<最終回>「倉田洋子対バレーボール部戦」④(戦いの終わり)

これで、最終回です。少しも女装の出てこないものでしたが、
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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<最終回>「倉田洋子対バレーボール部戦」④(戦いの終わり)


3人は、高井の味わった恐怖を知った。
本当に顔面を打たれていたら、お仕舞いだった。
もう怖くて、ブロックができない。

<3対9>

見るも無残な光景だった。
洋子一人の気迫で、レギュラーたる3人が、本来挙げるべき腕で顔を守ってしまった。
そして、床に崩れ落ちたのだった。

洋子は、ボールを持って、エンドラインに戻り、笛を待った。
やがて笛が鳴った。
洋子は山なりのサーブを出した。

レギュラーはとっくに、洋子に勝てるとは思っていなかった。
だが、せめて、自分達の力で、1点取りたかった。
大蔵は、鳥居に、命がけの1本を決めてくれと言った。
そんな気持ちで、大蔵は、理想的なトスを上げた。
すると、いつも中央にいる洋子が、鳥居の前に走った。
そして、鳥居と同時にジャンプをした。
鳥居が全身全霊のスパイクを放った。
すごい音だった。
だが、レギュラーが見たものは、
自分達のコートに突き刺さるボールだった。
洋子は、強打をしたのではない。
鳥居のスパイクを弾き返しただけだった。

ダイレクト・スパイク。
まさかそんな・・。
ブロックするのがやっとのはずの鳥居のスパイクが、
直接スパイクで返された。

そのとき、コートにあるボールが、裂けていた。
オリンピックなどでは、ままあることだが、
打球の威力で、ボールが破れてしまう。
レギュラー達は、その破れたボールを恐いものでも見るかのように眺めた。

<3対10>

鳥居は、力尽きて、ガクッと片ひざを床に付いた。
そして、荒い息をしていた。
「俺のスパイクが、ダイレクトされたのか。」
鳥居は床を見つめた。

もはや洋子の勝ちは目に見えていた。
汗だくになっているレギュラーに対して、洋子は汗一つかいていなかった。
あれだけジャンプ・レシーブをし、動き回っているのに。
しかも、制服姿であるのに。
それが、レギュラーの焦燥感を募らせた。
中学バレーのときから、天才と呼ばれてきた彼らが、
初めて味わう敗北感であり、惨敗感であり、無力感だった。

あと、5点ある。5点もある。
レギュラーは、絶望に近い思いだった。
相手は、ただ、スパイクを山なりに拾うだけの試合で、
自分達は、これほどまでにやられている。

全日本高校1位になったプライドなど、とっくに崩れ去っていた。
もし、洋子がスパイクを打っていたら、あっという間に試合は終わりだった。
「顔面あり」なら、悲惨なことになっていた。

鳥居と大木は、疲れのため、ほとんどスパイクのジャンプが出来なくなっていた。
棒のように脚が動かない。少しのジャンプもできない。
大蔵からのボールを、相手コートに入れているだけだった。

レギュラー達は6人がかりで、技能面、体力面、精神面と、
全てにおいて、たった1人の洋子に至らないことを認めた。
洋子に、畏れを抱いた。

試合をはじめて、3時間10分、レギュラー側のミスで、
<3対15>、レギュラーは敗れた。
床に倒れて動けないでいるレギュラーを、
洋子は、静かに見ていた。



集合の笛で、レギュラー達は、這うようにして、集まって来た。
洋子は、大杉の横に並んだ。

「お前の勝ちだ。俺が去る前に、少し教えてくれ。」大杉は言った。
「はい。」
「何のために、今日ここに来た。」
「この学校の運動部から、暴力的指導をなくすためです。
 高井さんの顔面サーブは、大杉先生の教えですよね。
 前にここへ見に来たとき、偶然聞きました。
 『弱い相手には、顔でも腹でも狙って、相手をびびらせ、
 さっさとやっつけてこい。』
 ただこれは、相手が、インターハイレベルの、鍛えた選手に対してであって、
 一般の女子などにすれば、殺人行為になります。
 それなのに、高井さんが私の顔面にサーブを出して当たったとき、
 先生は、止めるどころか、うれしそうに笑っておられました。
 大蔵さんが、必死に高井さんを止めていたのに、
 お腹のときは、もっとうれしそうにしておいででした。
 ご自身でどう思われますか。」

「この俺は、指導者として失格だろう。
 もう一つ、倉田は何者だ。なぜに、あれほどに強い。」

「私は、今年、サッカー部の顧問の先生から、
 40発のビンタを受け、その日のうちに自殺をした、
 倉田健二の妹です。」
洋子がそう言ったとき、同学年だったレギュラー達の顔色が変わった。

「兄の死を教訓に、学校の運動部から暴力的指導が少なくなっているかと
 期待して、やってきました。
 ところが、自粛どころかひどいものでした。
 このバレーボール部がどんなひどい暴力的部であるか、
部員の皆さんには、私が語るまでもないと思います。

 サッカー部顧問の先生の40発のビンタに関し、
 大杉先生は、学校長、理事長から、口止めをされたはずです。
 そして、先生は、それに従いました。これは、法的な罪に問われることです。
大杉先生、いかがですか。」

大杉は、がっくりと、膝を付き、洋子に対し、正座をした。
「そうか、そうだったのか。
 倉田の強さは、健二の魂が宿ってのものかもしれない。
 確かに俺は、口止めをされた。そして、それに従った。
 これが、犯罪であることは分かっている。
 犯罪を犯しながら、バレー部の顧問でいたことを、
 部員の皆にお詫びをする。
 申し訳なかった。

 本来、俺が辞めるだけでよかったものを、
 部員の皆を巻き添えにしてしまった。
 レギュラーが負けるなど、露ほども思っていなかった。
 だが、スパイクをしない倉田にも、勝つことが出来なかった。
 自分の傲慢さに恥じ入るばかりだ。
 このことも詫びたい。
 すまなかった。」

大杉は、洋子と部員に深く頭を下げた。
そして、立って、よろよろと去って行った。

高井が正座をして言った。
「倉田。俺は最低だった。申し訳ない。この通りだ。
 倉田が、一心にレシーブに行く姿を見て、涙が出た。
 倉田のお蔭で、俺は、慢心を捨てることができた。
 これからは、謙虚になる。どんなに弱い相手でも、
 礼を尽くし、バカになどしない。
 約束する。倉田、すまなかった。」
高井は、床に手を付き、頭をついた。
すると、近藤、大木、田村の3人も横に正座し、
「高井と同じ気持ちだ。すまなかった。」
そう言って、頭を下げた。

「みなさんが、そう思ってくださるなら、うれしいです。
 顔を上げてください。」と洋子は、笑顔で、4人に言った。
そして、
「今日で、このバレー部は、解散になりましたが、
 もうすぐ、新バレーボール部ができます。
 それは、顧問の先生が指導をしない、部員の自主運営の部活です。
 もうしばらく時間をください。
 新しいバレー部が出来たら、みなさん是非来てくださいね。」
そう言って、洋子は、にっこりした。
「おおおおお。」
部員達は、手を取り合って、喜んだ。

体育館の外に出ると、いつもの3人がいた。
「3時間も、待っていてくれたの?」と洋子は驚いた。
「待つのは簡単だけど、今日は、大変な試合だったわね。」と恵美。
「アイスクリーム食べに行こうね。」冴子。
「もう、この時間だと、ラーメンかな。」と和也。
「それもいいね。」と冴子が言った。
「いや、伝統は守らなきゃ。アイスよ。」と恵美。
4人は、ワイワイといいながら、夜の校庭を歩いていった。
※大杉は、部活から退いたが、辞任は認められず、教員として学校に残った。
 そして、地域の小学生のバレーボール・クラブのコーチになった。
 やさしく、子供たちに接し、みんなから好かれるコーチになった。
 

<対男子バレーボール部戦 終わり>


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<第3回>倉田洋子「バレーボール部戦」(高井の屈服)

<第3話>「倉田洋子対バレーボール部戦」

でも、私は、全力で戦います。
相手がどんなに大きな怪我をしても、病院に、運ばれても、
手加減をするなんて、相手にたいして失礼です。それは、分かってください。


笛が鳴った。
洋子は、ボールで、高井を指さした。
そして、ボールを高く上げ、助走をつけジャンプした。
そのとき、
「やめてくれー!」と高井は叫び、頭をかばって、床の上にうずくまった。
「俺が、悪かった。倉田、許してくれ。顔面はやめてくれ。強打はしないでくれ。」
高井は震える声でそう叫んだ。

洋子は、落ちて来たボールを横に抱いて、高井を見ていた。
体育館の誰もが、一言の声も発しなかった。

沈黙が続いた。

しばらくして、
「わかりました。これより、私は、顔面を狙いません。一切の強打もやめます。
 だからといって、負けた言い訳にはしません。強打なしで戦います。」
洋子がそう言った。
体育館の見学の部員が、ざわざわとした。

大杉は、腕を組み、苦い顔をしてうつむき目を閉じた。
高井の懇願で、ゲームは決着がついたも同然だ。レギュラーは降参したのだ。
強打無しの洋子に勝っても、レギュラーの負けは変わらない。

笛が鳴った。
洋子は、トスを上げ、ゆるい山なりのボールを、相手コートに送った。
その後、コートのど真ん中に立った。
後衛・田村が、レシーブをして、大蔵に送った。
チームNo.1スパイカー鳥居にボールが上がった。
鳥居は、助走をつけて、中央の洋子が絶対捕れないストレートのコースに、
渾身のスパイクを放った。

打者の瞳とフォームを見れば、コースが分かる。
鳥居が打ったとき、洋子はすでにストレートコースに飛び、
空中で、鳥居のスパイクをレシーブした。
おおおおおと、見学部員達は思わず、声を上げた。
レギュラーも目を見張った。
他でもない、鳥居の全力のスパイクだ。

洋子のレシーブ・ボールは、
相手コートの天井近くまで上がり、そのまま真下に落ちて来る。
「まさか、コートに入るのか!」田村は、ボールを見つめた。
ボールは、田村の頭上に落ちて来る。
ボールは、無回転で、空気の流れを受け、ゆらゆらと落ちてくる。
田村は、そのラインを必死で読み、レシーブをした。
全国1のレギュラーではないと、恐らく取れないボールだ。

大蔵につなぎ、再度鳥居へ。
高く天井近く上げたボールが落ちる間に、洋子は、コート中央に戻っていた。
鳥居は、今度はクロスに猛烈なスパイクをした。
洋子は、すでにダッシュしていた。
そして、腹這いにジャンプし、追いついて、ボールを返した。
『コースが読まれている。』鳥居は、そう感じた。

自分の瞳が、どこを見るかを読まれている。
鳥居には、すぐにそれがわかった。
しかし、分かっても、それはどうしようもないことだった。
アタッカーは、相手を見て、守備の薄いところを瞬時に判断して、そこに打つ。
この「見て、打つ」ということをずっとやってきたのである。
洋子相手に、今更「見ずに打つ」ことなど、できるものではなかった。

洋子の返球が、また、天井すれすれである。
「ほんとかよ。」と近藤が言った。
体育館は、洋子がレシーブをするたびに、おおおおおという声が漏れた。

大蔵の左に大木、右に鳥居。
後ろ3人からのボールを全て大蔵がトスし、鳥居、大木が、交代で、スパイクする。
洋子は、全てのスパイクに追いつき、次の態勢を整えるため、
天井ギリギリの高いボールで返す。
レシーブの3人は、ボールの揺れを見るのに必死であった。

鳥居は、試しにネット真下にフェイントでボールを落としてみたが、
ボールが床に落ちる寸前に、洋子に拾われた。
鳥居は、やはり、ほんの瞬時、ネット下を見てしまったのである。

見学の部員達は、まるで、夢でも見るかのように、
この信じられない攻防戦を見ていた。
というより、洋子の守備を見ていた。

スパイクとレシーブ。
もう、70回も続いている。
笛が鳴ることなく、
その間、全くの休憩時間なしである。
さすがの鳥居も、大木も、ジャンプが落ちて来た。
後ろの田村、近藤、高井の3人も、目が疲労していた。
驚くべきは、洋子である。
毎回、宙に浮いたジャンプレシーブをしながら、
絶対にミスをしない。
こんなことがありえるのか。
98回で、大木がスパイクを、ネットにかけた。

<3対4>

ここで、大蔵がタイムアウトを取った。
「鳥居、大木のスパイクが全く通じない。信じがたいことだが。」
大蔵は言った。
「しかたない。奥の手を出してみよう。通用すればいいが。」
大蔵は、初公開のトリックプレーのサインを出した。

洋子は、山なりの大きなサーブを出した。
大蔵は左に向いて構える。
洋子は、コートの中央で、大蔵の指だけを見て動かなかった。
大蔵が向く左側に、おとりが二人、ジャンプをした。
洋子は動かない。
大蔵は、右にボールを送る構えをした。
右の鳥居がジャンプをした。
だが、大蔵は、まだトスをしない。

鳥居と見せかけて、顔10cmのところで、左にヒュンとボールを送った。
後ろから、猛然とダッシュして、近藤がネットに突進してきた。
洋子は、左にダッシュして飛んだ。
近藤は、絶妙なタイミングで、クイック・スパイクをした。
これは、決まったと誰もが思った。
今まで、どの学校にも見せていない、取って置きのトリックプレーだった。

だが、ボールは、近藤の背を伝わり、レギュラー側のコートに落ちた。
洋子は、近藤のクイック・スパイクを、ポンと力を抜き、近藤の背中に落とした。

この極上のプレーが、一人の女子に敗れたショックは大きかった。
それより、大蔵は、これからどんなトリックプレーも、洋子には通じないことを悟った。
コート中央にいて、ボールが指から離れるのを見てから間に合う。
これでは、どんなトリックも意味がない。自分の顔上10cmも、
なんの意味もなさない。

<3対5>洋子のリード。

「まいったな。相手は一人だぜ。」
選手たちは、うつむき加減で、互いにそう言った。
「すごい女だな。」
「すごいなんてもんじゃない。感動ものだ。」
「俺たちが取った点は、高井の初めの3本だけだ。」
「俺たちで、あと1点取ることが、目標だ。」無口な鳥居が言った。
「あれほどの女を、俺たちは、初め馬鹿にしたのか。」
「初めにでれでれと立っていたことが、恥かしくてならない。」

トリック・プレーが効かない以上、通常の攻撃しかできない。
洋子のボールを後衛が拾い、大蔵が上げ、鳥居、大木が打つ。
ミスが無い限り、延々と続く。
気が遠くなりそうなゲームだった。

後衛の近藤がレシーブ・ミスをしたとき、往復のラリーは、
通算300回を超えていた。
笛が鳴らず、ほとんど、無休である。それがキツイ。

<3対8>

鳥居と大木の脚は、ぱんぱんに腫れ上がり、
そんな脚で、洋子を抜くスパイクなど、不可能だった。
後衛も同じだ。
落ちて来る球筋を読むのに集中力の限界に来ていた。

その内、洋子は攻撃の真似事をしたくなった。
向こうから来たスパイクを拾い、左ネット近くに高々と上げた。

『お、第1球で返ってこない。』と皆は思った。
洋子は、高々と上げたボールを打つと見た。
3人が、左にブロックの構えをした。
洋子と3人が同時にジャンプをする。
195cmの選手3人が1m以上ジャンプし、高さ4mの壁が出来る。
しかし、洋子のジャンプは高く、その壁をさらに1m超える高さに至った。
3人は、洋子を見あげ、顔が天井を向き、アゴが上がった。
その天井から、洋子が、体を海老に反って、ボールを打とうとしている。
「怖い。」
3人は、洋子の姿が、何倍にも大きく見えた。
そこから顔を狙われたら、高井の受けたサーブの威力どころではない。
「耐えられない。」
3人は、あまりの恐さに、両腕で顔を覆い
アゴを上げたまま、床に落ちた。
腰と肩を激しく打った。
洋子は、スパイクをせず、軽くボールを3人の上に落とした。

(次回、最終回につづく)


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<第2話>倉田洋子「男子バレーボール部戦」

実は、この物語は、私が、自分のために書きました。
気分がむしゃくしゃするとき、何かを恨みがましく思ったとき、
そんな自分を解消するために書きました。
何度も、何度も読みました。その度、自分を収めました。
そんなことで、一部過激な部分もあるかと思います。
ご理解くださり、読んでくださると、幸いです。
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<第2話>倉田洋子「男子バレーボール部戦」


体育館が、一瞬で凍りついた。
洋子のジャンプの高さに驚いた者。
目で追えないボールのスピードに驚いた者。
レシーブ力No.1の高井が飛ばされたことに驚いた者。
それぞれ、全員が息を呑んだ。
高井の頭の中でボールから受けた衝撃がこだましていた。
高井は、それを、必死で隠し、立ち上がった。

<3対2>

「高井、あの女を見くびるなと言っただろう。最低構えろ。」
大蔵は、高井に言った。
「あのくらい、なんでもねーよ。」
高井は言ったが、立っているのが精一杯だった。

洋子は、またボールで高井を指した。
『とうとう俺を本気で怒らせるのか。
今度こそ、本気の本気だ。打ってみろ!』高井は心で言った。

洋子は、お腹をポンポンと叩いた。
「何?アンダーで構える俺の腹にどうやって当てる?」
高井は、小声で言った。
その高井も今回は構えた。

洋子が、高いトスを上げる。
助走を付けて、ジャンプし、高さ5mからの強烈なストレート・サーブを放った。

洋子が打ったとほぼ同時に、ボールは、
高井の腹にズドーンとのめり込むように入っていた。
大型のバットで、思い切り腹を打たれたような衝撃だった。
アンダーで構えたが、2本の腕など物ともせず、腹に飛び込んで来た。

高井は、ボールを腹に挟んだまま、後ろに飛ばされ、
背から後頭部を再び激しく打った。
高井は、腹を押さえて、痛みにうずくまった。

見学の部員達にとって、雲の上の存在であるレギュラーの、
そんな姿を見るのは、初めてだった。

高井は、今度こそ、立てず、
お腹を押さえて、荒い息をついていた。
みんなが、寄って来た。
「大丈夫か。」
「大蔵の忠告を聞いておくんだったな。」
「信じられないボールの速さだった。」
皆は、口々に言った。

<3対3>

高井は、必死で起き上がったが、
ショックで顔は真っ青だった。

笛が鳴った。

洋子は、また高井にボールを向けた。
そして、片手で自分の両目をポンポンと叩いた。
両目を狙うとのサインだ。

これには、再び体育館中が静まりかえった。

高井が初めに洋子の両目を狙ったことは、全員が知っていた。
今度は、高井がそれを受ける番だ。
洋子のボールの威力とコントロールを、
目の当たりにしたばかりだ。
洋子のボールは、高井の両目に確実に当たる。
あのボールの威力では、高井の眼球は破裂し、高井は、失明してしまうかも知れない。
しかし、高井は、先に、そんなボールを洋子に浴びせたのだった。
そのとき、高井を非難したのは、大蔵ただ一人。
鳥居以外、後のものは、にやにやと笑っていたのだ。監督の大杉でさえ。

高井は、今まで経験したこともない、桁違いに破壊力のある洋子のボールに、
強がる心が折れていた。
高井は、真っ青になり、わずかに震えていた。

たくさんの後悔が一度に、高井の胸に押し寄せていた。
試合中、倉田を小馬鹿にし、茶化し放題にしたこと。
まだ、力のわからない女子の目に、全力のサーブを打ったこと。
腹を狙ったのは、さらに悪い。
ふつうの女子なら内臓破裂を起こし、殺人行為だ。
キャプテンである大蔵の忠告を無視した。
今、自分が失明しても、それは、自業自得だ。
だが、失明は怖い。怖くてたまらない。
あの女をコケにしたために、俺は、一生、目が見えなくなるのか。
もうすぐそれが現実になる。
高井は、恐くてならず、内臓からブルブル震えていた。

部長の大蔵は、タイムを取った。

他の連中も、高井の失明を思い、集まって来た。
「高井、俺は、ここで負けにして、女に謝まる。
お前といっしょに女を笑った。」近藤が言った。
「だらだらした態度で試合に臨み、あの女を侮辱した。」後衛の田村が言った。
「サーブであの威力だ。スパイクで顔面を狙われたら終わりだ。
 女をバカにしたのは、高井だけじゃないぞ。」

「だから、あの女は、『顔面はありか』と聞きに来たのか。
 自分が狙ってもいいかという意味だったんだ。」

「バレー部が解散になっても、高井の目の方が大事だ。
 ここは、謝って試合終了だ。」近藤が言った。

そのとき、大蔵が怒鳴りつけた。
「何を言うか!
相手が弱いと思い、馬鹿にして、侮辱の限りをしておいて、
 相手が、強いとわかりゃ、震え上がって、頭を下げて、試合を止めてもらうだと?
 ふざけんな!
 相手が怖いからと、謝って試合を止めてもらった学校など見たことがあるか!
 高井が倉田の両目を狙ったとき、お前らへらへら笑っていただろう。
 倉田が「顔面はありですか。」と聞きに来たとき、
 「レシーブすればいいことだ」と言った高井の言葉を、止めた奴がいるか!
 笑っていたじゃないか!
 
 虫がよすぎるだろうよ。
 これは、試合だ。
 高井は自分の言葉通り、レシーブをするんだ。
 どんなに怖かろうが、
 どんなに大きな怪我をしようが、試合は最後までやるんだよ!」

レギュラーの皆は、大蔵に対して、一言もなかった。

レギュラーが話し合っている間、洋子は、大杉のところへ行った。
「顔面はありですか?」と2度同じことを聞いた。
「それは、お前が決めることだ。」
「まさか!今ルールの確認をしたのですよ。
 私が決めることなのですか!ご冗談でしょう!
 今のお言葉を体育館のみなさんに伝えますが。」
「わかった。レシーブすればいいことだ。」
「わかったとは、なんですか。私は、監督に何か説得をしたのですか?」
監督は、歯ぎしりを噛んだ。
「レシーブすればいいことだ。」監督は言った。

洋子はついでに、さっき、何かを言った1年生に聞いた。
「顔面なしのバレーボールなど、聞いたことがないのですよね。
 もう一度あなたの判断を聞かせてください。」洋子。
1年生は、黙っている。そのうち、涙を流した。
「あなたを侮辱したぼくの態度はあやまります。」
「待ってください。あなたの態度など、どうでもいいのです。
中学から、バレーボールをやって来たあなたのルールでは、顔面はありかと聞いているんです。
1年生、2年生を代表して、責任をもって言ってください。」
「顔面は、ありです。」1年生はうつむいて、涙を流した。

見学のほとんどは、洋子と1年生のやり取りを見ていた。

「じゃあ、となりの、ドッジボールじゃないんだぜ、と言った方。
 ドッジボールじゃないから、どうだというのですか。
 責任をもって、答えてください。」
「ドッジボールではないので、顔面は、ありです。」

彼は、しばらく黙っていたが、
目に涙をためていた。で、目を上げ、洋子を見た。
「ぼくは、あなたが弱いと思って、侮辱しました。醜いことです。
 相手が強かったら、震えあがって、侮辱のぶの字も言えないのに。
 今日、先輩の一番醜い姿を見てしまいました。
 一番尊敬していた高井さんのあなたに対する姿を見て、
 悲しくて、目を塞ぎたくなりました。
(高井は1年のこの言葉を聞いていた。)

 でも、ぼくは信じています。今増長していても、きっと先輩は、反省して、立ち直ります。
 そのとき、目に光を失っていたら、立ち直ることができません。
 同じ部の先輩が失明するなんて、ぼくは耐えられません。
 ぼくだって、高井先輩と同罪です。多くの、1年、2年生も同罪です。」

1年生の言葉を聞き、多くの2年生、1年生が泣いていた。

「お2人のお言葉、しっかり聞きました。
 参考意見として、考えます。」
洋子は、そう言った。



(第3話につづく)


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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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