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いくら書いても進まない

今日、新しい自叙伝が書きたくなって、


書いていました。


で、文はいくらでも出てくるのですが、


書いても書いても、


物語が進まないのです。


ある一つの場面だけに、


延延と書いているんです。


これ、なんなんでしょう?


やっぱり自分は今おかしいと


判断して、書くのを止めました。


だめですね。


ちょっと休むとすぐ書きたくなっちゃって。


それより先に、コミック「IS」を読みなさい!


「ノルウェイの森」を読みなさい!


そうだったのでした。


はい!

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ジュンにまつわる自叙伝をひとまず終了します

ながらくジュンにまつわる自叙伝を書いてきましたが、


ここらで息が切れて、先を書けなくなったしまいました。


ロサンゼルス編は、ジュンが600人を前にしての演説で終わるつもりでしたが、


そこまで、行きつくことができなくて、とても残念です。


(でも、元気が出たら、後からでも書き加えたいと思います。)


初めの構想としては、ジュンの2年目のニューオーリンズ。


そして、ジュンのもぐりこんだ、フィラデルフィアの出版社での2ヶ月。


いろんなことがありましたので、書けたら書きたいと思っていました。


でも、今のところ、ギブアップです。


昨日、恵子との別れの場面を思い出していましたが、


なんだか辛くなり、とても書けないなあと思いました。



一成は、カレンと結婚して、アメリカでくらします。


恵子は、すぐにボーイフレンドができます。


ウォンは、ニューオーリンズ大学を卒業して、ニューヨークへ行き、


ベトナム人の彼と結婚します。


私の帰国後は、少し書いた通りです。


その後のネタばらしをしてしまいましたが、


また、元気になったら書きます。


これからのブログには、思ったことを徒然に書きたいと思います。


みなさまのブログにも、お邪魔したいと思います。


その時は、どうぞよろしく。


では、長らくのご愛読ありがとうございました。


みなさまも、お元気で!

雑談(ちょっと一休み)

ドラマ「IS」を見るのを楽しみに1週間待ったのに、
あれは、月曜日だったんですね。
今朝新聞見てそれがわかりショックでした。
だから、ISのホームページ行って、いろいろ読みました。
読めば読むほど、昨日のが見たくなり、
悔しさは増すばかり。

娘に言うと、
「1週間待てばいいだけじゃん。」
と言います。
そこで、
「昨日のドラマは、もう永久に見られないでしょう。」
といい返しました。
娘は、
「一回くらい見なかったからって、
 たいしたことないよ。」
って、ぜんぜん慰めになっていないのでした。

ま、あきらめるしかないのでした。
ISは、月曜日!そう肝に銘じました。



「ところで、お父さんは、テレビ見ないのに、
 なんで、IS だけは見るの。」
と娘は言います。

かなりな突っ込みに、私はたじろぎました。
「性同一性障害のも見るよ。」
といいましたが、全然答えになっていません。
ごまかしに私は、
「多重人格障害のも見るんだけど。」
とますます、答えにならない方向へ行きます。

そのとき、家族は、私の答えなんか誰も聞いてないのでした。

まじめに答えようとした私がおろかでした。

めでたしめでたし…じゃないな。

ベスの初体験 (1973年 ロサンゼルス編 ⑰)

水曜日。
性マイノリティの集会がある日だ。
私のスピーチができることになったか、正式に聞ける日だった。
私は一人で、ハリウッドへ車をとばした。
格好は、いつもの男服。帽子をかぶって、サンブラスをしていった。

部屋の中では、サングラスとをとった。
Tさんが来て、
「ジュン、正式に決まったよ。これに、いろいろ書いてくれる。」
と言われて、出場者表にいろいろ書いた。
住所、学校名、年齢、性別、演題とその簡単な内容。だった。
私は、演題に「I am a Boy」とかいて、
内容として、「女に見られることのトラウマとトランスベスティズム」と書いた。

「おもしろそうだね。」とTさんが言ってくれた。
「そうですか。うれしいです。」と私は言った。

私はその日は、集会を失礼した。



スピーチをすることになったことを、
ラッセル教授に知らせたかった。
電話をしてアポを取ることができた。
そして、恵子にも電話をして、そちらに行くといった。
恵子は喜んでいた。



サングラスを外して帽子を取り、ドアをノックした。
懐かしい教授がいらした。
ソファーを勧められた。

「あの、8月15日のマイノリティー・フェスチバルで、
 スピーチをすることになりました。」と言った。
それを聞いて、教授はとても喜ばれた。
「それは、積極的な姿勢ですね。
 外国人の留学生でスピーチをする学生はなかなかいません。
 日本からのスピーカーというだけで、興味を引くでしょうね。」と教授。

「私は、小さいころから女の子に間違えられたことが、一種のトラウマになっている現実と、トランスベスティズムがそのトラウマを緩和してくれたこととの絡みをまず、訴えようと思います。
そして、広義に考えると、女に見えるという私も少数派であり、TVも少数派であり、最後は、少数派とは何かを考察し、それを少しでも打破する道を自分なりに考えたいと思います。」
私は言った。

「それは、なかなかいいスピーチになるでしょうね。とくに君が女の子に見えるという劣等感またはトラウマにトランスベスティズムがどう絡んで、君を救っていくか…というところが聞かせどころでしょう。
マイノリティの人は、必ずそれが劣等感となっている時期があり、それを克服して、それを喜びと感じていくという過程を経ていきます。何が彼らを克服させ得たか、そこがどのスピーチにおいても大切です。スピーチ会場には私もゲストとして招かれています。楽しみにしています。」
教授は、そう言って、私を励ましてくださった。

「あ、そうそう。スピーチ原稿は、君のフィールド・ワークの重要な資料となりますから、レポートに添付しておいてくださいね。高得点の成績が期待できますよ。」と教授。

なんだか、すごくうれしかった。



教授の部屋を後にして、廊下を行くと、30歳くらいのすばらしい美人の女性が来た。
黒いロングスカートを履いている。
見たことがあった。うーんと思い出していたとき、
「ジュン、マイノリティーセンターにいた、ジュンでしょ。」と彼女に両手で手を握られた。
「あ、ベス!」
ベスは、顔を醜くされてセックスをするのが好きと言っていた女性だ。
「ベスも教授に?」
「そうなの。あたしのあんな趣味を分かってくださるのラッセル教授しかいないの。」
「ラッセル教授なら、絶対OKだよ。」と私は言った。
「ね、ジュンは、日本にも同じような友達がいるって言ってたわよね。」
「うん。」
「じゃあ、いっしょに来て。そのこと教授に話して。」

彼女に言われ、また教授の部屋に戻った。
ベスが教授に訳を話した。

「ほう、ジュンは、日本にも同じような子がいたというんだね。」と教授。
「はい。彼は、女装するとまぶしいくらいの美少女になります。
 S&Mの子でしたが、顔をぐにゃぐにゃに醜くされてセックスをするのが好きだといっていました。」
私は言った。
「それはおもしろい。では、これはインターナショナルな一つのパターンだということになるね。」
と教授。

「特記事項があります。彼は、日本で最高の大学である東△大学の学生でした。
 本人は、極めて知性美にあふれた顔立ちです。私は、ベスをみたときとても同様な知性美のある女性であると感じました。そこに2人の共通点を見出しました。
「おもしろいですね。ベス、言ってもいいかい。」と教授は諒解をとり、「ベスは、ハーバードに次ぐと言われるエール大学の学生で大変優秀な成績で卒業しました。」

「実は…。」と私は言った。
「私は、その日本の子や、ベスさんのお話をセンターでうかがったとき、性的な興奮を覚えました。
 もし美しい女性がそうされているのを見たらです。自分がされたらではありません。」
「ほんと?」とベスは言った。
「うん。」と私は答えた。
「じゃあ、私のそんなセックスを、変態と思わず、性的な興奮を覚えてくれる人がいるということですね。」とベスは言った。
「特別にSではないジュンがそう言うということは、これは、Sの仲間には大勢いるね。」と教授。

「これは、ひとつ聞いて見るか。私の所属しているSMクラブの連中に、そういうセックスを喜ぶものがいるか、聞いてみよう。」

そういうことで、ベスの面接授業も終わり、ベスと私は廊下に出た。

「ベス、ちょっと実験しない?」と私は言った。
「何?」
「ぼく、今女の子に見える?」
「ええ、完全に女の子。」
「じゃあ、トイレに入ろう。」
私はそう言って、ほとんど人が通らない廊下のトイレにベスと入った。
トイレの鏡には、おあつらえ向きにストールがあった。
私はベスを座らせ、鏡を見せながら、
「ベス、ぼくは今から、ベスの顔をゆがめるから、
 胸の膨らみを自分で触って、気分を出せる。」
「ええ、やってみる。」

ベスは、胸に手を当てて、その手を動かし始めた。
私は、ベスのきれいな顔を、手でいろいろにゆがめた。
口をひっぱったり、鼻の向きを上下左右に変えたり、
頬をゆがめたり、続けた。
そして、ぱっと手を離して、
「ほら、こんなに美人なのに。」
そう言って、また顔をゆがめた。

ベスの呼吸が乱れてきた。
「ああ…、もうだめ。」
ベスがそう言って、うなだれたので、私は手を離した。
「ベス、いやだったの、だったらごめん。」私はそう言った。
ベスは首を振った。
「興奮して、どうにかなりそうだったの。
 あたし、やっぱり変態なの?」
「ぼくも今、興奮しちゃったよ。」
「ジュン。ほんと?」とベス。
「うん。多分ベスの変化に興奮するんだと思う。ぼくトランスだから。」
「ありがとう。ジュン。今の、私の初体験だったの。」
「ほんと?一人でもできるじゃない。テープとかで引っ張ったり、
 アイラインなんかで、顔に醜いライン描いたり。」
「怖くてできなかったの。自分が穢れた世界に行ってしまうみたいで。」
「センターの人が言っていたじゃない。別に変態じゃないって。」
「うん。だけど、やっぱり越えられなかったの。」

私は、ストールに座っているベスの肩を抱きしめた。
「わかるよ、そういうの。
 ぼくは、ニューオリンズに恋人がいるのに、
 このロスの子とセックスした。
 浮気になるから、なかなか越えられなかった。
 でも、越えちゃった。胸が痛んだけど、我慢できなかった。」
「ジュンは、越えたんだ…。」
「うん。越えちゃった。だから、ベスも越えられるよ。
 ベスの場合、だれも傷つけていないもの。」
「一人で、ある程度ならできるものね。」とベス。
「うん。ぼくお手伝いに行きたいけど、これ以上浮気できないから。」
「ありがとうジュン。一人でやってみる。」

ベスといっしょに外に出た。
日差しがまぶしかった。
ベスに手をふった。

さあ、恵子のところへ行こう。
さっきのベスとのことは、浮気になるかなあ…。
そんなことを気にしながら行った。


つづく

ハリウッドの真ん中の歌声喫茶(1973年 ロサンゼルス編 ⑯) 

今日のは、だらだらとやたらに長いです。読んでくださるとうれしいです。

==============================

その日の夜、一成が部屋に来てくれという。
いってみると、一成がベッドの上で、もの思いにふけっていた。
「一成、カレンとうまくいかなかったの。」と私。
「その逆じゃ。」と一成。
「じゃあ、最終までいっちゃったの。」私。
「ああ、いってもた。わしが途中で止められるか。」
「だろうね。」
「カレンは、バージンだった?」
「おお、そやった。」
「で、一成は、何悩んでいるの?」
「わしは、あと2ヶ月半しかここにおれん。
 カレンとの別れが、あまりにも辛い。」
「一回、日本に帰って、お金貯めてくればいい。」
「すぐには、金たまらん。わしは、ここ来るため、半年土方仕事して働いた。」
「今、お金があれば、3ヶ月の延長があると思うよ。」と私。
「それほどのお金が、もう残っとらん。車も買うたしの。」
「ここの食堂でヤミで働く方法があるけど、1時間、2ドルもくれないよ。
 ぼくら足元見られてるから。それも一番忙しい11時から2時まで。
 3時間で6ドル。日本円で、1200円。」だよとわたし。
「日本やったら、土方やって、1時間1500円くれる。」



私は何やらひらめいた。
「一成、ハリウッドの真ん中に、日本人経営の歌声喫茶があるんだ。
そこはピアノの伴奏の人がいるけど、今は休みなんだよ。
一成ギターで伴奏なんでもできるから、ピアノの人の代わりに
応募してみたらどうかな。普通のバイトより、給料がいいはずだよ。」
「ギターがない。」
「ぼくが持ってきてるよ。車の中に。安物だけどね。」
「よっしゃー、当たって砕けろや。」



こうして、夜のハリウッドにいくことにした。
私は、ついでに「クイーン・ハウス」に寄ってくれるように頼んだ。
恵子とカレンに声をかけて、いっしょにいくことにした。



カレンも恵子もOKし、
私たちは、5時半に一成の車に乗った。
「クイーンズ・ハウス」がまず先。
そこは、ハリウッドの先の、スタジオ・シティーにあった。
入場5ドル。1ドリンクの3ドルの明朗会計だ。

ハウスは、平屋の映画館のような建物。
私たちは、意を決して、入って行った。
中は薄暗く、赤い照明がついていて、
小さな丸テーブルが20ほどある。

前の舞台で、踊り子さんが踊っていた。
みんな、元男性だ。
私たちは1ドリンクを頼んで、見た。
「うあ、みんな綺麗じゃの。」と一成が言った。
そのうち、4番目くらいに、美女が現れた。
ブロンドで、目が青い。
「あれも、女装者かいな。」と一成が言った。
「うそー」と恵子が言った。
「ここに出ているんだから、そうだと思うよ。」と私は言った。

私はみんなが見ている間に、
厨房にいって、経営者を呼んでもらった。
名前、身分、取材の目的をつけて、
いくつか質問をした。
「1日に何人の踊り子さんがでますか。」
「大体5人だね。」
「お客さんは、平均一日に何人くらい来ますか。」
「うーん、週末なら100人だね。」
「彼女達は、一日に何回舞台に立たれますか。」
「1時間に1回だから、5回くらいかな。」
「踊り子さんたちは、普段は何をしてるんですか。
「いろいろだね。今踊ってるジュディーは綺麗だから、
 雑誌のモデルやったり、ときには、自分の部屋へ呼んで、
 サービスをしているね。」
「他の方達は。」
「街頭に立っているものもいる。また、ミルクカフェーなんかで、
 女として、普通のアルバイトをしているものもいるよ。」
「ありがとうございました。」

私は、おおよそのインタビューの質問事項を終えた。



ショーは、その綺麗なブロンドの人が舞台を終えた。
一成が、
「今の人なんか、女の人と何も変わらんがね。」と言った。
「ああいう人もいるのね。びっくりした。」とカレンは言った。
私は、そのブロンドの人が、舞台を終えて、客席に来て、
カウンターで、コークを飲んでいたので、
チャンスとばかり、インタビューのノートを持って行った。
恵子がついてきた。

私は、いつものような、自己紹介をした。
「あの、ジュディさんは、どこから見ても美しい女性です。
 何か、特別なことをなさいましたか。」と私。
「少し、オペをしたわ。胸とかね。」
「ステージは、どのくらいの契約ですか。」
「一応、一ヶ月ね。」
「ステージのない期間、主に何をしてらっしゃいますか。」
「女装関係の雑誌のモデルをしてるわ。これは、かなりいい収入。
 それ以外は、主に、個人のアルバイトをしている。
 自宅に、お客さんを呼んでね。」
「その広告は、新聞に出すんですか。」
「出すときもあるけど、私には固定客がいるから、苦労しないわ。」
「そうでしょうね。ジュディさんは、美人だから、
 私もお客になりたいです。」
「あら、あなた、男の子なの?」
「まあ、一応。隣にいる子は、女の子です。」
「まあ、あなたなら、磨けば、綺麗になるのに。
 ちょっと触らせて。」
と言われた。
私が腕をだすと、ジュディーさんは、そこを触って、
「まあ、いい感じ。あなたなら、一流になれるわ。
 私のマンションに住まわせてあげてもいいわ。」
私は笑って、礼をした。
「ありがとう、ございます。」
ジュディさんは笑っていた。

「終わったよ。」と言って、席に戻った。
一成とカレンは、次から次と出てくる美女に見とれていた。
「もう、わしゃ、女装の人への認識改めたがね。
 本物となんも変わらん。」と一成が言った。
「ほんとにびっくりした。」とカレン。
恵子は、
「私は、ジュンで見慣れているから、
 そんなにびっくりしなかった。」と言った。
(あ、それは、爆弾発言だった。カレンは、まだ私のことを女だと思っている。)
もう言っちゃおうと思った。カレンは、一成の恋人だし。
「カレン、ぼくほんとは男なんだよ。」と言った。
「ま、まさか。」とカレンは言った。
「ほんとなんじゃ。」と一成と恵子が言った。
「だから、今日は、ぼく達、2組のカップルなんだよ。」と私は言った。



ショーが終わったので、私たちは、席を立った。
ジュディーさんがいたので、みんなで握手をした。
ジュディーさんは、微笑んでいた。



さて、次は、カラオケ酒場だ。
ハリウッドの「ダニーの店」を入って行くと、黒い色の店がある。
「カラオケスナック」と日本語で書いてあった。
中に入ると、5,6人の客がいた。
奥にピアノがある。その横のテーブルに座った。
「いらっしゃいませ。」とボーイさんが、お茶を出してくれた。
水をだすのは、なぜが協定破りらしい。
一成が運転をしてくれるとのことなので、私は、ビールを飲んだ。
恵子もカレンもアルコールを頼んだ。
「へーえ、ハリウッドのど真ん中に、日本酒場があるなんて。」
と恵子は、感激して、店内を見ていた。

4人でわいわい飲んでいるうち、
ある客が、
「おい。カラオケ酒場に、カラオケがないのか。」とマスターにくってかかっていた。
マスターが、
「すいません。今、ピアノのものが、いないものなので。」
「なんだあ。」とその客は威張った。
日本人の客で、よくそういう人がいる。
アメリカの店では、小さくなっているのに、
日本人の店にくると、急に態度が大きくなる。
そして、チップも置かずに帰っていく。

一成は出て行った。
「わし、ギターの伴奏ならたいていできるんじゃきんど、ギターありますか。」
マスターは、「ああ、あるよ。プロ用の楽譜集もある。たのんでいい?」と言った。
マスターはお客に、「ギターなら伴奏できます。それでいいですか。」と聞いた。
客は、「いいよ。『津軽海峡冬景色』を歌いたい。」
心配して、一成をみんなで見た。
一成は、OKサインを出している。

一成は椅子に座り、そこにアーム・マイクが当てられた。
客は、壇に上がり、一成の前奏を聞いて歌い始めた。

歌が終わったとき、私たちは、わあーと拍手をした。
それに,気をよくして客は、もう一曲「王将」をリクエストした。
一成は難なく弾く。
一成のすごいところは、相手のキーの高さに素早く移調して弾けることだ。
そのあと、いろんな人が来た。女の子も。
「悲しくてやりきれない」、「白い色は恋人の色」、「ブルー・シャトー」
「ジャンバラヤ」。
そこで一段落して、一成が戻ってきた。
みんなで拍手喝采。
私は、「どうして、お客のキーに合わせて伴奏弾けるの?」と聞いた。
「それ、不思議なんじゃ。わし、絶対音感があるみたいなんじゃ。
 ほじゃから、お客の声聞いたら、すぐその音がわかる。」と一成。
「へーえ、うわさに聞いたけど、ほんとにそういう人いるんだ。」とみんな。

そのうちマスターが、来た。
マスターはしゃがんで、一成に言った。
「しばらくここで、働いてもらえませんか。
 実は、ピアノの人間が、行方不明で何時戻るかわからないんです。
 困り果てていたとき、あなたが来て、やってくださった。
 お見かけしたところ、かなりお弾きになれる。」
「そりゃ、うれしいです。わしもお金がのうて。」と一成。
「9時から12時までは、1時間に7ドル。
 もし2時までOKでしたら、12時から2時まで時給10ドル払います。」
それは、信じられないほどのいい条件だった。
「OKです。ぜひ、お願いします。」と一成は応えた。

「一成、すごい。それ半端な額じゃないよ。」と私。
「そうじゃの。一晩2時までがんばれば、えーと。」と一成。
「日本円で、一晩8000円くらいだよ。」と私。
「そうか、そりゃすごい。こりゃがんばるで。」と一成は言った。
「一成、がんばってね。」とカレンが言った。
「カレン、わし、できるだけ金作って、カレンと長くいっしょでいたいんじゃ。」と一成。
「一成、あたしうれしい。一成のこと 応援する。」とカレンは言った。

「ジュンは、8月が過ぎたら、ニューオリンズに帰ってしまう。
 あたし、悲しい・・・。」
と恵子が泣き出してしまた。
カレンが、恵子を慰めた。
「世の中、しかたないこと たくさんあるよ。
 1日 1日 大切にする これしかないよ。」
恵子は泣きながら、うなずいていた。
私の胸は、痛んだ。あと1ヶ月半。恵子と別れる日がくる。
別れの日は辛い。胸が張り裂けそうに辛い。
私はただうつむいていた。

懐かしい合気道 (1973年 ロサンゼルス編 ⑮ )

今日2回目の投稿です。元気がでたら、明日も書きます。読んでくださるとうれしいです。

================================

一成には付き添いを頼みにくくなったので、
恵子といっしょに、昼のハリウッドへ行くことにした。
車で30分。
ロサンゼルスのフリーウェイは、入り組んでいて、
広いところは6車線ある。
車線を右に左に変えながら、やっとハリウッドに来た。

恵子と二人、ハリウッドスターの手形があるというチャイニーズシアターへいって、
いろいろ自分の手形と合わせてたりして、はしゃいだ。

恵子はジーンズに紫のサマーセーター。
私は、できるだけ男に見えるように、
8cmのサンダルを履き、細身のズボン。
女物なので、ピップはぶかぶか。
1つだけ、ピップパッドを入れた。
上はタンクトップを2枚重ねしていた。
「ジュンは、それでも女の子に見えるから、
 ブラを着けていった方がいいよ。」と恵子が言うので、
 黄色のコットンブラをして行った。
 どうせならBカップ。
 ウィッグはなし。トンボのサングラス。
「これでも、女の子に見えちゃうの?」と聞いた。
「ビアンの女の子に見える。」と恵子。



チャイニーズシアターの斜め前に、目的地「ダニーのお店」があった。
私たちは、昼を兼ねて、インタビューをすることにした。
食事は肉料理でとてもおいしかった。

私は厨房に行って、マスターをお願いした。
マスターは、40歳代の日本人だった。
私は、名と身分をなのり、インタビューの目的を言った。
「ここは、深夜になると、女装の娼婦があるまると聞きましたが…。」私。
「そうだね。このハリウッド通りの脇道の角に彼らは立っているんだよ。
 それが、もう少し向こうへいくと、女の娼婦がいる。
 つまり、ここがハリウッドの一等地だから、一等地は女装の連中に取られてるわけだね。」マスター。
「多いときは、何人くらいの女装の人が、ここに食べにきますか。」私。
「ばらばらだけど、合わせて50人くらいかな。」マスター。
「この店が落ち合いに利用されることがありますか?」私。
「まずないね。されると、私も風紀上困るしね。」とマスターは笑った。
「ありがとうございました。とても参考になりました。」と私は言って、礼をした。



「ふーん、みんな親切に教えてくれるんだね。」と恵子が言った。
「ほんとだね。」と私。



二人で通りを歩いて行くと、
ある場所に、人が集まっている。
なんだろう、行こ行こということで、
走っていった。
するとそこは、合気道道場で、門下生勧誘のデモンストレーションをしていた。
かなりな人だかりだった。
私は、すごく懐かしくなって、恵子の手を引いて、中の方に入って行った。

鼻の下に髭を蓄えたがっちりした道場長が、
白い道着を来た道場生を、ポンポン投げていた。
「あんなに、簡単に投げられるものなの?」と恵子が言った。
「うん、そうなんだよ。」と私は言った。

館長が、
「合気道は、相手の力を使いますから、女性でも子供でも、大きな相手を投げられます。」
うそーというような声がする。
「ためしに、そこのお嬢さん。よかったら、こちらへ。」
館長は、私にそういう。(私から「出たいオーラ」が出ていたのかなと思った。)
「ジュン、行ってお出でよ。」と恵子が言う。
私は、サンブラスを恵子に預けて、サンダルを脱いで畳にあがった。
長年の習慣で、道場に礼をしてしまう。
ジーンズの裾を少し折り曲げた。

「では、こんな風にすればいいのです。」と館長は言って、
私に投げ方を教えてくれる。
「こうして、こう、こうなったら、こうです。」と館長が言った。
「では、私が押さえ込まれ役です。やって見ましょう。」
私が何千回とやって来た技だった。
館長はスローモーションでかかってきた。
私もスローモーションでやれば、3秒くらいかかる。
でも、館長が来たとき、私は反射的に技が出てしまった。
あっと思ったとたん、館長は私の回りを180度回転させられ、
次の瞬間、うつ伏せになり、私に手首と肘の関節を畳に押さえ込まれていた。
0.5秒くらい。
「わぁー。」という歓声が上がっり、拍手が起きた。

館長が驚き、
「失礼だが、経験者ですね。段位は。」
「初段です。」と私。
「おお、女性にして初段ですか。この道場に黒帯は、私の三段一人です。
 道場はどこですか?」
「東新宿の植芝道場です。」
「おお、総本山植芝道場ですか!植芝翁は、お元気か。」
「はい。教えをいただきました。」
館長は、私の手を挙げ、
「みなさん、ここにいる女性は、日本の合気道総本山植芝道場で学び、黒帯です。」
「すごいのかね。」と誰かが聞いた。
「じゃあ、今お見せしましょう。」と館長はいい。
「協力してくれますか。門下生を5人投げて見てください。
 彼らは、3級ですので受身はできます。」と館長は言った。

私は中央に立った。5人の門下生が一度に私を襲ってきた。
私は踊りを踊るように、回転し、彼ら全員を投げた。
2秒もかからなかった。

「おおお・・。」という歓声があがった。
恵子が、すごく喜んでいたのでうれしかった。

と、そのとき、
「そんなの、なあなあでやってるだけだろう。
 八百長に決まってる。」と背の高いがっちりした男の人が畳に上がってきた。
「俺、一人でいい。俺を倒したら、信用してやる。」
彼はそう言った。

恵子が不安そうな顔をしていた。

館長が、「どうかね。やれるかい?」と聞いてきたので、
「多分ですが、大丈夫です。」と私は言った。

「じゃあ、行くぜ。女だからって、手加減しないぜ。」
男の人はそう言って、息を吸い、右手で私の左頬にフックを出してきた。
私は、ぎりぎりの半身でよけ、私を過ぎた彼のパンチの手首をとると、つつっと畳に低く運んだ。
つんのめった彼は、思わず体を起こそうとする。
彼の背骨が反る。その力を利用して、左手で関節をとり、
右手は、彼のアゴをはらい、後方へ投げ飛ばした。

このまま行けば、エビ反りになって彼は頭から落下し脳振とうだ。
私は急いで、彼の頭が落下するところへ、滑り込んだ。
彼の頭がちょうど私のお腹に落ちた。セーフ。
よかった。お腹は痛かったけど、彼の脳振とうは防いだ。
見ていた人は、何も分からなかったと思う。
彼のパンチが私を突き抜けて、次の瞬間、仰向けに飛ばされていた。
その頭の下に、私が滑り込んだ。

「わああ…!!」とすごい歓声と拍手が上がった。

ぶるぶるっと、目を明けた彼は、
「俺を投げ飛ばして、その俺の頭を体のクッションで守ってくれたのか?」
彼は、驚いたように言った。
「まあ、そうです。」と私は照れながら言った。
「おお。」と彼は、笑みを浮かべた。
そして、私を起こし、抱きしめ、抱きかかえて、
「彼女は本物だ。あの滑りこみは八百長じゃできない。
 グレイト・スピリットだ。合気道は、偉大だ!」と叫んだ。

満場の拍手が起こった。
恵子が飛び上がって拍手していた。

館長が、
「ありがとう。あなたのおかげで、最高のデモンストレーションになった。
住所を教えてもらえないだろうか。」
「あ、ニューオリンズからの旅の者なんです。すみません。」と私は言った。
「私も、今日は感動した。合気道とは別に、あなたの相手を思いやる心に感激しました。
 門下生への最高の贈り物だ。」
と館長は言った。
「こちらこそ、ありがとうございました。」と私は言った。



道場を出ると、
「ジュン!」と言って恵子が抱きついてきた。
「もう、最高。ジュン、すごーい!」と恵子がぶら下がってくる。
「恵子重いよ。」
「ジュンがあんなに強いなんて、知らなかった。」と恵子。
「ナイフまでなら平気なんだよ。だけど、アメリカはピストルがあるからね。
 ピストルには、勝てないから、気を付けないと。」と私。
「そうねえ。」
「ぼくは、変なんだよ。女装が好きだから、女みたいでうれしいのに、
 男らしくなりたくて合気道やったのね。8年間、毎日6時間もやったのに、
 ぜんぜん男らしくならなかった。
 大学のとき運動整理学の先生に見てもらったの。
 すると、ぼくの筋肉は、女性の筋肉なんだって言われた。
 だからいくら鍛えても太くならないって。」と私。
「だから、ジュンは触っても柔らかいんだ。腕なんかぽやぽやだもんね。
 こうして抱きついても、まるで女の子。だから、好き。」
恵子が抱きしめてきた。
「恵子、苦しいったら。」
「ジュンとラブしたくなった。はやく帰ろう。」
「え?夕食はハリウッドでとろうよ。」
「それまで、待てない。今日はレズビアンラブして。
 あたしを死ぬほどじらせて。」
「恵子のワンピース着させてくれる?」
「いいよ。下着も着けていいから。」
「今着けている下着?」
「ちがう。洗濯した下着。」
「今のでいいのに。」
「ばか。」

まだ、2時過ぎ。夕食まではたっぷり時間があった。



つづく

カレンと一成の心が結ばれる(1973年 ロサンゼルス編 ⑭)

昨日、一晩かかって、カレンから頼まれた新聞を書いた。
一成がそばに着て、今日のジュンは、お預けやのうといった。
「ゴメンね。」と私は言った。
「いや、かまわん。カレンとの約束なら、わしはいくらでも我慢する。」と一成は言った。

明くる朝も恵子に電話をした。
10時に行くと言った。
「男、女、どっちがいい?」と聞いたら、
「今日は、男できて。」という。
「だって、レズビアンだと、私気が狂っちゃうんだもの。」と恵子は言った。

恵子の部屋に入り、恵子を抱いた。
髪の毛のリンスの香りがする。
「恵子、いつもいい匂いだね。」と言った。
「くらくらっと来る?」
「うん、くる、大好き。」

恵子との、目くるめくようなときが過ぎた。



昼を食べながら、昨日の一成のギターの活躍を話した。
今日もやる予定だから、恵子も来ない?
「あ、行きたい。あたし、午後暇なんだもの。
 一成、そんなにギターが上手なの。」
「うーん、びっくりするほど上手。
 それから、夜は、女装ショーのお店に3人でいかない?」
「わあ、それすごく楽しみ。」と恵子は言った。



恵子といっしょに、リトル・トウキョウへ来た。
恵子はジーンズに、体にフィットした赤いTシャツを着ていた。
私は、細身のジーンズに、やっぱり赤に黒の模様の入ったTシャツを着ていた。
そろそろ2時になったいた。
一成は、珍しく部屋にいた。
「一成そろそろ時間だよ。」と私。
「おお。」と一成は行って、「なんや、恵子も来たんか。」と言った。
「一成のギターの上手いところ見に来たの。」と恵子。
「ほうか、ジュンは、しゃべりやの。」と言って笑った。

3人で、彼らの部屋に入ったら、
今日は10人ほどの人がいて、みんなから大きな拍手をされた。
拍手をされたのは、多分一成だ。
私は、恵子を紹介した。
恵子は英語で自己紹介をした。
(恵子はかなり英語がじょうず。)

カレンに新聞を渡した。
カレンは、私が新聞を仕上げてくれたとみんなに告げた。
みんなから、感謝の拍手をもらった。

カレンは昨日のように、一成のそばについていた。
「友よ」や「若者たち」の復習をして、
初めての人に、「若者たち」の3番を教えた。
彼らは、3番の歌詞を書いた紙を作っていた。

「ほんとだ、一成ギターすごいね。」
と恵子が言った。
今日は、日本の歌ばかりではなく、
英語の歌も歌った。
「We Shall Overcome」とか、
「花はどこへ行った」、「風にふかれて」も歌った。
一成は、どの曲も楽譜も見ずに伴奏した。

みんなで歌って、ものすごく楽しかった。
私にとっては、大学1年生で盛り上がった時代の興奮が蘇るようだった。

みんなから、一成に、「風に吹かれて」をソロで歌って欲しいというリクエストがあった。
「OK。」と一成は言って、ギターを肩から吊って、
「風に吹かれて」を2フィンガー奏法で、完璧に弾き語った。
多分、ボブ・ディランの原曲のまま。

一成の声は艶があり、とっても魅力的な声だった。
すごい拍手が起こった。

「一成、かっこいいね。」と恵子が言った。
「女の子から見て、そう思う?」と私は聞いた。
「思う。」恵子が答えた。

2時間があっという間に過ぎた。
時刻は、4時になっていた。

私たちは、帰ることにして、立ち上がった。
一成も帰ると知ってみんなが残念がった。

いつものように、カレンが階段まで見送ってくれた。
そのとき、階段の出口で、カレンは、一成に座ってくれるように言った。
私たちは、少し先のところで待っていた。

「今日も、ありがとう。」とカレンは言った。
「なんの、わしゃ、カレンを好いとるきん。」と一成は言って、
自分の言葉にはっとした。
カレンも驚いていた。
「すまん。カレンのことを知りもせんと。
 カレンは、誰か他の人間を好いとろう。」一成は言った。
カレンは首を横に振った。
「好きだって、いわれたことない。」とカレン。
「そんな、カレンほどの可愛い子に、他のもんは何しとったんじゃ。」
「だけど、言われたことない。さっき一成が言ってくれたのが初めて。」
「ほんまか。わしは、カレンのこと大好きじゃ。死ぬほど好いとる。」
「あたしも、一成のこと、好きになった。」
「ほんまか。わしは、うれしい。うれしいてたまらん。」
一成は、そう言って、カレンを抱きしめた。

恵子と私は、茂みに隠れて見ていた。
「ああ、やったあ。」と私は小声を上げた。
一成はカレンにキスをした。
カレンも一成を抱いて、キスに応えていた。

「一成、おめでとう!やったね!」
と恵子と私は小声で言って、握手をした。

「今日、みんなの集会終わったら、二人で夕飯食べにいこ。
わし部屋でまっとるきん。」一成は言った。
「うん。たずねる。」カレンは言った。

一成が出てきた。
一成はぼーとしていた。

私たちは、一成に飛びかかった。
「一成、やったね!このモテ男!」と私。
「今日の一成、最高にステキだったもん。」恵子。
一成が、
「ちょっと、おまんら、わしを揺らさんといてくれるか。
 揺らされたら、この幸運が落ちてしまいそうになる。」
一成は、そう言って、そろりそろりと歩を進めるのだった。

恵子と私は、くすくす笑いながら一成の後ろ姿を見ていた。

今日の、女装ショーの店は延期だなと思った。

かくして、一成とカレンの心は結ばれたのだった。


つづく

一成の活躍 (1973年 ロサンゼルス編 ⑫ )

カレンから渡された新聞は、
間違いを直すなんてものじゃなかった。
まず、漢字がほとんどどこかしら間違えていた。
文も、おかしなところだらけだった。
これは、全部書きなおした方が早いと思った。

そこで、用紙をもらうため、カレンに電話した。
カレンは、すぐ来ると言った。
そこで、私は、大急ぎで、一成を呼んだ。
「ほんとか、カレンが来るんか。」
一成がそわそわしていた。

カレンはすぐに来た。
「あたしたちの活動の部屋あります。
 そこに、案内します。いいですか。」
とカレンは言った。
「二人、いっしょでいい。
 一成は、英語があまり得意じゃないの。」
「大丈夫 です。」とカレンは言った。

彼らの部屋は、すぐ近くだった。
広いリビングにぐるりとソファーが置かれ、
真ん中に大きなテーブルがあった。
家具やテーブルは、みんな古かったが、
部屋には、たくさんの光が注いでいた。

4人の男子と、1人の女の子がいた。
その女の子もとても可愛かった。
みんな20歳くらいだった。
カレンは、みんなに一成と私を紹介した。
みんなの言葉を聞くと、カレンがいちばん日本語が上手だった。

私は用紙をもらって、彼らの英語での議論を聞いていた。
カレンは、一成が英語が分からないので、
彼らの話す内容を、一成の耳元で日本語に訳して伝えていた。
カレンはいい子だなあと思った。

そのうち、議論は一段落し、
彼らは、歌の練習をするらしかった。
プリントが配られ、私は曲を見てびっくりした。
それは、「友よ」と、「若者たち」だった。
まさか、日系の若者に伝わっているなんて。
彼らはまだ日本語でうまく歌えない。
「一成、2つとも知ってる?」と聞いた。
「おお、知っとるとも。」と一成は言った。

いつもギターを弾く人がいないようだった。
カレンが、一成にそう訳した。
「わし、弾けるで。高校のときギターにはまっとったきん。」
そう言って、一成がギターを取った。
みんな、おーと拍手した。

一成は、ギターが驚くほど上手だった。
前奏のメロディーをピックで軽々と弾いた。
ハンマリングやプリングも自由自在。
コードを見ないで弾ける。
みんな、惚れ惚れと一成のギターを見ていた。
それからは、完全に一成を中心に歌の会がすすんだ。

若者たちの歌詞カードには2番までしかなかったので、
一成は、3番をみんなに教えた。
一成は、日本語を少しも気にせずぺらぺら話し、
それでも、みんなはなんとか理解して、
3番まで歌えるようになった。

マイクが言った。
「この歌、3番いちばんいいね。
 3番 歌えて うれしいね。」

みんなは、一成に大きな拍手をした。
それから、一成は、1970年代に流行った、
反体制フォークをいくつか歌った。
その中で、一番人気は、高田渡の「自衛隊に入ろう」だった。

♪自衛隊に入ろう 入ろう 入ろう・・・

のところをみんなで歌って、すごく盛り上がった。
私はこの歌の皮肉をみんなに説明して、
この歌を、自衛隊がテーマソングにしそうになったエピソードを伝えた。
みんなは、ゲラゲラ笑っていた。

また明日もいろんな歌を教えて欲しいということで、
一成は、明日の2時に来ることを約束した。

2時間くらいで、引き上げた。
カレンは、アパートの出口まで見送りに来て、
「一成のおかげで、すごく楽しかったよ。
 また明日着てね。
 他のメンバーにも来るように言っておくね。」
そう言った。
「なんのなんの」と一成は言った。



帰り道、私は、
「一成すごーい。あんなにギターが上手だとは、知らなかった。」
と言った。
「いやー、今日は、うれしかった。
 ここの若者らと、あんだけ打ち解けて楽しめるなんぞ、
 夢にも思うてみんかった。
 わしゃ、ちょっと感動しとる。」
「そうよね。あたしも感動した。」
「カレンは、ええ子じゃの。
 わしが英語がわからんきん、そばでずっと日本語で言うてくれた。
 おかげで、みんなの言うとることがわかった。
 みんなが、何をしたいんかもわかった。
 わしゃ、うれしかった。感激したがな。」
「よかったね。」と私。
「わし、カレンと寝たいとばっかり思いよったが、
 あんなええ子に、軽々手は出せん。
 わしゃ、片思いでええ。
 カレンのためやったら、何でもする。
 それが、わしの愛情じゃ。」
「一成。そんな気持ちになったの。
 あたし、感動してきた。」
「ジュン、ほじゃきん、またわしと寝たってくれ。」
「あはっ。そうなるの。そうなるかなあ?」
「そうなるじゃろ。カレンとは寝んのじゃきん。」
「いいわよ。わかったわ。」
私は一成の手をとり、
二人で、ぶらんぶらん手を振って帰った。

ここは、アメリカ。
ロサンジェルスにいる。
そんな気がしみじみとした。


つづく

一成の恋 (1973年 ロサンゼルス編 ⑪ )

恵子の部屋へ電話した。
恵子の寮は、各部屋に電話が通じる。

話があるから、10時にいきたいといった。
恵子はOKだと言った。
「女の格好で行っていい?」と聞いた。
「うん。女の子のジュンも好きだから、楽しみ。」と恵子は言った。



10時に恵子の部屋をノックした。
「はい。」と恵子はドアをあけるなり、
「わあ、ジュン、可愛い。その髪どうしたの。」と聞いた。
私は部屋に入り、
「かつらだよ。ちょっと若く見えるかなあ。」と言った。
「うん。10代に見えるよ。」と恵子は言った。

恵子がコーヒーを入れてくれた。
「話ってなあに」と恵子が聞く。
「うん。昨日、恵子にぼくが男だってカムアウトしたでしょう。」
「うん。」
「一成には、まだ言ってなかったのね。
 それで、恵子に言って、同じ友達の一成に言わないのはいけないと思って、
 一成にも言った。」
「当然だと思うよ。」
「ぼくね。こんな風に女装の趣味があるのね。
 ぼくの心は、男だけど、4分の1くらい女の心もあるの。」
「うん、わかるよ。」
「その4分の1の女の心が、一成を求めちゃったの。
 それで、セックスしちゃった。恵子とした同じ日だっていうのに。
 このこと恵子に言わないと、ぼく心の居心地が悪くて、言いに来たの。」
恵子は、別に怒ってない風だった。
「驚かないよ。」と恵子が言った。
「ジュンと一成は、私より前からの友達だから、当然関係があるって思ってた。
 それより、私の方に先にカムアウトして、セックスしてくれたことがうれしい。
 不思議なんだけど、ジュンが恋人以外の他の女の子としたのなら、ちょっとショックかなと思うけど、ジュンが、他の男の子とセックスしても、ジェラシーがわかない。私平気。」
「ああ、よかった。恵子が怒るのじゃないかって、すごく心配して来たんだ。」
「私を大事に思ってくれて、わざわざ言いに来てくれたことが、うれしい。ジュン、ありがとう。」
「よかった。」そう言って、私は恵子に笑いかけた。
「実は、すごく心配しながら来たんだ。」
「ジュンは、誠実だね。」



「今日は、どうして女の子の格好で来てくれたの?」と恵子が言う。
「恵子と、レズビアン・ラブしようと思って。」
「わあ、あたし、女の子のジュンを丘してみたい。」
「そ、そんな刺激的なこと言わないで。」
コーヒーを遠ざけた。
「どっちがお姉様になる?」と私。
「はじめは、あたし。途中から、代わって。」と恵子。

二人ともブラを外して、スリップとショーツだけになった。
「お姉様、抱いて。」と言った。
恵子は私を抱いて、キスをしてきた。

途中から、リードするのが、私になった。
レズビアン・ラブって、多分、
いちゃいちゃ、やさしく、何度もくり返し、
時間をたっぷりかけてするんだろうなと思っていた。
だから、恵子とのこの前のセックスより、
何倍も丁寧に行った。



恵子の身体中を愛:撫して、
やがて、恵子の一番感じやすいところへいった。
恵子の身体が、ぶるぶると震えた。
刺激したり止めたり、それを何度もくり返した。

何度もじらされて、
そのうち恵子が、ギブアップの声を上げた。
「ジュン、もう気が狂いそう。
 お願いだからイかせて。お願い…。」
「お姉様、もう少しお預け、お姉様のステキな顔がみたいから。」と言った。
「もう、だめ。こんなの初めて。気が狂いそう。ああ、だめ…。」
うめくように恵子が言った。
私は、刺激を速めた。
そして、恵子の唇を、私の唇でふさいだ。
恵子は、身体を硬直させて、私の唇で叫び声を封じ込まれながら、果てていった。
痙攣の余波がしばらく続いていた。



恵子に毛布をかけて、私ももぐった。
満足したときの恵子の顔はステキだった。
「お姉様、レズビアン・ラブ、どうだった?」と聞いた。
「もう、気が狂いそうになった。
 はじめに体験しないでよかった。
 昨日体験してたら、あたしレズビアンから、抜け出せなくなるところだった。」
恵子はそう言った。


「でも、ジュン。ジュンはまだでしょう?」と恵子は言った。
「もう一回やろう。今度は男と女で。」
「うん。うれしい。」恵子がまた抱きついてきた。

*   

昼を大学のカフェテラスで、
恵子といっしょにとって、
私はホテルに帰った。

*    *    *

ホテルの私の部屋で、一成と話していると、
部屋をノックする音。
ドアを開けると、
私より背の高い、とても綺麗な女の子が立っていた。
白いワンピースを着ていた。
年は20歳くらい。
「あの、ジュンさん、ですか?」
話し方が、流暢な日本語ではなかった。

「はい。あたしです。」
私は、ワンピースでいたので、女言葉を使った。
「あたしは、カレン。日系4世です。」
と彼女は言った。
彼女と握手をした。
一成も名を名乗り、握手をした。

カレンは言った。
「このホテルに、日本語も英語もできるジュンさん いう人がいると聞いてきました。」
「英語は自信ないけど、日本語なら。」と私は言った。
「私たちは、アメリカの日本人の解放運動やっています。
 それで、日本語の新聞、作りました。ジュンさんに、日本語の間違い、直して欲しいんです。」
彼女は、そういって、新聞を私に見せた。
それは手書きの新聞だった。
「うん、わかった。いつまで。」
「明日の午後まで いいですか。」
「はい。いいです。」と私はうなずいた。

カレンは、頭を下げて、部屋を出て行った。
一成がぼうっとしていた。
「一成、どうしたの?」
「ジュン、わしゃ、今のカレンに惚れてしもた。一目惚れじゃ。
 ずばり、わしのタイプじゃきん。」と一成。
「ほんと?可愛い子には違いないけど。」
「ああ、たまらん。カレンに好かれるまで、わしゃ、ジュン断ちをする。」
「ジュン断ちって。」
「ジュンとのセックスを我慢する。」
「そんなあ。ぼくはどうなっちゃうの?」と私は言った。
「ジュン。かんにんしてくれ。ジュンには、恵子がおるじゃろ。
 わしは、いったん惚れたら、純情なんじゃ。」と一成は言った。


つづき

一成と結ばれる (1973年 ロサンゼルス編 ⑩)

今日は投稿できない予定でしたが、少しだけ投稿します。読んでくださるとうれしいです。

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一成と夕食をとって、
それから、一成に夜8時に私の部屋に来てくれるように頼んだ。
私は男服のまま、床に座って、ベッドにもたれていた。
一成が来た。
一成は私の様子を見て、
「どないしたん。なんか思い詰めよるんか?」と聞いた。
「うん。隣に座って。」と言った。
一成は私と同じように座った。

「今日、恵子とやっちゃった。」と私。
「やったんか。ジュンの恋人はええんか?」一成は言った。
「今日、恵子はレズビアンを教えてって言った。
 ジュンがレズビアンなら、私もレズビアンになるって。」
「そうか、恵子も覚悟きめたんじゃな。」と一成。
「うん。自分には特別な愛情は要らないっていった。
 ふつうにやさしくしてくれれば、それでいいって。」
「そりゃ、恵子は健気じゃのう。」
「恵子にそこまで言わせて、もし拒んだら、恵子はものすごく傷つくと思った。」
「そらそうじゃ。そこまで言われたら、やったらないかん。
 いくらジュンに恋人がおってもじゃな。」
「一成もそう思う?」
「思うで。ここでやったらな、恵子があまりにも不憫じゃ。」
「よかった。だから、ぼくは恵子に打ち明けた。」
「何を?」
「恵子に打ち明けた以上、友達の一成にも打ち明けなくちゃならない。
 一成。ぼくは、女じゃない、男なんだ。」
「え?うそじゃろ!」
私は、恵子にしたように、一成の手を、私の胸パッドの下に入れた。

「そやったんか…。」一成は言った。
「一成、ごめん。男だと隠して、一成にキスなんかした。」
「いや。かまわん。おんしを女と間違うたんは、わしの方じゃ。
 ジュンは、自分が女じゃとは、一度もはっきり言わんかった。」一成が言った。
「だから、恵子とぼくは、普通のセックスをした。」
「恵子、喜んだやろ。」
「うん、ぼくが男でうれしいと言った。」
「そりゃ、何よりじゃ。」

「一成。ぼくが男と分かったら、もうキスしたいなんて思わなくなった?」私は聞いた。
「なんで、そんなこと聞くん?」
「ぼくの心には、女の心が少しあるんだ。
 その心が、一成が好きだと言ってる。」
「そうなんか。わしゃ、ジュンが男と知っても、ジュンに女を感じよる。
 抱きたい。キスもしたいで。ジュンがかまわんかったら…。」
「一成…。」

私は一成に唇を重ねた。
一成は、男の力で私を強く抱いてきた。
そして、私を抱いて、ベッドの上に乗せた。
一成は、ズボンとシャツを抜いだ。
私もジーンズとタンクトップを脱いだ。
二人抱き合い絡み合って、
一成は、私の身体中にキスをした。
私は、力づよい男性との経験がなかった。
一成の男の匂いに、私の女の部分が反応して、
私は、いつの間にか、女の声を上げていた。
「一成、好き。もっと抱いて。」
「よし、こうか。ジュンはかわいい。お前はおなごじゃ。
 おなごと何もかわらん。好きじゃ。たまらん。」
「一成。あ、あああ。」

「ジュン、脱がすで。はずかしないか。」
「うん、平気。」
一成は、私のショーツを脱がせた。
私の恥かしいものが、大きくなって、
一成のものと重なり、お腹の上でこすれた。

一成が身体を上下に動かした。
私は女の叫びをあげた。
「わしゃ、いきそうじゃ、ジュンは、どうじゃ?」
「あたしも、だめ、いくわ、いく…。」
一成のうっという声と共に、私も、あああっと声をあげた。



お腹の上に放出されたものを、きれいに拭いた。
「一成、ステキだった。男の力っていいね。」
「ジュンは、やわらかい。女と変わらん。」
「恵子とした日に、一成とやっちゃうなんて、ぼく、どうかしてるかな。」
「いいや。人間は、そんなもんじゃて。自分の気持ちにしたごうたら、ええんじゃ。」
「今日は、完全に気持ちにしたがっちゃった。」
「そやの。」
「ぼくの恋人はね、男の子とぼくがするのは、平気なんだよ。」
「え?そんなもんなんか?」
「うん。ぼくだって、恋人が他の女の子とするの平気だもん。
 でも、他の男とするのは、ジェラシー感じる。」
「わかる気がする。」
「だから、一成は、恵子としちゃだめ。ぼくジェラシー感じる。」
「それはせん。恵子はジュンに惚れとるきん。手は出さん。」
「一成としたこと、恵子はきっと平気だと思う。
 恵子に言っていい?」
「おお、言うてみ。きっと恵子怒らんな。隠しごとがあるのは、辛いきんな。」
「そう、3人の中ではオープンでいたい。
 今まで、ぼくが男だってこと、二人に隠してて辛かったから。」
「そうじゃの。ジュンがいちばん、こまっとったんじゃね。」

私としては、何かすっきりした夜だった。
人間ってこんなもんなのかな?
きっとこんなもんなんだな。
そう思った。

*    *    *

明くる日の日曜日の朝。
私は、一成を少し驚かせようと思って、
女装をした。
下着の上に、スリップをかぶり、
ストレートヘアーのウィッグをかぶった。
前髪を整えて少し左右に分けた。
薄くメイクをして、
ピンクの肩見せのラフなワンピースを着た。
女の子用のサンダルを履いて、
バッグを持ち、一成のいる階下に降りた。

テレビの常連である、熟年の女性エルさんは、
「あれ、ジュンちゃん、朝っぱら可愛いねえ。」と言った。
横の同じく熟年の康太さんが、
「髪型変えたのと違う?」と言った。
「はい、わかりますか。」
「わからいでかい。」と康太さんが笑った。

一成が降りて来た。
「一成、おはよう。」と言った。
一成が、
「ジュン、その髪型は、どないしたん。」と驚いた。
「かつら。ちょっと若く見えるでしょ。」と私。
「おお、おお、17、8の女の子に見えるがね。」と一成。
「気に入ってくれた。」
「気に入った。可愛いのう。」と一成は喜んだ。
「これから、あたし、一成といるときは、できるだけ女でいることにしたの。」
「そりゃ、うれしい。わし、もう早速我慢できんようになってきた。」
「今日、恵子のところへ入ってくる。一成のこと話す。」
「そうか。わかった。夜までお預けじゃね。」と一成は言った。


つづく

恵子の覚悟・ジュンの告白(1973年 ロサンゼルス編 ⑧)

今日、2つ目の投稿になります。前の記事「ジュンの悩み」をお読みでない方は、そちらも読んでくださるとうれしいです。(明日は投稿を休む予定です。)

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$女装  遥かなる想い-恵子
恵子のイメージ(あまりにもそっくり)


土曜日、午前10時ごろ、恵子からホテルに電話があった。
インターフォンでロビーに呼ばれて、受話器を取った。

恵子が教えて欲しいことがあるから、寮に来て欲しいという。
「うん、いいよ。どっちの格好で行ったらいい?」私は聞いた。
「男の子の格好で来て。」恵子が言う。
「うん、分かった。」
私は受話器を置いた。

女の子の部屋に行くのだから汗臭くてはいけないと思い、
シャワーを浴びた。
なんとなくそんな気がして、
私は、体にフィットしたブラとショーツ。
胸に、クリニックでもらった一番いいバッドを入れた。

古着屋で買った細身のジーンズと、
タンクトップを着た。

サングラスをかけて、車に乗った。
なんだか胸がそわそわした。



恵子の寮に着いた。
私は底の厚いサンダルに履き変えて、車から降りた。
寮はとてもステキだった。
椰子の木に覆われている。

恵子の部屋を探した。
ノックをすると、「開いてる。」と恵子の声がした。
中に入ると、シャワーから出て、
タオルを身体に巻いただけの恵子がいた。
心臓がいっぺんで高鳴ってしまった。
私は、ドアの方に振り返り、言った。

「恵子。ぼく、一応心は男だから、恵子のそんな姿見られない。
 外で待ってるから、着替えたら教えて。」そう言った。
「ジュン、ごめん。そうよね。すぐ服を着るね。」
恵子は慌ててそう言った。

「ジュン、もういいよ。ごめんね。」
恵子がドアを開けたので、中に入った。
恵子は、白いキャミソールに、赤いミニスカートを履いていた。

ベッドに座るように言われた。
「ルームメイトは?」と聞いた。
「この部屋、まだあたし一人なの。ラッキー。」
私は胸がトキンとなった。

恵子は、デスクの椅子をもって、私の前に座った。
私は、サングラスと帽子をバッグに入れた。

「それで、教えて欲しいことって何?」そう聞いた。
恵子は、じっと私を見つめていた。

「あたしにレズビアンを教えて。」恵子がそう言った。
私は内心かなり慌てた。
「うそ…。」私は言った。「どうして?」と聞いた。
「ジュンのことが好きになったみたいなの。
 ジュンは、レズビアンの子だから、
 あたしもレズビアンになりたいの。」恵子が真剣な顔をして言う。

私は戸惑った。どうしようかと思った。

「ぼくは、恋人がいるでしょう。
 ぼくは、恵子のこと好きだけど、
 まだその子ほど好きになっていない。」私は言った。
「いいの。片思いでも。
 ジュンが普通にやさしくしてくれれば、それ以上求めない。
 ジュンの愛情が欲しいって言わない。それじゃダメ?」
恵子の目が潤んでいるように思った。

これほどまでに、覚悟をきめている恵子が愛おしい。
拒否したら、恵子を深く傷つける。大きな恥をかかせる。
私はレズビアンの世界を知らない。
女装の世界とは違う気がする。
今、自分は「男」だと告白すべきときなのだろうか。
多分そうだと思った。

「ぼくは、3ヶ月したら、ニューオリンズに行ってしまう。
 それでも、いいの?」
「はじめから、わかっていたことだもの。」恵子は言った。

恵子が、椅子から立って、私の隣に来た。
恵子が、私の胸の膨らみに触った。
「好きな人に柔らかい胸があっても、嫌じゃない。
 自分の大好きだった女の子への気持ちとは違う。
 あたしの心は、もうレズビアンなの。後は、経験だけ。」

私は思った。もうこれ以上恵子に嘘をついてはいけない。
男であることを、告白するときだ。

「ちがう。恵子の心は、まだレズビアンじゃない。」私は言った。
「どういうこと?」
「ぼくは、レズビアンじゃないんだ。」
「え?」
「ぼくは、女の子じゃない。男なんだ。」
ああ、言ってしまった。

「うそ…。いまさら、信じられない。」
私は恵子の手を取って、
胸のパッドの隙間に、入れた。
「あ。」恵子は、戸惑いをみせた。
「ジュンは、男の子…。」

「そう、だから恵子は男の子を好きになった。
 恵子を騙すつもりじゃなかった。
 恵子、傷ついた?」
「ううん。あたし、うれしい。
 ジュンが男の子の方がうれしい。」
「セックスを教えるなんてできない。
 ふつうにセックスをすることならできる。
 恋人のことは、今は忘れる。」

「ジュン。」そう言って、恵子は私に抱きついてきた。
「恵子。」そう名を呼んで、私は、恵子と唇を重ねた。

「恵子、初めて?」
「うん。」恵子はうなずいた。

私は、ジーンズを抜いで、タンクトップを脱ぎ、
ブラも外した。
恵子は、スリップ一枚の姿になった。
ベッドに並んで寝て、
毛布を二人の胸までかけた。

私の胸は高鳴った。
恵子の心臓の音が聞こえるようだった。
私は恵子の髪を指で梳き、
頬や耳、鼻、目にたっぷりキスをした。
そして、唇を重ねた。
恵子は目を閉じて、呼吸を荒くしていった。

恵子のスリップを脱がせ、
私は恵子の上に乗って、ブラをはずし、
胸の膨らみを愛・撫し、
膨らみのいちばん感じやすいところを、何度も刺激した。

恵子が声をもらす。私の名前を何度も呼ぶ。
私はそれに答えた。
恵子の体が震えているのが分かった。

恵子の身体を撫でて、
ももや足の先まで、愛・撫して、恵子を強く抱いた。
恵子が早い呼吸をする。首を振りながら、反応する。

私はもう我慢できなくなっていた。
自分のショーツを脱いだ。
そして、恵子のショーツを取り去った。
初めて、恵子のいちばん感じやすいところを指でタッチした。
恵子は叫び、身体を激しく震わせた。
私のものを受け入れる状態に、恵子はなっていた。

私は、そばにあったバスタオルを、恵子の下半身の下にしいた。
恵子の部分をさらに刺激した。
恵子は、首を振り、身体を振動させ、反応した。
そして、激しく声を発した。

恵子は、もうすぐ達すると思った。
「恵子、いい?痛いと思う。」
「うん、ジュン、来て。」
私と恵子は一体になった。
恵子は、うっと痛みの表情を見せたが、
その表情もやがて消えた。

私は本能のままに身体を動かし、
耐えがたい段階まできた。
その部分を抜いて、恵子のお腹に放出した。
恵子がまだだった。
私は、指で愛・撫を続けた。
やがて、恵子は、私の名を呼びながら、
身体を大きくのけぞらせ、激しく痙・攣しながら、果てて行った。



しばらく、抱き合っていた。

バスタオルで、恵子のお腹や、自分のものをきれいにして、
恵子の横に、横たわった。
「痛くなかった?」と聞いた。
「痛かったけど、それより気持ちよさの方が上だった。
 男の子とのセッ・クスって、こんなにステキなんだ。
 あたし、天国へ行った。」
「恵子すごく可愛かった。
 今日、思い出して眠れない。」
「あたし、ヴァージン失ったんだね。
 でも、奪ってくれたのがジュンだからうれしい。」
「光栄です。」
二人でまた唇を重ねた。


つづく

ジュンの悩み(1973年 ロサンゼルス編 ⑧)

性的マイノリティー・センター」のつづきです。

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Oさん「ジュンのことに移ろうよ。」

レズビアンの子から、
「ね、もう少しジュンのこと聞かせて。」と聞かれた。

私「ぼく、子供の頃、もっと女の子みたいだったのね。
 それで、女の子に見られるたび、
 「ぼく、男です。」って言って来た。
 でも、そのときの、相手の驚く顔や、ものめずらしそうな顔が、
 いやでたまらなくなって、
 そのうちそういうのが、トラウマになっちゃったの。
 だから、女の子に間違えられたとき、
 そのまま、女の子の振りをするようになっちゃった。
 それが、いちばん辛くなかったから。」

 女の子で通せない場面もあるの。
 この前、大学の短期入学のため、手続きに行ったんだけど、
 担当の女性は、「あなた、女の子でしょう!」って言った。
 書類には、男で申請しているから。
 「代理の人の手続きはだめよと言われて、
 パスポートを出すように言われた。
 列の人たちが、前まで来て、ぼくをジロジロ見てた。
 パスポートを見て、その女性は、私が男であるとわかり、
 謝罪をしてくれたけれど、とても悲しかった。」

Tさん「それ、ひどいよね。逆に男に見える女の子に、
  『あなた、男でしょ。』って言ったとしたら、どうなると思う。
   スタッフ平謝りじゃ済まないよ。
   それ考えたら、ジュンはかなり辛い目にあったね。」

「ロスに来て、可愛い子と知りあったけど、
 彼女はぼくを女の子だと思った。
 ぼくは、男だって言えなくて、女の振りをした。
 そして、ぼくはビアンの子だよっていった。
 そう言えば、彼女は距離をおいてくると思ったから。
 でも、それが裏目に出ちゃった。
 彼女とキスまでいってしまった。
 でも、キスどまり。ぼくの身体は男だから、
 それ以上、できないでいる。それが、悲しい。」

「なーるほど。」とみなさんがうなずいた。

Eさん「ジュンにとって、『ぼく男だよ。』って言うことは、
   すごく辛い、そして怖いことなんだ。
   それがトラウマにまでなってるから。」

そうかあ…とみんなが言ってくれた。

Bさん「もう、男だってカムアウトしちゃったら?」

私「もう、ここまで来ちゃったら、
 騙していたみたいで辛い。
 ほんとはぼくを女だったと思ったのは、
 向こうが先なんだけど。
 でも、それを否定しなかったぼくは、
 やっぱりだましたことになると思う。

「うーん、むずかしいねえ。」と皆さん言った。

女装のZさんが、
「あなたのように女装に恵まれた人にも、
 悩みが生まれるのねえ。
 あたしなんか、女装って見え見えだから、
 そんな苦労があるなんて、思いもしなかったわ。」

Cさん「でも、いつかはカムアウトするんだろうね。
 じゃなきゃ、無理だよ。」
 
Dさん「カムアウトできないで困ってるのは、
 私たち、みんなそうじゃない。
 ジュンだって、簡単にはいかないよ。」

Cさん「そうか、ほとんどの人の問題は
 カムアウトだもんね。」

Hさん「なぜカムアウトがむずかしいのかは、
 われわれが、珍しいから。つまりマイノリティーだから。

Yさん「結局そこに行き着いちゃう。世間は珍しいものは嫌うからね。」
 
Kさん「でも、ジュンに女装趣味があったのは、天からのプレゼントだね。
 トラウマが、逆に利点になるんだから。」

私 「女装したときは、女だって見られたいの。
   その点では、女っぽい自分はラッキーだと思う。
   でも、自分で女装しているつもりじゃないときに、
   女って見られるのは、辛い。
   ぼくいま男の子のかっこうしているけど、
   女に見えて胸がない、なんだこいつ?って思われるのがいやで、
   今日もブラをして胸を膨らませてきちゃった。
   そうしていれば、すれ違う人は、女だと思って、変な顔しない。」

Oさん「だんだん、ジュンの辛さが分かってきた。
    そういうことなんだ。」
Rさん「大会でスピーチしてもらったらどう?」
Uさん「いいかもしれない。」



フリートーキングが終わった。
この後は、興味ブループでまとまって、
話し合いの時間になるが、帰ってもいい。

私のところへ、女装の人が3人来た。
Zさん「もっと近くであなたを見たかったの。
 お髭とかすね毛もないのね。」
私「うん。少しはあるよ。」
Tさん「あなたは、ほんとに奇跡だわ。」
Oさん「ボイストレーニングなんてなしでしょ?」
私「うん。生まれつき。
 でも、今度日本に帰って就職になったら、どうしようかと思ってる。」
Oさん「そうよねえ。ジュンの場合、男として社会人になるの、試練よね。」
Zさん「どうすれば、いいんだろう。」

Tさん「ジュンは大会でスピーチするといいと思う。
 私たちは、ジュンみたいな子に憧れてるけど、
 ジュンみたいな子はその子なりの試練があるんだって。
 それを知れば、現状に不満をもっている人も、考え変えるかもしれない。」
私「大会ってなあに。」
T「性解放のプロパガンダとかいろいろあるんだけど、
 スピーチ大会もあるの。500~1000人くらい聞きにくるわ。」
Zさん「ジュンがOKなら、私たちで、話し通しておくけど。」
私「ぼくは、そういうの好きだけど、いつですか?」
T「8月の15日だと思う。時間はたっぷりあるわ。」
私「じゃあ、お願いします。ぼくがんばる。」
T「来週来るでしょ?話し通ったか知らせるから。
 まあ、やる人少ないから、100%OKだけどね。」
私「はい。」



マイノリティ・センターを後にした。
行ってよかったなあと思った。
みなさんフランクで、初めて会った人じゃないようだった。
また、一つ、仲間と居場所が増えた。

スピーチかあ。OKが出るといいなあ。
500人かあ。
でも、英語でやるんだから、ちょっとしたもんかな。
私は自分をちょっと誉めながら、ホテルへと向かった。


つづく

性的マイノリティー・センター 1 (1973年 ロサンゼルス編 ⑦)

今日の人々の会話は、友達言葉で記述しました。英語は、敬語やていねい語は日本より明確ではありませんので、フレンドリーな感じを出すためにそうしました。

===============================

明くる日は水曜日だった。
そこで、私は水曜にミーティングがあるという「性的マイノリティ・センター」に行くことにした。
電話をすると、2時からだという。
私は、自分がトランスベスタイトだとカムアウトするつもりだった。
どんな服装でいこうか迷った。
私は男の格好をしても女に見られてしまう不便を訴えたかったので、
あえて、男の格好をした。
ロサンゼルスに来たときの格好だ。
だけど、Bカップのブラをして、それがタンクトップの脇から見えるようにした。

大学ノートを男物のバッグに入れていった。
私はカムアウトする関係で、一人で出かけた。



センターは、リトルトウキョーから、車で30分のハリウッドにあった。

中に入ってみると、フロアーがあり、20人くらいの人がいた。
みんなフロアーに円座になっていた。

みなさん、自己紹介と、困っていることなど、簡単に述べた。
同性愛の人、女装の人、S&Mの人、フェチの人…。
みんな、カムアウトできないことの悩みが多かった。

私は、女装には恵まれているが、
困ることもあることを、告げた。

その中で、一際みんなの関心を引いたのは、
ベスとう女の人と私だった。

ベスは、新婚の女性で、ブロンドの驚くほど美しい人だった。
会場には、ロングの黒いワンピースを着ていた。
ベスは、こう言った。
「私は、自分の性癖を夫にカムアウトできないで困っているの。
 自分のような変態は、この世にいないのじゃないかと悩んでる。
 私は、セックスのとき、私の顔をめちゃくちゃ醜くされてしたいの。
 ときには、老婆のメイクをしたり、はては、醜悪な男の顔にメイクされて、
 犯されたいの。私が変態なのか、皆さんのご意見を聞かせて。

聞いていて私は、日本の女装サロンでの絵里と同じだと思った。



そのあと、フリートーキングになった。

司会の人が言った。

「今日は、この中で、ベスとジュンの2人の場合が興味深いので、
 この2人にケースについて、考えませんか。」

みなさんは、同意した。


私は手を上げて、ベスさんに言った。
「ぼくが日本で行っていた女装サロンで、
ベスさんと同じ子がいたよ。
ものすごく可愛い子なのに、
自分の顔を、グニャグニャに歪められながら
セックスをするのがスキだって。」

それを聞いて、ベスは言った。
「ほんとなの。海を隔てた日本にも似た子がいるの?
 じゃあ、私は、特殊じゃなくて、もっと一般的なのかしら。」

みなさんの輪が、ベスを中心に小さくなった。

Rさん「これは、マゾヒズムの一種だよね。醜くされるって、
マゾ的だもの。
   豚鼻をつくる『鼻フック』なんて商品出てきたものね。

Yさん「トランス願望もあると思うよ。
トランスの場合は、男、女みたいな、対極のものになりたいと    
思うわけだから。ベスさんは、すばらしい美人だから、
逆に醜い対象に変身したいと思う。
その心情はすごくわかるな。」
Wさん「ベスはそうすることで、性的興奮につながるんだよね。
   トランス趣味の場合、変身の落差が性的興奮をよぶ訳だからね。
   TS(=GID)の場合、全然違うけどね。」

Lさん「まず、ベスさんのは、不可解なことではなくて、理解可能だよね。
   問題は、ご主人にカムアウトできないことでしょ。ふつう、苦しいよね。
   私でも、妻からそんなこと言われたらショックを受ける。」
Uさん「せっかく美人の奥さんなら、その美しい顔を見ながら、
セックスしたいよね。」
Hさん「女装だって、相手には抵抗あるよ。
私初夜のときカムアウトするつもりで、女性のメイクして、   
ネグリジェで家内のベッドに入ったのね。
家内に大泣きされたもの。」

Yさん「結局、ベスはどうすれべいいの?」
Iさん「今のところSMクラブで、自分の欲求を語って、
願いを実現するしかない。」

ベス「私は私の趣向に罪悪感をもっていて、
夫を裏切っているような気がしているの。
   
Rさん「その必要はないよ。配偶者でも、
お互いに言えないことあるもの。
   ベスの場合は、その趣向がとても珍しいだけで、
本質は我々と同じだから。
ジュンが言っていた日本の友達がいたみたいに、
募ってみるときっと大勢仲間がいると思うよ。」

みなさん、そうだそうだとうなずいていた。

最後にベスは言った。

ベス「今日わたしは、みなさんが罪悪感をもつ必要はないと
言ってくれたことと、
   あたしには、仲間がいるってわかったことが、
うれしいことでした。
   来てよかったです。」


つづく

恵子の誘惑(1973年 ロサンゼルス編 ⑥)

大久保ホテルのテレビの一番よく見えるところに一成がいた。
訪ねたら必ずいてくれる友達のように、
一成はいつでもそこにいるので、私はうれしい。

恵子を連れていったら、一成は大喜びした。
「可愛い子やのう。ジュンはどないしてナンパしたんじゃ。」と一成は言った。
「ぼくが、ナンパされたんだよ。」と私。
「え?恵子は、そないにナンパが好きなん?」
一成がそういうと、恵子は、くすくす笑っていた。
「恵子は、何食べたいの。」と私は聞いた。
「お寿司!」と恵子は迷わず答えた。
「じゃあ、ぼくは女の服に着替えてくるね。」
と言って、恵子の買い物袋を預かって自分の部屋に行った。

シャワーを浴びている時間がないので、
濡れタオルで体を拭いた。
下着を取り替えて、肩見せのエンジ色のワンピースを着た。
胸はCカップにした。
エンジ色に合わせたメイク。
シャドウもエンジ。リップは赤を極薄く。
マスカラ。頬紅。
髪の後ろが帽子でつぶれていたので、櫛で膨らませた。
前髪は、てっぺんから斜めに流す。首回りの髪を前に。
ヘップバーン・ヘアーになってきた。
両耳に金のリング。胸に金のネックレス。
バッグは黒、靴も黒。
OK。

階下に下りて、二人の前に立って、
「お待たせしました。」と言った。
一成が「おお、今日はおめかしやの。」と喜んでくれた。
恵子は、一瞬私だと気付かなかったみたい。
やっと気がついて、「わあ~!」といいながら拍手をしてくれた。
「ジュン、素敵。わあ、一瞬だれかと思った。もう感激。ジュン、すごく綺麗。」
と恵子がなめ回すように見てくれたので、すごく嬉しかった。
「ジュンは、えらい変身しよるんじゃ。
 わしゃ、いっつもジュンに女の格好でいてほしんじゃきんどの。」と一成が言った。
私がおめかししても、一成は、いつも白いポロシャツに黒いズボン、ベルト、サンダルだった。

お寿司屋さんでは、テーブル席に座った。
一成と恵子がならび、向かいに私が座った。
恵子がうっとりと私を見ていた。
「ジュン、ステキだな。」と恵子が再び言ってくれた。
「ありがとう。すごくうれしい。」と私は言った。
恵子から、「ジュン大好きオーラ」が感じられた。
恵子と同性になるための女装だったのに…。
私は戸惑ってしまった。



お寿司が来て、みんなで感激しながら食べ、
ビールを飲み、たのしい時間が過ぎて行った。

私たち3人は、すっかり仲良しになった。
そして、恵子と一成は、少し酔ったみたいだった。
私は、恵子を送っていくつもりだったので、
ほとんど飲んでいなかった。

お寿司屋さんを出て、まだ別れ難かったので、
スーパーで、スナックとビールを買って、
私の部屋に行った。

恵子と私はベッドに並び、前に小テーブル。
一成は椅子に座って、また長くおしゃべりをした。
一成が恵子を笑わせるので、すごく盛り上がった。

時間が11時になっていた。

「恵子、もう11時よ。あたし送っていく。」と私は言った。
「あ、だめ。寮に門限があるの。どうしよう。」と恵子。
「ほなら、ジュンの部屋に泊まりい。
 女同士じゃきん、別にええがね。」と一成が言った。
「ジュン、いい?」
「うん。いいわよ。」と私。

12時になって、
「わしゃ、もう寝るわ。ちょっと飲み過ぎたきん。」
一成がそう言って、部屋に行ってしまった。
恵子も酔っていた。

「恵子、このワンピース肩が凝るから、ちょっと着替えるね。」
と言って、私は生成りの木綿の楽なワンピースを出した。
「一応、あたしの心は男だから、恥かしいから、向こう向いててくれる。」
そう言って、私はさっと着替えた。

恵子とまた二人、ベッドに並んだ。
「ジュン、そういうワンピースだと、また可愛いな。」と恵子は言った。
そして、私に体を寄せてきた。
私は、10cmくらい逃げた。
「うふ。ジュンは純情なんだね。」と恵子が言う。
そして、私にまたぴったりと寄ってきた。
恵子はかなり酔っている。
「恵子、だめ、あたしには恋人がいるの。」
「知ってるよ。でも、見てない。
 あたし、ジュンが完全に好きになった。
 男の子のジュンも好き。女の子のジュンも好き。
 全部好き。」
恵子はそういうと、私の胸の下に抱きついてきた。
「ああ、ジュンはやっぱり女の子だね。やわらかい。」
恵子はそう言うと、私をベッドの上に倒した。
そして、私の上に乗ってきた。
「恵子、だめだったら。恵子酔ってるから。」
「これは、私からするの。ジュンの罪にならないから。」
恵子はそう言って、私の唇に唇を重ねてきた。

ああ、体の力が抜ける。
恵子のやわらかい唇。

「ジュン、可愛い。」
恵子はそう言って、またキスをする。
ほとんどシラフの私は、完全に興奮してしまっていた。
恵子を抱きしめたい欲求がむらむらと涌き起こる。私はそれと闘うために、
ウォンの笑顔を思い浮かべた。そして、必死に耐えていた。
涙が一滴、私の目尻から流れた…。
なんの涙だろう…。
恵子は、私にキスをしたまま眠ってしまった。



恵子の靴を脱がせ、恵子をベッドにちゃんと寝かせて、
毛布をかけた。
私の心臓は、まだドキドキしていた。
メイクを落として、楽なブラに変えて、
男の服に着替えた。
ホテルのベッドは細身のシングルなので、二人は寝れない。

私は体育座りをして、壁にもたれたまま眠った。



朝になって、恵子は大慌てした。
私は、座った姿勢が崩れて、床に寝るような形になっていた。
「ジュン、あたしを寝かせるために、
 自分は、床に寝てくれたの。ああ、悪いことしちゃった。」
「大丈夫。床とか、地面に寝るの慣れてるから。」と私は言った。
「ごねんね、ジュン。いい人だな。」と恵子。
「気にしないで。」
「ジュン、あたし、昨日酔ってて、ジュンに何かしなかった?」
「何にもしないよ。大丈夫だよ。」
「ジュンを抱いて、キスした気がするけど、夢かなあ。」と恵子。
「うん、夢だよ。」と私は言った。
「ジュンが好きって何度も言った気がする。」
「それも、夢だよ。」
「よかった。恋人のいるジュンを苦しめるところだった。」

「はい、これ、旅行用の歯ブラシセット。
 顔を洗うといいよ。」
そう言って、タオルを貸した。

一成を起こして、朝食を3人で食べに行った。
そのとき、私のフィールド・ワークのことを話した。
一成は、すぐ引き受けてくれた。
恵子も行きたいというので、誘うことにした。
「なんで、女装の世界のこと調べるの?」と恵子が言った。
「うん。ぼくビアンだから、女装も好き。」と答えた。
「そんなもんなの。」と恵子。
「うん。そんなもんなんだよ。」と私。
(全然そんなもんじゃなかったのに。)

電話番号を教え合って、
恵子を大学まで送っていった。
別れのとき、恵子がじっと私を見ていた。
「すぐ連絡するから。」と私は言った。
じゃあねと手を振って、発車した。
バックミラーに恵子が長い間、映っていた。

ファースト・キス? (1973年 ロサンゼルス編 ⑤)

ラッセル教授との面談を終えると、
昼になっていた。
私は胸の膨らみをAカップに戻した。

この大学のカフェテラスでも、のぞいて見ようと思った。
私はサングラスをかけて、品物をのぞいていた。
すると、横に日本人らしい女の子が来た。
私の方をちらちら見ている。
ストレートの髪に、前髪を2つに分けている。
ジーンズに赤と白のチェックのキャミソールを着ていた。
可愛い子だった。背は、私くらい。
私はコーヒーとサンドイッチを注文した。
その子も同じものを注文した。
「あのう、日本の方ですか?」とその子は尋ねてきた。
「うん、そうだよ。」と私は応えた。
「テーブルをごいっしょしていいですか?」とその子。
「もちろん。」と私は言った。

小さな丸テーブルに、2人向かい合って座った。
「あたし、恵子って言うの。」
「ぼくは、ジュン。よろしく。」と言って握手をした。
「あたし、おととい大学に来たんだけど、何にもわからなくて、
 日本の人を探したの。
 でも、みんな男の子で、あなたが初めて見かけた女の子なの。」
「ぼく、女の子に見えたの?!」と驚いてみせた。
「え?ちがった?ごめんなさい。」
恵子は、かなりあわてていた。
「ぼく、自分のこと、『ぼく』って言ってるじゃない。」
「だ、だって、そういう女の子いるし、それにジュンは、胸もあるし。声も可愛いし。」
「あはっ。ちょっと恵子をからかってみた。ごめん。」と言った。
「ああ、びっくりした。すごい失礼なこと言ったかと思って、どうしようかと思った。」

「でも、ぼく、ビアンの子だよ?」
「ビアンって?」
「レズビアン。」
「え?そうなの?女の子が好きなんだ。女の子同士でキスしたり?」
「うん。恵子のこと誘惑したい。」って私は言ってみた。
「あ、どうしよう。あなたのスタイル見て、気がつくべきだった。」
「だから、ぼく男と同じくらい危険だよ。」
「ああ、どうしよう。声かけたの私だし。
 私から、さよならって言ったら失礼だし…。」
私はにっこり笑った。
「恵子、ごめん、少しからかっちゃった。」と私。
「どの部分が、からかいだったの。」
「恵子を誘惑するって言ったこと。」
「他は、本当?」
「うん。でも、ぼくは、ニューオリンズに恋人がいるから、他の子には、手を出さない。」
「恋人って女の子?」と恵子が言う。
「もちろん。」
「ああ、二度もびっくりしちゃった。ジュンはいじめっ子なの?」
「そんなことないよ。久しぶりに日本人の女の子に会ってうれしかったから。
 からかったつぐないに、恵子のために何かする。」
「じゃあ、あたしをリトル・トウキョーに連れて行って。日本食が食べたいの。」
「ぼくに一人相棒がいるんだ。彼はナンパ専門。危ないんだ。いっしょでもいい?」
「じゃあ、彼からも私を守って。ジュンは2回私をからかったでしょう。」
「自信ないけど、OK。」

恵子を乗せて、私はリトル・トーキョウに向かった。
恵子は、真面目そうで、ちょっと抜けてて、おもしろい子だ。
きっと一成喜ぶぞと思った。

*    *    *

私は、恵子にリトルトウキョーだけでなく、
車で、ロサンゼルスのいろんなところを案内した。
ダウンタウンで車から降りた。

町の中心地であるはずなのに、
そこは、まるでメキシコ人街だった。
メキシコの人が大勢いる。
見る看板の90%は、スペイン語。
スペイン語の映画館もあった。
古着屋で、私は、ビアンにみえそうなジーンズや靴、
シャツ、タンクトップなどを買った。
ウィッグもあったので、3つ買った。

恵子も、いろんな洋服を買って喜んでいた。

全部ただみたいに安かった。

街を歩くために私は8cmのサンダルに履き替えていた。
恵子よりぐっと背が高くなる。
通りを歩く恵子と私は、いつの間にか腕を組んでいた。
恵子にとって、私が女の子だという安心感からか。
遠くから見て、女同士より男女に見える方が安全だ。
『ウォン、ごめんね。』と心で言って、
恵子の肩に腕をかけた。
恵子は、別に拒絶をしなかった。
ここまで来ると、恵子の頬にちょっとキスをしたくなる。
唇にはもっと。

閉まっている店のショーウインドウに、
二人で陰を移してみた。
「ね、ぼく達、男女に見えない?」と恵子に言った。
「あ、ジュンがあたしの肩に腕を回してる!」と恵子が言った。
「気がつかなかったの?」
「街に見とれていて気がつかなかった。
 でも、悪い気がしない。
 ジュンが男の子だと錯覚する。」
「ぼく、今、恵子にたまらまくキスしたいけど、我慢してる。」
「恋人のため?」
「うん。」私はうつむいて言った。
「見ていないのに?」
「うん。」
「ジュンは、イタズラッ子だけど、誠実なんだね。」
「キスは、越えちゃいけないハードルだから。」
「そうなんだ。」
「うん、そう…。」
「ジュンからはできないよね。だったらあたしから。」
恵子はそういうと、買い物袋を落とし、私の頬を両手で持って、
私の唇にキスをした。
「うそ…。」私は心で叫んだ。

「あ、あたし、今、何て大胆なことしたんだろう。
 アメリカに来たからかな…。
 今の、あたしのファースト・キス?
 でも、女同士だから、ちがうね。
 女の子同士、ふざけてすることってあるもんね。」
恵子は途方に暮れているようだった。
(恵子のファースト・キスだよ。と私は心で言っていた。)
「ジュンからしたんじゃないから、
 恋人を裏切ったことにならないよ。ね。」恵子は言った。
「うん。ありがとう。」私は言った。

「ジュンは女の子なのに、あたしキスして、胸がドキドキした。
 今日会ったばかりなのに、ジュンのことが好きになったのかな…。
 ジュンが誘惑するって言ったとき、怖かったのに、
 あたしから、キスしちゃうなんて。今、自分にびっくりしてる。」

「ぼくが、女だから、気軽にできたんだよ。
 そんなのふつうだよ。
 夕食のとき、ぼく、女の格好で行くね。
 恵子がぼくを好きにならなくて済むように。」
「ジュンの女の子の格好も見てみたい。本気で好きになったりして。」
「それはないったら。」
二人で笑った。


つづく

ラッセル教授(1973年 ロサンゼルス編 ④)

文中に、ロサンゼルスの女装のスポットが出てきますが、名前を忘れてしまいましたので、仮の名をつけました。ただ、40年前にそういうところが存在したことは、事実です。

===============================

ロサンゼルスに来た本命。
夏期講座を取らなくてはならない。
私はホテルから近い、カリフォルニア州立大学を選んだ。

姿は、男の子ルック。野球帽。
白いTシャツにオーバーオール。
これだと胸なんか隠れてしまうのに、
わざわざブラをして、中にAカップくらい詰め物をした。
そんな自分の心理がわからなかった。
多分、横から見られたとき、
ブラのラインがないと変。
たったそれだけの理由だった。

大学は、小さくまとまった小奇麗なところ。
正門の椰子の木が、ロサンゼルス的だ。

手続きのため、大学の学生課に行った。
列が出来ていた。
この時だけは、胸のAカップの詰め物をとった。
そして、サングラスをとって並んだ。
受け付けてくれたのは、日本人らしい綺麗な30歳くらいの女性だった。
彼女は、私にも英語で話しかけてきた。

手続きの途中、
「あれ?あなた男子?」と彼女は私を見た。
列の横にいる学生達が数人、わざわざ前に来て、ジロジロと私を見た。
私はそのとき、なぜか、信じられないほどの感傷的な気分に包まれてしまっていた。

「はい。」と私はうつむいて言った。なんか、涙が出てくる。(普段は、こんなじゃないのに。)
「代理じゃなくて、本人?」
「はい。」と私はうつむいたまま言った。(なんで、こんなことで今日は涙が出るの?)
「あなたが女の子に見えるわ。声も。一応パスポートを見せて。」と彼女。
私は、パスポートを見せた。

「まあ、本人なのね。ごめんなさい。
 あなたを傷つけたかしら。」彼女は言った。
私はそのとき流れてくる涙を腕で拭いていた。
「ああ、どうしましょう。ひどく傷つけてしまったわ。」
彼女は日本語でそう言って、私をオフィスの中に案内した。
ソファーをすすめられて、座った。
窓口には、別の人が行った。

「あたしのミスだわ。あなたのパスポートを先に見るべきだった。
 いちいち『男の子?』とか『女の子に見えるわ。』なんて言葉を口に出すべきではなかった。
 しかも、大きな声で言ってしまったわ。
 みんなの前で、あなたを侮辱してしまった。
 ごめんなさい。許してくださる?」

「平気です。いつもはこんなことで泣いたりしないのに。気にしないでください。」と懸命に言った。
「ああ、配慮がなかったわ。
 車椅子の人に、立ってくださいというようなものだった。
 忙しくて、無神経になっていたわ。本当にごめんなさい。」
「ここで、手続きをしてくれますか?」と言った。
「いいわ。」その人は、私の成績表を見た。
「まあ、ストレートAの学生さんなのね。
 もちろん、あなたの短期入学を許可します。
 今、許可証を作りますから。」と言った。

私は、短期入学の許可をもらった。
彼女は、何度も謝っていた。
オフィスを出ると、感傷的な風は、さっと過ぎて行った。
変だな。さっきの気分はなんだったのだろうと思った。
あの女性に悪いことをしたなと思った。
今も、気にしているだろうな…そう思った。



私は勉強ばかりのロサンゼルスにならないように、
1教科しかとらなかった。
それは、「人間の性の科学」とも言うべき教科。

指定の教科書を買って、中を見ると、
女装、S&M、フェチ、同性愛とありとあらゆる性のあり方が
考察されている。
もうそのものずばりの教科だ。



私は担当の教授のところへ面接に行った。
ラッセル教授は、高齢の方だった。
教授は、私をソファーに座らせてくれて、
教授は斜めに座った。

「で、君は、フィールド・ワーク(野外研究)を希望するわけだね。」と教授。
「はい。」
「特に興味のある分野は?」
「トランスベスティズム(女装愛好)です。」
「う~ん。」と教授は考えていた。
「君が、フィールド・ワークをするのに、
 1つ問題があります。
 君は男子学生ですが、失礼ながら、女子学生に見えます。
 女装にまつわるスポットを訪ねるとき、女子一人では、
 はなはだ危険なところもあります。
 だれか、付き添ってくれる男子がいればいいんだが。」
教授はそう言った。
私は真っ先に一成の顔が浮かんだ。
「たのめると思います。」と私は言った。
「ならば、安心です。」
教授はそういうと、ソファーを立って、
用紙にペンを走らせていた。

やがて、その用紙を私にくれた。

「そこにあるのは、女装に関連したスポットです。
『クイーンズ ハウス』は、女装のショーをやっています。入場3ドルくらいですね。あとドリンク1杯が3ドル。踊り子はかなりハイレベルですよ。

『Bワン・カフェ』は女装のショーもやりますが、主に、売春をしています。駐車場の客の車の中でね。それには、気を付けてください。

『ダニーズ・レストラン』は、ハリウッドのど真ん中にあり、女装の売春婦達が主に夜食をとりに来ます。経営者は日本人ですから、話しやすいでしょう。

『性的マイノリティ・センター』はその名の通りのところです。毎週水曜日にいろんなマイノリティの人が集まって、ミーティングをやっています。たまに大会を開きます。それに出席できればラッキーですね。あなたにとって、いちばん大切なスポットとなるでしょう。

『トミーズ・ハウス』は、個人が家を開放して、毎週末にいろんな趣味の人が集まります。S&M、女装、同性愛、スワッピングいろんな人がきますよ。女装の人の特別日というのもあります。参加に5ドルくらいとられます。

「このくらい回れば、単位を取るに十分でしょう。」
教授はそう言った。
私は、少なからず驚いた。全部のスポットに住所と電話番号が記されてあった。
教授ともなると、ここまで知っているものなのか。

教授は言った。
「最後にプライベートなことを聞いていいかね?」
「はい。」と私。
「君のオーバーオールの隙間から、女性の下着のラインが見えますが、あなた自身が、トランスベスタイトですか。」
「はい、その通りです。」と私は答えた。
「私は、S&Mなんだよ。」
と言って教授は笑った。
「この年になっても、趣向は変わらない。そんなもんなんだね。」
「ぼくも、変わらないでしょうか。」
「多分イエス。君は、TVとしての資質に実に恵まれています。でも、そのことの苦労もあるでしょう。また、TSの心も少しもっていることでしょう。」
「はい、ときどき本物の女の子になりたいと思います。」
「そうですか。たくさん傷つき悩んで来たのでしょうね。」
「将来のことを考えて、苦しい気持ちになります。」
「そうでしょうね。しかし、多くのTVが、君を見て、どれだけ羨ましいと思うでしょうか。
 しかし、君には、君の悩みがある。そんなことを、マイノリティー・センターでみんなに伝えてみるといいですよ。」
教授はそう言って、やさしい笑顔を見せた。

教授と握手をして部屋を後にした。
かなり驚いてしまった。
大学の学問として、女装スポットを教えてくれるなんて。
しかも、売春をやっているところまで。
教授自らが、S&Mなんだよ、なんて軽く笑って言うなんて。
そして、私自身の問題に言葉をくれるなんて。
教授は、短時間の内に、私を深く理解してくれたように思った。

ラッセル教授に会えたことは、幸運だった。
研究の途中でも、何回も会いたいと思った。

スポットには、一成を拝みたおして、連れて行ってもらおう。
そう思った。


つづく

傷心の一成(1973 ロサンゼルス編 ③)

一成は旅行ビザで来ている、短期(三ヶ月)滞在者だった。
私と会ったのは、来て2週間のとき。
その間に車も買って持っていた。



その日の夜、つまみ物と缶ビールを買って、
一成の部屋で話した。
私は少年服で、床にあぐらをかいていた。
サングラスは、胸の谷間に差していた。

「わしゃのう、どえらい人間になりたいんじゃ。
 その為には、白人女の一人や二人抱かんといかん。
 アメリカに来た目的は、それじゃ。」

一成は私から見て、ハンサムとは言い難かった。
どちらかというと、お笑い系。
私は、
「ふーん。じゃあ、手伝うよ。」と言った。
「わしゃのう、愛媛じゃ『ナンパの一成』、言われとったんよ。
 もう、何人引っ掛けたか数しれん。」
「すごい。コツは何?」
「自然体じゃの。自然体で近づく。
 ここに変なすけべ心出したら、いっぺんで女は逃げよる。
 あくまで自然体で話しかけ、自然体で、肩に手をまわす。
 そんで、自然体でGo-じゃ。どうじゃ。ジュン分かるか。」
「そういえば、一成がぼくに初めて話しかけてきたときも自然体だったよ。
 だから、ぼくは、ぜんぜん警戒しなかった。
 一成の実力信じるよ。」
「ジュンもレズの女、自然体で引っ掛けてみい。
 そのくらいの根性のうてどうする?」
「だめだよ。ぼくには、恋人がいるって。」
「可愛いんか?」
「そりゃもう。」
私はバッグの財布の中から、ウォンの写真を見せた。

「おお、こりゃ、えらいべっぴんじゃの。
 こんな子がおるんじゃったら浮気はできんの。
 あ、首から肩にかけて、火傷があるがね。」
「うん。ベトナムの子だから、戦争で火傷した。」
「そりゃ、不憫じゃのう。」
「それだけじゃない。男にいたずらされた。
 それから、男はだめになった。」
「それで、レズなんか。」
「うん。」
私はウォンのことを思って不意に涙が出た。
一成はしばらく黙っていた。
「ジュンが、せいぜいやさしゅうしたり。」
「うん。」
私は写真を受取った。



次の日、一成がいよいよ白人の女の子をナンパするということで、
近くの州立大学まで、車で行った。
私は同じ少年服。帽子だけキャップにした。

大学の門から建物の道は、ジャリが敷かれ、
そばには高いポプラ並木が続いていた。

私は、背の高い一成の腕を抱き、
まるで恋人か妹のように歩いた。
「ぼくのようないい女と歩く気分はどう?」
といたずらっぽく聞いた。
「悪ないのう。これで、ジュンが女の服着とったら、最高や。」
「今、男同士に見えてるかな。」
「いや、オヤジと子供に見えよるやろ。」
あはは、と私は笑った。

正面の建物の回りは、きれいな芝生だった。
日が燦燦と降りそそいでいた。
私たちはその一画に座って、白人の女の子を待った。
そのうち、テキストを胸に抱いた白人の女の子が来た。
「一成、チャンス。ナンパの一成の意地、見せたれ!」
と愛媛弁を真似て言った。
一成は、うつむいていた。
「ジュン、ちょ、ちょっと待ったらんかい。
 自然体にまだようなりよらん。まだ、だめじゃ。」
と一成は言った。

今度は、2人の白人の女の子が来た。
二人とも、ブロンドの髪が綺麗だ。
「一成、チャンス!」
「よっしゃ。」と言って一成は立ち上がった。
そして、二人にせまり、何か話している。
「おお、すごい。」と思っていたら、
一成は、頭をさげて、サンキュウなどと言っている。

もどってきた一成に聞いた。
「何話したの?」
「あかん。道聞いただけじゃった。
 わしゃ、大事な事を忘れとった。」
「何を?」
「わしゃ、英語しゃべれん。
 これじゃ、ナンパはできん。」
あははは…と私は笑った。
一成が落ち込んでいた。
「ごめん、笑ったりして。」
「いや、かまわん。わしがアホじゃった。」
「じゃあ、なぐさめに、今日の夕食おごるよ。
 ぼくは、女の格好していく。」
「ほんとか。そりゃ楽しみじゃ。」
一成は簡単に立ち直った。



夜。私はブルーのワンピース。
銀のリング。フルメイク。
白のバッグと靴。ちょっと香水。
エレベーターに乗って、1階へ降りた。
ロビーの人たちが一斉に私を見た気がした。
「一成。OKよ。」と言った。
「うおー、やっぱりべっぴんじゃのう。
 わしゃ、ジュンがおったら、他の女もういらん。」
と一成が言った。
「だれ?あの子?」と声がした。
「ほら、トンボサングラスの子だよ。」
「あらまあ。」
そんな声がしていて、少しうれしかった。

ホテルを出ようとすると、建治さん美沙さん夫妻に出会った。
美沙さんはとても元気そうだった。

「美沙さん。すっかりお元気になったようですね。」と言った。
美沙さんは、初めぽかんと私を見ていたが、やがて、
「あ、お粥を作ってくださった…。まあ、お綺麗だわ。ちがう人かと思った。」と言った。
建治さんも、「ほんと、ステキです。」と言ってくれた。
私はお礼を言って、「じゃあ。」と言って二人を後にした。

私は、一成の腕につかまって、
「一成。今夜はずっと女言葉を使うわね。」と言った。
「うれしいけど、わし、たまらんようになったら、どないしょ。」と一成。
「自然体、自然体。」と私は言った。

傷心の一成だから、今夜は、キスくらいOKかなと思った。

男に見られたがっている女(1973年 ロサンゼルス編 ②)

だらだらと心のままに書いてます。まとまりもなく、すみません。読んでくださるとうれしいです。

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昼を食べて、洗濯に行った。
近くのコインランドリーで洗いもドライも全てやってしまう。

男服が洗濯されたら、私は男服をまた着たくなってしまった。
そこで、ルームに帰ったら、また着替えた。
ただ、道中と違うところは、ブラをちゃんとつけたこと。
Tシャツは止めて、タンクトップの色違いの重ね着。
これだと、脇の下のブラが見えるのだけど、
ちょっとセクシーかななんて思った。

ショーツはもちろん女物。
後は、少年ルック。
私は自分のアイデンティティーを考えた。
少年に見えたがっている、ビアンの女なんて、可愛いかも知れないと思った。
そこで、「ぼく少女」で行くことにした。
サングラスに帽子をかぶって、下に降りた。
Bカップの胸があるのに、ぼく少女だなんて。
まあいいかと思った。



テレビの前にやっぱり一成がいて、
「なんや、また元に戻ったん。さっきのがええにのに。」という。
「ぼくは、レズだからね。これがいい。」と私。
「なんや、おんしはレズかいな。ほな、恋人は女か。」
「まあね。」
「男に興味がないはずじゃ。もったいないのう。」と一成は言う。
「どうして、もったいないの?」と私。
「美少女二人が離れたら、二人の男が助かるがね。」
「あ、なるほど。」と私は言った。

そうこうするうちに、若いカップルの男女が、
上から降りてきて、奥のテーブルに座った。
新婚旅行と見た。
奥さんの方が、かなり弱っていた。
私と一成は、すぐに駆けよった。
「どないしたん。」と一成が言うと、
夫の方がいった。
「私たちは、海外旅行が初めてで、具合が悪くなりまして。
 機内食から合わなくて、夕食を食べたら、すぐに朝になってしまい、
 昨日ホリデイ・インにとまりましたが、
 その食事もダメで、日本食の食べられるここに来たんです。
 でも、部屋が、(小さい声で)あんまりステキじゃなくて、
 町も、なんか綺麗な感じじゃなくて、
 何もかも、期待はずれで、そのショックもあるようです。」
とご主人が言った。

ご主人の方は、建治さん、奥さんの方は、美沙さんといった。

「ぼく、梅干と、梅肉エキスをもってるから、もってくるね。」
と私は、部屋へ行き、それを持って来た。」

美沙さんに、梅肉エキスと梅干を食べさせた。
「30分もすれば、楽になるよ。」と私は言った。
美沙さんは、テーブルに腕を輪にして、その中に、顔をいれた。

建治さんが言った。
「ぼくも、旅行が初めてだったので、もたもたしたり、無駄足踏んだりしたものですから、
 家内はぼくにも失望したみたいです。
 このまま、ぼくたちやっていけるのかなあ。日本旅行にすればよかった。」
「大丈夫。すぐ慣れるきん。」と一成が言った。

「ぼく、お粥買ってくる。一成は、美沙さんのそばにいて。」
私は、そう言って外に出た。
うれしいことに、すぐ近くにスーパーがあった。
中に入ってみると、日本食が、どっさり売っている。
私は、お粥の真空パックを見つけた。
それを2袋買うと、外に出た。

ホテルのみんなのいるテーブルは、キッチンのテーブルで、
私は、お粥をさらに2倍に薄めて温めた。

美沙さんは、お粥をおいしそうに食べた。
「お代わりあるからね。」と私は言った。
美沙さんは、私を見て、「ありがとう。」と言った。

美沙さんは、お代わりの分まで、全部食べた。
美沙さんの顔色に、赤味が差した。

「ああ、信じられないくらい、楽になった。」と美沙さんは、姿勢を正して言った。
建治さんは言った。
「美沙、ごめんね。俺が、もっとしっかりしていたらよかったのに。」

「ううん。悪いのはあたし。わからないことや、うまくいかないとき、
 全部あなたのせいにして、ダダをこねてた。まるで子供みたいだった。
 建治さん、ごめんなさい。」と美沙さんは、言った。

一成は、
「ここに、しばらくおったらええ。で、アメリカになれたら、出かけたらええ。」
と言った。
「うん、そうだよ。ぼくなんかアメリカに来たとき、ショックで、10日間も食べられなかった。」
と私は言った。

美沙さんは、私を見た。そして、胸の膨らみも。
「近所の男の子かと思った。女性ですよね。どうもありがとう。」と言った。
「いや、男に見られたがってる女です。どういしまして。」と私。

二人を残して、一成と私は再び、テレビの部屋へならんだ。
「おんしゃ、やっぱり女子じゃの。思いつくし、手際よかった。
 わしゃ、また、ジュンに惚れてしまいそうじゃがね。」と一成は言った。
「今日は、『男の子』に一瞬見られたよ。やったね。」
「男の子いうても、小学生くらいの男の子のことやろ。あんまり喜ばんとき。
 それよりわしは、おんしの脇の下の方に見えるブラが、気になっておれん。
 男の格好の中のそういうの、かえってセクシーじゃの。」
「えへっ。わざと見せてんの。フェロモン出てる?」
「手をつけられんわしには、つらいだけのもんじゃ。」
「じゃあ、ちょっとサービスしようか?」
「どないな?」
「こんな。」私は一成の頬にキスをした。
「おお。唇はだめか?」
「ちょっとならいいよ。」そう言って一成の唇にちょっとキスした。
「おお、たまらん。おれは、ちょっと自分の部屋行ってくる。」

やりすぎたかな。
でも、今日の一成のあのご夫婦を見る目がとてもやさしかった。
唇にちょっとキス。
減るもんじゃなし。 

私の相棒(1973年 ロサンゼルス編 ①)

先のことをあまり考えていないのですが、舞台をアメリカに移し、ロサンゼルス編を書いてみようと思

います。途中、日本編もときどき入れるつもりです。もう何だかわからなくなりそうですが、読んでく

ださるとうれしいです。

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1973年六月。
私はウォンと3月の別れをした。
夏季の間ロサンゼルスで過ごしたかった。
ウォンは、初め許さないと言ったけれど、がんばって説得した。

車でアメリカ横断の旅。
道中の危険を考えて、私は男装をした。
だぶだぶのカーキーのズボンに、太いベルト。
Tシャツの上にタンクトップの2枚重ね。顔が半分隠れそうなトンボのサングラス。
トップの平たいカーキーの帽子。
髪の毛は、首を隠すくらいのオードリーヘア。
私が考えた、精一杯の男服。

ウォンのハウスの前。
「ジュンのそういう格好は可愛いだけよ。ビアンの女の子に見えるだけ。」
とウォンは言った。
「これ以外に考えられなかったんだよ。」と私。
「男が寄ってくるならいいけど、女にモテないでよ。許さないから。」
「モテないよ。向こうに着いたら、可愛い女の子になるから。」

そう言って、ウォンと別れた。
さて、フリーウェイ16号線だ。
長い運転のときは、ぞうりが一番。
フリーウェイは、広い。
このまま、ロサンゼルスまで、高速料金がないなんて。夢見たい。

休憩所で一夜を過ごしたり、ホテルに泊まったり、できるだけ節約して、
5日後、念願のロサンゼルスに早朝やって来た。
私の思いは一つ。「リトル・トウキョー」で日本食が食べたい。
私はかかとの8cmくらいあるサンダルを履いて、ズボンの巻きを下ろし、
分厚い黒のバッグを肩から下げて、町を歩いた。
一時代前の日本を思わせるどこか錆びれた町。
看板の漢字の間違い。私は、なにかうら寂しい気持ちになってしまった。
私が泊まるのは、この町で一番安い「大久保ホテル」。
もちろん日本人しか泊まらない。
私はやっと「大久保ホテル」を見つけた。
4階建ての古びたホテル。ホテルの壁にもたれて、少し寝た。

気がつくと、日差しが眩しかった。4時間も寝ていたことに気がついた。
もう町は賑わいでいた。
私は早速大久保ホテルに入って、チェックインした。
月契約で、90ドル。すごく安い。
一流ホテルなら、一泊の値段だ。
私は駐車場から、トランクをもち出して、それを運んだ。
部屋は、4畳半くらい。ベッドが合って、エアコンがあり、鏡と小さなクロゼットがあった。
バスはシャワーのみで共同。男女の区別なし。トイレも同じ。私にとっては、かえって都合がよかった。
私は鏡をみて、やっぱりレズビアンの女の子にしか見えないかなあと確認した。
これなら、普通の男の子の格好で来たほうがましだったかもしれない。
今日一日、この格好で試して見ようと思った。

私はとにかく食堂に行って、日本食が食べたかった。
で、早速通りに出ると、いっぱいある。
私は定食屋へ入って、玉子丼をたのんだ。
おいしい。この感激。チップはちゃんと忘れなかった。

ホテルに帰って、シャワーを済まし、ロビーでテレビを見ていた。
テレビは、日本語放送だ。言葉が全部わかる。うれしい。
私は、ちょっと男っぽく、足を組んでいた。
男で通るか試したい。
すると、早速、日本人のお兄ちゃんが来た。
スポーツ刈りの体格のいい兄ちゃん。
テレビを見ながら、私をジロジロ見ている。
「サンブラス外した方が、もっとよう見えるがね?」と彼は言う。
「ほっといて。」と私はできるだけ低い声で言った。
あ、でも、「ほっといて。」はすでに女言葉だった。
アメリカで1年。私の心は、ここまで女性化したのだろうか。
そして、今の言葉は、1年ぶりに使う日本語だった。

「ぼく、一成(いっせい)いうん。」と彼は握手の手を出してきた。
「ジュン。」と私も手を出した。
「あんたは、女の子よね。」と一成が言う。
ああ、ぼくが精一杯男でとおるか試しているのに、こう直接的に聞かれるとは。
「うん。女。もう、降参。」と私はサンブラスをはずした。
「なんじゃ、きれいな顔しとるがね。」
「男に見えなかった?」
「そりゃ、無理じゃがね。見える見えんの問題じゃのうて、
 男は、女がそば来たら、感じるんよ。フェロモンかの。」
「あたしに女のフェロモン感じた?」
「もう、ぷんぷんじゃがね。」と一成は笑った。
(ああ、まいったなと独白。)
「一成の言葉は、どこ?」と私。
「四国じゃ。」
「坂本竜馬の話し方に似てる。」
「ちょっとちがう。わしは、愛媛じゃ。」
「竜馬は、高知だもんね。」
「おお、よう知っとるの。」
「標準語しゃべろうという気、全然ないのね。」
「わし、標準語しゃべっとろうが。」と一成は言った。
私は思わず笑った。
「もう、女にばれたらこんなかっこいや。着替えてくるね。」
私はそう言って、自分の部屋に上がった。

ブラをして、スリップをかぶり、お気に入りのピンクの
ワンピースを来た。
靴も、かかとのあるサンダル。
男物のバッグの代わりに、白い女物のバッグ。
耳が見えるヘアスタイルにしたので、
金色のリングをつけた。
そして、薄くメイクをして、
唇にワンピースと同じ色のリップを引いた。
そして、耳たぶに香水。
「これで、一成を悩殺しよう。」と思った。

私が降りて、また一成の隣に座ると、彼は反応した。
「ジュン、おんしゃ、べっぴんじゃの。
 こりゃ、たまらん。ええ匂いまでしよる。
 どうしてくれるんじゃ。わしゃ、もうおさまらん。」
「そうお、うれしいわ。」と言って、一成の腕を取ってみた。
「わあ、たまらん。今すぐわしの部屋行こ。」
「だめ。あたしには恋人がいるし、絶対だめ。
 それに、あたしは合気道ができるから、一成が力ずくで来てもだめ。
 そんなあたしでよかったら、お友達になろう。」
「おんしゃ、愛人がおるんか。つまらんのう。
 しゃあない、友達でがまんする。」

(こうして一成と私は、ロサンゼルスの3ヶ月間、
恰好の相棒として過ごすことになります。)

ガリ勉と合気道(純 高校2年生 完結編)

女装と関係ない記事を長々書いてしまいました。これで完結です。

読んでくださった方、ありがとうございました。

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先生「もし、加納君が、怒りにまかせて手加減もなくA君と戦っていたら、どうなっていましたか。」

井上「運が悪ければ…。」

井上君は、そこまで言って、言葉を詰まらせ、うつむいて涙を流した。

井上「運が悪ければ、…取り返しのつかないことになっていました。」

クラスが、ざわざわとなり、そのあとしーんとなった。

井上「次は、ぼくの番でした。
 ぼくには合気道の心得があるので、加納君は本気で来ると思いました。
 そう思ったら、ぼくは怖くて怖くて、足が震え、立っているのがやっとでした。
 加納君を引っ張り出しておいて、ぼくは、逃げました。
 卑怯だったと思います。最低だったと思います。」

井上君は、涙声で続けた。

「ぼくは、自分が何という無謀なことをしたのか、今でも体の震えが止まりません。
 ガリ勉だからといって、人を痛い目に合わせるなんて、とんでもない思い上がりでした。
 
 クラスに加納君の様な人がいるのに、いい気になって、合気道を教えていた自分が、
 今では、恥かしくて、加納君の顔を見ることが出来ません。

 加納君は、力をひけらかすのを嫌い、静かにしていたのに、それを無理矢理ひっぱり出した
 ぼくが、悪かったです。
 加納君に、あやまります。ごめんなさい。すいませんでした。」

井上君は、涙の流れるままに続けた。

「それから、池田君。池田君は強くなくても、友達のために体を張ってかばいました。
 そういうのが、ほんとの勇気だと思います。
 そんな池田君を投げるなんて、とんでもないことでした。介抱には真っ先にぼくが行くべきでした。
 それもしなくて、ごめんなさい。あやまります。すいませんでした。」

井上君は、座って、涙をぬぐった。
井上君の涙を見たのは、クラスのみんなにとって、多分初めてだった。

先生「加納君の強さはどのくらいですか。」
井上「ぼく達が猫と考えて、寅に挑むようなものでした。
 3級のぼくが10人、いえ20人でかかっても加納君を倒せません。」

クラスで、声が起こった。

先生「加納君は涙を流していたと聞いています。それは、なんの涙ですか。」

私は言った。
「ガリ勉だから、ぼくが痛い目にあうところを、みんなが
 楽しみに見ていたことが、悲しいことでした。
 池田君以外、だれも前に出て止めてくれなかったことも、悲しかったです。
 投げられた池田君を誰も介抱せず、言葉も掛けなかったみんなが、冷たく思え、涙が出ました。

 今まで、いつもいつもこう言うとき、みんな言葉だけでした。
 行動に移してくれる人は、めったにいません。
 何も言ってくれないより、何か言ってくれた方がうれしいです。でも、行動に出てくれる人は、
 めったにいません。
 でも今日は、池田君が、かばってくれたので、心が救われました。」

先生「君達は、ガリ勉はいけないと思っているらしいので、最後に言いましょう。
 加納君は、朝5時に起きて、お兄さんと2時間合気道の朝稽古をします。
 そしてご飯をたべて学校に来ます。学校が終わったら、合気道場へ飛んでいきます。
 そこで、4時から9時まで5時間の稽古をします。家に9時半に帰って来て、夕食を
 とり、お風呂に入って11時に寝ます。
 もうわかりますね。加納君は家で勉強をする時間が全くないのです。
 だから、学校での少しの空き時間を使って、勉強しているのです。
 これを、みなさんはガリ勉と呼びますか。」

みんなが、ざわざわと話していた。

先生が、「井上君、どうですか。」と言った。

井上君は、少し考えていた。そして、言った。

井上「ガリ勉だろうが、なかろうが、そんなことで人を蔑むのはいけないと思いました。
 今日の加納君や池田君を見て思いました。大切なのは、やさしさや人のためにする行動だと思いました。加納君は、みんなが見ている前なのに、ぼく達のために負けてくれました。池田君は、自分より強い相手であっても、加納君を守ろうとしました。そういうことの大切さに比べたら、ガリ勉のことなんて、ほんの小さなことだと気がつきました。」

井上君の言葉を聞いて、先生は、かすかにうれしそうにうなずいた。

先生「いい言葉を聞けて、うれしいです。じゃあ、今日はこのくらいにしましょう。」



帰りの会が終わったとき、私と池田君とに謝って行く人の行列ができていた。
「ごめん、今度はああいうとき、止めに入るから。」とか、
「君をガリ勉だなんて思っててごめん。反省してる。」とか、みんなそれぞれにあやまっていた。
 例の5人は、床に手をついて謝った。
A「ごめん。俺、大変なことになるところだった。助けてくれて、ありがとう。」

私の行列が終わって、池田君の方を見ていた。
みんなが終わって、最後に美咲さんがいた。

「池田君が投げられたとき、あたし、そのそばにいたのに、池田君を介抱しなかった。
 言葉も掛けなかった。自分が恥かしい。池田君、ごめんなさい。」
美咲さんは、涙をぽろぽろ流していた。

美咲さんは、続けた。
「今日の池田君を見ていて、そういうのが本当の勇気のある人だと思った。
 あたし、今まで池田君のこと誤解してたの。ごめんなさい。
 かっこつけてる人だと思ってた。でも、違った。今日の池田君はどんなにカッコ悪くても、
 加納君を全力で守ろうとしていた。
 反対に、私は、人を見る目のない最低の人間だと思った。生意気で傲慢だった。
 今まで、池田君を誤解してたこと。そのことを謝りたいの。ごめんなさい。」
美咲さんは、ハンカチで涙を拭いた。
池田君は、
「ぼくに謝る必要なんてないよ。でも、そう言ってくれて、ありがとう。」と言った。

美咲さんは、泣きながら、恥かしそうに出て言った。

私は、池田君のところへ言った。
「池田君。ありがとう。うれしかった。」
池田君は、
「とんでもないよ。純はぼくの心の恋人だから。」と言って笑った。



その後、池田君は、12月10日の美咲さんの誕生日パーティーに、招待された。
男子3人の中の一人だった。

池田君は、私を校舎裏へ呼んで、招待状を見せてくれた。
「ぼく、どうしよう。なんか運命が開けてきたみたい。」と池田君は言った。
「わ~ん、あたしを捨てちゃいや。」と私は池田君にしがみついた。
二人で笑いながら、石を持って乾杯した。


<エピローグ>

6時間目の体育は体育館でマットを使った。
そこで井上君達が、自分達でマットを四角く並べて、私に言う。
「マットをしいたからいいだろう。黒帯がどんなに強いか見せてくれ。」とA君。
その頃、男子達は気配を察して、みんな残っていた。
中には、女子に声をかけるのもいて、女子達もほとんど見に来ていた。
「純が、本気でやるの?」「らしいよ。」何て声がした。

初めA君。私は対面した。A君は私より20センチも背が高い。
「どうやったら、あんなA君に勝てるの?」との声が聞こえた。

A君が私の右腕を取りに来た。私は一度右腕を下げてから、上に挙げ、A君の背が伸びたところで、
右手でそのまま首を挟むようにして、仰向けに倒した。
ほとんど瞬時の技なので、見ている人は、私とA君がすれ違っただけで、A君がバタンと後ろに倒れたように見えたと思う。
「わあ~。」という歓声が上がった。
「見えなかった、どうして?」などの声が聞こえた。

次、B君。私の手を取ってきたのを半身に返し、そのまま180度回して、関節を押さえ込んで、終了。

C君、D君は、腕の一振りで、決まり。

「うお~!」というすごい声が上がった。

やがて、強敵井上君。
さすが、技を知っていて、私の両手を絡め手で取りに来たので、それを逆手に取って、
井上君を、風車のように宙に回して、押さえ込み。

「うわあ~。」とみんながすごい拍手をした。
井上君が、
「いやー、これが黒帯か。もう俺達赤ちゃんだな。」と言った。
「純とやろうとしてたの、思い出してもぞっとするよ。」
とB君が言った。
「うん、もうすごい。」とA君。
「どうして、あれだけで投げられたのか、わかんねえ。」とC君。
「純、ありがとう。」とみんなに言われた。
「いえいえ。」と私は照れた。

なげられた5人も爽やかな顔をしていたのでよかった。
6人でマットを片付けていたら、
見ていた人たちも、みんなで手伝ってくれた。
「お、ありがとう。」と井上君。
するとみんなが声をそろえて言った。
「見ているだけじゃなくて、行動。」


<おわり>

ガリ勉と合気道(純 高校2年生 中編)

女装が出てこないのに、こんな長々書いちゃって、どうしましょう。
後一回、後編で終わります。読んでくださるとうれしいです。

==============================

次は、井上君だった。
井上君は、受身がとれるだろう。勝ってしまおうかと考えていた。

井上君は、「俺はいい。止めておく。」
そういって、席に戻った。

みんなが、胸をなで降ろす様子が見られた。

みんなは、一番つよい井上君がやったら、
私がどうなるかわからないので、井上君が辞退したのだと思ったのだろう。



私は、池田君以外のクラス全員に失望し、情けなくて涙を流した。

その私の涙を見て、初めて気がついたのか、多くの女子が寄ってきた。
「ごめんね。もっと早く止めればよかった。」とか口々に言っていた。
男子は、
「純、大丈夫か。早く止めなくて、ごめん。許してくれ。」
などと言っていた。

しかし、ぼくは、一切口を開く気になれなかった。

でも、今回は池田君が体を張って止めてくれた。それだけが、救いだった。



井上君の回りに、4人が来ていた。
「俺達やり過ぎたかなあ。」と口々に言った。
井上君は、それに答えず、
「ああ、俺は、恥かしくって、もう加納の顔見れねー。」
そう言って机に伏して、両腕で顔を隠した。



大川君はこの日、欠席だった。

誰も、外へ遊びに出なかった。
みんなは、教室に残りうつむいていた。

*   *   *

帰りの会になった。
クラスの先生は、男性で、若いけれど、凄く頭のいい人だった。私は好きだった。

先生が言った。
「加納君は、4人に投げられたんだよね。その間、どうして、みんなは、止めなかったの?」

P子「みんな、加納君がガリ勉なので、
   少し痛い目にあってもいいと思っていたんです。」

先生「で、P子さんは、見ていてどうでしたか。」
P子「一人目のD君になげられて、十分だと思いました
   だけど、そこで止めることができませんでした。」
先生「どうして。」
P子「誰も止めていなかったので、勇気が出ませんでした。」
先生「P子さんと同じように思っていた人、立ちなさい。」

池田君、ABCD井上君以外のほぼ全員が立った。
先生はみんなを座らせた。
先生
「なるほど。そういう訳ですか。
 じゃあ、みんながうつむいていたのは、早く止めるべきであったと反省していたのですね。」
Y男「そうです。止める勇気のなかった自分が情けなかったと思っていました。
  加納君が4回も投げられるようなことを許してしまいました。」
先生「よくわかりました。
 私はガリ勉が悪いなどと思っていません。夢に向かって、全力で勉強する姿は、むしろ美しいと思っています。ま、それは置いておきましょう。」



T子「池田君だけが、止めに入りました。」

先生「そう。それで、みんなは、そこで一緒に止めに入ったのですか?」

Y子「やめるように、言ったんです。でも、あの人たち、やめなかったんです。」

先生「私が聞いているのは、言葉ではなくて、止めに入ったのかということです。
 みんなで入れば、止まったでしょう。そういう行動に出た人は、誰もいなかったの?」

みんなは、うつむいていた。

先生「で、池田君はどうなりましたか?」

R男「A君に投げられて、机の角に背中をぶつけました。」

先生「その池田君を介抱したのはだれですか。」

みんなは、またシーンとした。

P子「加納君です。」

先生「それは、おかしい。加納君は、そのとき一番痛い思いをしていた人でしょう。その加納君に介抱させたのですか。他のみんなは、何をしていたのです。」

U子「だれも介抱にいきませんでした。」

先生「それは、信じ難いことです。小学生の低学年生でも、誰かが走って転んだら、『大丈夫?』といって、回りの子が集まってきますよ。そして、保健室につれていく。大人である君達はそれができなかったとでもいうのですか?信じられません。」

先生
「君達は、どうかしています。私が池田君であれば、机に背中をぶつけられた痛みより、誰も介抱さえしてくれなかったという心の痛みの方が、よほど悲しく心に残ります。みなさん、いかがですか。」

T男「誰もいかなかったので、つい見ていただけでした。反省してます。」

みんなは、しーんとなって、うつむいた。

先生はさらに言った。
「井上君は、なんのために、こんなことをしたのですか。」

井上君は、
「加納君がいつも勉強ばかりしているので、少し痛い目に合わせようと思いました。」
先生「で、痛い目に合わせてみてどうでしたか。」
井上「少しもうれしくはありませんでした。後悔しています。
   それに、加納君は、とほうもなく強かったんです。」

みんなは、なんのことかと、井上君を見つめた。

井上「加納君は、わざと負けてくれていました。
   加納君のD君、C君、B君との負けっぷりを見て、ぼくは、心臓が凍る思いでした。
   完璧な負け振りで、受身も完璧でした。こんなことできるのは、黒帯だと思いました。
   そのとき、池田君が止めに入ってくれました。
   ぼくは、命拾いをしたと思いました。
   でも、A君は、池田君を投げました。
   加納君は、池田君を介抱して、再び、やってきました。

   加納君は、怒りに燃えていました。
   ぼくは、次のA君を必死でとめました。しかし、A君はぼくを振り切って、加納君を投げにいきま   した。   
   でも、加納君は、心を抑えて、そのA君にも負けてくれました。」

先生「もし、加納君が、怒りにまかせて手加減もなくA君と戦っていたら、どうなっていましたか。」
井上「運が悪ければ…。」

井上君は、そこまで言って、言葉を詰まらせ、うつむいて涙を流した。


つづく

ガリ勉と合気道(純 高校2年生 前編)

合気道のエピソードを、3回くらいに分けて書きます。女装が全く出て来ないので、気が引けています。読んでくださるとうれしいです。
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高校2年の11月が過ぎようとしていた。
そのときの教室は、
大変恵まれた教室で、後ろが他の教室より広かった。
そこで、ちょっとした遊びができる。

クラスに井上君という男子がいて、
彼は背が高くて、ハンサムで、運動もよく出来た。
女の子から、とてもモテる男子だった。

彼は、合気道が出来た。
私とは違った道場へ通っていて、
段位は3級だった。

3級というのはかなり強い。
武道の心得のない人なら、簡単に投げられるか、
抑え込まれてしまう。
彼は、クラスの友達をポンポン投げたり、
押さえ込んだりしていた。

2学期になってから、クラスのそのスペースで、
井上君を中心に、合気道が流行った。
少しでも自由時間があると、メンバーは、
井上君から教わった技を磨いていた。
彼らはみんな体格がよく、それでなくても強そうな人たちだった。

私の合気道はその頃、初段を終え、
2段に向けて練習をしていた。
相手が真剣を持っていて、
その真剣をもぎ取り投げるという、
「長刀取り」が出来れば2段に行けた。
私はクラスのみんなに、武道をやっていることを内緒にしていたので、
彼らが練習しているのを見ないようにして、
自分の勉強をガリガリやっていた。

私のそういうカリガリ勉強をしている姿は、クラスに歓迎されていないようだった。
「あいつはガリ勉だ。」ということで、多少蔑まれていた。



それが、あるとき、純は合気道をやっているといううわさが流れた。
また同じクラスになった大川君あたりから出た情報か。
昼食休みの20分の休憩のとき、
井上君がやってきた。
「純、合気道やってるって本当か。」という。
「うん。」と私は言った。(聞かれて、隠すほどではないと思った。)
「今、やろうぜ。そんな、勉強ばっかガツガツやんないでさ。」と井上君。
「だめだよ。下が畳みかマットでないとできない。」と私は言った。
「大丈夫だよ。俺達、いつも床の上でやってるんだから。」井上君はそう言う。

「おーい、純が合気道やるぞ。」と誰かが声を上げた。
「ほんと?」ということで、クラスのみんなは、外に行かず、教室に残った。

井上君の仲間が来て、私を無理矢理、教室の後ろへ連れて行った。
私は勝とうなんていう気は、毛頭なかった。
さっさと投げられて、終わりにしたかった。

相手は、A、B、C、D君と井上君の5人だ。
みんな、175センチ以上の、筋肉タイプだった。
「じゃあ、初めは俺からだ。」とD君が言って、私にかかってきた。
私はD君の技のまま投げられ、床に背中をついた。
片手で、床をたたいて受身をとったが,木の床は固い。
私は、指をピアノを弾くようにまげて、クッションにして耐えていた。

私は一方的に投げられている。
だれも、止めようとしない。
私はガリ勉だから、これは懲らしめなのか。

次のC君が私を起こし、技をかけてきた。
その通りに動き、技を受けた。
「おお、俺の技、通じるじゃん。」とC君は、喜んだ。
私はもちろん受身をとったが、下が床ではやっぱり痛い。

B君も同じ。
B君は、勝った喜びにガッツポーズを取っていた。

クラスが、だんだんシーンとなってきた。
(誰も止めてくれない。これが、ガリ勉に対するみんなの気持ちなのか。)

そのとき、前の黒板のところから、池田君が来た。
「やめろ、みんな加納君に何してるんだ。加納君が何悪い事したんだ。」
池田君は、そう言って私の前で、手を広げて守ってくれた。

私はうれしかった。池田君は多分弱い。その池田君が強い相手に対し守ってくれている。

「おい、池田。かっこつけんじゃねーよ。加納はガリ勉だから、このくらいいいんだよ。
 俺はまだ試合してねーんだよ。」
とAが言った。

「だって、加納君は無抵抗じゃないか。ひどい、ひどすぎるよ。」
池田君は言ってくれた。池田君は、さらにみんなに言った。
「みんな、何見てんだよ。どうして止めないんだよ。ひどいと思わないのかよ。」
池田君がそう言っても、みんなは、まだ黙っていた。

やがて、Aが来て、池田君に、「弱いくせに、お前は引っ込んでろよ。」
と池田君を投げ飛ばした。
井上君が、「おい、やめろ!」と言ったが遅かった。
受身を知らない池田君は、教室の机の角に、背中をもろにぶつけて、動けなくなった。
私は、思わずAをにらみつけた。そして、
「大丈夫!」と池田君のそばへ行った。
池田君は、うなずいたが、痛みに声を出せずにいた。

そのとき、ある女子が、
「そうよ、やめなさいよ。もう十分じゃない。」と言った。
女子の数人が、
「もう、やめて。3人に投げられて、もう十分じゃない。」
男子の数名も、
「もういいよ。やめろよ。」と言った。

(今ごろ言っても遅いんだけどなあ。)私は心の中でぽつんと言った。

しかし、だれも池田君を介抱しようとしない。

私は、池田君を肩に担いで、席まで運んだ。

再び後ろスペースにもどり立った。
Aに対する怒りが心頭に発していた。
井上君が、「A、やめろ!」と必死に止めていた。
しかし、井上君の腕をはらって、A君はやって来た。
私は、かろうじて、自分を抑えた。(さもなくば、A君は、救急車だ。)
Aが来て、私を投げ飛ばした。
ガッツポーズをして、Aが喜んでいた。

次は井上君だ。


つづく

忘我の境地 後編

小百合の話を聞いて、Oさんは、あることを心に思ったようだった。
「ちょっと、みんなでやってみましょう。」とOさん。
「何をですか。」と私たち。
「めったに見られないものよ。」とOさんは言った。

30分くらい絵里を放置した。
絵里が大勢に見られた方がいいらしいので、
みんなで、部屋に入って行った。

行ったら、絵里は既にうっとりとした表情になっていて、
これは、すぐにイってしまいそうにも思われた。
Oさんの采配で、
私は、絵里の体をとにかく触ることになった。
小百合は、絵里の唇を中心に、キ・スをしつづける。
そして、Oさんは、絵里の耳元で、
絵里の願望に近いことを、ずっと語りかけるという役目で、
絵里を責め続けることにした。

いざ開始。
Oさんは、絵里の耳にささやきかけていた。
「あなたは、いま新宿駅の前にいるのよ。
 突然、黒い服の男が5人来て、
 公衆の面前なのに、あなたを立ったまま抑える。
 一人があなたのスカートをまくって、あなたのショーツを降ろすの。
 あなたには、少女にあらざるものがある。
 それが、大衆の面前にさらされるの。
 恥かしいわ。火がでるほとはずかしいわよね。
 見物人が、笑っているわ。
 だのにあなたのあそこは、逆におおきくなってしまう。
 なんてことでしょう。もっと恥かしいわね。」
Oさんは、こんな話を次から次としていく。

絵里はぼわっとした意識の中で、
いや、やめて、聞かさないで…と口走っていた。

私は、ただ、体感・マッサージ。あそこだけは、絶対さわらないようにする。
足の指先から、太もも、お腹、背中。
手。指。

小百合は、キ・ス攻め。

そうしているうち、絵里に変化が訪れた。
「ああ…。」と陶・酔の声を上げ、上を向いて、体を細かく痙・攣させている。
瞳が定まっていない。開いているが、どこも見ていない。

Oさんは、急いで絵里のロープを解いて、
絵里の手を上でしばり、上半身をフリーにした。

Oさんは言った。
「あたしの年で見るのは、これでたった2回目よ。
 もしかしてと思ってやってみたんだけど、絵里は今『忘我の境地』に入ったわ。」

「何ですか、それ。」と小百合と私は聞いた。
「言わば、夢の国なんだけど、今、彼女の全身が性・感・体になっているのよ。」

「ちょっと、耳を触ってごらんなさい。」とOさんに言われて、
小百合が耳を触った。
すると、絵里が激しく痙攣し、反応した。同時に、小百合もびりびりしたという。

わあ、すごいと思った。

私は鼻の頭を触って見た。
「やああああん。」と絵里が反応した。
あ、ほんとだと思った。触った指に、振動を感じた。

Oさんは、上に縛られている絵里の、脇の下を、ずーとなでた。
絵里は、あああああっと体をのけぞらせて、反応した。

「ほんとだ。体中が性感体だなんて。どうして、こんなになれるんですか。」と私は聞いた。

「ふつう訓練しないと、こんなになれないんだけど、絵里みたいに、特別に想像力のある子は、
自分でやり方をあみだして、できることもあるみたい。」とOさんは、言った。
「残念なことに、今の絵里には、今されたこと何も覚えてないと思う。」Oさん。
「じゃあ、何やってもむだですか?」と私。
「でも、満足感は残っているわ。」Oさん。
「どうすれば、この境地から抜け出せるの?」と小百合。
「ほっとけば、もどるわ。そのときこの子は、夢のような満足で目覚めるの。」
「いっちゃわなくても?」私。
「イかせてあげて。」とOさん。
「どうやって、誰が?」と私は聞いた。
「小百合が、口でイかせてあげて。でも耐えられるかな?」とOさんは言った。
「私じゃだめ?」と私。
「小百合の方が上手よ。でも、見ているだけでも、純、いっちゃうわよ。」とOさん。

小百合が、絵里のスカートをめくった。ショーツはすでに取ってある。
絵里のあそこは、すでに大きくなっていた。
小百合は、恐る恐るそれを口にした。
ああああああ…という絵里の悲鳴がした。
小百合が、何かためらっている。
「Oさん、今口をつけたら、あたしまで、すごい快感がしちゃった。」と小百合。
「これが、『忘我の境地』のすばらしいとこなの。する方も同じに感じちゃう。」とOさん。
「Oさん、あたしにゴムを貸してください。
 しながら、いってしまいそう。」と小百合

小百合は万全を整えて、絵里のオーラルにいどんだ。
絵里の絶叫が続いた。
小百合が汗をかいている。苦しそうにしている。
その内、口を離し、小百合は、
「純、お願い、あたしをすぐにいかせて。もう我慢できない。」と言った。

「うん。」私はそう言って、小百合を後ろから抱いて、スカートの中に手を入れ、
小百合の熱くなったものを、マッサージしてあげた。
小百合は、ぴくんぴくんと反応して、
「ああ、お姉様。」と可愛い声を出してイってしまった。

続きは私だった。
私は口は下手なので、手ですることにした。
絵里の熱いところを触って驚いた。
激しい快感につつまれた。
絵里が、また激しい声を上げる。
そうだろうな。耳や鼻でも感じるんだもの。
ここは特別にちがいない。

私はそっとマッサージした。
ああ、伝わってくる。すごい、と思った。
でも、がんばった。
絵里の絶叫、体の痙攣、全てを受け止めながら、私はがんばった。
やがて、絵里の断末魔のような叫び声がして、絵里は果てて行った。

私は限界にきていた。
「小百合、お願い、すぐに私をいかせて。」と助けを求めた。
小百合は、私のスカートを上げて、ショーツを下ろし、口を使って、いかせてくれた。
「ありがとう、小百合。」私はぐったりとして言った。

Oさんが、絵里のゴムをとって、きれいにしてあげていた。
ショーツを履かせ、手首のロープをとって、きちんと寝かせ、毛布をかけた。



絵里が寝ているあいだに、私たちは隣の部屋に行った。
Oさんがジュースを出してくれた。
「Oさん、『忘我の境地』がこんなにすごいなんて、びっくりしました。」と私は言った。
「値打ちものでしょ。私が70歳で、今日でたった2度目なのよ。
 めったにお目にかかれるものじゃないわ。」とOさんは言った。
「快感が、こっちに伝わってくるのが、不思議です。」と小百合が言った。
「不思議よねえ。あたしも未だに謎がわからないわ。」とOさん。
「あたし、今日みたいなすごいのじゃなくていい。
 ふつうに絵里といちゃいちゃしたい。キスしたりして。」と私は言った。
「あたしも。絵里みたいな可愛い子となら、S&Mじゃなくていい。」と小百合も言った。



Oさんが、テレビを見に、奥の部屋へ行ってしまった。
のこった小百合と私は多分同じことを考えていた。
(普通のセッ・クスがしたい。)
小百合が、「お姉様。」と甘い声で私を呼んだ。
「うん。」私はそう言って、小百合の肩に手をかけ、
厚いキスをした。
そのあと、抱き合い、小さなキス、厚いキスをたくさんしながら、
互いのスカートの中を撫であった。
それだけで、十分興奮してくる。
「小百合が好き。」
「あたしもお姉様が好き。」
そんな平凡な言葉をかわしながら、
私たちは、ショーツを脱ぎ去った。
お互いの部分を撫でながら、
だんだん息を荒くして、
ゴムの代わりにティシュを使って、二人とも果てていった。(今日2度目。)
それで、十分だと思った。

二人でそっと絵里のところへ行った。
絵里は、眠り姫のように、可愛い寝顔できちんと寝ていた。
「絵里は、今日、想像の中で、自分の願望を全部叶えたと思わない?」と私は、小百合に聞いた。
「うん、思う。あの境地にいるとき、全部叶えた。」と小百合は言った。
「今度は、ふつうのセッ・クス教えてあげよう。」と私。
「そうですね。『ふつう』は永遠です。」と小百合が笑った。


<おわり>

忘我の境地 前編

小百合と初めてプレイができた日に、
2週間後に女装サロンに行こうと示し合わせた。

その2週間後、午後の1時にサロンに入ってみると、
もう小百合は女装を終えていて、
そのとなりに、思いもしない新人が来ていた。
もうびっくり。
私の中では、リナに匹敵する可愛い子だ。
タイプが違う。
西洋顔のリナに対して、
その子は、日本人形のようで、切れ長の目。
すこぶる知的な顔立ちだった。

私が行ったときには、すでに女装は済んでいて、
夏用のセーラー服を着ていた。
背中まで伸びた真っ直ぐな黒髪は、自前のようだった。
背は多分私より少し低い。
名前は、絵里といった。

私は自分も急いで変身し、
ワンピースに、ヘアバンドといういつもの服装になった。

絵里は、ヘアバンドが似合うと思ったので、
私のを貸して、彼女に着けてみた。
そしたら、また一段と可愛らしさが増した。

小百合には、前の私の乙女チックなウィッグを貸した。

絵里を見て、今すぐにも抱きしめたくなっていた。
小百合がウィッグを着けてきたとき、
初めのチャンスは、小百合に譲ろうと思った。
小百合の方が年が近そうで、お似合いだと思った。

『小百合、絵里といっしょに、セックス部屋に行って、
可愛がってあげて。それから、絵里の願望を聞き出して。』
そう言った。
小百合は、はい、と返事をして、絵里の手を引いて
部屋に入って行った。

Oさんが、
「あら、純は、小百合にゆずるの?」と言った。
「もう、断腸の思いです。」と私は答えた。

気になって仕方がなかった。

「Oさん。ちょっとのぞいてもいいかしら。」と聞いた。
「少しくらいいいわよ。」とOさんが言ってくれたので、
襖を5センチくらい開けてのぞいてみた。
いつも受身で大人しかった小百合が、
絵里の上に乗って、熱烈なキスをしていた。
頬に、顎に、鼻に、耳に、セーラーの開いた胸に。
もちろん唇にも。
そして、手を絵里のセーラーのスカートの中に忍ばせていた。
股をなでている。
絵里の「ああ…。」という声がかすかにした。

もう、たまらない。
美少女二人が、もつれ合っている。

「ああ、Oさん、あたしたまらない。完全に興奮しちゃった。
 どうしよう。」とOさんに聞いた。
「一人で処理してきなさいよ。」と言われた。
そんな、もったいない。あんな可愛い子を近くにしながら。

また覗きにいった。
すると、小百合が絵里を起こして、
胸をロープで巻いている。
小百合はMの子だから、きっと私より上手。
小百合は、絵里の上半身を後ろ手に縛って、身動きできないようにした。

それから、私が小百合にしたように、
スカートはそのままに、絵里のショーツだけ脱がせた。
そのまま、絵里の背に回って、絵里と何か話している。

それから、小百合は、ドレッサーの鏡の部分を抜いて、
それを運んで、絵里に自分の姿を見せていた。
(小百合、やるなあ、と思った。)
絵里スカートをまくって、絵里の恥かしいところも見せえている。
絵里がいやいやをしている。
顔を背ける絵里に、「ちゃんと見なさい!」と言っている。

小百合は鏡をもとにもどして、絵里を残して、外に出てきた。
絵里を放置するようだ。

「小百合、絵里の願望聞いてきた?」と私は聞いた。Oさんも聞いていた。
「あの子、あたしよりM度が強いです。強いなんてもんじゃないです。」と小百合はいう。
「今の放置プレイだけで、イっちゃえるって。」とさらに小百合。
「それで、大勢の人が見ている前で、縛られて、丘されるのが最高だって。
 例えば、人が見てる公園の真ん中で丘されるのが理想だって。
 自分のはずかしいところを、大勢の人に見られるのがいいって。
 放置プレイなら、自分のそういう姿を想像して、
 一人でも、イけるって。もう、すごいです。」

聞いた私は、あれまあと、驚いてしまった。
Oさんは、小百合にゴムを渡して、
「このままあの子、いってしまうかもしれないから、
 これ、念のためかぶせてきて。」
と小百合に言った。

そんなのがありなんだ…と私は認識を改めた。
小百合の言う密室でなら、まあ分かるけど、公園でなんて。
あんなに美少女なのに、そんな願望を持っているなんて。
わからないもんだなあと思った。

小百合はかえって来て、
「あ、そうだ、あの子、鏡の前で、誰かに、
 自分の顔を変な顔にゆがめられるのも好きだって言ってました。
 あたし、そんなの絶対いやですけど。」と言った。

私は、ただ呆然とした。

田村笑子さんのこと(小学4年生 後編)

「女の子に見える?」と私は聞いた。
田村さんは、首を縦に振った。まだ笑ってる。
「じゃあ、公園に行こう。」
私は田村さんの手を取った。

公園に行く途中、田村さんに話しかけた。
「ぼくね、昨日、田村さんの夢見ちゃった。
 夢で見た人を、ぼくは、ぜったい好きになっちゃうの。
 だから、こうして田村さんといると、ぼくは幸せ。
 まず、女の子同士として、お友達になってくれる?」と言った。

田村さんは、首を縦に振った。

「笑子って呼んでいい?」と聞いた。
田村さんはうなずいた。

二人で、砂場で山を作り、トンネルを作り、
両方から、互いに手を突っ込んで、指が触れ合ったら、握手をした。

それから、ブランコやシーソ、ジャングルジムなどで遊んだ。
外からみたら、二人の女の子が仲良く遊んでいるように見えたと思う。

田村さんは、しゃべらないけれど、笑ったり、うなずいてくれるので、
遊ぶのになんの不自由もなかった。



こうして、毎日毎日あそんで、10日くらいのときだった。
私は女の子の格好でその日も、田村さんの家の下にいって、田村さんを呼んだ。
すると、田村さんといっしょに、お父さんとお母さんも降りて来て、
私に笑顔を見せてくれる。
「あなたが、純ちゃんかい。」とお父さんは言い、
「ありがとうね。毎日笑子と遊んでくれて。
 笑子はお友達ができたことが、すごくうれしいらしくて、
 家で、純ちゃんの話ばかりする。
 笑子は、外ではしゃべらないけど、家ではよくしゃべるからね。
 純ちゃんが、どんなにいい子か、ようくわかってる。」と言った。

「いえ、笑子ちゃんに遊んでもらってるの、あたしのほうです。
 はじめに遊んでくれるようにたのんだら、いいってうなずいてくれました。
 笑子ちゃんと遊んでもらって、とってもうれしいです。」と私は言った。
「ほんとに、やさしい顔をしているね。いい子なんだねえ。」
とお母さんは言った。

田村さんのご両親からほめてもらって、とってもうれしかった。



それは、公園のコンクリート上で、ロウセキで絵を描いているときだった。

私の後ろから、ボールが飛んできたらしい。
「純、あぶない!」
私は、はっと後ろを向き、なんとかボールをよけた。

私は、田村さんを見た。
田村さんは、なんか気まずそうな顔をしていた。
「今、教えてくれたの、笑子だよね。」
「うん。」
「笑子、ありがとう教えてくれて…。」
田村さんに近づいた。
「うれしい。しゃべってくれて。」
私の胸の中に、熱いものが込上げてきた。
私は、田村さんをそっと抱いた。
田村さんは、私の胸に頬を寄せて、
「しゃべっちゃった。純があぶなかったから。」と言った。
「うれしい。笑子が、ぼくのためにしゃべってくれた。」
私は思いきり笑子を抱きしめた。うれしくて涙がこぼれた。

私は言った。
「これから、ぼくといるときは、もっとしゃべって。」
「うん。純となら、話せる。」と田村さんは言った。



それから、公園のいろんな遊具で遊んだ。
田村さんは、キャッキャッと喜んで、たくさんしゃべった。
私は田村さんの声が聞こえてうれしくてならなかった。


*    *    *

それから数日後、ある二人が私たちの後をつけているとは、わからなかった。

私が、女の子の格好で、田村さんを呼び、二人で公園に行くのを、つけていた二人。

田村さんと私がシーソーで遊んでいるときだった。

「わあ、純、ずるいぞー。」
「私たちに内緒で。」
とやって来たのは、平さんと、島田さんだった。二人は笑っていた。

私は、とっさにシーソーを降りて、田村さんのところへかばうように言った。
「笑子。この人たちは、いい人たちだけど、好き?」
と聞いた。
「知ってる。平さんも、島田さんもやさしいから好き。」
「じゃあ、いっしょに友達になっちゃう?」と私は言った。
「うん。友達がいっぺんに増えてうれしい。家帰ったら自慢しちゃう。」
「わあ~!」と平さんと、島田さんは言って、
田村さんのところへ行って、抱きあって喜んだ。

それからは、4人で遊んだ。
田村さんを独り占めできなかったけど、
田村さんにお友達が増える方が、もっとうれしかった。

4人でくたくたになるまで遊んで、
田村さんの家の下まで来た。
田村さんが、
「お父さん、お母さん。」と呼んだ。
お父さんとお母さんが降りてきた。
「お父さん、お母さん。平さんと島田さん。
 二人ともすごくいい人。
 今日からお友達になってくれるの。」
平さんと、島田さんは、あいさつをした。

お母さんは、そのとき、田村さんを見ていた。
「笑子…、お友達の前でも、話せるようになったの?」と聞いた。
「うん。あたし、もう大丈夫。」と笑子さん。

お母さんの目に涙が浮かんだ。
「この子は、1年生のときから、お友達が一人もいなかったの。
 それなのに、純さんはじめ、こんなに一度にお友達ができたなんて。
 おまけに、しゃべれるようにもなったみたいで、
 こんなにうれしいことはありません。
 よろしくお願いします。笑子、よかったね。」
とお母さんが、田村さんを抱いて泣いた。

お父さんも目を拭いていた。

島田さんが言った。
「私も長い間、友達がいませんでした。こここにいる平さんが、初めてのお友達でした。
 だから、笑子さんとみんなで、きっと仲良くやっていけます。」
平さんが、
「不思議なことに、私たちがお友達になれたのは、いつも純くんが関係しているんです。
 純くんって、キューピッドなんですよ。」と笑って言った。
私はそばで、うれしくてはねていた。

おかあさんが、
「純くんって、純ちゃんは女の子でしょう。」
「ちがうんですよ。」と平さんは笑いながら言った。

そのあと、何が何だかわからなくなり、笑い声だけが残った。


<おわり>

============================

<エピソード>

そのつぎの日、国語の時間。
(田村さんは、おしゃべりデビューをまだしていなかった。)
私たちの列が、一番後ろの人から立って、音読をすることになった。
私のところまで回って来て、私はなんとか1ページを呼んだ。
次は、田村さんだ。

女の松下先生は、田村さんが、口を開かなくても、
必ず、名を呼んで一応は指名していた。
その日も同じように、
「田村笑子さん。」と呼んだ。
「はい。」と返事をして、田村さんは立った。
先生や、クラス中の子が驚いた。
田村さんは、私が読んだ次のページから、
一言もつっかえず、とっても上手に読んだ。

その田村さんの音読を聞きながら、
松下先生は、田村さんを見て、涙を頬に流していた。
田村さんが読み終わったとき、
先生は、田村さんに寄って、
膝立ちになって、田村さんを抱きしめた。
「しゃべれるようになったのね。よかった…。」

なぜか、クラスの腕白たちが、一番に立ち上がって、拍手を送った。
「田村、えらいぞー。」などと叫んだ。
その後、クラス中の子が拍手をした。
田村さんは、ときどき後ろを見ながら、恥かしそうにうつむいていた。

*     *     *

その後、平さん、島田さん、田村さんの3人は大の仲良しとなり、これでもう、クラスには淋しい人はいなくなりました。3人は、6年生の卒業後も仲良しでした。

平さんのお母さんは、島田さんにしたように、田村さんの腕や、顔のケアもしてくれ、田村さんは、日に日に、きれいになりました。
また、平さんのお母さんと私の母は、平さんや私の姉の小さくなった服や靴を持って、いっしょに、田村さんの家を訪ねました。(あの頃は、小さくなった服や靴を捨てるということは、まずありませんでした。)

お父さんや、お母さん達も、みんな仲よしになりました。

めでたし、めでたし。

田村笑子さんのこと(小学4年生 前編)

小学校4年のとき、田村笑子(えみこ)さんという女の子がいた。
田村さんの家はとても貧しかった。
着ているものは、とても粗末で、汚れて見えた。
顔や手足も、汚れているように見えた。
だけど、この田村さんに嫌がらせを言ったり、いじめる子はいなかった。

それは、とても不思議なことだった。
島田さんには、あんなに嫌がらせをしていたのに。
きっと田村さんは、いじめるには、余りにも可哀相な感じがしたからだと思う。

背は女子の前から2番目で、とても小柄だった。
そして、学校では、一言もしゃべらない子だった。



当時、社会科の勉強で、班での発表というのをよくやった。
これは、学校が終わってから、班のみんなが順番に、みんなの家を回る。
そこで、作業をする。
初めはみんなから10円ずつ集める。
それで、模造紙と黒のマジックインクを買う。

この順番に家を回るというのは、お金持ちの子にはよかったが、
家が貧しい子には、さぞ辛いことだったと思う。
集まった子には、大抵その家の人から、おやつがもらえる。
ケーキだったり、クッキーだったり。
この一つとっても、家に自信のない子には、つらいものがあった。



七月になり、この社会の発表があった。私たちの班6人の中に田村さんがいた。
田村さんの家が貧しいことはみんなが知っていた。
初めの家の子の家に集まったとき、みんなが心配した。
『田村さんにとって、10円でも大変なんじゃないか。』と。
田村さんはなかなか来なかった。
田村さんだけ、10円はいらないというのは、かえって失礼な気がする。
みんなそのくらいわかっていた。
私は、どうなるのかなと心配でたまらまかった。
そのうち、30分くらい遅れて田村さんが来た。
田村さんは、広告用紙の端切れに包んだものを、みんなに出した。
みんなが中を開けると、そこに5円玉1枚に1年玉5枚があった。

田村さんはきっと、自分が1円ずつ貯めたお金を貯金箱から下ろしてきたんだと思った。
きっとこの日のために、10円をどうしようかとずっと悩んできたに違いない。
そう思うと、私は不覚にも涙が出てきた。
涙を見せるなんて、田村さんに失礼だ。
懸命に我慢したけれど、どうにもならなくて、
私は、みんなの座を外して、靴を履いて外に出た。
そして、どこかの家の脇に隠れて、泣いた。いくらでも涙がでてきた。

やっとみんなのところへもどって、お腹がいたかったんだと言った。
お金を出して田村さんは、幾分安心した顔をしていた。
それに、私は救われた。



作業をする家が次は田村さんの家だというとき、
みんなは悩んだ。
気の毒すぎるのではないかと。
でも、だからといって回らないことも失礼だ。
班のメンバー達は、みんなそういうことがよくわかる人たちだった。

みんなが、田村さんに聞いた。
「今度田村さんの家だけど、いい?つごうがわるかったら、べつにいいよ。」
田村さんは、うなずいて、「いい。」の意味の返事をした。



田村さんの家は、私の家の近くだった。(初めて知った。)
あるベーカリーの二階で、入ってみると、とても天井が低くかった。
家全体が細長く暗かった。
それでも私たちは、いちばん奥の大きな窓のそばを使わせてもたった。
私たちはそこで、作業をした。
やがて、田村さんのお母さんが、お菓子と飲み物を出してくれた。
大変だったろうなと内心思った。
でも、みんなで、おいしくいただいた。
ご馳走様でしたと、みんなで、きちんとお礼を言った。
田村さんは、少しうれしそうだった。

社会科の発表も無事終わった。
先生は、こういうのもうやめて欲しいと思った。



そのころの私には不思議な法則があった。
夢の中にある女の子が出てくると、
明くる日、学校で、その女の子が特別に見えるという…。
つまりその子を好きになってしまうのだ。

そして、発表が終わったある日、田村笑子さんの夢を見た。
はっと起きて見ると、胸の中が、ぽっぽとする。
学校へ行ってみると、やっぱり田村さんが特別に見える。
同じ班で、前にいる田村さんに、私は恋をした。

お昼休み、みんなが外に行っても、田村さんは教室の中にいた。
私は、絶好のチャンスと思って話しかけた。
「田村さん。ぼくの家、田村さんの近くなんだ。今日、ぼくと遊んでくれない?」
と私は胸をドキドキさせながら、言った。
田村さんは、後ろを向いて、首を縦に振ってくれた。
「じゃあ、今日、3時に行くね。」



やったーと思った。
私には1つ作戦があった。
女の子の格好をして行く。
ひょっとしたら、それを見て、田村さんが笑ってくれるかもしれない。
田村さんの笑顔が見たい。

私は母にせっついて、姉の昔の洋服を出してくれるように言った。
「何に使うの。」と母がいうので、
「ぼくが着て、ある女の子を驚かせたいの。」と言った。
母は協力してくれた。
そして、姉のワンピースを3着だしてくれた。
一つ、赤いのを着てみた。
ぴったり!
私はそれを着た。
「靴ないよね。」と母に聞いたら、とってあるわよ、という。
そこで、赤い靴も出してもらった。
「あ、純、待って。後ろのりぼん。」
母はそう私を呼びとめて、ウエストのリボンをむすんでくれた。
「おかしな子ねえ。」と母は言っていた。



もうすぐ3時。
私は、平さんのところでやったように、耳を出してヘアスタイルを整えた。
私は田村さんの家の、二階に上がる階段のところで、
「たーむーらーさーん。」と大きな声で言った。
ドアのところから、田村さんの顔が見えた。
田村さんが、降りてくる。

田村さんが私を見た。驚いている。私は心臓がどきどきした。
「あのう、女の子同士の方がいいと思って、女の子のかっこしてきたんだけど。」
そう言った。
田村さんは、私の目を見て、
両手の指で口を押さえて、今にも笑いそうな目を私に向けた。
そして、「くすっ。」と笑った。
それから、「くすくすっ。」と笑い、「うふふふふ。」と笑った。
(やった!田村さんの笑顔を見た。かわいい!私はうれしかった。)

つづく

池田君の頼み 後編


池田君のベッドに二人並んで座った。
「池田君のこと、何て呼べばいい?」と私は聞いた。
「池田君でいい。ぼく、加納君のこと、美咲さんって呼んでいい?」
「いいよ。」と言いかけ、「女言葉使おうか?」と私は言った。
「うん。使って。」
「いいわよ。池田君。」
「わあ、今、心臓がドキンとした。加納君の声かわいいんだもの。」と池田君は言った。
「ありがとう。」と私は言った。

「美咲さん。ちょっと抱いていい。」
「いいわ。」
池田君は、私の胸の下あたりに、そっと腕を回した。
そして、恐る恐るそっと抱いた。
その手と腕が震えているのがわかった。

「いい匂いがする。」と池田君。
「池田君に会うためにシャンプーしてきたの。」
「ほんと。ぼく、気絶しそう。」と池田君。
「池田君のこと好きだもの。」

「池田君。」と私は言って、「キスして。」と言った。
池田君の喉が、ごくりと鳴るのが聞こえた。
「いいの?」と聞く。
「ええ。」私は目を閉じた。
池田君の唇が、かすかに触れた。
再び、強く押し付けてくる唇を感じた。
「美咲さん、好きだ。好きだよ。」
池田君は、何度もそう言って、唇を重ねてきた。
「池田君。あたしも。池田君が好き。」私はそう言った。
池田君は、私の体にむしゃぶりついて、
首や前に空いた胸にキスをしてきた。
池田君は、荒い息をしていた。



私は、池田君に背を向け、
「脱がして。」そう言った。
「う、うん。」
池田君は、私の背中のファスナーを降ろした。
私は、立って、ワンピースの袖を抜いて、下着姿になった。
「わあ、たまらない。ぼく、女の子の下着姿、まともに見たことない。」池田君は言った。
「あたしも、男の子の前で下着姿になったことないわ。」
と私は言って、ベッドの毛布に入った。

「池田君も裸になって来て。」と言った。
「う、うん。」
池田君は、パンツ一つになって、毛布に入って来た。
池田君の心臓の音が聞こえるようだった。
私もすっかり美咲さんになった気持ちで、胸が高鳴っていた。

毛布の中で、しばらくお見合いをした。
私は、池田君の髪をなで、頬をなで、目や鼻にキスをして、
心を込めて、唇を重ねた。

「ああ…。」と言って、池田君は、私の胸に頬を当ててきた。
池田君は、泣いているようでもあった。
「美咲さん。ぼくは、君が好きだ。ぼくは、今幸せだ。ああ…。」

私は、池田君の頭を胸に抱いた。
そして、ぎゅーと抱きしめた。

「美咲さんは、やわらかい。こんなにやわらかいなんて知らなかった。」
池田君は言った。
「池田君。あたしのこと好きにしていいわ。」私は言った。

「うん。」と答え、池田君は、私にキスをし、上から私を抱きしめてきた。
「美咲さん。美咲さん…。」と彼は名を呼びながら、
私の胸や、肢。そして、スリップの中に手を入れて、お腹や背をなで回した。

池田君の息が荒くなり、あそこの部分が限界に来ていることを感じた。
私はそばにあったタオルを手に取り、それをお腹に敷いた。
「池田君。パンツを抜いで、あれをタオルの上に乗せて。」と言った。
池田君は言う通りにした。
池田君の興奮が手に取るようにわかった。

私は、こんなにも愛されている女の子になっていることに感激し、私にも限界が来そうだった。

池田君が私の上に乗り、体を動かしている。
私は、たまらずに、声を上げてしまう。
「池田君、あたしも池田君が好き。大好き。もっと強く抱いて。」そう言った。
「ああ、美咲さん、美咲さん、好きだ、好きだよ…。」
と言いながら、池田君は、うっと声を上げ、タオルの上に、あるものを出してしまったようだった。
そのまま、池田君は、ぐったりと、私の上に身を乗せた。

私の部分も燃えていたけれど、そのまま耐えて、池田君の体をそっと抱いた。

池田君は、やがて起き上がり、あそこを拭き取ると、私の横に、横たわった。

私は興奮してしまっていたけど、がまんした。



ベッドの中で、
「加納君。ありがとう。ぼく完全に美咲さんといる気持ちになってた。」と池田君は言った。
「じゃあ、よかった。池田君、ステキだったよ。」と私は言った。
「でも、ぼく、これで加納君自身が好きになっちゃった。美咲さんと同じくらいに。
 加納君は、美咲さんと同じ位美人なんだもん。」と池田君は笑った。
「うれしい言葉だけど、ぼく一応女の子好きだから。」と私。
「一回だけって約束だったよね。」
「うん。」
「残念だなあ。でも、ぼくあることが吹っ切れた気がする。」池田君がそう言った。
「池田君は、やさしいし、心がきれいだ。
 池田君のことが好きって女の子に、そのうちきっと出会えるよ。」私は言った。
「そうだね。ぼく、もう、もてようとする努力を止める。もっと自然体でいく。
 そして、自分の好きなことに打ち込む。そうしていたら、いつかは、誰かに出会えるよね。」
「その通りだよ。」と私は言った。

「ありがとう。加納君はガリガリ勉強ばっかりやってる人だと思ってたけど、
 違うね。いざとなると、こんなにまでして、人を助けてくれる。
 今日の日のことは忘れない。ありがとう、加納君。」と池田君は言った。



男の服にもどり、池田君の家を後にした。
池田君は、ずっと見送ってくれた。

通りを曲がって一人になったとき、
ベッドシーンがよみがえってきた。
『ああ、早く帰って、ぼくも…。』
私は、帰る足を速めた。

池田君のたのみ 前編

高校2年の秋だった。
クラスに池田君という生徒がいて、
彼は、女の子にもてなかった。

背は、私くらいに低くて、顔が大きい。
ハンサムとは、言えなかった。
しかし、彼はもてることに一生懸命だった。
美咲さんというクラス1のマドンナが好きで、
少しでも、彼女に近づこうとしていた。

髪をいつも丹念にとかしてきて、
歌が上手だったので、
流行の歌を、美咲さんが近くにいるときには、
いつも口ずさんでいた。

でも、美咲さんは、
全く彼に振り向かなかった。



休み時間、私は、いつもガリガリ勉強していた。
1年からのガリ勉が身についてしまい、
外で、遊ぶことをしなかった。

私がいつものようにガリガリやっていると、
池田君がやってきた。
「加納君。お願いがあるんだけど、ここじゃ言いにくいんだ。」
と言う。
「いいよ、どこならいいの。」と私は答えた。
「校舎裏の誰も来ないところへ来てくれない。」と言う。



私は、OKして、校舎裏へ行った。
池田君は、
「ぼくが、女の子にもてないこと、君知ってるよね。」と言う。
「知らないよ、そんなこと。」と私は言った。
「そうなんだ。ぼくの中に女の子にもてる要素なんてないんだ。」
「そんなこと、ないと思うけど。」
「ぼくは、女の子と手を握ったこともない。
 フォークダンスのときは、別だけど。」池田君。

池田君はさらに言った。
「加納君にこれから言うお願いをして、
 君がぼくに怒ったりすると、
 ぼくは、君に死ぬほど謝らなくちゃいけない。」
「なあに。君の真剣な頼みなら、怒ったりはしないよ。」と私は言った。
「じゃあ、言うね。
 ぼく、ときどき加納君を見てると、女の子と錯覚するんだ。
 そこで、君に女の子の服を着てもらって、ぼくは、その君を抱きたい。
 ぼくが、クラスの美咲さんが好きなこと知ってるでしょう。
 加納君に、女装してもらって、美咲さんの代わりに、ぼくに抱かれて欲しいんだ。
 信じられないくらい、君を侮辱するお願いだと思う。
 でも、ぼく、美咲さんへの思いが募って、自分がもうどうにもならないんだ。」

池田君の思いもしないお願いだった。
困ったなあ、どうしようかと思った。
でも、池田くんの真剣な頼みであることは、ひしひしと分かった。

「ぼく、女物の下着や服を待ってないよ。」と言った。
「それは、ぼくが、死に物狂いで買った。下着も買った。」
「恥かしかったでしょう?」
「死ぬほど恥かしかった。でも、買った。」
私は、池田君のその思いに打たれた。

「いいよ。でも、1回だけだよ。」
「ほんと?いいの?」と池田君は、私の目を見た。
「うん。いい。」と私。
「わあ、まさか、いいって言ってくれるなんて思わなかった。
 次の日曜日、家族がみんないないんだ。その日の10時でいい?」池田君。
「わかった。ぼくが君の家に行くね。」私は言った。



約束の日曜日。
私は、髪を洗い、女性の香りがするリンスをつけた。
姉から、赤い口紅を借りた。そして、櫛。
美咲さんは、髪を左右に結んでいるので、
色の輪ゴムを一対借りた。
どうせなら、池田君の思いに応えたかった。

池田君の家に着いて、チャイムを鳴らすと、池田君が顔を見せた。
池田君は、もうそのときから、緊張して、震えているようだった。

部屋に案内してもらい、買ってあるという衣類を見せてもらった。
服は、クリーム色の半袖のワンピースだった。
それに、ショーツ、ブラ、スリップ。
ブラを買うのは、勇気がいったろうなあと思った。

「着替えるまで、恥かしいから、部屋の外で待ってて。」と言った。

部屋には、姿身があった。
私は着替え始めた。もともと女装が好きな私だ。
私自身が、少しぞくぞくしていた。
上着を脱いでブラをつけ、中にティッシュを多めに入れた。
ショーツは、女の子に見えるように履く。
スリップをかぶる。

そこで、髪を梳かし、両脇の高いところで結ぶ。
色ゴムで留める。
リンスのいい香りがした。(この香りで、池田君を悩殺かなと思った。)
ワンピースを着た。可愛いワンピースだ。
上半身がジャスト・フィットだった。
持って来た、赤い口紅を薄く塗った。
池田君につかないように、ティッシュでさらに拭いた。
鏡を見ると、美咲さんに似てなくもない。

私は、ドアに向かって、池田君を呼んだ。
入って来た池田君は、私を見て、
「あ。」と声を上げた。呆然としながら、
「美咲さんにそっくり…。」とつぶやいた。

「加納君。可愛い。すごく可愛い。びっくりした…。」
池田君は私を眺め回しながら、そう言った。


つづく

小百合のこと(S&Mへの憧れ) 後編

小百合の放置している間に、私も簡単な女装をした。
女性の下着に、ワンピースを着ただけ。
髪を少しとかす。

そして、Oさんへ小声で、
「Oさん、次どうしたらいい?
 あたしのネタ、これで終わり。次何していいかわからない。」
と言った。

そこで、Oさんから、いくつかやり方を教わった。
「小百合は純が好きだから、心を開いてるの。あたしが行っちゃだめなの。
 だから、純だけでやってあげて。」とOさんは言って、私に小道具を貸してくれた。

私は、気合を入れて、部屋に入って行った。
「まあ、小百合。こんなに大きくしちゃって。
 天井を向いてるわよ。もっとして欲しいのね。」
「いや、いやです。もう、ゆるして。」と小百合は言った。
「言葉じゃ、そう言ってるくせに、ここはどんどん大きくなっているじゃない。どうなの!」
私は最後は強い口調で言った。

小百合の目から涙が流れた。
「…もっと、はずかしくしてください。」
小百合は小さな声で言った。幼い女の子のような声になっている。
今まで、絶対聞けなっかった、小百合の可愛い声。
小百合は、完全に女の子にトランスしているのだと思った。

「じゃあ、足を椅子に乗せて、マタを開いてごらんなさい。」私。
小百合は、いわゆるM座りをした。
「ほら、よく見えるでしょう。こうしてもらいたかったんでしょう。」
「はい。」と小百合は言った。
「女の子なのに、こんなもの付いていちゃ、だめじゃない。
 あなた、それでも、女なの?」
「女です。」
「これから、朝から晩まで、ずっと女でいるのよ。いいこと。」
「はい。ずっと女でいます。」

「じゃあ、もっと可愛くしてあげるわ。」と私は言った。

私は、小百合を布団に来させ、
足首を胡坐をかくように縛って、そのロープを、小百合の首の後ろに回した。
「恥かしい。死んじゃいたい。」と言いながら、小百合はべそをかいている。
小百合のお■りがあらわになってしまった。
私はOさんから借りた小道具を取り出した。
それは、男性自身にそっくりなゴム製のものだった。

たっぷり、クリームをつけて、小百合の部分に挿・入した。
それは、すんなり入って行った。
「これから、あなたの女の部分をトレーニングしてあげるわ。うれしい?」
「いや、怖い、怖いわ。」と小百合。
「じゃあ、怖くなくなるまでやってあげる。」と私。
私は、それを動かした。

「どうお、もっと丘して欲しいの。」
「やん。あたし壊れちゃう、お願い、止めてください。」

私は、手の動きを速くした。
小百合が、また少女の声を出す。
可愛い声で、私はたまらなくなってくる。
今すぐ、小百合にめちゃめちゃキ・スをしたくなった。

「あなた、これが好きなのね。怖いなんて言いながら、
 自分で毎日やっているでしょう。」と私。
「ごめんなさい、毎日してるの。」と小百合。
「あなたの声は、まるで小学生だわ。早すぎるわよ。」
「だって、好きだから。お姉様、ごめんなさい。
 あん、ああん、あたしをめちゃめちゃにしてください。」と小百合。
涙をいっぱい目に溜めている。
身も心も、完全に女の子になっている…。

小百合の男の部分が、みるみる大きくなっていく。
小百合は苦痛に顔をゆがめていたが、どこか陶酔の色を漂わせていた。

私は、小百合の大きくなっている部分に、ゴムをもってきて、はめた。
それから、小百合のお腹にもロープを巻いて、そこから渡して、
小百合のあそこに入っているものが出て来ないようロープをかけた。
小百合の熱い部分は、2本のロープにはさまれている。



Oさんはアドバイスの中で言った。
小百合くらいのMの子は、縛られているだけで、イクことができるって。
私は、小百合がその段階まで来たことを察した。
 

「小百合、今、いつでもいける状態なの。」と私。
「はい。」小百合はうなずいた。
「触られもしないで。」
「はい、イこうと思ったらいつでもイけます。」
「もう少しイかないで。」私はそう言って、
小百合に、キスをした。熱い熱い濃厚なもの。
「お姉様、もっと強く。めちゃめちゃにキスして。」と小百合が幼い声で言う。
「いいわ。」私はそう言って、
小百合の首筋や、目や、耳、鼻にもキスをした。

「ああ、小百合は、お姉様が好き。お姉様が好き…。こんなにひどくされても好き…。」
小百合が、うわ言のように言った。

もう一度、首を抱いて、唇に強いキスをした。

小百合の息が荒くなってきた。
「お姉様、あたし、イってもいい?イってもいい?」と小百合は聞く。
「ダメ、小百合のこともっと可愛がりたい。もっと我慢して。」
「ゆるして。もう、だめなの。がまんできない。」
「もう少し。」
「だめ、あ、イっちゃう。お姉様、ごめんなさい。イっちゃう…。」

小百合はそう言うと、私があそこに何も触らないのに、体をブルブルと痙攣させて、果ててしまった。



私は小百合のゴムをとり、きれいに拭いてから、足と胸のロープを解いた。
そして、お腹のロープを解いて、始めのワンピースの姿にした。
ぐったりした小百合に薄い毛布をかけた。
私が行こうとすると、
「お姉様、行かないで、となりに寝て。」と言う。
私はとなりに寝て、いっしょに毛布に入り、小百合の顔をなでたり、髪を梳いたりした。

小百合が私の上に身をかぶせ、キスをして来た。
私の顔をなでたり、髪を梳いたり。
小百合のこんな積極的な行動を見たこともなかった。
小百合はしばらくすると、私に抱き付いてきた。
「このまま、時間が止まればいい。あたし完全に満足した。」
「ほんと。それは、よかった。」
「お姉様のこと好きだったから、最高にうれしい。
 お姉様があたしに、たくさんキスしてくれた。」

可愛い小百合のあんな様子を見た後で、私は興奮しきっていた。
「ありがとう、お姉様。あたし、お礼がしたいの。」
「お礼って?」
「あたし、これも好きだから。」
そういうと、小百合は、起き上がって、私のスカートをめくり、
下着を下げて、口を使って奉仕をしてくれた。
可愛い小百合がこんなことしてくれるなんて。
そう思うだけで、私は感激し、すぐに果ててしまった。

二人でしばらく抱きあっていた。
ときどきキスをして。



布団をきれいにして、二人で部屋を出た。

「Oさん、ありがとうございました。」と二人で頭を下げた。
「小百合、どうだった?」とOさん。
「今、感激してます。初めて念願が叶いました。
 いままで、自分のこと正直に言えなくて…。」と小百合は言った。
「みんな、なかなか言えないもんよ。」とOさんは優しく笑った。

二人で着替えて、いっしょに帰った。
男にもどった小百合は、またいつものバンカラに戻って、
下駄を鳴らして歩くのだった。

「小百合、どの小百合が本当の小百合?」と私は聞いた。
「それはもちろん、縛られて、女の子の声上げてた自分。」と小百合は言った。
「そうなんだ。」と私は言った。

『それにしても、変な子。』と私は心の中で微笑んだ。

小百合のこと(S&Mへの憧れ)前編

短いエピソードですが、2回に分けてかきます。読んだくださるとうれしいです。

================================

私が通っていた女装サロンに「小百合」という子がいた。
小百合は、とても女装として恵まれた体形をしていて、
背は160センチくらい。スリムなのに、
ウエストが、女の子の位置にあって、そして、ピップが女の子並にある。
だから、タイトなスカートを履いても、バッチリだった。

小百合ほど、男女の変身ふりに差のある子は少なく、
男のときは、カーリーのロングヘアーをぼざぼざにし、
裂け目のたくさんあるジーンズを履いて、
Tシャツ、そして、足は下駄をはいて、ガランがらんとがに股で歩く。
ジーンズのポッケに手を入れて、肩をいからせて。

でも、女の子になると、急にしおらしくなって、髪を整え、
ワンピースを着て、世にも大人しい子になってしまう。
質問された時だけに、口を開く。それも一言言って終わり。

小百合は、相当可愛らしかったので、多くの人が、小百合をセックス部屋に誘ったが、
小百合は頑として動かず、「ごめんなさい。」と言って小さくなっていた。



私は小百合の本当の願望を聞きたくて、
あるとき、部屋の隅に連れていった。
「小百合。小百合の本当の願望きかせて。」
「純、絶対人に言うわない?」と小百合は言った。
「うん、誰にも言わない。」
「あたし、ほんとは、5、6人の男にさらわれて、
 秘密の部屋に連れていかれ、ぐるぐる巻きに縛られて、
 辱しめを受けて、好き放題犯されたい。」

そうだったの。と私は心で言った。
男のときの、あのバンカラな格好、
そして、このサロンでの、内気な態度。
そのどの2つとも折りあわない、小百合の願望だった。

それから、私はこっそり小百合のスカートの中に手を入れて、
小百合にちょっかいを出すことがあっが、
小百合の男性自身が少しでも大きくなると、
小百合は、身を引いて、「お願い、やめて。」といった。



それから、2年ほどたって、私は典子ママの店がお休みのとき、
懐かしくて、その女装サロンへ行ってみた。
すると、いたのは管理人のOさんと、小百合だった。
小百合は、可愛いピンクの花柄のワンピースを着ていた。
スタイルがいいので、羨ましい限りだった。

管理人のOさんから、耳内された。
「あの子、淋しくって来たのだから、たっぷりサービスしてあげて。
 このごろ誰もこないのよ。」

小百合は、いつもカーリーの自毛で女装をしていたので、
私は、自分の内巻きのボブヘアーを小百合にかぶせてみた。
すると、ドンぴしゃり、その髪型が似あって、大人しそうな可憐な少女に変身した。
小百合も気に入ったのか、鏡を何度も見ていた。

私は、小百合をセックス部屋に誘った。
小百合はすんなりついて来た。
これは、初めてのことだと思った。
私は小百合を万年床に座らせた。

私はS&Mは、得意ではない。
でも、多少の知識はあった。
私は押入れを開けて、ロープの入ったダンボールを出し、
その中から、ロープを取り出し、小百合の乳房をよけて、ぐるぐるとロープを回した。
これは、ゆるくてもいい。そして、1度縛った。
次に後ろ手にした手首を縛って、余った紐で、横結びのロープにかけ、
ぎゅーと、ひっぱり、手首がロープまで来るようにして、そこで結んだ。
これで、上半身は、びくとも動かない。
痛くもなく、動けない、これが上手な縛り方だと教わっていた。

私は、ここで、小百合のピンクの長めのワンピースのスカート部に手を入れて、
小百合のショーツを脱がせた。
小百合が、「ああ…。」と声を上げた。
下半身は無防備で、本人にしては、不安でいっぱいだ。

私は、その小百合を立たせ、ドレッサーの前に背もたれのあるイスを置いて座らせ、
スカートをまくって、小百合の恥かしい部分を丸出しにした。
自分の姿を見せながら、

「小百合、いい子だから、しばらくここに座って、自分の姿を見ていなさい。」
そう言い残して、一端部屋を出た。

「あら、もう終わったの」とOさんに言われた。
「今、放置しているの。」
「あらそう。小百合喜んでるわ。きっと。」とOさんは言った。


つづく
プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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