春果を包むやさしいクラス③「春果、女の子デビュー」 最終回

最終回です。これは、好きな作品でしたので、終えるのが、
少し淋しいです。読んでくださり、ありがとうございました。
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春果を包むやさしいクラス③「春果、女の子デビュー」最終回
 
 
翌日。
授業をまつ5分間のこと。
春果のそばで、3人の男達が、大きい声で話しをしていて、
それが、下ネタになって来てしまった。
一人が、あわてて、「春果が聞いてるぞ!」とジェスチャーをして、話を止めさそうとした。
一人が、そうか、という顔をして、わざとらしく、
「そういえば、今日は夕方雨になるらしいぞ。」
とまったく脈絡のない健全なことを言った。

春果は、そのごまかし方が、全く見え見えで、おかしく、
「ぷ。」と噴いた。
それから、我慢できなくて、
「うぷぷぷ、あはははは。」と大笑いをした。
みんなが、春果を見た。
みんなにとって、春果が笑うのを見るのは、初めてだった。
春果は、そのとき、どうしても笑いが止まらなくて、
顔に手を当てて笑ったり、
机に腕を置いて、それに顔を伏せて笑ったりしていた。
 
やっと、春果が笑った。
クラスのみんなは、うれしかった。
何人かの男子は、春果の笑う顔が可愛くて、胸にキュンと来てしまったりしていた。
 
春果は、机に置いた腕に顔を伏して笑ううち、その笑いを終えた。
そして、しばらく動かなかった。
春果は、ハンカチを取り出して、それを目に当て、今度は泣き出した。
 
みんなは、心配した。
周りの男子が、何か悪いことを言ったかと、あわてた。
「春果、俺達、なんか、悪いこと言ったか?」
と誰かが言った。
春果は顔を伏せたまま、首を横に振った。
春果は、ハンカチをとり、涙の目で言った。
「あたし、学校で笑ったの、6年ぶりなの。
 ずっと、ずっといじめられてきたから。
 でも、このクラスの人はみんなすごく優しくて、
 あたし、毎日毎日、心の傷が治っていったの。
 そして、今、やっと笑えるようになった。
 みなさん、ありがとう。」
春果はそう言って、またハンカチを目に当てた。
女子の大勢が泣いていた。
 

 
その日、春果は、職員室へ、担任の山崎忠男を訪ねた。
山崎は、30歳の国語の先生だった。
春果は、女の子デビューをしようと思う気持ちを山崎に伝えた。
「大丈夫だと思うよ。あのクラスは、特別に理解のある子がそろってる。」
山崎はそう言った。
 
春果は、クリニックに相談するために、明日は休むと言った。
「じゃあ、明日、君のいないときに、みんなに君の説明をしておこう。いいよね。」
と山崎は言った。
「よろしくお願いします。」
と、春果は言って、礼をして、職員室を後にした。
 
翌日、クラスの生徒たちは、担任山崎から、
性同一性障害の説明を聞いた。
「先生、それ、めちゃくちゃ大変なことじゃないですか。」
とある生徒が言った。
「そう、大変な障害だ。みんな、朝起きたら、
 自分とは性の違う体になっていたらと考えると、
 それがわ かるよね。」
と山崎は言った。
「春果は、今までずっとそれに耐えてきたのね。
 おまけに、みんなにいじめられても来た。
 これ、2倍つらいことですよね。」
とある女子が言った。
「じゃあ、このクラスは3年間変わらないわけだから、
 3年間は、大丈夫だよ。俺達、今日理解したから。」
と別の生徒。
山崎が、
「特別なことはいらないよ。女子として、普通に接してくれればいい。」
と言った。
「明日は、春果ちゃんの女の子デビューを祝って、
 1時間目は、お祝いをしよう。
 先生、いいですよね。一時間目、先生の授業だから。」
と誰かが言った。
「うん、かまわないよ。」と山崎は答えた。
 
春果は、クリニックで、主治医に女の子デビューをすると言った。
「今度のクラスは、いいみたいだね。」と先生。
「はい、みんないい人です。めったにないクラスだと思います。」
春果はそう答えた。
 
春果は、その日、美容院へ行って、
女らしいステキなショート・ヘアーにしてもらった。
 
翌日の朝。
春果は、夏服の女子の制服を着た。
女子の下着。ブラをして、中にパッドを2つ。
白いブラウスに、チェックのスカート。ややミニ。
胸に、大きなリボン。
 
「春果は、初めて女の子になって、学校へ行くんだなあ。」
と父の健二が感慨深げに言った。
「うん、今度のクラスは、絶対大丈夫。」と春果は言った。
母の佳子は、学校へ付いて行くことになっていた。
 
学校へ、30分早く行くと、担任の山崎が、すでに靴箱のところで待っていた。
山崎は、春果を見ると、
「やっと、自分になれたね。」とにっこりした。
春果は、はにかんで、「はい。」と言った。
そのまま、山崎といっしょに校長室へ行った。
校長室のソファーに座った。
校長が、
「春果さんという名は、女性名でもあるし、名前を変える必要はありませんね。」
と言った。
「はい。女の子のような名前をつけてしまって、
 失敗だったかなと思いましたが、
 今になって、かえってよかったと思っています。」
そう母の佳子は言った。
「春果さんは、GIDの診断書を得ていますから、
 すべて女子の扱いとなります。
もちろん、学校内の女子トイレを使えますし、
女子更衣室も使えます。
体育も、女子として授業を受けます。
これは、教育委員会も承知してることです。」
校長は言った。
 
そのうち、クラスの女子が一人、
「山崎先生、OKです。」と言いに来た。
「じゃあ、クラスに行きましょうか。」と山崎は言った。
 
佳子と3人で、教室に向かった。
教室への階段を上がったとき、
さっきの女生徒が、廊下に出ていて、
春果たちの姿を見ると、急いで教室に入った。
 
山崎が教室を開けた。
その後に春果が入ると、すごい声援と拍手があり、
頭の上から、紙吹雪が落ちてきた。
窓を見ると、窓の端から端までの、大きな横断幕があり、
そこに、
『春果さん。女の子デビュー、おめでとう!』
と書かれてあった。
 
母の佳子は、中に入らず、廊下から見ていた。
 
春果は、感激して、泣いてしまいそうだった。
 
司会の女子が一人いて、
「これから、立原春果さんの女の子デビューのお祝いをします。では、江藤さん、お祝いの言葉をお願いします。」
 
江藤亜紀というクラスで一番しっかりした女子が立った。
春果は、山崎といっしょに、教壇の前に立った。
 
江藤亜紀は、紙を見ながら、お祝いの言葉を読み始めた。
「立原春果さん、女の子デビューおめでとうございます。
 私達は、昨日、山崎先生から、
 春果さんのことを聞きました。
 春果さんが、生まれて今まで、
 どんな辛い思いをしてきたか、
 私達は、理解しました。
 春果さんの身になって考えてみて、
 私は、涙が止まりませんでした。
 女子のほとんどが泣いていました。
 
 春果さんは、ご自分の体のことだけでも
 辛い思いがあると思います。
 でも、クラスのみんなのことは安心してください。
 このクラスには、
 あなたを辛くするようなことを言う人はいません。
 もしいたら、私が、ハイキックをして、懲らしめます。
 (クラスちょっと笑い。)
 このことでは、完全に安心してください。
 
 心の性が女の子なら、その人は、女の子です。
 私達は、それを完全に理解しています。
 これから、
 春果さんに特別やさしくするというのではありません。
 ふつうに、自然に、同じクラスの仲間として接します。
 私達は、それを誓います。
 
 昨日、私達は、男子に人気投票をさせました。
 好きな女の子は誰か?
 小さな紙に無記名で、
 好きな女の子の名前を書かせました。
 
 その結果、私が、5票で2位でした。
 何を間違ってか、坂田晴美くんに2票入っていました。
 (クラス、かなり笑い。晴美自慢げに笑顔を振りまく。)
 
 そして、1位に輝いたのは、
 12票とった立原春果さんでした。
 春果さんは、モテます。(クラス笑い。)
 これから、女の子として、
 絶対の自信をもってくださいね。
 
 なお、横断幕は、昨日私達が、必死で作ったものです。
 これが、私達の春果さんに対するお祝いの気持ちです。
 
 春果さんの女の子デビュー、おめでとうございます。
 これで、お祝いの言葉を終わります。
  
                 江藤亜紀。」
大きな拍手が起こった。
 
春果は、涙を流しながら聞いた。
心から、感激した。
 
廊下で、母の佳子は、ずっとハンカチを目に当てていた。
 
司会が、
「春果さん、お言葉がありますか。」
と言った。
 
春果は、目にハンカチを当てていた。
やがて、そのハンカチをとり、みんなの方を見た。
 
「みなさん、ありがとうございます。
 あたしは、学校で、
 こんな風に祝ってもらったこともないし、
 あんなに温かいお祝いの言葉をいただいたのも、
 初めてです。
 そして、あたしのために作ってくださった横断幕を、
 あたしは、一生忘れません。
 
 前、クラスで、大笑いをしてしまって、
 そのときも言いましたが、
 あたしは、小学校の3年生頃から、
 学校で泣くことはあっても、
 笑うことはありませんでした。
 自分は、このまま一生笑わない子になるのかなあ
 と思っていました。
 それが、このクラスに来て、1ヶ月もたたないのに、
 笑えるようになりました。
 
 このクラスのある人が、私に言ってくれました。
 「このクラスは、春果への、神様の贈り物だよ。」って。
 私は、心からそう思っています。
 今まで、たくさん悲しいことがありましたが、
 私は、この神様の贈り物に包まれて、元気で、明るく、
 よく笑う女の子になれたらうれしいです。
 
 みなさん、本当にありがとうございます。
 女の子としての立原春果をよろしくお願いします。」
そう言って、春果は頭を下げた。
みんなから、すごい拍手が起こった。
 
会は、それから、司会が変わって、
いろいろゲームを始めた。
 
山崎は、教室を出て、母の佳子に、
「後は、子供達のお楽しみ会ですから。」
と佳子を、玄関へ誘った。
佳子は、泣きはらしていた。
「いいクラスですね。
 わたし、代表の方のお言葉を聞いて、
 涙が出てなりませんでした。
 本当に、神様の贈り物だと思います。」
佳子はそう言った。
 
「そうなんです。あれだけ優しい子がそろったクラスも、
 珍しいです。学年1クラスですから、
 3年間同じメンバーです。
 春果さんは、これまでの心の痛手から、
 きっと回復なさると思います。」
「はい。ありがたいことです。」
 
階段を下りるまで、クラスから、楽しげな笑い声が聞こえていた。
 
生徒の靴箱に、明るい光が差し込んでいた。
佳子は、学校がこんなに明るいところかと初めて思った。
きちんとそろって並んでいる靴の一つ一つを、
佳子は、幸せな気持ちで眺めた。
 
 
<おわり>


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スーパー洋子・全日本男子バレーボール戦④「全日本が得たもの」最終回

最終回です。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
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スーパー洋子・全日本男子バレーボール戦④「全日本が得たもの」最終回



アナ「息詰まる攻防戦でしたね。感動しました。」
村井「ええ、これには、全日本の人達も、思わず拍手をしていましたね。
   153cmの倉田選手が、198cmの平井選手のスパイクを
   ダイレクトで返すなんて、感動以外の何物でもありません。」

平井は、高鳴る胸をやっと収めた。
10点差が付いたら、試合終了というのを思い出した。
それは、元々洋子が弱くて見ていられないときのものだった。
だが、今、全日本が0点である。
あと5点差で試合が終わる。
平井は、選手の交代をした。
自分に代わって鳥居、小林に代わって、高井を出した。
つまりは、もと緑川高校の選手を出した。
鳥居も高井も、平井の心が分かり感謝した。
鳥居は4年後の自分のスパイクを洋子に見て欲しかった。
高井は、4年後のサーブとレシーブを見て欲しかった。

洋子は、高校の日々がよみがえるようだった。
まず、大蔵に、強烈なドライブサーブを出した。
大蔵は、体を倒しながら、それをとった。
それをセッターに上げるところがすごい。
セッターから鳥居へ。
鳥居は、渾身のスパイクを洋子にぶつけた。
洋子は、『わあ、すごいパワーアップ!』と思いながら、
アンダーでネット際に高く上げた。
そこまで、走り、例の7mスパイクを高井にぶつけた。
(選手にぶつけるのは、初めてである。)
高井は、顔の前に指を組み、後ろに倒れながら拾った。
『すごい!』と洋子は思わずにこっとした。
その洋子の笑顔を高井は見た。

高井のレシーブは、セッターに届き、鳥居へ。
鳥居は、2本目、渾身の力で、洋子のいないところへ打った。
鳥居は、瞳が動かない特訓をしていた。
洋子は走ったが、届かなかった。
全日本、初めての1点である。
洋子は、鳥居にもにこっとした。
鳥居も、洋子の笑顔を見た。

初の1点。
「うおおおおお。」と全日本のメンバーは、固まって喜びを分かち合った。
平井は、横で大きな声で、
「やっぱり、緑川は、違うなあ!」と叫んだ。

1点で喜んでいる。
観客は、どちらが全日本なのか、錯覚を起こしそうだった。

5-1

時は、少し遡る。
全日本男子バレーボール監督大平修の部屋に、
マネージャーの梅田ミカがお茶を持って入って来た。
「まあ、監督何をやっているんです。早くテレビを見てください。」
「何?どうしたんだい。全日本が女の子とバレーをやる茶番劇など、
 見たくもないぞ。」
「それが、負けているんですよ。3-0で、一人の女子に、
 1点も取れずにいるんですよ。それでも平気なんですか?
 おふざけじゃないですよ。全日本の人達、本気の本気でやって、
 1点も取れずにいるんですよ。」
梅田ミカは強引にテレビを付けた。
大平は見た。

それは、全日本がセットプレーを試みているところだった。
太田からのトスを平井に送り、平井がスパイクと見せかけて、
反対側の横田にボールを送る。それを、横田がクイックスパイクをするのを、
一人の女子に、見事に阻止されるところだった。
「なんだ。どうして、2人でやらん。阻止は簡単だろう。」と監督。
「違うんです。はじめから、1対6でやっているんです。
 彼女は、一人で戦っているんです。
 だのに、全日本が、まだ、1点も取れていないんです。」
「なんだあ?一人の女の子が、平井の偽スパイクを見ぬいて、
 横田に飛んだのか。そして、クイックに間に合ったのか。
 誰だ、この女性は。」
「鳥居さん、高井さん、大蔵さんの3人が、世界1と言った人です。民間の人です。」

「しまった。はじめから見たかったな。」
「あとで、ビデオを見てください。あと5点取られたら、コールド負けなんですよ。」
ここで、初めて、大平は、真剣になった。

「あああ、あのジャンプはなんだ。」
洋子の7mジャンプスパイクを見たときである。
ズバーンと豪快に決まる。
平井の渾身のスパイクを拾って、そのままネットに持って行き、トスを上げ、
そこから、7mスパイク。
「おおお、世界で一番高いリー選手でも、4m80だぞ。7mとは考えられん。」

「これでも、誰も怪我しないように、彼女は、人を狙っていないんです。」
横田が、サーブを胸元に受け、後ろに2m飛ばされるVTRがあった。
「胸元なら、大きな怪我にならないだろうとの配慮です。
 すごいコントロールです。」
監督は、心から、驚いた。
「打球が見えないじゃないか。」
「そうです。サーブを打った瞬間、もうこちらに来ているんです。」
「はじめから、見たかったなあ。それより、会場で見たかった。」

洋子と平井、横田との、はげしいラリー戦になった。
「なんで、ここまで捕れるんだ。一人だろう?こんなに動ける選手は世界にもいない。」
「だから、あの3人が、世界1と言うんだと思います。」
「あああ、平井の渾身のスパイクをダイレクト・スパイクした。
 すごい。これは、感動だ。体重がないから、スパイクで跳ね返したんだ。
 何ということだ。」

「そうですね。」
見るうち、選手の交代があった。
鳥居と高井。

洋子、初めて高井にスパイクを打つ。
「おおこの人は、初めて7mスパイクを人に当てたぞ。高井だ。
 おお、高井は、倒れながらレシーブだ。すごいガッツだ。
 セッターにあげた。すごいぞ、高井。次、鳥居だ。いけ!鳥居。
 おお、抜いたよ。さすが鳥居だ。
 みんな1点取れたことを喜んでいる。俺もうれしい。
 なんだな、この一人でやっている女性は「女神」だな。
 うちは、高さに弱い。ガッツも今一だ。
 それを、この人は、7mから徹底的に打ってくれている。
 高井のガッツで、太田も7mを受けたぞ。」

「平井さんのときスパイクが通らなかったのに、
 鳥居さんになってから、どんどん決まります。」梅田。
「何?平井の方がパワーでは上だろう。」
「平井さんにないものが、鳥居さんにあります。」
「そうか。うれしいことだ。」

監督は、そのままテレビに首っぴきだった。

こちら会場。
全日本は、高井が、洋子の7mスパイクを取ったことが刺激になり、
皆、どんどん7mスパイクに挑んでいった。
アタッカーの横田も、鳥居に負けじと、スパイクを放った。
こうして、1つの大きな恐怖を超え、自信をつけていった。
そして、とうとう、7mスパイクをブロックポイントにした。

会場は、興奮のるつぼとなった。

全日本は、挽回し、13対13になった。
そして、18対16で、洋子が勝利した。
しかし、勝敗を気にするものはいなかった。

観客は、大満足していた。
「こんな試合が見られたなんて、超ラッキーだったな。」
「ああ、感動した。来てよかった。」
観客は、皆、そんなことを言っていた。

試合が終わり、みんなは、洋子の周りに集まった。
「倉田さん、俺のスパイク、なんで通ったの。」鳥居。
「鳥居さんの瞳が動かなかったから。」
「これ、瞳を読めるのって、倉田さんだけでしょ?
 実は俺、特訓したんだけど。」と鳥居。
「どの選手も、知らずに瞳を読んでますよ。
 でも今日の鳥居さんのは、誰も読めません。
 だから、びしびし決まると思いますよ。」
「おおお。」と鳥居。
「なな、俺に7mスパイクくれたでしょ。初めて選手をねらった。
 あれ、俺のこと信頼してたからでしょ。」と高井。
「違いますよ。昔の恨みです。」
みんなで、大笑いした。
「大蔵さんに、どんどんサーブを取られるようになって、焦りました。」
「あれ、試合中に上達したんだよ。毎日練習に来てほしい。」
「あたしも、バレーボールの方が、好きなんですけどね。」と洋子は笑った。

平井がしめた。
「今日の倉田さんとの試合で、はっきり成長したこと。
 (1)7mスパイクを経験したので、もう中国やロシアが恐くありません。
 (2)ガッツ入れて挑めば、けっこうやれるとわかったこと。
 ものすごく大きな成長です。
 倉田さん、ありがとうございました。
 緑川の3人は、倉田さんを世界1と言っていましたが、それ以上です。
 倉田さんは、『神』です。」
平井の言葉にみんなが笑った。
「さあ、みんなで、あいさつしよう。」と平井。
洋子と、選手たちは、会場の人達に向いて、挨拶をした。
「オリンピック、金メダル、待ってますよ。」
「洋子さん、最高。」
「感動した。ありがとう。」
と、たくさんの声をもらった。

洋子は、応援席に行って、
「みなさん、ありがとうございます!」と言った。
百合子が飛んで来て、洋子を抱き締めた。
「もう、あなたって人は。どこまですごいの。」
みんな、わあ~と拍手して、もう最高!などと言葉をくれた。

社長が立って、
「じゃあ、今日も、いつもの中華飯店でいいかな。」
「いいでーす!」

TBBの調整卓では、視聴率がうなぎのぼりで、35%になった。
小池と遠藤は抱き合って喜んだ。

三栄出版の社員たちは、ユニホームを着たまま、
洋子を囲んで、にこにこと通りを歩いて行った。

<おわり>


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スーパー洋子・全日本男子バレーボール戦③『息詰まる攻防戦』

いよいよ大詰めです。次回④で最終回です。
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スーパー洋子・全日本男子バレーボール戦③『息詰まる攻防戦』



笛が鳴った。
また、洋子のサーブである。
洋子は、助走をせず、リベロの大蔵を狙った。
大蔵は分かっていた。
手元で左右にひゅーんと驚く程曲がる。
大蔵は、両手を広げて構えた。

洋子のボールが正確に大蔵に飛んでくる。
思った通りひゅんと曲がった。しかし、届かない。
だが、後衛の太田が予測して構えていた。
さすが全日本である。
太田は拾い、セッター石井に送る。
そこから、東側のナンバー1アタッカー平井に渡る。
パワーは、鳥居を凌ぐ。

洋子は、平井の瞳を見てたま筋を読む。
平井は、クロスコースをじっと見ながら、ジャンプの瞬間、チラリとストレートコースを見た。
チラリと見るコースの方が断然怪しい。
ストレートだ!
洋子は、ストレートに飛んだ。
平井の大砲のようなスパイクが、
どんぴしゃりストレートコースに来た。

洋子はそれを難無く打ち上げ、
1でレシーブ。2で綺麗なトス。3でジャンプ。
洋子は、7m高く宙に浮いた。
あの恐ろしいスパイクが来る。皆そう思って構えた。
だが、洋子は見た。
敵の守備に、穴を見つけた。
そこで、穴を狙って、ひゅんと軽いボールを送った。
誰も、拾えなかった。

3-0

キャプテン平井は、タイムをとった。
「いやいやいや、参ったなあ。
 今のプレー見たか?
 前の回で、横田にサーブを当てて、西側を弱くしておく。
 次、リベロに変化球を送り、東側に曲げた。
 リベロが外したのを太田がフォローして、セッターに送った。
 これ、誰が見ても、俺らの西側が弱いだろ。
 当然、西側が狙われる。
 だから、俺は、西側から視線をずらさないでいた。
 で、裏をかいて、ストレートに打つつもりだった。
 しかし、人間て、やっぱり打ちたいところをチラと見ちゃうのよ。
 で、俺も、チラリと見ちゃった。
 それを読まれた。倉田はストレートに飛んで、
 俺の渾身のスパイクを軽々返した。軽々だぜ!

 そして、1でジャンプ・レシーブしながら、
 腹這いの受け身じゃなくて、空中から、右足着地。
 2でトスをあげて、3で恐ろしい7mスパイク。
 そう思って彼女は飛んだ。だが、上から見たら、守備の穴があった。
 じゃあ、スパイクはいらないと、軽くボールを穴に入れた。
 穴だから、だれも捕れない。
 なんで、スパイクをしなかったか。それは穴が小さかったからだ。
 誰かが怪我をするといけないと思ったんだよ。
 横田の受けたサーブだって、一番安全な胸元の骨を狙ったろ。」

「そう、骨のところだったから、俺のダメージはなかった。
 信じられないボールコントロールだった。」と横田。
「どうよ、これ。すごくないか。」と平井。
「ああ、すごいなんてもんじゃない。俺、ここまで考えて試合していない。」と太田。

「まあ、こんなすごい相手とやっているんだと思ってさ、
 プライドなんか忘れて、体当たりで行かねーか。1点取れるかどうかの相手だ。」
「はい。了解です。」
みんなは、心を一にした。
鳥居、高井、大蔵は、洋子が認められたことがうれしかった。

タイムアウトのときだけ、スクリーンにアナと解説の映像が入る。
そこでは、今、平井が言ったのと、ほぼ同じことが、解説の村井によって、
語られていた。
会場の観客は、洋子のすごさと人間性をより深く理解した。

「洋子ちゃん、すごいわ。」と百合子は言った。
「ほんとですね。」と坂田。

タイムアウトが終わって、洋子はボールを手にした。
相手コートを見ると、何やら、空気が違う。
引き締まっている。
『強くなってる。』と洋子は思った。

少し下がっている大蔵に、再び変化球を出した。
それを大蔵は、前に出て、変化の前にレシーブをした。
それを、直接平井の前に上げた。
洋子は、ブロックをしてみようと、平井の前に走った。
平井は、ボールを見ながら、ジャンプをし、一瞬、チラリと西の横田を見た。
『西か!』と洋子はジャンプの途中で、横田の方へ体を向けた。
平井は、スパイクのジャンプをしながら、ボールを打たず、
西の横田に、ひゅーんとボールを送った。
洋子は、1、2と助走をつけて、横田の方へ体を真横にしながら飛んだ。
横田がクイック・スパイクをした。
これは、決まったと思ったが、ボールは横田の背中にあった。
洋子は、一瞬、間に合い、横田のクイックをぽんと横田の背に乗せたのだった。

「うおおおおおお!」という歓声が上がり、拍手が起きた。
セット・プレイを一人で止めた。
ほとんど考えらえないことである。

4-0

アナ「いやあ、すごい防御でしたね。
   倉田さんは、横田選手にボールが送られることを、
   どうして分かったのでしょうか。」
村井「すごいなんてものじゃありません!
    スローモーション映像が流れました。見てみましょう。
   平井選手が、スパイクしようと、ジャンプをします。
   倉田さんは、ブロックをしようと、同時にジャンプをしましたが、
   ここです。画面を止めてください。
   スパイクの動作をしながら、平井選手の瞳が横田選手へ一瞬動いたのです。
   その瞬間、倉田さんは、ジャンプで宙にいながら、
   体をねじり、横田選手の方へ、体を向けて、すでに左足を出しています。
   信じ難い反応です。そして、判断力。
   着地してから、飛んだのでは、恐らく間に合わなかったでしょう。
   倉田さんが、体を真横にして飛んだのは、
   右手でも左手でも、クイックボールを拾えるようにです。
   もう、驚きとしか言いようがありません。」

説明を聞き、会場中から、感嘆の声が聞こえた。
選手も同じであった。

「なかなか、1点を取らせてくれんなあ。」と平井が言った。
だが、みんなは、少しもへこたれていなかった。

サーブ権は、ずっと洋子である。

洋子から、山なりの高いサーブが来た。
素直に落ちてくるはずがないと、大蔵は少し前に出た。
すると、案の定、棒が折れるように、90度近く曲がって、落ちて来た。
大蔵は、滑り込むようにして、セッター石井にボールを上げた。
横田がスパイク。
洋子は、走ってジャンピング・レシーブ。空中で1、2と脚を進めて立つ。
ボールが、相手コートまで行った。
セッター石井が、平井へ。平井が豪快なロング・スパイク。
洋子は、スパイクを見れば、落下点がわかる。
エンドラインぎりぎりの、ナイス・ロングスパイクだ。
洋子は、エンドラインに向かってダッシュし、スーパーマンのように飛んだ。
そして、ボールを見ないまま、後方にボールをあげた。
天井すれすれの大アーチである。

観客は、わああああああと歓声をあげた。
後ろの小林から、石井、平井、
平井は、ネット下にボールを落とした。
それを、戻って来た洋子が、拾う。
(鳥居も、大蔵も、高井も、4年前の試合を思い出していた。)

曲がって入って来るボールを、
セッターの石井が、思わぬスパイク。
洋子は、後ろ向きに下がりながら、オーバーで返す。
個性の違う平井と横田のスパイクを、コートの後方で、
洋子は、前後左右に振られながらも全部レシーブして、相手コートに入れる。
無理と思えるボールにも追いつく。
洋子が、前に行って攻めずにいるのは、このリズムを崩したくないからだった。
体のテンションがどんどん上がって来る。
すごいラリーが続いている。

その内、完全に無理と思えるボールを平井がスパイクした。
洋子は、横に飛んで美しい回転レシーブでしのいだ。
洋子は、「よし!」と気合を入れた。
洋子は、スパイクに入る平井に猛然と迫り、
ネットの5m手前から、平井と同時にジャンプ。
平井の渾身のスパイクを、洋子は、ダイレクト・スパイクとも言える片手ブロックで、
ボールを相手コートに突き刺した。

息することも忘れて、見ていた観客は、はあ~と、肩を落とした。
そして、総立ちとなり、
「うおおおおおお・・。」と叫んだ。
声と拍手が鳴りやまなかった。
みんな、感動していた。泣いている人もいた。
全日本の選手達も、思わず拍手をしてしまった。

「洋子ちゃん、すごい、すご過ぎる。」百合子は、ハンカチを目に当てていた。
「ぼくも感動しました。」と坂田の声も震えていた。
「すごかったねえ。」と社長が言った。

「ああ、これを見ない人は損だよなあ。」調整卓の小池は言った。
「ほんとに、そうですよ。」と遠藤。

5-0


(次回「全日本が得たもの」最終回です)


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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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