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江戸町遊び人・油川京之介⑤「ゴロツキ5人が来る」

予告の前にもう1話あり,
昨日の予告が違ってしまいました。すみません。
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江戸町遊び人・油川京之介⑤「ゴロツキ5人が来る」


道場は、9時に開く。
9時前に早列ができている。
京之介と彩芽は、白い道着を着て、
彩芽は、髪を下ろし、肩のあたりで結んでいる。
額の左右に、わずかな前髪があり、
頬の髪の房も可愛く、化粧をしていなかったが、
誰が見ても、可愛い女性であった。

京之介は、早速、道場の正面にいる雪之丸と桔梗に、
彩芽を紹介した。
そのとき、彩芽が女子ではないことも、そっと伝えた。
「そうなの。まあまあ。」と桔梗は喜んだ。
「桔梗様と私もね、仔細ある体だから、お仲間だよ。」
と雪之丸が言った。
「そうなんですか!」と京之介は、目を輝かせた。

「京之介、もしやあなたは、女子の成りをしたいと思っていますか?」
と桔梗が言った。
京之介は、図星を突かれて、真っ赤になってしまった。
「そ、それは、極たまにそう思います。」と京之介は言った。
「京之介が、女子の成りをしたら、さぞ可愛いでしょうね。」
と桔梗が言って、雪之丸と笑った。
彩芽も、こっそり笑っていた。

稽古が始まり、10時ごろ。
玄関に5人の若者が来て、もじもじとしている。
あのときのゴロツキだが、少しましな格好をしている。
雪之丸と桔梗は、玄関前の土間に迎えに行った。
「初めて、稽古に来たのね。」と桔梗。
「実は・・・。」と言って、あのとき、京之介の正面にいた権三が、
門前町の出来事を話した。
京之介と彩芽は、あのときのゴロツキとわかり、
玄関そばに隠れて、話を聞いていた。

「ほう。君たちをあっという間に倒した娘が、
 『やられ賃』だと言って、一人に1両をくれたの?」と雪之丸。
桔梗と雪乃丸は、玄関の踏み台に座って聞いた。

横にいた真吾が言った。
「そうなんです。俺らが、全部悪いのに、くれたんです。」
スリの佐助が、
「そんなことされて、俺ら、もう悪いことやりにくくなって、
 心を改めて、大川道場で、修行しようと思ってきました。
 その人は、『暇なら、大川道場にお出で。』って言いましたから。」

雪之丸と桔梗は、顔を見合わせた。
「家(うち)は、『戦った後、相手と仲良くなる。』っていうのが、
 一番大切な精神なんだね。
 その娘は、見事、そうしたことになるね。
 君たちと、心で、つながった。
 しかし、はて、そこまで到達している娘が、道場にいるかなあ。」
雪之丸は、言った。

「ねえねえ、あなた達みたいな体格のいい人たちを、
 その子は、どうやって、あっという間に倒したの。」
桔梗が言った。
そのとき、じっとしていられず、彩芽が出てきた。
「あたし、そばにいたので、わかります。」
と彩芽は言い、玄関で4人を使って、実演して見せた。

「ほう、小物入れを上に投げ、4人がそれを見たときに、
 右の彼の棒を引き、脇の下に肘鉄をねえ。」
と雪之丸。
「はい。左右の二人は、剣道に不慣れで、棒を固く握っていましたので、
 棒を引けば、体もついてくると判断したようです。」
彩芽は、どこか得意気に言った。

雪之丸と桔梗は、顔を見合わせた。
「そんな技、教えたことありませんね。」と桔梗。
「はい。」と雪之丸。
「あの、とっさにそうしようと思ったようですよ。」と彩芽。
雪之丸は、桔梗とまた顔を見合わせた。
「それで、その一番大きい人は、上段に構えていましたが、
 左右から倒れて来た二人に、つまづき、前のめりになりました。
 そこを、その人は、指二本で、喉に強烈な突きをかまし、
 彼が、倒れて来て、持っていた棒をそのまま引いて、
 後ろの一人のミゾオチを打ちました。
「指で、喉をついたの?」と雪之丸。
「はい。指を鉄のようにしたようです。
 先生が一度見せてくださったのをみて、自分で練習してみたそうです。」

「『水流鉄化』を自分で?」と雪乃丸と桔梗は顔を見合わせた。

「それだけじゃないんです。」と彩芽は、編み笠の武士のことも、
身振り手振り豊かに話した。

「え!居合より早く、お侍の右肩に移動したの?」雪之丸は、驚いて聞いた。
「はい。刀が鞘から出たときは、もう移動していました。
そして、やってくる腕を、腕固めにし、相手に参ったをさせました。」と彩芽。
雪之丸と桔梗にとって、大正解の交わし方であったが、
道場の誰にも、教えたことがない。
とっさにそうしたならば、それは、大変な才能である。

「そのお侍は、編み笠をとり、地面に手をついて、無礼を詫び、
 千葉道場の千葉重三郎だと名乗りました。
 そして、雪之丸様と桔梗様によろしくお伝えくださいと、
 言いました。」と彩芽。
「千葉重三郎だったの!」
と桔梗と雪之丸は、同時に叫んだ。
その時、雪之丸と桔梗は、その娘が、女装した京之介だったことを確信した。

一番体格のいい権三が、そのうち、彩芽を見て言った。
「あんた、あのときの女の人と一緒だった人だ。」
みんなも気が付いた。
「あの人は、どこにいるんだ。誰なんだ。
俺たち、一言謝って礼を言いたい。」と皆はそう言った。
「今日は、いないみたい。」と彩芽は、苦しい返事をした。

『彩芽は、結構おしゃべりだなあ。』と京之介は、襖の陰に隠れてあきれていた。

5人のゴロツキは、その日、稽古を受けた。
年少の女の子にポンポン投げられ、武道のすごさを思い知った。
道場では、お昼に必ず大きなお結びが出る。
桔梗と年長の女子で作る。
彩芽も手伝った。
これが、子を持つ貧しい家庭の大きな助けとなっている。
そして、3時には、おやつが出る。

5人のゴロツキは、それが大いに気に入ったと見えて、
これからも、毎日来ると言って帰って行った。



京之介は、朝、家を出るとき、
今日の夜、自分が妻として迎えたい人があいさつに来ると、
父宗之介に言った。
「いつの間に、そんな人を見つけたのだね。」
と、父宗之介は、いつのも優しい声で言った。
「まだ、長いお付き合いではないのですが、
 私は、その人以外は、考えられません。」
「そう。」と父。
「少し、仔細のある人です。」
「わかった。今夜、家族全員集めておこう。」
父はそう言った。
京之介は、父はつくづく人格者だと思った。

稽古が終わり、京之介は彩芽の茶屋にいっしょにいき、
婆様も呼んで二人に話した。
「今日父に、私が妻にしたい人が来ると言いました。
 父は、夜の9時に、家族をみんな呼んで待っていると言いました。
 彩芽さんと私が夫婦になることを、認めてもらおうと思っています。
 来てくださいますか。」
婆様と彩芽は、感激して涙を見せた。

「昨日の京之介の言葉は、本心からだったんだ。
 私、うれしい。」と彩芽。
「私は、もっと先のことかと思っていました。
 京之介さんの実がわかり、うれしおます。」
婆様は言った。

だが、うれしさの後、現実の問題が思われた。
彩芽が言った。
「家は陰間茶屋で、胸を張って言える商売じゃない。
 それに、あたしの体は、女子じゃない。
 京之介は、江戸有数の大棚の御曹司。
 私の方は、あまりにも条件が悪い。
 京之介さんの妻になるなんて、図々し過ぎないかしら。」
彩芽は、不安の目を向けた。

婆様も言った。
「先のことや思うて、現実をあまり考えませんでしたが、
 いざとなると、彩芽の言う通りだと思います。
 京之介さんと彩芽では、あまりにもつり合いがとれません。
 京之介さんのご家族は、反対するに違いありません。」

「妻が男と知って、認めてくれる家など、この世にあるはずがないと。」と彩芽。

京之介は、彩芽や婆様の気持ちが、十分に分かった。
しばらく考え、口を開いた。
「婆様と彩芽のお気持ち、よくわかります。
 しかし、反対されることを百も承知で、
 試しに私の家族に会ってくださいませんか。
 希望はなくもないんです。
 父は武家であっても、小さいときから町の貧しい子と遊び育ちました。
 今の呉服問屋でも、客であれば、どんな貧しい人でも頭を下げます。
 母も同じです。
 そして、そんな父母のもとで、5人の子は育ちました。
 私の家族は、世の中で、何が大切かを知っています。
 ま、上の兄さんは、ちょっと堅物なんですけどね。」
そう言って、京之介は、長男の幸之助の固い顔を思い浮かべた。

「あたし、京之介と夫婦になりたいから、行く。」
彩芽が言った。
「そやな。ダメ元やさかい、行ってみよか。
 京之介さんのご家族や。ええ人ばっかりに違いない。」
婆様がそう言った。
京之介は、にっこりと二人を見た。


(「油川家に結婚の許しを求めにいく」につづく)


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江戸町遊び人・油川京之介④「彩芽に仔細あり」

<第2部>という感じで、気持ちを新たに、綴ります。
早速長いのですが、どうか、お読みくださると、うれしいです。
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江戸町遊び人・油川京之介④「彩芽に仔細あり」

 
4人のゴロツキをやっつけてから、二人は足早に帰路についていた。
「ねえ、京之介は、ものすごく強いのね。知らなかった。」
と彩芽は言った。
「それほどでもないよ。彩芽こそ、あの首浪人のお皿を打ったじゃない。
 あの浪人は、道場なら、4、5段の強さだよ。
 彩芽、相当剣道やったんだね。」
「うん、剣道やったのは、ほんと。
 でも、京之介の方が、ずっとずっと強い。
 お店に帰ったら、二人で剣道やろう。裏庭で練習できるの。」
「うん。いいよ。」
二人は、そんなことを話していた。

そして、もう野次馬は、後ろに遠くなったと思い、安心していると、
前に、編み笠の大柄な武士が立っていた。
静かだが、そこはかとない気配を発している。
彩芽もそれを感知したのか、歩を止め、ごくりと喉を鳴らした。
強い。
このお侍は、とてつもなく強いと京之介は感じた。

「無手流にて4人を倒すのを見ておった。並々ならぬ腕。
 しかし、私の剣を交わせるかな?」と編み笠の武士は言う。

武士は、左にさしている刀に右手を置いて、やや身を沈めていた。
サヤは、峰打ちの向きだ。殺気はない。
居合か?
京之介は、彩芽を遠ざけた。
下駄を脱いで、足袋になった。

男は思っていた。
上に飛べば、着地のとき、返す刀で切る。
後ろに下がれば、これも返す刀で、一歩踏み込んで切る。
無手では、俺の刀を払えぬ。
死角のない俺の居合を、無手流は、さあ、どうかわす。

武士が「エィ。」と横一文字に剣をなぐった。
閃光が走るほどの速さだ。
だが、京之介の方が速かった。
京之介は、すでに、武士の右の肩のところに、身を移していた。
つまり、武士が、横一文字に切り終わったとき、武士の腕の後ろに京之介がいるのである。

京之介は、やってきた武士の手首を受け止め、90度ひねり、刀を落としめ、
武士のひじを山形に曲げ、ひじを向うに押し、手首を引き付けた。
これで、「腕固め」の完成。武士は、びくとも動けない。

「参りました。」と武士が言ったので、京之介は、手を離した。

「見事な。居合に対し、こんな受け方がありましたか。考えもしなかった。」
武士は、そう言って地面に両膝をついて、編み笠を取った。
「あなたが、4人のゴロツキをあっという間に倒したのを見て、
 私は、足早にここにきて、あなたを待っていました。
 一手浴びせて、無手流のあなたがどう動くか知りたかったのです。
失礼の段、何卒、お許しあれ。」
武士は、そう言って、地面に手をついた。

「私は、桶川町・千葉道場の千葉重三郎と申すものです。
 できますれば、あなた様のお名前と道場をお聞きかせ願いたい。」武士はそう言った。
京之介は、女装をしているので、名乗るわけにはいかず、
「名は、仔細あって申せませぬが、神保町の大川合気流道場のものです。」
そう言った。
「そうですか。大川道場には、あなたようにお強い方が、ゴロゴロいるのですか。」
「それは、わかりませんが、私は、道場で誉められたことがありません。」
「あはは、ご冗談を。今日は、自分の未熟を知りました。ありがとうございました。
 道場主の、雪之丸様、桔梗様によろしくお伝えくだされ。」
武士は、そう言って、立って一礼して、編み笠をかぶり去って行った。

彩芽が来た。
「ね。千葉重三郎って、千葉道場の塾頭じゃない。一番強い人。」
「うん、多分ね。」
「わあ、京之介、すごーい!」と彩芽は大はしゃぎだった。


茶屋に帰ると、彩芽は、婆様に、京之介のことを興奮気味に話した。
「まあ、京之介さんは、そんなに強いのかい。」
婆様はうれしそうに言った。
「だから、婆様、あたしの髪をまっすぐに下ろして、
 あたしの剣道着を出して。」
「まあ、忙しい子やなあ。」と婆様は、顔をほころばせた。

彩芽は、せっかく結った島田の髪をまっすぐに下ろして、
肩の上あたりで結んだ。
彩芽は、頬の髪を房に切って垂らしていたので、
それが、乙女らしくて可愛かった。

京之介も、髪を戻してもらい、後ろできっちり1本に結び、
いつもの白い道着に着替えた。
彩芽も、白い道着だ。

裏庭は、地面が土だった。
二人共草鞋を履き、裏庭に行った。
婆様も、縁側で見ていた。
「ね、あたし、稽古相手がいないから、こんなことやってるの。」
彩芽は、竹刀を持ち、5本の薪を宙に投げ上げた。
そして、落ちてくる薪を5本とも、見事に竹刀で打ち当てた。
婆様が、にっこりしていた。
「わあ、彩芽すごい。ふつうできないよ。」と京之介は言った。
「京之介なら、軽くできそう。やって見せて。」彩芽は言った。

「目隠しして、できると思うよ。」京之介は言った。
「うそ!ほんと?」と彩芽は飛び上がり、婆様の手拭いを借り、
京之介に渡した。
目を隠した京之介は、竹刀を持ち、5本の薪を上に投げ上げた。
そして、落ちてくる薪を、すべて、打ち当てた。

「わあ~、すごい。どうして?どうしてそんなことができるの?」
と、彩芽が興奮気味に言った。
婆様が、
「あたしも、不思議です。なんで、わかるんですか。」と、言った。
「う~ん。練習した訳じゃないですが、なんか、わかるんです。」
と、京之介は、頭を掻きながら、婆様に言った。

「大川合気流は、無手が本流なのね。
 彩芽、私に思い切り打ち込んできて。」
京之介は、そう言って、自分の竹刀を脇に置いた。

京之介になら、手加減はいらない、
彩芽は、上段に構え、思い切り京之介の「面」を打ちに行った。
すると、京之介は、紙一重に彩芽の竹刀をよけ、
半身になって、竹刀の横にいる。
「わあ、すごい。」と彩芽は、感激し、
何本も面を取りにいった。
しかし、どうしても京之介が避けるのが早い。
「これが、最後。思い切り打ってきて。」京之介が言う。
彩芽は、全力で、打ち込んだ。
すると、京之介は、避けた後、ぱっと彩芽の竹刀を奪った。
「わあ、京之介は、やっぱり強いんだ。あたし、うれしい。」
彩芽は、そういって、京之介に抱き付いた。
お婆様も、感心して、何度もうなずいていた。

その日、婆様から、夕の膳を食べて行ってほしいと言われ、
京之介は、彩芽の部屋の上座に座っていた。
待っていると、彩芽は、島田の髪に戻り、艶やかな着物に着替え、
京之介の膳を持ってきた。
そして、一度控え、その後、婆様と二人でやって来た。

二人は、並び、正座をして、三つ指をついて、京之介に頭を下げた。
何か、改まった風である。
何事かと京之介が、見ていると、婆様が、話し始めた。

「京之介様に、私達の仔細をお話しいたします。
どうぞ、お聞きくださいますように。
 私達は、京都の武家・木下の家のものどす。
 彩芽が、3歳のとき、父新八郎が、御前試合にて、命を落としました。
 試合では、寸止めか、決め技で試合は終わるはずですが、
 相手の武士は、虫の居所でも悪かったのか、
 判定が下った後も、新八郎を木刀で殴り続け、
 それが元で、新八郎は、3日後に息を引き取りました。
 相手の武士は、菅原清右ヱ門という名で、松下藩に属し、
 今、江戸で3大道場の一つ、松下道場に通っています。

 我が家は、新八郎の死後、母光代が、病気で他界し、
 この婆と彩芽だけが残りました。
 父の敵討ちをと、彩芽には、剣道を10年間習わせました。
 彩芽は才能が有り、5、6段の腕前であるようでしたが、
 年齢制限で、3段以上はいただけませんでした。

 私達は、彩芽の父、新八郎の敵討ちをと意を決しましたが、
 仇討は、御法度、通行手形など、もらえませんでした。
 しかし、無念を忘れることができず、菅原清右ヱ門を追って、
 この江戸へ向かいました。
 それが、途中、運好く旅芸人の一座に入れてもらい、彩芽は女子の姿で、
 踊りや三味線を習いながら、この江戸まで、やってくることができました。
 彩芽は、生まれた時から、心が女でしたから、
 女になることを嫌がりませんでした。

 仇・清右ヱ門は、男色の趣味があると風のうわさに知り、
 清右ヱ門が来るかもしれないと思い、貴重品を売ったお金で、
 陰間茶屋を営み、待ち受くる日々でした。

 私達は、敵討ちご禁制の今、菅原清右ヱ門の命を狙おうとは思っていません。
 ただ、御前試合で、不当に息子新八郎を叩きのめした清右ヱ門に、
 せめて、『面』の1つでも、打ち込みたいと思っている次第です。」

隣で、彩芽は、涙を拭いていた。

そうだったのか・・とうなずきながら、京之介は聞いていた。
彩芽が、5、6段の腕前であることは、
首侍の頭の皿を叩いたときに、思っていた。

「仇の菅原清右ヱ門は、知っています。
 確か、松下道場の3番手です。
荒々しい剣を使う男です。
 千葉道場と並び、名門の松下道場の3番手は、恐ろしく強いでしょう。」
京之介は言った。

「はい、彩芽だけでは、無理だと思います。
 そこで、京之介様の腕を拝見しました今、
 京之介様に、助太刀をお願いできないかと、
 こうして、お願いに上がっています。
 なにとぞ、助太刀の件、お引き受けくださいますようお願い申し上げます。」
婆様と彩芽は頭を下げた。

「私など、菅原清右ヱ門には、到底及ばないと思いますが、
 助太刀は、お引き受けします。」京之介はあっさりと言った。

「本当!」と彩芽は京之介を見た。

「うん。これは、彩芽にまだ、相談していないことだけど。」
と言って、京之介は、座布団をはずし、婆様に体を向け、
畳の上に正座した。
「婆様。私は、彩芽と夫婦(めおと)になりたいんです。
 だから、妻となる人のためなら、何でもします。」と京之介。

「そ、それは本心ですか?」と婆様。
「京之介、本当?」と彩芽。
「うん。本心。」と京之介。
「だって、あたしは男なのに。
 それに、京之介は、天下の油川屋の御曹司なのに。」彩芽。
「この世で、私のような者をわかってくれるの、彩芽しかいない。
 女の姿をした彩芽が、好きでたまらない。
 彩芽と一生寄り添っていけたら、どんなに幸せかって、ずっと思って来た。」

「京之介。本気?本気だったら、あたし、うれしい。」
彩芽は、そう言ってポロポロと涙を流した。
「婆様、お許しをいただけますか。」と京之介。

「お許しも何も、まあ、うれしい。仇討が成ったときよりうれしおます。」
と、婆様も泣き出した。

「願いが叶うよう、作戦を三人で考えましょう。」
京之介は、にっこりと言った。

その後、三人で膳を囲み、楽しい夕餉が過ぎていった。


(「油川家へ結婚の許しを求める」につづく)


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江戸町遊び人・油川京之介③「京之介、目にも止まらぬ早業」


※大勢の方が、このお話を読んでくださいましたので、
もう少し先まで、投稿を続けたいと思います。
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江戸町遊び人・油川京之介③「京之介、目にも止まらぬ早業」


男は、二人を後ろから足早に、20mほど追い越し、
そこから、Uターンして来た。
着流しの、どこにでもいるような遊び人風である。
男はイメージしていた。
両腕を袖から引っ込めて胸の前に置き、女にぶつかったとき、
『おっとごめんよ。』と言いながら、胸から手を出し、
女の胸の財布を抜き取る。
素早く自分の胸の中に入れて、さっと仲間に渡す。

首侍の頭の皿を打った女なら、用心がいる。
もう一人は、隙だらけだ。
男は、あえてキョロキョロとし、
京之介にぶつかり、まんまと財布を抜いた。
「おっと、ごめんよ。」と言うつもりが、
「お」の音を言ったとき、
「えいっ!」という女の声が聞こえ、自分の体は、宙に浮いていた。
そして、女から3mも離れた地面に、背をしたたか打った。

わっと人が集まって来た。
「なんだ、どうした?」
「スリだよ。スリがばれたんだよ。」
「あの娘さんが、男を投げ飛ばしたんだ。」
「まさか、あんな若い娘さんが投げたのかい?。」
「見たよ。男が3mは、飛ばされた。」
「こりゃすげーや。」
などと、言い合っている。
「姉様、すごい、何があったの?」と彩芽が聞いた。
「財布をすろうとしたの。」
「で、投げたのは、姉様なの?見えなかった。」
「えへん。あたし、大川合気流道場に通っているのよ。」
と、京之介は、得意気に言った。

見ると、投げられた男のそばに、4人のゴロツキが来ている。
ゴロツキと言っても、かなり筋肉のある強そうな男達である。
それぞれ、木刀代わりに棒を持っている。

4人が、京之介をにらんだとき、
「彩芽は、離れていて。」と京之介は言った。
「でも、京之介より、あたしの方がきっと強い。あたしに任せて。」と彩芽は言った。
彩芽が、かなりの腕であることを、京之介は知っていた。
「いいから、離れて。」と京之介は、彩芽を無理にも遠ざけた。

ゴロツキは、やって来て、京之介の前後左右に立ち、京之介を囲んだ。
再び、見物人が集まった。
ゴロツキ達から離れて、道の上と下に固まっている。
さっきとは違い、50人、60人になっている。
猿回しの芸人も猿を抱いて見ていた。

みんなゴロツキが恐いらしく、小声で話している。
「ああ、誰かそこらに、強ええ、お侍がいないかねえ。」
「ゴロツキにみんなで石を投げたらどうでえ。」
「石なんか、都合よく落ちてるもんかね。」
「ああ、どうなるんだあ・・?」
人々は、そんなことを言い合っていた。

「女だてらに、とんだ生意気だぜ。
俺らの仲間が何したってんだ。
 罪もねえのに、イテエ思いさせやがって。
 謝るなら、許してやるから、小判の5枚10枚置いて行け。」
正面の一番強そうなボスが言った。

「へん、何をしたかは、そいつに聞いてごらん。」と京之介。
「何を!女だろうが、容赦はしねーぜ。
 痛い目にあいてえってのか。」
「ごたく並べてないで、やれるもんなら、やってきな。」
「てめえ!」
男はそう言って、棒を上段に構えた。
同時に、左右の男は正眼に構え、
棒の切っ先を、京之介の首近くに寄せている。
後ろに一人。

見物人は、固唾を呑んで見ていた。
真ん中の娘が、少しも恐がっていないことが、希望であった。

京之介は、左右の男を見た。
剣術に不慣れなのか、棒を固く握りしめている。
正面が強い。
後ろは、初めて棒で構えたのか、完全に腰が引けている。

京之介は、4人を見渡し、
ひょいと手に持っていた小物入れを、真上に高く放り投げた。
一瞬、男たちは、宙に目を移した。
その間一発、京之介は、右の男の棒を左手で引き、
棒に引かれて男が泳いで来たとき、
脇の下の急所に、肘鉄を深く打ち込み、
同じく、左の男の棒を引き、脇の下に肘鉄。
前に2人が倒れ、つまずいたボスが、上段に構えたまま倒れてきた。
その喉元に、2本の指で強烈な「突き」。
落ちて来た棒をそのまま受け取って引き、前を向いたまま、
後ろの男のミゾオチを突いた。

そこへ、放り投げた小物入れが落ちて来て、京之介は、ポンと受けた。

2秒もかからず、男たちは皆急所を突かれ、
気絶したまま、重なるように倒れた。

100人近くの見物人が、
うおおおおと、すごい歓声を上げ、飛び上がり、互いに抱き合った。
「よ、よ、あんなの見たことあるかい。」
「ないよ。お侍だって、ああは、いかねえ。」
「あっという間だったぜ。」
「どこのお嬢様かしら?」
「素敵、憧れちゃう。」
猿回しの猿も、ぴょんぴょん跳び、鐘を鳴らしていた。

彩芽が、京之介に飛びついて来た。
「姉様、強い。あたし、うれしい。うれしい。」
「うん。早く逃げよう。」京之介は言った。
二人で手をつなぎ逃げようとしたとき、
「待って。」と京之介は言った。

初めに投げられたスリが、やっと半身を起こしていた。
京之介は、スリのそばにしゃがみ、財布から、5両を出した。
「これは、『やられ賃』だよ。5人で分けな。
 暇でたまらないなら、神保町の大川道場へお出で。」
男は、ビックリして、京之介を見た。
「え?悪いのは、全部俺らなのに、小遣いをくれるのかい?」
「小遣いじゃない。このお金で、きっぱり悪いこと止めなよ。」

京之介は、それだけ言って、彩芽と手を取り、足早に見物人を抜け、
逃げて行った。
「ね、あの男に何を言っていたの?」彩芽は聞いた。
「うん、痛い思いさせて、悪かったねって言ってたの。」
「ね、指で、大男の喉を突いたでしょう。指で倒せるものなの。」
「2本の指を鉄のようにしたの。『水流鉄火』っていう今は合気流にしかない技だよ。
 先生が、一度見せてくれたから、練習したんだ。」

目を開けて、気絶から醒めたゴロツキ4人は、
半身を起こし、うううっと唸っていた。
そこへ、スリ男がやってきた。
4人は、話しを聞き、小判を受け取った。
「え?悪いことした俺らにくれたのかよ。」と一番の大男が言った。
みんな、小判に見入っていた。

「こんなのもらっちゃよお、もう悪いことやりにくいな。」
「ああ、この金は使えねえ気がする。」
「神保町の大川道場か。」
「あそこなら、誰でも知ってらあ。」
「行ってみるだけ、行ってみるか。」
「おお。あの女がいたら、俺は、頭下げる。」
「俺らも、そうする。」
4人は、そう言って、小判を再び見つめた。


(「道場に来たゴロツキ5人」につづく)



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プロフィール

ラック

Author:ラック
上は若いときの写真です。ISなので、体は、かなり女子に近く発育しました。でも、胸はぺったんこです。戸籍は男子。性自認も男子、そして女装子です。アメリカの大学で2年女として過ごしました。私の最も幸せな2年でした。そのときの自叙伝を書いています。また、創作女装小説を書いています。毎日ネタが浮かばず、四苦八苦しています。ほぼ、毎日更新しています。
どうぞ、お出でください。

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