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「純・帰国編」①「変わった塾・ここなら受かるかも」

「純・帰国編」①「変わった塾・ここなら受かるかも」


九月になった。
お金も尽きた。
いよいよ帰国だ。
アメリカで女性として暮らしてきた日々と、もうさよならなのか?
いや、もうそれはできない。急に男として暮らすことなどもうできない。
私はそう考えていた。
私は、24歳になっていた。
あと10年、いや5年。女として通る内は、女でいきたい。

私は子供のとき、女の子として家で過ごしたことがある。
それに、私の女装願望のことは、多分両親は知っている。
そして、心は女性でないことも知っている。
思いきって、女の姿のまま家に帰ってみようか。
土産にアメリカの大学の卒業証書がある。
これを持って胸を張って帰ればいいんだ。
さぞ、驚くと思うけど、それはわずか1日か2日のことだろう。

私は美容院へ行って、背中まであった髪を切り、
頬が隠れるほどの長さにした。そして、柔らかくウェーブをかけた。
前髪は7・3に分けて、眉が隠れる程度の長さにした。

貯めに貯めた女物の衣類は、すべて日本に送った。
私は、黒のセミロングのワンピースに、
黒のレースのボレロを重ね、黒の靴、金のネックレス、イアリング。
そんな姿で、ニューヨークのケネディー空港を発った。



長かった飛行機の旅。
いよいよ日本だ。

成田空港について、まずはじめにロビーの窓から町を眺めた。
すると、どの建物の看板も日本語だ。
全部読める。その感激。

空港からバスに乗って、ターミナルからは、タクシーを拾った。
カッコよくタクシーで家に帰りたかった。

家についたのは、夜の7時ごろだった。
タクシーを降りるとき、思わず運転手さんにチップを上げてしまった。

実家は、縦に長い小さなビルで、その4階と5階と6階だ。
私は5階まで上がって、
「ただいまー。」と元気よく言った。



出迎えてくれた家族は、あっと言って驚いた。
息子が娘の姿で帰って来た。

母が言った。
「純、お前まさか、女になる手術を受けて帰ってきたの?」
「中身は男だよ。でも、向こうでは女として暮らしてきた。」
私は、そう答えた。

家には、同居している姉夫婦と両親がいた。
兄は、既に結婚して、別のところにいた。

夕食の席で、家族にいろいろ説明した。
家族はやっと納得してくれた。
「お前は、子供のときから、女の子に間違われていたからねえ。」と母。
「いつか男にもどるのか。」と父に聞かれた。
「女として粘りたいけど、何時かは、男に戻るんだろうなと思う。でも急には戻れない。」
と私は言った。

姉が言った。姉は昔から、私の女装に理解があった。
「いいの着てるじゃないの。送ってきた荷物、みんな女物?」
「安物だよ。ぼくが着てるからいい物に見えるんじゃない?」
「また、このお。」と姉に頭をはたかれた。
「髪にさわらないで。女の命だから。」と私。
「バカ。」と姉は言った。

こうして、帰国第一日目が、家族の理解を得て、無事過ぎていった。


*   *   *

(真っ先に、典子ママやリナに会いにいきますが、それは、別の記事で書きます。)

2年間、アメリカにいたというのは、浦島太郎のようなものだ。
右も左もわからない。
きちんとした就職をする前に、とりあえず働こうと思った。
私は、日本では教育学部、アメリカでは心理学部だった。
その関係上、塾などいいのじゃないかと思った。

新聞の求人欄を見ると、塾の求人がとても多いことが分かった。
そこで、2,3の塾に行ってみた。
そこでは、どこも、男なら男の姿をしてくれないと困ると言われ、冷たく断られた。
そりゃそうだろうなあ。
さぞ、非常識な奴と思われたことだろうと我ながら思った。

そして、4つめの塾。
求人は1人だった。そこに60人ほどの応募者があった。
私は、少しも懲りずに、お気に入りのワンピースを着て来ていた。
(普通は、黒いリクルートスーツで行くべきだったのだろう。)

広い教室で、国語、算数、英語の試験があった。
国語、算数は、何とか合格点が取れたと思った。
問題は、英語だった。

英語の出題は詩だった。
それを、和訳せよと言う。
びっくりしたことに、その英詩は、どうみても一般的な英詩ではない。
おそらくはロックの歌詞のようだった。
(多分、ピンク・フロイドあたり。)
ふざけているのか、楽しんでいるのか。
こういう問題を出すところは、きっと変な塾に決まってる。
私みたいな変なのを雇ってくれるかもしれないと希望をもった。

私は、試験会場の人たちを眺めた。
みんな50歳を過ぎた人のようだった。
若いのは私一人。
私は、これはイケルかもと思った。

私は、ロックだから、ロック風な言葉で和訳を書いた。



2日後、期待どおり、見事、採用通知が来た。
わあ、60人中の1人だあと感激した。


つづく(「魅力的な理事長・居心地のいい塾」)



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アメリカ自叙伝・第2部⑮「クリスマス・イブ」最終回

アメリカ自叙伝・第2部⑮「クリスマス・イブ」最終回


レレイは、今日の日の招待状を、1週間前にくれた。
レレイの手書きの心のこもった招待状だった。

私は、薄い黄色の光沢のあるワンピースに、
真珠のネックレス、真珠のイアリングをした。
爽やかに見える、メイクをした。

バックの中に必要なものを確認した。
ワルツのためのカセットテープも入れた。
念のため、ワルツ曲の小さなオルゴールも入れた。
レレイがプレゼントなので、別にフラワーアレンジされた、花飾りを持っていった。

約束の、6時半にレレイの家に着いて、ドアをノックした。
心臓がドキドキした。
お母さんがすぐにドアをあえてくれた。
円卓には、豪華なお料理が並んでいた。
私は、「メリー・クリスマス!」と言って、花飾りを渡した。

レレイは、白い光沢のあるワンピースを着ていた。
髪につけている、白い花が、レレイの可愛らしさを引き立てていた。
レレイは、まるで妖精のようだった。

飲み物で乾杯して、
「さあ、食べましょう。」とお父さんが言った。
「おいしそうです。どれから食べたらいいか、迷います。」と私は言った。
「お好きなものからどうぞ。」とお母さんが言ってくれた。

私は、円卓を回して、おいしそうなものから食べた。
「これは、すばらしくおいしいですね。」と言った。
「ええ、鳥なのですが、かりっとさせるのが、コツなんです。」とお母さん。

「ジュンさんがレレイと作ってくださった、薄皮のシューマイ。
 あれにはびっくりしました。家でも作ってみたんですよ。」とお母さん。
「本に載っていたんです。皮がないときこうしましょうって。」と私は笑った。

お父さんが、
「レレが、ジュンさんは、合気道が出来て、柔道部の黒帯の人に勝ったって、
 すごく興奮して帰って来ました。いままで、そんなこと一言もおっしゃらなかったでしょう。」
私は、
「子供のころから、やっていたんです。勉強は学校で全部済ませて、学校が終わったら、道場に急いで行って、
毎日4時間くらい、8年間やりました。」と、いった。
レレイが、
「そんなにやったの。他の事できないじゃない。」と言った。
私は、
「でも、日曜日は休みだったから。」と言った。
お父さん。
「ジュンさんが、あとから来た黒帯の強敵を倒すのに、ほんの2秒足らずだったって。」
私、
「合気道の試合は、あっという間なんです。」と私は笑った。

お父さん。
「レレイは、ジュンさんと『るすばん君』を作って売ったことが、
 売る側としての初体験で、しかもみんな売れて、ものずごく喜んでいました。」
お母さん。
「私たちからは、広場でものを売るなんて、そんな発想ぜったい涌きません。」
私、
「私たちも、売れるなんで思わなかったんです。ね、レレイ。」
レレイ、
「初め売れなくて、やっぱり無理かなと思っていたら、
 初めのお客がきたら、瞬く間に売れてしまったの。」
お父さん。
「とにかく、ジュンさんのおかげて、レレイには生まれて初めてのことの連続で、
 ジュンさんに出会って、レレイの毎日の表情が生き生きしていて、
 私たちは、とても幸せに思っていました。ほんとうにありがとうございます。」
私、
「あたしも、レレイを見ていると、いろんな発想が生まれるんです。
 それは、レレイのおかげです。」と言った。

その後、お話は途切れることなく続いて、テーブルのお料理が少なくなった。

テーブルが、一端片付いて、レレイのご両親が、レレイと私にプレゼントをくださった。
私には、小さなもので、リボンがついている。レレイのは細長いもの。

「開けても、いいですか。」と聞いて、
私は、包みを取った。小さいコンパクトに入っていたのは、ステキな水晶のイヤリングだった。
「わあ、ステキ。あたし、イアリングが大好きなんです。どうもありがとうございます。」
とご両親に伝えた。
レレイには、金色のステキなネックレスだった。
レレイは、ものすごく喜んでいた。
きっと、2人とも、高価なものである気がした。



では、レレイから、ご両親へのブレゼントだ。
私はレレイと目を合わせ、OKの合図を出した。
レレイが言った。
「実は、ジュンと私から、お父さん、お母さんにプレゼントがあります。」
「ええ?」とご両親は言った。

レレイと私は、ドラマチックに見えるように、
お父さんの椅子とお母さんの椅子を食卓の横に並べ移ってもらった。
そこから、4mくらいのところに、レレイは車椅子を位置した。
私は、その横に立っていた。

レレイは言った。
「このプレゼントを作るのに、ジュンと出会った9月20日から、ずっと今まで、取り組んできました。
 その間、ジュンは、片時も休まず、私のそばにいてくれて、私を励まし、勇気づけてくれました。
 ジュンの自由時間であるはずの時間を、みんなあたしのために、捧げてくれました。
 ジュンにはいい尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。
 実は、ジュンとあたしのプレゼントは、「物」ではありません。
 これが、お父さんとお母さんへの、プレゼントです。」

レレイはそう言って、初め手すりをあえて力一杯押す仕草をして、
その内、すくっと車椅子から立った。
ご両親は、目を見張った。
レレイは、それから、ご両親のところへ、歩いていった。
目を開き、目を潤ませているご両親に、レレイは言った。
「お父さん、お母さん。今までありがとう。あたし、歩けるようになりました。」
レレイ自身も涙ぐんでいた。
「レレイ、これは…夢じゃないのか。レレイは歩けるのか。レレイ。」
お父さんは、レレイを抱き閉めた。
レレイも泣いていた。
「レレイ、お母さんのところにも来て。
 こんな大きなプレゼントを、まさか今日くれるなんて、
 あたしは、あたしは…。」
お母さんもレレイを抱き閉めた。
「よくがんばったのね、お母さんはうれしい。
 ジュンさん、ありがとうございます。」
お母さんは、大粒の涙をレレイの胸にこぼした。

そして、親子3人で抱き合って喜びを分かち合った。
私も涙が止まらなかった。

私は、居間の方にいって、オーディオセットをさがした。
そして、ワルツ曲のテープを流した。
澄んだきれいな音楽が、居間から流れた。

レレイは、
「お父さん、お母さん、つづきがあるの。」と言った。
流れているワルツ曲を聞いて、お父さんは、
「レレイまさか…。」と言った。
「そのまさかなの。」
レレイは、お父さんを居間の方へ誘って、
手を取り合い、ワルツを踊り始めた。

それを見ながら、お母さんは、再び、ハンカチを目に当てた。
「ジュンさん、ありがとうございます。
 レレイが踊っています。
 まるで、夢を見ているようです。」お母さんはそう言った。

お父さんは、やがて、踊りを止めて、うつむき、膝を落とした。
そして、涙の目に手をやり、肩を揺らして、泣き始めた。
「レレイ。こんな日が来るなんて、夢にも思わなかった。
 私と今踊ったのは、レレイだね。間違いなくレレイだね。
 レレイ。よくばんがんばったね。
 ジュンさん、ありがとうございます。」
もう一度、お父さんは、レレイを抱き閉めた。

お母さんも、私も、涙でいっぱいになった。



それから、音楽の終わるまで、私たちは4人でワルツを踊った。
お母さんとレレイ、お父さんと私。
途中で、入れ替わりながら。

至福のときが、美しい音楽に乗って
ゆっくりと流れた。



アメリカ編第2部 完



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アメリカ自叙伝・第2部⑭「若者たちのクリスマス・パーティー」

アメリカ自叙伝・第2部⑭「若者たちのクリスマス・パーティー」


今日はウォンのハウスでの、クリスマス・パーティー。
私は少し大人っぽく、ブルーの光沢のあるワンピースを着た。
胸に銀のネックレス。銀のイアリング。
時間になりレレイの家に迎えに行った。

車椅子で出て来たレレイは、ピンクのサテンのワンピースで、
ネックバンドで着けたピンクの花が首の真ん中にあって、
特別に可愛かった。
「わあ、レレイ、可愛い!今日、もてもてだよ。」と私は言った。
「ジュンもすごくステキ。」とレレイは言った。

レレイのお母さんが、
「自家製なんですけど、これを。」と大きな箱をもたせてくれた。
アップルパイとのこと。
「わあ、大きいですね。みんな喜びます。」と私は言った。
レレイが歩けない振りをして、車に乗せ、
車椅子を、後ろにしまった。



「ちょっとドキドキしちゃう。」とレレイが言った。
「みんなも、ハイになってるよ。同じだよ。」と私は言った。
ハウスに近づくと、もう賑やかな人の声がする。
車を止めて、私はまず、アップルパイを玄関にいたウォンに渡した。
ウォンがそれを紹介する声がした。
みんなの、「ウォー。」という声。
私は、車椅子を出して、レレイを乗せた。
そして、ハウスの玄関に車椅子を寄せた。

なんだか、全員そろっている感じ。
私は、レレイを車椅子から抱き抱え、
玄関に入って行った。
すると、「メリー・クリスマス!」というすごい歓声と拍手があった。
クラッカーも鳴った。
みんなそろっている。
ウォンが、「ジュンとレレイには、10分遅らせた時間を教えたの。」と種明かしをしてくれた。
レレイは、その歓迎振りに驚いたようだった。
「ここ、ここ、どまんなか。」とみんながソファーの中央を指差した。
そこにレレイを座らせた。
「みなさん、はじめまして、レレイです。」とレレイは挨拶した。
それだけで、すごい拍手が起こった。
「ねえ、ジュンが土だらけで助けた車椅子の人でしょう?」と誰か。
「そうよ。」と私。
「新聞じゃ写真がなかったけど、こんなに可愛い子だったの?」とまた誰か。
「そうよ。」と私はまた言った。
「可愛いなあ。」と、みんな口々に言った。

去年は、クリスがヒロインだったけど、今年のヒロインは、レレイであるようだった。
それからフリーになると、みんなは、レレイの回りに集まって、
次々と質問攻撃が始まった。

私はその間、懐かしい人たちと、話をしに回った。
まず、クリス。
クリスは私を見ると、涙を流さんばかりに抱き付いてきた。
「ジュン。会いたかった。」
「クリス、またきれいになったね。」
「ほんと、うれしい。」とクリス。
そばにトイがいた。
「トイ、毎週末、車を飛ばしてるんですって?」
「うん。土曜に行って、土曜の夜は泊めてもらうんだ。
 で、日曜に帰る。」とトイは言った。
「なかなか出来ないことだと思うな。さすがトイ。」
クリスが言った。
「トイは、かかしたことがないの。必ず来てくれる。」
「クリスが幸せそうでよかった。トイは、ナンバー1の誠実な人だから。」



アシフとリリにもあった。
「アシフ、今も寮にいるの。」
「試験にリリといっしょに受かったんだよ。
 それで、2人で大学のアシスタントしてる。
 で、夫婦用の戸建て寮の方に移れたんだ。
 もう、一日5ドルの生活とはさよならだ。」とアシフは笑った。
「わあ、それはおめでとう。すごい、アシフ、そして、リリ。
 リリ、アシフは、未だに油の手でドアノブ回すの?」と聞いた。
「あたしが、うるさく言ってるから、触らなくなった。」とリリは笑った。
「あれ、ぬるっとして、困るわよね。」と私はリリと笑った。



ユンに会った。
「ユン、今日のパーティーありがとう。」
「ぼくも、人の役に立ちたいと思って。」とユン。
「ユンのそういうとこ、変わってないなあ。」と私。
「今、ウォンと仲よくしてる。二人ともジュンを好きだったどうし。」とユンは少し赤くなって言った。
「ユンなら、ウォンを絶対幸せにできると思う。」と私は言った。



レレイのところに戻ると、まだ、青年達が取り囲んでいた。
「ね、今度、ぼくが車椅子押すから、まかして。」
「時間割教えてくれたら行く。」
「俺だって、押したい。独り占めするな。」

「集団ダンス始めるわよー。」とダンスの上手いミミが隣の部屋から叫んだ。
「じゃあ、またね。」と青年達はレレイに言って、ダンスの方へ行った。
他のメンバーも、そっちの方へ言った。
人のいなくなったレレイの隣に私は座った。
「ぼく達の休憩タイム。」と私は言った。
「そうね。」とレレイ。
「どうお?楽しめてる。」
「うん。なんかお姫様になった気分。
 こんなに男の子からちやほやされたの初めて。
 すごく、うれしい。」とレレイは言った。
よかったなあと思った。

「今日ね、世話役のウォンとユンがね、ぼく達に開始時間より10分遅れた時間を教えたの。
 そして、みんながそろってから、ぼく達が来るようにしてくれたの。
 みんなで、レレイを歓迎したかったから。」と私は言った。
「そうだったの。いい人たちね。あたし、感激した。ここの人達と、ずっとお友達でいたい。」
レレイはそう言った。
「来年は、レレイは、あの中で踊っているね。」と私。
「うん。でも、来年はジュンがいない。」レレイが淋しそうな顔をした。
「ぼくの次に、すぐ誰かを好きになるさ。」
「かもしれない。でも、ジュンは、あたしにとって、永遠。
 一生忘れない。」
「ぼくも、レレイのことは、一生忘れない。レレイと踊ったワルツを一生忘れない。」



踊りが終わって、みんながもどってきた。
次は、ユンがギターをもって、クリスマス・ソングをいくつか歌った。
それから、クリスのご両親からのクリスマスケーキとレレイの家からのアップルパイにナイフを入れた。
大勢いたので、すぐになくなっていった。

時間がそろそろ閉会に迫っていた。
レレイが、手を挙げた。
「あのう、お礼の言葉を述べてもいいですか?」と言った。
ウォンが、
「みなさん。会はそろそろ終わりです。
 レレイから、お礼の言葉があります。食べているものをストップして、聞いてください。」
そう言った。

みんなが静かになって、レレイを見つめた。
レレイは、ソファーから立った。

「みなさん。今日はありがとうございます。
 初めてみなさんに会うのに、ドキドキしました。
 でも、やってくると、みなさんがそろっていて、温かい拍手で向かえてくださいました。
 係のウォンさんとユンさんが、あたしとジュンに10分遅れた時間を告げてくれたからだとしりました。
 きっと、あたしが初対面であることと、車椅子であることで、励ましの気持ちを込めて、してくださったことだと思います。
 おかげで、あたしは、みなさんの中に、こころ温まる気持ちで、すうっと入っていけました。
 そのご好意が、まず初めにうれしかったです。

 あたしは、4年前に交通事故に遭い、歩けない体になりました。車椅子の4年間、親切にしてくれる人は、大勢いました。
 でも、今日は、私の回りに大勢の人がきてくださり、まるであたしがお姫さまのようにちやほやしてくださいました。
 そんなことは、この4年間に一度もなくて、まるで夢のような気持ちがしました。
 ほんとにうれしくて、泣いてしまいそうでした。

 ここにいる方々の多くは、過去に悲惨な状況の中にいらして、人々の不幸や苦しみを見て、
 心に大きな傷を今も背負っている方がいらっしゃると思います。
 だのに、そんな辛いものを、一時横に置いて、車椅子のあたしに特別な歓迎をしてくださいました。
 そのことが、ありがたくて、今日は感激しました。」

レレイは目に涙を浮かべていた。レレイは続けた。

「実は、今私は、少し歩けるのです。9月から、ジュンがずうっとサポートしてくれて、歩けるようになりました。
 それは、あたしの両親へのサプライズにしたかったので、ここでは、歩けないように見せていました。
 でも、車椅子だという私に、厚い歓待をしてくださったみなさんに、このことを隠していては、いけないと思いました。
 少し嘘をついてしまいました。そのことをお詫びします。ごめんなさい。
 今日来てよかったです。本当によかったです。みなさん。ありがとうございました。ウォンさんユンさんありがとうございました。」

レレイは、涙を流しながら、言い終えた。
みんなから、すごい拍手をもらった。
「歩けるようになってよかったね。」
「おめでとう!」という声もたくさん聞かれた。

閉会の言葉があった。

「レレイ、いい挨拶だったよ。苦労をして来たレレイだから、言えた言葉だったんだね。」
私は言った。
「歩けるようになったこと、言わないではいられなかった。」
「うん。レレイ。正解だったと思う。ぼくがレレイだったら、やっぱり隠せなかったと思う。」

もう一度みんなに握手をして、最後に、ウォンとユンに感謝をした。
「あたしたちに、10分遅れた時間で伝えてくれたなんて、
 だれのアイデア。」と聞いた。
「ぼくの?」とユンが笑った。
「ありがとう。最高のサプライズだった。」と私は言った。
「こちらこそ、レレイの最後の言葉、うれしかった。
 やってよかったなって思った。」ユンは言った。
「うん。泣いちゃった。」とウォンが言った。

2人に別れを告げて、車に乗った。
車椅子は使わずに、車の中に入れた。

「さあ、今度は、クリスマス・イヴだね。」と私は言った。
「ちょっと緊張するな。」とレレイ。
「ぼくもだよ。」
2人で顔を見合わせて笑い、
車のアクセルを踏んだ。


つづく (次回は、「クリスマス・イヴ」。第2部・最終回です。)



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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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