車椅子ではない。)
「まあまあ、可愛いお人形ですね。よくできているわ。」と奥さんは言った。
そして、しばらく考えて言った。

「あのう、私たちは、肢体不自由の人達の支援センターを営んでいるのですが、
 これは、あつかましいお願いですが、
 もしも、私たちがこの『るすばん君』を真似して作って売ったら、お怒りになるでしょうか。」
と奥さんは言った。
「おいおい、メアリー、それはあつかましいというものだろう。」とボブさんは言った。
私は言った。
「いえ、これを真似して作ってくださることは、あたしにとってとても名誉なことです。
 いくらでも作ってください。また、他の支援センターに広めてくださることも、うれしいことです。
 これを楽に作るために治具があるのですが、住所を教えてくだされば、お送りします。また作り方の     説明書も添えます。」
「まあ、本当ですか。それはうれしいことです。私はこの「るすばん君」のなんとも癒されるデザインが気に入りました。説明書までいただけたら、こんなに嬉しいことはありません。」奥さんはそう言った。
「ね、レレイ、いいよね。」とレレイに聞いた。
「もちろんいいわ。ジュンがデザインしたものだし。」とレレイはいった。

私たちは、住所を聞いた。
奥さんと、ボブさんは、1つずつ買ってくれた。



レレイが、「とっても、うれしいね。」と言った。
「うん。誰かの役に立てるっていいね。」と私はいった。

その日、「るすばん君」は、午前中に全部売れた。
「わあ、100ドルだよ。」とレレイが言った。
「うん。50ドルずつ分けようね。」と私。
「いいの?」とレレイ。
「もちろん。」と私。
「なんに使う?」とレレイ。
「次に作るものの、元でにする。レレイは?」と私。
「まず、両親に自慢する。それから記念の箱に入れて、使わない。」とレレイ。
「あはは。それもいいね。」



「さあ、今日は、またオイスターを2ダースたべよう。
 それから、河に行って、またキスしよう。」と言った。
「ジュン今日は、ワンピースだから、キスはむずかしいわよ。」とレレイがいう。
「あ、そうか。じゃあ、キスはぼくの車の中で。」
「いますぐ、行きたいくらい。」とレレイ。
「お腹すいたよ。」
「あたしも。」

私たちはいそいそとお店をたたんだ。


つづく (次回は、まだ未定です。)

アメリカ編第二部 ⑧ 「車椅子の少年」

10月の下旬、少し肌寒い日が続くようになった。
レレイは、セミショートの髪が少し伸びて、
天然のソフトウエーブの前髪が、とてもステキになっていた。

リハビリ・センターで、レレイの進歩は目覚しいものがあった。
手すりにつかまって、足を左右に上げられるようになった。
また、手すりを片手でもつだけにして、
方向を変えられるようになった。

今日から、平行棒に沿って、歩行の練習を始める。
平行棒は脇の下より少し低い位置。
レレイは、棒を頼りにしながら、少しずつ歩いていった。
「レレイ、歩けるじゃない。」と私は叫んだ。
「うん。他の練習していたからかな。」とレレイは言う。
棒の終わりまで来て、ターン。少しずつ足を動かして、これもなんとか出来た。
また、歩く。だんだん棒に頼らないようにしていく。

1時間ぶっ続けでやって、とうとうレレイは、
手すりにほとんど触らないで歩くことが出来た。
「わあ、レレイ。すごい。すごい。」と私はレレイを抱きしめた。

「何度もやってみるね。」とレレイは言った。
両腕を横に少し伸ばしたまま、レレイは歩く。
前かがみで歩いていたものが、だんだん背筋が伸びていく。
わあ、すごいと私は見ていた。
歩くだけなら、クリスマスに絶対間に合う。

車椅子の男の子が、それをじっと見ていた。
このリハビリ・センターは、地域に開放しているので、
小学生もやってくる。

レレイが少しでもうまくなると、
その男の子も、拍手を送り始めた。
「お姉ちゃん、すごいよすごい。すごい上達だよ。」
レレイが気が付いて、
「あら、ありがとう。」と男の子に言った。
「あたしは、レレイよ。」とレレイは、棒につかまって言った。
「ぼく、ジョン。ときどき来てるんだけど、
 お姉ちゃん、どんどん上手になっていくんだもん、つい応援しちゃった。」

「ジョン、あたしジュンよ。」と話しかけた。
「あ、よろしく。」とジョンは握手をした。
「ジュンがいつも励ましているから、レレイはやる気になれるんだね。」とジョン。
「そうよ。ジュンがいると、やる気になれるの。」とレレイ。
「ぼくには、そういう人いない。」と男の子は淋しそうに言った。
「私たちが励ましてあげるよ。つきっきりは無理だけど。」とレレイが言った。
「ほんと。なら、ぼくもがんばる。」ジョンは言った。



レレイは、どんどん上達して、自立していった。
私の励ましも少しでよくなって来た。
私はその分、男の子の方をサポートした。

「車椅子から、足を上げる練習ね。」
「うん。」
ジョンはそう言ったが、なかなか足が上がらない。
「1cm上がったら、教えてあげるね。」
私は足乗せの高さに目をやって見た。

そのうち、ジョンの足が1cm上がった。
「あがったわ。ジョンえらい!」と私はジョンを抱きしめた。
ジョンはうれしそうな顔をした。
「今度は反対の足いこう。むずかしいぞ。」と私は言った。

ジョンはがんばった。
「わあ、いった。2cmあがったよ。すごいジョン。」
ジョンの頭を撫でた。
「じゃあ、あたしは、レレイの方行くから、がんばって。
 3cmいけるかもしれないよ。」
「うん。」とジョンはうれしそうに言った。

レレイは、かなり速く歩けるようになっていた。
「レレイすごい。どうして、そんなに上達が早いの。」
「なんだか歩けるの。自分でも不思議。基礎練習たくさんやったからかな。」とレレイ。
「レレイ、少し休憩した方がいいよ。ジョンの応援少しやろう。」と私は言った。
私は、レレイを抱えて、床に座らせた。
そして、2人でジョンを見ていた。
ジョンは、両足3cm上がった。
「わあ、ジョンすごい!」と2人で言った。
「やったー。ぼくうれしいよ。」とジョンは笑顔いっぱいで言った。

それを、少し離れたところで、見ている人がいた。
目にハンカチを当てている。
「あ、お母さん。」とジョンが言った。
お母さんは近づいてきた。
「ありがとうございます。ジョンが笑顔を見せたの、今が初めてなんです。
 交通事故にあって3年経ちますが、それから、笑わない子になってしまって。
 それなのに、こんなに生き生きして。」
お母さんはそう言って、また涙をぬぐった。

「そうだったんですか。」とレレイは言った。「私も歩けなくなったときは、世の中がまっくらに思えました。笑顔なんか出ませんでした。」
ジョンが、「レレイとジュンのおかげだよ。ぼくやる気出たから。」と言った。

お母さんは言った。
「ジョン、お母さんが間違っていたわ。あなたがセンターにいるとき、お母さんは、買い物をしたり、自分の用を済ませていたの。でも、レレイさんとジュンさんを見ていてわかったの。私、いつもジョンのそばにいて、ジョンを励ますべきだった。一人で練習させてきて、ごめんなさい。これからは、お母さんが、レレイとジュンの代わりをするわ。」

「レレイと、ジュンの方が嬉しいけど、お母さんでもいいや。」
とジョンが言ったので、4人で笑った。
「じゃあ、あたしたちときどき見に来るからね。」とレレイは言った。
私は、レレイに立つことだけは、手伝った。
私が手を貸すと、レレイはもう歩ける。うれしかった。
私たちは、ホールの壁のところにいった。



私はレレイに言った。
「レレイ。ぼく欲張りだから、レレイが歩くだけじゃなくて、
 ワルツを踊れるようになったらいいなって思うの。
 ステキじゃない?お父さん、お母さんと、クリスマスの日に、ワルツを踊れたら。」
「ジュン。それステキ。あたしがんばりたい。」
「それには、前に行けること。バックができること。横に歩けること。
 この3つだと思う。」
「うん。がんばる。さっきの平行棒で、後ろ歩きしてみるね。」レレイは言った。



このごろ、レレイは、6時までに帰るということで、
私が、お家まで送り届けていた。
レレイは、車椅子から、座席に簡単に移れるようになっていた。
「お母さんのとき、わざと出来ない演技をするのが、大変なの。」
とレレイは言った。
「あはは。そういうの『うれしい苦労』って言うんだよ。」
と私は車椅子をしまいながら言った。
「なるほど、うれしい苦労が増えていくといいな。」

6時まであと30分。
私はレレイを乗せて発車した。


つづく (次は、「スクエアで売ろう」)

アメリカ編第二部 ⑦ 「ウォンの訪問」

夜の8時ごろに、ウォンから電話があった。
今から私のアパートに来たいと言う。
なんだか切羽詰った声だった。
いいよ、と答えた。

ウォンはすぐにやって来た。
ウォンは、ジーンズにセーターを着ていた。
私は、ワンピースでいた。
なんか、男女が逆みたいだった。

コーヒーを淹れた。
ソファーの小テーブルを挟んで話を聞いた。

「ジュンがロスで彼女がいたって言ったでしょう。
 ジュンみたいな誠実な人が、どうして私への浮気みたいなことになったのか、知りたいの。」
「どうして?ベンと何かあったの?」と私は聞いた。
「ベンに好きな子ができたみたいなの。
 その子のアパート行ったきり帰って来ない。」
「ほんと?」
「うん。」

「ぼくの場合は、ロスで、一応男の格好して、レズビアンの男役みたいにしてたのね。
 で、カフェテリアで、その子とあって、席をいっしょにした。
 ぼくは、その子に、自分はレズビアンだと言った。
 その子は、ビアンでは無かったけど、どんどんぼくに好意を寄せていって、
 ある日その子の部屋に呼ばれた。
 そして、『レズビアンを私に教えて。』ってぼくに言うんだ。
 ぼくのこと好きだから、自分もレズビアンになるってその子は覚悟を決めて言うの。

 ぼくは今まで、ニューオーリンズに恋人がいるから絶対ダメって言い続けてきたんだけど、
 その子に、レズビアンになるとまで言われて、拒否できなかった。
 もし拒否したら、その子がどれだけ傷つくかと思った。
 女の子に、そこまでの恥をかかせてはいけないと思った。
 そのときも、心はウォンにあったけど、ぼくは、男であることを打ち明けて、その子と寝た。
 一度寝てしまったら、二度目を断ることはできないから、3ヶ月続いてしまった。」

ウォンは、膝を抱いてじっと聞いていた。
「ジュンらしいな。ジュンは人の気持ちがわかるから、
 そこまで言われたら、断らないよ。
 あたしがその子だったとして、そこまで言って、もしジュンに拒否されたら、
 もう立ち直れないもの。」

そこまで言って、ウォンは、わあーと泣き出した。
「ベンは、ジュンみたいに誠実じゃないの。
 人の気持ちをそこまで考えないの。
 だから、簡単に女の子を好きになって、簡単に捨てる。
 あたし、夏の3ヶ月、じっとジュンを待っていればよかった。
 たった3ヶ月だもの。待てない長さじゃなかった。」

「3ヶ月は、やっぱり長かったんだよ。
 そんなにウォンを待たせたぼくがいけなかったんだ。」私は言った。

「ジュンは、あたしにベンがいると知って、
 どうやって、あきらめたの。」

「泣いて、泣いて、泣き明かしたよ。
 自分がいけなかったんだから、悪いのは自分なんだからって、
 自分を責めて責めて責め抜いた。
 そして、自分が悪いんだから、しかたないやと思ってあきらめた。」

「今、車椅子の子が、恋人でしょう?」とウォン。
「うん。名前はレレイ。」
「よかったね。好きになれる子と出会うことができて。」
「うん。神様が許してくれたんだと思った。」

「あたしも、ジュンやレレイみたいに、きれいな川の流れの中にいたい。」

「ウォンは、少しも汚れてなんかいないよ。
 ベンのことは知らない。でも、ウォンは心のきれいな子だよ。
 ちゃんときれいな川の流れの中にいる。
 だから、そこにいればいいんだよ。堂々と立っていればいいんだよ。
 男女のことは、百人に聞けば百通りの答えが返ってくると思う。
 ぼくの言ったのは、その中の1つに過ぎないけど。ぼくはそう思う。」と私は言った。

「うん。ありがとう。
 実は、トイにも少し相談したんだ。
 トイもジュンと似たこと言った。
 見苦しく追いかけるなって。じっとしてろって。」ウォンは言った。

そして、ウォンは言った。
「トイはね。バトンルージュのクリスのところへ、毎週末必ず会いに行ってる。片道50マイルとばして。トイは、一度決めたことは、絶対やりぬく。ジュンと同じ。」

「そう。クリスが幸せでよかった。」と私は言った。

「コーヒーを温めて来るね。」と私は言って台所に立った。

ウォンとこの部屋で過ごしたいろいろなことが、頭をよぎった。
ウォンが悲しい思いをすることは、耐えられなかった。
私は台所に立ちながら、涙が出てきた。
その内、涙が止まらなくて、私は台所の壁に腕を押し付けて、
その腕の中で泣いた。

「ジュン、どうしたの?」ウォンが寄ってきた。
「ウォンは幸せにならなくちゃいけない。
 ウォンが悲しい目に合うのは耐えられない。」私は涙の声で言った。

ウォンが後ろから私の背を抱いた。
ウォンの声も震えていた。
「ありがとう、ジュン。
 あたしは幸せだよ。
 ハウスの友達がいる。
 そして、ジュンがいる。
 あたしが、不幸になるわけないよ。
 ベンがあたしから離れたって、知るもんか。
 あたしは、堂々としてるから。」ウォンが私の背でそう言った。



温かいコーヒーを2人で飲んだ。

ウォンは来たときより、晴れやかな顔をしていた。

「なんか、懐かしい気分だね。」と私は言った。
「来てよかった。」とウォンが言った。
「そうお、じゃあよかった。」と私は言った。
「昔の友達っていいもんだね。」
「昔の恋人でしょう。」と私は言った。
「ああ、そうね。レレイがうらやましいな。」
「それは、言いっこなし。」
「そうか。」
2人で笑った。



ウォンは去って行った。
ウォンに新しいボーイフレンドができますように。
そう、星に願った。


つづく (次は、「車椅子の少年」です。)

アメリカ編第二部 ⑥ 「セ…クスを教えて」(あらすじ)

↓のように、アメリカ編第二部「セ…クスを教えて」は、当局の検閲によって、
 表示できなくなりました。2度書きなおしましたが、2度ともダメでした。



今後のストーリにも関係しますので、ここであらすじだけ書きます。
レレイが初めてジュンの部屋にやってきます。
ジュンのアパートには、外に、障害者用のトイレがあったので大丈夫だったのです。

ジュンの部屋で、レレイは、自分は20歳にもなって、まるで性の知識がなくて、
それが劣等感になっていて、
性の営みについて、おおきな恐怖心をいだいているとジュンに打ち明けます。
そこで、ジュンは、レレイのバージンを失うことなく、
性の営みのすばらしさを実際にしてみて、教えます。

レレイは恐怖していたものが、こんなに素晴らしいものなのかと感動します。
レレイは、それまで、自分で自分を慰める行為も知らなかったのですが、
そこで、すべて理解することになります。



こんなストーリーでした。とても真面目に書いたつもりです。
アクセス不可になったことは、残念ですが、ま、いいか、と思っています。


なお、次回のタイトルは、「ウォンの訪問」です。

アメリカ編第二部 ⑥ 「せ…くすを教えて」

私はレレイを私のアパートに呼べないと思っていた。
それは、障害者用のトイレが部屋にないからだ。
そういう装置をつけてもいいか、管理人さんにきいたところ、
問題は、一気に解決。
コインランドリの横に、ちゃんと障害者用のトイレがあったのだ。
1年余り住んでいるのに気が付かなかった。

これで、OK。レレイを呼べる。



10月の中旬の日曜日。午後2時。
レレイを私のアパートに呼んだ。
「レレイが来るから、ちゃんとお掃除しておいたんだよ。」と私は言った。
「ジュン、女の子の部屋なんだね。やっぱり。」とレレイは言う。
「あ、それはね。前住んでいた子が女の子だったの。
 で、その子に、置いていけるものはみんな置いていってってたのんだの。
 だから、ジュウタンも、カーテンも、ベッドカバーも、みんな女の子風。」
「あ、ギターがある。ジュン弾けるの?」
「ものすごく下手だけどね。」

「ソファーに座る?」と私は聞いた。
「うん。でも、あたし一人でできると思う。」レレイはそういう。
あれから、毎日リハビリをやっている。
私も、今のレレイならできると思った。
レレイは、車椅子のブレーキをかけて、
足のせを上げて、すっと立った。
そして、ソファーに両手をついて、うまくお尻をソファーに乗せた。
「わあ、すごいレレイ!」と私は拍手した。
「ジュンのその拍手がうれしくて、あたし、がんばってる。」とレレイは言った。
「だったら、いくらでも拍手するからね。」と私は言った。

私は、レレイに紅茶を淹れた。
お茶を飲むと心が落ち着く。

お茶をテーブルに置いた。
次にしたいこと。2人の気持ちは同じだった。
私たちは、唇を重ねていた。
何度も何度も重ねた。

「ジュン、聞いて。」とレレイが言った。
「あたし、つい最近まで、キ・スをすると子供が産まれると思っていたの。」
「じゃあ、そうじゃないって分かってよかったね。
 じゃなきゃ、あの河のところで、キ・スできなかった。」
「あたし、遅いでしょう。そういう知識。もう20歳なのに。」
「そうかな。」
「セッ・クスのことは、アメリカでは小学校で習うらしいの。
 でも、私は台湾にいた。台湾ではそんなこと教えない。
 ここで、中学のときは、あたし英語がよく分からなかったから、
 そういうお話に入れてもらえなかった。
 高校では、車椅子にいたから、もっとそんなお話きけなかった。
 だから自分で、子供用のセッ・クスの本を読んだの。
 でも、よく分からなかった。だから、セ・ックスのことは、あたしの劣等感なの。
 だから、ジュン。あたしにセックスを教えて。」

「いいけど、今そう言われて、心臓がドキドキしてる。
 あの、台湾では、セッ・クスは、結婚したときに、
 お互い初めて同士でするんでしょう?」
「うん。多分そう。」
「日本も同じなんだ。それでね、女性は初めてセック・スすると、出・血するの。
 その血を見て、花婿は花嫁がヴァ・ージンだなって安心する。
 二度セックスをすると、出・血しないから、ヴァ・ージンじゃないことになる。
 レレイは、セッ・クスに、不安をもっているの?」
「うん。その通りなの。怖くてたまらない。」
「じゃあ、ぼく、レレイに、セッ・クスがどんなにステキなものか教える。
 でも、レレイのヴァージンを奪わないようにするから、安心して。」
「うん。こんなこと頼めるのジュンだけなの。」



私はベッドルームへ行ってベッドカバーと毛布を取り、
カーテンをしめて、薄暗くした。
レレイを抱いて、ベッドの真ん中に、寝かせた。
「ぼく、今からは・だかになるから、目をつぶっていて。」と言った。
私は着ているものを全部抜いだ。
「レレイもは・だかになるの。いい?」と聞いた。
レレイがはだ・かになるのを手伝った。
2人、ショーツだけになって、ベッドの毛布に包まった。

「セ・ックスはね、女の子は、ほどんと何もしなくてもいいの。
 男の子ががんばって、女の子を気持ちよくさせてあげるの。」
「うん。」とレレイは言った。
私の胸はときめいていた。本気にだけはなってはいけない。

私は、レレイの耳や目や、首すじなんかにキ・スをした。
「男の子は、こうして、女の子のいろんなところを触ったりキ・スしたりする。
 男の子にとっては、それが喜びなの。どう、気持ちいい?」
「うん、とっても。」とレレイは言った。
「キ・スをするよ。」私は深いキスをした。
自然と抱き合っていた。

レレイの髪の毛を梳いた。何度もキ・スをした。
レレイの体を触って、いろいろなところをなでた。
そして、胸のふくらみに手を掛けた。
ゆっくりともんで、最後に一番高いところをつまんだ。
レレイが、「はあ~。」と息をはいた。
両方をていねいに刺・激した。
「ジュン、すごく気持ちがいい、あたし変になりそう。」レレイが言った。
「うん。ここは、うんと感じるところなんだよ。」と言った。
私は背中をさすったり、胸の膨らみを刺・激したり、
やがて、太・ももに手を伸ばした。そこをなでると、
レレイが声を出した。「ジュン、ジュン、たまらない、どうすればいいの…。がまんできない。」
レレイのショ・ーツをとった。
レレイのかの部分が十分に潤んでいた。
「レレイ、ほんとだと、ここに、男の子の大きくなったものが入ってくるの。」
私はショ・ーツを抜いで、レレイに私のものを触らせた。
「レレイが今ぬ・れ・ているのは、これが入ってきてもいいようになの。
 でも、今日はいれないよ。入れちゃうと出・血しちゃう。
 レレイのいちばん敏・感なのはここ。」
私は、その部分を触った。
「あ~ん。」とレレイは背をのけぞらせた。
私は刺・激を続けた。
「あ、あ、がまんできない。あ・あ、ああ。気持ちよくて気が狂いそう。」とレレイは体を揺らした。
そして、なんども声をあげた。
私は続けた。
その内レレイは、「あ、ああ、あ・ああ…。」と声を出し、体をブルブルと振るわせて、
やがて、達した。
「レレイ。ぼくも我慢できないから、レレイのお腹の上でイかせて。」
そう言って私は、レレイのお腹の上に乗って、体を上下し、すぐに果ててしまった。

「レレイ。こんなのが、男の子のあそこから、発射されるの。
 ほんとは、レレイのあそこの中でね。」

私は、おきあがって、タオルをぬ・らして、それを絞って、私やレレイのお腹、
そして、レレイのぬ・れた部分を拭いた。
レレイにショーツを履かせ、私も履いた。

レレイの毛布にもぐりこんだ。
レレイはしばらく放心状態だった。

「レレイ。」と呼んだ。
「あ、ジュン。これが、セッ・クスなのね。」
「うん。怖くなかった?」
「ぜんぜん怖くなかった。それどころか、あたし別の新しい世界を知った。
 これまで、こんなステキな世界があることを知らなかったなんて。」
「多分、レレイは、一人でこの世界に行く方法を知らなかったんだね。」
「うん。知らなかった。」

「ぼくがさわって、いちばん気持ちよかったところがあるでしょう。
 そこを、自分でなでたりこすったりすると、今日みたいな世界にいけるんだよ。」
「うん、わかる。」
「そう。」
「ジュン、ありがとう。他の誰にも聞けなかった。
 ジュンだから聞けた。あたし、幸せな気持ちでいっぱい。」
レレイは私に乗りかかって来た。
私の胸に頬をあてて、
「ジュンになら、なんでも聞ける、なんでも甘えられる、ジュンはあたしの天使。」
そう言った。
「レレイのために何かするのが、ぼくの喜びだよ。」と私は言った。



「リハビリでレレイが歩けるようになるの、クリスマスに間に合うといいね。」
と私は言った。
「そうか。父と母へのプレゼントとして。」とレレイは目を輝かせた。
「うん。最高のプレゼントだと思わない?」
「思う。あと2ヶ月ある。間に合いそうな気がする。」
「がんばろう。」
「うん。」

こうして、充実感に満ちた午後が過ぎていった。


つづく (次は、「ウォンの訪問」)

アメリカ編第二部 ⑤ 「ファースト・キス」

書いていて、ふと、「女装」のことがほとんど書かれていないことに気が付きました。テーマは「女装」にしてあるのに。どうも、すみません。こんな感じで記事は進んでいきます。
読んでくださるとうれしいです。

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1週間がたった。
レレイと私は、毎日リハビリセンターに通った。
レレイは、自分の時間が空いたときも、一人で行っていた。
レレイは、今、普通の椅子に座って手を使わないで立ち、また立ったところから、座れるようになっていた。
これは、これは足全体の筋肉が回復したことで、大きな進歩を意味していた。

私はレレイのお母さんから、レレイの車への乗せ方と、降ろし方を習った。
(実際は、レレイはその必要がないくらいになっていた。)
そして、次の日曜日、レレイと「フレンチクオータ」に遊びに行きたいと言った。
お母さんは、トイレが心配だと言った。
私は、ストリートの真ん中の、観光案内所の中に、車椅子用のトイレがあることを伝えた。
私が、男女のトイレにいけないでいたとき、苦労して見つけたところだった。
それで、お母さんは、OKしてくれた。



日曜日、レレイを迎えに行くと、レレイは、可愛いワンピースを着ていた。
一方、私は、細身のジーンズに男の子っぽい緑の厚めのセーターを着ていた。
わざとノーメイクで行った。
レレイのヘルプのため、スカートは避けた。
私は、レレイを車の助手席に上手く乗せることに成功した。
車椅子を畳んで、後ろ座席に入れる。
ご両親に見送られ、手を振った。

「ジュン、今日男の子っぽい格好で着てくれたの?」
「うん。これがぼくの精一杯。これでも、女の子に見えちゃうでしょ。」と私。
「うん。ジュンは、もともとが可愛いから。」
「男装の女の子に見られちゃう。声を出したら1発。だから大学へいっそのこと女の子の格好でいくことにしたんだ。
 それに、ぼく女装するの好きだから。」
「ジュンは女装していた方が、落ち着くんだね。」
「うん、そう。女装してた方が、じろじろ見られない。」
「じゃあ、今日は、じろじろ見られるよ。」
「レレイがいるから大丈夫。」
「どうして?」
「みんな、女の子を先に見るから。」
「そうか。」レレイは言った。

フレンチクオーターで一番の観光地、「バーボン通り」に着いた。
車を止めて、車椅子を出し、レレイを座らせた。

車から降りたとたんに、ジャズの音が聞こえた。
「わああ。」とレレイが言った。
「レレイは、ここ初めて?」
「うん、中学生のときは、行っちゃいけないところだったもの。
 それに、デイトもはじめてなの。」
「わあ、それは、ぼくがんばらなくちゃ。」
「すごい、街中に音楽が鳴ってる。
 あ、ヌード・シアターもある。
 だから、中学生はだめだったんだね。」
一通り通りを練り歩いた。
ジャズホールのドアというドアが開いている。
「これなら、ストリートから、みんな楽しめちゃうじゃない。」とレレイは言った。
「気前がいいよね。」
「ほんと。」

「プリザベーション・ホールに行ってみよう。」
「そこはなに?」
「骨董品的ジャズホールなんだよ。老齢の人がやってる。
 でも、入場一人1ドルなんだよ。」
「それ、安い。」

そのホールに行ってみると、ザルをもった若い人がいる。
みんなそのザルのなかに1ドル札を入れて中に入っていく。
私たちもそうした。
古い建物。骨董品的気分満点。
床は平らなジュータン。後ろに若干の長椅子。
私たちが入ると、
「前に行きなよ。」
「どうぞ、前に行って。」とみなさんがゆずってくれた。
レレイと私は端っこの一番前にいけた。

軽快でどこか癒される
デキシーランド・ジャズが流れている。
初めの曲が終わったとき、だれかが、
「セインツ!」と言って、5ドルを渡した。
すると、見ていた人が、わあーと涌いた。
「レレイ、ぼく達運がいいよ。誰かが『セインツ』をリクエストしてくれた。
 この曲だけ、リクエストは5ドルなんだ。他も曲は1ドル。」と私は言った。
「セインツって?」とレレイ。
「『聖者の行進』のこと。この街のシンボルみたいな曲なんだよ。」

曲が始まった。
どの演奏者も、ここぞとばかり音を上げる。
ホールの中は完全に盛り上がって、後ろの人たちは、ペアを組んで踊ってる。
みんなの手拍子の中、私たちも手拍子をした。
「わあ、いいね。最高。」とレレイが言った。

曲が終わり、1シリーズを聞いて、外に出た。
お昼時になっていた。
私たちは、オイスターの店に行った。
「わあ、生牡蠣、私大好き。」とレレイがいう。
「何ダース食べられる?」と聞いた。
「そんなに食べるの。あたしいつも3、4個。」
「きっと1ダースは食べられるよ。」と私は言って、2ダースとガーリックパンを頼んだ。

1ダースをみて、レレイは「うわあ~。」と声を上げた。
でも、食べ始めると、1ダースをぺろりと食べてしまった。
結局もう1ダース食べて、お腹がいっぱいになった。

もう一度、通りを巡っていると、
向こうから、車椅子の老夫妻がやって来た。
ご主人が車椅子。
すれ違うとき、ご主人がレレイに、
「ここは楽しいね。」と言った。
「はい。そうですね。」とレレイ。
「ボーイフレンドに押してもらってるの。」
「はい。そうです。」とレレイは言って、挨拶をしてすれ違った。

「ジュン。ボーイフレンドで通ったよ。」とレレイが嬉しそうに言った。
「ほんとだね。ぼく男らしくなったのかなあ。」と私はうれしかった。

それから、私たちは、雑貨店を何軒か回り、
ミシシッピー河のほとりで、コーヒーとドーナツを食べた。

堤防にのぼって河を見たかった。
でも、スロープがない。
私は、コーヒー店の老夫婦に、車椅子を見ていてもらって、
レレイを抱いて、堤防の階段を上った。
すぐ近くにベンチがあったので、レレイを降ろし、二人並んだ。
「レレイ。倒れないように、ぼくに寄りかかって。」と言った。
念のため、私はレレイの肩を抱いた。

「これが、ミシシッピー河なの。初めて見た。綺麗だね。」とレレイが言った。
河はちょうど陽が沈みかけて、川面を赤く照らしていた。

「この河をずっと北に上っていくと、セント・ルイスに着くんだよ。」と私は言った。

♪ I hate to see the evening sun go down…

と、レレイが歌った。
「わお、レレイすごい。『セント・ルイス・ブルース』じゃない。」
「家にレコードあるの。ビリー・ホリデイ。お父さんジャズ好きだから。」
とレレイは言った。
「レレイのお家は音楽一家だね。」と私。
「うん。そうね。」とレレイは言った。



レレイは、
「あたし、中学のときは、あまり言葉がわからなくて、ボーイフレンドがいなかった。
 高校では、車椅子になったから、ボーイフレンドがいなかった。
 だから、今日は、初めてのものばかり。

 初めてのデイト、初めてのバーボン通り、初めてのジャズホール、
 初めての雑貨屋さん、初めての2ダースオイスター、
 初めてのミシシッピー河。なんだか夢みたい。」とうっとりとしてそう言った。

「レレイ。初めてのものをもう一つ増やさない?」と私は言った。
「なあに。」とレレイ。
「これ。」
私はそう言って、レレイの唇にそっと唇を重ねた。
唇を離したとき、レレイは、私を見つめていた。
「あたしのファースト・キス。甘い味がした。」
「もう一度しよう。」
「うん。」
私たちは、ロングロングキスをした。

「ぼくたち、これで恋人どうしだね。」
「うん。ジュンの恋人になれてうれしい。」
「ぼくもレレイの恋人になれてうれしい。」
私たちはそう言い合った。



車椅子にもどり、レレイを家まで送ったのが6時だった。
お母さんに、しっかりレレイを渡した。
たくさんお礼を言われた。

無事に帰れてほっとした。

レレイは、今日のことをたくさんご両親に話すだろうな。
でも、一つ、ファースト・キスのことだけは、言わないな。
私が、男であることは、まだ内緒だから。


つづく (次は「セックスを教えて」)

アメリカ編第二部 ④ 「レレイへの告白」

レレイの家は、平屋の大きな家だった。
私は車から降りて、身なりを整えた。
ちょっと緊張する。
呼びリンを鳴らすと、すぐ返事があった。

ドアを開けてくれたのはお母さん。
レレイに似て美人。
「ジュンさんですね。まあ、お綺麗だわ。」と言ってくれた。
レレイとお父さんも出向かえてくれていた。
「ジュン、ステキ。すごく綺麗。」とレレイも言ってくれた。
お父さんは、背が高くて、長髪、若々しくて芸術家タイプ。
お父さんが、
「こんな綺麗な方が、土をかぶってくれたの?」
とレレイに言った。
「そうよ。」とレレイは自慢げに言った。

円い食卓のある部屋に案内された。
食卓にはおいしそうな中華料理。
私はお腹が鳴りそうだった。

食卓は、レレイがそのまま車椅子で食べられる高さに出来ていた。

ご両親の英語は、ネイティブではなかったので、
かえって聞き易かった。
ご家族は、レレイと3人のようだった。

お母さんは、お料理上手だ。
出てくるお料理がみんなおいしかった。
「チャイニーズ・レストランのお料理よりおいしいです。」
と私は言った。
「まあ、うれしいわ。」とお母さんは笑顔で言った。

楽しい食事の時間が過ぎて行った。
ご両親は、教養があって、どんなお話にも合わせてくれた。
また、そのお話もおもしろかった。

お父さんは言った。
「私たちは、レレイが小学校を卒業したとき、アメリカにきました。
 そして、レレイは、中学の3年間は無事通ったのですが、
 高校1年生の初め、交通事故に合い、車椅子の子になってしまいました。
 いろんな子が変わる変わるレレイのそばに来て、レレイが孤立しないよう配慮してくれました。
 いい学校でした。でも、レレイは言います。自分から甘えられる友達はできなかったと。

 初めの大学での1年間も同じでした。
 でも、こちらの大学に来て、ジュンさんに出会いました。
 レレイは、ジュンさんは特別だと言うんです。
 なんでも、甘えられる人だって。そんな人に出会ったのは初めてだと。
 ごめんなさい。こんな話、ジュンさんに重荷を与えているかと思います。
 でも、今日ジュンさんにお会いして、レレイの言うことがわかるような気がしました。
 ジュンさん。あなたには、私も特別なやさしさを感じます。 
 ジュンさんがレレイのお友達になってくださったら、こんなにうれしいことはありません。」

私は言った。
「私とレレイとはもうお友達です。
 だから、たくさん甘えてくれたらうれしいです。
 私もレレイからたくさん元気をもらっています。」
「そうですか。ありがとうございます。」
とお父さんは、少し涙ぐんで言った。
お母さんも。



食事の団欒が終わって、レレイがレレイの部屋に来て欲しいと言った。
そこで、2人で、レレイの部屋に行った。
ピアノがあった。
「わあ、レレイは、ピアノ弾けるの。」と私は聞いた。
「うん。でも、車椅子だと弾きにくい。それに、ペダルを上手く踏めない。」とレレイ。
「もうすぐ弾けるよ。リハビリがんばろう。」と私は言った。

レレイは、少し真面目な顔をした。
「父も言ってたけど、あたし、ジュンになら甘えられる。なせだろう…。」
私は少し考えた。今が言うときなのかも知れない。
「それは…あたしが、レレイのこと、好きだからだと思う。」
レレイは、ぴくんと反応した。
「好きでも、いろいろあるでしょう。花が好き、空が好き…。」とレレイは言った。
「男の子が女の子に言う『好き』もあるよね。」私は言った、
レレイは、何かを言いたそうにしていた。

「あの、あたしはそういうの、全然気にしないんだけど、ほんとそのつもりで聞いて。
 今日、ジュンの新聞を見てた人がね、ミス・ワンピースは、その…レズビアンだって。
 あたしは平気。気にしないのよ。」レレイは何度もそう言った。

私は言おうと思った。
「前の学期まで、もう一人ミス・ワンピースがいたの。
 あたしは、その子が好きだった。恋人同士だったの。
 でも、あたしがロサンゼルスへ3ヶ月も行ってしまって、
 その間に、その子に好きな人ができちゃった。
 その子とあたし、いつも腕を組んで歩いていたから、
 みんなあたしたちのこと、レズビアンだと思った。
 でも、違うの。
 男の子と女の子の普通の恋人同士だった。」

「どういうこと?」とレレイは戸惑った表情を見せた。
「レレイに、もう言ったよ。早く告白すべきだと思ったから。」
「え?わからない。何?」
「ターザン ウソ つかない。」
私はそう言って、レレイの手を取って、私のブラの詰め物の下に入れた。

レレイは目を丸くして、私を見つめた。
「ジュンは、おとこのこ…。」レレイはゆっくりとそう言った。
「うん。ぼくは男の子。そして、もうレレイを好きになってる。
 がっかりした?」
「ううん。あたし、うれしい。ジュンが男の子でうれしい。
 それで、わかった。あたし、ジュンのそばにいて、胸がときめいたの。
 リハビリのとき、ジュンに支えてもらって、ドキドキした。
 ジュンが男の子だったからなんだ。やっとわかった。」

「ぼくが、男であること知ってるの、学生の中で3人しかいない。
 初めに入った寮のルームメイト、前の恋人、そして今レレイ。」
「どうして、打ち明けてくれたの?」とレレイ。
「レレイのこと好きになったから。明日はもっと好きになってると思う。」

「あたし、車椅子の子なのに、ボーイフレンドになってくれるの?」
「女の格好をしたぼくだけど、ガールフレンドになってくれる?
 それに、レレイは、車椅子の子ではなくなる。
 そのために、これから2人でがんばろうとしてるんじゃない。」
「ジュン。ありがとう。あたしうれしい。」
レレイは、顔に両手をあてて、泣いた。
私はそっとレレイの背中をなでた。
レレイがたまらなく愛しいと思った。


つづく (次は、「ファースト・キス」です。)

アメリカ編第二部 ③ 「キャンパス新聞流れる」

次の日、1時間目があったので、早めに大学に行って、面食らった。
車から降りて、カフェテラスの方に歩いていくと、
学生達が、みんな白い大きな紙を読んでいる。
その内誰かが、私を見つけた。
「ねえ、あの人よ。『ワンピースの天使』。」と指差された。
すると大勢の学生達がやってくる。

「ねえ、あなたでしょ、これ。ステキだわ。」
「ミス・ワンピースって君だよね。」
「ミス・ワンピースを見直したよ。」
「女の子なのに、すごいよ。」
「サインして。」
「わたしも。」
「ぼくも。」
などと言われながら、サインのためのノートを差し出された。
きっとキャンパス新聞が出たんだと思った。
私の土だらけの写真でも出ているのだろうか。
私は、言われるままにサインをして、
新聞をもらいにいった。

キャンパスの正門の正面の掲示板に、拡大版と持ち去り用の新聞があった。
1部もらって、見てみると、
大見出しに、「ワンピースの天使『奇跡のスライディング』」などという見出しで、
号外版として出ている。
私がスライディングしているところの想像図が、上手に描かれていた。
そして、土だらけの私の写真がバッチリ載っていた。
レレイは、スロープを下っている想像図だけだった。
一応、身体障害者のレレイへの配慮だと思った。

見ていた人のインタビューもあって、
「彼女がしたのは、スライディングというより、ダイビングだったね。
 ほら、水泳のスタートみたいに、頭から飛んだんだよ。」
「あんなすごいダイビングは、めったに見られない。惚れ惚れしたよ。」
「そばにいた俺達は、気が付きもしないのに、彼女は予測したようにダッシュした。」
と、最高に近い賛辞が述べられていた。
きっと私のことが、みなさんの記憶の中で美化されたのだと思った。
そして、新聞というのは、ヒーローやヒロインを作るのが好きだ。

ひと波が過ぎて、いつものテラスで朝食をとっていると、
レレイがやって来た。
「レレイ、みんなから騒がれなかった?」と聞いた。
「たくさん聞かれた。ジュンのこと。ジュンがどんな風に私を助けたか。
 もう何回も説明して、アゴがおかしくなっちゃった。」と笑った。
「これで、レレイのことが知られて、大学や学生たちが、
 レレイをヘルプしてくれるようになるといいんだけどね。」と私は言った。
「3日も経てば、みんなこのこと忘れちゃうと思う。」とレレイ。
「うん。そうだね。あたし、もう騒がれるのいや。3日の我慢ね。」と私は言った。



「レレイ、1時間目はどこ?」
「C号館の3階。」
「じゃあ、そこまで、車椅子を押させて。」と私は言った。
「甘えていい?」
「もちろん。」
私は車椅子を押しながら、
「こうやってあたしが押しちゃうと、レレイをスポイルしていることになるのかしら?」
と聞いた。
「そんなことない。とってもうれしい。この大学は平だといっても、砂利の道なんかあるし
 すごく疲れるの。だから、少しでも押してもらえるとうれしい。」レレイはそう言った。
「それなら、よかった。できるだけ押してあげるね。」と私は言った。

「ジュン、『アルプスの少女のハイジ』知っているでしょう。」とレレイ。
「うん。知ってる。」
「そのハイジの友達の車椅子のクララみたいに、がんばってリハビリすると、
 あたし、少しずつ歩けるようになるかも知れないの。
 今まで、そのリハビリが辛くて逃げていたの。
 でも、昨日ジュンが助けてくれて、気持ちが変わった。
 あたしのために、ここまでして助けてくれる人がいるのに、
 あたし自身ががんばらないで、どうするのって。」

「そうなの?」私の心に火がともった。そして、言った。
「じゃあ、あたしいくらでもレレイのために応援する。」
「ありがとう。ジュンがいてくれると、あたしなんでもできそうな気持ちになる。」
とレレイが言った。
私はうれしかった。



私は私の教室へ向かった。
今、一番むずかしい「心理学史」だった。内容はほとんど「哲学史」と同然。
顔中髭だらけの哲学者風な、Y先生。教室は、90人くらいの学生。
私の定位置は、一番前のど真ん中。時間はなんとかセーフ。
私は、前のドアから教室に入った。
すると、ウオーと声があがり、スタンディング・オベイジョンを受けた。
拍手と共にピーピーと指笛も鳴る。
みなさん新聞を持ってアピールしている。
そうか。
私は、みなさんに手を振り、笑顔を振りまいて、
サンクス、サンクス、と繰り返した。

やがて先生が来て、学生達は静かになり座った。
先生は、いつも苦虫を噛み潰したような顔をして冗談を言わない。その先生が、マイクをもち第一声として、
「我々は、このクラスに、勇敢なるミス・ワンピースを得て、誇りに思うものである。」
と言ったので、学生達は、再び涌いた。
先生が私を見て、微笑んでいる顔を見るのは、初めてだった。
それは、うれしくて、少し照れくさかった。



レレイも私も4時間目がなかったので、
2人で、大学のリハビリ・ルームに行った。
大学のジムの一画にある。
ここは、身体障害の人たちへの、言わば大学のサービスルームだ。
7,8人の人が、リハビリをしていた。
私たちは、トレーナーの人のアドバイスを聞いて、
今日は、車椅子から、どれだけお尻を上げられるかという練習をした。

壁に向かい、車椅子の車輪にストッパーをかけ、
レレイは、車椅子の左右の手すりを握り、
足乗せを払い、地面に両足を付く。
体の重心を前に移して、足と両腕の力で、お尻を上げる。
目標は、車椅子から、その場に立つことだ。
私は、どのくらいお尻が上がったかを見る役目。
レレイが力を入れる。
「あ、3cm上がったよ。」と私は叫んだ。
「じゃあ、次は5cmに挑戦する。」とレレイ。
「あ、5cmいった。レレイ、えらい!」
「ほんと、うれしい。」
とレレイと抱き合った。
たった2cmのことが、こんなに2人にとって嬉しいなんて、
「喜び」って何だろうと、思ったりした。



毎日、ここに来て30分はがんばろうと言い合った。
そして、このことは、レレイのご両親に内緒にしようと。
「ハイジ」のクララのように、サプライズにしたいからと。

この日、結局がんばってしまって、1時間以上もやり、
レレイは、私の補助でなんとか立てるようになった。
私たちは抱き合って喜んだ。
進歩が早い。
昔やったリハビリの効果が残っているのかも知れなかった。



家に帰って、シャーワーから出た頃に、電話が鳴った。
なんとウォンからだった。
「ジュン。新聞見たわよ。ジュンすごいよ。」ウォンの声は弾んでいた。
「ありがとう、ウォン。」と私。
「あたし、かつての『ミス・ワンピース』よって名乗りたかったわ。」と笑っていた。
「あはは。ワンピース、ぼく一人になっちゃって、淋しいよ。」と言った。
ウォンの電話は、ハウスからで、ウォンのあと、ユンとかトイとかベンからも
交代で賛辞をくれて、私の心は温まった。

さて、7時から、レレイの家に行く。
もうお腹がすいていた。
どんな服を来て行こうか。
フォーマルは大げさだし、セミフォーマルかなと思った。
赤い光沢のある膝までのワンピースを選んだ。
肩のところに赤い花があって、可愛い。
我ながら、ずいぶんワンピースがたまったなと思った。
唇をちょっと赤めにする。チークも。
金色のネックレスとイアリング。
いいかなっと思った。

そろそろ時間だ。
私は家を出た。


つづく (次は「レレイへの告白」です。)

アメリカ編第二部② 車椅子の女の子

9月の中旬になっていた。
ウォンと別れてから3週間が経ち、
私たちはキャンパスで会っても、
気持ちよく挨拶ができるようになっていた。
ウォンはベンともうまくいっているようだった。
ウォンは、ワンピースをやめ、ジーンズを履いていた。
ベンは、私を女の子だと思っているので、
ウォンと私の関係は知らない。それは、助かることだった。



日差しがキラキラと眩しい午後のひととき。
私は、大好きな外のテラスで、コーヒーを飲んでいた。
少し涼しくなったので、七部袖のワンピースを着ていた。

ふと、そばの校舎の車椅子用のスロープに目が行った。
ある女の子の車椅子が、校舎から出てきて、そのスロープを降りようとしていた。
しかし、スロープの地面に至る最後の部分が欠けていて、段差が7cmほどできている。
あぶない。このまま不注意に通れば、その段差で、女の子は頭から地面に激突する。
私は女の子をヘルプしようと席を立った。

そのとき、女の子の「キャー!」という悲鳴が聞こえた。
女の子は、その段差に気が付き、パニックを起こしたのだと思った。
車椅子がブレーキも無しに、女の子を乗せたまま、
勢いを増して、その段差に近づこうとしていた。

いけない!私はその段差に向かってダッシュした。
だが、一刻間に合わない。
そこで、段差目掛けて、思い切りヘッドスライディングした。
車椅子の車が、ゴキッと私の背中と、太ももの上を通り抜け、
向こうの地面に降りて止まった。
「平気?」と女の子の方を見て言った。
女の子は、車椅子から後ろを向いて、
「平気よ。ありがとう。」と言った。

私は立ち上がった。
私は、さながら、少年野球児のスライディングの後のようだった。
土を頭からかぶり、顔、体の前面土まみれ。

全部を見ていた、外のテラスの人たちが、「イエーイ!」と言いながら集まってきた。
「なんて勇敢な女の子なんだ!」
「すごいスライディングだった!」
「どうして、危険な場所がわかったんだ?」
「あ、君のこと知ってる。『ミス・ワンピース』だろ?今日は一人?」
「ミス・ワンピースのこと、俺達ちょっとバカにしてたんだ。何っぽいから。
 でも、見直したよ。こんなすごい女の子だったんだ。これからは尊敬する。」
口々に誉めてくれた。

そんなみんなに、お礼を言って、
私は、女の子のところに行った。
車椅子のそばにしゃがんで、
「段差に気が付いて、怖くなったのね?」
「そう。どうしてわかったの。あなたがいなかったら、あたし大怪我してた。」
「あの段差、あぶないなって思ってたから。」

私は、女の子の車椅子を押しながら、
「ね、いっしょにコーヒー飲まない?」と言った。
「ええ、もちろん。」とその子は言った。
私はその子の車椅子をテーブルに運び、
ブレーキをかけて、コーヒーを買いに行った。



「あたしは、ジュン。日本人。」
「あたしはレレイ。台湾人で、両親とここに住んでる。」
「よろしく。」と握手をした。
レレイは、ほとんどネイティブな英語を話した。

レレイが、くすっと笑った。
「何?」と私。
「だって、ジュンは、体中土だらけなのに、払おうともせずに、
 平気でコーヒー飲んでるから。」
「あ、だって、払ったらコーヒーに土が入っちゃうじゃない。」
「あ、そうか、そうね。でもジュンはユニークだわ。」とレレイは笑顔で言った。

レレイは、私が昔好きだったある女の子に似ていた。
笑顔がとくに似ている。何だか胸がキュンとした。

「ジュン。怪我してない?」とレレイは言った。
膝と肘と掌に少しかすり傷があった。自分で持っていた消毒液を塗った。

「レレイのこと、あまり見かけなかったけど?」と私。
「隣のトゥーレイン大学に1年間いたの。
 でも、あの大学坂が多いでしょう。母がつききりじゃないと通えなかった。
 だから、ここに来たの。ここなら来るときと帰るときだけ車を頼めばいい。
 ここ昔空軍基地だったらしくて、真っ平だから。」とレレイは言う。
「そうねえ。あたしそこがつまんないって思ってたけど、
 レレイにとっては、大事よね。あはっ。この大学のいいところ1つ発見。」
「車椅子にやさしい大学。」
「そうそう。」と2人で笑った。

レレイが、言った。
「ねえ。ジュンはどうして、あんなすごいことができたの。
 洋服や髪を土だらけにして、手傷まで負ってあたしを助けてくれた。」
「あ、内緒よ。あたし、お・と・こ・の・こ。忘れないで。」と私は言った。
「あはは、冗談はやめて。」
「ほんとよ。ターザン ウソ つかない。」
「あはははは。」とレレイは笑った。

レレイと住所や、電話番号を教えあった。
そして、1週間の時間割も。そうすれば、互いにどこにいるかが分かる。

私が立ったとき、大きなカメラを持った青年が2人来た。
「あの、キャンパス新聞に載せたいんですが、写真を撮っていいですか。」と言う。
「え?こんな土だらけの服と髪で?あたしは土のメイクで?」私は悲しい顔で言った。
「それじゃないと意味がないから。」
と言われて、バシュ、バシュと何枚か撮られた。
レレイも撮られていた。
その後少しのインタビューをされた。



レレイを次の教室まで送り、さよならをした。

さて、私はまず家に帰り、シャワーを浴びて、髪を洗い、着替えて、メイクをしなおさないといけない。
ああ、次の授業に間に合いますように…。

*   *   *

その日の夜、レレイの家から電話があった。
お母さんからだった。
たくさんお礼を言われ、お礼にご自宅で、夕食をご馳走になることになった。
明日、夜、7時。
私が車で訪ねる。
とても楽しみだ。


つづく(次回は、「学校新聞配らるる」)

アメリカ編第二部 ① coming home

またまた急なことですが、「アメリカ編第二部」を書きたいと思います。

連続して書くことは難しいので、ときどき、日本編も入れながら、

書いていきたいと思います。読んでくださるとうれしいです。

=================================

ロスで、一成、恵子、カレンと別れた。
恵子との別れは、辛かった。

ロスを出て100kmのところで、ジェイルに入れられ、
3日後に、ニューオーリンズに向かった。
まる5日間運転をして、やっとニーオーリンズについたのは、夜の8時だった。

3ヶ月ぶりのアパートに着き、鍵を探したけれどない。
そうだ、管理を頼んだウォンがもっていると思って、
ウォンのハウスへ行った。

ハウスでウォンに会って、互いに抱擁するイメージが浮かんだ。

ハウスに着いて、ウォンを呼んでもらった。
私は出発したときと同じ、迷彩服を着ていた。
ウォンは、来た。だが一人ではなかった。
背の高いベトナム人の青年が、ウォンの後ろにいて、
ウォンの肩に手を掛けていた。

「ジュン。」とウォンは言った。
「ウォン。鍵がなくて、返してもらいに来たんだ。」
「待ってね。」とウォンは言って部屋に行った。
私は青年に、「ジュンです。ウォンの友達。」と挨拶した。
「ベンです。お名前は聞いてる。」と彼は言って手を差し出した。
私たちは握手をした。

ウォンが鍵を持ってきた。
「あのう、ジュン、いろいろ説明したいの。」とウォンが居心地悪そうに言った。
「今日は、もう遅いよ。明日にしよう。管理ありがとう。」
私は、そう言って、車に乗り発車した。
ウォンが車に乗り、私の後を走ってくるのが分かった。

私はアパートに着き、ドアの鍵を開け扉を開けた。
それと同時にウォンがやって来た。
二人で中に入った。

ウォンをソファーのテーブルの前に座らせ、
私は、紅茶を涌かした。



紅茶を飲もうともせず、
「ベンとは、3ヶ月だけのお付き合いって約束だったの。」とウォンは言った。
「ぼくに、ウォンを責める資格ないんだ。ぼくもロスに彼女ができてしまったから。」
「でも、ジュンは、その子と別れて来たんでしょう。」ウォンが涙声になっていた。
「うん。初めからそう言っていたから。」

「あたしは、ベンと別れてない。ジュンが帰ってくるというのに。」
「長い短いの問題じゃないよ。ぼくは、ウォンとの約束をやぶった。
 だから、ウォンを責める資格はないよ。」
「あたし、ジュンのベッドで、ベンと寝たの。
 ジュンのベッドだっていうのに。ひどいことをした。」とウォンは泣いた。

「空いてたんだからいいさ。
 ぼくだって、その女の子と寝たもの。」
「浮気はするなって、あたしが言っといて。」
「ウォンが言わなかったら、ぼくが言ったよ。
 どっちが言ったかなんて、問題じゃない。
 問題は…。問題は、ウォンが今どちらが好きかってことだよ。」と私は言った。

「それは…。」とウォンは口を閉ざして、うつむいた。
それで、ウォンはもう答えを言ったようなものだった。

私は言った。
「ウォンが、ベンを好きだっていえば、
 ぼくは、泣いて泣いて泣き明かして、君をあきらめる。
 ぼくは、あと1年で日本に帰ってしまう。
 ウォンもいっしょに来て欲しいと思うけど、ウォンは、ノーって言うと思う。
 ベトナムから、アメリカという土地にやっと慣れてきたんだもの、
 今まで大変だったと思う。その上、日本になんて辛すぎる。
 日本は、外国の人にまだ慣れてないから、住むならアメリカの方がずっといい。
 ぼくは、アメリカに残れない。ベンはずっとアメリカにいる。」

ウォンがしばらく私を見ていた。
「ジュン、ありがとう。あたし、ベンから離れられない。
 ごめんね。ジュン。」ウォンは涙を流した。
私はウォンを見つめた。
「うん、わかった。ぼくが、わがままで、ロスに行ったんだもの。
 ウォンを3ヶ月も一人ぼっちにした。ぼくの自業自得だよ。
 また、だれか、ガールフレンド見つかると思う。心配しないで。」
そう言った。

二人で紅茶を飲んだ。



ウォンは去って行った。
ウォンのいないアパートは閑散としていた。
私は、ベッドに仰向けになった。
このベッドで、ウォンはベンと寝たのか…と思った。
そんなこと、ウォンは言わなければいいのに。

ウォンと過ごした日々のことが、次から次と思い浮かんで、
涙が出た。

ぼくは、ロスで女の子と遊び、ウォンには一人で待っていてくれなんて、
そんなの虫がよ過ぎる話だと思った。

ぼくは、ロサンゼルスの3ヶ月と引き換えにウォンを失った。
最愛のウォンを失った。

涙の頬もふかず、長旅のためか、
私はそのまま眠ってしまった。

明日が、また新しい明日であるように。



つづく

女装クラブKFサロン 『Nさんの場合』

またまた、KFサロンのことが続きます。読んでくださるとうれしいです。

================================

サロンにNさんという方がいて、
私は、Nさんとお話するのが大好きだった。
Nさんは、40歳くらいの方。
アメリカのことを聞くと、なんでも答えてくれる。
ワインのことから盆踊りのことまで、詳しく話してくれる。
なんでも、ご存知で、いっしょにいると楽しい。
そして、人柄が誠実な方だった。

私は、サロンにNさんがいるときは、心がうきうきした。

Nさんがサロンの寝室に入ったのを見たことがない。
ある日私は、そっと聞いてみた。
「寝室の方へは、いらっしゃらないんですか?」
するとNさんは、少し淋しそうに、
「あたし、どうもED(イン△)みたいなの。」
「お一人で慰めるときは、どうですか。」と私。
「それが、あるとこまで行って、だめなの。
 興奮がもたなくて…。」
「あの、ダメ元で、あたしにお相手させていただけませんか。」と私は言った。
「いくら加奈ちゃんでも、ダメだと思うわ。もう10年もだめなの。」と言う。
「でも、Nさんと抱き合えるだけでもうれしいです。寝室にいきましょう。」
と私は強く誘った。



私は、EDの多くは心理的なものが原因だと思っていた。
例えば、最後に発射したもので、布団を汚さないかと思うだけで、ダメになる。

相手がNさんなので、私はスリップ1枚になって、ショーツを脱いだ。
Nさんもそうして、私たちは、毛布の中にもぐりこんだ。
そして、抱き合ったり、キスをしたりした。
「ああ、加奈ちゃんとこんなことできるなんて、夢みたい。」とNさんは言った。
「あたしもです。Nさんのこと大好きですから。」と私も言った。

私は、持って来たゴムの中に、たっぷりとコールド・クリームを入れた。
それを、Nさんにはめた。
これで、布団は汚れない。
そっと刺激をしていると、クリームが、ゴムの中全体に広がった。
これで、痛くはないはず。

「Nさん、うんとHなこと考えてください。」と私は言った。
「加奈ちゃんとこうしていることが、私の最高の思いよ。」とNさん。

「ああ、気持ちがいいわ。夢心地がする。」Nさんは言った。
私は決して焦らないように、Nさんをマッサージした。
部分の中でも、一番感じるところを、刺激した。

「ああ、加奈ちゃん、上手ね。どうして私のペースがわかるの。」
「最後まで、イけるといいですね。」と私は言った。

Nさんの体が、小刻みに震え始めた。
私は、Nさんにキスをした。
Nさんは、私を抱きしめて、
「ああ、こんなになったの初めて。
 あたし、イけるかもしれない。」と言った。

Nさんの体がだんだん震え始めた。
「加奈ちゃん、あたし、イけるわ。もうすぐ、もうすぐなの。」
Nさんは、首を横に振った。
私は、Nさんの唇をうばった。
その唇の中で、Nさんは、最後の声をあげた。
うむむ…とうめくように言って、Nさんは、体をアーチ状にして、
ゴムの中に、発射した。Nさんの体が激しく震えた。

「ああ…。」と言って、Nさんは、布団に沈んだ。

私は、ゴムをはずして、Nさんの下半身をティッシュで、綺麗に拭いた。
ショーツを差し上げて、私もショーツを履いた。

Nさんの横に寝たら、Nさんから抱きしめられた。
「加奈ちゃん、ありがとう。あたし、感激でいっぱい。
 あきらめていたの。もう10年になる。
 ソープにも何度も行ったの。
 そして、イかなきゃいけない、イかなきゃいけないと思いながらされてた。
 でも、深層心理が、どうせだめだろう、どうせだめだろうと働くの。
 それに負けて、イけなかった。
 今日、加奈ちゃんが、「ダメ元」でいいじゃないですかと言ってくれたことで、
 リラックスできたのね。
 イっちゃっても、お布団を汚さないようにしてくれたことも、大きかった。
 今日イけたことで、少し自信がついたわ。
 私の体のせいじゃない。心理的な原因だってわかった。
 ああ、加奈ちゃん、涙が出てくるわ。
 ありがとう。」
Nさんは、そう言って、もう一度私を抱きしめてくれた。
私は、幸せだった。

「お家で、だめだったら、またここで、試しましょう。」と私は言った。

「家内とも、根気よく試してみるわ。『ダメ元』でね。」
とNさんは笑顔を見せた。



Nさんと寝室を出たとき、Ohさんから呼ばれた。
Ohさんは、小声で、
「Nさん、どうだったの?」と聞いた。
「なんとか。」と私はもっと小さな声で言った。
「まあ、加奈、いいことしたわね。大ホームランよ。」
Ohさんから言われ、私はうれしさいっぱいになった。

*    *    *

1週間後、Nさんから、聞いた。
Nさんは、奥様と「ダメ元」で、いろいろ工夫され、
ついに成功されたと。
私は、感謝の印にと、プレゼントをいただいた。
それは、ステキな、真珠のネックレスだった。
「いいんですか?」と聞いた。
「加奈ちゃんがしてくれたことを思えば、お安いものよ。」
とNさんは言った。

うれしいものだったので、私は、今ももっている。


<おわり>

女装クラブ「KFサロン」 A子のこと

せっかく少年時代の淡い初恋を書いたのに、その舌の乾かぬうちに、こんなの書いてしまいました。

だから、私いけないんですよね。読んでくださるとうれしいです。

===============================

サロンに来て、管理人のOhさんに伺いながら、
いろんな方とお相手をした。
私の方から一方的にサービスする形だけれど。

サロンに来て、10年になるが、加奈が初めてイかせてくれた、という方もいて、感謝されると私はとても嬉しい気持ちがした。

そういう私を、「サロンの天使」なんて呼んでくれる方もいて、
同時に、「サロンのNo.1テクニシャン」などと、石鹸ぽい異名もいただいたりして、
こちらの方は、あまりうれしくはなかった。



その日、寝室には、サロンのNo.1美女のA子とオーナーがいた。
二人が入って20分ほど経っていた。
オーナーが、襖を少し開けて、顔を出し、
「加奈、ちょっと来てくれ、頼む。」と言う。

私が寝室に入ると、プレイの最中だった。
長い髪のA子は、スリップ1枚で、上半身をロープで縛られ、
オーナーが後ろから、A子を抱いていた。
私は、美人のA子のそんな姿を見たのは初めてだったので、
一気に興奮してしまった。

「加奈。頼む。A子をイかせてやってくれ。
 俺とA子はずいぶんになるが、実はA子を1度もイかせてやれないでいるんだ。
 A子が不憫でならん。
 A子が、加奈なら自分をイかせてくれるかもしれないと言うんだ。たのむ。」
とオーナーは言った。

私はこういうシチュエーションになると、俄然燃えてしまう。

A子の下半身は、すでに露わになっていた。
私は多分オーナーの力が強すぎるのだと思った。
そこで、脂肪分の多いクレンジング・クリームをたっぷり手につけて、
それで、A子の部分をやわらかく撫でていった。

「どうお?痛くない?」とA子に聞いた。
「うん。」とA子は答えた。

私がそれを続けていると、A子の表情が、少し恍惚としてきた。
私はオーナーに、
「A子とキスしていいですか?」と聞いた。
「加奈なら許す。」とオーナーは言った。

ああ、A子と初めてのキスをする。
私は、A子と唇を重ねた。
A子の唇は、やわらかい。感激。

A子が、反応した。
唇を解いて、A子が、かすかに声を上げた。
その内、オーナーの腕の中で、いやいやを始めた。
A子は恥かしがりや。大きな声さ出せない。

私は、マッサージのスピードを上げた。
A子が、少し痙攣してきた。
そして、何度も痙攣の波が訪れる。
やがて、
「あ、ダメ、加奈、イっちゃう、ダメ、あああ…。」といいながら、A子は果てていった。
私は完全に興奮してしまった。
A子は、ぐったりとしてオーナーに体を預けた。



私は寝室においてあるティッシュで、A子のクリームをきれいに拭き取り、
私の手もぬぐった。

「どうだい。よかったかい。」
とオーナーは、A子に聞いた。
「うん。」とA子は、オーナーを見て答えた。
そして、「加奈、ありがとう。」と言った。
「私、完全に興奮しちゃったよ。」と私は笑顔で答えた。

オーナーは私を見て、
「加奈、ありがとう。やっとA子を満足させてやれた。恩にきる。」と言った。
私は、
「A子の皮膚は敏感みたいですから、クリームをさっきのようにお使いになるといいと思います。
 このサロンのと同じ脂肪分が多いのがいいと思います。」
と言った。
「そうか。今日加奈のやり方見ていたから、これからは、俺にもできそうだ。ありがとう。」
とオーナー。
私は頭を下げて部屋を出た。



リビングに戻ると、常連の方々が4、5人いて、私に小声で、
「ねえねえ、A子ちゃん、ご満足?」と聞く。
「それは、ないしょです。」と私は答えた。



A子は、花柄の可愛いミニのワンピースを着て、恥かしそうに出てきた。
その後に、オーナーが、にこにこしながら出てきて、
「今日は、うれしい。俺のおごりだ。寿司をとろう。」と言った。
みんなが、やったあーと声を上げた。
Ohさんが、何もかも分かっていて、にっこり笑っていた。


<おわり>
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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